(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20230720BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20230720BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20230720BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230720BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/00
B05C13/02
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
(21)【出願番号】P 2021142953
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】柏野 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】大宅 宗明
(72)【発明者】
【氏名】高村 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】西岡 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】塩田 明仁
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-024571(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0072617(KR,A)
【文献】特開2002-001195(JP,A)
【文献】特開2006-224089(JP,A)
【文献】特開2006-167610(JP,A)
【文献】特開2020-032362(JP,A)
【文献】特開2018-043200(JP,A)
【文献】特開2021-045721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00- 7/26
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に処理液を塗布する基板処理装置であって、
スリット状の吐出口を有するスリットノズルと、
前記基板に対して前記スリットノズルを相対的に移動させる移動機構と、
前記移動機構により前記スリットノズルが前記基板に対して相対的に進行するノズル進行方向において前記スリットノズルの前方側に配置され、前記スリットノズルと一体的に移動するノズルガードと、
前記スリットノズルと前記ノズルガードを一体的に昇降させる昇降機構と、
前記スリットノズルによる前記処理液の塗布が開始される前に、前記昇降機構により下降する前記ノズルガードの先端が前記基板の表面側で上方に突出して前記処理液の塗布を阻害する突出物に衝突したことを検知する衝突検知部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記衝突検知部は、前記ノズルガードの先端が前記突出物に衝突したときに、前記ノズルガードおよび前記スリットノズルの少なくとも一方に印加される応力または上下方向への振動に基づいて前記ノズルガードの前記突出物への衝突を検知する基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記衝突検知部は、前記ノズルガードおよび前記スリットノズルの少なくとも一方に取り付けられて上方に印加される応力を検知するロードセルを有する基板処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記衝突検知部は、前記ノズルガードおよび前記スリットノズルの少なくとも一方に取り付けられて上下方向の振動を検知する振動センサを有する基板処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記ノズルガードの後端部を前記スリットノズルに対して支持するガード支持部を備え、
前記ノズルガードは、前記スリットノズルと一体的に下降している途中で前記ノズルガードの前記先端が前記突出物に衝突するのに応じて変位可能に前記ガード支持部に支持され、
前記衝突検知部は、前記ノズルガードの上方への変位に基づいて前記ノズルガードの前記突出物への衝突を検知する基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記ノズルガードは、上下方向においてスライド自在に前記ガード支持部に支持され、
前記衝突検知部は、前記ノズルガードの前記先端が前記突出物に衝突するのに応じて前記ノズルガードが上方に変位するのを検知する位置センサを有する基板処理装置。
【請求項7】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記ノズルガードは、前記後端部が前記ガード支持部に回転自在に軸支された軸支点を中心に、揺動自在に前記ガード支持部に支持され、
前記衝突検知部は、前記ノズルガードの前記先端が前記突出物に衝突するのに応じて前記ノズルガードが前記軸支点まわりに揺動した角度を検知する角度検知センサを有する基板処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
ステージ面に設けた気体孔を通る気体流により前記ステージ面上に形成した圧力気体層によって前記基板を浮上させる浮上部を備え、
前記スリットノズルは前記ステージ面の上方に配置され、
前記移動機構は、前記浮上部により前記ステージ面から浮上された前記基板を、前記スリットノズルおよび前記ノズルガードと前記ステージ面とで挟まれた塗布領域を通過するように移動させ、
前記衝突検知部は、前記塗布領域における前記基板の浮上量の変化に基づいて前記ノズルガードの前記突出物への衝突を検知する基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記衝突検知部は、前記浮上量を計測する浮上量計測部を有し、前記ノズルガードの前記先端が前記突出物に衝突するのに応じて前記浮上量計測部により計測される前記浮上量の変化を検知する基板処理装置。
【請求項10】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記衝突検知部は、前記気体流の圧力を計測する圧力計測部を有し、前記ノズルガードの前記先端の前記突出物への衝突に伴う前記浮上量の変化に対応する前記圧力計測部により計測される前記圧力の変化を検知する基板処理装置。
【請求項11】
スリットノズルの吐出口を基板の表面に近接させた状態で前記吐出口から処理液を吐出しながら前記基板に対して前記スリットノズルを相対的に移動させることで、前記基板の表面に前記処理液を塗布する基板処理方法であって、
前記スリットノズルによる前記処理液の塗布が開始される前に、前記スリットノズルが前記基板に対して相対的に進行するノズル進行方向において前記スリットノズルの前方側に配置された、ノズルガードと一体的に前記スリットノズルを下降させて前記吐出口を前記基板の表面に近接させる下降工程と、
前記下降工程において、前記ノズルガードの先端が前記基板の表面側で上方に突出して前記処理液の塗布を阻害する突出物に衝突したか否かを検知する衝突検知工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置や有機EL表示装置等のFPD用ガラス基板、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルター用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板等の精密電子装置用基板、半導体パッケージ用基板(以下、単に「基板」と称する)にスリットノズルから処理液を供給して塗布する基板処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スリット状の吐出口を有するスリットノズルを基板に対して相対移動させつつスリットノズルから処理液を吐出することで、基板に処理液を塗布する基板処理装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、ステージのステージ面で基板を保持したまま当該ステージ面の上方でスリットノズルを移動させて処理液を塗布する。一方、特許文献2に記載の装置では、ステージのステージ面の上方でスリットノズルを所定の塗布位置に位置させたまま、いわゆる浮上方式で基板を移動させる。より詳しくは、ステージ面に設けた気体孔を通る気体流によりステージ面上に形成した圧力気体層によって基板を浮上させながら当該基板をスリットノズルとステージ面とで挟まれた塗布領域を通過するように移動させて処理液を塗布する。このように基板の搬送方式が異なるものの、いずれの装置においても、ノズルガードが設けられている。これは、基板の表面側で上方に異物や隆起物などが突出していることがあるのを考慮したものである。すなわち、これらの突出物が存在したまま処理液の塗布を実行すると、スリットノズルが突出物に衝突することで、処理液の塗布が阻害される。つまり、上記衝突により、塗布した処理液やスリットノズルに悪影響が及ぶことがある。そこで、上記従来装置では、スリットノズルが基板に対して相対的に進行するノズル進行方向においてスリットノズルの前方側にノズルガードが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-102609号公報
【文献】特開2011-212544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記基板処理装置では、基板に対してスリットノズルを相対移動させて塗布処理を実行する前に、スリットノズルが基板から上方に離れた位置から塗布位置に下降して吐出口を基板の表面近傍に位置する。このとき、スリットノズルと一体的に昇降するノズルガードも、スリットノズルと一体的に下降し、ノズルガードの先端(下端)が基板の表面近傍に位置する。このノズルガードの直下位置に異物や隆起物などの突出物が存在すると、ノズルガードが突出物を上方から衝突して踏み付けることがある。
【0005】
しかしながら、従来技術では、上記踏み付けを検知することは考慮していない。つまり、突出物の存在を検知することができないケースがあり、突出物を踏み付けたままノズルガードがスリットノズルと一体的に基板に対して相対移動することがある。その結果、基板やスリットノズルに悪影響を与えることがある。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、スリットノズルと一体的に下降するノズルガードが突出物を踏み付けて基板への処理液の塗布に悪影響を及ぼすのを未然に防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、基板の表面に処理液を塗布する基板処理装置であって、スリット状の吐出口を有するスリットノズルと、
基板に対してスリットノズルを相対的に移動させる移動機構と、 移動機構によりスリットノズルが基板に対して相対的に進行するノズル進行方向においてスリットノズルの前方側に配置され、スリットノズルと一体的に移動するノズルガードと、
スリットノズルとノズルガードを一体的に昇降させる昇降機構と、スリットノズルによる処理液の塗布が開始される前に、 昇降機構により下降するノズルガードの先端が基板の表面側で上方に突出して処理液の塗布を阻害する突出物に衝突したことを検知する衝突検知部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の態様は、スリットノズルの吐出口を基板の表面に近接させた状態で吐出口から処理液を吐出しながら基板に対してスリットノズルを相対的に移動させることで、基板の表面に処理液を塗布する基板処理方法であって、スリットノズルによる処理の塗布が開始される前に、スリットノズルが基板に対して相対的に進行するノズル進行方向においてスリットノズルの前方側に配置された、ノズルガードと一体的にスリットノズルを下降させて吐出口を基板の表面に近接させる下降工程と、下降工程において、ノズルガードの先端が基板の表面側で上方に突出して処理液の塗布を阻害する突出物に衝突したか否かを検知する衝突検知工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、スリットノズルの下降中にノズルガードも一体的に下降する。ここで、ノズルガードの下方側に突出物が存在していると、ノズルガードの先端が突出物と衝突して踏み付けてしまう。本明細書でいうところの「突出物」とは、基板の表面に付着した異物や基板の一部が上方に隆起した隆起物などであり、これらをノズルガードが踏み付けたまま処理液の塗布を継続すると、処理液の塗布を阻害する要因となる物体を意味している。そこで、本発明では、上記下降中に、ノズルガードの先端が基板の表面側で上方に突出している突出物に衝突したことを検知可能に構成している。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、スリットノズルと一体的に下降するノズルガードが突出物を踏み付けて基板への処理液の塗布に悪影響を及ぼすのを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態である塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図2B】浮上部と塗布機構との関係を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図1に示す基板処理装置で採用されているスリットノズルおよびノズルガードの全体構成を示す斜視図である。
【
図4】スリットノズルおよびノズルガードを幅方向から見た側面図である。
【
図5】基板処理装置の従来技術の一例を示す図である。
【
図6】
図1に示す塗布装置により実行される塗布動作を示すフローチャートである。
【
図7】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態の部分拡大図である。
【
図8】本発明に係る基板処理装置の第3実施形態の部分拡大図である。
【
図9A】本発明に係る基板処理装置の第4実施形態の部分拡大図である。
【
図9B】本発明に係る基板処理装置の第4実施形態の部分拡大図である。
【
図10】本発明に係る基板処理装置の第5実施形態の部分拡大図である。
【
図11】本発明に係る基板処理装置の第6実施形態の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態である塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。この塗布装置1は、
図1の左手側から右手側に向けて水平姿勢で搬送される基板Sの表面Sfに塗布液を塗布するスリットコータである。例えば、ガラス基板や半導体基板等各種の基板Sの表面Sfに、レジスト膜の材料を含む塗布液、電極材料を含む塗布液等、各種の処理液を塗布し均一な塗布膜を形成する目的に、この塗布装置1を好適に利用することができる。
【0013】
なお、以下の各図において装置各部の配置関係を明確にするために、
図1に示すように右手系XYZ直交座標を設定する。基板Sの搬送方向を「X方向」とし、
図1の左手側から右手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「-X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向Yのうち、装置の正面側(図において手前側)を「-Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「+Y方向」と称する。さらに、鉛直方向Zにおける上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。
【0014】
まず
図1を用いてこの塗布装置1の構成および動作の概要を説明し、その後で本発明の技術的特徴を備える衝突検知部の構成および動作について説明する。塗布装置1では、基板Sの搬送方向Dt、つまり(+X方向)に沿って、入力コンベア100、入力移載部2、浮上部3、出力移載部4、出力コンベア110がこの順に近接して配置されており、以下に詳述するように、これらにより略水平方向に延びる基板Sの搬送経路が形成されている。
【0015】
処理対象である基板Sは
図1の左手側から入力コンベア100に搬入される。入力コンベア100は、コロコンベア101と、これを回転駆動する回転駆動機構102とを備えており、コロコンベア101の回転により基板Sは水平姿勢で下流側、つまり(+X)方向に搬送される。入力移載部2は、コロコンベア21と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構22とを備えている。コロコンベア21が回転することで、基板Sはさらに(+X)方向に搬送される。また、コロコンベア21が昇降することで基板Sの鉛直方向位置が変更される。このように構成された入力移載部2により、基板Sは入力コンベア100から浮上部3に移載される。
【0016】
図2Aは浮上部の平面図であり、
図2Bは浮上部と塗布機構との関係を模式的に示す側面図である。なお、これらの図面では、浮上部3を構成する3つのステージのうち中央浮上ステージ3Bの全部と、上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cの一部分とを模式的に示している。
【0017】
上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cは、ともに多数の空気の噴出孔31が1枚の板状のステージ面33の全面にわたってマトリックス状に分散して形成されている。そして、各噴出孔31に対して圧縮空気が与えられることで、各噴出孔31からの圧縮空気の噴出による気体流によって基板Sを浮上させる。これによって、上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cでは、基板Sは上記ステージ面33から所定の浮上高さ、例えば10~500マイクロメートルだけ浮上する。各噴出孔31に圧縮空気を供給するために、
図1および
図2Bに示すように、浮上制御機構35が設けられている。浮上制御機構35については、3つの浮上ステージ3A~3Cを説明した後で説明する。
【0018】
また、
図2Aおよび
図2Bへの図示を省略しているが、下流浮上ステージ3Cは上記噴出孔31以外に複数のリフトピンを有している。また、
図2Bに示すように、リフトピンを昇降させるために、リフトピン駆動機構34が設けられている。複数のリフトピンは噴出孔31の合間を縫って所定間隔をおいて、基板Sの裏面Sb全体に対向可能に設けられている。そして、リフトピンはステージ面33の下方に設置されたリフトピン駆動機構34によって、鉛直方向(Z軸方向)に昇降駆動される。つまり、下降時はリフトピンの先端が下流浮上ステージ3Cのステージ面33よりも(-Z)方向側に下降し、上昇時はリフトピンの先端が基板Sを移載ロボット(図示省略)に受け渡す位置まで上昇する。こうして上昇したリフトピンによって基板Sの下面は支持され、持ち上げられるので、基板Sは下流浮上ステージ3Cのステージ面33から上昇する。これによって、移載ロボットによる基板Sの塗布装置1からのアンローディングが可能となる。
【0019】
一方、中央浮上ステージ3Bは、次のように構成されて、上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cよりも高い浮上精度を有している。すなわち、中央浮上ステージ3Bは、矩形形状の板状のステージ面33を有している。このステージ面33には、上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cに設けられた噴出孔31よりも狭いピッチで複数の孔がマトリックス状に分散して設けられている。また、上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cと異なり、中央浮上ステージ3Bでは、孔のうち半分は圧縮空気の噴出孔34aとして機能し、残りの半分は吸引孔34bとして機能する。つまり、噴出孔34aから圧縮空気を基板Sの裏面Sbに向けて噴出してステージ面33と基板Sの裏面Sbとの間の空間SP(
図2B)に圧縮空気を送り込む。一方、吸引孔34bを介して空間SPから空気を吸引するように構成されている。このように上記空間SPに対して空気の噴出と吸引とが行われることで、上記空間SPでは各噴出孔34aから噴出された圧縮空気の気体流は水平方向に広がった後、当該噴出孔34aに隣接する吸引孔34bから吸引されることになり、上記空間SPに広がる空気層(圧力気体層)における圧力バランスは、より安定的となり、基板Sの浮上高さを高精度に、しかも安定して制御することができる。なお、各噴出孔34aへの圧縮空気の供給および吸引孔34bからの空気の吸引については、次に説明する浮上制御機構35が制御する。
【0020】
浮上制御機構35は、上記した3つの浮上ステージ3A~3Cにおける空気の供給流路と吸引流路とを有している。空気の供給流路は、
図2Bに示すように、コンプレッサなどの圧縮機構351で圧縮された空気が、温調ユニット352で所定の温度に達せられた後で、3つに分岐され、それぞれ浮上ステージ3A~3Cに供給される。温調ユニット352により空気が所定の温度に設定されるのは、外気温に関係なく空気を一定の温度状態に保つためである。分岐後の空気は、それぞれ上流空気供給部353A、中央空気供給部353Bおよび下流空気供給部353Cを経由して浮上ステージ3A~3Cに圧送される。これら3つの空気供給部353A~353Cは同一構成を有しているが、それぞれ個別に制御ユニット9により制御される。すなわち、空気供給部353A~353Cでは、フィルタ353aを通って清浄化され、ニードル弁353bで圧力を調節された後で流量計353c、圧力計353d、エアオペレーションバルブ353eを通過して噴出孔34aに圧送される。空気の供給の開始および停止は、エアオペレーションバルブ353eの開閉を制御ユニット9(
図1)からの指令信号によって行うことで実行される。各空気供給部353A~353Cでは、圧力計353dによって供給流路中の圧力を測定可能となっている。そして、圧力計353dの計測結果に基づいて制御ユニット9は圧縮空気の圧力制御を行う。
【0021】
また、浮上制御機構35では、吸引孔34bからの空気の吸引を行うために、空気吸引部354が設けられている。この空気吸引部354では、空気の吸引手段として、ブロワ354aが用いられており、駆動モータ(図示せず)がインバータ制御されている。中央浮上ステージ3Bのステージ面33に設けられた吸引孔34bからの吸引流路中には、圧力計354bが設置されており、吸引流路中の圧力を測定可能となっている。また、吸引流路中にはリリーフ弁354cが設置されている。これにより、ブロワ354aの回転によって得られる吸引圧力よりも吸引流路内の圧力が高い場合に、リリーフ弁354cから吸引流路内の空気を外部に放出することで、吸引流路内の圧力を一定に保つための微調整を行うことが可能となっている。
【0022】
図1に戻って説明を続ける。入力移載部2を介して浮上部3に搬入される基板Sは、コロコンベア21の回転により(+X)方向への推進力を付与されて、上流浮上ステージ3A上に搬送される。上流浮上ステージ3A、中央浮上ステージ3Bおよび下流浮上ステージ3Cは基板Sを浮上状態に支持するが、基板Sを水平方向に移動させる機能を有していない。浮上部3における基板Sの搬送は、上流浮上ステージ3A、中央浮上ステージ3Bおよび下流浮上ステージ3Cの下方に配置された基板搬送部5により行われる。
【0023】
基板搬送部5は、基板Sの下面周縁部に部分的に当接することで基板Sを下方から支持するチャック機構51と、チャック機構51上端の吸着部材に設けられた吸着パッド(図示省略)に負圧を与えて基板Sを吸着保持させる機能およびチャック機構51をX方向に往復走行させる機能を有する吸着・走行制御機構52とを備えている。チャック機構51が基板Sを保持した状態では、基板Sの裏面Sbは浮上部3の各ステージの表面よりも高い位置に位置している。したがって、基板Sは、チャック機構51により周縁部を吸着保持されつつ、浮上部3から付与される浮力により全体として水平姿勢を維持する。なお、チャック機構51により基板Sの裏面Sbを部分的に保持した段階で基板Sの表面の鉛直方向位置を検出するために板厚測定用のセンサ61がコロコンベア21の近傍に配置されている。このセンサ61の直下位置に基板Sを保持していない状態のチャック(図示省略)が位置することで、センサ61は吸着部材の表面、つまり吸着面の鉛直方向位置を検出可能となっている。
【0024】
入力移載部2から浮上部3に搬入された基板Sをチャック機構51が保持し、この状態でチャック機構51が(+X)方向に移動することで、基板Sが上流浮上ステージ3Aの上方から中央浮上ステージ3Bの上方を経由して下流浮上ステージ3Cの上方へ搬送される。搬送された基板Sは、下流浮上ステージ3Cの(+X)側に配置された出力移載部4に受け渡される。
【0025】
出力移載部4は、コロコンベア41と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構42とを備えている。コロコンベア41が回転することで、基板Sに(+X)方向への推進力が付与され、基板Sは搬送方向Dtに沿ってさらに搬送される。また、コロコンベア41が昇降することで基板Sの鉛直方向位置が変更される。出力移載部4により、基板Sは下流浮上ステージ3Cの上方から出力コンベア110に移載される。
【0026】
出力コンベア110は、コロコンベア111と、これを回転駆動する回転駆動機構112とを備えており、コロコンベア111の回転により基板Sはさらに(+X)方向に搬送され、最終的に塗布装置1外へと払い出される。なお、入力コンベア100および出力コンベア110は塗布装置1の構成の一部として設けられてもよいが、塗布装置1とは別体のものであってもよい。また例えば、塗布装置1の上流側に設けられる別ユニットの基板払い出し機構が入力コンベア100として用いられてもよい。また、塗布装置1の下流側に設けられる別ユニットの基板受け入れ機構が出力コンベア110として用いられてもよい。
【0027】
図3は、
図1に示す基板処理装置で採用されているスリットノズルおよびノズルガードの全体構成を示す斜視図である。
図4は、スリットノズルおよびノズルガードを幅方向から見た側面図である。上記のようにして搬送される基板Sの搬送経路上に、基板Sの表面Sfに塗布液を塗布するための塗布機構7が配置される。塗布機構7はスリットノズル71を有している。また、スリットノズル71には、
図1に示すように、ノズル駆動機構8が接続されており、ノズル駆動機構8によりスリットノズル71は中央浮上ステージ3Bの上方の塗布位置(
図1および
図4において実線で示される位置Pc)、塗布位置から上方に離れた上方位置(
図4中の1点鎖線で示される位置)やメンテナンス位置に位置決めされる。さらに、スリットノズル71には、図示を省略する塗布液供給機構が接続されており、塗布液供給機構から塗布液が供給され、ノズル下部に下向きに開口する吐出口711から塗布液が処理液として吐出される。
【0028】
このスリットノズル71は、その吐出口711がY方向に延設され、かつ、鉛直下方(-Z側)に向けて塗布液を吐出可能にノズル支持部(図示省略)によって支持される。ノズル支持部はノズル駆動機構8と接続されている。特に、スリットノズル71により塗布液を基板Sの表面Sfに供給する際には、スリットノズル71は、
図4中の1点鎖線で示すように、吐出口711が塗布位置Pcの上方位置に移動された後で、吐出口711と基板Sとの間隔(ギャップ)が所定値に達するまで下降する。これによって、スリットノズル71が塗布位置Pcに位置決めされる。その後で、当該位置決め状態のまま吐出口711から塗布液を基板Sの表面Sfに向けて吐出する一方、基板Sは(+X)方向に搬送される。つまり、スリットノズル71は、基板Sに対して相対的に(-X)方向に移動して塗布処理を実行する。つまり、本実施形態では、(-X)方向が本発明の「ノズル進行方向」に相当している。
【0029】
このように構成されたスリットノズル71に対して所定のメンテナンスを行うために、
図1に示すように、塗布機構7にはノズル洗浄待機ユニット79が設けられている。ノズル洗浄待機ユニット79は、主にローラ791、洗浄部792、ローラバット793などを有している。そして、スリットノズル71がメンテナンス位置に位置決めされた状態で、これらによってノズル洗浄や予備吐出処理を適宜、行い、スリットノズル71の吐出口を次の塗布処理に適した状態に整える。
【0030】
塗布処理中では、既述のように基板Sの表面側に存在する異物や隆起物などの突出物が基板搬送に伴って塗布位置Pcに移動してスリットノズル71に達すると、塗布済の塗布液やスリットノズル71に悪影響が及ぶことがある。そこで、スリットノズル71には、ノズルガード72が取り付けられている。
【0031】
ここで、ノズルガード72としては、例えば
図5に示すように、特許文献1に記載された装置に装備されたものを使用することができる。すなわち、ノズルガード72は、基板SのY方向のサイズよりも長い長尺状で非可撓性を有する非透明材料、例えば
金属、セラミックス等の突出物と接触しても破損しない程度の比較的堅い材質の部材で構成される。ノズルガード72は、
図5に示すように、スリットノズル71から(-X)方向に延びるガード支持部73により支持されている。より詳しくは、ノズルガード72が、Y方向に沿った支持軸74を中心にXZ平面において揺動可能に、当該支持軸74を介してガード支持部73に対して支持される。つまり、支持軸74が設けられた位置が本発明の「軸支点」に相としている。
【0032】
また、ノズルガード72の後端部、つまり支持軸74よりも上方部分はバネ75によって(-X)方向側へ付勢されるとともに、ノズルガード72の先端部、つまり支持軸74の下方部分はストッパ76によって(-X)方向側への回転が規制されている。これにより、ノズルガード72の先端は(-X)方向側(塗布処理中におけるスリットノズル71のノズル進行方向においてスリットノズル71の前方側)で(+X)方向にのみ回転が可能に構成されている。したがって、ノズルガード72と突出物PS2との非接触状態では、ノズルガード72はバネ75による付勢力により鉛直方向Zに沿った状態に保持される。その一方で、塗布処理中にノズルガード72と突出物PS2とが接触すると、ノズルガード72の先端が、バネ75による付勢力に逆らって(+X)方向側へ、スリットノズル71に対して相対的に回転移動する。それを回転検知センサ(図示省略)により上記回転移動を検出することで、突出物PS1がスリットノズル71に到達する前に、突出物PS1の存在を検知することができる。
【0033】
しかしながら、
図5中の点線で示すように、突出物PS2が塗布位置Pcまたはその近傍位置に存在すると、既述の問題が発生することがある。つまり、吐出口711と基板Sとの間隔(ギャップ)が所定値に達するまでスリットノズル71を下降させるとき、ノズルガード72も一緒に下降し、その先端が突出物PS2に対して上方から衝突して踏み付けることがある。しかしながら、
図5に示す従来構成では、上記踏み付けを検知することができない。
【0034】
そこで、本実施形態では、
図5に示す従来構成に対し、ノズルガード72にロードセルなどの応力検知センサ701が本発明の「衝突検知部」の一例として追加的に取り付けられている。より詳しくは、
図4に示すように、スリットノズル71下降と一体的に下降中のノズルガード72の先端が突出物PS2に衝突したときに、応力検知センサ701はノズルガード72に印加される応力を検知し、突出物PS2を踏み付けた旨の信号を制御ユニット9に出力する。また、塗布位置Pcから離れた位置に存在する突出物PS1(
図5)については、従前と同様にして、突出物PS1を検知した旨の信号が回転検知センサから制御ユニット9に出力する。
【0035】
上記のように構成された塗布装置1の各部を制御するために、制御ユニット9が設けられている。この制御ユニット9は、
図1に示すように、各種演算処理を行う演算部91(例えば、CPUなど)、基本プログラムおよび各種情報を記憶する記憶部92(例えば、ROMやRAMなど)をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインはさらに塗布プログラムなどの記憶を行う固定ディスク93(例えば、ハードディスクドライブなど)と、各種情報を表示する表示部94(例えばディスプレイなど)、操作者からの入力を受け付ける入力部95(例えば、キーボードおよびマウスなど)が接続されている。なお、例えば表示部94と入力部95との機能が一体となったタッチパネルディスプレイなどを用いても良い。さらに、図示を省略するインターフェイスを介して上記応力検知センサ701や回転検知センサなどから送られてくる信号を受け取り、制御ユニット9の演算部91が塗布プログラムにしたがって装置各部を制御し、以下の説明する塗布処理を実行する。
【0036】
図6は、
図1に示す塗布装置により実行される塗布動作を示すフローチャートである。この塗布装置1では、塗布処理に使用されるスリットノズル71をメンテナンス位置に移動させて予備吐出処理を実行する。また、浮上部3における圧縮空気の噴出および吸引を開始して、搬入される基板Sを浮上させることができるように準備する(ステップS1)。なお、予備吐出処理に先立ってスリットノズル71の洗浄処理が行われてもよい。
【0037】
次に、塗布装置1への基板Sの搬入を開始する(ステップS2)。上流側の別の処理ユニット、搬送ロボット等により処理対象となる基板Sが入力コンベア100に載せられ、コロコンベア101が回転することで基板Sが(+X)方向に搬送される。入力コンベア100と、コロコンベア21の上面が入力コンベア100のコロコンベア101と同じ高さ位置に位置決めされた入力移載部2とが協働することにより、基板Sは圧縮空気の噴出により基板Sに浮力を与える上流浮上ステージ3Aの上部まで搬送されてくる。基板Sが上流浮上ステージ3Aまで搬入されると、上流浮上ステージ3Aに設けられたリフトピンがリフトピン駆動機構34によりその上端が上流浮上ステージ3Aの上面よりも上方に突出する上方位置に位置決めされる。これにより、基板S、より具体的にはリフトピンが当接する基板SのY方向両端部が持ち上げられる。
【0038】
そして、チャック機構51が(-X)方向に移動し、基板S直下の搬送開始位置まで移動してくる(ステップS3)。これに続いて、基板Sがチャック機構51に移載される。それに続いて、チャック機構51が基板Sの周縁部を吸着保持し、その状態のまま(+X)方向に移動する。これによって、基板Sが塗布位置Pcまで搬送される(ステップS4)。また、これと並行してスリットノズル71の予備吐出位置から塗布位置Pcへの移動位置決めが行われる(ステップS5)。より具体的には、
図4中の1点鎖線で示すように、スリットノズル71はノズル駆動機構8により塗布位置Pcの上方位置に移動する(ステップS51)。それに続いて、スリットノズル71の下降が開始される(ステップS52)。そして、ステップS53でスリットノズル71と一体的に下降するノズルガード72による突出物PS2の踏付を監視しながら、スリットノズル71が塗布位置に到達していない間(ステップS54で「NO」)、ステップS53に戻ってスリットノズル71の下降が継続される。
【0039】
こうしたスリットノズル71の下降中に、ノズルガード72が突出物PS2に衝突したことが応力検知センサ701により検知されると、それに関連する信号が制御ユニット9に送られる。これを受けた制御ユニット9の演算部91は、ノズルガード72による突出物PS2の踏み付けが発生したと判断し(ステップS53で「YES」)、塗布処理をその時点において強制的に停止する(ステップS6)。すなわち、スリットノズル71からの塗布液の吐出、及び、基板Sの浮上搬送が停止される。さらに、警報として、制御ユニット9の表示部94に塗布位置の近傍で突出物PS2が検出されたことを示す警告画面が表示される(ステップS7)。
【0040】
一方、ステップS54で「YES」と判断された時点で、スリットノズル71は塗布位置に位置決めされる。しかも、位置決めされるまでの間、応力検知センサ701から衝突を示す信号が入力されておらず(ステップS53で「NO」)、これによって上記突出物PS2の踏付は発生していないことが確認される。つまり、ノズルガード72による突出物PS2の踏付を発生させることなく、スリットノズル71は適正に塗布位置に位置決めされている。そこで、塗布動作を開始する(ステップS8)。すなわち、スリットノズル71の吐出口711から吐出される塗布液が基板Sの表面Sfに着液する。また、チャック機構51が基板Sをノズルガード72およびスリットノズル71とステージ面33とで挟まれた塗布領域を通過するように定速で搬送することにより、スリットノズル71が基板Sの表面Sfに塗布液を塗布する塗布動作が実行され、基板Sの表面Sfには塗布液による一定厚さの塗布膜が形成される。なお、こうして塗布動作を実行している間に、回転検知センサが突出物PS1を検知すると、応力検知センサ701により突出物PS2が検知されたときと同様に、塗布処理が強制的に停止される。そして、スリットノズル71からの塗布液の吐出停止、基板Sの浮上搬送の停止および警告画面の表示が実行される。
【0041】
塗布動作は、塗布を終了させるべき終了位置に基板Sが搬送されるまで継続される(ステップS9)。基板Sが終了位置に到達すると(ステップS8において「YES」)、スリットノズル71は塗布位置から離脱してメンテナンス位置に戻され、再び予備吐出処理が実行される。また、基板Sの下流側端部が出力移載部4上に位置する搬送終了位置にチャック機構51が到達する時点で、チャック機構51の移動は停止され、吸着保持が解除される。そして、下流浮上ステージ3Cおよび出力移載部4を介して基板Sは(+X)方向に搬出され(ステップS10)、最終的に下流側ユニットに払い出される。処理すべき次の基板がある場合(ステップS11で「YES」)には上記と同様の処理を繰り返し、なければ(ステップS11で「NO」)処理を終了する。
【0042】
以上のように、第1実施形態によれば、ノズルガード72の設置により突出物PS1を検知するだけでなく、塗布動作の開始時点で塗布位置Pcやその近傍に存在する突出物PS2を確実に検知することができる。このため、突出物PS2を踏み付けて基板Sへの塗布液(処理液)の塗布に悪影響を及ぼすのを未然に防止することができる。つまり、突出物PS2の検知時点で塗布処理を強制的に停止することができ、ノズルガード72が踏み付けた突出物PS2を引きずったまま塗布動作が継続されることで突出物PS2により基板Sへの塗布液の塗布が阻害されるのを確実に防止することができる。
【0043】
また、第1実施形態によれば、ノズルガード72の下降先に存在している突出物PS2、および当該下降先よりも(-X)方向側に存在する突出物PS1の両方を確実に検知することができ、従来技術よりも高い精度で突出物による塗布処理への悪影響を未然に防止することができる。
【0044】
上記した第1実施形態では、吸着・走行制御機構52が本発明の「移動機構」の一例に相当している。(-X)方向側が本発明の「スリットノズルの前方側」に相当している。ノズル駆動機構8が本発明の「昇降機構」の一例に相当している。応力検知センサ701が「衝突検知部」の一例に相当している。ステップS52、S53がそれぞれ本発明の「下降工程」および「衝突検知工程」の一例に相当している。
【0045】
なお、第1実施形態では、ノズルガード72に作用する応力を応力検知センサ701によって直接的に検知しているが、応力検知センサ701の取り付け位置はこれに限定されるものではない。つまり、ノズルガード72が突出物PS2を踏み付けた際に発生する応力はガード支持部73やスリットノズル71に伝播する。したがって、応力検知センサ701をガード支持部73やスリットノズル71に取り付け、上記応力を間接的に検知してもよい。
【0046】
<第2実施形態>
ノズルガード72が突出物PS2を踏み付けた際の衝撃によって、ノズルガード72、ガード支持部73およびスリットノズル71は一体的に上下方向Zに振動する。そこで、応力検知センサ701の代わりに、上下振動を検知する振動センサをノズルガード72、ガード支持部73およびスリットノズル71のいずれかに取り付けてもよい。
【0047】
図7は、本発明に係る基板処理装置の第2実施形態の部分拡大図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、応力検知センサ701の代わりに、振動センサ702がスリットノズル71に取り付けられている点である。その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0048】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、スリットノズル71の予備吐出位置から塗布位置Pcへの移動位置決めは、2段階で行われる。つまり、スリットノズル71はノズル駆動機構8により塗布位置Pcの上方位置に移動する(ステップS51)。それに続いて、スリットノズル71がノズルガード72と一体的に下降する(ステップS52)。この下降中、仮にノズルガード72が突出物PS2に衝突すると、それに起因してスリットノズル71が上下方向Zに振動する。当該振動を振動センサ702が検知し、それに関連する信号が制御ユニット9に送られる。これを受けた制御ユニット9の演算部91は、ノズルガード72による突出物PS2の踏み付けが発生したと判断し(ステップS53で「YES」)、塗布処理をその時点において強制的に停止する(ステップS6)。
【0049】
このように第2実施形態では、振動センサ702が本発明の「衝突検知部」の一例に相当しており、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。つまり、振動センサ702による上下振動を検知することで、突出物PS2を踏み付けて基板Sへの塗布液(処理液)の塗布に悪影響を及ぼすのを未然に防止することができる。その結果、ノズルガード72が踏み付けた突出物PS2を引きずったまま塗布動作が継続されることで突出物PS2により基板Sへの塗布液の塗布が阻害されるのを確実に防止することができる。
【0050】
なお、第2実施形態では、応力検知センサ701の代わりに振動センサ702を設けているが、これら2種類のセンサを併用してもよい。
【0051】
<第3実施形態>
図8は、本発明に係る基板処理装置の第3実施形態の部分拡大図である。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、応力検知センサ701により衝撃を検知する代わりに、衝撃に伴うノズルガード72の上下移動を検知するように構成している点である。つまり、第3実施形態では、ノズルガード72が上下方向Zに延設された長孔721に沿ってスライド自在にガード支持部73に取り付けられている。また、上下方向Zにおけるノズルガード72の変位量を検知する位置センサ703が設けられている。その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0052】
第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、スリットノズル71の予備吐出位置から塗布位置Pcへの移動位置決めは、2段階で行われる。つまり、スリットノズル71はノズル駆動機構8により塗布位置Pcの上方位置に移動する(ステップS51)。それに続いて、スリットノズル71がノズルガード72と一体的に下降する(ステップS52)。この下降中、仮にノズルガード72が突出物PS2に衝突して下降動作が規制される。そのため、上下方向Zにおけるスリットノズル71に対するノズルガード72の相対位置が変位し、その変位量に対応する信号が位置センサ703から制御ユニット9に送られる。これを受けた制御ユニット9の演算部91は、ノズルガード72による突出物PS2の踏み付けが発生したと判断し(ステップS53で「YES」)、塗布処理をその時点において強制的に停止する(ステップS6)。
【0053】
このように第3実施形態では、位置センサ703が本発明の「衝突検知部」の一例に相当しており、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。つまり、位置センサ703によるスリットノズル71に対するノズルガード72の相対位置の変位を検知することで、突出物PS2を踏み付けて基板Sへの塗布液(処理液)の塗布に悪影響を及ぼすのを未然に防止することができる。その結果、ノズルガード72が踏み付けた突出物PS2を引きずったまま塗布動作が継続されることで突出物PS2により基板Sへの塗布液の塗布が阻害されるのを確実に防止することができる。
【0054】
<第4実施形態>
図9Aおよび
図9Bは、本発明に係る基板処理装置の第4実施形態の部分拡大図である。この第4実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、ノズルガード72が予め傾いた状態でガード支持部73に取り付けられている点と、応力検知センサ701の代わりにノズルガード72の回転量を検知するロータリーエンコーダなどの角度検知センサ704が設けられている点と、である。その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0055】
第4実施形態では、ノズルガード72の先端が支持軸74(軸支点)よりも(+X)方向側に位置しながら角度θaだけ傾いた傾斜姿勢でノズルガード72の後端部、つまり支持軸74よりも上方部分はバネ75によって(+Z)方向側へ付勢されるとともに、ストッパ76によって(+X)方向側への回転が規制されている。これにより、
図9Aに示すように、スリットノズル71は、塗布位置Pcの上方位置に位置している際には、ノズルガード72は角度θaだけ傾いた傾斜姿勢を維持する。一方、
図9Bに示すように、スリットノズル71とともにノズルガード72が下降すると、その先端の突出物PS2への接触に応じてノズルガード72は支持軸74を揺動中心として揺動し、その結果、同図紙面において反時計回りに揺動して傾斜角が角度θbに広がる。この角度変化を角度検知センサ704は検知可能となっており、それに対応する信号を制御ユニット9に送る。
【0056】
第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、スリットノズル71の予備吐出位置から塗布位置Pcへの移動位置決めは、2段階で行われる。つまり、スリットノズル71はノズル駆動機構8により塗布位置Pcの上方位置に移動する(ステップS51)。それに続いて、スリットノズル71がノズルガード72と一体的に下降する(ステップS52)。この下降中、ノズルガード72は角度θaの傾斜姿勢を保っている。ここで、ノズルガード72が突出物PS2に衝突した後、さらにスリットノズル71の下降が進行すると、その進行分だけノズルガード72が揺動し、ノズルガード72の傾斜角は角度θaから角度θbとなる。この角度変位を角度検知センサ704が検知し、それに関連する信号が制御ユニット9に送られる。これを受けた制御ユニット9の演算部91は、ノズルガード72による突出物PS2の踏み付けが発生したと判断し(ステップS53で「YES」)、塗布処理をその時点において強制的に停止する(ステップS6)。
【0057】
このように第4実施形態では、角度検知センサ704が本発明の「衝突検知部」の一例に相当しており、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。つまり、角度検知センサ704によるノズルガード72の揺動を検知することで、突出物PS2を踏み付けて基板Sへの塗布液(処理液)の塗布に悪影響を及ぼすのを未然に防止することができる。その結果、ノズルガード72が踏み付けた突出物PS2を引きずったまま塗布動作が継続されることで突出物PS2により基板Sへの塗布液の塗布が阻害されるのを確実に防止することができる。
【0058】
<第5実施形態>
ところで、浮上方式の塗布装置1では、基板Sをステージ面33から所定の浮上量だけ浮上させた状態で基板Sを搬送しながら基板Sの表面Sfに処理液を供給して塗布する。そして、ノズルガード72が突出物PS2を踏み付けた際には、塗布領域における浮上量が減少する。そこで、浮上量の変化に基づいてノズルガード72の突出物PS2への衝突を検知してもよい(第5実施形態)。
【0059】
図10は、本発明に係る基板処理装置の第5実施形態の部分拡大図である。この第5実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、応力検知センサ701の代わりに、塗布領域におけるステージ面33からの基板Sの浮上量を計測する浮上量計測部705を設けている点である。その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0060】
第5実施形態では、浮上量計測部705は、スリットノズル71に取り付けられて基板Sの表面Sfまでの距離を計測する変位計705aと、中央浮上ステージ3Bの下方で固定配置されて基板Sの裏面Sbまでの距離を計測する変位計705bとを有している。これら変位計705a、705bによる計測された距離に関連する信号が制御ユニット9に送られる。
【0061】
第5実施形態においても、第1実施形態と同様に、スリットノズル71の予備吐出位置から塗布位置Pcへの移動位置決めは、2段階で行われる。つまり、スリットノズル71はノズル駆動機構8により塗布位置Pcの上方位置に移動する(ステップS51)。それに続いて、スリットノズル71がノズルガード72と一体的に下降する(ステップS52)。こうしたスリットノズル71の下降中に、ノズルガード72が突出物PS2に衝突して踏み付けると、
図10に示すように、塗布領域の一部、より具体的にはノズルガード72の先端近傍において基板Sの浮上量が減少し、それが変位計705a、705bによる計測結果を反映した信号が制御ユニット9に送られる。これを受けた制御ユニット9の演算部91は、ノズルガード72による突出物PS2の踏み付けが発生したと判断し(ステップS53で「YES」)、塗布処理をその時点において強制的に停止する(ステップS6)。
【0062】
このように第5実施形態では、浮上量計測部705が本発明の「衝突検知部」の一例に相当しており、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。つまり、浮上量計測部705により浮上量の変化を検知することで、突出物PS2を踏み付けて基板Sへの塗布液(処理液)の塗布に悪影響を及ぼすのを未然に防止することができる。その結果、ノズルガード72が踏み付けた突出物PS2を引きずったまま塗布動作が継続されることで突出物PS2により基板Sへの塗布液の塗布が阻害されるのを確実に防止することができる。
【0063】
なお、第5実施形態では、浮上量計測部705は、上方からの距離計測を行う変位計705aと下方からの距離計測を行う変位計705bとの2種類により構成しているが、さらに別の距離測定、例えばスリットノズル71からステージ面33までの距離を計測する変位計を追加してもよい。逆に、浮上量計測部705を変位計705bのみで構成してもよい。
【0064】
また、第5実施形態では、変位計705a、705bにより浮上量の変化を検知しているが、その他の手法、例えば塗布領域をY方向から撮像した画像に基づいて浮上量の変化を検知してもよい。
【0065】
<第6実施形態>
また、浮上方式の塗布装置1では、ステージ面33に設けた気体孔(噴出孔34a、吸引孔34b)を通る気体流によりステージ面33上に形成した圧力気体層によって基板Sを浮上させている。したがって、ノズルガード72が突出物PS2を踏み付けた際には、塗布領域における圧力気体層の厚みが減少するとともに、気体流に乱れが生じ、それを反映して圧力計353d、354bにより計測される圧力が変化する。そこで、圧力計353d、354bの出力変化に基づいてノズルガード72の突出物PS2への衝突を検知してもよい(第6実施形態)。
【0066】
図11は、本発明に係る基板処理装置の第6実施形態の部分拡大図である。この第6実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、応力検知センサ701の代わりに、圧力計353d、354bにより計測される圧力に関連する信号を制御ユニット9に送っている点である。その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0067】
第6実施形態においても、第1実施形態と同様に、スリットノズル71の予備吐出位置から塗布位置Pcへの移動位置決めは、2段階で行われる。つまり、スリットノズル71はノズル駆動機構8により塗布位置Pcの上方位置に移動する(ステップS51)。それに続いて、スリットノズル71がノズルガード72と一体的に下降する(ステップS52)。こうしたスリットノズル71の下降中に、ノズルガード72が突出物PS2に衝突して踏み付けると、
図11に示すように、塗布領域の一部、より具体的にはノズルガード72の先端近傍において基板Sが下方に押し込まれ、浮上量が変化する。このとき、圧力気体層を構成する気体流に乱れが生じる。それに応じて圧力計353d、354bによる計測結果を反映した信号が制御ユニット9に送られる。これを受けた制御ユニット9の演算部91は、ノズルガード72による突出物PS2の踏み付けが発生したと判断し(ステップS53で「YES」)、塗布処理をその時点において強制的に停止する(ステップS6)。
【0068】
このように第6実施形態では、圧力計353d、354bが本発明の「衝突検知部」および「圧力計測部」の一例に相当しており、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。つまり、圧力計353d、354bにより圧力変化を検知することで、突出物PS2を踏み付けて基板Sへの塗布液(処理液)の塗布に悪影響を及ぼすのを未然に防止することができる。その結果、ノズルガード72が踏み付けた突出物PS2を引きずったまま塗布動作が継続されることで突出物PS2により基板Sへの塗布液の塗布が阻害されるのを確実に防止することができる。
【0069】
第6実施形態では、噴出系の圧力計353dと吸引系の圧力計354bとを本発明の「衝突検知部」として用いているが、いずれか一方のみを「衝突検知部」として用いてもよい。
【0070】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば第1実施形態ないし第4実施形態では、いわゆる浮上方式の基板処理装置に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば特許文献1に記載された基板処理装置、つまりスリットノズルを基板に対して相対移動させつつスリットノズルから処理液を吐出する基板処理装置に対しても本発明を適用することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、基板SのY方向のサイズよりも長い長尺状で非可撓性を有する非透明材料によりノズルガード72が構成されているが、特許文献1にも記載されているように短尺状の部材を複数個をY方向に配列したものを用いてもよい。この場合、部材毎に応力検知センサ701、位置センサ703、角度検知センサ704などが設けるのが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明は、基板にスリットノズルから処理液を供給して塗布する基板処理技術全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…塗布装置(基板処理装置)
3…浮上部
3A…上流浮上ステージ
3B…中央浮上ステージ
3C…下流浮上ステージ
7…塗布機構
9…制御ユニット
31、34a…噴出孔(気体孔)
33…ステージ面
34b…吸引孔(気体孔)
52…吸着・走行制御機構(移動機構)
71…スリットノズル
72…ノズルガード
73…ガード支持部
74…支持軸
91…演算部
353d,354b…圧力計(衝突検知部、圧力計測部)
701…応力検知センサ(衝突検知部)
702…振動センサ(衝突検知部)
703…位置センサ(衝突検知部)
704…角度検知センサ(衝突検知部)
705…浮上量計測部(衝突検知部)
705a,705b…変位計(衝突検知部)
711…(スリットノズルの)吐出口
Dt…搬送方向
PS2…突出物
S…基板
Sf…(基板の)表面
Z…上下方向