(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】加飾シート及びその製造方法、表示装置
(51)【国際特許分類】
B32B 3/26 20060101AFI20230721BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230721BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230721BHJP
B32B 9/02 20060101ALI20230721BHJP
B32B 21/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B32B3/26 A
B32B3/26 B
B32B3/30
B32B9/00 A
B32B9/02
B32B21/00
(21)【出願番号】P 2019040521
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】杉山 知徳
(72)【発明者】
【氏名】金内 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 英秋
(72)【発明者】
【氏名】永原 孝行
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136723(JP,A)
【文献】特開2017-097334(JP,A)
【文献】特開平05-139097(JP,A)
【文献】特開平11-268123(JP,A)
【文献】特開2020-003569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石材、木材、コルク、布、革の群から選ばれる少なくとも一つの素材シートであって、表面側の表面粗さR1が裏面側の表面粗さR2より大きいことを表す不等式R1>R2の関係を満たす
と共に、表面側に凹凸を有する素材シートと、
前記素材シートの表面側に設けられた第1接着層と、
前記素材シートの表面側に前記第1接着層を介して設けられた、少なくともハードコート層、UVカット層を各一層以上含む多層構造からなる薄膜層と、
前記素材シートの裏面側に設けられた第2接着層と、
前記素材シートの裏面側に前記第2接着層を介して設けられたシート支持層と、
を備え、
前記各層が一枚のシート状に一体化され、前記第1接着層と前記素材シートの表面側の凹凸形状の谷との界面に空気層が存在する、加飾シート。
【請求項2】
前記薄膜層の前記第1接着層と反対側の面の表面粗さRAと、前記素材シートの表面側の表面粗さRBと、前記シート支持層の第2接着層側の面の表面粗さRCについて、それぞれの表面粗さがRB>RA>RCの関係を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記シート支持層が、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリカーボネイトの高分子フィルム及び不織布の群から選ばれる少なくとも1つで構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記シート支持層の前記第2接着層と反対側に設けられた、樹脂で構成された補強層をさらに備えた、請求項1から3の何れか一項に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記薄膜層の前記第1接着層と反対側の面に、法線方向から透視した場合に前記素材シートの表面側の凹凸形状とは異なる凹凸形状を配置している、請求項1から4の何れか一項に記載の加飾シート。
【請求項6】
前記加飾シートの裏面側から表面側に向かって光を照射する光源をさらに備えた、請求項1から5の何れか一項に記載の加飾シート。
【請求項7】
前記第2接着層と前記シート支持層との間に、
少なくとも隠蔽層と光拡散層を1層以上含む印刷層と、
前記印刷層を設けるための基材と、
前記基材と前記シート支持層とを接着させる第4接着層と、
が、順に設けられている、請求項1から6の何れか一項に記載の加飾シート。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記加飾シートと、
前記加飾シートの前記シート支持層の前記第2接着層と反対側の面に設けられた、利用者が電子機器を制御するための接触式の操作制御装置と、
を備えた、表示装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記加飾シートと、
前記加飾シートの前記シート支持層の前記第2接着層と反対側に設けられた、利用者の手の平や腕の動きに合わせて、電子機器を制御するための非接触式の操作制御装置と、
を備えた、表示装置。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の前記加飾シートと、
前記加飾シートの前記シート支持層の前記第2接着層と反対側の面に設けられた、電子機器を制御するための接触式の操作制御装置及び非接触式の操作制御装置と、
を備え、
前記接触式の操作制御装置及び前記非接触式の操作制御装置は、利用者の使用内容に応じて、操作の制御を割り当てることが可能である、表示装置。
【請求項11】
石材、木材、コルク、布、革の群から選ばれる少なくとも一つの素材シートであって、表面側の表面粗さR1が裏面側の表面粗さR2より大きいことを表す不等式R1>R2の関係を満たす
と共に、表面側に凹凸を有する素材シートの表面側に第1接着層及び薄膜層を順に配置し、裏面側には第2接着層及びシート支持層を順に配置する工程と、
前記素材シートの表面側の前記薄膜層及び裏面側の前記シート支持層を法線方向から挟んで
、空気が前記素材シートの表面側の前記凹凸の凹部に浸入するように、圧力と共に熱を加える工程と、
前記薄膜層、前記第1接着層、前記素材シート、前記第2接着層、及び、前記シート支持層について、圧力と熱から解放
し、前記凹部に空気を含む空気層が残留する工程と、
を含む、加飾シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜と素材シートである石材シートとを組み合わせた加飾シート及びその製造方法、並びに、該加飾シートを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家電の外装および車載内装分野等における部品やパネル等の表面の加飾手法において、顧客志向の多様化と昨今の本物志向・高品位志向により、幅広いデザイン表現と高品位な意匠性ニーズが高まっている。その中で、天然木や本革等の従来から人気のある素材に加えて、石材やコルクといった素材を加飾素材として用いるニーズが高まっている。これらの加飾素材は、外観や手触り感といった素材由来の風合いを利用者に提供することで、意匠性に優れた高級感表現として利用されている。ここでいう加飾素材は、厚みが5mm以下のシート形状の素材を指す。これら加飾素材を家電外装や車載内装等に適用する際、製品としての信頼性を担保するために、素材表面に保護層が形成されることが一般的である。
【0003】
特許文献1には、突板の上部にトップコート塗膜層が形成された木質化粧成形品が開示されている。この構成を
図5に示す。
【0004】
図5の木質化粧成形品100は、トップコート塗膜層101、突板102、基材103で構成されている。素材シートである突板102は、板厚2mm程度に薄く形成されているため、ある程度の透明性を有しており、その突板102裏面に射出成形により透明性を有する基材103が接合一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来例では、加飾用の素材シートとして用いられている突板102の表面に、トップコート塗装による、厚膜のトップコート塗膜層101が形成されている。そのため、突板102に対して、外観上の光沢感や奥行き感を感じるので、素材自体と比較して違和感を感じてしまう。さらに、トップコート塗膜層101により、素材表面の凹凸形状が埋もれてしまうため、前述した外観や手触り感という素材本来の質感を維持することが困難である。
【0007】
また、塗装により表面保護層を形成しているため、素材表面の凹凸形状が完全に埋もれてしまう。そのため、周囲の温度変化の繰り返しから素材の熱膨張差による繰り返しの伸縮が発生し、経年時にトップコート塗膜層や加飾素材にクラック等の不良が発生する可能性がある。特に、車載内装等の温度変化が激しい環境下では熱膨張差の影響が著しい。
【0008】
本発明は、この従来の2つの課題を解決するもので、素材由来の風合いを維持し、かつ、異素材の熱膨張差に起因する加飾素材や表面保護層のクラック発生等の経年変化による不良を低減することができる加飾シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加飾シートは、表面側の表面粗さR1が裏面側の表面粗さR2より大きいことを表す不等式R1>R2を満たす素材シートと、
前記素材シートの表面側に設けられた第1接着層と、
前記素材シートの表面側に前記第1接着層を介して設けられた、少なくともハードコート層、UVカット層を各一層以上含む多層構造からなる薄膜層と、
前記素材シートの裏面側に設けられた第2接着層と、
前記素材シートの裏面側に前記第2接着層を介して設けられたシート支持層と、
を備え、
前記各層が一枚のシート状に一体化され、前記第1接着層と前記素材シートの表面の凹凸形状の谷との界面に空気層が存在する。
【0010】
本発明に係る表示装置は、前記加飾シートと、
前記加飾シートの前記シート支持層の前記第2接着層と反対側の面に設けられた、利用者が電子機器を制御するための接触式の操作制御装置と、
を備える。
【0011】
また、本発明に係る表示装置は、前記加飾シートと、
前記加飾シートの前記シート支持層の前記第2接着層と反対側に設けられた、利用者の手の平や腕の動きに合わせて、電子機器を制御するための非接触式の操作制御装置と、
を備える。
【0012】
さらに、本発明に係る表示装置は、前記加飾シートと、
前記加飾シートの前記シート支持層の前記第2接着層と反対側の面に設けられた、電子機器を制御するための接触式の操作制御装置及び非接触式の操作制御装置と、
を備え、
前記接触式の操作制御装置及び前記非接触式の操作制御装置は、利用者の使用内容に応じて、操作の制御を割り当てることが可能である。
【0013】
本発明に係る加飾シートの製造方法は、表面側の表面粗さR1が裏面側の表面粗さR2より大きいことを表す不等式R1>R2の関係を満たす素材シートの表面側に第1接着層及び薄膜層を順に配置し、裏面側には第2接着層及びシート支持層を順に配置する工程と、
前記素材シートの表面側の前記薄膜層及び裏面側の前記シート支持層を法線方向から挟んで圧力と共に熱を加える工程と、
前記薄膜層、前記第1接着層、前記素材シート、前記第2接着層、及び、前記シート支持層について、圧力と熱から解放する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る加飾シートの構成によれば、素材シートの表面側に設けた薄膜層によって素材シートを保護でき、素材由来の風合いを維持できる、また、第1接着層と素材シートの表面側の凹凸形状の谷との界面に存在する空気層により、その空気層が緩衝材としての役割を果たし、異素材の熱膨張差による加飾素材や薄膜層内の応力を緩和し、経年変化時のクラック等の発生を低減することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る加飾シートの製造方法によれば、熱圧着工程を用いて多層構造の薄膜層を素材シート表面の凹凸形状に追従するように形成する。これによって、素材シートである加飾素材の外観や触感を損なうことなく、表面保護層を薄膜化することが可能となる。そこで、光沢感や奥行き感が強くプラスチックのような外観が強調されていたトップコート塗装の保護層と比較して、加飾素材本来の風合いを格段に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】実施の形態1に係る加飾シートの平面図である。
【
図1b】
図1aの加飾シートのA-A断面図である。
【
図1c】実施の形態1に係る加飾シートの製造方法における熱圧着工程前の断面図である。
【
図1d】実施の形態1に係る加飾シートの製造方法における熱圧着工程時の断面図である。
【
図1e】実施の形態1に係る加飾シートの製造方法における熱圧着工程直後の断面図である。
【
図2a】実施の形態2に係る加飾シートの平面図である。
【
図2b】
図2aの加飾シートを含む成形品のB-B断面図である。
【
図3a】実施の形態3に係る光源付き加飾シートの平面図である。
【
図3b】
図3aの光源付き加飾シートのC-C断面図である。
【
図3c】別例の光源付き加飾シートの平面図である。
【
図3d】
図3cの加飾シートのC1-C1断面図である。
【
図4a】実施の形態4に係る表示装置の平面図である。
【
図4d】
図4cの表示装置のD1-D1断面図である。
【
図5】特許文献1の木質化粧成形品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の態様に係る加飾シートは、表面側の表面粗さR1が裏面側の表面粗さR2より大きいことを表す不等式R1>R2の関係を満たす素材シートと、
前記素材シートの表面側に設けられた第1接着層と、
前記素材シートの表面側に前記第1接着層を介して設けられた、少なくともハードコート層、UVカット層を各一層以上含む多層構造からなる薄膜層と、
前記素材シートの裏面側に設けられた第2接着層と、
前記素材シートの裏面側に前記第2接着層を介して設けられたシート支持層と、
を備え、
前記各層が一枚のシート状に一体化され、前記第1接着層と前記素材シートの表面側の凹凸形状の谷との界面に空気層が存在する。
【0018】
上記構成によれば、素材シートの表面側に設けた薄膜層によって素材シートを保護でき、素材由来の風合いを維持できる、また、第1接着層と素材シートの表面側の凹凸形状の谷との界面に存在する空気層により、加飾シートの温度変化に対して、素材シートと薄膜層との熱膨張差による体積差を吸収することができる。これによって、経年変化による不良の発生を抑制できる。
【0019】
第2の態様に係る加飾シートは、上記第1の態様において、前記薄膜層の前記第1接着層と反対側の面の表面粗さRAと、前記素材シートの表面側の表面粗さRBと、前記シート支持層の第2接着層側の面の表面粗さRCについて、それぞれの表面粗さがRB>RA>RCの関係を満たしてもよい。
【0020】
上記構成によれば、素材シート内の中間に位置する表面粗さRBが素材シートの表面側の表面粗さRA及びシート支持層の第2接着層側の面の表面粗さRCよりも大きいことで、シート全体にかかる横からの応力を効率良く吸収することができる。また、表面粗さRAとRCとの関係において、利用者が手で触れる薄膜層の表面粗さRAをRCよりも大きくすることで、利用者が手で触れた際に素材由来の触感を感じることができる。
【0021】
第3の態様に係る加飾シートは、上記第1又は第2の態様において、前記シート支持層が、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリカーボネイト等を主成分とする高分子フィルム及び不織布の群から選ばれる少なくとも1つで構成されていてもよい。
【0022】
第4の態様に係る加飾シートは、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記シート支持層の前記第2接着層と反対側に設けられた、樹脂で構成された補強層をさらに備えてもよい。
【0023】
第5の態様に係る加飾シートは、上記第1から第4のいずれかの態様において、前記薄膜層の前記第1接着層と反対側の面に、法線方向から透視した場合に前記素材シートの表面側の凹凸形状とは異なる凹凸形状を配置していてもよい。
【0024】
上記構成によれば、利用者が触れる薄膜層の前記第1接着層と反対側の面の光沢感等の外観を変化させることができる。また、素材シート由来の触感の強調や異なる触感を組み合わせた表現ができる。
【0025】
第6の態様に係る加飾シートは、上記第1から第5のいずれかの態様において、前記加飾シートの裏面側から表面側に向かって光を照射する光源をさらに備えてもよい。
【0026】
第7の態様に係る加飾シートは、上記第1から第6のいずれかの態様において、前記第2接着層と前記シート支持層との間に、
少なくとも隠蔽層と光拡散層を1層以上含む印刷層と、
前記印刷層を設けるための基材と、
前記基材と前記シート支持層とを接着させる第4接着層と、
が、順に設けられていてもよい。
【0027】
第8の態様に係る加飾シートは、上記第1から第7のいずれかの態様において、前記素材シートは、石材、木材、コルク、布、革の群から選ばれる少なくとも一つの素材シートであってもよい。
【0028】
第9の態様に係る表示装置は、上記第1から第8のいずれかの態様に係る前記加飾シートと、
前記加飾シートの前記シート支持層の前記第2接着層と反対側の面に設けられた、利用者が電子機器を制御するための接触式の操作制御装置と、
を備える。
【0029】
第10の態様に係る表示装置は、上記第1から第8のいずれかの態様に係る前記加飾シートと、
前記加飾シートの前記シート支持層の前記第2接着層と反対側に設けられた、利用者の手の平や腕の動きに合わせて、電子機器を制御するための非接触式の操作制御装置と、
を備える。
【0030】
第11の態様に係る表示装置は、上記第1から第8のいずれかの態様に係る前記加飾シートと、
前記加飾シートの前記シート支持層の前記第2接着層と反対側の面に設けられた、電子機器を制御するための接触式の操作制御装置及び非接触式の操作制御装置と、
を備え、
前記接触式の操作制御装置及び前記非接触式の操作制御装置は、利用者の使用内容に応じて、操作の制御を割り当てることが可能である。
【0031】
第12の態様に係る加飾シートの製造方法は、表面側の表面粗さR1が裏面側の表面粗さR2より大きいことを表す不等式R1>R2の関係を満たす素材シートの表面側に第1接着層及び薄膜層を順に配置し、裏面側には第2接着層及びシート支持層を順に配置する工程と、
前記素材シートの表面側の前記薄膜層及び裏面側の前記シート支持層を法線方向から挟んで圧力と共に熱を加える工程と、
前記薄膜層、前記第1接着層、前記素材シート、前記第2接着層、及び、前記シート支持層について、圧力と熱から解放する工程と、
を含む。
【0032】
上記構成によれば、素材シートの表面側の凹凸形状において、熱圧着工程時にその各凹凸形状の間隔が広がるように変形することで、その変形した凹凸形状内部に前記第1接着層が浸入する。また、熱圧着工程後には、変形した凹凸形状が元の形状に戻る際、残留熱で溶融状態にある第1接着層が変形した凹凸形状内部へと引き込まれるように浸入する。これによって、その上部に構成されている薄膜層の素材シートの表面側の凹凸形状への追従性が向上する。
このように加飾素材表面の凹凸形状に追従するように薄膜の保護層を形成することで、外観上の奥行き感を防止し、かつ素材本来の触感を維持することが可能となる。これにより、加飾素材の風合いを損なうことなく、表面保護を施すことが可能となる。
さらに、前記薄膜層と加飾素材の間を接着する熱可塑性接着層において、溶融状態で加飾素材の凹凸内部に浸入する際、その熱可塑性接着層と加飾素材表面の界面に空気層を残留させる。これによって、その空気層が素材ごとの熱膨張差による応力を緩和する緩衝材の役割を担う。そこで、経年時の素材や薄膜保護層の繰り返し伸縮によるクラック発生等の不良を低減することができる。
【0033】
以下、実施の形態に係る加飾シート及びその製造方法、該過食シートを用いた表示装置について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0034】
(実施の形態1)
図1aは、加飾用の素材シートに石材シートを用いた実施の形態1に係る加飾シートの平面図である。
図1bは、
図1aのA-A断面図である。
この加飾シート31は、石材シート1を構成要件とした加飾シート31で構成されている。具体的には、この加飾シート31は、天然の石材シート1を素材シートとして用いている。石材シート1の表面側には第1接着層3が設けられ、その第1接着層3を介して最表面に薄膜層2が設けられている。また、石材シート1の裏面側に第2接着層4が設けられ、その第2接着層4を介してシート支持層5が設けられている。素材シートである石材シート1は、表面側の表面粗さR1が裏面側の表面粗さR2より大きい不等式R1>R2の関係を満たす。また、薄膜層2は、少なくともハードコート層、UVカット層を各一層以上含む多層構造からなる。さらに、各層が一枚のシート状に一体化され、第1接着層3と石材シート1の表面の凹凸形状の谷との界面に空気層Eが存在する。
【0035】
実施の形態1に係る加飾シート31の構成によれば、石材シート1の表面側に設けた薄膜層2によって石材シート1を保護でき、素材由来の風合いを維持できる、また、第1接着層3と石材シート1の表面側の凹凸形状の谷との界面に存在する空気層により、その空気層Eが緩衝材としての役割を果たし、異素材の熱膨張差による加飾素材や薄膜層内の応力を緩和し、経年変化時のクラック等の発生を低減することが可能となる。
【0036】
以下にこの加飾シートを構成する部材について説明する。
【0037】
<石材シート>
石材シート1は、最大の厚みが5mm以下であり、最小の厚みが0.1mm以上である。厚みが5mmより大きいと、石材シート1の柔軟性が失われるために曲げ等の加工が困難で、0.1mm未満だと石材シート1自体の製造が困難である。
この石材シート1は、背面から光を透過させることで、少なくとも部分的に光が透過する特徴を有している。また、その表面側が素材由来の凹凸を有するのに対し、裏面側は凹凸形状の少ない比較的平滑な面を有している。具体的には、表面側の表面粗さRzをR1、裏面側の表面粗さRzをR2とした時、R1>R2、かつ5μm<R1<20,000μm、1μm<R2<200μmという関係を満たしている。なお、R2は「最大高さ粗さ」である。具体的には、日本工業規格(JIS)で規定され、断面曲線からその基準長さの範囲内において一番高い山を数値化した値をマイクロメートルで表したものである。この範囲内でR1>R2を満たさないと、表面凹凸形状の大小差が大きくなり、薄膜層2の石材シート1の表面への追従性が低下してしまう。このように、表面側の方が裏面側よりも表面粗さが大きい石材シートを選択することで、表面積が大きくなり、車載内装等の高温にさらされる環境下において、表面から外へ放熱しやすくなるという利点がある。一方、裏面側が比較的平滑な面を有することで、温度差で加飾シート31が熱膨張を繰り返した際に、表面側の凹凸形状の伸縮差を、裏面側の平滑な面が緩和する役割を果たす。これにより、加飾シート31の裏面に形成されている他の層への伸縮差による影響を低減することが可能となる。
【0038】
<薄膜層>
薄膜層2は、少なくともハードコート層、UVカット層を各一層以上含む多層構造からなる。ハードコート層、UVカット層の各々の厚みは、共に1μm以上、20μm以下の範囲内である。薄膜層2の総膜厚は3μm以上50μm以下であり、透明性を有しているため、石材シート1との距離が近くなり、一般的な厚膜のトップコート塗装が施された場合の奥行き感を感じることなく、石材シート1の本来の風合いを感じることができる。また、フィラーや難燃剤等の添加剤をハードコート層、UVカット層内に含有することも可能である。さらに、薄膜層2を形成する際に、金型シボ、シボ付きのプレート、シボ付きフィルム、フィラー等を用いることにより、最表面の形状に任意の凹凸を付与することができ、加飾シート31の表面の見た目や触感、光沢度等を自由に変更することも可能である。また、薄膜層2により、石材シート1のような硬くて、部分的に石材が剥離するような素材を金型内でインサート成形する場合、別途金型表面への汚れや傷付きを防止するための保護材を用いることなく、直接加飾シート31をインサート成形することができる。
【0039】
薄膜層2の第1接着層3と反対側の面には、法線方向から透視した場合に素材シートである石材シート1の表面側の凹凸形状とは異なる凹凸形状を配置していてもよい。これによって、利用者が触れる薄膜層2の第1接着層3と反対側の面の光沢感等の外観を変化させることができる。また、素材由来の触感の強調や異なる触感を組み合わせた表現ができる。
【0040】
<第1接着層、第2接着層>
第1接着層3、第2接着層4は、透明性を有するオレフィン系、ポリオレフィン系などの熱可塑性成分で構成されている。その膜厚は任意に設定することができるが、特に第1接着層3については、薄膜層2の石材シート1表面への追従性を高めるために、1μm以上30μm以下の厚みが好ましい。
【0041】
<シート支持層>
シート支持層5は、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリカーボネート等の高分子フィルムや不織布で構成されている。そこで、加飾シートの製造方法における熱圧着工程で石材シート1表面の凹凸形状に圧力がかかり変形した場合でも、シート支持層5がその変形を緩衝するため、その凹凸形状が破損しにくくなる。シート支持層5は、材質や厚み等は用途に合わせて選択することができる。
【0042】
<表面粗さの関係について>
薄膜層2の第1接着層3と反対側の面の表面粗さRAと、石材シート1の表面側の表面粗さRBと、シート支持層5の第2接着層4側の面の表面粗さRCについて、それぞれの表面粗さがRB>RA>RCの関係を満たしてもよい。
石材シート1内の中間に位置する表面粗さRBが石材シート1の表面側の表面粗さRA及びシート支持層5の第2接着層4側の面の表面粗さRCよりも大きいことで、シート全体にかかる横からの応力を効率良く吸収することができる。また、表面粗さRAとRCとの関係において、利用者が手で触れる薄膜層2の表面粗さRAをRCよりも大きくすることで、利用者が手で触れた際に素材由来の触感を感じることができる。
【0043】
<加飾シートの製造方法>
図1c、
図1d、
図1eは、それぞれ実施の形態1に係る加飾シート31の製造方法における熱圧着工程前、熱圧着工程時、熱圧着工程直後の断面を示す断面図である。
(1)素材シートとして石材シート1を用意し、その表面側に第1接着層3、薄膜層2を配置する。また、石材シート1の裏面側には第2接着層4、シート支持層5を配置する。
図1cに示すように、熱圧着工程前は、石材シート1の表面に第1接着層3、薄膜層2は追従しておらず、それぞれの層が接しているだけの状態である。
(2)
図1dの熱圧着工程時において、石材シート1の表面側の薄膜層2及び裏面側のシート支持層5を、例えば、真空熱ラミネーターや熱プレス等の熱圧着装置Nで法線方向から挟んで圧力と共に熱を加える。これによって、石材シート1の表面側の凸部S1と凸部S2の間隔が、熱圧着装置Nの圧力により広がる方向に変形する。
図1dは、凹部hの内部に熱溶融した第1接着層3が浸入している状態を示している。この時、第1接着層3の浸入と同時に、空気が凹部hに浸入し、空気層Eが存在している。
(3)
図1eの熱圧着工程直後において、熱圧着装置Nによる圧力と熱から解放する。これによって、石材シート1の表面側の凸部S1、凸部S2が、熱圧着装置Nによる圧力から解放される。これにより、
図1cの元の形状に復元される際、熱圧着時の残留熱で溶融状態である第1接着層3が、凹部hの内部へとさらに押し込まれるように浸入する。これにより、第1接着層3上部に形成されている薄膜層2も引き込まれるように凹部hの内部側へと浸入するので、結果的に石材シート1の表面の凹凸形状に対し、薄膜層2の追従性が向上する。また、空気層Eはそのまま残留する状態となる。
【0044】
これらの構成により、薄膜層2の石材シート1の表面への追従性が向上し、石材シート1の凹凸と薄膜層2の凹凸形状が相似形に近くなるので、加飾シート31の外観上の奥行き感を防止し、かつ素材本来の触感を維持することが可能となる。よって、加飾素材の風合いを損なうことなく、表面保護を施した加飾が可能となる。さらに、加飾素材の凹凸形状の谷底内部に残留した空気層Eが、異素材の熱膨張差による応力を緩和する緩衝材の役割を担い、経年変化による加飾素材や薄膜層の繰り返し伸縮によるクラック発生等の不良を低減する役割を果たす。つまり、薄膜層2が石材シート1よりも熱膨張が大きい場合、加飾シート31が低温から高温になると、薄膜層2が膨張し、加飾シート31の表面にひずみが生じるが、空気層Eがそのひずみを低減する。
【0045】
(実施の形態2)
図2aは、加飾素材に石材シート1を用いた実施の形態2に係る加飾シート31を示す。
図2bは、
図2aの加飾シート31を含む成形品41のB-B断面図である。
なお、実施の形態1と同様の作用を成すものには同一の符号を付けて説明する。この実施の形態2は、実施の形態1の構成に加えて、加飾シート31を構成しているシート支持層5の裏面側に第3接着層6及び補強層7を設けた成形品41として構成されている。
【0046】
加飾シート31は、シート単体で壁紙のように貼り合せることも可能であるが、真空圧空成形やインサート成形等で補強層7と一体化させることも可能である。
第3接着層6は、厚みが1μm以上50μm以下であり、塗工型やシート形状等の熱可塑性接着剤、あるいは熱硬化性接着剤のどちらで構成されていてもよい。
補強層7は、インサート成形による樹脂で構成されている状態を示しているが、樹脂板やガラス板など同等の強度を有する部材であればそれらを用いてもよい。補強層7の樹脂素材として使用可能な樹脂は、PMMA樹脂、ABS樹脂、PS樹脂、PC樹脂などの汎用成形樹脂が挙げられる。その他、光学用途の樹脂やスーパーエンジニアリング樹脂など、高温での成形が必要な樹脂にも対応可能である。
また、
図2bには、第3接着層6が形成された断面図が示されているが、シート支持層5に不織布を用いてインサート成形した場合、成形樹脂が不織布の隙間に入り込むことでアンカー効果が生まれ、第3接着層6を形成する必要なく、直接加飾シート31をインサート成形用の部材として利用することができる。
【0047】
(実施の形態3)
図3aは、加飾素材に石材シートを用いた実施の形態3に係る光源付き加飾シート50を示す平面図である。
図3bは、
図3aの光源付き加飾シート50のC-C断面図である。なお、実施の形態1及び2と同様の作用を成すものには同一の符号を付けて説明する。この実施の形態3は、実施の形態1~2に加えて、石材シート1の裏面側に光源11が設けられて構成されている。
【0048】
図3a及び
図3bにおいて、加飾シート31の背面に光源11を設けられている。この光源付き加飾シート50では、光源11から出射された光が、シート支持層5、第2接着層4、石材シート1、第1接着層3、薄膜層2をそれぞれ透過する。その結果、石材シート1の厚みのばらつきが光透過性の違いとなり、陰影が表現された加飾シート31の光デザインを観察者が視認することができる。なお、実施の形態2の成形品41の背面に同様の構成を設けることも可能である。成形品41の場合、第3接着層6と補強層7が光透過性として、同様に、光源11から出射された光が、補強層7、第3接着層6、シート支持層5、第2接着層4、石材シート1、第1接着層3、薄膜層2をそれぞれ透過し、成形品41の光デザインが表現できる。
これらの構成により、例えば、この加飾シートを車載内装部材に用いた場合、光源11を点灯することで、車内空間のイルミネーションとして利用することができる。
【0049】
図3cは、別例の光源付き加飾シート50aの平面図である。
図3dは、
図3cの光源付き加飾シート50aのC1-C1断面図である。
この別例の光源付き加飾シート50aにおいて、第2接着層4とシート支持層5との間に印刷層8と、印刷層8を形成するための基材9と、基材9とシート支持層5を接着させる第4接着層10と、が順に形成されている。さらに、加飾シート31の裏面側に光源12a、12b、12cと基板13が設けられていることを特徴とする。なお、前述同様に、成形品41の裏面側に同様の構成を設けることも可能である。
【0050】
<印刷層>
印刷層8は、少なくとも1層以上の光拡散層14とその裏面側に隠蔽層15が印刷された構成で形成されている。
【0051】
<光拡散層>
光拡散層14は、光源12a、12b、12cから出射された光を均一に拡散し、かつ光を透過させる効果を有する。これにより、光源12a、12b、12cにLED等の点発光する光源を使用した場合でも光源からの距離の大小に関わらず、透過光を均一発光させ、加飾シート表面に光透過させることができる。
【0052】
<隠蔽層>
隠蔽層15は、一部に任意の文字やマーク、パターン柄の形状16の光透過部17a、17b、17cを有しており、光透過部17a、17b、17c以外は光透過しない遮光素材で形成されている。光源12a、12b、12cから光が出射されることで、光透過部17a、17b、17cのみ光が透過し、加飾シート31の表面に形状16が表示される。光源12aを点灯させると、シート支持層5、第4接着層10、基材9、隠蔽層15の光透過部17a、光拡散層14、第2接着層4、石材シート1、第1接着層3、薄膜層2をそれぞれ光が透過し、薄膜層2の表面に表示領域を示すマーク18aが表示される。光透過部17aの形状がマーク18aの形状として表示される。光源12bを点灯させると、シート支持層5、第4接着層10、基材9、隠蔽層15の光透過部17b、光拡散層14、第2接着層4、石材シート1、第1接着層3、薄膜層2それぞれを光が透過し、薄膜層2表面に表示領域を示すマーク18bが表示される。光透過部17bの形状がマーク18bの形状として表示される。光源12cを点灯させると、シート支持層5、第4接着層10、基材9、隠蔽層15の光透過部17c、光拡散層14、第2接着層4、石材シート1、第1接着層3、薄膜層2それぞれを光が透過し、薄膜層2表面に表示領域を示すマーク18cが表示される。光透過部17cの形状がマーク18cの形状として表示される。
【0053】
<形状>
形状16は、形、大きさ、個数、表示位置等のデザインは利用者が任意で設定することができる。また、表示はマークに限定されず、文字や7セグメントに数字等の表示形式も可能であり、利用者が任意に設定することが可能である。
【0054】
<基材>
基材9は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネイトフィルム等の一般的な高分子フィルムで形成されている。また、厚みは200μm以下であれば任意に設定できるが、加飾シート31の反りを考慮した場合、100μm以下が好ましい。
【0055】
<第4接着層>
第4接着層10は、第1接着層3、第2接着層4と同様に、透明性を有するオレフィン系、ポリオレフィン系などの熱可塑性成分で構成されており、その膜厚は任意に設定することができる。
【0056】
<光源>
光源12a、12b、12cは、青色、赤色、緑色(光の三原色)の発光ダイオードチップを単一パッケージに内蔵したものを用いることで色の変化などが容易にコントロールでき、フルカラーを表現できる。また、LED以外で、その他の光源をバックライトとして用いることも可能である。なお、成形品41の場合、光源12a、12b、12cと基板13は補強層7の表面、あるいはその内部に埋め込むことも可能であり、利用者が使用する状況に応じて自由に設計することができる。また、シート支持層5において、高分子フィルムや不織布の代わりにハーフミラーフィルム等を設けることで、光源から出射された光の透過率を調整することも可能である。
【0057】
これらの構成により、前述の加飾素材の風合いと光のデザインを組み合わせることで、より意匠性に優れた加飾シート、あるいは成形品を利用者に提供することが可能となる。
【0058】
(実施の形態4)
図4aは、加飾素材に石材シートを用いた実施の形態4に係る表示装置60を示す平面図である。
図4bは、
図4aの表示装置60のD-D断面図である。
図4cは、別例の表示装置60aの平面図である。
図4dは、
図4cの表示装置60aのD1-D1断面図である。なお、
図4dにおいて、石材シート1、薄膜層2、第1接着層3の凹凸形状については省略している。なお、図面において、実施の形態1~3と同様の作用を成すものには同一の符号を付けて説明する。
この実施の形態4は、実施の形態1~3に加えて、加飾シート31の裏面側に、接触式、あるいは非接触式の操作制御装置25を設けた表示装置として構成されている。なお、成形品41の背面に同様の構成を設けることも可能である。
【0059】
これらの構成により、利用者の表示装置の操作パネル上でスライドさせた指の動きや、ジェスチャーの動き等で入力操作を検出し、電子機器を制御することができる。例えば、情報表示装置の輝度や音量の設定、音響装置の出力音量の設定、エアコンの温度設定等をアップ/ダウンすることが可能になる。また、実施の形態3で記載した光のデザインを用いた表示と操作制御装置25を組み合わせることで、より意匠性に優れたユーザインターフェースを提供することができる。
【0060】
図4a及び
図4bの非接触式の操作制御装置25を用いた場合、静電容量式や距離画像センサーにより、利用者の手の平や腕の動きを読み取ることで、操作を制御することができる。
【0061】
一方、
図4c及び
図4dの操作制御装置25について、静電容量等の接触式操作制御装置を用いた場合、マーク18a、18b、18cの周りに環状の凹部溝19が形成されている。この凹部溝19は、石材シート1の表面側に形成された薄膜層2を上部からプレス等を用いて環状の凹部20a、20b、20cの形状を賦形することで構成されている。薄膜層2と石材シート1の性質は共に実施の形態1と同様である。薄膜層2の表面側に表示された操作入力部を利用者が指で触れた場合は、利用者の指の近接中の座標を検出できるような電極パターンが形成された、操作入力部に沿った電極パターンが少なくとも必要である。また、凹部溝19について、加飾シート31の最表面SFからの凹部溝19の深さは1mm以上20mm以下、凹部溝19の幅Wは3mm以上30mm以下が適切であり、この範囲であれば利用者が自由に設計できる。この実施の形態4では凹部溝19の直径D=40mm、凹部溝19の幅W=8mm、凹部溝19の深さは2mmであった。
【0062】
また、この実施の形態では凹部溝19を環状で設けたが、円弧状や任意の長さを有する直線状等の凹部溝を用いることで回動操作の入力のみならず、スライド式の直線操作も可能になる。具体的には、前記同様に表示装置最表面からの深さは1mm以上20mm以下、凹部溝の幅は3mm以上30mm以下であることを特徴とする。
【0063】
このように凹部溝19を設けることで、利用者の指を接触状態でスライドさせたい場所への操作性を向上することができる。接触検出式の入力装置は、静電容量方式や感圧式等の、タッチパネルへの指の接触を検出できるものであれば、その検出方式の種類は問わない。
【0064】
なお、実施の形態1~4において、加飾用の素材シートに石材シートを用いたが、前述した石材シートの表面側の表面粗さR1と裏面側の表面粗さR2とについて、不等式R1>R2の関係を満たす素材であれば石材シートに限られない。つまり、石材シートの代わりに、例えば、木材、コルク、布、革等の任意の素材を素材シートとして用いることも可能である。
【0065】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る加飾シートは、各種の家庭電化製品などの外装や、車載内装等の加飾を要する分野において、高機能化、高意匠化に寄与する。
【符号の説明】
【0067】
1 石材シート
2 薄膜層
3 第1接着層
4 第2接着層
5 シート支持層
6 第3接着層
7 補強層
8 印刷層
9 基材
10 第4接着層
11 光源
12a、12b、12c 光源
13 基板
14 光拡散層
15 隠蔽層
16 任意の文字やマーク、パターン柄の形状
17a、17b、17c 隠蔽層15中の光透過部
18a、18b、18c 薄膜層2上の表示領域を示すマーク
19 凹部溝
20a、20b、20c 薄膜層2の表面に設けた環状の凹部
25 操作制御装置
31 加飾シート
41 成形品
50、50a 光源付き加飾シート
60、60a 表示装置