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特許7316293ポリシロキサンを含むフラッディング組成物
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  • 特許-ポリシロキサンを含むフラッディング組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】ポリシロキサンを含むフラッディング組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 91/00 20060101AFI20230720BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20230720BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230720BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C08L91/00
C08L23/02
C08L83/04
G02B6/44 381
G02B6/44 366
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020549045
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019021994
(87)【国際公開番号】W WO2019190746
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】15/938,774
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】セブン、カール エム.
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】エッセギル、モハメド
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/022210(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/160315(WO,A1)
【文献】特表2016-522306(JP,A)
【文献】特表2001-501655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッディング組成物であって、前記組成物の重量に基づく重量パーセント(重量%)で、
(A)20重量%~40重量%のポリオレフィン成分であって、
(i)第1の非晶質ポリオレフィン(APO)、および
(ii)前記第1のAPOとは異なる第2のAPO、を含む、ポリオレフィン成分と、
(B)30重量%~60重量%のバイオ系油と、
(C)15重量%~45重量%のポリシロキサンと、を含む、フラッディング組成物。
【請求項2】
前記第1のAPOが、エチレン系ポリマーであり、前記第2のAPOが、プロピレン系ポリマーである、請求項1に記載のフラッディング組成物。
【請求項3】
前記第1のAPOと前記第2のAPOとの比が、前記ポリオレフィン成分の総重量に基づいて、3:1~1:3である、請求項2に記載のフラッディング組成物。
【請求項4】
前記バイオ系油が、大豆油、キャノーラ油、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のフラッディング組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサンが、ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のフラッディング組成物。
【請求項6】
前記フラッディング組成物が、ASTM D3236に従って測定したとき、150℃で200cP~1,800cPの見掛け粘度を有する、請求項1に記載のフラッディング組成物。
【請求項7】
ASTM D127に従って測定したとき、90℃以上の滴点を有する、請求項6に記載のフラッディング組成物。
【請求項8】
前記ポリシロキサンが、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンを含み、
前記フラッディング組成物が、触媒をさらに含む、請求項1に記載のフラッディング組成物。
【請求項9】
前記フラッディング組成物が、300cP~1800cPの見掛け粘度を有する、請求項8に記載のフラッディング組成物。
【請求項10】
光ファイバケーブルであって、
緩衝管と、
前記緩衝管内の少なくとも1本の光ファイバと、
請求項1~9のいずれか一項に記載のフラッディング組成物と、を含む、光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フラッディング組成物は、光ファイバーケーブルに一般的に使用される緩衝管の周囲および間に通常見られる空隙などの、通信ケーブル内の空隙を占めるように設計された材料である。さらに、フラッディング組成物は、緩衝管内で光学ファイバーを吊り、保護するための充填材料として使用することができる。フラッディング組成物は、高温(例えば、通信ケーブルを充填する際に使用される温度)で自由流動性であり、室温での垂れ落ちを回避するために低温で容易にゲル化する。さらに、容易な設置および環境汚染の防止のために、清浄が容易で汚れていないフラッディング組成物が望ましい。フラッディング化合物の技術において進歩がなされているが、改良が依然として望まれている。
【0002】
フラッディング組成物の別の重要な特性は、ポリオレフィンなどのケーブル構造で使用されるポリマー材料、すなわち良好な特性保持およびケーブル寿命のための低ゲルピックアップとの適合性である。現在の商業用フラッディング化合物は、合成炭化水素に基づいている。それらは接触している表面に粘着する汚れたグリース/ワックス様の物質である。こぼれた場合、それらは環境に優しいものではない。ワイヤおよびケーブル産業は、粘着性の低下、緩衝管、外皮などのケーブル部品の製造に使用される材料への吸収の減少、より環境にやさしいフラッディング組成物に継続的な関心を持っている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、フラッディング組成物を提供する。一実施形態では、フラッディング組成物は、組成物の重量に基づく重量パーセント(重量%)で、(i)第1の非晶質ポリオレフィン(APO)および(ii)第1のAPOとは異なる第2のAPOを含む(A)20重量%~40重量%のポリオレフィン成分を含む。フラッディング組成物はまた、(B)30重量%~60重量%のバイオ系油と、(C)15重量%~45重量%のポリシロキサンと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】ルース緩衝管光ファイバーケーブルの断面図である。
【0005】
定義
米国特許実務を目的として、いかなる参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供される任意の定義に矛盾しない範囲で)、およびこの技術分野における一般的知識に関して、参照によりこれらの全体が組み込まれる(または、その同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0006】
元素周期表への参照は、CRC Press,Inc.,1990-1991によって出版されたものへの参照である。この表における元素の族への参照は、族の番号付けの新しい表記法による。
【0007】
相反する記載がない限り、文脈から暗示的でない限り、または当該技術分野で慣習的でない限り、すべての部およびパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。
【0008】
本開示における数値範囲は、下限値から上限値(これらを含む)までのすべての値を含む。明確な数値(例えば、1もしくは2、または3~5、または6、または7)を含む範囲については、任意の2つの明確な数値間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6など)。
【0009】
「バイオ系流体」などの用語は、例えば植物、動物、細菌、酵母、藻類などの生物源に由来する流体である。バイオ系流体は、単一のバイオ系流体、すなわち単一の生物源に由来する流体、または2つ以上のバイオ系流体のブレンド、すなわち2つ以上の生物源に由来する流体を含むことができる。バイオ系流体は、周囲条件(23℃および大気圧)下で液体であるか、または周囲条件(23℃および大気圧)下でワックス様稠度を有し、加熱すると液体になる。
【0010】
「ケーブル」、「電力ケーブル」などの用語は、鎧装(例えば、絶縁被覆もしくは保護外皮)内の少なくとも1つのワイヤまたは光ファイバーを指す。典型的には、ケーブルは、典型的には共通の絶縁被覆および/または保護外皮内でともに結合された、2つ以上のワイヤまたは光ファイバーである。シースの内部の個々のワイヤまたはファイバーは、むき出しとすることができる、被覆することができる、または絶縁することができる。組み合わせケーブルは、電気ワイヤおよび光学ファイバーの両方を含有し得る。ケーブルは、低、中、および/または高電圧用途のために設計され得る。代表的なケーブル構造はUSP5,246,783、USP6,496,629、およびUSP6,714,707に開示されている。
【0011】
「組成物」などの用語は、2つ以上の成分の混合物またはブレンドである。
【0012】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、ステップ、または手順が、本明細書で具体的に開示されているかに関わらず、それらの存在を除外するよう意図されない。疑義を避けるために、「含む」という用語の使用を通じて主張されるすべての組成物は、そうでないと述べられていない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「本質的に~からなる」という用語は、操作性に不可欠ではないものを除き、以降の記述の範囲から任意の他の構成要素、工程、または手順を除外する。「からなる」という用語は、明確に描写またはリストされていない任意の構成要素、工程、または手順を除外する。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も含まれる。
【0013】
「エチレン系ポリマー」、「ポリエチレン」などの用語は、エチレンに由来する単位を含有するポリマーを指す。エチレン系ポリマーは、エチレンに由来する50モルパーセント(モル%)超を含有する。
【0014】
「オレフィン系ポリマー」またはポリオレフィンは、(重合性モノマーの総量に基づいて)大部分のモルパーセントの重合オレフィンモノマーを含有し、かつ任意に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定的例としては、エチレン系ポリマー、およびプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0015】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50モルパーセント超の重合プロピレンモノマーを含み、かつ任意に、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーである。
【0016】
「残留物」がモノマーを指す場合、ポリマー分子を作製するために別のモノマーまたはコモノマー分子と重合した結果、ポリマー分子中に存在するモノマー分子の部分を指す。
【0017】
「ワイヤ」などの用語は、導電性金属、例えば、銅もしくはアルミニウムの単一の撚線、または光ファイバーの単一の撚線を指す。
【0018】
試験方法
密度
密度は、ASTM D792に従って決定され、結果は立方センチメートル当たりのグラム(g/cc)で報告される。
【0019】
示差走査熱量測定(結晶化度、融点、結晶化温度)
示差走査熱量測定(「DSC」)は、ポリマー(例えば、エチレン系(PE)ポリマー)中の結晶化度を測定するために使用される。ポリマー試料約5~8mgが秤量され、DSCパン内に配置される。密閉された雰囲気を確保するためにパンに蓋を圧着する。試料パンをDSCセル内に配置し、次いで、およそ10℃/分の速度でポリエチレン(または、「PE」)に関しては180℃の温度(ポリプロピレンまたは「PP」に関しては230℃)まで加熱する。試料をこの温度で3分間保持する。次いで、試料は、10℃/分の速度で、PEについては-60℃(PPについては-40℃)に冷却され、その温度で3分間等温に保持される。次に、試料は、完全に溶融するまで10℃/分の速度で加熱される(第2の熱)。結晶化度パーセントは、第2の熱曲線から決定された融解熱(H)を、PEについては292J/g(PPについては165J/g)の理論融解熱で除算し、この量に100を乗算することによって計算される(例えば、結晶化度%=(H/292J/g)×100(PEについて))。
【0020】
別段記載がない限り、それぞれのポリマーの融点(複数可)(T)は、第2の熱曲線(ピークTm)から決定され、結晶化温度(T)は、第1の冷却曲線(ピークTc)から決定される。ガラス転移温度Tgは、Bernhard Wunderlich,The Basis of Thermal Analysis,in Thermal Characterization of Polymeric Materials 92,278-279(Edith A.Turi ed.,2d ed.1997)に記載のように、試料の半分で液体熱容量が増加したDSC加熱曲線から決定する。ガラス転移領域の下および上からベースラインを引き、Tg領域を通して外挿する。試料の熱容量がこれらのベースラインの中間となる温度が、Tgである。
【0021】
滴点
滴点は、ASTM D127に従って測定され、結果は摂氏度(℃)で報告される。
【0022】
引火点とは、揮発性液体が気化して、空気中で発火性の混合物を形成するが、燃焼し続けない最低温度を指す(燃焼点と比較する)。引火点は、ASTM D3278に従って測定され、結果は摂氏度(℃)で報告される。
【0023】
ゲル浸透クロマトグラフィー
ロボット支援送達(RAD)システムを備えた高温ゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)システムを、試料調製および試料注入に使用した。濃度検出器は、Polymer Char Inc.(Valencia,Spain)製の赤外線検出器(IR4)である。データ収集は、Polymer Char DM100データ取得ボックスを使用して実行される。担体溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼン(「TCB」)である。このシステムは、Agilent製のオンライン溶媒脱ガスデバイスを備えている。カラム区画は、150℃で作動する。カラムは、4つのMixed A LS 30cm、20ミクロンのカラムである。溶媒は、およそ200ppmの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(「BHT」)を含有する窒素パージしたTCBである。流量は1.0mL/分であり、注入体積は、200マイクロリットル(μL)である。穏やかに撹拌しながら、160℃で2.5時間、窒素パージし、予熱したTCB(200ppmのBHTを含有する)に試料を溶解することによって、2mg/mLの試料濃縮物を調製する。
【0024】
GPCカラムセットは、20の狭い分子量分布のポリスチレン(「PS])標準物を実行することによって較正する。標準物の分子量(「MW」)は、580~8,400,000g/モルの範囲であり、標準物は、6つの「カクテル」混合物に含有されている。各標準物質混合物は、少なくとも一桁は離れた個々の分子量を有する。各PS標準物の換算ポリプロピレン(「PP」)分子量は、以下の等式を使用することによって計算され、ポリプロピレン(Th.G.Scholte,N.L.J.Meijerink,H.M.Schoffeleers,and A.M.G.Brands,J.Appl.Polym.Sci.,29,3763-3782(1984))およびポリスチレン(E.P.Otocka,R.J.Roe,N.Y.Hellman,P.M.Muglia,Macromolecules,4,507(1971))についてのマーク・ホウィンク係数が報告されている。
【数1】
式中、Mppは、PP換算MWであり、MPSは、PS換算MWであり、log KならびにPPおよびPSのマーク・ホウィンク係数の値を以下に列挙する。
【表1】
【0025】
対数分子量較正は、溶出体積の関数として4次多項式回帰を使用して生成する。数平均および重量平均分子量は、次の等式に従って計算する。
【数2】
WfおよびMは、それぞれ溶出成分iの重量分率および分子量である。
【0026】
メルトインデックス
メルトインデックス、またはIは、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、10分ごとに溶出されるグラム(g/10分)で報告される。I10は、ASTM D1238、条件190℃/10kgに従って測定され、10分ごとに溶出されるグラム(g/10分)で報告される。
【0027】
メルトフローレート
ASTM D1238(230℃/2.16kg)に従ってg/10分でのメルトフローレート(MFR)を測定する。
【0028】
粘度
フラッディング組成物の見掛け粘度は、150℃でのASTM D3236に従って決定され、センチポアズ(cP)で報告される。動粘度は、見掛けの粘度を流体密度で除算することによって計算することができる。動粘度は、ストークス(St)またはセンチストークス(cSt)で報告される。
【0029】
ポリマー成分(すなわち、ポリオレフィンエラストマー)のブルックフィールド粘度は、使い捨てアルミニウム試料室でBrookfield Laboratories DVII+粘度計を用いて以下の手順に従って決定される。使用されるスピンドルは、10~100,000センチポアズ(0.1~1,000グラム/(cm.秒))の範囲の粘度を測定するのに適したSC-31ホットメルトスピンドルである。切断刃を用いて、幅1インチ、長さ5インチ(幅2.5cm、長さ13cm)の試料室に収まるのに十分に小さい切片に試料を切断する。この試料を室に入れ、これをBrookfield Thermoselに挿入し、折り曲げた針先ペンチで固定する。試料室は、Brookfield Thermoselの底部に適合するノッチを底部に有していて、スピンドルが挿入され、回転しているときに、室が回らないことを確実にする。試験する材料に基づいて、試料は、目標温度、典型的には150℃、または176℃、または176.6℃、または177℃、または190℃(他の温度も使用することができる)まで加熱され、追加の試料は、溶融した試料が試料チャンバの上部よりも約1インチ(2.5cm)下になるまで追加される。粘度計装置を下降させ、スピンドルを試料室に浸す。粘度計上のブラケットがThermosel上に整列するまで、下降を続ける。粘度計をオンにしてせん断速度に設定すると、30~60%の範囲でトルクが読み取られる。読み取り値は、約15分間毎分、または値が安定するまで取られ、最後の読み取り値が記録される。
【0030】
油分離
上記のように試料を混合した後、50ミリリットル(mL)の溶融した試料を浅いアルミニウムパンに注ぎ、試料を冷却して固化させる。室温で24時間放置した後、表面に油分離が見えるようになり、その結果を記録する。
【0031】
「流動点」とは、液体が半固体になり、その流動特性を失う最低温度、または言い換えれば、液体が流動する最小温度である。流動点は、ASTM D97に従って測定され、結果は摂氏度(℃)で報告される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、フラッディング組成物を提供する。一実施形態では、フラッディング組成物は、(A)20重量%~40重量%のポリオレフィン成分を含む。ポリオレフィン成分は、(i)第1の非晶質ポリオレフィン(APO)および(ii)第2の非晶質ポリオレフィン(APO)で構成される。第2のAPOは、第1のAPOとは異なる。フラッディング組成物はまた、(B)30重量%~60重量%のバイオ系油を含む。フラッディング組成物はまた、(C)15重量%~45重量%のポリシロキサンを含む。成分(A)、(B)、および(C)の総量は、フラッディング組成物の100重量%に達する。
【0033】
A.非晶質ポリオレフィン
本発明のフラッディング組成物は、(i)第1の非晶質ポリオレフィンおよび(ii)第2の非晶質ポリオレフィンで構成されるポリオレフィン成分を含む。「非晶質ポリオレフィン」(または「APO」)は、190℃で30センチポアズ(cP)~50,000cPの溶融粘度および-80℃~0℃のガラス転移温度(Tg)を有するエチレン系ポリマーまたはプロピレン系ポリマーである。
【0034】
第1のAPOは、第2のAPOとは異なる。言い換えれば、第1のAPOは、第2のAPOのそれぞれの化学的特性または物理的特性と比較して、1つ以上の化学的特性および/または1つ以上の物理的特性において異なる。第1のAPOと第2のAPOとの間で異なり得る特性の非限定的な例としては、組成、コモノマータイプ、コモノマー含有量、密度、溶融粘度、Tg、軟化点、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明の組成物は、フラッディング組成物の総重量に基づいて、20重量%~40重量%のポリオレフィン成分を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、20重量%、または25重量%、または30重量%~35重量%、または40重量%のポリオレフィン成分を含む。
【0036】
ポリオレフィン成分内では、第1のAPOと第2のAPOとの比は、ポリオレフィン成分の総重量に基づいて、3:1~1:3である。一実施形態では、第1のAPOと第2のAPOとの比は、3:1、または2:1、または1:1~1:2、または1:3である。
【0037】
一実施形態では、第1のAPOは、エチレン系ポリマーである。さらなる実施形態では、第1のAPOは、APOエチレン/オクテンコポリマーであり、以下の特性:
(i)0.86g/cc、もしくは0.87g/cc、もしくは0.875g/cc~0.89g/ccの密度、および/または
(ii)176.6℃で、5,000cP、もしくは6,000cP~6,700cP、10,000cP、もしくは13,000cP、もしくは15,000cP、もしくは17,000cP、もしくは19,000cP、もしくは20,000cPのブルックフィールド粘度、および/または
(iii)65℃、もしくは68℃~70℃、もしくは72℃のTm、および/または
(iv)-60℃、もしくは-58℃~-55℃、もしくは-50℃、もしくは-45℃のTg、および/または
(v)55℃、もしくは57℃~60℃のTc、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
【0038】
好適なAPOエチレン系ポリマーの非限定的な例としては、The Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINTY GA1875、AFFINITY GA1900、AFFINITY GA1950、およびAFFINITY GA1000Rが挙げられる。
【0039】
一実施形態では、第2のAPOは、プロピレン/エチレンコポリマーまたはプロピレンホモポリマーなどのプロピレン系ポリマーである。さらなる実施形態では、第2のAPOプロピレン系ポリマーは、以下の特性:
(i)190℃で、200cP、もしくは300cP、もしくは500cP、もしくは1,000cP~1,500cP、もしくは3,000cP、もしくは5,000cP、もしくは7,500cP、もしくは10,000cP~13,000cP、もしくは15,000cP、もしくは18,000cP、もしくは20,000cPのブルックフィールド粘度、および/または
(ii)120℃、もしくは125℃、もしくは130℃~135℃、もしくは140℃、もしくは145℃の環球式軟化点、および/または
(iii)-40℃、もしくは-35℃、もしくは-30℃~-25℃、もしくは-20℃、もしくは-15℃のTg、および/または
(iv)90℃、もしくは93℃~95℃のTc、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有するAPOプロピレン/エチレンコポリマーである。
【0040】
一実施形態では、第2のAPOは、APOプロピレンホモポリマーである。APOプロピレンホモポリマーは、以下の特性:
(i)190℃で、500cP、もしくは1,000cP、もしくは1,500cP~2,000cP、もしくは2,500cP、もしくは3,000cPのブルックフィールド粘度、および/または
(ii)150℃、もしくは155℃~160℃の環球式軟化点、および/または
(iii)-15℃、もしくは-10℃~-5℃のTg、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
【0041】
好適なプロピレン系APOの非限定的な例としては、Eastman Chemical Companyから入手可能なEASTOFLEX(商標)非晶質ポリオレフィンである。
【0042】
一実施形態では、第1のAPOはエチレン系APOであり、第2のAPOはプロピレン系APOである。
【0043】
一実施形態では、フラッディング組成物および/またはポリオレフィン成分には、ブテンがない、または、元から含まれていない。フラッディング組成物および/またはポリオレフィン成分には、例えば、ポリブテンおよび/もしくはポリイソブチレンがない、または、元から含まれていない。
【0044】
一実施形態では、フラッディング組成物および/またはポリオレフィン成分には、スチレンもしくはスチレン系部分を含有する組成物がない、または、元から含まれていない。フラッディング組成物および/またはポリオレフィン成分には、例えばスチレンブロックコポリマーがない、または、元から含まれていない。
【0045】
一実施形態では、ポリオレフィン成分は、(i)プロピレンモノマーおよび(ii)エチレンモノマーのみで構成されるか、あるいは、それ単独で構成される非晶質ポリオレフィンからなる。
【0046】
一実施形態では、ポリオレフィン成分(すなわち、第1のAPOおよび第2のAPO)は、フラッディング組成物中に存在する唯一のポリオレフィンである。言い換えれば、ポリオレフィン成分(2つの異なるAPOを含む)は、他のポリオレフィンを除いて、フラッディング組成物中に存在する。
【0047】
B.バイオ系流体
本発明のフラッディング組成物はまた、バイオ系流体(油とも称される)を含む。油は、植物油、石油系油、ポリα-オレフィン油、およびそれらの組み合わせであり得る。好適な植物油の非限定的な例としては、ココナッツ油、コーン油、綿実油、菜種油(そのうちキャノーラ油は1種類)、オリーブ油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、エポキシ化大豆油(ESO)、ひまわり油、からし油、藻油が挙げられる。
【0048】
一実施形態では、バイオ系流体は、大豆油である。大豆油は、以下の特性:
(i)40℃で、30cSt、もしくは32cSt~35cStの粘度(動粘度)、および/または
(ii)280℃、もしくは288℃~290℃の引火点、および/または
(iii)-16℃、もしくは-14℃~-12℃の流動点、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
【0049】
一実施形態では、大豆油は、エポキシ化大豆油(「ESO」)である。ESOは、以下の特性:
(i)0.930g/cc、もしくは0.933g/cc~0.94g/ccの密度、および/または
(ii)25℃で、4.0ストークス、もしくは4.2ストークス~4.5ストークスの粘度(動粘度)、および/または
(iii)800、もしくは1,000~1,200の分子数(Mn)、および/または
(iv)少なくとも7%のオキシラン酸素値、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
【0050】
一実施形態では、バイオ系流体は、キャノーラ油、大豆油(これは、ESOであってもなくてもよい)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0051】
一実施形態では、油は、石油系油である。好適な石油系油の非限定的な例としては、鉱油(例えば、パラフィン油、ナフテン油、および芳香油)ならびに低分子量ポリオレフィン油(例えば、ポリブテン油)が挙げられる。実施形態では、炭化水素油は、パラフィン油である。
【0052】
好適な市販の炭化水素油の非限定的な例としては、Sunoco Inc.(Pittsburgh,PA,USA)から入手可能な、40℃で、21.2cStの動粘度を有するSUNPAR(商標)110である。
【0053】
一実施形態では、油は、ポリα-オレフィン油である。「ポリα-オレフィン油」(「PAO油」)は、少なくとも1つのα-オレフィンを重合することによって産生される合成化合物であり、22℃および1気圧で液体である。αオレフィンは、C、C、C、C10、C1、C14、およびC20α-オレフィンなどの、本明細書に開示される任意のαオレフィンであってもよい。これらは、フラッディング組成物の分野で知られているPAO油である。PAO油の典型的な例としては、水素化dec-1-eneホモポリマー(例えば、INEOSから入手可能なDURASYN(商標)180IおよびDURASYN(商標)180R)ならびに1-ドデセンを有する水素化1-テトラデセンポリマー(例えば、INEOSから入手可能なDURASYN(商標)126)が挙げられる。
【0054】
C.ポリシロキサン
本発明の組成物は、ポリシロキサンを含む。本明細書で使用されるとき、「ポリシロキサン」は、2つ以上のSi-O-Si結合を有する有機ケイ素化合物である。ポリシロキサンは、(i)ポリジメチルシロキサン(または「PDMS」)、(ii)ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(または「PDMS-OH」)、および(iii)(i)と(ii)との組み合わせであってもよい。
【0055】
一実施形態では、ポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンであり、以後、同じ意味で「PDMS」と称される。ポリジメチルシロキサンは、以下の構造(1)を有する。
【化1】
式中、nは1、または2、または10、または100、または1,000~10,000、または50,000、または100,000である。
【0056】
一実施形態では、PDMSは、以下の特性:
(i)1,000、もしくは2,000、もしくは3,000、もしくは3,200~3,500、もしくは4,000、もしくは5,000、もしくは7,000、もしくは10,000の数平均分子量(Mn)、および/または
(ii)25℃で、20cSt、もしくは30cSt、もしくは40cSt、もしくは50cSt~60cSt、もしくは70cStの粘度(動粘度)、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
【0057】
Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定され、粘度は、USP5,130,041に記載のように、BROOKFIELD粘度計(モデルLVF、スピンドルNo.4、12回転/分(rpm)で)を使用して測定される。
【0058】
好適なPDMSの非限定的な例としては、Dow Corningから入手可能なPMX200が挙げられる。
【0059】
一実施形態では、本発明のフラッディング組成物は、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンを含む。「ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン」(または「PDMS-OH」)は、以下の構造式2に示すように、末端ヒドロキシル基を含むPDMSである。
【化2】
式中、nは1、または2、または10、または100、または1,000~10,000、または50,000、または100,000である。
【0060】
一実施形態では、PDMS-OHは、以下の特性:
(i)2,500、もしくは2,500~3,000、もしくは3,500、もしくは4,000の数平均分子量(Mn)、および/または
(ii)25℃で、50cSt、もしくは60cSt、もしくは70cSt、もしくは72cSt~80cSt、もしくは90cStの粘度(動粘度)、および/または
(iii)OH-PDMSの重量に基づく重量パーセント(重量%)で、0重量%超、もしくは0.01重量%、もしくは0.05重量%、もしくは0.07重量%、もしくは1.0重量%、もしくは1.5重量%~2.0重量%、2.5重量%のヒドロキシル基含有量、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定され、粘度は、USP5,130,041に記載のように、BROOKFIELD粘度計(モデルLVF、スピンドルNo.4、12回転/分(rpm)で)を使用して測定される。ヒドロキシル基の含有量は、Malaysian Polymer Journal,Vol.4,No.2,p 52-61,2009およびEuropean Polymer Journal,Vol.49,228-234(2013)で使用されている手法と同様に、H NMR分光法または他の分析技術によって測定される。
【0061】
好適なPDMS-OHの非限定的な例としては、Dow CorningからのPMX-0156、およびDow CorningからのQ3563が挙げられる。
【0062】
D.触媒
本発明のフラッディング組成物は、任意の触媒を含み得る。存在する場合、触媒は、シラノール縮合によってPDMS-OHを架橋する。特定の理論に束縛されるものではないが、架橋されたPDMS-OH成分は、最終的なフラッディング組成物の溶融粘度を高め、フラッディング組成物の安定性を改善し、滴点温度を高め、油分離を低減すると考えられている。
【0063】
触媒は、PDMS-OHを他の成分に添加する前に、PDMS-OHに添加されてもよい。あるいは、触媒およびPDMS-OHは、他の成分、すなわち-ポリオレフィン成分およびバイオ系油と同時に添加されてもよい。
【0064】
好適な触媒の非限定的な例としては、ジブチルスズジラウレート、オクタン酸第一スズ、酢酸第一スズ、ナフテン酸鉛およびオクタン酸亜鉛などのカルボン酸金属塩と、テトラブチルチタネートなどのチタンエステルおよびキレートなどの有機金属化合物、エチルアミン、ヘキシルアミン、ピペリジンなどの有機塩基と、鉱酸および脂肪酸などの酸と、芳香族スルホン酸と、が挙げられる。
【0065】
一実施形態では、触媒は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルジメトキシスズ、ジブチルスズビス(2,4-ペンタンジオネート)、またはオクタン酸第一スズなどの有機スズ化合物である。マスタバッチ形式の好適な市販の触媒の例としては、これらに限定されないが、The Dow Chemical CompanyからのDFDB 5480NT(スズ触媒系)、DFDA 5488NT(高速常温硬化触媒マスタバッチ)、またはBorealis AMBICAT(商標)システムLE4476が挙げられる。
【0066】
一実施形態では、触媒は、芳香族スルホン酸である。好適な芳香族スルホン酸の非限定的な例としては、Pilot Chemical Holdings,Inc.から入手可能なAristonic(登録商標)酸である。
【0067】
触媒が存在する場合、フラッディング組成物は、フラッディング組成物の総重量に基づいて、0.05重量%、または0.1重量%、または0.15重量%~0.2重量%、または0.25重量%、または0.3重量%の触媒を含有する。フラッディング組成物の硬化は、PDMS-OHを架橋し、それによりフラッディング組成物の粘度を高める。
【0068】
E.添加剤
一実施形態では、フラッディング組成物は、これらに限定されないが、酸化防止剤、レオロジー調整剤(例えば、チキソトロープ剤)、増粘剤、安定剤(例えば、UV安定剤)、鉱物充填剤、ポリマー充填剤、およびそれらの組み合わせなどから選択される1種以上の添加剤を任意に含み得る。
【0069】
酸化防止剤は、用いられる場合、フラッディング組成物の総重量に基づいて、0.01~1重量%、または0.01~0.3重量%の範囲の量などの任意の従来の量で存在することができる。好適な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、例えばテトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シンナメート)]メタン;ビス[(β-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、およびチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート;ホスファイトおよびホスホナイト、例えばトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトおよびジ-tert-ブチルフェニル-ホスホナイト;チオ化合物、例えばジチオラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、およびジステアリルチオジプロピオネート;様々なシロキサン;重合された2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、n、n’-ビス(1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチル-ベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、混合されたジアリール-p-フェニレンジアミン、および他のヒンダードアミン劣化防止剤または安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、酸化防止剤は、BASFからのIRGANOX(商標)1035またはIrganox1010として市販されている[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0070】
チキソトロープ剤は、用いられる場合、フラッディング組成物の総重量に基づいて、0超~5重量%、または6重量%の範囲の量などの任意の従来の量で存在し得る。好適なチキソトロープ剤の例としては、ヒュームドシリカが挙げられるが、これに限定されない。適切な市販のチキソトロープ剤としては、Evonik CorpからのAEROSIL(商標)製品が挙げられるが、これらに限定されない。BYK IndustriesおよびKusumoto Chemicalsはまた、適切な市販のチキソトロープ剤を供給する。
【0071】
増粘剤の非限定的な例としては、用いられる場合、SEP(S)、SBS、SEBSコポリマーなどのKraton(商標)ポリマーが挙げられる。
【0072】
充填剤の非限定的な例としては、用いられる場合、シリカ、炭酸カルシウム、およびそれらの組み合わせなどの無機充填剤が挙げられる。
【0073】
一実施形態では、フラッディング組成物は、チキソトロープ剤を含まないか、または実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、フラッディング組成物の総重量に基づいて、100万当たり10重量部未満の濃度を意味する。
【0074】
一実施形態では、フラッディング組成物は、1種以上の充填剤を含む。そのような充填剤としては、中空微小球(例えば、ガラスまたはポリマー)、鉱物無機化合物、ポリマー充填剤などが挙げられるが、これらに限定されない。用いられる場合、充填剤は、任意の従来の量、例えば0重量%超~60重量%までの範囲の量で存在し得る。
【0075】
F.フラッディング組成物
フラッディング組成物は、ポリオレフィン成分、バイオ系油、ポリシロキサン、および触媒(存在する場合)を配合することによって調製される。例えば、ポリオレフィン成分、バイオ系流体、およびポリシロキサン、ならびにいかなる任意の添加剤も、温度制御された液体操作ミキサー中で配合することができる。例えば、成分は、バッチまたは連続ミキサー中で配合することができる。適切なバッチミキサーとしては、Banbury(商標)、Silverson(商標)、Dynamix(商標)タンクミキサーおよび撹拌機、ならびにLittleford(商標)バッチミキサーが挙げられるが、これらに限定されない。連続ミキサーは、二軸および一軸押出機、Farrel(商標)ミキサー、およびBuss(商標)共混練機を含む。
【0076】
上述のポリオレフィン成分は、フラッディング成分の総重量に基づいて、20重量%、または25重量%、または30重量%~35重量%、または40重量%の範囲の量でフラッディング化合物中に存在する。前述のポリオレフィン成分の重量パーセント範囲内では、第1のAPOと第2のAPOとの比は、3:1~1:3である。APO比は、ポリオレフィン成分の総重量に基づいている。一実施形態では、第1のAPOと第2のAPOとの比は、3:1、または2.5:1、または2:1、または1.5:1、または1:1~1:1.5、または1:2、または1:2.5、または1:3である。
【0077】
上述のバイオ系流体は、フラッディング組成物の総重量に基づいて、30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%~50重量%、または55重量%、または60重量%の範囲の量でフラッディング組成物中に存在する。
【0078】
上述のポリシロキサンは、フラッディング組成物の総重量に基づいて、15重量%、または20重量%、または25重量%~30重量%、または35重量%、または40重量%の範囲の量でフラッディング組成物中に存在する。
【0079】
上述の触媒(存在する場合)は、フラッディング組成物の総重量に基づいて、触媒の0.05重量%、または0.1重量%~0.15重量%、または0.20重量%、または0.25重量%、0.3重量%の範囲の量でフラッディング組成物中に存在する。
【0080】
得られたフラッディング組成物は、ASTM D3236に従って150℃で測定されるとき、200cP、または300cP、または400cP、または500cP、または750cP、または900cP~1,000cP、または1,100cP、または1,200cP、または1,300cP、または1,400cP、または1,500cP、または1,600cP、または1,700cP、または1,800cPの見掛け粘度を有する。
【0081】
一実施形態では、フラッディング組成物は、90℃以上の滴点を有する。一実施形態では、フラッディング組成物は、90℃、または95℃、または100℃、または110℃、または120℃、または130℃~140℃、または150℃、または160℃、または170℃、または180℃の滴点を有する。滴点は、ASTM D127に従って決定される。
【0082】
一実施形態では、フラッディング組成物は、21℃で24時間老化させた場合、0.1未満、または0.05未満、または0.01未満の油分離を有する。さらなる実施形態では、フラッディング組成物は、21℃で24時間老化させた場合、0、または0超、0.01~0.05、または0.1未満の油分離を有する。またさらなる実施形態では、フラッディング組成物は、21℃で24時間老化させた場合、油分離を有しない(すなわち、0)。油分離は、ASTM D1742に従って決定される。
【0083】
一実施形態では、フラッディング組成物は、
(A)第1のAPOと第2のAPOとのブレンドで構成された20重量%~30重量%、または35重量%、または40重量%のポリオレフィン成分と、
(B)大豆油またはキャノーラ油から選択される30重量%、または40重量%~50重量%、または55重量%のバイオ系流体と、
(C)15重量%、20重量%、または25重量%~30重量%、または35重量%のPDMSと、を含有し、
成分(A)、(B)、および(C)の総量が、フラッディング組成物の100重量%に達し、フラッディング組成物は、以下の特性:
(i)(150℃で)200cP、もしくは250cP、もしくは500cP、もしくは750cP~1,000cP、もしくは1,250cP、もしくは1,300cP、もしくは1,350cPの見かけ粘度、および/または
(ii)90℃、もしくは100℃、もしくは110℃~120℃、もしくは130℃、もしくは140℃、もしくは150℃の滴点、および/または
(iii)21℃で24時間老化させた場合、0~0.01、もしくは0.1未満の油分離、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有し、以後、化合物1と称される。
【0084】
一実施形態では、化合物1のポリオレフィン成分は、APOエチレン系ポリマーである15重量%~20重量%の第1のAPOと、APOプロピレン系ポリマーである15重量%~20重量%の第2のAPOと、を含有し、重量パーセントは、化合物1の総重量に基づいている。さらなる実施形態では、APOエチレン系ポリマーとAPOプロピレン系ポリマーとの比は、ポリオレフィン成分の総重量に基づいて、1:1である。
【0085】
一実施形態では、フラッディング組成物は、
(A)第1のAPOと第2のAPOとのブレンドで構成された20重量%~30重量%、または35重量%、または40重量%のポリオレフィン成分と、
(B)大豆油またはキャノーラ油から選択される30重量%、または40重量%~50重量%、または55重量%のバイオ系流体と、
(C)30重量%、または35重量%~40重量%のPDMS-OHと、含有し、
成分(A)、(B)、および(C)の総量が、フラッディング組成物の100重量%に達し、フラッディング組成物は、以下の特性:
(i)(150℃で)400cP、もしくは450cP~475cP、もしくは500cPの見かけ粘度、および/または
(ii)90℃超、もしくは100℃超、もしくは110℃超~120℃、もしくは130℃、もしくは140℃、もしくは150℃の滴点、および/または
(iii)21℃で24時間老化させた場合、0~0.01、もしくは0.1未満の油分離、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有し、以後、化合物2と称される。
【0086】
一実施形態では、化合物2のポリオレフィン成分は、APOエチレン系ポリマーである15重量%~20重量%の第1のAPOと、APOプロピレン系ポリマーである15重量%~20重量%の第2のAPOと、を含有し、重量パーセントは、化合物2の総重量に基づいている。さらなる実施形態では、APOエチレン系ポリマーとAPOプロピレン系ポリマーとの比は、ポリオレフィン成分の総重量に基づいて、1:1である。
【0087】
一実施形態では、フラッディング組成物は、
(A)第1のAPOと第2のAPOとのブレンドで構成された20重量%~30重量%、または35重量%、または40重量%のポリオレフィン成分と、
(B)大豆油またはキャノーラ油から選択される20重量%、30重量%、または40重量%~50重量%、または55重量%のバイオ系流体と、
(C)30重量%、または35重量%~40重量%のPDMS-OHと、
(D)0.1重量%~0.15重量%、または0.2重量%の触媒と、を含有し、
成分(A)、(B)、(C)、および(D)の総量が、フラッディング組成物の100重量%に達し、
フラッディング組成物は、以下の特性、
(i)(150℃で)350cP、もしくは400cP、もしくは500cP~750cP、もしくは1,000cP、もしくは1,500cP、もしくは2,000cPの見かけ粘度、および/または
(ii)90℃、もしくは100℃、もしくは110℃~120℃、もしくは130℃、もしくは140℃、もしくは150℃、もしくは160℃、もしくは170℃の滴点、および/または
(iii)21℃で24時間老化させた場合、0~0.01、もしくは0.1未満の油分離、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有し、以後、化合物3と称される。
【0088】
一実施形態では、化合物3のポリオレフィン成分は、APOエチレン系ポリマーである15重量%~20重量%の第1のAPOと、APOプロピレン系ポリマーである15重量%~20重量%の第2のAPOと、を含有し、重量パーセントは、化合物3の総重量に基づいている。さらなる実施形態では、APOエチレン系ポリマーとAPOプロピレン系ポリマーとの比は、ポリオレフィン成分の総重量に基づいて、1:1である。
【0089】
一実施形態では、フラッディング組成物は、
(A)第1のAPOと第2のAPOとのブレンドで構成された20重量%~30重量%、または35重量%、または40重量%のポリオレフィン成分と、
(B)大豆油またはキャノーラ油から選択される20重量%、または30重量%~35重量%、または40重量%のバイオ系流体と、
(Ci)1重量%、または3重量%~5重量%、または7重量%のPDMS-OHと、
(Cii)20重量%、または25重量%~30重量%、または35重量%のPDMSと、
(D)0.1重量%~0.15重量%、または0.2重量%の触媒と、を含有し、
成分(A)、(B)、(C)、および(D)の総量が、フラッディング組成物の100重量%に達し、
フラッディング組成物は、以下の特性、
(i)(150℃で)700cP、もしくは750cP~800cPの見かけ粘度、および/または
(ii)90℃、もしくは100℃、もしくは110℃~120℃、もしくは130℃、もしくは140℃、もしくは150℃の滴点、および/または
(iii)21℃で24時間老化させた場合、0~0.01、もしくは0.1未満の油分離、のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有し、以後、化合物4と称される。
【0090】
一実施形態では、化合物4のポリオレフィン成分は、APOエチレン系ポリマーである15重量%~20重量%の第1のAPOと、APOプロピレン系ポリマーである15重量%~20重量%の第2のAPOと、を含有し、重量パーセントは、化合物4の総重量に基づいている。さらなる実施形態では、APOエチレン系ポリマーとAPOプロピレン系ポリマーとの比は、ポリオレフィン成分の総重量に基づいて、1:1である。
【0091】
G.光ファイバーケーブル
一実施形態では、少なくとも1本の光ファイバーと、複数の緩衝管と、上述のフラッディング組成物と、を含む、光ファイバーケーブル(光ファイバーとしても知られる)を調製することができる。
【0092】
一般的なルース緩衝管光学ファイバーケーブルの断面図を図1に示す。この光学ファイバーケーブル1の設計では、緩衝管2は、中心強度部材4の周りに放射状に配置され、軸方向長さで管に対して螺旋状に回転する。螺旋回転により、チューブまたは光ファイバー6を大幅に伸ばさずにケーブルを曲げることができる。
【0093】
減少した数の緩衝管が必要な場合、発泡充填剤ロッドを低コストのスペーサとして使用して、1つ以上の空の緩衝管位置10を占有して、ケーブル形状を維持することができる。ケーブル外皮14は、一般に、ポリエチレン系材料から製造することができる。
【0094】
上記のフラッディング組成物を使用して、緩衝管2内の光ファイバー6を囲む空隙8を充填することができる。さらに、フラッディング組成物を使用して、緩衝管2を包囲し、その間にあるが、ケーブル外皮14内の空隙を埋めることができる。フラッディング組成物は、空気溜まりを除去することを含む、ファイバーを取り囲む直近の環境で必要とされる吊りおよび保護を提供する。フラッディング組成物はまた、光透過性能に有害な水の浸透に対する障壁を提供する。
【0095】
他の多くのバッファチューブケーブルの設計が可能である。中心強度および引張部材のための構造のサイズおよび材料、緩衝管の寸法および数、ならびに金属製外装および多層の外皮材料の使用が設計要素の中にある。フラッディング組成物を組み込んだそのような設計は、本開示の範囲内で企図される。
【0096】
一実施形態では、緩衝管は、ポリプロピレンコポリマー(cPP)(例えば、Exxon Chemical Companyから入手可能な衝撃コポリマーであるESCORENE(商標)7132)から形成される。
【0097】
一実施形態では、ケーブル外皮は、高密度ポリエチレン(HDPE)(例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なDGDA-6318BK,0.954g/cmの密度を有する)から形成される。「高密度ポリエチレン」(または「HDPE」)は、少なくとも0.94g/cc、または少なくとも0.94g/cc~0.98g/ccの密度を有するエチレン系ポリマーである。HDPEは、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定して、0.1g/10分~25g/10分のメルトインデックスを有する。
【0098】
上記のような光ファイバーケーブルは、通常、一連の連続した製造ステップで作製することができる。光伝送ファイバーは通常、最初のステップで製造される。ファイバーは、機械的保護のためにポリマーコーティングを有することができる。これらのファイバーは、バンドルまたはリボンケーブル構成に組み立てられるか、ケーブル製作に直接組み込まれる。
【0099】
光学保護構成要素は、押出成形プロセスを使用して製造することができる。典型的に、単スクリュー可塑化押出機は、フラックスおよび混合ポリマーを圧力下でワイヤとケーブルのクロスヘッドに排出する。クロスヘッドは、溶融流を押出機に垂直に回転させ、溶融成分への流れを成形する。緩衝管およびコア管については、1つ以上の光ファイバーまたはファイバーアセンブリおよびフラッディング組成物が、クロスヘッドの背面に供給され、溶融管内のクロスヘッドを出て、水トラフシステムで冷却および固化される。この構成要素は、最終的に完成した構成要素として巻き取りリールに集められる。
【0100】
2つ以上の材料層から作製される構成要素を製造するために、典型的には、溶融組成物を多層クロスヘッドに供給する別々の可塑化押出機があり、そこで所望の多層構造に成形される。
【0101】
スロット付きコア部材および他の外形押出構成要素は、典型的には、適切な成形ダイを組み込んだ同様の外形押出成形プロセスで押し出され、次いで後に光学ファイバー構成要素と組み合わされて完成したケーブルが製造される。
【0102】
余分なファイバーの長さを制御するために、張力システムを使用して、ファイバー構成要素をチューブ製作プロセスに供給する。さらに、構成要素の材料選択、管押出およびクロスヘッド装置、ならびに加工条件は、押出後の収縮が光ファイバー構成要素に過度のたるみを生じさせないような完成部品を提供するように最適化される。
【0103】
押出された光学保護構成要素は、中央構成要素、装甲線、ラップなどの他の構成要素とともに、次いで後に1つ以上のステップで処理されて、完成したケーブル構成を産生する。これには典型的に、製作用押出機/クロスヘッドで構成要素を組み立てた後、ポリマージャケットを適用するために使用するケーブル配線での処理が含まれる。
【0104】
ここで、限定ではなく例として、本開示のいくつかの実施形態を、次の実施例で詳細に説明する。
【実施例
【0105】
比較試料(CS)および本発明の実施例(IE)で使用した材料を、下記の表1に提供する。
【表2】
【0106】
1.触媒を含まないフラッディング組成物
第1のAPOおよび第2のAPOを、3つのブレードのオーバーヘッドラボスターラーを装備したホットプレート上のスチール塗料缶内で加熱し、溶融する。第1のAPOおよび第2のAPOを、撹拌しながら160~170℃に加熱し、次いで100℃まで冷却させる。次いで、バイオ系油を、撹拌しながらポリシロキサンと共に混合物に添加する。次いで、混合物を、撹拌しながら180~190℃まで15分間加熱する。
【0107】
比較試料(CS)および本発明の実施例(IE)の特性を、下記の表2に示している。ただし、「CS13」、「CS14」、「CS16」、「CS17」、「CS18」、「CS19」及び「CS20」は実施例である。
【表1】
【0108】
2.触媒を含むフラッディング組成物
Aristonic酸触媒を、3つのブレード付きラボスターラーを使用して、室温で約5分間ポリシロキサン流体に混合して、反応前の均一な分配を保証する。
【0109】
第1のAPOおよび第2のAPOを、3つのブレードのオーバーヘッドラボスターラーを装備したホットプレート上のスチール塗料缶内で加熱し、溶融する。第1のAPOおよび第2のAPOを、撹拌しながら160~170℃に加熱し、次いで100℃まで冷却させる。次いで、バイオ系油を、撹拌しながらポリシロキサン流体/触媒混合物と共にと共に混合物に添加する。次いで、混合物を、撹拌しながら180~190℃まで15分間加熱する。
【0110】
比較試料(CS)および本発明の実施例(IE)の特性を、下記の表3に示している。ただし、「IE5」及び「IE6」は比較例である。
【表2】
【0111】
CS8およびCS9は、触媒がシラノール流体の粘度に及ぼす影響示す比較試料である。CS8およびCS9中にシラノール流体を含有する触媒を、まず室温で触媒をシラノール流体に混合し、次いで撹拌しながら180~190℃まで15分間加熱することによって作製する。
【0112】
CS1およびCS5は、70重量%のPMX200ポリジメチルシロキサンまたは70重量%のPDMS-OH油を大豆油なしで使用した場合、結果として、ポリマーから油が分離され、安定したゲルが形成されないことを示している。油分離はまた、5、10、および20重量%の大豆油を含有する試料でも発生する(試料CS2、CS3、CS4)。しかしながら、IE1中に35重量%の大豆油および35重量%のPDMSを使用すると、安定したゲルが形成される(すなわち、IE1中での油分離がない)。また、IE2で示すようなPMX-200PDMSの代わりに、PDMS-OH(PMX-0156)を35重量%の大豆油と組み合わせて35重量%で使用すると、安定したゲルを形成することができる(すなわち、IE2中での油分離がない)。IE5は、CS1およびCS5(油分離が観察された)と比較した場合に、触媒(aristonic酸)の添加によって、結果的に安定したゲル(油分離なし)に変化し得ることを示している。
【0113】
CS6はまた、CS4と同様のレベルの大豆油およびポリシロキサンでの油分離も示している。IE6は、IE6とCS6およびCS4とを比較した場合に、触媒(aristonic酸)の添加によって、結果的に安定したゲルに変化することを示している。IE2およびIE3のどちらも安定したゲルを形成するが、IE3の結果は、触媒を添加することによって滴点が改善されることを示している。
【0114】
IE4は、2つの異なるポリシロキサンの組み合わせを35重量%の大豆油と共に使用し、安定したゲルを生成することができることを示している。
【0115】
IE6およびIE7は、様々な範囲の大豆油およびPDMS-OHが安定したゲルを生成することができることを示している。70重量%の総ポリシロキサンを含むCS7は、CS1と同様の油分離結果を示している。最後の2つの試料CS8およびCS9は、試料CS9中の劇的な増加に見られるシラノール流体の粘度に触媒が及ぼす影響を示す比較例である。CS9の試料を、まず室温でポリシロキサン流体に触媒を混合し、次いで180~190℃まで加熱し、撹拌しながら15分間その温度を保つことによって作製する。
【0116】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の一部、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
図1