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特許7316367機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20230720BHJP
   H01H 37/76 20060101ALI20230720BHJP
   H01H 85/055 20060101ALI20230720BHJP
   H01H 85/38 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H01H39/00 C
H01H37/76 F
H01H85/055
H01H85/38
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021549197
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2021093433
(87)【国際公開番号】W WO2022121232
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】202011458693.0
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521368463
【氏名又は名称】西安中熔電気股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石 暁光
(72)【発明者】
【氏名】陳 蓉蓉
(72)【発明者】
【氏名】王 偉
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/204154(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/071218(WO,A1)
【文献】特開2014-7134(JP,A)
【文献】実開昭63-165747(JP,U)
【文献】特開平7-114867(JP,A)
【文献】特開平3-116624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
H01H 37/76
H01H 85/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを備え、前記ハウジング内にキャビティが開設され、少なくとも1本の導体が前記ハウジング内に穿設されるとともに前記キャビティ内を穿通し、
前記ハウジングキャビティ内に少なくとも1つの誘起装置及び少なくとも1つの切断装置が設置され、
前記誘起装置が外部誘起信号を受信することにより前記切断装置を駆動して動作させて、それに対応する前記導体を破断するとともに、前記導体に少なくとも2つの破断口を形成させ、
前記導体に少なくとも1本の可溶体が並列接続され、前記可溶体が少なくとも1つの破断口と並列接続され、前記可溶体が少なくとも1つの破断口と直列接続される
ことを特徴とする機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項2】
前記ハウジング内に消弧媒質が充填された消弧室が設けられ、前記可溶体の一部又は全部が前記消弧室内に穿設され、前記可溶体の溶断口が前記消弧室内に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項3】
前記可溶体と並列接続する破断脆弱箇所が先に破断され、可溶体と直列接続する破断脆弱箇所が後に破断されるように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項4】
前記ハウジング内に少なくとも2つの隣接するキャビティが開設され、前記導体が前記ハウジング内に穿設されるとともに前記隣接するキャビティを穿通し、前記導体の一側に位置する各キャビティのそれぞれに1つの誘起装置及び1つの切断装置が設置され、異なる前記キャビティ内の誘起装置及び切断装置が前記導体の同じ側又は異なる側に位置し、前記切断装置に少なくとも1つの衝撃ヘッドが設置され、前記誘起装置が、外部誘起信号を受信してそれに対応する切断装置を、前記導体を切断して少なくとも1つの破断口を形成するように駆動する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項5】
前記切断装置に少なくとも2つの衝撃ヘッドが間隔をあけて設置され、各衝撃ヘッドがそれぞれ前記導体に少なくとも1つの破断口を形成させる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項6】
前記衝撃ヘッドの、前記導体までの距離が異なり、前記導体に最も近い衝撃ヘッドが真っ先に前記導体に破断口を形成させ、前記可溶体が真っ先に破断される破断口に並列接続される
ことを特徴とする請求項5に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項7】
前記誘起装置はガス発生装置であり、前記切断装置はピストンであり、前記切断装置と前記キャビティとの接触面が密封接触であり又は0.1mm未満の隙間を設けた接触である
ことを特徴とする請求項1に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項8】
前記切断装置と前記キャビティとの間に、前記切断装置を初期位置に保持するための位置制限構造が設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項9】
前記切断装置に対応する前記導体に、前記導体強度を低下させる破断脆弱箇所が設けられ、前記破断口が前記破断脆弱箇所の破断により形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項10】
前記破断脆弱箇所は、前記導体に設けられた断面減少構造、前記導体の破断口における応力を向上させる構造であり、及び/又は前記導体の破断口の部分が機械強度の低い材料を採用する
ことを特徴とする請求項9に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項11】
前記断面減少構造は、前記導体の一側又は両側に切欠きを開設することによる構造、前記導体の一面又は両面にその幅をわたってU形溝、V形溝を開設することによる構造、前記導体に孔を開設することによる構造のうちの、1種又は複数種の構造の組み合わせである
ことを特徴とする請求項10に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項12】
前記可溶体に溶断脆弱箇所が設けられ、可溶体が溶断脆弱箇所で溶断される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項13】
前記溶断脆弱箇所は、可溶体に開設された断面変化構造、狭径構造、及び/又は可溶体に設置された低温溶融可能な前記導体、及び/又は導電率の異なる前記導体の材料を採用する
ことを特徴とする請求項12に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項14】
前記可溶体の、導体に接続する部分が、直列破断口の周辺に配置されるとともに並列破断口と接続され、電流が可溶体及び導体を流れるときに生じた電磁界と破断口のアークとが互いに作用し、電磁界により、前記導体の破断口が形成された後のアーク経路を伸ばす
ことを特徴とする請求項1に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項15】
前記衝撃ヘッドの衝撃端が面縮小構造、尖状突出構造、傾斜面構造又は両側が尖状を呈して内へ凹んだ構造である
ことを特徴とする請求項4に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項16】
前記衝撃ヘッドの衝撃端が面縮小構造、尖状突出構造、傾斜面構造又は両側が尖状を呈して内へ凹んだ構造である
ことを特徴とする請求項5に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項17】
前記破断脆弱箇所の間に支持装置が設置される
ことを特徴とする請求項9~1のいずれか1項に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ。
【請求項18】
上記請求項1~17のいずれか1項に記載の機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズの、配電電源、エネルギー貯蔵設備、電気設備又は車両における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2020年12月11日に中国専利局に提出された、出願番号が2020114586930であり、名称が「機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズ」である中国出願に基づいて優先権を出張し、その全ての内容が、参照により本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示は、電力保護、制御及び電気自動車の分野に属し、特に、外部信号により電流伝達回路の遮断を制御可能なヒューズに関する。
【背景技術】
【0003】
回路過電流保護用のヒューズは、ヒューズを流れる電流で生じた熱量で溶断するものであり、その主な問題として、下記の動作原理に制限されることである。所定大きさの電流の持続的に流れることによる熱量で、ヒューズ内部の可溶体が温度上昇して溶融温度又は昇華温度に達したとき、可溶体が溶断されて破断口を形成する。電流値が十分に大きくなく、又は持続時間が十分に長くないとき、可溶体の温度が溶融点に達することができず、可溶体を溶断できず、したがって、回路は、遮断できなく、ある程度の高温となる。ヒューズは、保護性能が優れ、溶断が素早いものにするため、比較的に大きな発熱パワーを有するとともに、発熱箇所を可溶体の一部の部位だけに集中させる必要がある。ヒューズの作動状態によって、さらに下記の特性が要求される。作動時のヒューズが低い温度上昇及び低い電力消費を有するとともに、比較的に大きい電流の短時間過負荷/突入電流(例えば、電気自動車が始動し又は登坂走行するときの短時間大電流)の流れに耐えるときに損壊することがないものにするため、ヒューズは、比較的に小さな発熱パワーを有するとともに、発熱箇所が可溶体の一部の部位だけに集中しないようにする必要がある。異なる作動状態下で、可溶体の電流発熱に対する要求が真っ逆になることがあり、発熱パワーを低下させたり、可溶体の電流発熱分布の集中度を低下させたりする場合、ヒューズが十分に速い遮断速度で所定大きさの故障電流を遮断できなく、逆に、十分に速い遮断速度で所定大きさの故障電流を遮断し、ヒューズの熱パワーを向上させ、可溶体の熱分布の集中度を高めることができるものであれば、比較的に高い作動電流に耐えることができないとともに温度上昇及び電力消費が高く、又は、比較的に大きい過負荷/突入電流の流れに耐えるときに損傷しないことが保証できなく、そして、比較的に良い放熱条件、比較的に大きい容積及び比較的に高いコストが必要である。例えば、新エネルギー車の主回路において、小さい電流過負荷又は短絡電流がある場合、定格電流の小さい仕様の従来のヒューズであれば、正常の負荷電流及び短時間大電流の流れで遮断しない要求を満たすことができず、定格電流の大きい仕様の従来のヒューズを使用する場合、十分に速い遮断速度の要求を満たすことができない。新エネルギー車の電池パックの電量が低いとき、短絡時の出力電流が大きくなく、ヒューズが適時且つ素早く溶断されなければ、短絡点のアーク持続時間が長すぎて発火燃焼する恐れがあり、又は、電池パックが過大な電流で持続的に発熱して、損傷したり、発火燃焼したりする恐れがある。
【0004】
また、熱溶断原理を利用したヒューズは、外部機器と通信できなく、電流以外の他の信号によりトリガーされることができないため、車両がひどくぶつかったり、浸水したり、長く日光に当てた後に電池の温度が高すぎたりする状況で回路を遮断できず、保護できない。
【0005】
回路を素早く分断する従来のトリガー可能なスイッチ構造は、主に、ガス発生装置と導電端子とを有し、ガス発生装置が発生した高圧ガスでピストンを駆動して導電端子を切断させて、回路を素早く遮断する目的を実現する。しかし、下記のいくつかの不足や欠陥が存在する。破断口を流れる電流が空気でアーク放電し、大電流による故障電流アークを消弧することが困難であり、又は、非常に大きい空間容積を必要とする。空気を利用してアークを冷却、分断する場合、その消弧が、気圧、温度、湿度、空気に含まれる不純物などに大きく影響されるため、確実性が良くない。分断する過程において、アークが直接にピストンヘッド部を焼き、該焼き損傷が順調な消弧を影響し、小容積の空間で空気により大電流のアークを消弧する場合、破断された後の絶縁抵抗も比較的に低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示が解決しようとする技術的問題として、溶断及び機械力の組み合わせによって導体を破断させるヒューズを提供し、ヒューズの、大きい電流を確実に分断できる能力を利用し、集積設計により、ヒューズがいくつかの破断口に並列接続され、所定条件下で破断口に直列接続され、ヒューズが導体と並列接続されることにより、非分断状態での温度上昇による消費電力を低減し、電流衝撃に耐える能力を向上させ、ヒューズが少しだけの通電能力を有すればよい。分断動作が必要である場合、誘起手段及び切断装置により一部の導体を破断させ、ヒューズによりそれと並列接続される破断口のアークエネルギーを大幅に低下させ、並列破断口を、大電流下で安全に絶縁誘電性能を回復させるように保護し、そしてヒューズをいくつかの破断口に直列接続して、直列破断口におけるアークエネルギー値を制限し、安全限界値を超えないように破断口を、所定値の過電流を安全に分断させる。切断装置の協働を利用して、破断動作順序を制御することができ、ヒューズを活用して並列破断口及び直列破断口を保護し、大きい過電流を分断する能力を向上させ、電流値の小さい過電流を素早く分断することもでき、零電流から最大分断能力までのすべての過電流を素早く、確実に分断し、容積を大幅に低減し、コストを抑えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的問題を解決するために、本開示に係る技術案による、機械切断及び溶断の組み合わせを利用した複数破断口誘起ヒューズは、ハウジングを備え、前記ハウジング内にキャビティが開設され、少なくとも1本の導体が前記ハウジング内に穿設されるとともに前記キャビティ内を穿通し、前記ハウジングのキャビティ内に少なくとも1つの誘起装置及び少なくとも1つの切断装置が設置され、前記誘起装置が外部誘起信号を受信することにより前記切断装置を駆動して動作させて、それに対応する前記導体を破断するとともに、前記導体に少なくとも2つの破断口を形成させ、前記導体に少なくとも1本の可溶体が並列接続され、前記可溶体が少なくとも1つの破断口と並列接続され、前記可溶体が少なくとも1つの破断口と直列接続される。直列破断口により、可溶体が溶断できないときも、回路が直列破断口により破断されることを保証できる。
【0008】
前記ハウジング内に消弧媒質が充填された消弧室が設けられ、前記可溶体の一部又は全部が前記消弧室内に穿設され、前記可溶体の溶断口が前記消弧室内に位置する。消弧媒質は、消弧に寄与できる。
【0009】
好ましくは、前記可溶体と並列接続する破断口が先に破断され、可溶体と直列接続する破断口が後に破断されるように構成される。
【0010】
前記ハウジング内に少なくとも2つの隣接するキャビティが開設され、前記導体が前記ハウジング内に穿設されるとともに前記隣接するキャビティを穿通し、前記導体の一側に位置するキャビティのそれぞれに1つの誘起装置及び1つの切断装置が設置され、異なる前記キャビティ内の誘起装置及び切断装置が前記導体の同じ側又は異なる側に位置し、前記切断装置に少なくとも1つの衝撃ヘッドが設置され、前記誘起装置が、外部誘起信号を受信してそれに対応する切断装置を、前記導体を切断して少なくとも1つの破断口を形成するように駆動する。その目的は、異なる誘起装置が誘起信号を受信する順序に基づいて、導体における破断口の形成順序を制御することである。
【0011】
前記切断装置に少なくとも2つの衝撃ヘッドが間隔をあけて設置され、各衝撃ヘッドがそれぞれ前記導体に少なくとも1つの破断口を形成させる。
【0012】
前記衝撃ヘッドの、前記導体までの距離が異なり、前記導体に最も近い衝撃ヘッドが真っ先に前記導体に破断口を形成させ、前記可溶体が真っ先に破断される破断口に並列接続される。その目的は、切断装置の衝撃ヘッドの導体までの異なる距離により、導体における破断口の形成順序を制御することである。
【0013】
前記誘起装置はガス発生装置であり、前記切断装置はピストンであり、前記切断装置と前記キャビティとの接触面が密封接触であり又は0.1mm未満の隙間を設けた接触である。誘起装置が発生した高圧ガスにより切断装置を駆動して導体を破断させることを保証できる。
【0014】
前記切断装置と前記キャビティとの間に、前記切断装置を初期位置に保持するための位置制限構造が設置される。
【0015】
前記切断装置に対応する前記導体に、前記導体強度を低下させる破断脆弱箇所が設けられ、前記破断口が前記破断脆弱箇所の破断により形成される。前記破断脆弱箇所は、導体に設けられた断面減少構造、導体の破断口における応力を向上させる構造であり、及び/又は導体の破断口の部分が機械強度の低い材料を採用する。前記断面減少構造は、前記導体の一側又は両側に切欠きを開設することによる構造、前記導体の一面又は両面にその幅をわたってU形溝、V形溝を開設することによる構造、前記導体に孔を開設することによる構造のうちの、1種又は複数種の構造の組み合わせである。
【0016】
前記可溶体に溶断脆弱箇所が設けられ、可溶体が溶断脆弱箇所で溶断される。前記溶断脆弱箇所は、可溶体に開設された断面変化構造、狭径構造、及び/又は可溶体に設置された低温溶融可能な前記導体、及び/又は導電率の異なる前記導体の材料を採用する。導体の機械強度の低い破断脆弱箇所を設け、可溶体に溶断の溶断脆弱箇所を設けることにより、導体及び可溶体の破断速度を加速することができる。
【0017】
前記可溶体は少なくとも1つの直列破断口を迂回して延伸して並列破断口と接続され、前記導体が生じる電磁界と互いに作用する電磁界を形成して前記導体の破断口が形成された後のアーク経路を伸ばす。
【0018】
前記衝撃ヘッドの衝撃端が面縮小構造、尖状突出構造、傾斜面構造又は両側が尖状を呈して内へ凹んだ構造である。
【0019】
前記破断脆弱箇所の間に支持装置が設置される。
【0020】
本開示に係る誘起ヒューズは、配電電源、エネルギー貯蔵設備、電気設備又は車両に適用することができる。
【0021】
本開示に係るヒューズは3種の作動状態が設計される。1.切断装置が動作しなく、導体に破断口がなく、電流が主に導体を流れ、非常に小さい電流が可溶体を流れ、低電力消費で確実な作動を実現し、典型値が10~30アンペアであるように定格電流がとても小さい。2.切断装置が導体を切断し、可溶体と並列接続する導体を優先して切断して破断口を形成し、大電流が切断されていない導体と可溶体を流れて、可溶体が溶断され、導体の破断口で生じたアークエネルギーが非常に小さく、大部分のアークが可溶体を流れ、可溶体が溶断されて消弧され、絶縁誘電性能が迅速に回復し、典型値が100us級の値である。3.切断装置が、並列接続する可溶体のない部分の導体を切断して破断口を形成させ、典型値がms級の値であり、零電流及び比較的に小さい電流を分断することができ、生じたアークが比較的に小さいため、可溶体による補助消弧の必要がなく、直接に空気より消弧すればよい。
【0022】
前記誘起装置として、ガス発生装置であることが好ましい。電流で化学反応を誘起して、化学的エネルギーを放出し、火薬の燃焼のように、エネルギー及び圧力ガスを放出して、1ms以下で圧力ガスを誘起することができ、迅速である。圧力ガスと協働する切断装置として、ピストンであることが好ましい。
【0023】
本開示における技術案をより明瞭に説明するため、以下、説明に必要な図面を簡単に説明する。なお、図面は本開示のいくつかの実現方式を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者にとって、発明能力を用いなくても、これらの図面をもとに、他の関連図面を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示に係るヒューズの正面縦方向断面の模式的構成図である。
図2】本開示に係るヒューズの正面縦方向断面の模式的構成図である。
図3】本開示に係るヒューズの正面縦方向断面の模式的構成図である。
図4】本開示に係るヒューズの正面縦方向断面の模式的構成図である。
図5】本開示に係るヒューズの正面縦方向断面の模式的構成図である。
図6】本開示に係るヒューズの正面縦方向断面の模式的構成図である。
図7】本開示に係るヒューズの正面縦方向断面の模式的構成図である。
図8】本開示に係る選択可能な案の縦方向断面の模式的構成図である。
図9】可溶体と直列破断口及び並列破断口との接続によって、磁気を生じて消弧することを示す模式的構成図である。
図10】本開示に係る衝撃ヘッドの模式的構成図である。
図11】本開示に係る衝撃ヘッドの模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、実施例を具体的に説明する。図1図7に示すように、本開示に係る誘起ヒューズ(トリガー型ヒューズとも呼ばれる)は、主にハウジング100、導体101、誘起装置(トリガー装置とも呼ばれる)102及び切断装置103を備える。
【0026】
ハウジング100はハウジング100の上部を貫通するキャビティを有する。ハウジング100に導体101が穿設され、導体101は、ハウジング100に開設されたキャビティを穿通して、該キャビティを2つの部分に分ける。導体101の両端はハウジング100の外部へ延出して、外部回路と接続可能である。導体101をハウジング100内に設置して、その両端のそれぞれに導電端子が接続され、導電端子がハウジング100の両端に設置されるとともにハウジング100の外部へ延出し、導電端子によって外部回路と接続するように構成してもよい。導体101の形状は、板状構造であってもよく、例えば、円状、四角形、異形、管状など、及びその組み合わせた形状のような任意の断面形状であってもよい。下記の説明において、板状構造を例にして説明する。導体101は1本であってもよく、複数本がハウジング100に並列で設置されてもよい。本開示において、上下のハウジングの構成を例にして説明するが、ハウジング100が、上下に構成するものに限定されなく、左右に構成するものであってもよい。
【0027】
導体101の上方に位置するキャビティにおいて、上から下へ誘起装置102及び切断装置103が順に設置される。誘起装置102は、キャビティの頂部に固定設置され、キャビティに設けられる位置制限段階によって位置制限され、その上部が押圧プレート又は押圧スリーブ(図示しない)によって固定される。誘起装置102は、本実施例においてガス発生装置であり、故障発生時の外部からの誘起信号を受信することができ、点火起爆によって高圧ガスを発生して、駆動力を形成して切断装置103の動作を駆動する。誘起装置102は、例えばシリンダ、液圧シリンダ、モータなどのような、外部誘起信号を受信することができる機械構造の装置であってもよく、外部信号を受信することにより、切断装置103に駆動力を提供する。
【0028】
切断装置103は誘起装置102と導体101との間のキャビティに設置され、切断装置103の衝撃端は導体101から所定距離離れ、切断装置103の衝撃力を確保できるように構成される。切断装置103は直接導体101に設置されてもよく、導体101を切断可能と保証できればよい。誘起装置102はガス発生装置である場合、切断装置103とキャビティとの接触面が密封設置され、又は駆動力に影響しない小さな隙間を設けることにより、誘起装置102がガス発生装置である場合、生じる駆動力が漏れることなく全部切断装置103に作用することを保証して、駆動力の不足を防止する。切断装置103とキャビティとの間に密封材104を設置することにより密封接触を実現してもよく、締まりばめにより密封接触を実現してもよい。切断装置103が駆動力による駆動を受けておらず、初期位置に位置するとき、切断装置103が初期位置に固定されて、キャビティ内で変位することによる誤動作を防止するように、切断装置103とキャビティとの接触面に位置制限構造113が設置される。位置制限構造113が切断装置103の外周に間隔をあけて設けられた小さな凸状ブロックであってもよく、対応するキャビティの内壁に凹溝が開設され、切断装置103の凸状ブロックを凹溝に係止することにより位置制限を実現する。切断装置103が誘起装置102からの駆動力を受けた場合、該位置制限構造113が衝撃で破断して、位置制限作用が解除される。切断装置103の下方に導体101の長手方向に沿って少なくとも2つの高さの異なる衝撃ヘッド(本実施例において、2つの衝撃ヘッド105、106である)が間隔をあけて設置される。衝撃ヘッド105、106の衝撃端、即ち、衝撃ヘッド105、106における、導体101を切断する端の構造は、断面が漸減する構造であってもよく、図10に示した尖状突出構造であってもよく、図11に示した衝撃ヘッド105、106の端面中心部位が内へ凹んで、両側が尖状突出構造であってもよく、導体101を破断することに寄与できる他の構造であってもよい。例えば、面縮小構造が突出した円弧状構造であり、尖状突出構造が刃状構造、傾斜面尖状角構造、錐形尖状角構造である。切断装置103は、ピストン、スライダーなどのような、誘起装置102によって駆動できる構造である。誘起装置102がガス発生装置であるとともに発生した高圧ガスにより切断装置103を駆動して変位させる場合、切断装置103とハウジング100の内キャビティとの接触面が密封接触であり、又は0.1mm未満の隙間を設けるため、発生した高圧ガスが切断装置103を駆動して変位させて導体101を切断することを確保できる。ミリメートル級以上の切断装置103に対して、0.1mm以下の隙間を設けることにより、切断装置103の運動を影響しない程度の少量のガスを漏らすとともに、良好な押動力を得ることができる。切断装置103とキャビティとの接触面の密封でより大きい押動力を得ることができるが、この場合、切断装置103の受ける摩擦力も比較的に大きい。このため、ガス発生装置が発生した高圧ガスの駆動力に応じて密封の方式を決める。切断装置103とキャビティとの間に密封材104を設置することにより密封接触を実現してもよく、締まりばめにより密封接触を実現してもよい。誘起装置102がシリンダ、液圧シリンダなどの外部誘起信号を受信することにより動作して駆動力を提供することができる装置である場合、切断装置103とキャビティとの密封接触が不要になる。
【0029】
切断装置103の衝撃ヘッド105、106の下方に位置する導体101の一側に、衝撃ヘッド105、106に対応する位置にそれぞれ間隔をあけて複数の破断脆弱箇所107、108が設けられている。本実施例において、破断脆弱箇所107、108が、それぞれ切断装置103の衝撃ヘッドの下方に位置する導体101の一側で、対応の衝撃ヘッドの位置に対応する位置に設けられている。衝撃ヘッド106に対応する2つの破断脆弱箇所107が間隔をあけて設けられ、衝撃ヘッド105に対応する1つの破断脆弱箇所108が設けられ、破断脆弱箇所107と破断脆弱箇所108との間に導体101を支持するための支持装置112が設置され、支持装置112が導体101の下方に位置する場合、支持装置112が支持ボスであってもよく、支持装置112が導体101の側面に位置する場合、固定支持アームであってもよく、支持装置112が導体101の上方に位置して導体101がその中に穿設することにより、支持の役割を果たしてもよい。図1図7を参照しながら、本開示に係る誘起ヒューズの作動原理を説明する。導体101が切断装置103の衝撃ヘッドの衝撃を受けたとき、衝撃ヘッド105がまず導体101の破断脆弱箇所108を破断して、導体101に1つの破断口を形成し、衝撃ヘッドの更なる変位に従って、衝撃ヘッド10が破断脆弱箇所で形成された破断口の両側の距離を増大させ、切断装置103の更なる下への変位により、衝撃ヘッド106が導体101における2つの破断脆弱箇所107を破断して、2つの破断脆弱箇所107のそれぞれに破断口が形成され、破断された後の導体101の各部分が衝撃ヘッドの圧迫でさらに変位することにより、3つの破断脆弱箇所で形成された破断口の距離がますます大きくなる。本実施例において、切断装置103の2つの衝撃ヘッドにより、破断脆弱箇所108での破断口と破断脆弱箇所107での破断口が順に破断される。切断装置103における衝撃ヘッド105、106のそれぞれが導体101までの距離が同じであってもよく、この場合、3つの破断脆弱箇所での破断口が同時に形成される。図1図7に示すように1つの衝撃ヘッド106により水平に設置された導体101に2つの破断口を形成してもよく、導体を湾曲状態又は傾斜状態に配置してもよい。該導体に間隔をあけて2つの破断脆弱箇所を設け、衝撃ヘッドがまずそれと真っ先に接触した1つの破断脆弱箇所を破断して破断口を形成し、そして、他の破断脆弱箇所を破断して破断口を形成する。
【0030】
ハウジング100の下に消弧ハウジング109がさらに設置され、消弧ハウジング109にキャビティが開設され、キャビティ内に消弧媒質110が充填される。図1図7に示すように、2本の可溶体111が消弧媒質内に穿設され、可溶体111の溶断脆弱箇所が消弧媒質内に位置する。可溶体111の溶断脆弱箇所が狭径構造、断面変化構造であり、又は可溶体111に電気伝導率の異なる材料を接続することにより、抵抗の変化により発熱性能を変えて溶断を加速してもよく、可溶体111に低温溶断材料(可溶体111自体の材質の溶融点よりも低い)を接続することにより、溶断速度を加速してもよい。可溶体111の両端が上向きに消弧ハウジング109とハウジング100のハウジング壁を穿通して、それぞれ破断脆弱箇所108の両側に位置する導体101と並列接続され、導体101に破断口が形成される破断脆弱箇所108と並列接続されるとともに、2つの破断口が形成される2つの破断脆弱箇所107と直列接続されるように構成される。導体101に複数の破断口が形成される場合、可溶体111が少なくとも1つの破断口と並列接続するとともに、他の破断口と直列接続する。破断口で並列接続される可溶体111が1本であってもよく、複数本であってもよい。
【0031】
破断口で並列接続された可溶体111により破断口における絶縁媒質の回復に寄与でき、破断口が形成された後、破断口の抵抗が漸増するとともに可溶体111の抵抗よりはるかに大きいため、過電流が主に導体101を流れる状態から主に可溶体111を流れる状態に変換され、エネルギーが主に可溶体111で放出され、可溶体111を流れる過電流エネルギーが70%以上に達することができ、少量のエネルギーだけが破断口を流れるため、生じたアークが比較的に小さく(破断口で撃ち抜かれる絶縁媒質が少ない)、素早く消弧することができるとともに破断口の絶縁性能を回復させることができる。図1図4に示すように、大きい電流を分断する能力を向上させることについて、まず、可溶体と並列接続する導体101の破断脆弱箇所を破断し、所定時間を遅延させた後に可溶体111と直列接続する破断脆弱箇所を破断することが好ましい。可溶体111と並列接続する破断口が形成された後、可溶体111と直列接続する他の破断脆弱箇所が遅延して破断され、過電流の大部分が導体101の破断しない部位及び可溶体111を流れ、所定時間後、可溶体111と直列接続する破断脆弱箇所が遅延して破断される。比較的に大きい過電流を分断する場合、2つの破断口の遅延時間の間隔内に、可溶体111が既に溶断された可能性があり、このとき、可溶体111と直列接続する破断脆弱箇所が破断され、破断口に電流が既に小さくなり、可溶体111がまだ溶断されていなくても、遅延時間の間隔内に大きい電流が可溶体111を流れるため、可溶体111が既に加熱され、直列接続する破断脆弱箇所が破断された後の短時間内で可溶体111が溶断されるので、直列破断口を流れる電流エネルギーが可溶体111によって制限され、大きい電流による直列破断口の大きな損傷を防止することができる。比較的に小さい過電流を分断する場合、直列破断口が電流を分断して、可溶体111は、流れるエネルギーが少ないため動作しない。図1図4を例にして、大電流を分断する場合、直列接続された破断脆弱箇所107の破断口が可溶体111の溶断口と直列接続して、大きい過電流を分断し、ヒューズが、直列破断口が形成される前に溶断され、又は直列破断口が形成された後にすぐに溶断されるため、直列破断口が過大な電流を単独で分断しなく、比較的に小さい過電流である場合、ヒューズが溶断せず、直列破断口が比較的に小さい過電流を切断すればよい。このため、可溶体111と並列接続する破断口で可溶体111によってエネルギーが分流され、直列接続する破断口でヒューズによって大きい電流が分断され、大きい電流の流れる時間及びエネルギーが制限されるため、2つの破断口がいずれも可溶体111により良好に保護され、いずれも小さい電流を分断すればよい。また、図5図7に示すように、まず、アークエネルギーに強い直列破断口を破断させ、並列破断口が少し遅れて形成されるようにしてもよく、可溶体111と直列接続する破断口が先に破断され、過電流の大きさを制限でき、他の破断口の分断する電流値を低減することができる。
【0032】
消弧ハウジング109は、別体に形成されてもよく、ハウジング100と一体構造に構成されてもよい。図1図7において、1つの切断装置103に高さの異なる衝撃ヘッドを設置することにより、導体101に複数の破断口を前後に形成させる。複数組の誘起装置及び切断装置を設置することにより、異なる誘起装置が誘起信号を受信する順序に基づいて、導体に複数の破断口を順に形成させてもよい。
【0033】
図8は2組の誘起装置及び切断装置の模式的構成図である。ハウジングが上ハウジング300、下ハウジング301及び消弧ハウジング302からなり、各ハウジング間の接触面が密封接触である。上ハウジング300及び下ハウジング301内に、隣接する2組のキャビティが開設され、導体303が上ハウジング300と下ハウジング301との間に位置する。上ハウジング300における各キャビティのそれぞれに誘起装置304、切断装置305が順に設置される。切断装置305に衝撃ヘッド306が設置される。衝撃ヘッド306に対応する導体303に、破断脆弱箇所310が設けられている。破断脆弱箇所310の間に導体303を支持するための支持装置311が設置され、切断装置305の衝撃ヘッド306に最も近い導体303の破断脆弱箇所310の両側に可溶体307が並列接続される。消弧ハウジング302に消弧媒質308を充填する消弧室が開設され、可溶体307の溶断脆弱箇所が消弧媒質に設置される。誘起装置304がガス発生装置である場合、切断装置103と各ハウジングの内壁との間に密封材309が設置され、密封材309がパッキンである。締まりばめにより切断装置103を設置してもよい。
【0034】
図8において、2組の誘起装置304及び切断装置305により、導体303を破断する。2組の誘起装置304が同一時間で外部からの誘起信号を受信して、同時に切断装置305を駆動して導体303を破断させることができる。このような状況で、切断装置305における衝撃ヘッド306の導体303までの距離が同じである場合、衝撃ヘッド306が同時に導体303に複数の破断口を形成させる。切断装置305における衝撃ヘッド306の導体303までの距離が異なる場合、導体303に最も近い衝撃ヘッド306により導体303に真っ先に破断口を形成させ、この状況で、可溶体307が真っ先に形成される破断口に並列接続され、破断口が3つ以上である場合、真っ先に形成された破断口が2つ又はそれ以上であってもよく、可溶体307が同時に形成された複数の破断口と並列接続してもよいが、少なくとも1つの破断口が可溶体307と直列接続しなければならない。
【0035】
2組の誘起装置102が前後に誘起信号を受信するように設置してもよく、誘起信号を受信する順序に基づいて、切断装置305を駆動して導体303を破断させて、複数の破断口を順に形成させる。切断装置305が真っ先に導体303に1つの破断口を形成する場合、可溶体307が真っ先に形成された破断口と並列接続され、後に形成された破断口と直列接続される。真っ先に形成された破断口が2つ又はそれ以上であってもよく、可溶体307が同時に形成された複数の破断口と並列接続してもよいが、少なくとも1つの破断口が可溶体307と直列接続しなければならない。
【0036】
少なくとも1つの破断口が可溶体307と直列接続するように構成する目的として、故障電流が比較的に小さくて可溶体307を溶断できない場合、回路の破断を確保しなければならなく、このとき、可溶体307と直列接続する破断口を破断させれば、回路の遮断を確保できる。
【0037】
上記から分かるように、導体303に破断口を前後に形成することは、切断装置305における衝撃ヘッド306の導体303までの距離を異なって設定する方式により形成させてもよく、誘起装置102が誘起信号を受信する順序を設定することにより形成させてもよい。
【0038】
可溶体307による消弧の作動原理として、導体303の導通抵抗と可溶体307の抵抗率とが1オーダーの差があるため、正常な状況で、ほとんどの電流が導体303を流れ、非常に小さい電流が可溶体307を流れることである。
【0039】
導体303が機械的に破断された後、導体303の破断口の抵抗率が瞬時にほぼ遮断するまで増大し、このとき、大部分の過電流エネルギーが可溶体307を流れ、少しだけが破断口でアーク放出が形成されるため、破断口で破断口の焼灼などが起こされない。可溶体307を流れる大部分の過電流はそれと直列接続する破断口に対して焼灼などの影響がなく、このとき、可溶体307と直列破断口とで分圧し、電圧を分断する能力を向上させる。可溶体307の溶断口で生じたアークが消弧媒質で消弧され、それと直列接続された破断口におけるアークが比較的に小さくて、空気により消弧される。
【0040】
上記の実施例において、可溶体307の材質は金属又は他の導電材質である。消弧媒質は、消弧機能を備えた気体、液体、固体などの消弧可能な材質である。切断装置305の衝撃ヘッド306は平面構造、面縮小構造、又は尖状突出構造である。
【0041】
上記の実施例において、導体303の破断脆弱箇所を設ける目的は、導体303の破断口の機械強度を低下させることである。下記の破断口強度を低下させる手段を選択して使用してもよく、同時に使用してもよいが、これらの手段に限定されない。a.材料の力を受ける断面を小さくし、又は材料応力の集中度を高め、U形溝、V形溝、孔、中空構造など、又はその組み合わせた構造を開設し、破断脆弱箇所が任意の角度で前記導体303の横断面に設けられてもよく、b.破断口の応力を集中させ、断面変化構造を使用して過渡領域で応力の集中を生じさせ、例えば、隙間を設け、又はせん断力を利用し、c.破断口がスズなどのような低強度導体材料を採用し、d.機械力で圧着及び/又は固定された既製品の破断口などを利用する。
【0042】
上記のヒューズ構造において、ハウジングとハウジングとの間、導体303とハウジングとの間、消弧室とハウジングとの間、可溶体307とハウジングとの間などの接触面がいずれも密封設置である。高圧ガスの漏れによる駆動力の低下、アーク漏れなどに起因するヒューズの動作安定性への悪影響を防止することができる。
【0043】
上記の実施例において、可溶体401は、導体400におけるそれと直列接続する破断口まで延在してもよい。図9に示すように、可溶体401は、接続導線402及び接続導線403を介して導体303に1つの破断口を形成する破断脆弱箇所404と並列接続され、導体303に破断口を形成する破断脆弱箇所405と直列接続される。接続導線403における電流と直列破断口の導体303の電流とは、方向が逆又は垂直である。電磁界理論に基づいて、直列破断口で生じた磁気が、直列破断口で生じたアークを伸ばして移動させて消弧することができる。電流によって磁界を生じる理論に基づいて、破断口が形成される時に生じたローレンツ力により、破断口におけるアークを伸ばしてアークを移動させることができるように可溶体307と導体303の各破断口との位置関係を設定して、アークを冷却し、直列破断口の消弧能力を向上させる。
【0044】
上記の実施例において、ハウジングに複数の導体303を並列して設置してもよく、導体303の両端のそれぞれが導電端子を介して外部回路と接続される。複数の導体303が並列接続される場合、分流の作用があるため、導体303を並列接続すれば、分断できる電流範囲を拡大することができる。
【0045】
本開示の作動原理について、図1図4を例にして説明する。
【0046】
故障電流が生じていなく、ある特定の条件下で回路を遮断する必要があるとき、外部制御システムで誘起装置102へ誘起信号を出力する条件を予め設定することができ、該条件を満たすと、誘起装置102へ誘起信号を出力し、誘起装置102が誘起信号を受信して動作し、点火起爆によって高圧ガスを放出し、切断装置103を駆動して導体を前後に破断させ、このとき、消弧可溶体111に流れる電流が、消弧可溶体111を溶断できるほど大きくなく、回路が切断装置103により破断される。
【0047】
比較的に小さい故障電流が生じたとき、誘起装置102が外部からの誘起信号を受信して、誘起装置102を点火起爆させることにより、誘起装置102が高圧ガスを放出して、切断装置103を駆動して位置制限機構を突破させて下へ変位して導体101を衝撃する。複数の衝撃ヘッド106、105を有し、且つそれぞれの導体までの距離が異なるため、切断装置103が導体101を衝撃するとき、まず導体に最も近い衝撃ヘッド105がそれに対応する導体の破断脆弱箇所108を破断し、即ち、まず破断脆弱箇所108の位置で破断し、このとき、故障電流が可溶体111を溶断できるほど大きくなく、故障電流が小さく、破断脆弱箇所108の破断口で生じたアークが比較的に小さいため、空気により消弧することが可能である。破断脆弱箇所108が破断された後、切断装置103がさらに下へ変位し、高さの高い衝撃ヘッド106が衝撃導体101を衝撃してそれに対応する破断脆弱箇所107を破断して、導体101が二度目破断され、導体101に形成された可溶体111と直列接続する2つの破断口により回路が徹底的に破断され、可溶体111と並列接続する破断口における過電流の放出により、可溶体111と直列接続する破断口における電流が小さくなって、生じたアークが非常に小さいため、空気により消弧することが可能である。
【0048】
比較的に大きい故障電流が生じたとき、誘起装置102が外部からの誘起信号を受信して、誘起装置102を点火起爆させることにより、誘起装置102が高圧ガスを放出して、切断装置103を駆動して位置制限機構を突破させて下へ変位して導体101を衝撃する。導体101はまず破断脆弱箇所108で破断され、破断の瞬間、大部分の電流がそれと並列接続する可溶体111を流れるため、可溶体111と並列接続する破断脆弱箇所108の破断口におけるアークが非常に小さくて、空気により容易に消弧できる。可溶体111の、消弧媒質における溶断脆弱箇所が溶断され、消弧媒質により、生じたアークを消弧する。そして、切断装置103の更なる変位に従って、導体101が、破断脆弱箇所107で破断されて、可溶体111と直列接続する第2の破断口及び第3の破断口が形成され、可溶体111の分圧により、第2の破断口及び第3の破断口における分圧アークも非常に小さくて、空気により容易に消弧することが可能である。
【0049】
比較的に大きい故障電流が生じたとき、可溶体111が真っ先に溶断され、生じた大きいアークが消弧媒質内で消弧され、そして、可溶体111と並列接続する破断脆弱箇所108が破断されて破断口と形成され、可溶体111の溶断で形成された破断口により過電流エネルギーの一部を放出することにより、それと並列接続する破断口で生じたアークが破断口を損傷できなくなり、空気により消弧することができる。切断装置103の更なる変位により、導体101に第2の破断口及び第3の破断口が形成され、分圧後に生じたアークが小さくなって、より容易に消弧することができる。
【0050】
図1において、切断装置103の複数の衝撃ヘッド105、106が高さの揃ったものである場合、同時に3つの破断口を形成することができる。故障電流がなく、又は故障電流が比較的に小さい場合、可溶体111が溶断されず、複数の破断口によりアークを削減することができ、空気により消弧することができる。故障電流が比較的に大きい場合、複数の破断口が形成されるとともに、可溶体111も溶断され、消弧媒質が消弧に参加し、消弧を素早く実行することができ、消弧能力を向上させることができる。故障電流が非常に大きい場合、可溶体111が溶断され、消弧媒質が消弧に参加し、複数の破断口が形成された後に電流を徹底的に切断して消弧を実行する。
【0051】
同道理で、図8に示すものの作動原理は図1に示すものの作動原理とほぼ同じであるが、誘起装置304が同時に動作してもよく、それぞれが受信した誘起信号の順序に基づいて動作する又は動作しないようにしてもよい点だけが相違する。例えば、故障電流が生じていないとき、可溶体307のない室における誘起装置304のみに誘起信号を送信することにより、該誘起装置304を、切断装置305を駆動して導体303を破断するように動作させて、回路の切断、保護を実現する。導体303の可溶体307が並列接続される箇所で、誘起装置304及び切断装置305が動作しない。複数の破断口を前後に破断させる必要がある場合、先に破断する必要がある箇所の誘起装置304へ誘起信号を送信し、遅延して、後に破断する箇所の誘起装置304へ誘起信号を送信することにより、前後に破断する目的を達する。
【0052】
本開示に係る誘起ヒューズと従来の誘起ヒューズと比べ、下記の利点を有する。
【0053】
1.複数の破断口により導体を破断して、分断の確実性を向上させることができる。
【0054】
2.可溶体が並列破断口を保護することができ、並列破断口を流れるアークエネルギーを低下させることができるとともに、その絶縁媒質の強度の迅速な回復に寄与でき、低い定格電流の迅速な分断により、大電流の分断及び並列破断口の絶縁性能の安全な回復が実現される。
【0055】
3.直列破断口を設けることにより、可溶体を利用する方式が、小さい過電流がヒューズの定格電流より低い場合に分断できず、又は、十分大きくない場合、ヒューズの分断時間が長すぎる問題を改善できる。
【0056】
4.異なる破断口の破断順序を設定することにより、必要に応じて、単独の機械破断又は機械と可溶体溶断との組み合わせの方式による破断を選択することができ、さまざまな場面での回路保護のニーズに適用できる。
【0057】
上記から分かるように、本開示に係るヒューズは、異なる誘起装置により、誘起信号を受信する順序に基づいて誘起を行って、切断装置を駆動して導体に破断口を前後に形成させてもよく、切断装置の衝撃ヘッドの高さの異なりによって、導体に複数の破断口を前後に遅延して形成させてもよく、複数回の消弧を実現することにより、消弧能力を向上させる。そして、分断可能な電流の範囲を拡大し、全電流範囲の分断を実現でき、分断能力を向上させることができる。遅延して破断される破断口により、導体の物理的破断を確保することができ、ヒューズの信頼性が向上され、ヒューズの性能がより優れる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示に係るヒューズは、異なる誘起装置により、誘起信号を受信する順序に基づいて誘起を行って、切断装置を駆動して導体に破断口を前後に形成させてもよく、切断装置の衝撃ヘッドの高さの異なりによって、導体に複数の破断口を前後に遅延して形成させてもよく、複数回の消弧を実現することにより、消弧能力を向上させる。そして、分断可能な電流の範囲を拡大し、全電流範囲の分断を実現でき、分断能力を向上させることができる。遅延して破断される破断口により、導体の物理的破断を確保することができ、ヒューズの信頼性が向上され、ヒューズの性能がより優れる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11