(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】化粧料用オイル増粘剤及び油溶性共重合体
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20230721BHJP
A61K 8/00 20060101ALI20230721BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20230721BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/00
C08F220/12
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019079611
(22)【出願日】2019-04-18
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2018098765
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】宇山 允人
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 和之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 峰大
(72)【発明者】
【氏名】古田 拓也
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517518(JP,A)
【文献】米国特許第04552755(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0029569(US,A1)
【文献】特表2015-503513(JP,A)
【文献】特開2010-235625(JP,A)
【文献】特表2015-514089(JP,A)
【文献】特開昭63-101314(JP,A)
【文献】国際公開第2013/148614(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0080763(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08F 6/00-246/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性モノマーから構成されるモノマー単位、易結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位、及び難結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を有する油溶性共重合体であ
り、
前記親水性モノマーが、下記の式1及び式2から選択される少なくとも一種のモノマーであり、かつ、
前記油溶性共重合体において、前記親水性モノマーのモノマー単位が、30~50モル%の範囲で含まれており、前記易結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位が、40~65モル%の範囲で含まれており、前記難結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位が、5~15モル%の範囲で含まれている、
化粧料用オイル増粘剤
:
【化1】
式1中、
R
1
は、水素原子、グリセリル基、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のヒドロキシアルキル基、又は-(C
3
H
6
O)
n
Hで示され、nが2~10の整数であるポリプロピレングリコール基であり、かつ
R
2
は、水素原子又はメチル基であり、
【化2】
式2中、
R
3
は、水素原子又はメチル基であり、かつ
R
4
は、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。
【請求項2】
前記易結晶性の疎水性モノマーは、炭素原子数が8以上であり、常温で固体のモノマーであり、かつ、前記難結晶性の疎水性モノマーは、炭素原子数が8以上であり、常温で液体のモノマーである、請求項1に記載の増粘剤。
【請求項3】
前記易結晶性の疎水性モノマーが、下記の式4のモノマーである、請求項1
又は2に記載の増粘剤:
【化3】
式4中、
R
5は、炭素原子数16~22の直鎖状のアルキル基であり、かつ
R
6は、水素原子又はメチル基である。
【請求項4】
前記難結晶性の疎水性モノマーが、下記の式5のモノマーである、請求項1~
3の何れか一項に記載の増粘剤:
【化4】
式5中、
R
7は、炭素原子数18以下の分岐状のアルキル基、又は炭素原子数12以下の直鎖状のアルキル基であり、かつ
R
8は、水素原子又はメチル基である。
【請求項5】
前記式1のモノマーが、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸PPG-6、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、及び(メタ)アクリル酸の中の少なくとも一種から選択され、かつ、前記式2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、
及びN-イソプロピル(メタ)アクリルアミ
ドの中の少なくとも一種から選択される、請求項
1~
4の何れか一項に記載の増粘剤。
【請求項6】
前記式4のモノマーが、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、及び(メタ)アクリル酸ベヘニルの中の少なくとも一種から選択される、請求項
3~
5の何れか一項に記載の増粘剤。
【請求項7】
前記式5のモノマーが、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、及び(メタ)アクリル酸イソステアリルの中の少なくとも一種から選択される、請求項
4~
6の何れか一項に記載の増粘剤。
【請求項8】
前記油溶性共重合体において、前記易結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位と前記難結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位とのモル比が、5:1~8:1である、請求項1~
7の何れか一項に記載の増粘剤。
【請求項9】
前記油溶性共重合体の重量平均分子量が、9000~80000である、請求項1~
8の何れか一項に記載の増粘剤。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか一項に記載の増粘剤及び油分を含むオイル系化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化粧料用オイル増粘剤、及び係る増粘剤等に使用し得る新規な油溶性共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化粧料の分野では、使用する油分に対し、増粘剤、ゲル化剤などの添加剤を配合して、化粧料の使用性等を向上させる試みが検討されている。
【0003】
特許文献1には、ポリアミド-8と、C12~C22の分岐若しくは不飽和アルキル基を有する液状高級脂肪酸、又は、C12~C22の分岐若しくは不飽和アルキル基を有する液状高級アルコールとを含有する、透明な化粧料用油性液状増粘剤が開示されている。
【0004】
特許文献2には、特定のシリコーン化多糖化合物と、シリコーン乳化剤とからなる化粧料用油性増粘剤が開示されている。
【0005】
特許文献3には、特定の疎水性モノマーと、特定の親水性モノマーとから構成される共重合体を含む、化粧料用油性ゲル化剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-210711号公報
【文献】特開2014-218468号公報
【文献】国際公開第2016/098456号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、化粧料の分野においては、従来より、種々の油分が使用されており、このような油分に対して増粘効果を呈し得る新規なオイル増粘剤が望まれていた。
【0008】
したがって、本発明の主題は、化粧料で使用される油分に対して増粘効果を呈し得る新規なオイル増粘剤を提供することであり、また、係る増粘剤等に使用し得る新規な油溶性共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〈態様1〉
親水性モノマーから構成されるモノマー単位、易結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位、及び難結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を有する油溶性共重合体である、化粧料用オイル増粘剤。
〈態様2〉
前記易結晶性の疎水性モノマーは、炭素原子数が8以上であり、常温で固体のモノマーであり、かつ、前記難結晶性の疎水性モノマーは、炭素原子数が8以上であり、常温で液体のモノマーである、態様1に記載の増粘剤。
〈態様3〉
前記親水性モノマーが、下記の式1及び式2から選択される少なくとも一種のモノマーである、態様1又は2に記載の増粘剤:
【化1】
式1中、
R
1は、水素原子、グリセリル基、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のヒドロキシアルキル基、又は-(C
3H
6O)
nHで示され、nが2~10の整数であるポリプロピレングリコール基であり、かつ
R
2は、水素原子又はメチル基であり、
【化2】
式2中、
R
3は、水素原子又はメチル基であり、かつ
R
4は、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は下記の式3の置換基である。
【化3】
〈態様4〉
前記易結晶性の疎水性モノマーが、下記の式4のモノマーである、態様1~3の何れかに記載の増粘剤:
【化4】
式4中、
R
5は、炭素原子数16~22の直鎖状のアルキル基であり、かつ
R
6は、水素原子又はメチル基である。
〈態様5〉
前記難結晶性の疎水性モノマーが、下記の式5のモノマーである、態様1~4の何れかに記載の増粘剤:
【化5】
式5中、
R
7は、炭素原子数18以下の分岐状のアルキル基、又は炭素原子数12以下の直鎖状のアルキル基であり、かつ
R
8は、水素原子又はメチル基である。
〈態様6〉
前記式1のモノマーが、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸PPG-6、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、及び(メタ)アクリル酸の中の少なくとも一種から選択され、かつ、前記式2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及び2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の中の少なくとも一種から選択される、態様3~5の何れかに記載の増粘剤。
〈態様7〉
前記式4のモノマーが、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、及び(メタ)アクリル酸ベヘニルの中の少なくとも一種から選択される、態様4~6の何れかに記載の増粘剤。
〈態様8〉
前記式5のモノマーが、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、及び(メタ)アクリル酸イソステアリルの中の少なくとも一種から選択される、態様5~7の何れかに記載の増粘剤。
〈態様9〉
前記油溶性共重合体において、前記親水性モノマーのモノマー単位が、30~50モル%の範囲で含まれており、前記易結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位が、40~65モル%の範囲で含まれており、前記難結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位が、5~15モル%の範囲で含まれている、態様1~8の何れかに記載の増粘剤。
〈態様10〉
前記油溶性共重合体において、前記易結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位と前記難結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位とのモル比が、5:1~8:1である、態様1~9の何れかに記載の増粘剤。
〈態様11〉
前記油溶性共重合体の重量平均分子量が、9000~80000である、態様1~10の何れかに記載の増粘剤。
〈態様12〉
態様1~11の何れかに記載の増粘剤及び油分を含むオイル系化粧料。
〈態様13〉
下記の式1及び式2から選択される少なくとも一種の親水性モノマーから構成されるモノマー単位、
下記の式4の易結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位、並びに
下記の式5の難結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位
を有する、油溶性共重合体:
【化6】
式1中、
R
1は、水素原子、グリセリル基、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のヒドロキシアルキル基、又は-(C
3H
6O)
nHで示され、nが2~10の整数であるポリプロピレングリコール基であり、かつ
R
2は、水素原子又はメチル基であり、
【化7】
式2中、
R
3は、水素原子又はメチル基であり、かつ
R
4は、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は下記の式3の置換基であり、
【化8】
【化9】
式4中、
R
5は、炭素原子数16~22の直鎖状のアルキル基であり、かつ
R
6は、水素原子又はメチル基であり、
【化10】
式5中、
R
7は、炭素原子数18以下の分岐状のアルキル基、又は炭素原子数12以下の直鎖状のアルキル基であり、かつ
R
8は、水素原子又はメチル基である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化粧料で使用される油分に対して増粘効果を呈し得る新規なオイル増粘剤を提供することができ、また、係る増粘剤等に使用し得る新規な油溶性共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本発明の化粧料用オイル増粘剤は、親水性モノマーから構成されるモノマー単位、易結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位、及び難結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を有する油溶性共重合体である。
【0013】
原理によって限定されるものではないが、このような油溶性共重合体が、油分に対して溶解して増粘効果を付与し得る作用原理は以下のとおりであると考える。
【0014】
例えば、特許文献3に開示される共重合体は、特定の疎水性モノマーと、特定の親水性モノマーとから構成されている。このうちの疎水性モノマーは、油分への溶解性を発現する機能を奏することに加え、結晶化し易く、共重合体同士が近接するに従い、共重合体間の疎水性モノマー単位によって結晶化するため、油分を取り込むような形でネットワーク構造を形成するものと考えられる。また、共重合体間の親水性モノマー単位も水素結合により結合するため、同様のネットワーク構造を形成するものと考えられる。その結果、係る共重合体は、この二つのネットワーク構造により油性ゲル化剤としての機能を発現するものと考えられる。なお、係る油性ゲル化剤によってゲル化したゲル状組成物は、油分などで希釈したとしても、単にゲル状物と油分とが分離するのみであり、例えば、ゲル状組成物よりも粘度の低いとろみ状の組成物などにはならない。
【0015】
一方、本発明の油溶性共重合体は、親水性モノマーから構成されるモノマー単位及び易結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位に加え、難結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を有している。この難結晶性の疎水性モノマー単位が、易結晶性の疎水性モノマー単位による結晶化を阻害し、二つのネットワーク構造のうちの結晶化に基づくネットワーク構造の発現を抑制するため、ゲル化することなくオイル増粘剤として機能し得るものと考えている。また、親水性モノマー及び難結晶性の疎水性モノマーのみから得られる共重合体では、油分に溶解しづらい若しくは溶解しないため、本発明の油溶性共重合体を構成する易結晶性の疎水性モノマー単位は、油分への溶解性に寄与していると考えている。
【0016】
本発明における用語の定義は以下のとおりである。
【0017】
本発明において「親水性モノマー」とは、水に任意の割合で溶解するモノマーを意図し、「疎水性モノマー」とは、それ以外のモノマー、即ち、基本的に水に混和しないモノマーを意図する。
【0018】
本発明において「易結晶性の疎水性モノマー」及び「難結晶性の疎水性モノマー」なる用語は、例えば、二つの疎水性モノマーを比較した場合に、結晶化し易い方が、易結晶性の疎水性モノマーであり、結晶化しにくい方が、難結晶性の疎水性モノマーであることを意図する。ここで、難結晶性の疎水性モノマーには、全く結晶化しない疎水性モノマーも包含される。
【0019】
すなわち、溶融状態から冷却していったときに高い温度で結晶化する疎水性モノマーを、易結晶性の疎水性モノマーとすることができ、溶融状態から冷却していったときにより低い温度で結晶化する疎水性モノマー又は結晶化しない疎水性モノマーを、難結晶性の疎水性モノマーとすることができる。ここで、易結晶性の疎水性モノマーの結晶化温度としては、例えば、20℃以上、25℃以上、又は30℃以上と規定することができ、また、難結晶性の疎水性モノマーの結晶化温度としては、例えば、10℃以下、5℃以下、又は0℃以下と規定することができる。
【0020】
また、例えば、このような易結晶性の疎水性モノマーとしては、炭素原子数が8以上、16以上、又は18以上であり、かつ、常温で結晶化して固体状の疎水性モノマーなどを挙げることができ、難結晶性の疎水性モノマーとしては、炭素原子数が8以上、12以上、又は16以上であり、かつ、常温では結晶化せずに液体状の疎水性モノマーなどを挙げることができる。ここで常温とは、15℃~25℃の温度範囲を意図する。
【0021】
さらに、例えば、このような易結晶性の疎水性モノマーとしては、係るモノマーから得られるホモポリマーのガラス転移温度が、10℃以上、12℃以上、又は15℃以上となるモノマーであってもよく、また、60℃以下、55℃以下、又は50℃以下となるモノマーであってもよい。また、難結晶性の疎水性モノマーとしては、係るモノマーから得られるホモポリマーのガラス転移温度が、-90℃以上、-88℃以上、又は-86℃以上となるモノマーであってもよく、また、0℃以下、-5℃以下、又は-10℃以下となるモノマーであってもよい。
【0022】
本発明において「ゲル化」又は「ゲル状」とは、せん断速度が限りなく0s-1に近いところの粘度、例えば、せん断速度が0.0001s-1、25℃雰囲気下の静置粘度で規定することができ、20000Pa・s超、25000Pa・s以上、又は30000Pa・s以上の範囲と規定することができる。一方、本発明のオイル増粘剤で増粘させた増粘物のせん断速度0.0001s-1及び25℃雰囲気下の静置粘度は、20000Pa・s以下、15000Pa・s以下、又は10000Pa・s以下の範囲と規定することができ、また、100Pa・s以上、150Pa・s以上、又は200Pa・s以上の範囲と規定することができる。
【0023】
本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意図する。
【0024】
《油溶性共重合体》
本発明の油溶性共重合体は、親水性モノマーから構成されるモノマー単位、易結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位、及び難結晶性の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を有している。係る共重合体は、ランダム型又はブロック型のいずれであってもよいが、合成の容易性の観点から、ランダム型であることが好ましい。
【0025】
油溶性共重合体において、増粘性等の観点から、親水性モノマーのモノマー単位は、30モル%以上、32モル%以上、又は35モル%以上含まれていてもよく、また、50モル%以下、48モル%以下、又は45モル%以下含まれていてもよい。油分への溶解性等の観点から、易結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位は、40モル%以上、42モル%以上、又は45モル%以上含まれていてもよく、また、65モル%以下、63モル%以下、62モル%以下、61モル%以下、又は60モル%以下含まれていてもよい。結晶化阻害性等の観点から、難結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位は、5モル%以上、8モル%以上又は9モル%以上含まれていてもよく、また、15モル%以下、13モル%以下、又は12モル%以下含まれていてもよい。
【0026】
また、易結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位による結晶化に伴うゲル化を抑制し、増粘性をより発現し易くするために、易結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位と難結晶性の疎水性モノマーのモノマー単位とのモル比は、5:1~8:1の範囲であることが好ましく、5:1~7:1の範囲であることがより好ましく、5.5:1~6:1の範囲であることがさらに好ましい。
【0027】
油溶性共重合体の分子量については、特に限定されないが、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーにおける、ポリスチレン換算の重量平均分子量としては、9,000~80,000の範囲とすることができ、20,000~50,000の範囲であることが好ましく、25,000~40,000の範囲であることがより好ましい。
【0028】
〈親水性モノマー〉
親水性モノマーとしては、例えば、下記の式1及び式2から選択される少なくとも一種のモノマーを使用することができる。
【0029】
【0030】
式1中、R1は、水素原子、グリセリル基、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のヒドロキシアルキル基、又は-(C3H6O)nHで示され、nが2~10の整数であるポリプロピレングリコール基であり、かつ、R2は、水素原子又はメチル基である。ここで、ヒドロキシアルキル基としては、例えば、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシエチル-2-メチルプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0031】
式1で示される親水性モノマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸PPG-6、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、(メタ)アクリル酸等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸が好ましく、メタクリル酸グリセリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸がより好ましい。
【0032】
【0033】
式2中、R
3は、水素原子又はメチル基であり、かつ、R
4は、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は下記の式3の置換基である。
【化13】
【0034】
ここで、R4におけるアルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられ、ヒドロキシアルキル基としては、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシエチル-2-メチルプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0035】
式2で示される親水性モノマーとしては、具体的には、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。中でも、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドが好ましく、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドがより好ましく、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドが特に好ましい。
【0036】
〈易結晶性の疎水性モノマー〉
(式4のモノマー)
【化14】
【0037】
式4中、R5は、炭素原子数16~22の直鎖状のアルキル基であり、かつ、R6は、水素原子又はメチル基である。ここで、炭素原子数16~22の直鎖状のアルキル基としては、例えば、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等が挙げられる。
【0038】
係る疎水性モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、(メタ)アクリル酸と、炭素原子数が16~22の直鎖状のアルキル基を有するアルコールからなるエステルである。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸ステアリルが好ましい。
【0039】
〈難結晶性の疎水性モノマー〉
(式5のモノマー)
【化15】
【0040】
式5中、R7は、炭素原子数18以下の分岐状のアルキル基、又は炭素原子数12以下の直鎖状のアルキル基であり、かつ、R8は、水素原子又はメチル基である。ここで、R7における直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、炭素原子数が3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は8以上のアルキル基を使用することができる。また、R8としては、水素原子が好ましい。
【0041】
式5で示される疎水性モノマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソステアリルが好ましく、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソステアリルがより好ましく、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソステアリルがさらに好ましい。
【0042】
〈任意のモノマー〉
本発明の油溶性共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記式1、2、4、5以外のモノマーから構成されるモノマー単位をさらに有していてもよい。係るモノマー単位の割合は、構成するモノマー単位全量の30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、又は5モル%以下の範囲とすることができる。係るモノマーとしては、例えば、各種のアニオン性モノマー、カチオン性モノマー、ノニオン性モノマー、及びこれら以外のモノマーからなる群から選ばれる一種以上のモノマーが挙げられる。
【0043】
〈油溶性共重合体の製造方法〉
本発明の油溶性共重合体は、公知の重合法によって得ることができ、次の方法に限定されないが、例えば、親水性モノマー、易結晶性の疎水性モノマー及び難結晶性の疎水性モノマーの混合物、重合溶媒、並びに重合開始剤を反応容器内に仕込み、一定温度を保つように加温しながら数時間維持して重合反応を進行させる。次いで、反応容器内の溶液から重合溶媒を留去することで、油溶性共重合体を得ることができる。
【0044】
また、リビングラジカル重合法により共重合体を得ることもできる。この場合、共重合体の分子量の調節が容易になるとともに、分子量分布の狭い共重合体を生成することができる。
【0045】
(重合溶媒)
重合溶媒としては、モノマーの官能基に対して反応性を示さないような溶媒が適宜選択される。次のものに限定されないが、例えば、n-ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコールなどの水酸基含有グリコールエーテル;ジグライム、トリグライム、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;ジメチルケトン、ジエチルケトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、o-ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤;ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタムなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、ニトロメタン、アセトニトリル、ニトロベンゼン、ジオクチルフタレートなどが挙げられる。
【0046】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、従来公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物又はアゾ化合物などを使用することができる。具体的には、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーキシド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシル-3,3-イソプロピルヒドロパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、ジクミルヒドロパーオキシド、アセチルパーオキシド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(イソブチレート)などが挙げられる。
【0047】
(重合時間)
還流状態を維持する時間、即ち、重合時間は、モノマーがなくなるまで重合を続けることが好ましく、特に限定されないが、例えば、1時間以上、2時間以上又は3時間以上とすることができ、また、144時間以下、72時間以下又は48時間以下とすることができる。
【0048】
(重合雰囲気)
重合雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気下でそのまま重合してもよく、即ち、重合系内に通常の範囲内で酸素が存在してもよいし、必要に応じて酸素を除去するため窒素又はアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。使用する各種材料は、蒸留、活性炭又はアルミナ等で不純物を除去してもよいが、市販品をそのまま使用してもよい。また、重合を遮光下で行ってもよく、ガラスのような透明容器中で行ってもよい。
【0049】
(重合反応に寄与する他の成分)
例えば、共重合体の分子量調節等のため、反応容器中に連鎖移動剤などの他の成分を必要に応じて添加してもよい。係る連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルメルカプタン、チオグリセロール等のメルカプト基を有する化合物;次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の無機塩;α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、共重合体の分子量が目的の範囲となるように適宜決定されるが、通常、モノマーに対して0.01~10質量%の範囲が好ましい。
【0050】
《油溶性共重合体の使用用途》
本発明の油溶性共重合体は、油分等を含む各種の疎水性有機溶媒に溶解し、係る溶媒の粘度を増加させることができるため、例えば、化粧料、塗料、インキ、コーティング用組成物等、種々の用途に使用することができる。中でも、化粧料用のオイル増粘剤として使用することが好ましい。ここで、疎水性有機溶媒とは、水と混合した場合に、少なくともその一部が分離する溶媒を意図する。
【0051】
また、本発明の油溶性共重合体を含む組成物は、透明性にも優れた組成物にすることもできる。このような場合、係る組成物は、疎水性有機溶媒に対し、色味を変化させることなく、増粘性を発現させることができる。
【0052】
本発明の油溶性共重合体の配合量としては、増粘性、安定性等の観点から、共重合体及び疎水性有機溶媒の混合物100質量%中、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上とすることができ、また、10質量%以下、8質量%以下、又は5質量%以下とすることができる。
【0053】
また、共重合体及び疎水性有機溶媒等を含む組成物の調製方法は、特に限定されないが、例えば、共重合体、疎水性有機溶媒等を各々溶解させてから混合することが好ましく、また、溶解及び混合においては、必要に応じて加熱してもよい。
【0054】
本発明を限定するものではないが、具体的に、本発明の油溶性共重合体をオイル増粘剤として用いた化粧料について以下に説明する。
【0055】
〈化粧料〉
(疎水性有機溶媒)
本発明の油溶性共重合体を化粧料用オイル増粘剤として使用する場合、疎水性有機溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができ、また、次のものに限定されないが、特に、種々の油分、中でも、係る増粘剤と相溶し易い油分、例えば、炭化水素油、エステル油、及び高級アルコールの少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0056】
炭化水素油としては、流動パラフィン、テトライソブタン、水添ポリデセン、オレフィンオリゴマー、イソドデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、水添ポリイソブテン等が挙げられる。
【0057】
エステル油としては、イソオクタン酸セチル(2-エチルヘキサン酸セチル)、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジピバリン酸PPG-3、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタカプリル酸ポリグリセリル-6、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。
【0058】
高級アルコールとしては、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0059】
また、炭化水素油、エステル油、高級アルコールの合計量は、油分中80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。
【0060】
本発明のオイル増粘剤は、種々の化粧料、特に、油性化粧料又は油中水型の乳化化粧料に好適に使用することができる。
【0061】
(油性化粧料)
油性化粧料としては、例えば、サンケアオイル、美容液などのスキンケア化粧料;口紅、グロス、マスカラ、マスカラ下地などのメーキャップ化粧料;メイク落としなどの皮膚洗浄料;ヘアオイル、ヘアトリートメントなどの毛髪化粧料等が挙げられる。
【0062】
(油中水型の乳化化粧料)
油中水型乳化化粧料としては、例えば、乳液、クリーム、フェイスオイル、ボディーオイル、美容液などのスキンケア化粧料;ファンデーション、化粧下地、口紅、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、マスカラ下地などのメーキャップ化粧料;メイク落としなどの皮膚洗浄料;毛髪洗浄料;ヘアトリートメント、ヘアオイルなどの毛髪化粧料;日焼け止め化粧料;染毛料等が挙げられる。
【0063】
(任意成分)
本発明の化粧料は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。各種成分としては、化粧料に通常配合し得るような添加成分、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、シリコーン化多糖類等の皮膜形成剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、各種抽出液、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、キレート剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用可能な水溶性薬剤、酸化防止剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止助剤、噴射剤、有機系粉末、顔料、染料、色素、香料、水、酸成分、アルカリ成分等を挙げることができる。これらの任意成分は、油相中及び存在する場合は水相中に適宜配合することができる。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
《実施例1~29及び比較例1~2》
〈共重合体の合成〉
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌機が取り付けられた容量1リットルの四つ口フラスコに、エタノール250質量部と、モノマーのモル比が表1又は表2に示す割合となるように各モノマーの混合物を合計で100質量部仕込み、窒素気流下で昇温した。約80℃の還流状態となった時点で、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを1質量部添加し、4時間、還流状態を維持して重合反応を進行させた。次いで、フラスコ内の溶液から溶媒のエタノールを留去することで、共重合体を得た。ただし、実施例12~18については、所定の重量平均分子量となるようにエタノール及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリルの仕込み量を適宜調節した。
【0066】
(重量平均分子量)
得られた共重合体の重量平均分子量は、以下の測定条件によるゲル浸透クロマトグラフィーによって算出した。
【0067】
装置名:Prominence HPLCシステム(株式会社島津製作所製)
カラム:Shodex KF-805、KF-803、KF-801(直列)(昭和電工株式会社製)
移動相:テトラヒドロフラン
流速 :1mL/min
検出器:示差屈折率検出器
温度 :40℃
分子量標準試料:ポリスチレン
【0068】
〈評価方法〉
(油分との相溶性の評価)
共重合体を各種油分に配合し、85℃で攪拌しながら溶解させたときの共重合体と油分との相溶性を目視により観察して下記の基準で評価し、その結果を表1に示す。ここで、共重合体の配合量は、共重合体及び油分の合計量に対し、共重合体が3質量%含まれるように調製した。
【0069】
A:容易に溶解して相溶した。
B:溶解しづらかったが相溶した。
C:わずかに沈殿が見られた。
D:いくらか沈殿が見られた。
E:全く相溶しなかった。
【0070】
(増粘性評価)
共重合体を各種油分に配合し、85℃で攪拌しながら溶解させた後、室温まで冷却して試料を調製した。増粘性の評価は、Anton Paar社製のレオメーターMCR302を用い、25℃、1気圧の条件で、せん断速度が限りなく0s-1に近いところ、即ち剪断速度が0.0001s-1での粘度を基に下記の基準で評価した。その結果を表1に示す。ここで、共重合体の配合量は、共重合体及び油分の合計量に対し、共重合体が3質量%含まれるように調製した。
【0071】
A:2000Pa・s以上、20,000Pa・s以下
B:1000Pa・s以上、2000Pa・s未満
C:100Pa・s以上、1000Pa・s未満
D:1Pa・s以上、100Pa・s未満
E:20,000Pa・s超(ゲル化した。)
【0072】
(透明性評価)
共重合体を各種油分に配合し、85℃で攪拌しながら溶解させた後、室温まで冷却して試料を調製した。係る試料の透明性を目視により観察し、下記の基準で評価した結果を表1に示す。ここで、共重合体の配合量は、共重合体及び油分の合計量に対し、共重合体が3質量%含まれるように調製した。
【0073】
A:優れた透明性を呈した。
B:良好な透明性を呈した。
C:わずかな濁りを呈した。
D:いくらか白濁していた。
E:白濁していた。
【0074】
【0075】
【0076】
〈結果〉
表1から明らかなように、難結晶性疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を含まない共重合体を使用した比較例1の組成物の場合は、共重合体が油分に対して相溶するものの、組成物自体はゲル化してしまった。また、易結晶性疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を含まない共重合体を使用した比較例2の場合は、共重合体が油分に対して相溶しなかった。一方、これら二つのモノマー単位を含む本発明の共重合体を使用した実施例1~21の組成物の場合には、共重合体は、油分に対して相溶するとともに、少なくとも一方の油分に対し、ゲル化させることなく増粘させ得ることが確認できた。
【0077】
また、難結晶性疎水性モノマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシルを使用した態様の実施例1~3と、メタクリル酸ラウリルを使用した態様の実施例4~6、アクリル酸イソステアリルを使用した態様の実施例9~11、及びアクリル酸n-オクチルを使用した態様の実施例19~21とを比べると、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸イソステアリル又はアクリル酸n-オクチルを使用した態様の方が、透明性等の性能がより向上することが分かった。
【0078】
表2から明らかなように、メタクリル酸グリセリル以外の親水性モノマーを採用した場合であっても、本発明の共重合体は、油分をゲル化させることなく増粘させ得ることが確認できた。
【0079】
また、親水性モノマーとして、メタクリル酸2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルを使用した態様の実施例25及びメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルを使用した態様の実施例27と、N-イソプロピルアクリルアミドを使用した態様の実施例26及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用した態様の実施例28とを比べると、実施例26及び28の態様の方が、相溶性及び増粘性がより向上することが分かった。さらに、メタクリル酸グリセリルを使用した態様の実施例15、2-ヒドロキシエチルアクリルアミドを使用した態様の実施例22、アクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用した態様の実施例23、及びアクリル酸を使用した態様の実施例24に関しては、相溶性、増粘性及び透明性がさらに向上することが分かった。