(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】マッピング装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H05B 47/155 20200101AFI20230721BHJP
H05B 47/175 20200101ALI20230721BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B47/175
(21)【出願番号】P 2019198804
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 朝
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸本 龍海
(72)【発明者】
【氏名】平松 宏司
(72)【発明者】
【氏名】岸本 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】八木 佐奈
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-036400(JP,A)
【文献】特開2019-133808(JP,A)
【文献】特表2008-537855(JP,A)
【文献】特開2019-140037(JP,A)
【文献】特開2018-206516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の照明器具から識別情報を含む信号を複数のアクセスポイントを介して複数の異なる経路を介して受信する受信部と、
前記照明器具毎に前記各アクセスポイントから前記照明器具までの距離の指標となる値に基づいて、前記複数の照明器具のなかから、いずれかの前記アクセスポイントからの距離が第1所定距離以内であると推定される1以上の前記照明器具と、いずれかの前記アクセスポイントからの距離が第2所定距離以上であると推定される1以上の前記照明器具とのうちの少なくとも一方を特定する特定部と、
特定した1以上の前記照明器具における1以上の前記識別情報である1以上のアンカー候補識別情報を表示する表示部と、
を備える、マッピング装置。
【請求項2】
前記第2所定距離が、前記複数の照明器具と前記複数のアクセスポイントに関して最も長い前記照明器具と前記アクセスポイントとの距離よりも長い値に設定されている、請求項
1に記載のマッピング装置。
【請求項3】
前記特定した1以上の照明器具のうちの少なくとも1つの前記照明器具が存在している可能性が高い領域を特定可能な情報を前記表示部に表示可能である、請求項1又は2に記載のマッピング装置。
【請求項4】
前記表示部に表示されている1以上の前記識別情報から1の前記識別情報を選択することと、選択した前記識別情報に対応する前記照明器具を点灯させること、点灯している前記照明器具を消灯させること、前記複数の照明器具に対応する配置で前記表示部に表示されている複数の照明器具表示のうちの対応する前記照明器具表示に前記アンカー候補識別情報をマッピングすると共に、マッピングした前記アンカー候補識別情報を前記距離の指標となる値の算出から除外すること、及び、前記識別情報を前記複数の照明器具に対応する配置で前記表示部に表示されている複数の照明器具表示のうちの対応する前記照明器具表示にマッピングすることを実行できる操作部を備える、請求項1から3のいずれか1つに記載のマッピング装置。
【請求項5】
前記表示部が、選択した前記アンカー候補識別情報に対応する前記照明器具から第3所定距離以内に存在すると推定される1以上の前記照明器具に対応する1以上の前記識別情報を表示可能である、請求項1から3のいずれか1つに記載のマッピング装置。
【請求項6】
複数の照明器具の夫々から識別情報を含む信号を複数のアクセスポイントを介して複数の異なる経路を介して受信する識別情報受信ステップと、
前記照明器具毎に前記各アクセスポイントから前記照明器具までの距離の指標となる値に基づいて、前記複数の照明器具のなかから、いずれかの前記アクセスポイントからの距離が第1所定距離以内であると推定される1以上の前記照明器具と、いずれかの前記アクセスポイントからの距離が第2所定距離以上であると推定される1以上の前記照明器具とのうちの少なくとも一方を特定するステップと、
特定した1以上の前記照明器具における1以上の前記識別情報である1以上のアンカー候補識別情報を表示部に表示するステップと
を含む、マッピング方法。
【請求項7】
前記第2所定距離が、前記複数の照明器具と前記複数のアクセスポイントに関して最も長い前記照明器具と前記アクセスポイントとの距離よりも長い値に設定されている、請求項6に記載のマッピング方法。
【請求項8】
前記特定した1以上の照明器具のうちの少なくとも1つの前記照明器具が存在している可能性が高い領域を特定可能な情報を前記表示部に表示するステップを含む、請求項6又は7に記載のマッピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各照明器具の識別情報を、対応する配置で操作端末等の表示部に表示されている複数の照明器具表示のうちの対応する照明器具表示にマッピングする作業に用いられるマッピング装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具のペアリング装置としては、特許文献1に記載されているものがある。このペアリング装置は、同じ一室に配置される複数の照明器具に関し、各照明器具から出力される信号に含まれるアドレス情報を、それら複数の照明器具の調光制御を行うリモートコントローラの対応する操作部に紐づけするのに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペアリングをするにあたり、各照明器具の識別情報を、対応する配置で操作端末等の表示部に表示されている複数の照明器具表示のうちの対応する照明器具表示にマッピング作業が必要になることがある。マッピング作業は、照明システムが備える複数の照明器具の夫々が発信した識別情報を操作端末等で受信して各識別情報に対応する照明器具を点灯させ、点灯している照明器具の位置を目視で確認することで、各照明器具の識別情報を、対応する配置で操作端末等の表示部に表示されている複数の照明器具表示のうちの対応する照明器具表示に紐づけすることで実行される。
【0005】
このような背景において、多数の照明器具(例えば、千台以上の照明器具)を備える場合において、識別情報を無作為に一つずつ選択して選択した順にマッピング作業を行うと、設定者が長距離移動しなくてはならなくなり、マッピング作業に多大な労力が必要になる。
【0006】
そこで、本開示の目的は、マッピング作業を効率的に実行できるマッピング装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示に係るマッピング装置は、複数の照明器具から識別情報を含む信号を複数のアクセスポイントを介して複数の異なる経路を介して受信する受信部と、照明器具毎に各アクセスポイントから照明器具までの距離の指標となる値に基づいて、複数の照明器具のなかから、いずれかのアクセスポイントからの距離が第1所定距離以内であると推定される1以上の照明器具と、いずれかのアクセスポイントからの距離が第2所定距離以上であると推定される1以上の照明器具とのうちの少なくとも一方を特定する特定部と、特定した1以上の照明器具における1以上の識別情報である1以上のアンカアー候補識別情報を表示する表示部と、を備える。
【0008】
また、本開示に係るマッピング方法は、複数の照明器具の夫々から識別情報を含む信号を複数のアクセスポイントを介して複数の異なる経路を介して受信する識別情報受信ステップと、照明器具毎に各アクセスポイントから照明器具までの距離の指標となる値に基づいて、複数の照明器具のなかから、いずれかのアクセスポイントからの距離が第1所定距離以内であると推定される1以上の照明器具と、いずれかのアクセスポイントからの距離が第2所定距離以上であると推定される1以上の照明器具とのうちの少なくとも一方を特定するステップと、特定した1以上の照明器具における1以上の識別情報である1以上のアンカー候補識別情報を表示部に表示するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るマッピン装置及び方法によれば、マッピング作業を効率的に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係るマッピング装置の主要部を示すブロック図である。
【
図2】マッピング装置を用いたマッピング動作を含むペアリング動作における情報のやり取りを説明するための図である。
【
図3】各照明器具に関して各アクセスポイントが取得したと推定される識別情報含有信号のRSSIを示すグラフの一例である。
【
図4】鉛直方向から見たときの、アクセスポイント、障害物、照明器具、及びアンカー器具候補の照明器具の配置を示す平面図である。
【
図5】他の実施例における
図4に対応する平面図である。
【
図6】他の実施例における
図4に対応する平面図である。
【
図7】他の実施例における
図4に対応する平面図である。
【
図8】他の実施例における
図4に対応する平面図である
【
図9】マッピング装置の表示部が表示可能な画像例を示す模式図である。
【
図10】マッピング装置の表示部が表示可能な画像例を示す模式図である。
【
図11】マッピング装置の表示部が表示可能な画像例を示す模式図である。
【
図12】マッピング装置の表示部が表示可能な画像例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、本明細書では、調光制御を、照明器具2が出射する光の強度と光の色のうちの少なくとも一方を変える制御と定義する。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、本明細書で、「略」という文言を用いた場合、「大雑把に言って」という文言と同じ意味合いで用いており、「略~」という要件は、人がだいたい~のように見えれば満たされる。例を挙げれば、略円形という要件は、人がだいたい円形に見えれば満たされる。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態に係るマッピング装置1の主要部を示すブロック図である。マッピング装置1は、例えば、情報端末(操作端末)で構成され、タブレット、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等で構成される。
図1に示すように、マッピング装置1は、制御装置10、電源部20、表示部21、操作部22、受信部23、及び送信部24を備える。
【0013】
制御装置10は、コンピュータ、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、制御部15と、記憶部17を含む。制御部15、すなわち、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、記憶部17は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成される。CPUは、記憶部に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する。また、不揮発性メモリは、制御プロラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する。
【0014】
電源部20は、例えば、二次電池を含み、商用電源からの交流電力を直流電力に変換した上で二次電池に充電する。表示部21は、例えば、液晶パネルや有機ELパネル等で構成されてもよく、操作部22は、表示部21の少なくとも一部を構成するタッチパネルで構成されてもよい。タッチパネルは、液晶パネルや有機ELパネルのような表示装置とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた電子部品であり、画面上の表示を押すことで機器を操作する入力装置である。操作部22は、複数の異なる操作を実行できる。なお、操作部22は、タッチパネルで構成されてもよく、それ以外の操作手段で構成されてもよく、それらが併用されてもよいが、同じ動作を実現する操作方法(操作手段)が、無限に考えられることは言うまでもない。また、受信部23は、例えば、無線信号を受信する受信アンテナを含み、送信部24は、例えば、無線信号を受信する送信アンテナを含む。
【0015】
図2は、マッピング装置1を用いたマッピング動作を含むペアリング動作における情報のやり取りを説明するための図である。
図2を参照して、マッピング装置1は、1以上のリモートコントローラ(以下、単にリモコンという:親機、子機)3で調光制御される同じ区画(例えば、同じ部屋)に設置されている複数の照明器具(複数の制御用照明器具)2における各照明器具2の識別情報を、複数の照明器具2に対応する配置で表示部21(
図9参照)に表示されている複数の照明器具表示70(
図9参照)うちの対応する照明器具表示70にマッピングするのに用いられる。ここで、識別情報は、各照明器具2を他の照明器具2に対して識別できる情報であれば、如何なる情報でもよく、例えば、MACアドレス(Media Access Control address)、バーコード情報、RF(radio frequency)タグ、又は品番の情報、IPアドレス、製造ナンバー等で構成される。
【0016】
マッピング装置1は、例えば、送信部24を用いてリモコン3を介して識別情報を要求する識別情報要求信号を各照明器具2に送信する。すると、各照明器具2が識別情報を含んだ識別情報含有信号を送信し、マッピング装置1は、各照明器具2からの識別情報含有信号を3つのアクセスポイント(以下、APで示す)第1乃至第3AP4a~4cを介して3つの異なる経路を介して受信する。なお、本実施例では、AP4a~4cが3つ存在する場合を例として説明するが、APは、2つにのみ存在してもよく、4つ以上存在してもよい。マッピング装置1は、受信した情報に基づいて、各照明器具2の識別情報を、対応する照明器具表示70にマッピングする。このマッピング動作については、以下で詳細に説明する。マッピング動作が終了すると、マッピング装置1は、マッピング動作によって互いに紐づけされた各照明器具2の識別情報とそれに対応する照明器具表示70に関する情報を、送信部24を用いてリモコン3に送信する。すると、紐づけされた情報がリモコン3の記憶部に記憶され、リモコン3が、その紐づけされた情報に基づいて複数の照明器具2のグループ制御等の調光制御が可能になり、ペアリング動作が完了する。
【0017】
次に、本開示のマッピング動作について詳細に説明する。本開示のマッピング動作は、公知のRSSI推定ソフトを用いる。このRSSI推定ソフトは公知であるため、詳細な説明は省略するが、このRSSI推定ソフトは、第1乃至第3AP4a~4cが受信した信号に基づいて、照明器具2毎かつAP4a~4c毎に識別情報含有信号のRSSI(Received Signal Strength Indicator)、すなわち、識別情報含有信号の受信信号強度であり、第1乃至第3AP4a~4cが受信した識別情報含有信号の強度を示す数値を推定する。
【0018】
複数の照明器具2が識別情報含有信号を略同時に送信する状況下においては、信号同士(波)の強め合いや弱め合いが生じるため、RSSIの推定に関して複雑な計算が必要になる。RSSI推定ソフトは、そのような計算を行う。このRSSI推定ソフトで算出された照明器具2毎かつAP4a~4c毎のRSSIは、識別情報含有信号同士(波)の強め合いや弱め合い、照明器具2の送信アンテナの空間指向性、及び、複数の照明器具が配置されている区画の構造、例えば、電波の伝搬に影響する柱の存在等を反映しにくいという課題を有する。そこで、RSSIを用いて次の理論式(1)から算出できる各照明器具2と各AP4a~4cとの距離は、誤差を含み、正確な距離から外れる。RSSIは、照明器具2毎に各AP4a~4cから照明器具2までの距離の指標となる値である。
【0019】
R=A-10BLog(RSSI(r))[dBm]・・・(1)
【0020】
ここで、R:測定点のRSSI[dBm]
【0021】
A:APから1mの電波強度[dBm]
【0022】
B:伝搬環境における定数(非住宅では、1.0~3.0)
r: APからの距離[m]
【0023】
本開示のマッピング動作では、上記RSSI推定ソフトで推定されたRSSIに基づいて複数の照明器具2のうちから複数のアンカー器具を選択する。アンカー器具は、例えば、その周囲の領域に存在する照明器具2のマッピングのために用いられる照明器具であり、その位置が正確に特定されている照明器具2である。
【0024】
アンカー器具は、次の順序で決定される。先ず、照明器具2毎かつAP4a~4c毎に推定された複数のRSSIから特徴的なRSSIを選択する。この特徴的なRSSIの選択は次のように行う。
【0025】
図3は、各照明器具2に関して各AP4a~4cが取得したと推定される識別情報含有信号のRSSIを示すグラフの一例である。
図3に関し、斜線領域R1は、各AP4a~4cからの距離が第1所定距離以下となる領域を示す。また、一点斜線領域R2は、各AP4a~4cからの距離が、複数の照明器具2と3つのAP4a~4cに関して距離が最も長い1の照明器具2と第1乃至第3AP4a~4cのうちのいずれか1つとの当該距離よりも長くなる領域を示し、
図3に示す例では、各AP4a~4cからの距離が35m以上の領域を示す。
【0026】
各照明器具2からAP4a~4cからの距離への換算は、上記(1)式を用いて算出できる。例えば、A=-36であり、B=3.0である場合、測定点S1のRSSIに対応する照明器具2における第2AP4bからの距離は、0.4mとなり、測定点S2のRSSIに対応する照明器具2における第1AP4aからの距離は、45mとなり、測定点S3のRSSIに対応する照明器具2における第3AP4cからの距離は、65mとなる。ここで、測定点S2及び測定点S3のRSSIに関し、対応する照明器具2の対応するAP4a,4cからの距離が、現実にはあり得ない距離に推定されている。このような距離の推定は、上述のように、例えば、照明器具2と対応するAP4a,4cとの間に柱等が存在する場合等で起こり得る。
【0027】
次に、推定距離が35m以内に収まっていないAP4a~4cの数により、複数の照明器具2をランク分けする。詳しくは、3つの全てのAP4a~4cとの距離が35m以内に収まっていない照明器具2をランク1、2つのみのAP4a~4cとの距離が35m以内に収まっていない照明器具2をランク2、1つのみのAP4a~4cとの距離が35m以内に収まっていない照明器具2をランク3と分類する。
【0028】
ランク1に所属する照明器具2は、例えば、全てのAP4a~4cからの距離が遠い、又は器具設置位置が特異な位置にある可能性がある。また、ランク2に所属する照明器具2は、例えば、マッピング領域の端に位置するか、又は障害物の陰に位置している可能性がある。また、ランク3に所属する照明器具2は、例えば、器具のヌル点の方向に位置するか、又はマッピング領域の端に位置する可能性がある。ここで、ヌル点の方向とは、照明器具2の送信アンテナの指向性により、AP4a~4cが非常に小さい強度の信号しか受信できない方向のことをいう。また、いずれかのAP4a~4cからの距離が第1距離(例えば、5m)以内に存在する照明器具2をランク4に分類する。また、それに加えて、特定のAP4a~4cのみが識別情報含有信号を受信した照明器具をランク5と分類する。
【0029】
そして、例えば、ランク1からランク5の順に、照明器具2の識別情報をマッピング装置1の表示部21に表示する。より詳しくは、
図1を参照して、AP遠方器具特定部15aが、各AP4a~4cから受けたRSSIに基づいて各照明器具2に関して推定距離が35m以内に収まっていないAP4a~4cの数を算出して、ランク1~3の照明器具2を特定する。
【0030】
また、AP周辺器具特定部15bが、いずれか1つのAP4a~4cとの距離が、第1距離(例えば、5m)以内に存在するランク4の照明器具2を特定する。そして、表示順序決定部15cは、人(例えば、施工業者)が操作部22を用いてアンカー器具候補となる照明器具2の識別情報を表示部21に表示させる操作を行うと、ランク1からランク5の順に、照明器具2の識別情報をマッピング装置1の表示部21に表示する。ここで、表示順序決定部15cは、例えば、ランク1~3に関して、同一ランクの照明器具2に関しては、(第1AP4aとの距離+第2AP4bとの距離+第3AP4cとの距離)が大きい順に識別情報を表示部21の所定箇所に並べて表示するように表示部21を制御してもよい。また、表示順序決定部15cは、例えば、ランク4に関して、いずれか1つのAP4a~4cとの距離が近い順に識別情報を表示部21の所定箇所に並べて表示するように表示部21を制御してもよい。また、表示順序決定部15cは、例えば、ランク5に関して、ランダムに識別情報を表示部21の所定箇所に並べて表示するように表示部21を制御してもよい。表示順序決定部15cによって表示部21に表示される各識別情報は、アンカー候補識別情報を構成する。
【0031】
人は、例えば、全ての照明器具2の数の10%程度の数の照明器具2をアンカー器具に設定する。また、人は、例えば、表示部21に表示されている識別情報の順に、操作部22を用いて識別情報を選択し、操作部22を用いて選択した識別情報に対応する照明器具2を点灯させ、点灯した照明器具2を目視で確認することで、操作部22を用いて、複数の照明器具2に対応する配置で表示部21に表示されている複数の照明器具表示70(
図9参照)のうちで点灯している照明器具2に対応する照明器具表示70に、選択した識別情報をマッピングする。このマッピングで選択した識別情報に対応する照明器具2をアンカー器具に設定できる。
【0032】
なお、操作部22を用いて選択した識別情報に対応する照明器具2を点灯させようとしたときに、いずれの照明器具2も点灯しない場合がある。これは、例えば、選択した識別情報が、別のフロアに存在する照明器具等、複数の照明器具2でない照明器具からの識別情報である場合に起こり得る。そのような場合、操作部22を用いて、選択した識別情報を消去して、新たに、識別情報を選択するようにする。
【0033】
一つの照明器具2がアンカー器具に設定されると、操作部22を用いて、アンカー器具への設定の際に点灯された照明器具2を消灯させる。例えば、この手続きを、表示されている識別情報の順に、全ての照明器具2の数の10%程度の数の識別情報に対して実行すると、アンカー器具設定作業を終了する。
【0034】
次に、アンカー器具以外のマッピング作業について説明する。アンカー器具設定作業を終了すると、アンカー器具以外の複数の照明器具2の夫々に関して、再度、上記RSSI推定ソフトを用いて各AP4a~4cに関するRSSIを取得する。ここで、上述のように、照明器具2が、推定距離が35m以内に収まっていないAP4a~4cの数が多い順にアンカー器具に設定されているため、AP4a~4cとの距離の誤差が大きい照明器具2が、上記RSSI推定ソフトにおけるRSSIの算出から外れ、その結果、RSSI推定ソフトに基づくアンカー器具でない照明器具2とAP4a~4cとの推定距離が正確な距離に近づく。
【0035】
その後、人は、操作部22を用いて複数のアンカー器具から1のアンカー器具を選択する。この選択は、例えば、次のように実行されてもよい。すなわち、アンカー器具設定作業で設定されたアンカー器具は、表示部21に表示されている複数の照明器具表示70においてアンカー器具設定されていない照明器具表示と異なる色で表示されていてもよい。そして、人が、単に、アンカー器具であることを示す複数の照明器具表示のうちから1の照明器具表示に触れることで、複数のアンカー器具から1のアンカー器具を選択するようになっていてもよい。なお、選択したアンカー器具を表す照明器具表示は、アンカー器具設定されていない照明器具表示の色と異なり、かつ、選択していないアンカー器具を表す照明器具表示の色とも異なる色で表示されてもよい。
【0036】
複数のアンカー器具から1のアンカー器具を選択すると、例えば、アンカー器具以外の複数の照明器具2であって、第1AP4aに関するRSSI、第2AP4bに関するRSSI、及び第3AP4cに関するRSSIが、次の式(2)~(4)に示す条件を満足する1以上の照明器具2の識別情報が表示部21に表示される。
【0037】
|選択したアンカー器具の第1AP4aに関するRSSI-第1AP4aに関するRSSI|<a・・・(2)
【0038】
|選択したアンカー器具の第2AP4bに関するRSSI-第2AP4bに関するRSSI|<a・・・(3)
【0039】
|選択したアンカー器具の第3AP4cに関するRSSI-第3AP4cに関するRSSI|<a・・・(4)
【0040】
ここで、aは、所定の閾値で、選択したアンカー器具の周辺に位置することを規定する閾値である。よって、表示部21に表示された識別情報の照明器具2は、アンカー器具以外の複数の照明器具2であって、かつ、選択したアンカー器具の周辺に位置していることになる。
【0041】
人は、実際に選択したアンカー器具の近くに移動して、表示部21に表示された1以上の識別情報のマッピング作業を行う。ここで、マッピング作業は、アンカー器具のマッピング作業と同様に、識別情報を選択して、選択した識別情報に対応する照明器具2を点灯させて、点灯した照明器具2を目視で確認し、点灯した照明器具2を対応する照明器具表示に紐づけすることで実行する。表示部21に表示された1以上の識別情報に対応する1以上の照明器具2は、選択したアンカー器具の周辺に位置する可能性が高いので、それらの1以上の識別情報に対応する1以上の照明器具2のマッピングを効率的に実行できる。
【0042】
このように、選択したアンカー器具の周辺の照明器具2のマッピング動作が完了すると、他のアンカー器具を選択し、同様の作業を行う。なお、あるアンカー器具のマッピン作業でマッピングされた照明器具2の識別情報は、他のアンカー器具を選択した際に、表示部21に表示されないようになっている。全てのアンカー器具に関して、同様の動作を行って、全てのアンカー器具の周辺に位置するアンカー器具でない照明器具2のマッピングが全て完了すると、次に、アンカー器具の周辺に位置しない照明器具2のマッピングを行う。
【0043】
そのマッピング作業は、例えば、次のように実施される。マッピング作業が完了していない識別情報は、操作部22を用いて所定の操作を実行すると、表示部21に表示される。ここで、例えば、人が、表示されている識別情報から1の識別情報を選択すると、選択した識別情報に対応する照明器具2が点灯すると共に、その周辺に位置する1以上の識別情報が表示部21に表示されるようになっている。この周辺に位置する1以上の識別情報は、上述の(2)~(4)式と同様の式を用いて特定することができる。
【0044】
(2)~(4)との違いは、アンカー器具における3つのRSSI値を、選択した照明器具2の3つのRSSI値に変更するだけである。この作業を全ての照明器具2のマッピン動作が終了するまで繰り返す。なお、上述のように、アンカー器具以外の複数の照明器具2の夫々に関して、再度、上記RSSI推定ソフトを用いて各AP4a~4cに関するRSSIを取得しているので、推定距離の信頼度が上がっており、アンカー器具の周辺に位置しない照明器具2のマッピング動作を効率的に実行できる。
【0045】
以上、マッピング装置1は、複数の照明器具2から識別情報を含む信号を複数のAP4a~4cを介して複数の異なる経路を介して受信する受信部23を備える。また、マッピング装置1は、照明器具2毎に各AP4a~4cから照明器具2までの距離の指標となる値(RSSI)に基づいて、複数の照明器具2のなかから、いずれかのAP4a~4cからの距離が第1所定距離以内であると推定される1以上の照明器具2と、いずれかのAP4a~4cからの距離が第2所定距離以上であると推定される1以上の照明器具2とのうちの少なくとも一方を特定する特定部を備える。本実施例では、特定部は、AP遠方器具特定部15aとAP周辺器具特定部15bとで構成される。また、マッピング装置1は、特定した1以上の照明器具2における1以上の識別情報である1以上のアンカー候補識別情報を表示する表示部21を備える。
【0046】
したがって、人は、アンカー候補識別情報を用いてアンカー器具を設定でき、アンカー器具を用いてアンカー器具の周辺の照明器具2を集中的にマッピングできる。したがって、マッピングを行う照明システムが、例えば、数千個等の多数の照明器具2を備えている場合でも、マッピングを効率的に実行できる。更には、いずれかのAP4a~4cからの距離が第2所定距離以上であると推定される1以上の照明器具2をアンカー器具に設定した場合、アンカー器具以外の照明器具2におけるAP4a~4cとの推定距離を正確な距離に近づけることができる。したがって、マッピング動作をより円滑に実行することができる。
【0047】
なお、1以上のアンカー器具は、いずれかのAP4a~4cからの距離が第1所定距離以内であると推定される1以上の照明器具2のみで構成されてもよく、いずれかのAP4a~4cからの距離が第2所定距離以上であると推定される1以上の照明器具2のみで構成されてもよい。また、アンカー器具は、いずれかのAP4a~4cからの距離が第1所定距離以内であると推定される1以上の照明器具2と、いずれかのAP4a~4cからの距離が第2所定距離以上であると推定される1以上の照明器具2とで構成されてもよい。
【0048】
また、上記第2所定距離が、複数の照明器具2と複数のAP4a~4cに関して最も長い1つの照明器具2と1つのAP4a~4cとの距離よりも長い値に設定されていてもよい。
【0049】
本構成によれば、AP4a~4cとの推定距離が、AP4a~4cとの正確な距離からの乖離が大きい照明器具2を、推定距離を算出するソフト計算から除外することができる。したがって、アンカー器具以外の照明器具2のマッピング動作を更に効率的に実行できる。
【0050】
また、マッピング装置1は、表示部21に表示されている1以上の識別情報から1の識別情報を選択することと、選択した識別情報に対応する照明器具2を点灯させること、点灯している照明器具2を消灯させること、複数の照明器具2に対応する配置で表示部21に表示されている複数の照明器具表示70うちの対応する照明器具表示70にアンカー候補識別情報をマッピングすると共に、マッピングしたアンカー候補識別情報を距離の指標となる値の算出から除外すること、及び、識別情報を複数の照明器具2に対応する配置で表示部21に表示されている複数の照明器具表示70うちの対応する照明器具表示70にマッピングすることを実行できる操作部22を備えてもよい。本構成によれば、マッピング動作を円滑に実行できる。
【0051】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、自器の存在位置との距離が、所定距離よりも長いAP4a~4cの数が多い順に、照明器具2をアンカー器具として登録する場合について説明した。しかし、表示部21は、アンカー器具候補の識別情報をそのような順で表示しなくてもよい。詳しくは、各AP4a~4c付近の照明器具2、障害物の周辺に位置する照明器具2、AP4a~4cから遠い照明器具2、及びアンテナ指向性に基づくヌル点に陥った照明器具2のRSSI値は、第1所定値よりも大きい値(以下、明細書及び図面で、特徴値1と言及する)か、又は第2所定値よりも小さい値(以下、明細書及び図面で、特徴値2と言及する)になる。ここで、
図4、すなわち、鉛直方向から見たときの、AP4a~4c、障害物50、照明器具2、及びアンカー器具候補(
図4で斜線で示す)の照明器具2aの配置を示す平面図に示すように、マッピング装置1の制御装置10は、RSSI値が特徴値1となる複数の照明器具2と、RSSI値が特徴値2となる複数の照明器具2とを、順序を決めずにアンカー候補として抽出して表示部21に表示するようになっていてもよい。そして、人が、表示されている複数のアンカー器具候補の識別情報に基づいて照明器具2を何台かアンカー器具に登録することで、測位精度を向上させてもよい。
【0053】
また、
図5、すなわち、他の実施例における
図4に対応する平面図に示すように、特異な位置、例えば、各AP4a~4cの周辺位置、AP4a~4cとの関係で柱等の障害物50の背後位置、及び通路60内の位置等に配置された照明器具2を、点灯制御することで、実際に斜線で示すアンカー器具2bとして選択して登録することで、後の測位計算で苦手な場所を補完して精度を向上させるようにしてもよい。
【0054】
また、
図6、すなわち、他の実施例における
図4に対応する平面図に示すように、例えば1つのAP(例えば、第1AP4a)のみがRSSIを取得し、その他のAP(例えば第2AP4b)がRSSIデータを取得しなかった場合には、そのRSSIに対応する照明器具2cを、別のフロアの照明器具であるとして、アンカー器具の候補の照明器具から除外し、その識別情報を表示部21に表示しないようにしてもよい。
【0055】
また、複数の照明器具2が、メッシュ通信が可能であって、照明器具同士の通信が可能である場合、ある照明器具2に対する他の照明器具2の相対RSSIを推定できる。このような場合、
図7、すなわち、他の実施例における
図4に対応する平面図に示すように、複数のアンカー器具が、ある照明器具2を特定器具2dとして、いずれかのAP4a~4dと特定器具2dの両方に対して共に特徴値1となるRSSIに対応する1以上の照明器具2eと、いずれかのAP4a~4dと特定器具2dの両方に対して共に特徴値2となるRSSIに対応する1以上の照明器具2fを含むようにしてもよい。このようにして、AP4a~4dとの通信に加えて特定器具2dとの通信も考慮してアンカー器具設定を行って、より特異なRSSIが取得される照明器具2をアンカー器具に登録するようにしてもよい。
【0056】
また、
図8、すなわち、他の実施例における
図4に対応する平面図に示すように、複数の照明器具2が、メッシュ通信が可能であって、照明器具同士の通信が可能である場合、複数の照明器具2を、複数のグループに分類してもよい。そして、各グループ内の複数の照明器具2に、AP4との通信を行う通信窓口としての1つのマスター器具2gが存在するようにしてもよい。そして、各グループにおいて、RSSIが特徴値1となる1以上の照明器具2と、RSSIが特徴値2となる1以上の照明器具2とのうちの少なくとも一方の1以上の照明器具2を、アンカー器具に設定してもよい。この実施例によれば、複数のアンカー器具を、全ての照明器具2の集団に関して、空間的に均等に配置し易い。したがって、マッピング動作をより無駄がなく効率的に実行できる。
【0057】
図9~
図12は、マッピング装置1の表示部21が表示可能な画像例を示す模式図である。
図9に示すように、マッピング装置1の表示部21は、複数の照明器具2に対応する配置となっている複数の照明器具表示70の配灯図面の画像を表示可能でもよい。また、マッピング装置1の表示部21は、各APを介して収集した全ての照明器具2におけるMACアドレス等の識別情報(ID)を表示可能でもよい。ここで、配灯図面の情報は、例えば、マッピング装置1に設計図面(建築図面)の情報を取り込むことで取得することができる。又は、配灯図面の情報は、実際に配置されている複数の照明器具2を参照して人が操作部22を用いて作製することで取得してもよい。
【0058】
また、
図10に示すように、マッピング装置1の表示部21は、アンカー器具候補の照明器具2の識別情報(ID)を、複数の照明器具表示70の配灯図と同時に表示可能でもよい。また、
図11に示すように、マッピング装置1の表示部21は、複数のアンカー器具候補の照明器具2における複数の識別情報(ID)を表示すると同時に、複数の照明器具表示70の配灯図に、マッピング装置1が取得した複数のRSSIに基づいて複数のアンカー器具候補の照明器具2が存在している可能性が高い領域R3を表示してもよい。
【0059】
又は、表示部21が、人が操作部22を用いて選択したアンカー候補識別情報に対応する照明器具2から第3所定距離以内に存在すると推定される1以上の照明器具2に対応する1以上の識別情報を表示可能でもよい。このようにして、人が、ある照明器具2をアンカー器具として設定した場合に、そのアンカー器具に付随してマッピング可能となる照明器具2の集団を認識し易くなるようにしてもよい。また、
図12に示すように、マッピング装置1の表示部21が、選択したアンカー候補の識別情報に対応する照明器具表示70が配灯図に存在しない場合や、障害物の後ろ等の影になっている場合を報知する表示を行うことが可能でもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 マッピング装置、 2,2e,2f 照明器具、 2a アンカー器具の候補となっている照明器具、 2b アンカー器具、 2c アンカー器具の候補から除外される照明器具、 2d 特定器具、 2g マスター器具、 3 リモコン、 4 AP、 4a 第1AP、 4b 第2AP、 4c 第3AP、 4d 第4AP、 10 制御装置、 15 制御部、 15a AP遠方器具特定部、 15b AP周辺器具特定部、 15c 表示順序決定部、 17 記憶部、 20 電源部、 21 表示部、 22 操作部、 23 受信部、 24 送信部、 50 障害物、 60 通路、 70 照明器具表示。