(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】掃除ロボット
(51)【国際特許分類】
B08B 1/04 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
B08B1/04
(21)【出願番号】P 2019036419
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-09-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】林 潔
(72)【発明者】
【氏名】廣田 照人
(72)【発明者】
【氏名】永田 貴之
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-013295(JP,A)
【文献】特開2005-248591(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106272470(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106337480(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109124543(CN,A)
【文献】特開2012-115629(JP,A)
【文献】特開2015-110410(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102513256(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00- 3/14
A47K 17/00
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を掃除する掃除ロボットであって、
ブラシが取り付けられる先端部を有し、水平方向と平行な第1方向に延びるアームと、
前記アームと接続される駆動部とを備え、
前記駆動部は、前記アームを前記第1方向に移動させる第1機構と、前記アームを前記第1方向に直交する鉛直方向に平行な第2方向に移動させる第2機構と、前記アームを前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれに直交する第3方向に移動させる第3機構とを含み、
前記第2機構は、前記第2方向に延びる一対のスライダを含み、
前記第3機構は、前記第3方向に延びる形状を有し、前記一対のスライダに対して前記第2方向にスライド可能に取り付けられ、それによって、前記第3機構の2点が、前記第2機構と接点を持って構成され、
前記アームは、前記先端部の向きが切り替え可能に構成され、
前記第1方向に正対する前記対象物の第1対象面を掃除する場合と、前記第2方向に正対する前記対象物の第2対象面を掃除する場合とで、前記先端部の向きを切り替える制御部をさらに備える掃除ロボット。
【請求項2】
前記アームは、関節を有し、
前記制御部は、前記第1対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第1対象面に正対させ、前記第2対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第2対象面に正対させる請求項1記載の掃除ロボット。
【請求項3】
前記アームは、前記第1方向に延びる第1部材と、前記第1部材に対して前記関節を介して回動可能に取り付けられ、前記先端部を含む第2部材とを備え、
前記関節は、前記第2部材を前記第1方向に延ばす第1姿勢と、前記第2部材を前記第2方向に延ばす第2姿勢とが切り換え可能に構成されている請求項2記載の掃除ロボット。
【請求項4】
前記アームの長手方向周りに前記ブラシを回転させるブラシ駆動部をさらに備える請求項1~3のいずれかに記載の掃除ロボット。
【請求項5】
前記ブラシ駆動部は、前記ブラシの回転方向を交互に切り替えることで前記ブラシを振動させる請求項4記載の掃除ロボット。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第1方向に固定する請求項1~5のいずれかに記載の掃除ロボット。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第2方向に固定する請求項1~6のいずれかに記載の掃除ロボット。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1対象面の掃除と前記第2対象面の掃除とを切り替える際に、前記先端部の向きを切り替える請求項1~7のいずれかに記載の掃除ロボット。
【請求項9】
前記ブラシの正面から洗剤を吐出させる洗剤吐出部と、
前記ブラシの正面から水を噴射させる水吐出部とをさらに備え、
前記制御部は、
前記洗剤吐出部を制御して前記対象物に前記洗剤を塗布する洗剤塗布処理と、前記水吐出部を制御して前記対象物に塗布された前記洗剤を前記水で洗い流すすすぎ処理とが実行可能であり、
前記第1対象面を掃除する場合、前記洗剤塗布処理の実行後、前記すすぎ処理を実行しない請求項1~8のいずれかに記載の掃除ロボット。
【請求項10】
前記ブラシの正面から洗剤を吐出させる洗剤吐出部をさらに備え、
前記制御部は、前記第3方向に正対する第3対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第1方向に向け、前記第3方向から見て前記第3対象面と前記ブラシとを所定距離離間した状態にして、前記洗剤吐出部に前記洗剤を塗布させる請求項1~9のいずれかに記載の掃除ロボット。
【請求項11】
前記制御部は、前記対象物の形状に基づいて予め設定された前記ブラシの軌跡情報にしたがって前記駆動部を駆動することで、前記ブラシを移動させる請求項1~10のいずれかに記載の掃除ロボット。
【請求項12】
前記対象物を撮影するカメラをさらに備え、
前記制御部は、前記カメラで撮影された画像から前記対象物の予め定められた特徴部を抽出し、抽出した前記特徴部の位置と、前記掃除ロボットの座標系が前記対象物に対してずれていない場合の前記特徴部に対して予め定められた位置とを比較することで、前記座標系の前記対象物に対するずれを算出し、前記ずれに基づいて前記軌跡情報を補正する請求項11記載の掃除ロボット。
【請求項13】
前記対象物は、男子用便器である請求項1~12のいずれかに記載の掃除ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を掃除する掃除ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自律的に移動しながら床の掃除を行う掃除ロボットが知られている。例えば、特許文献1には、電動モータを用いて3つの回転ブラシの回転方向と3つの回転ブラシのそれぞれの回転軸の床面に対する傾斜角とを制御し、回転方向と回転角度とに応じて変化する3つの回転ブラシと床面との間の回転摩擦力を利用することによって床面を磨きながら所望の方向に移動する清掃装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の清掃装置は、向きの異なる複数の対象面に応じてブラシの向きを変更することについての開示がないため、対象面の汚れを十分に除去できないという課題がある。
【0005】
本開示の目的は、向きの異なる複数の対象面を備える対象物の汚れを十分に除去することができる掃除ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、対象物を掃除する掃除ロボットであって、
ブラシが取り付けられる先端部を有し、水平方向と平行な第1方向に延びるアームと、
前記アームと接続される駆動部とを備え、
前記駆動部は、前記アームを前記第1方向に移動させる第1機構と、前記アームを前記第1方向に直交する鉛直方向に平行な第2方向に移動させる第2機構と、前記アームを前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれに直交する第3方向に移動させる第3機構とを含み、
前記アームは、前記先端部の向きが切り替え可能に構成され、
前記第1方向に正対する前記対象物の第1対象面を掃除する場合と、前記第2方向に正対する前記対象物の第2対象面を掃除する場合とで、前記先端部の向きを切り替える制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、向きの異なる複数の対象面を備える対象物の汚れを十分に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態に係る掃除ロボットの主要部を示した図である。
【
図2】Y方向の下方にスライドされたXスライダを示す図である。
【
図3】Y方向の上方にスライドされたXスライダを示す図である。
【
図4】方向の右端にスライドされたZスライダを示す図である。
【
図5】X方向の左端にスライドされたZスライダを示す図である。
【
図6】Zスライダの後端にスライドされたアームを示す図である。
【
図7】Zスライダの前端にスライドされたアームを示す図である。
【
図9】第1態様に係るアームのX方向視の図である。
【
図10】第1態様に係るアームのX方向視の図である。
【
図11】第1態様に係るアームのX方向視の図である。
【
図12】第2態様に係るアームのX方向視の図である。
【
図13】第2態様に係るアームのX方向視の図である。
【
図16】アームの先端部が+X方向に向いた状態を示す図である。
【
図17】アームの先端部が-Y方向に向いた状態を示す図である。
【
図18】右側面を掃除する場合のブラシの動作を説明する図である。
【
図19】正面を掃除する場合のブラシの動作を説明する図である。
【
図20】掃除ロボットに取り付けられたカバーを説明する図である。
【
図21】カバーがスライドされる様子を説明する図である。
【
図22】カバーがスライドされる様子を説明する図である。
【
図23】カバーがスライドされる様子を説明する図である。
【
図24】本開示に係る掃除ロボットのさらに詳細な外観図である。
【
図25】本開示に係る掃除ロボットのブロック図である。
【
図26】本開示の実施の形態に係る掃除ロボットの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図27】本開示の実施の形態にかかる掃除ロボットの処理の他の一例を示すフローチャートである。
【
図29】掃除シーケンスにおいて順次実行される5つの処理を示す図である。
【
図30】
図29の掃除シーケンスに引き続いて順次実行される5つの処理を示す図である。
【
図31】
図30の掃除シーケンスに引き続いて順次実行される5つの処理を示す図である。
【
図32】
図31の掃除シーケンスに引き続いて順次実行される4つの処理を示す図である。
【
図38】処理P10,P11におけるGコードを示す図である。
【
図39】処理P10,P11におけるGコードを示す図である。
【
図41】処理P13、処理P14、処理P15のGコードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示に至る経緯)
本発明者は、駅及び空港などの公共施設にある公衆トイレに設置された便器を自律的に掃除する掃除ロボットについて検討している。具体的には、洗剤及び水が吐出可能なブラシが先端部に取り付けられた3軸に移動可能なアームを備え、便器の内面を対象面とし、当該対象面にブラシを当接させた状態でブラシを移動させることで便器を掃除する掃除ロボットを検討している。
【0010】
公衆トイレに設置された便器は、日本式、西洋式などの様々な形式がある。これらの便器の中でも特に男性が小便をする男子用便器は、人物に正対する第1対象面、及び排水口が設けられた水平方向に延びる第2対象面など、向きの異なる複数の対象面を含んでいる。
【0011】
したがって、アームの先端部の向きが固定されていると、対象面によってはブラシの正面を当接させることができないケースが発生する。この場合、ブラシが対象面に当接する力が不足し、当該対象面の汚れを十分に落せない可能性がある。
【0012】
上述の特許文献1には、上面視において正三角形の頂点に回転可能に配置された3つのブラシを備え、これら3つブラシのそれぞれが回転軸に直交する傾斜軸を備える清掃装置が開示されている。
【0013】
しかし、特許文献1の清掃装置は床面を磨くための清掃装置である。また、特許文献1において傾斜軸に対してブラシを傾斜させているのは、ブラシと床面との間で高摩擦領域を形成させることによって、所望の方向に清掃装置を移動させるためであって、対象面の向きに応じてブラシを傾斜させるためではない。したがって、特許文献1には、向きの異なる複数の対象面を磨くことは全く想定されていない。その結果、特許文献1は、向きの異なる複数の対象面を備える対象物の汚れを十分に落とすことができない。
【0014】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、向きの異なる複数の対象面を備える対象物の汚れを十分に落とすことができる掃除ロボットを提供することを目的とする。
【0015】
本開示の一態様は、対象物を掃除する掃除ロボットであって、
ブラシが取り付けられる先端部を有し、水平方向と平行な第1方向に延びるアームと、
前記アームと接続される駆動部とを備え、
前記駆動部は、前記アームを前記第1方向に移動させる第1機構と、前記アームを前記第1方向に直交する鉛直方向に平行な第2方向に移動させる第2機構と、前記アームを前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれに直交する第3方向に移動させる第3機構とを含み、
前記アームは、前記先端部の向きが切り替え可能に構成され、
前記第1方向に正対する前記対象物の第1対象面を掃除する場合と、前記第2方向に正対する前記対象物の第2対象面を掃除する場合とで、前記先端部の向きを切り替える制御部をさらに備える。
【0016】
本構成によれば、相互に直交する第1方向、第2方向、及び第3方向に移動可能に構成されたアームを備え、このアームの先端部にはブラシが取り付けられているため、対象面に沿ってブラシを任意に移動できる。
【0017】
ここで、アームは先端部の向きが、第1方向に正対する第1対象面を掃除する場合と第2方向に正対する第2対象面を掃除する場合とで切り替えられる。そのため、対象面に対して適切な向きにブラシを向けることができ、対象面に対して適切な力でブラシを当接させることができる。その結果、本構成は、向きの異なる複数の対象面を備える対象物の汚れを十分に落とすことができる。
【0018】
上記態様において、前記アームは、関節を有し、
前記制御部は、前記第1対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第1対象面に正対させ、前記第2対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第2対象面に正対させてもよい。
【0019】
本構成によれば、第1対象面を掃除する場合、アームの先端部が第1対象面に正対されるため、第1対象面に対してブラシの正面を向けることができる。また、第2対象面を掃除する場合、アームの先端部が第2対象面に正対されるため、第2対象面に対してブラシの正面を向けることができる。これにより、第1対象面及び第2対象面をそれぞれに対してブラシを適切な力で当接させ、第1対象面及び第2対象面の汚れを十分に落とすことができる。
【0020】
上記態様において、前記アームは、前記第1方向に延びる第1部材と、前記第1部材に対して前記関節を介して回動可能に取り付けられ、前記先端部を含む第2部材とを備え、
前記関節は、前記第2部材を前記第1方向に延ばす第1姿勢と、前記第2部材を前記第2方向に延ばす第2姿勢とが切り換え可能に構成されてもよい。
【0021】
本構成によれば、関節は第2部材を第1方向に延ばす第1姿勢と、第2部材を第2方向に延ばす第2姿勢とが切り替え可能に構成されている。そのため、第1姿勢をとることで第1対象面にブラシの正面を正対させ、第2姿勢をとることで第2対象面にブラシの正面を正対させることができる。
【0022】
上記態様において、前記アームの長手方向周りに前記ブラシを回転させるブラシ駆動部をさらに備えてもよい。
【0023】
本構成によれば、ブラシはアームの長手方向周りに回転されるため、ブラシを回転させながら対象面を洗浄することができる。
【0024】
上記態様において、前記ブラシ駆動部は、前記ブラシの回転方向を交互に切り替えることで前記ブラシを振動させてもよい。
【0025】
本構成によれば、ブラシの回転方向を交互に切り替えながら対象面が洗浄されるため、ブラシを一方向に回転させる場合に比べて、ブラシによる液体の飛び散りを抑制できる。
【0026】
上記態様において、前記制御部は、前記第1対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第1方向に固定してもよい。
【0027】
本構成によれば、第1対象面を掃除する場合、アームの先端部の向きが第1方向に固定されるため、アームの先端部の向きを固定状態に維持できる。その結果、第1対象面に対してブラシを適切な力で当接させることができ、第1対象面の汚れを十分に除去できる。
【0028】
上記態様において、前記制御部は、前記第2対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第2方向に固定してもよい。
【0029】
本構成によれば、第2対象面を掃除する場合、アームの先端部の向きが第2方向に固定されるため、アームの先端部の向きを固定状態に維持できる。その結果、第2対象面に対して適切な力でブラシを当接させることができ、第2対象面の汚れを十分に除去できる。
【0030】
上記態様において、前記制御部は、前記第1対象面の掃除と前記第2対象面の掃除とを切り替える際に、前記先端部の向きを切り替えてもよい。
【0031】
本構成によれば、第1対象面の掃除と第2対象面の掃除とを切り替える場合において、アームの先端部の向きが切り替えられるため、第1対象面を掃除する場合及び第2対象面を掃除する場合のそれぞれにおいてアームの先端部の向きを固定状態に維持できる。その結果、第1対象面と第2対象面とのそれぞれに対して適切な力でブラシを当接させることができ、第1対象面と第2対象面との汚れを十分に落とすことができる。
【0032】
上記態様において、前記ブラシの正面から洗剤を吐出させる洗剤吐出部と、
前記ブラシの正面から水を噴射させる水吐出部とをさらに備え、
前記制御部は、
前記洗剤吐出部を制御して前記対象物に前記洗剤を塗布する洗剤塗布処理と、前記水吐出部を制御して前記対象物に塗布された前記洗剤を前記水で洗い流すすすぎ処理とが実行可能であり、
前記第1対象面を掃除する場合、前記洗剤塗布処理の実行後、前記すすぎ処理を実行しなくてもよい。
【0033】
男子用便器は、人物の立ち去りを検知して第1対象面に自動的に水を流す自動洗浄機能を備えるものが多い。このような便器においては、第1対象面に塗布した洗剤は、自動洗浄機能によって洗い流される。
【0034】
そこで、本態様は、第1対象面を掃除する場合、洗剤塗布処理の完了後、すすぎ処理を実行しないことにした。これにより、すすぎ処理を実行しなくても第1対象面に塗布した洗剤を洗い流すことができ、処理ステップ数の削減を図ることができる。
【0035】
上記態様において、前記ブラシの正面から洗剤を吐出させる洗剤吐出部をさらに備え、
前記制御部は、前記第3方向に正対する第3対象面を掃除する場合、前記先端部の向きを前記第1方向に向け、前記第3方向から見て前記第3対象面と前記ブラシとを所定距離離間した状態にして、前記洗剤吐出部に前記洗剤を塗布させてもよい。
【0036】
第3対象面は第3方向に正対するため、第3方向から見てブラシを第3対象面に進入させてブラシの正面を第1対象面に近づけた状態でブラシの正面から洗剤を吐出すると、第3対象面の全域に洗剤を塗布することができない可能性がある。本態様によれば、アームの先端部の向きを第1方向に向けた状態で、第3方向から見て第3対象面とブラシとが所定距離離間した状態にされて、洗剤が塗布されるため、第3対象面の全域に洗剤を十分に塗布できる。
【0037】
上記態様において、前記制御部は、前記対象物の形状に基づいて予め設定された前記ブラシの軌跡情報にしたがって前記駆動部を駆動することで、前記ブラシを移動させてもよい。
【0038】
本態様によれば、ブラシの軌跡情報にしたがってブラシが移動されるため、磨き残しがないようにブラシを移動させることができる。
【0039】
上記態様において、前記対象物を撮影するカメラをさらに備え、
前記制御部は、前記カメラで撮影された画像から前記対象物の予め定められた特徴部を抽出し、抽出した前記特徴部の位置と、前記掃除ロボットの座標系が前記対象物に対してずれていない場合の前記特徴部に対して予め定められた位置とを比較することで、前記座標系の前記対象物に対するずれを算出し、前記ずれに基づいて前記軌跡情報を補正してもよい。
【0040】
本構成によれば、掃除ロボットの座標系の対象物に対するずれに基づいて軌跡情報が補正されるため、対象面に対してブラシを正確に位置決めすることができる。
【0041】
上記態様において、前記対象物は、男子用便器であってもよい。
【0042】
本構成によれば、男子用便器の汚れを十分に落とすことができる。
【0043】
本開示は、このような掃除ロボットに含まれる特徴的な各構成をコンピュータに実行させるプログラム、或いは方法として実現することもできる。また、このようなプログラムを、CD-ROM等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【0044】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0045】
(実施の形態)
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態に係る掃除ロボットについて説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係る掃除ロボット1の主要部を示した図である。本明細書において、掃除ロボット1の上方を+Y方向、下方を-Y方向と呼び、+Y方向及び-Y方向を総称してY方向と呼ぶ。また、掃除ロボット1の前方を+Z方向、後方を-Z方向と呼び、+Z方向及び-Z方向を総称してZ方向と呼ぶ。また、+Z方向視で左方を+X方向、右方を-X方向と呼び、+X方向及び-X方向を総称してX方向と呼ぶ。
【0046】
掃除ロボット1は、便器100の正面に正対し、ブラシ10で便器100の内面などを磨くことによって便器100を掃除する。便器100は、男性が小便をするために用いられる男子用便器である。掃除ロボット1は男子用便器を掃除するのに好適であるが、大便及び小便が可能な洋式便器又は和式便器にも掃除可能である。以下では、掃除ロボット1は、男子用便器を掃除する場合を例に挙げて説明する。
【0047】
X方向、Y方向、及びZ方向は、相互に直交する。Z方向は水平方向と平行な第1方向の一例であり、Y方向は第1方向に直交する鉛直方向に平行な第2方向の一例であり、X方向は第1方向及び第2方向のそれぞれに直交する第3方向の一例である。
【0048】
掃除ロボット1は、一対のYスライダ2と、Xスライダ3と、Zスライダ4と、アーム5と、キャスター6と、水平フレーム7と、垂直フレーム8とを備える。一対のYスライダ2、Xスライダ3、及びZスライダ4は駆動部の一例である。Zスライダ4は、アーム5を第1方向に移動させる第1機構の一例であり、一対のYスライダ2はアーム5を第2方向に移動させる第2機構の一例であり、Xスライダ3はアーム5を第3方向に移動させる第3機構の一例である。
【0049】
水平フレーム7は、掃除ロボット1の底面を構成する四角形の枠体の形状を持つ。水平フレーム7は枠体の他、平面形状であってもよく、その形状は特に限定はされない。垂直フレーム8は、水平フレーム7に立設されY方向に延びる一対の鉛直部材と一対の鉛直部材の先端部を繋ぐX方向に平行な水平部材とを含む。垂直フレーム8は、一対の鉛直部材と水平部材とで構成されるとしたが、これは一例であり、平面状の部材で構成されてもよいく、その形状は特に限定はされない。
【0050】
一対のYスライダ2は、それぞれ、アーム5をY方向にスライドさせための部材であり、Y方向に延びる形状を有する。一対のYスライダ2は、垂直フレーム8を構成する一対の鉛直部材のそれぞれにおいて+Z方向側の面に取り付けられている。
【0051】
キャスター6は、掃除ロボット1をスライドさせるための部材であり、水平フレーム7の裏面の4隅に取り付けられている。ここでは、キャスター6の個数は4つとしたが、これは一例であり、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0052】
Xスライダ3は、アーム5をY方向にスライドさせるための部材である。Xスライダ3は、X方向に延びる形状を有し、一対のYスライダ2に対してY方向にスライド可能に取り付けられている。また、Xスライダ3はZスライダ4の上面に固定状態で取り付けられた三角柱状のホルダ41がX方向にスライド可能に取り付けられている。これにより、Xスライダ3は、Zスライダ4をX方向にスライドさせることにより、アーム5をX方向にスライドさせることが可能となる。
【0053】
Zスライダ4は、アーム5をZ方向にスライドさせるための部材である。Zスライダ4はZ方向に延びる形状を有し、下面にはアーム5がZ方向にスライド可能に取り付けられている。
【0054】
アーム5は+Z方向に延びる形状を有する。アーム5は、先端部5Aにブラシ10が取り付けられ、基端部にZスライダ4が取り付けられている。アーム5は関節を有し、先端部5Aの向きが切り替え可能に構成されている。先端部5Aは、アーム5の先端に位置する面である。
【0055】
ブラシ10はアーム5の先端部5Aにおいて取り外し可能に取り付けられている。また、ブラシ10はアーム5の先端部5Aにおいてアーム5の長手方向周りに回転可能に取り付けられている。ブラシ10は、ドーム形状を有し、アーム5によって便器100の内面に当接され、内面の全域を移動することで内面に付着した汚れを除去する。
【0056】
図2はY方向の下方にスライドされたXスライダ3を示す図であり、
図3はY方向の上方にスライドされたXスライダ3を示す図である。
図2及び
図3に示すように、Xスライダ3は、一対のYスライダ2の下端から上端までスライドすることができる。これにより、アーム5は、一対のYスライダ2の上端から下端までの間の任意の位置に位置決めされる。
【0057】
図4はX方向の右端にスライドされたZスライダ4を示す図であり、
図5はX方向の左端にスライドされたZスライダ4を示す図である。
図4及び
図5に示すように、Zスライダ4は、ホルダ41を介してXスライダ3にスライド可能に取り付けられているため、Xスライダ3の左端から右端までスライドすることができる。これにより、アーム5は、Xスライダ3の左端から右端までの間の任意の位置に位置決めされる。
【0058】
図6はZスライダ4の後端にスライドされたアーム5を示す図であり、
図7はZスライダ4の前端にスライドされたアーム5を示す図である。
図6及び
図7に示すように、アーム5は、Zスライダ4の前端から後端までの間の任意の位置に位置決めされる。以上より、アーム5はX方向、Y方向、及びZ方向の3つの自由度で任意の位置に位置決め可能に構成されていることが分かる。
【0059】
Xスライダ3、一対のYスライダ2、及びZスライダ4は、それぞれ
図8に示すスライド機構80によって構成されている。
図8はスライド機構80の構成の一例を示す図である。なお、
図8において中央の図はスライド機構の全体構成を示す図であり、右下の図は中央に示すスライド機構80を810方向から見たときの断面図である。
【0060】
スライド機構80は、スライド機構80の長手方向に延びるボールねじ軸807と、ボールねじ軸807に螺合するスライドブロック803と、スライドブロック803を前記長手方向に案内するガイドレール805と、ガイドレール805を覆うダストカバー802とを備える。さらに、スライド機構80は、ダストカバー802の第1端に取り付けられたハウジング809と、ダストカバー802の第2端に取り付けられたモータブラケット800と、モータブラケット800に取り付けらたカップリングカバー801とを備えている。ボールねじ軸807は表面に形成されたねじ溝を備え、ハウジング809の内壁及びモータブラケット800の内壁に対して回転可能に取り付けられている。
【0061】
スライドブロック803は、前記長手方向の両端に取り付けられた一対のサイドシール806を備える、ほぼ直方体の形状を備えている。一対のサイドシール806の中央には、ボールねじ軸807を通す孔が設けられている。これにより、ボールねじ軸807はスライドブロック803を貫通する。一対のサイドシール806の一方にはボールねじ軸807にグリスを注入するグリスニップル804が取り付けられている。ハウジング809の内壁には、スライドブロック803が前記第1端側にスライドされたときのスライドブロック803とハウジング809との衝撃を緩和するダンパ808が設けられている。また、モータブラケット800の内壁にも図略のダンパが設けられている。
【0062】
モータブラケット800にはボールねじ軸807を回転させるためのモータ(図略)が取り付けられる。このモータが第1回転方向に回転することによってボールねじ軸807が第1回転方向に回転すると、ボールねじ軸807に裸合するスライドブロック803は前記長手方向の前記第1端側の方向にスライドする。一方、このモータが第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転することによってボールねじ軸807が第2回転方向に回転すると、ボールねじ軸807に裸合するスライドブロック803は前記長手方向の前記第2端側の方向にスライドする。
【0063】
図8の右下図に示すように、スライドブロック803は、810方向から見て四角形の形状を有し、中央部にボールねじ軸807が貫通していることが分かる。ダストカバー802は、810方向から見て、上側が開口するようにスライドブロック803を覆う断面形状を有している。
【0064】
スライドブロック803の上面には、サブテーブル811が取り付けられている。サブテーブル811は、810方向から見て上面に凹部を備え、凹部には上面カバー822が取り付けられている。サブテーブル811は、スライドブロック803と共に前記長手方向にスライドする。
【0065】
スライド機構80が一対のYスライダ2を構成する場合、サブテーブル811にはXスライダ3の端部が取り付けられる。スライド機構80がXスライダ3を構成する場合、サブテーブル811にはホルダ41が取り付けられる。スライド機構80がZスライダ4を構成する場合、サブテーブル811にはアーム5の基端部が取り付けられる。
【0066】
なお、
図8では、スライド機構80は、ボールねじ軸807によりスライドブロック803をスライドさせるねじ式のスライド機構で構成されているが、これは一例であり、無端ベルトによってスライドブロック803をスライドさせるベルト式のスライド機構で構成されてもよい。
【0067】
また、一対のYスライダ2、Xスライダ3、及びZスライダ4は、それぞれ、
図8に示すスライド機構80が複数段で構成された多段式のスライド機構で構成されてもよい。多段式のスライド機構は、例えば、第1スライド機構と第2スライド機構とで構成される。第1スライド機構及び第2スライド機構はそれぞれ
図8に示すスライド機構で構成されている。
【0068】
第1スライド機構のサブテーブル811には、第2スライド機構が取り付けられている。第1スライド機構においてスライドブロック803が、例えば+X方向にスライドされるとそれに連動して第2スライド機構が+X方向にスライドされる。そして、第1スライド機構においてスライドブロック803が、例えば+X方向の最大可動位置にスライドされると、次に第2スライド機構のスライドブロック803の+X方向へのスライドが開始される。多段式のスライド機構を採用することで、掃除ロボット1のサイズを小さくしつつ、アーム5の可動範囲を増大させることができる。
【0069】
なお、第1スライド機構及び第2スライド機構は、一方がベルト式のスライド機構で構成され、他方がねじ式のスライド機構で構成されてもよい。
【0070】
次に、アーム5について説明する。本実施の形態では、アーム5は、スライド部材によってアーム5の先端部の向きが変更される第1態様と、スライド部材を用いずにアーム5の先端部の向きが変更される第2態様とがある。まず、第1態様に係るアーム5について説明する。
【0071】
図9~
図11は第1態様に係るアーム5のX方向視の図である。
図9は先端部5Aが+Z方向を向いている場合のアーム5を示し、
図10は先端部5AがZ方向に対して左斜め下方向を向いている場合のアーム5を示し、
図11は先端部5Aが+Y方向を向いている場合のアーム5を示している。
【0072】
第1態様に係るアーム5は、Z方向に延びるレール58と、レール58に対してスライド可能に取り付けられたスライド部材51と、ブラシ10が着脱可能に取り付けられる先端部5Aを有し、スライド部材51に対してX軸周りに回転可能に取り付けられた第2部材52と、-Y方向側が開口し、X方向の両側に設けられた一対のリンク53とを備える。さらに、アーム5は、レール58、第2部材52、スライド部材51、及び一対のリンク53を収納し、ハウジングとして機能する点線で示す第一部材54を備える。
【0073】
第1部材54は、+Y方向側に天井部があり、X方向の両側に一対の側面部があるZ方向視でコの字状の部材で構成されている。レール58は第1部材54の天井部の内壁に取り付けられている。
【0074】
第2部材52は、基端部に連結部56が設けられている。連結部56は、スライド部材51に対して第2部材52をX軸周りに回転可能に接続する。連結部56はアーム5が有する関節の一例である。
【0075】
リンク53の両端には第1連結部531及び第2連結部532が取り付けられている。第1連結部531は、第1部材54の側面部の内壁に対して回転可能にリンク53を取り付ける。第2連結部532は、スライド部材51の側面に対して回転可能にリンク53を取り付ける。
【0076】
さらに、第1態様に係るアーム5は、第1部材54の基端部に接続されたカップリング57と、カップリング57に接続された第3部材55とを備える。第3部材55は第1端がカップリング57に接続され、第2端がZスライダ4(
図1参照)の下面に取り付けられている。
【0077】
第1部材54の内部には、スライド部材51を+Z方向及び-Z方向にスライドさせるためのアームモータM5(
図20参照)が設けられている。アームモータM5によってスライド部材51が+Z方向側にスライドされると、第2部材52はスライド部材51によって+Z方向に押し出される。この時、リンク53は第1連結部531を介して第1部材54の側面部の内壁に取り付けられているため、第2部材52の+Z方向側への移動は規制される。そのため、
図10に示すように、第2部材52は、スライド部材51の+Z方向側へのスライドに伴って連結部56周りに先端部5Aが-Y方向に向くように次第に倒れていく。
【0078】
そして、
図11に示すように、スライド部材51が第1部材54の+Z方向側の先端まで到達すると、リンク53は長手方向がY方向を向き、これによって第2部材52は先端部5Aが-Y方向を向いた状態になる。
【0079】
一方、
図11に示す状態において、アームモータM5によってスライド部材51が-Z方向側にスライドされると、リンク53によって第2部材52は先端部5Aが+Z方向を向くように起立していき、
図10の状態を経て、
図9の状態に戻る。
【0080】
このように、第1態様に係るアーム5は、スライド部材51によって先端部5Aの向きが切り替えられるため、アーム5の全長をほぼ第1部材54の全長程度の長さに抑えることができ、掃除ロボット1のサイズを小さくすることができる。
【0081】
図12、
図13は第2態様に係るアーム5のX方向視の図である。
図12は先端部5Aが+Z方向を向いている場合のアーム5を示し、
図13は先端部5Aが-Y方向を向いている場合のアーム5を示す。
【0082】
第2態様に係るアーム5は、Z方向に延びる第1部材54と、ブラシ10が着脱可能に取り付けられる先端部5Aを有し、第1部材54に対してX軸周りに回転可能に取り付けられた第2部材52とを備える。第2部材52の基端部には連結部56が設けられている。連結部56は、第1部材54に対して第2部材52をX軸周りに回転可能に接続する。連結部56はアーム5が有する関節の一例である。
【0083】
第1部材54の内部には、第2部材52を回転させるアームモータM5(
図20参照)が設けられている。
図12に示す状態において、アームモータM5が第1回転方向に回転すると、連結部56を介して第2部材52は先端部5Aが-Y方向に向かうように回転する。これにより、アーム5は
図12に示す姿勢から
図13に示す姿勢になる。一方、
図13に示す状態において、アームモータM5が第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転すると、連結部56を介して第2部材52は先端部5Aが+Z方向に向かうように回転する。これにより、アーム5は
図13に示す状態から
図12に示す状態になる。
【0084】
次に、ブラシ10の動作について説明する。
図14は、ブラシ10の回転を説明する図である。
図15はブラシ10及びアーム5の断面図である。
図15に示すように、第2部材52は、内部に水又は洗剤を吐出するためのノズル61が設けられている。ノズル61は、一部が第2部材52の内部に進入している。ノズル61は先端部5Aから外部に突出した突出部61Aを備えている。ノズル61の基端部には洗剤を供給する洗剤供給路62と水を供給する水供給路63とが接続されている。洗剤としては、例えば、自動的に汚れを落とすことができるマイクロバブルと称される洗剤が採用できる。
【0085】
ブラシ10は、ブラシ本体部10Aと、ブラシ本体部10Aから放射状に延びる複数の起毛部10Bとを備える。ブラシ本体部10Aの中心には突出部61Aが挿入される空洞部が形成されている。ブラシ本体部10Aの空洞部に突出部61Aが挿入されると、ノズル61の先端がブラシ本体部10Aの先端から露出する。そのため、洗剤又は水はノズル61を介してブラシ10の正面の先端から外部に吐出される。
【0086】
第2部材52の内部には、ブラシ10を回転させるブラシモータM4が設けられている。ブラシモータM4は中央にノズル61を貫通するための空洞部が設けられた中空モータで構成されている。
【0087】
ブラシモータM4が第1回転方向に回転すると、
図14に示すようにブラシ10は正面視で時計回りの矢印YAで示す方向に回転する。一方、ブラシモータM4が第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転すると、ブラシ10は
図14に示すように正面視で反時計回りの矢印YBで示す方向に回転する。
【0088】
次に、掃除ロボット1が便器100に正対した状態について説明する。
図16は、アーム5の先端部5Aが+X方向に向いた状態を示す図である。
図17は、アーム5の先端部5Aが-Y方向に向いた状態を示す図である。
【0089】
図16に示すように便器100は、外側にある外面106と内側にある内面105とを備える。内面105は正面101、下部側面102、右側面103、及び左側面104(図略)を備える。正面101は、便器100に正対した掃除ロボット1から見て+Z方向に正対する面であり、第1対象面の一例である。下部側面102は、便器100に正対した掃除ロボット1から見て-Y方向に正対する面であり、第2対象面の一例である。右側面103は、便器100に正対した掃除ロボット1から見て-X方向に正対する面であり、第3対象面の一例である。左側面104は、便器100に正対した掃除ロボットから見て+X方向に正対する面であり、第3対象面の一例である。ここで、ある方向に対して対象面が正対するとは、ある方向に対してある対象面が対向することを指し、ある方向に対して対象面が直交してもよいし、ある方向に対して対象面が例えば0~45度程度に傾斜していてもよい。また、内面105を構成する複数の面はそれぞれ、平面であってもよいし、湾曲した面であってもよい。
【0090】
図16に示すように、アーム5が正面101を掃除する場合は先端部5Aは正面101に正対する。先端部5Aが正面101に正対すると、ブラシ10の正面は便器100の正面101に正対する。一方、
図17に示すように、アーム5が下部側面102を掃除する場合は先端部5Aは下部側面102に正対する。先端部5Aが下部側面102に正対すると、ブラシ10の正面は便器100の下部側面102に正対する。これにより、正面101を掃除する場合はブラシ10の正面を便器100の正面101に当接させ、下部側面102を掃除する場合はブラシ10の正面を便器100の下部側面102に当接させることができ、適切な力でブラシ10を対象面に当接させることができ、より確実に汚れを除去できる。
【0091】
図18は、右側面103を掃除する場合のブラシ10の動作を説明する図である。右側面103を掃除する場合、アーム5は先端部5Aが正面101に正対される。そして、アーム5は、ブラシ10の側面が右側面103に当接された状態で、例えば-Y方向に向けてスライドされる。このとき、ブラシ10は、矢印YBで示す方向に回転される。これにより、右側面103におけるブラシ10の回転方向は-Y方向を向き、アーム5のスライド方向と同じになるので、液体の飛び散りが抑制され、アーム5の-Y方向へのスライドをスムーズに行うことができる。なお、
図18の例では、アーム5は-Y方向にスライドされているが、+Y方向にスライドされてもよい。この場合、右側面103におけるブラシ10の回転方向とアーム5のスライド方向とを同じ向きにするために、ブラシ10の回転方向を矢印YBとは逆方向にすればよい。
【0092】
図19は、正面101を掃除する場合のブラシ10の動作を説明する図である。正面101を掃除する場合、アーム5は先端部5Aが正面101に正対される。そして、アーム5は、ブラシ10の先端が正面101に当接させた状態で、例えば-Y方向にスライドされる。このとき、ブラシ10は、矢印YA方向への回転と矢印YB方向への回転とが交互に繰り返される。以下、ブラシ10の交互の回転を「振動」と呼ぶ。これにより、ブラシ10の便器100への研磨力が増すため、便器100に付着する汚れをより確実に除去できる。さらに、ブラシ10を振動させる場合、振動時のブラシ10の回転角度幅である振幅を小さくしても強固な研磨力が得られるため、ブラシ10及び便器100に付着する液体の飛び散りを抑制できる。ここで、振幅としては、例えば5度、10度、30度、45度、又は90度などの適宜の値が採用できる。
【0093】
なお、
図19では、アーム5は-Y方向にスライドされているが、これは一例であり、+Y方向にスライドされてもよいし、+X方向又は-X方向にスライドされてもよい。
【0094】
図20は、掃除ロボット1に取り付けられたカバー11を説明する図である。
図20に示すように、掃除ロボット1はさらにカバー11を備えていてもよい。カバー11は、+X方向側に設けられた左カバー111と、-X方向側に設けられた右カバー112とを備えている。
【0095】
左カバー111及び右カバー112は、それぞれ、Z方向に対して線対称の形状を有し、X方向に直交する側面111a,112aと、+Z方向側に設けられ、Z方向に直交する前面111b,112bとを備えている。側面111a,112aはそれぞれ掃除ロボット1のY方向のほぼ全域と掃除ロボット1のZ方向のほぼ全域とを覆う四角形の形状を有している。前面111b及び前面112b間には隙間113が形成されている。カバー11は、Z方向に対してスライド可能に垂直フレーム8に取り付けられている。隙間113は便器100のZ方向の幅とほぼ同じ幅である。
【0096】
図21~
図23は、カバー11がスライドされる様子を説明する図である。
図21では、掃除ロボット1は便器100の正面101に対して所定距離離間した状態で正対している。
図22では、カバー11は+Z方向に向けて最大限にスライドされている。
図23では、カバー11が+Z方向に最大限スライドされた掃除ロボット1が+Z方向に前進されている。このとき、掃除ロボット1は、隙間113を通じてカバー11の内部に便器100を収容し、前面111b,112bが便器100の裏面に連なる位置まで+Z方向に前進できる。これにより、掃除ロボット1は便器100全体を覆うことができ、掃除時に液体が飛び散ったとしても、その液体の飛翔がカバー11によって遮られ、便器100の周囲に汚れた液体が飛び散ることを防止できる。さらに、カバー11によって汚れた液体の飛翔が遮られるため、隣接する便器100で小便をする人物がいたとしても、その人物に汚れた液体が付着することを防止できる。その結果、公衆トイレに設置された残りの便器100の使用を禁止することなく、便器100を掃除することができる。
【0097】
図24は、本開示に係る掃除ロボット1のさらに詳細な外観図である。
図24に示すように掃除ロボット1は、
図1に示すアーム5、キャスター6、水平フレーム7、及び垂直フレーム8と、
図20に示すカバー11とに加えて、さらにタッチパネル301、一対の手すり302、水タンク303、洗剤タンク306、DC/ACインバータユニット304、及びバッテリー305を備える。
【0098】
タッチパネル301は、垂直フレーム8の背面の上部に設けられ、掃除ロボット1に対する各種の設定をユーザに入力させるための操作画面及び掃除ロボット1の状態などを通知するための通知画面などを表示する。
【0099】
一対の手すり302は、Y方向に延びる形状を有し、垂直フレーム8の背面のほぼ中央部に取り付けられている。一対の手すり302は、例えば、清掃員が掃除ロボット1を移動させる際に清掃員によって把持される。
【0100】
水タンク303は垂直フレーム8の背面において一対の手すり302の下側に取り付けられている。水タンク303は便器100を掃除する際に使用される水を貯留する。なお、水タンク303に貯留された水は、図略の水ポンプによって汲み上げられ、水供給路63及びノズル61を通じてブラシ10の先端から便器100に向けて吐出される。
【0101】
洗剤タンク306は、垂直フレーム8の背面において水タンク303の隣接されている。洗剤タンク306は便器100を掃除する際に使用される洗剤を貯留する。
【0102】
DC/ACインバータユニット304は、垂直フレーム8の背面において、水タンク303の下方に設けられている。DC/ACインバータユニット304は、掃除ロボット1が備える各種モータに対応する複数のDC/ACインバータで構成され、バッテリー305に蓄えられた直流電力を交流電力に変換し、掃除ロボット1が備える各種モータに供給する。
【0103】
バッテリー305は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池で構成され、掃除ロボット1の動力源となる電力を蓄える。なお、
図24の例では、カバー11は
図20に示す構成に加えてさらに天井面を備えている。
【0104】
キャスター6は、ロック機能を備えており、掃除ロボット1が便器100を掃除する際、例えば清掃員によってロックされる。これにより、掃除中に掃除ロボット1が意図せず移動することを防止できる。
【0105】
図25は、本開示に係る掃除ロボット1のブロック図である。掃除ロボット1は、第1モータM1、第2モータM2、第3モータM3、ブラシモータM4、アームモータM5、第1モータ駆動部211、第2モータ駆動部212、第3モータ駆動部213、ブラシモータ駆動部214、アームモータ駆動部215、洗剤ポンプ駆動部216、水ポンプ駆動部217、制御部200、タッチパネル301、洗剤ポンプ218、水ポンプ219、及びカメラ9を備える。
【0106】
第1モータM1は、Zスライダ4を構成するスライド機構80のモータブラケット800に取り付けられ、スライドブロック803をZ方向にスライドさせることによって、アーム5をZ方向にスライドさせる。第1モータM1は第1回転方向に回転することによってアーム5を+Z方向にスライドさせ、第2回転方向に回転することによってアーム5を-Z方向にスライドさせる。
【0107】
第2モータM2は、一対のYスライダ2を構成する一対のスライド機構80のそれぞれのモータブラケット800に取り付けられ、スライドブロック803をY方向にスライドさせることによって、アーム5をY方向にスライドさせる。第2モータM2は第1回転方向に回転することによってアーム5を+Y方向にスライドさせ、第2回転方向に回転することによってアーム5を-Y方向にスライドさせる。
【0108】
第3モータM3は、Xスライダ3を構成するスライド機構80のモータブラケット800に取り付けられ、スライドブロック803をX方向にスライドさせることによって、アーム5をX方向にスライドさせる。第3モータM3は第1回転方向に回転することによってアーム5を+X方向にスライドさせ、第2回転方向に回転することによってアーム5を-X方向にスライドさせる。
【0109】
ブラシモータM4は、第2部材52の内部に設けら、ブラシ10を第1回転方向又は第2回転方向に回転させたり、ブラシ10を振動させたりする。
【0110】
アームモータM5は、第1部材54の内部に設けられ、アーム5の先端部5Aの向きを切り替える。本実施の形態では、アームモータM5は、例えば、
図16に示すように、先端部5Aが+Z方向に正対する姿勢と、
図17に示すように、先端部5Aが-Y方向に正対する姿勢とにアーム5の姿勢を切り替える。
【0111】
第1モータ駆動部211は、
図24に示すDC/ACインバータユニット304に含まれるDC/ACインバータで構成され、制御部200の制御の下、バッテリー305から供給される直流電力を交流電力に変換し、第1モータM1に供給し、これによって第1モータM1を駆動する。
【0112】
第2モータ駆動部212は、
図24に示すDC/ACインバータユニット304に含まれるDC/ACインバータで構成され、制御部200の制御の下、バッテリー305から供給される直流電力を交流電力に変換し、第2モータM2に供給し、これによって第2モータM2を駆動する。
【0113】
第3モータ駆動部213は、
図24に示すDC/ACインバータユニット304に含まれるDC/ACインバータで構成され、制御部200の制御の下、バッテリー305から供給される直流電力を交流電力に変換し、第3モータM3に供給し、これによって第3モータM3を駆動する。
【0114】
ブラシモータ駆動部214は、
図24に示すDC/ACインバータユニット304に含まれるDC/ACインバータで構成され、制御部200の制御の下、バッテリー305から供給される直流電力を交流電力に変換し、ブラシモータM4に供給し、これによってブラシモータM4を駆動する。ブラシモータ駆動部214及びブラシモータM4はブラシ駆動部の一例である。
【0115】
アームモータ駆動部215は、
図24に示すDC/ACインバータユニット304に含まれるDC/ACインバータで構成され、制御部200の制御の下、バッテリー305から供給される直流電力を交流電力に変換し、アームモータM5に供給し、これによってアームモータM5を駆動する。
【0116】
洗剤ポンプ218は、洗剤タンク306に貯留された洗剤を汲み上げるポンプ機構とポンプ機構を駆動させるポンプモータなどで構成されている。洗剤ポンプ218、洗剤タンク306、洗剤供給路62、及びノズル61は、ブラシ10の正面から洗剤を吐出させる洗剤吐出部の一例に相当する。
【0117】
水ポンプ219は、水タンク303に貯留された水を汲み上げるポンプ機構とポンプ機構を駆動させるポンプモータなどで構成されている。水ポンプ219、水タンク303、水供給路63、及びノズル61は、ブラシ10の正面から水を吐出させる水吐出部の一例に相当する。
【0118】
洗剤ポンプ駆動部216は、
図24に示すDC/ACインバータユニット304に含まれるDC/ACインバータで構成され、制御部200の制御の下、バッテリー305から供給される直流電力を交流電力に変換し、洗剤ポンプ218のポンプモータに供給し、これによって洗剤ポンプ218を駆動する。
【0119】
水ポンプ駆動部217は、
図24に示すDC/ACインバータユニット304に含まれるDC/ACインバータで構成され、制御部200の制御の下、バッテリー305から供給される直流電力を交流電力に変換し、水ポンプ219のポンプモータに供給し、これによって水ポンプ219を駆動する。
【0120】
カメラ9は、例えば、掃除ロボット1の周囲の物体の深度の分布を示す深度成分と、物体の輝度の分布を示す輝度成分とを含む画像が取得可能な深度カメラなどで構成されている。カメラ9は、
図28に示すように垂直フレーム8を構成するX方向に平行な水平部材の中央に設けられており、画角が斜め下前方に向けられている。
【0121】
制御部200は、例えば、CPU及び不揮発性の記憶装置などを含むマイクロコンピュータで構成され、駆動制御部201、メモリ202、及び画像処理部203を備える。
【0122】
駆動制御部201は、便器100の正面101を掃除する場合と、便器100の下部側面102を掃除する場合とで、アーム5の先端部5Aの向きを切り替える。具体的には、駆動制御部201は、正面101を掃除する場合、先端部5Aの向きが正面101に正対するようにアームモータ駆動部215に制御信号を出力する。一方、駆動制御部201は、下部側面102を掃除する場合、先端部5Aの向きが下部側面102に正対するようにアームモータ駆動部215に制御信号を出力する。
【0123】
また、駆動制御部201は、メモリ202に記憶された掃除シーケンス情報に含まれる軌跡情報にしたがってブラシ10が移動するように、第1モータ駆動部211、第2モータ駆動部212、及び第3モータ駆動部213のそれぞれに制御信号を出力する。さらに、駆動制御部201は、メモリ202に記憶された掃除シーケンス情報にしたがって、アーム5の姿勢が切り替わるようにアームモータ駆動部215に制御信号を出力する。さらに、駆動制御部201は、バッテリー305の充放電を管理する。
【0124】
例えば、駆動制御部201は、正面101を掃除する場合、アーム5の先端部5Aの向きを正面101に正対させることによって、ブラシ10の正面を便器100の正面101に正対させる。また、駆動制御部201は、下部側面102を掃除する場合、アーム5の先端部5Aの向きを下部側面102に正対させることによって、ブラシ10の正面を下部側面102に正対させる。
【0125】
詳細には、駆動制御部201は、正面101を掃除する場合、第2部材52を+Z方向に延ばす姿勢(第1姿勢)をとるようにアーム5を制御する。また、駆動制御部201は、下部側面102を掃除する場合、第2部材52を-Y方向に延ばす姿勢(第2姿勢)をとるようにアーム5を制御する。
【0126】
ここで、駆動制御部201は、正面101を掃除する場合、アーム5の先端部5Aの向きを+Z方向に固定する。また、駆動制御部201は、下部側面102を掃除する場合、アーム5の先端部5Aの向きを-Y方向に固定する。一方、駆動制御部201は、正面101の掃除と下部側面102の掃除とを切り替える際に、アーム5の先端部5Aの向きを切り替える。これにより、正面101又は過不足面102の掃除中にアーム5Aの向きを固定状態に維持できるため、正面101又は下部側面102に対してブラシ10を適切な力で当接させることができる。
【0127】
また、駆動制御部201は、ブラシモータ駆動部214に制御信号を出力することによって、
図18に示すように、ブラシ10をアーム5の長手方向周りに回転させる。
【0128】
また、駆動制御部201は、ブラシモータ駆動部214に制御信号を出力することによって、
図19に示すように、ブラシ10をアーム5の長手方向周りに振動させる。
【0129】
メモリ202は、掃除シーケンス情報を記憶する。掃除シーケンス情報は、ブラシ10の移動軌跡を示す軌跡情報、アーム5の向きを指定するコマンド、ブラシ10の駆動を指定するコマンド、ブラシ10の移動速度を指定するコマンド、水を吐出するコマンド、洗剤を吐出するコマンドなどを含む。
【0130】
また、駆動制御部201は、対象面に洗剤を塗布する洗剤塗布処理と、塗布した洗剤を水ですすぐすすぎ処理とが実行可能であり、正面101を掃除する場合、洗剤塗布処理が終了した後、すすぎ処理を実行しない。これにより、便器100が備える自動洗浄機能を利用して、正面101に塗布した洗剤をすすぐことができる。
【0131】
軌跡情報は、掃除対象となる便器100の形状に基づいて予め設定されたブラシ10の移動軌跡を示す情報である。アーム5の向きを指定するコマンドは、例えば、アーム5の先端部5Aを+Z方向に向けるコマンド、アーム5の先端部5Aを-Y方向に向けるコマンドなどである。ブラシ10の駆動を指定するコマンドは、例えば、ブラシ10を振動させるコマンド、ブラシ10を第1回転方向に回転させるコマンド、ブラシ10を第2回転方向に回転させるコマンドなどである。
【0132】
画像処理部203は、カメラ9で撮像された便器100の画像から特徴部を抽出し、掃除ロボット1の機械座標系の便器100からのずれを算出する。
【0133】
図26は、本開示の実施の形態に係る掃除ロボット1の処理の一例を示すフローチャートである。このフローが開始される前、清掃員などのユーザによって掃除ロボット1は、便器100の前に移動されて、
図23に示すように、カバー11が便器100を収納するように正面101に正対されているものとする。まず、掃除ロボット1の電源がユーザによってオンされる(S1)。これによりバッテリー305からの電力が制御部200などに供給される。
【0134】
次に、駆動制御部201は、第1モータ駆動部211、第2モータ駆動部212、及び第3モータ駆動部213に制御信号を出力し、機械原点にブラシ10を位置決めする(S2)。機械原点は、掃除ロボット1に予め設定されたX方向、Y方向、及びZ方向の3軸で規定された機械座標空間の原点である。機械原点は、例えば、
図28に示すように掃除ロボット1が便器100に正対されたときに、便器100の突出部1001(
図28)のやや+Y方向寄りの位置に設定されている。突出部1001は、便器100の内面105の縁1002上に設けられた-Z方向側に最も突出した箇所である。
【0135】
次に、画像処理部203は、カメラ9に便器100を撮像させ、便器100の画像を取得する(S3)。次に、画像処理部203は、便器100の特徴部を抽出する。
図28は、便器100の特徴部を示す図である。
図28の例では3つの特徴部C1,C2,C3が抽出されている。特徴部C1は突出部1001を中心とする一定範囲の領域の画像である。特徴部C2は縁1002の+X方向側の中央位置を中心とする一定範囲の領域の画像である。特徴部C3は縁1002の縁1002の-X方向側の中央位置を中心とする一定範囲の領域の画像である。
【0136】
ここでは、特徴部として、
図28に示す3つの特徴部C1,C2,C3が採用されたが本開示はこれに限定されず、他の便器100上の領域の画像が特徴部として採用されてもよい。例えば、便器100には正面101の上側の上部正面107の中央に人感センサが設けられるのが一般的である。したがって、この人感センサを含む一定範囲の領域の画像が特徴部として採用されてもよい。また、縁1002の下方に位置する一対の湾曲部1003を中心とする一定範囲の領域の画像が特徴部として採用されてもよい。
【0137】
次に、画像処理部203は、特徴部C1,C2,C3の位置とメモリ202に予め記憶された特徴部C1’,C2’,C3’の位置とのずれを算出し、便器100に対する機械座標系の3次元的なずれを算出する(S5)。特徴部C1’,C2’,C3’の位置は予め作成された便器100の形状データから得られた機械座標系における位置である。したがって、特徴部C1,C2,C3と特徴部C1’,C2’,C3’とのずれを算出することで、便器100に対する機械座標系の3次元的なずれを算出できる。ここで、3次元的なずれは、例えば、機械座標系のXZ平面の水平面に対するずれ及びYZ平面の鉛直面に対するずれなどが含まれる。
【0138】
次に、画像処理部203は、S5で算出された3次元的なずれに応じて軌跡情報を補正する(S6)。便器100の周囲の床は段差があることが多く、このような段差上に掃除ロボット1が設置されると、掃除ロボット1は便器100に対してピッチ方向に傾斜するため、機械座標系のXZ平面が水平面に対して傾く可能性がある。さらに、機械座標系の原点は突出部1001の上側の位置に設定されているものの、掃除ロボット1を便器100に正対させた位置によっては、機械座標系の原点が想定される実空間上の位置からずれる可能性もある。
【0139】
ここで、軌跡情報は、機械座標系のXZ平面が水平面と平行、且つ、機械座標系のYZ平面が鉛直面と平行であるとの前提の下で作成された便器100の形状データに基づいて作成されている。したがって、これらの3次元的なずれが生じた場合、軌跡情報にしたがってブラシ10を位置決めすると、ブラシ10が所望の位置に位置決めされず、便器100に対してブラシ10を正しく移動できない可能性がある。そこで、本実施の形態では、特徴部C1,C2,C3から便器100に対する機械座標系の3次元的なずれを算出し、3次元的なずれがなくなるように軌跡情報が補正されている。
【0140】
次に、駆動制御部201は、第1モータ駆動部211、第2モータ駆動部212、及び第3モータ駆動部213に制御信号を出力し、補正された軌跡情報が定める初期位置にブラシ10を移動する(S7)。
【0141】
次に、駆動制御部201は、掃除シーケンス情報にしたがったシーケンスでアーム5を移動させて、便器100の掃除を実行する(S8)。
【0142】
図27は、本開示の実施の形態にかかる掃除ロボット1の処理の他の一例を示すフローチャートである。このフローは、ユーザの動作も含まれている。S101の処理はS1と同じである。次に、掃除ロボット1は、ユーザにより押されて便器100の前に移動される(S102)。次に、掃除ロボット1は、
図23に示すように、カバー11が便器100を収納するように便器100の正面にユーザにより位置決めされる(S103)。
【0143】
次に、掃除ロボット1はユーザによってキャスター6がロックされる(S104)。次に、掃除ロボット1は初期化処理を実行する(S105)。S105に示す初期化処理では、
図26のS2~S7の処理が実行される。初期化処理は、例えば、ユーザによりタッチパネル301を介して掃除の開始指示が入力されたことをトリガーに開始されてもよい。S106の処理は
図26のS8と同じである。次に、掃除ロボット1はユーザによってキャスター16のロックが解除される。次に、掃除ロボット1はユーザによる手動で次の便器100に移動される(S108)。S108の処理が終わるとフローはS102に戻る。
【0144】
次に、掃除ロボット1の掃除シーケンスの詳細について説明する。以下に示す掃除シーケンスはメモリ202が記憶する掃除シーケンス情報にしたがって駆動制御部201が実行する。この掃除シーケンスは
図26のS8及び
図27のS106の処理に相当する。
【0145】
図29は、掃除シーケンスにおいて順次実行される5つの処理を示す図である。
図30は、
図29の掃除シーケンスに引き続いて順次実行される5つの処理を示す図である。
図31は、
図30の掃除シーケンスに引き続いて順次実行される5つの処理を示す図である。
図32は、
図31の掃除シーケンスに引き続いて順次実行される4つの処理を示す図である。掃除シーケンス情報は
図33~
図43に示すGコードによって記述される。
【0146】
<処理P1>
図29に示すように、掃除シーケンスでは、まず、処理P1が実行される。処理P1は、内側上部エッジ109を洗浄する処理である。内側上部エッジ109とは、便器100の正面101の上部に設けられ、下方に突出した面である。
【0147】
図33は処理P1のGコードを示す図である。Gコードにおいて、「:」の左隣に記載された文字はコマンドを示し、右隣に記載された文言はコマンドに対する説明である。以下の記載では、各種コマンドの冒頭の「・」及び「*」は省略する。
【0148】
「%」はGコードの開始を意味する。まず、「G90」により、掃除ロボット1における絶対座標が定義される。例えば、
図1などに示すX方向、Y方向、及びZ方向の3軸からなる3次元の機械座標系が定義される。
【0149】
次に、「G94」によりブラシ10の送り量の単位、すなわち、ブラシ10の移動速度の単位が設定される。ここでは、「mm/1分」が単位として設定される。次に、「G17」により作業平面としてXY平面が定義される。
【0150】
次に、「G21」により、以降に記述するブラシ10の軌跡を示す座標の単位が設定される。ここでは、単位としてミリメートルが設定される。次に、「T1 M6」により、ツール1に工具が交換される。本実施の形態では、このコマンドは特に意味がない。
【0151】
次に、「M3」により、アーム5の先端部5Aの向きが正面101に正対され、ブラシ10の向きが水平方向にされる。次に、「G54」により、ワーク座標系が選択される。本実施の形態では、このコマンドは特に意味がない。次に、洗剤塗布ONコマンド「M8」が実行される。洗剤塗布ONコマンド「M8」の実行後、1秒後に後述の洗剤塗布OFFコマンド「M9」が実行されることで、洗剤の塗布が開始される。
【0152】
次に、「G1 F18000」により、ブラシ10の移動パターンが直線移動に設定され、且つ、ブラシの移動速度が設定される。次に、「X** Y** Z**」により、ブラシ10が指定の座標に移動される。これにより、ブラシ10が処理P1の初期位置に移動される。「**」は座標を示す数値である。なお、
図26のS6において軌跡情報が補正された場合、座標「X** Y** Z**」はS5で算出された機械座標系の3次元的なずれ量に応じて補正される。このことは、以降に示される各種座標についても同じである。
【0153】
次に、「S1000」により、ブラシ10の振動がONされる。このコマンドは、OFFされるまで継続される。次に、洗剤塗布OFFコマンド「M9」が実行される。これにより、洗剤の塗布が実行される。
【0154】
次に、「X** Z**」により、ブラシ10は指定の座標に移動される。ここでは、Y座標は変化されない。「~」は「X** Z**」の羅列を示す。以後、ブラシ10は、羅列された「X** Z**」~で示す座標に順次位置決めされる。ブラシ10は指定の座標に指定の移動速度で移動したら、次の座標に向けて移動する。ここで、羅列された座標は、ブラシ10の軌跡の変曲点の座標である。羅列された座標間をブラシ10は直線移動するため、軌跡が曲線である場合、その曲線をどの程度の精度で直線補間するかに応じて羅列された座標の間隔が決定される。
【0155】
ここでは、ブラシ10は、
図29の矢印で示すパスPT1に沿って移動する。具体的には、ブラシ10は、同じ高さを維持しながら、内側上部エッジ109の下面に当接するように便器100の前方に進入しつつ右方向に移動する。そして、ブラシ10は、内側上部エッジP109の中央に到達すると便器100の後方に後退しつつ右方向に移動する。
【0156】
次に、「X** Y** Z**」により、ブラシ10は指定の座標に移動する。これにより、ブラシ10は内側上部エッジ109の右端において高さを少し下げる。次に、「X** Z**」~により、ブラシ10は指定の座標に順次移動される。ここでは、Y座標は変化されない。これにより、ブラシ10は、
図29に示すように同じ高さを維持しながら、便器100の前方に進入しつつ左方向に移動する。そして、内側上部エッジ109の中央に到達すると便器100の後方に後退しつつ左方向に移動する。
【0157】
次に、「S0」によりブラシ10の振動が停止される。次に、「G17」により作業平面としてXY平面が定義される。以上で処理P1が終了する。
【0158】
<処理P2>
図29を参照し、処理P1が終了すると処理P2が実行される。処理P2は、左側面104に洗剤を塗布する処理である。
図34は、処理P2のGコードを示す図である。まず、処理P1と同様、「G90」、「G94」、「G17」、「G21」、「T1 M6」、「G54」が実行される。なお、処理P2では、ブラシ10は既に水平方向に向けられるため、処理P1の「M3」は実行されていない。次に、「G54」により、ワーク座標系が選択される。本実施の形態では、このコマンドは特に意味がない。
【0159】
次に、「G18」により、作業平面としてXZ平面が定義される。次に、「G1 F18000」により、ブラシ10の移動パターンが直線移動に設定され、且つ、ブラシ10の移動速度が設定される。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10が指定の座標に順次に移動される。
【0160】
ここでは、
図29に示すように、アーム5の先端部5Aの向きが正面101に正対され、+X方向視において左側面104とブラシ10の先端との距離が所定距離離間した状態にされ、+Z方向視においてブラシ10は左側面104よりも少し便器100の内側且つ左側面104の上側の位置に位置決めされる。そして、ブラシ10は-Y方向に移動する。そして、+Z方向視において左側面104の下側の位置に到達すると、ブラシ10は、+Z方向に少し移動し、+Y方向に移動する。
【0161】
ブラシ10は便器100の正面101に正対しているため、ブラシ10が便器100内に進入して洗剤を塗布すると、左側面104の全域に洗剤を塗布できない可能性がある。そこで、本実施の形態では、+X方向視において、ブラシ10のの先端と左側面104との距離を所定距離離間させて洗剤を塗布することにした。これにより、左側面104の全域に洗剤を塗布できる。
【0162】
次に、「G17」により、作業平面としてXY平面が定義される。次に、洗剤塗布ONコマンド「M8」が実行される。ここでは、処理P1による洗剤の塗布が継続されているため、このコマンドの実行後、1秒後に後述の洗剤塗布OFFコマンド「M9」が実行されることで、洗剤の塗布が停止される。次に、「G4 P0.001」により、1秒休止するコマンドが実行される。次に、洗剤塗布OFFコマンド「M9」により、洗剤の塗布が停止される。次に、洗剤塗布ONコマンド「M8」により、掃除ロボット1は、洗剤の塗布の準備状態になる。
【0163】
<処理P3>
図29を参照し、処理P2が終了すると、処理P3が実行される。処理P3は、洗剤の塗布を停止させた状態で左側面104にブラシ10の側面を当接させてブラシ10を移動させることによって、左側面104を洗浄する処理である。
図35は、処理P3のGコードを示す図である。まず、処理P2と同様、「G90」、「G94」、「G17」、「G21」、「T1 M6」、「G54」、「G18」、「G1 F18000」が実行される。次に、「X** Y** Z**」により、ブラシ10が指定の座標に移動される。これにより、ブラシ10は、処理P3の初期位置に移動される。
【0164】
次に、「S1000」により、ブラシ10の振動がONされる。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10が指定の座標に順次移動される。ここでは、ブラシ10は、
図29に示すように、側面を左側面104に当接し、洗剤の塗布を停止させた状態で振動しながら、矢印で示すパスPT3に沿って左側面104の全域を移動する。具体的には、ブラシ10は、左側面104の上側から下側に移動した後、+Z方向に少し移動し、左側面104の下側から上側に移動する。
【0165】
次に、「G17」により作業平面としてXY平面が定義される。
【0166】
<処理P4>
図29を参照し、処理P3が終了すると処理P4が実行される。処理P4は、正面101と左側面104との間に設けられた左側段差101aを洗浄する処理である。
図36は、処理P4のGコードを示す図である。まず、処理P3と同様、「G90」、「G94」、「G17」、「G21」、「T1 M6」、「G54」、「G18」、「G1 F18000」が実行される。
【0167】
次に、洗剤塗布OFFコマンド「M9」により、洗剤の塗布が実行される。この洗剤塗布OFFコマンド「M9」は、処理P2の最後の洗剤塗布ONコマンド「M8」とセットであり、現在、洗剤の塗布が停止されているため、洗剤塗布OFFコマンド「M9」によって洗剤の塗布が実行される。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10は指定の座標に順次移動される。
【0168】
ここでは、
図29に示すように、ブラシ10は、正面を左側段差101aに当接し、振動且つ洗剤を塗布しながら、矢印で示すパスPT4に沿って左側段差101aの全域を移動する。具体的には、ブラシ10は、左側段差101aの左側を上側から下側まで移動した後、便器100の内側に少し移動し、左側段差101aの右側を下側から上側に移動する。
【0169】
次に、洗剤塗布ONコマンド「M8」が実行される。この洗剤塗布ONコマンド「M8」の実行後、1秒後に後述の洗剤塗布OFFコマンド「M9」が実行されることで、洗剤の塗布が停止される。
【0170】
次に、「G4 P0.001」により、1秒休止するコマンドが実行される。次に、洗剤塗布OFFコマンド「M9」により、洗剤の塗布が停止される。次に、洗剤塗布ONコマンド「M8」により、掃除ロボット1は、洗剤の塗布の準備状態になる。
【0171】
次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10が指定の座標に順次移動される。ここでは、ブラシ10は、
図29に示すように、側面を左側段差101aに当接し、振動しながら洗剤の塗布を停止した状態で、矢印で示すパスPT4に沿って移動する。
【0172】
次に、洗剤塗布OFFコマンド「M9」により、洗剤の塗布が実行される。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10が指定の座標に順次移動される。ここでは、ブラシ10は、
図29に示すように、側面を左側段差101aに当接し、振動且つ洗剤を塗布しながら、矢印で示すパスPT4に沿って移動する。
【0173】
次に、「M8」、「G4 P0.001」、及び「M9」により、洗剤の塗布が停止される。
【0174】
<処理P5>
図29を参照し、処理P4が終了すると処理P5が実行される。処理P5は、左側正面に洗剤を塗布する処理である。左側正面とは正面101の左半分の領域である。
図37は、処理P5のGコードを示す図である。まず、洗剤塗布ONコマンド「M8」により、掃除ロボット1は、洗剤の塗布の準備状態になる。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10が指定の座標に順次移動される。
【0175】
ここでは、
図29に示すように、ブラシ10は、正面を便器100の左側正面に当接し、振動且つ洗剤の塗布を停止した状態で、矢印で示すパスTH5に沿って左側正面の全域を移動する。具体的には、ブラシ10は、左側正面を左上の位置から右上の位置まで、Y方向を主走査方向、X方向を副走査方向としてラスタ走査するように移動する。
【0176】
次に、洗剤塗布OFFコマンド「M9」により、洗剤の塗布が実行される。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10は指定の座標に順次移動される。ここでは、
図29に示すように、ブラシ10は、正面を便器100の左側正面に当接し、振動且つ洗剤を塗布しながら、パスTH5に沿って左側正面の全域を移動する。
【0177】
次に、洗剤塗布ONコマンド「M8」が実行される。洗剤塗布ONコマンド「M8」の実行後、1秒後に後述の洗剤塗布OFFコマンド「M9」が実行されることで、洗剤の塗布が停止される。
【0178】
次に、「G4 P0.001」により、1秒休止するコマンドが実行される。洗剤塗布OFFコマンド「M9」により、洗剤の塗布が停止される。これは、1秒前の洗剤塗布ONコマンド「M8」とセットである。
【0179】
次に、洗剤塗布ONコマンド「M8」が実行される。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10は指定の座標に順次移動される。ここでは、
図29に示すように、ブラシ10は、正面を便器100の左側正面に当接し、振動且つ洗剤の塗布を停止した状態で、パスTH5に沿って左側正面の全域を移動する。
【0180】
次に、「G17」により作業平面がXY平面に定義される。次に、「S0」によりブラシ10の振動が停止される。
【0181】
<処理P6>
図30を参照し、処理P5が終了すると処理P6が実行される。処理P6は、右側面103に洗剤を塗布する処理である。処理P6は処理P2に対し、対象面が右側面103であること以外は同じであるため、説明を省略する。
【0182】
<処理P7>
図30を参照し、処理P6が終了すると処理P7が実行される。処理P7は、右側面103を洗浄する処理である。処理P7は処理P3に対し、対象面が右側面103であること以外は同じであるため、説明を省略する。
【0183】
<処理P8>
図30を参照し、処理P7が終了すると処理P8が実行される。処理P8は、右側段差101bを洗浄する処理である。処理P8は処理P4に対し、対象面が右側段差101bであること以外は同じであるため、説明を省略する。
【0184】
<処理P9>
図30を参照し、処理P8が終了すると処理P9が実行される。処理P9は、便器100の正面の右側半分の領域である右側正面に洗剤を塗布する処理である。処理P9は処理P5に対し、対象面が右側正面であること以外は同じであるため、説明を省略する。
【0185】
<処理P10、処理P11>
図30を参照し、処理P9が終了すると処理P10が実行される。処理P10では、アーム5の先端部5Aの向きが-Y方向に向けられることによって、ブラシ10の向きを下向きにする処理である。
【0186】
図31を参照し、処理P10が終了すると処理P11が実行される。処理P11は、下部側面102を洗浄する処理である。
図38及び
図39は、処理P10,P11におけるGコードを示す図である。
【0187】
まず、処理P1と同様、「G90」、「G94」、「G17」、「G21」、「T1 M6」、「G54」が実行される。次に、「G1 F18000」により、ブラシ10の移動パターンが直線移動に設定され、且つ、ブラシ10の移動速度が設定される。
【0188】
次に、「M4」により、ブラシ10の向きが下方に向けられる。次に、「X** Y** Z**」により、ブラシ10が指定の座標に移動される。これにより、ブラシ10が処理P11の初期位置に移動される。
【0189】
次に、洗剤塗布OFFコマンド「M9」が実行される。これにより、洗剤の塗布が実行される。次に、「G2 X** Z** I** K**」~、「G3 X** Z** I** K**」、「G1 X** Y** Z**」~により、ブラシ10は、振動且つ洗剤を塗布しながら、指定の位置に順次移動される。
【0190】
次に、「M8」、「G4 P0.001」、「M9」により、洗剤の塗布が停止される。次に、「M8」により、掃除ロボット1は、洗剤の塗布の準備状態になる。次に、「G1 X** Y** Z**」~により、振動且つ洗剤の塗布が停止された状態で、ブラシ10が順次移動される。引き続き、
図39のGコードが実行される。
【0191】
次に、「M9」により、洗剤の塗布が実行される。次に、「X** Y** Z**」~により、振動且つ洗剤の塗布をしながら、ブラシ10は、指定の位置に順次移動される。次に、「M8」、「G4 P0.001」、「M9」により、洗剤の塗布が停止される。
【0192】
次に、「M8」により掃除ロボット1は洗剤の塗布の準備状態になる。次に、「G1 X** Y** Z**」~により、振動且つ洗剤の塗布を停止した状態で、ブラシ10は、指定の位置に順次移動される。次に、「M9」により、洗剤の塗布が実行される。次に、「G1 X** Y** Z**」~により、振動且つ洗剤の塗布をしながら、ブラシ10は、指定の座標に順次移動される。
【0193】
次に、「M8」、「G4 P0.001」、「M9」により、洗剤の塗布が停止される。次に、「M8」により掃除ロボット1は洗剤の塗布の準備状態になる。次に、「G1 X** Y** Z**」~により、振動且つ洗剤の塗布を停止した状態で、ブラシ10は、指定の位置に順次移動される。
【0194】
次に、「M9」により、洗剤の塗布が実行される。次に、「X** Y** Z**」により振動且つ洗剤の塗布をしながら、ブラシ10は、指定の位置に順次移動される。
【0195】
次に、「M8」、「G4 P0.001」、「M9」により、洗剤の塗布が停止される。次に、「G1 Y**」により、ブラシ10は、Y座標のみが指定の位置に移動される。次に、「X** Y** Z**」により、ブラシ10は指定の位置に移動される。
【0196】
図31を参照する。処理P11では、ブラシ10は、パスPT11に示すように、トラップ110の周りを半径を変えながら円弧を描いて移動すると共に、洗剤の塗布と塗布の停止とを適宜切り替えることで下部側面102の全域を洗浄する。
【0197】
<処理P12>
図31を参照し、処理P11が終了すると処理P12が実行される。処理P12は下部側面102のほぼ中央に設けられたトラップ110を洗浄する処理である。
図40は、処理P12のGコードを示す図である。まず、「G90」、「G94」、「G17」、「G21」、「T1 M6」、「G54」、「G18」、「G1 F18000」により各種設定が行われる。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10は座標が順次に移動される。ここでは、
図31に示すように、ブラシ10は、振動且つ洗剤の塗布を停止した状態で、パスPT12に示されるように、円形のトラップ110の周りを同心円状に移動する。最後に「G17」が実行され、処理P12が終了する。
【0198】
<処理P13、処理P14、処理P15>
図31を参照し、処理P12が終了すると、処理P13、処理P14、処理P15が順次実行される。処理P13は、左側下部段差102aを洗浄する処理である。左側下部段差102aは、左側段差101aと連なっており、左側面104と下部側面102との境界部分である。処理P14では、ブラシ10は、振動且つ洗剤の塗布を停止した状態で、パスPT13に示すように左側下部段差102aに沿って往復する。
【0199】
処理P14は、下部先端裏を洗浄する処理である。下部先端裏は、下部側面102の先端から突出部1001に向けて立ち上がった箇所の裏面である。処理P14では、ブラシ10は、振動且つ洗剤の塗布を停止した状態で、パスPT14に示すように、下部先端裏を直線状に往復する。
【0200】
処理P15は、右側下部段差102bを洗浄する処理である。右側下部段差102bは、右側段差101bと連なっており、右側面103と下部側面102との境界部分である。処理P15では、ブラシ10は、振動且つ洗剤の塗布を停止した状態で、パスPT15に示すように右側下部段差102bに沿って往復する。
【0201】
図41は、処理P13、処理P14、処理P15のGコードを示す図である。まず、「G90」、「G94」、「G17」、「G21」、「T1 M6」、「G54」、「G18」、「G1 F18000」が順次実行され、各種設定が行われる。次に、「X** Y** Z**」により、ブラシ10は指定の座標に移動される。これにより、ブラシ10は、処理P13の初期位置に移動される。
【0202】
次に、「S1000」によりブラシ10の振動が実行される。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10は、指定の座標に順次移動される。これにより、ブラシ10は、
図31のパスPT13、パスPT14、及びパスPT15に沿って移動する。
【0203】
次に、「G17」により、作業平面としてXY平面が定義される。次に、「S0」により、ブラシ10の振動が停止される。
【0204】
<処理P16>
図32を参照し、処理P15が終了すると、処理P16が実行される。処理P16は、右側面103をすすぐ処理である。処理P16では、処理P2と同じ軌跡でブラシ10は移動される。但し、処理P16では、洗剤を塗布する代わりに水が塗布される。これにより、処理P2によって右側面103に塗布された洗剤がすすがれる。
【0205】
図42は、処理P16のGコードを示す図である。まず、「G90」、「G94」、「G17」、「G21」、「T1 M6」、「G54」、「G18」、「G1 F18000」が順次実行され、各種設定が行われる。次に、「M3」により、ブラシ10は水平方向に向けられる。次に、「X** Y** Z**」により、ブラシ10は指定の座標に移動される。これにより、ブラシ10は、処理P16の初期位置に移動される。
【0206】
次に、「M7」により、ブラシ10は、水の噴射を開始する。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10は水を噴射しながら、指定された位置に順次移動する。次に、「M9」により水の噴射が停止される。次に、「M17」が実行されて、処理P16が終了される。
【0207】
<処理P17>
図32を参照し、処理P16が終了すると、処理P17が実行される。処理P17は、左側面104をすすぐ処理である。処理P17では、処理P6と同じ軌跡でブラシ10は移動される。処理P17は、処理P16に対して処理対象が左側面104であること以外は処理P16と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0208】
<処理P18>
図32を参照し、処理P17が終了すると処理P18が実行される。処理P18は、下部側面102をすすぐ処理である。
図43は処理P18のGコードを示す図である。まず、「G90」、「G94」、「G17」、「G21」、「T1 M6」、「G54」、「G18」、「G1 F18000」が順次実行され、各種設定が行われる。
【0209】
次に、「M4」により、ブラシ10が下向きにされる。次に、「X** Y** Z**」により、ブラシ10は指定の座標に移動される。これにより、ブラシ10は、処理P18の初期位置に移動される。次に、「M7」により、ブラシ10は、水の噴射を開始する。次に、「X** Y** Z**」~により、ブラシ10は水を噴射しながら、指定された位置に順次移動する。ここでは、
図32に示すように、ブラシ10は、水を噴射しながら、パスPT18に沿って水が噴射されるように移動する。具体的には、ブラシ10は、Y方向視において、先端を便器100から離間させながら、下部側面102の前方の縁に沿って水を噴射する。これにより、処理P12により塗布された洗剤がすすがれる。次に、「G17」が実行され、処理P18が終了される。続いて、初期化処理が行われる。まず、「G0 X0.0 Z0.0」により、ブラシ10が原点に復帰される。次に「M3」により、ブラシ10の向きが水平にされる。次に、「M30」、「%」により、Gコードによる処理が終了される。
【0210】
<処理P19>
図32を参照し、処理P18が終了すると処理P19が実行される。処理P19は、正面101をすすぐ処理である。この処理は、便器100が備える自動洗浄機能が利用される。便器100は、人感センサを備えており、人物が便器100から立ち去ったことを検知すると自動的に水を流す機能を備えている。処理P19ではこの機能を利用する。したがって、掃除ロボット1は特に処理は何も行わない。ユーザにより掃除ロボット1が移動されたことが便器100の人感センサによって検知されると、水が流される。これにより、処理P5及び処理P9で正面101に塗布された洗剤がすすがれる。ここでは、処理P19において、便器100の自動洗浄機能が利用されたが、掃除ロボット1がブラシ10の先端から水を正面101に向けて噴射することで、正面101をすすいでもよい。
【0211】
以上説明したように、本実施の形態の掃除ロボット1は、相互に直交するX方向、Y方向、及びZ方向に移動可能に構成されたアーム5を備え、このアーム5の先端部5Aにはブラシ10が取り付けられているため、便器100の対象面に沿ってブラシ10を任意に移動できる。
【0212】
ここで、アーム5は先端部5Aの向きが、正面101を掃除する場合と下部側面102を掃除する場合とで切り替えられる。そのため、正面101を掃除する場合は、先端部5Aを+Z方向に向け、下部側面102を掃除する場合は、先端部5Aを-Y方向に向けることで、正面101及び下部側面102に対して適切な力でブラシ10を当接させることができる。その結果、掃除ロボット1は、向きの異なる複数の対象面を備える便器100の汚れを十分に落とすことができる。
【0213】
上述のGコードで述べた移動速度を初めとする各種設定はほんの一例にすぎず、本開示を限定するものではない。
【0214】
なお、本開示は以下の変形例が採用できる。
【0215】
(1)洋式用便器を掃除する場合、掃除ロボット1は、ブラシ10の先端部5Aを-Y方向に向ければよい。
【0216】
(2)
図14の例では、ブラシ10はアーム5の長手方向周りに回転可能に構成されているが、これは一例であり、長手方向に沿って振動可能に構成されてもよい。この場合、第2部材52の内部にブラシ10を第2部材52の長手方向に所定の振幅で振動させるモータを設ければよい。
【0217】
(3)上記実施の形態では、掃除ロボット1は地面を移動する場合、ユーザの力で移動したが、本開示はこれに限定されず、掃除ロボット1は自律的に移動してもよい。この場合、掃除ロボット1は、SLAM等の自己位置推定技術を用いて便器100の位置が示された地図データ上での自己位置を推定しながら、目標とする便器100に移動すればよい。
【0218】
(4)上記実施の形態では、掃除ロボット1は、アーム5の先端部5Aを+Z方向に向ける姿勢と、アーム5の先端部5Aを-Y方向に向ける姿勢とをとる態様を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、掃除ロボット1は、アーム5の先端部5Aを任意の向きに切り替えてもよい。これにより、例えば、対象面が水平面に対して45度傾斜している場合、アーム5の先端部5Aの向きを+Z方向に対して45度傾斜させることで、ブラシ10を対象面に正対させることができる。
【0219】
(5)アーム5は、種類の異なる複数のブラシ10を任意に取り替えることができるように構成されてもよい。これにより、掃除ロボット1は、例えば、便器100の種類或いは対象面の種類に応じて適切な種類のブラシ10を選択できる。
【0220】
(6)上述のGコードの例では、ブラシ10は振動されていたが、これは一例であり、対象面に応じて回転と振動とが切り替えられてもよい。例えば、
図18に示すように、右側面103及び左側面104を掃除する場合、ブラシ10は回転されてもよい。また、正面101を掃除する場合、ブラシ10は回転されてもよい。また、ブラシ10の振動及び回転は、汚れの度合いに応じて任意に切り替えられてもよい。また、ブラシ10は、掃除スケジュールに応じて振動及び回転が切り替えられてもよい。例えば、毎日の掃除においては、ブラシ10は回転され、数ヶ月に1回の念入り掃除の場合においては、ブラシ10は振動されてもよい。ブラシ10の回転及び振動の切り替えは、例えば、ユーザによるタッチパネル301の操作によって行われてもよい。ブラシ10を回転させた場合の掃除時間はブラシ10を振動させた場合の掃除時間よりも短くなる傾向があるため、毎日の掃除においてブラシ10の運転を回転に切り替えることで、掃除を短時間で終了できる。また、ブラシ10を振動させた場合、回転させた場合に比べて汚れの除去能力が高まる。そのため、念入り掃除のときはブラシ10の運転を振動に切り替えることで、より確実に汚れを除去できる。なお、ブラシ10を振動させた場合、回転させた場合に比べて、液体の飛び散りが抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本開示によれば、公衆便所等に設置された便器を掃除するうえで有用である。
【符号の説明】
【0222】
1 :掃除ロボット
2 :Yスライダ
3 :Xスライダ
4 :Zスライダ
5 :アーム
5A :先端部
9 :カメラ
10 :ブラシ
10A :ブラシ本体部
10B :起毛部
11 :カバー
16 :キャスター
51 :スライド部材
52 :第2部材
53 :リンク
54 :第1部材
80 :スライド機構
100 :便器
101 :正面
102 :下部側面
103 :右側面
104 :左側面
200 :制御部
201 :駆動制御部
202 :メモリ
203 :画像処理部
211 :第1モータ駆動部
212 :第2モータ駆動部
213 :第3モータ駆動部
214 :ブラシモータ駆動部
215 :アームモータ駆動部
216 :洗剤ポンプ駆動部
217 :水ポンプ駆動部
218 :洗剤ポンプ
219 :水ポンプ
306 :洗剤タンク
531 :第1連結部
532 :第2連結部
M1 :第1モータ
M2 :第2モータ
M3 :第3モータ
M4 :ブラシモータ
M5 :アームモータ