(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】プリント配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20230721BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20230721BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230721BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230721BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230721BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20230721BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230721BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230721BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C08L63/00 B
C08K5/29
C08K3/013
C08K3/36
C08K3/22
C08J5/24 CFC
B32B15/08 J
H05K1/03 630H
H05K1/03 610S
H05K3/46 T
(21)【出願番号】P 2020536380
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025921
(87)【国際公開番号】W WO2020031545
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2018150563
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔平
(72)【発明者】
【氏名】富澤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】志田 典浩
(72)【発明者】
【氏名】河合 英利
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/168732(WO,A1)
【文献】特開2018-053092(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039486(WO,A1)
【文献】特開2018-035308(JP,A)
【文献】特開2017-031402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08J 5/24
B32B15/08
H05K 1/03
H05K 3/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、エポキシ化合物(C)と、環状カルボジイミド化合物(D)と、無機充填材(E)と、硬化促進剤(F)と、を含み、
前記無機充填材(E)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、100~250質量部である、
プリント配線板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、2.0~15質量部である、
請求項1に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、2.5~12.0質量部である、
請求項1又は2に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項4】
前記マレイミド化合物(B)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、10~30質量部である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項5】
前記環状カルボジイミド化合物(D)が、下記式(1)で表される環状構造を有し、
前記環状構造を形成する原子数が8~50である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Lは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基又はこれらを組み合わせた基である2~4価の結合基であり、前記結合基は、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい。)
【請求項6】
前記環状カルボジイミド化合物(D)が、1分子内に2つ以上のカルボジイミド基を含有する多価環状カルボジイミド化合物を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項7】
前記多価環状カルボジイミド化合物が、下記式(2)で表される化合物である、
請求項6に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【化2】
(式(2)中、Xは、下記式(3)で表される4価の基であり、Ar
1~Ar
4は、各々独立に、フェニレン基又はナフタレン-ジイル基である2価の連結基であり、前記連結基は、置換基を有してもよい。)
【化3】
【請求項8】
前記式(2)で表される化合物が、下記式(4)で表される化合物である、
請求項7に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【化4】
【請求項9】
前記硬化促進剤(F)が、イミダゾール化合物及び/又は有機リン化合物を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項10】
前記硬化促進剤(F)が、下記式(5)で表される化合物を含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【化5】
(式(5)中、Ar
5は、各々独立に、フェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基、又はアントラセン基を表し、これらの基は、置換基を有してもよく、R
1は、水素原子、アルキル基、アリール基を表し、R
1がアルキル基又はアリール基を表す場合、置換基を有してもよい。)
【請求項11】
前記無機充填材(E)が、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される1種類以上を含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項12】
基材と、
該基材に含浸又は塗布された請求項1~11のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物と、を含む、
プリプレグ。
【請求項13】
請求項12に記載のプリプレグを有する、
積層板。
【請求項14】
請求項12に記載のプリプレグと、
前記プリプレグの片面又は両面に配置された金属箔と、
を有する、
金属箔張積層板。
【請求項15】
請求項12に記載のプリプレグで形成された絶縁層と、
該絶縁層の表面に形成された導体層と、を含む、
プリント配線板。
【請求項16】
第1の絶縁層と前記第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、
前記複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と前記複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層と、を有し、
前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層が、それぞれ、請求項12に記載のプリプレグを有する、
多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体パッケージの高機能化、小型化が進むに伴い、半導体パッケージ用の各部品の高集積化や高密度実装化が近年益々加速している。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱硬化性樹脂と、環状カルボジイミド化合物とを含み、電子部品に用いられる樹脂組成物が開示されている。この文献によれば、樹脂組成物は、環状カルボジイミド化合物を含むことにより、ゲルタイムや溶融粘度等の流動特性が低くならずに、ガラス転移温度(Tg)が高くなることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、プリント配線板(特に多層コアレス基板)を用いて電子部品(パッケージ)を製造する際に、高い耐熱性、耐薬品性、低吸水性、誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)、及び難燃性を向上することが重要な課題となっている。特許文献1は、樹脂組成物を、封止材料、コア層、ビルドアップ層、ソルダーレジスト層等の基板材料、白色ダイオード等の受光素子に用いることを想定している。しかしながら、特許文献1には、耐薬品性、電気特性及び難燃性を向上することについて検討されていない。
【0006】
また、プリント配線板に用いる材料(組成物)として多官能の熱硬化性樹脂を含めることは、耐熱性を向上できるため有効である。しかしながら、上記多官能の熱硬化性樹脂を含む材料(組成物)に対し、耐薬品性及び電気特性(低誘電率及び低誘電正接)を更に改善することが求められている。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、優れた流動特性、耐熱性、耐薬品性、及び電気特性をバランスよく同時に満たすプリント配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、フェノール化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、エポキシ化合物(C)と、環状カルボジイミド化合物(D)と、無機充填材(E)と、硬化促進剤(F)とを組み合わせ、無機充填材(E)の含有量を特定範囲内とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明は次のとおりである。
〔1〕
フェノール化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、エポキシ化合物(C)と、環状カルボジイミド化合物(D)と、無機充填材(E)と、硬化促進剤(F)と、を含み、
前記無機充填材(E)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、100~250質量部である、
プリント配線板用樹脂組成物。
〔2〕
前記環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、2.0~15質量部である、
〔1〕に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
〔3〕
前記環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、2.5~12.0質量部である、
〔1〕又は〔2〕に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
〔4〕
前記マレイミド化合物(B)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、10~30質量部である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
〔5〕
前記環状カルボジイミド化合物(D)が、下記式(1)で表される環状構造を有し、前記環状構造を形成する原子数が8~50である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Lは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基又はこれらを組み合わせた基である2~4価の結合基であり、前記結合基は、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい。)
〔6〕
前記環状カルボジイミド化合物(D)が、1分子内に2つ以上のカルボジイミド基を含有する多価環状カルボジイミド化合物を含む、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
〔7〕
前記多価環状カルボジイミド化合物が、下記式(2)で表される化合物である、
〔6〕に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【化2】
(式(2)中、Xは、下記式(3)で表される4価の基であり、Ar
1~Ar
4は、各々独立に、フェニレン基又はナフタレン-ジイル基である2価の連結基であり、前記連結基は、置換基を有してもよい。)
【化3】
〔8〕
前記式(2)で表される化合物が、下記式(4)で表される化合物である、
〔7〕に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【化4】
〔9〕
前記硬化促進剤(F)が、イミダゾール化合物及び/又は有機リン化合物を含む、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
〔10〕
前記硬化促進剤(F)が、下記式(5)で表される化合物を含む、
〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【化5】
(式(5)中、Ar
5は、各々独立に、フェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基、又はアントラセン基を表し、これらの基は、置換基を有してもよく、R
1は、水素原子、アルキル基、アリール基を表し、R
1がアルキル基又はアリール基を表す場合、置換基を有してもよい。)
〔11〕
前記無機充填材(E)が、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される1種類以上を含む、〔1〕~〔10〕のいずれかのプリント配線板用樹脂組成物。
〔12〕
基材と、該基材に含浸又は塗布された〔1〕~〔11〕のいずれかのプリント配線板用樹脂組成物と、を含む、プリプレグ。
〔13〕
〔12〕のプリプレグを有する、積層板。
〔14〕
〔12〕のプリプレグと、
前記プリプレグの片面又は両面に配置された金属箔と、
を有する金属箔張積層板。
〔15〕
〔12〕のプリプレグで形成された絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層と、を含む、プリント配線板。
〔16〕
第1の絶縁層と前記第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、
前記複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と前記複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層と、を有し、
前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層が、それぞれ、〔12〕のプリプレグを有する、
多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた流動特性、耐熱性、耐薬品性、及び電気特性をバランスよく同時に満たすプリント配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板及び多層プリント配線板を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】多層コアレス基板のパネルの一例の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
本明細書にいう「樹脂固形分」とは、特段の記載がない限り、本実施形態のプリント配線板用樹脂組成物における、溶剤及び充填材を除いた成分をいい、樹脂固形分100質量部とは、プリント配線板用樹脂組成物における溶剤及び充填材を除いた成分の合計が100質量部であることをいう。
【0014】
[プリント配線板用樹脂組成物]
本実施形態のプリント配線板用樹脂組成物(単に「樹脂組成物」ともいう。)は、フェノール化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、エポキシ化合物(C)と、環状カルボジイミド化合物(D)と、無機充填材(E)と、硬化促進剤(F)と、を含む。無機充填材(E)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、100~250質量部である。本実施形態の樹脂組成物は、上記構成を備えることにより、例えば、優れた流動特性、耐熱性、耐薬品性、低吸水性、及び電気特性をバランスよく同時に満たすことができる。このため、本実施形態の樹脂組成物は、プリント配線板用材料として用いられ、本実施形態の樹脂組成物により得られるプリント配線板は、耐熱性、耐薬品性、低吸水性及び電気特性に優れる。流動特性が悪化せずにこのような各特性が向上する要因は以下のように考えられるが要因はこれに限定されない。環状カルボジイミド化合物(D)は高い融点を有するため、例えば、プリプレグ作成時の温度(約140℃)においては各樹脂との反応性が低いことにより樹脂組成物の流動特性を悪化させない。そして、より温度が高いプレス成形時に環状カルボジイミド化合物(D)が溶融し、熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂)と反応することにより架橋密度の高い構造体を形成するため、ガラス転移温度、耐薬品性が向上する。また、環状カルボジイミド化合物(D)は、フェノール性又はアルコール性水酸基と反応して架橋構造を形成することにより誘電正接を悪化させる水酸基を低減できるため、硬化物の誘電正接が低下する。
【0015】
(フェノール化合物(A))
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール化合物(A)を含有する。本明細書でいう「化合物」は、樹脂を包含する概念をいう。フェノール化合物(A)としては、1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物が挙げられる。このようなフェノール化合物としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)、ジアリルビスフェノール類(例えば、ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールE、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールS等)、ビスフェノール型フェノール樹脂(例えば、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールE型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールS型樹脂等)、フェノール類ノボラック樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等)、グリシジルエステル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これらのフェノール化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0016】
これらの中でも、フェノール化合物(A)は、線熱膨張率(CTE)、ガラス転移温度(Tg)、耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、アラルキル型フェノール樹脂であることが好ましい。
【0017】
(アラルキル型フェノール樹脂)
アラルキル型フェノール樹脂としては、特に制限されないが、例えば、下記式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【化6】
(式(A1)中、Ar
a1は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar
a2は、ベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル環を表し、R
2aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、mは、1~50の整数を表し、各環は、水酸基以外の置換基(例えば、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基等)を有してもよい。)
【0018】
式(A1)で表される化合物は、線熱膨張率(CTE)、ガラス転移温度(Tg)、銅箔ピール強度、耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、式(A1)中、Ara1がナフタレン環であり、Ara2がベンゼン環である化合物(「ナフトールアラルキル型フェノール樹脂」ともいう。)、及び式(A1)中、Ara1がベンゼン環であり、Ara2がビフェニル環である化合物(「ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂」ともいう。)であることが好ましい。
【0019】
ナフトールアラルキル型フェノール樹脂は、下記式(A2)で表される化合物であることが好ましい。
【化7】
(式(A2)中、R
2aは、各々独立に、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、mは、1~10の整数(好ましくは1~6の整数)を表す。)
【0020】
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂は、下記式(A3)で表される化合物であることが好ましい。
【化8】
(式(A3)中、R
2bは、各々独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基(好ましくは水素原子)を表し、m1は、1~20の整数(好ましくは1~6の整数)を表す。)
【0021】
アラルキル型フェノール樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により合成した製品を用いてもよい。アラルキル型フェノール樹脂の市販品としては、日本化薬株式会社製品の「KAYAHARD GPH-65」、「KAYAHARD GPH-78」、「KAYAHARD GPH-103」(いずれも式(A3)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂)、新日鐵化学株式会社製品の「SN-495-V」(式(A2)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂)が挙げられる。
【0022】
フェノール化合物(A)の含有量は、特に限定されないが、ガラス転移温度(Tg)、耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、15~45質量部であることが好ましく、20~40質量部であることがより好ましく、25~35質量部であることが更に好ましい。
【0023】
(マレイミド化合物(B))
本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド化合物(B)を含有する。マレイミド化合物(B)としては、1分子中にマレイミド基を1つ以上有するマレイミド化合物が挙げられる。このようなマレイミド化合物としては、特に制限されないが、例えば、1分子中にマレイミド基を1つ有するモノマレイミド化合物(例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド等)、1分子中にマレイミド基を2つ以上有するポリマレイミド化合物(例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン)、これらのマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマー等が挙げられる。これらのマレイミド化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、マレイミド化合物(B)は、線熱膨張係数(CTE)、ガラス転移温度(Tg)、耐熱性に一層優れる観点から、ポリマレイミド化合物であることが好ましい。
【0024】
ポリマレイミド化合物としては、特に制限されないが、例えば、ベンゼン環にマレイミド基が複数結合した化合物(例えば、m-フェニレンビスマレイミド等のフェニレンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド等)、直鎖状又は分岐状アルキル鎖の両末端にマレイミド基が結合した化合物(例えば、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等)、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、下記式(B1)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、線熱膨張係数(CTE)、ガラス転移温度(Tg)、耐熱性に一層優れる観点から、マレイミド化合物(B)は、下記式(B1)で表される化合物であることが好ましい。
【化9】
(式(B1)中、R
4a及びR
5aは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、好ましくは水素原子を表す。R
4bは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、好ましくは水素原子を表す。sは、1以上の整数を表し、好ましくは1~100であり、より好ましくは1~10である。)
【0026】
式(B1)で表される化合物の具体例としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン等が挙げられる。
【0027】
マレイミド化合物(B)は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。マレイミド化合物(B)の市販品としては、ケイ・アイ化成株式会社製品の、「BMI-70」、「BMI-80」、大和化成工業株式会社製品の「BMI-1000P」、「BMI-3000」、「BMI-4000」、「BMI-5100」、「BMI-7000」、「BMI-2300」等が挙げられる。
【0028】
マレイミド化合物(B)の含有量は、ガラス転移温度(Tg)、耐熱性に優れる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、8~40質量部であることがより好ましく、10~30質量部であることが更に好ましい。
【0029】
(エポキシ化合物(C))
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ化合物(C)を含有する。エポキシ化合物(C)としては、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物が挙げられる。このようなエポキシ化合物としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、ジアリルビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールE型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジアリルビスフェノールS型エポキシ樹脂等)、フェノール類ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を含有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を含有するナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン骨格を含有するアントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型構造単位と炭化水素系構造単位からなるエポキシ樹脂、これらのハロゲン化合物が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0030】
これらの中でも、エポキシ化合物(C)は、線熱膨張係数(CTE)、ガラス転移温度(Tg)、銅箔ピール強度、耐熱性に一層優れる観点から、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0031】
(アラルキル型エポキシ樹脂)
アラルキル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(C1)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
(式(C1)中、Ar
c1は、各々独立して、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、Ar
c2は、ベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル環を表し、R
3aは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、kは1~50の整数を表し、各環は、グリシジルオキシ基以外の置換基(例えば、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基)を有してもよい。)
【0032】
式(C1)中、kは、1~50の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~10の整数を表すことが好ましく、1~6の整数を表すことがより好ましく、1~3であることが特に好ましい。
【0033】
なお、アラルキル型エポキシ樹脂は、式(C1)で表される化合物を含む場合、kが同一である複数種類の化合物を含んでもよく、kが異なる複数種類の化合物を含んでもよい。アラルキル型エポキシ樹脂は、kが異なる複数種類の化合物を含む場合、式(C1)中、kが1~3である化合物を含むことが好ましい。
【0034】
式(C1)で表される化合物は、線熱膨張率(CTE)、耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、式(C1)中、Arc1がナフタレン環であり、Arc2はがベンゼン環である化合物(「ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂」ともいう。)、及びArc1がベンゼン環であり、Arc2がビフェニル環である化合物(「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」ともいう。)であることが好ましい。
【0035】
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂は、線熱膨張係数(CTE)、耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、下記式(C2)で表される化合物であることが好ましい。
【化11】
(式(C2)中、kaは、1~10の整数を表す。)
【0036】
また、アラルキル型エポキシ樹脂は、下記式(C3)又は下記式(C4)で表される化合物であってもよい。
【化12】
(式(C3)中、kyは、1~10の整数を表す。)
【化13】
(式(C4)中、kzは、1~10の整数を表す。)
【0037】
アラルキル型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鉄住金化学株式会社製品の「エポトート(登録商標)ESN-155」、「エポトート(登録商標)ESN-355」、「エポトート(登録商標)ESN-375」、「エポトート(登録商標)ESN-475V」、「エポトート(登録商標)ESN-485」、「エポトート(登録商標)ESN-175」、日本化薬株式会社製品の「NC-7000」、「NC-7300」、「NC-7300L」、DIC株式会社製品の「HP-5000」、「HP-9900」等が挙げられる。ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製品の「NC-3000」、「NC-3000L」、「NC-3000FH」、「NC-3000H」等が挙げられる。
【0038】
(ナフタレン型エポキシ樹脂)
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、上記のナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂を除くエポキシ樹脂であって、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられる。ナフタレン型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、下記式(C5)で表されるエポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。ナフタレン型エポキシ樹脂は、線熱膨張係数(CTE)、ガラス転移温度(Tg)、耐熱性及び低吸水性に一層優れる観点から、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【化14】
【0039】
上記式(C5)で表されるエポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。市販品としては、DIC株式会社製品の「HP-4710」等が挙げられる。
【0040】
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、例えば、下記式(C6)で表される化合物が挙げられる。
【化15】
(式(C6)中、R
3bは、各々独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アラルキル基、ベンジル基、ナフチル基又はグリシジルオキシ基を含有するナフチル基を表し、k1は、0~10の整数を表す。)
【0041】
式(C6)中、k1は、0~10の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、0~6の整数を表すことが好ましく、0~4の整数を表すことがより好ましく、2~3であることが特に好ましい。
【0042】
式(C6)中、R3bは、各々独立して、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アラルキル基、及びナフチル基を表すことが好ましい。
【0043】
式(C6)で表される化合物において、分子中のエポキシ基を含有するグリシジルオキシ基の数は、2~6であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
【0044】
なお、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、式(C6)で表される化合物を含む場合、k1が同一である複数種類の化合物を含んでもよく、k1が異なる複数種類の化合物を含んでもよい。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、k1が異なる複数種類の化合物を含む場合、式(C6)中、k1が0~4である化合物を含むことが好ましく、2~3である化合物を含むことがより好ましい。
【0045】
式(C6)で表される化合物としては、特に制限されないが、例えば、式(C7)で表される化合物が挙げられる。
【化16】
【0046】
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC株式会社製品の「HP-4032」、「HP-6000」、「EXA-7300」、「EXA-7310」、「EXA-7311」、「EXA-7311L」、「EXA7311-G3」等が挙げられる。
【0047】
エポキシ化合物(C)の含有量は、特に限定されないが、ガラス転移温度(Tg)、耐熱性及び線熱膨張率に一層優れる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、20~45質量部であることがより好ましく、25~40質量部であることが更に好ましく、25~35質量部が特に好ましい。
【0048】
(その他の熱硬化性化合物)
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール化合物(A)、マレイミド化合物(B)、及びエポキシ化合物(C)以外のその他の熱硬化性化合物を含んでもよい。ここでいう「熱硬化性化合物」とは、加熱により硬化可能な化合物をいう。熱硬化性化合物としては、加熱により、同一の官能基同士又は異なる官能基との間で重合反応又は架橋反応を進行可能な官能基(「熱硬化性官能基」ともいう。)を分子中に少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。熱硬化性官能基としては、特に限定されないが、例えば、シアナト基(-O-C≡N)、アリル基、アルケニル置換ナジイミド基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、その他重合可能な不飽和基等が挙げられる。
【0049】
(シアン酸エステル化合物)
その他の熱硬化性化合物は、シアン酸エステル化合物を含有してもよい。シアン酸エステル化合物としては、1分子中にシアナト基(シアン酸エステル基)を1つ以上有する化合物が挙げられる。シアン酸エステル化合物としては、例えば、1分子中に2つ以上のシアナト基を含有する芳香族炭化水素化合物、2つ以上のシアナト基を含有する2つの芳香環が連結基により結合した化合物、ノボラック型シアン酸エステル、ビスフェノール型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノール型シアン酸エステル(例えば、ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノールF型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノールE型シアン酸エステル、ジアリルビスフェノールS型シアン酸エステル等)、アラルキル型シアン酸エステル、これらのシアン酸エステルのプレポリマーが挙げられる。シアン酸エステル化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0050】
1分子中に2つ以上のシアナト基を有する芳香族炭化水素化合物としては、例えば、式(I)で表される化合物が挙げられる。
式(I):Ar-(OCN)p
(式(I)中、Arは、ベンゼン環、ナフタレン環及びビフェニル環のいずれかを表し、pは、2以上の整数を表す。)
【0051】
式(I)中、pが2である化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシナトナフタレン、4,4’-ジシアナトビフェニル等が挙げられる。
【0052】
2つ以上のシアナト基を含有する2つの芳香環が連結基により結合した化合物としては特に限定されないが、例えば、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン等が挙げられる。
【0053】
ノボラック型シアン酸エステルとしては、例えば、下記式(1x)で表される化合物が挙げられる。
【化17】
(式(1x)中、R
1aは、各芳香環に複数個置換してよく、各々独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基を表し、R
1bは、各々独立して、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、nは、1~10の整数を表す。)
【0054】
式(1x)中、nは、1~10の整数であり、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~6の整数であることが好ましい。
【0055】
なお、ノボラック型シアン酸エステルは、式(1x)で表される化合物を含む場合、nが同一である複数種類の化合物を含んでもよく、nが異なる複数種類の化合物を含んでもよい。
【0056】
式(1x)で表される化合物としては特に限定されないが、例えば、ビス(3,5-ジメチル4-シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シナアトフェニル)メタン、2、2’-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0057】
ビスフェノール型シアン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、フェノール化合物の項で例示したビスフェノールのフェノール性水酸基の水素原子が、シアン基(-C≡N)で置換した化合物が挙げられる。具体的には、ビスフェノールA型シアン酸エステル、ビスフェノールE型シアン酸エステル、ビスフェノールF型シアン酸エステル、ビスフェノールAD型シアン酸エステル、ビスフェノールB型シアン酸エステル、ビスフェノールAP型シアン酸エステル、ビスフェノールS型シアン酸エステル、ビスフェノールZ型シアン酸エステル、ビスフェノールTMC型シアン酸エステル等が挙げられる。
【0058】
ビスフェノール型シアン酸エステルは、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。ビスフェノール型シアン酸エステルの市販品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製品の「CA210」等が挙げられる。
【0059】
アラルキル型シアン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル等が挙げられる。
【0060】
ナフトールアラルキル型シアン酸エステルとしては、例えば、下記式(1a)で表される化合物が挙げられる。
【化18】
(式(1a)中、R
1dは、各々独立に、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、n1は、1~10の整数を表す。)
【0061】
式(1a)中、n1は、1~10の整数であり、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~6の整数であることが好ましい。
【0062】
なお、ナフトールアラルキル型シアン酸エステルは、式(1a)で表される化合物を含む場合、n1が同一である複数種類の化合物を含んでもよく、n1が異なる複数種類の化合物を含んでもよい。
【0063】
ビフェニルアラルキル型シアン酸エステルとしては、例えば、下記式(1b)で表される化合物が挙げられる。
【化19】
(式(1b)中、R
1eは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表し、R
1fは、各々独立に、水素原子又はメチル基(好ましくは水素原子)を表し、n2は、1~10の整数を表す。)
【0064】
式(1b)中、n2は、1~10の整数を表し、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、1~6の整数を表すことが好ましい。
【0065】
なお、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステルは、式(1b)で表される化合物を含む場合、n2が同一である複数種類の化合物を含んでもよく、n2が異なる複数種類の化合物を含んでもよい。
【0066】
アラルキル型シアン酸エステルは、市販品を用いてもよく、公知の方法により合成した製品を用いてもよい。アラルキル型シアン酸エステルの合成方法としては、例えば、目的とするアラルキル型シアン酸エステルに対応するフェノール樹脂(以下、「対応するフェノール樹脂」ともいう。)と、ハロゲン化シアンと、塩基性化合物とを不活性有機溶媒中で反応させる方法、対応するフェノール樹脂と塩基性化合物とを水溶液中で反応させることにより形成した塩と、ハロゲン化シアンとを2相系界面反応させる方法等が挙げられる。いずれの方法においても、対応するフェノール樹脂のフェノール性水酸基の水素原子をシアネート化させることによりアラルキル型シアン酸エステルを得ることができる。より詳細には、例えば、実施例に記載の方法等が用いられる。
【0067】
シアン酸エステル化合物の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、30質量部以下(例えば、0質量部以上30質量部以下)であってもよく、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であること更に好ましい。
【0068】
(アルケニル置換ナジイミド化合物)
その他の熱硬化性化合物は、アルケニル置換ナジイミド化合物を含有してもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物としては、例えば、分子中にアルケニル置換ナジイミド基を1個以上有する化合物が挙げられる。アルケニル置換ナジイミド化合物は、例えば、下記式(5a)で表される化合物が挙げられる。
【化20】
(式(5a)中、R
6aは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基を示し、R
6bは、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記式(5b)又は(5c)で表される基を示す。)
【化21】
(式(5b)中、R
6cは、メチレン基、イソプロピリデン基、又は、CO、O、S、又はSO
2で表される置換基を示す。)
【化22】
(式(5c)中、R
6dは、各々独立して、炭素数1~4のアルキレン基、又は炭素数5~8のシクロアルキレン基を示す。)
【0069】
また、アルケニル置換ナジイミド化合物は、下記式(12)及び/又は(13)で表される化合物も挙げられる。
【化23】
【化24】
【0070】
アルケニル置換ナジイミド化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製した調製品を用いてもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物の市販品としては、特に限定されないが、例えば、丸善石油化学株式会社製品の「BANI-M」「BANI-X」等が挙げられる。
【0071】
アルケニル置換ナジイミド化合物は、2官能性アルケニル置換ナジイミド化合物を含むことが好ましい。本明細書にいう「2官能性アルケニル置換ナジイミド化合物」とは、1分子中にアルケニル置換ナジイミド基を2つ有する(1分子中のアルケニル置換ナジイミド基の数が2である)化合物をいう。
【0072】
アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、30質量部以下(例えば、0質量部以上30質量部以下)であってもよく、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であること更に好ましい。
【0073】
(その他の樹脂)
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、以下に示すその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、重合可能な不飽和基を有する化合物、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物等が挙げられる。
【0074】
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、特に制限されないが、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;ベンゾシクロブテン樹脂等が挙げられる。
【0075】
オキセタン樹脂としては、特に制限されないが、例えば、オキセタン、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3’-ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、東亜合成株式会社製品の「OXT-101」、「OXT-121」等が挙げられる。
【0076】
ベンゾオキサジン化合物としては、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であればよく、例えば、小西化学株式会社製品の「ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF-BXZ」「ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS-BXZ」等が挙げられる。
【0077】
(無機充填材(E))
本実施形態の樹脂組成物は、無機充填材(E)を含有する。無機充填材(E)としては、特に限定されず、シリカ類、ケイ素化合物(例えば、ホワイトカーボン等)、金属酸化物(例えば、アルミナ、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等)、金属窒化物(例えば、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等)、金属硫酸化物(例えば、硫酸バリウム等)、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(例えば、水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等)、モリブデン化合物(例えば、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等)、亜鉛化合物(例えば、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛等)、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラス等が挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、無機充填材(E)は、線熱膨張係数(CTE)、曲げ弾性率、難燃性に一層優れる観点から、シリカ、金属水酸化物、及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、シリカであることが更に好ましい。
【0078】
シリカ類としては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等が挙げられる。これらの中でも、溶融シリカであることが好ましい。
【0079】
無機充填材(E)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、100~250質量部である。無機充填材(E)の含有量が、100質量部以上であることにより、線熱膨張係数(CTE)、曲げ弾性率、難燃性に優れる。無機充填材(E)の含有量が、250質量部を超えると、十分な流動特性が得られず、成形困難となり、プリント配線板の用途に適さない。同様の観点から、無機充填材(E)の含有量は、120~230質量部であることが好ましく、140~210質量部であることがより好ましく、150~200質量部であることが更に好ましい。
【0080】
(有機充填材(I))
本実施形態の樹脂組成物は、有機充填材(I)を含有してもよい。有機充填材としては、例えば、スチレン型パウダー、ブタジエン型パウダー、アクリル型パウダー等のゴムパウダー;コアシェル型ゴムパウダー;シリコーン型パウダー等が挙げられる。これらの有機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、シリコーン型パウダーであることが好ましい。
【0081】
シリコーン型パウダーとしては、例えば、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダー等が挙げられる。これらの中でも、シリコーン複合パウダーであることが好ましい。
【0082】
有機充填材(I)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、10~35質量部であることが好ましく、15~30質量部であることがより好ましく、20~25質量部であることが更に好ましい。
【0083】
(シランカップリング剤(G))
本実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤(G)を更に含有してもよい。本実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤(G)を含有することにより、無機充填材(E)の分散性に一層優れたり、本実施形態の樹脂組成物の各成分と、後述する基材との接着強度に一層優れたりする傾向にある。
【0084】
シランカップリング剤(G)としては、一般に無機物の表面処理に使用されるシランカップリング剤が挙げられ、アミノシラン系化合物(例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン系化合物(例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、アクリルシラン系化合物(例えば、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、カチオニックシラン系化合物(例えば、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等)、フェニルシラン系化合物等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、シランカップリング剤(G)は、エポキシシラン系化合物であることが好ましい。エポキシシラン系化合物としては、例えば、信越化学工業株式会社製品の「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-403」等が挙げられる。
【0085】
シランカップリング剤(G)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、0.1~10.0質量部程度であってもよく、0.5~8.0質量部であることが好ましく、1.0~6.0質量部であることがより好ましい。
【0086】
(湿潤分散剤(H))
本実施形態の樹脂組成物は、湿潤分散剤(H)を更に含有してもよい。本実施形態の樹脂組成物は、湿潤分散剤(H)を含有することにより、無機充填材(E)の分散性に一層優れる傾向にある。
【0087】
湿潤分散剤(H)としては、無機充填材(E)を分散させるために用いられる公知の分散剤(分散安定剤)であればよく、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のDISPER BYK-110、111、118、180、161、BYK-W996、W9010、W903等が挙げられる。
【0088】
湿潤分散剤(H)の含有量は、無機充填材(E)の分散性に一層優れる観点から、樹脂固形分100質量部に対して、0.1~5.0質量部であることが好ましく、0.2~3.0質量部であることがより好ましく、0.5~1.5質量部であることが更に好ましい。
【0089】
(環状カルボジイミド化合物(D))
本実施形態の樹脂組成物は、環状カルボジイミド化合物(D)を含有する。環状カルボジイミド化合物(D)としては、例えば、分子内に1つ以上の環状構造を有し、1つの環状構造中に1つのカルボジイミド基を有する化合物が挙げられる。環状カルボジイミド化合物は、分子内に1つ以上の環状構造を有し、1つの環状構造中に1つのカルボジイミド基を有するものである。樹脂組成物は、環状カルボジイミド化合物(D)を含有することにより、流動性を悪化させることなく、十分な成形性を維持しながら、ガラス転移温度が高くなり、耐熱性に優れたり、電気特性に優れたりする。
【0090】
環状構造は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を有し、その第1窒素原子と第2窒素原子とが結合基により結合されている。環状構造を形成する原子数は、8~50であることが好ましく、10~30であることがより好ましく、10~20であることが更に好ましい。ここで、環状構造を形成する原子数は、環状構造を直接構成する原子の数を意味する。例えば、8員環であれば環状構造を形成する原子数は8であり、50員環であれば環状構造を形成する原子数は50である。環状構造を形成する原子数が8以上であることにより、環状カルボジイミド化合物の安定性が良好であり、保管し易く、使用し易いという利点を備える。また、環状構造を形成する原子数が50を超える環状カルボジイミド化合物の合成は困難である。
【0091】
環状カルボジイミド化合物(D)は、下記式(1)で表される環状構造を含むことが好ましい。
【化25】
(式(1)中、Lは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基又はこれらを組み合わせた基である2~4価の結合基である。結合基は、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい。)
【0092】
ヘテロ原子とは、O、N、S及びPをいう。結合基のうち、2つの価は、環状構造を形成するために使用される。Lが3価又は4価の結合基である場合、Lは、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマー又は他の環状構造と結合している。
【0093】
(結合基L)
結合基Lは、下記式(1-1)、(1-2)又は(1-3)で表される2~4価の結合基であることが好ましい。
【化26】
【0094】
式(1-1)中、Ar101及びAr102は、各々独立に、ヘテロ原子及び置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数5~15の芳香族炭化水素基である。
【0095】
Ar101及びAr102で表される芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、例えば、へテロ原子を含有する複素環構造を有してもよい、炭素数5~15のアリーレン基、炭素数5~15のアレーントリイル基、炭素数5~15のアレーンテトライル基が挙げられる。ここで、アリーレン基(2価)としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。アレーントリイル基(3価)としては、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基等が挙げられる。アレーンテトライル基(4価)としては、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基は置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0096】
Ar101及びAr102としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基、又はベンゼンテトライル基であることが好ましく、フェニレン基、又はベンゼントリイル基であることがより好ましい。
【0097】
式(1-2)中、R101及びR102は、各々独立に、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基(脂肪族炭化水素基)、2~4価の炭素数3~20の脂環族基(脂環式炭化水素基)及びこれらの組み合わせ、又はこれらの脂肪族基及び/又は脂環族基と2~4価の炭素数5~15の芳香族基(芳香族炭化水素基)の組み合わせが挙げられる。
【0098】
R101及びR102で表される脂肪族基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のアルカントリイル基、炭素数1~20のアルカンテトライル基等が挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基等が挙げられる。アルカントリイル基としては、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基等が挙げられる。アルカンテトライル基としては、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基等が挙げられる。これらの脂肪族基は置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0099】
脂環族基としては、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルカントリイル基、炭素数3~20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基等が挙げられる。シクロアルカントリイル基としては、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基等が挙げられる。シクロアルカンテトライル基としては、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基等が挙げられる。これらの脂環族基は、置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0100】
芳香族基としては、へテロ原子を含有する複素環構造を有してもよい、炭素数5~15のアリーレン基、炭素数5~15のアレーントリイル基、炭素数5~15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。アレーントリイル基(3価)としては、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基等が挙げられる。アレーンテトライル基(4価)としては、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基等が挙げられる。これらの芳香族基は、置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0101】
R101及びR102としては、各々独立して、メチレン基、エチレン基、ビニリデン基、フェニレン基又はエーテル基であることが好ましく、メチレン基、フェニレン基又はエーテル基であることがより好ましい。
【0102】
式(1-1)及び(1-2)中、X1及びX2は、各々独立に、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数5~15の芳香族基又はこれらの組み合わせである。
【0103】
X1及びX2における脂肪族基、脂環族基及び芳香族基の例としては、上記R101及びR102で例示されたものと同じものが挙げられる。X1及びX2は、メチレン基、エチレン基、ビニリデン基、又はエーテル基であることが好ましく、メチレン基又はエーテル基がより好ましい。
【0104】
式(1-1)及び(1-2)において、s及びkは、各々独立して0~10であることが好ましく、0~3であることがより好ましく、0~1であることが更に好ましい。s及びkが、それぞれ10を超える環状カルボジイミド化合物の合成は困難であり、コストが増大する。なお、s又はkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX1又はX2は、他のX1又はX2と異なっていてもよい。
【0105】
式(1-3)中、X3は、ヘテロ原子及び/又は置換基を含んでいてもよい、2~4価の炭素数1~20の脂肪族基、2~4価の炭素数3~20の脂環族基、2~4価の炭素数5~15の芳香族基又はこれらの組み合わせである。
【0106】
X3における脂肪族基、脂環族基及び芳香族基の例としては、上記のR101、R102、X1及びX2で例示されたものと同じものが挙げられる。X3としては、メチレン基、エチレン基、ビニリデン基、又はエーテル基であることが好ましく、メチレン基又はエーテル基であることがより好ましい。
【0107】
また、Ar101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3は、O原子、N原子、S原子及びP原子から選択されるヘテロ原子を有していてもよい。但し、ヘテロ原子がN原子の場合には、そのN原子はニトロ基及び/又はアミド基として存在する。
【0108】
また、Lが2価の結合基であるときは、Ar101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3の全ては、2価の基である。Lが3価の結合基であるときは、Ar101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3のうちの1つは、3価の基である。Lが4価の結合基であるときは、Ar101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3のうちの1つは、4価の基であるか、又はAr101、Ar102、R101、R102、X1、X2及びX3のうちの2つが3価の基である。
【0109】
Lが3価又は4価の結合基であって、Lがカルボジイミド基を有する他の環状構造と結合している態様としては、式(1)で表される2個以上の環状構造が、スピロ環構造、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10の芳香族環構造、炭素数4~12のシクロアルカン環構造等から選ばれる炭素数1~15(好ましくは1~12)の共有部分を介して結合している態様が挙げられる。このような態様の具体例を下記式(2)、(4)、(5)に示す。
【化27】
【0110】
環状カルボジイミド化合物(D)は、下記式(i)で表される環状カルボジイミド化合物であってもよい。なお、下記式(i)で表される環状カルボジイミド化合物は、分子中に2つ以上のカルボジイミド基を有してもよく、1つのカルボジイミド基を有してもよい。
【化28】
(式(i)中、Xaは、下記式(i-1)~(i-3)で表される2価の基又は下記式(i-4)で表される4価の基である。Xaが2価のときqは0であり、Xaが4価のときqは1である。Ar
201~Ar
204は各々独立に芳香族炭化水素基である。これらの芳香族炭化水素基は炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基を置換基として有してもよい。)
【化29】
(式(i-1)中、nは1~6の整数である。)
【化30】
(式(i-2)中、m及びnは、各々独立に0~3の整数である。)
【化31】
(式(i-3)中、R
301およびR
302は各々独立に、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基を表す。)
【化32】
【0111】
また、上記式(i)で表される環状カルボジイミド化合物としては、以下の構造式を有する化合物がいくつか例示される。
【化33】
【0112】
環状カルボジイミド化合物(D)は、ガラス転移温度(Tg)、耐薬品性、耐熱性に一層優れる観点から、1分子内に2つ以上のカルボジイミド基を含有する多価環状カルボジイミド化合物を含むことが好ましい。環状カルボジイミド化合物(D)は、硬化性能に一層優れる観点から、1分子内に2つ若しくは3つのカルボジイミド基を含有する多価環状カルボジイミド化合物を含むことがより好ましい。これらの多価環状カルボジイミド化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0113】
多価環状カルボジイミド化合物としては、例えば、上述したカルボジイミド化合物のうち、1分子内に2つ以上のカルボジイミド基を含有するものが挙げられる。これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)、耐薬品性、耐熱性に一層優れる観点から、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化34】
(式(2)中、Xは、下記式(3)で表される4価の基であり、Ar
1~Ar
4は、各々独立に、フェニレン基(例えば、オルトフェニレン基)又はナフタレン-ジイル基(例えば、1,2-ナフタレン-ジイル基)である2価の連結基であり、該連結基は、置換基を有してもよい。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの連結基は、ヘテロ原子を含む複素環構造を有していてもよい。)
【化35】
【0114】
環状カルボジイミド化合物(D)は、耐熱性に一層優れる観点から、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【化36】
【0115】
これらの環状カルボジイミド化合物(D)は、公知の方法(例えば、国際公開第2010/071213号パンフレットに記載の方法)により製造することができる。
【0116】
環状カルボジイミド化合物(D)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、1.0~30質量部であることが好ましく、2.0~15質量部であることがより好ましく、2.5~12.0質量部であることが更に好ましい。環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、1.0質量部以上であることにより、耐薬品性、耐熱性及び電気特性に一層優れる傾向にあり、環状カルボジイミド化合物(D)の含有量が、30質量部以下であることにより、難燃性に一層優れる傾向にある。
【0117】
(硬化促進剤(F))
樹脂組成物は、硬化促進剤(F)を更に含む。硬化促進剤(F)としては、特に制限されないが、例えば、イミダゾール化合物、有機リン化合物などが挙げられる。
【0118】
イミダゾール化合物としては、硬化性に優れる観点から、下記式(5)で表されるイミダゾール化合物を含むことが好ましい。
【化37】
(式(5)中、Ar
5は、各々独立に、フェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基、又はアントラセン基を表し、これらの基は、置換基を有してもよく、R
1は、水素原子、アルキル基、アリール基を表し、R
1がアルキル基又はアリール基を表す場合、置換基を有してもよい。)
【0119】
Ar5は、フェニル基であることが好ましい。R1は、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0120】
式(5)で表されるイミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0121】
これらの中でも、イミダゾール化合物としては、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、及び/又は2-フェニル-4-メチルイミダゾールが好ましく、2,4,5-トリフェニルイミダゾールであることがより好ましい。このようなイミダゾール化合物を用いることにより、硬化性がより向上する傾向にある。
【0122】
また、有機リン化合物としては、特に制限されないが、例えば、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン、1,1’-ビス(ジ-iso-プロピルホスフィノ)フェロセン、1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル、2-カルボキシエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-9H-キサンテン、9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9H-キサンテン、i-プロピルトリフェニルホスホニウムヨード、n-ブチルジ(tert-ブチル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、n-ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n-プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、エチル-2-(トリフェニルホスファニリデン)ブタノネート、エチル-2-(トリフェニルホスファニリデン)プロピオネート、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルホスフィニルハイドロキノン、ジフェニルホスフィノスチレン、テトラ-n-ブチルホスホニウムクロライド、テトラ-n-ブチルホスホニウムハイドロオキサイド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ-n-ブチルホスホニウムラウレート、テトラ-n-ブチルホスホニウムアセテート、テトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-2,4-キシリルホスフィン、トリ-2,5-キシリルホスフィン、トリ-3,5-キシリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィンオキサイド、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(o-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、トリフェニルホスフィンオキサイド、ビス(テトラテトラ-n-ブチルホスホニウム)ピロメリテート、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロライドなどが挙げられる。
【0123】
このなかでも、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリ-2,4-キシリルホスフィン、トリ-2,5-キシリルホスフィン、トリ-3,5-キシリルホスフィン、トリス(p-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(o-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィンなどのフェニルホスフィン;トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィンなどのアルキルホスフィンが好ましい。このような有機リン化合物を用いることにより、硬化性に加え、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0124】
イミダゾール化合物又は有機リン化合物の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、0.1~10質量部程度であってもよく、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、0.2~5.0質量部であることが好ましく、0.3~1.0質量部であることがより好ましい。
【0125】
イミダゾール化合物及び有機リン化合物以外のその他の硬化促進剤(F)としては、特に制限されないが、例えば、有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチル-ジ-パーフタレート等)、アゾ化合物(例えば、アゾビスニトリル等)、第3級アミン類(例えば、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジメチルピリジン、2-N-エチルアニリノエタノール、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N-メチルピペリジン等)、有機金属塩(例えば、ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄等)、これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノール等の水酸基含有化合物に溶解してなるもの、無機金属塩(例えば、塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等)有機錫化合物(例えば、ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイド等)が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0126】
硬化促進剤(F)の総含有量は、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、樹脂固形分100質量部に対して、5.0質量以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、0.3~1.0質量部であることが更に好ましい。
【0127】
[溶剤]
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤を含有してもよい。本実施形態の樹脂組成物は、溶剤を含むことにより、樹脂組成物の調製時における粘度が下がることにより、ハンドリング性(取り扱い性)に一層優れたり、基材への含浸性に一層優れたりする傾向にある。
【0128】
溶剤としては、樹脂組成物中の各成分の一部又は全部を溶解可能であれば、特に限定されないが、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブ等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアルデヒド等)、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテート等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0129】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されず、例えば、各成分を一括的に又は逐次的に溶剤に配合し、撹拌する方法が挙げられる。この際、各成分を均一に溶解又は分散せるために、撹拌、混合、混練処理等の公知の処理が用いられる。
【0130】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、基材と、基材に含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物とを含む。プリプレグは、前述の通り、公知の方法によって得られるプリプレグであってもよく、具体的には、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の条件にて加熱乾燥させることにより半硬化(Bステージ化)させることにより得られる。
【0131】
本実施形態のプリプレグは、半硬化状態のプリプレグを200~230℃の加熱温度及び60~180分の加熱時間の条件で熱硬化させて得られる硬化物の形態も包含する。
【0132】
プリプレグにおける樹脂組成物の含有量は、プリプレグの固形分換算で、プリプレグの総量に対して、好ましくは30~90体積%であり、より好ましくは35~85体積%であり、更に好ましくは40~80体積%である。樹脂組成物の含有量が上記範囲内であることにより、成形性がより向上する傾向にある。なお、プリプレグの固形分は、プリプレグ中から溶剤を取り除いた成分をいい、例えば、充填材は、プリプレグの固形分に含まれる。
【0133】
(基材)
基材としては、特に限定されず、例えば、各種プリント配線板の材料に用いられている公知の基材が挙げられる。基材の具体例としては、ガラス基材、ガラス以外の無機基材(例えば、クォーツ等のガラス以外の無機繊維で構成された無機基材)、有機基材(例えば、全芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド等の有機繊維で構成された有機基材)等が挙げられる。これらの基材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、剛性を一層向上させたり、加熱寸法安定性に一層優れたりする観点から、ガラス基材が好ましい。
【0134】
(ガラス基材)
ガラス基材を構成する繊維としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、HMEガラス等が挙げられる。これらの中でも、ガラス基材を構成する繊維は、強度と低吸水性に一層優れる観点から、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、Lガラス、NEガラス、及びHMEガラスからなる群より選択される1種以上の繊維であることが好ましい。
【0135】
基材の形態としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形態が挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤等で表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.3mm程度のものが好適に用いられる。
【0136】
[積層板]
本実施形態の積層板は、本実施形態のプリプレグを有する。本実施形態の積層板は、プリプレグを1つ又は複数含み、複数含む場合には、プリプレグが積層された形態を有する。本実施形態の積層板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、耐熱性、耐薬品性、低吸水性及び電気特性に優れる。
【0137】
[金属箔張積層板]
本実施形態の金属箔張積層板は、本実施形態のプリプレグと、プリプレグの片面又は両面に配置された金属箔とを有する。本実施形態の金属箔張積層板は、プリプレグを1つ又は複数含む。プリプレグの数が1つである場合には、金属箔張積層板は、プリプレグの片面又は両面に金属箔が配置された形態を有する。プリプレグの数が複数である場合には、金属箔張積層板は、積層したプリプレグ(プリプレグの積層体)の片面又は両面に金属箔が配置された形態を有する。本実施形態の金属箔張積層板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、耐熱性、耐薬品性、低吸水性及び電気特性に優れる。
【0138】
金属箔(導体層)としては、各種プリント配線板材料に用いられる金属箔であればよく、例えば、銅、アルミニウム等の金属箔が挙げられ、銅の金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が挙げられる。導体層の厚みは、例えば、1~70μmであり、好ましくは1.5~35μmである。
【0139】
積層板及び金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、積層板又は金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機等を用いることができる。また、積層板又は金属箔張積層板の成形(積層成形)において、温度は100~300℃、圧力は面圧2~100kgf/cm2、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。特に多段プレス機を用いた場合は、プリプレグの硬化を十分に促進させる観点から、温度200℃~250℃、圧力10~40kgf/cm2、加熱時間80分~130分が好ましく、温度215℃~235℃、圧力25~35kgf/cm2、加熱時間90分~120分がより好ましい。また、上述のプリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0140】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグで形成された絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層と、を有する。本実施形態のプリント配線板は、例えば、本実施形態の金属箔張積層板の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層とすることにより形成できる。本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグを有することにより、耐熱性、耐薬品性、低吸水性及び電気特性に優れる。
【0141】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、本実施形態の金属箔張積層板を用意する。金属箔張積層板の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層(内層回路)を有する内層基板を作成する。次に、内層基板の導体層(内装回路)表面に、所定数のプリプレグと、外層回路用の金属箔とをこの順序で積層し、加熱加圧して一体成形(積層成形)することにより、積層体を得る。尚、積層成形の方法及びその成形条件は、上記の積層板及び金属箔張積層板における積層成形の方法及びその成形条件と同様である。次に、積層体にスルーホール、バイアホール用の穴あけ加工を施し、これにより形成された穴の壁面に導体層(内装回路)と、外層回路用の金属箔とを導通させるためのめっき金属皮膜を形成する。次に、外層回路用の金属箔を所定の配線パターンにエッチングして導体層(外層回路)を有する外層基板を作成する。このようにしてプリント配線板が製造される。
【0142】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、上記プリプレグ上に、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0143】
[多層プリント配線板(多層コアレス基板)]
本実施形態の多層プリント配線板は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層の片面側に積層された1つ又は複数の第2の絶縁層とからなる複数の絶縁層と、複数の絶縁層の各々の間に配置された第1の導体層と、複数の絶縁層の最外層の表面に配置された第2の導体層とからなる複数の導体層とを有し、第1の絶縁層及び第2の絶縁層が、それぞれ、本実施形態のプリプレグを有する。本実施形態の多層プリント配線板の具体例を
図1に示す。
図1に示す多層プリント配線板は、第1の絶縁層(1)と、第1の絶縁層(1)の片面方向(図示下面方向)に積層された2つの第2の絶縁層(2)を含み、第1の絶縁層(1)及び2つの第2の絶縁層(2)は、それぞれ1つの本実施形態のプリプレグで形成されている。また、
図1に示す多層プリント配線板は、複数の絶縁層(1,2)の各々の間に配置された第1の導体層(3)、及び、それらの複数の絶縁層(1,2)の最外層に配置された第2の導体層(3)からなる複数の導体層を有している。
【0144】
本実施形態の多層プリント配線板は、例えば、第1の絶縁層の片面方向にのみ、第2の絶縁層を積層させる、いわゆるコアレスタイプの多層プリント配線板(多層コアレス基板)である。本実施形態の多層プリント配線板の製造方法は、例えば、公知の方法を参照できる。
【0145】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
【0146】
[実施例1]
フェノール化合物(A)としてのナフトールアラルキル型フェノール(新日鉄住金化学(株)「SN-495-V」)36.8質量部、マレイミド化合物(B)としてのノボラック型マレイミド(大和化成(株)「BMI-2300」)24.6質量部、エポキシ化合物(C)としてのナフチレンエーテル型エポキシ化合物(DIC(株)「HP-6000」)38.6質量部、シランカップリング剤(G)(信越化学工業(株)「KBM-403」)5.0質量部、湿潤分散剤(H)(ビックケミー(株)「DISPERBYK-161」)1.0質量部、無機充填材(E)としての球状シリカe1(アドマテックス(株)製品「SC2050-MB」)100質量部、無機充填材(E)としての球状シリカe2(アドマテックス(株)「SC5050-MOB」)100質量部、有機充填材(I)としてのシリコーン複合パウダー(信越化学工業(株)「KMP605M」)25質量部、環状カルボジイミド化合物(D)(帝人(株)「TCC」)5.0質量部、硬化促進剤(F)としてのイミダゾール化合物(TCI(株)「TPIZ」:2,4,5-トリフェニルイミダゾール)0.5質量部を混合し、その後メチルエチルケトンで希釈してワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、73体積%であった。
【0147】
[実施例2]
環状カルボジイミド化合物(D)の配合量を5.0質量部に代えて、10質量部にした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、73体積%であった。
【0148】
[実施例3]
環状カルボジイミド化合物(D)の配合量を5.0質量部に代えて、15質量部にした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、73体積%であった。
【0149】
[実施例4]
実施例2と同様にして調整したワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#2116)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約100μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、58体積%であった。
【0150】
[実施例5]
イミダゾール化合物(TCI(株)「TPIZ」:2,4,5-トリフェニルイミダゾール)に代えて、有機リン化合物(北興化学工業(株)「TPTP」:トリ-p-トリルホスフィン)0.5質量部を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#2116)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約100μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、58体積%であった。
【0151】
[比較例1]
球状シリカe1の配合量を100質量部に代えて、150質量部とし、球状シリカe2の配合量を100質量部に代えて、150質量部とし、環状カルボジイミド化合物(D)の配合量を5.0質量部に代えて、0質量部とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、73体積%であった。
【0152】
[比較例2]
環状カルボジイミド化合物(D)の配合量を5.0質量部に代えて、0質量部とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、73体積%であった。
【0153】
[比較例3]
非環状カルボジイミド化合物(日清紡製「V-05」)を10質量部加えた以外は比較例1と同様にしてワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、73体積%であった。
【0154】
[比較例4]
比較例2と同様にして調整したワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#2116)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約100μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、58体積%であった。
【0155】
[比較例5]
イミダゾール化合物(TCI(株)「TPIZ」:2,4,5-トリフェニルイミダゾール)に代えて、有機リン化合物(北興化学工業(株)「TPTP」:トリ-p-トリルホスフィン)0.5質量部を用いたこと以外は、比較例2と同様にしてワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#2116)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約100μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、58体積%であった。
【0156】
[比較例6]
環状カルボジイミド化合物(D)の配合量を0質量部に代えて、5.0質量部とした以外は、比較例1と同様にしてワニス(樹脂組成物)を得た。このワニス(樹脂組成物)をEガラス織布(IPC#1280)に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、約80μmの厚みを有するプリプレグを得た。得られたプリプレグ中の樹脂組成物(固形分量(フィラーを含む))の含有量は、73体積%であった。
【0157】
[物性測定評価]
実施例1~3及び比較例1~3で得られたワニス又はプリプレグを用い、以下の各項目に示す手順により物性測定評価用のサンプルを作製し、流動特性、はんだ耐熱性、ガラス転移温度(Tg)、耐デスミア性、吸水率、電気特性及び難燃性を測定評価した。実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0158】
[流動特性]
得られたプリプレグを揉みほぐしてプリプレグ中の樹脂組成物の粉を採取し、その粉を所定の金型に入れて直圧成形し、樹脂棒とした。次に、高化式フローテスター(島津製作所製、「CFT-500D」)の加熱部に樹脂棒を投入し、120±0.2℃のときの溶融粘度(単位:Pa・s)を測定した。
○: 100Pa・s以上1500Pa・s未満
△:1500Pa・s以上3000Pa・s未満
×:3000Pa・s以上
【0159】
[はんだ耐熱性]
下記、[電気特性]の項で記載の方法により得られた金属箔張積層板を、50mm×50mmのサイズに切断して作成したサンプルを、300℃はんだに30分間フロートさせて、外観以上の有無を目視判定により行った。評価基準は以下の通りである(n=3)。なお、比較例1及び6については成形時にボイドが発生するため積層板を製造できなかった。このため、比較例1及び6についてははんだ耐熱性の評価をしていない。
〇:3点ともデラミネーションなし
×:3点ともデラミネーションあり
【0160】
[ガラス転移温度]
得られたプリプレグ1枚の上下両面に、銅箔(三井金属鉱業株式会社製「3EC-VLP」、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、プリプレグで形成された絶縁層と、銅箔とを有する銅箔張積層板を得た。この銅箔張積層板の絶縁層の厚さは、80~100μm程度であった。得られた銅箔張積層板の表面銅箔をエッチングにより除去した。その後、ダイシングソーでサイズ5.0mm×20mmに切断し、測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを用い、JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)を用いたDMA法により、ガラス転移温度(Tg)を測定した(n=3の平均値)。なお、比較例1及び6については成形時にボイドが発生するため積層板を製造できなかった。このため、比較例1及び6についてはガラス転移温度の評価をしていない。
【0161】
[耐薬品性(耐デスミア性)]
[ガラス転移温度]の項で記載の方法により得られた金属箔張積層板の銅箔をエッチングにより除去した後、以下の浸漬処理を行った。まず、銅箔を除去した積層板を膨潤液(アトテックジャパン(株)製品、スウェリングディップセキュリガントP)に80℃で10分間浸漬した。次に、浸漬した積層板を粗化液(アトテックジャパン(株)製品、コンセントレートコンパクトCP)に80℃で5分間浸漬した。次に、浸漬した積層板を中和液(アトテックジャパン(株)製品、リダクションコンディショナーセキュリガントP500)に45℃で10分間浸漬した。この浸漬処理を3回行った後の質量減少量(質量%)を測定した。なお、比較例1及び6については成形時にボイドが発生するため積層板を製造できなかった。このため、比較例1及び6については耐デスミア性の評価をしていない。
【0162】
[低吸水性]
[ガラス転移温度]の項で記載の方法により得られた金属箔張積層板の両面の銅箔をエッチングにより除去した。その後30mm×30mmにカットしたサンプルを、JIS C648に準拠して、プレッシャークッカー試験機(平山製作所(株)製品、PC-3型)により、121℃、2気圧で24時間の条件で処理した後の吸水率を測定した。吸水率は、処理前後のサンプルの重量変化により求めた。なお、比較例1及び6については成形時にボイドが発生するため積層板を製造できなかった。このため、比較例1及び6については低吸水性の評価をしていない。
【0163】
[電気特性]
得られたプリプレグ5枚の上下両面に、銅箔(三井金属鉱業株式会社製「3EC-VLP」、厚み12μm)を配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で100分間の積層成形(熱硬化)を行い、プリプレグで形成された絶縁層と、銅箔とを有する銅箔張積層板を得た。この銅箔張積層板の絶縁層の厚さは、400~450μm程度であった。得られた銅箔張積層板の表面銅箔をエッチングにより除去した。その後、ダイシングソーでサイズ100mm×1mm×0.4mmtに切断し、測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを用いて、摂動法空洞共振器(アジレントテクノロジー(株)製品、Agilent8722ES)により、1GHz及び10GHzの誘電率(Dk)及び1GHz及び10GHzの誘電正接(Df)を測定した。なお、比較例1及び6については成形時にボイドが発生するため積層板を製造できなかった。このため、比較例1及び6については電気特性の評価をしていない。
【0164】
[難燃性]
[電気特性]の項で得られた測定用サンプルを用いて、UL94垂直燃焼試験法に準拠して難燃性試験を実施した。なお、比較例1及び6については成形時にボイドが発生するため積層板を製造できなかった。このため、比較例1及び6については難燃性の評価をしていない。
【0165】
【0166】
実施例1~3及び比較例2の結果から以下のことがわかった。まず、実施例1~3のように環状カルボジイミド化合物(D)をワニスに配合しても流動特性が悪化しないことがわかった。また、環状カルボジイミド化合物(D)をワニスに配合した実施例1~3では、環状カルボジイミド化合物(D)をワニスに配合していない比較例2と比べて、ガラス転移温度、耐薬品性及び電気特性(低誘電正接性)の特性を向上できることがわかった。また、これらの特性は、環状カルボジイミド化合物(D)の配合量を大きくするにつれて向上する傾向にあることがわかった。また、非環状カルボジイミド化合物(鎖状カルボジイミド化合物)を用いた比較例3と比較すると、流動特性、電気特性は実施例同等程度であったが、耐熱性及び耐デスミア性は向上せず、吸水性は悪かった。このことから、非環状カルボジイミド化合物では、各種熱硬化性樹脂と反応するものの、その構造上架橋を形成しないため、電気特性は改善するものの、耐熱性及び耐デスミア性は改善しないものと考えられる。また、耐熱性及び吸水率の悪化は、非環状カルボジイミド化合物の反応末端化合物が原因であると推測されるが本発明はこの推測により何ら限定されない。
【0167】
本出願は、2018年8月9日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2018-150563)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、プリント配線板用の樹脂組成物として、産業上の利用可能性を有する。