(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】プリプレグ、金属張積層板、及び配線板
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20230721BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230721BHJP
C08G 65/34 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C08J5/24 CEZ
H05K1/03 630H
H05K1/03 610T
C08G65/34
(21)【出願番号】P 2019545665
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036186
(87)【国際公開番号】W WO2019065941
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2017190782
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100174827
【氏名又は名称】治下 正志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幹男
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘明
(72)【発明者】
【氏名】北井 佑季
(72)【発明者】
【氏名】幸田 征士
(72)【発明者】
【氏名】星野 泰範
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-263569(JP,A)
【文献】特開2010-111758(JP,A)
【文献】特開2012-246395(JP,A)
【文献】特開2005-089691(JP,A)
【文献】特開2016-113543(JP,A)
【文献】特開昭63-048340(JP,A)
【文献】特開2015-086330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04- 5/10、 5/24
B29B 11/16、15/08-15/14
B32B 1/00-43/00
C08G 65/00-67/04
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と、石英ガラスクロスとを備えるプリプレグであって、
前記樹脂組成物は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物と、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する架橋型硬化剤とを含有し、
前記プリプレグは、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤を、前記プリプレグに対して、
1質量%以上
2.51質量%
以下含み、
前記石英ガラスクロスの通気度は、200cm
3/cm
2/秒以下であり、
前記プリプレグの硬化物の誘電正接が、10GHzにおいて0.002以下であるプリプレグ。
【請求項2】
前記架橋型硬化剤は、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、トリアルケニルイソシアヌレート化合物、ポリブタジエン化合物、及びマレイミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記シランカップリング剤は、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、及びアクリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を分子中に有するシランカップリング剤を含む請求項1又は請求項2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記シランカップリング剤は、メタクリル基及びアクリル基の少なくとも一方を分子中に有するシランカップリング剤を含む請求項3に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、無機充填材をさらに含み、
前記無機充填材は、シリカ、マイカ、及びタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記石英ガラスクロスは、前記シランカップリング剤で表面処理された石英ガラスクロスを含む請求項1~5のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物における前記置換基が、ビニルベンジル基、ビニル基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~6のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、金属箔とを備える金属張積層板。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、配線とを備える配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、金属張積層板、及び配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器は、情報処理量の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、配線の高密度化、及び多層化等の実装技術が急速に進展している。各種電子機器において用いられる配線板の基材を構成するための基板材料には、信号の伝送速度を高め、信号伝送時の損失を低減させるために、誘電率及び誘電正接が低いことが求められる。また、各種電子機器に用いられる配線板としては、例えば、車載用途におけるミリ波レーダ基板等の、高周波対応の配線板であることが求められる。
【0003】
ポリフェニレンエーテルは、誘電率や誘電正接等の低誘電特性に優れ、MHz帯からGHz帯という高周波数帯(高周波領域)においても誘電率や誘電正接等の低誘電特性が優れていることが知られている。このため、ポリフェニレンエーテルは、例えば、高周波用成形材料として用いられることが検討されている。より具体的には、高周波数帯を利用する電子機器に備えられる配線板の基材を構成するための基板材料等に好ましく用いられる。
【0004】
一方、基板材料等の成形材料として利用する際には、低誘電特性に優れるだけではなく、耐熱性等に優れていることも求められている。このことから、ポリフェニレンエーテルを変性させて、耐熱性を高めることが考えられる。
【0005】
このような基板材料としては、例えば、変性させたポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物を用いたプリプレグ及び積層板等が挙げられる。特許文献1には、ポリフェニレンエーテル部分を分子構造内に有し、この分子末端にエテニルベンジル基等を有し、且つ数平均分子量が1000~7000であるポリフェニレンエーテルと、架橋型硬化剤とを含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いたプリプレグ及び積層板が記載されている。
【0006】
特許文献1によれば、誘電特性を低下させることなく、耐熱性や成形性等の高い積層板を得ることができる旨が開示されている。このように、配線板に備えられる絶縁層を製造するための基板材料として、誘電率及び誘電正接を低減させた材料を用いると、得られた配線板における信号伝送時の損失を低減させることができると考えられる。配線板には、上述したように耐熱性が優れていることが求められるとともに、信号の伝送速度をより高めるために、信号伝送時の損失の低減がより求められている。これらのことから、配線板に備えられる絶縁層を製造するための基板材料としては、耐熱性に優れるだけではなく、低誘電特性により優れた材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、低誘電特性及び耐熱性に優れた、プリプレグ、金属張積層板、及び配線板を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の一局面は、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と、繊維質基材とを備えるプリプレグであって、前記樹脂組成物は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物と、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する架橋型硬化剤とを含有し、前記繊維質基材は、石英ガラスクロスであり、前記プリプレグは、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤を、前記プリプレグに対して、0.01質量%以上3質量%未満含み、前記プリプレグの硬化物の誘電正接が、10GHzにおいて0.002以下であるプリプレグである。
【0010】
上記並びにその他の本発明の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプリプレグの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る金属張積層板の一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る配線板の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者等は、従来から、プリプレグにおいて、その硬化物の低誘電特性を高めるためには、プリプレグを構成する樹脂組成物の組成については検討しているが、プリプレグを構成する繊維質基材の検討はあまりされてこなかったことに着目した。本発明者等は、繊維質基材について検討したところ、二酸化ケイ素(SiO2)の含有率が低い、例えば、60質量%未満のガラスクロスを繊維質基材として用いると、ガラスクロスの誘電率が高いため、プリプレグから得られる積層板及び配線板の誘電率も、高くなってしまうことを見出した。そこで、本発明者等は、SiO2の含有率が比較的高い石英ガラスクロスが比較的低い誘電率を有することに着目し、繊維質基材として、この石英ガラスクロスを用い、それに応じた樹脂組成物及びプリプレグの構成等を詳細に検討した結果、以下の本発明により、上記目的は達成されることを見出した。
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0014】
<プリプレグ>
本発明の一実施形態に係るプリプレグは、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と、繊維質基材とを備える。このプリプレグ1は、
図1に示すように、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2と、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物2の中に存在する繊維質基材3とを備えるもの等が挙げられる。
【0015】
なお、本実施形態において、半硬化物とは、樹脂組成物をさらに硬化しうる程度に途中まで硬化された状態のものである。すなわち、半硬化物は、樹脂組成物を半硬化した状態の(Bステージ化された)ものである。例えば、樹脂組成物は、加熱すると、最初、溶融に伴い、粘度が徐々に低下し、その後、硬化が開始し、粘度が徐々に上昇する。このような場合、半硬化としては、粘度が徐々に低下し始めてから、完全に硬化する前までの間の状態等が挙げられる。
【0016】
本実施形態に係るプリプレグとしては、上記のような、前記樹脂組成物の半硬化物を備えるものであってもよいし、また、硬化させていない前記樹脂組成物そのものを備えるものであってもよい。すなわち、本実施形態に係るプリプレグとしては、前記樹脂組成物の半硬化物(Bステージの前記樹脂組成物)と、繊維質基材とを備えるプリプレグであってもよいし、硬化前の樹脂組成物(Aステージの前記樹脂組成物)と、繊維質基材とを備えるプリプレグであってもよい。
【0017】
本実施形態に係るプリプレグにおける樹脂組成物は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物と、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する架橋型硬化剤とを含有する。また、前記プリプレグにおける半硬化物は、前記樹脂組成物の半硬化物である。また、前記プリプレグにおける繊維質基材は、石英ガラスクロスである。また、前記プリプレグは、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤を、前記プリプレグに対して、0.01質量%以上3質量%未満含む。また、前記プリプレグの硬化物の誘電正接が、10GHzにおいて0.002以下である。
【0018】
上記のようなプリプレグは、低誘電特性及び耐熱性に優れる。まず、プリプレグを構成する繊維質基材として、比較的低い誘電率を有する石英ガラスクロスを用いることによって、得られたプリプレグは、その硬化物の低誘電特性に優れたものになると考えられる。しかしながら、繊維質基材として、石英ガラスクロスを単に用いただけでは、その硬化物の低誘電特性が充分には高くならなかったり、硬化物の耐熱性が充分に高いものにならない場合があった。そこで、前記プリプレグは、繊維質基材として、石英ガラスクロスを単に用いるだけではなく、プリプレグを構成する樹脂組成物として、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記架橋型硬化剤を含有する樹脂組成物を用いる。また、前記プリプレグは、前記シランカップリング剤をプリプレグに所定量含有させる。さらに、前記プリプレグは、その硬化物の誘電正接が上記範囲内になるように、石英ガラスクロスの状態等を調整する。そうすることによって、低誘電特性及び耐熱性に優れたプリプレグが得られる。
【0019】
[樹脂組成物]
本実施形態で用いる樹脂組成物は、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と、前記架橋型硬化剤とを含有する。
【0020】
(変性ポリフェニレンエーテル化合物)
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物であれば、特に限定されない。前記変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、例えば、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有し、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0021】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、具体的には、下記式(1)又は式(2)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0022】
【0023】
式(1)中、m及びnは、例えば、mとnとの合計値が、1~30となるものであることが好ましい。また、mが、0~20であることが好ましく、nが、0~20であることが好ましい。すなわち、mは、0~20を示し、nは、0~20を示し、mとnとの合計は、1~30を示すことが好ましい。また、Xは、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基を示す。また、R1~R8は、それぞれ独立している。すなわち、R1~R8は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R1~R8は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。R1~R8は、この中でも、水素原子、又はアルキル基が好ましい。
【0024】
前記式(1)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、例えば、R1~R8のうち、R1、R2、R7、及びR8がメチル基であり、それ以外が水素原子である変性ポリフェニレンエーテル化合物や、R1~R8のうち、R1、R2、R3、R6、R7、及びR8がメチル基であり、それ以外が水素原子である変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0025】
R1~R8において、挙げられた各基としては、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0026】
アルキル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0027】
アルケニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましい。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、及び3-ブテニル基等が挙げられる。
【0028】
アルキニル基は、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましい。具体的には、例えば、エチニル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基(プロパルギル基)等が挙げられる。
【0029】
アルキルカルボニル基は、アルキル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0030】
アルケニルカルボニル基は、アルケニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びクロトノイル基等が挙げられる。
【0031】
アルキニルカルボニル基は、アルキニル基で置換されたカルボニル基であれば、特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、例えば、プロピオロイル基等が挙げられる。
【0032】
【0033】
式(2)中、m及びnは、式(1)のm及びnと同様である。また、式(2)中、R9~R16は、前記式(1)のR1~R8と同様である。また、Xは、前記式(1)のXと同様である。また、Yは、直鎖状、分岐状、又は環状の炭化水素基を示す。また、Yとしては、例えば、下記式(3)で表される基を示す。
【0034】
前記式(2)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物としては、例えば、R9~R16のうち、R9、R10、R15、及びR16がメチル基であり、それ以外が水素原子である変性ポリフェニレンエーテル化合物や、R9~R16のうち、R9、R10、R11、R14、R15、及びR16がメチル基であり、それ以外が水素原子である変性ポリフェニレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0035】
【0036】
式(3)中、R17及びR18は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示す。前記アルキル基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。また、式(3)で表される基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、及びジメチルメチレン基等が挙げられる。
【0037】
前記式(1)及び前記式(2)におけるXは、上述したように、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基である。前記炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基としては、特に限定されない。前記置換基としては、例えば、下記式(4)で表される置換基等が挙げられる。
【0038】
【0039】
式(4)中、sは、0~10を示す。また、Zは、アリーレン基を示す。また、R19~R21は、それぞれ独立している。すなわち、R19~R21は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R19~R21は、水素原子又はアルキル基を示す。
【0040】
なお、式(4)において、sが0である場合は、Zがポリフェニレンエーテルの末端に直接結合しているものを示す。
【0041】
このアリーレン基は、特に限定されない。具体的には、フェニレン基等の単環芳香族基や、芳香族が単環ではなく、ナフタレン環等の多環芳香族である多環芳香族基等が挙げられる。また、このアリーレン基には、芳香族環に結合する水素原子がアルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基等の官能基で置換された誘導体も含む。また、前記アルキル基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0042】
前記置換基としては、より具体的には、p-エテニルベンジル基やm-エテニルベンジル基等のビニルベンジル基(エテニルベンジル基)、ビニルフェニル基、アクリレート基、及びメタクリレート基等が挙げられる。
【0043】
上記式(4)に示す置換基の好ましい具体例としては、ビニルベンジル基を含む官能基が挙げられる。具体的には、下記式(5)又は式(6)から選択される少なくとも1つの置換基等が挙げられる。
【0044】
【0045】
【0046】
前記炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基としては、上記式(4)で表される置換基以外にも、下記式(7)で表される置換基等が挙げられる。また、この置換基としては、具体的には、アクリレート基及びメタクリレート基等が挙げられる。
【0047】
【0048】
式(7)中、R22は、水素原子またはアルキル基を示す。前記アルキル基は、特に限定されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0049】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物におけるポリフェニレンエーテル鎖としては、上記式(1)及び(2)で表される変性ポリフェニレンエーテル化合物に含まれる繰り返し単位以外にも、下記式(8)で表される繰り返し単位等が挙げられる。
【0050】
【0051】
式(8)中、pは、1~50を示し、式(1)又は式(2)のmとnとの合計値に相当し、1~30であることが好ましい。また、R23~R26は、それぞれ独立している。すなわち、R23~R26は、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R23~R26は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。この中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。また、R23~R26において、挙げられた各基としては、具体的には、R1~R8において、挙げられた各基と同様である。
【0052】
本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。具体的には、500~5000であることが好ましく、800~4000であることがより好ましく、1000~3000であることがさらに好ましい。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。
【0053】
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内であると、ポリフェニレンエーテルの有する優れた低誘電特性を有し、硬化物の耐熱性により優れるだけではなく、成形性にも優れたものとなる。このことは、以下のことによると考えられる。通常のポリフェニレンエーテルでは、その重量平均分子量がこのような範囲内であると、比較的低分子量のものであるので、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。この点、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物は、末端に不飽和二重結合を有するので、硬化物の耐熱性が充分に高いものが得られると考えられる。また、変性ポリフェニレンエーテル化合物の重量平均分子量がこのような範囲内であると、比較的低分子量のものであるので、成形性にも優れると考えられる。よって、このような変性ポリフェニレンエーテル化合物は、硬化物の耐熱性により優れるだけではなく、成形性にも優れたものが得られると考えられる。
【0054】
本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物における、変性ポリフェニレンエーテル化合物1分子当たりの、分子末端に有する、前記置換基の平均個数(末端官能基数)は、特に限定されない。具体的には、1~5個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましく、1.5~3個であることがさらに好ましい。この末端官能基数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、末端官能基数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、樹脂組成物の流動性が低下してしまう等の不具合が発生するおそれがある。すなわち、このような変性ポリフェニレンエーテル化合物を用いると、流動性不足等により、例えば、多層成形時にボイドが発生する等の成形不良が発生し、信頼性の高い配線板が得られにくいという成形性の問題が生じるおそれがあった。
【0055】
なお、変性ポリフェニレンエーテル化合物の末端官能基数は、変性ポリフェニレンエーテル化合物1モル中に存在する全ての変性ポリフェニレンエーテル化合物の1分子あたりの、前記置換基の平均値を表した数値等が挙げられる。この末端官能基数は、例えば、得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物に残存する水酸基数を測定して、変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分を算出することによって、測定することができる。この変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分が、末端官能基数である。そして、変性ポリフェニレンエーテル化合物に残存する水酸基数の測定方法は、変性ポリフェニレンエーテル化合物の溶液に、水酸基と会合する4級アンモニウム塩(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)を添加し、その混合溶液のUV吸光度を測定することによって、求めることができる。
【0056】
本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物の固有粘度は、特に限定されない。具体的には、0.03~0.12dl/gであることが好ましく、0.04~0.11dl/gであることがより好ましく、0.06~0.095dl/gであることがさらに好ましい。この固有粘度が低すぎると、分子量が低い傾向があり、低誘電率や低誘電正接等の低誘電性が得られにくい傾向がある。また、固有粘度が高すぎると、粘度が高く、充分な流動性が得られず、硬化物の成形性が低下する傾向がある。よって、変性ポリフェニレンエーテル化合物の固有粘度が上記範囲内であれば、優れた、硬化物の耐熱性及び成形性を実現できる。
【0057】
なお、ここでの固有粘度は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度であり、より具体的には、例えば、0.18g/45mlの塩化メチレン溶液(液温25℃)を、粘度計で測定した値等である。この粘度計としては、例えば、Schott社製のAVS500 Visco System等が挙げられる。
【0058】
本実施形態において用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物の合成方法は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物を合成できれば、特に限定されない。具体的には、ポリフェニレンエーテルに、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物を反応させる方法等が挙げられる。
【0059】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物とは、前記式(4)~(7)で表される置換基とハロゲン原子とが結合された化合物等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子が挙げられ、この中でも、塩素原子が好ましい。炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物としては、具体的には、p-クロロメチルスチレンやm-クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0060】
原料であるポリフェニレンエーテルは、最終的に、所定の変性ポリフェニレンエーテル化合物を合成することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、2,6-ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテルやポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。また、2官能フェノールとは、フェノール性水酸基を分子中に2個有するフェノール化合物であり、例えば、テトラメチルビスフェノールA等が挙げられる。また、3官能フェノールとは、フェノール性水酸基を分子中に3個有するフェノール化合物である。
【0061】
変性ポリフェニレンエーテル化合物の合成方法は、上述した方法が挙げられる。具体的には、上記のようなポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物とを溶媒に溶解させ、攪拌する。そうすることによって、ポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物とが反応し、本実施形態で用いられる変性ポリフェニレンエーテル化合物が得られる。
【0062】
前記反応の際、アルカリ金属水酸化物の存在下で行うことが好ましい。そうすることによって、この反応が好適に進行すると考えられる。このことは、アルカリ金属水酸化物が、脱ハロゲン化水素剤、具体的には、脱塩酸剤として機能するためと考えられる。すなわち、アルカリ金属水酸化物が、ポリフェニレンエーテルのフェノール基と、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物とから、ハロゲン化水素を脱離させ、そうすることによって、ポリフェニレンエーテルのフェノール基の水素原子の代わりに、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基が、フェノール基の酸素原子に結合すると考えられる。
【0063】
アルカリ金属水酸化物は、脱ハロゲン化剤として働きうるものであれば、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、アルカリ金属水酸化物は、通常、水溶液の状態で用いられ、具体的には、水酸化ナトリウム水溶液として用いられる。
【0064】
反応時間や反応温度等の反応条件は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物等によっても異なり、上記のような反応が好適に進行する条件であれば、特に限定されない。具体的には、反応温度は、室温~100℃であることが好ましく、30~100℃であることがより好ましい。また、反応時間は、0.5~20時間であることが好ましく、0.5~10時間であることがより好ましい。
【0065】
反応時に用いる溶媒は、ポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物とを溶解させることができ、ポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された化合物との反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、トルエン等が挙げられる。
【0066】
上記の反応は、アルカリ金属水酸化物だけではなく、相間移動触媒も存在した状態で反応させることが好ましい。すなわち、上記の反応は、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下で反応させることが好ましい。そうすることによって、上記反応がより好適に進行すると考えられる。このことは、以下のことによると考えられる。相間移動触媒は、アルカリ金属水酸化物を取り込む機能を有し、水のような極性溶剤の相と、有機溶剤のような非極性溶剤の相との両方の相に可溶で、これらの相間を移動することができる触媒であることによると考えられる。具体的には、アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム水溶液を用い、溶媒として、水に相溶しない、トルエン等の有機溶剤を用いた場合、水酸化ナトリウム水溶液を、反応に供されている溶媒に滴下しても、溶媒と水酸化ナトリウム水溶液とが分離し、水酸化ナトリウムが、溶媒に移行しにくいと考えられる。そうなると、アルカリ金属水酸化物として添加した水酸化ナトリウム水溶液が、反応促進に寄与しにくくなると考えられる。これに対して、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下で反応させると、アルカリ金属水酸化物が相間移動触媒に取り込まれた状態で、溶媒に移行し、水酸化ナトリウム水溶液が、反応促進に寄与しやすくなると考えられる。このため、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下で反応させると、上記反応がより好適に進行すると考えられる。
【0067】
相間移動触媒は、特に限定されないが、例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0068】
本実施形態で用いられる樹脂組成物には、変性ポリフェニレンエーテル化合物として、上記のようにして得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物を含むことが好ましい。
【0069】
(架橋型硬化剤)
本実施形態で用いられる架橋型硬化剤は、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するものであれば、特に限定されない。すなわち、前記架橋型硬化剤は、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と反応させることによって、前記樹脂組成物内に架橋を形成させて、前記樹脂組成物を硬化させることができるものであればよい。前記架橋型硬化剤は、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有する化合物が好ましい。
【0070】
本実施形態において用いられる架橋型硬化剤は、重量平均分子量が100~5000であることが好ましく、100~4000であることがより好ましく、100~3000であることがさらに好ましい。架橋型硬化剤の重量平均分子量が低すぎると、架橋型硬化剤が樹脂組成物の配合成分系から揮発しやすくなるおそれがある。また、架橋型硬化剤の重量平均分子量が高すぎると、樹脂組成物のワニスの粘度や、加熱成形時の溶融粘度が高くなりすぎるおそれがある。よって、架橋型硬化剤の重量平均分子量がこのような範囲内であると、硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物が得られる。このことは、変性ポリフェニレンエーテル化合物との反応により、架橋を好適に形成することができるためと考えられる。なお、ここで、重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。
【0071】
本実施形態において用いられる架橋型硬化剤は、架橋型硬化剤1分子当たりの、炭素-炭素不飽和二重結合の平均個数(末端二重結合数)は、架橋型硬化剤の重量平均分子量によって異なるが、例えば、1~20個であることが好ましく、2~18個であることがより好ましい。この末端二重結合数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、末端二重結合数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、樹脂組成物の保存性が低下したり、樹脂組成物の流動性が低下してしまう等の不具合が発生するおそれがある。
【0072】
架橋型硬化剤の末端二重結合数としては、架橋型硬化剤の重量平均分子量をより考慮すると、架橋型硬化剤の重量平均分子量が500未満(例えば、100以上500未満)の場合、1~4個であることが好ましい。また、架橋型硬化剤の末端二重結合数としては、架橋型硬化剤の重量平均分子量が500以上(例えば、500以上5000以下)の場合、3~20個であることが好ましい。それぞれの場合で、末端二重結合数が、上記範囲の下限値より少ないと、架橋型硬化剤の反応性が低下して、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が低下し、耐熱性やTgを充分に向上させることができなくなるおそれがある。一方、末端二重結合数が、上記範囲の上限値より多いと、樹脂組成物がゲル化しやすくなるおそれがある。
【0073】
なお、ここでの末端二重結合数は、使用する架橋型硬化剤の製品の規格値からわかる。ここでの末端二重結合数としては、具体的には、例えば、架橋型硬化剤1モル中に存在する全ての架橋型硬化剤の1分子あたりの二重結合数の平均値を表した数値等が挙げられる。
【0074】
本実施形態において用いられる架橋型硬化剤は、具体的には、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、トリアルケニルイソシアヌレート化合物、ポリブタジエン化合物、及びマレイミド化合物等が挙げられる。前記アクリレート化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等の、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物等が挙げられる。前記メタクリレート化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP)等の、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物等が挙げられる。前記トリアルケニルイソシアヌレート化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等が挙げられる。また、前記架橋型硬化剤としては、上記ポリブタジエン等のように分子中にビニル基を2個以上有するビニル化合物(多官能ビニル化合物)、及び分子中にビニルベンジル基を有するスチレン、ジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物等も挙げられる。この中でも、炭素-炭素二重結合を分子中に2個以上有するものが好ましい。具体的には、トリアルケニルイソシアヌレート化合物、多官能アクリレート化合物、多官能メタクリレート化合物、多官能ビニル化合物、及びジビニルベンゼン化合物等が挙げられる。これらを用いると、硬化反応により架橋がより好適に形成されると考えられ、本実施形態で用いられる樹脂組成物の硬化物の耐熱性をより高めることができる。また、架橋型硬化剤は、例示した架橋型硬化剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋型硬化剤としては、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有する化合物と、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に1個有する化合物とを併用してもよい。炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に1個有する化合物としては、具体的には、分子中にビニル基を1個有する化合物(モノビニル化合物)等が挙げられる。
【0075】
(含有量)
前記変性ポリフェニレンエーテル化合物の含有量は、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤との合計100質量部に対して、40質量部以上であることが好ましく、40~90質量部であることがより好ましく、50~90質量部であることがさらに好ましい。すなわち、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物は、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤との合計質量に対して、40質量%以上であることが好ましい。また、前記架橋型硬化剤の含有量が、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤との合計100質量部に対して、60質量部以下であることが好ましく、10~60質量部であることがより好ましく、10~50質量部であることがさらに好ましい。すなわち、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤との含有比が、質量比で90:10~40:60であることが好ましく、90:10~50:50であることが好ましい。前記変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記架橋型硬化剤の各含有量が、上記比を満たすような含有量であれば、硬化物の耐熱性により優れた樹脂組成物になる。このことは、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤との硬化反応が好適に進行するためと考えられる。
【0076】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記架橋型硬化剤以外の成分(その他の成分)を含有してもよい。本実施の形態に係る樹脂組成物に含有されるその他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、難燃剤、開始剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤、及び無機充填材等の添加剤をさらに含んでもよい。また、前記樹脂組成物には、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記架橋型硬化剤以外にも、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含有してもよい。
【0077】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述したように、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤は、樹脂組成物に含有されるだけではなく、樹脂組成物に含有されている無機充填材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有していてもよいし、繊維質基材に予め表面処理されたシランカップリング剤として含有していてもよい。シランカップリング剤については、後述する。
【0078】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述したように、難燃剤を含有してもよい。難燃剤を含有することによって、樹脂組成物の硬化物の難燃性を高めることができる。前記難燃剤は、特に限定されない。具体的には、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤を使用する分野では、例えば、融点が300℃以上のエチレンジペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、及びテトラデカブロモジフェノキシベンゼンが好ましい。ハロゲン系難燃剤を使用することにより、高温時におけるハロゲンの脱離が抑制でき、耐熱性の低下を抑制できると考えられる。また、ハロゲンフリーが要求される分野では、リン酸エステル系難燃剤、ホスファゼン系難燃剤、ビスジフェニルホスフィンオキサイド系難燃剤、及びホスフィン酸塩系難燃剤が挙げられる。リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、ジキシレニルホスフェートの縮合リン酸エステルが挙げられる。ホスファゼン系難燃剤の具体例としては、フェノキシホスファゼンが挙げられる。ビスジフェニルホスフィンオキサイド系難燃剤の具体例としては、キシリレンビスジフェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。ホスフィン酸塩系難燃剤の具体例としては、例えば、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩のホスフィン酸金属塩が挙げられる。前記難燃剤としては、例示した各難燃剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
本実施形態に係る樹脂組成物には、上述したように、開始剤(反応開始剤)を含有してもよい。ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、変性ポリフェニレンエーテル化合物と架橋型硬化剤とからなるものであっても、硬化反応は進行し得る。また、変性ポリフェニレンエーテルのみであっても、硬化反応は進行し得る。しかしながら、プロセス条件によっては硬化が進行するまで高温にすることが困難な場合があるので、反応開始剤を添加してもよい。反応開始剤は、変性ポリフェニレンエーテルと架橋型硬化剤との硬化反応を促進することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、過酸化ベンゾイル、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等の酸化剤が挙げられる。また、必要に応じて、カルボン酸金属塩等を併用することができる。そうすることによって、硬化反応を一層促進させるができる。これらの中でも、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンが好ましく用いられる。α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、反応開始温度が比較的に高いため、プリプレグ乾燥時等の硬化する必要がない時点での硬化反応の促進を抑制することができ、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の保存性の低下を抑制することができる。さらに、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、揮発性が低いため、プリプレグ乾燥時や保存時に揮発せず、安定性が良好である。また、反応開始剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
本実施形態に係る樹脂組成物には、上述したように、無機充填材等の充填材を含有してもよい。充填材としては、樹脂組成物の硬化物の、耐熱性及び難燃性を高めるために添加するもの等が挙げられ、特に限定されない。また、充填材を含有させることによって、耐熱性及び難燃性等をさらに高めることができる。充填材としては、具体的には、球状シリカ等のシリカ、アルミナ、酸化チタン、及びマイカ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、タルク、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。また、充填材としては、この中でも、シリカ、マイカ、及びタルクが好ましく、球状シリカがより好ましい。また、充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、充填材としては、そのまま用いてもよいし、シランカップリング剤で表面処理したものを用いてもよい。このシランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、及びアクリル基等の官能基を分子中に有するシランカップリング剤が挙げられる。また、充填材を含有する場合、その含有率(フィラーコンテンツ)は、前記樹脂組成物に対して、30~270質量%であることが好ましく、50~250質量%であることがより好ましい。
【0081】
[樹脂ワニス]
本実施形態で用いる樹脂組成物は、ワニス状に調製して用いてもよい。例えば、プリプレグを製造する際に、プリプレグを形成するための基材(繊維質基材)に含浸することを目的として、ワニス状に調製して用いてもよい。すなわち、樹脂組成物は、ワニス状に調製されたもの(樹脂ワニス)として用いてもよい。また、本実施形態で用いる樹脂組成物において、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記架橋型硬化剤は、樹脂ワニス中に溶解されたものである。このようなワニス状の組成物(樹脂ワニス)は、例えば、以下のようにして調製される。
【0082】
まず、有機溶媒に溶解できる各成分を、有機溶媒に投入して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。その後、必要に応じて用いられる、有機溶媒に溶解しない成分を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、ワニス状の組成物が調製される。ここで用いられる有機溶媒としては、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤とを溶解させ、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、トルエンやメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。
【0083】
[繊維質基材]
本実施形態で用いる繊維質基材は、石英ガラスクロスである。石英ガラスクロスは、石英ガラスヤーンからなるガラスクロスであって、ガラスクロスを構成するガラスが、二酸化ケイ素(SiO2)の含有率が99質量%以上の石英ガラス(Qガラス)である。石英ガラスクロスは、例えば、石英ガラス繊維を用いて製織することによって得られる。
【0084】
本実施形態で用いる繊維質基材としては、そのまま用いてもよいし、シランカップリング剤で表面処理したものを用いてもよい。このシランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、及びアクリル基等の官能基を分子中に有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0085】
前記繊維質基材の形状としては、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等が挙げられ、その中でも、強度面に優れ、かつ、バインダを用いないという点から、ガラスクロスを用いることが好ましい。また、前記ガラスクロスは、開繊処理を施すことによって、通気度を調整したものがより好ましい。前記開繊処理としては、例えば、ガラスクロスに高圧水を吹き付けることで行う処理、及び、プレスロールにて適宜の圧力で連続的にヤーンを加圧して、偏平に圧縮することにより行う処理等が挙げられる。前記ガラスクロスの通気度は、200cm3/cm2/秒以下であることが好ましく、3~100cm3/cm2/秒であることがより好ましく、3~50cm3/cm2/秒であることがさらに好ましい。この通気度が大きすぎる場合、ガラスクロスの開繊が不充分な傾向がある。ガラスクロスの開繊が不充分であると、プリプレグ製造時にピンホールが発生したり、ヤーンの粗密が大きくなってスキューが発生しやすくなったり、ドリル等の加工時の均一性にむらが発生したりする。また、前記通気度が小さすぎる場合、それだけ強力な開繊処理が施されたということになり、ガラスクロスに毛羽立ち等の問題が発生する傾向がある。なお、前記通気度としては、JIS R 3420(2013)に準拠して、フラジール形通気性試験機で測定された通気度である。また、繊維質基材の厚みとしては、例えば、0.02~0.1mm程度のものを一般的に使用できる。
【0086】
[シランカップリング剤]
前記プリプレグは、上述したように、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤を含む。前記シランカップリング剤は、プリプレグに含有していれば、その添加方法には限定されない。前記シランカップリング剤の添加方法としては、例えば、前記樹脂組成物を製造する際に、前記シランカップリング剤で予め表面処理した無機充填材を添加することによって、前記シランカップリング剤を添加してもよいし、前記シリカ及び前記シランカップリング剤をインテグラルブレンド法で添加してもよい。また、前記プリプレグを製造する際に、前記シランカップリング剤で予め表面処理した繊維質基材を用いることで、前記シランカップリング剤を前記プリプレグに添加してもよい。この中でも、前記シランカップリング剤で予め表面処理した無機充填材を添加する方法や前記シランカップリング剤で予め表面処理した繊維質基材を用いる方法が好ましい。すなわち、前記無機充填材としては、シランカップリング剤で予め表面処理された無機充填材が好ましく、前記繊維質基材としては、シランカップリング剤で予め表面処理された繊維質基材が好ましい。また、前記シランカップリング剤の添加方法としては、前記シランカップリング剤で予め表面処理した繊維質基材を用いる方法がより好ましく、前記シランカップリング剤で予め表面処理した無機充填材を添加する方法と前記シランカップリング剤で予め表面処理した繊維質基材を用いる方法とを併用する方法がさらに好ましい。すなわち、前記無機充填材としては、シランカップリング剤で予め表面処理された無機充填材を用い、前記繊維質基材としては、シランカップリング剤で予め表面処理された繊維質基材を用いることが好ましい。
【0087】
前記炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤は、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤であれば、特に限定されない。このシランカップリング剤としては、具体的には、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、及びアクリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。すなわち、このシランカップリング剤は、反応性官能基として、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、及びアクリル基のうち、少なくとも1つを有し、さらに、メトキシ基やエトキシ基等の加水分解性基を有する化合物等が挙げられる。
【0088】
前記シランカップリング剤としては、ビニル基を有するものとして、例えば、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0089】
前記シランカップリング剤としては、スチリル基を有するものとして、例えば、p-スチリルトリメトキシシラン、及びp-スチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0090】
前記シランカップリング剤としては、メタクリル基を有するものとして、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0091】
前記シランカップリング剤としては、アクリル基を有するものとして、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0092】
前記シランカップリング剤は、上記の中でも、メタクリル基及びアクリル基の少なくとも一方を分子中に有するシランカップリング剤が好ましい。すなわち、前記シランカップリング剤は、メタクリル基を有するシランカップリング剤及びアクリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。これらのシランカップリング剤を用いると、得られたプリプレグの耐熱性が高まり、例えば、吸湿条件が厳しい条件であっても充分に高い耐熱性を発揮することができる。
【0093】
前記シランカップリング剤の含有量は、前記プリプレグに対して、0.01質量%以上3質量%未満であり、0.01~2.51質量%であることが好ましく、0.03~1質量%であることがより好ましい。この含有量が少なすぎると、前記シランカップリング剤を添加した効果を充分に発揮できず、耐熱性等が低下する傾向がある。また、前記含有量が多すぎると、プリプレグの硬化物の誘電正接が低下し、低誘電特性が低下する傾向がある。よって、前記シランカップリング剤の含有量は、上記範囲内であると、石英ガラスクロスを用いることによって高めた低誘電特性を維持し、さらに、耐熱性の低下を充分に抑制することができる。なお、このシランカップリング剤の含有量は、プリプレグに含まれる前記シランカップリング剤の全量である。すなわち、樹脂組成物に添加したシランカップリング剤(インテグラルブレンド法で添加したシランカップリング剤)、樹脂組成物に添加した無機充填材に表面処理されたシランカップリング剤、及びプリプレグに備えられた繊維質基材に表面処理されたシランカップリング剤等の合計質量に基づく含有率である。
【0094】
[プリプレグの誘電特性]
前記プリプレグは、その硬化物の誘電正接が、10GHzにおいて、0.002以下である。前記プリプレグの硬化物の誘電正接は小さければ小さいほど好ましく、0であることが好ましい。このことから、前記プリプレグの誘電正接は、0~0.002であることが好ましく、0~0.0018であることがより好ましく、0~0.0016であることがさらに好ましい。プリプレグの硬化物の誘電正接が上記範囲内であると、低誘電特性に優れている。プリプレグの硬化物の誘電正接が上記範囲内になるように、樹脂組成物の組成、例えば、無機充填材及び開始剤等の含有量等を調整することが好ましい。
【0095】
[製造方法]
次に、本実施形態に係るプリプレグの製造方法について説明する。
【0096】
前記プリプレグの製造方法は、前記プリプレグを製造することができれば、特に限定されない。具体的には、プリプレグを製造する際には、上述した本実施形態で用いる樹脂組成物は、上述したように、ワニス状に調製し、樹脂ワニスとして用いられることが多い。
【0097】
プリプレグ1を製造する方法としては、例えば、樹脂組成物2、例えば、ワニス状に調製された樹脂組成物2を繊維質基材3に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。
【0098】
樹脂組成物2は、繊維質基材3へ、浸漬及び塗布等によって含浸される。必要に応じて複数回繰り返して含浸することも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の樹脂組成物を用いて含浸を繰り返すことにより、最終的に希望とする組成及び含浸量に調整することも可能である。
【0099】
樹脂組成物(樹脂ワニス)2が含浸された繊維質基材3は、所望の加熱条件、例えば、80℃以上、180℃以下で1分間以上、10分間以下加熱される。加熱によって、硬化前(Aステージ)又は半硬化状態(Bステージ)のプリプレグ1が得られる。
【0100】
<金属張積層板>
図2は、本発明の実施形態に係る金属張積層板11の一例を示す概略断面図である。
【0101】
金属張積層板11は、
図2に示すように、
図1に示すプリプレグ1の硬化物を含む絶縁層12と、絶縁層12とともに積層される金属箔13とから構成されている。すなわち、金属張積層板11は、前記プリプレグ1の硬化物を含む絶縁層12と、絶縁層12に接合された金属箔13とを有する。また、絶縁層12は、プリプレグ1の硬化物からなるものであってもよい。
【0102】
プリプレグ1を用いて金属張積層板11を作製する方法として、プリプレグ1を1枚又は複数枚重ね、さらに、その上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔13を重ね、金属箔13およびプリプレグ1を加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層板11を作製する方法が挙げられる。すなわち、金属張積層板11は、プリプレグ1に金属箔13を積層して、加熱加圧成形して得られる。また、加熱加圧条件は、製造する金属張積層板11の厚みやプリプレグ1の組成物の種類等により適宜設定することができる。例えば、温度を170~210℃、圧力を3.5~4MPa、時間を60~150分間とすることができる。また、金属張積層板は、プリプレグを用いずに、製造してもよい。例えば、ワニス状の樹脂組成物等を金属箔上に塗布し、金属箔上に樹脂組成物を含む層を形成した後、加熱加圧する方法等が挙げられる。
【0103】
本実施形態に係るプリプレグは、低誘電特性及び耐熱性に優れているため、このプリプレグを用いて得られた金属張積層板は、優れた、低誘電特性及び耐熱性を発揮することができる。この金属張積層板は、優れた、低誘電特性及び耐熱性が発揮される配線板を製造することができる。
【0104】
図3は、本発明の実施形態に係る配線板21の一例を示す概略断面図である。
【0105】
本実施形態に係る配線板21は、
図3に示すように、
図1に示すプリプレグ1の硬化物を含む絶縁層12と、絶縁層12ともに積層され、金属箔13を部分的に除去して形成された配線14とから構成されている。すなわち、前記配線板21は、前記プリプレグ1の硬化物を含む絶縁層12と、絶縁層12に接合された配線14とを有する。また、絶縁層12は、プリプレグ1の硬化物からなるものであってもよい。
【0106】
プリプレグ1を用いて配線板21を作製する方法としては、上記のようにして作製された金属張積層板11の表面の金属箔13をエッチング加工等して配線形成をすることによって、絶縁層12の表面に回路として配線が設けられた配線板21を得ることができる。すなわち、配線板21は、金属張積層板11の表面の金属箔13を部分的に除去することにより回路形成して得られる。
【0107】
本実施形態に係るプリプレグは、低誘電特性及び耐熱性に優れているため、このプリプレグを用いて得られた配線板は、優れた、低誘電特性及び耐熱性を発揮することができる。
【0108】
本明細書は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0109】
本発明の一局面は、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と、繊維質基材とを備えるプリプレグであって、前記樹脂組成物は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物と、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有する架橋型硬化剤とを含有し、前記繊維質基材は、石英ガラスクロスであり、前記プリプレグは、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に有するシランカップリング剤を、前記プリプレグに対して、0.01質量%以上3質量%未満含み、前記プリプレグの硬化物の誘電正接が、10GHzにおいて0.002以下であるプリプレグである。
【0110】
このような構成によれば、低誘電特性及び耐熱性に優れたプリプレグを提供することができる。まず、プリプレグを構成する繊維質基材として、比較的低い誘電率を有する石英ガラスクロスを用いることによって、得られたプリプレグは、その硬化物の低誘電特性に優れたものになると考えられる。しかしながら、繊維質基材として、石英ガラスクロスを単に用いただけでは、その硬化物の低誘電特性が充分には高くならなかったり、硬化物の耐熱性が充分に高いものにならない場合があった。そこで、前記プリプレグは、繊維質基材として、石英ガラスクロスを単に用いるだけではなく、プリプレグを構成する樹脂組成物として、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物及び前記架橋型硬化剤を含有する樹脂組成物を用いる。また、前記プリプレグは、前記シランカップリング剤をプリプレグに所定量含有させる。さらに、前記プリプレグは、その硬化物の誘電正接が上記範囲内になるように、石英ガラスクロスの状態等を調整する。そうすることによって、低誘電特性及び耐熱性に優れたプリプレグが得られる。
【0111】
また、前記プリプレグにおいて、前記架橋型硬化剤は、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、トリアルケニルイソシアヌレート化合物、ポリブタジエン化合物、及びマレイミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0112】
このような構成によれば、低誘電特性及び耐熱性により優れたプリプレグを提供することができる。
【0113】
また、前記プリプレグにおいて、前記シランカップリング剤は、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、及びアクリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を分子中に有するシランカップリング剤であることが好ましい。
【0114】
このような構成によれば、低誘電特性及び耐熱性により優れたプリプレグを提供することができる。
【0115】
また、前記プリプレグにおいて、前記シランカップリング剤は、メタクリル基及びアクリル基の少なくとも一方を分子中に有するシランカップリング剤であることが好ましい。
【0116】
このような構成によれば、低誘電特性及び耐熱性により優れたプリプレグを提供することができる。
【0117】
また、前記プリプレグにおいて、前記樹脂組成物は、無機充填材をさらに含み、前記無機充填材は、シリカ、マイカ、及びタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0118】
このような構成によれば、低誘電特性及び耐熱性により優れたプリプレグを提供することができる。
【0119】
また、前記プリプレグにおいて、前記繊維質基材は、前記シランカップリング剤で表面処理された基材であることが好ましい。
【0120】
このような構成によれば、低誘電特性及び耐熱性により優れたプリプレグを提供することができる。
【0121】
また、前記プリプレグにおいて、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物における前記置換基が、ビニルベンジル基、ビニル基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0122】
このような構成によれば、低誘電特性及び耐熱性により優れたプリプレグを提供することができる。
【0123】
また、本発明の他の一局面は、前記プリプレグの硬化物を含む絶縁層と、金属箔とを備える金属張積層板である。
【0124】
このような構成によれば、低誘電特性及び耐熱性により優れた金属張積層板を提供することができる。
【0125】
また、本発明の他の一局面は、前記プリプレグの硬化物を含む絶縁層と、配線とを備える配線板である。
【0126】
このような構成によれば、低誘電特性及び耐熱性により優れた配線板を提供することができる。
【0127】
本発明によれば、低誘電特性及び耐熱性に優れた、プリプレグ、金属張積層板、及び配線板を提供することができる。
【0128】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0129】
[実施例1~23、比較例1~10]
本実施例において、プリプレグを調製する際に用いる各成分について説明する。
【0130】
(ポリフェニレンエーテル:PPE)
変性PPE-1:ポリフェニレンエーテルとクロロメチルスチレンとを反応させて得られた変性ポリフェニレンエーテルである。
【0131】
具体的には、以下のように反応させて得られた変性ポリフェニレンエーテルである。
【0132】
まず、温度調節器、攪拌装置、冷却設備、及び滴下ロートを備えた1リットルの3つ口フラスコに、ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA90、末端水酸基数2個、重量平均分子量Mw1700)200g、p-クロロメチルスチレンとm-クロロメチルスチレンとの質量比が50:50の混合物(東京化成工業株式会社製のクロロメチルスチレン:CMS)30g、相間移動触媒として、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド1.227g、及びトルエン400gを仕込み、攪拌した。そして、ポリフェニレンエーテル、クロロメチルスチレン、及びテトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイドが、トルエンに溶解するまで攪拌した。その際、徐々に加熱し、最終的に液温が75℃になるまで加熱した。そして、その溶液に、アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム20g/水20g)を20分間かけて、滴下した。その後、さらに、75℃で4時間攪拌した。次に、10質量%の塩酸でフラスコの内容物を中和した後、多量のメタノールを投入した。そうすることによって、フラスコ内の液体に沈殿物を生じさせた。すなわち、フラスコ内の反応液に含まれる生成物を再沈させた。そして、この沈殿物をろ過によって取り出し、メタノールと水との質量比が80:20の混合液で3回洗浄した後、減圧下、80℃で3時間乾燥させた。
【0133】
得られた固体を、1H-NMR(400MHz、CDCl3、TMS)で分析した。NMRを測定した結果、5~7ppmにビニルベンジル基(エテニルベンジル基)に由来するピークが確認された。これにより、得られた固体が、分子末端に、前記置換基としてビニルベンジル基を分子中に有する変性ポリフェニレンエーテルであることが確認できた。具体的には、エテニルベンジル化されたポリフェニレンエーテルであることが確認できた。この得られた変性ポリフェニレンエーテル化合物は、上記式(2)で表され、式(2)中のXが、ビニルベンジル基(エテニルベンジル基)であり、式(2)の中のYがジメチルメチレン基(式(3)で表され、式(3)中のR17及びR18がメチル基である基)である変性ポリフェニレンエーテル化合物である。
【0134】
また、変性ポリフェニレンエーテルの末端官能基数を、以下のようにして測定した。
【0135】
まず、変性ポリフェニレンエーテルを正確に秤量した。その際の重量を、X(mg)とする。そして、この秤量した変性ポリフェニレンエーテルを、25mLの塩化メチレンに溶解させ、その溶液に、10質量%のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)のエタノール溶液(TEAH:エタノール(体積比)=15:85)を100μL添加した後、UV分光光度計(株式会社島津製作所製のUV-1600)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定した。そして、その測定結果から、下記式を用いて、変性ポリフェニレンエーテルの末端水酸基数を算出した。
【0136】
残存OH量(μmol/g)=[(25×Abs)/(ε×OPL×X)]×106
ここで、εは、吸光係数を示し、4700L/mol・cmである。また、OPLは、セル光路長であり、1cmである。
【0137】
そして、その算出された変性ポリフェニレンエーテルの残存OH量(末端水酸基数)は、ほぼゼロであることから、変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基が、ほぼ変性されていることがわかった。このことから、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数からの減少分は、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数であることがわかった。すなわち、変性前のポリフェニレンエーテルの末端水酸基数が、変性ポリフェニレンエーテルの末端官能基数であることがわかった。つまり、末端官能基数が、2個であった。
【0138】
また、変性ポリフェニレンエーテルの、25℃の塩化メチレン中で固有粘度(IV)を測定した。具体的には、変性ポリフェニレンエーテルの固有粘度(IV)を、変性ポリフェニレンエーテルの、0.18g/45mlの塩化メチレン溶液(液温25℃)を、粘度計(Schott社製のAVS500 Visco System)で測定した。その結果、変性ポリフェニレンエーテルの固有粘度(IV)は、0.086dl/gであった。
【0139】
また、変性ポリフェニレンエーテルの分子量分布を、GPCを用いて、測定した。そして、その得られた分子量分布から、重量平均分子量(Mw)を算出した。その結果、Mwは、2300であった。
【0140】
変性PPE-2:ポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性した変性ポリフェニレンエーテル(上記式(2)で表され、式(2)中のXがメタクリル基であり、式(2)の中のYがジメチルメチレン基(式(3)で表され、式(3)中のR17及びR18がメチル基である基)である変性ポリフェニレンエーテル化合物、SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA9000、重量平均分子量Mw2000、末端官能基数2個)
無変性PPE:ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA90、固有粘度(IV)0.083dl/g、末端水酸基数2個、重量平均分子量Mw1700)
(架橋型硬化剤)
TAIC:トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製のTAIC、分子量249、末端二重結合数3個)
DCP:トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学株式会社製のDCP、末端二重結合数2個)
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のエピクロンHP7200、平均エポキシ基数2.3個)
(反応開始剤)
開始剤:1,3-ビス(ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油株式会社製のパーブチルP(PBP))
(触媒)
触媒:2-エチル-4-メチルイミダゾール(イミダゾール触媒、四国化成工業株式会社製の2E4MZ)
(樹脂組成物に添加するシランカップリング剤)
樹脂組成物に添加するシランカップリング剤:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(分子中にメタクリル基を有するシランカップリング剤、信越化学工業株式会社製のKBM503)
(無機充填材)
表面処理なしシリカ:シランカップリング剤で表面処理をしていないシリカ粒子(株式会社アドマテックス製のSO25R)
表面処理シリカ:分子中にビニル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子(株式会社アドマテックス製のSC2300-SVJ)
(繊維質基材)
Qガラス:石英ガラスクロス(信越化学工業株式会社製のSQF2116AC-04、比誘電率:3.5、通気度:25cm3/cm2/秒)
Lガラス:Lガラスクロス(旭化成株式会社製のL2116AS760AW、比誘電率:4.5、通気度:20cm3/cm2/秒)
【0141】
上記Qガラス(石英ガラスクロス)又はLガラス(Lガラスクロス)のうち、シランカップリング剤で表面処理したものは、下記表1~3において、シランカップリング剤を記載する。具体的に、用いたシランカップリング剤は、以下に示す。なお、シランカップリング剤量が記載されていないものは、表面処理していないガラスクロスである。
【0142】
メタクリル基:分子中にメタクリル基を有するシランカップリング剤
ビニル基:分子中にビニル基を有するシランカップリング剤
アクリル基:分子中にアクリル基を有するシランカップリング剤
アミノ基:分子中にアミノ基を有するシランカップリング剤
【0143】
表2及び表3に記載の繊維質基材に対しては、分子中にメタクリル基を有するシランカップリング剤を用いた。
【0144】
[調製方法]
まず、無機充填材以外の各成分を表1~3に記載の配合割合(質量部)で、固形分濃度が60質量%となるように、トルエンに添加し、混合させた。その混合物を、室温で60分間攪拌した。その後、得られた液体に無機充填材を添加し、ビーズミルで無機充填材を分散させた。そうすることによって、ワニス状の樹脂組成物(ワニス)が得られた。
【0145】
次に、得られたワニスを、表1に示す繊維質基材(ガラスクロス)に含浸させた後、130℃で約3~8分間加熱乾燥することによりプリプレグを作製した。
【0146】
そして、得られた各プリプレグを4枚重ねて、温度200℃、2時間、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより評価基板(プリプレグの硬化物)を得た。
【0147】
上記のように調製された評価基板を、以下に示す方法により評価を行った。
【0148】
[誘電正接(Df)]
10GHzにおける評価基板の誘電正接(Df)を、空洞共振器摂動法で測定した。具体的には、ネットワーク・アナライザ(キーサイト・テクノロジー株式会社製のN5230A)を用い、10GHzにおける評価基板の誘電正接を測定した。
【0149】
[耐熱性]
はんだ耐熱性は、JIS C 6481を参考にした方法で測定する。具体的には、2つのテストを行う。まず、評価基板を、温度121℃、相対湿度100%RH、6時間のプレッシャークッカーテスト(PCT)を行う。そのPCT後の評価基板を、288℃の半田槽中に10秒間浸漬した。浸漬した評価基板に膨れ等の異常の発生の有無を目視で確認した。次に、プレッシャークッカーテスト(PCT)における温度を121℃から133℃に変えて、同様に、評価基板に膨れ等の異常の発生の有無を目視で確認した。
【0150】
その結果、プレッシャークッカーテスト(PCT)における温度が133℃の試験でも、膨れ等の異常が確認されなければ、「◎」と評価した。プレッシャークッカーテスト(PCT)における温度が133℃の試験で、膨れ等の異常が確認されるが、121℃の試験で、膨れ等の異常が確認されなければ、「○」と評価した。プレッシャークッカーテスト(PCT)における温度が121℃の試験で、膨れ等の異常が確認されれば、「×」と評価した。
【0151】
上記各評価における結果は、表1~3に示す。なお、表1~3中、表面処理シリカ(充填材)に含まれるシランカップリング剤の量は、「シラン中のシランカップリング剤量」として、括弧内に示す。また、繊維質基材(ガラスクロス)に含まれるシランカップリング剤の量は、「シランカップリング剤:繊維質基材中の量」として、括弧内に示す。また、「プリプレグ中のシランカップリング剤量」としては、プリプレグ内に含まれるシランカップリング剤の総量であり、「樹脂組成物に添加するシランカップリング剤」、「シラン中のシランカップリング剤量」、及び「シランカップリング剤:繊維質基材中の量」の合計量である。
【0152】
また、表面処理シリカ(充填材)に含まれるシランカップリング剤の量、及び繊維質基材(ガラスクロス)に含まれるシランカップリング剤の量は、具体的には、以下のような方法により算出した。
【0153】
表面処理シリカ(充填材)に含まれるシランカップリング剤の量は、示差熱熱重量同時測定装置による重量減少測定より算出した。具体的には、示差熱熱重量同時測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製のTG/DTA7300)を用い、窒素流量毎分200mlのもと、室温から600℃まで毎分10℃で昇温し、その後、600℃で1時間保持した際の重量減少量を、表面処理シリカ(充填材)に含まれるシランカップリング剤の量とした。
【0154】
繊維質基材(ガラスクロス)に含まれるシランカップリング剤の量は、JIS R 3420に準拠の方法で測定する。より具体的には、試料を105℃で30分間乾燥させて、625℃で2時間強熱した後、乾燥剤としてシリカゲルを入れたデシケータ内で室温まで放冷したときの重量減少量を、繊維質基材(ガラスクロス)に含まれるシランカップリング剤の量とした。
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
表1~3から、前記変性ポリフェニレンエーテル化合物と前記架橋型硬化剤とを含有する樹脂組成物又はその半硬化物と、石英ガラスクロスである繊維質基材とを備えるプリプレグであって、前記シランカップリング剤が、プリプレグに対して、0.01質量%以上3質量%未満含有されている場合(実施例1~23)は、そうでない場合(比較例1~10)と比較して、誘電正接が低く、硬化物の耐熱性が高いことがわかった。このことから、実施例1~23に係るプリプレグは、低誘電特性及び耐熱性に優れた金属張積層板及び配線板を製造することができることがわかる。
【0159】
また、繊維質基材を表面処理するシランカップリング剤として、メタクリル基を分子中に有するシランカップリング剤及びアクリル基を分子中に有するシランカップリング剤を用いた場合(実施例3,4)は、ビニル基を分子中に有するシランカップリング剤を用いた場合(実施例5)より耐熱性に優れることがわかった。
【0160】
また、プリプレグ中のシランカップリング剤量が1質量部と同じ実施例18と実施例6とを比較すると、シランカップリング剤を樹脂組成物にインテグラルブレンド法で添加するより、繊維質基材に表面処理したシランカップリング剤として含有させるほうが、耐熱性が高いことがわかった。
【0161】
また、プリプレグ中のシランカップリング剤量が1.01質量部と同じ実施例21と実施例9とを比較すると、シランカップリング剤を、インテグラルブレンド法での添加と無機充填材への表面処理による含有との併用より、無機充填材への表面処理による含有と繊維質基材への表面処理による含有との併用のほうが、耐熱性が高いことがわかった。
【0162】
また、プリプレグ中のシランカップリング剤量が0.04質量部と同じ実施例23と実施例1とを比較すると、シランカップリング剤を、繊維質基材に表面処理したシランカップリング剤として含有させるより、無機充填材への表面処理による含有と繊維質基材への表面処理による含有との併用のほうが、耐熱性が高いことがわかった。
【0163】
この出願は、2017年9月29日に出願された日本国特許出願特願2017-190782を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0164】
本発明を表現するために、上述において実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明によれば、低誘電特性及び耐熱性に優れた、プリプレグ、金属張積層板、及び配線板が提供される。