(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】圧電振動電気変換器及び圧電振動電気変換方法
(51)【国際特許分類】
G01H 11/08 20060101AFI20230721BHJP
H04R 17/02 20060101ALI20230721BHJP
H02N 2/18 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G01H11/08 C
H04R17/02
H02N2/18
(21)【出願番号】P 2022074097
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】510280752
【氏名又は名称】株式会社セラテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100110157
【氏名又は名称】山田 基司
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】山本 克也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正昭
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-211748(JP,A)
【文献】実開昭59-60525(JP,U)
【文献】特開2001-74766(JP,A)
【文献】特開2014-178162(JP,A)
【文献】特開2002-214249(JP,A)
【文献】特開2002-82126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を備えており、対象物の振動を電気信号に変換する圧電振動電気変換器であって、
略中央部に前記圧電素子が貼付された振動板と、
前記対象物に設置され且つ前記振動板の両端部やその近傍或いは周囲を支持する、弾性体の第1振動板支持部と、
前記対象物に設置され且つ前記振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部と、
前記振動板に取り付けられた重りとを有し、
前記対象物の振動による前記重りの慣性力で前記振動板にひずみを発生させて前記圧電素子が自体に発生する該ひずみを電気信号に変換するようになっていることを特徴とする圧電振動電気変換器。
【請求項2】
前記重りは、前記振動板の両端に渡る一体物で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動電気変換器。
【請求項3】
前記重りは、前記振動板の両端部あるいは周縁部にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動電気変換器。
【請求項4】
圧電素子を備えており、対象物の振動を電気信号に変換する圧電振動電気変換器であって、
略中央部に前記圧電素子が貼付された振動板と、
前記対象物に設置される磁性体により形成された基盤と、
前記基盤に設置され且つ前記振動板の両端部やその近傍或いは周囲を支持する、弾性体の第1振動板支持部と、
前記基盤に設置され且つ前記振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部と、
前記振動板の上面に取り付けられた重りとを有し、
前記対象物の振動による重りの慣性力で前記振動板にひずみを発生させて前記圧電素子が自体に発生する該ひずみを電気信号に変換するようになっており、
前記基盤、前記第1振動板支持部、前記第2振動板支持部、前記振動板及び前記重りは、その外周囲を中空箱状の磁性体で形成されたケースに覆われており、
前記重り、前記振動板及び前記ケースのうちの少なくともいずれかに、前記振動板の振動を増幅する磁石が取り付けられていることを特徴とする圧電振動電気変換器。
【請求項5】
圧電素子を用いて、対象物の振動を電気信号に変換する圧電振動電気変換方法であって、
平板の略中央部に前記圧電素子を貼付して振動板を形成し、
前記振動板の両端部やその近傍或いは周囲を支持する、弾性体の第1振動板支持部と、前記振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部とを介して、前記対象物に前記振動板を取り付け、
さらに、前記振動板に重りを取り付け、
前記対象物の振動による重りの慣性力で前記振動板にひずみを発生させて前記圧電素子に自体に発生する該ひずみを電気信号に変換させることを特徴とする圧電振動電気変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動電気変換器及び圧電振動電気変換方法に関し、例えば、圧電素子を用いて、対象物の振動を電気信号に変換する圧電振動電気変換器及び圧電振動電気変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、構造物や装置等の対象物の振動測定に、様々なタイプの振動センサが用いられている。例えば、この振動センサには、ひずみ式或いは圧電式のものがある。また、近年では、振動センサとして、電気回路で構成されたMEMSセンサも実用化されている。
【0003】
また、特許文献1には、フィルム状圧電素子と補強材とが積層された積層体を備えた圧電型振動センサが提案されている。この圧電型振動センサは、上記の積層体の一方の端部が片持ち支持されているとともに、積層体の他方の端部に錘が負荷されており、振動により上記積層体に曲げ応力が作用することで圧電素子から電気信号を発生させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術は、それぞれ、以下の課題を有している。
具体的には、「ひずみ式或いは圧電式の振動センサ」の多くは、振動を電気信号に変換するためのアンプを必要としている。また、この振動センサは、検知範囲における直線性、周波数応答の平たん性等を備える特性を持たせるために様々な工夫が設けられており、その結果、装置が高額になるという課題も有している。
【0006】
また、MEMSセンサは、動作をするために電源供給が必要であるという課題を有している。そのため、MEMSセンサは、有線での電源供給ができない設置環境で用いられる場合には、蓄電池や発電機等を設けなくてはならない。
また、特許文献1に記載された圧電型振動センサは、フィルム状圧電素子と補強材とが積層された積層体の一方の端部が片持ち支持されているとともに、積層体の他方の端部に錘が負荷された構成を採用している。このような、一方が片持ち支持されている積層体の他方の端部に錘を付けた構成は、その構造上、振動による耐久性が低く、製品寿命が短いという課題を有している。
なお、上記の圧電型振動センサが、例えば、非常に多数の箇所に設置する必要があり、且つ長期間にわたって振動を検知するための用途に用いられた場合、交換頻度が多くなり、その運用に多大な労力とコストがかかる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、アンプと電源が不要であり且つ安価で耐久性が高い圧電振動電気変換器及び圧電振動電気変換方法を提供することにある。
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、圧電素子を備えており、対象物の振動を電気信号に変換する圧電振動電気変換器であって、略中央部に前記圧電素子が貼付された振動板と、前記対象物に設置され且つ前記振動板の両端部やその近傍或いは周囲を支持する、弾性体の第1振動板支持部と、前記対象物に設置され且つ前記振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部と、前記振動板に取り付けられた重りとを有し、前記対象物の振動による前記重りの慣性力で前記振動板にひずみを発生させて前記圧電素子が自体に発生する該ひずみを電気信号に変換するようになっていることを特徴とする。
【0009】
このように本発明の上記構成によれば、重りの慣性力により、圧電素子を貼付した振動板を効率的に大きく変形させ、大きなひずみを発生させることができるため、アンプを設けなくても、対象物の振動に対応する電気信号を取得することができる。その結果、本発明の上記構成によれば、アンプを設けなくても振動を検知することができる圧電振動電気変換器が提供される。また、本発明の圧電振動電気変換器は、圧電素子を用いて対象物の振動を電気信号に変換するものであるため、上述したMEMSセンサと違い電源が必要ない。
すなわち、本発明の上記構成によれば、アンプや電源が不要となる、安価な圧電振動電気変換器が提供できる。
【0010】
また、本発明では、略中央部に圧電素子が貼付された振動板は、その両端部やその近傍或いは周囲を支持する、弾性体の第1振動板支持部と、その略中央部を支持する第2振動板支持部とを介して、対象物に設置されている。この構成により、振動板が圧電素子の貼付位置を中心に曲がるようになる。
また、振動板の両端部やその近傍或いは周囲を支持する「弾性体の第1振動板支持部」を設けているのは以下の理由による。
具体的には、第1振動板支持部を設けずに、振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部だけを設けることも可能である。
しかし、振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部だけの構成にした場合、振動板の支持が安定しないという問題が生じる。
また、振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部だけの構成にした場合、振動板の振動特性の山谷が大きくなる虞がある。特に、振動板の材料が金属のように減衰特性が小さいものの場合、Q値(品質係数、振動増幅係数)が大きくなり、振動に対する出力電圧の周波数応答特性が悪化(山谷が大きく、平たんでない)する。この周波数応答特性を改善するために、振動板単体に減衰特性を付与することも考えられるが、振動板の材料自体を変更するなど一般的には容易ではない。
そのため、本発明では、振動板の両端部やその近傍或いは周囲を支持する第1振動板支持部を設けることで、振動板の支持を安定させている。また、本発明では、第1振動板支持部を設けることで、第1振動板支持部に弾性特性や減衰を付与することを可能にし、振動板や圧電素子の構造を変更することなく、周波数応答特性の調整をできるようにしている。
【0011】
また、本発明では、振動板が第1振動板支持部及び第2振動板支持部により支持されているため、上述した特許文献1のような振動板(フィルム状圧電素子と補強材とが積層された積層体)が片持ち支持されているものと比べて、耐久性が高い構成になっている。そのため、例えば、本発明の圧電振動電気変換器が、「振動を発生する駆動部のある装置(機器)」、「鉄道車両や自動車等の移動体」、或いは「建物や道路等の構造物」等の振動測定等の用途に用いられた場合でも、交換頻度を減少させることができ、これらの管理者にかかる労力とコストを抑えることができる。
【0012】
また、前記重りは、前記振動板の両端に渡る一体物で形成されていても良い。
このように、重りを振動板の両端に渡す構成にすることによって、重りの慣性力が振動板に対して、振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部を中心に対称に作用する効果が得られる。また、重りが振動板の両端に渡る一体物で形成されているため、部品点数を減らすことができる。
【0013】
また、前記重りは、前記振動板の両端部あるいは周縁部にそれぞれ取り付けられていても良い。
上記の構成によれば、重りにより振動板の振動を効果的に増幅させることができる。
【0014】
また、本発明は、圧電素子を備えており、対象物の振動を電気信号に変換する圧電振動電気変換器であって、略中央部に前記圧電素子が貼付された振動板と、前記対象物に設置される磁性体により形成された基盤と、前記基盤に設置され且つ前記振動板の両端部やその近傍或いは周囲を支持する、弾性体の第1振動板支持部と、前記基盤に設置され且つ前記振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部と、前記振動板の上面に取り付けられた重りとを有し、前記対象物の振動による重りの慣性力で前記振動板にひずみを発生させて前記圧電素子が自体に発生する該ひずみを電気信号に変換するようになっており、前記基盤、前記第1振動板支持部、前記第2振動板支持部、前記振動板及び前記重りは、その外周囲を中空箱状の磁性体で形成されたケースに覆われており、前記重り、前記振動板及び前記ケースのうちの少なくともいずれかに、前記振動板の振動を増幅する磁石が取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の上記構成によれば、アンプと電源が不要であり且つ安価で耐久性が高い圧電振動電気変換器を提供することができる。
さらに、本発明の上記構成では、対象物に設置される磁性体により形成された基盤が設けられている。また、「基盤、第1振動板支持部、第2振動板支持部、振動板及び重り」は、その外周囲を中空箱状の磁性体で形成されたケースに覆われている。また、重り、振動板及びケースのうちの少なくともいずれかに振動板の振動を増幅する磁石が取り付けられている。
この構成によれば、磁力による吸引力の影響により振動板の振動を増幅させ、効率的に振動を電気信号に変換することができる。
【0016】
また、本発明は、圧電素子を用いて、対象物の振動を電気信号に変換する圧電振動電気変換方法であって、平板の略中央部に前記圧電素子を貼付して振動板を形成し、前記振動板の両端部やその近傍或いは周囲を支持する、弾性体の第1振動板支持部と、前記振動板の略中央部を支持する第2振動板支持部とを介して、前記対象物に前記振動板を取り付け、さらに、前記振動板に重りを取り付け、前記対象物の振動による重りの慣性力で前記振動板にひずみを発生させて前記圧電素子に自体に発生する該ひずみを電気信号に変換させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アンプと電源が不要であり且つ安価で耐久性が高い圧電振動電気変換器、及び圧電振動電気変換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態の圧電振動電気変換器の構成を説明するための模式図であり、圧電振動電気変換器を側面から見た模式図を示している。
【
図2】本発明の第1実施形態の圧電振動電気変換器を下面から見た模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の振動板を構成する平板及び圧電素子と振動板の上面に取り付けられた重り支持部とを説明するための模式図である。
【
図4】本発明の第2実施形態の圧電振動電気変換器の構成を説明するための模式図であり、圧電振動電気変換器を側面から見た模式図を示している。
【
図5】本発明の第3実施形態の圧電振動電気変換器の構成を説明するための模式図であり、圧電振動電気変換器を側面から見た模式図を示している。
【
図6】本発明の第1実施形態の圧電振動電気変換器を振動台に取り付けて加振した際の圧電素子の出力電圧の周波数応答関数の大きさと、重りを載せていない振動板を両端支持材のみで振動台に取り付けて加振した際の圧電素子の出力電圧の周波数応答関数の大きさとを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態(第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態)の圧電振動電気変換器W1、W2、W3について図面を用いて説明する。
本実施形態の圧電振動電気変換器W1、W2、W3は、圧電素子12を用いて、「振動を発生する駆動部のある装置(機器)」、「鉄道車両や自動車等の移動体」、或いは「建物や道路等の構造物」等の対象物1の振動を電気信号に変換する装置である。
この圧電振動電気変換器W1、W2、W3は、例えば、装置、移動体、或いは構造物の振動の測定に利用されたり、道路や線路等に敷設されて、自動車や鉄道が通行する際の振動で発電する発電システムに利用されたりする。
【0020】
《第1実施形態》
先ず、第1実施形態の圧電振動電気変換器について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
ここで、
図1は、第1実施形態の圧電振動電気変換器の構成を説明するための模式図であり、圧電振動電気変換器を側面から見た模式図を示している。
図2は、第1実施形態の圧電振動電気変換器を下面から見た模式図である。
図3は、第1実施形態の振動板を構成する平板及び圧電素子と振動板の上面に取り付けられた重り支持部とを説明するための模式図である。
【0021】
第1実施形態の圧電振動電気変換器W1は、圧電素子12が貼付された振動板10の両端部に、1つの重り50を渡して載せる構成を採用したものでる。
具体的には、
図1に示すように、第1実施形態の圧電振動電気変換器W1は、平板11の略中央部に圧電素子12が貼付された振動板10と、装置や移動体或いは構造物等の対象物1に設置され且つ振動板10の両端部を支持する第1振動板支持部(両端支持材)20、20と、対象物1に設置され且つ振動板10の略中央部を支持する第2振動板支持部(中央支持材)30と、振動板10に取り付けられた重り50とを有している。
なお、第1振動板支持部20、20及び第2振動板支持部30は、その下端部が対象物1に設置され固定されている。また、第1振動板支持部20、20は、ゴム等の弾性体で形成されている。
【0022】
また、第1実施形態では、振動板10の上面(表面)の両端部に重り支持部40、40が取り付けられている。そして、重り50は、重り支持部(重り支持材)40、40の上に載置され、重り支持部40、40を介して振動板10に取り付けられている。
また、圧電素子12には、「ひずみから変換した電気信号」を出力するための出力線70が取り付けられている。
以下、圧電振動電気変換器W1の構成を順番に説明する。
【0023】
振動板10の両端部を支持する第1振動板支持部20、20は、例えば、
図1、2に示すように、細長の直方体状(四角柱状)に形成されており、その上面部が振動板10の裏面の両端部(図示する例では左右・両端部)に取り付けられている。また、第1振動板支持部20、20は、その下端部が対象物1に取り付けられて固定できるようになっている。
【0024】
なお、図示する例では、第1振動板支持部20、20が細長の直方体状(四角柱状)に形成されているが、この形状に限定されるものではない。第1振動板支持部20、20は、下端部を対象物1に固定でき、且つ振動板10の両端部等を支持することができる形状のものであれば良い。
また、図示する例では、第1振動板支持部20、20は、振動板10の両端部に取り付けられているが、両端部以外の位置に取り付けられていても良い。例えば、第1振動板支持部20、20は、振動板10の両端部の近傍、或いは周囲に取り付けられ、振動板1の両端部の近傍、或いは周囲を支持するように構成されていても良い。
また、振動板10が、後述する
図5に示すように、第1振動板支持部20、20よりオーバハングした状態で、第1振動板支持部20、20に取り付けられていても良い。
【0025】
また、第2振動板支持部30は、例えば、
図1、2に示すように、略円柱状に形成されており、その上面部が振動板10の裏面の略中央部に取り付けられている。また、第2振動板支持部30は、その下端部が対象物1に取り付けられて固定できるようになっている。この第2振動板支持30は、例えば、金属等の固体の材料で形成されている。
なお、図示する例では、第2振動板支持部30が円柱状に形成されているが、特にこれに限定されるものではない。第2振動板支持部30は、下端部を対象物1に固定でき、且つ振動板10の略中央部を支持することができる形状であればよい。
【0026】
また、振動板10を構成する圧電素子12は、圧電セラミック(例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛))等で形成されている。
また、振動板10を構成する平板11は、金属や合成樹脂等の材質で形成されている。
そして、圧電素子12は、
図3に示すように、平板11の上面の略中央部に貼付されて強固に接合されている。
【0027】
なお、
図3に示す例では、圧電素子12が、平面視・円形のシート状に形成されているが、圧電素子12の形状は適宜設計されるものである。例えば、圧電素子12が、平面視・多角形のシート状に形成されていても良い。
また、平板11は、例えば、金属製や合成樹脂製のものが用いられるが、圧電素子12を強固に接合できるものであれば、金属や合成樹脂以外の材料で形成されたものでも良い。
また、第1実施形態の振動板10は、平板11に圧電素子12を貼付した構成になっているが、圧電素子12を貼付する対象が、必ずしも平板形状である必要は無い。
【0028】
また、重り支持部40、40は、例えば、
図1、3に示すように、細長の直方体状(四角柱状)に形成されており、振動板10の上面の両端部(図示する例では左右両端部)に取り付けられている。この重り支持部40、40は、例えば、弾性体或いは固体の材料でされている。
【0029】
また、重り50は、振動板10の両端に渡る一体物で形成されており、重り支持部40、40の上に、振動板10の両端部を渡すように配置された状態で取り付けられている。すなわち、第1実施形態では、圧電素子12が貼付された振動板10の両端部に、1つの重り50を渡して載せる構成になっている。
【0030】
上記のように構成された圧電振動電気変換器W1は、対象物1の振動による重り50の慣性力で振動板10にひずみを発生させて圧電素子12が自体(自身)に発生するひずみを電気信号に変換するようになっている。また、圧電素子12が変換した電気信号は、出力線70を介して、外部の装置(図示せず)に出力される。
【0031】
このように、第1実施形態の圧電振動電気変換器W1の構成によれば、重り50の慣性力により、圧電素子12を貼付した振動板10を効率的に大きく変形させ、より大きなひずみを発生させることができる。そのため、第1実施形態の構成によれば、アンプを設けなくても、対象物1の振動に対応する電気信号を取得することができる。また、第1実施形態の圧電振動電気変換器W1は、平板11に貼付した圧電素子12を用いて、対象物1の振動を電気信号に変換するものであるため、上述したMEMSセンサと違い電源が必要ない。
したがって、第1実施形態によれば、アンプや電源を設けなくても振動を測定したり、或いは、発電システムに利用したりすることができる圧電振動電気変換器W1が提供される。
【0032】
また、上述した第1実施形態では、略中央部に圧電素子12が貼付された振動板10が、その両端部を支持する、弾性体の第1振動板支持部20、20と、その略中央部を支持する第2振動板支持部30とを介して、対象物1に設置されている。この構成によれば、振動板10が圧電素子12の貼付位置を中心に曲がるようになる。
【0033】
また、第1実施形態において、振動板10の両端部が第1振動板支持部20、20で支持されるようにしているのは以下の理由による。
具体的には、第1振動板支持部20、20を設けずに、振動板10の略中央部を支持する第2振動板支持部30だけを設ける構成にすることもできる。
しかし、振動板10の略中央部を支持する第2振動板支持部40だけの構成にした場合、振動板10の支持が安定しないという問題が生じる。
さらに、このようにした場合、振動板10の振動特性の山谷が大きくなる虞がある。特に振動板10の材料が金属のように減衰特性が小さいものの場合、Q値(品質係数、振動増幅係数)が大きくなり、振動に対する出力電圧の周波数応答特性が悪化(山谷が大きく、平たんでない)する。この周波数応答特性を改善するために、振動板10・単体に減衰特性を付与することも考えられるが、振動板10の材料自体を変更するなど一般的には容易ではない。
【0034】
そのため、第1実施形態では、振動板10の両端部が第1振動板支持部20、20で支持される構成にすることで、振動板10の支持を安定させている。
また、第1実施形態では、振動板10の両端部が第1振動板支持部20、20で支持される構成にすることで、第1振動板支持部20、20に弾性特性や減衰を付与することを可能にしている。その結果、第1実施形態によれば、振動板10や圧電素子12の構造を変更することなく、周波数応答特性の調整ができるようになる。
【0035】
また、第1実施形態では、振動板10が第1振動板支持部20、20及び第2振動板支持部30により支持されているため、上述した特許文献1のような振動板(フィルム状圧電素子と補強材とが積層された積層体)が片持ち支持されている構造のものと比べて、耐久性が高い構造になっている。すなわち、第1実施形態の圧電振動電気変換器W1は、上述した特許文献1のものと比べて、故障しにくい構造になっている。
そのため、例えば、圧電振動電気変換器W1が、装置、移動体、或いは構造物の振動測定等の用途に用いられた場合でも、交換頻度を減少させることができ、これらの管理者にかかる労力とコストを抑えることができる。
また、例えば、圧電振動電気変換器W1が、道路や線路等に敷設されて、自動車や鉄道車両が通行する際の振動で発電する発電システムのような、多数の箇所に設置する必要があり、且つ長期間にわたって設置される用途に用いられた場合でも管理者の労力とコストを軽減することができる。
さらに、第1実施形態の圧電振動電気変換器W1は、電源供給が不要であるため、電源設備を設けたり、或いは、電池交換したりする必要もない。
【0036】
また、第1実施形態では、重り50は、振動板10の上面の両端部に取り付けられた重り支持部40、40を介して振動板10に取り付けられている。また、重り50は、振動板10の両端に渡る形状の一体物で形成されている。
このように、重り50が、振動板10の両端に渡って配置される構成になっていることにより、重り50の慣性力が振動板10に中央支持部30を中心に対称に作用する効果が得られる。また、重り50が振動板10の両端に渡る形状の一体物で形成されているため、部品点数を減らすことができる。
【0037】
このように、第1実施形態によれば、アンプと電源が不要であり且つ安価で耐久性が高い圧電振動電気変換器W1、及び圧電振動電気変換方法を提供することができる。
【0038】
《第2実施形態》
次に、第2実施形態の圧電振動電気変換器W2について、
図4を参照しながら説明する。
ここで、
図4は、第2実施形態の圧電振動電気変換器の構成を説明するための模式図であり、圧電振動電気変換器を側面から見た模式図を示している。
なお、第2実施形態の圧電振動電気変換器W2は、第1実施形態の圧電振動電気変換器W1の構成の一部を変形したものである。そのため、第2実施形態の圧電振動電気変換器W2の構成のうち、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付けて説明を省略或いは簡略化する。
【0039】
第2実施形態の圧電振動電気変換器W2は、圧電素子12が貼付された振動板10の両端部に、それぞれ、重り52、52を載せる構成(振動板10に2つの重り52、52を載せる構成)を採用したものでる。
具体的には、
図4に示すように、第2実施形態の圧電振動電気変換器W2は、平板11の略中央部に圧電素子12が貼付された振動板10と、対象物1に設置され且つ振動板10の両端部を支持する第1振動板支持部20、20と、対象物1に設置され且つ振動板10の略中央部を支持する第2振動板支持部30と、振動板10の両端部に取り付けられた重り52、52とを有している。
【0040】
第2実施形態の圧電振動電気変換器W2は、振動板10の上面に重り支持部40を設けずに、振動板10の上面・両端部(
図4に示す例では、左右の両端部)に、それぞれ、直接、重り52、52が取り付けられている。
この重り52、52は、例えば、細長の直方体状(四角柱状)に形成されており、振動板10の上面の両端部(図示する例では左右両端部)に取り付けられている。また、重り52、52は、第1実施形態の重り50とことなり、個別の物体で形成されている。
【0041】
第2実施形態の圧電振動電気変換器W2の構成においても、第1実施形態と同様、対象物1の振動による重り52、52の慣性力で振動板10にひずみを発生させて圧電素子12が自体に発生するひずみを電気信号に変換し、その変換した電気信号が出力線70を介して、外部の装置(図示せず)に出力される。
【0042】
このように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様、アンプと電源が不要であり且つ安価で耐久性が高い圧電振動電気変換器W2、及び圧電振動電気変換方法を提供することができる。
【0043】
《第3実施形態》
次に、第3実施形態の圧電振動電気変換器W3について、
図5を参照しながら説明する。
ここで、
図5は、第3実施形態の圧電振動電気変換器の構成を説明するための模式図であり、圧電振動電気変換器を側面から見た模式図を示している。
なお、第3実施形態の圧電振動電気変換器W3は、第1実施形態の圧電振動電気変換器W1の構成の一部を変形したものである。そのため、第3実施形態の圧電振動電気変換器W3の構成のうち、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付けて説明を省略或いは簡略化する。
【0044】
第3実施形態の圧電振動電気変換器W3は、第1実施形態の構成に対して、さらに、重り50及び振動板10に磁石100、102、102を付けて振動板10の振動を増幅させる構成を採用したものである。
具体的には、
図5に示すように、第3実施形態の圧電振動電気変換器W3は、平板11の略中央部に圧電素子12が貼付された振動板10と、対象物1に設置され固定される磁性体により形成された基盤80と、基盤80の上面に設置され且つ振動板10の両端部を支持する弾性体の第1振動板支持部20、20と、基盤80の上面に設置され且つ振動板10の略中央部を支持する固体の第2振動板支持部30と、振動板10の上面に取り付けられた重り支持部40、40と、重り支持部40、40の上に取り付けられた重り50とを有している。
なお、第3実施形態では、振動板10は、第1振動板支持部20、20よりオーバハングした状態で、第1振動板支持部20、20に取り付けられている。具体的には、振動板10は、その裏面の両端部よりも所定寸法だけ内側の位置に、第1振動板支持部20、20の上端部が取り付けられている。また、第1振動板支持部20、20、及び第2振動板支持部30は、基盤80の上面に固定されている。
【0045】
さらに、第3実施形態では、「基盤80、第1振動板支持部20、20、第2振動板支持部30、振動板10、重り支持部40、40、及び重り50」は、その外周囲を中空箱状の磁性体で形成されたケース82に覆われている。
【0046】
また、第3実施形態の圧電振動電気変換器W3では、振動板10の下面・両端部に、磁石102、102が取り付けられている。
また、第3実施形態の圧電振動電気変換器W3では、重り50の上面に、磁石100が取り付けられている。
【0047】
この構成によれば、「振動板10の取り付けた磁石102と、磁性体の基盤80との間で生じる磁力による吸引力」と、「重り50に取り付けた磁石100と、磁性体のケース82との間に生じる磁力による吸引力」の影響により、振動板10の振動を増幅させることができる。
具体的には、振動板10と基盤80との間に磁力による吸引力が作用すると、振動板10と基盤80の間の距離の2乗に応じて吸引力が大きくなる。同様に、重り50と、ケース82との間に磁力による吸引力が作用すると、重り50とケース82の間の距離の2乗に応じて吸引力が大きくなる。そのため、振動板10がより大きく振動するようになる。
したがって、第3実施形態の圧電振動電気変換器W3の構成によれば、第1実施形態のものと比べて、効率的に振動を電気信号に変換することができる。
【0048】
また、
図5に示す第3実施形態では、振動板10の下面・両端部と、重り50の上面とに磁石(102、102、100)が取り付けられているが、特にこれに限定されるものではない。磁石の取り付け位置は、適宜設計されるものであり、例えば、磁石がケース82に取り付けられていても良い。
なお、第3実施形態では、磁石は、振動板10、重り50、及びケース82のうちの少なくともいずれかに取り付けられていれば良い。
また、第3実施形態では、振動板10の上面に、重り支持部40、40を介して、一体物の磁石50が取り付けられているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、上述した第2実施形態のように、振動板10の両端部に、それぞれ、別体の重り52、52が取り付けられ、その重り52、52の上に、それぞれ、磁石(図示せず)が取り付けられた構成であっても良い。
【0049】
《性能試験》
次に、本発明の圧電振動電気変換器に対して実施した性能試験について説明する。
【0050】
この性能試験では、実施例(重りあり)として、本発明の第1実施形態の圧電振動電気変換器W1を振動台に取り付け、振動台を加振させた際の、振動台の振動加速度に対する圧電素子12の出力電圧を測定し、振動台の振動加速度に対する圧電素子12の出力電圧の周波数応答関数を求めた。
また、実施例に対する比較例として、振動台に対して、重りを載せていない振動板10を弾性体の両端振動板支持材のみで取り付け、振動台を加振させた際の、振動台の振動加速度に対する圧電素子12の出力電圧を測定し、振動台の振動加速度に対する圧電素子12の出力電圧の周波数応答関数を求めた。この比較例では、重りなしの状態の振動板10の両端部が、弾性体の両端振動板支持材を介して振動台に取り付けられている。
実施例及び比較例のそれぞれの、振動動台の振動加速度に対する圧電素子12の出力電圧の周波数応答関数の大きさを示したグラフを
図6に示す。
【0051】
図示するように、本試験では、周波数が100Hz以下において、実施例(重りありの状態の圧電振動電気変換器W1)の方が、重りなし状態の比較例と比べて、振動レベルが概ね「30~40dB」大きいことが確認された。
上記の試験結果をみると、圧電素子12からは圧電効果により電圧が発生するため、例えば、発生した電圧をデータ収録装置等にそのまま記録することができることがわかる。すなわち、本発明の構成によれば、専用のアンプを使用せずに振動を測定したり、振動を検知したりすることができる安価な圧電振動電気変換器W1、W2、W3が提供できる。なお、本発明の圧電振動電気変換器W1、W2、W3は、MEMSのように電源供給が必要でなないため、電源が不要な装置が提供できる。
【0052】
以上、説明したように、本発明の実施形態(第1、第2、第3実施形態)によれば、アンプと電源が不要であり且つ安価で耐久性が高い圧電振動電気変換器W1、W2、W3を提供することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【0054】
例えば、上述した実施形態(第1、第2、第3実施形態)の振動板10は、平板11の上面に圧電素子12を貼付した構成になっているが、この構成に限定されるものではない。振動板10は、平板11の下面に圧電素子12を貼付した構成になっていても良い。
【0055】
また、本発明の圧電振動電気変換器W1、W2、W3は、振動板10や重り50を水平方向だけでなく、垂直方向や斜め方向に取り付けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の実施形態(第1、第2、第3実施形態)の圧電振動電気変換器W1、W2、W3は、装置、移動体、或いは構造物の振動の測定に用いることができる。
そして、圧電振動電気変換器W1、W2、W3は、上述した通り、アンプと電源が不要であり且つ安価で耐久性が高いものになっている。その結果、本発明の圧電振動電気変換器W1、W2、W3が、例えば、装置、移動体、或いは構造物の振動に用いた場合、その費用を大幅に抑えることができる。
【0057】
また、本実施形態(第1、第2、第3実施形態)の圧電振動電気変換器W1、W2、W3は、振動発電に用いることができる。圧電素子を用いた発電として、既に床発電等が開発されているが、これまでのものは人等が振動板を直接踏む場合に発電する装置が多かった。
しかし、本実施形態(第1、第2、第3実施形態)の圧電振動電気変換器W1、W2、W3の構成によれば、近傍で発生する振動により振動板10を振動させて発電することができる。その結果、本発明の実施形態(第1、第2、第3実施形態)の圧電振動電気変換器W1、W2、W3を振動発電に用いた場合、より多くの発電量が得られることが期待される。
例えば、本実施形態(第1、第2、第3実施形態)の圧電振動電気変換器W1、W2、W3、は、人が踏むところだけでなく、道路や線路等に敷設されることで、自動車や鉄道が通行する際の振動を利用した振動発電にも適用される。
【符号の説明】
【0058】
1…対象物
W1、W2、W3…圧電振動電気変換器
10…振動板
11…平板
12…圧電素子
20…第1振動板支持部
30…第2振動板支持部
40…重り支持部
50…重り
52…重り
70…出力線
80…基盤
82…ケース
100、102…磁石
【要約】
【課題】アンプと電源が不要であり且つ安価で耐久性が高い圧電振動電気変換器を提供する。
【解決手段】対象物1の振動を電気信号に変換する圧電振動電気変換器W1であって、平板11の略中央部に圧電素子12が貼付された振動板10と、対象物1に設置され且つ振動板10の両端部やその近傍或いは周囲を支持する、弾性体の第1振動板支持部20、20と、対象物1に設置され且つ振動板10の略中央部を支持する第2振動板支持部30と、振動板10に取り付けられた重り50とを有し、対象物1の振動による重り50の慣性力で振動板1にひずみを発生させて圧電素子12がひずみを電気信号に変換するようになっている。
【選択図】
図1