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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】蒸気発生材料
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
C23C14/24 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023511680
(86)(22)【出願日】2022-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2022024435
【審査請求日】2023-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507178729
【氏名又は名称】ノベリオンシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 政憲
(74)【代理人】
【識別番号】100187399
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 敏文
(72)【発明者】
【氏名】前野修一
(72)【発明者】
【氏名】和田 元
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-250959(JP,A)
【文献】特開2001-323367(JP,A)
【文献】特開2004-323328(JP,A)
【文献】特開2003-249359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により蒸気を発生する材料において、
少なくとも、
蒸発物質として一種以上の材料と、
担持材料と、
低温蒸気化促進材料と、
を含有し、
前記担持材料として、
熱的、化学的に安定でかつ比表面積が大きい無機材料を主成分とする無機化合物を含有し、
加熱時において前記蒸発物質の分散性を維持することによって蒸気発生速度の時間安定性を備え、
前記低温蒸気化促進材料として、
ハロゲン化アンモニウムを含有し、
該ハロゲン化アンモニウムの昇華温度において前記蒸発物質が蒸発することによって該蒸発物質の低温蒸発性を備えたこと、
を特徴とする蒸気発生材料。
【請求項2】
前記無機化合物が、
遷移アルミナであること、
を特徴とする請求項1に記載する蒸気発生材料
【請求項3】
前記ハロゲン化アンモニウムが、
塩化アンモニウムであること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する蒸気発生材料
【請求項4】
前記蒸発物質及び前記低温蒸気化促進材料が、
前記担持材料に摩擦定着によって分散担持されていること、
を特徴とする請求項1に記載する蒸気発生材料
【請求項5】
前記担持材料が、
熱的、化学的に安定な固体潤滑材料を含有し、
他物体への非固着性を備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載する蒸気発生材料
【請求項6】
ペレット状に加圧成型したこと、
を特徴とする請求項1又は請求項4に記載する蒸気発生材料
【請求項7】
前記蒸発物質が、
化合物であること、
を特徴とする請求項1に記載する蒸気発生材料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着の薄膜形成プロセス又は化学蒸着(CVD)や金属イオンビーム発生プロセスなどに使用する蒸気発生源において、加熱により金属蒸気や、有機および無機の化合物蒸気を発生する材料に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸着により得られる膜は、薄膜と呼ばれ、眼鏡やカメラのレンズの反射防止膜、装飾物や玩具の表面被覆など、日常において身の回りの物品に広く実用化されている。さらに、厚みや純度を精密に制御された薄膜は、LSIやフラットパネルディスプレイなど、各種のエレクトロニクス材料として注目され、各種の材料により作製される薄膜が実用化されてきた。
【0003】
真空蒸着は、通常原子あるいは分子状の極めて微細な蒸気化粒子を、表面が平滑な基板の上に付着させることをいう。
【0004】
真空蒸着プロセスでは、蒸気化して付着させる材料(蒸着材料)を、蒸気圧が1パスカル(Pa)程度になるまで、加熱して蒸気化させる。具体的な加熱蒸気化方法は、ヒータ等でルツボを直接加熱する手段を用いて、あらかじめルツボに装填していた蒸気発生材料を加熱蒸気化させる方法が例示される。一般には、ルツボは上側に開口部を備え、開口部上方に蒸気発生材料から発生する蒸気を付着させる基板が配置される。この場合には、蒸着材料と蒸気発生材料とは同義である。
【0005】
真空蒸着プロセスでは、蒸気発生材料に起因する問題として、主にアウトガスとスプラッシュが挙げられる。
【0006】
アウトガスは、真空蒸着を開始した直後に蒸気発生材料から発生する不純物であり、通常は基板とルツボの間に機械式のシャッタを設けて、真空蒸着初期は、不純物が基板に到達しないようにシャッタを閉じておき、不純物の発生が終了した後、シャッタを開けることによって解決することが可能である。
【0007】
一方、スプラッシュは、突沸、又はspittingなどともいわれ、蒸気発生材料を加熱溶融させた際に、沸騰により材料が周囲に飛散する現象のことである。真空蒸着を行っている最中に、蒸気発生材料からスプラッシュによって含有物質の微細な破片が飛散すると、基板にブツやボツと呼ばれる欠陥を引き起こす。ブツやボツは、代表的な膜欠陥の一つでピンホールの原因ともなる。スプラッシュの抑制方法として、従来は、成膜レートを落としたり、時間を掛けてルツボを昇温したり、ルツボと基板との間隔を大きくしたりすることによって改善を図ってきたが、いずれの方法も、真空蒸着プロセスの生産性効率を犠牲にするものであり、改善が待たれていた。
【0008】
化学蒸着は、気相化学反応によって基板上に薄膜を形成し、電子回路基板や半導体部品を作製する場合に用いられる。
【0009】
例えば、基板上に形成する薄膜の材料である窒化ガリウム(GaN)は、化合物半導体の一種で、青色発光ダイオード(青色LED)の材料として用いられてきたが、近年では、シリコンカーバイド(SiC)に替わる高効率及び高耐久のパワートランジスタの用途としても期待されている。
【0010】
GaNを採用したパワートランジスタの実現には、格子整合した高品質なGaN単結晶を備えたエピタキシャル層が欠かせない。
【0011】
GaNが、常圧では融点を持たずに分解する化合物であるため、GaNの結晶成長プロセスにおいては、シリコン(Si)のように融液中での結晶成長(CZ法など)が利用できない。
【0012】
そのため、現状ではCVDプロセスを利用する気相成長法(HVPE法) が主流となっている。HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法は、石英製の反応容器内において、格子定数がGaNに近い単結晶基板上に、GaNを気相エピタキシャル成長させるものである。反応容器内では、850℃以上の高温下で、上面が解放した容器に入れられた液相のGaと塩化水素ガス(HCl)とを反応させて塩化ガリウム(I)(GaCl)を生成し、次いでGaClとアンモニアガス(NH)とによって、約1000℃に加熱した基板上にGaNを成長させる。
【0013】
HVPE装置200における蒸気発生源201は、少なくとも石英管210、ルツボ202、ルツボ電気炉204、雰囲気ガスポート220、キャリアガスポート240及び排気口270から構成される。石英管210は、反応室の役割を担い、ルツボ202が石英管210の内部に配設される。ルツボ202には蒸気発生材料EMが装填されている。
【0014】
ルツボ202は、蒸気発生材料EMの蒸気VAPがルツボ202から離脱しやすいように上方が開口される。蒸気発生源201は、真空蒸着、CVD又はイオン注入などの目的に応じて、ルツボ202の開口部上方に反応装置が配設されるが、CVDの一種であるHVPE装置200においては、ルツボ202から発生した材料の蒸気VAPを、石英管210の水平方向にキャリアガスGASを用いて送出する流路が、石英管210の壁面にキャリアガスポート240を備え、ルツボ202開口部を覆って通過し石英管210内に開口部を備えて、設けられる。
【0015】
例えば、図8で示したHVPE装置200の場合では、ルツボ202がルツボ電気炉204によって熱せられ発生した材料の蒸気VAPを、キャリアガスポート240から送入されたキャリアガスGASによって流路の開口部から水平方向に送出する。キャリアガスGASは、不活性ガスを使用する。図8では、窒素(N)を想定しているが、これに限定されるものではなく、材料の蒸気VAPと反応しない気体であればよい。キャリアガスGASは、流路の開口部からキャリアガスGASを送出する方向に配設された処理基板W上に、薄膜の成分元素を含む材料の蒸気VAPを輸送する。処理基板Wは、石英管210壁面に固定して配設された基板台250上に載置される。
【0016】
処理基板Wの温度は、材料の蒸気VAPが結晶化する温度にまで高める必要があるため、処理基板Wを加熱する基板電気炉260が備えられる。例えば、窒化ガリウム(GaN)の薄膜を安定して高速に処理基板W上に成長させるためには、1000℃以上が必要であることが知られている。
【0017】
石英管210の排気口270によって、石英管210内は、一定の圧力状態にあり、ルツボ202の中の蒸気発生材料EMは、1Pa程度の蒸気圧で蒸発する。発生した材料の蒸気VAPがルツボ202の開口部直上においてガス状態となって、キャリアガスGASによって流路を水平方向に送出され、送出方向に配設された処理基板W上に結晶成長が行われる。
【0018】
また、キャリアガス流路のルツボ202から送入口側を閉鎖して、蒸気発生材料EMの蒸気VAPの蒸気圧のみで処理基板Wに向かって蒸気VAPを送出することも可能である。
【0019】
結晶成長速度が速いため、現状商業的に供給されているGaN基板の多くはHVPE法によるものである。
【0020】
しかしながら、HVPE法では、気相成長の材料となるGaClの生成のために850℃以上の高温が必要であり、エネルギー効率が非常に低く、基板1枚当たりの製造に要する電力コストが高価であり、GaN基板を使用する装置全体の製造原価を押し上げる要因となっている。
【0021】
また、GaClの生成過程では、液相であるGaに気相であるHClを反応させるので、Ga液面のみで反応が行われるため、気化率が低く、また、残留する酸素又は窒素などの不純物ガスとの反応により不動態層を形成して反応が停止する問題がある。
【0022】
さらには、GaClは、700℃以下ではGaClとGaとが混在する不均化を生じるため、反応容器及び反応装置部品の全てを700℃以上に加熱して保持する必要がある。一方700℃以上の温度では、反応装置部品とHClガスとの反応により反応容器壁面から不純物が多量に発生し、結晶の品質を損ねる要因となる。
【0023】
前述したように、金属や有機半導体材料の蒸着においては、いかに安定して蒸気発生材料を蒸気化させて均一な薄膜を形成するかが、問題となる。均一な薄膜を形成するためには、蒸気の発生速度が時間経過によって変動しないことが求められている。
【0024】
イオン注入は、ガス状の金属原子をイオン化した状態で、電界を印加し加速して、他の物体に金属イオンを打ち込むことをいう。近年では、半導体にイオン注入を行い、電子の流れを制御する箇所を作製することに応用されている。電子の流れを制御するためには、半導体の所定の箇所に注入するイオン量を精密に制御する必要があり、金属の蒸気ガスを生成する際に金属蒸気の発生速度の安定した制御が求められるとともに、半導体素子への温度の影響を最小限に抑制することが課題である。
【0025】
上述したように、蒸気発生材料を蒸気化させて薄膜形成や金属イオンビームに利用する分野においては、安定して効率的に蒸気発生材料を蒸気化する技術の開発が期待されているが、未だ非常に課題が多い。解決すべき課題の一つは、真空蒸着において、蒸気発生材料から金属蒸気や、有機および無機の化合物蒸気を発生させる際に生じるアウトガスとスプラッシュを抑制し、安定した被膜を効率的に生成することである。X線イメージ管装置を製造する分野においては、X線蛍光材料を蒸気化させる際に、スプラッシュが生じて均一性が低下することなく均質な蛍光膜が低温プロセスで得ることができる先行技術が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】特開平10-283925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
特許文献1には、容器に蒸気発生材料を装填して、容器を加熱することにより蒸気化対象である物質(以下、蒸発物質という。)を蒸気化させて蛍光材料を蒸着してX線入力窓の蛍光面を製造する方法において、該蒸気発生材料に、蒸発物質と蒸気圧が異なる物質を混合して、その蒸気圧が異なる物質が蒸発しない温度に容器を加熱することにより蛍光材料を蒸着してX線入力窓の蛍光面を製造することを特徴とするX線イメージ管の製造方法が開示されている。
【0028】
特許文献1の発明を実施するための形態においては、蒸気発生材料を、X線蛍光材料である第1の蒸発物質と、第2の蒸気圧の低い物質とにより構成することで、第1の蒸発物質から発生するスプラッシュの元となる固形物は、第2の物質が遮蔽媒体となることにより引き止められ、基板に到達しない。一方、第1の蒸発物質が完全に気体となった十分に加熱された蒸気は、遮蔽媒体である第2の物質の隙間を通り抜けて基板に到達することが示されている。
【0029】
上記により、均質で結晶粒子が細かい薄膜が基板上に形成されることが示されているが、遮蔽媒体を蒸気発生材料の表面に配置させると、少なからず蒸発効率が低下することになる。また、遮蔽媒体の配置は、基板の温度上昇を低減できる効果を得ることと引き換えに、蒸発効率を犠牲にしなければならない。
【0030】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、アウトガスとスプラッシュとを抑制し、安定して高効率に蒸発物質の蒸気が得られることができる蒸気発生材料を提供することを目的とする。併せて、低温で蒸発物質の蒸気化が可能な蒸気発生材料を提供することを目的とする。さらに、運搬性及び取扱いが改善された固相の蒸気発生材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題を解決するため、本発明の蒸気発生材料は、加熱により蒸気を発生する材料において、少なくとも、蒸発物質として一種以上の材料と、担持材料と、低温蒸気化促進材料と、を含有し、前記担持材料として、熱的、化学的に安定でかつ比表面積が大きい無機材料を主成分とする無機化合物を含有し、加熱時において前記蒸発物質の分散性を維持することによって蒸気発生速度の時間安定性を備え、前記低温蒸気化促進材料として、ハロゲン化アンモニウムを含有し、該ハロゲン化アンモニウムの昇華温度において前記蒸発物質が蒸発することによって該蒸発物質の低温蒸発性を備えたこと、を特徴とする。
【0033】
また、本発明の蒸気発生材料は、前記無機化合物が、遷移アルミナであること、を特徴とする。
【0035】
また、本発明の蒸気発生材料は、前記ハロゲン化アンモニウムが、塩化アンモニウムであること、を特徴とする。
【0036】
また、本発明の蒸気発生材料は、前記蒸発物質及び前記低温蒸気化促進材料が、前記担持材料に摩擦定着によって分散担持されていること、を特徴とする
【0037】
また、本発明の蒸気発生材料は、担持材料が、熱的、化学的に安定な固体潤滑材料を含有し、他物体への非固着性を備えたこと、を特徴とする。
【0038】
また、本発明の蒸気発生材料は、さらに、ペレット状に加圧成型したこと、を特徴とする。
【0039】
また、本発明の蒸気発生材料は、蒸発物質が、化合物であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
蒸気発生材料の構成要素に、蒸気化対象である金属などの蒸発物質とは化合も合金化もしない無機化合物などから構成された担持材料を加えることで、加熱時において蒸発物質の液化による凝集を抑制し、担持性および分散性を高め、高効率に蒸発物質を蒸気化させることができる効果を奏する。また、時間経過における蒸気発生量の変化(以下、蒸気発生速度という。)を抑制し安定した蒸気発生速度を得ることができる効果を奏する。
【0041】
担持材料に関して、特に熱的に安定していて比表面積の大きい遷移アルミナ、例えばγ-アルミナ(γ-Al)を採用することにより、γ-Alの表面には、他の担持材料より多量の蒸発物質が担持できるとともに、加熱時における蒸発物質の分散性が一層高まるので、無駄なく蒸気化することが可能となり高い蒸気発生率を実現できる効果を奏する。
【0042】
担持材料に固体潤滑材料、例えば化学的に安定した窒化ホウ素を含有させることによって、蒸気発生材料が容器や混錬装置などへの固着を防止する効果を奏する。
【0043】
混錬し粉末状に加工した蒸気発生材料をペレット状に加圧成型することによって、加熱時における蒸発物質の高い分散性を強固に維持する効果を奏する。加えて、蒸気発生材料の運搬性を向上させ、取り扱いが容易になる効果を奏する。
【0044】
室温(常温)に保った基板表面において、蒸気が再凝結捕集されて形成した被膜のpHや組成を分析することにより、ハロゲン化アンモニウムが、自らの分子組成を保ったままで近接する蒸発物質と分子間力により錯体化し、比較的低温の加熱にて結合状態を保ったまま蒸発していることが判った。ハロゲン化アンモニウムのうち、塩化アンモニウム(NHCl)を用いることにより、100℃台の極めて低温で蒸発物質の蒸発が開始され、高温による熱分解では発生するNHガスやHClガスは殆ど発生することがなく、蒸気発生源を含む反応装置内を略中性に保持することができ、反応装置を腐食することが少ないため、不純物の発生を抑制できるとともに、反応装置におけるメンテナンス作業の負担を軽減することが可能となる効果を奏する。反応装置は、例えば真空蒸着、CVD(HVPE装置を含む。)又はイオン注入装置である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明に係る蒸気発生材料1を蒸気化させるための蒸気発生源101の一例を示す概略図である。
図2】Gaとγ-Alとを混錬して作製した本発明に係る蒸気発生材料を図1の蒸気発生源101で蒸気化させた場合の蒸気発生速度の時間特性を示したグラフである。
図3】Ga単体のみを図1の蒸気発生源101で蒸気化させた場合の蒸気発生速度の時間特性を示したグラフである。
図4】Gaとγ-Alとを攪拌して作製した蒸気発生材料を図1の蒸気発生源101で蒸気化させた場合の蒸気発生速度の時間特性を示したグラフである。
図5】Gaとγ-Alとを混錬しペレット化して作製した本発明に係る蒸気発生材料を図1の蒸気発生源101で蒸気化させた場合の蒸気発生速度の時間特性を示したグラフである。
図6】本発明に係る蒸気発生材料の製造フローチャートを示した図である。
図7】Ga及びNHClと、γ-Alとを混錬して作製した本発明に係る蒸気発生材料を、図1の蒸気発生源101で蒸気化させた場合の蒸気発生速度の温度特性を示したグラフである。
図8】従来のHVPE装置200に使用する蒸気発生源201の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明に係る蒸気発生材料を実施するための形態について、図を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る蒸気発生材料1を蒸気化させるための蒸気発生源101の概略図である。図1では、蒸気発生源101を含む反応装置として、真空蒸着装置100を例示している。
【0047】
抵抗加熱による蒸気発生源101は、少なくとも真空容器110、ルツボ102、ルツボヒータ104、ルツボヒータ電源108及び真空ポンプ120から構成される。図1では、雰囲気ガスGASを導入するためのガスノズル180を備えている。ルツボ102の温度は、ルツボ102の底部に配設されたシース熱電対106によって検知され、温度計107に入力されて表示される。ルツボ102は、蒸気発生材料1から発生する蒸発物質の蒸気VAPがルツボ102から離脱しやすいように上方が開口される。蒸気発生源101は、真空蒸着、CVD又はイオン注入などの目的に応じて、ルツボ102の開口部上方に配設される装置構成が変更されて、反応装置の構成の一部となる。
【0048】
本発明に係る蒸気発生材料1は、ルツボ102に装填されて、ルツボヒータ104によって加熱されて蒸発物質の蒸気VAPを発生し、真空蒸着、CVD又はイオン注入など用途ごとに異なる反応装置構成によって、ルツボ102の開口部上方において、処理対象に対して作用する。例えば、図1で示した真空蒸着の場合では、ルツボ102の上方に処理基板Wが配置可能なように基板台150が配設される。処理基板Wの温度を成膜温度まで高める必要があるため、処理基板Wを加熱するための基板ヒータ160及び基板ヒータ電源162が備えられる。真空ポンプ120によって、真空容器110内は、減圧状態にあり、ルツボ102の中の蒸気発生材料1は、1Pa程度の蒸気圧で蒸発する。発生した蒸発物質の蒸気VAPは、処理基板Wの表面に到達する間に、ラジカル源130によって生成した動作ガスGASのラジカルと化合物を形成し処理基板W上に化合物結晶の成長が行われる。
【0049】
また、蒸発物質をイオンビームとして活用する場合には、蒸発物質の蒸気をイオン源の放電室に導入して電離イオン化し、電位差を設けた引出電極を通してイオンビームを発生させる。
【実施例1】
【0050】
本発明に係る蒸気発生材料1による蒸気発生速度を測定するために図1に示した真空蒸着装置100を試験装置として使用した。真空容器110内の圧力が0.001Pa以下になるまで真空ポンプ120によって初期排気を行った後、ルツボ温度を略1000℃の一定温度にして、蒸発物質の蒸気化の状況を計測した。蒸発物質が蒸発した総量は、電子天秤を用いて処理基板Wに堆積した蒸発物質の質量を計測し、蒸発発生速度は、質量分析計140を用いて蒸気VAPの構成要素の分圧を測定し、蒸気発生量の時間変化を汎用コンピュータ142によって分析処理を行った。汎用コンピュータ142は、専用分析処理装置でもよい。
【0051】
本発明に係る蒸気発生材料は、粉状の固相又は液相の蒸発物質と、担持材料となる粉粒状の固相の無機化合物を乳鉢やポットミルなどを用いて混錬し、摩擦定着することによって担持材料に蒸発物質が担持される。
【0052】
担持材料としての役割を担う無機化合物は、表面に可能な限り多量の蒸発物質を分散担持し、加熱時においても蒸発物質の分散性を長時間維持することが必要である。
【0053】
本発明に係る無機化合物は、比表面積の大きい素材であるシリカゲル(SiO・nHO)、活性炭(C・nHO)、ナノカーボン、ケイ酸アルミニウム(AlSiO)、ゼオライト((M,MII 1/2(AlSi2(m+n))・O,(n≧m))、チタニア(TiO)、マグネシア(MgO)又は遷移アルミナ(Al)などが挙げられる。
【0054】
本発明を実施するための形態では、遷移アルミナの中でも特に比表面積が大きく、吸着効率が高い物質であるγ-Alを選定した。γ-Alは、同等の粒径の研磨用アルミナ粉(α-Al)と比較して、100倍以上の比表面積を有しており、蒸発物質を分散担持する担持能力の大きさも100倍以上になるので好適である。
【0055】
図2に蒸発物質がGaである場合に、Gaをγ-Alに混錬させた蒸気発生材料から発生するGa蒸気の蒸気発生速度の時間特性のグラフを示した。具体的には、液化したGaを混錬によってγ-Alに摩擦定着させた蒸気発生材料を作製して、図1に示した抵抗加熱による蒸気発生源101を用いて、略1000℃の一定温度でGaが蒸気化された際の時間経過における蒸気発生速度である。横軸は時間(分)、縦軸はパスカル換算した蒸気圧である。発生したGa蒸気は、急激な蒸気発生速度の増減変化を示さず、700時間程度で蒸気発生速度は減少するものの、1000時間に至るまでGa蒸気を継続して発生させることができた。
【0056】
[比較例1]
図3に液相のGa単体を蒸気発生材料として、図1の蒸気発生源101を使用して発生する蒸気発生速度の時間特性のグラフを示した。図2と同様に、横軸は時間(分)、縦軸はパスカル換算した蒸気圧である。加熱温度は同様に、略1000℃の一定温度とした。発生したGa蒸気の分圧は、質量分析計140を用いて測定した。蒸気発生速度は、蒸気発生開始直後にピークに達し、その後は、時間経過とともに減少し、500時間経過後には、蒸気の発生が停止した。
【0057】
図2に示した本発明に係る蒸気発生材料と比較すると、時間経過に伴う蒸気発生速度の低下が著しい。図3のグラフを見ると、Ga単体を蒸気発生材料とした場合、以下の二つの問題点が存在することが分かる。第一の問題は、蒸気発生直後に蒸気発生速度が急激に増加しピークに達し、その後は、急激に減少するので、Ga蒸気を用いて安定して均一な成膜などの処理を行うことができないことである。第二の問題は、蒸気発生開始直後に蒸気発生速度が急激に増加する際に、アウトガスやスプラッシュが発生し、処理対象物の品質に悪影響を及ぼすことである。
【0058】
[比較例2]
蒸発物質は、蒸発する直前には液化しており、表面張力で球形に凝集して蒸気化面積が減少することによって蒸発能力が低下し、時間経過とともに蒸気発生速度が低下する傾向にある。また、液化に伴って、濡れ性がよくなりルツボの材料と化合することによって、又は酸素や窒素、炭素などとの残留ガスと化合することによって、蒸気発生速度が低下する場合があることが知られている。そこで、上記の問題を解決するために、従来は蒸発物質を無機化合物に攪拌して作製した蒸気発生材料が使用されてきた。
【0059】
図4に蒸発物質であるGaを担持材料であるγ-Alに攪拌して作製した蒸気発生材料を使用して発生する蒸気発生速度の時間特性のグラフを示した。具体的には、液相のGaを攪拌によってγ-Alに担持させた蒸気発生材料を作製して、図1に示した抵抗加熱による蒸気発生源101を用いて蒸気化された際の時間経過における蒸気発生速度である。図2と同様に、横軸は時間(分)、縦軸はパスカル換算した蒸気圧である。加熱温度は同様に、略1000℃の一定温度とした。発生したGa蒸気の分圧は、質量分析計140を用いて測定した。蒸気化されたGa蒸気は、蒸気発生直後に蒸気発生速度が急激に増加しピークに達し、その後は、急激な減少に転じ、200時間経過後、減少の程度は緩やかになるが、蒸気発生速度は減少し続けた。これは、液化したGaは表面張力が強いため、凝集が起こり、蒸発反応が阻害されたために生じた現象である。無機化合物を蒸発物質と弱く撹拌しただけでは、安定した蒸気発生速度を得ることができないことが示された。
【0060】
図2に示した本発明に係る蒸気発生材料と比較例1及び比較例2とを比較すると、比較例は時間経過による蒸気発生速度の低下が著しく、本発明に係る蒸気発生材料の高い効果が示された。これは、蒸発物質である液相のGaが混錬によって、γ-Alに分散して担持されることで、加熱時におけるGaの分散性が向上し、流動又は凝集化を防止して、凝集化による蒸気発生速度の低下、又は炭化や窒化による蒸発の停止が抑止されたことによるところが大きく影響している。
【実施例2】
【0061】
本願発明者らは、さらに蒸発物質の流動又は凝集化を制限することができれば、安定した蒸気発生は一層長時間にわたって継続できるのではないかとの予測を立て、無機化合物を担持材料として蒸発物質を摩擦定着させた蒸気発生材料をペレット化することを検討した。
【0062】
図5に蒸発物質とγ-Alとを混錬しペレット化して作製した蒸気発生材料を使用して発生する蒸気発生速度の時間特性のグラフを示した。具体的には、液相のGaを混錬によってγ-Alに摩擦定着させた蒸気発生材料を作製した後ペレット化して、図1に示した抵抗加熱による蒸気発生源101を用いて蒸気化された際の時間経過における蒸気発生速度である。横軸は時間(分)、縦軸はパスカル換算した蒸気圧である。発生するGa蒸気の分圧は、質量分析計140を用いて測定した。発生したGa蒸気は、急激な蒸気発生速度の増減を示さず、1000時間程度まで略一定の蒸気発生速度を示し、その後蒸気発生速度は減少するものの1500時間に至るまで蒸気の発生を継続することができた。
【0063】
図2で示した場合と同様に、急激な蒸気発生速度の増減を示さず、スプラッシュが抑制されていることが示されている。これは、蒸発物質である液相のGaが、混錬によってγ-Alに分散して担持されることで、加熱時におけるGaの分散性が向上し、流動又は凝集化が防止されことに加えて、ペレット化においては圧縮された状態であるため、加熱時において蒸発物質の分散性が強固に維持されたことによるものである。
【0064】
蒸気発生材料のペレット化は、さらに蒸気発生材料への水分子の侵入を阻止し、蒸気発生材料が酸化することによって蒸気発生速度が不安定になることや蒸発が停止することを防止し、長時間にわたって安定した蒸気発生速度を維持することを可能とした。
【0065】
実施例2の蒸気発生材料に使用する無機化合物は、熱的に安定で比表面積の大きい素材であるシリカゲル(SiO・nHO)、活性炭(C・nHO)、ナノカーボン、ケイ酸アルミニウム(AlSiO)、ゼオライト((M,MII 1/2(AlSi2(m+n))・H2O,(n≧m))、チタニア(TiO)、マグネシア(MgO)又は遷移アルミナ(Al)などが挙げられる。
【0066】
実施例2では、遷移アルミナの中でも特に比表面積が大きく、吸着効率が高い物質であるγ-Alを選定した。γ-Alは、同等の粒径の研磨用アルミナ粉(α-Al)と比較して、100倍以上の比表面積を有しており、蒸気発生材料を分散担持する担持能力の大きさも100倍以上になるので好適である。
【実施例3】
【0067】
HVPE法では、前述したように気相成長の材料となるGaClの生成のために850℃以上の高温が必要であり、700℃以下ではGaClとGaとが混在する不均化を生じるため、反応容器及び反応装置部品の全てを700℃以上に加熱して保持する必要があるが、700℃以上の温度では、反応装置部品とHClガスとの反応により反応容器壁面から不純物が多量に発生し、結晶の品質を損ねる要因となるので、低温で蒸気化させることが望まれていた。
【0068】
実施例3に用いる本発明に係る蒸気発生材料は、液相の蒸発物質Gaと、ハロゲン化アンモニウムとして粉粒状である固相の塩化アンモニウム(NHCl)と、担持材料として粉粒状である固相のγ-アルミナ(γ-Al)とを乳鉢によって混錬し、摩擦定着することによってGa及びNHClがγ-Alに担持される。
【0069】
低温で蒸気化させることができる蒸気発生材料による蒸気発生速度を測定するために図1に示した真空蒸着装置100を試験装置として使用した。ルツボ102の温度を、ルツボヒータ104によって120℃に設定し、真空容器110内の圧力が0.001Pa以下になるまで真空ポンプ120によって初期排気を行った後、ルツボ102の温度を徐々に昇温させて、蒸気化の状況を計測した。蒸発物質の蒸発の総量は、電子天秤を用いて処理基板Wに堆積した蒸発物質の質量を計測し、蒸気発生速度は、質量分析計140を用いて蒸気VAPの構成要素の分圧を測定し、蒸気発生量の時間変化を汎用コンピュータ142によって分析処理を行った。汎用コンピュータ142は、専用分析処理装置でもよい。
【0070】
担持材料としての役割を担う無機化合物は、担持材料表面に可能な限り多量の蒸発物質を分散担持し、長時間安定して蒸気を発生し続けることが必要である。
【0071】
実施例3の蒸気発生材料に使用する担持材料は、熱的に安定で比表面積の大きい無機化合物であるシリカゲル(SiO・nHO)、活性炭(C・nHO)、ナノカーボン、ケイ酸アルミニウム(AlSiO)、ゼオライト((M,MII 1/2(AlSi2(m+n))・O,(n≧m))、チタニア(TiO)、マグネシア(MgO)又は遷移アルミナ(Al)などが挙げられる。
【0072】
実施例3では、遷移アルミナの中でも特に比表面積が大きく、吸着効率が高い物質であるγ-Alを選定した。γ-Alは、同等の粒径の研磨用アルミナ粉(α-Al)と比較して、100倍以上の比表面積を有しており、蒸発物質を分散担持する担持能力の大きさも100倍以上になるので好適である。
【0073】
図6に蒸発物質がGaである場合に、Ga及びNHClをγ-Alに混錬させた蒸気発生材料から発生する蒸気の蒸気発生速度の温度特性のグラフを示した。NHClが昇華し始める120℃以上の温度帯において、蒸気発生速度が指数関数的に上昇していることを示し(グラフ左の実線曲線)、蒸発物質Gaの蒸気が発生していることを確認した。
【0074】
蒸発物質が低温で蒸発することに関しては、室温(常温)に保った基板表面において、蒸気が再凝結捕集されて形成した被膜のpHや組成を分析することによって、ハロゲン化アンモニウムが、自らの分子組成を保ったままで近接する蒸発物質と分子間力により錯体化し、ハロゲン化アンモニウムの昇華温度において結合状態を保ったまま蒸発していることが判った。混錬工程は、蒸発物質と低温蒸気化に寄与するハロゲン化アンモニウムとの接触機会を増やし、錯体化を促進するよう作用する。ハロゲン化アンモニウムは、NHCl、フッ化アンモニウム(NHF)、臭化アンモニウム(NHBr)又はヨウ化アンモニウム(NHI)が錯体化への寄与率が高い。なお、NHFは毒性が強い。入手が容易で安全性が高く手軽に使用できるNHClが好適である。
【0075】
NHClを含まず、Gaのみを蒸気発生材料とした場合は、1000℃を超えたところから蒸気圧が発生し、その後指数関数的に上昇する(グラフ右の破線曲線)。
【0076】
なお、グラフには示していないが、蒸発物質とNHClとを混錬した蒸気発生材料でも、NHClが昇華し始める120℃以上の温度帯において、蒸気発生速度は上昇曲線を示す。この場合、NHClが蒸発物質と錯体化する量が少なく、低温時には一部の錯体化した蒸発物質の化合物が蒸発し、残りはNHClが蒸発するようになり、蒸発物質の低温における蒸気発生速度の曲線は、図6と比較すると緩やかになる。場合によっては、未反応のままルツボに残存することもある。
【0077】
上記は、蒸発物質が蒸発する前の液化の状態にあるとき、蒸発物質の金属の流動化によって、凝集が起こり表面張力で蒸気化の面積が減少することによって生じる現象である。
【0078】
実施例3に示すように、蒸発物質及びNHClを担持材料に混錬させて蒸気発生材料を作製すれば、分子間力による錯体化が促進され、NHClが蒸発する温度、すなわち通常蒸発物質が蒸発する温度より低温において、効率的に蒸発物質を蒸気化させることができるので好適である。
【0079】
さらに、蒸発物質及びNHClを担持材料に混錬させて作製した蒸気発生材料を、ペレット化し圧縮された状態にすることによって、加熱時において蒸発物質の分散性が強固に維持されるので蒸気発生速度は安定し好適である。
【0080】
本実施例において示した本発明に係る蒸気発生材料は、HVPE装置の蒸気発生材料として使用した場合、100℃台の極めて低温で蒸発物質の蒸発が開始され、分解生成物であるNHやHClガスは殆ど発生することがなく、蒸気発生源を含む反応装置内を略中性に保持することができ、反応装置を腐食することが少ないため不純物の発生が抑制できるとともに、反応装置におけるメンテナンス作業の負担を軽減することが可能となる。
【0081】
表1に、上述した実施例、比較例の蒸気発生試験の試験条件の比較を示す。
【表1】
【0082】
図7に、本発明に係る蒸気発生材料の製造フローチャートを示す。第1ステップは、蒸発物質を一度液化または微粒子化することである。
【0083】
第2ステップは、蒸発物質と、ハロゲン化アンモニウムと、担持材料とを所定量に計量する。
【0084】
第3ステップにおいて、蒸発物質と、ハロゲン化アンモニウムと、担持材料とを配合し、第4ステップにおいて、例えば、乳鉢によって、混錬工程を実施し、蒸発物質を無機化合物に摩擦定着させる。混錬は、ボールミルなどの粉砕機を用いて行ってもよい。
【0085】
例えば、蒸発物質がGaである場合には、40℃程度に加熱して液相にしたうえで、担持材料である無機化合物と混錬すると、Gaが無機化合物に効率よく分散担持する。
【0086】
窒化ホウ素(BN)に例示される固体潤滑材料を担持材料に含めることによって、蒸気発生材料が混錬装置などに固着することを防止することができる。固体潤滑材料は、BNに限定されるものではなく、グラファイトでもよい。
【0087】
第5ステップにおいて、混錬工程を経た蒸気発生材料の計量を行う。
【0088】
第6ステップにおいて、金型プレス機を用いて計量された蒸気発生材料をペレットに圧縮成型を行う。
【0089】
第7ステップにおいて、ペレット化された蒸気発生材料を乾燥させる。第8ステップとして、混錬の状態の検査を行い、品質を確認する。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本願発明の蒸気発生材料に利用できて有用な蒸発物質は、無機電子材料として用いられる13族元素のアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)が挙げられる。さらに、蒸気化が難しい物質として知られている有機半導体材料や有機EL(Electro Luminescence)材料を蒸発物質として使用することができる。
【0091】
本発明に係る蒸気発生材料は、真空蒸着の薄膜形成プロセス又は化学蒸着(CVD)や金属イオンビーム発生プロセスなどに使用する材料蒸気の発生源において、加熱により金属蒸気や、有機および無機の化合物蒸気を発生する材料に利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 本発明に係る蒸気発生材料
100 真空蒸着装置
101 蒸気発生源
102 ルツボ
104 ルツボヒータ
106 シース熱電対
107 温度計
108 ルツボヒータ電源
110 真空容器
120 真空ポンプ
130 ラジカル源
140 質量分析計
142 汎用コンピュータ
150 基板台
160 基板ヒータ
162 基板ヒータ電源
180 ガスノズル
200 HVPE装置
201 蒸気発生源
202 ルツボ
204 ルツボ電気炉
210 石英管
220 雰囲気ガスポート
240 キャリアガスポート
250 基板台
260 基板電気炉
270 排気口

EM 従来の蒸気発生材料
W 処理基板
GAS ガス
VAP 蒸気
【要約】
【課題】本発明は、アウトガスとスプラッシュとを抑制し、安定して高効率に蒸発物質の蒸気が得られることができる蒸気発生材料を提供することを目的とする。併せて、低温で蒸発物質の蒸気化が可能な蒸気発生材料を提供することを目的とする。さらに、運搬性及び取扱いが改善された固相の蒸気発生材料を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明の蒸気発生材料は、加熱により蒸気を発生する材料において、少なくとも、蒸発物質として一種以上の材料と、担持材料と、を含むこと、を特徴とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8