(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
B63C 1/06 20060101AFI20230721BHJP
B63B 77/00 20200101ALI20230721BHJP
【FI】
B63C1/06
B63B77/00
(21)【出願番号】P 2021178602
(22)【出願日】2021-11-01
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591182433
【氏名又は名称】富士海事工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】重岡 良政
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0189038(US,A1)
【文献】特開平05-262279(JP,A)
【文献】特表平11-509156(JP,A)
【文献】国際公開第2015/126325(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0023737(US,A1)
【文献】米国特許第04916999(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 1/06
B63B 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の岸壁に対して接岸して設置されるとともに海上移動可能であり、バラストの注排水が可能なタンクを備え、構造物を載置した状態で昇降可能な昇降台を有する昇降装置であって、
前記昇降台は、長手方向に延びる船舶を上架及び下架可能とするように、接岸した岸壁から長手方向に延出しており、
前記昇降台には、駆動機構によって昇降台に対して上下動可能で海底に接地可能なスパッドが複数本、挿通して設けられており、
前記複数本のスパッドは、前記長手方向に延びる昇降台の両サイドに、それぞれ所定間隔をおいて設置されることでスパッド列を構成し、
前記昇降台に設置されるスパッド列は、その間に船舶を搬出入して上架及び下架可能となる設置形態となっており、
前記昇降台は、前記バラストの注排水によって各スパッドに沿って上下動可能であり、
前記昇降台と前記各スパッドとの間には、接岸した岸壁の表面に昇降台のレベルを合わせて固定するレベル合わせ装置が設けられて
おり、
前記昇降台には、前記昇降台に対して前記船舶の搬出入を可能にする運搬車が移動可能なレールが設置されていることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記駆動機構とレベル合わせ装置は、スパッド毎に筐体内に配設されており、前記筐体は、前記昇降台に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、駆動モータとスパッドとの間に配設されるラック・ピニオン式の動力伝達機構を備え、
前記レベル合わせ装置は、前記筐体内に配設される油圧シリンダを備え、油圧シリンダの伸縮によって前記筐体をスパッドに対して上下動させ、前記昇降台の高さを調整することを特徴とする請求項2に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶、構造物等の陸揚げ(上架)、及び、これらを進水(下架)させるのに用いられる昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶の保守、修理等の作業を行なう際、海上に浮かんでいる船舶を陸揚げすることが可能な昇降装置(昇降設備)が知られている。昇降装置によって陸揚げされた船舶は、その陸揚げした位置で各種の作業を行なったり、或いは、陸揚げした位置から、さらに牽引して所定の作業設備に移送することが行なわれている。また、作業が終了した船舶は、再び昇降装置に移送され、その位置で海面に降ろして進水させている。
【0003】
上記したような船舶の陸揚げを行なう昇降装置として、例えば、下記の文献1で紹介されているものが知られている。この昇降装置は、岸壁(陸上)から海へ向けて延出する一対の基台設備を建造し、その一対の基台設備の間にプラットフォーム(船舶等を載せる土台)を上下動可能に設置している。前記プラットフォームは、両基台設備に長手方向に沿って一定間隔をおいて設置されたホイストと連結されており、各ホイストを駆動することでプラットフォームは上下動するようになっている。
【0004】
すなわち、各ホイストを駆動してプラットフォームを海中に沈め、その状態で船舶をプラットフォーム上に位置付けした後、各ホイストを駆動してプラットフォームを陸と同一のレベルに持ち上げる。この場合、プラットフォーム上の船舶は、陸と繋がるレール上に設置された台車に載置されており、プラットフォームと陸が同一のレベルになった状態で台車を駆動することで、船舶を陸揚げすることが可能となっている(進水させる場合、逆の手順となる)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://www.shinitoman.com/syncrolift.php
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の昇降装置は、海中に一対の基台設備を建造する必要があるため、建設時間が長期に亘ってしまい、実際に稼働するまで時間が長く、設置コストも高くなってしまう。また、一旦、昇降装置を建造すると、陸揚げ、進水作業は、その設置位置で行なわなければならず、容易に撤去することもできないない。このため、昇降装置の設置個所については、陸上の設備、目的、使用用途等を考慮して、十分な検討が必要となる。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、任意の岸壁に対して設置可能であり、容易かつ低コストで陸地との間で船舶などの構造物の搬出入が行える昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る昇降装置は、海上移動可能であり、バラストの注排水が可能なタンクを備え、構造物を載置した状態で昇降可能な昇降台を有する昇降装置であって、前記昇降台には、駆動機構によって昇降台に対して上下動可能で海底に接地可能なスパッドが複数本、挿通して設けられており、前記昇降台は、前記バラストの注排水によって各スパッドに沿って上下動可能であり、前記昇降台と前記各スパッドとの間には、接岸した岸壁の表面に昇降台のレベルを合わせて固定するレベル合わせ装置が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記した構成の昇降装置は、構造物を載置した状態で昇降させる昇降台が海上移動することができるので、様々な個所に移動して、そこの岸壁に接岸して設置することが可能となる。すなわち、従来のように、海中に一対の基台設備を建造する必要がないため、時間をかけることなく、低コストで船舶等の構造物を搬出入させるためのドックを構築することができる。また、設置されると、昇降台は、バラストの注排水によってスパッドに沿って上下動されると共に、レベル合わせ装置によって接岸した岸壁の表面にレベル合わせされるので、接岸した位置で構造物の上架/下架が行なえるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、任意の岸壁に対して設置可能であり、容易かつ低コストで陸地との間で船舶などの構造物の搬出入が行える昇降装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る昇降装置を岸壁に接岸させて設置した状態の概略図。
【
図5】昇降台に設置されるスパッドの構成を示す図。
【
図7】(a)は昇降台を沈めた状態を示す図、(b)は昇降台の高さを調整した状態を示す図。
【
図8】高さ調整した昇降台のレールに運搬車を搬入した状態を示す概略図。
【
図9】
図8に示す状態から構造物を運搬車上に案内した状態を示す概略図。
【
図10】
図9に示す状態から昇降台を上昇した状態を示す概略図。
【
図11】
図10に示す状態から構造物を陸揚げする状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る昇降装置の一実施形態について説明する。
図1から
図4は、本発明の一実施形態に係る昇降装置を示す図であり、
図1は岸壁に接岸させて設置した状態を示す概略図、
図2は昇降装置の平面図、
図3は昇降装置の側面図、そして、
図4は昇降装置の正面図である。
【0013】
昇降装置1は、船舶、ケーソン、各種の設備等(これらを総称して構造物と称する)が搬出入可能な略矩形形状の昇降台(プラットフォーム)3を備えている。昇降台3は、後述するように、構造物を載置した状態で上下駆動される構造となっており、内部にタンク3Aを備えている。このタンク3A内には、昇降台3に設置されたポンプによって、バラスト(海水)が注排水されるように構成されており、海面200に対して、昇降台3を上昇/下降させることができるよう構成されている。
【0014】
前記昇降台3は、エンジンなどを搭載した自航式で構成されるか、或いは、非自航式でタグボート(曳舟)等によって牽引可能に構成されており、海上移動可能となっている。
図1は、そのような昇降台3を岸壁101に接岸させて、陸上(岸壁の表面)100と同一レベルに設置した状態を示している。この岸壁101は、海面200からの高さHが2.5m程度あり、昇降台3の大きさについては、一例として幅Wが42m、長さ(岸壁からの突出長さ)Lが80mとして構成されている。なお、昇降台3の形状や大きさについては、特に限定されるものではない。
【0015】
前記昇降台3には、駆動機構15によって昇降台3に対して上下動可能で海底に接地可能なスパッド10が複数本、挿通して設けられている。また、昇降台3と各スパッド10との間には、前記タンク3Aに対してバラストを注排水することによって高さ調整された昇降台3の表面3aを、接岸した岸壁101の表面100にレベル合わせして固定することが可能なレベル合わせ装置20が設けられている。
【0016】
各スパッド10は、昇降台3を挿通して、一端が海中に延出しており、他端が表面3aから上方に向けて突出している。スパッド10の海底側の端部には、海底に当て付いて位置決め固定できるように、板状の当接部11が設けられている。本実施形態の各スパッド10は、昇降台3の表面と一体的に固定状態となるスパッド支持装置31の筐体30に挿通されている。
【0017】
前記スパッド10の本数、設置位置については特に限定されることはないが、本実施形態では、長手方向に延びる船舶を上架(陸揚げ)、及び、下架(進水)できるように、昇降台3に対して、スパッド10が長手方向に沿って所定間隔をおいて配設されたスパッド列10A,10Bが昇降台3の両サイドに設置されている。各スパッド列は、所定間隔をおいて4本のスパッド(4台のスパッド支持装置31)を備えており、スパッド列の横幅(スパッド支持装置31同士の幅W)1は、30m程度に設定されている。すなわち、昇降台3上には、合計8基のスパッド支持装置31が設置されており、各スパッド支持装置31の筐体30、及び、昇降台3内を挿通して、スパッド10が上下に延出している。
【0018】
このようなスパッド10の設置形態によれば、略矩形形状に形成された昇降台3上のスパッド列10A,10B間に船舶等の構造物を案内した状態で、昇降台3を安定して昇降させることが可能となる。なお、上記したように、昇降台3の形状や大きさについては限定されないため、それに応じてスパッド(スパッド支持装置31)の設置個数、配置態様については適宜変形することが可能である。
【0019】
前記駆動機構15とレベル合わせ装置20は、スパッド毎に、スパッド支持装置31の筐体30内に配設されており、前記筐体30は、昇降台3に対して固定された状態となっている。この筐体30を有するスパッド支持装置31には、例えば、外階段、ウインチ、更には、各スパッドを駆動する各種のコントローラ(制御装置)、動力源、筐体内を保守、点検できるような扉、フェンス等が設置されていても良い。また、各スパッド支持装置31や筐体30の構成については、その部分に挿通されるスパッド10を上下駆動させる要素が収容されていれば、その構成や大きさ等、限定されることはない。さらに、1つの筐体内に複数のスパッドを配設した構成であっても良い。
【0020】
本実施形態の駆動機構15は、
図5及び
図6に示すように、筐体30内に配設された複数の駆動モータ(油圧モータ)16と、駆動モータ16とスパッド10との間に配設される動力伝達機構17とを備えている。本実施形態の動力伝達機構17の構成については、限定されることはないが、本実施形態では、スパッド10の外面に長手方向に沿って形成されたラック17aと、このラック17aに長手方向に沿って一定間隔で噛合するピニオン17bとを備えたラック・ピニオン方式で構成されている。このため、ピニオン17bが駆動モータ16によって回転駆動されることで、スパッド10は、下降したり(
図6(a)参照)、上昇する(
図6(b)参照)ように駆動される。
【0021】
前記レベル合わせ装置20は、
図5に示すように、例えば、筐体30内に配設され、伸縮駆動される油圧シリンダ21を備えたジャッキアップ装置として構成することが可能である。前記油圧シリンダ21は、一端が筐体30の上壁30Aに固定されており、他端が筐体30の側壁30Bに対して上下方向に摺動可能に配設された底壁30Cに固定されている。前記スパッド10は、上壁30A及び底壁30Cを挿通しており、前記駆動モータ16が駆動されることによって上下方向に駆動され、各スパッド10が海底に当接した状態で、昇降台3の高さ調節を行なうことができる。
【0022】
本実施形態における昇降台3の高さ調節は、最初に昇降台3の表面3aを、接岸した岸壁101の表面100に近付けた状態(タンク3A内のバラストを注排水することでな行なわれる)とし、この状態でスパッド10と底壁30Cとの間の挿通部分(
図5の符号Pで示す部分)を、溶着等、各種の固定手段で固定して行なうようにしている。そして、この状態で、レベル合わせ装置20を駆動する(具体的には、油圧シリンダ21を伸縮駆動する)ことで、昇降台3を上下に変位させ、高さを調整するようにしている。なお、昇降台3の高さの調整については、タンク3Aにバラストを注排水することによっても行うことが可能である。このような高さ調整が行えることで、潮が満ち引きして昇降台3の表面3aと岸壁101の表面100のレベルが変化しても容易に調整することができる。
【0023】
前記昇降台3の表面3aには、船舶などの構造物300の昇降台3に対する搬出入を容易に行える運搬車400が移動可能となるレール7を設置しておくことが好ましい。昇降台3の表面3aの高さについては、上記したように、タンク3Aに対するバラストの注排水、及び、レベル合わせ装置20によって、接岸した岸壁101の表面100に正確に一致させることができるので、レール7の高さを、岸壁の表面100に設置されているレール107にレベル合わせして接続し、この状態で、構造物を運搬車400に載置して牽引することで、昇降台3に対して搬出入することが容易に行えるようになる。
【0024】
次に、
図7から
図11を参照して、上記した昇降装置1の設置、及び、使用態様について説明する。
本実施形態の昇降装置1は、海上移動可能な移動式の作業用ドックとしての機能を備えており、
図1に示したように、海上スペースを活用して、船舶、土木用のケーソン等、各種の構造物を海上から陸上へ、又は、陸上から海上へ運び出すのに用いられる。上記したように、昇降台3は、海上を移動することが可能であるため、陸上の各種の設備に合わせて、様々な個所に設置することができ、特別な設置工事を必要とせず、所定の位置に接岸して直ちに稼働させることが可能である。
【0025】
最初、昇降装置1は、例えば、タグボートの牽引によって海上を移動し、所望の岸壁に接岸される。海上の移動中、前記スパッド10は、移動の邪魔にならないように、前記駆動機構15によって上昇した状態に保持されている。この状態で昇降台3が所望の岸壁に位置付けされると、各スパッド10は、各筐体内に設置されている駆動機構15及び動力伝達機構17によって、当接部11が海底に当て付くまで下降するように駆動される。このとき、海底は必ずしも平坦ではないことから、その下降量についてはスパッド毎に異なる。
【0026】
各スパッド10が海底に当接した状態で、ポンプを駆動して昇降台内のタンク3A内のバラスト水量を調整し、昇降台3の表面3aの高さを岸壁101の表面100に近付ける(双方のレール7,107が一致するように極力近付ける)。そして、この状態で、各筐体30内において、スパッド10と底壁30Cとの間の挿通部分(
図5の符号Pで示す部分)を、溶着等、所定の固定手段で固定する。
【0027】
前記固定手段によって、スパッド10と底壁30Cとの間が固定状態になると、昇降台3の高さについては、レベル合わせ装置20の油圧シリンダ21の伸縮駆動によって微調整して固定することが可能となる。すなわち、
図7(a)に示す状態において、油圧シリンダ21を矢印方向に向けて伸ばすと、油圧シリンダ21の上端側の上壁30Aを押し上げることとなり、これにより、筐体30は、スパッド10に沿って上方に押し上げられる(
図7(b)参照)。筐体30は、上記したように、スパッド支持装置31と共に昇降台3に固定されているので、上壁30Aが押し上げられると昇降台30そのものが上昇する。そして、この位置で、各筐体の油圧シリンダ21を固定することで、昇降台30を適切な高さ位置で固定することが可能となる。
【0028】
このような構成によれば、潮の満ち引き等によって昇降台3の高さ位置が変化したり、昇降台3の高さを変える場合、レベル合わせ装置20の油圧シリンダ21を伸縮駆動することで、昇降台3の高さ位置を適切な位置に上下動して固定しておくことが可能となる。なお、レベル合わせ装置20で高さ調整する以外にも、タンク3A内のバラスト量を調整することでも高さ調整することが可能である。
【0029】
次に、上記したように設置された昇降装置1を利用して各種の作業をする例について説明する。
【0030】
(作業例1;船舶を陸揚げする)
船舶を陸揚げする場合、上記したように設置した昇降装置1の昇降台3を、
図8に示す状態から
図9に示す状態に沈める。この場合、昇降台3上には、予め、運搬車400が設置された状態となっている。
【0031】
昇降台3の沈下は、
図7に示したように、レベル合わせ装置20の油圧シリンダ21を圧縮する、及び/又は、昇降台3のタンク3Aにバラストを注入することで行なうことが可能である。そして、
図9で示すように、昇降台3が沈下した状態で、船舶(構造物300)を昇降台上に運び込んで運搬車400上に載置する。
【0032】
船舶が昇降台3の運搬車400上に載置された後、
図10に示すように、昇降台3を上昇させる。この昇降台3の上昇は、昇降台上のレール7と、陸上(岸壁101の表面100)のレール107が一致するまで行われる。昇降台3の上昇は、上記したように、ジャッキアップ装置(油圧シリンダ21)を伸長する、及び/又は、バラストの排出によって行なうことができる。
【0033】
そして、昇降台上のレール7と、陸上(岸壁101の表面100)のレール107が一致した状態で、船舶を載置している運搬車400を陸上の牽引車500やウインチなどで牽引することにより、船舶を陸揚げすることができ、所定の場所に搬送することができる(
図11参照)。
【0034】
この場合、昇降台3は、左右の8箇所で複数のスパッド10によって高さが維持されているため、船舶を移送する際、昇降台3が傾く等、変位することが無く、安定して陸揚げを行なうことができる。なお
、陸揚げして保守、点検した船舶を進水させる場合、前記昇降台3は、逆の手順によって沈下駆動され、最終的に、沈んだ状態の昇降台3からそのまま海上に進行する。
【0035】
(作業例2;ケーソンなどの構造物を積載し、昇降装置で目的地まで運搬する)
従来、ケーソンのような構造物(以下、ケーソンを例示して説明する)を所定の位置まで運搬する場合、陸上で製造したケーソンをクレーンによって運搬船に搭載し、運搬船で所定の位置まで搬送し、クレーン船などで荷下ろし作業が行われている。
【0036】
上記した昇降装置1を利用する場合、最初に昇降台3の高さを調整して、昇降台上のレール7と、陸上(岸壁101の表面100)のレール107を一致させ、この状態で、運搬車400に載ったケーソン300を昇降台3上に案内する(
図10参照)。そして、昇降台3が海面に浮いた状態で移動可能となるようにバラストの注排水によって昇降台3の浮力を調整すると共に、上記したスパッド10と底壁30Cとの間の固定状態を解除し、各スパッド10を上昇させる(スパッド10を上昇させておくのは、昇降台3が海上を移動する際に邪魔にならないようにするためである)。
【0037】
ケーソンが載置された昇降台3(昇降装置1)をタグボートなどによって牽引し、目的地まで運搬する。そして、目的地に到達した後、昇降台3のタンクにバラストを注入して昇降台3を沈め、ケーソンを浮かせ、その後、所定の工法に従って搬送したケーソンの設置作業を行なう。
このように、本実施形態の昇降装置によれば、構造物を持ち上げ移送するクレーン(クレーン船)設備を利用することなく、ケーソンのような構造物を、所定の海上位置に運搬し、荷下ろしすることが可能となる。
【0038】
(作業例3;構造物を運搬船に載せて目的地まで搬送する)
例えば、洋上に設置される風力発電機のような構造物は、岸壁に運搬船を横付けし、クレーン等を用いて運搬船に構造物を移送する作業が行われている。
【0039】
上記した昇降装置1を利用する場合、作業例1と同様、最初に昇降台3を沈下させ、この状態で、自航する運搬船を昇降台3上に位置付けする。なお、この工程では、昇降台3のレール7に運搬車400を載置しておく必要はない。
【0040】
この状態で、昇降台3を上昇させ、昇降台上に載置した運搬船の表面を、岸壁101の表面100と一致させる。この際、運搬船の表面にレールが設けられている場合、そのレールと岸壁101の表面100に設けられたレール107と一致するように昇降台3を上昇させる。そして、この状態で、陸上で運搬車400に構造物を載置し、そのまま運搬車400を運搬船に搬入する。
運搬船に構造物を搬入した後は、運搬船を昇降台上で浮遊状態になるまでバラスト注水によって昇降台3を沈下させる。運搬船が浮遊状態になった後は、運搬船を自走又はタグボートによる牽引によって昇降台3から移動させ、運搬船によって構造物を目的地まで運搬する。
【0041】
このように、本実施形態の昇降装置によれば、構造物を持ち上げ移送するクレーン(クレーン船)設備を利用しなくても、海上に浮く運搬船の高さを調整して、構造物を運搬船に搬入することが可能となる。
【0042】
以上のように、本発明に係る昇降装置によれば、任意の岸壁に対して設置可能であり、容易かつ低コストで陸地との間で各種の構造物の搬出入を行なうことができる。また、1つの昇降装置1で、上記した作業例1から作業例3のような作業を行なうことができるため、コストを低減して、設置作業や運搬作業を含め作業時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態の構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。上記した駆動機構15、動力伝達機構17、レベル合わせ装置20は一例であり、同様な機能が発揮できれば、適宜、変形することが可能である。例えば、前記スパッド10を上下駆動させる駆動機構15は、ウインチの巻き取り、繰り出しによって構成することが可能である。また、スパッド10を海底に固定した後、スパッドと筐体の底壁とを固定する固定方法については、機械的な連結構造で行なうようにしても良い。さらに、上記した作業例については例示であり、それ以外の作業に用いても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 昇降装置
3 昇降台
10 スパッド
15 駆動機構
20 レベル合わせ装置
21 油圧シリンダ
30 筐体
31 スパッド支持装置
300 構造物
400 運搬車