(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】部品供給装置および部品供給装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20230721BHJP
B65B 15/04 20060101ALI20230721BHJP
G01D 5/347 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
H05K13/02 B
B65B15/04 L
G01D5/347 110B
(21)【出願番号】P 2019032173
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】綴木 邦巳
(72)【発明者】
【氏名】▲樋▼口 義和
(72)【発明者】
【氏名】山村 達雄
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/109840(WO,A1)
【文献】特開2015-120230(JP,A)
【文献】特開2018-046155(JP,A)
【文献】特開2003-035564(JP,A)
【文献】特開平05-206691(JP,A)
【文献】特開2007-073632(JP,A)
【文献】特開平05-129796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0260522(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
B65B 15/04
G01D 5/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収納可能な複数のポケットを有するキャリアテープを、部品実装装置が前記部品を取り出す位置まで搬送する部品供給装置であって、
前記キャリアテープを搬送する搬送部と、
前記搬送部を制御する制御部と、を有し、
前記搬送部は、
モータと、
前記モータの回転によりパルス信号を出力し、前記モータの所定の複数の回転位置において複数の基準信号を出力するエンコーダを有し、
前記制御部は、前記複数の基準信号間のパルス信号の数に基づいて、前記モータの回転位置を判定
し、
前記エンコーダは、前記複数の回転位置のうち、第1の回転位置において第1の基準信号を出力し、第2の回転位置において第2の基準信号を出力し、
前記制御部は、前記モータを第1方向に回転させて、前記エンコーダが前記第1の基準信号と前記第2の基準信号を検出すると、前記第1の基準信号と前記第2の基準信号の間のパルス信号の数に応じて、前記モータを前記第1方向とは逆の第2方向に回転させて、前記第1の基準信号に対応する第1の回転位置へ原点復帰する、
部品供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品供給装置であって、
前記エンコーダは、前記複数の回転位置のうち、
第3の回転位置において第3の基準信号を出力し、
前記第1の基準信号および前記第2の基準信号で区切られた第1の回転区間における前記パルス信号の数と
前記第2の基準信号および前記第3の基準信号で区切られた第2の回転区間における前記パルス信号の数は異なる、
部品供給装置。
【請求項3】
請求項1
または2のいずれか一項に記載の部品供給装置であって、
前記エンコーダは、
前記モータに軸支され、それぞれ異なる前記パルス信号を出力させるための所定数のスリットが形成された回転板を有し、
前記回転板には、前記複数の回転位置のそれぞれにおいて基準信号を出力するための複数の基準スリットが設けられている、
部品供給装置。
【請求項4】
部品を収納可能な複数のポケットを有するキャリアテープを、部品実装装置が部品を取り出す位置まで搬送する部品供給装置の制御方法であって、
前記部品供給装置は、
モータを有して前記キャリアテープを搬送する搬送部と、前記搬送部を制御する制御部と、を有し、
前記搬送部は、
前記モータの回転によりパルス信号を出力し、前記モータの所定の複数の回転位置において複数の基準信号を出力し、
前記制御部は、
前記複数の基準信号に含まれるパルス信号の数に基づいて、前記モータの回転位置を判定
し、
前記搬送部は、前記複数の回転位置のうち、第1の回転位置において第1の基準信号を出力し、第2の回転位置において第2の基準信号を出力し、
前記制御部は、前記モータを第1方向に回転させて、前記搬送部が前記第1の基準信号と前記第2の基準信号を検出すると、前記第1の基準信号と前記第2の基準信号の間のパルス信号の数に応じて、前記モータを前記第1方向とは逆の第2方向に回転させて、前記第1の基準信号に対応する第1の回転位置へ原点復帰する、
部品供給装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部品供給装置および部品供給装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に電子部品を実装する電子部品実装装置において、回転数および回転量を制御可能なモータと、絶対位置を検出可能なアブソリュートエンコーダを備えた電子部品実装装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電子部品実装装置では、モータの駆動回転に伴って回転するスプロケットを用いて、電子部品を保持したキャリアテープを任意の設定(例えば、送り速度、送りピッチあるいはピッチ送りの停止位置等)で送る。アブソリュートエンコーダは、停止時におけるスプロケットの各ピンの回転位置を個別に検出可能である。電子部品実装装置は、スプロケットのピン位置より正しい回転停止位置に対応したモータの回転量に基づき、スプロケットを正しい回転停止位置で停止するように制御する。これにより、使用するテープフィーダごとに要する位置合わせの労力を低減して、作業効率を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1で使用されるアブソリュートエンコーダは非常に高価であり、テープフィーダごとに多数のアブソリュートエンコーダを使用することは困難である。また、高分解能のアブソリュートエンコーダはサイズが大きいため、テープフィーダに搭載することは困難である。
【0005】
また、アブソリュートエンコーダに対し、比較的安価なインクリメンタルエンコーダが知られている。インクリメンタルエンコーダは、周方向に所定数のスリットを有する格子円盤と、格子円盤を挟むように対向する複数の発光ダイオードと複数のフォトダイオードのそれぞれをペアとするA相のフォトセンサおよびB相のフォトセンサと、複数の発光ダイオードと格子円盤との間に配置されて格子円盤の回転角度を示すA相信号とB相信号とを検出するためのA相のスリットおよびB相のスリットとを有する固定板を含んで構成される。A相のフォトセンサおよびB相のフォトセンサは、A相のスリットまたはB相のスリットをそれぞれ通過する光を受光することで得られるパルス信号であるA相信号およびB相信号をそれぞれ出力する。
【0006】
インクリメンタルエンコーダは基準位置(原点)を検出するために、固定板の軸径方向の1箇所に刻まれたZ相のスリット、および格子円盤と固定板とを挟むように対向する発光ダイオードとフォトダイオードをペアとするZ相のフォトセンサを含む。Z相のフォトセンサは、Z相のスリットを通過する光を受光することで得られるZ(ゼロ)相信号を出力する。インクリメンタルエンコーダは、Z相信号のパルス信号を検出することで、格子円盤の基準位置を検出できる。インクリメンタルエンコーダは、基準位置(原点)からの回転角度は、Z相信号が検出される基準位置からのA相信号またはB相信号のパルス数に基づいて算出する。
【0007】
しかし、インクリメンタルエンコーダを搭載したモータは、基準位置(原点)を検出する原点サーチを行う場合には、格子円盤上に刻まれたZ相スリットを検出して現在の回転角度および基準位置(原点)を検出するために、最大で一周分格子円盤を回転させてZ相信号を検出する必要があった。よって、電子部品実装装置はこのようなモータを搭載した場合、電子部品実装装置を間欠起動する度にテープフィーダごとの原点復帰動作(位置合わせ)が必要となるので、部品を取り出し位置に搬送するためのテープ送り動作を開始するまでに時間がかかり、結果、生産性を低下させていた。
【0008】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、装置コストの低下を図りつつ、原点復帰動作および部品を取り出し位置に搬送する動作を短時間で行うことができる部品供給装置および部品供給装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、部品を収納可能な複数のポケットを有するキャリアテープを、部品実装装置が前記部品を取り出す位置まで搬送する部品供給装置であって、前記キャリアテープを搬送する搬送部と、前記搬送部を制御する制御部と、を有し、前記搬送部は、モータと、前記モータの回転によりパルス信号を出力し、前記モータの所定の複数の回転位置において複数の基準信号を出力するエンコーダを有し、前記制御部は、前記複数の基準信号間のパルス信号の数に基づいて、前記モータの回転位置を判定する、部品供給装置を提供する。
【0010】
本開示は、部品を収納可能な複数のポケットを有するキャリアテープを、部品実装装置が部品を取り出す位置まで搬送する部品供給装置の制御方法であって、前記部品供給装置は、モータを有して前記キャリアテープを搬送する搬送部と、前記搬送部を制御する制御部と、を有し、前記搬送部は、前記モータの回転によりパルス信号を出力し、前記モータの所定の複数の回転位置において複数の基準信号を出力し、前記制御部は、前記複数の基準信号に含まれるパルス信号の数に基づいて、前記モータの回転位置を判定する、部品供給装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、装置コストの低下を図りつつ、原点復帰動作および部品を取り出し位置に搬送する動作を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係るテープフィーダが配置される電子部品実装装置の全体構成例を示す図
【
図3】テープフィーダの制御系の構成例を示すブロック図
【
図7】フィーダ制御部とモータとの間における信号の伝達を説明する図
【
図9】エンコーダから出力されるA相信号、B相信号およびZ相信号のタイミングチャート
【
図10】フィーダ制御部による原点サーチおよび原点復帰手順の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1の内容に至る経緯)
昨今、基板に電子部品を供給する電子部品実装装置において、回転数および回転量を制御可能なモータと、絶対位置を検出可能なアブソリュートエンコーダを備えた電子部品実装装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。アブソリュートエンコーダは、停止時におけるスプロケットの各ピンの回転位置を個別に検出可能である。電子部品実装装置は、スプロケットのピン位置より正しい回転停止位置に対応したモータの回転量に基づき、スプロケットを正しい回転停止位置で停止するように制御する。これにより、電子部品実装装置は、使用するテープフィーダごとに要する位置合わせの労力を低減して、作業効率を向上することができる。また、このようなアブソリュートエンコーダに対し、比較的安価でサイズが小さくテープフィーダに搭載しやすいインクリメンタルエンコーダが知られている。
【0014】
インクリメンタルエンコーダは、格子円盤に周方向に所定数のスリットを有する格子円盤と、格子円盤を挟むように対向する複数の発光ダイオードと複数のフォトダイオードのそれぞれをペアとするA相のフォトセンサおよびB相のフォトセンサと、複数の発光ダイオードと格子円盤との間に配置されて格子円盤の回転角度を示すA相信号とB相信号とを検出するためのA相のスリットおよびB相のスリットとを有する固定板を含んで構成される。A相のフォトセンサおよびB相のフォトセンサは、A相のスリットまたはB相のスリットをそれぞれ通過する光を受光することで得られるパルス信号であるA相信号およびB相信号をそれぞれ出力する。
【0015】
インクリメンタルエンコーダは、基準位置(原点)を検出するために、固定板格子円盤の軸径方向の1箇所に刻まれたZ相のスリット、および格子円盤と固定板とを挟むように対向する発光ダイオードとフォトダイオードをペアとするZ相のフォトセンサを含む。Z相フォトセンサは、Z相のスリットを通過する光を受光することで得られるZ(ゼロ)相信号を出力する。インクリメンタルエンコーダは、Z相信号のパルス信号を検出することで、格子円盤の基準位置を検出する。インクリメンタルエンコーダでは、基準位置(原点)からの回転角度は、Z相信号が検出される基準位置からのA相信号またはB相信号のパルス数に基づいて算出することができる。
【0016】
しかし、インクリメンタルエンコーダを搭載したモータは、基準位置(原点)を検出する原点サーチを行う場合には、格子円盤上に刻まれたZ相のスリットを検出して現在の回転角度および基準位置(原点)を検出するために、最大で一周分、エンコーダ格子円盤を回転させてZ相信号を検出する必要があった。このように、原点復帰を行うために、モータを最大1回転させる必要があり、原点サーチに時間がかかっていた。よって、部品供給装置はテープフィーダにこのようなモータを搭載した場合、部品供給装置を間欠起動する度にテープフィーダごとの原点復帰位置合わせが必要となるので、部品を取り出し位置に搬送するためのテープ送り動作を開始するまでに時間がかかった。この結果、生産性を低下させていた。
【0017】
なお、特許文献1では、停止時におけるスプロケットの各ピンの回転位置を個別に検出可能なアブソリュートエンコーダを使用して使用するテープフィーダごとに要する位置合わせを行うため、インクリメンタルエンコーダを用いたテープフィーダの位置合わせを行うことは想定されていない。
【0018】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る部品供給装置および部品供給装置の制御方法を具体的に開示した実施形態である電子部品実装装置を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0019】
(実施の形態1)
図1を参照して、電子部品実装装置1の構造について説明する。
図1は、実施の形態1に係るテープフィーダ4が配置される電子部品実装装置1の全体構成例を示す図である。
図1は、1基のテープフィーダ4が搭載された電子部品実装装置1の部品供給部2の構成を示す図である。
【0020】
部品供給装置の一例としての部品供給部2は、フィーダベース3と、テープフィーダ4と、台車5と、供給リール6と、を含んで構成される。
【0021】
フィーダベース3の上面には、部品供給部2にそれぞれ着脱可能に複数のテープフィーダ4のそれぞれが並設して装着される。フィーダベース3は、端部に複数のテープフィーダ4のそれぞれを係止して固定する。
【0022】
搬送部の一例としてのテープフィーダ4は、フィーダベース3の下方に位置する台車5にセットされた供給リール6から電子部品を保持したキャリアテープ7を一定量の長さ(以下、所定のピッチと表記)ごとに引き出して、キャリアテープ7に保持された電子部品を移載ヘッド8のピックアップ位置まで供給する。
【0023】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成されたプロセッサである。制御部14は、テープフィーダ4の全体的な動作を司るコントローラとして機能し、テープフィーダ4の各部の動作を統括するための制御処理、テープフィーダ4の各部との間のデータの入出力処理、データの演算(計算)処理およびデータの記憶処理を行う。制御部14は、記憶部15に記憶されたプログラムおよびデータに従って動作する。制御部14は、動作時に記憶部15を使用し、制御部14が生成または取得したデータを記憶部15に記憶させる。
【0024】
ヘッド駆動部11は、移載ヘッド8を制御する。移載ヘッド8は、吸着位置(言い換えると、電子部品16の取り出し位置)に位置するキャリアテープ7の凹部7aに収納された電子部品16(
図4参照)を吸着して取り出す。移載ヘッド8は、ヘッド駆動部11によって駆動され、キャリアテープ7から取り出した電子部品16を搬送路9上に位置決めされた基板10に移動させる。移載ヘッド8は、吸着した電子部品16の実装位置座標を含む実装位置データに基づいて、基板10に電子部品16を実装する。
【0025】
カメラ12は、テープフィーダ4の電子部品16の吸着位置の上方に配置されて、電子部品16の吸着位置の近傍、例えば切り欠き部29a(
図5参照)を撮像する。カメラ12は、撮像した撮像データを認識部13に出力する。
【0026】
認識部13は、カメラ12によって撮像された撮像データに基づいて画像処理を行う。認識部13は、画像処理の結果に基づいてキャリアテープ7の送り孔(不図示)の位置またはテープ送り用のスプロケット21の送りピン21aのそれぞれの位置等を認識し、これらの正規位置を示す正規位置データに基づいて送りピン21aのそれぞれと移載ヘッド8との位置ずれ量を検出する。認識部13は、この位置ずれ量に関する検出結果を制御部14に出力する。
【0027】
制御部14は、テープデータに基づいてキャリアテープ7の凹部7aに収納される電子部品16を吸着位置に搬送する。制御部14は、入力された送りピン21aおよび電子部品16の位置ずれ量に基づいて後述する停止位置データと吸着位置データとを演算する。
【0028】
記憶部15は、例えば制御部14の各処理を実行する時に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、制御部14の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROM(Read Only Memory)とを有する。RAMには、制御部14により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、制御部14の動作(例えば、移載ヘッド8がキャリアテープ7から電子部品16を吸着して取り出すための動作)を規定するプログラムが書き込まれている。また、記憶部15は、テープデータ、停止位置データ、吸着位置データおよび実装位置データ等を記憶する。
【0029】
テープデータは、テープフィーダ4においてキャリアテープ7を電子部品16の吸着位置まで所定のピッチでピッチ送りする際の制御に関するデータであり、制御部14によって演算される。テープデータは、例えばテープを送るピッチ、送り速度または送り速度の加減速パターン等を含むデータである。テープデータは、使用するキャリアテープ7の種類ごとに予め設定される。また制御部14は、テープデータに基づいてヘッド駆動部11を制御する。
【0030】
停止位置データは、テープフィーダ4のそれぞれが固有する器差によって発生するスプロケット21の送りピン21aの停止位置のばらつきを防止するための補正データであって、後述するスプロケット21の複数の送りピン21aの停止位置を補正する。これにより停止位置データは、スプロケット21の送りピン21aの停止位置を補正して、キャリアテープ7に保持された電子部品16を正しく吸着位置に位置決めすることができる。なお、停止位置データついては後述する
図5において詳述する。
【0031】
吸着位置データは、移載ヘッド8がキャリアテープ7から電子部品16を吸着して取り出すときの吸着位置のばらつきを防止するための補正データであって、テープ送り方向と直交する方向(
図5,Y方向)の吸着位置を補正する。吸着位置データは、テープフィーダ4ごとに予め設定することによって、テープフィーダ4と使用するキャリアテープ7の種類ごとのそれぞれとが有する固有の器差を補正することができる。また、実装位置データは、基板10における電子部品16の実相位置(座標)のデータである。なお、吸着位置データについては後述する
図5において詳述する。
【0032】
図2を参照して、テープフィーダ4について説明する。
図2は、テープフィーダ4の内部構成例を示す側面図である。テープフィーダ4は、スプロケット21と、モータ22と、フィーダ制御部24と、を含んで構成される。モータ22には、ブラシレスモータ、DCモータまたはパルスモータなどが用いられる。
【0033】
テープフィーダ4は、細長形状の本体部4aの下面をフィーダベース3の上面に沿わせてフィーダベース3に装着される。テープフィーダ4は、本体部4aの下面に設けられた係止部4bをフィーダベース3の端部に係止させることで、テープフィーダ4の位置を固定する。
【0034】
テープフィーダ4の先端部は、移載ヘッド8によって吸着して取り出される電子部品16の吸着位置に設定される。テープフィーダ4は、先端部の上面に押さえ部材29を備え、先端部に搬出されるキャリアテープ7を下方に押圧しながら、ピッチ送りする。押さえ部材29は、切り欠き部29a(
図5参照)を備える。吸着ノズル8aは、切り欠き部29a内に設定された吸着位置に電子部品16が搬出されると、キャリアテープ7の凹部7a内に保持された電子部品16を吸着して取り出す。
【0035】
またテープフィーダ4は、切り欠き部29aの縁部において、キャリアテープ7の上面から電子部品を保護するためのトップテープ(不図示)をキャリアテープ7の搬出方向と逆方向に引っ張って剥離する。トップテープは、剥離されて本体部4aに内蔵されたテープ収納容器(不図示)内に収納される。
【0036】
スプロケット21は、モータ22と連動して駆動され、吸着位置の近傍に配置される。スプロケット21は、外周にそれぞれ所定のピッチで設けられた複数のピン21aのそれぞれを有する。複数のピン21aは、キャリアテープ7に搬出方向に所定のピッチで設けられた複数のテープ送り用の送り孔(不図示)のそれぞれと噛み合って、キャリアテープ7を搬出する。また、スプロケット21の側面には、モータ22の駆動軸に結合されて、回転駆動力をスプロケット21に伝達するベベルギヤ23と噛み合う複数の歯面21b(
図4参照)を備える。
【0037】
モータ22は、スプロケット21の回転位置を検出可能なエンコーダ60(
図6参照)を備え、フィーダ制御部24の制御信号に基づいてスプロケット21を駆動させる。
【0038】
フィーダ制御部24は、本体部4aに内蔵される。フィーダ制御部24は、テープフィーダ4の位置が固定されると、係止部4bに設けられたコネクタ28を介して電子部品実装装置1の制御部14と接続される。フィーダ制御部24は、記憶部15に記憶されたデータのうち、テープデータおよび停止位置データ等のテープフィーダ4の動作制御に必要なデータを記憶部15から取得する。フィーダ制御部24は、これらのデータに基づいて、モータ22の回転量を制御して、キャリアテープ7をピッチ送りする際のスプロケット21の回転量を任意に制御する。これによりフィーダ制御部24は、テープの送り速度、送りピッチおよび停止位置等を任意に制御できる。
【0039】
図3を参照して、テープフィーダ4の制御系の構成を説明する。
図3は、テープフィーダ4の制御系の構成例を示す図である。テープフィーダ4は、フィーダ制御部24を内蔵する。フィーダ制御部24は、モータ制御部25、通信部27およびデータ記憶部26を含んで構成される。
【0040】
モータ制御部25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成されたプロセッサであり、スプロケット駆動用のモータ22を制御する。モータ制御部25は、通信部27からキャリアテープ7の種類ごとに予め設定されたテープデータおよび停止位置データを取得する。モータ制御部25は、取得したテープデータおよび停止位置データに基づいて、モータ22の回転量に関する制御パラメータを制御する。またモータ制御部25は、通信部27からキャリアテープ7の種類に関するデータのみを取得した場合、データ記憶部26に記憶されたテープデータおよび停止位置データに基づいて、テープフィーダ4のテープ送り速度あるいは送りピッチ等を変更する。
【0041】
データ記憶部26は、例えばフィーダ制御部24の各処理を実行する時に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、フィーダ制御部24の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROM(Read Only Memory)とを有する。RAMには、通信部27により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に記憶される。ROMには、フィーダ制御部24の動作(例えば、モータ制御部25が通信部27から受信した制御信号に基づいてスプロケット21を制御する)を規定するプログラムが書き込まれている。また、データ記憶部26は、テープデータおよび停止位置データ等を記憶する。
【0042】
通信部27は、電子部品実装装置1の制御部14から使用するキャリアテープ7に関するテープデータおよび停止位置データ等のスプロケット21を制御するための制御信号を受信する。通信部27は、入力された制御信号に基づいてモータ制御部25にモータ22の回転量に関する制御パラメータを出力する。通信部27は、制御部14から入力されるテープデータおよび停止位置データ等のデータをデータ記憶部26に書き込んで記憶させる。また通信部27は、受信したテープデータがデータ記憶部26にすでに記憶されているキャリアテープ7のテープデータと一致する場合には、モータ制御部25にキャリアテープ7の種類に関するデータのみを出力する。
【0043】
図4を参照して、テープフィーダ4の搬送機構について説明する。
図4は、テープフィーダ4の搬送機構例を示す側面図である。
図4において、スプロケット21は、ポケットの一例としての複数の凹部7aのそれぞれに電子部品16を収納するキャリアテープ7を搬出する。また、カメラ12は、キャリアテープ7の電子部品16の吸着位置の上方に配置されて、電子部品16の吸着位置の近傍(例えば、切り欠き部29a)を撮像する。
【0044】
スプロケット21は、複数の送りピン21aのそれぞれとキャリアテープ7に設けられた複数の送り孔(不図示)とを噛み合わせて、キャリアテープ7に収納された電子部品16を吸着位置に搬送する。スプロケット21の側面には、周方向に沿って形成された複数の歯面21bのそれぞれを備える。複数の歯面21bのそれぞれは、モータ22の駆動力を伝達するベベルギヤ23と噛み合い、スプロケット21を駆動させる。なお、スプロケット21を駆動させるギヤは、ベベルギヤ23に限らず他のギヤであってもよい。
【0045】
図5を参照して、カメラ12が撮像する撮像データおよび送りピン21aの位置ずれ量の計測方法について説明する。
図5は、テープフィーダ4の搬送機構例を示す平面図である。
図5において、テープフィーダ4にはキャリアテープ7がセットされていない。また、切り欠き部29a内にはスプロケット21の頂部近傍に位置する送りピン21aが配置されている。
【0046】
カメラ12は、キャリアテープ7がセットされていない状態において、電子部品16の吸着位置を含む切り欠き部29aを撮像する。カメラ12は、撮像した撮像データを認識部13に出力する。認識部13は、入力された撮像データに基づいてスプロケット21の頂部近傍に位置する複数の送りピン21aのそれぞれの位置を計測する。認識部13は、計測した送りピン21aの位置データと、予め設定された送りピン21aの正規位置データとを比較して、複数の送りピン21aのそれぞれに対してX方向およびY方向の位置ずれ量を示すオフセットデータを作成して、制御部14に出力する。なお、オフセットデータは、X方向のオフセットデータが吸着位置データに対応し、Y方向のオフセットデータが停止位置データに対応する。
【0047】
制御部14は、認識部13から出力された複数の送りピン21aのそれぞれのオフセットデータを記憶部15に出力して記憶させる。制御部14は、電子部品実装装置1の稼働状態において、カメラ12によって撮像された撮像データに含まれる送りピン21aの位置データおよびオフセットデータに基づいてモータ22を制御する。これにより、制御部14は、複数の送りピン21aのそれぞれを常に正しい停止位置で停止させることができ、正しい吸着位置で電子部品16を吸着して取り出すことができる。
【0048】
次に
図6を参照して、モータ22に内蔵されるエンコーダ60について説明する。
図6は、エンコーダ60の内部構成例を示す図である。実施の形態1に係るモータ22は、比較的安価かつ小型のインクリメンタルエンコーダを搭載する。
【0049】
エンコーダ60は、モータ22の駆動軸に連結されて、駆動軸の回転位置を検出する。エンコーダ60は、モータ22の駆動軸に連結される回転軸61と、この回転軸61の端部に軸支された格子円盤62と、この格子円盤62と対向するように配置された固定板63と、モータ22の回転位置を算出するための複数の信号であるA相信号、B相信号およびZ(ゼロ)相信号を検出するフォトセンサ65,66,67のそれぞれと、を含んで構成される。
【0050】
回転軸61は、モータ22の回転駆動力を格子円盤62に伝達する。フォトセンサ65、66、67は、A相のスリット72、B相のスリット73およびZ相のスリット76のそれぞれを通過したスリット光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、モータ制御部へ入力されてモータ22の回転位置の判定に使用される。以下、格子円盤62と格子円盤62の周縁部に形成された所定数のスリット71について説明する。
【0051】
回転板の一例としての格子円盤62の周縁部には、軸径方向に所定数のスリット71がそれぞれ等間隔に形成される。なお、
図6に示す所定数のスリット71は、一例としてスリット数が400本である。しかし、所定数のスリット71のスリット数は、400本に限らず任意の数でよい。なお、エンコーダ60はスリット数に応じて分解能が決定し、スリット数が多いほど高分解能となるため、モータ22の回転量をより高精度に制御可能にする。
【0052】
また、格子円盤62の内周部には、軸径方向に複数のZ相のスリット75のそれぞれが形成される。複数のZ相のスリット75のそれぞれは、不等間隔に形成されて、互いに異なる角度の間隔に配置される。一例として、実施の形態1におけるZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれの配置は、Z相のスリットSL1が刻まれた位置のスリット71を1本目とすると、Z相スリットSL2は80本目、Z相スリットSL3は90本目、Z相のスリットSL4は110本目に位置する。言い換えると、Z相スリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれは、Z相のスリットSL1とSL2との間で80本、Z相のスリットSL2とSL3との間で90本、Z相のスリットSL3とSL4との間で110本、Z相スリットSL4とSL1との間で120本のスリット71が含まれる間隔で配置される。
【0053】
モータ制御部25は、予め格子円盤62を一周分回転させて複数のZ相のスリット75のそれぞれが形成された位置およびスリット数を計測し、計測結果を制御部14に出力する。モータ制御部25は、基準位置(原点)として設定されるZ相信号が出力されてから、他の複数のZ相信号それぞれが出力されるまでの間に含まれるA相信号およびB相信号のパルス信号の数を計測する。これにより、制御部14は、基準位置(原点)に位置するZ相信号を基準として他の複数のZ相信号の位置を算出することができる。またモータ制御部25は、他の複数のZ相信号を、基準位置(原点)に対する相対的な基準位置(原点)として検出することができる。よって、実施の形態1に係るエンコーダ60を搭載したモータ22および電子部品実装装置1は、原点復帰動作を短時間で行い、電子部品16を取り出し位置に搬送する動作を開始する時間を短縮することができる。
【0054】
モータ制御部25は、複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれの位置と、複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれのスリット位置で出力されるZ相の信号の間のパルス信号数とを計測する。モータ制御部25は、複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれの位置および複数のZ相信号間のパルス信号数のそれぞれをデータ記憶部26に出力して記憶させる。
【0055】
なお、
図6に示す実施の形態1に係る複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれのスリットの間には、Z相のスリットSL1とZ相のスリットSL2の間には、80本の所定数のスリット71が含まれ、Z相のスリットSL2とZ相のスリットSL3の間には、90本の所定数のスリット71が含まれ、Z相のスリットSL3とZ相のスリットSL4の間には、110本の所定数のスリット71が含まれ、Z相のスリットSL4とZ相のスリットSL1の間には、120本の所定数のスリット71が含まれる。また、複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれは、
図6に示す間隔に限らず、互いに不等間隔となるスリット数であればよい。
【0056】
固定板63は、フォトセンサ65,66,67のそれぞれの配置に対応した、A相のスリット72と、B相のスリット73と、Z相のスリット74とを備える。固定板63は、フォトセンサ65,66,67のそれぞれから投光される発光ダイオード65z,66z,67zのそれぞれの光を対応するA相のスリット72と、B相のスリット73と、Z相のスリット74とのそれぞれを用いて通過または遮断する。固定板63を通過した発光ダイオード65z,66z,67zのそれぞれの光は、格子円盤62に刻まれた所定数のスリット71またはZ相のスリット75を通過してフォトダイオード65y,66y,67yでそれぞれ受光される。また、A相のスリット72とB相のスリット73とは、後述するA相信号とB相信号とが互いに異なる位相を有するパルス信号となるように形成される。
【0057】
以下、フォトセンサ65,66,67のそれぞれの構成について詳述する。
【0058】
A相のフォトセンサ65は、固定板63と格子円盤62とを挟んで対向して配置され、投光側にA相の発光ダイオード65zを配置し、受光側にA相のフォトダイオード65yを配置する1対のペアで構成される。固定板63は、A相のフォトセンサ65の光軸が通る位置にA相のスリット72が刻まれている。A相の発光ダイオード65zは、固定板63に向かって光を投光し、固定板63のA相のスリット72と格子円盤62の所定数のスリット71とをそれぞれ通過する。これによりA相の発光ダイオード65zの光は、拡散されることなくスリット光となり、受光側のA相のフォトダイオード65yに受光される。モータ制御部25は、A相のフォトダイオード65yが受光した光を電気信号に変換してA相信号を出力する。
【0059】
同様に、B相のフォトセンサ66は、固定板63と格子円盤62とを挟んで対向して配置され、投光側にB相の発光ダイオード66zを配置し、受光側にB相のフォトダイオード66yを配置する1対のペアで構成される。固定板63は、B相のフォトセンサ66の光軸が通る位置にB相のスリット73が刻まれている。B相の発光ダイオード66zは、固定板63に向かって光を投光し、B相のスリット73と格子円盤62の所定数のスリット71とをそれぞれ通過する。これによりB相の発光ダイオード66zの光は、拡散されることなくスリット光となり、受光側のB相のフォトダイオード66yに受光される。モータ制御部25は、受光側のB相のフォトダイオード66yが受光した光を電気信号に変換してB相信号を出力する。
【0060】
A相信号およびB相信号は、位相が異なるパルス信号である。なお、A相のスリット72とB相のスリットとは、出力されるA相信号およびB相信号の位相がそれぞれ異なるパルス信号として出力されるように形成される。
【0061】
格子円盤62が回転する際、A相のフォトセンサ65またはB相のフォトセンサ66によって検出される所定数のスリット71を通過したスリット光の数は、パルス数として検出される。
【0062】
さらに、Z相のフォトセンサ67は、固定板63と格子円盤62とを挟んで対向して配置され、投光側にZ相の発光ダイオード67zを配置し、受光側にZ相のフォトダイオード67yを配置する1対のペアで構成される。固定板63は、Z相のフォトセンサ67の光軸が通る位置に複数のZ相のスリット77が刻まれている。Z相の発光ダイオード67zは、固定板63に向かって光を投光し、Z相のスリット75と格子円盤62の所定数のスリット71とをそれぞれ通過する。これによりZ相の発光ダイオード67zの光は、拡散されることなくスリット光となり、受光側のZ相のフォトダイオード67yに受光される。モータ制御部25は、受光側のZ相のフォトダイオード67yが受光した光を電気信号に変換してZ相信号を出力する。
【0063】
Z相信号は、A相信号およびB相信号と同様にパルス信号である。制御部14は、出力された第1のZ相信号と次に出力された第2のZ相信号との間に含まれるA相信号とB相信号とのパルス数に基づいて、モータ22の回転位置を算出する。
【0064】
図7を参照して、フィーダ制御部24とモータ22との間における信号の伝達について説明する。
図7は、フィーダ制御部24とモータ22との間における信号の伝達を説明する図である。
【0065】
制御部14は、モータ22を駆動してキャリアテープ7を電子部品16の吸着位置に搬送する制御を行う。制御部14は、エンコーダ60から送信されたA相信号、B相信号およびZ相信号に基づくモータ22の回転量と回転位置とを算出して、モータ22の回転量を制御する。
【0066】
モータ制御部25は、パワー回路部25zおよび制御部25yを有する。パワー回路部25zは、電子部品実装装置から供給される電力をモータ22の仕様に適した電力に変換するパワー変換部を含んでいる。制御部25yは、外部指令として制御部14からの速度指令値を入力し、この速度指令値とエンコーダ60からのパルス信号に基づく速度とを比較し、モータ22の回転速度が速度指令値になるように速度制御を行う。制御部25yは、MPU(Micro Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)あるいはゲート回路等を用いて構成される。
【0067】
図8は、原点サーチを説明する模式図である。
図8では、従来のエンコーダと実施の形態1に係るエンコーダ60とを比較して、実施の形態1に係る原点サーチ方法について説明する。また
図8における実施の形態1に係るエンコーダ60は、一例として格子円盤62に形成された所定数のスリット71が400本である場合を示す。A相信号およびB相信号のそれぞれは、1周分回転する間に400パルスの信号を含んで出力される。なお、
図8は説明を分かり易くするため、所定数のスリット71を省略している。
【0068】
従来のエンコーダは、格子円盤に基準位置(原点)を検出するための1本のZ相のスリットSL0と、対向する発光ダイオードとフォトダイオードをペアとするZ相のフォトセンサと、発光ダイオードをスリット光にする固定板と、を含んで構成される。Z相のBフォトセンサは、Z相のスリットを通過する光を受光することで得られるZ(ゼロ)相信号を出力する。従来のエンコーダを搭載したモータおよび電子部品実装装置は、任意の停止位置から回転を開始して、Z相信号のパルス信号を検出する。従来のエンコーダは、Z相信号を検出するまでに出力されたA相信号およびB相信号に含まれるパルス数から、基準位置(原点)を算出して原点復帰動作を行う。
【0069】
以上より、従来のエンコーダはエンコーダの任意の停止位置に応じてモータを最大1回転させなければならないため、原点サーチに要するモータの回転量およびその時間が長くなるという課題がある。よって、従来のエンコーダを搭載した部品実装装置は、原点復帰動作および電子部品の供給を開始するまでの時間が長くなり、結果として生産性を低下させていた。
【0070】
一方、実施の形態1に係るエンコーダ60は、複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれを形成された格子円盤62を有する。Z相のスリットSL1は、従来のエンコーダにおける基準位置(原点)を示すZ相信号を出力するZ相のスリットに相当する。また、他の複数のZ相のスリットSL2,SL3,SL4のそれぞれは、基準位置(原点)を示すZ相のスリットSL1に対する相対的な基準位置(原点)である。
【0071】
複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれは、互いに不等間隔に位置する。またZ相信号は、複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれの位置において、Z相信号Z1,Z2,Z3,Z4のそれぞれが出力される。Z相のスリットSL1とZ相のスリットSL2との間には、80本のスリット71が形成される。Z相信号Z1とZ相信号Z2との間には、80パルスのA相信号およびB相信号が含まれて出力される。同様に、Z相のスリットSL2とスリットSL3との間には、90本のスリット71が形成される。Z相信号Z1とZ相信号Z2との間には、90パルスのA相信号およびB相信号が含まれて出力される。また、Z相のスリットSL3とスリットSL4との間には、110本のスリット71が形成される。Z相信号Z3とZ相信号Z4との間には、110パルスのA相信号およびB相信号が含まれて出力される。Z相のスリットSL4とスリットSL1との間には、120本のスリット71が形成される。Z相信号Z4とZ相信号Z1との間には、120パルスのA相信号およびB相信号が含まれて出力される。なお、制御部14は、複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれの位置および複数のZ相信号間のパルス信号数のそれぞれを記憶部15に出力して記憶させる。
【0072】
次にエンコーダ60における原点サーチについて説明する。制御部14は、例えば停止位置における時刻t0の回転位置(停止位置)から原点サーチを開始する。制御部14は、回転を開始してから第1のZ相信号Z1を検出し(
図8,時刻t1)、さらに第2のZ相信号Z2を検出する(
図8,時刻t2)。制御部14は、第1のZ相信号Z1を検出してから第2のZ相信号Z2を検出するまでの間のA相信号またはB相信号に含まれるパルス数を計測する。制御部14は、計測したパルス数(例えば、80パルス)と、記憶部15に記憶された複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれの位置および複数のZ相信号間のパルス信号数のそれぞれと、に基づいて停止位置と、第1のZ相信号Z1および第2のZ相信号Z2のそれぞれの位置を算出する。これにより、制御部14は、第1のZ相信号Z1を基準位置(原点)とする原点サーチを完了する。さらに、フィーダ制御部24は、第2のZ相信号Z2を検出した位置から、所定のA相信号およびB相信号のパルス数(例えば、80パルス)だけ逆回転することで第1のZ相信号Z1の検出位置まで戻り、原点復帰動作を完了する(
図8,時刻t3)。
【0073】
これにより実施の形態1に係るエンコーダ60を搭載した電子部品実装装置1は、エンコーダの任意の停止位置に応じてモータ22を最大1/2回転させて原点サーチを行うことができる。よって電子部品実装装置1は、原点サーチに要するモータ22の回転量およびその時間を短縮させることができる。また電子部品実装装置1は、複数のZ相のスリットSL1に対する相対的な基準位置(原点)として複数のZ相のスリットSL2,SL3,SL4のそれぞれの位置において原点復帰動作を行うことができる。したがって、電子部品実装装置1は、原点サーチを行う時間を短縮できると共に、原点復帰するまでの時間も短縮できる。
【0074】
図9を参照して、モータ制御部25から出力されるA相信号、B相信号およびZ相信号について説明する。
図9は、モータ制御部25から出力されるA相信号、B相信号およびZ相信号のタイミングチャートである。
【0075】
A相信号およびB相信号は、格子円盤62に形成された所定数のスリット71と同数となる、例えば400パルスを有する。また、A相信号およびB相信号は図のように互いに異なる位相を有する。例えば、A相信号は、モータ22が右回転する場合には、B相信号に対し90°位相が進んだ信号波形を出力し、モータ22が左回転する場合には、B相信号に対し90°位相が遅れた信号波形を出力する。したがって、モータ22の回転方向は、A相信号およびB相信号の信号波形の位相関係に基づいて特定することができる。
【0076】
Z相信号は、複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれに対応して、複数のZ相信号Z1,Z2,Z3,Z4のそれぞれが出力される。複数のZ相信号Z1,Z2,Z3,Z4のそれぞれは、A相信号およびB相信号がそれぞれ80パルス、90パルス、110パルス、120パルス含まれる間隔ごとに出力される。
【0077】
図10は、制御部14による原点サーチおよび原点復帰手順の一例を示すフローチャートである。制御部14は、キャリアテープ7の凹部7aに収納された電子部品16を吸着されて取り出すために、停止位置におけるスプロケット21の送りピン21aに対する原点サーチおよび原点復帰動作を行う。
【0078】
制御部14は、停止した状態からモータ22を回転駆動させて、エンコーダ60の格子円盤62を回転させる。モータ制御部25は、Z相のフォトセンサ67を用いて第1のZ相信号Z1を検出する(S1)。
【0079】
モータ制御部25は、A相のフォトセンサ65またはB相のフォトセンサ66を用いて検出される所定数のスリット71を通過するスリット光を変換して出力する。制御部14は、出力されたA相信号またはB相信号のパルス数の計測を開始する(S2)。
【0080】
モータ制御部25は、Z相のフォトセンサ67を用いて第2のZ相信号を検出する(S3)。ここでは、第1のZ相信号が検出された後に検出される第2のZ相信号は、停止位置から最初に検出される第1のZ相スリットに対して、回転方向に隣り合う第2のZ相スリットによって検出されるZ相信号である。なお、第2のZ相信号が検出される第2のZ相スリットは、隣接するZ相スリットに限らず、1本以上のZ相スリットを間に挟んだ回転位置にあるZ相スリットであってもよい。
【0081】
制御部14は、第2のZ相信号を検出するとA相のフォトセンサ65またはB相のフォトセンサ66によって検出される、所定数のスリット71を通過するスリット光によるA相信号またはB相信号のパルス数(パルスカウント数)の計測を終了する(S4)。制御部14は、第1のZ相信号が検出されてから第2のZ相信号が検出されるまでの間に計測されたパルスカウント数と、記憶部15に登録されたZ相信号Z1,Z2,Z3,Z4の間隔に相当するパルス数(言い換えると、複数のZ相のスリットSL1,SL2,SL3,SL4のそれぞれの間隔に形成されたスリット数)とに基づいて、検出された第2のZ相スリットの位置(第2の基準位置)を特定する(S5)。なお、エンコーダ60を逆回転させて原点サーチを行うことも可能である。
【0082】
制御部14は、特定した第2のZ相スリットの位置(第2の基準位置)から最初に検出した第1のZ相スリットの位置(第1の基準位置)を特定する。制御部14は、第2のZ相スリットの位置(第2の基準位置,厳密には、第2のZ相スリット検出後にエンコーダが停止した位置)から、第1のZ相スリットと第2のZ相スリットとの間のパルスカウント数分だけモータ22を逆方向に回転させて、モータ22の回転位置を第1のZ相スリットの第1の基準位置(原点)に復帰する(S6)。なお、ここでは、第2のZ相スリットが検出された回転位置でエンコーダ60が停止することを想定しているが、イナーシャ、ピンのガタ等によりエンコーダ60が第2のZ相スリットが検出された第2の基準位置を超えて停止することがある。この場合、超えた分のパルス数をパルスカウント数に加えて原点復帰動作を行う。
【0083】
また、復帰した第1の基準位置(原点)は、前回キャリアテープ7を搬送時にモータ22が停止した停止位置に最も近接する位置の基準位置である。これにより電子部品実装装置1は、従来のエンコーダと比較して、原点復帰動作のために搬送されるキャリアテープ7のテープの送り量を短縮することができ、原点復帰動作による電子部品16のロスを低減させることができる。
【0084】
なお、実施の形態1に係る電子部品実装装置1は、キャリアテープ7の搬送方向(前進方向)にモータ22を回転させることで、原点サーチを行ったが、キャリアテープ7の搬送方向とは逆の方向(後退方向)にモータ22を回転させて、原点サーチを行ってもよい。
【0085】
またエンコーダ60は、Z相のスリット75のスリット数を増やしてもよい。これにより、フィーダ制御部24は、第2のZ相スリットを検出した後の停止位置から第1のZ相スリットの回転位置である相対的な基準位置(原点)に復帰するまでの回転量を短縮し、さらに2つのZ相信号を検出するまでの時間を短縮することができる。したがって、電子部品実装装置1は、原点復帰動作を短時間で行い、電子部品16を取り出し位置に搬送する動作を開始する時間を短縮することができる。さらに電子部品実装装置1は、原点復帰動作のために搬送されるキャリアテープ7のテープの送り量を短縮することができ、原点復帰動作による電子部品16のロスを低減させることができる。
【0086】
以上のように、実施の形態1に係る電子部品実装装置1におけるモータ22は格子円盤62の複数の基準位置(原点)のそれぞれに対応して出力される複数のZ相信号Z1,Z2,Z3,Z4のそれぞれのいずれに対しても、原点サーチおよび原点復帰動作を行うことが可能である。したがって、電子部品実装装置1は、安価で小型のエンコーダ60を搭載した場合でも、原点サーチおよび原点復帰動作をするまでの時間を短縮して、電子部品16を取り出し位置に搬送する動作を開始する時間を短縮することができる。
【0087】
電子部品実装装置1は、複数の凹部7aのそれぞれに電子部品16を収納したキャリアテープ7を、電子部品16を取り出す吸着位置まで搬送する。部品供給部2は、キャリアテープ7を搬送するテープフィーダ4(搬送部の一例)と、テープフィーダ4を制御するフィーダ制御部24(制御部の一例)と、を有する。テープフィーダ4は、モータ22と、エンコーダ60とを有する。制御部14は、基準信号として出力される複数のZ相信号Z1,Z2,Z3,Z4のそれぞれの間のパルス信号の数に基づいて、モータ22の回転位置を判定する。
【0088】
これにより、制御部14は、モータ22に安価で小型のインクリメンタルエンコーダを搭載した場合でも、電子部品16を取り出す吸着位置に搬送する動作を短時間で高精度に行うことができる。
【0089】
また、モータ制御部25は、複数の基準位置のうち、第1の回転位置において第1のZ相信号(第1の基準信号)を出力し、第2の回転位置において第2のZ相信号(第2の基準信号)を出力する。エンコーダ60は、第1のZ相信号および第2のZ相信号で区切られた第1の回転区間におけるパルス信号の数と第2の回転区間におけるパルス信号の数が互いに異なる。
【0090】
これにより、電子部品実装装置1は、第1の回転区間におけるパルス信号の数と第2の回転区間におけるパルス信号の数とが異なるため、Z相信号のそれぞれが出力された回転位置を算出することができる。
【0091】
制御部14は、モータ22の回転位置の判定結果に基づいて、エンコーダ60から出力される複数のZ相信号(基準信号)のうち、第1のZ相信号に対応する第1の基準位置をモータ22の回転位置の基準位置(原点)として設定する。
【0092】
これにより、電子部品実装装置1は、モータ22を1周分回転させずに停止位置に最も近い基準位置(原点)を算出し、原点復帰動作を行うことができる。
【0093】
また、エンコーダ60は、モータ22の駆動軸に軸支され、それぞれ異なるパルス信号を出力させるための所定数のスリット71が形成された格子円盤62(回転板)を有する。格子円盤62は、複数の回転位置のそれぞれにおいてZ相信号を出力するための複数のZ相のスリット(基準スリット)が形成されている。
【0094】
これにより、電子部品実装装置1は、基準位置(原点)に復帰するまでの回転量を短縮し、さらに2つのZ相信号を検出するまでの時間を短縮することができる。したがって、電子部品実装装置1は、原点復帰動作を短時間で行い、電子部品16を取り出し位置に搬送する動作を開始する時間を短縮することができる。さらに電子部品実装装置1は、原点復帰動作のために搬送されるキャリアテープ7のテープの送り量を短縮することができ、原点復帰動作による電子部品16のロスを低減させることができる。
【0095】
なお、上述した実施の形態では、光学透過型のエンコーダを用いた例を説明したが、光学反射型エンコーダを用いても構わない。光学反射型エンコーダを用いた場合は、部品実装装置の小型化が期待できる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0097】
また、本開示は部品供給装置の一例である電子部品実装装置に適用される場合を示したが、これに限らず、物品を搬送するコンベア等の物流機器、刃物台を移動させる旋盤等の工作機械および物を生産するロボット等、各種の機器に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本開示は、部品を取り出す位置までキャリアテープを搬送する際、装置コストの低下を図りつつ、部品を取り出し位置に搬送する動作を短時間で行うことができる部品供給装置および部品供給装置の制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0099】
2 部品供給部
7 キャリアテープ
22 モータ
24 フィーダ制御部
60 エンコーダ