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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-19
(45)【発行日】2023-07-27
(54)【発明の名称】ホイール式建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/02 20060101AFI20230720BHJP
   E02F 9/10 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
E02F9/02 Z
E02F9/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022551205
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2021030595
(87)【国際公開番号】W WO2022064920
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2020162125
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎太郎
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-171978(JP,A)
【文献】特開2004-043046(JP,A)
【文献】中国実用新案第204548231(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/02
E02F 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びるシャーシフレームを有し、左右の前輪と左右の後輪とが設けられた自走可能な下部走行体と、前記下部走行体の前記シャーシフレーム上に旋回輪を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前側に設けられた作業装置とを備え、
前記シャーシフレームは、
前記旋回輪を支持する丸胴が設けられる上板と、前記上板と上下方向で対面する下板と、前記上板の左側に位置して前記上板と前記下板との間に設けられ前後方向に延びた左外側板と、前記上板の右側に位置して前記上板と前記下板との間に設けられ前後方向に延びた右外側板と、前記上板と前記下板との間に設けられ前記左外側板と左右方向で対面しつつ前後方向に延びた左内側板と、前記上板と前記下板との間に設けられ前記右外側板と左右方向で対面しつつ前後方向に延びた右内側板と、前記丸胴の前側の下方に位置する前記上板と前記下板との間で左右方向に延びて、前記左内側板と前記右内側板とに連結された中間横梁と、前記丸胴の後側の下方に位置する前記上板と前記下板との間で左右方向に延びて、前記左内側板と前記右内側板とに連結された後横梁と、を含んでなるホイール式建設機械において、
前記丸胴は、前記左内側板と前記右内側板と前記中間横梁と前記後横梁とのうち少なくとも前記左内側板と前記右内側板とを跨いで前記上板に設けられ、
前記丸胴の前側、前記丸胴の後側、前記丸胴の左側および前記丸胴の右側のうち、前記丸胴の左側および前記丸胴の右側の下方に位置する前記上板と前記下板との間の部位に対してのみ、補強部材が設けられており、
前記補強部材は、前記左外側板と前記左内側板との間を連結して補強する左連結部材および前記右外側板と前記右内側板との間を連結して補強する右連結部材であることを特徴とするホイール式建設機械。
【請求項2】
前記左連結部材は、左右方向の一端が前記左外側板に固定され左右方向の他端が前記左内側板に固定された複数の左連結板により構成され、
前記右連結部材は、左右方向の一端が前記右外側板に固定され左右方向の他端が前記右内側板に固定された複数の右連結板により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のホイール式建設機械。
【請求項3】
前記左連結板は、前記左外側板および前記左内側板に対して直交するように配置され、
前記右連結板は、前記右外側板および前記右内側板に対して直交するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載のホイール式建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、左,右の前輪と左,右の後輪とを有するホイール式建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイール式建設機械を代表するホイール式油圧ショベルは、左,右の前輪と左,右の後輪を有する自走可能な下部走行体と、下部走行体に旋回輪(旋回ベアリング)を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とを含んで構成されている。下部走行体のベースとなるシャーシフレームは、上下方向で対面しつつ前後方向に延びる上板および下板と、上板の左側に位置して上板と下板との間に設けられた左外側板および左内側板と、上板の右側に位置して上板と下板との間に設けられた右外側板および右内側板とを含んで構成されている。
【0003】
シャーシフレームを構成する上板の中央部(前後方向の中間部)には、旋回輪を取付けるための円筒状の丸胴が設けられている。ホイール式油圧ショベルが掘削作業を行うときには、掘削反力等による荷重が上部旋回体から旋回輪を介して丸胴に作用する。シャーシフレームは、丸胴に作用した荷重に耐えるため、丸胴の外径に合わせた位置に左外側板および右外側板を配置すると共に、左外側板および右外側板と左右方向で対面する左内側板および右内側板を配置している。これら左外側板と左内側板、および右外側板と右内側板は、上板および下板の前端から後端までの全長に亘って前後方向に延びている。これにより、丸胴に作用する荷重をシャーシフレームによって確実に受けることができ、この荷重をシャーシフレームの前後方向の両端側に取付けられたアウトリガ、または車輪を介して地面に逃がすことができる。
【0004】
ところで、下部走行体に対して上部旋回体を旋回可能に支持する旋回輪は、一般に、上部旋回体の重量に応じて外径等のサイズが決定される。このため、ホイール式油圧ショベルの機種に応じて上部旋回体が変更される場合には、上部旋回体の重量に対応する旋回輪のサイズに適合した丸胴をシャーシフレームに取付ける必要がある。一方、シャーシフレームの左外側板と右外側板とは、丸胴の外径に合わせた位置に設けられるため、丸胴の外径が変更されるのに応じて、上板および下板に対する左外側板と右外側板の取付位置を変えたシャーシフレームを形成する必要がある。この結果、シャーシフレームの設計、製造に要する手間が増えるという問題がある。
【0005】
これに対し、丸胴が取付けられる中央シャーシと、中央シャーシの前側に取付けられる前シャーシと、中央シャーシの後側に取付けられる後シャーシとを有する分割型のシャーシフレームが提案されている。この分割型のシャーシフレームは、丸胴の外径に応じて異なるサイズに形成された複数種類の中央シャーシに対し、前シャーシと後シャーシとが共通化される。このため、丸胴の外径の変更に応じてシャーシフレーム全体を設計、製造する手間を低減することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-117145号公報
【発明の概要】
【0007】
しかし、従来技術による分割型のシャーシフレームにおいても、丸胴の外径の変更に応じて複数種類の中央シャーシを設計・製造する必要がある。さらに、分割型のシャーシフレームは、中央シャーシに対して前シャーシと後シャーシがボルト等を用いて取付けられるため、一体型のシャーシフレームに比較して組付け作業が煩雑であるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、形状が等しい共通なシャーシフレームに対し、外径が異なる複数種類の丸胴を取付けることができるようにしたホイール式建設機械を提供することにある。
【0009】
本発明は、前後方向に延びるシャーシフレームを有し、左右の前輪と左右の後輪とが設けられた自走可能な下部走行体と、前記下部走行体の前記シャーシフレーム上に旋回輪を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前側に設けられた作業装置とを備え、前記シャーシフレームは、前記旋回輪を支持する丸胴が設けられる上板と、前記上板と上下方向で対面する下板と、前記上板の左側に位置して前記上板と前記下板との間に設けられ前後方向に延びた左外側板と、前記上板の右側に位置して前記上板と前記下板との間に設けられ前後方向に延びた右外側板と、前記上板と前記下板との間に設けられ前記左外側板と左右方向で対面しつつ前後方向に延びた左内側板と、前記上板と前記下板との間に設けられ前記右外側板と左右方向で対面しつつ前後方向に延びた右内側板と、前記丸胴の前側の下方に位置する前記上板と前記下板との間で左右方向に延びて、前記左内側板と前記右内側板とに連結された中間横梁と、前記丸胴の後側の下方に位置する前記上板と前記下板との間で左右方向に延びて、前記左内側板と前記右内側板とに連結された後横梁と、を含んでなるホイール式建設機械において、前記丸胴は、前記左内側板と前記右内側板と前記中間横梁と前記後横梁とのうち少なくとも前記左内側板と前記右内側板とを跨いで前記上板に設けられ、前記丸胴の前側、前記丸胴の後側、前記丸胴の左側および前記丸胴の右側のうち、前記丸胴の左側および前記丸胴の右側の下方に位置する前記上板と前記下板との間の部位に対してのみ、補強部材が設けられており、前記補強部材は、前記左外側板と前記左内側板との間を連結して補強する左連結部材および前記右外側板と前記右内側板との間を連結して補強する右連結部材であることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、形状が等しい共通のシャーシフレームに対し、外径が異なる複数種類の丸胴を取付けることができ、複数種類のシャーシフレームを設計、製造する手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態によるホイール式油圧ショベルを示す左側面図である。
図2】丸胴が取付けられたシャーシフレームの斜視図である。
図3】丸胴が取付けられたシャーシフレームを、上板を除いた状態で示す平面図である。
図4】小径丸胴が取付けられたシャーシフレームの斜視図である。
図5】小径丸胴が取付けられたシャーシフレームを、上板を除いた状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態によるホイール式建設機械を、ホイール式油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図5を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図において、ホイール式建設機械を代表するホイール式油圧ショベル1は、左右の前輪2Aと左右の後輪2Bとが設けられたホイール式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられた作業装置5とにより大略構成されている。下部走行体2と上部旋回体4とは、ホイール式油圧ショベル1の車体を構成し、ホイール式油圧ショベル1は下部走行体2により作業現場まで自走する。作業装置5は、ブーム5A、アーム5B、バケット5C、ブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5F等を含んで構成され、作業現場において土砂の掘削作業等を行う。
【0014】
ホイール式油圧ショベル1の上部旋回体4は、後述のシャーシフレーム11上に旋回輪3を介して旋回可能に取付けられた旋回フレーム6を有している。旋回フレーム6の左前側には、運転室を画成するキャブ7が設けられ、旋回フレーム6の後端側には、作業装置5との重量バランスをとるカウンタウエイト8が設けられている。カウンタウエイト8の前側には、エンジン、油圧ポンプ等(いずれも図示せず)が設けられている。油圧ポンプは、エンジンによって駆動されることにより、ホイール式油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに向けて作動油を供給する。これらエンジン、油圧ポンプ等の搭載機器は、外装カバー9によって覆われている。
【0015】
ホイール式油圧ショベル1の下部走行体2は、後述するシャーシフレーム11を有している。シャーシフレーム11の前側には、左,右方向に延びるフロントアクスル(図示せず)が取付けられ、フロントアクスルの左,右方向の両端側には、左,右の前輪2Aが取付けられている。シャーシフレーム11の後側には、左,右方向に延びるリヤアクスル(図示せず)が取付けられ、リヤアクスルの左,右方向の両端側には、左,右の後輪2Bが取付けられている。
【0016】
次に、本実施形態に用いられるシャーシフレーム11について説明する。シャーシフレーム11は、下部走行体2のベースとなるもので、上板12、下板13、左外側板14、左内側板15、右外側板17、右内側板18、左連結板29、右連結板30を含んで構成されている。
【0017】
上板12は、鋼板材等を用いて前後方向に延びる矩形の平板状に形成されている。上板12の左端縁12Aから右端縁12Bまでの左右方向の幅寸法は、上板12の前後方向の中間部から後端12Cまでの範囲ではほぼ等しく設定され、上板12の前後方向の中間部から前端12Dに向けて徐々に小さくなっている。上板12の中央部(前後方向の中間部)には、後述する丸胴27または小径丸胴28が取付けられる。
【0018】
下板13は、上板12と上下方向で対面しつつ前後方向に延びている。下板13は、鋼板材等を用いて上板12とほぼ等しい外形形状を有する平板状に形成されている。下板13の左端縁13Aから右端縁13Bまでの左右方向の幅寸法は、上板12の左端縁12Aから右端縁12Bまでの幅寸法と等しく設定されている。下板13の後端13Cから前端13Dまでの前後方向の長さ寸法は、上板12の後端12Cから前端12Dまでの長さ寸法と等しく設定されている。また、下板13には、前後方向に間隔をもって複数の開口13Eが形成され、これら複数の開口13Eを通じて、後述する左内側板15、右内側板18、後横梁20、前横梁22、中間横梁23等の溶接作業が行われる。
【0019】
左外側板14は、上板12の左端縁12Aと下板13の左端縁13Aとの間に設けられ、上板12と下板13との間を連結している。左外側板14は、鋼板材等を用いて前後方向に延びる平板状に形成され、上板12および下板13の後端12C,13Cから前端12D,13Dに亘って前後方向に延びている。左外側板14の上端は、その全長に亘って上板12の左端縁12A側の下面に溶接され、左外側板14の下端は、その全長に亘って下板13の左端縁13A側の上面に溶接されている。
【0020】
左内側板15は、左外側板14と左右方向で対面しつつ上板12と下板13との間に設けられ、上板12と下板13との間を連結している。左内側板15は、鋼板材等を用いて前後方向に延びる平板状に形成され、左外側板14との間に一定の間隔を保った状態で、上板12および下板13の後端12C,13Cから前端12D,13Dに亘って前後方向に延びている。左内側板15の上端は、その全長に亘って上板12の下面に溶接され、左内側板15の下端は、その全長に亘って下板13の上面に溶接されている。これにより、シャーシフレーム11の左端側には、上板12、下板13、左外側板14、左内側板15によって囲まれた強固な左ボックス構造体16が形成され、この左ボックス構造体16は、シャーシフレーム11の全長(上板12および下板13の後端12C,13Cから前端12D,13Dまでの長さ)に亘って前後方向に延びている。
【0021】
右外側板17は、上板12の右端縁12Bと下板13の右端縁13Bとの間に設けられ、上板12と下板13との間を連結している。右外側板17は、鋼板材等を用いて前後方向に延びる平板状に形成され、上板12および下板13の後端12C,13Cから前端12D,13Dに亘って前後方向に延びている。右外側板17の上端は、その全長に亘って上板12の右端縁12B側の下面に溶接され、右外側板17の下端は、その全長に亘って下板13の右端縁13B側の上面に溶接されている。
【0022】
右内側板18は、右外側板17と左右方向で対面しつつ上板12と下板13との間に設けられ、上板12と下板13との間を連結している。右内側板18は、鋼板材等を用いて前後方向に延びる平板状に形成され、右外側板17との間に一定の間隔を保った状態で、上板12および下板13の後端12C,13Cから前端12D,13Dに亘って前後方向に延びている。右内側板18の上端は、その全長に亘って上板12の下面に溶接され、右内側板18の下端は、その全長に亘って下板13の上面に溶接されている。これにより、シャーシフレーム11の右端側には、上板12、下板13、右外側板17、右内側板18によって囲まれた強固な右ボックス構造体19が形成され、この右ボックス構造体19は、シャーシフレーム11の全長に亘って前後方向に延びている。
【0023】
複数(例えば2本)の後横梁20は、上板12および下板13の後側に位置して左内側板15と右内側板18との間に設けられ、前後方向に一定の間隔を保った状態で左右方向に延びている。後横梁20は、左右方向に延びる矩形の平板状に形成され、後横梁20の左端は左内側板15に溶接され、後横梁20の右端は右内側板18に溶接されている。また、後横梁20の上端は上板12に溶接され、後横梁20の下端は下板13に溶接されている。これにより、シャーシフレーム11の後側には、2本の後横梁20、上板12、下板13によって囲まれた強固な後ボックス構造体21が形成され、シャーシフレーム11の後側の強度が高められている。
【0024】
複数(例えば2本)の前横梁22は、上板12および下板13の前側に位置して左内側板15と右内側板18との間に設けられ、左右方向に延びている。前横梁22は、左右方向に延びる矩形の平板状に形成され、前横梁22の左端は左内側板15に溶接され、前横梁22の右端は右内側板18に溶接されている。また、前横梁22の上端は上板12に溶接され、前横梁22の下端は下板13に溶接されている。これにより、シャーシフレーム11の前側の強度が高められている。中間横梁23は、後横梁20と前横梁22との間(上板12および下板13の前後方向の中間部)に位置して左内側板15と右内側板18との間に設けられ、左右方向に延びている。中間横梁23の左端は左内側板15に溶接され、中間横梁23の右端は右内側板18に溶接されている。また、中間横梁23の上端は上板12に溶接され、中間横梁23の下端は下板13に溶接されている。
【0025】
後端板24は、シャーシフレーム11の後端に設けられている。後端板24は、左右方向に延びる矩形の平板状に形成され、上板12の後端12C、下板13の後端13C、左外側板14および左内側板15の後端、右外側板17および右内側板18の後端に溶接されている。前端板25は、シャーシフレーム11の前端に設けられている。前端板25は、左右方向に延びる矩形の平板状に形成され、上板12の前端12D、下板13の前端13D、左外側板14および左内側板15の前端、右外側板17および右内側板18の前端に溶接されている。後端板24および前端板25には、それぞれアウトリガ26が取付けられ、これら前後のアウトリガ26を接地させることにより、作業装置5を用いたホイール式油圧ショベル1の作業時の安定性が確保される。
【0026】
丸胴27は、シャーシフレーム11の上板12に設けられている。図2および図3に示すように、丸胴27は、円筒部27Aと、円筒部27Aの上端に固定された環状のフランジ部27Bとを有し、フランジ部27Bには、複数のボルト穴27Cが全周に亘って設けられている。丸胴27のフランジ部27Bには、図1に示す旋回輪(旋回ベアリング)3がボルト(図示せず)を用いて取付けられる構成となっている。丸胴27を構成する円筒部27Aの外径と、シャーシフレーム11の中央部(前後方向の中間部)における上板12の左端縁12Aと右端縁12Bとの間の幅寸法とは、ほぼ等しい寸法となっている(図3参照)。そして、丸胴27は、円筒部27Aの下端が全周に亘って上板12の上面に溶接されることにより、シャーシフレーム11の中央部に取付けられている。
【0027】
ここで、下部走行体2に対して上部旋回体4を旋回可能に支持する旋回輪3は、上部旋回体4の重量に応じて外径等のサイズが決定される。このため、ホイール式油圧ショベル1の機種に応じて上部旋回体4の重量が設定されると、上部旋回体4の重量に対応する旋回輪3が選定され、この旋回輪3のサイズに適合した丸胴がシャーシフレーム11に取付けられる。従って、上部旋回体4の重量が小さく、選定される旋回輪3の外径が小さい場合には、図4および図5に示すように、丸胴27よりもサイズが小さい小径丸胴28が、シャーシフレーム11の上板12に設けられる。
【0028】
小径丸胴28は、丸胴27の円筒部27Aよりも小径な円筒体からなり、小径丸胴28の上端には、複数のボルト穴28Aが全周に亘って設けられている。小径丸胴28の外径は、シャーシフレーム11の中央部(前後方向の中間部)における上板12の左端縁12Aと右端縁12Bとの間の幅寸法よりも小さい寸法となっている(図5参照)。そして、小径丸胴28の上端には、旋回輪3がボルト(図示せず)を用いて取付けられる。
【0029】
次に、本実施形態に用いられる左連結板29および右連結板30について、図3および図5を参照して説明する。
【0030】
左連結部材としての複数(例えば3枚)の左連結板29は、シャーシフレーム11の前後方向の中間部かつ左右方向の左側に配置され、上板12と下板13との間で、丸胴27または小径丸胴28の下側に位置する部位に設けられている。左連結板29は、鋼板材等を用いて四角形の平板状に形成され、前後方向の間隔を保った状態で、左外側板14と左内側板15との間に設けられ、左ボックス構造体16を補強している。左連結板29の左右方向の一端である左端は、左外側板14に溶接され、左連結板29の左右方向の他端である右端は、左内側板15に溶接されている。3枚の左連結板29は、丸胴27または小径丸胴28の下側となる範囲に分散した状態で配置されている。また、3枚の左連結板29は、左外側板14と左内側板15とに対し、それぞれ直交するように配置されている。これにより、左外側板14および左内側板15に対する左連結板29の接触面積を大きく確保し、左外側板14および左内側板15と左連結板29との接合強度を可及的に大きくすることができると共に、左連結板29の溶接作業も容易に行うことができる。
【0031】
右連結部材としての複数(例えば3枚)の右連結板30は、シャーシフレーム11の前後方向の中間部かつ左右方向の右側に配置され、上板12と下板13との間で、丸胴27または小径丸胴28の下側に位置する部位に設けられている。右連結板30は、鋼板材等を用いて四角形の平板状に形成され、前後方向の間隔を保った状態で、右外側板17と右内側板18との間に設けられ、右ボックス構造体19を補強している。右連結板30の左右方向の一端である右端は、右外側板17に溶接され、右連結板30の左右方向の他端である左端は、右内側板18に溶接されている。3枚の右連結板30は、丸胴27または小径丸胴28の下側となる範囲に分散した状態で配置されている。また、3枚の右連結板30は、右外側板17と右内側板18とに対し、それぞれ直交するように配置されている。これにより、右外側板17および右内側板18に対する右連結板30の接触面積を大きく確保し、右外側板17および右内側板18と右連結板30との接合強度を可及的に大きくすることができると共に、右連結板30の溶接作業も容易に行うことができる。
【0032】
このように、本実施形態によるシャーシフレーム11は、左外側板14と左内側板15との間に、両者間を連結する複数の左連結板29が設けられると共に、右外側板17と右内側板18との間に、両者間を連結する複数の右連結板30が設けられている。これにより、図3に示すように、丸胴27の円筒部27Aを上板12に取付けた場合には、円筒部27Aは、左連結板29および右連結板30と交差する構成となっている。一方、図5に示すように、丸胴27の円筒部27Aよりも小径な円筒体からなる小径丸胴28を上板12に取付けた場合においても、小径丸胴28は、左連結板29および右連結板30と交差する。
【0033】
実施形態によるホイール式油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、ホイール式油圧ショベル1は、前輪2Aおよび後輪2Bにより作業現場に向けて一般道路を走行する。作業現場に到着したホイール式油圧ショベル1は、シャーシフレーム11に取付けられた前後のアウトリガ26を作業現場に接地させる。このようにして、ホイール式油圧ショベル1の車体を安定させた状態で、上部旋回体4を旋回させつつ、作業装置5を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0034】
ここで、ホイール式油圧ショベル1のシャーシフレーム11に丸胴27が取付けられた場合には、図3に示すように、丸胴27の外径と、左外側板14と右外側板17との間隔とがほぼ一致する。この場合には、作業装置5からの掘削反力等により、上部旋回体4から旋回輪3を介して丸胴27に作用する荷重を、左外側板14および左内側板15に伝えると共に、右外側板17および右内側板18に伝えることができる。しかも、左外側板14と左内側板15とを左連結板29によって補強すると共に、右外側板17と右内側板18とを右連結板30によって補強することができる。この結果、丸胴27に作用する荷重を、シャーシフレーム11によって確実に受けることができる。そして、丸胴27に作用した荷重は、シャーシフレーム11の上板12、下板13、左ボックス構造体16、右ボックス構造体19等を介して前後のアウトリガ26に伝達され、アウトリガ26から地面へと逃がすことができる。
【0035】
一方、丸胴27の円筒部27Aよりも小径な小径丸胴28が、シャーシフレーム11に取付けられた場合には、図5に示すように、小径丸胴28は、左外側板14および右外側板17の内側に配置される。この場合には、上部旋回体4から旋回輪3を介して小径丸胴28に作用する荷重を、左内側板15、左連結板29を介して左外側板14に伝えると共に、右内側板18、右連結板30を介して右外側板17に伝えることができ、この荷重をシャーシフレーム11によって確実に受けることができる。そして、小径丸胴28に作用した荷重は、シャーシフレーム11の上板12、下板13、左ボックス構造体16、右ボックス構造体19等を介して前後のアウトリガ26に伝達され、アウトリガ26から地面へと逃がすことができる。
【0036】
このように、本実施形態によるシャーシフレーム11は、左外側板14と左内側板15との間に、両者間を連結する複数の左連結板29が設けられると共に、右外側板17と右内側板18との間に、両者間を連結する複数の右連結板30が設けられることにより、上板12に丸胴27と小径丸胴28のどちらを取付けた場合でも、掘削作業時に上部旋回体4から旋回輪3を介して丸胴27または小径丸胴28に作用する荷重を、シャーシフレーム11によって確実に受けることができる。丸胴27または小径丸胴28に作用した荷重は、シャーシフレーム11の上板12、下板13、左ボックス構造体16、右ボックス構造体19等を介して前後のアウトリガ26へと円滑に伝達し、地面へと逃がすことができる。
【0037】
従って、実施形態によれば、上部旋回体4の重量が変更されることにより、旋回輪3のサイズが変更され、この旋回輪3のサイズに適合する丸胴として丸胴27または小径丸胴28が選択される場合でも、これら外径が異なる2種類の丸胴(丸胴27または小径丸胴28)を、形状が等しい共通なシャーシフレーム11に取付けることができる。この結果、外径が異なる複数種類の丸胴ごとに、複数種類のシャーシフレームを設計、製造する手間を低減することができる。
【0038】
かくして、実施形態では、前後方向に延びるシャーシフレーム11を有し、左右の前輪2Aと左右の後輪2Bとが設けられた自走可能な下部走行体2と、下部走行体2のシャーシフレーム11上に旋回輪3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4に設けられた作業装置5とを備え、シャーシフレーム11は、旋回輪3を支持する丸胴27または小径丸胴28が設けられる上板12と、上板12と上下方向で対面する下板13と、上板12の左側に位置して上板12と下板13との間に設けられ前後方向に延びた左外側板14と、上板12の右側に位置して上板12と下板13との間に設けられ前後方向に延びた右外側板17と、上板12と下板13との間に設けられ左外側板14と左右方向で対面しつつ前後方向に延びた左内側板15と、上板12と下板13との間に設けられ右外側板17と左右方向で対面しつつ前後方向に延びた右内側板18とを含んでなるホイール式建設機械において、上板12と下板13との間で丸胴27または小径丸胴28の下側に位置する部位には、左外側板14と左内側板15との間を連結する左連結板29と、右外側板17と右内側板18との間を連結する右連結板30とが設けられている。
【0039】
この構成によれば、上板12に丸胴27と小径丸胴28のどちらを取付けた場合でも、掘削作業時に上部旋回体4から旋回輪3を介して丸胴27または小径丸胴28に作用する荷重を、シャーシフレーム11によって確実に受けることができる。従って、旋回輪3のサイズを変更するのに伴って外径が異なる丸胴27または小径丸胴28が選択される場合でも、これら外径が異なる2種類の丸胴を、形状が等しい共通なシャーシフレーム11に取付けることができる。この結果、外径が異なる複数種類の丸胴ごとに、複数種類のシャーシフレームを設計、製造する手間を低減することができる。
【0040】
実施形態では、左連結板29は、左右方向の一端が左外側板14に固定され左右方向の他端が左内側板15に固定された複数の左連結板29により構成され、右連結板30は、左右方向の一端が右外側板17に固定され左右方向の他端が右内側板18に固定された複数の右連結板30により構成されている。この構成によれば、複数の左連結板29および右連結板30を、丸胴27または小径丸胴28の下側となる範囲に分散させて配置することができる。
【0041】
実施形態では、左連結板29は、左外側板14および左内側板15に対して直交するように配置され、右連結板30は、右外側板17および右内側板18に対して直交するように配置されている。この構成によれば、左外側板14および左内側板15に対する左連結板29の接触面積と、右外側板17および右内側板18に対する右連結板30の接触面積
を大きく確保することができ、左外側板14および左内側板15と左連結板29との接合強度、右外側板17および右内側板18と右連結板30との接合強度を可及的に大きくすることができる。また、左連結板29および右連結板30を溶接するときの作業性を高めることができる。
【0042】
なお、実施形態では、左連結部材として3枚の左連結板29を用い、右連結部材として3枚の右連結板30を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば2枚以下、または4枚以上の左連結板および右連結板を用いる構成としてもよい。また、板状ではないブロック状の左連結部材および右連結部材を用いる構成としてもよい。
【0043】
また、実施形態では、ホイール式建設機械として、ホイール式油圧ショベル1を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式油圧クレーン等の前,後の車輪を備えたホイール式建設機械に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ホイール式油圧ショベル
2 下部走行体
2A 前輪
2B 後輪
3 旋回輪
4 上部旋回体
5 作業装置
11 シャーシフレーム
12 上板
13 下板
14 左外側板
15 左内側板
17 右外側板
18 右内側板
27 丸胴
28 小径丸胴
29 左連結板(左連結部材)
30 右連結板(右連結部材)
図1
図2
図3
図4
図5