(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】多相赤外線透過性セラミック材料
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230720BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20230720BHJP
F42B 10/46 20060101ALN20230720BHJP
【FI】
G02B5/20
G01J1/02 H
F42B10/46
(21)【出願番号】P 2022505214
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2020037275
(87)【国際公開番号】W WO2021021323
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-25
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】リーデル,エリック ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ハートネット,トーマス エム.
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0315808(US,A1)
【文献】特表平04-502748(JP,A)
【文献】特開2010-241621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0011839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G01J 1/02
F42B 10/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学窓であって、
赤外線透過性光学材料を有し、
該赤外線透過性光学材料は、
第1のセラミック材料、および該第1のセラミック材料に分散された第1のドーパントを含む、第1のセラミック相と、
前記第1のセラミック相と均質に混合された第2のセラミック相であって、第2のセラミック材料、および該第2のセラミック材料に分散された第2のドーパントを含む、第2のセラミック相と、
を有し、
前記第1のドーパントは、該第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対し、前記第1のセラミック材料の屈折率を高め、前記第2のドーパントは、該第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対し、前記第2のセラミック材料の屈折率を低下させ、
前記第1のセラミック相は、酸化マグネシウムを含み、前記第1のドーパントは、酸化亜鉛、酸化カルシウム、または酸化亜鉛と酸化カルシウムの混合物を含み、
前記第2のセラミック相は、酸化イットリウム、またはそれらの混合物を含み、前記第2のドーパントは、酸化スカンジウム、酸化ガドリニウム、またはそれらの混合物を含み、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック相の屈折率と前記第2のセラミック相の屈折率の差
が0.001か
ら0.2の範囲になるような量で存在する、光学窓。
【請求項2】
前記第1のドーパントは、前記第1のセラミック相
の2重量%か
ら20重量%の範囲である、請求項
1に記載の光学窓。
【請求項3】
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック材料の屈折率と前記第2のセラミック材料の屈折率の差が
、0.001か
ら0.19の範囲になるような量で存在する、請求項1
または2に記載の光学窓。
【請求項4】
前記第1のドーパントは、前記第1のセラミック相の周囲に均一に分散され、前記第2のドーパントは、前記第2のセラミック相の周囲に均一に分散される、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の光学窓。
【請求項5】
前記赤外線透過性光学材料の赤外放射線のインライン透過率は
、50%か
ら100%の範囲であり、
前記
赤外線透過性光学材料の放射率は
、0か
ら0.3の範囲である、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の光学窓。
【請求項6】
前記赤外線透過性光学材料の赤外線放射のインライン透過率は
、90%か
ら100%の範囲であり、
前記
赤外線透過性光学材料の放射率は
、0か
ら0.1の範囲である、請求項
5に記載の光学窓。
【請求項7】
マルチスペクトルセンサであって、
赤外線透過性光学材料を有し、
該赤外線透過性光学材料は、
第1のセラミック材料、および該第1のセラミック材料に分散された第1のドーパントを含む、第1のセラミック相と、
前記第1のセラミック相と均質に混合された第2のセラミック相であって、第2のセラミック材料、および該第2のセラミック材料に分散された第2のドーパントを含む、第2のセラミック相と、
を有し、
前記第1のドーパントは、該第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対し、前記第1のセラミック材料の屈折率を高め、前記第2のドーパントは、該第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対し、前記第2のセラミック材料の屈折率を低下させ、
前記第1のセラミック相は、酸化マグネシウムを含み、前記第1のドーパントは、酸化亜鉛、酸化カルシウム、または酸化亜鉛と酸化カルシウムの混合物を含み、
前記第2のセラミック相は、酸化イットリウム、またはそれらの混合物を含み、前記第2のドーパントは、酸化スカンジウム、酸化ガドリニウム、またはそれらの混合物を含み、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック相の屈折率と前記第2のセラミック相の屈折率の差
が0.001か
ら0.2の範囲になるような量で存在し、
当該マルチスペクトルセンサは、
前記赤外線透過性光学材料に光学的に結合され、受光赤外線に応答する赤外線センサと、
該赤外線センサの出力信号を処理する処理回路と、
を有する、マルチスペクトルセンサ。
【請求項8】
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック材料の屈折率と前記第2のセラミック材料の屈折率の差が
、0.001か
ら0.2の範囲となる量で存在する、請求項
7に記載のマルチスペクトルセンサ。
【請求項9】
前記赤外線透過性光学材料の赤外放射線のインライン透過率は
、50%か
ら100%の範囲であり、
前記
赤外線透過性光学材料の放射率は
、0か
ら0.3の範囲である、請求項
7または8に記載のマルチスペクトルセンサ。
【請求項10】
前記第1のドーパントは、前記第1のセラミック相の周りに均一に分散され、
前記第2のドーパントは、前記第2のセラミック相の周りに均一に分散される、請求項
7乃至
9のいずれか一項に記載のマルチスペクトルセンサ。
【請求項11】
赤外線透過性光学材料であって、
第1のセラミック材料、および該第1のセラミック材料に分散された第1のドーパントを含む、第1のセラミック相と、
前記第1のセラミック相と均質に混合された第2のセラミック相であって、第2のセラミック材料および該第2のセラミック材料に分散された第2のドーパントを含む、第2のセラミック相と、
を有し、
前記第1のドーパントは、該第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対し、前記第1のセラミック材料の屈折率を高め、前記第2のドーパントは、該第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対し、前記第2のセラミック材料の屈折率を低下させ、
前記第1のセラミック相は、酸化マグネシウムを含み、前記第1のドーパントは、酸化亜鉛、酸化カルシウム、または酸化亜鉛と酸化カルシウムの混合物を含み、
前記第2のセラミック相は、酸化イットリウム、またはそれらの混合物を含み、前記第2のドーパントは、酸化スカンジウム、酸化ガドリニウム、またはそれらの混合物を含み、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック相の屈折率と前記第2のセラミック相の屈折率の差が
、0.001か
ら0.2の範囲になるような量で存在する、赤外線透過性光学材料。
【請求項12】
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック材料の屈折率と前記第2のセラミック材料の屈折率の差が
、0.001か
ら0.19の範囲になるような量で存在する、請求項
11に記載の赤外線透過性光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2019年7月29日出願の米国特許出願第62/879,868号の優先権の利益を主張するものであり、この内容は、参照により本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料は、各種波長の電磁放射に対して透過性のある構造物の形成に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、あるセラミック材料は、極端な力または温度に晒された際に十分な構造的完全性を有しないことがある。また、セラミック材料が複数の材料を含む場合、各材料の屈折率の不整合がセラミック材料の透過率および放射率に影響を及ぼす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示の各種実施形態は、光学窓に関する。好適な光学窓の例は、レードームである。光学窓は、赤外線透過性光学材料を有する。光学材料は、第1のセラミック材料と、その中に分散された第1のドーパントとを含む第1のセラミック相を有する。さらに、光学材料は、第1のセラミック相と均質に混合された第2のセラミック相を有し、該第2のセラミック相は、第2のセラミック材料と、その中に分散された第2のドーパントとを有する。第1のドーパントは、該第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対し、第1のセラミック材料の屈折率を高め、第2のドーパントは、該第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対し、第2のセラミック材料の屈折率を低下させる。第1のドーパントおよび第2のドーパントは、第1のセラミック相の屈折率と第2のセラミック相の屈折率の差が、約0.001から約0.2の範囲になるような量で存在する。
【0005】
開示の各種実施形態は、マルチスペクトルセンサに関する。当該センサは、赤外線透過性光学材料を含む。光学材料は、第1のセラミック材料と、その中に分散された第1のドーパントとを含む第1のセラミック相を有する。光学材料は、さらに、第1のセラミック相と均質に混合された第2のセラミック相を有し、該第2のセラミック相は、第2のセラミック材料と、その中に分散された第2のドーパントとを有する。第1のドーパントは、該第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対し、第1のセラミック材料の屈折率を高め、第2のドーパントは、該第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対し、第2のセラミック材料の屈折率を低下させる。第1のドーパントおよび第2のドーパントは、第1のセラミック相の屈折率と第2のセラミック相の屈折率の差が約0.001から約0.2の範囲になるような量で存在する。センサは、さらに、赤外光透過性光学材料と光学的に結合された、赤外線に応答する赤外線センサを有する。センサは、さらに、赤外線センサの出力信号を処理する処理回路を有する。
【0006】
開示の各種実施形態は、赤外線透過性光学材料に関する。光学材料は、第1のセラミック材料と、その中に分散された第1のドーパントとを含む第1のセラミック相を有する。光学材料は、さらに、第1のセラミック相と均質に混合された第2のセラミック相を有し、該第2のセラミック相は、第2のセラミック材料と、その中に分散された第2のドーパントとを有する。第1のドーパントは、該第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対し、第1のセラミック材料の屈折率を高め、第2のドーパントは、該第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対し、第2のセラミック材料の屈折率を低下させる。第1のドーパントおよび第2のドーパントは、第1のセラミック相の屈折率と第2のセラミック相の屈折率の差が約0.001から約0.2の範囲になるような量で存在する。
【0007】
図面には、概して、これに限られるものではないが、本案に記載される各種実施形態を一例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】各種実施形態による、共ドープされたセラミック材料を含む一体型(one-piece)延長ドームを組み込んだ誘導発射体のノーズの等角図を示した図である。
【
図1B】各種実施形態による、共ドープされたセラミック材料を含む一体型延長ドームを組み込んだ誘導発射体のノーズの断面図を示した図である。
【
図2A】各種実施形態による各種ドームの異なる球-円錐形状の断面図である。
【
図2B】各種実施形態による各種ドームの異なる球-円錐形状の断面図である。
【
図2C】各種実施形態による各種ドームの異なる球-円錐形状の断面図である。
【
図3】各種実施形態による各種ドームの球-尖頭アーチ(ogive)形状の断面図である。
【
図4】各種実施形態による、共ドープされたナノ複合体光セラミック材料から、一体型延長ドームを製造するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、開示された主題の特定の実施形態を詳細に参照する。実施形態の一例は、添付の図面に示されている。開示の主題は、一連の請求項とともに説明されるが、例示の主題は、開示の主題に請求項を限定することを意図するものではないことが理解される。
【0010】
本願を通して、範囲形式で表現された値は、範囲の限界として明示的に列挙された数値を含む上、各数値およびサブ範囲が明示的に列挙されているものとして、その範囲内に包含された全ての個々の数値またはサブ範囲を含むように、柔軟に解釈される必要がある。例えば、「約0.1%から約5%」または「約0.1%から5%」の範囲は、約0.1%から約5%までだけではなく、個々の値(例えば、1%、2%、3%および4%)、および示された範囲内のサブ範囲(例えば、0.1%から0.5%、1.1%から2.2%、3.3%から4.4%)も含むと解される必要がある。「約XからY」という表現は、特に記載がない限り、「約Xから約Y」と同じ意味を表す。同様に、「約X、Y、または約Z」という表現は、特に記載がない限り、「約X、約Y、または約Z」と同じ意味を表す。
【0011】
本願において、文脈で別のことを明確に示唆しない限り、用語「a」、「an」または「the」は、1または2以上を含むために使用される。用語「または」は、特段の記載がない限り、非排他的な「または」を表すために使用される。「AおよびBの少なくとも1つ」という表現は、「A、B、またはAおよびB」と同じ意味を有する。また、本願で使用される用語の語句または用語は、他に記載がない限り、限定的なものではなく、単なる説明用であることを理解する必要がある。章の見出しの任意の使用は、文書の読解を支援することを意図するものであり、限定するものと解してはならない。章の見出しに関する情報は、特定の章の中、または外で生じてもよい。
【0012】
本願に記載の方法では、時間的なまたは操作上のシーケンスが明示的に記載されている場合を除き、動作は、開示の原理から逸脱せずに、任意の順序で実行されてもよい。また、特定の動作は、これらが別個に行われることが明示的に記載された文言がない限り、同時に実施することができる。例えば、Xを行うことが記載された動作と、Yを行うことが記載された動作は、単一の操作で同時に実行することができ、得られる処理方法は、記載された方法の文言の範囲内に含まれる。
【0013】
本願で使用される「約」という用語は、例えば、規定された値もしくは規定された範囲の限度の10%以内、5%以内、もしくは1%以内の範囲の値または範囲の変動の度合いを許容するとともに、正確な記載された値または範囲も含む。
【0014】
本願で使用される「実質的に」という用語は、大部分またはほとんどが、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、または少なくとも約99.999%以上、または少なくとも約100%であることを表す。
【0015】
「赤外線(IR)スペクトル」という用語は、一般に、0.7から300μmの波長を有する電磁放射線を意味する。IRスペクトルは、範囲に分割されてもよく、これは、センサ応答分割スキーム、天文学分割スキーム、CIEスキーム、またはISO 20473スキームのような、使用されるスキームに応じて変化し得る。
【0016】
「可視範囲」という用語は、約0.4から約0.75μmの波長範囲を有する放射線を表す。「近赤外線(NIR)」という用語は、約0.75から約1.4μmの波長範囲を有する放射線を表すと見なされるが、「短波長赤外線(SWIR)」という用語は、約1.4から約3μmの波長範囲を表すことが考慮される。ただし本願で使用される場合、注記されている場合を除き、「短波長赤外線」(SWIR)という用語は、近赤外(NIR)およびSWIRの両方を包含することを意図し、約0.75から約3μmの波長範囲を有する放射線を表し、「アイセーフ」波長範囲は、約1.5から約1.8μmであることが考慮される。一般に、「中間赤外線」とも称される中波長赤外線(MWIR)は、一般に約3から約8μm、可能な場合、最大約8.5μmまでの放射線を含むと見なされる。しかしながら、誘導ミサイル用途では、この帯域の約3から約5μmの部分は、一般に、パッシブIR「熱追跡」ミサイルの帰還ヘッドが作動し、目標物のIRサインに帰還するように設計された大気窓である。すなわち、この範囲は、一般に、大気を通過できる波長の範囲であると見なされる。従って、本願に記載の新規な材料のほとんどのMWIR用途では、約3から約5μmの範囲内に含まれ得るが、特段の記載がない限り、MWIRスペクトルに関する実施形態に限定されないことが理解される。一般に、「熱画像形成」領域と見なされる長波長赤外線(LWIR)は、約8(または可能な場合、約8.5μm)から約15μmまでの間、または約12から14μmまでの波長を有する放射線を表す。前方監視赤外線(FLIR)システムでは、スペクトルのこの領域が使用され、時折、「遠赤外」(FIR)とも称される。
【0017】
通常、ターゲット取得、識別、ガイダンス等のようなタスクの電気光学センサ(EO)を搭載した空挺プラットフォームには、IR透過性のドームまたはレードームが設けられ、光学システムが保護される。ミサイル、迎撃体、誘導発射体、爆弾、ロケット、砲弾、およびサブ軍需品のような発射体は、前端にドームを有し得る。このドームの後方、および発射体の本体内には、EOシーカが提供され、ターゲットからの電磁放射線(EMR)が捕獲されるとともに、ターゲット情報(例えば、ベアリングまたは画像)が誘導システムに伝達され、これにより、発射体が捕獲された画像内の物体または点に誘導される。飛行機またはヘリコプターのような航空機には、誘導赤外線対抗措置(DIRCM)システムが提供され、ミサイル探知機が妨害される。このシステムは、腹部、尾部区画、または保護ドームの後方の航空機上の他の場所に、取り付けられてもよい。通常、ドームは、ミサイルまたは航空機の飛行中に生じる可能性のある空気力学的および熱的な応力に耐え得る透明材料で構成される。多くの一般的な用途では、ドームは、サファイアで構成される。
【0018】
光学窓を形成するサファイアとは異なり、別の光学材料は、セラミック材料(例えば、二相セラミック複合体)であってもよい。しかしながら、セラミック材料が複数の相を含む場合、これらの材料は、それぞれの相の屈折率の差があまりに大きすぎる場合、例えば、スペクトルのSWIRおよび可視部分のような、スペクトルの所望の部分において、光を透過できなくてもよい。差が極端に大きい場合、可視光とSWIRに関するより短波長の光が散乱し、不透明化が生じる。ある設計では、単相セラミック材料を使用することのみにより、セラミック材料におけるこの問題を軽減する試みが行われている。しかしながら、これらの材料は、しばしば、誘導発射体の発射および飛行中に存在する空気力学的な力を受けた際に、機能強度が不足し得る。
【0019】
これらの問題に対する可能性のある対策として、本開示では、赤外線透過性多相共ドープセラミック材料を含む光学材料の各種実施形態が記載される。各相はドープされ、各相の屈折率が実質的に整合されることが助長される。例えば、各種実施形態では、光学材料は、第1のセラミック相および第2のセラミック相を有し、各セラミック相は、固溶体相であってもよい。固溶体相は、同じ結晶格子において少なくとも2つの異なるカチオンが相互に混合された単相領域であり、原子レベルでの均一な混合物または溶液を得ることが可能となる。従って、液体溶液を形成する液体の混合物とは異なり、固溶体は、結晶格子(原子の周期的配置)を有する。
【0020】
各種実施形態では、第1のセラミック相および第2のセラミック相は、独立に、光学材料の約5vol%から約95vol%、約30vol%から約70vol%、約40vol%から約60vol%の範囲であってもよく、約5vol%、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、もしくは約95vol%以下、またはそれ以上であってもよい。
【0021】
各セラミック相は、セラミック材料とドーパントの両方を含む。好適なセラミック材料の例には、イットリア(Y2O3)、マグネシア(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、アルミニウムマグネシウム酸化物(MgAl2O4)、炭化物、オキシカーバイド、窒化物、酸窒化物、ホウ化物、ホウ酸化物、スルフィド、セレン化物、スルホセレン化物、またはこれらの混合物が含まれ得る。第1のセラミック相と第2のセラミック相は、同じセラミック材料を含むことが可能であるが、第1のセラミック相と第2のセラミック相は、異なるセラミック材料を有することも可能である。各種実施形態では、第1のセラミック相は、イットリアを含み、第2のセラミック相は、マグネシアを含む。第1のセラミック材料および第2のセラミック材料は、それぞれ独立に、第1のセラミック相および第2のセラミック相の約10重量%から約95重量%の範囲、約20重量%から約90重量%、約30重量%から約80重量%、約40重量%から約60重量%の範囲であってもよく、約10重量%、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、もしくは約95重量%以下、またはそれ以上であってもよい。各種実施形態では、あるセラミック相から別のセラミック相において、ドーパントの相互拡散の量がある程度存在してもよく、この場合、散乱がさらに抑制され、インライン透過が増加する。ある実施形態では、これは、粒界相(例えば第3の相)を形成し、粒界相は、約1nmから約10nm、約2nmから約8nm、約4nmから約6nmの範囲の厚さ、約1nm、1.5nm、2nm、2.5nm、3nm、3.5nm、4nm、4.5nm、5nm、5.5nm、6 nm、6.5nm、7nm、7.5nm、8nm、8.5nm、9nm、9.5nm、もしくは約10nm以下、またはそれ以上の厚さを有してもよい。
【0022】
ドーパントおよびセラミック材料は、それぞれのセラミック相において均一に混合され得る。第1のセラミック相および第2のセラミック相の各々におけるドーパントは、それぞれ、多くの好適なドーパントから選択できる。好適なドーパントの例には、以下の金属酸化物が含まれ得る:酸化カルシウム、酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(III)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三酸化ヒ素、五酸化ヒ素、酸化バリウム、酸化ビスマス(III)、酸化ビスマス(V)、酸化カルシウム、酸化セリウム(III)、酸化セリウム(IV)、酸化クロム(II)、酸化クロム(III)、酸化クロム(IV)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(II,III)、酸化コバルト(III)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化鉄(II)、酸化鉄(II,III)、酸化鉄(III)、酸化ランタン、酸化鉛(II)、酸化鉛(II,IV)、酸化鉛(IV)、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)、酸化マンガン(VII)、酸化水銀(II)、酸化ルビジウム、二酸化ケイ素、酸化銀(I)、酸化タリウム(I)、酸化タリウム(III)、酸化トリウム(IV)、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、酸化タングステン(VI)、酸化スカンジウム、酸化ガドリニウム、またはこれらの混合物。第1のドーパントおよび第2のドーパントは、同じドーパントであっても、異なるドーパントであってもよい。
【0023】
第1のドーパントおよび第2のドーパントは、独立に、第1のセラミック相および第2のセラミック相中に、それぞれ、約0.5重量%から約50重量%、約2重量%から約20重量%、約5重量%から約10重量%の範囲で存在してもよく、約0.5重量%、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは約50重量%以下、またはそれ以上存在してもよい。
【0024】
ドーパントの選択は、それぞれのセラミック相のセラミック材料の特性に影響を及ぼし得る。例えば、第1のドーパントは、第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対して、第1のセラミック材料の屈折率を高めることができる。また、第2のドーパントは、第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対して、第2のセラミック材料の屈折率を低下させることができる。第1のセラミック材料の屈折率を増加させると同時に、第2のセラミック材料の屈折率を低下させることにより、それぞれの屈折率の間の差を最小限に抑えることができる。例えば、各種実施形態では、屈折率の差は、約0.001から約0.20、約0.001から約0.19、約0.13から約0.18、約0.14から約0.17の範囲であってもよく、約0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、もしくは約0.20以下、またはそれ以上であってもよい。あるいは、屈折率の差は、約0%から約6%、約0.15%から約6%、約0.5%から約1.5%、約0.5%から約1%、約0.5%から約1%の範囲であってもよく、約0%、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、もしくは約6%以下、またはそれ以上であってもよい。
【0025】
また、セラミック材料およびドーパントは、光学素子の赤外線のインライン透過率が、関心波長範囲において、約50%から約100%、約90%から約100%の範囲となるように選択されてもよく、約50%、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%以下、またはそれ以上、もしくは約100%となるように、選択されてもよい。セラミック材料およびドーパントは、さらに、光学材料の放射率が、約0から約0.3、約0から約0.1の範囲、約0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、もしくは約0.3以下、またはそれ以上となるように選択されてもよい。サンプルの厚さは、約0.5mmから約5mm、約1mmから約3mmの範囲であってもよく、約0.5mm、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、もしくは約5mm以下、またはそれ以上であってもよい。
【0026】
別個のセラミック相の屈折率を整合させる従来の技術は、未ドープセラミック相の屈折率に実質的に整合するように、ドープ相の屈折率が増減される度合いまで、1つのセラミック相のみにドーピングさせることを含んでいた。しかしながら、この技術の問題は、屈折率の整合に非常に多くのドーパントが必要となり、ある波長の赤外線がドーパントにより吸収されることである。しかしながら、各種実施形態では、各セラミック相を共ドーピングすることにより、いずれのセラミック相に含まれる単一のドーパントを比較的少なくすることができる。その結果、赤外線の吸収が少なくなり、赤外線スペクトルにわたって赤外線の透過が高められる。また、各種実施形態では、含有されるドーパントの潜在的に必要な量をより少なくすることができ、各種セラミック相において使用される屈折率を僅かしか変化させないような、幅広い潜在的なドーパントの使用が可能となる。
【0027】
セラミック材料またはドーパントはいずれも、ナノ構造であり得る。例えば、ドーパントのセラミック材料の1または2以上は、ナノ粒子であり得る。ナノ粒子は、約1nmから約240nm、約100nmから約130nm、約20nmから約80nm、約40nmから約60nmの範囲、約1nm以下、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、もしくは約240nm以下、またはそれ以上の少なくとも1つの寸法(例えば、高さ、幅、または直径)を有する、粒子またはグレインを表すことが理解される。ナノ粒子は、ナノスフェア、ナノグレイン、またはナノボックスを含む、多くの異なる形態の1つに適合してもよい。個々のナノ粒子のアスペクト比は、約1:1であり得る。あるいは、ナノ粒子は、アスペクト比が1:1よりも高くなるように、細長くしてもよい。例えば、アスペクト比は、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または約1:10であってもよい。
【0028】
本願に記載のセラミック材料を含む光学窓(例えば、レードーム、ドーム表面のドームセグメント、またはフラット窓)は、マルチスペクトルセンサシステムのような、多くのシステムまたはアセンブリに組み込むことができる。例えば、
図1Aおよび
図1Bには、誘導発射体12のノーズ11に取り付けられた一体型延長レードーム(以下、「ドーム」)10の実施形態を示す。この実施形態では、ノーズ11は、ヒューズアセンブリおよび弾頭と、1または2以上の空気力学的制御表面と、を有する発射体本体(図示されていない)に取り付けられる。ドーム10の後方、および誘導発射体12のノーズ11内には、画像を捕獲し、それらを誘導システムのコンピュータ18(
図1B)に伝達するEOシーカ(seeker)16が設けられる。このコンピュータは、空気力学的制御表面(例えば、フィン、カナードなど)を制御して、捕獲画像内の物体または点に誘導発射体12を誘導する。この実施形態では、EOシーカ16は、3つの自由度で移動するジンバル機構22に取り付けられた対物レンズ20と、検出器24(
図1B)とを有し、該検出器は、対物レンズ20を通過し検出器24に至るEMRを受容する。検出器24は、ターゲット情報(例えば、ベアリングまたは画像)を誘導システムコンピュータ18(
図1B)に伝達する。
【0029】
ある実施形態では、ジンバル機構22は、ビニエット(vignetting)を使用せずに、180度を超えるスパニング角(90度を超える監視角θ)を介して、3つの自由度で対物レンズ20を動かす。別の実施形態では、ドーム10の延長部分の後方およびこれに隣接して、赤外線センサのような追加のEO部材、および赤外線センサの出力信号を処理する処理回路が配置され、ドーム10の延長部分を通じてEMRが受信または送信される。この後者の場合、ジンバル機構22は、EOシーカ16の構成に応じて、180度未満または180度を超えるスパニング角を介して対物レンズ20を移動させてもよい。
【0030】
本願に記載の光学窓は、多くの好適な形状に適合できる。
図2A乃至2Cには、球形円錐形ドームの異なる実施形態を示す。ここで、
図2Aを参照すると、多相セラミック材料で一体的に形成された一体型延長ドーム100は、前縁球形状102と、球形状の直径からプラットフォーム106の直径まで、ドームの直径を広げる後縁円錐形状104と、を有する。円錐形状は、内側表面および外側表面を有し、それぞれ、切れ目のない遷移点で球形形状の内側表面および外側表面と接する。換言すれば、球形状の表面と接する線108は、遷移点で円錐形状と一致する。この場合、球形状102の監視(look)角θ1は、この制約を満たすように選択される。この角度は、プラットフォームの直径、およびドーム自体の全長の制限に依存する。このアプローチでは、球形状と円錐形状との間での滑らかな物理的遷移が確実にされるが、一般に望ましいとされる、球形状の監視角を最大化することは難しい。
【0031】
次に、
図2Bを参照すると、多相セラミック材料で一体的に形成された一体型延長ドーム120は、前縁球形状122と、球形状の直径からプラットフォーム126の直径までドームの直径を広げる後縁円錐形状124と、を有する。円錐形状は、内表面および外表面を有し、これらは、それぞれ、継ぎ目のない遷移点で球形状の内表面および外表面と接する表面128に対して、ゼロではない正の角度γを形成する。換言すれば、円錐形状は、球形状の直径からプラットフォームの直径までの遷移に対してより大きな角度で外方に向かって広がるスカートを形成する。この場合、球形状122の監視角度θ1は、実行可能な限り90°に近くなるよう、適正に選択される。これにより、球形状の外監視角が最大化される。
【0032】
次に、
図2Cを参照すると、多相セラミック材料で一体的に形成された一体型延長ドーム130は、前縁球形状132と、ドームをプラットフォーム136まで延長する後縁円錐形状134と、を有する。これは、球形断面の直径がプラットフォームの直径と等しい特殊なケースである。この特殊なケースの場合、円錐形状の頂点は、無限となり、これにより円錐形状は円柱となる。円錐の表面は、球形状が90度でない限り、球形状の接線面に対して、ゼロではない負の角度となる。球形状が90度の場合、これらは接面となる。
【0033】
次に、
図3を参照すると、多相セラミック材料で一体的に形成された一体型延長ドーム200は、前縁球形状202と、球形状の直径からプラットフォーム206の直径までドームの直径が広がる後縁尖頭アーチ形状204と、を有する。極端な場合、半径が大きくなると、円弧は、平坦になり円錐に近づき、半径が小さくなると、円弧は、半球に近づくことが顕著になる。
【0034】
共ドープされたセラミック材料は、これに限られるものではないが、前述のものに加えて、各種サイズ(例えば、直径が1、2cmの直径から、数cmまでの直径、例えば、約5から9 cm、例えば、約7.64cm)のディスク、半球、および尖頭アーチドームのような、各種異なる形態で提供され得る。また、本願に記載の共ドープされたセラミック材料は、ドーム、レンズ、フラットおよび窓の各種タイプおよびサイズのような、未だ使用されていない構成を含む、各種用途における、より大きな構成においても有用であるとことが期待される。そのような特性の改良により、本願に記載の材料は、厳しい環境条件にさらされる場合に加えて、従来の材料で達成可能な現在の条件よりも高速で(例えばマッハ6以上)長時間の、高温のミッションにおいても有用である。
【0035】
本願に記載のドームまたはレードームは、多くの好適な方法に従って製造できる。例えば、
図4を参照すると、2つの個々にドープされたセラミック粉末から一体化延長ドームを形成するための実施形態は、粉末の製造および調製のステップ(工程60)と、ニアネット形状を形成するステップ(工程62)と、最終形状の仕上げを行うステップ(工程64)と、を有する。製造および調製のステップでは、フレームスプレー熱分解(FSP)を使用して、ナノサイズのドープされたセラミック粉末の前駆体溶液が提供されてもよい(工程70)。また、他の技術を用いて、前駆体溶液が提供されてもよい。脱凝集(工程72)、例えば、ミルを用いた粉砕、混合が実施され、任意の凝集体が破砕されてもよい。その後、溶液が濾過され(工程74)、溶液から、不純物および任意の残留する大きな粒子が除去される。溶液は、顆粒化され(工程76)、液体溶液が除去され、乾燥粉末が形成される。ニアネット形状の形成は、ドライプレスプロセス(ステップ80)を用いて実施されてもよい。この処理では、粉末が所望の延長ドームのモールドに充填され、圧力が印加され、所望のニアネット形状のグリーン体が形成される。焼結プロセス(ステップ82)では、熱が印加され、グリーン体が緻密化される。高温静水圧プレス(ステップ84)では、熱および圧力が印加され、完全な緻密化が実施され、任意の残留ボイドが除去され、完全に緻密なドームブランクが製造される。最終形状仕上げは、ドームの表面を最終形状まで精密研磨および研削するステップ(ステップ90)を有し、ドームの機械的および光学的特性が特徴付けられ(ステップ92)、ドームが要求仕様に合致することが検証される。
【実施例】
【0036】
本開示の各種実施形態は、例示として提供される以下の実施例を参照することにより、より良く理解することができる。本開示は、本願に示される実施例に限定されない。
【0037】
共ドーピングにより、それぞれのセラミック相を屈折率整合させることにより示されたモデル化では、セラミック相を含む材料を通る紫外線、可視光線、および赤外線の透過性の改善が可能であることが示された。モデル化には、式1に示すように、透過率、反射率、吸収率、および散乱に関する光の挙動を研究することが含まれる:
(式1):t+r+a+s=1
t=透過率
r=反射率
a=吸収率
s=散乱。
【0038】
本願に記載の実施形態により使用される材料は、対象の波長(例えば、赤外)で高い透過率を示し、極めて低い吸収率および散乱を有することが望ましい。2または3以上の相を含むセラミックでは、より低い波長での散乱に起因した大きな光学ロスがあることがわかった。2または3以上の相を有する完全に緻密なセラミック複合材料では、光学ロスの駆動因子に、結晶粒度、および相間の屈折率差が含まれることが定められた。これは、複合材料における散乱のレイリーモデル(式2)により示される:
【0039】
【数1】
(複合体における散乱に対するレイリーモデル)
γ=散乱
a=ナノ粒子の平均半径
n
A=相aの屈折率
n
B=相bの屈折率
λ
0=光の波長
f
A=相aの体積比。
【0040】
レイリーモデルの基本的な解釈は、式3に示されている。ここでは、より短い波長の光では散乱が支配的であり、結晶粒度、およびA相とB相の間の屈折率の差により影響を受けることが示されている:
【0041】
【数2】
式1と式2の組み合わせを用いた場合、複合セラミックの散乱からの光学ロスと全透過率をモデル化することができる。モデルでは、各個々の相におけるドーパントの量を増加させると、Δnの項が0に近づくことが示された。これにより、短波長の光は、実質的に散乱することなく、共ドープされたセラミックを透過できることが示された。また、モデルでは、セラミック複合材料の結晶粒度をできるだけ小さく保つことが好ましいことが示された。さらに、モデルにより、1μmのような低波長では、0%から50%を超える透過率まで、透過率が増加することが示された。1.5μmでは、45%から70%超まで、透過率が増加した。これらのモデルでは、2つの相のセラミック複合体を考慮したが、本開示は、相の屈折率の全ての差が前述の範囲内にある、任意の複数の数の相を有する、任意のセラミック複合体に等しく適用可能であることが理解される。
【0042】
使用用語および表現は、説明の用語として使用されており、限定的なものではなく、そのような用語および表現の使用において、記載され説明された特徴またはその部分の任意の均等物を除外する意図ではなく、本開示の実施形態の範囲内で、各種変更が可能であることが認識される。従って、本開示は、特定の実施形態および任意の特徴により具体的に説明されているが、本願に記載の概念の修正および変更は、当業者によって利用されることができ、そのような修正および変更は、本開示の実施形態の範囲内であると見なされることが理解される必要がある。
【0043】
(追加の実施形態)
以下、例示的な実施形態について提供する。その番号は、重要度のレベルを示すものと解されるものではない:
実施形態1では、
光学窓であって、
赤外線透過性光学材料を有し、
該赤外線透過性光学材料は、
第1のセラミック材料、および該第1のセラミック材料に分散された第1のドーパントを含む、第1のセラミック相と、
前記第1のセラミック相と均質に混合された第2のセラミック相であって、第2のセラミック材料、および該第2のセラミック材料に分散された第2のドーパントを含む、第2のセラミック相と、
を有し、
前記第1のドーパントは、該第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対し、前記第1のセラミック材料の屈折率を高め、前記第2のドーパントは、該第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対し、前記第2のセラミック材料の屈折率を低下させ、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック相の屈折率と前記第2のセラミック相の屈折率の差が約0.001から約0.2の範囲になるような量で存在する、光学窓が提供される。
【0044】
実施形態2では、実施形態1の光学窓であって、
前記第1のセラミック材料は、イットリアを含み、前記第2のセラミック材料は、マグネシアを含み、
前記第1のセラミック相および前記第2のセラミック相は、独立に、前記光学材料の約10vol%から約90vol%の範囲で存在する、光学窓が提供される。
【0045】
実施形態3では、実施形態1または2の光学窓であって、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、独立に、金属酸化物を含む、光学窓が提供される。
【0046】
実施形態4では、実施形態3の光学窓であって、
前記第1のセラミック相は、酸化マグネシウムを含み、前記第1のドーパントは、酸化亜鉛、酸化カルシウム、または酸化亜鉛と酸化カルシウムの混合物を含み、
前記第2のセラミック相は、酸化イットリウム、またはそれらの混合物を含み、前記第2のドーパントは、酸化スカンジウム、酸化ガドリニウム、またはそれらの混合物を含む、光学窓が提供される。
【0047】
実施形態5では、実施形態1乃至4のいずれか一つの光学窓であって、
前記第1のドーパントは、前記第1のセラミック相の約2重量%から約20重量%の範囲である、光学窓が提供される。
【0048】
実施形態6では、実施形態1乃至5のいずれか一つの光学窓であって、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック材料の屈折率と前記第2のセラミック材料の屈折率の差が、約0.001から約0.19の範囲になるような量で存在する、光学窓が提供される。
【0049】
実施形態7では、実施形態1乃至6のいずれか一つの光学窓であって、
前記第1のドーパントは、前記第1のセラミック相の周囲に均一に分散され、前記第2のドーパントは、前記第2のセラミック相の周囲に均一に分散される、光学窓が提供される。
【0050】
実施形態8では、実施形態1乃至7のいずれか一つの光学窓であって、
前記光学素子の赤外放射線のインライン透過率は、約80%から約100%の範囲であり、
前記光学材料の放射率は、約0から約0.3の範囲である、光学窓が提供される。
【0051】
実施形態9では、実施形態8の光学窓であって、
前記光学素子の赤外線放射のインライン透過率は、約90%から約100%の範囲であり、
前記光学材料の放射率は、約0から約0.1の範囲である、光学窓が提供される。
【0052】
実施形態10では、
マルチスペクトルセンサであって、
赤外線透過性光学材料を有し、
該赤外線透過性光学材料は、
第1のセラミック材料、および該第1のセラミック材料に分散された第1のドーパントを含む、第1のセラミック相と、
前記第1のセラミック相と均質に混合された第2のセラミック相であって、第2のセラミック材料、および該第2のセラミック材料に分散された第2のドーパントを含む、第2のセラミック相と、
を有し、
前記第1のドーパントは、該第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対し、前記第1のセラミック材料の屈折率を高め、前記第2のドーパントは、該第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対し、前記第2のセラミック材料の屈折率を低下させ、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック相の屈折率と前記第2のセラミック相の屈折率の差が約0.001から約0.2の範囲になるような量で存在し、
当該マルチスペクトルセンサは、
前記赤外線透過性光学材料に光学的に結合され、受光赤外線に応答する赤外線センサと、
該赤外線センサの出力信号を処理する処理回路と、
を有する、マルチスペクトルセンサが提供される。
【0053】
実施形態11では、実施形態10のマルチスペクトルセンサであって、
前記第1のセラミック材料は、イットリアを含み、前記第2のセラミック材料は、マグネシアを含み、
前記第1のセラミック相および前記第2のセラミック相は、独立に、前記光学材料の約10vol%から約90vol%の範囲にある、マルチスペクトルセンサが提供される。
【0054】
実施形態12では、実施形態10または11のマルチスペクトルセンサであって、
前記第1のセラミック材料は、イットリアを含み、
前記第2のセラミック材料は、マグネシアを含み、
前記第1のセラミック相および前記第2のセラミック相は、独立に、前記光学材料の約5vol%から約95vol%の範囲にある、マルチスペクトルセンサが提供される。
【0055】
実施形態13では、実施形態10乃至12のいずれかのマルチスペクトルセンサであって、
第2相の前記第1のドーパントは、酸化亜鉛を含み、第1相の前記第2のドーパントは、酸化スカンジウムを含む、マルチスペクトルセンサが提供される。
【0056】
実施形態14では、実施形態10乃至13のいずれかのマルチスペクトルセンサであって、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック材料の屈折率と前記第2のセラミック材料の屈折率の差が、約0.001から約0.2の範囲となる量で存在する、マルチスペクトルセンサが提供される。
【0057】
実施形態15では、実施形態10乃至14のいずれかのマルチスペクトルセンサであって、
前記光学素子の赤外放射線のインライン透過率は、約80%から約100%の範囲であり、
前記光学材料の放射率は、約0から約0.3の範囲である、マルチスペクトルセンサが提供される。
【0058】
実施形態16では、実施形態10乃至15のいずれかのマルチスペクトルセンサであって、
前記第1のドーパントは、前記第1のセラミック相の周りに均一に分散され、
前記第2のドーパントは、前記第2のセラミック相の周りに均一に分散される、請求項10乃至15のいずれか一項に記載のマルチスペクトルセンサが提供される。
【0059】
実施形態17では、
赤外線透過性光学材料であって、
第1のセラミック材料、および該第1のセラミック材料に分散された第1のドーパントを含む、第1のセラミック相と、
前記第1のセラミック相と均質に混合された第2のセラミック相であって、第2のセラミック材料および該第2のセラミック材料に分散された第2のドーパントを含む、第2のセラミック相と、
を有し、
前記第1のドーパントは、該第1のドーパントを含まない対応する第1のセラミック材料の屈折率に対し、前記第1のセラミック材料の屈折率を高め、前記第2のドーパントは、該第2のドーパントを含まない対応する第2のセラミック材料の屈折率に対し、前記第2のセラミック材料の屈折率を低下させ、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック相の屈折率と前記第2のセラミック相の屈折率の差が、約0.001から約0.2の範囲になるような量で存在する、赤外線透過性光学材料が提供される。
【0060】
実施形態18では、実施形態17の赤外線透過性光学材料であって、
前記第1のセラミック材料は、イットリアを含み、前記第2のセラミック材料は、マグネシアを含み、
前記第1のセラミック相および前記前記第2のセラミック相は、独立に、前記光学材料の約10vol%から約90vol%の範囲にある、赤外線透過性光学材料が提供される。
【0061】
実施形態19では、実施形態17または18の赤外線透過性光学材料であって、
前記第1のドーパントは、酸化ニッケルを含み、前記第2のドーパントは、酸化カルシウムを含む、赤外線透過性光学材料が提供される。
【0062】
実施形態20では、実施形態17乃至19のいずれかの赤外線透過性光学材料であって、
前記第1のドーパントおよび前記第2のドーパントは、前記第1のセラミック材料の屈折率と前記第2のセラミック材料の屈折率の差が、約0.001から約0.19の範囲になるような量で存在する、赤外線透過性光学材料が提供される。