(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】神経活性化用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/121 20060101AFI20230721BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230721BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61K31/121
A61P25/28
A61P43/00 107
(21)【出願番号】P 2019113831
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知倫
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌良
(72)【発明者】
【氏名】澤野 健史
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008888(JP,A)
【文献】特開平11-335256(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104987285(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アグリモールB(Agrimol B)及び/または、シュードアスピジン(Pseudoaspidin)を有効成分とする神経活性化用組成物
(但しキンミズヒキ抽出物を有効成分とする神経
活性化組成物及び認知機能改善剤を除く)。
【請求項2】
請求項1に記載の神経活性化用組成物を含む認知機能改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経活性化用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶や運動は、脳・神経間のネットワークを介する情報の伝達によってコントロールされている。この情報の伝達機能が低下することで記憶障害や運動機能低下が生じる。神経間ネットワークは、神経細胞同士のシナプス接続により構築されている。
シナプスとは、神経情報を出力する側と入力される側の間に発達した、情報伝達のための接触構造である。最も基本的な構造は軸索末端のシナプス前細胞が樹状突起のシナプス後細胞に接触しているものである。シナプスには大別して化学シナプス chemical synapseと電気シナプス electrical synapseがあり、化学シナプスでは、出力する側の細胞をシナプス前細胞、入力される側の細胞をシナプス後細胞という。中枢神経系の多くのシナプスを占める化学シナプスでは、活動電位の到来により、シナプス前部の電位依存性カルシウムチャネルが開口してカルシウムが流入し、シナプス顆粒の開口放出を引き起こす。その結果シナプス顆粒に含まれている神経伝達物質がシナプス間隙に放出される。
神経伝達物質は、シナプス後部にある神経伝達物質受容体に結合し、直接膜電位を変化させるか細胞内二次メッセンジャーを活性化する事で伝達を行う。化学シナプスは興奮性シナプスと抑制性シナプスに細分される。一方、電気シナプスは接触膜上のギャップ結合を介して、膜電位変化を直接的に次の神経細胞に伝える構造である。このように受け取られたシナプス電位が細胞体まで伝わり、軸索小丘で統合され、最終的にシナプス後細胞が発火するかどうかが決まる。この影響の相互作用を神経統合と呼ぶ。またシナプス伝達の効率は必ずしも一定ではなく、入力の強度により変化する。これをシナプス可塑性と呼び、学習・記憶の細胞メカニズムであると考えられている。
【0003】
化学シナプスにあっては、情報シグナルが到達すると、
(1) シナプス前細胞の軸索で活動電位(膜の脱分極)が伝わり、カルシウムイオンがシナプス前終末に流入する、
(2)カルシウムイオンの上昇による神経伝達物質のシナプス間際での放出、
(3)神経伝達物質がシナプス後部の受容体に結合することにより、電気的または化学的変化をもたらし、シグナルが伝達される。
この過程で、神経細胞中で複数の遺伝子が活性化されて、情報シグナルの下流側への伝達を担うことになる。この一群の遺伝子群は、最初期遺伝子と総称されている。最初期遺伝子は、増殖シグナルや分化シグナル等などが細胞へ伝わると、既に細胞内に存在する因子のみを用いて速やかに、且つ、一過的に転写を引き起こす。コードされているタンパク質は、転写制御因子・成長因子・細胞骨格など様々なカテゴリーを含む。神経細胞においては、シナプス活動に伴う細胞内カルシウム濃度上昇や神経伝達物質によるシグナル活性化などによって最初期遺伝子の発現が誘導されることが明らかになっている。一部の最初期遺伝子は、シナプス可塑性を引き起こす電気刺激や学習・記憶課題によって特定の脳領域に特異的な発現誘導パターンを示すことから、シナプスや神経回路の長期可塑的変化への関与が示唆されている。また、最初期遺伝子の発現は、数分~数十分前の神経活動状態をよく反映することから、最初期遺伝子のmRNAやタンパク質は神経活動の分子マーカーとして広く利用されている。
【0004】
最初期遺伝子が、刺激後速やかに転写誘導されるメカニズムの詳細は、それぞれの遺伝子によって異なる。しかし、いくつかの最初期遺伝子の上流制御領域の解析により共通点が次第に明らかになりつつある。神経細胞においては、NMDA型グルタミン酸受容体や電位依存性カルシウムチャネルを介して細胞外から流入したカルシウムイオンがカルシウム・カルモジュリン依存的キナーゼ(CaMKs)やMAPキナーゼ(MAPK)などのキナーゼ経路を活性化させ、その結果、非誘導型の転写因子であるサイクリックAMP応答配列結合タンパク質(cAMP-responsive element binding protein, CREB)や血清応答因子(Serum response factor, SRF)、myocyte enhancer factor-2 (MEF2)などのリン酸化スイッチによって活性化されることで最初期遺伝子の転写が開始される。また、上記の転写因子と複合体を形成する補活性化因子(CBP、p300、ElK、CRTC、MKL等)の重要性も明らかになってきた。
神経細胞において最初期遺伝子は、シナプス活動や活動電位に伴うカルシウムイオンの流入などによって発現が誘導される活動依存的遺伝子であり、脳における代表的な最初期遺伝子としてc-fosやEgr-1などの転写制御因子をコードする遺伝子やArc、Homer1a/Vesl-1s等のシナプス関連タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。これら遺伝子のmRNAや発現産物であるタンパク質は神経活動の指標マーカーとしてすでに用いられている。
【0005】
また、神経伝達物質であるグルタミン酸を培養ラット初代神経細胞に添加すると、一過性にCREBが機能更新して、最初期遺伝子であるc-fosやArcが増加する事実が知られている。これらの遺伝子の増加は、リン酸化CaMKII(pCaMKII)及びリン酸化ERK1/2(pERK1/2)の増加に引き続いて発生することが知られており、これらのタンパク質及び最初期遺伝子の発現量の増加は、神経伝達が活発に機能している指標となり得るものである。
特許文献1には、c-fos、zif268、Arc等の最初期遺伝子の発現量変化を観察することで、薬物などに対する脳細胞の感受性や反応性を評価する技術が記載されている。
特許文献2には、神経栄養因子であるワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物の効果を評価するためにCREBのリン酸化促進作用を指標とする方法が開示されている。また、このCREBのリン酸化を、c-fosの産生を測定することで評価できることも記載されている。
特許文献3には、末梢投与で作用を示す食欲抑制ペプチドPYYが、末梢投与においては、視床下部の弓状核内におけるc-fosの増加、および、視床下部の神経ペプチドY(NPY)mRNAの低下を引き起こし、さらに、PYY3-36が、NPY神経末端のシナプス活動を阻害し、POMCニューロンを活性化する、ことを記載している。すなわちPYYが神経において、c-fosを介して、食欲抑制神経を活性化していることを明らかにしている。
非特許文献1、2には、c-fos、Arc、ノックアウトマウスでは、神経可塑性の障害、空間恐怖記憶が障害されること、またc-fos、Arc発現細胞を光遺伝学的手法により不活性化することで、記憶障害が誘発されるというこれまでの研究成果がレビューされている。
このように、神経系の活性化には最初期遺伝子の活性化が大きな役割を果たしていることが明らかになっている。
【0006】
このような神経細胞への入力シグナルに関係する遺伝子転写とその発現産物による神経活性化とは別に、神経栄養因子(ニューロトロフィン)や神経分化促進作用を有するキナーゼによって神経を活性化しようとする試みがなされている。
特許文献4には杏仁、麻黄、桂枝、人参、当帰、川きゅう、乾姜、甘草及び石膏、又はこれらの抽出物を有効成分として含有する神経栄養因子(BDNF)合成促進剤が記載されている。特許文献5にはプラセンタ抽出物を含有する脳由来神経栄養因子(BDNF)合成促進剤が記載されている。
さらに特許文献6には、ヒトES細胞を神経細胞組織に分化誘導するに当たって、PI3K-Akt経路のキナーゼ阻害によってニューロンの分化を調整できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-193118号公報
【文献】WO2011/162317号国際公開公報
【文献】特開2013-047275号公報
【文献】特開平07-025777号公報
【文献】特開2012-136448号公報
【文献】特開2016-5465号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Neurosci Res 69(2011)175-186
【文献】Front Mol Neuro sci 8(2016)78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規な神経活性化作用を有する組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、神経活性化因子の探索のため、神経細胞の最初期遺伝子発現誘導に関わるリン酸化ERKの変化を指標とする評価系を構築し、この評価系を用いて1000種以上の植物抽出物や天然化合物の神経活性化作用を評価した結果、神経活性化作用を有する組成物を見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明の構成は以下のとおりである。
(1)アグリモールB(Agrimol B)及び/または、シュードアスピジン(Pseudoaspidin)を有効成分とする神経活性化用組成物。
(2)(1)に記載の神経活性化用組成物を含む認知機能改善剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、活性が低下した神経細胞において神経伝達機能が改善される組成物が提供される。そして神経伝達機能の改善によって認知機能の向上がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】神経細胞において、アグリモールB、シュードアスピジンがリン酸化CaMKIIを増加させることを示すグラフである。
【
図2】神経細胞において、アグリモールB、シュードアスピジンがリン酸化ERKを増加させることを示すグラフである。
【
図3】神経細胞において、アグリモールB、シュードアスピジンがIEG遺伝子(c-fos、Arc)発現を増加させることを示すグラフである。
【
図4】神経細胞において、アグリモールB、シュードアスピジンが神経成長に関与する脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子発現を増加させることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願は、アグリモールB及び/またはシュードアスピジンを有効成分として含有する神経活性化組成物に関する。
アグリモールB(Agrimol B)は、下記の式(1)に記載の構造式を有する既知化合物である。
【0015】
【化1】
シュードアスピジン(Pseudoaspidin)は、下記の式(2)に記載の構造式を有する既知化合物である。
【0016】
【0017】
アグリモールB及び/または、シュードアスピジンを有効成分とする神経活性化組成物は、そのまま、あるいは慣用の医薬用製剤担体とともに医薬用組成物として動物及びヒトに投与することができる。医薬用組成物の剤形としては特に制限されるものではなく、必要に応じて適宜選択すればよい。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などの経口剤や、注射剤、坐薬などの非経口剤があげられる。投与量は、通常成人で抽出物の重量で通常0.1~5000 mgを1日数回に分けて服用するのが適当である。
【0018】
本発明において錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などの経口剤は、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類などの賦形剤を用いて常法に従って製造される。これらの製剤中のアグリモールB及び/またはシュードアスピジンの配合量は特に限定されるものでなく適宜設計できる。この種の製剤には本発明組成物の他に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを適宜使用できる。
【0019】
これら有効成分以外の配合成分は、結合剤としてデンプン、デキストリン、アラビアガム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶性セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールなどが例示できる。崩壊剤としてはデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどを例としてあげることができる。界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどをあげることができる。滑沢剤として、タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールなどを例示できる。流動性促進剤では軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどを例としてあげることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
実施例
・リン酸化CaMKII( pCaMKII)、リン酸化ERK( pERK)の増加作用確認試験(ウエスタンブロット試験)
妊娠17日目のSDラット(日本エスエルシー)から胎仔を取り出し、大脳皮質と海馬を単離した後、神経細胞分散液キット(住友ベークライト)を用いて添付の説明書に従い、初代神経細胞を調製した。調製したラット初代神経細胞を2% B27(Gibco社)、0.5 mM L-グルタミン(Gibco社)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma Aldrich社)を含むニューロベイサル培地(Gibco社)で4×105 cells/mLの濃度になるように懸濁し、ポリ-L-リジンコートの48ウエルプレート(住友ベークライト)に350 μlずつ播種し、37℃、5% CO2下で培養した。
培養10日目にDMSOに溶解したアグリモールB、シュードアスピジン (共にChemFaces社)を、終濃度がそれぞれ0.3~3 μM, 0.3~3 μg/mLとなるように添加し、20分培養後に上清を除去し、PBS(Gibco社)で細胞を洗浄後、プロテアーゼ阻害剤、フォスファターゼ阻害剤(Roche Diagnostics社)を加えたRIPA溶液(50 mM Tris-HCl (pH8.0)、150 mM NaCl、0.1 % SDS、0.5% DOC、1% NP-40)150 μLを加え細胞抽出液を調製した。
BCA assay kit(Pierce Chemical社)でタンパク質定量を行った後、調製した細胞抽出液に4倍希釈 Laemmli sample溶液(Bio-rad社)、終濃度50 mMになるようDTT(和光純薬工業)を加え95℃、5分加熱し、電気泳動用のサンプルを調製した。調製したサンプルをCriterion TGX プレキャストゲル(4-20%:26レーン、Bio-rad社)にロードし、電気泳動を行った後、トランスブロットTurboミディPVDF転写パック(Bio-rad社)を用いて1A、25 V、30分の条件で転写反応を行った。
転写させたメンブレンをBlocking One(Nacalai Tesque社)に浸し、室温で1時間振盪させながらブロッキングした後、10% Blocking One -TBS溶液で1/2000倍, 1/2000倍に希釈した抗p44/42 MAPK (Erk1/2) (L34F12) 抗体(Cell Signaling Technology社)、CaMKII (pan)(D11A10)抗体(Cell Signaling Technology社)に浸し、4℃で振盪させながら一晩反応させた。TBS-T溶液で3回洗浄後、10% Blocking One -TBS溶液で1/10000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG抗体(Invitrogen社)で浸し、室温で振盪させながら1時間反応させた。TBS-T溶液で3回洗浄した後、ECL Prime Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare社)で5分反応させ発光量をChemiDoc(Bio-rad社)にて測定した。
測定したメンブレンはTBS-T溶液で洗浄後、リプロービングバッファー(2% SDS, 100 mM 3-Mercapto-1,2-propanediol, 62.5 mM Tris-HCl, pH6.7)に浸し、60℃で30分浸透させた。TBS-T溶液で再度洗浄後、Blocking One(Nacalai Tesque社)に浸し、室温で1時間振盪させながらブロッキングした後、10% Blocking One -TBS溶液で1/3000倍, 1/2000倍に希釈した抗phospho-p44/42 MAPK (Erk1/2)(Thr202/Tyr204) (197G2)抗体(Cell Signaling Technology社)、 phospho-CaMKII (Thr286)(D21E) Rabbit mAb(Cell Signaling Technology社)に浸し、4℃で振盪させながら一晩反応させた。
TBS-T溶液で3回洗浄後、10% Blocking One -TBS溶液で1/10000倍に希釈したHRP標識抗ラビットIgG抗体(Invitrogen社)で浸し、室温で振盪させながら1時間反応させた。
TBS-T溶液で3回洗浄した後、ECL Prime Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare社)で5分反応させ発光量をChemiDoc(Bio-rad社)にて測定した。
得られたウエスタンブロッティングのバンドの発光強度をMulti Gaugeソフトを使用して測定し、発光強度を元に相対的リン酸化度を算出した。
【0021】
・最初期遺伝子(c-fos, arc, bdnf)発現増強作用
上記「pERKの増加作用確認試験」に記載の方法により、ラット初代神経細胞を調製し、7日間培養した。培養7日目にアグリモールB、 シュードアスピジン を、終濃度が0.3~3 μMとなるように添加し1時間培養した後、RNeasy Mini kit(QIAGEN社)を用い、添付の説明書に従ってRNAを調製した。
調製した100 ngのRNAを用いて、PrimeScript RT reagent kit(TaKaRa社)を使用し、添付の説明書に従いcDNAを作製した。
c-fos, arc, bdnf発現量は、1 μL cDNA、ラットc-fos, Arc taq man probe(TaqMan Gene expression assays: Applied Biosystems社)とPremix Ex Taq Perfect Real Time(TaKaRa社)を混合し、Quanti Studio (Applied Biosystems社)を用いて、95℃、20秒、(95℃、1秒→60℃、20秒)x45サイクルの反応条件で測定を行った。
内部標準としてGAPDHの発現量をRodent GAPDH control Reagent(Life Technologies社)を使用し、上記と同様な反応で測定した。測定により得られたCt値からGAPDHを内部標準としてΔΔCt法により、各サンプルの相対的遺伝子発現量を算出した。
【0022】
結果
試験結果を
図1~4に示す。
図1はCaMKIIに対するリン酸化CaMKII、
図2はERKに対するリン酸化ERKの発光強度比を示す。また、
図3にIEG遺伝子(arc, c-fos)、
図4にbdnf遺伝子の相対的発現量の測定結果を示す。
アグリモールB (Agrimol B)、 シュードアスピジン (Pseudoaspidin)は、いずれも濃度依存的にラット初代神経系培養細胞においてリン酸化CaMKII, リン酸化ERKを増加させ、最初期遺伝子(arc, c-fos)およびbdnf遺伝子の発現量を増加させていた。
以上のラット初代神経系培養細胞を用いた試験結果から、アグリモールB (Agrimol B)、 シュードアスピジン (Pseudoaspidin)は、リン酸化ERKを増加させ、その反応の制御下にある最初期遺伝子(arc, c-fos)、さらにbdnf遺伝子の発現を促進することから、神経を活性化し、神経栄養因子を増強することが判明した。