(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20230721BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230721BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230721BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230721BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230721BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230721BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20230721BHJP
C01G 51/00 20060101ALI20230721BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20230721BHJP
C01F 17/36 20200101ALI20230721BHJP
H01M 10/0565 20100101ALN20230721BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01B1/06 A
C01G51/00 A
C01G25/00
C01F17/36
H01M10/0565
(21)【出願番号】P 2019567866
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2018042060
(87)【国際公開番号】W WO2019146217
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018011523
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章裕
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晃暢
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-199668(JP,A)
【文献】特開2006-244734(JP,A)
【文献】特開2017-111954(JP,A)
【文献】国際公開第2015/136623(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/030052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された電解質層と、
を備え、
前記電解質層は、第1電解質層と第2電解質層とを含み、
前記第1電解質層は、前記正極と前記第2電解質層との間に配置され、
前記第1電解質層は、第1固体電解質材料を含み、
前記第2電解質層は、前記第1固体電解質材料とは異なる材料である第2固体電解質材料を含み、
前記第1固体電解質材料は、組成式Li
α
M
β
X
γ
で表され、
ここで、αとβとγとは、いずれも0より大きい値であり、
Mは、Li以外の金属元素及び半金属元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、
Xは、Cl及びBrからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記第2固体電解質材料は、組成式Li
α’
M’
β’
X’
γ’
で表され、
ここで、α’とβ’とγ’とは、いずれも0より大きい値であり、
M’は、Li以外の金属元素と半金属元素とからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
X’は、ClとBrとからなる群より選択される少なくとも1種と、Iと、を含む、
電池。
【請求項2】
2≦γ/α≦2.4を満たす、
請求項
1に記載の電池。
【請求項3】
前記Mは、イットリウムを含む、
請求項
1または
2に記載の電池。
【請求項4】
2.5≦α≦3、
1≦β≦1.1、
γ=6、
を満たす、
請求項
3に記載の電池。
【請求項5】
前記M’は、イットリウムを含む、
請求項
1に記載の電池。
【請求項6】
2.7≦α’≦3、
1≦β’≦1.1、
γ’=6、
を満たす、
請求項
5に記載の電池。
【請求項7】
前記正極は、前記第1固体電解質材料を含む、
請求項1から
6のいずれかに記載の電池。
【請求項8】
前記正極は、正極活物質を含み、
前記正極活物質は、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウムである、
請求項1から
7のいずれかに記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インジウムを含むハロゲン化物を固体電解質として用いた全固体電池が開示されている。
【0003】
非特許文献1には、ハロゲン元素を構成元素に含む固体電解質の電位安定性に関する計算結果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Chem.Mater.2016,28,266-273.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においては、電池の充放電効率のさらなる向上が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一様態における電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された電解質層と、を備え、前記電解質層は、第1電解質層と第2電解質層とを含み、前記第1電解質層は、前記正極と前記第2電解質層との間に配置され、前記第1電解質層は、第1固体電解質材料を含み、前記第2電解質層は、前記第1固体電解質材料とは異なる材料である第2固体電解質材料を含む。前記第1固体電解質材料は、組成式Li
α
M
β
X
γ
で表され、ここで、αとβとγとは、いずれも0より大きい値であり、Mは、Li以外の金属元素及び半金属元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、Xは、Cl及びBrからなる群より選択される少なくとも1種であり、前記第2固体電解質材料は、組成式Li
α’
M’
β’
X’
γ’
で表され、ここで、α’とβ’とγ’とは、いずれも0より大きい値であり、M’は、Li以外の金属元素と半金属元素とからなる群より選択される少なくとも1種を含み、X’は、ClとBrとからなる群より選択される少なくとも1種と、Iと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電池の充放電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1における電池1000の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における電池1000の概略構成を示す断面図である。
【0012】
実施の形態1における電池1000は、正極201と、負極202と、電解質層100と、を備える。
【0013】
電解質層100は、正極201と負極202との間に設けられる。
【0014】
電解質層100は、第1電解質層101と第2電解質層102とを含む。
【0015】
第1電解質層101は、正極201と第2電解質層102との間に設けられる。
【0016】
第1電解質層101は、第1固体電解質材料を含む。
【0017】
第2電解質層102は、第2固体電解質材料を含む。第2固体電解質材料は、第1固体電解質材料とは異なる材料である。
【0018】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(1)により表される。
Li
α
M
β
X
γ
・・・式(1)
ここで、αとβとγとは、0より大きい値である。
また、Mは、Li以外の金属元素と半金属元素とのうちの少なくとも1つを含む。
また、Xは、ClとBrとのうちの少なくとも一方を含む。
【0019】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を向上させることができる。
【0020】
また、ハロゲン化物固体電解質は、イオン導電率が高く、熱的安定性に優れ、硫化水素などの有害ガスを発生しない。第1電解質層101、第2電解質層102のいずれにもハロゲン化物固体電解質を用いることで、電池の出力特性、熱的安定性を向上し、硫化水素などの有害ガス発生を抑制できる。
【0021】
また、Li以外の金属元素と半金属元素とのうちの少なくとも1つを含むハロゲン化物固体電解質は、Liとハロゲン元素のみから構成されるLiIなどのハロゲン化物固体電解質と比較し、イオン導電率が高い。そのため、Li以外の金属元素と半金属元素とのうちの少なくとも1つを含むハロゲン化物固体電解質を電池に用いた場合、電池の出力特性を向上することができる。
【0022】
なお、「半金属元素」とは、B、Si、Ge、As、Sb、Teである。
【0023】
また、「金属元素」とは、水素を除く周期表1族から12族中に含まれるすべての元素、及び、前記の半金属とC、N、P、O、S、Seを除く全ての13族から16族中に含まれる元素である。すなわち、ハロゲン化合物と無機化合物を形成した際に、カチオンとなりうる元素群である。
【0024】
なお、組成式(1)においては、Mは、Y(=イットリウム)を含んでもよい。
【0025】
すなわち、第1固体電解質材料は、金属元素としてYを含んでもよい。
【0026】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0027】
Yを含む第1固体電解質材料として、例えば、LiaMebYcX6(a+mb+3c=6、かつ、c>0を満たす)(Me:Li、Y以外の金属元素と半金属元素の少なくとも1つ)(m:Meの価数)の組成式で表される化合物であってもよい。
【0028】
Meとして、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、Nbのいずれか、もしくはこれらの混合物を用いてもよい。
【0029】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0030】
なお、組成式(1)においては、
2≦γ/α≦2.4
が満たされてもよく、
2.5≦α≦3、
1≦β≦1.1、
γ=6、
が満たされてもよい。
【0031】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0032】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A1)により表される材料であってもよい。
Li6-3dYdX6 ・・・式(A1)
ここで、組成式(A1)においては、Xは、ClとBrとのうちの少なくとも1つである。
【0033】
また、組成式(A1)においては、0<d<2、を満たす。
【0034】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0035】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A2)により表される材料であってもよい。
Li3YX6 ・・・式(A2)
ここで、組成式(A2)においては、Xは、ClとBrとのうちの少なくとも1つである。
【0036】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0037】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A3)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
Cl6 ・・・式(A3)
ここで、組成式(A3)においては、0<δ≦0.15、が満たされる。
【0038】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0039】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A4)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
Br6 ・・・式(A4)
ここで、組成式(A4)においては、0<δ≦0.25、が満たされる。
【0040】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0041】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A5)により表される材料
であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
MeaCl6-xBrx ・・・式(A5)
ここで、組成式(A5)においては、Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0042】
また、組成式(A5)においては、
-1<δ<2、
0<a<3、
0<(3-3δ+a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
が満たされる。
【0043】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0044】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A6)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
MeaCl6-xBrx ・・・式(A6)
ここで、組成式(A6)においては、Meは、Al、Sc、Ga、Biからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0045】
また、組成式(A6)においては、
-1<δ<1、
0<a<2、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
が満たされる。
【0046】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0047】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A7)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
MeaCl6-xBrx ・・・式(A7)
ここで、組成式(A7)においては、Meは、Zr、Hf、Tiからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0048】
また、組成式(A7)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.5、
0<(3-3δ-a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
が満たされる。
【0049】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0050】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A8)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
MeaCl6-xBrx ・・・式(A8)
ここで、組成式(A8)においては、Meは、Ta、Nbからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0051】
また、組成式(A8)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.2、
0<(3-3δ-2a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
が満たされる。
【0052】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0053】
なお、第1固体電解質材料として、例えば、Li3YX6、Li2MgX4、Li2FeX4、Li(Al、Ga、In)X4、Li3(Al、Ga、In)X6、など(X:Cl、Br)、が用いられうる。
【0054】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(2)により表される材料であってもよい。
Li’α
M’’β
X’’γ
・・・式(2)
ここで、α’とβ’とγ’とは、0より大きい値である。
また、M’は、Li以外の金属元素と半金属元素とのうちの少なくとも1つを含む。
また、X’は、ClとBrとのうちの少なくとも一方と、Iと、を含む。
【0055】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0056】
特許文献1では、インジウムを含む化合物からなる固体電解質を含む全固体二次電池において、正極活物質の対Li電位が平均で3.9V以下であることが好ましく、これにより固体電解質の酸化分解による分解生成物からなる皮膜が良好に形成され、良好な充放電特性が得られると言及されている。また、対Li電位が平均で3.9V以下の正極活物質として、LiCoO2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2などの一般的な層状遷移金属酸化物正極が開示されている。
【0057】
一方、本発明者らが鋭意検討した結果、正極材料にIを含むハロゲン化物固体電解質(すなわち、第2固体電解質材料)を用いた電池では、対Li電位が平均で3.9V以下の正極活物質を用いた場合であっても、充電中にハロゲン化物固体電解質が酸化分解し、それに伴い電池の充放電効率が低下する課題が存在し、その原因がハロゲン化物固体電解質に含まれるIの酸化反応にあることを見出した。具体的には、正極材料中の正極活物質からリチウムと電子が引き抜かれる通常の充電反応に加え、正極活物質と接するIを含むハロゲン化物固体電解質からも電子が引き抜かれる副反応が生じ、副反応に電荷が消費されるため、充放電効率が低下すると考えられる。また、Iを含むハロゲン化物固体電解質の酸化反応に伴い、正極活物質とハロゲン化物固体電解質の間に、リチウムイオン伝導性に乏しい酸化分解層が形成され、正極の電極反応において大きな界面抵抗として機能すると考えられる。この課題を解消するためには、Iを含むハロゲン化物固体電解質への電子授受を抑制し、酸化分解層形成を抑制する必要がある。
【0058】
非特許文献1では、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質など、様々な固体電解質の電位安定性に関する計算結果が示されている。ハロゲン化物固体電解質に関しては、構成するアニオン種によって電位安定性が異なることが示されている。例えば、Brを含むハロゲン化物固体電解質は、4.0Vvs.Li以下の電位安定性を有することが示されている。
【0059】
一方、本発明者らが鋭意検討した結果、計算から導き出される電位安定性の上限が4.0Vvs.Liを下回る固体電解質であっても、それらを正極材料に用いた場合、安定した充放電特性を示すものが存在することを明らかにした。例えば、電位安定性の上限が4.0Vvs.Li以下とされるBrを含むハロゲン化物固体電解質を正極材料に用いた場合、4.0Vvs.Li以上の電圧で充電した場合でも良好な充放電特性を示す一方で、Iを含むハロゲン化物固体電解質を正極材料に用いた場合、著しく充放電が低下することを明らかにした。そのメカニズムの詳細は明らかでないが、Brを含むハロゲン化物固体電解質を正極材料に用いた場合、正極活物質と当該固体電解質が接するごく近傍においては充電中に固体電解質が酸化されるが、酸化生成物の電子伝導性が極めて低いため、固体電解質内部へと反応が継続して進行しない一方、Iを含むハロゲン化物固体電解質を正極材料に用いた場合、固体電解質の酸化生成物が電子伝導性を有するため、正極活物質と当該固体電解質が接する近傍のみで反応が留まらず、固体電解質内部へと反応が継続して進行し、固体電解質の酸化反応に多くの充電電荷が消費される結果、電池の充放電効率が低下すると考えられる。以上の通り、固体電解質を正極材料に用いた際の電池動作に関しては、非特許文献1にて開示される計算結果からのみでは、推測することができない。
【0060】
Iを含むハロゲン化物固体電解質は酸化安定性に乏しいため、正極201とIを含むハロゲン化物固体電解質とが接触する電池においては、充電時に継続的に酸化分解を示す。
【0061】
一方、Iを含まないハロゲン化物固体電解質(すなわち、第1固体電解質材料)は、酸化安定性に優れ、正極201とIを含まないハロゲン化物固体電解質とが接触する電池において、酸化分解を示さない、もしくは酸化分解した場合でも反応が継続しない。
【0062】
また、Iを含むハロゲン化物固体電解質は、Iを含まないハロゲン化物固体電解質よりもイオン導電率に優れる。そのため、以上の構成によれば、電解質層にIを含まないハロゲン化物固体電解質のみを用いた場合と比較し、電池の出力特性を向上することができる。
【0063】
なお、組成式(2)においては、M’は、Y(=イットリウム)を含んでもよい。
【0064】
すなわち、第2固体電解質材料は、金属元素としてYを含んでもよい。
【0065】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0066】
Yを含む第2固体電解質材料として、例えば、LiaMe’bYcX’6(a+mb+3c=6、かつ、c>0を満たす)(Me’:Li、Y以外の金属元素と半金属元素の少なくとも1つ)(m:Me’の価数)の組成式で表される化合物であってもよい。
【0067】
Me’として、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、Nbのいずれか、もしくはこれらの混合物を用いてもよい。
【0068】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0069】
なお、組成式(2)においては、
2.7≦α’≦3、
1≦β’≦1.1、
γ’=6、
が満たされてもよい。
【0070】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0071】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(B1)により表される材料であってもよい。
Li6-3dYdX6 ・・・式(B1)
ここで、組成式(B1)においては、Xは、ClとBrとのうちの少なくとも一方と、Iと、を含む。
【0072】
また、組成式(B1)においては、0<d<2、を満たす。
【0073】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0074】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(B2)により表される材料であってもよい。
Li3YX6 ・・・式(B2)
ここで、組成式(B2)においては、Xは、ClとBrとのうちの少なくとも一方と、Iと、を含む。
【0075】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0076】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(B3)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
MeaCl6-x-yBrxIy ・・・式(B3)
ここで、組成式(B3)においては、Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0077】
また、組成式(B3)においては、
-1<δ<2、
0<a<3、
0<(3-3δ+a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x<6、
0<y≦6、
(x+y)<6、
が満たされる。
【0078】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0079】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(B4)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
MeaCl6-x-yBrxIy ・・・式(B4)
ここで、組成式(B4)においては、Meは、Al、Sc、Ga、Biからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0080】
また、組成式(B4)においては、
-1<δ<1、
0<a<2、
0<(1+δ-a)、
0≦x<6、
0<y≦6、
(x+y)<6、
が満たされる。
【0081】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0082】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(B5)により表される材料
であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
MeaCl6-x-yBrxIy ・・・式(B5)
ここで、組成式(B5)においては、Meは、Zr、Hf、Tiからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0083】
また、組成式(B5)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.5、
0<(3-3δ-a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x<6、
0<y≦6、
(x+y)<6、
が満たされる。
【0084】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0085】
なお、第2固体電解質材料は、下記の組成式(B6)により表される材料
であってもよい。
Li3-3δ
Y1+δ
MeaCl6-x-yBrxIy ・・・式(B6)
ここで、組成式(B6)においては、Meは、Ta、Nbからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0086】
また、組成式(B6)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.2、
0<(3-3δ-2a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x<6、
0<y≦6、
(x+y)<6、
が満たされる。
【0087】
以上の構成によれば、第2固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0088】
なお、第2固体電解質材料として、例えば、Li3YX6、Li2MgX4、Li2FeX4、Li(Al、Ga、In)X4、Li3(Al、Ga、In)X6、など(X:ClとBrとのうちの少なくとも一方と、Iと、を含む)、が用いられうる。
【0089】
なお、第2電解質層102は、第2固体電解質材料を、主成分として、含んでもよい。すなわち、第2電解質層102は、第2固体電解質材料を、例えば、第2電解質層102の全体に対する重量割合で50%以上(50重量%以上)、含んでもよい。
【0090】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0091】
なお、第2電解質層102は、第2固体電解質材料を、例えば、第2電解質層102の全体に対する重量割合で70%以上(70重量%以上)、含んでもよい。
【0092】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0093】
なお、第2電解質層102は、第2固体電解質材料を主成分として含みながら、さらに、不可避的な不純物、または、第2固体電解質材料を合成する際に用いられる出発原料および副生成物および分解生成物など、を含んでいてもよい。
【0094】
なお、第2電解質層102は、第2固体電解質材料を、例えば、混入が不可避的な不純物を除いて、第2電解質層102の全体に対する重量割合で100%(100重量%)、含んでもよい。
【0095】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0096】
なお、第2電解質層102は、第2固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0097】
なお、第2電解質層102は、正極201とは接触せずに位置してもよい。
【0098】
すなわち、本開示の構成では、正極201と、Iを含むハロゲン化物固体電解質を含む第2電解質層102とが、Iを含まないハロゲン化物固体電解質を含む第1電解質層101に隔てられて、直接、接しなくてもよい。
【0099】
以上の構成によれば、Iを含むハロゲン化物固体電解質の酸化を抑制し、電池の充放電効率を向上することができる。
【0100】
正極201は、正極活物質と、電解質材料とを、含む。
【0101】
正極活物質は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。正極活物質として、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物(例えば、Li(NiCoAl)O2、Li(NiCoMn)O2、LiCoO2、など)、遷移金属フッ化物、ポリアニオンおよびフッ素化ポリアニオン材料、および、遷移金属硫化物、遷移金属オキシ硫化物、遷移金属オキシ窒化物、など、が用いられうる。特に、正極活物質として、リチウム含有遷移金属酸化物を用いた場合には、製造コストを安くでき、平均放電電圧を高めることができる。
【0102】
なお、実施の形態1においては、正極活物質は、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウムであってもよい。例えば、正極活物質は、Li(NiCoMn)O2であってもよい。以上の構成によれば、電池のエネルギー密度を、より高めることができる。
【0103】
正極201に含まれる電解質材料は、例えば、固体電解質である。固体電解質として、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、高分子固体電解質、錯体水素化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質(例えば、第1固体電解質材料)など、が用いられうる。
【0104】
硫化物固体電解質としては、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、Li3.25Ge0.25P0.75S4、Li10GeP2S12、など、が用いられうる。また、これらに、LiX(X:F、Cl、Br、I)、Li2O、MOq、LipMOq(M:P、Si、Ge、B、Al、Ga、In、Fe、Znのいずれか)(p、q:自然数)などが、添加されてもよい。
【0105】
酸化物固体電解質としては、例えば、LiTi2(PO4)3およびその元素置換体を代表とするNASICON型固体電解質、(LaLi)TiO3系のペロブスカイト型固体電解質、Li14ZnGe4O16、Li4SiO4、LiGeO4およびその元素置換体を代表とするLISICON型固体電解質、Li7La3Zr2O12およびその元素置換体を代表とするガーネット型固体電解質、Li3NおよびそのH置換体、Li3PO4およびそのN置換体、LiBO2、Li3BO3などのLi-B-O化合物をベースとして、Li2SO4、Li2CO3などが添加されたガラス、ガラスセラミックスなど、が用いられうる。
【0106】
高分子固体電解質としては、例えば、高分子化合物と、リチウム塩との化合物が用いられうる。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有することで、リチウム塩を多く含有することができ、イオン導電率をより高めることができる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、など、が使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で、使用されうる。もしくは、リチウム塩として、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が、使用されうる。
【0107】
錯体水素化物固体電解質としては、例えば、LiBH4-LiI、LiBH4-P2S5など、が用いられうる。
【0108】
なお、正極201は、第1固体電解質材料を含んでもよい。すなわち、正極201に含まれる固体電解質として、第1固体電解質材料を用いてもよい。
【0109】
第1固体電解質材料を用いた場合、酸化安定性に優れるため、電池の充放電効率をより向上することができる。また、電池の熱的安定性を向上し、硫化水素などの有害ガスの発生を抑制することができる。
【0110】
正極201に含まれる電解質材料の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、針状、球状、楕円球状、など、であってもよい。例えば、電解質材料の形状は、粒子であってもよい。
【0111】
例えば、実施の形態1における電解質材料の形状が粒子状(例えば、球状)の場合、メジアン径は、100μm以下であってもよい。
【0112】
メジアン径が100μmより大きいと、正極活物質と電解質材料とが、正極201において良好な分散状態を形成できない可能性が生じる。このため、充放電特性が低下する。
【0113】
また、実施の形態1においては、電解質材料のメジアン径は10μm以下であってもよい。
【0114】
以上の構成によれば、正極201において、正極活物質と電解質材料とが、良好な分散状態を形成できる。
【0115】
また、実施の形態1においては、電解質材料は、正極活物質のメジアン径より小さくてもよい。
【0116】
以上の構成によれば、電極において電解質材料と正極活物質とが、より良好な分散状態を形成できる。
【0117】
正極活物質のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。
【0118】
正極活物質のメジアン径が0.1μmより小さいと、正極201において、正極活物質と電解質材料とが、正極材料において良好な分散状態を形成できない可能性が生じる。この結果、電池の充放電特性が低下する。
【0119】
また、正極活物質のメジアン径が100μmより大きいと、正極活物質内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0120】
正極活物質のメジアン径は、電解質材料のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、正極活物質と電解質材料とが、良好な分散状態を形成できる。
【0121】
正極201に含まれる、正極活物質と電解質材料の体積比率「v:100-v」について、30≦v≦95が満たされてもよい。v<30では、十分な電池のエネルギー密度確保が困難となる可能性がある。また、v>95では、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0122】
正極201の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。なお、正極201の厚みが10μmより薄い場合には、十分な電池のエネルギー密度の確保が困難となる可能性がある。なお、正極201の厚みが500μmより厚い場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0123】
第1電解質層101、第2電解質層102の厚みは、1μm以上かつ300μm以下であってもよい。厚みが1μmより薄い場合には、正極201と負極202とが短絡し、正極201と第2電解質層102とが直接接触する可能性が高まる。また、厚みが300μmより厚い場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0124】
負極202は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。負極202は、例えば、負極活物質を含む。
【0125】
負極活物質には、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物、など、が使用されうる。金属材料は、単体の金属であってもよい。もしくは、金属材料は、合金であってもよい。金属材料の例として、リチウム金属、リチウム合金、など、が挙げられる。炭素材料の例として、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、非晶質炭素、など、が挙げられる。容量密度の観点から、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物、錫化合物、を好適に使用できる。
【0126】
負極202は、電解質材料を含んでもよい。以上の構成によれば、負極202内部のリチウムイオン伝導性を高め、高出力での動作が可能となる。負極202に含まれる電解質材料は、例えば、固体電解質である。固体電解質材料としては、正極201の例示として挙げる材料を用いてもよい。
【0127】
負極活物質粒子のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。負極活物質粒子のメジアン径が0.1μmより小さいと、負極において、負極活物質粒子と電解質材料とが、良好な分散状態を形成できない可能性が生じる。これにより、電池の充放電特性が低下する。また、負極活物質粒子のメジアン径が100μmより大きいと、負極活物質粒子内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0128】
負極活物質粒子のメジアン径は、電解質材料のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、負極活物質粒子と電解質材料との良好な分散状態を形成できる。
【0129】
負極202に含まれる、負極活物質粒子と電解質材料の体積比率「v:100-v」について、30≦v≦95が満たされてもよい。v<30では、十分な電池のエネルギー密度確保が困難となる可能性がある。また、v>95では、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0130】
負極202の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。負極の厚みが10μmより薄い場合には、十分な電池のエネルギー密度の確保が困難となる可能性がある。また、負極の厚みが500μmより厚い場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0131】
正極活物質粒子、負極活物質粒子は、界面抵抗を低減する目的で、被覆材料により被覆されていてもよい。
【0132】
被覆材料としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、高分子固体電解質、錯体水素化物固体電解質などが用いられうる。
【0133】
被覆材料は、酸化物固体電解質であってもよい。
【0134】
酸化物固体電解質は、高電位安定性が高い。このため、酸化物固体電解質を用いることで、充放電効率をより向上することができる。
【0135】
被覆材料として用いられうる酸化物固体電解質としては、例えば、LiNbO3などのLi-Nb-O化合物、LiBO2、Li3BO3などのLi-B-O化合物、LiAlO2などのLi-Al-O化合物、Li4SiO4などのLi-Si-O化合物、Li2SO4、Li4Ti5O12などのLi-Ti-O化合物、Li2ZrO3などのLi-Zr-O化合物、Li2MoO3などのLi-Mo-O化合物、LiV2O5などのLi-V-O化合物、Li2WO4などのLi-W-O化合物などが用いられうる。
【0136】
第1電解質層101と第2電解質層102とのうちの少なくとも1つには、リチウムイオンの授受を容易にし、電池の出力特性を向上する目的で、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、高分子固体電解質、錯体水素化物固体電解質が含まれてもよい。硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、高分子固体電解質、錯体水素化物固体電解質としては、正極201の電解質材料の例示として挙げる材料を用いてもよい。
【0137】
正極201と第1電解質層101と第2電解質層102と負極202とのうちの少なくとも1つには、リチウムイオンの授受を容易にし、電池の出力特性を向上する目的で、非水電解質液、ゲル電解質、イオン液体が含まれてもよい。
【0138】
非水電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶けたリチウム塩と、を含む。非水溶媒としては、環状炭酸エステル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状エーテル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、フッ素溶媒、など、が使用されうる。環状炭酸エステル溶媒の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、など、が挙げられる。鎖状炭酸エステル溶媒の例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、など、が挙げられる。環状エーテル溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、など、が挙げられる。鎖状エーテル溶媒としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、など、が挙げられる。環状エステル溶媒の例としては、γ-ブチロラクトン、など、が挙げられる。鎖状エステル溶媒の例としては、酢酸メチル、など、が挙げられる。フッ素溶媒の例としては、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、フルオロジメチレンカーボネート、など、が挙げられる。非水溶媒として、これらから選択される1種の非水溶媒が、単独で、使用されうる。もしくは、非水溶媒として、これらから選択される2種以上の非水溶媒の組み合わせが、使用されうる。非水電解液には、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、フルオロジメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素溶媒が含まれていてもよい。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、など、が使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で、使用されうる。もしくは、リチウム塩として、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が、使用されうる。リチウム塩の濃度は、例えば、0.5~2mol/リットルの範囲にある。
【0139】
ゲル電解質は、ポリマー材料に非水電解液を含ませたものを用いることができる。ポリマー材料として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、エチレンオキシド結合を有するポリマー、など、が用いられてもよい。
【0140】
イオン液体を構成するカチオンは、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウムなどの脂肪族鎖状4級塩類、ピロリジニウム類、モルホリニウム類、イミダゾリニウム類、テトラヒドロピリミジニウム類、ピペラジニウム類、ピペリジニウム類などの脂肪族環状アンモニウム、ピリジニウム類、イミダゾリウム類などの含窒ヘテロ環芳香族カチオンなどであってもよい。イオン液体を構成するアニオンは、PF6
-、BF4
-、SbF6
-、AsF6
-、SO3CF3
-、N(SO2CF3)2
-、N(SO2C2F5)2
-、N(SO2CF3)(SO2C4F9)-、C(SO2CF3)3
-などであってもよい。また、イオン液体はリチウム塩を含有してもよい。
【0141】
正極201と第1電解質層101と第2電解質層102と負極202とのうちの少なくとも1つには、粒子同士の密着性を向上する目的で、結着剤が含まれてもよい。結着剤は、電極を構成する材料の結着性を向上するために、用いられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、など、が挙げられる。また、結着剤としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体が用いられうる。また、これらのうちから選択された2種以上が混合されて、結着剤として用いられてもよい。
【0142】
正極201と負極202との少なくとも1つは、電子導電性を高める目的で、導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、例えば、天然黒鉛または人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物、など、が用いられうる。炭素導電助剤を用いた場合、低コスト化を図ることができる。
【0143】
なお、実施の形態1における電池は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型、など、種々の形状の電池として、構成されうる。
【0144】
<第1固体電解質材料と第2固体電解質材料の製造方法>
実施の形態1における第1固体電解質材料と第2固体電解質材料は、例えば、下記の方法により、製造されうる。
【0145】
目的とする組成の配合比となるような二元系ハロゲン化物の原料粉を用意する。例えば、Li3YCl6を作製する場合には、LiClとYCl3を、3:1のモル比で用意する。
【0146】
このとき、原料粉の種類を選択することで、上述の組成式における「M」と「Me」と「X」とを決定することができる。また、原料と配合比と合成プロセスを調整することで、上述の値「α」と「β」と「γ」と「d」と「δ」と「a」と「x」と「y」とを調整できる。
【0147】
原料粉をよく混合した後、メカノケミカルミリングの方法を用いて原料粉同士を混合・粉砕・反応させる。もしくは、原料粉をよく混合した後、真空中で焼結してもよい。
【0148】
これにより、前述したような結晶相を含む固体電解質材料が得られる。
【0149】
なお、固体電解質材料における結晶相の構成(結晶構造)は、原料粉どうしの反応方法および反応条件の調整により、決定することができる。
【実施例】
【0150】
以下、実施例および比較例を用いて、本開示の詳細が説明される。
【0151】
≪実施例1≫
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiClとYCl3とを、モル比でLiCl:YCl3=2.7:1.1となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-5型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料Li2.7Y1.1Cl6の粉末を得た。
【0152】
[第2固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiBrとLiClとLiIとYCl3とYBr3とを、モル比でLiBr:LiCl:LiI:YCl3:YBr3=1:1:4:1:1となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第2固体電解質材料Li3YBr2Cl2I2の粉末を得た。
【0153】
[正極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、Li2.7Y1.1Cl6、正極活物質Li(NiCoMn)O2(以下、NCMと表記する)を、30:70の重量比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例1の正極材料を作製した。
【0154】
[二次電池の作製]
上述の実施例1の正極材料、および第1電解質層に用いる第1固体電解質材料としてLi2.7Y1.1Cl6、第2電解質層に用いる第2固体電解質材料としてLi3YBr2Cl2I2をそれぞれ用いて、下記の工程を実施した。
【0155】
まず、絶縁性外筒の中で、正極材料を10mg、第1固体電解質材料Li2.7Y1.1Cl6を80mg、第2固体電解質材料Li3YBr2Cl2I2を80mgの順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極と固体電解質層を得た。
【0156】
次に、正極側に、アルミニウム粉末を20mg積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極側に集電体を形成した。
【0157】
次に、固体電解質層の正極と接する側とは反対側に、金属In(厚さ200μm)、金属Li(厚さ300μm)、金属In(厚さ200μm)の順に積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、正極、固体電解質層、負極からなる積層体を作製した。
【0158】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0159】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、電池を作製した。
【0160】
以上により、実施例1の電池を作製した。
【0161】
≪実施例2≫
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiBrとYBr3とを、モル比でLiBr:YBr3=3:1となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-5型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料Li3YBr6の粉末を得た。
【0162】
[正極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、Li3YBr6、正極活物質NCMを、30:70の重量比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例2の正極材料を作製した。
【0163】
[二次電池の作製]
上述の実施例2の正極材料、および第1電解質層に用いる第1固体電解質材料としてLi3YBr6を用いたこと以外は、実施例1と同じ工程を実施し、実施例2の電池を作製した。
【0164】
≪実施例3≫
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiClとYCl3とZrCl4とを、モル比でLiCl:YCl3:ZrCl4=2.5:0.5:0.5となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-5型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料Li2.5Y0.5Zr0.5Cl6の粉末を得た。
【0165】
[正極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、Li2.5Y0.5Zr0.5Cl6、正極活物質NCMを、30:70の重量比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例3の正極材料を作製した。
【0166】
[二次電池の作製]
上述の実施例3の正極材料、および第1電解質層に用いる第1固体電解質材料としてLi2.5Y0.5Zr0.5Cl6を用いたこと以外は、実施例1と同じ工程を実施し、実施例3の電池を作製した。
【0167】
≪実施例4≫
[第2固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiIとYBr3とを、モル比でLiI:YBr3=2.7:1.1となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-5型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第2固体電解質材料Li
2.7
Y
1.1
Br
3.3
I
2.7
の粉末を得た。
【0168】
[二次電池の作製]
第2電解質層に用いる第2固体電解質材料としてLi
2.7
Y
1.1
Br
3.3
I
2.7
を用いたこと以外は、実施例1と同じ工程を実施し、実施例4の電池を作製した。
【0169】
≪比較例1≫
[二次電池の作製]
第1電解質層を用いず、第2電解質層に用いる第2固体電解質材料としてLi3YBr2Cl2I2を160mg用いたこと以外は、実施例1と同じ工程を実施し、比較例1の電池を作製した。
【0170】
≪比較例2≫
[二次電池の作製]
第1電解質層を用いず、第2電解質層に用いる第2固体電解質材料としてLi3YBr2Cl2I2を160mg用いたこと以外は、実施例2と同じ工程を実施し、比較例2の電池を作製した。
【0171】
≪比較例3≫
[二次電池の作製]
第1電解質層を用いず、第2電解質層に用いる第2固体電解質材料としてLi3YBr2Cl2I2を160mg用いたこと以外は、実施例3と同じ工程を実施し、比較例3の電池を作製した。
【0172】
≪比較例4≫
[二次電池の作製]
第1電解質層を用いず、第2電解質層に用いる第2固体電解質材料としてLi
2.7
Y
1.1
Br
3.3
I
2.7
を160mg用いたこと以外は、実施例4と同じ工程を実施し、比較例4の電池を作製した。
【0173】
[充放電試験]
上述の実施例1~4および比較例1~4の電池をそれぞれ用いて、以下の条件で、充放電試験が実施された。
【0174】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0175】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値70μAで、定電流充電し、電圧3.7Vで充電を終了した。
【0176】
次に、同じく0.05Cレートとなる電流値70μAで、放電し、電圧1.9Vで放電を終了した。
【0177】
なお、実施例、比較例の電池の負極に用いるIn-Liの合金は、0.6Vvs.Liの電位を示す。すなわち、実施例、比較例における電池の充電終止電圧3.7V、放電終止電圧1.9Vは、Li基準の電位に換算すると、それぞれ4.3Vvs.Li、2.5Vvs.Liとなる。
【0178】
以上により、上述の実施例1~4および比較例1~4の電池のそれぞれの初回充放電効率(=初回放電容量/初回充電容量)を得た。この結果は、下記の表1に示される。
【0179】
【0180】
≪考察≫
表1に示す比較例1の結果から、Iを含む第2固体電解質材料が、正極と直接接触する場合、第2固体電解質材料が酸化分解し、それに伴い電池の充放電効率が著しく低下することが確認された。
【0181】
比較例1から3の結果から、正極材料に用いる固体電解質材料を変更した場合でも、Iを含む第2固体電解質材料が正極と直接接触する場合、第2固体電解質材料の酸化分解を抑制できず、それに伴い電池の充放電効率が著しく低下することが確認された。
【0182】
比較例1と4の結果から、第2電解質層に用いるIを含む第2固体電解質材料について、組成または構造が異なる場合であっても同様に充放電効率が著しく低下することが確認された。すなわち、第2固体電解質材料がIを含む場合は、組成または構造に依存せず、第2固体電解質材料の酸化分解、およびそれに伴う電池の充放電効率低下という課題が生じることが確認された。
【0183】
実施例1と比較例1の結果から、第1電解質層にIを含まない第1固体電解質材料を用いることにより、第2電解質層のIを含む第2固体電解質材料の酸化分解を抑制でき、それに伴い電池の充放電効率を向上できることが確認された。
【0184】
実施例1から3、比較例1から3の結果から、第1電解質層に用いるIを含まない第1固体電解質材料について、組成または構造が異なる場合であっても、第2電解質層のIを含む第2固体電解質材料の酸化分解を抑制でき、それに伴い電池の充放電効率を向上できることが確認された。
【0185】
実施例1と4、比較例1と4の結果から、第2電解質層に用いるIを含む第2固体電解質材料について、組成または構造が異なる場合であっても、第1電解質層にIを含まない第1固体電解質材料を用いることで、電池の充放電効率を向上できることが確認された。
【0186】
実施例2の結果から、非特許文献1では電位安定性が4.0Vvs.Li以下とされるBrを含むハロゲン化物固体電解質が直接正極に接する電池において、4.3Vvs.Liの電位で充電した場合であっても、高い充放電効率を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本開示の電池は、例えば、全固体リチウム二次電池などとして、利用されうる。
【符号の説明】
【0188】
1000 電池
201 正極
100 電解質層
101 第1電解質層
102 第2電解質層
202 負極