(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】音声制御装置及び音声制御システム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/14 20060101AFI20230721BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20230721BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20230721BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
H04R3/14
G10K11/178 120
H04R3/00 310
H04R1/40 310
(21)【出願番号】P 2021533079
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2020027376
(87)【国際公開番号】W WO2021010397
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019131955
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】荒木 潤二
(72)【発明者】
【氏名】安部 聡志
(72)【発明者】
【氏名】山口 高弘
(72)【発明者】
【氏名】窪田 憲一
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-271067(JP,A)
【文献】特開2003-092799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0014430(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/14
G10K 11/178
H04R 3/00
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間において、第1スピーカおよび前記第1スピーカよりも高音の出力に適した第2スピーカを含む複数のスピーカからの音声信号の出力を制御する音声制御装置であって、
音源からコンテンツの音源信号を入力する音源信号入力部と、
前記所定の空間において集音される集音信号であって、前記複数のスピーカの少なくとも一つから出力された前記コンテンツの音声信号であるコンテンツ再生信号を含む集音信号を入力する集音信号入力部と、
前記コンテンツ再生信号
の音圧レベルが騒音信号
の音圧レベル以上となる周波数又は周波数帯域に基づき、カットオフ周波数を決定する周波数決定部と、
前記音源信号から、前記カットオフ周波数以上の周波数帯の高音域信号と、前記カットオフ周波数以下の周波数帯の低音域信号とを取得する帯域制御部と、
前記第1スピーカに前記低音域信号を出力し、前記第2スピーカに前記高音域信号を出力する音声出力部と、
を備える、
音声制御装置。
【請求項2】
前記騒音信号は、低い周波数ほど音圧レベルが高い周波数特性を有する、
請求項1に記載の音声制御装置。
【請求項3】
前記周波数決定部は、前記コンテンツ再生信号の音圧レベルが前記騒音信号の音圧レベル以上となる周波数又は周波数帯域の変化に応じて、前記カットオフ周波数を変更する、
請求項1に記載の音声制御装置。
【請求項4】
前記騒音信号を低減する制御音信号を生成する騒音低減制御部を更に備え、
前記音声出力部は、前記第1スピーカに前記制御音信号を出力する、
請求項1に記載の音声制御装置。
【請求項5】
前記周波数決定部は、前記第1スピーカから出力される前記低音域信号の周波数帯域に応じて前記カットオフ周波数を決定する、
請求項1に記載の音声制御装置。
【請求項6】
所定の空間において、第1スピーカおよび前記第1スピーカよりも高音の出力に適した第2スピーカを含む複数のスピーカからの音声信号の出力を制御する音声制御装置であって、
音源からコンテンツの音源信号を入力する音源信号入力部と、
前記所定の空間において集音される集音信号であって、前記複数のスピーカの少なくとも一つから出力された前記コンテンツの音声信号であるコンテンツ再生信号を含む集音信号を入力する集音信号入力部と、
前記コンテンツ再生信号と騒音信号とに基づき、カットオフ周波数を決定する周波数決定部と、
前記音源信号から、前記カットオフ周波数以上の周波数帯の高音域信号と、前記カットオフ周波数以下の周波数帯の低音域信号とを取得する帯域制御部と、
前記第1スピーカに前記低音域信号を出力し、前記第2スピーカに前記高音域信号を出力する音声出力部と、
を備え
、
前記周波数決定部は、前記コンテンツ再生信号の音圧レベルが前記騒音信号の音圧レベル以上となる周波数又は周波数帯域の変化に応じて、前記カットオフ周波数を変更する、
音声制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の音声制御装置と、
前記音声制御装置に接続される前記第1スピーカと、
前記音声制御装置に接続される前記第2スピーカと、
前記所定の空間における音声を集音するマイクと、
を備える、音声制御システム。
【請求項8】
前記第2スピーカは、列状に配された複数のスピーカを有する、
請求項7に記載の音声制御システム。
【請求項9】
前記音声制御装置は、前記第2スピーカが出力する高音域信号の位相及び音圧レベルの少なくとも一方を制御することにより、前記第2スピーカとは異なる所定の制御点近傍に音像を定位させる音像制御部を含み、
前記制御点は、前記所定の空間におけるユーザの頭部の位置にある、
請求項8に記載の音声制御システム。
【請求項10】
前記音声制御装置は、前記騒音信号を低減する制御音信号を生成する騒音低減制御部を更に備え、
前記第1スピーカは前記制御音信号を出力し、
前記第1スピーカは、前記所定の空間において前記制御点寄りの位置に配される、
請求項9に記載の音声制御システム。
【請求項11】
前記所定の空間においてユーザを撮像するカメラと、
前記カメラからの画像に基づき前記所定の空間におけるユーザの位置を検出することにより、前記制御点の位置を取得する位置検出部と、
を備える、
請求項9に記載の音声制御システム。
【請求項12】
前記周波数決定部は、前記複数のスピーカの数によって前記カットオフ周波数を決定する、
請求項8に記載の音声制御システム。
【請求項13】
所定の空間において、第1スピーカおよび前記第1スピーカよりも高音の出力に適した第2スピーカを含む複数のスピーカからの音声信号の出力を制御する音声制御方法であって、
音源からコンテンツの音源信号を取得し、
前記所定の空間において集音される集音信号であって、前記複数のスピーカの少なくとも一つから出力された前記コンテンツの音声信号であるコンテンツ再生信号を含む集音信号を取得し、
前記コンテンツ再生信号
の音圧レベルが騒音信号
の音圧レベル以上となる周波数又は周波数帯域に基づき、カットオフ周波数を決定し、
前記音源信号から、前記カットオフ周波数以上の周波数帯の高音域信号と、前記カットオフ周波数以下の周波数帯の低音域信号とを取得し、
前記第1スピーカに前記低音域信号を出力し、
前記第2スピーカに前記高音域信号を出力することを含む、
音声制御方法。
【請求項14】
所定の空間において、第1スピーカおよび前記第1スピーカよりも高音の出力に適した第2スピーカを含む複数のスピーカからの音声信号の出力を制御する音声制御方法であって、
音源からコンテンツの音源信号を取得し、
前記所定の空間において集音される集音信号であって、前記複数のスピーカの少なくとも一つから出力された前記コンテンツの音声信号であるコンテンツ再生信号を含む集音信号を取得し、
前記コンテンツ再生信号と騒音信号とに基づき、カットオフ周波数を決定し、
前記コンテンツ再生信号の音圧レベルが前記騒音信号の音圧レベル以上となる周波数又は周波数帯域の変化に応じて、前記カットオフ周波数を変更し、
前記音源信号から、前記カットオフ周波数以上の周波数帯の高音域信号と、前記カットオフ周波数以下の周波数帯の低音域信号とを取得し、
前記第1スピーカに前記低音域信号を出力し、
前記第2スピーカに前記高音域信号を出力することを含む、
音声制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、所定の空間における音声制御装置及び音声制御システムに関する。本開示は、例えば、航空機や鉄道車両等に配置される閉鎖構造体の内部等、所定の空間において使用する音声制御装置及び音声制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
騒音の大きい航空機や車両等の移動体において、座席に着席した乗客に対して音楽サービスを提供する場合がある。航空機や鉄道車両は高速移動するため、多様な騒音が様々な箇所で発生する。騒音は、例えば、動力源のエンジンやモーターから発生する振動、移動する移動体と空気との衝突音により生じる。騒音の到来方向、騒音のボリューム(振幅)、騒音の到達時間(位相)は座席によって異なる。
【0003】
特許文献1は、スピーカアレイを用いた音声のエリア再生方法を開示する。同方法では、環境音から騒音レベルを測定し、各周波数において、制御ラインにおける再生ラインに到達する再生音の音圧が騒音レベルを上回り、且つ、制御ラインにおける非再生ラインに到達する再生音の音圧が騒音レベルを上回らないように、再生音を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示は、騒音が生じる対象空間において音場を効果的に生成するのに有効な音声制御装置及び音声制御システムを提供する。
【0006】
本開示の音声制御装置は、所定の空間において、複数のスピーカからの音声信号の出力を制御する音声制御装置であって、音源信号入力部と、周波数決定部と、帯域制御部と、音像制御部と、音声出力部とを備える。音源信号入力部は、音源からコンテンツの音源信号を入力する。周波数決定部は、カットオフ周波数を決定する。帯域制御部は、コンテンツ音源信号から、カットオフ周波数以上の周波数帯の高音域信号と、カットオフ周波数以下の周波数帯の低音域信号とを取得する。音像制御部は、高音域信号の位相及び音圧レベルの少なくとも一方を制御することにより、複数のスピーカの音像を制御する複数の音像制御信号を生成する。音声出力部は、第1スピーカに低音域信号を出力し、複数の音像制御信号を複数のスピーカから構成される第2スピーカに出力する。
【0007】
本開示の音声制御システムは、上記音声制御装置と、音声制御装置に接続される第1スピーカと、音声制御装置に接続される第2スピーカとを備える。第2スピーカは、列状に配された複数のスピーカを有する。
【0008】
本開示の音声制御装置及び音声制御システムは、騒音が生じる対象空間における音場を効果的に生成するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、音声制御システムが設置される航空機を概略的に示す。
【
図2】
図2は、航空機内における騒音源の例を示す。
【
図3】
図3は、座席における音声制御システムの設置環境を説明するための平面図である。
【
図4】
図4は、騒音信号S1とコンテンツ音声信号S2の周波数分布を示すグラフである。
【
図5】
図5は、音声制御システムの基本構成を示す。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る音声制御システムの構成を示す。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る音像制御部の構成を示す。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る騒音低減制御部の構成を示す。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係るスピーカ及びマイクの配置例を示す。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係るスピーカ及びマイクの他の配置例を示す。
【
図11】
図11は、実施の形態1に係る音声制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施の形態1の変形例に係る音声制御システムの構成を示す。
【
図13】
図13は、同変形例に係るスピーカ及びマイクの配置例を示す。
【
図14】
図14は、同変形例に係るスピーカ及びマイクの他の配置例を示す。
【
図15】
図15は、実施の形態2に係る音声制御システムの構成を示す。
【
図16】
図16は、その他実施の形態に係る音声制御システムの構成を部分的に示す。
【
図17】
図17は、実施の形態3に係る音声制御システムの構成を示す。
【
図18】
図18は、同変形例に係るスピーカ及びマイクの配置例を示す。
【
図19】
図19は、同変形例に係るスピーカ及びマイクの他の配置例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
1.実施の形態1
本実施の形態1は、航空機等所定の騒音が生じる環境において、騒音を低減しつつ、ヘッドホンやイヤホンなしでユーザがコンテンツの音声を楽しむことができる音場空間を形成できる音声制御装置、音声制御システム及び音声制御方法を提供する。
【0013】
以下では、実施の形態1の音声制御システムを、航空機100に搭載した場合の例を挙げて説明する。
【0014】
まず、航空機100における音環境について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、航空機100は、左右の翼101a、101bと、翼101a、101bにそれぞれ装着されたエンジン102a、102bと、を備える。ここで、航空機100内の空間の音環境を考えると、エンジン102a、102bから発せられる音は、回転音だけでなく飛行中の空気流の反響等を伴うため、大きな騒音源となる。
【0016】
エンジン102a、102bは、例えば、機内の客室A(例えば、ファーストクラス)、客室B(例えば、ビジネスクラス)及び客室C(例えば、エコノミークラス)にそれぞれ設置された座席列103a、103b、103cに対して、外部の騒音源NS1a、NS1bとして作用する。更に、機体が空気層を高速で移動することに伴う機体の先端部、側面部、及び両翼101a、101bと空気流との衝突音(風切り音)が、騒音源NS1cとして作用する。このため、航空機100内の音楽提供サービスに悪影響を与える。
【0017】
更に、機内空気の清浄・維持・循環のため、与圧・換気・温度調整機能を備えた空調システム(図示省略)が航空機100に搭載されている。同空調システムによる音も、後述するように、騒音源NS1a、NS1b、NS1cに加えて騒音源となる。
【0018】
図2は、音声制御装置の設置環境の詳細を示す平面図である。
図2は、
図1における客室A及び客室Bの一部における座席の配置を拡大して示す。
【0019】
客室100aは、壁100wによって客室A及び客室Bに区分され、客室A及び客室Bにはそれぞれ座席列103a、103bが設けられている。一方、客室100a内の音環境としては、エンジン102a、102bから発生する騒音源NS1a、NS1b及び機体先端部、側面部及び両翼における風切り音(騒音源NS1c)が外部の騒音源として存在する。更に、空調システム等による騒音源NS2a~NS2eが、客室100a内部の騒音源として存在する。
【0020】
例えば、客室Aに配された1つの座席105における騒音は、座席105では、窓の外側の翼に取付けられたエンジン102a,102b(
図1参照)及び気流音を発生原因とする騒音源NS1a~NS1c及び空調システムを発生原因とする騒音源NS2a~NS2eからの騒音の影響を受ける。
【0021】
図1における客室Aで示したファーストクラスでは、各座席105は、
図3に示すようにシェル構造110である音声制御の対象空間(所定の空間の一例)により包囲されている。シェル構造110,110には、騒音を低減するためのシステムが設けられる。
図3に示すように、シェル構造110,110の所定の位置には、騒音マイク72が配される。各座席105には、制御音スピーカ51が配置される。同システムでは、後述する騒音低減制御により、騒音マイク72から取得する騒音と反対の位相となるような制御音信号を生成し、制御音スピーカ51から出力する。これにより、シェル構造110,110内の騒音が低減される。
【0022】
一方、シェル構造110の内部には、映画や音楽を楽しむためのテレビやラジオ等の視聴機器や、ビジネスマンのための机、PC接続電源等々が配設されている。ファーストクラス等の座席105には、乗客(以下、ユーザと呼ぶ)に対して、ゆっくりとくつろいだり、ビジネスに集中できたりする環境を提供することが求められている。
【0023】
制御音スピーカ51を映画や音楽等を視聴に利用することが考えられる。しかし、その場合、次のような問題が生じる。
【0024】
図4のグラフは、騒音信号S1とコンテンツ音声信号S2の周波数分布を示す。同図に示すように、騒音信号S1は、低音域の音圧レベルが大きく、高音域の音圧レベルが小さい特性を有する。コンテンツ音声信号S2の音圧レベルが騒音信号S1の音圧レベルを上回る周波数帯域については、音漏れが生じる。なお、騒音信号S1は、騒音低減のための制御音の出力により音圧レベルがある程度抑制されるが、低音域の騒音は大きい。このため、騒音信号S1は、制御音により抑制されても、低音域の周波数帯域においてはコンテンツ音声信号S2の音圧レベルを下回ることはないと考えられる。一方、騒音信号S1は、高音域の周波数帯域においては、コンテンツ音声信号S2の音圧レベルを下回る。よって、騒音環境においても、ユーザUがヘッドホンやイヤホンなしでコンテンツの音声を聴くと、同音声の高音域は音漏れを生じさせる。特に、
図3に示すように、音声制御の対象空間が隣り合って配置される場合、隣接する通路や座席へ音漏れする。かかる音漏れは、他のユーザUに迷惑であり、航空機の運行上支障をきたす。
【0025】
また、制御音スピーカ51は、騒音を抑制する制御音の出力に適した、つまり低音域信号の出力に適したスピーカである。よって、制御音スピーカ51は、特に高音域信号が大きいコンテンツ音声信号S2の出力には適していない。
【0026】
実施の形態1に係る音声制御装置、音声制御システム又は音声制御方法では、音源信号の出力を周波数帯域に応じて分割して、二つの異なるスピーカより出力する。これにより、ユーザUがシェル構造110内においてヘッドホンやイヤホンを使用することなくコンテンツの視聴を楽しむ環境を実現する。
【0027】
以下、実施の形態1に係る高音域用のスピーカを設けて、音声制御装置、音声制御システム及び音声制御方法の構成及び動作について説明する。
【0028】
1-1.構成
1-1-1.音声制御システム1及び音声制御装置10の構成
図5は、音声制御システム1の基本的な構成を示す。音声制御システム1は、各座席の空間に配置される。音声制御システム1は、音声制御装置10と、複数のスピーカ群5と、複数のマイク群7とを備える。
【0029】
音声制御装置10は、DSP(Digital Signal Processor)11と、D/A変換器群20と、A/D変換器群30と、ネットワークカード(NIC)40とを備える。DSP11は、後述するように騒音低減制御を含む音声制御を実行する回路及びメモリを含む。D/A変換器群20の各D/A変換器(音声出力部の一例)は、各スピーカに接続される。各D/A変換器は、DSP11で生成された音声信号や制御音信号をディジタル信号からアナログ信号に変換して、スピーカに出力する。A/D変換器群30の各A/D変換器(集音信号入力部の一例)は、各マイクに接続される。各A/D変換器は、マイクにより集音された音声をアナログ信号からディジタル信号に変換して、DSP11に入力する。ネットワークカード40(音源信号入力部の一例)は、管理装置8との通信を行う回路又は端子を含む。ネットワークカード40は、管理装置8からコンテンツの音源データ80を受信する。
【0030】
複数のスピーカ群5は、
図6に示す制御音スピーカ51とスピーカアレイ52とを含む。制御音スピーカ51は、低音域信号の出力に適するように設計されたスピーカである。制御音スピーカ51は、後述するように、騒音低減制御部17から出力される制御音信号を増幅して出力する。制御音は、騒音を相殺するように生成された音声信号である。制御音スピーカ51はまた、後述するように、音源信号の低音域信号を増幅して出力する。スピーカアレイ52は、高音の出力に適したスピーカであり、列状に配された複数のスピーカを含む。スピーカアレイ52は、後述するように、波面合成技術により、ユーザUの頭部のある制御点近傍に音のパワーが集中するように、高域音信号を増幅して出力する。
【0031】
図6に示すように、複数のマイク群7は、コンテンツ音声検知マイク71と騒音マイク72と誤差マイク73とを含む。
【0032】
コンテンツ音声検知マイク71は、シェル構造110の空間内において出力されたコンテンツ再生信号を検知するためのマイクであり、マイク周辺の音を集音する。コンテンツ音声検知マイク71により集音された音声信号は、対応するA/D変換器31を経てDSP11の周波数決定部12に入力される。
【0033】
騒音マイク72は、騒音源から発せられる音を検知するためのマイクであり、マイク周辺の音を集音する。騒音マイク72により集音された音声信号は、対応するA/D変換器32を経てDSP11の騒音低減制御部17に入力される。
【0034】
誤差マイク73は、騒音源から発せられる音と制御音スピーカ51から発せられる制御音とを重ねた結果の残留音(誤差音)を検知するためのマイクである。誤差マイク73は、制御点となるユーザUの頭部近傍に配置される。なお、コンテンツ音声検知マイク71と騒音マイク72と誤差マイク73とは、それぞれ、複数設けられていてもよい。
【0035】
音声制御部システムは、
図5に示すように、航空機100の管理装置8に接続されていてもよい。管理装置8は、CPU等の制御回路を含むプロセッサ及びメモリを含み、所定のプログラムに従って動作するコンピュータを含む。管理装置8は、コンテンツの音源データ80を記憶する。コンテンツの音源データ80は、例えば、音楽、映画、テレビ、ラジオの音声等、ユーザUが希望に応じて視聴できるコンテンツの音源データを含む。
【0036】
DSP11は所定のプログラムを実行することにより、
図6に示す周波数決定部12、帯域制御部13、音像制御部15、及び騒音低減制御部17の機能を実行する。
【0037】
周波数決定部12は、コンテンツ再生信号と騒音信号とに基づき、カットオフ周波数を決定する。具体的には、周波数決定部12は、コンテンツ音声検知マイク71により集音されたコンテンツ再生信号を取得する。なお、コンテンツ音声検知マイク71により集音された集音信号には、騒音信号も含まれる。周波数決定部は、集音信号から、シェル構造110内の騒音信号を除くことによって、例えば
図4に示すようなコンテンツ再生信号の周波数特性を取得する。シェル構造110内の騒音信号は、スピーカからコンテンツ再生信号を出力していない状態のときに、予め計測され、メモリに記憶しておいてもよい。騒音信号は、
図4に示す騒音信号S1のような特性、すなわち低い周波数ほど音圧レベルが高い周波数特性を有する。周波数決定部12は、コンテンツ音声検知マイク71から取得したコンテンツ再生信号の周波数特性と騒音信号の周波数特性から、コンテンツ再生信号の音圧レベルが騒音信号の音圧レベル以上になるカットオフ周波数を決定する。カットオフ周波数は、例えば、
図4に示すP1によって示す周波数である。
【0038】
カットオフ周波数は、コンテンツ音声検知マイク71により集音されるコンテンツ再生信号の音圧レベルや周波数特性の変化に応じて変化する。このため、周波数決定部12は、かかる変化を監視して、変化が生じた場合はカットオフ周波数を変更する。
【0039】
なお、周波数決定部12は、少なくとも初期状態においては、スピーカアレイ52のスピーカの数によって決定してもよい。また、コンテンツ音声検知マイク71を制御音スピーカ51の近傍に配置して、カットオフ周波数を、制御音スピーカ51から出力される低音域信号の周波数帯域によって決定してもよい。
【0040】
帯域制御部13は、音源データ80からコンテンツの音源信号を取得する。帯域制御部13は、LPF(Low Pass Filter)やHPF(High Pass Filter)、BPF(Band Pass Filter)等のフィルタ回路を含み、周波数決定部12により決定されたカットオフ周波数に応じて、音源信号を二つの帯域信号に分割する。具体的には、帯域制御部13は、音源信号から、カットオフ周波数以上の周波数帯の高音域信号と、カットオフ周波数以下の周波数帯の低音域信号とを取得する。高音域信号は、音像制御部15に入力される。低音域信号は、騒音低減制御部17から出力される制御音信号と共に、制御音スピーカ51に出力される。
【0041】
なお、カットオフ周波数以上の周波数帯とは、カットオフ周波数を含む場合と含まない場合の双方を含む。同様に、カットオフ周波数以下の周波数帯とは、カットオフ周波数を含む場合と含まない場合の双方を含む。
【0042】
音像制御部15は、ユーザUの頭部近傍の制御点に音像を定位させるように、取得した高音域信号の位相及び音圧レベルの少なくとも一方を制御する波面合成処理を行う。音像制御部15は、
図7に示すように、デジタルフィルタである複数の波面合成フィルタ15a,15b…を含む。波面合成フィルタ15a,15b…はそれぞれ、スピーカアレイ52の各スピーカ52a,52b…に対応し、複数のチャンネル(例えば、16チャンネル)を形成する。波面合成フィルタ15a,15b…はそれぞれ、シェル構造110内におけるユーザUの頭部近傍の制御点と、スピーカアレイ52との距離に応じたフィルタ係数が設定される。フィルタ係数を畳み込むことにより、スピーカアレイ52からの出力を制御し、指定された制御点近傍に出力される高域音信号のパワーを集中させる。これにより、スピーカアレイ52の各スピーカ52a,52b…からの音声信号は、音圧レベルを小さくしても、ユーザUは十分に音を聞くことができる。
【0043】
騒音低減制御部17は、騒音信号を低減する制御音信号を生成し、制御音信号をD/A変換器21を経て制御音スピーカ51に出力する。騒音低減制御部17は、
図8に示すように、適応フィルタ171と、係数更新部172とを備える。
【0044】
適応フィルタ171は、騒音を低減する制御音信号を生成する回路である。適応フィルタ171は、例えば多段タップで構成されており、各タップのフィルタ係数を自由に設定可能なFIR(Finite Impulse Response)フィルタである。
【0045】
係数更新部172は、プロセッサにより実行される所定のアルゴリズム(例えば、LMS(Least Mean Square))によって実現される。係数更新部172は、騒音マイク72から入力される騒音に加え、誤差マイク73からの誤差音を取得する。係数更新部172は、この誤差音が最小となるように、伝達関数を更新し、適応フィルタ171の各フィルタ係数を調整する。これにより、誤差マイク73の設置位置近傍の制御点において騒音源からの騒音とは反対の位相となるような制御音信号が生成される。生成された制御音信号は、上述したコンテンツの音源信号の低音域信号と共に、D/A変換器を経て制御音スピーカ51に出力される。
【0046】
1-1-2.マイク及びスピーカの配置例
図9及び
図10は、実施の形態1に係るマイク及びスピーカの配置例を示す。同図において、上側の図は平面図であり、下側の図は、平面図に対応する立面図である。ユーザUは、シェル構造110内において、横たわっている状態にある。
【0047】
図9に示す例では、制御音スピーカ51は、ユーザUの頭部近傍の制御点に配置される。制御音スピーカ51は、騒音を抑制する制御音を出力するため、制御点の近傍に配置されるのが望ましい。一方、スピーカアレイ52は、制御点から離れた位置(例えば、ユーザUの足側正面の壁)に配される。上述したように、音像制御部15による波面合成処理により、スピーカアレイ52から出力される音声信号の音像は、制御点近傍に定位される。よって、スピーカアレイ52の各スピーカの出力は小さくても、ユーザUには十分聞こえる音量を提供することができる。更に、スピーカアレイ52は音の出力を小さく抑えることができるため、音漏れのリスクを抑制することができる。コンテンツ音声検知マイク71は、シェル構造110内において制御点に近い上方に配置される。
【0048】
スピーカアレイ52の配置は、
図9に示す配置に限定されない。例えば、
図10に示すように、制御点近傍に配置してもよい。
図10では、スピーカアレイ52の長手方向がシートシェル構造110の床面に対して鉛直方向に配置されている。このような配置にすることにより、スピーカアレイ52が発する音がシェル構造110の淵を越えてシェルの外部に漏れだすのを抑制するような指向性を持つように、スピーカアレイ52を構成する各スピーカから出力する音声信号を波面合成することが容易になるという効果がある。
【0049】
なお、
図9ではスピーカアレイ52の長手方向を床面に対して垂直に配置する例を示したが、必ずしも厳密に床面に対して垂直に並んでいる必要はない。スピーカアレイ52の長手方向が垂直からずれて斜めであっても同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、シェル構造110の淵の方向、例えば、淵方向が水平方向であったり、淵方向が垂直方向であったりする場合に、スピーカアレイ52の長手方向が、シェル構造110の淵方向に対して垂直な配置関係になるように、配置するようにしてもよい。また、スピーカアレイ52の個々のスピーカの間隔は不ぞろいでもいいし、均一であってもよい。また、シェル構造110の表面が曲面構造であった場合は、曲面構造の表面に沿って、個々のスピーカ間の距離がおおよそ均一になるように並べて配置してもよい。
【0051】
つまり、スピーカアレイ52を構成する各スピーカの、床面から設置箇所への鉛直方向の距離がすべて異なるように配置されていれば、上記で説明した効果を得ることができる。
【0052】
また、上述の実施の形態1に係るマイク及びスピーカの配置例ではコンテンツ音声検知マイク71を独立して設けたが、必ずしもコンテンツ再生信号を検知するための専用のマイクを設ける必要はない。シェル構造110内に設置された各騒音マイクや誤差マイクと機能を共有し、それらをコンテンツ音声検知マイク71として用いても、一定の効果を得ることができる。
【0053】
1-2.動作
図11を用いて、主に音声制御装置10の動作を説明する。ユーザUは、座席105に設置されたリモートコントローラやタッチパネルを操作することにより、音源データの配信をリクエストする。これにより、音源信号が受信される(S101)。また、コンテンツ音声検知マイク71により集音された集音信号が受信される(S102)。なお、騒音低減制御部17による騒音低減制御は、並行して実行される。
【0054】
周波数決定部12は、コンテンツ音声検知マイク71により集音された集音信号から、コンテンツ再生信号を取得し、コンテンツ再生信号と騒音信号とに基づき、カットオフ周波数を決定する(S103)。帯域制御部13は、音源信号から、カットオフ周波数以上の周波数帯の高音域信号と、カットオフ周波数以下の周波数帯の低音域信号とを取得する(S104)。
【0055】
高音域信号は、音像制御部15により波面合成処理が行われる(S105)。波面合成処理が行われた高音域信号は、スピーカアレイ52に出力される(S106)。一方、低音域信号は、騒音低減制御部17により生成された制御音信号と共に、制御音スピーカ51に出力される(S107)。
【0056】
音源信号の送信の停止等、終了条件が生じた場合は処理を終了する(S108)。一方、終了条件が生じない場合は、周波数決定部12は、コンテンツ音声検知マイク71により集音されるコンテンツ再生信号の音圧レベルや周波数特性の変化を監視し続ける。周波数決定部12は、かかる変化に応じて、ステップS102~S108の動作を繰り返す。
【0057】
以上の動作により、コンテンツ再生信号の音圧レベルは騒音信号の音圧レベルを超えないように制御することができる。よって、シェル構造110から外への音漏れを防ぎつつ、ユーザUはヘッドホンやイヤホンなしで音を楽しむことができる。
【0058】
1-3.変形例
図12は、実施の形態1の変形例に係る音声制御システム1の構成を示す。同変形例においては、スピーカアレイ52の代わりにツイータ53が設けられ、音像制御部15は設けられない。ツイータ53は、高音の出力に適したスピーカである。帯域制御部13により分割された高音域信号は、D/A変換器22を経てツイータ53に出力される。
図9及び
図10と同様の図である
図13に示すように、ツイータ53は、制御点近傍に左右に配される。これにより、ユーザUはその出力が小さくてもその出力音を十分に聴くことができるとともに、音漏れのリスクを抑制することができる。
【0059】
なお、
図13においては、ツイータ53は、ユーザUがシェル構造110内において横たわっている状態に合わせて、シェル構造110の下方に配置されている。一方、ユーザUが座った姿勢で音を聞くことを想定する場合は、ツイータ53は、
図14に示すように、シェル構造110の上方に配置されてもよい。
【0060】
1-4.特徴等
実施の形態1における音声制御システム1、音声制御装置10又は音声制御方法では、スピーカから出力されたコンテンツ再生信号と騒音信号とに基づきカットオフ周波数を決定し、コンテンツ音源信号を、カットオフ周波数以上の周波数帯の高音域信号と、カットオフ周波数以下の周波数帯の低音域信号とに分割し、低音域信号は、騒音低減のための制御音信号を出力する制御音スピーカ51に出力され、高音域信号はスピーカアレイ52に出力される。
【0061】
シェル構造110外への音漏れ要因となる高域信号については、波面合成処理してスピーカアレイ52から出力する。これにより、高音域信号については、小さい出力レベルで十分な音圧レベルの音を、ユーザUの頭部近傍の制御点に提供しつつ、音漏れを防ぐことができる。一方、スピーカアレイ52には比較的適さない低音域信号については、騒音低減のために設けられた、低音域信号に適した制御音スピーカ51を利用する。この結果、音漏れを防ぎつつ、制御音スピーカ51とスピーカアレイ52とにより異なる周波数帯の音を補完し合い、ユーザUの頭部近傍に広帯域なコンテンツの音を再生することが可能になる。よって、ユーザUはヘッドホンやイヤホンを用いることなくコンテンツを視聴することができる。
【0062】
また、変化するカットオフ周波数を監視することにより、コンテンツや騒音の信号の変化に応じてカットオフ周波数を変更し、高音域信号の音圧レベルが騒音信号の音圧レベルを超えないように音声を制御することができる。このため、音漏れをより確実に防ぐことができる。
【0063】
また、騒音低減動作を並行して実行することができるため、騒音低減を行いつつ、コンテンツの音を再生することができる。
【0064】
2.実施の形態2
実施の形態2に係る音声制御システム2について、
図15を参照して説明する。実施の形態1と同様の構成及び機能については、同じ符号を付すると共に、説明は省略する。
【0065】
実施の形態2に係る音声制御システム2は、騒音低減制御部17を有さない点において実施の形態1に係る音声制御システム1と異なる。帯域制御部13によって取得された音源信号の低音域信号は、D/A変換器を経て、低音域用スピーカ54に出力される。なお、低音域用スピーカ54は制御音スピーカ51と同様の構成及び機能を有するスピーカであってもよい。
【0066】
以上のように、実施の形態2に係る音声制御システム2は、騒音低減処理を実行しない場合であっても、騒音低減効果を除く実施の形態1と同様の効果を奏する。すなわち、音漏れを防ぎつつ、低音域用スピーカ54とスピーカアレイ52とにより異なる周波数帯の音を補完し合い、ユーザUの頭部近傍に広帯域なコンテンツの音を再生することが可能になる。ユーザUはヘッドホンやイヤホンを用いることなくコンテンツを視聴することができる。
【0067】
なお、音声制御システム2は、実施の形態1と同様に、スピーカアレイ52に変えてツイータ53(
図12)を設け、音像制御部15を設けなくてもよい。
【0068】
3.実施の形態3
実施の形態3に係る音声制御システム3について、
図17を参照して説明する。実施の形態1及び実施の形態2と同様の構成及び機能については、同じ符号を付すると共に、説明は省略する。
【0069】
実施の形態3に係る音声制御システム3は、騒音低減制御部17を有さない点、及び、シート管理部14を有する点において実施の形態1に係る音声制御システム1と異なる。帯域制御部13によって取得された音源信号の低音域信号は、D/A変換器を経て、低音域用スピーカ54に出力される。
【0070】
実施の形態1では、周波数決定部12が、コンテンツ再生信号と騒音信号に基づいてカットオフ周波数を決定するとしたが、実施の形態3では、カットオフ周波数を決定するのに異なる方法を用いる。周波数決定部12は、スピーカアレイ52の再生周波数帯域と低音域用スピーカ54の再生周波数帯域に基づき、相互補完することによって広帯域な再生が可能となるように予め決められたカットオフ周波数を記憶しておく。これらの再生周波数帯域には、各スピーカの公称スペックや、システムの実使用環境における実測値やシミュレーション値などを使うことが考えられる。
【0071】
周波数決定部12は、この予め記憶したカットオフ周波数を用いてカットオフ周波数を決定する。なお、周波数決定部12は、予め決定したカットオフ周波数を固定的に使用してもよいし、コンテンツ再生時にコンテンツの特性やシステムの設定に応じてカットオフ周波数を決定してもよい。
【0072】
帯域制御部13は、スピーカアレイ52から出力する高音域信号の音圧レベル、及び、低音域用スピーカ54から出力する低音域信号の音圧レベルを調整することで、ユーザUが視聴する高音域と低音域のバランスを合わせることができる。シート管理部14によって取得されるベッド状態、リクライニング状態などのシート情報に応じて、低音域信号の音圧レベルと、高音域信号の音圧レベルの増減を調整することで、
図18に示すベッド状態のユーザUの頭位置、及び、
図19に示すリクライニング状態のユーザUの頭位置に応じた聞こえの良い音環境を構築することができる。なお、低音域用スピーカ54は、実施の形態1で説明した制御音スピーカ51と同様の構成及び機能を有するスピーカであってもよい。
【0073】
マイク及びスピーカの配置例
図18及び
図19は、実施の形態3に係るマイク及びスピーカの配置例を示す。同図において、上側の図は平面図であり、下側の図は、平面図に対応する立面図である。
図18のユーザUは、シェル構造110内において横たわっている。背面クッション90a、座面クッション90b、脚部クッション90cがほぼフラットに並ぶことでベッド状態になっている。
図19のユーザUは、シェル構造110内において椅子に座っている状態にある。背面クッション90a、座面クッション90b、脚部クッション90cが異なる角度に配置されることでリクライニング状態になっている。ユーザUはシート壁やひじ掛け部などに備えられたシート操作パネルを使って、背面クッション90a、座面クッション90b、脚部クッション90cの位置・角度を操作することで、
図18のベッド状態、
図19のリクライニング状態、及び、その中間状態などシート状態を変化させることができる。
【0074】
図18に示す例では、低音域用スピーカ54は、シェル構造110上のユーザUの頭部近傍に配置される。
図19に示す例では、低音域用スピーカ54は、ユーザUの頭部近傍に配置されていない。一方、スピーカアレイ52は、シェル構造110上のユーザUの頭部近傍に配置される。上述したように、音像制御部15による波面合成処理により、スピーカアレイ52から出力される音声信号の音像は、ユーザUの頭部近傍に定位される。よって、スピーカアレイ52の各スピーカの出力は小さくても、ユーザUには十分聞こえる音量を提供することができる。更に、スピーカアレイ52は波面合成処理により、音像を定位させた箇所以外における音の出力を小さく抑えることができるため、シェル構造110外への音漏れのリスクを抑制することができる。
図18の52a、52b、52c、52d、52eは、スピーカアレイ52の内部に位置する個々のスピーカの配置を示している。スピーカ52a、スピーカ52b、スピーカ52c、スピーカ52d、スピーカ52eは便宜上5ケとしたが、5ケ以外であってもよい。スピーカ52aからスピーカ52eはシェル構造110の床面に対して鉛直方向に配置されている。このような配置にすることにより、スピーカアレイ52が発する音がシェル構造110の淵を越えてシェルの外部に漏れだすのを抑制するような指向性を持つように、スピーカアレイ52を構成する各スピーカから出力する音声信号を波面合成することが容易になるという効果がある。
【0075】
なお、スピーカアレイ52の長手方向を鉛直方向に配置するとしたが、必ずしも厳密に鉛直方向に整列している必要はない。例えば、スピーカアレイ52の長手方向が鉛直方向からずれて斜めであってもよいし、シェル構造110の淵の方向、例えば、淵方向が水平方向であったり、淵方向が垂直方向であったりする場合に、スピーカアレイ52の長手方向が、シェル構造110の淵方向に対して垂直な配置関係になるように、配置するとしてもよい。また、スピーカアレイ52の個々のスピーカの間隔が不ぞろいでもいいし、均一であってもよい。また、シェル構造110の表面が曲面構造であった場合、曲面構造の表面に沿って、個々のスピーカ間の距離がおおよそ均一になるように並べて配置してもよい。
【0076】
つまり、スピーカアレイ52を構成する各スピーカの、床面から設置箇所への鉛直方向の距離がすべて異なるように配置されていれば、上記で説明した効果を得ることができる。
【0077】
なお、シェル構造110内においてユーザUの頭部の上方などにコンテンツ音声検知マイク71を設けてシェルの外部に漏れだすコンテンツの音声を検知し、その音声が閾値以下となるように、スピーカアレイ52及び低音域用スピーカ54から出力する音声の音圧レベルを調整するようにしてもよい。
【0078】
以上のように、実施の形態3に係る音声制御システム3は、騒音低減処理を実行しない場合であっても、騒音低減効果を除く実施の形態1と同様の効果を奏する。すなわち、音漏れを防ぎつつ、低音域用スピーカ54とスピーカアレイ52とにより異なる周波数帯の音を補完し合い、ユーザUの頭部近傍に広帯域なコンテンツの音を再生することが可能になる。ユーザUはヘッドホンやイヤホンを用いることなくコンテンツを視聴することができる。
【0079】
なお、音声制御システム3は、実施の形態1と同様に、スピーカアレイ52に変えてツイータ53(
図12)を設け、音像制御部15を設けなくてもよい。
【0080】
4.その他実施の形態
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0081】
(1)
シェル構造110内において、制御点であるユーザUの頭部の位置は変化する。制御点の変化に応じてスピーカの制御を行うことにより、より効果的な音場空間を形成することができる。例えば、制御点の位置の変化は、スピーカアレイ52の波面合成処理におけるフィルタ制御や、スピーカの音圧レベルの制御にフィードバックできる。
【0082】
音声制御システム1又は2又は3(
図6及び
図15及び
図17)は、
図16に示すように、シェル構造110内に設置されユーザUを撮像するカメラ301と、プロセッサにより実行される位置検出部302とを備えてもよい。位置検出部302は、カメラ301からの画像を解析し、シェル構造110におけるユーザUの頭部の位置を検出する。検出した位置情報は、例えば、音声制御装置10の音像制御部15や音圧レベルを制御するDSP11の制御部に伝えられる。これにより、制御点の位置に対応した音場を形成できる。
【0083】
(2)
スピーカ及びマイクの配置や数は上記例に限定されない。
【0084】
(3)
音声制御システム1又は2又は3は、航空機100内に搭載されることに限定されない。ヘリコプターや電車、バス等、他の乗り物等に設置してもよい。更に、乗り物に限らず、騒音が発生する建物等に設置してもよい。
【0085】
(4)
上記実施の形態において、各機能ブロックの処理の一部又は全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして、上記各実施の形態の各機能ブロックの処理の一部又は全部は、コンピュータにおいて、プロセッサにより実行されてもよい。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROM等の記憶装置に格納され、ROM或いはRAMに読み出されて実行されてもよい。
【0086】
上記実施の形態において、DSP或いはCPU等のプロセッサに代えて、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路で構成されるプロセッサを含んでもよい。また、上記プロセッサは、1つ又は複数のプロセッサで構成してもよい。
【0087】
(5)
図11に示す音場制御方法の各プロセスは、必ずしも、上記記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えたり、同時に実行されたりすることができる。
【0088】
(6)
本開示において、装置又はシステムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味する場合を含み、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。また、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムと呼ぶ場合もある。
【符号の説明】
【0089】
1,2,3:音声制御システム
5 :スピーカ群
7 :マイク群
8 :管理装置
10 :音声制御装置
12 :周波数決定部
13 :帯域制御部
14 :シート管理部
15 :音像制御部
15a,15b:波面合成フィルタ
17 :騒音低減制御部
20 :D/A変換器群
21,22:D/A変換器
30 :A/D変換器群
31,32:A/D変換器
40 :ネットワークカード
51 :制御音スピーカ
52 :スピーカアレイ
52a :スピーカ
52b :スピーカ
52c :スピーカ
52d :スピーカ
52e :スピーカ
53 :ツイータ
54 :低音域用スピーカ
71 :コンテンツ音声検知マイク
72 :騒音マイク
73 :誤差マイク
80 :音源データ
90a :背面クッション
90b :座面クッション
90c :脚部クッション
100 :航空機
100a :客室
100w :壁
101a :翼
101b :翼
102a :エンジン
102b :エンジン
103a :座席列
103b :座席列
103c :座席列
105 :座席
110 :シェル構造
171 :適応フィルタ
172 :係数更新部
301 :カメラ
302 :位置検出部