IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アジラの特許一覧

<>
  • 特許-異常行動検出システム 図1
  • 特許-異常行動検出システム 図2
  • 特許-異常行動検出システム 図3
  • 特許-異常行動検出システム 図4
  • 特許-異常行動検出システム 図5
  • 特許-異常行動検出システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】異常行動検出システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/00 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023000817
(22)【出願日】2023-01-06
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2022072523
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518126409
【氏名又は名称】株式会社アジラ
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝也
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 駿
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T7/00-7/90
G06V10/00-20/90
30/418
40/16
40/20
G08B13/00-15/02
19/00-31/00
H04N5/222-5/257
7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得する第1の取得部と、
前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部によって検出された多数の前記行動に基づき、前記サンプル行動体の体の向きも考慮して、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定する決定部と、
を有する学習装置と、
前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得する第2の取得部と、
前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第2の検出部と、
一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動及び体の向きが前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行う判定部と、
を有する判定装置と、
を備えたことを特徴とする異常行動検出システム。
【請求項2】
前記決定部は、前記第1の検出部によって検出された前記サンプル行動体の一連の複数の行動を前記通常の行動として決定し、
前記判定部は、前記第2の検出部によって検出された前記第1の対象行動体の一連の複数の行動が前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行うことを特徴とする請求項1に記載の異常行動検出システム。
【請求項3】
前記撮影手段により撮影された第2の対象映像を取得する第3の取得部と、
前記第2の対象映像に映った第2の対象行動体の所定の行動又は軌跡を前記第2の対象行動体の位置と紐づけて検出する第3の検出部と、
前記決定部を制御する制御部と、
を有する制御装置を更に備え、
前記第1の検出部は、前記サンプル行動体の行動又は軌跡を前記サンプル行動体の位置と紐づけて検出し、
前記決定部は、前記第1の検出部によって検出された多数の前記行動又は軌跡に基づき、前記所定範囲における一又は複数の通常の行動又は軌跡を決定し、
前記第2の検出部は、前記第1の対象行動体の行動又は軌跡を前記第1の対象行動体の位置と紐づけて検出し、
前記判定部は、一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動又は軌跡が前記一の位置において決定された通常の行動又は軌跡と異なる場合に、その旨を示す出力を行い、
前記制御部は、前記第3の検出部により検出された所定の行動又は軌跡の検出位置が所定以上変化した場合に、前記通常の行動又は軌跡の決定を改めて行うよう前記決定部を制御することを特徴とする請求項1に記載の異常行動検出システム。
【請求項4】
コンピュータに実行させるプログラムであって、
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得するステップと、
前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出するステップと、
前記検出された多数の前記行動に基づき、前記サンプル行動体の体の向きも考慮して、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定するステップと、
前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得するステップと、
前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出するステップと、
一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動及び体の向きが前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行うステップと、
を備えたことを特徴とする異常行動検出プログラム。
【請求項5】
コンピュータで使用される方法であって、
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得するステップと、
前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出するステップと、
前記検出された多数の前記行動に基づき、前記サンプル行動体の体の向きも考慮して、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定するステップと、
前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得するステップと、
前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出するステップと、
一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動及び体の向きが前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行うステップとを備えたことを特徴とする異常行動検出方法。
【請求項6】
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得する第1の取得部と、前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第1の検出部と、前記第1の検出部によって検出された多数の前記行動に基づき、前記サンプル行動体の体の向きも考慮して、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定する決定部と、を有する学習装置との間で通信可能な判定装置であって、
前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得する第2の取得部と、
前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第2の検出部と、
一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動及び体の向きが前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行う判定部と、
を備えたことを特徴とする判定装置。
【請求項7】
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得する第1の取得部と、前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第1の検出部と、前記第1の検出部によって検出された多数の前記行動に基づき、前記サンプル行動体の体の向きも考慮して、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定する決定部と、を有する学習装置との間で通信可能なコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得するステップと、
前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出するステップと、
一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動及び体の向きが前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行うステップと、
を備えたことを特徴とする判定プログラム。
【請求項8】
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得する第1の取得部と、前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第1の検出部と、前記第1の検出部によって検出された多数の前記行動に基づき、前記サンプル行動体の体の向きも考慮して、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定する決定部と、を有する学習装置との間で通信可能なコンピュータで使用される方法であって、
前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得するステップと、
前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出するステップと、
一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動及び体の向きが前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行うステップと、
を備えたことを特徴とする判定方法。
【請求項9】
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得する第1の取得部と、
前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部によって検出された多数の前記行動に基づき、前記サンプル行動体の体の向きも考慮して、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定する決定部と、
を備え、
前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得する第2の取得部と、前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第2の検出部と、一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動及び体の向きが前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行う判定部と、を有する判定装置との間で通信可能であることを特徴とする学習装置。
【請求項10】
コンピュータに実行させるプログラムであって、
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得するステップと、
前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出するステップと、
前記検出された多数の前記行動に基づき、前記サンプル行動体の体の向きも考慮して、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定するステップと、
を備え、
前記コンピュータは、前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得する第2の取得部と、前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第2の検出部と、一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動及び体の向きが前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行う判定部と、を有する判定装置との間で通信可能であることを特徴とする学習プログラム。
【請求項11】
コンピュータで使用される方法であって、
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得するステップと、
前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出するステップと、
前記検出された多数の前記行動に基づき、前記サンプル行動体の体の向きも考慮して、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定するステップと、
を備え、
前記コンピュータは、前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得する第2の取得部と、前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置及び体の向きと紐づけて検出する第2の検出部と、一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動及び体の向きが前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行う判定部と、を有する判定装置との間で通信可能であることを特徴とする学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像に映った行動体の異常行動を検出するための異常行動検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮影された時系列画像に基づき所定範囲における通常の行動を決定し、当該所定範囲において通常の行動と異なる行動を検出した場合に、当該通常の行動と異なる行動を行った行動体を抽出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6647489号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、撮影範囲が広いような場合には、多種類の行動が行われることが予想される。この場合、どこまでを通常の行動と決定すべきかの判断(閾値の設定)が難しく、結果として、異常行動の検出漏れや、問題のない行動まで異常行動として検出してしまうことが生じ得る。
【0005】
そこで、本発明は、映像に映った行動体の異常行動を高精度に検出することが可能な異常行動検出システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影されたサンプル映像を取得する第1の取得部と、前記サンプル映像に映ったサンプル行動体の行動を前記サンプル行動体の位置と紐づけて検出する第1の検出部と、前記第1の検出部によって検出された多数の前記行動に基づき、前記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定する決定部と、を有する学習装置と、前記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された第1の対象映像を取得する第2の取得部と、前記第1の対象映像に映った第1の対象行動体の行動を前記第1の対象行動体の位置と紐づけて検出する第2の検出部と、一の位置において検出された前記第1の対象行動体の行動が前記一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行う判定部と、を有する判定装置と、を備えたことを特徴とする異常行動検出システム。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、上記異常行動検出システムに対応する異常行動検出プログラム、異常行動検出方法、判定装置、判定プログラム、判定方法、学習装置、学習プログラム、及び、学習方法を提供している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の異常行動検出システムによれば、映像に映った行動体の異常行動を高精度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態による異常行動検出システムの使用状態の説明図
図2】本発明の第1の実施の形態による異常行動検出システムのブロック図
図3】本発明第1の実施の形態による通常行動・異常行動の説明図
図4】本発明の第1の実施の形態による異常行動検出システムのフローチャート
図5】本発明の第2の実施の形態による異常行動検出システムのブロック図
図6】本発明の第2の実施の形態による異常行動検出システムのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施の形態による異常行動検出システム1について、図1図4を参照して説明する。
【0011】
異常行動検出システム1は、図1に示すように、撮影手段Xによって撮影された映像Y(図1では、映像を構成するフレーム)に映った行動体Zの異常行動を検出するためのものである。本実施の形態では、行動体Zとして人間を採用し、理解容易のため、行動体Zを骨格だけで簡易的に表示する。
【0012】
異常行動検出システム1は、図2に示すように、学習装置2と、判定装置3と、を備えており、学習装置2によって学習されたデータを参照して、判定装置3が異常行動を検出する。
【0013】
学習装置2は、第1の記憶部21と、第1の取得部22と、第1の検出部23と、決定部24と、を備えている。
【0014】
第1の記憶部21には、“関節識別基準”と、“行動体識別基準”と、“行動識別基準”が記憶されている。
【0015】
“関節識別基準”は、行動体Zの複数の関節A(図1では、首、右肘、左肘、腰、右膝、左膝)を識別するためのものであり、関節Aごとに、それぞれを識別するための形状、方向、サイズ等を示したものである。
【0016】
“行動体識別基準”は、行動体Zの様々なバリエーション(“歩行”、“直立”等)の “基本姿勢“、”各関節Aの可動域“、一の行動体Zにおける”各関節A間の距離“等を示したものである。
【0017】
“行動識別基準”は、行動体Zが所定の行動を行った場合の各関節の動きを示したものであり、本実施の形態では、様々な種類の行動についての“行動識別基準”が記憶されている。
【0018】
第1の取得部22は、所定範囲を撮影するように設置された撮影手段Xにより撮影されたサンプル映像Y1を取得する。本実施の形態では、撮影手段Xによる撮影範囲の全てを所定範囲として設定した例を説明する。
【0019】
第1の検出部23は、サンプル映像Y1に映ったサンプル行動体Z1の行動をサンプル行動体Z1の位置と紐づけて検出する。
【0020】
サンプル行動体Z1の検出に当たっては、まず、サンプル映像Y1に映ったサンプル行動体Z1を特定する。
【0021】
本実施の形態では、第1の記憶部21に記憶された“関節識別基準”に該当する複数の関節Aを検出した上で、“行動体識別基準”を参照して、一のサンプル行動体Z1に含まれる複数の関節Aを特定する。図1の例では、関節A1-A6が一のサンプル行動体Z1に含まれる関節Aであると特定され、1つの行動体Zが存在するものと特定される。
【0022】
サンプル行動体Z1を特定した後に、サンプル行動体Z1の行動の検出を行う。本実施の形態では、“行動識別基準”に該当する各関節の動きを検出した場合に「該当する行動を行った」と検出される。
【0023】
サンプル行動体Z1の位置としては、実空間内における位置を用いることが考えられる。
【0024】
詳細には、画面上の平面座標、奥行方向の座標、サンプル行動体Z1のサイズ等を考慮して、実空間内における位置を推定することが考えられる。奥行方向の座標としては、公知の深度推定等を用いることが考えられる。
【0025】
なお、本実施の形態における“位置”としては、一の座標のみならず、ある程度の範囲を“位置”として用いても良い。例えば、画面を複数に分割し、一の分割画面内に第1の対象行動体Z2が存在する場合に、第1の対象行動体Z2の行動を当該一の分割画面の位置と紐づけて検出することが考えられる。
【0026】
また、本実施の形態では、第1の検出部23は、サンプル行動体Z1の行動を更にサンプル行動体Z1の体の向きと紐づけて検出する。
【0027】
サンプル行動体Z1の体の向きの特定方法としては、例えば、複数の関節Aの位置や方向を考慮したり、顔や髪の毛を検出することで特定することが考えられる。
【0028】
決定部24は、第1の検出部23によって検出された多数の行動に基づき、所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の“通常の行動”を決定する。
【0029】
例えば、図1に示すように、サンプル映像Y1に自動販売機が映っている場合、自動販売機の前の位置においては、“(コイン投入口に)コインを入れる”、“(商品選択ボタンを)押す”、“(商品取り出し口から商品を)取り出す”、“(返却レバーを)操作する”、“(コイン返却口からコインを)取り出す”等の行動が“通常の行動”として決定されることが考えられる。また、上記したような所定時間内に行われる一連の複数の行動を“通常の行動”として決定しても良い。
【0030】
また、例えば、“(商品取り出し口から商品を)取り出す”という行動に当たっては、“しゃがむ”という行動を伴うことが考えられるので、自動販売機の前では、“しゃがむ”という行動は“通常の行動”と決定されることが考えられる(図3(a))。一方で、他の場所では、“しゃがむ”という行動は“通常の行動”と決定されないことが考えられる(図3(b))。
【0031】
また、本実施の形態では、決定部24は、行動体の向きも考慮して“通常の行動”を決定する。
【0032】
例えば、自動販売機の前では、“自動販売機の方を向いてしゃがむ”という行動は“通常の行動”として決定され(図3(a))、“自動販売機とは反対側を向いてしゃがむ”という行動は、“通常の行動”と決定されないことが考えられる(図3(c))。
【0033】
なお、“通常の行動”は、様々な基準で決定することが可能であるが、例えば、検出された全行動の中で所定(閾値)以上の割合を有する行動を“通常の行動”として決定することが考えられる。
【0034】
決定部24により決定された“通常の行動”は、第1の記憶部21に記憶される。
【0035】
判定装置3は、第2の記憶部31と、第2の取得部32と、第2の検出部33と、判定部34と、を備えている。
【0036】
第2の記憶部31には、第1の記憶部21と同様に、“関節識別基準”と、“行動体識別基準”と、“行動識別基準”と、が記憶されている。
【0037】
第2の取得部32は、上記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段Xにより撮影された第1の対象映像Y2を取得する。本実施の形態では、第1の対象映像Y2は、撮影手段Xにより、第1の取得部22と略同一の画角・倍率で撮影されるものとする。
【0038】
第2の検出部33は、第1の対象映像Y2に映った第1の対象行動体Z2の行動を第1の対象行動体Z2の位置と紐づけて検出する。本実施の形態では、第1の検出部23と同様の方法で検出を行うものとする。
【0039】
判定部34は、一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の行動が当該一の位置において決定された“通常の行動”と異なる場合に、“その旨を示す出力”を行う。すなわち、当該一の位置において適当ではない“異常行動”が検出された際に、アラート等を行うこととなる。
【0040】
ここで、検出された行動が、一の位置では適当なものであるが、他の位置では適当ではないものであることも考えられ、このような場合、所定範囲内の全ての位置において一律の“通常の行動”に基づき異常行動を判定してしまうと、異常行動の検出漏れや、問題のない行動まで異常行動として検出してしまうことが生じ得る。
【0041】
しかしながら、本実施の形態では、上記したように、学習により、所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の“通常の行動”を決定しておき、一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の行動が当該一の位置において決定された“通常の行動”と異なる場合に、“その旨を示す出力”を行う。
【0042】
従って、例えば、自動販売機の前では、“(商品取り出し口から商品を)取り出す”という行動に伴う“しゃがむ”という行動に対しては、“その旨を示す出力”は行われず(図3(a))、他の場所では、“その旨を示す出力”が行われることとなる(図3(b))。
【0043】
このような構成により、第1の対象映像Y2に映った第1の対象行動体Z2の異常行動を高精度に検出することが可能となる。また、異常行動の検出に当たり、第1の対象行動体Z2のみを検出すれば良く、自動販売機等の他の物体を検出する必要や第1の対象行動体Z2を他の物体と関連付ける必要がないので、コンピュータの負荷が増加することが防止される。
【0044】
なお、“その旨を示す出力”としては、単にアラートを出力するだけでも良いし、“通常の行動”と異なる行動を行った第1の対象行動体Z2を特定して出力しても良い。また、“その旨を示す出力”は、登録された情報端末(警備会社の情報端末、個人の携帯情報端末等)に対して自動的に送信することが好ましい。
【0045】
更に、本実施の形態では、サンプル行動体Z1の体の向きも考慮して“通常の行動”を決定しておき、一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の行動及び体の向きが当該一の位置において決定された“通常の行動”と異なる場合に、“その旨を示す出力”を行う。
【0046】
例えば、自動販売機の前では、自動販売機の方を向いて“しゃがむ”という行動に対しては、“その旨を示す出力”は行われず(図3(a))、自動販売機とは反対側を向いて“しゃがむ”という行動に対しては、“その旨を示す出力”が行われることとなる(図3(c))。自動販売機とは反対側を向いて“しゃがむ”という行動は、滞留等の異常行動であることが考えられるからである。
【0047】
このような構成により、第1の対象映像Y2に映った第1の対象行動体Z2の異常行動をより高精度に検出することが可能となる。
【0048】
また、本実施の形態では、第1の検出部23によって検出されたサンプル行動体Z1の一連の複数の行動を“通常の行動”として決定しておき、一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の一連の複数の行動が当該一の位置において決定された“通常の行動(通常の一連の複数の行動)”と異なる場合にも、“その旨を示す出力”を行う。
【0049】
例えば、自動販売機の前で、“(コイン投入口に)コインを入れる”→“(商品選択ボタンを)押す”→“(商品取り出し口から商品を)取り出す”→“(返却レバーを)操作する”→“(コイン返却口からコインを)取り出す”のいずれかを行わない、または、いずれかを繰り返し行うような場合には、“その旨を示す出力”が行われることとなる。
【0050】
このような構成によれば、第1の対象映像Y2に映った第1の対象行動体Z2の異常行動をより高精度に検出することが可能となる。
【0051】
続いて、図4のフローチャートを用いて、異常行動検出システム1による異常行動の検出について説明する。
【0052】
異常行動の検出は、“学習段階”と“検出段階”の2段階で行われる。
【0053】
(1)学習段階
【0054】
学習段階では、まず、所定範囲を撮影したサンプル映像Y1が取得されると(S1)、サンプル映像Y1に映ったサンプル行動体Z1の行動が、サンプル行動体Z1の位置と紐づけて検出される(S2)。この際、サンプル行動体Z1の体の向きを更に検出し、サンプル行動体Z1の行動と紐づけることが好ましい。
【0055】
なお、このS1及びS2は、異なる複数のサンプル映像Y1に対して行われ、多数の行動が検出されることが好ましい。
【0056】
続いて、S2で検出された多数の行動に基づき、所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の“通常の行動”が決定される(S3)。この際、サンプル行動体Z1の体の向きも考慮して通常の行動が決定されることが好ましい。
【0057】
(2)検出段階
【0058】
続いて、検出段階では、まず、所定範囲を撮影した第1の対象映像Y2が取得されると(S4)、第1の対象映像Y2に映った第1の対象行動体Z2の行動が、第1の対象行動体Z2の位置と紐づけて検出される(S5)。この際、第1の対象行動体Z2の体の向きを更に検出し、第1の対象行動体Z2の行動と紐づけることが好ましい。
【0059】
続いて、S5で一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の行動が当該一の位置において決定された“通常の行動”と異なる場合に(S6:YES)、“その旨を示す出力”が行われる(S7)。この際、サンプル行動体Z1の体の向きも考慮して“通常の行動”と異なるか否かを判断されることが好ましい。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態による異常行動検出システム1では、学習により、所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の“通常の行動”を決定しておき、一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の行動が当該一の位置において決定された“通常の行動”と異なる場合に、“その旨を示す出力”を行う。
【0061】
このような構成によれば、第1の対象映像Y2に映った第1の対象行動体Z2の異常行動を高精度に検出することが可能となる。また、異常行動の検出に当たり、第1の対象行動体Z2のみを検出すれば良く、自動販売機等の他の物体を検出する必要や第1の対象行動体Z2を他の物体と関連付ける必要がないので、コンピュータの負荷が増加することが防止される。
【0062】
また、本実施の形態による異常行動検出システム1では、サンプル行動体Z1の体の向きまで考慮して“通常の行動”を決定しておき、一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の行動及び体の向きが当該一の位置において決定された“通常の行動”と異なる場合に、“その旨を示す出力”を行う。
【0063】
このような構成によれば、第1の対象映像Y2に映った第1の対象行動体Z2の異常行動をより高精度に検出することが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態による異常行動検出システム1では、第1の検出部23によって検出されたサンプル行動体Z1の一連の複数の行動を“通常の行動”として決定しておき、一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の一連の複数の行動が当該一の位置において決定された“通常の行動(通常の一連の複数の行動)”と異なる場合に、“その旨を示す出力”を行う。
【0065】
このような構成によれば、第1の対象映像Y2に映った第1の対象行動体Z2の異常行動をより高精度に検出することが可能となる。
【0066】
続いて、図5及び図6を参照して、本発明の第2の実施の形態による異常行動検出システム10について説明する。
【0067】
上記したように、第1の実施の形態では、学習装置2によって学習されたデータを参照して、判定装置3が“異常行動”を検出することが可能であるが、“通常の行動”や“通常の軌跡”は、撮影環境の変化(例えば、イベント開催に伴うレイアウト変更、カメラの撮影範囲がずれた場合など)に伴い変化する可能性がある。その場合、決定された“通常の行動”や“通常の軌跡”をそのまま用いて“異常行動”の検出を行ったとしても、検出された“異常行動”が撮影環境に適したものとは限らない。
【0068】
そこで、本実施の形態では、制御装置4が、撮影環境の変化が生じたか否かを判断し、変化が生じた場合に、決定部24に“通常の行動”又は“通常の軌跡”の再決定(再学習)を行わせる。
【0069】
詳細には、制御装置4は、図5に示すように、第3の取得部41と、第3の検出部42と、制御部43と、を備えている。
【0070】
第3の取得部41は、撮影手段Xにより撮影された第2の対象映像Y3を取得する。本実施の形態では、多数の第2の対象映像Y3をそれぞれの撮影時刻と紐づけて取得するものとする。なお、第2の対象映像Y3としては、第2の取得部32により取得された第1の対象映像Y2を用いても良い。
【0071】
第3の検出部42は、第2の対象映像Y3に映った第2の対象行動体Z3の所定の行動又は軌跡を第2の対象行動体Z3の位置と紐づけて検出する。本実施の形態では、“行動”に限らす、“行動に加えて軌跡”又は“行動の替わりに軌跡”であっても良い。
【0072】
従って、学習装置2の第1の検出部23は、サンプル行動体Z1の行動又は軌跡をサンプル行動体Z1の位置と紐づけて検出し、決定部24は、第1の検出部23によって検出された多数の行動又は軌跡に基づき、所定範囲における一又は複数の“通常の行動又は軌跡”を決定する。
【0073】
同様に、判定装置3の第2の検出部33は、第1の対象行動体Z2の行動又は軌跡を第1の対象行動体Z2の位置と紐づけて検出し、判定部34は、一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の行動又は軌跡が当該一の位置において決定された“通常の行動又は軌跡”と異なる場合に、その旨を示す出力を行う。
【0074】
制御部43は、第3の検出部42により検出された所定の行動又は軌跡の検出位置が所定以上変化した場合に、“通常の行動又は軌跡”の決定を改めて行うよう決定部24を制御する。
【0075】
例えば、所定の行動又は軌跡の検出位置を監視し続けた結果、ある時間を境に当該検出位置が所定以上変化した場合には、「撮影範囲のレイアウト変更等により所定の行動や軌跡が検出される位置が変化した」、「衝撃等によりカメラの撮影範囲がずれた」等の原因が考えられる。従って、そのような場合に、制御部43は、“通常の行動又は軌跡”の決定を改めて行うよう決定部24を制御することとなる。「ある時間を境に当該検出位置が所定以上変化した場合」としては、それまで所定の行動又は軌跡が所定期間内で第1の回数以下しか検出されていなかった位置で、第1の回数よりも大きい第2の回数以上検出されるようになった場合等が考えられる。
【0076】
これにより、撮影環境の変化に伴って再決定された“通常の行動”や“通常の軌跡”を用いて、“異常行動”を適切に検出することが可能となる。
【0077】
続いて、図6のフローチャートを用いて、異常行動検出システム10による“通常の行動又は軌跡”の再学習(再決定)について説明する。
【0078】
再学習は、図4のS3で“通常の行動”又は“通常の軌跡”が決定された後に行われる。再学習は、検出段階と並行して行われても良いし、検出段階と別途行われても良いが、本実施の形態では、検出段階と並行して行う例について説明する。
【0079】
まず、第2の対象映像Y3が取得されると(S11)、第2の対象映像Y3に映った第2の対象行動体Z3の所定の行動又は軌跡が第2の対象行動体Z3の位置と紐づけて検出される(S12)。
【0080】
最後に、第3の検出部42により検出された所定の行動又は軌跡の検出位置が所定以上変化した場合に(S13:YES)、“通常の行動又は軌跡”の決定が改めて行われる(S14)。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態による異常行動検出システム10では、所定の行動又は軌跡の検出位置が所定以上変化した場合に、“通常の行動又は軌跡”の決定を改めて行う。
【0082】
このような構成によれば、撮影環境の変化に伴って改めて決定された“通常の行動”や“通常の軌跡”を用いて、“異常行動”を適切に検出することが可能となる。
【0083】
尚、本発明の異常行動検出システムは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0084】
例えば、上記実施の形態では、自動販売機の前での異常行動を検出したが、その他の場所(施設の出入り口、トイレの出入り口、エレベーターの前など)での異常行動を検出してもよいことはもちろんである。
【0085】
また、上記実施の形態では、一連の複数の行動のいずれかを行わない、または、いずれかを繰り返し行うような場合に“その旨を示す出力”が行われたが、これには、いずれの行動も含まない(例えば、“ずっと立っている”、“ずっとうろうろしている”など)場合も含まれることはもちろんである。
【0086】
また、上記実施の形態では、「第1の記憶部21と第2の記憶部31」、「第1の取得部22と第2の取得部32と第3の取得部41」、及び、「第1の検出部23と第2の検出部33と第3の検出部42」は、学習装置2、判定装置3、制御装置4にそれぞれ設けられていたが、これらは共通して使用されてもよい。また、学習装置2と判定装置3は一体であってもよい。これらの場合も本発明の範囲に含まれる。
【0087】
また、第1の実施の形態では、学習装置2においてデータ(多数の行動)がある程度蓄積した後は、判定装置3のみを作動させることも可能である。
【0088】
また、本実施の形態による異常行動の検出は、第1の対象映像Y2に対してリアルタイムで行うのが効果的ではあるが、異常行動検出システム1の使用目的によっては録画した第1の対象映像Y2に対して後から行ってもよい。
【0089】
また、上記実施の形態では、行動体Zとして人間を例に説明したが、動物やロボットについて使用することも可能である。例えば、動物の場合には、トイレとは異なる位置で排泄を始めたような場合に迅速に対処することが可能となる。
【0090】
また、上記実施の形態では複数の関節の動きに基づいて行動体の行動を検出したが、関節を検出することなく他の方法で行動体の行動を検出しても良い。
【0091】
また、本発明は、コントローラとしての第1の取得部22、第1の検出部23、決定部24、第2の取得部32、第2の検出部33、判定部34、第3の取得部41、第3の検出部42、及び、制御部43が行う処理に相当するプログラム及び方法や、当該プログラムを記憶した記録媒体にも応用可能である。記録媒体の場合、コンピュータ等に当該プログラムがインストールされることとなる。ここで、当該プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体としては、CD-ROM等が考えられるが、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0092】
1、10 異常行動検出システム
2 学習装置
3 判定装置
4 制御装置
21 第1の記憶部
22 第1の取得部
23 第1の検出部
24 決定部
31 第2の記憶部
32 第2の取得部
33 第2の検出部
34 判定部
41 第3の取得部
42 第3の検出部
43 制御部
X 撮影手段
Y 映像
Y1 サンプル映像
Y2 第1の対象映像
Y3 第2の対象映像
Z 行動体
Z1 サンプル行動体
Z2 第1の対象行動体
Z3 第2の対象行動体
【要約】
【課題】 映像に映った行動体の異常行動を高精度に検出することが可能な異常行動検出システムを提供する。
【解決手段】
異常行動検出システム1は、学習装置2と、判定装置3と、を有している。学習装置2では、所定範囲を撮影するように設置された撮影手段Xにより撮影されたサンプル映像Y1に映ったサンプル行動体Z1の行動をサンプル行動体Z1の位置と紐づけて検出し、検出された多数の行動に基づき、上記所定範囲内の一又は複数の位置における一又は複数の通常の行動を決定する。判定装置3では、上記所定範囲を撮影するように設置された撮影手段Xにより撮影された第1の対象映像Y2に映った第1の対象行動体Z2の行動を第1の対象行動体Z2の位置と紐づけて検出し、一の位置において検出された第1の対象行動体Z2の行動が当該一の位置において決定された通常の行動と異なる場合に、その旨を示す出力を行う。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6