(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】可変容量型ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20230720BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20230720BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20230720BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B39/00 B
F02B39/00 H
F02B39/00 Z
F02B39/00 E
F02B39/00 Q
F02B39/00 D
F01D25/12 F
F01D9/02 102
(21)【出願番号】P 2021566691
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051173
(87)【国際公開番号】W WO2021130972
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 剛
(72)【発明者】
【氏名】磯田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】段本 洋輔
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-097238(JP,U)
【文献】実開昭62-135802(JP,U)
【文献】実開昭59-168534(JP,U)
【文献】特開2013-164040(JP,A)
【文献】実開昭61-019602(JP,U)
【文献】特開2012-062808(JP,A)
【文献】国際公開第2016/120947(WO,A1)
【文献】特開2008-169788(JP,A)
【文献】特開平05-071427(JP,A)
【文献】特開平08-109856(JP,A)
【文献】米国特許第05406796(US,A)
【文献】特開平04-112957(JP,A)
【文献】特開昭54-012041(JP,A)
【文献】実開昭58-082464(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F02B 39/00
F01D 25/12
F01D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の一端側に設けられたタービンホイールと、
前記回転軸の他端側に設けられたコンプレッサホイールと、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受部を収容する軸受ハウジングと、
前記タービンホイールに流入する排ガスの流量を制御するための可変ノズル機構であって、
前記タービンホイールに排ガスを流入させる排ガス流路を画定するノズルプレートおよびノズルマウント、
前記排ガス流路に支軸を中心に回転可能に配置されるノズルベーン、および、
前記ノズルベーンを回転するための駆動部であって、前記軸受ハウジングと前記ノズルマウントとの間に画定された内部空間に配置された駆動部、を含む可変ノズル機構と、
前記コンプレッサホイールで圧縮された圧縮気体を抽気して前記内部空間に導入するための冷却気体通路と、
を備え、
前記冷却気体通路は、前記内部空間と連通する出口側開口を有し、
前記内部空間を前記回転軸の軸方向に沿って仕切る多孔板であって、前記多孔板の一方側に形成される一方側空間には前記駆動部が配置され、前記多孔板の他方側に形成される他方側空間には前記出口側開口が連通するよう、前記内部空間に配置された多孔板、をさらに備える
可変容量型ターボチャージャ。
【請求項2】
前記コンプレッサホイールを収容するコンプレッサハウジングの内部には、スクロール流路と、前記コンプレッサホイールから吐出された圧縮気体を前記スクロール流路に導くためのディフューザ流路と、が形成され、
前記ディフューザ流路の入口を0%とし、前記ディフューザ流路の出口を100%とした場合に、前記冷却気体通路は、前記ディフューザ流路の50%~100%の領域と連通する入口側開口を有する
請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャ。
【請求項3】
前記軸受ハウジングは、前記回転軸の軸方向に沿って貫通する第1貫通孔を有し、
前記第1貫通孔が前記冷却気体通路の一部を構成する請求項1又は2に記載の可変容量型ターボチャージャ。
【請求項4】
前記コンプレッサホイールを収容するコンプレッサハウジングと、
前記コンプレッサハウジングと前記軸受ハウジングとの間に設けられた外部配管と、をさらに備え、
前記外部配管が前記冷却気体通路の一部を構成する請求項1又は2に記載の可変容量型ターボチャージャ。
【請求項5】
前記多孔板は、径方向内側領域の開口率が径方向外側領域の開口率より大きくなるように構成されている請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャ。
【請求項6】
前記他方側空間に面する前記多孔板の一面は、前記ノズルマウントの表面より放射率が高くなるように構成されている請求項1又は5に記載の可変容量型ターボチャージャ。
【請求項7】
前記ノズルマウントは、前記内部空間と前記排ガス流路とを連通する第2貫通孔であって、前記内部空間に導入された前記圧縮気体が流れるように構成された第2貫通孔を有する請求項1乃至6の何れか一項に記載の可変容量型ターボチャージャ。
【請求項8】
前記タービンホイールは、前記タービンホイールの背面側と、前記タービンホイールの下流側に形成される排ガス出口流路とを連通する第3貫通孔を有する請求項1乃至7の何れか一項に記載の可変容量型ターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変容量型ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
排気ターボチャージャは、エンジンから排出される排ガスのエネルギを利用して、該エンジンに供給される空気を過給するものである。排気ターボチャージャには、可変ノズル機構を備えた可変容量型のものある。可変ノズル機構は、ノズルマウントとノズルプレートとの間に複数のノズルベーンが回転可能に支持され、ノズルベーンの翼角を変化させることができる。ノズルベーンの翼角を変化させることで、タービンホイールに供給される排ガスの流路面積を可変とすることができ、これによって、タービンホイールに供給される排ガスの流速や供給量を調整し、エンジンに供給される空気の過給圧を調整できる。
【0003】
排気ターボチャージャのタービンハウジングに供給される排ガスの温度は、ディーゼルエンジンで800℃前後、ガソリンエンジンで1000℃前後となり、排ガスの高温化に対する部材の耐久性が問題となっている。特許文献1に開示された排気ターボチャージャは、排ガスのタービンハウジング入口温度を1000℃以上に高めることで、熱サイクル効率の改善を図っている。特許文献1では、タービンホイールに冷却孔を形成し、この冷却孔にコンプレッサ側の圧縮空気を供給してタービンホイールを冷却することで、高温環境に対する対策を講じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可変容量型ターボチャージャでは、排ガスの高温化によりノズルマウントが熱変形を起してノズル軸がノズルマウントに固着し、ノズルベーンが回動しなくなったり、あるいは高温下で可変ノズル機構を構成するドライブリングやレバープレート等の摩耗が進む、等の問題がある。
【0006】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、排ガスの高温化によって起こる可変容量型ターボチャージャの構成部材に係る上記問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る可変容量型ターボチャージャは、回転軸と、前記回転軸の一端側に設けられたタービンホイールと、前記回転軸の他端側に設けられたコンプレッサホイールと、前記回転軸を回転可能に支持する軸受部を収容する軸受ハウジングと、前記タービンホイールに流入する排ガスの流量を制御するための可変ノズル機構であって、前記タービンホイールに排ガスを流入させる排ガス流路を画定するノズルプレートおよびノズルマウント、前記排ガス流路に支軸を中心に回転可能に配置されるノズルベーン、および、前記ノズルベーンを回転するための駆動部であって、前記軸受ハウジングと前記ノズルマウントとの間に画定された内部空間に配置された駆動部、を含む可変ノズル機構と、前記コンプレッサホイールで圧縮された圧縮気体を抽気して前記内部空間に導入するための冷却気体通路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る可変容量型ターボチャージャによれば、排ガスが高温化しても、高温環境下で、例えばノズルマウント、ドライブリング及びレバープレート等を含む可変ノズル機構の構成の熱変形や高温下での摩耗等を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャの縦断面図である。
【
図4】一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャの縦断面図である。
【
図5】一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャの縦断面図である。
【
図7】一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
図1~
図7は、幾つかの実施形態に係る可変容量型ターボチャージャ10(10A、10B、10C、10D)を示す。これらの可変容量型ターボチャージャ10は、ハウジングの中心に位置して横方向に回転軸12が配置され、回転軸12の一端側にタービンホイール14が設けられ、回転軸12の他端側にコンプレッサホイール16が設けられている。これら部材を収容するハウジングは、タービンホイール14を収容するタービンハウジング20と、コンプレッサホイール16を収容するコンプレッサハウジング22と、タービンハウジング20とコンプレッサハウジング22との間に設けられ、回転軸12を回転可能に支持する軸受部18を収容する軸受ハウジング24と、で構成されている。
【0012】
さらに、タービンハウジング20の内部にタービンホイール14に流入する排ガスeの流量を制御するための可変ノズル機構26が設けられている。可変ノズル機構26は、ノズルプレート28及びノズルマウント30を備え、ノズルプレート28及びノズルマウント30によってタービンホイール14に排ガスeを流入させる排ガス流路32が画定される。ノズルベーン34が排ガス流路32に支軸36を中心に回転可能に配置されている。軸受ハウジング24とノズルマウント30との間に内部空間Siが画定され、ノズルベーン34を回転するための駆動部38が、内部空間Siに配置されている。そして、コンプレッサホイール16で圧縮された圧縮気体g(例えば、圧縮空気)を抽気して内部空間Siに導入するための冷却気体通路42(42a、42b)を備えている。
【0013】
このような構成によれば、冷却気体通路42を通して内部空間Siにコンプレッサホイール16で圧縮された圧縮気体gを供給することにより、可変ノズル機構26を構成する部材を冷却できるので、高温の排ガスeが導入されるタービンハウジング20の内部で、これら部材の熱変形や摩耗を抑制できる。
【0014】
図2は、
図1中のA矢視方向から視た図である。一実施形態では、
図2に示すように、可変ノズル機構26の駆動部38であって、内部空間Siに配置された駆動部38は、構成部材としてドライブリング45及びレバープレート46を含む。複数のレバープレート46は、一端がドライブリング45に接続されると共に、他端がノズルベーン34の支軸36に結合され、ドライブリング45の周方向に沿って配置されている。ドライブリング45が回転軸12の軸心を中心として矢印b方向に回動することで、ノズルベーン34が支軸36を中心に回動する。これによって、排ガス流路32を通る排ガスeの流速や供給量を調整し、エンジンンに供給される空気の過給圧を調整できる。内部空間Siに配置された駆動部38は、軸受ハウジング24を貫通して軸受ハウジング24の外部に導設された連結部39を介して、軸受ハウジング24の外部に設けられたアクチュエータ40と連結され、アクチュエータ40によって作動する。
【0015】
一実施形態では、排ガス流路32を画定するノズルプレート28及びノズルマウント30を所定の位置に固定するために、ノズルプレート28及びノズルマウント30間にノズルサポート48が架設されている。複数のノズルサポート48がノズルマウント30の周方向に離散して配置されている。
【0016】
一実施形態では、
図1に示すように、コンプレッサハウジング22の内部にスクロール流路51が形成される。コンプレッサホイール16の出口側にディフューザ流路50が形成され、コンプレッサホイール16から吐出された圧縮気体gの運動エネルギはディフューザ流路50で圧力エネルギに変換される。冷却気体通路42は、コンプレッサホイール16を収容するディフューザ流路50の出口側領域と連通する入口側開口43を有する。冷却気体通路42は、入口側開口43がディフューザ流路50の出口側領域に開口し、ディフューザ流路50の出口側領域から圧縮気体gを抽気して内部空間Siに導入するように構成されている。これによって、ディフューザ流路50を経て高圧となった圧縮気体gを内部空間Siに供給できる。冷却気体通路42の入口側と出口側との圧力差によって、他の動力を必要とせず圧縮気体gを容易に内部空間Siに供給できる。
【0017】
図3は、ディフューザ流路50を示す拡大図である。
図3に示すように、ディフューザ流路50の入口を0%とし、出口を100%とすると、本明細書で言う「ディフューザ流路50の出口側領域」とは、圧縮気体gの圧力が高くなる50~100%の領域及びスクロール流路51に面した領域を指し、入口側開口43はこの領域に開口するのがよい。好ましくは、入口側開口43は、ディフューザ流路50の80~100%の出口側領域又はスクロール流路51に面した領域に開口するのがよい。但し、スクロール流路51のうちディフューザ流路50の出口から離れた領域では、長い冷却気体通路42を形成しなければならないので、冷却気体通路42はディフューザ流路50の出口付近の領域に開口するのがよい。
【0018】
幾つかの実施形態では、
図1、
図5及び
図7に示すように、軸受ハウジング24は、回転軸12の軸方向に沿って貫通する貫通孔52(第1貫通孔)を有し、貫通孔52が冷却気体通路42(42a)の一部を構成する。この実施形態では、ディフューザ流路50の出口側領域で抽気された圧縮気体gは貫通孔52を流れて内部空間Siに達するように構成されている。このように、冷却気体通路42(42a)の一部を軸受ハウジング24の内部に形成できるので、軸受ハウジング24の外側に冷却気体通路用のスペースを必要としない。
【0019】
一実施形態では、
図4に示すように、コンプレッサハウジング22と前記軸受ハウジング24との間に外部配管54が架設され、外部配管54が冷却気体通路42(42b)の一部を構成する。この実施形態では、冷却気体通路42(42b)は、コンプレッサハウジング22の隔壁に形成された流路56と、外部配管54と、軸受ハウジング24の隔壁に形成された流路58とで構成される。この実施形態によれば、外部配管54によって冷却気体通路42(42b)の一部を軸受ハウジング24の外側に形成できるため、冷却気体通路42の形成が比較的容易になる。
【0020】
一実施形態では、外部配管54に、圧縮気体gが内部空間Siからコンプレッサハウジング22側へ逆流するのを防止するための逆止弁60を設けてもよい。また、図示しないが、貫通孔52に同様の機能を有する逆止弁を設けてもよい。
【0021】
一実施形態では、
図1に示すように、冷却気体通路42(42a)は内部空間Siと連通する出口側開口44を有する。さらに、
図5~
図7に示すように、内部空間Siに多孔板62を備えている。内部空間Siは、回転軸12と直交する方向に沿って延在する多孔板62によって回転軸12の軸方向に沿って2つの空間S
1及びS
2に仕切られている。多孔板62によって排ガス流路32側に仕切られた空間S
1(一方側空間)には、駆動部38を構成するドライブリング45及びレバープレート46等が配置される。多孔板62のコンプレッサハウジング22側に形成される空間S
2(他方側空間)には、出口側開口44が連通している。
【0022】
この実施形態によれば、出口側開口44から内部空間Siの空間S2に供給された圧縮気体gは、多孔板62の貫通孔を通るときに複数の多孔板62から噴出する噴流に分散され、かつ整流されて増速される。この噴流が空間S2に配置されたドライブリング45及びレバープレート46やノズルマウント30等に噴流として衝突して、所謂噴流冷却(インピンジメント冷却)がなされる。そのため、これら部材の冷却効果を向上できる。
【0023】
一実施形態では、多孔板62は、径方向内側領域の開口率が径方向外側領域の開口率より大きくなるように構成されている。ノズルマウント30、ドライブリング45及びレバープレート46のうち、排ガス流路32に最も近く最も加熱されやすいノズルマウント30を優先的に冷却する必要がある。
図1中のA方向から視たとき、
図2に示すように、ドライブリング45より径方向内側で視認可能なノズルマウント30の領域は、ドライブリング45より径方向外側で視認可能なノズルマウント30の領域より大きくなっている。また、ノズルマウント30の外周端付近の領域は、軸受ハウジング24が接しているため、内部空間Siに面していない。そこで、多孔板62の径方向内側領域の開口率を径方向外側領域の開口率より大きく取ることで、ノズルマウント30に衝突する圧縮気体gの流量を増加でき、これによって、ノズルマウント30の冷却効果を向上できる。
【0024】
図6は、一実施形態に係る多孔板62の正面図である。多孔板62に形成された複数の貫通孔64は、径方向内側領域R
2の開口率X
2が径方向外側領域R
1の開口率X
1より大きくなるように構成されている。ここで、開口率X
1、X
2は、次の(1)式及び(2)式で定義される。
開口率X
1=領域R
1における貫通孔64の総面積/領域R
1の総面積 (1)
開口率X
2=領域R
2における貫通孔64の総面積/領域R
2の総面積 (2)
貫通孔64の形状、大きさ、数及び貫通孔62間のピッチ等は適宜設定できる。例えば、周方向又は径方向に延在するスリット状の形状にしてもよい。
【0025】
図6において、領域R
1と領域R
2との境界Bは、多孔板62の内周縁を0%、外周面を100%と設定すると、境界Bは、例えば、30~70%(好ましくは、40~60%)の領域に設定されるとよい。
【0026】
一実施形態では、空間S2に面する多孔板62の面は、ノズルマウント30の表面より放射率が高くなるように構成されている。ここで、「放射率」とは、赤外線を含む電磁波全体の熱放射線の放射率であり、次の(3)式で定義される。
放射率=物体の放射発散度/同じ温度の黒体の放射発散度・・・(3)
多孔板62が熱放射線を吸収すると温度が高くなり、熱放射線を放射すると温度が低くなる。冷却気体通路42が内部空間Siと連通する出口側開口44に面する多孔板62の面がノズルマウント30の表面より放射率が高いため、出口側開口44に面する多孔板62の面は内部空間Siに面するノズルマウント30の面より低温となる。このように、出口側開口44に面する多孔板62の面が低温となるため、ノズルマウント30、ドライブリング45及びレバープレート46等の冷却効果を高めることができる。これによって、これら部材の熱変形や熱焼損を抑制できる。
【0027】
多孔板62の面の放射率を高くする手段として、例えば、該面に黒色塗料を塗布するなどの表面処理や、該面に凹凸を付けたり、該面の粗度を粗くする、等の手段がある。
【0028】
一実施形態では、
図5及び
図7に示すように、軸受ハウジング24の内部に冷却水が供給される冷却水通路66が形成される。冷却水通路66に冷却水を循環させることで、軸受ハウジング24を冷却できる。かかる軸受ハウジング24の冷却手段と出口側開口44に面する多孔板62の面に対する上記冷却手段とを組み合わせることで、ノズルマウント30、ドライブリング45及びレバープレート46等の冷却効果をさらに高めることができる。
【0029】
一実施形態では、
図5に示すように、ノズルマウント30に、内部空間Siと排ガス流路32とを連通する貫通孔68(第2貫通孔)が形成され、内部空間Siに導入された圧縮気体gは、貫通孔68を通って排ガス流路32に導入可能に構成されている。この実施形態によれば、圧縮気体gが貫通孔68を通って排ガス流路32に導入されるので、排ガス流路32を流れる排ガスeを冷却でき、これによって、ノズルマウント30、ドライブリング45及びレバープレート46等を冷却できる。さらに、貫通孔68を通った圧縮気体gが排ガス流路32を流れる排ガスeに加わるため、タービンホイール14に供給される排ガス流量が増加する。これによって、タービンホイール14の出力を増加できる。
【0030】
一実施形態では、貫通孔68の出口開口をノズルベーン34の周辺、例えば、上流側又は下流側の排ガス流路32に配置する。特に、貫通孔68の出口開口から排ガス流路32に流出した圧縮気体gがノズルベーン34を通過するように、貫通孔68の出口開口を配置すると、ノズルベーン34の冷却効果を高めることができる。
【0031】
一実施形態では、タービンホイール14に、タービンホイール14の背面側と、タービンホイール14の下流側に形成される排ガス出口流路72とを連通する貫通孔70(第3貫通孔)が形成される。この実施形態では、内部空間Siに導入された圧縮気体gは、貫通孔68を通って排ガス出口流路72に流出する。これによって、タービンホイール14を冷却できる。
【0032】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0033】
(1)一つの態様に係る可変容量型ターボチャージャは、回転軸と、前記回転軸の一端側に設けられたタービンホイールと、前記回転軸の他端側に設けられたコンプレッサホイールと、前記回転軸を回転可能に支持する軸受部を収容する軸受ハウジングと、前記タービンホイールに流入する排ガスの流量を制御するための可変ノズル機構(例えば、
図1に示す可変ノズル機構26)であって、前記タービンホイールに排ガスを流入させる排ガス流路(例えば、
図1に示す排ガス流路32)を画定するノズルプレートおよびノズルマウント、前記排ガス流路に支軸を中心に回転可能に配置されるノズルベーン、および、前記ノズルベーンを回転するための駆動部(例えば、
図1に示す駆動部38)であって、前記軸受ハウジングと前記ノズルマウントとの間に画定された内部空間(例えば、
図1に示す内部空間Si)に配置された駆動部、を含む可変ノズル機構(例えば、
図1に示す可変ノズル機構26)と、前記コンプレッサホイールで圧縮された圧縮気体を抽気して前記内部空間に導入するための冷却気体通路(例えば、
図1に示す冷却気体通路42(42a)及び
図4に示す冷却気体通路42(42b)と、を備える。
【0034】
このような構成によれば、上記冷却気体通路を介して軸受ハウジングとノズルマウントとの間に画定された内部空間にコンプレッサホイールで圧縮された圧縮気体を供給することにより、ノズルマウントや可変ノズル機構の駆動部を構成するドライブリングやレバープレート等を冷却できるので、これら部材の熱変形や摩耗を抑制できる。
【0035】
(2)一実施形態では、(1)に記載の可変容量型ターボチャージャであって、前記冷却気体通路は、前記コンプレッサホイールを収容するディフューザ流路(例えば、
図1に示すディフューザ流路50)の出口側領域と連通する入口側開口(例えば、
図1に示す入口側開口43)を有する。
【0036】
このような構成によれば、冷却気体通路の入口側開口が、ディフューザ流路の出口側領域に開口しているため、ディフューザ流路を経て高圧となった圧縮気体を上記内部空間に供給できる。冷却気体通路の入口側と出口側との圧力差によって、他の動力を必要とせず圧縮気体を容易に出口側の内部空間に供給できる。
【0037】
(3)一実施形態では、(1)又は(2)に記載の可変容量型ターボチャージャであって、前記軸受ハウジングは、前記回転軸の軸方向に沿って貫通する第1貫通孔(例えば、
図1に示す貫通孔52)を有し、前記第1貫通孔が前記冷却気体通路の一部を構成する。
【0038】
このような構成によれば、冷却気体通路の一部を軸受ハウジングの内部に形成できるので、軸受ハウジングの外側に冷却気体通路用のスペースを必要としない。
【0039】
(4)一実施形態では、(1)又は(2)に記載の可変容量型ターボチャージャであって、前記コンプレッサホイールを収容するコンプレッサハウジングと、前記コンプレッサハウジングと前記軸受ハウジングとの間に設けられた外部配管(例えば、
図4に示す外部配管54)と、をさらに備え、前記外部配管が前記冷却気体通路の一部を構成する。
【0040】
このような構成によれば、上記外部配管によって冷却気体通路の一部を形成できるため、冷却気体通路の形成が比較的容易になる。
【0041】
(5)一実施形態では、(1)乃至(4)の何れかに記載の可変容量型ターボチャージャであって、前記冷却気体通路は、前記内部空間と連通する出口側開口(例えば、
図1に示す出口側開口44)を有し、前記内部空間を前記回転軸の軸方向に沿って仕切る多孔板であって、前記多孔板の一方側に形成される一方側空間には前記駆動部が配置され、前記多孔板の他方側に形成される他方側空間には前記出口側開口が連通するよう、前記内部空間に配置された多孔板(例えば、
図5に示す多孔板62)をさらに備える。
【0042】
このような構成によれば、上記内部空間に供給された圧縮気体は、上記多孔板の貫通孔を通るときに分散され整流されると共に増速されるため、内部空間の上記一方側空間に配置された可変ノズル機構の構成部材に噴流として衝突し、所謂噴流冷却(インピンジメント冷却)されるため、これら部材の冷却効果を向上できる。
【0043】
(6)一実施形態では、(5)に記載の可変容量型ターボチャージャであって、前記多孔板は、径方向内側領域(例えば、
図6に示す径方向内側領域R
2)の開口率が径方向外側領域(例えば、
図6に示す径方向外側領域R
1)の開口率より大きくなるように構成されている。
【0044】
このような構成によれば、圧縮気体の流れ方向上流側から視たときのノズルマウントの露出面積が径方向外側領域より径方向内側領域のほうが広いため、多孔板の径方向内側領域より径方向外側領域の開口率を大きくすることで、ノズルマウントに衝突する圧縮気体の流量を増加できる。これによって、ノズルマウントの冷却効果を向上できる。
【0045】
(7)一実施形態では、(5)又は(6)に記載の可変容量型ターボチャージャであって、前記他方側空間に面する前記多孔板の一面は、前記ノズルマウントの表面より放射率が高くなるように構成されている。
【0046】
多孔板は、熱放射線を吸収すると温度が高くなり、放射すると温度が低くなる。上記構成によれば、冷却気体通路が内部空間と連通する出口側開口に面する多孔板の面がノズルマウントの表面より放射率が高いため、該出口側開口に面する多孔板の面はノズルマウントより低温となる。該面がノズルマウントより低温となることで、ノズルマウントや可変ノズル機構の駆動部を構成する部材の熱変形や熱焼損を抑制できる。
【0047】
(8)一実施形態では、(1)乃至(7)の何れかに記載の可変容量型ターボチャージャであって、前記ノズルマウントは、前記内部空間と前記排ガス流路とを連通する第2貫通孔であって、前記内部空間に導入された前記圧縮気体が流れるように構成された第2貫通孔(例えば、
図5に示す貫通孔68)を有する。
【0048】
このような構成によれば、圧縮気体が上記第2貫通孔を通して排ガス流路に導入されるので、排ガス流路を流れる排ガスを冷却でき、これによって、排ガス流路に面したノズルマウント、ノズルプレート及びノズルベーン等を冷却できる。また、第2貫通孔を通った圧縮気体が排ガス流路を流れる排ガスに加わることで、タービンホイールに供給される排ガス流量が増加するため、タービンホイールの出力を増加できる。
【0049】
(9)一実施形態では、(1)乃至(8)の何れかに記載の可変容量型ターボチャージャであって、前記タービンホイールは、前記タービンホイールの背面側と、前記タービンホイールの下流側に形成される排ガス出口流路とを連通する第3貫通孔(例えば、
図7に示す貫通孔70)を有する。
【0050】
このような構成によれば、内部空間に導入された圧縮気体を上記第3貫通孔に通すことで、タービンホイールを冷却できる。
【符号の説明】
【0051】
10(10A、10B、10C、10D) 可変容量型ターボチャージャ
12 回転軸
14 タービンホイール
16 コンプレッサホイール
18 軸受部
20 タービンハウジング
22 コンプレッサハウジング
24 軸受ハウジング
26 可変ノズル機構
28 ノズルプレート
30 ノズルマウント
32 排ガス流路
34 ノズルベーン
36 支軸
38 駆動部
39 連結部
40 アクチュエータ
42(42a、42b) 冷却気体通路
43 入口側開口
44 出口側開口
45 ドライブリング
46 レバープレート
48 ノズルサポート
50 ディフューザ流路
51 スクロール流路
52 貫通孔(第1貫通孔)
54 外部配管
56、58 流路
60 逆止弁
62 多孔板
64 貫通孔
66 冷却水通路
68 貫通孔(第2貫通孔)
70 貫通孔(第3貫通孔)
72 排ガス出口流路
B 境界
R1 径方向外側領域
R2 径方向内側領域
S1 空間(一方側空間)
S2 空間(他方側空間)
Si 内部空間
e 排ガス
g 圧縮気体