(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】トレンチ壁カッティング装置及び地中カットトレンチカッティング方法
(51)【国際特許分類】
E02F 5/02 20060101AFI20230720BHJP
E02D 5/18 20060101ALI20230720BHJP
E02D 17/13 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
E02F5/02 N
E02D5/18 102
E02D17/13
(21)【出願番号】P 2021559139
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2020053808
(87)【国際公開番号】W WO2020200561
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-16
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502407107
【氏名又は名称】バウアー マシーネン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイクスラー レオンハルト
(72)【発明者】
【氏名】フィンケンツェラー ステファン ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】プラツェック ピーター
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-346449(JP,A)
【文献】特開2005-163337(JP,A)
【文献】特開2005-002785(JP,A)
【文献】特開2009-074334(JP,A)
【文献】特開昭63-268813(JP,A)
【文献】特開2018-044429(JP,A)
【文献】特開2008-019709(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02573475(FR,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0518297(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第4053342(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第4101989(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3208384(EP,A1)
【文献】特開昭53-144101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/02
E02D 5/08
E02D 5/18
E02D 17/13
E02F 3/24
E02F 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチ壁カッティング装置であって、
少なくとも2個のカッタモジュールで構成されておりカッティングホイールが備わるトレンチカッタと、
地中にカットトレンチを形成すべく上記トレンチカッタを
懸下し垂直方向に動かす支持構造と、
を備え、
上記支持構造が
上記垂直方向を横断する方向に沿って延び、上記垂直方向を横断する方向に沿って延びる少なくとも1本の案内レールを含む案内装置を有し、
上記案内装置が上記案内レールに各々分離されて懸下された上記少なくとも2個のカッタモジュールをカットトレンチ生成先たる作業領域へと
上記案内レールに沿って送給するよ
う構成されており、
上記少なくとも2個のカッタモジュール
が上記作業領域に
て上記トレンチカッタに
組み立てられ、
上記支持構造および上記案内レールが、上記作業領域の上方を通り、上記カッティングホイールの回転軸線に直交する方向に沿って延びて配置されている、
トレンチ壁カッティング装置。
【請求項2】
請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
上記少なくとも2個のカッタモジュールが、上記カッティングホイールを有する第1カッタモジュール
と、少なくとも1個の駆動ユニット及び/又は案内フレームを有する第2カッタモジュール
と、を含み、
上記案内フレームは、上記垂直方向に直交する断面において上記カットトレンチと同じ断面形状の箱形状を有し、上記トレンチカッタを上記カットトレンチ内で案内する、
トレンチ壁カッティング装置。
【請求項3】
請求項2に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
上記駆動ユニットにより駆動
されるポンプが、上記第2カッタモジュール内に設けられているトレンチ壁カッティング装置。
【請求項4】
請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
上記垂直方向に直交する断面において、上記カットトレンチと同じ断面形状の箱形状を有する案内フレームであって、上記トレンチカッタを上記カットトレンチ内で案内する案内フレームが備わる
少なくとも1個の更なるカッタモジュールが設けられているトレンチ壁カッティング装置。
【請求項5】
請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
上記
少なくとも2個のカッタモジュールを
上記案内レールに沿って送給する横断
駆動装置が設けられているトレンチ壁カッティング装置。
【請求項6】
請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
上記
少なくとも2個のカッタモジュールが連結面を有し、その上に可解放連結装置が配置されているトレンチ壁カッティング装置。
【請求項7】
請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
上記支持構造
および上記案内レールが、1列に並ぶ複数のカットトレンチ生成先たる作業領域
の延びる方向に沿
って延
びており、
先行のカットトレンチ作成後、上記少なくとも2個のカッタモジュールを分離し、さらに上記作業領域内の隣のカットトレンチ生成先に上記案内レールに沿って送給し、組み立てて隣のカットトレンチ
を作成
する、トレンチ壁カッティング装置。
【請求項8】
請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
上記トレンチカッタを垂直に動かす少なくとも1個のリフティングユニットが上記支持構造上に配置されているトレンチ壁カッティング装置。
【請求項9】
請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
少なくとも1個のホースリール及び/又はケーブルリールを有する少なくとも1個の送給ユニットが上記支持構造上に配置されているトレンチ壁カッティング装置。
【請求項10】
請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
上記トレンチカッタが
、同じ
全高を有する
上記少なくとも2個のカッタモジュールで構成されているトレンチ壁カッティング装置。
【請求項11】
請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置であって、
上記トレンチカッタが、可解放的且つ機械的に相互連結された
上記少なくとも2個のカッタモジュールで構成されており、そのうち第1カッタモジュールが
上記カッティングホイールを有し、電源に係る第1送給ユニットに直結されていて、第2カッタモジュールから独立なことを特徴とするトレンチ壁カッティング装置。
【請求項12】
トレンチ壁カッティング装
置を用い地中にカットトレンチをカッティングする方法であって、
垂直方向を横断する方向に沿って延びる少なくとも1本の案内レールを含む案内装置を有
し、上記垂直方向を横断する方向に沿って延びる支持構造が配置され、且つ
カッティングホイールを有するトレンチカッタが
上記支持構造上に配置され且つ
上記垂直方向に沿い地中に下降され、作業領域内での地中物質の切除によ
りカットトレンチが形成される方法であり、
上記トレンチカッタが少なくとも2個のカッタモジュールで構成されており、
当該少なくとも2個のカッタモジュールが、
各々分離された態で上記案内
レールに懸下されて当該案内レールに沿って上記作業領域へと送給され、
上記作業領域に
て連結され
て上記トレンチカッタが形成され、
上記支持構造および上記案内レールが、上記作業領域の上方を通り、上記カッティングホイールの回転軸線に直交する方向に沿って延びて配置されている、
方法。
【請求項13】
請求項12に係る方法であって、
少なくとも2個の隣り合うカットトレンチを生成する際に、第1のカットトレンチが生成された後に、上記トレンチカッタが、上記
少なくとも2個のカッタモジュールを分離させつつ当該第1のカットトレンチから引き出され、且つ
更なるカットトレンチを形成するに当たり、上記
少なくとも2個のカッタモジュールが
分離した状態で上記案内
レールに懸下され当該案内レールに沿い動かされ、
上記少なくとも2個のカッタモジュールの再連結により上記トレンチカッタが形成され、
再形成された上記トレンチカッタが地中物質を切除しつつ地中に下降され
て第2のカットトレンチが生成される、方法。
【請求項14】
請求項12に係る方法であって、
地中にトレンチ壁を形成するに当たり、凝結性懸濁液で以て少なくとも1個の上記カットトレンチを充填し、それを硬化させることで当該トレンチ壁を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に係るトレンチ壁カッティング(切削)装置に関する。本発明は、更に、請求項13に従いその種のトレンチ壁カッティング装置を用い地中にカットトレンチをカッティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中にトレンチ(壕)を生成するため、既知の通りトレンチ壁カッティング装置が提供されており、その例が特許文献1にて開示されている。そのプロセスにおいては、いわゆるトレンチカッタが垂直可調要領にてマスト又はジブ上に配置される。それらマストやジブはキャリア装置上にあり、通常は15m~30m或いはそれ以上の高さを有している。マストの高さは、トレンチカッタの高さにより決定的に定まる。
【0003】
この種のトレンチ壁カッティング装置を用いることで、100m以上の深さに達するトレンチ又はスラリ壁を生成することができる。その種のトレンチ又はスラリ壁は、例えば、掘削ピットを支え或いは地下水障壁を生成するのに用いることができる。この種のカッタを用い鉱物資源を採掘することもできる。
【0004】
場合によっては、トンネル内又は閉鎖空間内の構造中又はその付近に、スラリ壁を生成することが必要になる。これを行うのに、大きなマストを有するキャリア装置や大きなトレンチカッタを用いることはできない。
【0005】
特許文献2には、コンパクトなトレンチ生成用トレンチ壁カッティング装置が開示されている。このトレンチ壁カッティング装置は、フレーム及びジブを有しレール上に実装されているワゴンを有しており、またそれが、トレンチカッタの垂直長に比し無視しうる程しか高背でないものとされている。ホイストケーブル及び連結ケーブル用のケーブルドラムと、送給ホース用のホースリールとが、地面の近くにある支持フレーム上に実装されている。トレンチカッタの構成部材は本質的な部材、例えばカッティングホイール(切削輪)、ドライブ(駆動装置)及びポンプに限られており、案内フレームが小さなデザインとなっている。
【0006】
特許文献3には、別のコンパクトなトレンチ壁カッティング装置が開示されている。この装置では、コンパクトなトレンチカッタがヨークの下方に可動実装されており、またそれが、2個の隣り合うキャリア装置により形成されている。それら2個のキャリア装置が枢動ジョイントにより相互連結されている。
【0007】
これら既知のコンパクトなトレンチ壁カッティング装置では、そのトレンチカッタの高さによって、動作高がかなり制限される。同時に、カッティングホイール、ドライブ、ポンプ向け、とりわけ案内フレーム向けに、相応量の空間が必要であるため、トレンチカッタを意のままに小さくすることができない。
【0008】
特許文献4には、カッティングホイール上のカッタ歯を換装するための待ち時間を短縮できるトレンチカッタが開示されている。これは、個別のカッタ歯ではなく、そのカッティングフレーム上のカッティングヘッドをオールインワンで交換することにより、達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第102004013790号明細書(A)
【文献】欧州特許第0518297号明細書(B1)
【文献】欧州特許第3208384号明細書(B1)
【文献】欧州特許独文翻訳第602004008375号明細書(T2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ひどく閉鎖的な空間内であっても効率的なカッティングが可能な、トレンチ壁カッティング装置及び地中トレンチカッティング方法の双方を開示することにある。
【0011】
本目的は、第1に請求項1に係るトレンチ壁カッティング装置により達成され、第2に請求項13に係る方法により達成される。関連する従属形式請求項では本発明の好適実施形態が提示される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、少なくとも2個のカッタモジュールで構成されたトレンチカッタと、地中にカットトレンチを形成すべくそのトレンチカッタを懸下し垂直方向に動かす支持構造と、を備え、その支持構造が案内装置を有していて、上記カッタモジュールを分離状態で作業領域即ちカットトレンチ生成先へと送給するようその案内装置が構成されているトレンチ壁カッティング装置が、提供される。
【0013】
本発明の基本的着想の一つは、トレンチカッタを少なくとも2個のカッタモジュールへと分割しておき、それらを可解放的に相互連結することであると、考えることができる。加えて、カットトレンチを形成すべくそのトレンチカッタを懸下し垂直方向に動かす支持構造が設けられており、その支持構造が更に、カッタモジュールを分離状態で送給する案内装置を有している。従って、本発明によれば、もはや、全面的に動作準備が済んだトレンチカッタをカットトレンチ生成先たる作業領域へと移動させる必要がない。その代わりに、本発明によれば、そのカッタモジュールへと分割された状態でトレンチカッタが作業領域へと送給され、作業領域に達してから組み立てられてトレンチカッタが形成される。この目的を踏まえ、その支持構造を、相応な案内又は輸送装置を有する形態とする。その支持構造の全高を、好適にも、動作準備が整っているときのトレンチカッタの高さよりも小さくすることができる。その支持構造にて必要とされるのは、カッタモジュールの高さと同じ高さ以上であることだけである。
【0014】
従って、原理的に、利用可能な作業高が非常に小さい作業個所でも、更には組立後のトレンチカッタの高さよりも小さな作業個所でさえも、カッティングを実行することができる。これは、とりわけ、1個又は複数個のカッタモジュールをその案内トレンチ内に入れ終えてからトレンチカッタへと組み立てることができるよう、例えば1m~4mの深さを有する「案内トレンチ」を前以てその作業領域内に作成することで、達成することができる。
【0015】
なお、本発明に係るトレンチ壁カッティング装置は、トンネルや建造物の内部以外でも用いることができる。その全高が非常に小さく、5m未満、更には3m未満ともすることができるため、本トレンチ壁カッティング装置の全体を、景観保護、防塵及び/又は雑音遮断目的の囲いと併設すること又はそれにより囲むことができる。結果として、そのトレンチ壁カッティング装置全体を、1個又は2~3個の標準コンテナ内に恒久据付することさえ可能となる。これは、とりわけ、市街、住宅地、空港その他のインフラストラクチャプロジェクト、建造物その他の繊細な建築サイトエリアにてカッティングを行う際に有利たりうる。
【0016】
本発明のある好適実施形態では、カッティングホイールを有する第1カッタモジュールが設けられ、且つ少なくとも1個の駆動ユニットを有する第2カッタモジュールが設けられる。第1カッタモジュールによりトレンチカッタ下部、即ちカッティングホイール及びそれらカッティングホイールのベアリングを有する部分を、主桁(大梁)に接する態で構成することができる。第2カッタモジュールは、少なくとも1個の駆動ユニットを好ましくはポンプ装置用に有するものとし、とりわけ切除済地中物質と共に懸濁液を奔出させ及び/又は揚出するようそのポンプ装置を構成する。これに代え又は加え、その駆動ユニット又は別の駆動ユニットをカッティングホイール用のものとすることもできる。コンパクトな構成の場合、そのカッタをカットトレンチ内で案内し動かす案内要素も第2カッタモジュール上に配置されうる。とりわけ、伸縮可能なアクチュエータを設けること、例えばそれを駆動シリンダにより実現することで、トレンチ壁に対しそのトレンチカッタを然るべく動かすことが可能となる。
【0017】
原理的には、そのトレンチカッタに複数個の更なるカッタモジュールを設け、それらに相異なる機能を持たせることができる。とりわけ好ましいのは、案内フレームを有する更なるカッタモジュールを少なくとも1個設けることである。この案内フレームは純粋に受動的なものとすること、例えばカットトレンチ壁沿いでの当接案内用の当接要素を有する櫓(スカフォルド)状フレームの形態とすることができる。好適なことに、それらプレート状要素を、そのカットトレンチ内で相対的位置変化を発生させるべく、折りたためるようにすることもできる。原理的に、案内フレームを有するこうしたカッタモジュールは複数個配置することができ、その案内フレームの高さが増すにつれてカットトレンチ内におけるトレンチカッタの案内正確性及び案内安定性が強化される。このやり方であれば、100m以上にも達する多大な深さを有するカットトレンチを、その全高が制約されている場合でさえも高い案内正確性で以て生成することができる。
【0018】
原理的に、支持装置は少なくとも1個のカッタモジュール上、好ましくは一番上のカッタモジュール上に配置され、その支持装置によって、ホイストケーブル又はバー状支持装置を介しその支持構造上にトレンチカッタが保持される。
【0019】
本発明に係るトレンチカッタを効率的に動作させるには、ある変形例に従い、少なくとも1本の案内レールをその支持構造に具備させ、カットトレンチに対し横断方向にシフト可能となるようその案内レールに沿い個別のカッタモジュールを実装することが、有益である。こうした支持構造とすることで、前進方向に沿い垂直にトレンチカッタをシフトさせることだけでなく、当該前進方向を横切る方向に沿い個別のカッタモジュールをシフトさせることも可能となる。これにより、個別カッタモジュールの送給及び除去の効率化、並びに組立及び分解の至便化が可能となる。
【0020】
原理的には、こうしたシフトは、適切なベアリングがあればマニュアルで行うことができる。本発明のある発展形態によれば、とりわけ至便なことに、シフティング装置が、カッタモジュールをシフトさせる横断ドライブを有するものとされる。これは、例えばラック沿い運動を発生させるピニオン付のモータ等とすることができる。ケーブルウィンチを有するボウデンケーブル機構や、リニア駆動シリンダその他の好適な駆動装置を、設けることもできる。こうした駆動装置は、好適にも電気的又は流体圧的に動作させることができる。
【0021】
カッタモジュールの連結は、基本的には、それらを極力速やかに解放及び連結させうる何れの好適なやり方で行うのでもよい。本発明のある発展形態によれば、とりわけ有利なことに、それらカッタモジュールが、そのトレンチカッタに対し横向きな連結面、及び/又は、そのトレンチカッタの長手又はカッティング方向に沿った向きの連結面を、有するものとされる。これにより、連結面を極力広くし、個別カッタモジュール間の連結をとりわけ頑丈なものとすることが可能となる。
【0022】
この場合にとりわけ好ましいのは、可解放連結装置をそれら連結面上に配置することである。この場合には、それら連結装置を機械式の連結装置とし、ひいてはそれらカッタモジュールが頑丈且つ堅固に一体結合されるようにする。加えて、それら連結装置を、送給ホース及びケーブルを例えば電力伝達及びデータ伝送用のため連結・接続する装置を、備えるものとすることもできる。原理的に、クイック連結装置を提供することもできる。それらはマニュアルで動作させることや、適宜駆動される最終駆動要素例えば駆動シリンダによって少なくとも部分的に動作させることができる。ただ、好ましいのは、送給ユニット・カッタモジュール間ケーブルが分離・切断されず、カッタ組立時にそれらを再び接続・連結する必要がないようにすることである。具体的には、各カッタモジュールを、それ自身に割り当てられている送給ユニットに、直接ケーブル接続・連結させればよい。
【0023】
原理的に、その支持構造単体で作業領域に配置されうるよう、支持構造全体を鋼梁によってコンパクトに構成することができる。その支持構造を作業領域に沿い延ばし、延ばした先に隣のカットトレンチを作成する際に、そのトレンチ壁カッティング装置をとりわけ効率的に稼働させることができる。例えば、第1のカットトレンチを生成し終えた後に、そのトレンチカッタを個別カッタモジュールに分解してその支持構造に沿い移送した上で、再びトレンチカッタの態に組み立てて、その作業領域に第2の即ち更なるカットトレンチを生成することができる。こうすることで、例えばトレンチ又はスラリ壁向けに望まれている通り、連続的なカットトレンチを効率的に生成することができる。
【0024】
支持構造は、原理的に、支持要素とは別に構成することができる。本発明に係るトレンチ壁カッティング装置のある上首尾な変形例によれば、その支持構造を移送可能又は可動なものとすることができる。その支持構造を、全体として又は部分的に、ホイストによって或いは駆動装置例えば歩行機構によって動かすことができ、またその駆動装置をもその支持構造の一部分とすることができる。この種の可動支持構造によれば、隣り合う複数個の個別トレンチで構成される比較的長いカットトレンチさえも、生成することが可能となる。
【0025】
本発明の別の好適実施形態においては、そのトレンチカッタを垂直に動かす少なくとも1個のリフティングユニットが、支持構造上に配置される。このリフティングユニットは、ホイストケーブルを有するウィンチ配列の形態か、入れ子式ロッドアセンブリの形態とするのが望ましい。そのリフティングユニットには相応なリフティングドライブ、例えばロータリドライブが備わる。これは、電気的又は流体圧的に動作するものとすることができる。リフティングユニット自体を、容易に解放可能且つ可動なモジュールにして、モジュール的要領でその支持構造上に実装することもできる。対応する少なくとも1個の方向転換ローラによって、例えばホイストケーブルを、そのリフティングユニットに備わるウィンチ配列からその支持構造の上部領域に沿いそのトレンチカッタへと案内し、そこに可解放連結させることもできる。当該少なくとも1個の方向転換ローラを、その支持構造上に可シフト実装されているローラスライド上に、可回動実装することもできる。
【0026】
加えて、本発明のある発展形態によれば、好適なことに、少なくとも1個のホースリール及び/又はケーブルリールを有する少なくとも1個の送給ユニットを、その支持構造上に配置することができる。当該1個又は複数個の送給ユニットも、同様に、容易に解放可能且つシフト可能なモジュールとして、その支持構造上に実装することができる。そのホースを、トレンチカッタに懸濁液又は圧力作動流体を供給し又はそのトレンチカッタからそれらを除去するように、構成することができる。ケーブルリール上のケーブルを、電力や圧力作動流体を送るよう又はデータケーブルの態に構成することができる。リフティングユニット及び送給ユニットを、単一モジュール又は単一ユニット上に一緒に形成することもできる。
【0027】
支持構造は、原理的に、どのような構成を有するものともすることができる。好ましくは、その支持構造を垂直支柱が備わるものとし、その垂直支柱上の上記少なくとも1本の案内レールが地面から離れたところに居続けるようにする。こうすることで、カッタモジュールを、1本又は複数本の相平行な案内レール沿いで支持構造に沿い信頼性良くシフトさせること及び作業現場にて組み立てることが可能となる。個別カッタモジュールを、そのリフティングユニットとりわけホイストケーブルを取り付けるための保持点を有するものとすることで、それら個別カッタモジュールを、案内トレンチ内又はカットトレンチ外へとリフティングした後その支持構造に沿いシフトさせうるようにすることができる。
【0028】
本発明は、更に、実質的に同じ高さを有する少なくとも2個のカッタモジュールで構成されたことを特徴とするトレンチカッタに関する。本トレンチカッタは、上述したトレンチ壁カッティング装置にて好適に用いることができる。とはいえ、本トレンチカッタを、それとは独立に用いること、とりわけ上述した支持構造とは独立に用いることや、例えば従来のキャリア装置上で用いることもできる。個別カッタモジュールの構成を、同じ高さを有すると共に、基本的に同じ断面を有するものとすることで、それら個別モジュールの移送能力を確と良好で均一なものにすることができる。
【0029】
とりわけ好ましくは、それらカッタモジュールの高さを、カッティングホイールの直径の2倍以下の高さとする。トレンチカッタにおけるカッティングホイールの直径は、通常は0.5m~2.5mである。従って、それらカッタモジュールがとりうる高さの範囲は0.5m~5mとなる。同時に、それら個別カッタモジュールの高さ間の差異を、あったとしても20%以下、とりわけ10%以下とする。
【0030】
本発明のある発展形態によれば、それらカッタモジュールの高さが3m以下であるときに、とりわけ良好な移送能力が実現される。結果として、移送に際し、それらカッタモジュールを標準コンテナ或いは少なくとも「ハイキューブ」コンテナ内、即ち道路輸送に文句なく適しているコンテナ内に、収容することが可能となる。更に、本発明に係るカッタモジュールはコンパクトな高さのものであるので、トンネル、穴蔵その他の閉鎖空間内で用いることができる。加えて、1個又は複数個の標準コンテナ又はハイキューブコンテナを、本トレンチカッタ用の囲い又はハウジングとして提供することができる。
【0031】
本発明の更なる態様によれば、可解放的且つ機械的に相互連結された少なくとも2個のカッタモジュールから構成されており、そのうち第1カッタモジュールがカッティングホイールを有し、電源に係る第1送給ユニットに直結されており且つ第2カッタモジュールとは独立なことを特徴とする、トレンチカッタが提供される。本発明に係るこのトレンチカッタは、上述したトレンチ壁カッティング装置との組合せで、或いは上述したトレンチカッタの発展形態でありそのカッタモジュール同士が実質的に同じ高さを有するものとして、提供することもできる。とはいえ、好ましいことに、本発明に係るこのトレンチカッタは、それらから独立である。本発明に係るこのトレンチカッタの大きな長所は、それら少なくとも2個のカッタモジュールを専ら機械的に一体化させればよく、当該少なくとも2個のカッタモジュール間でケーブル連結を確立する必要がないことである。その代わりに、カッティングホイールを有する第1カッタモジュールが、第1送給ユニットから第1カッタモジュールへと直に導かれている送給ケーブルにより、第1送給ユニットに直結される。原理的に、当該少なくとも1個の更なるカッタモジュールを、電源無しのものとすることができる。その場合、当該更なるカッタモジュールが例えば受動案内フレームとして用いられる。
【0032】
本発明に係るトレンチカッタのある好適発展形態においては、上記少なくとも1個の第2カッタモジュールが独立な送給ユニットにも連結される。これを設けることで、例えば、本トレンチカッタを制御するためのアクチュエータをトレンチ内で動作させることが可能となる。第1送給ユニットから第1カッタモジュールに至りまた第2送給ユニットから第2カッタモジュールに至る送給ケーブルそれぞれを、本トレンチカッタの相対向する狭隘側面にそれぞれ配置することができる。
【0033】
更に、本発明によれば、上述したトレンチ壁カッティング装置を用い、或いはそのトレンチカッタのうち1個を用い、地中にカットトレンチをカッティングする方法であって、とりわけ、案内装置を有する支持構造が配置され、且つトレンチカッタがその支持構造上に配置され且つ垂直方向に沿い地中に下降され、作業領域内で地中物質が切除されることでそのカットトレンチが形成される方法であり、そのトレンチカッタが少なくとも2個のカッタモジュールで構成されており、それらカッタモジュールが、互いに分離された態で当該案内装置によりその作業領域へと送給され、当該トレンチカッタを形成すべくその作業領域にて互いに連結される方法が、提供される。本方法によれば、その目的で生成された「マイクロトンネル」より下方に所在する鉱物資源を採掘することも可能である。
【0034】
本発明に係る方法によれば、上述した諸利点を達成することができる。原理的には、その後は逆に、そのトレンチカッタを生成済カットトレンチ外に引き出し分解することができる。
【0035】
本発明の方法のひときわ有利な変形例においては、少なくとも2個の隣り合うカットトレンチを生成する際、第1のカットトレンチが生成された後に、上記トレンチカッタが、上記カッタモジュールを分離させつつ当該第1のカットトレンチから引き出され、且つ、更なるカットトレンチを形成するため、それらカッタモジュールが、上記案内装置に沿い動かされ、それらの再連結によりトレンチカッタが形成され、そのトレンチカッタが地中物質を切除しつつ地中に下降される。本方法によれば、閉鎖空間内であっても複数個のカットトレンチを効率的に作成することができ、それでいて良好なカッタ案内及び比較的大きなカッティング深さを達成することができる。本発明の意味合いにおいては、隣り合うカットトレンチが、互いに直に隣り合っている必要はない。それらが、例えば、管引抜プロセスに際しトレンチ壁を作成する際の一次及び二次カットトレンチであってもよい。個々の方法ステップをどのように反復するのでもよいが、何れにせよ、その支持構造を、案内装置によってその作業領域に沿い作業進捗量分だけ、移動又はシフトさせる必要があろう。
【0036】
本発明のある発展形態によれば、地中にトレンチ壁を形成するに当たり、凝結性懸濁液で以て少なくとも1個のカットトレンチが充填され、それを硬化させることでそのトレンチ壁が形成される。「単相」法の場合はカッティング中という早期段階で、また「二相」法の場合は支援懸濁液を凝結性懸濁液で以て最終的に置き換えることにより、そのトレンチを凝結性懸濁液で以て鉢化(ポッティング)することができる。
【0037】
凝結性懸濁液を作成するに当たり、切除済地中物質のうち少なくとも幾ばくかを用いること、即ちそれを凝結性の液体とそのトレンチ内で直に、或いはそのカットトレンチ外の調製システム内で混ぜ合わせて、その凝結性懸濁液を形成することもできる。
【0038】
以下、図面中に模式的に示されている好適な例示的実施形態をもとに、本発明について更に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明に係るトレンチ壁カッティング装置の斜視図である。
【
図2】
図1中のトレンチ壁カッティング装置の前面図である。
【
図3】
図2中のトレンチ壁カッティング装置の側面図である。
【
図4】
図1~
図3に係るトレンチ壁カッティング装置の平面図である。
【
図5】本発明に係り
図1に係るトレンチ壁カッティング装置の支持構造の斜視図である。
【
図6】
図1中のトレンチ壁カッティング装置の第1カッタモジュールの拡大斜視図である。
【
図7】
図1中のトレンチ壁カッティング装置の第2カッタモジュールの拡大斜視図である。
【
図8】本発明に係るトレンチ壁カッティング装置用のシフトスライドの斜視図である。
【
図9】本発明に係るトレンチ壁カッティング装置用のホースリールが備わる送給ユニットの斜視図である。
【
図10】本発明に係るトレンチ壁カッティング装置用のケーブルリールが備わる別の送給ユニットの斜視図である。
【
図11】本発明に係るトレンチ壁カッティング装置用の使用時前面図である。
【
図12】
図11中のトレンチ壁カッティング装置を側方から見た模式的断面図である。
【
図13】本発明に係る
図11中のトレンチ壁カッティング装置のトレンチカッタ一体化時前面図である。
【
図14】
図13中のトレンチ壁カッティング装置の側面図である。
【
図15】
図11~
図14のトレンチ壁カッティング装置のカッティングプロセス開始時前面図である。
【
図16】
図15中のトレンチ壁カッティング装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1~
図4は本発明に係るトレンチ壁カッティング装置10の様々な外観図であり、この装置は、ほぼ円形のトンネル断面を有するトンネル内への設置向けに構成されている。
図1~
図4に係るトレンチ壁カッティング装置10は、図上、本発明に係るカッティング方法が実行される前の休止又は始動時ポジションをとっている。
【0041】
トレンチ壁カッティング装置10は櫓状の支持構造20を有しており、
図5にもそれがより詳細に示されている。支持構造20は、長尺梁及び横桁で構成されるグリッド状の底部担持面21を備えている。加えて、同じくグリッド状又は梯子状の天井領域23が設けられ、底部担持面21に備わる複数本の垂直支柱22によりそれが支えられている。それら天井領域23及び底部担持面21に沿い、後にその機能を詳説するところの、案内レール25を有する案内装置24が形成されている。底部担持面21及び天井領域23双方の長尺梁により、シフティング装置26のうち案内レール25を形成することができる。垂直支柱22はそれぞれ対をなし配置され、且つ横桁付近で底部担持面21及び天井領域23にそれぞれ連結されており、互いにほぼ均一な距離にて配置することができる。その例外となりうるのは、支持構造20の中部にあるトレンチカッタ組立・分解用のカッティング部28である。このカッティング部28では垂直支柱22同士が大きめな距離を有しており、トレンチカッタ向けの底部通路29が底部担持面21内に形成されている。原理的に、この種の底部通路29は、対をなす何れの垂直支柱22間にも設けることができる。
【0042】
図1~
図4に示す通り、休止又は始動状態時には第1カッタモジュール40がカッティング部28内に位置している。第1カッタモジュール40は主フレーム44を有しており、カッティングホイール42がそれに接し配置されている。主フレーム44により、第1カッタモジュール
40が、上側の案内レール25に沿い支持構造20の長手方向にシフト可能となるよう実装されている。
【0043】
第1カッタモジュール40の隣側には、案内フレーム54を有する第2カッタモジュール50が、シフティング装置26の上側案内レール25に沿いシフト可能となるよう同様に実装されている。第2カッタモジュール50は、その内部に実装された駆動ユニット52を有しており、2本のケーブル64の働きで懸下されている。この場合、それらケーブル64が、上側にある天井領域23に沿いリフティングユニット60のウィンチ62により、最遠でシフトスライド27まで案内され、そこではそれらケーブル64が方向転換ローラにより第2カッタモジュール50まで案内されそこに可解放締結される。トレンチカッタを昇降させるリフティング機能のほか、ケーブル64をも、上側にある案内レール25に沿い少なくとも第2カッタモジュール50を長手方向にシフトさせるシフティング装置26の一部分と、することができる。
【0044】
図1~
図4に従い示したトレンチ壁カッティング装置10では、カッティング部28から見て支持構造20の左側に、複数本のケーブル84用の可回動ケーブルリール82を有する第1送給ユニット80があり、それが第1支持スライド86上に可シフト実装されている。それらケーブル84は、電力用に構成すること、データケーブルとして構成すること、或いはカッティングホイール42を有する第1カッタモジュール40への流体圧エネルギ又は圧縮空気の供給用に構成することができる。図示実施形態では、第1支持スライド86が、天井領域23側の案内レール25と底部担持面21に備わる案内レール25の双方に沿い長尺方向にシフト可能且つ固持可能となるよう、実装されている。第1送給ユニット80は第1カッタモジュール40に直結されている。右側には、ホースリール72及びケーブルリール73を有する第2送給ユニット70があり、それらリールが第2支持スライド76内に可回動実装されている。その第2支持スライド76には、ウィンチ62を構成する2個のウィンチドラムも可回動実装されており、上側にある天井領域23側の案内レール25に沿い、その第2支持スライドを長手方向にシフトさせること及び固持することができる。第2送給ユニット70を用い、第2カッタモジュール50を直接送給することができる。
【0045】
図1~
図4にホースリール72のホースライン74を示す。ホースライン74は、切除済地中物質を支援流体と共に除去するよう構成することができる。ケーブルリール73上の更なるケーブル75は、制御又は計測信号用の電気ケーブル、或いは圧力作動流体を送給又は除去するためのケーブル、という形態にすることができる。その媒体は、通例通り、ケーブル及びホースにより支持構造20へと送給され且つそこから除去されるので、明瞭化理由で描出していない。
【0046】
図6に第1カッタモジュール40をより詳細に示す。2対のカッティングホイール42が、略U字状の断面を有する主フレーム44上に可回動実装されている。その主フレーム44の下側には中央カッティングプレート43が取り付けられており、その上にはカッティングホイール42が2個ずつ可回動実装されている。よく知られている通り、カッティングホイール42の外面上には、地中物質を掘削するための掘削歯が設けられている。
【0047】
その中間に向かい逆方向に回動する2対のカッティングホイール42の間には、切除済地中物質をその周囲にある支援又は切削流体と共に吸い出すための吸引ノズル45がある。カッティングドライブ46が、カッティングホイール42の対毎に、主フレーム44に取り付けられている。原理的には、このドライブを、カッティングホイール42内に統合することもできよう。加えて、主フレーム44上には第1連結面48たる垂直面及び水平面が設けられており、ボルト連結用の貫通孔49をそこに設けることができる。ソケット41は第1送給ユニット80への連結に用いられるものであり、これについては
図10との関連でより詳細に説明することとする。
【0048】
図7によれば、第2カッタモジュール50は、図上、箱状案内フレーム54で構成されている。案内フレーム54の断面は、そのトレンチカッタをその案内フレーム54自体によりカットトレンチ内で案内させうるよう、第1カッタモジュール40のカッティング断面とおおよそ対応させてある。よく知られている通り、流体圧シリンダにより折りたためるプレート状アクチュエータ56が各種位置補正用に設けられており、それらアクチュエータによって、カットトレンチの壁に対するある程度の位置調整を行うことができる。
【0049】
案内フレーム54上には第2連結面58が設けられており、それによって、第1カッタモジュール40側の第1連結面48に対する精密位置決め連結を行うことができる。案内フレーム54内には、ポンプ装置なる形態を採る駆動ユニット52が取り付けられている。案内フレーム54の上部、中央領域には、ホイストケーブル取付用の保持装置55が設けられている。
【0050】
第1カッタモジュール40及び第2カッタモジュール50を、機械的に相互連結することができる。
【0051】
図8に、上述したシフトスライド27をより詳細に示す。これはスライドフレーム34を有しており、その外側には4個の案内ローラ35が可回動実装されている。それら案内ローラ35により支持構造20上で、或いは案内装置24の案内レール25に沿い、シフトスライド27が直線的に案内される。
【0052】
案内ローラ35はそれぞれ対向する対の態で配置されており、それら2対の間にはギャップが形成されており、そのギャップ内には、第2カッタモジュール50ひいてはトレンチカッタ全体を保持するためのケーブル64用の2個の方向転換ローラ36が、横方向に沿い対向配置されている。それら方向転換ローラ36により、ウィンチ62から略水平に案内されてきたケーブル64が垂直下向きに方向転換される。第2送給ユニット70からのホースライン74及びケーブル75を方向転換させるため、湾曲していて例えば四分円状のホースガイド37が、スライドフレーム34上に配置されている。これらホースガイド37により、水平に送給されてきたホースライン74及びケーブル75が、垂直方向に沿いトレンチカッタの方へと方向転換される。
【0053】
図9に、上述した第2送給ユニット70をより詳細に示す。これは第2支持スライド76を有しており、その内側には、流体用の太いホースライン74用のホースリール72と、2本の流体圧ホース75及び2本の電気ケーブル75用のケーブルリール73とが、可回動実装されている。加えて、互いに平行に走る2本のケーブル64用のウィンチ62のウィンチドラムが、第2支持スライド76の後部領域に可回動実装されている。第2支持スライド76に備わる2枚のサイドフランク(側板)それぞれに沿い、4個の案内ローラ35が均一分布要領で配置され且つ可回動実装されている。これら案内ローラ35により、第2送給ユニット70が、案内レール25に沿い長手方向にシフト可能となるよう、支持構造20の天井領域23に接し実装されている。
【0054】
図10に係る第1送給ユニット80も同様に構成されている。これは第1支持スライド86を備えており、その上にケーブルリール82が可回動実装されている。第1支持スライド86の各サイドフランク上には3個の上側案内ローラ35が設けられており、それらが支持構造20の天井領域23側にある案内レール25に沿い直線的に案内されるようになっている。加えて、2個のサイドコンタクトローラ38が第1支持スライド86の下部領域側に可回動実装されており、それらコンタクトローラが案内レール25に沿い底部担持面21上に着座し且つそれに沿い直線的に案内されるようになっている。
【0055】
第1支持スライド86の端面上には四分円状の湾曲した方向転換ガイド88が配置されており、ケーブルリール82からのケーブルを、水平方向から垂直方向へと反らしトレンチカッタの方を向かせるよう、それによって方向転換させることができる。
【0056】
ロッキング装置89は、第1カッタモジュール40側のソケット41(
図6参照)内にそれを挿入することによる第1カッタモジュール40への連結、例えば流体圧シリンダによりそれを水平方向に延ばすことによる連結に、用いられる。リフティング装置90、例えば1本又は2本の流体圧シリンダを備えるそれによって、第1カッタモジュール40を案内トレンチ内へと然るべく下降させること、並びにトレンチ完成時にそれを再び持上げて出すことができる。
【0057】
本発明に係るトレンチ壁カッティング装置10の用法、並びに本発明に係る方法の実行による閉鎖空間内でのカットトレンチのカッティングについて、
図11~
図16との関連でより詳細に説明する。
【0058】
図11に、本発明に係るトレンチ壁カッティング装置10の地中トンネルチューブ5内での配置であり、そのトンネルの孔が
図12に係る部分断面図の如く円形断面を有するものを示す。トレンチ壁カッティング装置10をトンネルチューブ5内に導入するのに先立ち、よく知られている通り、固体案内壁7を有する案内トレンチ6がトンネルチューブ5の底部側に生成される。それら案内壁7は、コンクリート又は鋼製の案内要素を挿入することで、完成させ又は形成することができる。案内トレンチ6は1m~5mの深さとすることができ、よく知られている通り、例えば掘削機又はブレードカッタにより生成される。案内トレンチ6は、よく知られている通り、案内壁7沿いでのトレンチカッタの初期案内に用いられる。本発明に係る方法では、後により詳細に説明する通り、案内トレンチが更に、第1カッタモジュール40を第2カッタモジュール50に連結し組み立てるための組立空間としても用いられる。
【0059】
トレンチ壁カッティング装置は、トンネルチューブ5内に導入される際には上述のトレンチカッティング装置10に相当する態であり、その本質的構成部材として櫓状支持構造20、即ちその内部で第1カッタモジュール40、第2カッタモジュール50、第1送給ユニット80及び第2送給ユニット70が直線可シフト要領で案内され保持される構造を有している。この支持構造20はトンネルチューブ5に適応させてあり、底部担持面21がトンネルチューブ5の底部側でブレース支持され、且つ支持構造20の天井領域23がトンネルチューブ5の天井側でブレース支持されている。トレンチ壁カッティング装置10を底部側だけでブレース支持し、天井側ではそうしないのでもよい。トンネルチューブ5の直径は約2m~6mとなりうる。トンネル断面が相応に大きければトレンチ壁カッティング装置10の側部ブレース支持も考えられるが、それによる制約がないのであれば、側部の隙間を例えば輸送路として用いることができる。
【0060】
図13に係る第1方法ステップでは、カッティングホイール42を有する第1カッタモジュール40が、ロッキング装置89により第1送給ユニット80に連結された後、前以て作成されている案内トレンチ6内へとリフティング装置90により少なくとも部分的に下降されるので、第1カッタモジュール40により支持構造20に沿い第2カッタモジュール50をシフトさせうるようになる。これにより、第2送給ユニット70を第2カッタモジュール50に従いシフトさせること及びそのモジュールに追従させることができる。
図13及び
図14に係るこのポジションでは、第1カッタモジュール40を第2カッタモジュール50と一体化及び連結することができ、それによって、
図15及び
図16に示す通り可作動的なトレンチカッタ30を形成することができる。
【0061】
2個のカッタモジュール40,50間の機械的連結がひとたび確立されたら、ロッキング装置89による第1カッタモジュール40・第1送給ユニット80間ロックを解くことができる。次いで、ホイストケーブル64によりトレンチカッタ30を地中に下降させつつカッティングホイール42を回動させることで、地中物質を掘削してカットトレンチを形成することができる。原理的に、第2送給ユニット70からのホースライン74及びケーブル75をトレンチカッタ30に連結させる一方で、第1送給ユニット80からのケーブル84を恒久連結させることもできる。とはいえ、第1送給ユニット80・第1カッタモジュール40間ケーブル、並びに第2送給ユニット70・第2カッタモジュール50間ケーブルを、それぞれ恒久連結させること並びにセットアップ中の再連結を不要にすることが、望ましい。切除済地中物質は、ポンプ装置の形態を採る駆動ユニット52により吸引ノズル45経由で吸い出した上で、ホースライン74によりカットトレンチから出してトンネルチューブ5内へと運び、そこからトンネルチューブ5外へと運び去ることができる。
【0062】
所望の最終深度に達した暁には、逆の要領で、そのトレンチカッタ30を再び引き上げて分解することができる。支持構造20を有するトレンチ壁カッティング装置10を丸ごと、或いはその支持構造20に沿いカッタモジュール40,50を直線的にシフトさせることで、新たな作業領域に再配置した後に、組立工程を反復することで、トレンチカッタ30を再組立てしトレンチを再びカッティングすることができる。
【0063】
支持構造20は、上掲の例示的実施形態の如く一体部材として構成することだけでなく、互いに間隔配置され或いは枢動ジョイントにより相互連結された複数個の部材からなる多部品構成とすることもできる。トレンチカッタ30を制御・管制するためのコントロールスタンドを設けること、好ましくは支持構造20上又はトレンチカッタ30自体の付近に設けることもできる。原理的に、トレンチカッタ30は、そのトレンチカッタ30上に直に吸引装置を設けることなく形成することもできる。その場合に、相応な吸引装置を支持構造20付近に配置することもできる。そうする代わりに、吸引装置、とりわけポンプを、カッティングホイール42を有する第1カッタモジュール40上に、或いはカッティングホイール42の真っすぐ上方に来ている第2カッタモジュール50上に、設けることもできる。