IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本圧着端子製造株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】カード用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20230721BHJP
   H01R 13/631 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
H01R12/72
H01R13/631
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019044083
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020149797
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 雄一
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/015068(WO,A1)
【文献】特開昭63-241887(JP,A)
【文献】実開平08-001040(JP,U)
【文献】特開2003-077565(JP,A)
【文献】特開2006-156107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の支持体と前記支持体によって支持された端子部とを含むカードが連結されるカード用コネクタであって、
前記カードがカード挿入方向に挿入される挿入凹部が形成されたハウジング本体と、
前記ハウジング本体から延設され、前記挿入凹部に挿入される前記カードの被ロック面に弾性的に直接係合することにより前記カードを前記挿入凹部に対する挿入完了位置に保持する片持ち状のロックアームと、
を含む樹脂製のハウジングと、
前記ハウジング本体に支持され前記挿入凹部内で前記カードの前記端子部と弾性接触する接触部を含むコンタクトと、を備え
前記ハウジング本体が、前記挿入完了位置で前記カードの挿入側端部が突き当てられる突き当て部を前記挿入凹部に面して含み、
前記ロックアームとして、前記カードの前記被ロック面としての一対の外側面に設けられた一対の被挟持凹部を弾性的に挟持する一対のロックアームが設けられ、
前記一対のロックアームのそれぞれが、前記ハウジング本体に接続される基端部と、先端部と、前記挿入凹部に挿入される前記カードの対応する外側面に対向する対向部と、を含み、前記基端部を支点として弾性的に撓み変形可能であり、
前記一対のロックアームの前記対向部が、前記挿入完了位置にある前記カードの前記一対の外側面の前記一対の被挟持凹部を挟持する一対の挟持部と、前記一対の挟持部よりもカード抜脱方向側に配置され前記カードの挿入を案内する一対の案内部としての一対の案内面と、を含み、
前記挿入凹部に対して前記カードが斜め挿入されるときに、一方のロックアームが一方の被挟持凹部に係合し且つ他方のロックアームが他方の被挟持凹部に非係合の状態で、前記一方のロックアームは、当該一方のロックアームの前記案内面が前記一方の被挟持凹部に対して面接触するように、撓み変形可能に構成されている、カード用コネクタ。
【請求項2】
請求項に記載のカード用コネクタにおいて、
前記一対の挟持部が、挟持状態で前記カード挿入方向と平行な挟持面を含む、カード用コネクタ。
【請求項3】
請求項又はに記載のカード用コネクタにおいて、
前記一対の挟持部が、挿入完了位置にある前記カードの前記一対の外側面の被挟持凹部を挟持するように構成され、
前記一対のロックアームのそれぞれが、前記挟持部よりもカード挿入方向側に配置された被駆動部であって、前記挿入凹部から前記カードが抜脱されるときに、前記カードの外側面において被挟持凹部よりも前記挿入側端部に配置される駆動凸部によって駆動されることにより、前記挟持部と前記被挟持凹部との係合を解除させる被駆動部を含む、カード用コネクタ。
【請求項4】
請求項1~の何れか一項に記載のカード用コネクタにおいて、
前記ハウジングが、前記カードに設けられる挿入空間に挿入される挿入凸部であって、前記挿入凹部内に配置されて前記コンタクトを保持する挿入凸部を含む、カード用コネクタ。
【請求項5】
請求項1~の何れか一項に記載のカード用コネクタにおいて、
記挿入凹部に対して前記カードが挿入されるときに、前記ロックアームと前記カードの前記被ロック面との摩擦抵抗による第1挿入抵抗のピーク値が、前記端子部と前記コンタクトの前記接触部との摩擦抵抗による第2挿入抵抗のピーク値よりも大きくされている、カード用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、メモリーカードなどのカード状媒体(以下では、単に「カード」という。)が連結されるカード用コネクタが提案されている。
特許文献1では、メタルシェルと絶縁ハウジングとの間に、カード受入空洞(挿入凹部)が形成されている。カード受入空洞に挿入されたカードと一体となってカード挿入方向及びカード抜脱方向にスライドされるスライド部材が、イジェクトスプリングによってカード抜脱方向に付勢されている。スライド部材及びイジェクトスプリング等により、カード排出機構が構成されている。
【0003】
カード受入空洞にカードが完全に挿入された状態で、メタルシェルに設けられたスライドロックばねが、イジェクトスプリングに抗してスライド部材をロックする。これにより、カードが、スライド部材を介して間接的にロックされ、カードとカード用コネクタとの機械的、電気的な接続が安定して維持される。
また、前記スライド部材に対する前記スライドロックばねのロックが解除されて、前記イジェクトスプリングに付勢されたカードが受入空洞から排出されるときに、メタルシェルに設けられた飛び出し防止ばねが、カードに形成された凹部に係合することにより、カードの飛び出しが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-209574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、カード受入空洞(挿入凹部)が、メタルシェルと絶縁ハウジングとの二部品の間に形成される。また、完全挿入状態のカードが、メタルシェルと一体のスライドロックばねによって、スライド部材を介して間接的にロックされる構造である。このため、部品点数が多く、製造コストが高い。
本発明の目的は、部品点数を削減して製造コストを安くすることができるカード用コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、絶縁性の支持体(4)と前記支持体によって支持された端子部(5b)とを含むカード(3)が連結されるカード用コネクタ(1)であって、前記カードがカード挿入方向(X1)に挿入される挿入凹部(S)が形成されたハウジング本体(10;10P;10Q;10R)と、前記ハウジング本体から延設され、前記挿入凹部に挿入される前記カードの被ロック面(4e,4e;4a;4b)に弾性的に直接係合することにより前記カードを前記挿入凹部に対する挿入完了位置に保持する片持ち状のロックアーム(20;20P;20Q;20R)と、を含む樹脂製のハウジング(30;30P;30Q;30R)と、前記ハウジング本体に支持され前記挿入凹部内で前記カードの前記端子部と弾性接触する接触部(42)を含むコンタクト(40)と、を備える、カード用コネクタを提供する。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
また、請求項に記載の発明では、前記ハウジング本体が、前記挿入完了位置で前記カードの挿入側端部(4c)が突き当てられる突き当て部(U)を前記挿入凹部に面して含む。前記ロックアームとして、前記カードの前記被ロック面としての一対の外側面に設けられた一対の被挟持凹部(4m,4m)を弾性的に挟持する一対のロックアーム(20,20;20P,20P)が設けられる。前記一対のロックアームのそれぞれが、前記ハウジング本体に接続される基端部(20a;20Pa)と、先端部(20b;20Pb)と、前記挿入凹部に挿入される前記カードの対応する外側面に対向する対向部(20c;20Pc)と、を含み、前記基端部を支点として弾性的に撓み変形可能である。前記一対のロックアームの前記対向部が、前記挿入完了位置にある前記カードの前記一対の外側面の前記一対の被挟持凹部を挟持する一対の挟持部(21;21P)と、前記一対の挟持部よりもカード抜脱方向(X2)側に配置され前記カードの挿入を案内する一対の案内部(22;22P)としての一対の案内面と、を含む。前記挿入凹部に対して前記カードが斜め挿入されるときに、一方のロックアームが一方の被挟持凹部に係合し且つ他方のロックアームが他方の被挟持凹部に非係合の状態で、前記一方のロックアームは、当該一方のロックアームの前記案内面が前記一方の被挟持凹部に対して面接触するように、撓み変形可能に構成されている。
【0008】
請求項に記載の発明のように、請求項において、前記一対の挟持部が、挟持状態で前記カード挿入方向と平行な挟持面(21;21P)を含んでいてもよい。
請求項に記載の発明のように、請求項又はにおいて、前記一対の挟持部が、挿入完了位置にある前記カードの前記一対の外側面の被挟持凹部を挟持するように構成され、前記一対のロックアームのそれぞれが、前記挟持部よりもカード挿入方向側に配置された被駆動部(23;23P)であって、前記挿入凹部から前記カードが抜脱されるときに、前記カードの外側面において被挟持凹部よりも前記挿入側端部に配置される駆動凸部(4p)によって駆動されることにより、前記挟持部と前記被挟持凹部との係合を解除させる被駆動部を含んでいてもよい。
【0009】
請求項に記載の発明のように、請求項1~の何れか一項において、前記ハウジングが、前記カードに設けられる挿入空間(4f)に挿入される挿入凸部(15)であって、前記挿入凹部内に配置されて前記コンタクトを保持する挿入凸部を含んでいてもよい。
請求項に記載の発明のように、請求項1~の何れか一項において、前記挿入凹部に対して前記カードが挿入されるときに、前記ロックアームと前記カードの前記被ロック面との摩擦抵抗による第1挿入抵抗のピーク値が、前記端子部と前記コンタクトの前記接触部との摩擦抵抗による第2挿入抵抗のピーク値よりも大きくされていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明では、樹脂製のハウジングが、挿入凹部を形成するハウジング本体と、該ハウジング本体から一体に延設されカードの被ロック面に弾性的に直接係合することによりカードを挿入完了位置に保持するロックアームとを含む。このため、部品点数を削減して製造コストを安くすることができる。
また、カードの挿入時に、カードの外側面が、基端部を支点として弾性的に撓まされる一対のロックアームの案内部によって案内され、次いで、カードが挿入完了位置に達する状態で、カードの外側面が、一対のロックアームの挟持部によって挟持される。このため、挿入完了状態のカードを安定して保持することができる。
【0011】
請求項に記載の発明では、挿入完了位置にあるカードの一対の外側面が、一対のロックアームの挟持面であってカード挿入方向と平行な挟持面によって挟持される。このため、挿入完了状態のカードをより安定して保持することができる。
請求項に記載の発明では、挿入されるカードに対して、一対のロックアームの挟持部が、カードの一対の外側面の駆動凸部を乗り越えて一対の被挟持凹部を挟持する状態となる。このため、カードの挿入完了時にクリック感を得ることができ、ユーザの操作感に優れる。また、カードを抜脱するときは、カードの駆動凸部がロックアームの被駆動部を駆動することで、ロックアームの挟持部とカードの被挟持凹部との係合が解除されるため、カードの抜脱が容易である。
【0012】
請求項に記載の発明では、挿入凸部がカードの挿入空間に挿入されることにより、いわゆる二重嵌合構造となり、挿入完了状態のカードを安定して保持することができる。
請求項に記載の発明では、カードの挿入時において、ロックアームとカードの被ロック面との摩擦抵抗による第1挿入抵抗のピーク値が、カードの端子部とコンタクトの接触部との摩擦抵抗による第2挿入抵抗のピーク値よりも大きくなるようにされる。このため、カードの挿入時の慣性によって、カードの挿入側端部が挿入凹部に面する突き当て部に突き当てられる。したがって、カードが挿入完了位置まで確実に挿入されて、ロックアームによるロックが達成される、いわゆる慣性ロックを実現することができる。このため、特許文献1のようなカード排出機構や飛び出し防止ばねが不要であり、この点からも製造コストを安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、本発明の第1実施形態に係るカード用コネクタと挿入前のカードの概略斜視図である。
図1B図1Bは、カード用コネクタと挿入完了状態のカードの概略斜視図である。
図2A図2Aは、カードの平面図である。
図2B図2Bは、カードの前面図である。
図2C図2Cは、カードの一部破断底面図である。
図3A図3Aは、斜め上方から見たカード用コネクタの斜視図である。
図3B図3Bは、斜め下方から見たカード用コネクタの斜視図である。
図4A図4Aは、カード用コネクタの平面図である。
図4B図4Bは、カード用コネクタの前面図である。
図4C図4Cは、カード用コネクタの後面図である。
図5図5は、カード用コネクタのハウジングの一部破断斜視図である。
図6図6は、カード用コネクタのハウジングの断面図である。
図7図7は、コンタクトが収容されたコンタクト収容溝に沿って切断されたカード用コネクタの概略断面図である。
図8A図8Aは、カード挿入前のカード用コネクタの概略断面図である。
図8B図8Bは、カード挿入初期のカード用コネクタの概略断面図である。
図8C図8Cは、カード挿入完了状態のカード用コネクタの概略断面図である。
図9A図9Aは、斜め挿入されるカードの挿入初期段階でのカード用コネクタの概略断面図である。
図9B図9Bは、斜め挿入されるカードの挿入完了の直前の段階でのカード用コネクタの概略断面図である。
図9C図9Cは、斜め挿入されるカードの挿入完了段階でのカード用コネクタの概略断面図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態に係るカード用コネクタの断面図である。
図11図11は、本発明の第3実施形態に係るカード用コネクタの斜め上方からの斜視図である。
図12図12は、第3実施形態のカード用コネクタのロックアームの周辺の構造の概略断面図である。
図13図13は、本発明の第4実施形態に係るカード用コネクタの斜め下方からの斜視図である。
図14図14は、第4実施形態のカード用コネクタのロックアームの周辺の構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態に係るカード用コネクタと挿入前のカードの概略斜視図である。図1Bは、カード用コネクタと挿入完了状態のカードの概略斜視図である。
図1A及び図1Bに示すように、カード用コネクタ1は、例えば基板2(図4Bを参照)に実装されるリセプタクル型コネクタである。カード用コネクタ1に対してカード挿入方向X1に挿入されるカード3は、例えばフラッシュメモリを用いるメモリーカードである。
【0015】
まず、カード3を説明する。
図2Aは、カード3の平面図である。図2Bは、カード3の前面図である。図2Cは、カード3の一部破断底面図である。図2A図2Cを参照して、カード3は、樹脂製の支持体としてのカードケース4と、カードケース4内に収容され、電子部品(図示せず)が実装された回路基板5とを備える。
【0016】
カードケース4は、上面4aと、下面4bと、挿入側端部である前面4cと、後面4dと、一対の被ロック面としての外側面4eとを含む。カードケース4には、カード挿入方向X1に向けて前面4c(挿入側端部)に開口する挿入空間4fが形成されている。図2Bに示すように、挿入空間4fは、内上面4gと、内下面4hと、一対の内側面4kとによって区画されている。
【0017】
図2Cに示すように、回路基板5の前端部5a(カード挿入方向X1側の端部)の表面は、挿入空間4f内に配置され、内上面4gの一部を形成している。回路基板5の前端部5aの表面には、カード挿入方向X1に延びる複数の端子部5bが幅方向W(カード挿入方向X1に対して直交する方向)に並べて配置されている。すなわち、複数の端子部5bが、挿入空間4f内に露出している。
【0018】
図2A及び図2Cに示すように、カードケース4の各外側面4e(被ロック面)には、カード3のカードケース4の挿入側端部である前面4cに近い位置に、被挟持凹部4mが形成されている。カード3が挿入完了位置にある状態で、カードケース4の被挟持凹部4mは、カード用コネクタ1の後述する一対のロックアーム20によって挟持される(図8Cを参照)。
【0019】
カードケース4の各外側面4eにおいて、被挟持凹部4mよりもカード挿入方向X1側に配置される部分が、被挟持凹部4mに対して外側方に突出する駆動凸部4pを形成している。
次いで、カード用コネクタ1を説明する。
図3Aは、斜め上方から見たカード用コネクタ1の斜視図である。図3Bは、斜め下方から見たカード用コネクタ1の斜視図である。図4Aは、カード用コネクタ1の平面図である。図4Bは、カード用コネクタ1の前面図である。図4Cは、カード用コネクタ1の後面図である。
【0020】
図3A図3B図4A図4Cに示すように、カード用コネクタ1は、ハウジング本体10と一対のロックアーム20とを含む樹脂製のハウジング30と、複数のコンタクト40と、一対の補強タブ50とを備えている。
図5は、カード用コネクタ1のハウジング30の一部破断斜視図である。図6は、カード用コネクタ1のハウジング30の断面図である。
【0021】
図3A図3B図4A図4C図5及び図6を参照して、ハウジング30を説明する。
ハウジング本体10は、天壁部11と、底壁部12と、一対の側壁部13と、後壁部14と、挿入凸部としての内部壁部15と、一対の保持壁16とを含む。天壁部11と、底壁部12と、一対の側壁部13と、後壁部14とによって、前方に開放する挿入凹部Sが区画形成されている。後壁部14の内面14aが、挿入完了位置のカード3の挿入側端部である前面4cが突き当てられる突き当て部Uを構成している。突き当て部Uは、挿入凹部Sに面している。
【0022】
挿入凸部としての内部壁部15は、後壁部14から前方へ延びており、天壁部11と底壁部12とに平行である。カード3が、カード用コネクタ1のハウジング本体10の挿入凹部Sに挿入されるときに、内部壁部15は、カード3のカードケース4の挿入空間4fに挿入される。幅方向Wに関して、挿入空間4fの幅(一対の内側面4k間の間隔)は、内部壁部15(挿入凸部)の幅よりも僅かに大きくされている。このため、挿入空間4fに対する内部壁部15の嵌合によって、カード3の過度な斜め挿入が抑制される。
【0023】
図5及び図6に示すように、後壁部14には、コンタクト固定孔17が貫通形成されている。各内部壁部15には、コンタクト固定孔17に連通し前後方向に延びるコンタクト収容溝18が横並びに形成されている。コンタクト収容溝18は、内部壁部15を上下(カード挿入方向X1及び幅方向Wの双方と直交する高さ方向H)に貫通する貫通溝からなる(図7を参照)。
【0024】
各保持壁16は、対応する側壁部13から外側方に突出形成されている。ハウジング本体10において、一対の保持壁16よりも下位に配置される部分が、基板2に設けられる貫通孔を通して基板2の裏面2bから突出される(図4Bを参照)。
図3A及び図3Bに示すように、各保持壁16には、補強タブ50が圧入される圧入溝16aが形成されている。各補強タブ50の先端部は、基板2の挿通孔に挿通され、基板2の裏面2bの導体部に半田付けにより固定される(図4Bを参照)。
【0025】
次いで、コンタクト40を説明する。
コンタクト40は、金属材料製であり、カード3の端子部5bと同数設けられている。図7は、コンタクト収容溝18に沿って切断されたカード用コネクタ1の概略断面図である。図7に示すように、コンタクト40は、ハウジング本体10によって支持されている。コンタクト40は、固定部41と、接触部42を含む弾性アーム部43と、リード部44とを備える。
【0026】
固定部41は、略矩形板状に形成されており、ハウジング本体10の後壁部14のコンタクト固定孔17に圧入固定される。具体的には、固定部41は、圧入によりハウジング本体10に係止される係止突起(図示せず)を有している。
リード部44は、固定部41からカード挿入方向X1に延び、後壁部14から後方へ突出している。リード部44は、基板2の表面2aの導体部に対して半田付けにより固定される。
【0027】
弾性アーム部43は、固定部41から前方(カード抜脱方向X2)に対して斜め上向きに延びている。弾性アーム部43は、固定部41に接続された基端部43aと、先端部43bと、先端部43bに隣接して配置された山形凸部43cとを含む。接触部42は、山形凸部43cの頂部によって形成されている。接触部42は、挿入凹部S内で、カード3の端子部5b(図2Cを参照)と弾性接触する。
【0028】
図7に示すように、弾性アーム部43は、基端部43aを支点として弾性的に揺動変位される。カード3が未挿入の状態で、弾性アーム部43の先端部43bが、内部壁部15の前端15aに係合されている。これにより、内部壁部15の上面15bからの、接触部42の突出量が規制されている。
次いで、ロックアーム20を説明する。
【0029】
一対のロックアーム20は、挿入凹部Sに挿入されるカード3の一対の外側面4eの被挟持凹部4mを弾性的に挟持することにより、カード3を挿入完了位置に保持する機能を果たす(図8Cを参照)。
具体的には、図6に示すように、ロックアーム20は、ハウジング本体10と一体成形されている。具体的には、ハウジング本体10の各側壁部13の内側面13aには、挿入凹部Sに連通するロックアーム収容溝19が、形成されている。ロックアーム収容溝19は、カード挿入方向X1に延びている。
【0030】
ロックアーム20は、基端部20aと、先端部20bと、挿入時のカード3の外側面4eに対向する対向部20cとを含む。基端部20aは、挿入凹部Sの入口に配置されており、ハウジング本体10のロックアーム収容溝19の底に接続されている。先端部20bは、基端部20aに対してカード挿入方向X1側に配置されている。
ロックアーム20は、基端部20aから先端部20bに向けて、カード挿入方向X1に対して傾斜状に形成された片持ち状のアームである。ロックアーム20は、基端部20aを支点部として、弾性的に揺動変位(撓み変位)される。
【0031】
カード3が未挿入の状態で自由状態になる一対のロックアーム20の先端部20b間の間隔が、基端部20a間の間隔よりも小さくされている(図6参照)。
一対のロックアーム20の対向部20cは、挿入凹部Sに臨む位置に配置されている。各対向部20cは、基端部20aから先端部20bまで延びている。一対のロックアーム20の対向部20cは、一対の挟持部としての挟持面21と、一対の案内部22と、一対の被駆動部23とを含む。
【0032】
一対の挟持面21は、挿入完了位置にあるカード3のカードケース4の一対の外側面4eを挟持する。一対の挟持面21は、カード3の一対の外側面4eの被挟持凹部4mを挟持する状態で、カード挿入方向X1に対して平行とされている。すなわち、一対の挟持面21は、一対の被挟持凹部4mに対して面接触する状態で一対の被挟持凹部4mを弾性的に挟持し、カード3を挿入完了位置に保持する。
【0033】
一対の案内部22は、一対の挟持面21に対してカード抜脱方向X2側に配置されており、カード3の挿入をカードケース4の外側面4eに摺接しつつ案内する。自由状態の一対のロックアーム20において、一対の案内部22は、カード挿入方向X1に対して傾斜する傾斜面で形成されている。すなわち、自由状態の一対のロックアーム20において、一対の案内部22間の間隔は、カード挿入方向X1に向かうにしたがって、小さくされている。
【0034】
一対の被駆動部23は、一対の挟持面21に対してカード挿入方向X1側に配置されている。挿入凹部Sからカード3が抜脱されるときに、各被駆動部23は、カード3のカードケース4の外側面4eの被挟持凹部4mに対してカード挿入方向X1側(挿入側端部側)に配置される駆動凸部4pによって駆動されることにより、挟持面21と被挟持凹部4mとの係合を解除させる働きをする。
【0035】
次いで、カード用コネクタ1がカード3を連結する動作を説明する。
図8Aは、カード挿入前のカード用コネクタ1の概略断面図である。図8Bは、カード挿入初期のカード用コネクタ1の概略断面図である。図8Cは、カード挿入完了状態のカード用コネクタ1の概略断面図である。
図8A図8Bに示すように、カード3をカードケース4の挿入側端部(前面4c)側からカード用コネクタ1の挿入凹部Sに挿入する。
【0036】
図8Bに示すように、挿入凹部Sに対するカード3の挿入初期の状態では、カード3のカードケース4の一対の外側面4eの駆動凸部4pが、カード用コネクタ1の一対のロックアーム20の案内部22によって案内される。
図8Bに示される挿入初期の状態からカード3をさらに挿入すると、一対のロックアーム20の案内部22に摺接するカード3の一対の駆動凸部4pによって、一対のロックアーム20が、一旦、最も大きく撓まされた後、図8Cに示される挿入完了位置で、一対の駆動凸部4pと一対のロックアーム20との係合が解除され、一対のロックアーム20の挟持面21が、カード3の一対の外側面4eの被挟持凹部4mと係合する。
【0037】
挿入凹部Sに対してカード3が挿入されるときに、一対のロックアーム20とカード3の一対の外側面4e(駆動凸部4p)との摩擦抵抗による第1挿入抵抗のピーク値が、全ての端子部5bとコンタクト40の接触部42との摩擦抵抗による第2挿入抵抗のピーク値よりも大きくされている。
なお、ロックアーム20の一対の挟持面21が、一対の駆動凸部4pを挟持する状態のときに、前記第1挿入抵抗のピーク値が発生する。
【0038】
本実施形態によれば、樹脂製のハウジング30が、挿入凹部Sを形成するハウジング本体10と、該ハウジング本体10から一体に延設されカード3の被ロック面(外側面4e)に弾性的に直接係合することによりカード3を挿入完了位置に保持するロックアーム20とを含む。すなわち、挿入凹部Sが単一の部品(樹脂製のハウジング30)により形成され、該単一の部品(樹脂製のハウジング30)にカード3に直接係合するロックアーム20が設けられている。このため、部品点数を削減して製造コストを安くすることができる。また、小型化を達成することができる。
【0039】
また、カード3の挿入時において、一対のロックアーム20とカード3の一対の外側面4eとの摩擦抵抗による第1挿入抵抗のピーク値が、カード3の全ての端子部5bとコンタクト40の接触部42との摩擦抵抗による第2挿入抵抗のピーク値よりも大きくされる。このため、カード3の挿入時の慣性によって、カード3の挿入側端部(前面4c)が挿入凹部Sに面する突き当て部U(後壁部14の内面14a)に突き当てられる。したがって、カード3が挿入完了位置まで確実に挿入されて、ロックアーム20によるロックが達成される、いわゆる慣性ロックを実現することができる。このため、特許文献1のようなカード排出機構や飛び出し防止ばねが不要であり、この点からも製造コストを安くすることができる。
【0040】
また、慣性ロックを用いることにより、カード3の斜め挿入を抑制することができる。すなわち、図9A図9Aでは、簡略化のためコンタクト40の図示を省略してある)に示すように、カード3の挿入初期段階で、カード3の外側面4eが、正規のカード挿入方向X1に対して傾斜していたとしても、一対のロックアーム20の案内部22の案内によって、カード3の外側面4eと正規のカード挿入方向X1との傾斜角度が小さくなる側にカード3の姿勢が矯正される。
【0041】
そして、図9B及び図9C図9B及び図9Cでは、簡略化のためコンタクト40の図示を省略してある)に示すように、カード3の挿入側端部(前面4c)の幅方向Wの一方側(例えば右側)の端部が、突き当て部U(内面14a)に突き当てられた後、慣性力によって、カード3の挿入側端部(前面4c)の幅方向Wの他方側(例えば左側)の端部が、突き当て部U(内面14a)に突き当てられる。このため、カード3が、正しい姿勢で挿入完了位置に挿入されることになる。これにより、カード3の半嵌合が抑制されるため、コンタクト40と端子部5bとの接触不良の発生を抑制することができる。
【0042】
また、カード3の挿入時に、カード3の外側面4eが、基端部20aを支点として弾性的に撓まされる一対のロックアーム20の案内部22によって案内され、次いで、カード3が挿入完了位置に達する状態で、カード3の外側面4eが、一対のロックアーム20の挟持部(挟持面21)によって挟持される。このため、挿入完了状態のカード3を安定して保持することができる。
【0043】
特に、挿入完了位置にあるカード3の一対の外側面4eが、一対のロックアーム20において、カード挿入方向X1と平行な挟持面21によって挟持される。このため、挿入完了状態のカード3をより安定して保持することができる。
また、挿入されるカード3に対して、一対のロックアーム20の挟持面21が、カードの一対の外側面4eの駆動凸部4pを乗り越えて一対の被挟持凹部4mを弾性的に挟持する状態となる。このため、カード3の挿入時にクリック感(締結感)を得ることができ、ユーザの操作感に優れる。また、カード3をカード抜脱方向X2へ抜脱するときは、カード3の駆動凸部4pがロックアーム20の先端部20bの被駆動部23を駆動することにより、ロックアーム20の挟持面21とカード3の被挟持凹部4mとの係合が解除されるため、カード3の抜脱が容易である。
【0044】
また、ハウジング30のハウジング本体10が、挿入凹部S内に、コンタクトを保持する挿入凸部(内部壁部15)を含み、該内部壁部15が、カード3の挿入空間4fに挿入される。これにより、いわゆる二重嵌合構造となり、挿入完了状態のカード3を安定して保持することができる。
また、ロックアーム20の形状の変更により、挿入凹部Sに対するカード3の挿抜力を容易に調整することができる。
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係るカード用コネクタ1のハウジング30Pの断面図である。
【0045】
図10の第2実施形態のハウジング30Pが、図6の第1実施形態のハウジング30と主に異なるのは、下記である。すなわち、図10に示すように、ハウジング30Pが、ハウジング本体10Pと、ハウジング本体10Pと一体成形された一対のロックアーム20Pとを備えている。
各ロックアーム20Pは、基端部20Paと、先端部20Pbと、挿入凹部Sに臨む対向部20Pcとを含む。先端部20Pbは、挿入凹部Sの入口に配置されており、ハウジング本体10のロックアーム収容溝19の底に接続されている。基端部20Paは、先端部20Pbに対してカード挿入方向X1側に配置されている。ロックアーム20は、基端部20Paを支点部として、弾性的に揺動変位(撓み変位)される。
【0046】
一対のロックアーム20Pの対向部20Pcが、一対の挟持部としての挟持面21Pと、一対の案内部22Pと、一対の被駆動部23Pとを含む。一対の案内部22Pは、一対の挟持面21Pに対してカード抜脱方向X2側に配置されている。一対の被駆動部23Pは、一対の挟持面21Pに対してカード挿入方向X1側に配置されている。
第2実施形態においても、部品点数を削減して製造コストを安くすることができる等、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。また、ロックアーム20Pの延びる方向を第1実施形態のロックアーム20の延びる方向とは逆向きにすることにより、設計の自由度を増大することができる。
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係るカード用コネクタ1Qの斜め上方からの斜視図である。図12は、ロックアーム20Qの周辺の構造の概略断面図である。
【0047】
図11に示すように、第3実施形態のカード用コネクタ1Qでは、樹脂製のハウジング30Qが、ハウジング本体10Qと、ハウジング本体10Qの天壁部11Qに形成された矩形状の窓部60のカード挿入方向X1側の縁部から挿入凹部Sに臨むように延設された一対のロックアーム20Qとを含む。一対のロックアーム20Qは、幅方向Wに離隔して配置されている。
【0048】
図12に示すように、各ロックアーム20Qは、ハウジング本体10Qに接続される基端部20Qaと、自由端部である先端部20Qbと、カード3の被ロック面としての上面4aに対向する対向部20Qcとを含む。対向部20Qcは、弾性押圧部21Qと、案内部22Qと、被駆動部23Qとを含む。
案内部22Qは、カード3の挿入を案内する。弾性押圧部21Qは、案内部22Qよりもカード挿入方向X1側に配置され、挿入完了位置にあるカード3の被ロック面としての上面4aに弾性的に押圧係合する。被駆動部23Qは、抜脱時のカード3の駆動凸部4pによって駆動される。
【0049】
第3実施形態においても、部品点数を削減して製造コストを安くすることができる等、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
(第4実施形態)
図13は、本発明の第4実施形態に係るカード用コネクタ1Rの斜め下方からの斜視図である。図14は、ロックアーム20Qの周辺の構造の概略断面図である。
【0050】
図13に示すように、第4実施形態のカード用コネクタ1Rでは、樹脂製のハウジング30Rが、ハウジング本体10Rと、ハウジング本体10Rの底壁部12Rに形成された矩形状の窓部70のカード挿入方向X1側の縁部から挿入凹部Sに臨むように延設された一対のロックアーム20Rとを含む。一対のロックアーム20Rは、幅方向Wに離隔して配置されている。
【0051】
図14に示すように、各ロックアーム20Rは、ハウジング本体10Rに接続される基端部20Raと、自由端部である先端部20Rbと、カード3の被ロック面としての下面4bに対向する対向部20Rcを含む。対向部20Rcは、弾性押圧部21Rと、案内部22Rと、被駆動部23Rとを含む。
案内部22Rは、カード3の挿入を案内する。弾性押圧部21Rは、案内部22Rよりもカード挿入方向X1側に配置され、挿入完了位置にあるカード3の被ロック面としての下面4bに弾性的に押圧係合する。被駆動部23Rは、抜脱時のカード3の駆動凸部4pによって駆動される。
【0052】
第4実施形態においても、部品点数を削減して製造コストを安くすることができる等、第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、第1及び第2実施形態において、カード3のカードケース4の被ロック面としての外側面4eにおいて、被挟持凹部4mを設けないで、外側面4eを平坦面で形成してもよい。
【0053】
また、第3実施形態において、ロックアーム20Qの先端部20Qbが、基端部20Qaよりもカード挿入方向X1側に配置されてもよい。また、第4実施形態において、ロックアーム20Rの先端部20Rbが、基端部20Raよりもカード挿入方向X1側に配置されてもよい。
また、図示していないが、図3Aの第1実施形態、図10の第2実施形態及び図11の第3実施形態において、底壁部12の構成が無い状態で、挿入凹部Sの一部が基板2の表面2aによって区画されてもよい。
【0054】
その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0055】
1;1Q;1R カード用コネクタ
3 カード
4 カードケース(支持体)
4c 前面(挿入側端部)
4e 外側面(被ロック面)
4f 挿入空間
4m 被挟持凹部
4p 駆動凸部
5 回路基板
5b 端子部
10;10P;10Q;10R ハウジング本体
14 後壁部
14a 内面(突き当て部)
15 内部壁部(挿入凸部)
17 コンタクト固定孔
18 コンタクト収容溝
19 ロックアーム収容溝
20;20P;20Q;20R ロックアーム
20a:20Pa;20Qa;20Ra 基端部
20b;20Pb;20Qb;20Rb 先端部
20c;20Pc;20Rc 対向部
21;21P 挟持面(挟持部)
21Q 弾性押圧部
22;22P;22Q 案内部
23;23P;23Q 被駆動部
30;30P;30Q;30R ハウジング
40 コンタクト
42 接触部
43 弾性アーム部
44 リード部
60 窓部
70 窓部
S 挿入凹部
U 突き当て部
X1 カード挿入方向
X2 カード抜脱方向
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14