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  • 特許-留め付け方法及び留め付けシステム 図1
  • 特許-留め付け方法及び留め付けシステム 図2
  • 特許-留め付け方法及び留め付けシステム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】留め付け方法及び留め付けシステム
(51)【国際特許分類】
   F16B 4/00 20060101AFI20230720BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
F16B4/00 D
F16B11/00 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019556346
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018059914
(87)【国際公開番号】W WO2018192979
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2019-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】17167112.6
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100,9494 Schaan,Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ポップ
(72)【発明者】
【氏名】シモン シュターヘル
(72)【発明者】
【氏名】イェンス シュナイダー
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】久島 弘太郎
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0047014(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2157322(EP,A1)
【文献】特開2010-190342(JP,A)
【文献】特開平9-66421(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101076427(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103846545(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 4/00
F16B 11/00
F16B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料から成る留め付け要素を基板材料から成る基板に留め付ける方法であって、
深さ方向を規定し、めくら穴直径を有するめくら穴を前記基板に形成する工程と、
留め付け方向を規定し、前記留め付け方向に向いた端面と前記端面に直に隣接する周面とを有するシャフトを有する留め付け要素を用意する工程と、
前記留め付け要素を前記めくら穴に埋め込み固定させるために前記シャフトを前記めくら穴に打ち込む工程と
を備え、
前記端面の外形寸法は前記めくら穴直径より大きく、前記めくら穴に打ち込まれる際、前記シャフトは前記基板材料の一部を前記深さ方向で変位させるとともに前記周面で前記基板に溶着され、
前記周面は前記留め付け方向に傾斜又は段差を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シャフトを有する前記留め付け要素は、前記めくら穴に埋め込み固定される埋め込み固定領域と、埋め込み固定後に前記基板から突出する、付属物を前記基板に接続するための接続領域とを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記留め付け方向に垂直な前記シャフトの断面領域は、前記端面を始点に前記留め付け方向とは反対方向に沿って徐々に増加する外形寸法を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シャフトの前記断面領域は円形である、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記周面が円錐台の形状である、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記周面は、前記留め付け方向とは逆方向に前記端面を始点とする複数の異なる傾斜角を前記留め付け方向に有する、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記シャフトは直線的に前記めくら穴に、ボルト打ち込み機で打込まれる、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記第1の材料及び/又は前記基板材料は金属又は合金から成る、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1つに記載の方法。
【請求項9】
基板材料から成る基板と、留め付け方向を規定し、取付け方向に向いた端面と、前記端面に直に隣接する周面と、を備えたシャフトを有する留め付け要素とを備えた留め付けシステムであって、前記留め付け要素は、前記基板のめくら穴に埋め込み固定され、前記端面の外形寸法は前記めくら穴直径より大きく、前記めくら穴に打ち込まれる際、前記シャフトは前記基板材料の一部を前記深さ方向で変位させるとともに前記周面で前記基板に溶着され、前記周面は前記留め付け方向に傾斜又は段差を有する、ことを特徴とする留め付けシステム。
【請求項10】
前記留め付け要素は、前記シャフトを備えた埋め込み固定領域と、付属物を前記基板に接続するための、前記基板から突き出す接続領域とを有する、ことを特徴とする請求項9に記載の留め付けシステム。
【請求項11】
前記留め付け方向に垂直な前記シャフトの断面領域は、前記端面を始点に前記留め付け方向とは反対方向に沿って徐々に増加する外形寸法を有する、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の留め付けシステム。
【請求項12】
前記シャフトの前記断面領域は円形である、ことを特徴とする請求項11に記載の留め付けシステム。
【請求項13】
前記周面が円錐台の形状である、ことを特徴とする請求項9乃至12の何れか1つに記載の留め付けシステム。
【請求項14】
前記周面は、前記留め付け方向で前記端面を始点とする複数の異なる傾斜角を前記留め付け方向とは反対方向に有する、ことを特徴とする請求項9乃至13の何れか1つに記載の留め付けシステム。
【請求項15】
前記留め付け要素の材料及び/又は前記基板材料は金属又は合金から成る、ことを特徴とする請求項9乃至14の何れか1つに記載の留め付けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めくら穴が基板(被留め付け材)に形成され、留め付け要素がそのめくら穴に固定される、留め付け要素を基板に留め付ける方法埋め込み固定に関する。さらに、本発明は、基板とその基板に取り付けられた留め付け要素とを有する留め付けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の留め付け方法及びシステムにおいて、留め付け要素のシャフトは、留め付け方向に向いた端面を有し、すなわち端面に隣接する周面との間に鈍角を形成する。端面の外形寸法はめくら穴直径より大きく、めくら穴に打ち込まれる際、シャフトは基板材料の一部を変位させ、周面で基板に溶着される。溶着は、留め付け要素の基板に対する保持力の向上に資する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、如何なるめくら穴深でも基板における留め付け要素の大きな保持力が保証される留め付け方法及び留め付けシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、一方では、第1の材料から成る留め付け要素を、基板材料から成る基板に留め付ける方法であって、深さ方向を規定し、めくら穴直径を有する、めくら穴を基板に形成する工程と、留め付け方向を規定し、実質的に留め付け方向に向いた端面と、この端面に直に隣接する周面と、を有するシャフトを備えた留め付け要素を用意する工程と、留め付け要素をめくら穴に埋め込み固定させるためにシャフトをめくら穴に打ち込む工程と、を備えた留め付け方法によって達成される。端面の外形寸法はめくら穴直径より大きく、めくら穴に打ち込まれる際、シャフトは基板材料の一部を深さ方向で変位させ、周面で基板に溶着される。周面は、留め付け方向に傾斜又は段差を有する。
【0005】
他方では、この目的は、基板材料から成る基板と、留め付け方向を規定し、実質的に留め付け方向に向いた端面と、この端面に直に隣接する周面とを有するシャフトを備えた留め付け要素と、を備えた留め付けシステムであって、シャフトは基板に溶着され、周面は留め付け方向に傾斜又は段差を有する、ことを特徴とする留め付けシステムによって達成される。
【0006】
本発明の優位性のある態様において、留め付け要素は、シャフトを備えめくら穴に埋め込み固定される埋め込み固定領域と、埋め込み固定後に基板から突出する、付属物を基板に接続するための接続領域とを有する。
【0007】
優位性のある態様において、留め付け方向に垂直なシャフトの断面領域は、端面を始点に留め付け方向とは反対方向に沿って徐々に増加する外形寸法を有する。断面領域は円形で、外形寸法はその円の寸法を有することが好ましい。周面は、円錐台の形状であると特に好ましい。
【0008】
優位性のある態様において、周面は、端面を始点として留め付け方向とは反対方向に、複数の異なる傾斜角を有する。
【0009】
優位性のある態様において、留め付け方向に対する周面の傾斜角は、1°から6°である。この傾斜角は1.5°から5°であることが好ましく、2°から4°であれば特に好ましい。
【0010】
優位性のある態様において、端面は、シャフトをめくら穴により容易に挿入するために、特定の周方向の引込み面取りをその縁に備える。この引込み面取りは、斜面を有することが好ましい。
【0011】
優位性のある態様において、めくら穴直径は、深さ方向で一定である。
【0012】
優位性のある態様において、めくら穴は基板に掘削される。めくら穴の深さTは、止め具を有するドリルによって予め定められることが好ましい。さらに、めくら穴の深さTは、深さ止めによって予め定められることが好ましい。
【0013】
優位性のある態様において、めくら穴は、深さ方向にT<10mmの深さTを有する。この深さはT<8mmであることが好ましく、T<6mmであるとさらに好ましい。
【0014】
優位性のある態様において、シャフトは直線状にめくら穴に打ち込まれる。このためにボルト打ち込み機(Bolzensetzgeraet)を使用することが好ましい。
【0015】
優位性のある態様において、基板の表面と深さ方向の打ち込み角度は少なくとも80°である。打ち込み角度は少なくとも85°であると好ましく、90°であると特に好ましい。
【0016】
優位性のある態様において、第1の材料は金属又は合金から成る。第1の材料は金属又は合金から成ることが特に好ましい。
【0017】
優位性のある態様において、基板材料は金属又は合金から成る。基板材料は金属又は合金から成ることが特に好ましい。
【0018】
本発明について、以下で図面を参照しながら実施例に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】留め付けシステムの断面図である。
図2】留め付け要素の部分図である。
図3】留め付け要素の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、基板材料から成る基板(被留め付け材)20と、留め付け要素30とを有する留め付けシステム10を示す。留め付け要素30は、埋め込み固定領域31と、埋め込み固定後に基板から突き出す接続領域32とを有する。埋め込み固定領域31は留め付け要素30を基板20に埋め込み固定させるように機能し、接続領域32は付属物(表示されていない)を留め付け要素30に接続するように機能する。この目的のため、接続領域32はねじ径dGが、例えば、8mm又は10mmの雄ねじ33を有する。逆に、埋め込み固定領域31はより小さな外径を有し、留め付け要素30は埋め込み固定領域31と接続領域32の間に止め肩34を有する。埋め込み固定領域31が基板20に埋め込まれ固定されたとき、止め肩34は、特に直接的又は場合により間接的にガスケット(表示されていない)により基板20の表面21に載置される。
【0021】
埋め込み固定領域31は、留め付け方向40を規定し、実質的にその留め付け方向40に向いた、端面径dを有する端面60と、その端面60に直に隣接する周面70とを有するシャフト50を備える。留め付け方向40に垂直なシャフト50の断面領域は円形で、円の直径は端面60を始点に留め付け方向40とは反対方向に一定して増加し、従って周面70は円錐台の形状を有する。この円錐台の円錐開口角度は6°であり、従って周面70の留め付け方向40に対する傾斜の角度は3°である。シャフト50の断面領域の直径は、端面径dから最大シャフト径dmaxへと増加する。端面径dは、例えば、4.3mm、4.9mm、又は5.0mm、最大シャフト径dmaxは、例えば、5.2mm、5.4mm、又は5.8mm、シャフト長Lはそれぞれ、例えば、6.7mm又は7.5mmである。
【0022】
埋め込み固定領域31と接続領域32とは、鋼鉄等の金属又は合金のような溶着可能な第1の材料から一体的に形成される。基板材料も、鋼鉄等の金属又は合金のような溶着可能な材料を含む。基板20は、特にその表面に塗布された被膜、例えば、腐食防止層を備え、この腐食防止層は鋼鉄等の金属又は合金のような溶着可能な材料をさらに含むことが好ましい。
【0023】
留め付け要素30を基板20に留め付けるために、深さ方向90を規定するめくら穴80が基板20に最初に掘削され、そのめくら穴80は深さ方向90に一定のめくら穴直径dと深さTとを有する。めくら穴直径d及び深さTは、ステップドリルによって予め定められることが好ましい。深さTは、例えば、6mmで、めくら穴直径dは好ましくは少なくとも端面径dより0.1mm、特に好ましくは少なくとも端面径dより0.2mm小さく、例えば、端面径dより0.2mm、0.25mm、又は0.3mm小さい。めくら穴直径dは端面径dの0.98倍未満であると好ましく、端面径dの0.96倍未満であると特に好ましい。その後、シャフト50は直線的にめくら穴80に、例えばボルト打ち込み機を使って打込まれる。基板20の表面21と深さ方向90との打ち込み角度は90°であり、留め付け方向40は深さ方向90と一致する。
【0024】
めくら穴直径dが端面径dより小さいことにより、めくら穴80に打ち込まれる際、シャフト50は基板材料の一部を深さ方向90で変位させる。結果として発生する熱により、削孔80でシャフト50は周面70で基板20に溶着される。留め付け方向40に対する周面70の傾きにより、めくら穴80におけるシャフト50のこの溶着及び/又は緊張が改善し、留め付け要素30の基板20に対する保持力は増加する。
【0025】
基板に対する留め付け要素の保持力の大きな増加が見られるのは、留め付け方向に対する周面の傾斜角が1°を超える場合である。傾斜角が6°を超えると、基板材料の変位に必要なエネルギーが溶着の際に大きく増加する。そのため、例えば、通常の打ち込みエネルギーである80ジュールで、留め付け方向に対する周面の傾斜角は、1°から6°であると効果的である。傾斜角は1.5°から5°であることが好ましく、2°から4°であれば特に好ましい。
【0026】
端面60は、シャフト50のめくら穴80への挿入を容易にするための周方向斜面として、その縁に引込み面取り61を備える。引込み面取り61の最小直径dminは、めくら穴直径dより小さいと都合がよい。引込み面取り61の円錐開口角度は60°から150°までであることが好ましく、75°から135°まで、例えば、90°又は120°であれば特に好ましい。
【0027】
図2は、留め付け要素230の部分図である。留め付け要素230は埋め込み固定領域231を備え、その埋め込み固定領域231は留め付け方向240を規定するシャフト250を有する。シャフト250は、実質的に留め付け方向240に向いた端面260と、端面260に直に隣接する周面270とを有する。周面270は複数の、特に正確には2つの円錐台の形状を有し、従って周面270は留め付け方向240で端面260を始点とする留め付け方向240とは反対方向に複数の異なる傾斜角を有する。これらの円錐台の開口角度は留め付け方向240とは反対方向に増加し、シャフト250は留め付け方向240とは反対方向により広がっている。因みに、留め付け要素230は、図1が示す留め付け要素30とほぼ同じである。
【0028】
図3は、留め付け要素330の部分図である。留め付け要素330は埋め込み固定領域331を備え、その埋め込み固定領域331は留め付け方向340を規定するシャフト350を有する。シャフト350は、実質的に留め付け方向340に向いた端面360と、端面360に直に隣接する周面370とを有する。周面370は留め付け方向340で端面360を始点として、留め付け方向340とは反対方向に徐々に増加する傾斜角を有し、シャフト350は留め付け方向340とは反対方向にトランペット状に広がる。因みに、留め付け要素330は、図1が示す留め付け要素30と実質的に同一である。
【0029】
表示されていない実施例において、シャフトは留め付け方向とは反対方向に徐々に広がり、周面は留め付け方向に段差を有する。
【0030】
本発明は、留め付け要素を基板に留め付ける方法に基づき記載した。記載された実施例の技術的特徴は、単一の留め付けシステム又は単一の方法において、互いに組み合わせることができる。本発明の方法が他の目的にも適していることは明記されるべきである。

図1
図2
図3