(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】画素回路、及び、表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20230721BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20230721BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 624B
G09G3/20 642J
G09G3/20 641D
G09G3/20 611H
G09G3/20 642A
G09G3/20 621F
G09G3/20 670K
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2019194935
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲郎
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-152223(JP,A)
【文献】特開2015-102723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0213496(US,A1)
【文献】特開2010-139966(JP,A)
【文献】特開2009-169145(JP,A)
【文献】特開2009-109521(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107068063(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素回路であって、
信号線を介して供給された電圧に応じた電流を供給する駆動トランジスタと、
前記信号線と前記駆動トランジスタのゲート電極との間に接続された書き込みトランジスタと、
前記駆動トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方の電極に接続された第一の発光素子と、
前記駆動トランジスタの前記一方の電極に接続されたスイッチングトランジスタと、
前記スイッチングトランジスタを介して前記駆動トランジスタの前記一方の電極に接続された第二の発光素子とを備え、
前記画素回路は、前記駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正を行う画素回路であり、
前記スイッチングトランジスタは、前記信号線を介して供給された前記電圧を書き込む書き込み動作の後にオンし、かつ、前記駆動トランジスタの前記移動度補正を行う動作が開始する前にオフ
し、
前記第二の発光素子の面積は、前記第一の発光素子の面積よりも大きく、
前記スイッチングトランジスタは、前記移動度補正を行う期間オフし、
前記第一の発光素子には、前記移動度補正を行う前記期間において、前記駆動トランジスタを介して電流が供給され、
前記第二の発光素子には、前記移動度補正を行う前記期間において、電流が供給されない
画素回路。
【請求項2】
画素回路であって、
信号線を介して供給された電圧に応じた電流を供給する駆動トランジスタと、
前記信号線と前記駆動トランジスタのゲート電極との間に接続された書き込みトランジスタと、
前記駆動トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方の電極に接続された第一の発光素子と、
前記駆動トランジスタの前記一方の電極に接続されたスイッチングトランジスタと、
前記スイッチングトランジスタを介して前記駆動トランジスタの前記一方の電極に接続された第二の発光素子と、
前記駆動トランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方の電極と接続され、電源電位を供給するための電源線とを備え、
前記画素回路は、前記駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正を行う画素回路であり、
前記スイッチングトランジスタは、前記信号線を介して供給された前記電圧を書き込む書き込み動作の後にオンし、かつ、前記駆動トランジスタの前記移動度補正を行う動作が開始する前にオフし、
前記第二の発光素子は、前記スイッチングトランジスタ及び前記駆動トランジスタを介してのみ前記電源線と接続される
画素回路。
【請求項3】
前記画素回路は、
第一の発光色の光を発する第一のサブ画素回路と、
前記第一の発光色とは異なる第二の発光色の光を発する第二のサブ画素回路とを有し、
前記スイッチングトランジスタ及び前記第二の発光素子は、前記第一のサブ画素回路及び前記第二のサブ画素回路のうち第一のサブ画素回路のみに設けられる
請求項1
又は2に記載の画素回路。
【請求項4】
前記画素回路は、さらに、前記第一の発光色及び前記第二の発光色とは異なる第三の発光色の光を発する第三のサブ画素回路を有し、
前記スイッチングトランジスタ及び前記第二の発光素子は、前記第一のサブ画素回路、前記第二のサブ画素回路、及び、前記第三のサブ画素回路のうち第一のサブ画素回路のみに設けられ、
前記第一の発光色は、青色であり、
前記第二の発光色は、赤色であり、
前記第三の発光色は、緑色である
請求項
3に記載の画素回路。
【請求項5】
前記第一のサブ画素回路が有する前記第一の発光素子の容量は、前記第二のサブ画素回路が有する発光素子の容量、及び、前記第三のサブ画素回路が有する発光素子の容量の一方と等しい
請求項
4に記載の画素回路。
【請求項6】
前記画素回路には、前記駆動トランジスタの前記移動度補正を行う動作の前に前記第一の発光素子に負バイアスを印加する動作が存在し、
前記スイッチングトランジスタは、前記第一の発光素子に前記負バイアスが印加される前にオフする
請求項1~
5のいずれか1項に記載の画素回路。
【請求項7】
前記第二の発光素子の面積は、前記第一の発光素子の面積よりも大きい
請求項
2に記載の画素回路。
【請求項8】
前記第一の発光素子及び前記第二の発光素子は、トップエミッション構造であり、
前記第一の発光素子は、光を発する第一の発光部と、当該第一の発光素子のアノード及びTFT層を接続する第一のコンタクト部とを有し、
前記第二の発光素子は、光を発する第二の発光部と、当該第二の発光素子のアノード及び前記TFT層を接続する第二のコンタクト部とを有し、
前記画素回路の平面視において、第一の発光部及び前記第二の発光部の間に、前記第一のコンタクト部及び前記第二のコンタクト部が配置されている
請求項1~
7のいずれか1項に記載の画素回路。
【請求項9】
前記第一の発光素子及び前記第二の発光素子は、有機EL素子である
請求項1~
8のいずれか1項に記載の画素回路。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の画素回路と、
前記信号線に前記電圧を印加する水平セレクタと、
前記書き込みトランジスタを制御するライトスキャナと、
前記駆動トランジスタのソース電極又はドレイン電極に電位を印加する電源スキャナと、
前記スイッチングトランジスタを制御する切り替えスキャナとを備える
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機EL(Electro Luminescence)素子を備える画素回路、及び、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自発光型表示装置に用いられる電気光学素子として、有機EL素子が知られている。有機EL素子は、有機薄膜に電界をかけると発光する現象を利用した電気光学素子であり、有機EL素子を流れる電流値を制御することで発色の階調を得ている。そのため、有機EL素子を用いる有機EL表示装置は、有機EL素子の電流量を制御するための駆動トランジスタと、駆動トランジスタの制御電圧を保持する保持容量(キャパシタ)とを含む画素回路が画素ごとに設けられている。
【0003】
駆動トランジスタは、当該駆動トランジスタの特性バラツキにより有機EL素子の発光輝度などに影響を与えることがある。駆動トランジスタの特性バラツキは、閾値電圧のバラツキ、移動度のバラツキなどである。そこで、特許文献1には、駆動トランジスタの閾値電圧のバラツキを補正する閾値電圧補正、及び、駆動トランジスタの移動度のバラツキを補正する移動度補正を行う表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、表示装置の大型化又は高開口率化が進められている。表示装置が大型化又は高開口率化することで、各画素回路に含まれる有機EL素子の面積も大型化する。これに伴い、有機EL素子の容量は大きくなる。有機EL素子の容量が大きくなると、移動度補正に要する時間が長くなる。そのため、特許文献1の表示装置では、表示装置が大型化又は高開口率化すると、移動度補正に要する時間が長くなる課題がある。
【0006】
そこで、本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、移動度補正を高速化することができる画素回路、及び、表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る画素回路は、信号線を介して供給された電圧に応じた電流を供給する駆動トランジスタと、前記信号線と前記駆動トランジスタのゲート電極との間に接続された書き込みトランジスタと、前記駆動トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方の電極に接続された第一の発光素子と、前記駆動トランジスタの前記一方の電極に接続されたスイッチングトランジスタと、前記スイッチングトランジスタを介して前記駆動トランジスタの前記一方の電極に接続された第二の発光素子とを備え、前記画素回路は、前記駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正を行う画素回路であり、前記スイッチングトランジスタは、前記信号線を介して供給された前記電圧を書き込む書き込み動作の後にオンし、かつ、前記駆動トランジスタの前記移動度補正を行う動作が開始する前にオフする。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る表示装置は、上記の画素回路と、前記信号線に前記電圧を印加する水平セレクタと、前記書き込みトランジスタを制御するライトスキャナと、前記駆動トランジスタのソース電極又はドレイン電極に電位を印加する電源スキャナと、前記スイッチングトランジスタを制御する切り替えスキャナとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る画素回路等によれば、移動度補正を高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、従来技術の有機EL表示装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、従来技術の画素回路を示す回路図である。
【
図3】
図3は、有機EL素子のI-V特性の経時変化を示す図である。
【
図4】
図4は、従来技術の有機EL表示装置の回路動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、従来技術の有機EL表示装置の回路動作を説明するための第1図である。
【
図6】
図6は、従来技術の有機EL表示装置の回路動作を説明するための第2図である。
【
図7】
図7は、従来技術の有機EL表示装置の回路動作を説明するための第3図である。
【
図8】
図8は、従来技術の有機EL表示装置の回路動作を説明するための第4図である。
【
図9】
図9は、従来技術の有機EL表示装置の駆動トランジスタのソース電位の変化を示す第1図である。
【
図10】
図10は、従来技術の有機EL表示装置の回路動作を説明するための第5図である。
【
図11】
図11は、従来技術の有機EL表示装置の回路動作を説明するための第6図である。
【
図12】
図12は、従来技術の有機EL表示装置の駆動トランジスタのソース電位と移動度との関係を示す第2図である。
【
図13】
図13は、従来技術の有機EL表示装置の回路動作を説明するための第7図である。
【
図14】
図14は、従来技術の有機EL表示装置の回路動作を説明するための第8図である。
【
図15】
図15は、実施の形態に係る有機EL表示装置の概略構成を示す図である。
【
図16】
図16は、実施の形態に係る画素回路を示す回路図である。
【
図17】
図17は、実施の形態に係る有機EL表示装置の平面視における画素回路の概略構造を示す図である。
【
図18】
図18は、実施の形態に係る有機EL表示装置の回路動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図19】
図19は、実施の形態に係る有機EL表示装置の回路動作を説明するための第1図である。
【
図20】
図20は、実施の形態に係る有機EL表示装置の回路動作を説明するための第2図である。
【
図21】
図21は、実施の形態に係る有機EL表示装置の回路動作を説明するための第3図である。
【
図22】
図22は、駆動トランジスタの閾値電圧バラツキによる発光タイミングのズレを示す図である。
【
図23】
図23は、実施の形態に係る画素回路における、駆動トランジスタの閾値電圧バラツキによる発光タイミングのズレを小さくできることを説明するための図である。
【
図24】
図24は、実施の形態の変形例に係る有機EL表示装置の概略構成を示す図である。
【
図25】
図25は、実施の形態の変形例に係る画素回路を示す回路図である。
【
図26】
図26は、実施の形態の変形例に係る有機EL表示装置の回路動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
本開示の各実施の形態の説明に先立ち、本開示の基礎となった知見について説明する。
【0012】
まずは、従来技術の有機EL表示装置の概略構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、従来技術の有機EL表示装置901の概略構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本開示の前提となる有機EL表示装置901は、有機EL素子を含む複数の画素回路920が行列状に2次元配置されて構成される画素アレイ930と、水平セレクタ40と、電源スキャナ50と、ライトスキャナ60とを備える。水平セレクタ40、電源スキャナ50、及び、ライトスキャナ60は、画素アレイ930の周辺に配置される駆動回路部(駆動部)である。
【0014】
有機EL表示装置901がカラー表示対応の場合は、カラー画像を形成する単位となる1つの画素(単位画素/ピクセル)は、複数のサブ画素回路から構成され、このサブ画素回路の各々が
図1の画素回路920に相当することになる。より具体的には、カラー表示対応の有機EL表示装置901では、1つの画素は、例えば、青色(Blue:B)光を発する第一のサブ画素回路、赤色(Red;R)光を発する第二のサブ画素回路、緑色(Green;G)光を発する第三のサブ画素回路の3つのサブ画素回路から構成される。青色光は第一の発光色の光の一例であり、赤色光は第二の発光色の光の一例であり、緑色光は第三の発光色の光の一例である。
【0015】
ただし、1つの画素としては、RGBの3原色のサブ画素回路の組み合わせに限定されず、3原色のサブ画素回路に更に1色又は複数色のサブ画素回路を加えて1つの画素を構成することも可能である。例えば、輝度向上のために白色(White;W)光を発光するサブ画素回路を加えて、1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発する少なくとも1つのサブ画素回路を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。
【0016】
また、画素アレイ930には、m行n列の画素の配列に対して、行方向(画素行の画素回路920の配列方向)に沿って電源線51と走査線61とが画素行ごとに配線されている。また、画素アレイ930には、m行n列の画素の配列に対して、列方向(画素列の画素回路920の配列方向)に沿って信号線41が画素列毎に配線されている。
【0017】
複数の信号線41は、水平セレクタ40の対応する画素列の出力端にそれぞれ接続されている。複数の電源線51は、電源スキャナ50の対応する画素行の出力端にそれぞれ接続されている。複数の走査線61は、ライトスキャナ60の対応する画素行の出力端にそれぞれ接続されている。
【0018】
水平セレクタ40(信号線駆動回路)は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsig(以下、信号電圧とも記載する)と基準電位Vofsとを選択的に出力する。ここで、基準電位Vofsは、映像信号の信号電圧Vsigの基準となる電圧(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電圧)であり、後述する閾値補正動作の際に用いられる。
【0019】
水平セレクタ40から出力される信号電圧Vsig及び基準電位Vofsは、信号線41を介して画素アレイ930の各画素回路920に対して、ライトスキャナ60による走査によって選択された画素行の単位で書き込まれる。すなわち、水平セレクタ40は、信号電圧Vsigを行(ライン)単位で書き込む線順次書き込みの駆動形態を採っている。
【0020】
電源スキャナ50(電源供給走査回路)は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ回路等によって構成されている。この電源スキャナ50は、ライトスキャナ60による線順次走査に同期して、第一電位Vccと当該第一電位Vccよりも低い第二電位Vssとを切り替えて電源線51に供給する。後述するように、第一電位Vcc及び第二電位Vssの切り替え(電源電位の切り替え)によって、画素回路920の発光及び非発光(消光)の制御が行なわれる。
【0021】
ライトスキャナ60(書き込み走査回路)は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ回路等によって構成されている。このライトスキャナ60は、画素アレイ930の各画素回路920への映像信号の信号電圧の書き込みに際して、走査線61に対して書き込み走査信号(書き込み電圧であり、以降においてオン信号とも記載する)を順次供給することによって画素アレイ930の各画素回路920を行単位で順番に走査(線順次走査)する。
【0022】
次に、上記のような有機EL表示装置901が備える画素回路920について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、従来技術の画素回路920を示す回路図である。
【0023】
図2に示すように、画素回路920は、映像信号に対応する輝度で有機EL素子ELを発光させる回路であり、有機EL素子ELと、保持容量C1と、書き込みトランジスタT1と、駆動トランジスタT2とを有する。また、画素回路920は、さらに、保持容量C1に参照電圧を印加するための薄膜トランジスタである参照トランジスタ、有機EL素子ELの第一電極の電位を初期化するための薄膜トランジスタである初期化トランジスタなどを有していてもよい。
【0024】
有機EL素子ELは、第一電極及び第二電極を有する発光素子である。
図2に示す例では、第一電極及び第二電極は、それぞれ有機EL素子ELのアノード及びカソードである。有機EL素子ELの第二電極は、カソード電源線に接続される。カソード電源線には、カソード電位Vcatが供給される。有機EL素子ELは、発光素子の一例である。カソード電源線は、全画素回路920に対して共通に配線されている。
【0025】
保持容量C1は、電圧を保持するための素子であり、駆動トランジスタT2のゲート電極gとソース電極sとの間に接続される。
【0026】
書き込みトランジスタT1は、保持容量C1に映像信号に対応する電圧を印加するための薄膜トランジスタである。書き込みトランジスタT1のドレイン電極及びソース電極の一方に信号線41が接続され、他方に保持容量C1及び駆動トランジスタT2のゲート電極gが接続される。書き込みトランジスタT1のゲート電極には、走査線61が接続される。書き込みトランジスタT1は、例えば、オン信号に従ってオン状態となり、映像信号に対応する電圧を保持容量C1に保持させる。
【0027】
駆動トランジスタT2は、有機EL素子ELの第一電極(アノード)と接続され、保持容量C1に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子ELに供給するNチャネル型の薄膜トランジスタである。駆動トランジスタT2のソース電極sが有機EL素子ELの第一電極に接続され、ドレイン電極dが電源線51に接続される。電源線51には、電源スキャナ50から第一電位Vcc又は第二電位Vssが選択的に供給される。
【0028】
書き込みトランジスタT1及び駆動トランジスタT2として、例えば、Nチャネル型のTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)を用いることができるが、書き込みトランジスタT1及び駆動トランジスタT2の導電型の組み合わせはこれに限定されない。
【0029】
また、有機EL素子ELの第一電極の電位及び電源線51から供給される電位の関係によっては、駆動トランジスタT2におけるソース電極s及びドレイン電極dの位置関係は
図2に示す関係から変化し得る。
【0030】
上記構成の画素回路920において、書き込みトランジスタT1は、ライトスキャナ60から走査線61を通してゲート電極に印加されるオン信号に応じて導通状態(オン状態)となる。これにより、書き込みトランジスタT1は、信号線41を通して水平セレクタ40から供給される、信号電圧Vsig又は基準電位Vofsをサンプリングして画素回路920内に書き込む。書き込みトランジスタT1によって書き込まれた信号電圧Vsig又は基準電位Vofsは、駆動トランジスタT2のゲート電極gに印加されるとともに保持容量C1に保持される。
【0031】
駆動トランジスタT2は、電源線51からの電源電位が第一電位Vccにあるときには、
図2に示すように、電源線51側がドレイン電極d、有機EL素子EL側がソース電極sとなって飽和領域で動作する。これにより、駆動トランジスタT2は、電源線51から電流の供給を受けて有機EL素子ELを電流駆動にて発光駆動する。より具体的には、駆動トランジスタT2は、飽和領域で動作することにより、保持容量C1に保持された信号電圧Vsigの電圧値に応じた電流値の駆動電流を有機EL素子ELに供給し、当該有機EL素子ELを電流駆動することによって発光させる。
【0032】
駆動トランジスタT2は、さらに、電源線51からの電源電位が第一電位Vccから第二電位Vssに切り替わったときには、電源線51側がソース電極s、有機EL素子EL側がドレイン電極dとなってスイッチングトランジスタとして動作する。これにより、駆動トランジスタT2は、有機EL素子ELへの駆動電流の供給を停止し、有機EL素子ELを非発光状態にする。すなわち、駆動トランジスタT2は、有機EL素子ELの発光及び非発光を制御するトランジスタとしての機能を有する。
【0033】
この駆動トランジスタT2のスイッチング動作により、有機EL素子ELが非発光状態となる期間(以降において、非発光期間とも記載する)を設けることで、有機EL素子ELの発光期間と非発光期間との割合(デューティ)を制御することができる。このデューティ制御により、1フレーム期間に亘って画素回路920が発光することに伴う残像ボケを低減することができるため、特に、動画の品位をより優れたものとすることができる。
【0034】
電源スキャナ50から電源線51を通して選択的に供給される第一電位Vcc及び第二電位Vssのうち、第一電位Vccは、有機EL素子ELを発光駆動する駆動電流を駆動トランジスタT2に供給するための電源電位である。また、第二電位Vssは、有機EL素子ELに対して負バイアス(逆バイアス)をかけるための電源電位である。この第二電位Vssは、基準電位Vofsよりも低い電位、例えば、駆動トランジスタT2の閾値電圧をVthとするときVofs-Vthよりも低い電位に設定される。
【0035】
ここで、有機EL素子ELのI-V特性(電流-電圧特性)の経時変化について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、有機EL素子ELのI-V特性の経時変化を示す図である。
【0036】
図3に示すように、有機EL素子ELは、経時変化により実線で示されるI-V特性から点線で示されるI-V特性へと変化する。駆動トランジスタT2の閾値電圧をVth、移動度をμ、実効チャネル幅(実効ゲート幅)をW、実効チャネル長(実効ゲート長)をL、単位ゲート容量をC、ゲートソース間の電圧をVgsとすると、ドレインソース間電流Idsは、
Ids=1/2×μ×W/L×C(Vgs-Vth)
2 (式1)
で示される。なお、駆動トランジスタT2のドレインソース間電流Idsは、有機EL素子ELの駆動電流にほぼ相当する。以下では、便宜上、ドレインソース間電流Idsが有機EL素子ELの駆動電流に相当する例について説明する。また、駆動電流を駆動電流Idsとも記載する。
【0037】
このとき、
図2に示す画素回路920では、駆動トランジスタT2が一定の駆動電流Idsを流そうとしても、
図3に示すグラフから分かるように有機EL素子ELの印加電圧Vが大きくなるため、有機EL素子ELの第一電極(アノード)の電位(つまり、駆動トランジスタT2のソース電位Vs)が上昇する。このとき駆動トランジスタT2のゲートはフローティング状態であるため、ほぼ一定のゲートソース間電圧Vgsが維持されるように、ソース電位と共にゲート電位も上昇し、駆動電流Idsはほぼ一定に保たれる。このことが有機EL素子ELの発光輝度を変化させないように作用する。
【0038】
しかしながら、画素回路920ごとに駆動トランジスタT2の閾値電圧Vth及び移動度μは異なっているため、式1に応じて、電流値にバラツキが生じ、発光輝度も画素回路920ごとに変化してしまう。そのため、駆動トランジスタT2を有する画素回路920においては、閾値電圧Vth及び移動度μのバラツキを抑えるため、それらの補正動作を行うことが求められる。補正動作については、後述する。
【0039】
次に、上記の有機EL表示装置901の基本的な回路動作について、
図4~
図14を参照しながら説明する。
図4は、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4は、書き込みトランジスタT1のゲート電極の電位(走査線61の電位であり、高電位(ON)又は低電位(OFF))、電源線51の電位(Vcc又はVss)、信号線41の電位(Vsig又はVofs)、駆動トランジスタT2のゲート電極gの電位(
図4中のT2ゲート)、及び、駆動トランジスタT2のソース電極sの電位(
図4中のT2ソース)のそれぞれの変化を示している。
【0040】
(前表示フレームの発光期間)
図4に示すタイミングチャートにおいて、時刻t1以前は、前の表示フレームにおける有機EL素子ELの発光期間である。この前表示フレームの発光期間では、電源線51の電位が第一電位Vcc(以下、「高電位Vcc」とも記載する)であり、また、書き込みトランジスタT1が非導通状態(オフ状態)である。
【0041】
このとき、駆動トランジスタT2は、飽和領域で動作するように設定されている。これにより、
図5に示すように、駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧Vgsに応じた駆動電流Ids(ドレインソース間電流)が、電源線51から駆動トランジスタT2を通して有機EL素子ELに供給される。従って、有機EL素子ELが駆動電流Idsの電流値に応じた輝度で発光する。なお、
図5は、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作を説明するための第1図である。また、このとき有機EL素子ELに流れる駆動電流Idsは、駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧Vgsに応じて、式1により算出される値をとる。
【0042】
(非発光期間)
時刻t1になると、線順次走査の新しい表示フレーム(現表示フレーム)に入る。そして、
図6に示すように、電源線51の電位が高電位Vccから第二電位Vss(以下、「低電位Vss」とも記載する)に切り替わる。低電位Vssは、信号線41の基準電位Vofsに対してVofs-Vthよりも十分に低い電位であり、有機EL素子ELを消光させることができる電位である。なお、
図6は、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作を説明するための第2図である。
【0043】
ここで、有機EL素子ELの閾値電圧をVthel、カソード電位をVcatとすると、低電位Vssが、
Vss<Vthel+Vcat (式2)
を満たす場合、駆動トランジスタT2のソース電位Vsが低電位Vssにほぼ等しくなるため、有機EL素子ELは逆バイアス状態となって消光する。そして、駆動トランジスタT2の電源線51側がソース電極sとなる。このとき、有機EL素子ELの第一電極(アノード)は、Vssに充電される。
【0044】
(閾値補正準備期間)
次に、時刻t2で走査線61の電位が低電位側から高電位側に遷移する(OFF→ON)ことで、
図7に示すように、書き込みトランジスタT1が導通状態となる。
図7は、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作を説明するための第3図である。
【0045】
このとき、水平セレクタ40から信号線41に対して基準電位Vofsが供給された状態にあるため、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgが基準電位Vofsになる。また、駆動トランジスタT2のソース電位Vsは、基準電位Vofsよりも十分に低い電位、すなわち、低電位Vssである。
【0046】
このとき、駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧Vgsは、Vofs-Vssとなる。ここで、Vofs-Vssが駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthよりも大きくないと、後述する閾値補正動作を行うことができないため、
Vofs-Vss>Vth (式3)
となる電位関係に設定する必要がある。
【0047】
このように、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgを基準電位Vofsに固定し、かつ、ソース電位Vsを低電位Vssに固定して初期化する処理が、後述する閾値補正動作を行う前の準備(閾値補正準備)の処理である。従って、基準電位Vofs及び低電位Vssが、駆動トランジスタT2のゲート電位Vg及びソース電位Vsの各初期化電位となる。
【0048】
時刻t3で走査線61の電位が高電位側から低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、閾値補正準備期間が終了する。時刻t2から時刻t3までが閾値補正準備期間である。
【0049】
(閾値補正期間)
次に、時刻t4で、書き込みトランジスタT1が導通している状態で、電源線51の電位が低電位Vssから高電位Vccに切り替わると、
図8に示すように、有機EL素子ELの第一電極が駆動トランジスタT2のソース電極sとなり、駆動トランジスタT2に電流が流れる。これにより、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgが基準電位Vofsに保たれた状態で閾値補正動作が開始される。すなわち、ゲート電位Vgから駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthを減じた電位(Vofs-Vth)に向けて駆動トランジスタT2のソース電位Vsが上昇を開始する。なお、
図8は、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作を説明するための第4図である。
【0050】
ここでは、便宜上、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgの基準電位Vofs(初期化電位)を基準とし、当該基準電位Vofsから駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthを減じた電位に向けてソース電位Vsを変化させる動作(処理)を閾値補正動作(閾値補正処理)と呼んでいる。この閾値補正動作が進むと、やがて、駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧Vgsが駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthに収束する。この閾値電圧Vthに相当する電圧は、保持容量C1に保持される。
【0051】
なお、閾値補正動作を行う期間(
図4中の閾値補正期間)において、電流が保持容量C1側に流れ、有機EL素子EL側には流れないようにするために、有機EL素子ELがカットオフ状態(ハイインピーダンス状態)となるようにカソード電源線のカソード電位Vcatを設定しておくこととする。
【0052】
有機EL素子ELの等価回路は、
図8に示すように、ダイオード及び等価容量Celで表される。そして、駆動トランジスタT2のソース電位をVelとすると、
Vel≦Vcat+Vthel (式4)
の関係が成り立つ限り、駆動トランジスタT2の電流は保持容量C1及び等価容量Celを充電するために使われる。例えば、有機EL素子ELのリーク電流が駆動トランジスタT2に流れる電流よりもかなり小さい限り、駆動トランジスタT2の電流は保持容量C1及び等価容量Celを充電するために使われる。なお、ソース電位Velは、有機EL素子ELの第一電極の電位でもある。
【0053】
ソース電位Velの変化について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、従来技術の有機EL表示装置901の駆動トランジスタT2のソース電位Velの変化を示す第1図である。
図9は、閾値補正動作のときのソース電位Velの変化を模式的に示す図である。
【0054】
図9に示すように、ソース電位Velは、時間とともに上昇する。ソース電位Velは、VssからVofs-Vthに向けて漸次的に上昇する。
【0055】
次に、時刻t5で、走査線61の電位が低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、書き込みトランジスタT1が非導通状態となる。書き込みトランジスタT1は、時刻t4から第一期間経過した時刻t5に非導通状態となる。このとき、駆動トランジスタT2のゲート電極gが信号線41から電気的に切り離されることによってフローティング状態になる。しかし、ゲートソース間電圧Vgsが駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthよりも大きいため、
図10に示すように、電流(ドレインソース間電流Ids)が流れ、駆動トランジスタT2のゲート、ソース電位は上昇する。なお、このとき有機EL素子ELには逆バイアスがかかっているため、当該有機EL素子ELが発光することはない。なお、
図10は、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作を説明するための第5図である。
【0056】
次に、時刻t6において、信号線41の電位が基準電位Vofsとなっている期間(例えば、基準電位Vofsとなったとき)に書き込みトランジスタT1を導通状態として、再度閾値補正動作を開始する。この動作を繰り返すことで、最終的に駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧Vgsは、閾値電圧Vthという値をとる。このとき、駆動トランジスタT2のソース電位Velは、
Vel=Vofs-Vth≦Vcat+Vthel (式5)
となっている。
【0057】
次に、時刻t7で、走査線61の電位が低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、書き込みトランジスタT1が非導通状態となる。書き込みトランジスタT1は、時刻t6から第二期間経過した時刻t7に非導通状態となる。
【0058】
また、時刻t8から時刻t9までの期間においても、再度閾値補正動作が行われる。時刻t9は、閾値補正動作が終了する時刻であり、書き込みトランジスタT1が非導通状態となる。時刻t4から時刻t5まで、時刻t6から時刻t7まで、及び、時刻t8から時刻t9までが閾値補正期間である。
【0059】
このように、有機EL表示装置901は、閾値補正動作を書き込み動作及び移動度補正動作とともに行う1H期間に加えて、当該1H期間に先行する複数の水平期間に亘って分割して閾値補正動作を複数回実行する、いわゆる、分割閾値補正動作を行ってもよい。
【0060】
この分割閾値補正動作によれば、高精細化に伴う多画素化によって1水平期間として割り当てられる時間が短くなったとしても、閾値補正期間として複数の水平期間に亘って十分な時間を確保することができる。従って、1水平期間として割り当てられる時間が短くなっても、閾値補正期間として十分な時間を確保できるため、閾値補正動作を確実に実行することができる。なお、閾値補正動作を行う回数は、上記に限定されず、例えば、1回だけであってもよい。
【0061】
(書き込み及び移動度補正期間)
次に、時刻t10で、信号線41の電位が基準電位Vofsから映像信号の信号電圧Vsigに切り替わった状態で、走査線61の電位が高電位側に遷移する(OFF→ON)ことで、
図11に示すように、書き込みトランジスタT1が導通状態になって映像信号の信号電圧Vsigがサンプリングされ、画素回路920内に書き込まれる。なお、
図11は、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作を説明するための第6図である。また、信号電圧Vsigは、映像信号の階調に応じた電圧である。
【0062】
この書き込みトランジスタT1による信号電圧Vsigの書き込みにより、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgが信号電圧Vsigになる。このとき、有機EL素子ELは、カットオフ状態にある。従って、映像信号の信号電圧Vsigに応じて電源線51から駆動トランジスタT2に流れる電流(ドレインソース間電流Ids)は、保持容量C1及び等価容量Celに流れ込む。これにより、保持容量C1及び等価容量Celの充電が開始される。
【0063】
例えば、駆動トランジスタT2のソース電位Vsが有機EL素子ELの閾値電圧Vthelとカソード電位Vcatとの和を越えなければ、駆動トランジスタT2の電流は、保持容量C1及び等価容量Celを充電するのに使われる。
【0064】
有機EL素子ELの等価容量Celが充電されることにより、駆動トランジスタT2のソース電位Vsが時間の経過とともに上昇していく。このとき、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthの画素回路920ごとのバラツキは閾値補正動作により既にキャンセルされており、駆動トランジスタT2のドレインソース間電流Idsは、当該駆動トランジスタT2の移動度μに依存したものとなる(式1参照)。これによって、駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧Vgsは、移動度μを反映して小さくなり一定時間経過後に完全に移動度μを補正するゲートソース間電圧Vgsとなる。なお、駆動トランジスタT2の移動度μは、当該駆動トランジスタT2のチャネルを構成する半導体薄膜の移動度である。
【0065】
図12は、従来技術の有機EL表示装置901の駆動トランジスタT2のソース電位Vsと移動度μとの関係を示す第2図である。
図12は、移動度μのバラツキによるソース電位の変化を示す図である。
【0066】
図12に示すように、移動度μが相対的に大きい駆動トランジスタT2を有する画素回路920では、駆動トランジスタT2の電流量が大きく、移動度μが相対的に小さい場合に比べて、ソース電位Vsの上昇は早くなる。また、移動度μが相対的に小さい駆動トランジスタT2を有する画素回路920では、駆動トランジスタT2の電流量が小さく、移動度μが相対的に大きい場合に比べて、ソース電位Vsの上昇は遅くなる。
【0067】
例えば、移動度μにバラツキがある2つの画素回路920において、駆動トランジスタT2のゲート電極gに対して、同じレベルの信号電圧Vsigを書き込んだ場合について説明する。この場合、移動度補正を行わないと、移動度μの大きい画素回路920に流れるドレインソース間電流Idsと、移動度μの小さい画素回路920に流れるドレインソース間電流Idsとに、大きな差が生じる。これにより、移動度μの画素回路920ごとのバラツキに起因して、ドレインソース間電流Idsに大きな差が生じると、画像のユニフォーミティ(例えば、明るさの均一性)が損なわれる。
【0068】
そこで、上記のように、移動度補正が行われる。以下で、移動度補正について、さらに説明する。
【0069】
映像信号の信号電圧Vsigに対する保持容量C1の保持電圧の比率、すなわち、書き込みゲインが1(理想値)であると仮定すると、駆動トランジスタT2のソース電位VsがVofs-VthからΔVs上昇することで、駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧VgsはVsig-Vofs+Vth-ΔVsとなる。ΔVsは、ソース電位Vsの上昇した電位を示す。
【0070】
すなわち、駆動トランジスタT2のソース電位Vsの上昇分ΔVsは、保持容量C1に保持された電圧(Vsig-Vofs+Vth)から差し引かれるように、換言すれば、保持容量C1の充電電荷を放電するように作用する。さらに換言すれば、駆動トランジスタT2のソース電位Vsの上昇分ΔVsは、保持容量C1に対して負帰還がかけられたことになる。従って、ソース電位Vsの上昇分ΔVsは、負帰還の帰還量となる。
【0071】
このように、駆動トランジスタT2に流れるドレインソース間電流Idsに応じた帰還量ΔVsでゲートソース間電圧Vgsに負帰還をかけることで、駆動トランジスタT2のドレインソース間電流Idsの移動度μに対する依存性を打ち消すことができる。この打ち消す動作が、駆動トランジスタT2の移動度μの画素回路920ごとのバラツキを補正する移動度補正動作である。
【0072】
より具体的には、移動度μの大きな画素回路920で帰還量ΔVsの補正をかけると、ドレインソース間電流Idsは、第一電流値から第二電流値まで大きく降下する。一方、移動度μの小さな画素回路920の帰還量ΔVsは小さいため、ドレインソース間電流Idsは、第三電流値(<第一電流値)から第四電流値まで降下する。第二電流値と第四電流値とが等しくなるような期間、移動度補正を行うことで、移動度μの画素回路920ごとのバラツキが補正される。負帰還の帰還量ΔVsは、移動度補正動作の補正量とも言える。
【0073】
また、駆動トランジスタT2のゲート電極gに書き込まれる映像信号の信号振幅(Vsig-Vofs)が高いほど、ドレインソース間電流Idsが大きくなるため、負帰還の帰還量ΔVsの絶対値も大きくなる。従って、発光輝度レベルに応じた移動度補正動作が行われる。
【0074】
(発光期間)
次に、時刻t11で、走査線61の電位が低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、書き込みトランジスタT1が非導通状態となり、書き込み動作が終了する。これにより、駆動トランジスタT2のゲート電極gは、信号線41から電気的に切り離されるためにフローティング状態になる。時刻t10から時刻t11までが書き込み及び移動度補正期間である。
【0075】
ここで、駆動トランジスタT2のゲート電極gがフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタT2のゲートソース間に保持容量C1が接続されていることにより、駆動トランジスタT2のソース電位Vsの変動に連動してゲート電位Vgも変動する。すなわち、駆動トランジスタT2のソース電位Vs及びゲート電位Vgは、保持容量C1に保持されているゲートソース間電圧Vgsを保持したまま上昇する。そして、駆動トランジスタT2のソース電位Vsは、駆動トランジスタT2のドレインソース間電流Ids(飽和電流)に応じた有機EL素子ELの発光電圧まで上昇する。
【0076】
このように、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgがソース電位Vsの変動に連動して変動する動作がブートストラップ動作である。換言すれば、ブートストラップ動作は、保持容量C1に保持されたゲートソース間電圧Vgs、すなわち、保持容量C1の両端間電圧を保持したまま、ゲート電位Vg及びソース電位Vsが変動する動作である。
【0077】
駆動トランジスタT2のゲート電極gがフローティング状態になり、それと同時に、駆動トランジスタT2のドレインソース間電流Idsが有機EL素子ELに流れ始めることにより、
図13に示すように、当該ドレインソース間電流Idsに応じて有機EL素子ELの第一電極(アノード)の電位が電位Vxまで上昇する。そして、有機EL素子ELの第一電極の電位Vx(例えば、
図13中の点Bの電位)がVthel+Vcatを越えると、有機EL素子ELに駆動電流Idsが流れ始めるため有機EL素子ELが発光を開始する。なお、
図13は、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作を説明するための第7図である。
【0078】
上記のような画素回路920において、有機EL素子ELは、発光時間が長くなると、つまり経時変化により、I-V特性が変化(劣化)してしまう。そのため、
図13中の点Bの電位も変化する。しかしながら、駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧Vgsは一定値に保たれているので、有機EL素子ELに流れる電流は変化しない。よって、有機EL素子ELのI-V特性が変化しても、一定の駆動電流Idsが常に流れ続け、有機EL素子ELの発光輝度が変化することはない。
【0079】
ここで、信号書き込みにおける移動度補正動作について考える。上述の通り、移動度補正動作は、閾値補正動作終了後に駆動トランジスタT2に電流を流して各画素回路920における駆動トランジスタT2の移動度μのバラツキを補正するソース電位Vs(ゲートソース間電圧Vgs)となるまで、駆動トランジスタT2のソース電位Vsを一定時間上昇させる動作である。このとき、駆動トランジスタT2のソース電位Vsの増加は、駆動トランジスタT2を流れる電流と当該駆動トランジスタT2のソース電極sに接続されている容量とに依存する。
【0080】
一般的に、有機EL表示装置901の発光は、有機EL素子ELに流れる電流量で決定され、その電流量は駆動トランジスタT2によって決定される。画素回路920における駆動トランジスタT2のサイズ(W/L比)は、駆動トランジスタT2のゲート電極gと、駆動トランジスタT2に隣接して配置される配線(例えば、
図14では、信号線41)との間の寄生容量Cfによるカップリングノイズの影響を小さくするために、小さくすることが望ましい。しかしながら、駆動トランジスタT2のサイズが小さくなってしまうと移動度補正動作において、駆動トランジスタT2のソース電位Vsの増加が小さくなってしまい、移動度補正にかかる時間が長くなってしまう。なお、
図14は、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作を説明するための第8図である。
【0081】
また、有機EL表示装置901が大型化すると、画素回路(画素)サイズが大きくなり、それだけ有機EL素子ELの面積も大きくなる。これにより、有機EL素子ELの等価容量Celも大きくなり、移動度補正にかかる時間が長くなってしまう。
【0082】
このため、所定の期間(例えば、1H期間)内に移動度補正を行うことが困難となり、画像にはスジやムラといった表示異常が発生することがある。
【0083】
そこで、本願発明者は、このような移動度補正動作を行う有機EL表示装置において、移動度補正(移動度補正動作)を高速化することができる画素回路、及び、有機EL表示装置について、鋭意検討を行い、以下に説明する画素回路等を創案した。
【0084】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示における一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示における独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0085】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0086】
また、本明細書において、等しいなどの要素間の関係性を示す用語、並びに、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。また、一定などの表現も用いているが、実質的に一定な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0087】
(実施の形態)
[1.有機EL表示装置の構成]
まずは、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の概略構成について、
図15を参照しながら説明する。
図15は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の概略構成を示す図である。本実施の形態に係る有機EL表示装置1が備える画素回路20は、主に、1つの画素回路20が2つの有機EL素子(
図16に示す第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2)及びスイッチングトランジスタ(
図16に示すスイッチングトランジスタT3)を有し、かつ、1つの有機EL素子が当該スイッチングトランジスタT3を介して駆動トランジスタT2に接続されている点において、従来技術の画素回路920と相違する。以降において、本実施の形態に係る画素回路20及び有機EL表示装置1について、従来技術の画素回路920及び有機EL表示装置901との相違点を中心に説明する。また、従来技術の有機EL表示装置901と同一又は類似の構成については、従来技術の有機EL表示装置901と同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する。なお、有機EL表示装置1は、表示装置の一例である。
【0088】
図15に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示装置1は、有機EL素子を含む複数の画素回路20(画素)が行列状に2次元配置されて構成される画素アレイ30と、水平セレクタ40と、電源スキャナ50と、ライトスキャナ60と、切り替えスキャナ70とを備える。水平セレクタ40、電源スキャナ50、ライトスキャナ60、及び、切り替えスキャナ70は、画素アレイ30の周辺に配置される駆動回路部(駆動部)である。
【0089】
また、画素アレイ30には、m行n列の画素回路20(画素)の配列に対して、行方向(画素行の画素回路20の配列方向)に沿って、電源線51と走査線61と制御線71とが画素行ごとに配線されている。また、画素アレイ30には、m行n列の画素の配列に対して、列方向(画素列の画素回路20の配列方向)に沿って信号線41が画素列毎に配線されている。
【0090】
複数の制御線71は、切り替えスキャナ70の対応する画素行の出力端にそれぞれ接続されている。複数の制御線71は、後述するスイッチングトランジスタ(例えば、
図16に示すスイッチングトランジスタT3)のゲート電極にそれぞれ接続されている。
【0091】
水平セレクタ40(信号線駆動回路)は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsig(以下、信号電圧とも記載する)と基準電位Vofsとを選択的に出力する。
【0092】
水平セレクタ40から出力される信号電圧Vsig及び基準電位Vofsは、信号線41を介して画素アレイ30の各画素回路20に対して、ライトスキャナ60による走査によって選択された画素行の単位で書き込まれる。すなわち、水平セレクタ40は、信号電圧Vsigを行(ライン)単位で書き込む線順次書き込みの駆動形態を採っている。
【0093】
電源スキャナ50(電源供給走査回路)は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ回路等によって構成されている。この電源スキャナ50は、ライトスキャナ60による線順次走査に同期して、第一電位Vccと当該第一電位Vccよりも低い第二電位Vssとを切り替えて電源線51に供給する。後述するように、第一電位Vcc及び第二電位Vssの切り替え(電源電位の切り替え)によって、画素回路20の発光及び非発光(消光)の制御が行なわれる。
【0094】
ライトスキャナ60(書き込み走査回路)は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ回路等によって構成されている。このライトスキャナ60は、画素アレイ30の各画素回路20への映像信号の信号電圧の書き込みに際して、走査線61に対して書き込み走査信号(書き込み電圧であり、以降においてオン信号とも記載する)を順次供給することによって画素アレイ30の各画素回路20を行単位で順番に走査(線順次走査)する。
【0095】
切り替えスキャナ70は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ回路等によって構成されている。切り替えスキャナ70は、画素アレイ30の各画素回路20への映像信号の信号電圧の書き込みに際して、制御線71に対して切り替え走査信号を順次供給することによって画素アレイ30の各画素回路20を行単位で順番に走査(線順次走査)する。切り替え走査信号は、
図16に示すスイッチングトランジスタT3の導通及び非導通を切り替えるための切り替え電圧である。
【0096】
次に、上記のような有機EL表示装置1が備える画素回路20について、
図16を参照しながら説明する。
図16は、本実施の形態に係る画素回路20を示す回路図である。
【0097】
図16に示すように、画素回路20は、第一の有機EL素子EL1と、第二の有機EL素子EL2と、保持容量C1と、書き込みトランジスタT1と、駆動トランジスタT2と、スイッチングトランジスタT3とを有する。有機EL表示装置1は、1つ画素回路20内に第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の2つの有機EL素子と、当該第二の有機EL素子EL2と接続されたスイッチングトランジスタT3とを備える点に特徴を有する。また、画素回路20は、さらに、保持容量C1に参照電圧を印加するための薄膜トランジスタである参照トランジスタ、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の第一電極の電位を初期化するための薄膜トランジスタである初期化トランジスタなどを有していてもよい。
【0098】
第一の有機EL素子EL1は、第一電極及び第二電極を有する発光素子である。
図16に示す例では、第一電極及び第二電極は、それぞれ第一の有機EL素子EL1のアノード及びカソードである。第一の有機EL素子EL1は、第一の発光素子の一例である。
【0099】
第二の有機EL素子EL2は、第一電極及び第二電極を有する発光素子である。
図16に示す例では、第一電極及び第二電極は、それぞれ第二の有機EL素子EL2のアノード及びカソードである。第二の有機EL素子EL2は、第二の発光素子の一例である。
【0100】
第一の有機EL素子EL1の第一電極は、駆動トランジスタT2のソース電極sに接続されている。第一の有機EL素子EL1は、スイッチングトランジスタT3を介さずに、駆動トランジスタT2のソース電極sに接続されている。第一の有機EL素子EL1は、例えば、駆動トランジスタT2のソース電極sに直接接続されている。第二の有機EL素子EL2の第一電極は、スイッチングトランジスタT3のソース電極及びドレイン電極の一方に接続されている。第二の有機EL素子EL2は、スイッチングトランジスタT3を介して駆動トランジスタT2のソース電極sに接続されている。また、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の第二電極は、それぞれカソード電源線に接続されている。カソード電源線は、全画素回路20に対して共通に配線されている。
【0101】
なお、画素回路20が備える発光素子は、有機EL素子に限定されない。画素回路20は、発光素子として、QLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)素子を有していてもよい。つまり、画素回路20は、第一の発光素子として第一のQLED素子を有し、かつ、第二の発光素子として第二のQLED素子を有していてもよい。
【0102】
なお、以降において、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2を区別せずに記載する場合は、単に有機EL素子とも記載する。
【0103】
本実施の形態に係る画素回路20は、従来技術の画素回路920の有機EL素子ELを2つに分割した構造を有するとも言える。なお、1つの画素回路20が有する有機EL素子の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0104】
保持容量C1は、電圧を保持するための素子であり、駆動トランジスタT2のゲート電極gとソース電極sとの間に接続される。
【0105】
書き込みトランジスタT1は、保持容量C1に映像信号に対応する電圧を印加するための薄膜トランジスタである。書き込みトランジスタT1は、映像信号が印加される信号線41と、駆動トランジスタT2のゲート電極gとの間に接続される。より具体的には、書き込みトランジスタT1のドレイン電極及びソース電極の一方に信号線41が接続され、他方に保持容量C1及び駆動トランジスタT2のゲート電極gが接続される。書き込みトランジスタT1のゲート電極には、走査線61が接続される。書き込みトランジスタT1は、例えば、オン信号に従ってオン状態となり、映像信号に対応する電圧を保持容量C1に保持させる。書き込みトランジスタT1として、例えば、Nチャネル型のTFTを用いることができるが、書き込みトランジスタT1の導電型はこれに限定されない。
【0106】
駆動トランジスタT2は、第一の有機EL素子EL1の第一電極(アノード)、及び、スイッチングトランジスタT3を介して第二の有機EL素子EL2の第一電極(アノード)と接続され、保持容量C1に保持された電圧に応じた電流を第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2に供給するNチャネル型の薄膜トランジスタである。駆動トランジスタT2のソース電極s及びドレイン電極dの一方が第一の有機EL素子EL1の第一電極、及び、スイッチングトランジスタT3を介して第二の有機EL素子EL2の第一電極に接続され、ソース電極s及びドレイン電極dの他方が電源線51に接続される。本実施の形態では、駆動トランジスタT2のソース電極sが、第一の有機EL素子EL1の第一電極、及び、スイッチングトランジスタT3を介して第二の有機EL素子EL2の第一電極に接続され、ドレイン電極dが電源線51に接続される。電源線51には、電源スキャナ50から第一電位Vcc及び第二電位Vssが選択的に供給される。
【0107】
スイッチングトランジスタT3は、第二の有機EL素子EL2の第一電極(アノード)と接続され、駆動トランジスタT2からの電流(例えば、保持容量C1に保持された電圧に応じた電流)を第二の有機EL素子EL2に供給する薄膜トランジスタである。スイッチングトランジスタT3のソース電極及びドレイン電極の一方が駆動トランジスタT2のソース電極sに接続され、スイッチングトランジスタT3のソース電極及びドレイン電極の他方が第二の有機EL素子EL2の第一電極に接続される。スイッチングトランジスタT3のゲート電極には、制御線71が接続される。スイッチングトランジスタT3は、例えば、制御線71からのオン信号に従ってオン状態となり、駆動トランジスタT2からの電流を第二の有機EL素子EL2に供給する。
【0108】
また、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の第一電極の電位及び電源線51から供給される電位の関係によっては、駆動トランジスタT2におけるソース電極s及びドレイン電極dの位置関係は
図16に示す関係から変化し得る。第一電極の電位は、例えば、アノード電位である。
【0109】
ここで、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2を有する画素回路20の平面構造について、
図17を参照しながら説明する。
図17は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の平面視における画素回路20の概略構造を示す図である。
図17では、画素回路20を構成する構成要素のうち、発光部、第一電極(アノード)、及び、第一電極のコンタクト部のみを図示している。なお、平面視とは、有機EL素子から出射される光の光軸と平行な方向から見ることを意味する。
【0110】
図17は、TFT層の基板の上方に有機EL素子が形成される、いわゆるトップエミッション構造を採用した場合の平面構造を示している。画素回路20では、基板表面側から光が取り出される。なお、TFT層は、基板に形成されたTFT回路と、TFT回路上に形成された無機絶縁膜(図示しない)とを有する。TFT回路は、基板上面に形成された複数のTFTと、複数の配線とを有する。TFTを構成するゲート電極、ゲート絶縁層、チャネル層、チャネル保護層、ソース電極、ドレイン電極などの材料は特に限定されず、公知の材料を用いることができる。また、TFT層は、平坦化膜を有していてもよい。
【0111】
図17に示すように、画素回路20において、第一の有機EL素子EL1と第二の有機EL素子EL2とは、並んで配置される。第一の有機EL素子EL1は、発光部21と、第一電極22(アノード)と、コンタクト部23とを有する。また、第二の有機EL素子EL2は、発光部24と、第一電極25(アノード)と、コンタクト部26とを有する。
【0112】
発光部21及び24は、有機エレクトロルミネセンスにより発光する。発光部21及び24は、例えば、有機発光ダイオード(OLED;Organic light-emittingdiode)などを用いることができる。発光部21は、第一の発光部の一例であり、発光部24は、第二の発光部の一例である。
【0113】
発光部24は、発光部21より面積(平面視における面積)が大きいとよい。第二の有機EL素子EL2は、第一の有機EL素子EL1より面積が大きいとも言える。つまり、スイッチングトランジスタT3に接続されている第二の有機EL素子EL2の面積の方が、駆動トランジスタT2に接続されている第一の有機EL素子EL1の面積よりも大きいとよい。換言すると、第一の有機EL素子EL1の面積は、第二の有機EL素子EL2の面積よりも小さいとよい。移動度補正を高速化する観点から、第一の有機EL素子EL1の面積は小さいとよく、例えば、第二の有機EL素子の面積の1/2以下であり、好ましくは1/3以下である。
【0114】
第一電極22及び25は、発光部21及び24のそれぞれにキャリア(例えば、ホール)を注入するための電極であり、発光部21及び24のそれぞれと電気的に接続されている。第一電極22及び25は、導電性と光透過性とを有した材料を用いて形成することができる。第一電極22及び25は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いて形成することができる。
【0115】
コンタクト部23は、TFT層が有するTFTなどのスイッチング素子(例えば、駆動トランジスタT2など)と、第一電極22とを電気的に接続する。コンタクト部26は、TFT層が有するTFTなどのスイッチング素子(例えば、スイッチングトランジスタT3など)と、第一電極25とを電気的に接続する。コンタクト部23及び26は、導電性と光透過性とを有した材料を用いて形成することができる。コンタクト部23及び26は、例えば、第一電極22及び25と同様、ITOなどを用いて形成することができる。コンタクト部23は、第一のコンタクト部の一例であり、コンタクト部26は、第二のコンタクト部の一例である。
【0116】
コンタクト部23は、例えば、平面視において、第一電極22における発光部24側に突出した凸部に配置される。また、コンタクト部26は、例えば、平面視において、第一電極25における発光部21側に突出した凸部に配置される。
【0117】
コンタクト部23及び26は、平面視において、発光部21及び24の間に配置されるとよい。換言すると、発光部21及び24は、平面視において、コンタクト部23及び26の両側に配置されるとよい。
【0118】
なお、画素回路20の平面構造は、上記に限定されない。例えば、発光部21及び24の面積は、等しくてもよい。また、例えば、コンタクト部23及び26の少なくとも1つは、発光部21及び24の間以外の位置に配置されていてもよい。
【0119】
なお、有機EL表示装置1がカラー表示対応の場合、
図16及び
図17で説明した画素回路20は、第一~第三のサブ画素回路のそれぞれに適用されてもよいし、少なくとも1つのサブ画素回路に適用されてもよい。画素回路20は、例えば、第一~第三のサブ画素回路のうち、膜厚が最も薄い有機EL素子を有するサブ画素回路のみに適用されてもよい。換言すると、画素回路20は、例えば、第一~第三のサブ画素回路のうち、単位面積当たりの容量が最も大きいサブ画素回路のみに適用されてもよい。画素回路20は、例えば、青色光を発する第一のサブ画素回路のみに適用されてもよい。
【0120】
画素回路20が第一のサブ画素回路のみに適用されている場合、第二のサブ画素回路及び第三のサブ画素回路の各々は、1つの有機EL素子(例えば、
図2に示す有機EL素子EL)を有していてもよい。この場合、第一のサブ画素回路が有する第一の有機EL素子EL1の等価容量は、第二のサブ画素回路が有する有機EL素子ELの等価容量、及び、第三のサブ画素回路が有する有機EL素子ELの等価容量に基づいて決定されるとよい。換言すると、第一の有機EL素子EL1の発光部21の面積は、第二のサブ画素回路が有する有機EL素子ELの等価容量、及び、第三のサブ画素回路が有する有機EL素子ELの等価容量に基づいて決定されるとよい。なお、以降において、等価容量を単に容量とも記載する。
【0121】
具体的には、第一の有機EL素子EL1の発光部21の面積は、第一の有機EL素子EL1の容量が、第二のサブ画素回路が有する有機EL素子の容量、及び、第三のサブ画素回路が有する有機EL素子の容量のうち大きい方の容量以下となるように決定されてもよい。第一の有機EL素子EL1の発光部21の面積は、例えば、第一の有機EL素子EL1の容量が、第二のサブ画素回路が有する有機EL素子の容量、及び、第三のサブ画素回路が有する有機EL素子の容量の一方と等しくなるように決定されてもよい。これにより、サブ画素回路ごとの移動度補正に要する時間の差を低減することができる。
【0122】
[2.有機EL表示装置の回路動作]
次に、上記の有機EL表示装置1の回路動作について、
図18~
図23を参照しながら説明する。
図18は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の回路動作を説明するためのタイミングチャートである。書き込みトランジスタT1のゲート電極の電位(走査線61の電位であり、高電位(ON)又は低電位(OFF))、電源線51の電位(Vcc又はVss)、スイッチングトランジスタT3のゲート電極の電位(制御線71の電位であり、高電位(ON)又は低電位(OFF))、信号線41の電位(Vsig又はVofs)、駆動トランジスタT2のゲート電極gの電位(
図18中のT2ゲート)、及び、駆動トランジスタT2のソース電極sの電位(
図18中のT2ソース)のそれぞれの変化を示している。また、
図18中の破線は、第二の有機EL素子EL2の第一電極の電位(アノード電位)の変化を示している。本実施の形態では、電位Vcc及びVssは、それぞれ、10V~20V程度及び-5V~0V程度であり、電位Vofsは、0Vである。
【0123】
(前表示フレームの発光期間)
図18に示すタイミングチャートにおいて、時刻t22以前は、前の表示フレームにおける発光期間である。この前表示フレームの発光期間では、電源線51の電位が高電位Vccであり、また、書き込みトランジスタT1が非導通状態(オフ状態)である。
【0124】
このとき、駆動トランジスタT2は、飽和領域で動作するように設定されている。これにより、時刻t21より前では、
図19に示すように、駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧Vgsに応じた駆動電流Ids(ドレインソース間電流)が、電源線51から駆動トランジスタT2を通して第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の両方に供給される。従って、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の両方が駆動電流Idsの電流値に応じた輝度で発光する。なお、
図19は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の回路動作を説明するための第1図である。
【0125】
前表示フレームの発光期間において、時刻t21で制御線71の電位が高電位側から低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、スイッチングトランジスタT3は非導通状態となる。これにより、駆動トランジスタT2から第二の有機EL素子EL2への電流が流れなくなり、当該第二の有機EL素子EL2の第一電極(アノード)の電位は低下する。そして、第一電極の電位は、一定時間経過後にVcat+Vthelという電位まで低下することで、第二の有機EL素子EL2は消光する。ここで、Vcatは、第二の有機EL素子EL2の第二電極の電位(カソード電位)であり、Vthelは、第二の有機EL素子EL2の閾値電圧である。
【0126】
スイッチングトランジスタT3は、閾値補正を行う動作が開始する前(例えば、時刻t23より前)に非導通状態となる。スイッチングトランジスタT3は、移動度補正を行う動作を開始する前(例えば、時刻t31より前)に非導通状態となるとも言える。なお、スイッチングトランジスタT3は、例えば、非発光期間に亘って非導通状態を維持する。
【0127】
(非発光期間)
時刻t22になると、線順次走査の新しい表示フレーム(現表示フレーム)に入る。そして、
図20に示すように、電源線51の電位が高電位Vccから低電位Vssに切り替わる。低電位Vssは、信号線41の基準電位Vofsに対してVofs-Vthよりも低く、第一の有機EL素子EL1を消光させることができる程度に十分に低い電位である。時刻t22では、第一の有機EL素子EL1に負バイアスを印加する動作が行われる。スイッチングトランジスタT3は、例えば、時刻t22より前の時刻t21に非導通状態となる。スイッチングトランジスタT3は、例えば、第一の有機EL素子EL1に負バイアスを印加する動作が行われる前にオフする。なお、
図20は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の回路動作を説明するための第2図である。
【0128】
このとき、駆動トランジスタT2に接続されている第一の有機EL素子EL1の第一電極(アノード)の電位は、低電位Vssとなるが、スイッチングトランジスタT3は非導通状態であるため、当該スイッチングトランジスタT3に接続されている第二の有機EL素子EL2の第一電極(アノード)の電位はVcat+Vthelのまま保持される。
【0129】
(閾値補正準備期間、閾値補正期間)
時刻t22以降において、スイッチングトランジスタT3が非導通状態のまま、従来技術の有機EL表示装置901の回路動作で説明した閾値補正準備動作、閾値補正動作、及び、移動度補正動作が行われる。これらの動作中も、スイッチングトランジスタT3は非導通状態であるので、当該スイッチングトランジスタT3に接続されている第二の有機EL素子EL2の第一電極の電位は、Vcat+Vthelに保持される。なお、時刻t23から時刻t31までは、
図4に示す時刻t2から時刻t10までのそれぞれに対応する。
【0130】
(書き込み及び移動度補正期間)
次に、時刻t31において、信号線41の電位が基準電位Vofsから信号電圧Vsigに切り替わった状態で、走査線61の電位が高電位側に遷移する(OFF→ON)ことで、書き込み動作及び移動度補正動作が開始される。この書き込みトランジスタT1による信号電圧Vsigの書き込みにより、駆動トランジスタT2のゲート電位Vgが信号電圧Vsigになる。このとき、第二の有機EL素子EL2は、スイッチングトランジスタT3が非導通状態であるので、駆動トランジスタT2とは接続されていない。従って、映像信号の信号電圧Vsigに応じて電源線51から駆動トランジスタT2に流れる電流(ドレインソース間電流Ids)は、保持容量C1及び第一の有機EL素子EL1の等価容量に流れ込む。換言すると、時刻t31から時刻t32までの期間では、駆動トランジスタT2に流れる電流は、第二の有機EL素子EL2の等価容量には流れ込まない。そのため、駆動トランジスタT2に流れる電流は、保持容量C1及び第一の有機EL素子EL1の等価容量を充電するのに使われる。換言すると、第二の有機EL素子EL2の等価容量は、駆動トランジスタT2に流れる電流により充電されない。
【0131】
上記のように、本実施の形態に係る画素回路20において、時刻t31から時刻t32までの期間では、駆動トランジスタT2に流れる電流が保持容量C1及び第一の有機EL素子EL1の等価容量のみを充電するのに使われ、第二の有機EL素子EL2の等価容量を充電するのには使われない。つまり、本実施の形態に係る画素回路20は、移動度補正時における有機EL素子の等価容量を小さくすることができる。
【0132】
第一の有機EL素子EL1の等価容量が充電されることにより、駆動トランジスタT2のソース電位Vsが時間の経過とともに上昇していくが、スイッチングトランジスタT3が導通状態である場合に比べて駆動トランジスタT2と接続されている等価容量が小さいので、駆動トランジスタT2のソース電位Vsの単位時間当たりの増加量を大きくすることが可能となる。つまり、移動度補正動作を高速に行うことができる。例えば、スイッチングトランジスタT3を導通状態のまま移動度補正動作を行った場合に比べて、移動度補正動作を高速に行うことができる。なお、スイッチングトランジスタT3を導通状態のまま移動度補正動作を行った場合とは、例えば、従来技術の画素回路920において移動度補正動作を行うことに相当する。
【0133】
(発光期間)
そして、時刻t32において、走査線61の電位が高電位側から低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、書き込みトランジスタT1は非導通状態となり、書き込み動作が終了する。これにより、現表示フレームにおける発光期間が開始する。時刻t31から時刻t32までが書き込み及び移動度補正期間である。
【0134】
時刻t33において、制御線71の電位が低電位側から高電位側に遷移する(OFF→ON)ことで、スイッチングトランジスタT3は導通状態となる。つまり、スイッチングトランジスタT3は、信号書き込み動作が終了し書き込みトランジスタT1がオフした後にオンする。スイッチングトランジスタT3は、信号線41を介して供給された電圧を保持容量C1に書き込む書き込み動作の後にオンするとも言える。
【0135】
この動作により、
図21に示すように、第二の有機EL素子EL2の第一電極がスイッチングトランジスタT3を介して駆動トランジスタT2に接続され、当該駆動トランジスタT2のソース電位VsはVxとなり、駆動トランジスタT2からの電流が流れ、駆動トランジスタT2のソース電位Vsは電流値に応じて上昇し、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の両方が発光する。なお、
図21は、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の回路動作を説明するための第3図である。また、電位Vxについて、後述する。
【0136】
なお、信号書き込み動作が終了した後に書き込みトランジスタT1をオフすると、駆動トランジスタT2のゲートソース間電圧Vgsは、保持容量C1によって一定に保持された状態となる。このとき、駆動トランジスタT2のソース電位Vsは、当該駆動トランジスタT2に流れる電流によって上昇する。当該電流は、上述の閾値補正及び移動度補正といった補正駆動によって駆動トランジスタT2の特性バラツキが補正されているため各画素回路20で一定となる。
【0137】
なお、スイッチングトランジスタT3は、少なくとも移動度補正が行われている期間オフであればよい。具体的には、スイッチングトランジスタT3は、少なくとも時刻t31から時刻t32までオフであればよい。また、スイッチングトランジスタT3は、例えば、一端オフすると、書き込み動作の後(時刻t32以降)になるまでオフ状態を維持する。
【0138】
ここで、画素回路20ごとに駆動トランジスタT2の閾値電圧が異なっていた場合について、
図22及び
図23を参照しながら説明する。
図22は、駆動トランジスタの閾値電圧バラツキによる発光タイミングのズレを示す図である。
図22及び
図23の縦軸は、駆動トランジスタT2のソース電位Vsを示しており、横軸は、時間を示している。また、
図22及び
図23の破線は、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthが相対的に高い画素回路20における当該駆動トランジスタT2のソース電位Vsを示している。また、
図22及び
図23の実線は、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthが相対的に低い画素回路20における当該駆動トランジスタT2のソース電位Vsを示している。
【0139】
書き込みトランジスタT1をオフしたとき、駆動トランジスタT2のソース電位Vsは、
図22に示されるように、閾値電圧Vthが大きいものは小さいものに比べて電位が低くなる。しかしながら、駆動トランジスタT2に流れる電流が一定であるならば、2つの画素回路20それぞれの有機EL素子の発光電圧は、同じ電圧(例えば、
図22中のカソード電位Vcat+有機EL素子の閾値電圧Vthel)となる。つまり、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthが大きいものは小さいものに比べて、ソース電位Vsの上昇量が閾値電圧Vthの差分だけ大きくなる。換言すれば、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthが大きいものは小さいものに比べて、発光開始時間(駆動トランジスタT2のソース電位Vsが有機EL素子の閾値電圧Vthelとカソード電位Vcatとの和となる時間)が遅くなる。
【0140】
この発光開始までの時間差Δt1は、画素回路20ごとの駆動トランジスタT2の閾値電圧の差ΔVth、発光時に流れる駆動電流Idsを用いて、
Δt1∝ΔVth/Ids (式6)
で表される。この式6より、駆動電流Idsが大きいとき(例えば、高輝度で発光するとき)は時間差Δt1は小さいが、駆動電流Idsが小さい時(例えば、低輝度で発光するとき)は時間差Δt1は大きくなる。つまり、特に低輝度の表示を行う際、駆動トランジスタT2の閾値電圧の差ΔVthに起因して生じる発光開始時間の差による表示ムラが視認されやすい。画素回路20ごとに駆動トランジスタT2の閾値電圧の差ΔVthがあることで、画素回路20ごとに発光開始のタイミングが異なってしまい、それが表示ムラとして認識されてしまう。
【0141】
これに対して、本実施の形態に係る画素回路20では、書き込みトランジスタT1を非導通状態にした後(オフした後)にスイッチングトランジスタT3を導通状態にする(オンする)ことで、駆動トランジスタT2のソース電位Vsを以下で示される電位Vxにする。電位Vxは、第一の有機EL素子EL1の等価容量をCle1、第二の有機EL素子EL2の等価容量をCel2、スイッチングトランジスタT3をオンする前の第一の有機EL素子EL1のアノードカソード間電位をV1、スイッチングトランジスタT3をオンする前の第二の有機EL素子EL2のアノードカソード間電位をV2とすると、
Vx=(Cel1×V1+Cel2×V2)/(Cel1+Cel2) (式7)
により算出される値である。なお、電位V2は、例えば、Vcat+Vthelである。
【0142】
電位Vxを構成する各電位のうち、電位V1は駆動トランジスタT2の特性を反映した値であるが、電位V2は駆動トランジスタT2の特性を反映しない値である。さらに、等価容量Cel2の値を等価容量Cel1よりも大きくすることで、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthが画素回路20ごとに異なっていても電位Vxに与える影響を小さくすることができる。これにより、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthの差分に起因する発光開始時間の差を小さくすることが可能となる。
【0143】
図23を参照しながら、より詳細に説明する。
図23は、本実施の形態に係る画素回路20における、駆動トランジスタT2の閾値電圧バラツキによる発光タイミングのズレを小さくできることを説明するための図である。なお、
図23では、発光部21及び24の面積が等しい場合について説明する。換言すると、第一の有機EL素子EL1の等価容量Cel1と第二の有機EL素子EL2の等価容量Cel2とが等しい場合について説明する。
【0144】
図23に示すように、閾値電圧Vthのバラツキがある場合、時刻t31から時刻t33までの間において、当該閾値電圧Vthのバラツキに応じて駆動トランジスタT2のソース電位Vsは、画素回路20ごとに差が生じる。時刻t31から時刻t33までは、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2のうち、第一の有機EL素子EL1のみが駆動トランジスタT2と接続されている状態である。
【0145】
次に、時刻t33において、スイッチングトランジスタT3が導通状態となると、駆動トランジスタT2のソース電位Vsが式7に基づいて、電位V1から電位Vxに変化する。等価容量Cel1及びCel2が同じである場合、電位Vxは、電位V1と電位V2との中間の電位となる。換言すると、電位Vxは、電位V1とVcat+Vthelとの中間の電位となる。
【0146】
ここで、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthに応じて、時刻t33でスイッチングトランジスタT3が導通状態としたときの当該駆動トランジスタT2のソース電位Vsの上昇量が異なる。
【0147】
時刻t33における駆動トランジスタT2のソース電位Vsは、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthが相対的に低い方が高い方に比べて高い。時刻t33において、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthが相対的に低い方のソース電位Vsは、高い方のソース電位Vsに比べて有機EL素子が発光を開始する電位(Vcat+Vthel)に近い。また、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2が発光する電位は、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthに関わらず一定であり、例えば、Vcat+Vthelである。
【0148】
閾値電圧Vthが相対的に低い駆動トランジスタT2を有する画素回路20では、時刻t33において、ソース電位Vsが上昇量Δv1変化する。上昇量Δv1は、等価容量Cel1及びCel2が同じである場合、時刻t33における電位V1と電位(Vcat+Vthel)との差分の半分の電位となる。閾値電圧Vthが相対的に低い場合、時刻t33の時点で駆動トランジスタT2のソース電位Vsが相対的に高いので、上昇量Δv1は小さい。
【0149】
一方、閾値電圧Vthが相対的に高い駆動トランジスタT2を有する画素回路20では、時刻t33において、ソース電位Vsが上昇量Δv2変化する。上昇量Δv2は、等価容量Cel1及びCel2が同じである場合、時刻t33における電位V1と電位(Vcat+Vthel)との差分の半分の電位となる。閾値電圧Vthが相対的に高い場合、時刻t33の時点で駆動トランジスタT2のソース電位Vsが相対的に低いので、上昇量Δv2は上昇量Δv1より大きくなる。電位Vxは、例えば、電位V1に上昇量Δv2を加えた電位である。
【0150】
上記のように、時刻t33でスイッチングトランジスタT3がオンすることで、閾値電圧Vthが相対的に高い駆動トランジスタT2を有する画素回路20は、閾値電圧Vthが相対的に低い駆動トランジスタT2を有する画素回路20に比べて、駆動トランジスタT2のソース電位Vsが大きく上昇する。つまり、駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthのバラツキに起因する発光開始時間の差を小さくすることができる。よって、画素回路20ごとの発光タイミングの時間差Δt2を小さくすることができるので、閾値電圧Vthのバラツキにより画素回路20ごとに発光タイミングが異なってしまい、それが表示ムラとして認識されてしまうことを抑制することができる。
【0151】
なお、上昇量Δv2を大きくする、つまり発光タイミングの時間差Δt2をより小さくする観点から、スイッチングトランジスタT3に接続されている第二の有機EL素子EL2の面積は、駆動トランジスタT2に接続されている第一の有機EL素子EL1の面積よりも大きくすることが望ましい。さらに、スイッチングトランジスタT3をオフするタイミングは、当該スイッチングトランジスタT3に接続されている第二の有機EL素子EL2の第一電極(アノード)の電位に駆動トランジスタT2の特性バラツキの影響がでない、タイミングであるとよい。当該タイミングは、例えば、閾値補正動作を開始する前である。また、さらに、スイッチングトランジスタT3をオフするタイミングは、当該スイッチングトランジスタT3を再びオンした際に、駆動トランジスタT2のソース電位Vsを大きく低下させない逆バイアス印加前(例えば、時刻t22より前)であることが望ましい。
【0152】
このような構成が採用された画素回路20は、移動度補正動作を高速に行うだけでなく、駆動トランジスタT2の閾値電圧バラツキに起因する発光開始時間差のバラツキも小さくすることができる。画素回路20は、さらに、駆動トランジスタT2のサイズを小さくすることができるため発光時における隣接配線からのカップリングノイズの影響を小さくすることが可能となる。その結果、画素回路20は、スジ又はムラが少ない画質の画像を実現することができる。
【0153】
また、上記のように、1つの画素回路20内において、有機EL素子を第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2に分割し、スイッチングトランジスタT3を介して駆動トランジスタT2のソース電極sに接続した第二の有機EL素子EL2を設ける。そして、移動度補正期間中にスイッチングトランジスタT3をオフし駆動トランジスタサイズを小さくした状態で、移動度補正時の駆動トランジスタT2のソース電位Vsの上昇量を大きくすることが可能となる。その結果、移動度補正時間を短くすることができ、スジ又はムラが少ない画質の画像を実現することができる。
【0154】
また、スイッチングトランジスタT3をオフするタイミングを閾値補正動作前とし、かつ、当該スイッチングトランジスタT3をオンするタイミングを信号書き込み動作後とすることで、画素回路20ごとの駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthの差分に起因する発光開始時間の差による表示ムラが視認されることを抑制することができるため、スジ又はムラ少ない均一な画質を得ることが可能となる。また、発光期間に対する輝度の線形性が保たれるため、発光Dutyを短くした際でも低階調での黒つぶれが発生しにくい。
【0155】
[3.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る画素回路20は、信号線41を介して供給された電圧に応じた電流を供給する駆動トランジスタT2と、信号線41と駆動トランジスタT2のゲート電極gとの間に接続された書き込みトランジスタT1と、駆動トランジスタT2のソース電極s及びドレイン電極dの一方の電極に接続された第一の有機EL素子EL1と、駆動トランジスタT2の当該一方の電極に接続されたスイッチングトランジスタT3と、スイッチングトランジスタT3を介して駆動トランジスタT2の当該一方の電極に接続された第二の有機EL素子EL2とを備える。画素回路20は、駆動トランジスタT2の移動度を補正する移動度補正を行う画素回路である。そして、スイッチングトランジスタT3は、信号線41を介して供給された電圧を書き込む書き込み動作の後にオンし、かつ、駆動トランジスタT2の移動度補正を行う動作が開始する前にオフする。なお、第一の有機EL素子EL1は、第一の発光素子の一例であり、第二の有機EL素子EL2は、第二の発光素子の一例である。
【0156】
これにより、駆動トランジスタT2の移動度補正を行う期間は、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2のうち、第一の有機EL素子EL1のみが駆動トランジスタT2と接続されている。そのため、移動度補正を行う期間において、駆動トランジスタT2を流れる電流は、第一の有機EL素子EL1の等価容量Cel1を充電するために使用される。つまり、移動度補正を行う期間において、駆動トランジスタT2と接続される有機EL素子の容量を小さくすることができる。有機EL素子の容量が小さくなると、移動度補正に要する時間が短くなる。よって、本実施の形態に係る画素回路20は、移動度補正を高速化することができる。
【0157】
また、画素回路20が発光する発光期間(書き込む書き込み動作の後の期間)において、スイッチングトランジスタT3がオンすることで、発光時における発光輝度の低下を抑制することができる。
【0158】
また、画素回路20は、第一の発光色の光を発する第一のサブ画素回路と、第一の発光色とは異なる第二の発光色の光を発する第二のサブ画素回路とを有する。そして、スイッチングトランジスタT3及び第二の有機EL素子EL2は、第一のサブ画素回路及び第二のサブ画素回路のうち第一のサブ画素回路のみに設けられる。
【0159】
これにより、所望の発光色の光を発するサブ画素回路のみにスイッチングトランジスタT3が設けられる。画素回路20において、サブ画素回路のそれぞれにスイッチングトランジスタT3が設けられる場合に比べて、回路を構成する素子数が増加することを抑制することができる。
【0160】
また、画素回路20は、さらに、第一の発光色及び第二の発光色とは異なる第三の発光色の光を発する第三のサブ画素回路を有する。スイッチングトランジスタT3及び第二の有機EL素子EL2は、第一のサブ画素回路、第二のサブ画素回路、及び、第三のサブ画素回路のうち第一のサブ画素回路のみに設けられる。なお、第一の発光色は、青色であり、第二の発光色は、赤色であり、第三の発光色は、緑色である。
【0161】
これにより、一般的に膜厚が最も薄い青色光を発する有機EL素子、つまり容量が最も大きい有機EL素子を有するサブ画素回路にのみ、スイッチングトランジスタT3等が設けられる。よって、移動度補正に要する時間が長いサブ画素回路の移動度補正を高速化することができるので、画素回路20の移動度補正を効果的に高速化することができる。さらに、発光時においてスイッチングトランジスタT3をオンすることで有機EL素子の面積が増えるので、発光時における電流密度を下げることができる。一般的に青色を発する有機EL素子は他の色を発する有機EL素子より寿命が短いので、上記のように発光時に電流密度を下げることで、青色を発する有機EL素子の寿命を延ばすことができる。
【0162】
また、第一のサブ画素回路が有する第一の有機EL素子EL1の容量は、第二のサブ画素回路が有する有機EL素子の容量、及び、第三のサブ画素回路が有する有機EL素子の容量の一方と等しい。
【0163】
これにより、第二のサブ画素回路及び第三のサブ画素回路の一方と、第一のサブ画素回路との移動度補正に要する時間を等しくすることができるので、移動度補正を行う時間を容易に決定することができる。
【0164】
また、画素回路20には、駆動トランジスタT2の移動度補正を行う動作の前に第一の有機EL素子EL1に負バイアスを印加する動作が存在する。そして、スイッチングトランジスタT3は、第一の有機EL素子EL1に負バイアスが印加される前にオフする。
【0165】
これにより、第二の有機EL素子EL2に負バイアスは印加されないので、当該第二の有機EL素子EL2のアノード電位が極端に低下することを抑制することができる。非発光期間において、第二の有機EL素子EL2のアノード電位を、当該第二の有機EL素子EL2がぎりぎり発光しない程度の電位(例えば、Vcat+Vthel)に維持することができる。そのため、発光時にスイッチングトランジスタT3をオンすることで、駆動トランジスタT2のソース電位Vsを上昇させることができる。よって、発光期間において、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2を短期間で発光させることができる。また、画素回路20ごとに駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthにバラツキがある場合であっても、当該バラツキによる画素回路20ごとの発光開始タイミングのズレを抑制することができる。
【0166】
また、第二の有機EL素子EL2の面積は、第一の有機EL素子EL1の面積よりも大きい。
【0167】
これにより、発光時にスイッチングトランジスタT3をオンすることで、駆動トランジスタT2のソース電位Vsをより上昇させることができる。よって、発光期間において、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2をより短期間で発光させることができる。また、画素回路20ごとに駆動トランジスタT2の閾値電圧Vthにバラツキがある場合であっても、当該バラツキによる画素回路20ごとの発光開始タイミングのズレをより抑制することができる。
【0168】
また、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2は、トップエミッション構造である。第一の有機EL素子EL1は、光を発する発光部21と、当該第一の有機EL素子EL1のアノード及びTFT層を接続するコンタクト部23とを有する。また、第二の有機EL素子EL2は、光を発する発光部24と、当該第二の有機EL素子EL2のアノード及びTFT層を接続するコンタクト部26とを有する。そして、画素回路20の平面視において、発光部21及び24の間に、コンタクト部23及び26が配置されている。
【0169】
なお、発光部21は、第一の発光部の一例であり、発光部24は、第二の発光部の一例である。また、コンタクト部23は、第一のコンタクト部の一例であり、コンタクト部26は、第二のコンタクト部の一例である。
【0170】
これにより、発光しない部分であるコンタクト部23及び26を発光部21及び24の間に集めることができる。この状態で、例えば、第一電極(アノード)を形成することで、製造効率を向上させることができる。また、発光部21及び24の面積を大きくとることができる。
【0171】
また、第一の発光素子及び第二の発光素子は、有機EL素子である。例えば、第一の有機EL素子EL1は、第一の発光素子の一例であり、第二の有機EL素子EL2は、第二の発光素子の一例である。
【0172】
これにより、画素回路20は、有機EL素子を発光させるための発光電流が流れる画素回路を有する有機EL表示装置1に適用される。上記の画素回路20が、ノイズが発生しやすい発光素子を有する有機EL表示装置1に適用されることで、表示品位及びセンシング能力を効果的に向上させることができる。
【0173】
また、以上のように、本実施の形態に係る有機EL表示装置1は、上記の画素回路20と、信号線41に電圧(映像信号)を印加する水平セレクタ40と、書き込みトランジスタT1を制御するライトスキャナ60と、駆動トランジスタT2のソース電極s又はドレイン電極dに電位を印加する電源スキャナ50と、スイッチングトランジスタT3を制御する切り替えスキャナ70とを備える。なお、有機EL表示装置1は、表示装置の一例である。
【0174】
これにより、画素回路20において駆動トランジスタT2の移動度補正を高速化できるため、十分に移動度補正を行うことができる。したがって、有機EL表示装置1が複数の画素回路20を備える場合に、複数の画素回路20における移動度μのバラツキに起因する画像のバラツキ(つまり、不均一性)を低減できる。
【0175】
(実施の形態の変形例)
まずは、本変形例に係る有機EL表示装置101の概略構成について、
図24及び
図25を参照しながら説明する。
図24は、本変形例に係る有機EL表示装置101の概略構成を示す図である。本変形例に係る有機EL表示装置101が備える画素回路120は、主に、駆動トランジスタとしてPチャネルトランジスタを用いている点において、実施の形態に係る画素回路20と相違する。以降において、本変形例に係る画素回路120及び有機EL表示装置101について、実施の形態に係る画素回路20及び有機EL表示装置1との相違点を中心に説明する。また、実施の形態に係る画素回路20及び有機EL表示装置1と同一又は類似の構成については、画素回路20及び有機EL表示装置1と同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0176】
図24に示すように、本変形例に係る有機EL表示装置101は、有機EL素子を含む複数の画素回路120が行列状に2次元配置されて構成される画素アレイ130と、水平セレクタ140と、電源スキャナ150と、ライトスキャナ60と、切り替えスキャナ170とを備える。水平セレクタ140、電源スキャナ150、ライトスキャナ60、及び、切り替えスキャナ170は、画素アレイ130の周辺に配置される駆動回路部(駆動部)である。
【0177】
画素アレイ130には、m行n列の画素の配列に対して、行方向(画素行の画素回路120の配列方向)に沿って電源線151と走査線61と制御線171とが画素行ごとに配線されている。また、画素アレイ130には、m行n列の画素の配列に対して、列方向(画素列の画素回路120の配列方向)に沿って信号線141が画素列毎に配線されている。複数の電源線151は、電源スキャナ150の対応する画素行の出力端にそれぞれ接続されている。
【0178】
複数の信号線141は、水平セレクタ140の対応する画素列の出力端にそれぞれ接続されている。複数の電源線151は、電源スキャナ150の対応する画素行の出力端にそれぞれ接続されている。複数の走査線61は、ライトスキャナ60の対応する画素行の出力端にそれぞれ接続されている。複数の制御線171は、切り替えスキャナ170の対応する画素行の出力端にそれぞれ接続されている。また、複数の制御線171は、後述するスイッチングトランジスタ(例えば、
図25に示すスイッチングトランジスタT3)のゲート電極にそれぞれ接続されている。
【0179】
水平セレクタ140(信号線駆動回路)は、信号線141に映像信号を印加する駆動回路である。水平セレクタ140は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsigと基準電位Vofsとを選択的に出力する。ここで、基準電位Vofsは、映像信号の信号電圧Vsigの基準となる電圧(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電圧)である。
【0180】
水平セレクタ140から出力される信号電圧Vsig及び基準電位Vofsは、信号線141を介して画素アレイ130の各画素回路120に対して、ライトスキャナ60による走査によって選択された画素行の単位で書き込まれる。すなわち、水平セレクタ140は、信号電圧Vsigを行単位で書き込む線順次書き込みの駆動形態を採っている。
【0181】
電源スキャナ150(電源供給走査回路)は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ回路等によって構成されている。電源スキャナ150は、ライトスキャナ60による線順次走査に同期して、カソード電位Vcatと当該カソード電位Vcatよりも高い第三電位Vddとを切り替えて電源線151に供給する。カソード電位Vcat及び第三電位Vddの切り替え(電源電位の切り替え)によって、画素回路120の発光及び非発光(消光)の制御が行なわれる。
【0182】
切り替えスキャナ170は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ回路等によって構成されている。切り替えスキャナ170は、画素アレイ130の各画素回路120への映像信号の信号電圧の書き込みに際して、制御線171に対して切り替え走査信号を順次供給することによって画素アレイ130の各画素回路120を行単位で順番に走査(線順次走査)する。
【0183】
次に、上記のような有機EL表示装置101が備える画素回路120について、
図25を参照しながら説明する。
図25は、変形例に係る画素回路120を示す回路図である。
【0184】
図25に示すように、画素回路120は、映像信号に対応する輝度で有機EL素子ELを発光させる回路であり、第一の有機EL素子EL1と、第二の有機EL素子EL2と、保持容量C1と、書き込みトランジスタT1と、駆動トランジスタT2aと、スイッチングトランジスタT3とを有する。また、画素回路120は、さらに、保持容量C1に参照電圧を印加するための薄膜トランジスタである参照トランジスタ、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の第二電極の電位を初期化するための薄膜トランジスタである初期化トランジスタなどを有していてもよい。
【0185】
第一の有機EL素子EL1は、実施の形態に係る第一の有機EL素子EL1と同様、第一電極及び第二電極を有する発光素子である。
図25に示す例では、第一電極及び第二電極は、それぞれ第一の有機EL素子EL1のアノード及びカソードである。
【0186】
第二の有機EL素子EL2は、実施の形態に係る第二の有機EL素子EL2と同様、第一電極及び第二電極を有する発光素子である。
図25に示す例では、第一電極及び第二電極は、それぞれ第二の有機EL素子EL2のアノード及びカソードである。
【0187】
第一の有機EL素子EL1の第一電極及び第二の有機EL素子EL2の第一電極は、アノード電源線に接続される。アノード電源線には、第一電位Vcc(アノード電位)が供給される。本変形例では、第一電位Vccは、20V程度である。アノード電源線は、全画素回路120に対して共通に配線されている。
【0188】
第一の有機EL素子EL1の第二電極は、駆動トランジスタT2aのソース電極s及び保持容量C1に接続される。第一の有機EL素子EL1の第二電極は、スイッチングトランジスタT3を介さずに、駆動トランジスタT2aのソース電極sに接続されている。第一の有機EL素子EL1の第二電極は、例えば、駆動トランジスタT2aのソース電極sに直接接続されている。第二の有機EL素子EL2の第二電極は、スイッチングトランジスタT3のソース電極及びドレイン電極の一方に接続されている。第二の有機EL素子EL2の第二電極は、スイッチングトランジスタT3を介して駆動トランジスタT2aのソース電極sに接続されている。
【0189】
保持容量C1は、電圧を保持するための素子であり、駆動トランジスタT2aのゲート電極gとソース電極sとの間に接続される。
【0190】
書き込みトランジスタT1は、保持容量C1に映像信号に対応する電圧を印加するための薄膜トランジスタである。書き込みトランジスタT1は、映像信号が印加される信号線141と、駆動トランジスタT2aのゲート電極gとの間に接続される。より具体的には、書き込みトランジスタT1のドレイン電極及びソース電極の一方に信号線141が接続され、他方に保持容量C1及び駆動トランジスタT2aのゲート電極gが接続される。書き込みトランジスタT1のゲート電極には、走査線61が接続される。書き込みトランジスタT1は、例えば、オン信号に従ってオン状態となり、映像信号に対応する電圧を保持容量C1に保持させる。書き込みトランジスタT1として、例えば、Nチャネル型のTFTを用いることができるが、書き込みトランジスタT1の導電型はこれに限定されない。
【0191】
駆動トランジスタT2aは、第一の有機EL素子EL1の第二電極(カソード)、及び、スイッチングトランジスタT3を介して第二の有機EL素子EL2の第二電極(カソード)と接続され、保持容量C1に保持された電圧に応じた電流を第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2に供給するPチャネル型の薄膜トランジスタである。駆動トランジスタT2aのソース電極sが、第一の有機EL素子EL1の第二電極、及び、スイッチングトランジスタT3を介して第二の有機EL素子EL2の第二電極に接続され、ドレイン電極dが電源線151に接続される。電源線151には、電源スキャナ150からカソード電位Vcat及び第三電位Vddが選択的に供給される。
【0192】
なお、有機EL素子の第二電極の電位及び電源線151から供給される電位の関係によっては、駆動トランジスタT2aにおけるソース電極s及びドレイン電極dの位置関係は
図25に示す関係から変化し得る。
【0193】
次に、本変形例に係る有機EL表示装置101の回路動作について、
図26を用いて説明する。
図26は、本変形例に係る有機EL表示装置101の回路動作を説明するためのタイミングチャートである。
図26は、書き込みトランジスタT1のゲート電極の電位(走査線61の電位であり、高電位(ON)又は低電位(OFF))、電源線151の電位(Vcat又はVdd)、スイッチングトランジスタT3のゲート電極の電位(制御線171の電位であり、高電位(ON)又は低電位(OFF))、信号線141の電位(Vsig又はVofs)のそれぞれの変化を示している。本変形例では、電位Vcat及びVddは、それぞれ、0V程度及び25V程度であり、電位Vofsは、20V程度である。
【0194】
(前表示フレームの発光期間)
図26に示すタイミングチャートにおいて、時刻t42以前は、前の表示フレームにおける発光期間である。この前表示フレームの発光期間では、電源線151の電位がカソード電位Vcatであり、また、書き込みトランジスタT1が非導通状態である。
【0195】
このとき、駆動トランジスタT2aは、飽和領域で動作するように設定されている。これにより、時刻t41より前では、駆動トランジスタT2aのゲートソース間電圧Vgsに応じた駆動電流Ids(ドレインソース間電流)が、アノード電源線から第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の両方に供給される。従って、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の両方が駆動電流の電流値に応じた輝度で発光する。
【0196】
前表示フレームの発光期間において、時刻t41で制御線171の電位が高電位側から低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、スイッチングトランジスタT3は非導通状態となる。これにより、アノード電源線から第二の有機EL素子EL2への電流が流れなくなり、当該第二の有機EL素子EL2は消光する。
【0197】
スイッチングトランジスタT3は、閾値補正を行う動作が開始する前(例えば、時刻t43より前)に非導通状態となる。スイッチングトランジスタT3は、移動度補正を行う動作を開始する前(例えば、時刻t51より前)に非導通状態となるとも言える。なお、スイッチングトランジスタT3は、例えば、非発光期間に亘って非導通状態である。
【0198】
(非発光期間)
時刻t42になると、線順次走査の新しい表示フレーム(現表示フレーム)に入る。そして、電源線151の電位がカソード電位Vcatから第三電位Vddに切り替わる。第三電位Vddは、アノード電位Vccに対して、第一の有機EL素子EL1を消光させることができる程度に十分に高い電位である。
【0199】
(閾値補正準備期間)
次に、時刻t43で走査線61の電位が低電位側から高電位側に遷移する(OFF→ON)ことで、書き込みトランジスタT1が導通状態となる。
【0200】
このとき、水平セレクタ140から信号線141に対して基準電位Vofsが供給された状態にあるため、駆動トランジスタT2aのゲート電位Vgが基準電位Vofsになる。また、駆動トランジスタT2aのソース電位Vsは、基準電位Vofsよりも十分に高い電位、すなわち、第三電位Vddである。
【0201】
このとき、駆動トランジスタT2aのゲートソース間電圧Vgsは、Vofs-Vddとなる。ここで、Vofs-Vddが駆動トランジスタT2aの閾値電圧Vthよりも小さくないと、後述する閾値補正動作を行うことができないため、
Vofs-Vdd<Vth (式8)
となる電位関係に設定する必要がある。
【0202】
このように、駆動トランジスタT2aのゲート電位Vgを基準電位Vofsに固定し、かつ、ソース電位Vsを第三電位Vddに固定して初期化する処理が、後述する閾値補正動作を行う前の準備(閾値補正準備)の処理である。従って、基準電位Vofs及び第三電位Vddが、駆動トランジスタT2aのゲート電位Vg及びソース電位Vsの各初期化電位となる。
【0203】
時刻t44で走査線61の電位が高電位側から低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、閾値補正準備期間が終了する。時刻t43から時刻t44までが閾値補正準備期間である。
【0204】
(閾値補正期間)
次に、時刻t45で、書き込みトランジスタT1が導通している状態で、電源線151の電位が第三電位Vddからカソード電位Vcatに切り替わると、第一の有機EL素子EL1の第二電極が駆動トランジスタT2aのソース電極sとなり、駆動トランジスタT2aに電流が流れる。これにより、駆動トランジスタT2aのゲート電位Vgが基準電位Vofsに保たれた状態で閾値補正動作が開始される。すなわち、ゲート電位Vgから駆動トランジスタT2aの閾値電圧|Vth|を加えた電位(Vofs+|Vth|)に向けて駆動トランジスタT2aのソース電位Vsが下降を開始する。
【0205】
ここでは、便宜上、駆動トランジスタT2aのゲート電位Vgの基準電位Vofs(初期化電位)を基準とし、当該基準電位Vofsから駆動トランジスタT2aの閾値電圧|Vth|を加えた電位に向けてソース電位Vsを変化させる動作(処理)を閾値補正動作(閾値補正処理)と呼んでいる。この閾値補正動作が進むと、やがて、駆動トランジスタT2aのゲートソース間電圧Vgsが駆動トランジスタT2aの閾値電圧Vthに収束する。この閾値電圧Vthに相当する電圧は、保持容量C1に保持される。
【0206】
なお、閾値補正動作を行う期間において、電流が保持容量C1側に流れ、第一の有機EL素子EL1側には流れないようにするために、第一の有機EL素子EL1がカットオフ状態(ハイインピーダンス状態)となるようにアノード電源線の第一電位Vccを設定しておくこととする。
【0207】
次に、時刻t46で、走査線61の電位が低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、書き込みトランジスタT1が非導通状態となる。書き込みトランジスタT1は、時刻t45から第一期間経過した時刻t46に非導通状態となる。このとき、駆動トランジスタT2aのゲート電極gが信号線141から電気的に切り離されることによってフローティング状態になる。しかし、ゲートソース間電圧Vgsが駆動トランジスタT2aの閾値電圧Vthよりも小さいため、電流(ドレインソース間電流Ids)が流れ、駆動トランジスタT2aのゲート、ソース電位はそれぞれ下降する。
【0208】
次に、時刻t47において、信号線141の電位が基準電位Vofsとなっている期間(例えば、基準電位Vofsとなったとき)に書き込みトランジスタT1を導通状態として、再度閾値補正動作を開始する。この動作を繰り返すことで、最終的に駆動トランジスタT2aのゲートソース間電圧Vgsは、閾値電圧Vthという値をとる。
【0209】
次に、時刻t48で、走査線61の電位が低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、書き込みトランジスタT1が非導通状態となる。書き込みトランジスタT1は、時刻t47から第二期間経過した時刻t48に非導通状態となる。
【0210】
また、時刻t49から時刻t50までの期間においても、再度閾値補正動作が行われる。時刻t50は、閾値補正動作が終了する時刻であり、書き込みトランジスタT1が非導通状態となる。時刻t45から時刻t46まで、時刻t47から時刻t48まで、及び、時刻t49から時刻t50までが閾値補正期間である。
【0211】
このように、有機EL表示装置101は、閾値補正動作を書き込み動作及び移動度補正動作とともに行う1H期間に加えて、当該1H期間に先行する複数の水平期間に亘って分割して閾値補正動作を複数回実行する、いわゆる、分割閾値補正動作を行ってもよい。
【0212】
この分割閾値補正動作によれば、高精細化に伴う多画素化によって1水平期間として割り当てられる時間が短くなったとしても、閾値補正期間として複数の水平期間に亘って十分な時間を確保することができる。従って、1水平期間として割り当てられる時間が短くなっても、閾値補正期間として十分な時間を確保できるため、閾値補正動作を確実に実行することができる。なお、閾値補正動作を行う回数は、上記に限定されず、例えば、1回だけであってもよい。
【0213】
(書き込み及び移動度補正期間)
次に、時刻t51で、信号線141の電位が基準電位Vofsから映像信号の信号電圧Vsigに切り替わった状態で、走査線61の電位が高電位側に遷移する(OFF→ON)ことで、書き込みトランジスタT1が導通状態になって映像信号の信号電圧Vsigがサンプリングされ、画素回路120内に書き込まれる。また、信号電圧Vsigは、映像信号の階調に応じた電圧であり、基準電位Vofsより低い。
【0214】
この書き込みトランジスタT1による信号電圧Vsigの書き込みにより、駆動トランジスタT2aのゲート電位Vgが信号電圧Vsigになる。このとき、第一の有機EL素子EL1は、カットオフ状態にある。従って、映像信号の信号電圧Vsigに応じて電源線151から駆動トランジスタT2aに流れる電流(ドレインソース間電流Ids)は、保持容量C1及び第一の有機EL素子EL1の等価容量から流れ出す。これにより、保持容量C1及び等価容量の放電が開始される。なお、時刻t51から時刻t52までの期間では、駆動トランジスタT2aに流れる電流は、第二の有機EL素子EL2の等価容量からは流れ出さない。そのため、駆動トランジスタT2aに流れる電流は、保持容量C1及び第一の有機EL素子EL1の等価容量を放電するのに使われる。換言すると、第二の有機EL素子EL2の等価容量は、駆動トランジスタT2に流れる電流により放電されない。
【0215】
第一の有機EL素子EL1の等価容量が放電されることにより、駆動トランジスタT2aのソース電位Vsが時間の経過とともに下降していく。このとき、駆動トランジスタT2aの閾値電圧Vthの画素回路120ごとのバラツキは閾値補正動作により既にキャンセルされており、駆動トランジスタT2aのドレインソース間電流Idsは、当該駆動トランジスタT2aの移動度μに依存したものとなる。これによって、駆動トランジスタT2aのゲートソース間電圧Vgsは、移動度μを反映して小さくなり一定時間経過後に完全に移動度μを補正するゲートソース間電圧Vgsとなる。なお、駆動トランジスタT2aの移動度μは、当該駆動トランジスタT2aのチャネルを構成する半導体薄膜の移動度である。
【0216】
本変形例では、信号線141に信号電圧Vsigが印加された状態で書き込みトランジスタT1が導通する書き込み期間(つまり時刻t51から時刻t52までの期間)において、第二の有機EL素子EL2が駆動トランジスタT2aと接続されていない。これにより、書き込み及び移動度補正期間において、駆動トランジスタT2aと接続されている有機EL素子の等価容量を下げることができるので、より短時間でソース電位Vsを下降させることができる。つまり、移動度補正を高速化できる。
【0217】
(発光期間)
次に、時刻t52で、走査線61の電位が低電位側に遷移する(ON→OFF)ことで、書き込みトランジスタT1が非導通状態となり、書き込み動作が終了する。これにより、駆動トランジスタT2aのゲート電極gは、信号線141から電気的に切り離されるためにフローティング状態になる。時刻t51から時刻t52までが書き込み及び移動度補正期間である。
【0218】
時刻t33において、制御線171の電位が低電位側から高電位側に遷移する(OFF→ON)ことで、スイッチングトランジスタT3は導通状態となる。スイッチングトランジスタT3は、信号書き込み動作が終了し書き込みトランジスタT1がオフした後にオンする。この動作により、第二の有機EL素子EL2の第二電極がスイッチングトランジスタT3を介して駆動トランジスタT2aに接続され、当該駆動トランジスタT2aのソース電位Vsは第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の等価容量に応じた電位となり、アノード電源線からの電流が流れ、駆動トランジスタT2aのソース電位Vsは電流値に応じて下降し、第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の両方が発光する。
【0219】
なお、スイッチングトランジスタT3は、少なくとも移動度補正が行われている期間オフであればよい。具体的には、スイッチングトランジスタT3は、少なくとも時刻t51から時刻t52までオフであればよい。また、スイッチングトランジスタT3は、例えば、一端オフすると、書き込み動作の後(時刻t52以降)になるまでオフ状態を維持する。
【0220】
ここで、駆動トランジスタT2aのゲート電極gがフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタT2aのゲートソース間に保持容量C1が接続されていることにより、駆動トランジスタT2aのソース電位Vsの変動に連動してゲート電位Vgも変動する。すなわち、駆動トランジスタT2aのソース電位Vs及びゲート電位Vgは、保持容量C1に保持されているゲートソース間電圧Vgsを保持したまま下降する。そして、駆動トランジスタT2aのソース電位Vsは、駆動トランジスタT2aのドレインソース間電流(飽和電流)に応じた第一の有機EL素子EL1及び第二の有機EL素子EL2の発光電圧まで下降する。
【0221】
ここで、画素回路120ごとに駆動トランジスタT2aの閾値電圧Vthが異なっていた場合についても、上記実施の形態と同様、発光開始までの時間差による表示ムラを低減することができる。閾値電圧Vthが相対的に低い駆動トランジスタT2aを有する画素回路120では、時刻t53において、ソース電位Vsが下降量Δv1変化する。また、閾値電圧Vthが相対的に高い駆動トランジスタT2aを有する画素回路120では、時刻t53において、駆動トランジスタT2aのソース電位Vsが下降量Δv2変化する。閾値電圧Vthが相対的に高い場合、時刻t53の時点で駆動トランジスタT2aのソース電位Vsが相対的に低いので、下降量Δv2は下降量Δv1より大きくなる。
【0222】
上記のように、時刻t53でスイッチングトランジスタT3がオンすることで、閾値電圧Vthが相対的に高い駆動トランジスタT2aを有する画素回路120は、閾値電圧Vthが相対的に低い駆動トランジスタT2aを有する画素回路120に比べて、駆動トランジスタT2aのソース電位Vsが大きく下降する。つまり、駆動トランジスタT2aの閾値電圧Vthのバラツキに起因する発光開始時間の差を小さくすることができる。よって、画素回路120ごとの発光タイミングの時間差を小さくすることができるので、閾値電圧Vthのバラツキにより画素回路120ごとに発光タイミングが異なってしまい、それが表示ムラとして認識されてしまうことを抑制することができる。
【0223】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る画素回路及び有機EL表示装置について、実施の形態及び変形例(以降において、実施の形態等とも記載する)に基づいて説明してきたが、本開示に係る画素回路及び有機EL表示装置は、上記実施の形態等に限定されるものではない。実施の形態等における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態等に対して本開示の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本実施の形態に係る画素回路及び有機EL表示装置を内蔵した各種機器も本開示に含まれる。
【0224】
また、本開示の包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、本発明の包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0225】
また、本開示の一態様は、上述した画素回路及び有機EL表示装置を駆動する駆動方法として実現されてもよい。画素回路は、信号線を介して供給された電圧に応じた電流を供給する駆動トランジスタと、信号線と駆動トランジスタのゲート電極との間に接続された書き込みトランジスタと、駆動トランジスタに接続された第一の有機EL素子と、駆動トランジスタに接続されたスイッチングトランジスタと、スイッチングトランジスタを介して駆動トランジスタに接続された第二の有機EL素子とを備える。また、画素回路は、駆動トランジスタの移動度を補正する移動度補正を行う画素回路である。このような画素回路の駆動方法は、信号線を介して供給された電圧を書き込む書き込み動作の後にスイッチングトランジスタをオンするステップと、駆動トランジスタの移動度補正を行う動作が開始する前にスイッチングトランジスタをオフするステップとを含む。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本開示は、例えば、有機EL素子を用いた画素回路に有用である。
【符号の説明】
【0227】
1、101、901 有機EL表示装置(表示装置)
20、120、920 画素回路
21 発光部(第一の発光部)
22、25 第一電極
23 コンタクト部(第一のコンタクト部)
24 発光部(第二の発光部)
26 コンタクト部(第二のコンタクト部)
30、130、930 画素アレイ
40、140 水平セレクタ
41、141 信号線
50、150 電源スキャナ
51、151 電源線
60 ライトスキャナ
61 走査線
70、170 切り替えスキャナ
71、171 制御線
C1 保持容量
Cel、Cel1、Cel2 等価容量
Cf 寄生容量
d ドレイン電極
EL 有機EL素子
EL1 第一の有機EL素子
EL2 第二の有機EL素子
g ゲート電極
Ids ドレインソース間電流
s ソース電極
T1 書き込みトランジスタ
T2、T2a 駆動トランジスタ
T3 スイッチングトランジスタ
Vcat カソード電位
Vcc 第一電位
Vdd 第三電位
Vel、Vs ソース電位
Vg ゲート電位
Vgs ゲートソース間電圧
Vofs 基準電位
Vsig 信号電圧
Vss 第二電位
Vth、Vthel 閾値電圧
μ 移動度