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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】保冷容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/18 20060101AFI20230721BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B65D19/18
B65D81/38 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019111218
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020203689
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】593025619
【氏名又は名称】トーホー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小田 徹
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-081837(JP,U)
【文献】特開2016-030604(JP,A)
【文献】特開2009-107703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/18
B65D 81/38
B65D 6/16
B65D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視略正方形のパレット本体と、前記パレット本体の周縁の4辺に着脱可能に立設される4面から成る壁体と、前記壁体の上端部に設けられる蓋体と、を備えた発泡樹脂製の保冷容器であって、
前記壁体は、前記4面のうちの一面の一部を成す第1側面部と前記一面と隣り合う一面の一部を成す第2側面部とが鉛直辺で接続された側面部材を有し、
前記側面部材は、前記第1側面部及び前記第2側面部を互いに回動可能に接続するヒンジ部を有し、
前記ヒンジ部は、前記第1側面部及び前記第2側面部の互いに隣接する辺が傾斜面とされ前記第1側面部及び前記第2側面部が外側面において繋がることで構成されており、前記壁体の角部に配置されることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記壁体の一面は、前記側面部材のうち一の側面部材の前記第1側面部と、前記一の側面部材と隣り合う別の側面部材の前記第2側面部と、から成り、
前記第1側面部は、前記第2側面部と係合するための係合凹部を有し、
前記第2側面部は、前記第1側面部と係合するための係合凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記壁体は、4つの同形状の前記側面部材から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記側面部材は、前記側面部材の高さ方向の辺の二等分線に対して対称形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の保冷容器。
【請求項5】
前記パレット本体は、4辺の周縁に沿って形成された周溝を有し、
前記第1側面部及び前記第2側面部は、各々の下端面に前記周溝に嵌挿される凸部を有し、
前記周溝は、前記凸部の外縁を支持する外塀部と、前記凸部の内縁を支持する内塀部を有し、
4辺の周縁のうち1辺の周縁に沿う前記周溝には、前記外塀部が設けられていないことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の保冷容器。
【請求項6】
4辺の周縁のうち少なくとも1辺の周縁に沿う前記周溝には、前記第2側面部の前記凸部の外縁を支持する箇所の前記外塀部が設けられていないことを特徴とする請求項5に記載の保冷容器。
【請求項7】
前記側面部材の高さ寸法は、前記パレット本体の一辺の寸法より僅かに小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の保冷容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト等を用いた荷物の運搬に使用されるパレットに発泡樹脂製の壁体及び蓋体を配置して保冷空間を形成した保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フォークリフトやハンドリフト等によって荷物を運搬する際の荷台として、各種のパレットが広く使用されている。一般的なパレットとして、木製、プラスチック製、金属製(鉄合金)又は紙製のものが知られている。しかしながら、最も一般的な木製のパレットは、10kg以上の重量があり、紙製パレットも、形状安定性を確保するために高密度で圧縮加工されており、かなりの重量がある。そこで、紙製パレットよりも更に軽量なパレットとして、発泡樹脂製のパレットがある(特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載されたパレットは、底部の周縁から壁体が一体的に立設されており、所定の収容空間を有するパレット一体成形容器として構成されている。発泡樹脂は、軽量であるだけでなく、断熱性が高いので、上記特許文献1に記載されたパレットは、輸送時にはその容器部分の内部に氷や保冷材を配置することで保冷容器として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-72754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パレットは、通常、1辺の長さが1mを超える大きな輸送用部材である。特に、上記特許文献1に記載されたパレットを用いた保冷容器では、底部だけでなく底部に一体形成された壁体があるので、非使用時には非常に嵩張り、大容積の保管場所等を必要とする。
【0006】
壁部を底部とは別体とした組み立て式の保冷容器であれば、非使用時にはコンパクトに収納することができる。ところが、組み立て式の保冷容器の場合、壁部を構成する板材を適切に固定しなければ、輸送用容器として必要な強度を確保できない虞がある。例えば、正方矩形の底板(パレット本体)に4面の側板を立設させる場合、底板と側板とを接続するだけでなく、隣り合う側板同士も隙間なく接続しなければ、必要な強度だけでなく、保冷性も得られなく虞がある。また、壁部を構成する板材は大きなサイズになるので、その組み立てに際しては、底部に対して大きな板材を垂直に立てる作業等が必要になり、組み立て作業が困難になると懸念される。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、使用時に組み立てが容易で、非使用時にコンパクトに収納することができ、しかも、輸送用容器として必要な強度を確保できる発泡樹脂製の保冷容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、平面視略正方形のパレット本体と、前記パレット本体の周縁の4辺に着脱可能に立設される4面から成る壁体と、前記壁体の上端部に設けられる蓋体と、を備えた発泡樹脂製の保冷容器であって、前記壁体は、前記4面のうちの一面の一部を成す第1側面部と前記一面と隣り合う一面の一部を成す第2側面部とが鉛直辺で接続された側面部材を有し、前記側面部材は、前記第1側面部及び前記第2側面部を互いに回動可能に接続するヒンジ部を有し、前記ヒンジ部は、前記第1側面部及び前記第2側面部の互いに隣接する辺が傾斜面とされ前記第1側面部及び前記第2側面部が外側面において繋がることで構成されており、前記壁体の角部に配置されることを特徴とする。
【0009】
上記保冷容器において、前記壁体の一面は、前記側面部材のうち一の側面部材の前記第1側面部と、前記一の側面部材と隣り合う別の側面部材の前記第2側面部と、から成り、前記第1側面部は、前記第2側面部と係合するための係合凹部を有し、前記第2側面部は、前記第1側面部と係合するための係合凸部を有することが好ましい。
【0010】
上記保冷容器において、前記壁体は、4つの同形状の前記側面部材から成ることが好ましい。
【0011】
上記保冷容器において、前記側面部材は、前記側面部材の高さ方向の辺の二等分線に対して対称形状であることが好ましい。
【0012】
上記保冷容器において、前記パレット本体は、4辺の周縁に沿って形成された周溝を有し、前記第1側面部及び前記第2側面部は、各々の下端面に前記周溝に嵌挿される凸部を有し、前記周溝は、前記凸部の外縁を支持する外塀部と、前記凸部の内縁を支持する内塀部を有し、4辺の周縁のうち1辺の周縁に沿う前記周溝には、前記外塀部が設けられていないことが好ましい。
【0013】
上記保冷容器において、4辺の周縁のうち少なくとも1辺の周縁に沿う前記周溝には、前記第2側面部の前記凸部の外縁を支持する箇所の前記外塀部が設けられていないことが好ましい。
【0014】
上記保冷容器において、前記側面部材の高さ寸法は、前記パレット本体の一辺の寸法より僅かに小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る保冷容器によれば、壁板を成す側面部材は、第1側面部と第2側面部とがヒンジ部で回動可能に接続されているので、第1側面部及び第2側面部を平面視でL字状とすることで、パレット本体に容易に立設させることができ、保冷容器を容易に組み立てることができる。また、第1側面部及び第2側面部をフラットな状態にもできるので、側面部材が嵩張ることもなく、非使用時にコンパクトに収納することができる。また、壁体の角部にはヒンジ部が位置し、側面部材の連結部がないので、角部の強度が増し、輸送用容器として必要な強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)本発明の一実施形態に係る保冷容器の平面、正面、右側面を主とした構成を示す斜視図、(b)は同保冷容器の分解斜視図。
図2】(a)は同保冷容器の正面図、(b)は背面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図、(e)は平面図、(f)は底面図。
図3】(a)は図2(e)のA-A線断面図、(b)はB-B線断面図。
図4】(a)は同保冷容器に用いられるパレット本体の平面を主とした斜視図と一部拡大図、(b)は(a)底面を主とした斜視図。
図5】(a)は上記パレット本体の正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は底面図、(e)は左側面図。
図6】(a)は図5(e)のA-A線断面図、(b)はB-B線断面図、(c)はC-C線断面図、(d)はD-D線断面図、(e)はE-E線断面図、
図7】(a)は上記保冷容器に用いられる側面部材であって、主に外面と下端面を主とした斜視図、(b)は内面と上端面を主とした斜視図。
図8】(a)は上記側面部材の正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図、(d)は(c)の一部拡大図、(e)は左側面図、(f)は背面図。
図9】(a)は上記保冷容器に用いられる蓋体であって、平面を主とした斜視図、(b)は底面を主とした斜視図、(c)は上記蓋体の平面図、(d)は底面図、(e)は正面図。
図10】(a)は上記保冷容器を組み立て後の斜視図、(b)は側面部材うち正面を開口させた状態を示す斜視図。
図11】(a)(b)は上記側面部材を収納する手順を示す斜視図。
図12】(a)は上記保冷容器の収納時の状態を示す斜視図、(b)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る保冷容器について、図面を参照して説明する。図1(a)(b)、図2(a)乃至(f)、図3(a)(b)に示すように、本実施形態の保冷容器1は、物流の現場等においてフォークリフト等を用いた荷物の管理・運搬に好適に使用されるものであり、平面視略正方形のパレット本体2と、パレット本体2の周縁の4辺から立設される壁体3(側面部材4)と、壁体の上端部に設けられる蓋体5と、を備える。
【0018】
壁体3は、略正方形状のパレット本体2の4辺から立設された正面31、左側面32、右側面33、背面34の4面を有する。なお、以下の説明では、パレット本体2、壁体3(側面部材4)及び蓋体5のいずれの部材においても、図1(a)で示した6面の方向を基準とする。例えば、側面部材4であれば、側面部材4の板状部分を鉛直に立てて配置したときの外側面を成す面を正面と言う。
【0019】
パレット本体2、壁体3及び蓋体5は、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂といった発泡合成樹脂であり、本実施形態では、発泡ポリスチレン(EPS(expanded polystyrene))が用いられる。なお、パレット本体2、壁体3(側面部材4)及び蓋体5は、夫々同じ樹脂材料により構成されていてもよいが、夫々密度や硬さが異なるものが用いられてもよい。パレット本体2は、軽量で断熱性があり、環境負荷も小さい発泡樹脂製のものが特に好ましいが、木製、樹脂製等の汎用のパレットを用いることもできる。
【0020】
図1(b)に示したように、パレット本体2、壁体3(側面部材4)及び蓋体5は、夫々別体として成型されており、それらを組み立てることで保冷容器1が完成する。壁体3は、4つの側面部材4から成り、夫々パレット本体2に対して着脱可能となっている。また、蓋体5も、側面部材4の上端部に着脱可能に装着される。
【0021】
側面部材4は、壁体3の4面のうちの一面(例えば、右側面33)の一部を成す第1側面部41と、その一面(右側面33)と隣り合う一面(例えば、正面31)の一部を成す第2側面部42とが鉛直辺で接続されている。また、側面部材4は、第1側面部41及び第2側面部42を互いに回動可能に接続するヒンジ部43を有し、このヒンジ部43が、壁体3の角部に配置される。
【0022】
本実施形態では、壁体3は、4つの同形状の側面部材4から構成される。また、壁体3の一面(例えば、正面31)は、4つの側面部材4のうちの一の側面部材4の第1側面部41と、この一の側面部材4と隣り合う別の側面部材4の第2側面部42と、から構成される。
【0023】
図4(a)(b)及び図5(a)乃至(e)に示すように、パレット本体2は、所定の肉厚を有する板状部材である。なお、パレット本体2の形状は、平面視で多角形状を含む各種の形状を採用し得るが、本実施形態では、一般的なパレットと同様に、平面視で略正方形である。パレット本体2は、荷物が積載される積載面となる上面21と、複数(本実施形態では9個)の桁体6が設けられる下面22と、上面21及び下面22を繋ぐ側面23と、を有する。上面21及び下面22は、夫々外形寸法が略等しく、各側面23の角部は丸みを帯びるように面取りされている。パレット本体2は、平面視における1辺の長さLが1m以上になる大型部材であり、図例のものでは、例えば、1100mmである。
【0024】
上面21は、4辺の周縁に沿って形成された周溝24a~24dを有する。周溝24a~24dは、周縁から、所定の間隔を空けて、荷物が積載される積載面を囲うように全周に亘って形成されている。周溝24a~24dは、周溝24a~24dの外側塀に必要な強度を確保するため、例えば、上面21の周縁から30mm程内側の位置に、幅30mm、深さ30mmで形成される。
【0025】
また、周溝24b~24dは、後述する側面部材4の凸部41b、42bを嵌挿・保持するため、凸部41b、42bの外縁を支持する外塀部25と、凸部41b、42bの内縁を支持する内塀部26と、を有する(図4(a)の一部拡大図参照)。一方、4辺の周縁に沿う周溝24a~24dのうち1つ、ここでは正面31側の周溝24aには、外塀部25が設けられていない(図4(a)、図5(c)参照)。また、4辺の周縁に沿う周溝24a~24dのうち少なくとも1つ、ここでは背面34側の周溝24cには、第2側面部42の凸部42bの外縁を支持する外塀部25が設けられていない(図4(a)、図5(b)、図6(e)参照)。
【0026】
桁体6は、積載面となる上面21の高さを嵩上げする支持部材であり、複数の桁体6(図例では9個)が、隣り合う桁体6と所定間隔を空けて配置されることにより、フォークリフトのフォークが差し込まれるフォーク差し込み部20が形成される。本実施形態の桁体6では、フォークリフトのフォークを4方から差し込み可能とすべく、パレット本体2の下面22の四隅、これら4隅の側部側の中間位置、及び下面22の中心部に夫々設けられる。
【0027】
桁体6は、保冷容器1が載置される際に底面となる載置面61と、載置面61とパレット本体2の下面22とを繋ぐ側面62と、を有する。本実施形態の桁体6では、載置面61が平面視で矩形状であり、側面62が4面あるブロック形状のものである。載置面61には、肉抜き(軽量化)のための凹部63が形成されている。本実施形態の桁体6は、パレット本体2と一体的に成形されているが、別体として成形されて任意の手段によりパレット本体2に固定されたものであってもよい。また、桁体6は、図示した形状に限らず、例えば、円柱形状、四角柱以外の多角柱形状であってもよい。更に、桁体6は、例えば、フォークリフトを用いた複数回の運搬による発泡スチロールの劣化や屑ごみの発生を防止するため、載置面61に硬化性樹脂、木材、金属等から成るカバー等(不図示)が取り付けられてもよい。
【0028】
図7(a)(b)及び図8(a)乃至(f)に示すように、側面部材4は、上述したように、第1側面部41と、第2側面部42と、これらを互いに回動可能に接続するヒンジ部43と、を有する。なお、側面部材4の外面側からヒンジ部43は視認できないが、図7(a)及び図8(a)では、破線でヒンジ43の位置を示している。第1側面部41のうち第2側面部42と隣接する辺は、第1側面部41の内側面と直交する面に対して45°の角度で切り込まれた傾斜面44として形成される(特に図8(c)(d)参照)。同様に、第2側面部42のうち第1面部41と隣接する辺は、第2側面部42の内側面と直交する面に対して45°の角度で切り込まれた傾斜面45として形成される。
【0029】
また、本実施形態では、第1側面部41及び第2側面部42は、外側面の一部が繋がって一体的に成形されており、この繋がった箇所がヒンジ部43となる。ヒンジ部43は、他の平面部よりも厚みが薄く、柔軟性があるので、屈曲可能である。第1側面部41及び第2側面部42は、図8に示す平面配置から、傾斜面44、45が当接する直角配置まで、ヒンジ部43を介して+90°回動する。なお、ヒンジ部43は、第1側面部41及び第2側面部42を上記とは逆方向に回動させることができ、この場合、傾斜面44、45に相当する部材が無いので、第1側面部41及び第2側面部42の各外側面が当接するまで、-180°回動する(後述する図11も参照)。すなわち、ヒンジ部43は、第1側面部41及び第2側面部42を+90°から-180°の範囲で回動させる。
【0030】
本実施形態では、上記のように、第1側面部41及び第2側面部42が、ヒンジ部43で繋がった一体成形物である構成例を挙げているが、第1側面部41及び第2側面部42は、夫々別体として成形され、互いの外側面が、例えば、柔軟性のあるテープ(不図示)が貼られれることで回動可能に接続されていてもよい。また、第1側面部41及び第2側面部42の外側面が、ラミネート層により被覆され、このラミネート層によって回動可能にされてもよい。更に、第1側面部41及び第2側面部42が一体成形物であり、更にヒンジ部43の外面側に、補強のためのテープが貼られていてもよい。また、第1側面部41及び第2側面部42が別体で、テープとは異なるヒンジ機能を有する部材(不図示)で回動可能に接続されていてもよい。
【0031】
第1側面部41は、壁体3の一面の主要部分を成し、外側面の大きさが、第2側面部42よりも大きい。例えば、第1側面部41の水平方向の幅は、第2側面部42に対して、2~8倍とされることが好ましく、3~6倍であることがより好ましい。第2側面部42は、係合凸部42aの基礎部分として必要な強度を確保できるだけの幅があればよく、より好ましくは、ヒンジ部43を回動させて、第1側面部41及び第2側面部42を平面視でL字状としたときに、側面部材4を作業者の補助なく立て掛けられるだけの幅とされる。
【0032】
第1側面部41は、ヒンジ部43と対峙する鉛直辺に、隣り合う側面部材4の第2側面部42と係合するための係合凹部41aを有する。係合凹部41aは、第1側面部41の外側面から第1側面部41の厚みの略半分の深さまで、凹状に彫り込まれた構成である。従って、係合凹部41aは、側面部材4の外側面からしか視認できない(図8(a)(f)参照)。係合凹部41aは、端部側(図8(a)では右側)の鉛直幅が小さく、基部側(図8(a)では左側)の鉛直幅が大きくなるように形成されている。本実施形態では、このような形状の係合凹部41aが、側面部材4の高さ方向の辺の二等分線(図中の一点鎖線)に対して対称となるように、第1側面部41の一鉛直辺に4つ形成されている。
【0033】
第2側面部42は、ヒンジ部43と対峙する鉛直辺に、隣り合う側面部材4の第1側面部41と係合するための係合凸部42aを有する。係合凸部42aは、第2側面部42の外側面がヒンジ部43とは逆方向に突出するように形成された構成である。従って、係合凸部42aは、側面部材4の外側面及び内面側の両方から視認できる(図8(a)(f)参照)。係合凸部42aは、第1側面部41の係合凹部41aが嵌合するように、端部側(図8(a)では左側)の鉛直幅が大きく、基部側(図8(a)では右側)の鉛直幅が小さくなるように形成されている。本実施形態では、このような形状の係合凸部42aが、側面部材4の高さ方向の辺の二等分線(図中の一点鎖線)に対して対称となるように、第2側面部42の一鉛直辺に4つ形成されている。
【0034】
第1側面部41及び第2側面部42は、各々の下端面にパレット本体2の周溝24a~24dに嵌挿される凸部41b、42bを有する。凸部41b、42bは、第1側面部41及び第2側面部42の下端面の外側面が外方(図8(a)(b)では下方)に突出するように形成されている。また、第1側面部41及び第2側面部42は、各々の下端面に、後述する蓋体5の周溝53に嵌挿される凸部41c、42cを有する。これら下端面側の凸部41c、42cは、上端面側の凸部41b、42bと同じ形状である。すなわち、側面部材4は、側面部材4の高さ方向の辺の二等分線に対して対称形状である。
【0035】
また、側面部材4の鉛直方向の高さT1は、パレット本体2の1辺の長さL(図4)よりも僅かに小さい。パレット本体2の1辺の長さLが1100mmであれば、例えば、側面部材4の高さT1は、1070mmとされる。一方、第1側面部41及び第2側面部42を合せた側面部材4の水平方向の幅は、係合凸部42aが突出している分、パレット本体2の1辺の長さLよりも大きく、例えば、1153mmとされる。
【0036】
図9(a)乃至(e)に示すように、蓋体5は、上面部51及び下面部52を有する板状部材である。上面部51は、その外形寸法がパレット本体2と略等しくなるように形成される。下面部52の4方の周縁には、側面部材4の凸部41b、42bが嵌合する周溝53が形成されている。なお、図9(e)に蓋体5の正面図を示しているが、蓋体5は、左右側面、背面も正面と同形状である。
【0037】
上記のように構成された保冷容器1の組み立て手順の一例について、上述した図1(b)に加えて、図10(a)(b)を参照して説明する。なお、本実施形態では、第1側面部41の係合凹部41aは、外側面に形成されているので、第1側面部41の係合凹部41aの上から、第2側面部42の係合凸部42aを嵌め込むことになる。
【0038】
まず、右側面33の主体を成す側面部材4と、背面34の主体を成す側面部材4とを、係合凹部41a及び係合凸部42aを係合させることで連結させる。このとき、側面部材4は1辺が1mを超える大きな部材であるが、ヒンジ部43を回動させて、第1側面部41に対して第2側面部42を平面視でL字状にすることで、側面部材4は作業者の補助なく立て掛けられることができ、2つの側面部材4を容易に連結させることができる。そして、連結させた右側面33及び背面34の主体を成す2つの側面部材4をパレット本体2に立設させる。同様の手順により、左側面32の主体を成す側面部材4と、正面31の主体を成す側面部材4とを連結させ、連結させた左側面32及び正面31の主体を成す2つの側面部材4をパレット本体2に立設させる。
【0039】
ここで、4辺の周縁に沿う周溝24a~24dのうち、正面31側の周溝24aには、外塀部25が設けられていない(図4(a)、図5(c)参照)。また、背面34側の周溝24cには、第2側面部42の凸部42bの外縁を支持する外塀部25が設けられていない(図4(a)、図5(b)、図6(e)参照)。つまり、正面31の主体を成す側面部材4の第1側面部41と、右側面33の主体を成す側面部材4の第2側面部42とは、正面31側の周溝24aに外塀部25が無いので、パレット本体2に立設させた状態においても、ヒンジ部43を介して外方向には回動可能である。従って、正面31側の第1側面部41の係合凹部41aの上から、第2側面部42の係合凸部42aを嵌め込むことができる。
【0040】
また、左側面32の主体を成す側面部材4の第2側面部42も、背面34側の周溝24cの一部に外塀部25が無いので、ヒンジ部43を介して外方向には回動可能である。従って、背面34側の第1側面部41の係合凹部41aの上から、第2側面部42の係合凸部42aを嵌め込むことができる。
【0041】
なお、図10(a)に示すように、正面31側の第1側面部41の係合凹部41a及び第2側面部42の係合凸部42aを連結させず、いわゆる保冷容器1の正面扉を開いた状態とし、この状態で保冷容器1内に搬送物を収容し、ヒンジ部43を回動させて、係合凹部41a及び係合凸部42aを連結させて、保冷容器1の正面31を閉じ、壁体3(4つの側面部材4)の上端部に蓋体5が被せられる。これにより、図10(b)に示すように、保冷容器1の組み立てと、搬送物の梱包が完了する。正面31側の下端部に位置する第1側面部41の凸部41b、第2側面部42の凸部42bは周溝24aに嵌め込まれていないことになるが、上端部に位置する第1側面部41の凸部41c、第2側面部42の凸部42cは、蓋体5の周溝53に嵌め込まれるので、蓋体5を装着した状態では、第1側面部41と第2側面部42とは固定された状態となり、回動することはなく、正面扉が開くこともない。一方、蓋体5を開けば、図10(a)に示したような、正面扉を開いた状態となるので、梱包途中や搬送中に、保冷容器1内を容易に確認等することができる。
【0042】
このように、本実施形態の保冷容器1によれば、壁体3を成す側面部材4は、第1側面部41と第2側面部42とがヒンジ部43で回動可能に接続されているので、第1側面部41及び第2側面部42を平面視でL字状とすることで、パレット本体2に容易に立設させることができ、1辺が1mを超えるサイズの大きな保冷容器1を容易に組み立てることができる。また、第1側面部41及び第2側面部42をフラットな状態にもできるので、側面部材4が嵩張ることもなく、非使用時にコンパクトに収納することができる。また、壁体3の角部にはヒンジ部43が位置し、側面部材の連結部がないので、角部の強度が増し、輸送用容器として必要な強度を確保することができる。
【0043】
次に、保冷容器1の収納手順の一例について、図11及び図12を参照して説明する。側面部材4のヒンジ部43は、第1側面部41及び第2側面部42を各外側面が当接するまで、-180°回動させることができる。また、側面部材4は、側面部材4の高さ方向の辺の二等分線に対して対称形状、すなわち上下対称である。従って、図11(a)に示すように、2つの側面部材4の第1側面部41の外側面を対向させ、且つ互いの左右の鉛直辺を逆に配置すれば、下側の側面部材4の係合凹部41aに上側の側面部材4の係合凸部42aが嵌合し、上側の側面部材4の係合凹部41aに下側の側面部材4の係合凸部42aが嵌合する。つまり、2つの側面部材4を連結することができ、保冷容器1を収納する際に、組立部材をまとめることができる。
【0044】
側面部材4は、ヒンジ部43を回動させずに、第1側面部41及び第2側面部42をフラットな状態としたときは(図7参照)、係合凸部42aが突出している分、その水平方向の幅がパレット本体2の一辺よりも長い。しかしながら、上記のように、第1側面部41及び第2側面部42を各外側面が当接するまで-180°回動させることで、水平方向の幅がパレット本体2の一辺よりも短くなる。そのため、図12(a)(b)に示すように、連結させた2組の側面部材4は、いずれもパレット本体2の平面寸法の範囲に収めることができ、保冷容器1の収納時の容積をコンパクトにすることができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施の形態においては保冷容器1の構造をフォークリフトによる荷物の運搬に適用する例を説明したが、他の発泡合成樹脂製の構造物にも適用できることは言うまでもない。ただし、一辺が1mを超える大きな輸送用部材であるパレット連結式の保冷容器1に適用することが、組み立ての便益上、特に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 保冷容器
2 パレット本体
24a、24b、24c、24d 周溝
25 外塀部
26 内塀部
3 壁体
4 側面部材
41 第1側面部
41a 係合凹部
41b 凸部
41c 凸部
42a 係合凸部
42b 凸部
5 蓋部
T1 高さ寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12