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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】水域構造物の補強部材および補強工法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
E02B3/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019220912
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021088903
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000172961
【氏名又は名称】あおみ建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】武野 正和
(72)【発明者】
【氏名】久保田 一男
(72)【発明者】
【氏名】原田 典佳
(72)【発明者】
【氏名】及川 森
(72)【発明者】
【氏名】吉原 到
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-223384(JP,A)
【文献】特開2008-297815(JP,A)
【文献】特開2011-226111(JP,A)
【文献】特開昭63-040010(JP,A)
【文献】特開2018-115514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04-3/14
3/24
3/28
17/00
E02D 27/00-29/00
29/045-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭群を備えた水域構造物を補強する際に使用される水域構造物の補強部材であって、
伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材と、
前記ストラット部材の両端部にそれぞれ設けられて、前記杭群の複数の杭にそれぞれ結合可能な結合部とを備え、
複数のストラット部材は、連結部において前記結合部どうしをヒンジ部によって結合することによって、水平面内において前記ヒンジ部を軸として回動可能な一体化ストラット部材となっていることを特徴とする水域構造物の補強部材。
【請求項2】
前記結合部は、前記杭の周囲を包囲する半割形状の半割鞘管部を有し、
前記ストラット部材の前記連結部において、前記結合部どうしは、前記半割鞘管部どうしをヒンジ部によって結合することによって、連結されていることを特徴とする請求項1に記載の水域構造物の補強部材。
【請求項3】
前記一体化ストラット部材は、水面および/または水中において、前記ストラット部材が、前記伸縮機能によって水平方向に伸縮および/または前記ヒンジ部によって水平面内において回動することによって、平面視における形状が変形可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の水域構造物の補強部材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水域構造物の補強部材を使用して前記水域構造物を補強する水域構造物の補強工法であって、
前記補強部材を水面に浮かべ、当該補強部材を前記杭群の間まで曳航する曳航工程と、
前記杭群の上下方向所定部位において、前記補強部材の複数の結合部を前記杭群の複数の杭にそれぞれ結合する結合工程とを含むことを特徴とする水域構造物の補強工法。
【請求項5】
前記補強部材の前記ストラット部材を入れ子状にして伸縮可能となし、
前記結合工程の後、前記入れ子状の伸縮要素どうし間に凝固材を注入することを特徴とする請求項4に記載の水域構造物の補強工法。
【請求項6】
前記結合工程において、前記結合部を前記杭に結合した後、前記結合部と前記杭との間に凝固材を注入すること特徴とする請求項4または5に記載の水域構造物の補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した桟橋、ドルフィン、橋脚などの水域構造物を補強する際に使用される水域構造物の補強部材および水域構造物の補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物として知られる桟橋、ドルフィン、橋脚などの水域構造物は、水底地盤に打ち込まれ水面より上に突出した複数の杭を脚柱とする下部構造物と、水面より上に敷設した床板等からなる上部構造物より構成される。 上記の下部構造物は一般に、海底あるいは湖底といった地盤に複数本の杭群を鉛直方向に打ち込んで構築される。また、上記の上部構造物は一般に、これら杭群の上端部に梁を複数本架設し、これら梁群の間に床板を張り渡して構築される。
【0003】
ところで、水域構造物の耐震性能を向上させたり、老朽化した水域構造物を補強したりすることを目的として従来より、特許文献1に記載の水域構造物の補強工法が知られている。 この水域構造物の補強工法は、水面上に突出した杭群を具えた下部構造物と、前記杭群の上部に取り付けた上部構造物とよりなる水域構造物を補強するに際し、前記下部構造物の補強に供する、両端間で伸縮可能であるストラット部材を前記水面に浮かべ、該ストラット部材を前記杭群の間まで曳航する工程と、前記杭群の上下方向所定部位に前記ストラット部材の両端を各々結合する工程とを含むことを特徴としている。
【0004】
このような水域構造物の補強工法によれば、下部構造物の横外方から、両端間で伸縮可能であるストラット部材を搬入して当該下部構造物に取り付けることが可能となるため、既設の上部構造物をそのまま活かして桟橋を補強することができ、上部構造物を一旦撤去および再設置する必要がない。したがって、労力および工期の点で優れ、コスト上大いに有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許4864774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した水域構造物の補強工法では、2本の鋼管杭を接続するための1つのストラット部材をフロータにて水上搬送または水中搬送することによって、既設の上部工を撤去することなく既設鋼管杭に設置し、簡易に補強することが示されている。
しかし、1つのストラット部材を既設鋼管杭に設置する手順は、1サイクルが煩雑であることに加え、フロータの操作が潜水士の手作業となるため、施工上の負荷が大きいという問題があった。
【0007】
すなわち、1つのストラット部材を既設鋼管杭に設置する、ストラット部材設置の1サイクルは、ストラット部材を置き場から吊り上げて水上のフロータに設置し、既設上部工の下を設置場所まで引き込んで、フロータへの注水により既設鋼管杭の水中における所定の位置にストラット部材を設置した後、フロータをストラット部材から分離して排水により浮上させ、既設の上部工の外へと引き出すというように、ストラット部材設置の1サイクルが煩雑であり、全てのストラット部材を設置するのに非常に手間を要し、このため水域構造物の補強に手間を要していた。
また、2つ以上のストラット部材を連結する場合、連結部のさや管は、後行のストラット部材によって閉合されるまで仮固定しなければならず、加えて水中作業であることにより、作業負荷が高いという課題があった。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、水域構造物の補強が従来に比して容易でかつ作業負担を軽減できる水域構造物の補強部材および補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の水域構造物の補強部材は、杭群を備えた水域構造物を補強する際に使用される水域構造物の補強部材であって、
伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材と、
前記ストラット部材の両端部にそれぞれ設けられて、前記杭群の複数の杭にそれぞれ結合可能な結合部とを備え、
複数のストラット部材は、連結部において前記結合部どうしをヒンジ部によって結合することによって、水平面内において前記ヒンジ部を軸として回動可能な一体化ストラット部材となっていることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、補強部材が、伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材と、当該ストラット部材の両端部にそれぞれ設けられて、杭群の複数の杭にそれぞれ結合可能な結合部と備え、複数のストラット部材は、連結部において結合部どうしをヒンジ部によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部を軸として回動可能な一体化ストラット部材となっているので、1つの補強部材を設置することによって、複数のストラット部材を設置することができる。したがって、従来に比して、全てのストラット部材を設置する手間を半分以上軽減できるので、水域構造物の補強が従来に比して容易となる。
また、複数のストラット部材は、連結部において結合部どうしをヒンジ部によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部を軸として回動可能な一体化ストラット部材となっているので、結合部を杭に結合することによって、従来要していた仮固定の必要がない。このため、水中での作業負担を軽減できる。
さらに、複数のストラット部材は、連結部において結合部どうしをヒンジ部によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部を軸として回動可能であるので、ストラット部材をヒンジ部によって水平面内において回動することによって、一体化ストラット部材、つまり補強部材の平面視における形状を適宜変更することができる。したがって、補強部材を容易に杭群に配置して、複数の結合部を杭群の複数の杭に容易に結合できる。
【0011】
また、本発明の前記構成において、前記結合部は、前記杭の周囲を包囲する半割形状の半割鞘管部を有し、
前記ストラット部材の前記連結部において、前記結合部どうしは、前記半割鞘管部どうしをヒンジ部によって結合することによって、連結されていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、ストラット部材の連結部において、結合部どうしは、半割鞘管部どうしをヒンジ部によって結合することによって、連結されているので、連結部において半割鞘管部どうしをヒンジ部を軸として開くことによって、半割鞘管部間に杭を配置でき、その後、半割鞘管部どうしをヒンジ部を軸として閉じることによって、半割鞘管部を杭に容易かつ確実に結合できる。
【0013】
また、本発明の前記構成において、前記一体化ストラット部材は、水面および/または水中において、前記ストラット部材が、前記伸縮機能によって水平方向に伸縮および/または前記ヒンジ部によって水平面内において回動することによって、平面視における形状が変形可能であってもよい。
【0014】
このような構成によれば、ストラット部材が、伸縮機能によって水平方向に伸縮および/またはヒンジ部によって水平面内において回動することによって、一体化ストラット部材、すなわち補強部材が平面視における形状が変形可能であるので、補強部材を水面に浮かべ、該補強部材を杭群の間まで所望の形状で曳航できるとともに、杭群の上下方向所定部位において、補強部材を所定の平面形状に変更して、補強部材の複数の結合部を杭群の複数の杭にそれぞれ容易かつ確実に結合できる。
【0015】
本発明の水域構造物の補強工法は、前記補強部材を使用して水域構造物を補強する水域構造物の補強工法であって、
前記補強部材を水面に浮かべ、当該補強部材を前記杭群の間まで曳航する曳航工程と、
前記杭群の上下方向所定部位において、前記補強部材の複数の結合部を前記杭群の複数の杭にそれぞれ結合する結合工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明においては、杭群の横外方から、伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材を備えた補強部材を搬入して当該下部構造物に取り付けることが可能となるため、杭郡によって支持されている上部構造物をそのまま活かして水域構造物を補強することができ、上部構造物を一旦撤去および再設置する必要がない。したがって、労力および工期の点で優れ、コスト上大いに有利である。
【0017】
また、本発明の前記構成において、前記補強部材の前記ストラット部材を入れ子状にして伸縮可能となし、
前記結合工程の後、前記入れ子状の伸縮要素どうし間に凝固材を注入してもよい。
【0018】
このような構成によれば、結合工程の後、入れ子状の伸縮要素どうし間に凝固材を注入するので、ストラット部材の伸縮要素どうしが凝固材によって強固に結合され、2本の杭を剛に連結することができる。
【0019】
また、本発明の前記構成において、前記結合工程において、前記結合部を前記杭に結合した後、前記結合部と前記杭との間に凝固材を注入してもよい。
【0020】
このような構成によれば、結合工程において、結合部を杭に結合した後、結合部と杭との間に凝固材を注入するので、結合部を杭に強固に結合することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水域構造物の補強が従来に比して容易でかつ作業負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態を示すもので、補強部材の平面図である。
図2】同、結合部の拡大平断面図である。
図3】同、ヒンジ部の要部を示すもので、(a)は開いた状態を示す斜視図、(b)は閉じた状態を示す斜視図である。
図4】同、水域構造物を示す正面図である。
図5】同、折れ曲がった状態の補強部材を示す平面図である。
図6】同、折り畳まれた状態の補強部材を示す平面図である。
図7】同、補強部材を杭に結合する方法を説明するためのもので、(a)は杭間に補強部材を配置した状態を示す平面図、(b)は中央の杭に結合部を結合し、入れ子状の伸縮要素を延伸した状態を示す平面図、(c)は3本の杭にそれぞれ結合部を結合した状態を示す平面図である。
図8】同、補強部材を杭群の所定の杭に取り付けた状態を示す水域構造物の正面図である。
図9】本発明の第2の実施の形態を示すもので、補強部材の平面図である。
図10】同、折り畳まれた状態の補強部材を示す平面図である。
図11】同、3本の杭にそれぞれ結合部を結合した状態を示す平面図である。
図12】本発明の第3の実施の形態を示すもので、補強部材の平面図である。
図13】同、一部が折り畳まれ、一部が折れ曲がった状態の補強部材を示す平面図である。
図14】同、折り畳まれた状態の補強部材を示す平面図である。
図15】同、補強部材を杭に結合する方法を説明するためのもので、(a)は杭間に補強部材を配置した状態を示す平面図、(b)は中央の2本杭に結合部を結合していく状態を示す平面図、(c)は4本の杭にそれぞれ結合部を結合した状態を示す平面図である。
図16】本発明の第4の実施の形態を示すもので、補強部材の平面図である。
図17】同、折り畳まれた状態の補強部材を示す平面図である。
図18】同、補強部材を杭に結合する方法を説明するためのもので、(a)は杭間に補強部材を配置した状態を示す平面図、(b)は中央の2本杭に結合部を結合していく状態を示す平面図、(c)は4本の杭にそれぞれ結合部を結合した状態を示す平面図である。
図19】ストラット部材の変形例を示すもので、(a)はストラット部材が延伸した状態を示す補強部材の平面図、(b)はストラット部材が短縮した状態を示す補強部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態に係る補強部材10を示す平面図である。
この補強部材10は、図4に示すように、水面上に突出した複数の鋼管杭(杭)20からなる杭群を備えた下部構造物21と、杭群の上部に取り付けた上部構造物22とを備えた水域構造物1である桟橋1を補強する際に使用されるものであり、上部構造物22の下部空間および水中で、下部構造物21の補強に供する伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材11と、ストラット部材11の両端部にそれぞれ設けられて杭群の複数の杭20にそれぞれ結合可能な結合部12とを備えている。
【0024】
図1に示すように、ストラット部材11は、入れ子状に構成されることによって伸縮可能となっている。すなわち、ストラット部材11は、鋼管で形成された円筒状または角筒状の外管11aと、鋼管で形成された円筒状または角筒状の内管11bとを備えており、外管11aの内径は内管11bの外径より所定寸法だけ大きく設定されている。外管11aの内部に内管11bが軸方向に移動可能に挿通され、これによって外管11aと内管11bとは相対的に軸方向に移動可能となっている、つまりストラット部材11は軸方向に伸縮機能を有している。また、内管11bの一端部が外管11aの一端部から突出している。
ここで、内管11bの一端部とは当該内管11bに結合部12が固定されている側の端部のことを言い、外管11aの一端部とは当該外管11aに結合部12が固定されている側と反対側の端部のことを言う。
【0025】
外管11aと内管11bとの間には所定の隙間が設けられており、この隙間には、当該隙間を一定に保持する図示しないスペーサが設けられている。
また、外管11aの一端部には、外管11aの全内周に亘って前記隙間をシールするためのシール部材13aが設けられ、内管11bの他端部には内管11bの全外周に亘って前記隙間をシールするシール部材13bが設けられている。
これらシール部材13a,13bと外管11aと内管11bとによって前記隙間は密封され、当該隙間に膨張モルタル等の凝固材を注入する際に、当該凝固材の漏洩を防止して効率よく注入作業を行うことができる。
【0026】
また、本実施の形態の補強部材10は、2本のストラット部材11,11を備えており、これらストラット部材11,11は、連結部において結合部12,12どうしをヒンジ部15によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部15を軸として回動可能な一体化ストラット部材16となっている
【0027】
図2および図3に示すように、結合部12は、杭20の周囲を包囲する半割形状の半割鞘管部12aと、この半割鞘管部12aの一端部に、当該半割鞘管部12aの径方向外側に突出して設けられたフランジ部12bとを有している。
また、半割鞘管部12aの他端部には、ヒンジ部15を構成する、筒部15bを備えたプレート15aが半割鞘管部12aの径方向外側に突出して設けられている。
そして、一方の結合部12と他方の結合部12とは、プレート15a,15aの筒部15b,15bをヒンジ軸15cによって軸回りに正逆方向に回転可能に同軸に支持することによって、ヒンジ軸15cを軸として正逆方向に回転可能となっており、これによって2本のストラット部材11,11が水平面内においてヒンジ軸15cを軸として回動可能となっている。つまり、2本のストラット部材11,11はヒンジ軸15cを軸として開閉可能となっている。
【0028】
また、結合部12のフランジ部12bにはボルト挿通孔17が設けられ、プレート15aにもボルト挿通孔18が設けられている。なお、ボルト挿通孔17,18はそれぞれヒンジ軸15cの軸方向(上下方向)に所定間隔で複数設けられている。
そして、ストラット部材11,11を開いて直線状に配置すると、半割鞘管部12a,12aが円筒状になるように閉じて、フランジ部12b,12bが互いに当接するとともに、プレート15a,15aが当接する。この状態において、フランジ部12b,12bに設けられたボルト挿通孔17,17は同軸に配置され、プレート15a,15aに設けられたボルト挿通孔18,18も同軸に配置される。したがって、同軸に配置されたボルト挿通孔17,17およびボルト挿通孔18,18にボルト25を挿通してナットで締め付けることによって、半割鞘管部12a,12aどうしが結合した状態で強固に固定される。これによって、ストラット部材11,11が直線状に配置された状態で強固に固定される。
なお、ボルト挿通孔18に挿通するボルト25がなくても、半割鞘管部12a,12aどうしを強固に結合することができれば、ボルト挿通孔18および当該ボルト挿通孔18に挿通するボルト25は設けなくてもよい。
【0029】
また、図4に示すように、前記結合部12は上下方向の長さ(図1および図2において、紙面と直交する方向の長さ)が、ストラット部材11の上下方向の最大長さより長く、かつ結合部12の上下端部がそれぞれストラット部材11から上下に突出している。
【0030】
また、図1に示すように、一体化ストラット部材16の両端部に設けられている結合部12も杭20の周囲を包囲する半割形状の半割鞘管部12aと、この半割鞘管部12aの一端部に、当該半割鞘管部12aの径方向外側に突出して設けられたフランジ部12bと、半割鞘管部12aの他端部に、当該半割鞘管部12aの径方向外側に突出して設けられたプレート15aとを有している。
また、一体化ストラット部材16の両端部において、半割鞘管部12aを有する結合部12には、これと対称的に別の結合部12が配置されている。この別の結合部12も同様に、半割鞘管部12a、フランジ部12bおよびプレート15aを有している。
そして、一体化ストラット部材16の両端部にある結合部12,12は、ストラット部材11,11の連結部における結合部12,12と同様にして、ヒンジ部15によって、半割鞘管部12a,12aが回動して開閉するようになっている。
【0031】
また、前記一体化ストラット部材16は、水面および/または水中において、ストラット部材11,11が、伸縮機能によって水平方向に伸縮および/またはヒンジ部15によって水平面内において回動することによって、平面視における形状が変形可能である。
すなわち、図5に示すように、2本のストラット部材11,11の連結部において、一方(右方)のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において所定角度だけ回動させることによって、折れ曲がった平面形状となり、また、少なくともいずれか一方のストラット部材11を延伸することによっても平面視における形状が変形可能である。また、図6に示すように、2本のストラット部材11,11の連結部において、一方(右方)のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において回動させることによって折り畳んだ平面形状となり、コンパクトなものとなる。
【0032】
次に、上述した補強部材10を使用した水域構造物の補強工法を説明する。
まず、桟橋1(図4および図8参照)から離れた位置で、補強部材10を水面に浮かべる。補強部材10は連結された2本のストラット部材11,11を備えており、ストラット部材11,11は鋼管によって形成されているので、補強部材10が水没しないよう浮力によって運搬を容易化するフロータを取り付ける。あるいは、補強部材10の両端を水密に密封しておき、補強部材10自身にフロータの機能をもたせてもよい。あるいは、これらの組み合わせにより、補強部材10を水面に浮かべる。
【0033】
次に、水面に浮かんでいる補強部材10を図6に示すように、コンパクトに折り畳む。すなわち、2本のストラット部材11,11の連結部において、結合部12,12を固定しているボルト25をフランジ部12b,12bから外したうえで、右方のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において回動させることによって、補強部材10を折り畳んだ平面形状とする。なお、この状態を保持するために、補強部材10の両端にある結合部12,12どうしを連結してもいい。この連結は図示しない線状の連結材で結合部12,12どうしを結ぶことによって行ってもよいし、他の手段によって結合部12,12どうしを連結してもよい。
【0034】
次に、図7(a)に示すように、折り畳んだ状態の補強部材10を杭群まで曳航する(曳航工程)。すなわち、左右に所定間隔をもって隣り合う3本の杭20,20,20のうち、中央側の杭20より左側において、左右に隣り合う杭20,20の間まで補強部材10を曳航したうえで、補強部材10の連結部に位置する結合部12,12のうち、一方の結合部12の半割鞘管部12aを中央部の杭20の外周略半分に係合する。これによって、一方のストラット部材11を左側2本の杭20,20間に配置する。
【0035】
次に、図7(b)に示すように、杭20に係合していない結合部12を有する他方のストラット部材11をヒンジ部15を軸として反時計回りに回動させることによって、他方のストラット部材11の結合部12の半割鞘管部12aを中央部の杭20の残りの外周略半分に係合するとともに、他方の結合部12のフランジ部12bを一方の結合部12のフランジ部12bに当接し、他方の結合部12のプレート15aを一方の結合部12のプレート15aに当接する。これによって、中央部の杭20の周囲が結合部12,12の半割鞘管部12a,12aによって包囲される。その後、互いに当接しているフランジ部12b,12bに設けられているボルト挿通孔17,17(図2参照)および互いに当接しているプレート15a,15aに設けられているボルト挿通孔18,18(図3参照)にそれぞれボルト25を挿通してナットによって締め付ける。
【0036】
また、上述したように、他方のストラット部材11を反時計回りに回動させるとともに、当該ストラット部材11と一方のストラット部材11を延伸し、さらに、これら両ストラット部材11によって構成されている一体化ストラット部材16の両端部にそれぞれ設けられている円筒状の結合部12,12のうちの外側の結合部12を、ヒンジ部15を軸として、内側の結合部12から離れるように回動させることによって、開く。なお、ストラット部材11を延伸する場合、その内管11bを軸方向に移動させて、外管11aから軸方向に離間させることによって行う。
【0037】
次に、図7cに示すように、内管11bの先端部に設けられている内側の結合部12の半割鞘管部12aを両側の杭20の外周略半分に係合したうえで、開いている外側の結合部12をヒンジ部15を軸として回動させることによって、外側の結合部12のフランジ部12bを内側の結合部12のフランジ部12bに当接するとともに外側の結合部12のプレート15aを内側の結合部12のプレート15aに当接する。これによって、両側の杭20の周囲が結合部12,12の半割鞘管部12a,12aによって包囲される。その後、互いに当接しているフランジ部12b,12bに設けられているボルト挿通孔17,17および互いに当接しているプレート15a,15aに設けられているボルト挿通孔18,18にそれぞれボルト25を挿通してナットによって締め付ける。
【0038】
このようにして、補強部材10の複数の結合部12を複数の杭20に結合する(結合工程)ことによって、図8に示すように補強部材10を杭群の所定の複数の杭20に取り付け、ブラケット26(図4参照)上に載置する。これにより補強部材10を上下方向所定部位に位置決めする。
なお、補強部材10を複数の杭20に取り付けた状態では、ストラット部材11が伸縮可能であるため、杭20が鉛直方向に延在しておらず傾斜していても、補強部材10を上下方向にスライドさせることが可能である。また、ブラケット26は杭20に予め取り付けておいてもよいし、杭20を施工した後当該杭に取り付けてもよい。
【0039】
このようにして、補強部材10を位置決めした後、結合部12と杭20との間の隙間に凝固材を注入する。この凝固材としては例えば膨張モルタルを使用し、杭20を円筒状に包囲する結合部12,12と杭20との間の隙間に、膨張モルタルを注入する。この場合、結合部12の下端において前記隙間を塞ぐ処置を施したうえで、結合部12の上端側から前記隙間に膨張モルタルを注入する。このようにして、結合部12を杭20に強固に結合する。
【0040】
また、入れ子状に構成されたストラット部材11の伸縮要素(外管11aと内管11b)どうしの間に凝固材を注入する。この凝固材としては例えば膨張モルタルを使用する。
すなわち、外管11aに、当該外管11aと内管11bとの間の隙間に連通する図示しない注入孔と空気抜き孔を外管11aの径方向に対向して設けておき、注入孔から膨張モルタルを前記隙間に注入し、当該隙間に存在していた空気を空気抜き孔から排出することによって、隙間に膨張モルタルを隙間なく充填する。これによって、ストラット部材11の伸縮要素(外管11aと内管11b)どうしが膨張モルタルによって強固に結合され、複数の杭20を剛に連結することができる。
なお、上述したように、外管11aと内管11bとの間の隙間は軸方向両端部においてシール部材13a,13bによって密封されているので、当該軸方向両端部から膨張モルタスが漏洩するのを防止している。
【0041】
杭群においては複数の杭20が平面視において縦横に所定間隔で複数設けられているので、補強すべき複数の杭20を上述したような補強部材10によって次々に連結することによって水域構造物1を補強する。
【0042】
以上のように、本実施の形態によれば、補強部材10が、伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材11と、当該ストラット部材11の両端部にそれぞれ設けられて、杭群の複数20の杭にそれぞれ結合可能な結合部12と備え、複数のストラット部材11は、連結部において結合部12,12どうしをヒンジ部15によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部15を軸として回動可能な一体化ストラット部材16となっているので、1つの補強部材10を設置することによって、複数のストラット部材11を設置することができる。したがって、従来に比して、全てのストラット部材11を設置する手間を半分以上軽減できるので、水域構造物1の補強が従来に比して容易となる。
【0043】
また、複数のストラット部材11は、連結部において結合部12,12どうしをヒンジ部15によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部15を軸として回動可能な一体化ストラット部材16となっているので、結合部12を杭20に結合することによって、従来要していた仮固定の必要がない。このため、水中での作業負担を軽減できる。
さらに、複数のストラット部材11は、連結部において結合部12,12どうしをヒンジ部15によって結合することによって、水平面内においてヒンジ部15を軸として回動可能であるので、ストラット部材11をヒンジ部15によって水平面内において回動することによって、一体化ストラット部材16、つまり補強部材10の平面視における形状を適宜変更することができる。したがって、補強部材10を容易に杭群に配置して複数の結合部12を杭群の複数の杭20に容易に結合できる。
【0044】
また、ストラット部材11,11の連結部において、結合部12,12どうしは、半割鞘管部12a,12aどうしをヒンジ部15によって結合することによって、連結されているので、連結部において半割鞘管部12a,12aどうしをヒンジ部15を軸として開くことによって、半割鞘管部12a,12a間に杭20を配置でき、その後、半割鞘管部12a,12aどうしをヒンジ部15を軸として閉じることによって、半割鞘管部12a,12aを杭に容易かつ確実に結合できる。
【0045】
また、ストラット部材11が、伸縮機能によって水平方向に伸縮および/またはヒンジ部15によって水平面内において回動することによって、一体化ストラット部材16、すなわち補強部材10が平面視における形状が変形可能であるので、補強部材10を水面に浮かべ、該補強部材10を杭群の間まで所望の形状で曳航できるとともに、杭群の上下方向所定部位において、補強部材10を所定の平面形状に変更して、補強部材10の複数の結合部12を杭群の複数の杭20にそれぞれ容易かつ確実に結合できる。
【0046】
さらに、下部構造物21の横外方から、伸縮機能を有し、かつ連結された複数のストラット部材11を備えた補強部材10を搬入して当該下部構造物21に取り付けることが可能となるため、既設の上部構造物22をそのまま活かして桟橋1を補強することができ、上部構造物22を一旦撤去および再設置する必要がない。したがって、労力および工期の点で優れ、コスト上大いに有利である。
また、結合部12を杭20に結合した結合工程の後、入れ子状の伸縮要素(外管11aと内管11b)どうし間に凝固材を注入するので、ストラット部材11の伸縮要素どうしが凝固材によって強固に結合され、2本の杭20,20を剛に連結することができる。
加えて、結合工程において、結合部12を杭20に結合した後、結合部12と杭20との間に凝固材を注入するので、結合部12を杭20に強固に結合することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図9図11は、第2の実施の形態の補強部材10Aを示す平面図である。当該補強部材10Aが第1の実施の形態の補強部材10と主に異なる点は、ストラット部材11,11の連結部における結合部12,12の取付構造であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0048】
図9に示すように、ストラット部材11,11の連結部において、結合部12,12の半割鞘管部12a,12aは、当該半割鞘管部12a,12aの周方向の中央部と同半割鞘管部12a,12aの中心とを通る直線Lと、ストラット部材11の中心軸線Oとのなす角度θが45°となるように、配置され、この状態でストラット部材11,11の端部に固定されている。したがって、結合部12,12によって結合されるストラット部材11,11は半割鞘管部12a,12aを円筒状に配置(結合)した状態において、直角に配置されている。
また、本実施の形態では、一方のストラット部材11は、他方のストラット部材11より長くなっているが、等しい長さであってもよい。
【0049】
また、結合部12,12どうしをヒンジ結合するヒンジ部15は、直角に配置されたストラット部材11,11の内側の角部に配置され、フランジ部12b,12bはストラット部材11,11の外側の角部に配置されている。そして、フランジ部12b,12bどうしおよびプレート15a,15aどうしがそれぞれボルト25,25によって締結されることによって、半割鞘管部12a,12aどうし、つまり結合部12,12どうしが結合した状態で強固に固定されている。
【0050】
このような補強部材10Aでは、図10に示すように、2本のストラット部材11,11の連結部において、一方のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において時計回りに90度だけ回動させることによって折り畳んだ平面形状となり、コンパクトなものとなる。また、一方のストラット部材11が他方のストラット部材11より長いので、折り畳んだ状態において、補強部材10Aの両端部に設けられている結合部12,12どうしが干渉することがない。
【0051】
本実施の形態の補強部材10Aでは、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、図11に示すように、略直角三角形の頂点に配置されている3本の杭20を1つの補強部材10Aで連結して補強できるという効果を得ることができる。
【0052】
(第3の実施の形態)
図12図14は、第3の実施の形態の補強部材10Bを示す平面図である。当該補強部材10Bが第1の実施の形態の補強部材10と主に異なる点は、3本のストラット部材11を連結することによって、一体化ストラット部材16を構成した点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0053】
図12に示すように、本実施の形態の補強部材10Bは、3本のストラット部材11を有しており、互いに隣り合うストラット部材11,11どうしは、結合部12,12どうしをヒンジ部15によってヒンジ結合することによって連結されている。
また、図12において、左側のストラット部材11と中央側のストラット部材11とを連結している結合部12,12は、ヒンジ部15を下側に、フランジ部12b,12bを上側にして配置されている。また、右側のストラット部材11と中央側のストラット部材11とを連結している結合部12,12は、ヒンジ部15を上側に、フランジ部12b,12bを下側にして配置されている。
この状態において、結合部12,12どうしがボルト25,25によって締結されることによって、補強部材10Bは一直線状になった状態で固定されている。
【0054】
また、前記一体化ストラット部材16は、水面および/または水中において、3本のストラット部材11が、伸縮機能によって水平方向に伸縮および/またはヒンジ部15によって水平面内において回動することによって、平面視における形状が変形可能である。
すなわち、図13に示すように、中央側のストラット部材11と左側のストラット部材11の連結部において、左側のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において所定角度だけ回動させることによって、折れ曲がり、さらに、中央側のストラット部材11と右側のストラット部材11の連結部において、右側のストラット部材11を、ヒンジ部15を軸として水平面内において回動させることによって折り畳んだ状態となる。
【0055】
また、図13における折れ曲がった左側のストラット部材11を、図14に示すように、さらにヒンジ部15を軸として水平面内において所定角度だけ回動させて、中央側のストラット部材11と平行に配置することによって、折り畳んだ平面形状となり、コンパクトなものとなる。
【0056】
このような補強部材10Bは、図14に示すような、折り畳んだ状態で杭群まで曳航される(曳航工程)。
すなわち、左右に所定間隔をもって隣り合う4本の杭20のうち、中央側の2本の杭20,20の間まで補強部材10Bを曳航したうえで、図15(a)に示すように、中央部のストラット部材11を延伸することによって、当該ストラット部材11の両端の結合部12,12をそれぞれ前記2本の杭20,20の外周略半分に係合する。
【0057】
次に、図15(b)に示すように、図15(a)において、上側のストラット部材11をヒンジ部15を軸として、時計回りに回転させるとともに、当該ストラット部材11の端部の外側にある結合部12をヒンジ部15を軸として反時計回りに回転させて開く。
また、図15(a)において、下側のストラット部材11をヒンジ部15を軸として、時計回りに回転させるとともに、当該ストラット部材11の端部の外側にある結合部12をヒンジ部15を軸として反時計回りに回転させて開く。
【0058】
次に、図15(b)において、左右両側のストラット部材11,11をそれぞれヒンジ部15,15を軸として、さらに時計回りに回転させるとともに、当該ストラット部材11,11を延伸することによって、図15(c)に示すように、当該ストラット部材11,11の結合部12,12を中央側のストラット部材11の両端の結合部12,12にそれぞれ結合し、さらに、左右両側のストラット部材11,11の開いていた結合部12,12をヒンジ部15を軸として時計回りに回転させることによって、当該結合部12,12を閉じる。これによって、4本の杭20にはそれぞれ補強部材10Bの結合部12,12が結合される(結合工程)。
【0059】
また、このような結合工程によって、補強部材10Bを杭群の所定の複数の杭20に取り付けた後、第1の実施の形態と同様に、補強部材10Bをブラケット26(図4参照)上に載置して、当該補強部材10Bを上下方向所定部位に位置決めする。
そして、補強部材10Bを位置決めした後、第1の実施の形態と同様に、結合部12と杭20との間の隙間に膨張モルタル等の凝固材を注入する。これによって、結合部12を杭20に強固に結合する。
【0060】
また、第1の実施の形態と同様に、入れ子状に構成されたストラット部材11の伸縮要素(外管11aと内管11b)どうしの間に膨張モルタル等の凝固材を注入する。これによって、ストラット部材11の伸縮要素(外管11aと内管11b)どうしが膨張モルタルによって強固に結合され、複数の杭20を剛に連結することができる。
【0061】
本実施の形態の補強部材10Bでは、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、図15(c)に示すように、左右に所定間隔で配置されている4本の杭20を1つの補強部材10Bで連結して補強できるという効果を得ることができる。
【0062】
(第4の実施の形態)
図16図18は、第4の実施の形態の補強部材10Cを示す平面図である。当該補強部材10Cが第3の実施の形態の補強部材10Bと主に異なる点は、ストラット部材11,11の連結部における結合部12,12の取付構造であるので、以下ではこの点について説明し、第3の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0063】
図16に示すように、ストラット部材11,11の連結部において、結合部12,12の半割鞘管部12a,12aは、当該半割鞘管部12a,12aの周方向の中央部と同半割鞘管部12a,12aの中心とを通る直線Lと、ストラット部材11の中心軸線Oとのなす角度θが45°となるように、配置され、この状態でストラット部材11,11の端部に固定されている。したがって、結合部12,12によって結合される3本のストラット部材11,11は半割鞘管部12a,12aを円筒状に配置(結合)した状態において、略コ字形に配置されている。
【0064】
また、結合部12,12どうしをヒンジ結合するヒンジ部15は、コ字形に配置されたストラット部材11,11の左角部においては、ストラット部材11,11の外側の角部に配置され、コ字形に配置されたストラット部材11,11の右角部においては、ストラット部材11,11の内側の角部に配置されている。そして、フランジ部12b,12bどうしおよびプレート15a,15aどうしがそれぞれボルト25,25によって締結されることによって、半割鞘管部12a,12aどうし、つまり結合部12,12どうしが結合した状態で強固に固定されている。
【0065】
また、本実施の形態の補強部材10Cでは、コ字形に配置されたストラット部材11,11の左角部におけるプレート15aが他のプレート15aより長くなっており、これによって、図17に示すような平面形状になった際の、右側の結合部12,12どうしの干渉を防止している。
つまり、図16に示す状態から、左角部に位置するヒンジ部15を軸として左側のストラット11を時計回りに270度回転させて折り畳んだ状態において、図17に示すように、右上側の結合部12がその直下に位置する結合部12に干渉するのを防止している。さらに、図16に示す状態から、右角部に位置するヒンジ部15を軸として右側のストラット部材11を時計回りに90度回転させて折り畳むことによって、図17に示すような折り畳んだコンパクトな平面形状となる。
【0066】
このような補強部材10Cは、図18(a)に示すような、折り畳んだ状態で杭群まで曳航される(曳航工程)。
すなわち、左右に所定間隔をもって隣り合う2本の杭20の間まで補強部材10Cを曳航したうえで、図18(a)に示すように、中央部のストラット部材11を延伸することによって、当該ストラット部材11の両端の結合部12,12をそれぞれ2本の杭20,20の外周略半分に係合する。
【0067】
次に、図18(b)に示すように、図18(a)において、上側のストラット部材11をヒンジ部15を軸として、反時計回りに回転させるとともに、当該ストラット部材11の端部の外側にある結合部12をヒンジ部15を軸として時計回りに回転させて開く。
また、図18(a)において、下側のストラット部材11をヒンジ部15を軸として、反時計回りに回転させるとともに、当該ストラット部材11の端部の外側にある結合部12をヒンジ部15を軸として反時計回りに回転させて開く。
【0068】
次に、図18(b)において、左右両側のストラット部材11,11をそれぞれヒンジ部15,15を軸として、さらに反時計回りに回転させることによって、図18(c)に示すように、当該ストラット部材11,11の結合部12,12を中央側のストラット部材11の両端の結合部12,12にそれぞれ結合し、さらに、当該ストラット部材11,11を延伸し、さらに左右両側のストラット部材11,11の開いていた結合部12,12をヒンジ部15を軸として反時計回りに回転させることによって、当該結合部12,12を閉じる。これによって、4本の杭20にはそれぞれ補強部材10Cの結合部12,12が結合される(結合工程)。
【0069】
また、このような結合工程によって、補強部材10Cを杭群の所定の複数の杭20に取り付けた後、第1の実施の形態と同様に、補強部材10Cをブラケット26(図4参照)上に載置して、当該補強部材10Bを上下方向所定部位に位置決めする。
そして、補強部材10Cを位置決めした後、第1の実施の形態と同様に、結合部12と杭20との間の隙間に膨張モルタル等の凝固材を注入する。これによって、結合部12を杭20に強固に結合する。
【0070】
また、第1の実施の形態と同様に、入れ子状に構成されたストラット部材11の伸縮要素(外管11aと内管11b)どうしの間に膨張モルタル等の凝固材を注入する。これによって、ストラット部材11の伸縮要素(外管11aと内管11b)どうしが膨張モルタルによって強固に結合され、複数の杭20を剛に連結することができる。
【0071】
本実施の形態の補強部材10Cでは、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、図18(c)に示すように、上下左右に所定間隔で配置されている4本の杭20を1つの補強部材10Cで連結して補強できるという効果を得ることができる。
【0072】
なお、上述した第1~第4の実施の形態において、補強部材10、10A~10Cをそれぞれ構成するストラット部材11の長さは適宜調整され、当該ストラット部材11を構成する外管11aおよび内管11bの長さも適宜調整される。
また、4本のストラット部材11によって、平面視ロ字形に補強部材を構成してもよいし、さらに、平面視四角形以上の多角形に補強部材を構成してもよい。
【0073】
また、上述した第1~第4の実施の形態では、ストラット部材11の伸縮機能として、当該ストラット部材11を外管11aと、この外管11a内に軸方向に移動可能に挿入された内管11bとによって構成し、これら外管11aと内管11bとを相対的に軸方向に移動させることで、伸縮させるようにしたが、ストラット部材11の伸縮機能はこれに限ることはない。
例えば、図19に示すように、ストラット部材11Aを、中空部を有しかつ軸方向に伸縮可能な1本の可撓性部材11Aで構成し、この可撓性部材の両端部にそれぞれ結合部12,12を取り付けてもよい。
このようなストラット部材11Aを備えた補強部材10Dは、施工時にストラット部材11Aを伸縮させて両結合部12,12間の距離を調整可能とする。そして、図19(b)に示すように、可撓性部材11Aを短縮させた状態で既設杭と既設杭の間に側方から挿入が可能で、延伸させることで両結合部12,12をそれぞれ対応する既設杭に結合できる。
【0074】
既設杭の所定位置に結合部12を結合した後、結合部12と既設杭との間に凝固材(充填材)を充填することで結合部12と既設杭とを一体化する。その後、可撓性部材11Aの中空部に充填材を充填することで、両結合部12,12どうしが強固に連結され、構造部材として機能する。
最終的に、固化した充填材が構造部材となるため、可撓性部材11Aには大きな強度は必要なく、結合部12,12を繋いでいることおよび充填材が充填される空間を有していること、が求められる。可撓性部材11Aの素材としては、ゴム、プラスチック等が考えられる。
【符号の説明】
【0075】
1 桟橋(水域構造物)
10,10A~10D 補強部材
11,11A ストラット部材
11a 外管(伸縮要素)
11b 内管(伸縮要素)
12 結合部
12a 半割鞘管部
15 ヒンジ部
16 一体化ストラップ部材
20 杭
21 下部構造物
22 上部構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図18
図19