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特許7316229酸処理済肉エマルジョン由来のタンパク質製品及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】酸処理済肉エマルジョン由来のタンパク質製品及び方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/04 20060101AFI20230720BHJP
   A23B 4/037 20060101ALI20230720BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20230720BHJP
【FI】
A23J3/04 501
A23B4/037
A23L13/60 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019571022
(86)(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 US2018038061
(87)【国際公開番号】W WO2018236742
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】62/523,122
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・アール・アイメティス
(72)【発明者】
【氏名】ムファン・グオ
(72)【発明者】
【氏名】ソニア・ハン
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-179038(JP,A)
【文献】特表2001-514262(JP,A)
【文献】国際公開第2016/100299(WO,A1)
【文献】特表2006-518378(JP,A)
【文献】特開平02-005827(JP,A)
【文献】米国特許第4450183(US,A)
【文献】CUNNINGHAM F. E. et al.,POULTRY SCIENCE,1972年,POULTRY SCIENCE
【文献】KNIPE C. L. et al.,JOURNAL OF FOOD SCIENCE,1988年,v53, n5,pp.1305-1308
【文献】KNIPE C. L. et al.,JOURNAL OF FOOD SCIENCE,1985年,v50,pp.1017-1020
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 4/03
A23J 3/04
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥済機能性タンパク質製品を調製するためのプロセスであって、
肉を粉砕して、粒径5mm未満の粉砕肉を形成することと、
前記粉砕肉を水、食品グレードの酸組成物と混合して、2.0~5.3のpHを有する組成物を形成すること、
2.0~5.3のpHを有する組成物を食品グレードのアルカリ組成物および食品グレードの塩と混合して7.0~9.5の範囲のpHを有する機能性タンパク質ブラインを形成することと、
前記機能性タンパク質ブラインを乾燥させて、乾燥済機能性タンパク質製品を形成することと、
を含む、前記調製プロセス。
【請求項2】
前記乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、エマルジョン容量が、油200g/タンパク質1gを超える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、K-カラギーナンハイドロコロイド分離またはイオタ-カラギーナンハイドロコロイド分離またはグアーガムハイドロコロイド分離が見られない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記肉が家禽肉を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記肉が鶏肉及びシチメンチョウ肉から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、ゲル硬度が90g超である、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、発泡容量が、泡60ml/タンパク質1gを超える、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、剪断速度0.11/sで測定したときの粘度が3Pa・sを超える、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、剪断速度1.01/sで測定したときの粘度が0.3Pa・sを超える、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項10】
前記肉が牛肉である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、剪断速度0.11/sで測定したときの粘度が1Pa・sを超える、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、剪断速度1.01/sで測定したときの粘度が0.2Pa・sを超える、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、ゲル硬度が400g超である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
再構成された機能性タンパク質調合物を調製するためのプロセスであって、
請求項1、4、5及び10のいずれか1項に記載のプロセスにより製造される乾燥済機能性タンパク質製品を十分な水で再構成して、肉含有量が3wt%~35wt%である再構成された機能性タンパク質調合物を形成する、前記調製プロセス。
【請求項15】
請求項14に記載のプロセスで製造される、再構成された機能性タンパク質調合物を使用するプロセスであって、前記再構成された機能性タンパク質調合物を、飲料及びソースからなる群から選択される食品系に組み込むことを含む、前記プロセス。
【請求項16】
前記肉を家禽肉とした、請求項15に記載の再構成された機能性タンパク質調合物を使用するプロセスであって、前記再構成された機能性タンパク質調合物を、パン及び冷凍発泡デザートからなる群から選択される食品系に組み込むことを含む、前記プロセス。
【請求項17】
前記肉が鶏肉及びシチメンチョウ肉から選択される、請求項16に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉タンパク質製品、ならびにその製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の筋肉組織に由来する筋形質タンパク質と筋原線維タンパク質とを含むタンパク質懸濁液は、解凍または調理の対象とされる食物中の水分保持を改善するものであると主張されてきた。米国特許出願公開第2011/0244093号(Kelleher et al.に付与)を参照のこと。本出願は、動物の筋肉組織を粉砕し、次いで動物の筋肉タンパク質を可溶化する条件下にて食品等級のアルカリ組成物と混合することにより、動物筋肉タンパク質の溶液を形成し、動物筋肉組織由来の動物筋肉タンパク質組成物を得ることについて記載している。続いて、懸濁させた動物の基本的な筋肉組織を食品グレードのアルカリ組成物と混合し、可溶化動物筋肉タンパク質のpHを約4.7~約11.0、好ましくは約pH5.5~約9.5に低下させ、それによりタンパク質を析出させる。その後、析出されたタンパク質を粉砕して、水性媒体中に懸濁させたタンパク質微粒子を形成する。このようにして調製された本発明の組成物を、解凍及び/または調理の対象とされる食物中に添加することで、該食物の水分保持率が増強される。第[0010]段落を参照のこと。タンパク質を可溶化するためには、溶液のpHを約10.5以上とすべきことが、開示されている。第[0015]段落を参照のこと。
【0003】
タンパク質を単離するためのプロセスは、Hultin et al.に付与された米国特許第6,136,959号に記載されている。本プロセスでは、タンパク質を塩基で処理し、遠心分離させ、酸性化して食用タンパク質を析出させている。第1列、第24~35行を参照のこと。塩基で処理された後の溶液のpHは、約10.0を超過することが、開示されている。第3列、第25~28行を参照のこと。同様に、米国特許第7,556,835号は、タンパク質をアルカリ溶液中に可溶化し、混合物から可溶化タンパク質を析出させることにより、タンパク質を単離するためのプロセスを開示している。第1列、第58~67行を参照のこと。タンパク質の可溶化は、混合物のpHを約10.0以上に上昇させることによって達成されることが、開示されている。第2列、第47~50行を参照のこと。
【0004】
Hultin et al.に付与された米国特許出願公開第2010/0009048号(「Hultin’048」)には、調理済タンパク質食料品の保水力と柔軟性を向上させるためのプロセスが記載されている。Hultin’048の第[0017]段落において考察されているように、pH調整溶液で然るべく処理される食料品は、本溶液を注入するか、食料品を本溶液で混転させるか、または食料品を本溶液に浸漬させることによって然るべく処理される。したがって、処理対象とされる食料品は(みじん切り部分を含む)一部分であって、それ自体が動物の筋肉部分に添加される粉砕肉エマルジョンではない。Hultin’048は、pH調整溶液へのタンパク質単離物の組み込みについて開示している。例えば、第[0014]段落及び第[0015]段落を参照のこと。Hultin’048は、「タンパク質及びタンパク質単離物を調製するための方法は、当該技術分野において公知であり、例えば米国特許第6,005,073号、同第6,136,959号、同第6,288,216号、及び同第6,451,975号に見出すことができる。」と明確にしている。第[0050]段落を参照のこと。これらの参照先特許はいずれも、動物の筋肉からタンパク質を単離することについて考察している。
【0005】
米国特許第6,187,367号(Cho et al.に付与)には、粘度が低くゲル強度が高いタンパク質デンプン組成物が記載されている。本特許は、デンプン材料を糊化することなしに、タンパク質材料とデンプン材料とを複合化させる条件下にてデンプン及びタンパク質材料のスラリーを噴霧乾燥させることについて記載している。要約書を参照のこと。
【発明の概要】
【0006】
これまでに見出されてきたように、粉砕、酸及びアルカリでの処理を併用して処理し、次いで乾燥させた肉には、多様な食料品及び飲料への適用によって追加的なタンパク質の組み込みによって利益をもたらし得る新規な食物成分として用いるための優れた特性が見られ、そのようなタンパク質によって栄養上及び機能上の利益が得られるであろう。
【0007】
粒径5mm未満を有する粉砕肉を形成するために肉を粉砕することと、粉砕肉を水、食品グレードのアルカリ組成物、食品グレードの酸組成物、及び食品グレードの塩と混合して、pHが約4.0~約9.5の範囲内にある機能性タンパク質ブラインを形成することと、を含む、乾燥済機能性タンパク質製品を調製するためのプロセスが提供されている。混合を遂行し、本プロセス中のある時点で、肉のpHが約5.3未満に到達するように肉を酸に曝露させることによって、機能性タンパク質ブラインを形成する。結果として得られた機能性タンパク質ブラインを乾燥させて、乾燥済機能性タンパク質製品を形成する。一態様では、機能性タンパク質ブラインを、凍結乾燥プロセスによって乾燥させる。一態様では、機能性タンパク質ブラインを、噴霧乾燥プロセスによって乾燥させる。
【0008】
一態様では、このプロセスにより製造された乾燥済機能性タンパク質製品もまた提供されている。
【0009】
別の態様において、再構成された機能性タンパク質調合物を調製するためのプロセスは、本明細書に記載の乾燥済機能性タンパク質製品を、十分な水で再構成し、肉含有量(すなわち、タンパク質、脂肪その他を含めた肉の全ての固体成分)が再構成された機能性タンパク質調合物の総重量を基準にして約3wt%~約35wt%、または約5wt%~約25wt%、または約7wt%~約15wt%である再構成された機能性タンパク質調合物を形成することを含む。一態様において、上記の再構成された機能性タンパク質調合物のいずれかの肉は、家禽肉である。一態様において、上記の再構成された機能性タンパク質調合物のいずれかの肉は、鶏肉である。一態様において、上記の再構成された機能性タンパク質調合物のいずれかの肉は、牛肉である。
【0010】
別の態様において、本明細書中に記載の機能性タンパク質調合物を使用するプロセスは、前記再構成された機能性タンパク質調合物を、飲料及びソース(サラダドレッシングなど)からなる群から選択される食品系に組み込むことを含む。
【0011】
別の態様において、本明細書中に記載の機能性タンパク質調合物を使用するプロセスは、肉を家禽肉としたものである。本プロセスは、前記再構成された機能性タンパク質調合物を、パン及び冷凍発泡デザート(アイスクリーム、フローズンカスタード、フローズンヨーグルト、ソルベ、及びジェラートなど)からなる群から選択される食品系に組み込むことを含む。
【0012】
一態様では、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質の少なくとも約70重量%が可溶化されていることから、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質は、粉砕肉エマルジョン中の肉から単離されない。一態様では、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質の約30重量%以下が析出する。
【0013】
特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面(複数可)を含む本特許または特許出願公報のコピーは、要求に応じて及び必要な料金の支払いに応じて、オフィスによって提供される。
【0014】
本出願中に援用され、本出願の一部を構成する添付図面には、本発明のいくつかの態様が例証されており、実施形態の記述と共に、本発明の原理を説明するうえで有用である。図面の簡単な説明は、次に示すとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】未処理対照である鶏肉のエマルジョン容量値を、未乾燥組成物及び再構成された凍結乾燥済組成物の両方の、鶏肉の酸処理済試料と比較して示したグラフである。
図2】未処理対照である鶏肉及び牛肉の発泡能力特性を、未乾燥組成物及び再構成された凍結乾燥済組成物の両方の、鶏肉及び牛肉の酸処理済試料と比較して示したグラフである。
図3】未処理対照である鶏肉及び牛肉のゲル硬度特性を、鶏肉及び牛肉の酸処理済未乾燥試料と比較して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に記載されている本発明の態様は、本発明を、網羅的であること、または以下の詳細な説明に開示される正確な形態だけに限定することを意図するものではない。むしろ、選択及び記述された態様の目的は、例証または例挙によるものであり、それにより、本発明の一般原理及び実践の他の当業者による認識ならびに理解を促進できるようにすることである。
【0017】
本明細書中に記載のプロセスに使用される肉は、一態様において、任意の種に由来する多様な肉のいずれかであり得る。一態様において、好適な肉としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、鳥属の動物、魚類もしくは他の海鮮類、または食糧生産の目的によく屠殺される任意の動物から採取されたものが挙げられる。ウシ属の動物としては、限定されるものではないが、水牛のほか、去勢牛、未経産牛、乳牛及び雄牛をはじめとする全ての放牧牛を挙げることができる。ブタ属の動物としては、限定されるものではないが、飼育豚ならびに繁殖豚、例えば、雌豚、未経産雌豚、雄豚及びイノシシを挙げることができる。ヒツジ属の動物としては、限定されるものではないが、雄羊、ラム、ウェザー及び子羊をはじめとするヒツジを挙げることができる。家禽としては、限定されるものではないが、ニワトリ、シチメンチョウ及びダチョウを挙げることができる。一態様において、肉は牛肉、豚肉、シチメンチョウ肉または鶏肉である。好ましい態様において、肉には家禽肉が包含され、該肉は鶏肉とされている。
【0018】
一態様において、粉砕肉エマルジョンは、少なくとも約80%赤身、または少なくとも約85%赤身、または少なくとも約90%赤身、または少なくとも約95%赤身である。
【0019】
一態様において、筋原線維タンパク質は、粉砕肉エマルジョンの少なくとも約1.5重量%である。一態様において、筋原線維タンパク質は、粉砕肉エマルジョンの約1.5wt%~約10wt%である。一態様において、筋原線維タンパク質は、粉砕肉エマルジョンの少なくとも約1.5重量%~約10wt%である。
【0020】
一態様において、粉砕肉エマルジョンの肉は、周知の手順に従って、乳化に先立って、細断、粉砕、またはフレーキングによって粉砕される。一態様では、1つ以上の回転刃または1つ以上の往復刃を有する装置で、肉を微粒状に粉砕する。
【0021】
一態様では、肉を最初に粉砕せずにポーションサイズで提供し、食品グレードの酸組成物と混合して、pH約2.0~約5.3の組成物を形成する。この混合物の形成後、肉を、1つ以上の粉砕ステップで所望の最終粒径に粉砕し、食品グレードのアルカリ組成物と混合して、pH約4.0~約9.5の粉砕肉エマルジョンを形成する。
【0022】
一態様では、肉を粉砕し、中間粒径が所望の最終粒径より大きい粉砕肉を形成し、次いで、これを食品グレードの酸組成物と混合して、pH約2.0~約5.3の組成物を形成する。続いて、この組成物を食品グレードのアルカリ性組成物と混合し、pH約6.5~約9.5の混合物を形成する。この態様において、粉砕肉を食品グレードのアルカリ組成物と混合するステップは、1つ以上の更なる粉砕ステップで粒径を更に減じて、pH約6.5~約9.5の粉砕肉エマルジョンを形成するための、追加的な粉砕を含む。
【0023】
一態様では、粉砕肉を、1つ以上の粉砕工程で所望の最終粒径に粉砕してから、食品グレードの酸組成物と混合して、pH約2.0~約5.3の組成物を形成する。次いで、粉砕肉を、食品グレードのアルカリ組成物と混合し、pH約6.5~約9.5の粉砕肉エマルジョンを形成する。
【0024】
一態様では、肉を1つ以上の中間粉砕工程で粉砕し、平均粒径が最長寸法で約1mm~約10mm、最長寸法で約1~約5mm、または最長寸法で1mm~約3mmもしくは約1~約2mmの粉砕肉を形成する。
【0025】
一態様において、粉砕肉エマルジョンの粒子は、約3mm未満、または約2mm未満、または約1mm未満、または約0.5mm未満、または約0.1mm未満とされる。一態様では、粉砕肉エマルジョン粒子の平均粒径は、約0.1~約3mm、または約0.1~約3mm、または約0.1~約0.4mm、または約1~約3mmとされる。一態様において、粉砕肉エマルジョン粒子の最大粒径は、約1mm未満、または約0.5mm未満とされる。一態様において、粉砕肉は、1mmより大きい粒子を実質的に含まないものとされる。
【0026】
一態様において、食品グレードの酸組成物は、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、酒石酸、フマル酸、ギ酸及びそれらに類するものから選択される1つ以上の酸材料を含む酸組成物である。
【0027】
一態様において、食品グレードのアルカリ組成物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、もしくはそれらの混合物、またはそれらに類するものから選択される1つ以上のアルカリ材料を含む、アルカリ組成物である。一態様において、食品グレードのアルカリ組成物は、重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウム、またはそれらの混合物からなるアルカリ組成物である。一態様において、食品グレードのアルカリ組成物は、重炭酸ナトリウムからなるアルカリ組成物である。一態様において、食品グレードのアルカリ組成物は、重炭酸カリウムからなるアルカリ組成物である。一態様において、食品グレードのアルカリ組成物は、重炭酸カルシウムからなるアルカリ組成物である。一態様において、食品グレードのアルカリ組成物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムもしくはそれらの混合物からなる群から選択される対イオンを含む炭酸塩、重炭酸塩、または水酸化物組成物である。アルカリ組成物は、溶液または乾燥形態で提供される場合もある。
【0028】
一態様において、粉砕肉エマルジョンは、本プロセス中のある時点で、pH約2.0~約5.3になり、機能性タンパク質ブラインを形成する。
【0029】
一態様において、粉砕肉エマルジョンは、本プロセス中にpH約6.5~約9.5になり、機能性タンパク質ブラインを形成する。一態様において、粉砕肉エマルジョンは、本プロセス中にpH約7~約9になり、機能性タンパク質ブラインを形成する。一態様において、粉砕肉エマルジョンは、本プロセス中にpH約7.5~約8.5になり、機能性タンパク質ブラインを形成する。
【0030】
一態様において、粉砕肉エマルジョンは、本プロセス中に食卓塩含有量が約1%wt~約10%wtになり、機能性タンパク質ブラインを形成する。一態様において、粉砕肉エマルジョンは、本プロセス中に食卓塩含有量が約2%wt~約6%wt、または約3%wt~約5%wtになり、機能性タンパク質ブラインを形成する。一態様において、粉砕肉エマルジョンは、本プロセス中にイオン強度約0.2M~約4M priになり、機能性タンパク質ブラインを形成する。一態様において、粉砕肉エマルジョンは、本プロセス中にイオン強度約1M~約3Mになり、機能性タンパク質ブラインを形成する。本発明の目的に対応するように、食卓塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化マグネシウム、ならびにそれらの混合物から選択される塩とされる。食卓塩は、精製塩として提供される場合もあれば、または海塩もしくは他の天然塩のような技術的に不純な形態で提供される場合もある。一態様において、塩はヨウ素化塩である。これまでに見出されてきたように、粉砕肉エマルジョンの中でもとりわけ有利なのは、食卓塩を含むものである。なぜなら、塩は、特に筋肉の筋原線維タンパク質を可溶化及び機能性する一助となり、それにより、感覚刺激性の利点が更に提供されるような様式にて、保水能力及び結合特性を増強するからである。
【0031】
本発明の方法の全ての段階において粉砕肉エマルジョンのpH及びイオン強度を慎重に制御することによって、最終的な肉製品の特性が優良になる。そのような制御は、粉砕肉エマルジョン中に肉タンパク質が溶解性するのを促進するものであることが、見出されてきた。一態様では、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質の少なくとも約70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、または90重量%が可溶化されていることから、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質は、粉砕肉エマルジョン中の肉から単離されない。粉砕肉エマルジョン中に可溶化タンパク質をきわめて高い割合で提供すれば、保水特性が優良になることが、見出されてきた。理論に束縛されるものではないが、可溶性タンパク質は、水に対して大きな親和性を有すると同時に、食料品中のタンパク質、更にはエマルジョン及び/または食料品中の脂肪に対してさえも親和性を呈すると考えられている。一態様では、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質の約75重量%~約98重量%が、可溶化される。一態様では、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質の約80重量%~約95重量%が、析出する。一態様では、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質の約30重量%、25重量%、20重量%、15重量%または10重量%が、析出する。一態様では、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質の約30重量%~約2重量%が、析出する。一態様において、粉砕肉エマルジョン中の肉タンパク質の約25重量%~約5重量%が、析出する。理論に束縛されるものではないが、析出したタンパク質は、エマルジョン及び/または食料品中の水、他のタンパク質、脂肪、ならびに他の成分から自己単離すると考えられている。この自己単離は、析出したタンパク質と他の成分との相互作用を制限し、可溶化されたタンパク質と比較して製品利便を低下させてしまうものと考えられている。
【0032】
一態様において、粉砕肉エマルジョンは、ナトリウム不含(すなわち、粉砕肉エマルジョンのナトリウム含有量が約1ppm以下)とされる場合もある。更なる態様では、粉砕肉エマルジョンに、例えば、リン酸ナトリウムの形態のリン酸塩を含める場合もある。更なる態様では、粉砕肉エマルジョンは、リン酸塩不含(すなわち、粉砕肉エマルジョンのリン酸塩含有量が約1ppm以下)とされる場合もある。
【0033】
一態様において、粉砕肉エマルジョンの脂肪含有量は、60重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、または15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満とされる。
【0034】
一態様では、次いで、結果として得られた機能性タンパク質ブラインを乾燥させ、任意の適切な凍結乾燥技術により乾燥済機能性タンパク質製品を形成する。一態様では、機能性タンパク質ブラインを、24時間にわたって製品重量を安定させるための十分な時間、凍結乾燥条件下にある凍結乾燥チャンバー内に入れておく。このことは、凍結乾燥条件下に置くことで、試料からこれ以上水を除去できなくするという意味合いを持つ。一態様において、凍結乾燥条件は、試料を-20℃で12時間凍結してから、-50℃及び0.0030mbarの凍結乾燥機に入れることを含む。
【0035】
一態様では、次いで、結果として得られた機能性タンパク質ブラインを乾燥させ、任意の適切な噴霧乾燥技術により乾燥済機能性タンパク質製品を形成する。一態様では、機能性タンパク質ブラインをアトマイザーを介して圧力下の乾燥機に注入し、並流で熱風と共に乾燥機に霧化機能性タンパク質ブラインを通過させることによって、機能性タンパク質ブラインを乾燥させる。一態様において、アトマイザーはノズルアトマイザーである。一態様において、アトマイザーは回転式アトマイザーである。
【0036】
一態様では、乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、エマルジョン容量が、油200g/タンパク質1gを超える。
【0037】
本発明の目的に対応するように、「エマルジョン容量」とは、試料のリボン形成または視認可能な薄化のいずれかによって検出できるエマルジョンを破壊する前にフードプロセッサーで連続的に混合しながら1%タンパク質溶液に添加できる、油の量として定義される。
【0038】
一態様では、乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合に、K-カラギーナンハイドロコロイド分離またはイオタ-カラギーナンハイドロコロイド分離またはグアーガムハイドロコロイド分離が見られない。本発明の目的に対応するように、1重量%のタンパク質の溶液を、指示されたハイドロコロイドと共に0.10%w/wで混合物が均一になるまで室温にて混合し、4℃で12時間保持して、室温にて15分間3,000rpm(1409g)で遠心分離したときに、視認可能な相分離が観察できない場合には、乾燥済機能性タンパク質製品に、K-カラギーナンハイドロコロイド分離、またはイオタ-カラギーナンハイドロコロイド分離、またはグアーガムハイドロコロイド分離が見られない。
【0039】
一態様では、肉を家禽肉とした乾燥済機能性タンパク質製品に、デンプン及びガムの添加物が含まれていない場合には、ゲル硬度が90g超、またはゲル硬度が約90g~約300g、または約90g~約200gもしくは約90g~約150gとなる。一態様では、肉を鶏肉とした乾燥済機能性タンパク質製品に、デンプン及びガムの添加物が含まれていない場合には、ゲル硬度が90g超、またはゲル硬度が約90g~約300g、または約90g~約200gもしくは約90g~約150gとなる。
【0040】
一態様では、肉を家禽肉とした乾燥済機能性タンパク質製品に、デンプン及びガムの添加物が含まれていない場合には、発泡能力が、泡60ml/タンパク質1g超となる。一態様では、肉を鶏肉とした乾燥済機能性タンパク質製品に、デンプン及びガムの添加物が含まれていない場合には、発泡能力が60ml泡/タンパク質1g超となる。
【0041】
一態様では、肉を家禽肉とした乾燥済機能性タンパク質製品に、デンプン及びガムの添加物が含まれていない場合には、剪断速度0.11/sで測定したときの粘度が、3Pa・s超となる。一態様では、肉を鶏肉とした乾燥済機能性タンパク質製品に、デンプン及びガムの添加物が含まれていない場合には、剪断速度0.11/sで測定したときの粘度が、3Pa・s超となる。
【0042】
一態様では、肉を家禽肉とした乾燥済機能性タンパク質製品に、デンプン及びガムの添加物が含まれていない場合には、剪断速度1.01/sで測定したときの粘度が、0.3Pa・s超となる。一態様では、肉を鶏肉とした乾燥済機能性タンパク質製品に、デンプン及びガムの添加物が含まれていない場合には、剪断速度1.01/sで測定したときの粘度が、0.3Pa・s超となる。
【0043】
一態様では、肉を牛肉とした乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合には、剪断速度0.11/sで測定したときの粘度が、1Pa・s超となる。
【0044】
一態様では、肉を牛肉とした乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合には、剪断速度1.01/sで測定したときの粘度が、0.2Pa・s超となる。
【0045】
一態様において、肉を牛肉とした乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物を含めない場合には、ゲル硬度が400g超であるか、またはゲル硬度が約450g~約650g、または約500g~約550gである。
【0046】
一態様において、乾燥済機能性タンパク質製品としては、本明細書中に記載のいずれかのプロセスで製造されたものが提供される。一態様において、乾燥済機能性タンパク質製品にデンプン及びガムの添加物が含まれていない。
【0047】
別の態様において、再構成された機能性タンパク質調合物を調製するためのプロセスは、本明細書に記載の乾燥済機能性タンパク質製品を、肉含有量(すなわち、タンパク質、脂肪などを含む肉の全ての固体成分)が再構成された機能性タンパク質調合物の総重量を基準にして約3wt%~約35wt%、または約5wt%~約25wt%、または約7wt%~約15wt%である再構成された機能性タンパク質調合物を形成するのに十分な水で再構成することを含む。一態様において、指示された肉含有量の再構成された機能性タンパク質調合物は、剪断速度0.11/sで測定したときの粘度が1Pa・s超、または剪断速度0.11/sで測定したときの粘度が1Pa・s~500Pa・s、剪断速度0.11/sで測定したときの粘度が3Pa・s~200Pa・s、または剪断速度0.11/sで測定したときの粘度が3Pa・s~100Pa・sとなる。一態様において、指示された肉含有量の再構成された機能性タンパク質調合物は、剪断速度11/sで測定したときの粘度が0.3Pa・s超、または剪断速度11/sで測定したときの粘度が0.3Pa・s~500Pa・s、剪断速度11/sで測定したときの粘度が0.8Pa・s~200Pa・s、または剪断速度11/sで測定したときの粘度が0.8Pa・s~100Pa・sとなる。一態様において、上記の再構成された機能性タンパク質調合物のいずれかの肉は、家禽肉である。一態様において、上記の再構成された機能性タンパク質調合物のいずれかの肉は、鶏肉である。一態様において、上記の再構成された機能性タンパク質調合物のいずれかの肉は、牛肉である。
【0048】
一態様において、再構成された機能性タンパク質製品には、様々なオプションの添加剤が含まれることもある。好適な添加物の例としては、塩、合成抗酸化剤のほか、ローズマリーなどの天然抗酸化剤、及び抗菌剤(例えば、乳酸ナトリウムまたは乳酸カリウムなどの細菌阻害剤及び他の病原体阻害剤)が挙げられる。一態様において、粉砕肉エマルジョンには、USDAによって定義されている天然抗菌剤、例えば、酢、レモン汁、海塩、ならびにそれらのブレンド(例えば、MOstatin(商標)LV1Xmのような、World Technology Ingredients(Jefferson,GA)製の酢及びレモンジュースのあらゆる天然ブレンド)が包含される。抗菌剤によっては、MOstatin(商標)V(緩衝酢)のように、緩衝剤を使用したものもあれば、MOstatin(商標)VLS(低ナトリウム酢)のように、低ナトリウム用に調合されたものもある。これらの酢は、両方とも前出のWorld Technology Ingredients(Jefferson,GA)製である。
【0049】
一態様において、乾燥済機能性タンパク質製品は、前記乾燥済機能性タンパク質製品を、飲料及びソース(サラダドレッシングなど)からなる群から選択される食品系に組み込むことにより使用される。一態様において、飲料は、タンパク質を補充した牛乳もしくは乳製品、タンパク質を補充した豆乳、またはタンパク質を補充したスムージーもしくはシェイクなどのタンパク質強化飲料である。一態様において、乾燥済機能性タンパク質製品は、食品サプリメントの技術分野で公知の標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約20重量%の量で当該飲料に添加される。
【0050】
一態様において、再構成された機能性タンパク質は、前記再構成された機能性タンパク質調合物を、飲料及びソース(サラダドレッシングなど)からなる群から選択される食品系に組み込むことにより使用される。一態様において、飲料は、タンパク質を補充した牛乳もしくは乳製品、タンパク質を補充した豆乳、またはタンパク質を補充したスムージーもしくはシェイクなどのタンパク質強化飲料である。一態様において、再構成された機能性タンパク質製品は、食品サプリメントの技術分野で公知の標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約20重量%の量で当該飲料に添加される。
【0051】
一態様において、乾燥済機能性タンパク質製品は、肉を家禽肉とした前記再構成された機能性タンパク質調合物を、パン及び冷凍発泡デザートまたはゲル化デザート(アイスクリーム、フローズンカスタード、フローズンヨーグルト、ソルベ及びジェラートなど)からなる群から選択された食品系に組み込むことによって使用される。一態様において、家禽肉とされる肉は、鶏肉である。一態様において、乾燥済機能性タンパク質製品は、食品サプリメントの技術分野で公知の標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約5重量%の量でパンに添加される。一態様において、乾燥済機能性タンパク質製品は、食品サプリメントの技術分野で公知の標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約5重量%の量で冷凍発泡デザートまたはゲル化デザートに添加される。
【0052】
一態様において、再構成された機能性タンパク質は、肉を家禽肉とした前記再構成された機能性タンパク質調合物を、パン及び冷凍発泡デザートまたはゲル化デザート(アイスクリーム、フローズンカスタード、フローズンヨーグルト、ソルベ及びジェラートなど)からなる群から選択された食品系に組み込むことによって使用される。一態様において、家禽肉とされる肉は、鶏肉である。一態様において、再構成された機能性タンパク質製品は、食品サプリメントの技術分野で公知の標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約5重量%の量でパンに添加される。一態様において、再構成された機能性タンパク質製品は、食品サプリメントの技術分野で公知の標準的な添加プロセス技術を使用して、約0.1重量%~約5重量%の量で冷凍発泡デザートまたはゲル化デザートに添加される。
【0053】
一態様において、乾燥済機能性タンパク質製品は、食料品テクスチャー調整剤とされるハイドロコロイドテクスチャー調整剤の代替物として用いられる。一態様において、乾燥済機能性タンパク質製品は、食料品テクスチャー調整剤とされるハイドロコロイドテクスチャー調整剤の部分代替物として用いられる。一態様において、再構成された機能性タンパク質製品は、食料品テクスチャー調整剤として、ハイドロコロイドテクスチャー調整剤の代わりに使用される。一態様において、再構成された機能性タンパク質製品は、食料品テクスチャー調整剤として、ハイドロコロイドテクスチャー調整剤の部分代替物として用いられる。
【実施例
【0054】
試験プロトコル
エマルジョン容量
Cuisinart HandyPrep DFP-3フードプロセッサー、試料30g、及び赤く染色したダイズ油を使用して、エマルジョン試験を実施した。未乾燥対照試料を用いて実施された試験では、その対照試料30gを秤量してボウルに入れ、以下のようにして本方法を進行させた。乾燥済試料については、標準試験用に1重量%タンパク質水溶液を調製し、次いで、その溶液30gを秤量して、試験の実施に用いた。試料30gを秤量してフードプロセッサーボウルに入れた後、ミキサーを起動し、油を連続的に加えた。エマルジョンが破壊されて、試料のリボン形成または視認可能な薄化のいずれかによって検出できた時点で、プロセッサーを停止した。エマルジョン容量を、式1を使用して求めた。
【0055】
【数1】
【0056】
式中、ECはエマルジョン容量とし、Wは油を加えた後のフードプロセッサーボウル全体の最終重量とし、Wは油を加える前のフードプロセッサーボウル全体の開始時重量とし、Wは試料重量とし、Cは対照試料のタンパク質含有量とした。乾燥済試料については、W×Cを0.03gとする。
【0057】
発泡能力及び安定性
未乾燥対照、ならびに乾燥済鶏肉及び牛肉試料の発泡能力を、以下の発泡能力及び安定性試験を使用して試験した。試験は、対照試料及び乾燥済試料の両方に対して実施した。乾燥済試料については、標準試験用に1重量%タンパク質水溶液を調製し、試験に使用した。試料30mlを、1000mlのビーカーの中に注入した。ハンドミキサー(Sunbeam Mixmaster-FPSBHM1503)を使用して、ビーカーを45度の角度に保持しながら、試料を設定4(タコメーターで800rpmを読み取る)にて2分間かき混ぜた。2分後に、ビーカーの内容物全体を100mlのメスシリンダーに注入し、プラスチック製スパチュラを使用して、その全部を確実に移した。液体及び泡のレベルは、0分及び30分経過した時点で記録した。泡の容量及び安定性は、それぞれ式2及び式3を使用して計算した。
【0058】
【数2】
【0059】
【数3】
【0060】
式中、FCは発泡能力とし、FSは発泡安定性とし、Vは0分の時点で生じた泡体積とし、Vは30分経過した時点で残存した泡体積とし、Wは試料重量とし、Cは対照試料のタンパク質含有量とした。乾燥済試料については、W×Cを0.03gとした。
【0061】
ゲル化能力
対照、ならびに乾燥済鶏肉及び牛肉試料のゲル化能力は、ゲル硬度を試験することによって評価した。多くの食品系において、テクスチャー及び構造を構築し更には食感を向上させる目的で、ゲル化能力が不可欠とされる。対照試料25gを秤量し、50mlの遠心管に入れ、85℃で30分間加熱した。乾燥済試料については、標準試験用に7重量%タンパク質水溶液を調製し、その溶液25gを秤量し、50mlの遠心分離管に入れてから、85℃で30分間加熱した。その後、全ての試料を冷蔵庫の中で一晩冷却し、室温にてTexture Analyzer(TA HD plus)を使用して試験した。プローブとして使用されたのは、刃先が45°のナイフ(TA 42)であった。試験前の速度は5mm/s、試験速度は1mm/s、試験後の速度は3mm/s、距離は10mm、そしてトリガー力は5gであった。データは、「Hard and Sticky」マクロを使用して分析した。
【0062】
粘度測定
未乾燥対照とされた鶏肉及び牛肉の試料を、レオメーター(Anton Paar-MCR 502)にかけて、粘度を比較できるようにした。粘度は、様々な食料品テクスチャー及び食感を評価する際、ゲル化能力以外の、もう1つの重要なパラメーターとされる。乾燥済試料については、標準試験用に3重量%タンパク質溶液を調製する。試料を、カップ-ボブ(cup and bob)ジオメトリー(CC27-78234-3208)を使用して泳動させる。試料を7℃にて15秒の平衡化ステップで泳動させ、次いで、回転を0.01~10001/sまで増分させて、31ポイントのデータを、様々な時間間隔(最初の40秒から最後の10秒まで)で収集する。試験プロセス中には、牛肉対照、及び酸処理済試料が微粒子を生ずる。この現象に起因してデータ中に生ずるノイズの量を低減させる目的で、試料を微細ワイヤーメッシュ(1.18mmの開口部)に通し、既に存在する微粒子を除去する。
【0063】
ハイドロコロイド適合性
乾燥済試料については、標準試験用に1重量%タンパク質水溶液を調製し、3種類のハイドロコロイド(k-カラギーナン(Satiagel ME4 SB)、イオタカラギーナン(Satiagel SI A)、及びグアーガム(SAP 18785))を、この溶液と異なる比率(ハイドロコロイド濃度は、0、0.02、0.04、0.06、0.08、0.10%w/w)で、混合物が均質になるまで室温にて混合した。異なる濃度のハイドロコロイド(約10g)を含む調製済混合物を、15mlの遠心分離管に入れ、ハイドロコロイドの完全な水和を確保するために4℃で一晩保持した。続いて、Eppendorf 5702臨床遠心分離機を使用して、室温にて3,000rpm(1409g)で15分間遠心分離させたところ、相分離が視認可能に検出された。一態様では、上記の組成比のいずれにおいても、K-カラギーナンハイドロコロイド分離は観察されない。一態様では、上記の組成比のいずれにおいても、イオタ-カラギーナンハイドロコロイド分離は観察されない。一態様では、上記の組成比のいずれにおいても、グアーガムハイドロコロイド分離は観察されない。
【0064】
試料の調製
牛肉試料のUSDA Choiceまたはそれ以上のグレードについては、剥出された骨なし牛肉であるキャップオフ、トップラウンドマッスル(cap off top round muscles)を使用した。鶏肉の試料として、無骨の皮なし鶏胸肉を使用した。両方の肉を1/8インチ(約3.18mm)の粒子に粉砕してから、タンパク質溶液を作成した。
【0065】
粉砕肉及び水を高速ミキサーに加え、1分間混合/乳化している間に塩を加えて、対照試料を調製した。pH調整は全く行わなかった。
【0066】
酸処理済試料を作成する目的で、肉及び水を高速ミキサーに加えた。次いで、乳化しながら、クエン酸を使用してpHを3.8に調整した。続いて、塩を加え、炭酸ナトリウム溶液を使用してpHを7.5に調整した。
【0067】
試料はいずれも、液体の状態で受領され、受領の時点で-20℃にて貯蔵した。凍結に先立って、今後のサンプリングを簡便化する目的で、各試料から1リットルのアリコートを4つ作成した。これらの組成物の調合物を、表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
以降の機能分析に向けて、各試料の一部を乾燥させた。対照試料と乾燥済試料の両方を対象に、近似組成分析を実施した。結果を表2及び表3に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
図1に、鶏肉の未処理対照のエマルジョン容量値を、未乾燥及び再構成凍結乾燥済組成物の両方における鶏肉の酸処理済試料と比較して示す。見て分かるように、再構成された凍結乾燥済組成物が呈するエマルジョン容量特性は、凍結乾燥されたことのない試料と比較して、優良である。
【0073】
図2に、鶏肉及び牛肉の未処理対照の発泡能力特性を、未乾燥組成物及び再構成された凍結乾燥済組成物の両方の、鶏肉及び牛肉の酸処理済試料と比較して示す。見て分かるように、再構成された凍結乾燥済鶏肉の酸処理済組成物が呈する発泡能力特性は、凍結乾燥されたことのない鶏肉試料と比較して優良である。
【0074】
図3に、鶏肉及び牛肉の未処理対照のゲル硬度特性を、鶏肉及び牛肉(酸処理済)の未乾燥試料と比較して示す。見て分かるように、鶏肉及び牛肉の酸処理済未乾燥試料が呈するゲル硬度特性は、鶏肉及び牛肉の未処理対照と比較して優良である。
【0075】
本明細書中に用いられている「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定されるような、値の測定または算定方法、例えば試料調製及び測定系の制限に幾分かは依存する、指定された特定のパラメーターの許容範囲内に含まれることを意味する。このような制限の例としては、湿潤環境及び乾燥環境での試料の調製、様々な機器、試料高度のばらつき、ならびに信号対ノイズ比の多様な要件が挙げられる。例えば、「約」は、陳述された値の1/10で陳述された値もしくは値の範囲よりも大きいかまたは小さいことを意味するが、いずれかの値もしくは値の範囲を、このより広範な定義だけに限定することを意図するものではない。例えば、濃度値を約30%とした場合、27%~33%の濃度を意味する。また、「約」という用語が先頭に付加された各値または値の範囲は、陳述されている絶対値または値の範囲の態様を包含することも意図する。代替的に、特に生物学的な系またはプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。
【0076】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈上特に必要とされない限り、「comprise(含む)」という単語、ならびに「comprises(を含む)」及び「comprising(を含む)」などの変形は、陳述された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むことを意味するものと理解されるが、他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外するものではない。本明細書中に「consisting of(からなる)」が用いられている場合、要素、ステップまたは成分は、クレーム要素中に指定されているものでない限り、除外するものとする。本明細書中に「consisting essentially of(から本質的になる)」が用いられている場合、材料またはステップは、クレームの基本的な特性及び新規な特性に実質的に影響を与えるものでない限り、除外しないものとする。様々な態様の本開示において、態様の記述に使用されている用語「comprising(を含む)」、「consisting essentially of(から本質的になる)」及び「consisting of(からなる)」のいずれかは、他の2つの用語のいずれかに置き換えることが可能である。
【0077】
本明細書中に引用されている全ての特許、特許出願(仮出願を含む)、及び刊行物は、全ての目的に対応するように、あたかも個別に援用されているかのように参照により援用されている。別途指示のない限り、全ての部及びパーセントは重量基準とし、全ての分子量は重量平均分子量とする。前述の詳細な説明は、もっぱら理解を明確にすることを目的に提供されているものであって、不必要な制限を課すものと理解すべきではない。本発明は、図示及び記述されている正確な詳細だけに限定されるものではない。当業者にとって明白な変形形態は、特許請求の範囲により定義されている本発明の範囲内に包含される。
図1
図2
図3