IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 関西産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-蓄熱温風暖房機 図1
  • 特許-蓄熱温風暖房機 図2
  • 特許-蓄熱温風暖房機 図3
  • 特許-蓄熱温風暖房機 図4
  • 特許-蓄熱温風暖房機 図5
  • 特許-蓄熱温風暖房機 図6
  • 特許-蓄熱温風暖房機 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】蓄熱温風暖房機
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/02 20220101AFI20230721BHJP
   F23M 5/00 20060101ALI20230721BHJP
   F24B 5/02 20060101ALI20230721BHJP
   F24H 7/02 20220101ALI20230721BHJP
【FI】
F24H3/02
F23M5/00 Z
F24B5/02 F
F24H7/02 602B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020173257
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064550
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-10-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:令和2年8月26日 販売場所:蘭越町役場
(73)【特許権者】
【識別番号】391055195
【氏名又は名称】関西産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】児島 輝明
(72)【発明者】
【氏名】今谷 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】木下 徹
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-125742(JP,A)
【文献】実公昭48-001564(JP,Y1)
【文献】特開平10-009679(JP,A)
【文献】特開平07-332646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/00 - 3/04
F24H 6/00 - 7/06
F23M 3/00 - 20/00
F24B 1/00 - 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を有する燃焼炉と、
前記燃焼炉へ空気を導入するための送風機と、を備え、
前記燃焼室は、燃料の燃焼が行われる燃焼部と、多数の蓄熱体を収容する蓄熱部と、を有し、前記蓄熱部は下流側において前記燃焼部と連通し、
前記燃焼部と前記蓄熱部との間に区画板が配置され、
前記燃焼炉へ導入された空気の一部は前記蓄熱部を上流側から下流側へ前記多数の蓄熱体の隙間を通って流れる蓄熱温風暖房機。
【請求項2】
前記多数の蓄熱体は前記燃焼炉の底面に敷き詰められ、前記区画板は前記多数の蓄熱体の上に載置されている請求項1に記載の蓄熱温風暖房機。
【請求項3】
前記多数の蓄熱体の各々は球状のセラミック製蓄熱体である請求項1又は2に記載の蓄熱温風暖房機。
【請求項4】
前記区画板はアルミナセラミックス製である請求項1~3の何れかに記載の蓄熱温風暖房機。
【請求項5】
前記燃焼炉は、前記燃焼室を有する炉本体と、前記炉本体内に設けられた仕切り板と、を有し、前記仕切り板には多数の貫通孔が設けられ、
前記燃焼炉へ導入された空気は、前記仕切り板の前記多数の貫通孔を介して前記燃焼室へ供給され、
前記区画板は前記多数の貫通孔からの空気の吹き出し方向に沿って配設されている請求項1~4の何れかに記載の蓄熱温風暖房機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄熱温風暖房機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固形燃料を用いたストーブが提案されている。これは、炉内で固形燃料を燃焼させ、炉表面からの輻射熱により室内空気を暖めるものであり、炉内で発生した燃焼ガスは煙突効果によって煙突を介して屋外へ排出される(例えば、特許文献1参照)。このような輻射式のストーブは、比較的狭い空間を暖房するのに用いられる。
【0003】
一方、より広い空間を有する園芸ハウス等において用いられる暖房設備として、熱交換器を用いた温風暖房機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。温風暖房機は、ファンを用いて燃焼炉に空気を取り込み、燃焼炉で発生した燃焼ガスを煙管及び煙突を介して室外へ排出する一方で、低温のハウス内空気をケーシング内に取り入れ、低温のハウス内空気と燃焼ガスとを煙管により熱交換し、ハウス内へ温風を吹き出して暖房を行うように構成されている。また、温風暖房機の燃料として、木屑や籾殻等を利用したバイオマス固形燃料が見直されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-19470号公報
【文献】特開2018-96565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
温風暖房機の暖房運転時間を長くするためには、燃焼炉を大きくして多くの燃料を燃焼させれば良いが、この場合には温風暖房機全体のサイズが大きくならざるを得ないという問題があった。また、燃焼による熱エネルギーを温水に蓄熱しておき、温水を熱源として利用することで暖房運転時間を長くする方法も考えられるが、このような設備は高価であり、中小容量の熱交換器を備える暖房装置に採用するのは困難であった。
【0006】
本発明は、簡単な構成で暖房運転時間を延長可能な蓄熱温風暖房機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蓄熱温風暖房機は、燃焼室を有する燃焼炉と、前記燃焼炉へ空気を導入するための送風機と、を備え、前記燃焼室は、燃料の燃焼が行われる燃焼部と、多数の蓄熱体を収容する蓄熱部と、を有し、前記蓄熱部は下流側において前記燃焼部と連通し、前記燃焼部と前記蓄熱部との間には区画板が配置され、前記燃焼炉へ導入された空気の一部は前記蓄熱部を上流側から下流側へ前記多数の蓄熱体の隙間を通って流れる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る蓄熱温風機によれば、燃焼室の蓄熱部には多数の蓄熱体が収容されているので、燃料の燃焼により発生した熱エネルギーの一部は蓄熱体に蓄熱され、燃焼により発生する熱エネルギーが減少したり燃焼が完了したりした際には蓄熱体が熱源となって暖房運転を継続するので、暖房運転時間を長くできる。
【0009】
また、燃焼炉へ導入された空気の一部は蓄熱部を上流側から下流側へ多数の蓄熱体の隙間を通って流れるので、蓄熱体に蓄熱された熱エネルギーの放出が促進される。更に、蓄熱体と燃料の間には区画板が介在するので、燃焼後における灰の除去を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る蓄熱温風暖房機を示す概略図。
図2図1の蓄熱温風暖房機において用いられる燃料の一例を示す外観斜視図。
図3図1のIIIーIII線断面図。
図4図1のIVーIV線断面斜視図。
図5】(a)は蓄熱手段を有しない従来の温風暖房機における暖房機能を示す図、(b)は図1の蓄熱温風暖房機の暖房機能を示す図。
図6】本発明の実施形態に係る蓄熱温風暖房機の変形例を示す図。
図7】本発明の実施形態に係る蓄熱温風暖房機の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る蓄熱温風暖房機について説明する。図1を参照して、本実施形態の蓄熱温風暖房機1は、例えば園芸ハウスHに設置されて用いられるものであり、燃焼炉2と、燃焼炉2の下流側に位置する熱交換器3と、熱交換器3の下流側に位置する煙突4と、を備える。本実施形態における燃料炉2は特に回分式燃焼炉であり、燃料Fとして例えば図2に示す様なバイオマス(籾殻等)を原料とする中空円筒状の固形燃料が用いられる。燃焼炉2には空気供給管5を介して園芸ハウスH内の空気(以下、「外気」という)が導入され、燃焼炉2で燃料Fが燃焼されて高温の燃焼ガスが発生する。
【0012】
図1及び図3図4を参照して、燃焼炉2は、燃焼室21を有する炉本体22と、炉本体22内に立設された仕切り板23と、を有する。仕切り板23は燃焼室21よりも上流側に設置されており、炉本体22の後壁26との間に流路27を規定する。また、仕切り板23には多数の貫通孔23aが設けられている。空気供給管5から燃焼炉2へ導入された外気は流路27を通り、仕切り板23の貫通孔23aを介して燃焼室21へ供給される。なお、図4において蓄熱板11と蓄熱体10は省略している。
【0013】
蓄熱温風暖房機1は更に蓄熱手段15を有し、蓄熱手段15は、燃焼室21の底面23に敷き詰められた多数の蓄熱体10と、蓄熱体10の上に載置された区画板としての蓄熱板11と、を有する。燃料Fは蓄熱板11の上に載置され、ここで燃焼される。すなわち、燃焼室21は蓄熱板11により燃料Fの燃焼が行われる燃焼部21aと、蓄熱体10を収容する蓄熱部21bとに区画され、蓄熱板11は仕切り板23の貫通孔23aからの空気の吹き出し方向に沿って配設され、蓄熱部21bは蓄熱板11の上流側と下流側において燃焼部21aと連通している。
【0014】
これにより、仕切り板23の貫通孔23aを介して燃焼室21へ供給された外気の一部は、蓄熱板11に沿って蓄熱部21b内を上流側から下流側へ流れ、燃焼部21aへ流れ込む。
【0015】
蓄熱体10はセラミック製であるのが好ましく、本実施形態では蓄熱体10として球状のアルミナ(アルミナボール)を用いている。よって、蓄熱部21b内を通る空気(外気)は、多数の蓄熱体10間の隙間を通って流れることになる。また、蓄熱板11はアルミナセラミック製(高アルミナ質レンガ)であるのが好ましい。
【0016】
熱交換器3は燃焼ガス管6を介して燃焼炉2に接続されており、燃焼炉2で発生した燃焼ガスは燃焼ガス管6を介して熱交換器3へ供給される。熱交換器3は、ケーシング31と、ケーシング31内に設けられた複数本の煙管32と、ケーシング31の上面開口部に設けられた送風機33と、を備える。各煙管32は燃焼ガス管6に接続され、燃焼ガス管6を介して供給された燃焼ガスは複数の煙管32を介して煙突4へ導かれ、煙突4から園芸ハウスH外(室外)へ排気される。送風機33は、送風ファン(図示せず)の回転により外気をケーシング31内に取り入れると共に、煙管32を通過する燃焼ガスとの間の熱交換により温風を生成し、このようにして生成された温風はダクト34の送風口から園芸ハウスH内に流出し、暖房が行われる。
【0017】
また、空気供給管5と煙突4にはそれぞれ送風機7,8が設けられている。送風機7,8は電動式の軸流送風機であって、送風器7,8の稼働によって外気の燃焼炉2への導入及び煙突4を介した燃焼ガスの排気が促される。温風暖房機1は更に、燃焼ガス管6から分岐して園芸ハウスH外まで延出するベント配管9を備える。
【0018】
このような構成を有する蓄熱温風暖房機1による暖房は次の様にして行われる。送風器7,8によって燃焼炉2へ外気を導入しつつ、燃焼炉2で燃料Fを燃焼させる。これにより燃焼炉2で発生した燃焼ガスは、送風器7,8によって燃焼ガス管6を介して煙管32へ導入され、煙突4を介して園芸ハウスH外へ排気される。そして、送風機33により熱交換器3のケーシング31内に取り入れられた外気は、煙管32を通過する燃焼ガスとの間の熱交換により暖められ、ダクト34を介して園芸ハウスH内に送出される。
【0019】
また、燃料Fの燃焼により発生した熱エネルギーの一部は蓄熱板11を介して蓄熱体10に伝わり、蓄熱板11及び蓄熱体10(蓄熱手段15)に蓄熱される。
【0020】
その後、燃料Fの燃焼が進むと、燃料Fの炭素が燃焼する表面燃焼がおき、徐々に燃焼量が減少する。このように燃焼量が減少して燃焼により得られる熱エネルギーが低下すると、蓄熱手段15(即ち、蓄熱板11及び蓄熱体10)に蓄熱された熱エネルギーが徐々に放熱され、蓄熱手段15が熱源として機能する。そして、燃料Fの燃焼が収まった後においても暫くの間は蓄熱手段15のみを熱源として暖房することができる。なお、送風機7,8の回転数は、燃料Fの燃焼量に応じて制御する。
【0021】
このように、本実施形態に係る蓄熱温風暖房機1によれば、燃料Fの燃焼により発生した熱エネルギーの一部を蓄熱板11と蓄熱体10からなる蓄熱手段15に蓄熱し、燃焼が完了した後においては蓄熱手段15を熱源として用いるので、蓄熱温風暖房機1の暖房運転時間を長くできる。
【0022】
図5にダクト34を通る温風温度の変化を示す。本実施形態における蓄熱温風暖房機1においては、蓄熱手段15を有しない従来のものと比較して、暖房のピーク温度が下がり、暖房効果が一定化していることが確認できる。これは、燃焼の前半においては燃料Fの燃焼により発生した熱エネルギーの一部が蓄熱手段15に蓄熱され、燃焼の後半において燃料Fの燃焼による熱エネルギーが低下すると蓄熱手段15が熱源として機能するためである。
【0023】
更に、本実施形態では外気が蓄熱体10の間を流れる構成であるから、蓄熱体10に蓄熱された熱エネルギーの放出が効果的に行われる。
【0024】
燃料Fは蓄熱板11に載置されるので、燃料Fを熱伝導率の低い燃焼室21の底面23(炉本体22の下壁)に直接置いた場合と比較して、燃焼開始直後における燃料Fの温度上昇が加速され、燃焼開始直後における燃料Fの燃焼を促進させることができる。
【0025】
蓄熱板11は蓄熱体10の上に載置するだけの構成であるから、燃焼炉2全体の構成を簡単にできる。また、燃料Fと蓄熱体10とは蓄熱板11により仕切られているため、燃料Fの燃焼後における灰の除去も容易に行うことができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態に係る蓄熱温風暖房機について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0027】
例えば、上記実施形態においては、蓄熱体10を燃焼室21の底面23に敷き詰め、蓄熱体10の上に蓄熱板11を載置したが、蓄熱板11を炉本体22に固定してもよい。また、上記実施形態においては、蓄熱部21bを燃焼部21aと燃焼室21の底面23との間に設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば図6に示す様に蓄熱部21bを燃焼部21aと燃焼室21の上面24の間に設け、蓄熱体10を蓄熱板11の上に敷き詰める構成とすることもでき、また図7に示すように蓄熱板11を立設させて蓄熱部21bを燃焼部21aと燃焼室21の側面25の間に設け、蓄熱体10を上下方向に積み重ねる構成とすることもできる。
【0028】
また、上記実施形態においては区画板としてアルミナセラミック製の蓄熱板11を用いたが、区画板として蓄熱機能を有しないものを使用することも可能であり、例えば鋼板を区画板として使用することもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 蓄熱温風暖房機
2 燃焼炉
3 熱交換器
4 煙突
6 燃焼ガス管
7,8 送風機
10 蓄熱体
11 蓄熱板 (区画板)
15 蓄熱手段
21 燃焼室
21a 燃焼部
21b 蓄熱部
F 燃料


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7