(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】電気部品ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2020564379
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2019062458
(87)【国際公開番号】W WO2019219738
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】102018111712.4
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508002036
【氏名又は名称】コレクトール モビリティ デー.オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ドルモタ ペトリク,アナ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ルドヴィク
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104543(JP,A)
【文献】特開2017-128092(JP,A)
【文献】特開2013-071312(JP,A)
【文献】特開2012-232460(JP,A)
【文献】特開2014-051041(JP,A)
【文献】特開2016-093996(JP,A)
【文献】特開2015-074400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の電気ケーブル(2,2′)とその末端側に解除不可能に結合された電気機能ユニット(3)とを含んでいて、その際前記電気ケーブル(2,2′)が少なくとも1本の金属導体(4)とその少なくとも1本の導体(4)を囲繞する樹脂製絶縁被覆材(5)を有するとともに前記電気機能ユニット(3)は前記ケーブル(2,2′)の樹脂製絶縁被覆材(5)上に射出成形された絶縁ハウジング(7)とその中に収容されていて前記少なくとも1本の導体(4)と接触する少なくとも1個の電気機能要素(9)とを含んでなる電気部品(1)であって、前記ケーブル(2,2′)の樹脂製絶縁被覆(5)が電気機能ユニット(3)の絶縁ハウジング(7)によって遮閉された環状領域(12)の範囲内で溝パターン(13,19,21,25)と溝(14,15;17,18;17′,18′;22;24)の間に残留する隆起部(16;20;20′,23)を有するような方式で前記樹脂製絶縁被覆の表面の周囲をレーザ処理によって塑形し、前記絶縁ハウジング(7)がそれを射出成形する際に前記樹脂製絶縁被覆(5)の溝パターン(13,19,21,25)に従って形成されその溝パターンに適合するブリッジパターンを有し、絶縁ハウジング(7)と樹脂製絶縁被覆(5)
の全体が前記環状領域(12)
全体に亘って液状物質に対して相互に恒久的に密封されるような方式で前記溝(14,15;17,18;17′,18′;22;24)内に進入してそこで固定されるようなブリッジを前記ブリッジパターンが有することを特徴とする電気部品。
【請求項2】
樹脂製絶縁被覆(5)の周囲に閉鎖型の環状で前記絶縁被覆の周囲にわたって延在する溝(18;18´;24)を設けることを特徴とする請求項1記載の電気部品。
【請求項3】
相互に交差する溝(14,15;17,18;17′,18′)を設けることを特徴とする請求項1または2記載の電気部品。
【請求項4】
溝(14,15;17,18;17′,18′)が60°ないし120°の角度で相互に交差することを特徴とする請求項3記載の電気部品。
【請求項5】
溝(14,15;17,18;17′,18′;22;24)の深さが樹脂製絶縁被覆(5)の平均厚の5%ないし75%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電気部品。
【請求項6】
溝(14,15;17,18;17′,18′;22;24)の深さが樹脂製絶縁被覆(5)の平均厚の10%ないし60%であることを特徴とする請求項5記載の電気部品。
【請求項7】
溝(14,15;17,18;17′,18′;22;24)の深さが樹脂製絶縁被覆(5)の平均厚の15%ないし45%であることを特徴とする請求項6記載の電気部品。
【請求項8】
溝(17′,18′)が異なった深さを有するように形成されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電気部品。
【請求項9】
溝(17′,18′)の平均深さを直近のケーブル(2)末端に向かって増加させることを特徴とする請求項8記載の電気部品。
【請求項10】
環状領域(12)の長手方向の幅が樹脂製絶縁被覆(5)の直径の数値の0.3倍ないし3倍であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電気部品。
【請求項11】
環状領域(12)の長手方向の幅が樹脂製絶縁被覆(5)の直径の数値の0.5倍ないし2倍であることを特徴とする請求項10記載の電気部品。
【請求項12】
樹脂製絶縁被覆(5)がPVC、XPE、PA、FEP、ETFE、PP、PUR、TPE-E、TPE-SEBS、PFA、E/VACあるいはそれらの派生物に基づく材料からなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の電気部品。
【請求項13】
電気機能ユニット(3)の絶縁ハウジング(7)は熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の電気部品。
【請求項14】
ケーブル(2,2´)を単一コア形式に形成することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の電気部品。
【請求項15】
ケーブル(2´)が二重絶縁を備え、その際導体(4)に隣接する絶縁が樹脂製絶縁被覆(5)によって囲繞される絶縁コーティング(27)から形成され、電気機能ユニット(3)の絶縁ハウジング(7)が樹脂製絶縁被覆(5)から突出する前記絶縁コーティング(27)の断片上に追加的に射出成形され、その際前記絶縁コーティング(27)が電気機能ユニット(3)の絶縁ハウジング(7)によって遮蔽された環状領域(12´´)の範囲内で溝パターン(19´´)と溝の間に残留する隆起部(20´´)を有するように表面を周回してレーザ処理によって塑形され、また前記絶縁ハウジング(7)がそれを射出成形する際に前記絶縁コーティング(27)の溝パターン(19´´)によって形成されその溝パターンに適合するようなブリッジパターンと溝内に嵌合してそこで固定されるブリッジを有することを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の電気部品。
【請求項16】
ケーブルを複数コア形式に形成し、その際それぞれ個別に絶縁コーティングによって被覆された複数の金属導体を樹脂製絶縁被覆が囲繞することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の電気部品。
【請求項17】
少なくとも1本の絶縁コーティングが樹脂製絶縁被覆から突出し、その際当該絶縁コーティングが電気機能ユニットの絶縁ハウジングによって遮蔽された環状領域の範囲内で溝パターンと溝の間に残留する隆起部を有するように表面を周回してレーザ処理によって塑形され、その際前記絶縁ハウジングがそれを射出成形する際に前記絶縁コーティングの溝パターンによって形成されその溝パターンに適合するようなブリッジパターンと溝内に嵌合してそこで固定されるブリッジを有することを特徴とする請求項16記載の電気部品。
【請求項18】
少なくとも1本の金属導体(4)とその少なくとも1本の導体を囲繞する樹脂製絶縁被覆(5)を有する少なくとも1本のケーブル(2,2´)を作成し;
ケーブルの一末端部に隣接した環状領域(12)の範囲内で溝パターン(13,19,21,25)と溝(14,15;17,18;17′,18′;22;24)の間に残留する隆起部(16;20;20′,23)を有するような方式で前記ケーブル(2,2´)の絶縁被覆(5)の表面の周囲をレーザ処理によって塑形し;
少なくとも1個の電気機能要素(9)と前記ケーブル(2,2´)の少なくとも1本の導体(4)の末端とを電気的に接触させることによって中間製品を作成し;
前記中間製品を前記電気機能要素(9)とその電気機能要素に接続していて樹脂製絶縁被覆(5)上の溝パターン(13,19,21,25)を備えた環状領域(12)を有するケーブル(2,2´)の断片と共に射出成形型内に装填し;
前記少なくとも1個の電気機能要素(9)を収容する絶縁ハウジング(7)をケーブル末端上に射出成形することによって前記ケーブル(2,2´)と取り外し不可能に結合された電気機能ユニット(3)を製造し、前記絶縁ハウジング(7)の成形に際してそのハウジング上に前記ケーブル(2,2´)の樹脂製絶縁被覆(5)の溝パターン(13,19,21,25)に従ってその溝パターンに適合するブリッジパターンを形成し、前記絶縁ハウジング(7)と樹脂製絶縁被覆(5)が前記環状領域(12)内で液状物質に対して相互に恒久的に密封されるような方式で前記溝(14,15;17,18;17′,18′;22;24)内に進入してそこで固定されるブリッジを前記ブリッジパターンが備えるようにする各ステップからなる電気部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも1本の電気ケーブルとその末端側に解除不可能に結合された電気機能ユニットとを含んでいて、その際前記電気ケーブルが少なくとも1本の金属導体とその少なくとも1本の導体を囲繞する樹脂製絶縁被覆材を有するとともに前記電気機能ユニットは前記ケーブルの樹脂製絶縁被覆材上に射出成形された絶縁ハウジングとその中に収容されていて前記少なくとも1本の導体と接触する少なくとも1個の電気機能要素とを含んでなる、電気部品に関する。この発明はさらにその種の電気部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の種類の電気部品は従来から多様な構成で知られている。すなわちそれらは電気機能ユニットの観点において互いに相違する。該当する電気機能要素は、例えばセンサあるいは検出器、スイッチ、信号あるいは表示要素、電子素子、接触端子あるいはソケット等とすることができる。特許文献1により、接触プラグとして構成された同種の電気部品が開示されている。ケーブルの樹脂製絶縁被覆上に追加的な外被を配置して樹脂製絶縁被覆と固着させる。絶縁ハウジングを樹脂によって形成し、前記追加的な外被と固着させる。固着を支援するために、先行して樹脂製絶縁被覆の表面と追加的な外被をサンドブラスト処理によって機械的に粗面加工するか、または化学活性化によって処理する。
【0003】
前記特許文献1には保護ハウジングを備えた電気部品が開示されていて、そこに接続ケーブルを電気接続するための2枚の接続面が設けられ、前記接続ケーブルが柔軟な樹脂コーティングを有していて第1の末端部で前記接続面と電気的に結合される。前記接続ケーブルは第2の末端部でケーブルグランドを介して保護ハウジングから突出する。前記接続ケーブルの樹脂コーティング上において第1の長さ部分にわたって追加的な被覆が配置されて前記樹脂コーティングと固着される。前記ケーブルグランドは樹脂から形成され、第2の長さ部分にわたって前記追加的な被覆と結合される。
【0004】
特許文献2によって材料と材料の製造方法が知られている。前記材料は、被覆射出によって樹脂材料によって部分的に囲繞される。その材料はそれの長手方向の延伸に沿って少なくとも1箇所の前記長手方向の延伸に対して横断方向のエンボス部を有する。
【0005】
同種の電気部品を使用する条件は極めて多様であり得る。場合によって電気部品は稼働中に特殊な要件に曝される。その際例えば極めて高いおよび/または低い温度、ならびに強力な振動またはその他の機械的な動作が挙げられる。加えて、電気部品の周囲の蒸気および/または液体の存在が例えば導体と電気機能要素との間の接触領域の隠れた腐食等の問題を誘発し得る。そのように損傷した電気部品による技術設備の障害に際しては故障個所の検索に極めて手間がかかり得る。さらに保安上重要な技術設備においては、そのように損傷した電気部品に起因する障害がそれ自体場合によって大変重大な危険となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】ドイツ国特許第102011107110号(B4)明細書
【文献】国際公開第2012/107545号(A1)パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述した先行技術において発生する問題点に関して改善された電気部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は本発明に従って、冒頭に述べた種類の電気部品においてケーブルの樹脂製絶縁被覆が電気機能ユニットの絶縁ハウジングによって遮閉された環状領域の範囲内で溝パターンと溝の間に残留する隆起部を有するような方式で前記樹脂製絶縁被覆の表面の周囲をレーザ処理によって塑形し、前記絶縁ハウジングがそれを射出成形する際に前記樹脂製絶縁被覆の溝パターンに従って形成されその溝パターンに適合するブリッジパターンを有し、絶縁ハウジングと樹脂製絶縁被覆が前記環状領域で液状物質に対して相互に恒久的に密封されるような方式で前記溝内に進入してそこで固定されるようなブリッジを前記ブリッジパターンが有することによって解決される。従って本発明は方法の観点において請求項17に記載のように以下の工程を有することを特徴とする電気部品の製造方法に関する:少なくとも1本の金属導体とその少なくとも1本の導体の周りを被覆する樹脂製絶縁被覆材を有する少なくとも1本の電気ケーブルを作成し;ケーブル末端の近傍の環状領域の範囲内で溝パターンと溝の間に残留する隆起部を有するような方式でケーブルの樹脂製絶縁被覆の表面をレーザ処理によって塑形し;少なくとも1個の電気機能要素と前記ケーブルの少なくとも1本の導体の末端とを電気的に接触させることによって中間製品を製造し;前記中間製品を前記電気機能要素とその電気機能要素に接続していて樹脂製絶縁被覆上の溝パターンを備えた環状領域を有するケーブル断片と共に射出成形型内に装填し;前記少なくとも1個の電気機能要素を収容する絶縁ハウジングをケーブル末端上に射出成形することによって取り外し不可能にケーブルと結合された電気機能ユニットを製造し、前記絶縁ハウジングの成形に際してそのハウジング上に前記ケーブルの樹脂製絶縁被覆の溝パターンに従ってその溝パターンに適合するブリッジパターンを形成し、絶縁ハウジングと樹脂製絶縁被覆が前記環状領域で液状物質に対して相互に恒久的に密封されるような方式で前記溝内に進入してそこで固定されるブリッジを前記ブリッジパターンが備える。
【0009】
本発明の適用に際して、本発明に係る電気部品の相互に結合された特性を有する各要素の全体的な共働作用のシナジー効果のため、先行技術に対して本質的に削減された当該電気部品の故障リスクを計算できる。その理由は、本発明に係る電気部品に該当するように、ケーブルの樹脂製絶縁被覆の表面(のレーザ処理によって形成された溝パターンの溝の間)に残留する隆起部が全ての方位で前記の溝によって仕切られ、樹脂製絶縁被覆を製造するためと絶縁ハウジングを製造するために使用される材料が相互に異なる結果として絶縁ハウジングの射出成形に際して固着結合が達成されない場合でも長期有効なラビリンスシールを形成するように作用するためである。
【0010】
ここで決定的なこととしては、本発明に係る少なくとも1本の電気ケーブルの絶縁被覆の表面のレーザ塑形に伴った効果を挙げることができる。その理由は、その種のレーザ処理により極めて小さな角部半径を有する非常に鋭角の溝を形成することができるためである。溝の鋭敏な角部上に露出した、突出する樹脂製絶縁被覆材料が絶縁ハウジングの成形中にその絶縁ハウジングの高温の溶融樹脂の熱作用に極めて大きく曝され、従って樹脂製絶縁被覆のその他の部分に比べて急勾配でより強力に加熱される。従って(一種の芽胞巣のように作用する)溝の鋭角な角部の領域における樹脂製絶縁被覆材料の定義された高速な局部溶融が可能になり、それによってその箇所で絶縁ハウジングとの固着結合を形成することができる。少なくとも1本のケーブルの周囲にわたって分散された領域の前記少なくとも1本のケーブルの絶縁被覆と絶縁ハウジングとの間の溝パターンによる固着結合によってそれら部材間の相互の摺動を効果的に抑制することができる。このことによって、少なくとも1本の電気ケーブルの絶縁被覆と絶縁ハウジングとの間に全面的な固着結合を提供しなくても、ケーブルの(溝パターンの溝とその中に成形されたブリッジパターンのブリッジとの間に存在する)ラビリンスシールの継続的な有効な密封性につながる。このことは電気部品の信頼性に寄与し、その理由は少なくとも1本のケーブルの樹脂製絶縁被覆の大面積および/または深い溶融が極めて問題になる可能性があるためで、すなわち制御不能な溶融によって樹脂製絶縁被覆の機能性が損傷される危険があり、それによって極端な場合(特にマルチコアのケーブル場合に)短絡と過剰電流の危険性が上昇する危険も生じる。前記のパターンによって、(特定の仕様:柔軟なケーブル、または硬質の絶縁ハウジング等の観点から)少なくとも1本の電気ケーブルの絶縁被覆と絶縁ハウジングが根本的に異なった材料特性を有する2種類の樹脂から形成される場合でも本発明を適用することによって極めて良好な結果が達成されることが説明される。
【0011】
すなわち、湿気および/または蒸気(油揮発、燃料揮発等)を含んだ環境で使用される電気部品において導体と電気機能要素との間の隠れた腐食発生のリスクが本質的に削減される。その種の電気部品を使用する技術設備の寿命および故障安全性が高められる。高コストな故障診断ならびに保守の回数が削減される。
【0012】
本発明の第1の好適な追加構成によれば、樹脂製絶縁被覆の周囲に閉鎖型の環状で絶縁被覆の周囲にわたって延在する溝が設けられる。その際閉鎖型の環状に周回する溝は例えば波状にすることができる。しかしながら、波状でない閉鎖型の環状に周回する溝にしても目的を完全に達成することができる。
【0013】
本発明の極めて好適な追加構成は、溝パターンが相互に交差する溝を有することを特徴とする。その際溝が60°ないし120°の角度で相互に交差することが特に好適である。それによって機能的に極めて好適な溝の間に残留する隆起部の幾何形状が達成される。上述のように閉鎖型の環状に周回する溝が設けられる場合、交差する溝が多少なりともケーブルの長手方向に延在することができ、従って溝が相互に90°の角度で延在する。別の極めて好適な構成形態によれば、溝パターンの相互に交差する溝が、異なったねじ巻き方向を有する、すなわち部分的に左、また部分的に右のねじ巻きになるような樹脂製絶縁被覆の表面に沿って螺旋状に延在する溝によって形成される。その際傾斜は、菱形が形成されそれの延伸が長手方向に比べて周囲方向において大きくなるように選択することが好適である。極めて有効な長手方向に対する周囲方向の長さ比は、1.5ないし4、特に2ないし3である。
【0014】
本発明のさらに別の追加構成によれば、溝の深さが樹脂製絶縁被覆の平均厚の5%ないし75%、特に10%ないし60%となる。特に好適には、溝の深さが樹脂製絶縁被覆の平均厚の15%ないし45%となる。それによって多様な要求、特にケーブルの樹脂製絶縁被覆絶上における充分な統合性を伴った絶縁ハウジングの継続的に強固かつ気密な固着の観点において最適な比率が達成される。その点に関して(溝パターンの長手方向に見て)溝が異なった深さを有するように形成すれば極めて好適であることが判明した。その際特に、溝の平均深さを直近のケーブル末端に向かって増加させることができる。従って、ケーブルに対する絶縁ハウジングの継続的に強固かつ気密な固着を犠牲にすることなく、ケーブルの樹脂製絶縁被覆内の長期強度を害するノッチ効果が削減される。
【0015】
溝パターン内に含まれた環状領域の延伸に関しては、一般的な適用形態の場合に環状領域の長手方向の幅が樹脂製絶縁被覆の直径の数値の0.3倍ないし3倍であることが好適であると判明した。環状領域の長手方向の幅が樹脂製絶縁被覆の直径の数値の0.5倍ないし2倍であれば特に好適である。この場合、絶縁ハウジングとケーブルの継続的に気密な固着の品質を最小限のコストで達成することができる。
【0016】
本発明は、樹脂製絶縁被覆の材料と電気機能ユニットの絶縁ハウジングの材料の広範囲の組み合わせに対して有効に適用可能である。特に、樹脂製絶縁被覆はPVC、XPE、PA、FEP、ETFE、PP、PUR、TPE-E、TPE-SEBS、PFA、E/VACあるいはそれらの派生物に基づく材料で、電気機能ユニットの絶縁ハウジングは熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂からなることが可能である。また、ケーブルの形成に関しても本発明の適用あるいは実現は全く制限されない。従ってケーブルを単一コア形式に形成することができ、その際金属製の導体が樹脂製絶縁被覆内に直接埋入される。同様にケーブルを複数コア形式に形成することもでき、その場合樹脂製絶縁被覆がそれぞれ個別に絶縁コーティングによって被覆された複数の金属導体を囲繞する。この場合、樹脂製絶縁被覆に加えて絶縁コーティングも溝パターンを有することが好適である。従って、この極めて好適なケーブルの追加構成において少なくとも1本の絶縁コーティングが樹脂製絶縁被覆から突出し、その際当該絶縁コーティングが電気機能ユニットの絶縁ハウジングによって遮蔽された環状領域の範囲内で溝パターンと溝の間に残留する隆起部を有するように表面を周回してレーザ処理によって塑形され、その際絶縁ハウジングがそれを射出成形する際に前記絶縁コーティングの溝パターンによって形成されその溝パターンに適合するようなブリッジパターンと溝内に嵌合してそこで固定されるブリッジを有する。
【0017】
次に、本発明について添付図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好適な実施例に係る電気部品を示した構成図ある。
【
図2】
図1の電気部品を製造するために使用される中間製品を示した説明図である。
【
図3】
図1の電気部品のケーブルの作成された末端部を示した説明図である。
【
図4】
図3に示されたケーブル末端部の第1の変更例を示した説明図である。
【
図5】
図3に示されたケーブル末端部の第2の変更例を示した説明図である。
【
図6】
図3に示されたケーブル末端部の第3の変更例を示した説明図である。
【
図7】ケーブル末端部の第4の変更例を示した縦断面図である。
【
図8】二重絶縁された単一コアケーブルへの本発明の適用を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示された電気部品1は3本の電気ケーブル2とそれらのケーブルの末端側に取り外し不可能に結合された1個の電気機能ユニット3を備える。3本の(単一コア型の)電気ケーブル2のそれぞれが1本の金属導体4とその導体を囲繞する樹脂製絶縁被覆5を備える。電気接続ユニット6として形成された電気機能ユニット3は絶縁ハウジング7とその中に収容され適宜に絶縁された3枚の帯状の導体板8を有する(
図2参照)。それらが電気機能要素9を構成し、またそれぞれ1つの端部で対応するケーブル2の導体4と導電性に接触する。反対側の端部で導体板8がいずれも(絶縁ハウジング7から突出する)接続ラグ(接触ラグ)10を形成する。
【0020】
その際
図1の電気部品1は
図2に示された中間製品が元になっており、すなわち(中間製品を適宜な成形型に投入した後)絶縁ハウジング7を射出成形することによって製造する。その際導体板8を(接続ラグ9を除いて)ケーブル2の導体4との接触と3本のケーブル2の絶縁被覆5のいずれも一端部を含めて被覆成形し;すなわち絶縁ハウジング7は3本のケーブル2の樹脂製絶縁被覆5上にも成形される。射出成形中の導体板8の位置固定のため、すなわち導体板8を確実に相互に離間させるために、成形型内に投入する中間製品(「投入材」)において
図2のように導体板8が、同様に被覆成形されて絶縁ハウジング7内に埋入される2個の間隔保持材11によって相互に位置決めされる。
【0021】
電気機能ユニット6の絶縁ハウジング7によって遮蔽された環状領域12の範囲内において3本のケーブル2の樹脂製絶縁被覆5が表面を周回してレーザ処理によって塑形され、すなわち該当する表面が溝パターン13と溝14,15の間に残留する隆起部16を有するように塑形される(
図3参照)。その際、左ねじ巻き(溝14)と右ねじ巻き(溝15)の両方をもって樹脂製絶縁被覆5の表面に沿ってねじ巻き線状に延在する溝を設けることによって、溝パターン13が相互に異なったねじ巻き方向に交差する溝を備える。その際溝のねじ巻き線の傾斜は、形成される菱形の隆起部16において周囲方向の延伸が長手方向の延伸に比べて約2.5倍の大きさになるように選択される。溝14,15の深さは樹脂製絶縁被覆5の平均厚の約30%になる。溝パターンによって形成される環状領域12の長手方向の延伸は該当するケーブルの直径の約2倍となる。
【0022】
絶縁ハウジング7の射出成形(上述参照)に際して該当する樹脂製絶縁被覆5の溝パターン13に従って形成されその溝パターンに適合する3つのブリッジパターン上で、絶縁ハウジング7と3本のケーブル2の樹脂製絶縁被覆5が3つの環状領域12内で液状物質に対して相互に恒久的に密封されるような方式で溝14,15内に嵌合してそこに固定されるブリッジが形成される。
【0023】
図4に示された実施形態においては、溝パターン19の相互に交差する溝17,18が前述した第1の実施形態と異なった方向性を有する。ここでは長手方向に延在する溝17と周囲方向に延在する溝18が設けられる。従って溝パターン19の溝は相互に90°の角度で交差する。また、残留する隆起部20は四角形の輪郭を有する。ここで選択される溝17および18の間隔によって再び隆起部20の周囲方向の延伸が長手方向の延伸に比べて大きくなる。
【0024】
図5に示された実施形態において、樹脂製絶縁被覆5内に設置された溝パターン21が円形に形成された多数の溝22を備える。前記の円形溝22は相互に交差あるいは貫通し、それに従って突立して残留する隆起部23が形成される。
【0025】
図6に示された実施形態において、相互に並行していて環状に閉じて樹脂製絶縁被覆5の周囲を延在する溝24が設けられる。その点において溝パターン25は
図4の溝パターンに類似であるが、勿論長手方向に指向する溝は除外される。そのため(いずれも隣接する2本の溝24の間に)樹脂製絶縁被覆5の周囲に沿って環状に閉じて延在する隆起部26が形成される。
【0026】
図7には、例として
図4の実施形態に類似する溝パターン19´との関連において溝が異なった深さで形成されるかあるいは深さが変化することが可能であることが示されている。その際、長手方向に延在する溝17´の深さが直近に存在するケーブル2の末端に向かって増加するように変化する。周囲方向に環状に延在する溝18´は、直近に存在するケーブル2の末端に向かって溝18´から溝18´へと深さが増加するような方式で異なった深さを有する。従って、(溝17´と18´によって仕切られる)隆起部20´の相対的な高さも直近に存在するケーブル2の末端に向かって増加する。同様なことが他の任意の溝の幾何形状、例えば他の図面に示された溝パターンにおいても実現可能である。
【0027】
図8には、(例として
図4の溝パターンに類似して)二重絶縁を有するケーブル2´における本発明の好適な適用が示されている。その際(外側の)樹脂製絶縁被覆5と(内側の)絶縁コーティング(被覆材)27の両方がいずれもレーザ処理によって形成された溝パターン19,19′′によって塑形されることが好適である。また、ケーブル2´上に射出成形される絶縁ハウジングが(環状領域12内で)樹脂製絶縁被覆5を遮蔽するだけではなく、別の環状領域12′′とさらにそこから突出する絶縁コーティング27を遮蔽し;従って言い換えると樹脂製絶縁被覆5上と絶縁コーティング27上の両方に二重のシーリングを形成しながら絶縁ハウジングが被覆成形される。その際絶縁コーティング27の溝パターン19′′は、図示されているように幾何学的に見て樹脂製絶縁被覆5の溝パターンと同様である。しかしながらそのことは必要不可欠ではなく;(材料の組み合わせを考慮しながら)特定の負荷および要求性能に対応して両方の溝パターンを個別設定することも可能でありむしろ有意義である。
【0028】
図8の実施形態と同様に複数コアのケーブルも有効に使用できる。従ってこの場合、(全てのコアに共通の樹脂製絶縁被覆に加えて)その絶縁被覆から突出していて各コアに対して割り当てられた個々の絶縁コーティングが、いずれも電気機能ユニットの絶縁ハウジングによって遮蔽された環状領域の範囲内で溝パターンと溝間に残留する隆起部を有するような方式で表面を周回するようにしてレーザ処理によって塑形されることが好適であり、その際絶縁ハウジングがそれを射出成形する際に前記絶縁コーティングの溝パターンによって形成されその溝パターンに適合するようなブリッジパターンと溝内に嵌合してそこで固定されるブリッジを有する。勿論、容易な製造可能性と高い信頼性のため、電気機能ユニットが複数の導体に対して接続される電気部品において、
図1および
図2に示されたような複数の(あるいは多重に絶縁された)単一コアのケーブルを用いた実施形態の方が1本の複数コア型ケーブルの使用に比べて有利である。