(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】皮膚充填剤およびその用途
(51)【国際特許分類】
A61L 27/18 20060101AFI20230721BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20230721BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20230721BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20230721BHJP
A61L 27/46 20060101ALI20230721BHJP
A61L 27/60 20060101ALI20230721BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230721BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61L27/18
A61L27/24
A61L27/20
A61L27/16
A61L27/46
A61L27/60
C12N15/12 ZNA
C07K14/78
(21)【出願番号】P 2020561769
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(86)【国際出願番号】 IL2019050492
(87)【国際公開番号】W WO2019211854
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510146399
【氏名又は名称】コルプラント リミテッド
【住所又は居所原語表記】4 Oppenheimer Street, 11th Floor, Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼヨフ、オデッド
(72)【発明者】
【氏名】オー、ナダフ
(72)【発明者】
【氏名】セロー マクヌウズ、ジャスミン
(72)【発明者】
【氏名】ザルカ、レヴィタル
【審査官】内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-507103(JP,A)
【文献】特表2015-529268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0093755(US,A1)
【文献】特表2008-514225(JP,A)
【文献】特表2001-507573(JP,A)
【文献】SHOSEYOV, O. et al,Human collagen produced in plants,Bioengineered,2014年,Vol,5:1,pp.49-52
【文献】Tissue Engineering: Part A,2013年,Vol.19, No.13 and 14,pp.1507-1518
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ヒアルロン酸に架橋した植物由来のヒトコラーゲンを含む二重架橋皮膚充填剤を調製する方法であって、
(a)ヒアルロン酸を架橋する工程と、
(b)前記架橋ヒアルロン酸の中和の工程と、
(c)前記植物由来のヒトコラーゲンの中和の工程と、
(d)中和された前記架橋ヒアルロン酸と、中和された前記植物由来のヒトコラーゲンとを混合する工程と、
(e)低分子量ヒアルロン酸(MW HA)の添加の工程と、
(f)前記架橋ヒアルロン酸と前記植物由来のヒトコラーゲンの混合物を架橋する工程と、
(g)二重架橋したヒアルロン酸-植物由来のヒトコラーゲン皮膚充填剤を透析する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記植物由来のヒトコラーゲンは、1型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)を含む
、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記ヒアルロン酸を架橋する工程(a)の前記架橋ヒアルロン酸を連結する架橋剤は、前記植物由来のヒトコラーゲンと
前記架橋する工程(f)の前記架橋ヒアルロン酸とを連結する架橋剤とは異なる
、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記架橋ヒアルロン酸と前記植物由来のヒトコラーゲンとの比率は、6:1~1:6の範囲を含む
、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記ヒアルロン酸を架橋する架橋剤および前記植物由来のヒトコラーゲンを架橋する架橋剤は、
それぞれ独立して、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドメチオダイド(EDC)、Ν,Ν'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、Ν,Ν'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジビニルスルホン(DVS)またはグルタルアルデヒドから選択される
、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
植物由来のヒトコラーゲンと細胞増殖促進足場とを含む、光開始性の二重架橋皮膚充填剤、およびある場合には、軟組織増強のために皮膚充填剤を使用する方法が本明細書で開示される。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、脊椎動物や多くの他の多細胞生物の構造的完全性に関与する主要なタンパク質である。コラーゲンは、結合組織の主要な成分を構成し、哺乳類で最も豊富なタンパク質であり、体内に見られるタンパク質の約30%を構成する。コラーゲンの消失または劣化は、老化または損傷の結果として発生する可能性がある(Olsenら、Adv Drug Deliv Rev.2003 Nov.28;55(12):1547-67)。
【0003】
老化の一般的な態様の1つは、筋、小じわ、またはしわの発生である。組織から抽出されたコラーゲンの使用を伴う治療は、筋、小じわ、またはしわを低減するか、または除去するために使用されてきた。同様の治療が、瘢痕を低減するために使用されてきた。
【0004】
コラーゲンは、腱の成分でもある。腱障害は、通常はスポーツおよび身体活動に関連する一般的な障害であり、腱のコラーゲン線維の変性および配置の乱れに関連している。損傷した腱の治癒には、特定の細胞の組織化された活動と、損傷の近傍で関連する成長因子(GF)が長期間存在する必要がある。腱障害は、近年、筋骨格系の愁訴の主な相談理由である(Kauxら(2011年1月)J.Sport.Sci.Med.January:238-253)。腱障害は、腱の使い過ぎに起因する病理学的変化と、その結果としての再生反応との間の不均衡から生じる可能性がある、腱および靭帯の内部およびその周辺で発症する様々な痛みを伴う状態を指す(Andresら(2008)Clin.Orthop.Relat.Res.466:1539-1554)。腱障害は、コラーゲンの変性および配置の乱れに関連しており(Maffulliら(2003)Clin.Sport.Med.22:675-692)、線維の微小な裂傷、血管分布の増加および軽度の炎症の存在と関係することもある(Khanら(1999)Sport.Med.27(6):393-408)。臨床的には、腱のこわばり、活動に関連する痛み、機能の低下、時には局所的な腫れの発症を特徴とする(Kaux 2011;Andres 2008)。コラーゲン線維は、通常の密になった平行な束ねられた外観ではなく、不均一で不規則な圧着、緩み、うねりの増加が存在する(Mafulli 2003)。人々は、高齢でも活動を続けるため、腱損傷の発生率は、今後数十年間で増加すると予想される。理学療法、薬理学的治療、およびそれらの組み合わせを含む、腱障害の多種多様な治療法が利用可能であるが、臨床結果は満足のいくものではなく、症状の再発は一般的である(Kaux 2011)。腱障害の治療のための自家多血小板血漿(PRP)の注入は、過去数十年間で広く注目されていた(Delongら(2016)Curr.Orthpaedic Pract.22:514-523、Kauxら(2012)Wound Repair Regen.20:748-756、Yuanら(2013)Muscles.Ligaments Tendons J.3(3):139-49、Di Matteoら(2015)Musculoskelet.Surg.99(1):1-9)。PRPは、高濃度の血小板を含む血液の血漿フラクションである。血小板は、損傷部位に注入されると、治癒過程を促進すると考えられている様々な種類の成長因子(GF)を放出する。PRPに関連するGFの中で、血管内皮増殖因子(VEGF)、トランスフォーミングβ増殖因子(TGF-β)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来表皮増殖因子(PDEGF)、線維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮成長因子(EGF)および肝細胞増殖因子(HGF)が報告されている(Delong 2016、Yuan 2013、Harrisonら(2011)Am.J.Sports Med.39(4):729-734)。多くのインビトロ研究およびインビボモデルは、PRP治療がコラーゲン発現および細胞外マトリックス産生を向上させ、血管新生を刺激し、細胞移動、分化および増殖を増加させ、したがって腱損傷の治癒を補助することを示している(Yuan 2013、Kajikawaら(2008)J.Cell.Physiol.215(3):837-845、Zhangら(2010)Am.J.Sports Med.38(12):2477-2486)。しかしながら、PRP治療の有効性に関する明確な臨床的証拠は、限られている(Delong 2016、Yuan 2013、Moraesら(2014))。
【0005】
コラーゲンは、ほとんどの組織の細胞外マトリックス(ECM)の主要な成分および主要な構造的機械的決定因子として機能する[例えば、Kadler K.Birth Defects Res C Embryo Today.2004;72:1-11、Kadler KE、Baldock C、Bella J、Boot-Handford RP.J Cell Sci.2007;120:1955-1958、Kreger ST.Biopolymers.2010 93(8):690-707を参照]。トロポコラーゲンは通常、結合して右巻きの三重らせんトロポコラーゲンを形成し、原線維を形成する、プロコラーゲンの3つの左巻きヘリックス(通常は2つの同一のヘリックスと第3の異なるヘリックス)からなる。
【0006】
天然コラーゲンの形態と大部分の特性は、分子の95%より多くを構成する三重ヘリックスドメインによって決定付けられる。このドメインは、3つのα鎖で構成されており、各々が約1,000個のアミノ酸を含み、ロープ状の様式で包み込まれ、密な三重ヘリックス構造を形成する。この三重ヘリックスは、隣接するアミノ酸を連結するペプチド結合が分子内部に埋め込まれるように巻かれているため、コラーゲン分子は、ペプシンなどのプロテアーゼによる攻撃に耐性がある。
【0007】
I型コラーゲンは、典型的な原線維コラーゲンであり、骨、腱、皮膚、大動脈および肺を含む大部分の組織において、主要なコラーゲン型である。I型コラーゲン線維は、優れた引張強度と限られた伸展性を提供する。I型コラーゲンの最も豊富な分子形態は、2つの異なるα鎖[α1(I)]2およびα2(I)で構成されるヘテロトリマーである(Inkinen、Connective Tissue Formation in Wound Healing an Experimental Study、Academic Dissertation、2003年9月、University of Helsinki、Faculty of Science、Department of Biosciences、Division of Biochemistry)。
【0008】
線維状コラーゲン分子の全てにおいて、3つのポリペプチド鎖が、繰り返しGly-X-Yトリプレットから構築され、式中、XおよびYは、任意のアミノ酸であってもよいが、多くの場合、イミノ酸のプロリンおよびヒドロキシプロリンである。コラーゲンは、特に、グリシン、プロリンおよびヒドロキシプロリンアミノ酸残基が豊富であり、コラーゲン鎖のタンパク質配列は、多くは、繰り返しアミノ酸配列を有する。プロコラーゲンは、プロリンおよびリジン残基にヒドロキシル基を付加することによって修飾される。これらのヒドロキシル化反応は、それぞれ、プロリル-4-ヒドロキシラーゼおよびリシル-ヒドロキシラーゼによって触媒作用を及ぼされる。次いで、リジン残基上のヒドロキシル基がグリコシル化され、その後、三重ヘリックスが形成する。
【0009】
原線維を形成するコラーゲンの重要な特徴は、それらが球状のN末端およびC末端伸長プロペプチドを含む前駆体プロコラーゲンとして合成されることである。プロコラーゲンの生合成は、プロリンとリジンのヒドロキシル化、N結合型とO結合型のグリコシル化、鎖内と鎖間の両方のジスルフィド結合の形成など、いくつかの異なる翻訳後修飾を伴う複雑なプロセスである。これらの修飾を実行する酵素は、正しく整列され、熱的に安定した三重らせん分子の折り畳みと組織化を確実にするために、協調した態様で作用する。
【0010】
三成分ポリペプチド鎖は、粗面小胞体(RER)内で組織化され、プロコラーゲンを形成する。ポリペプチド鎖が小胞体(ER)の膜を横切って同時翻訳的に移動するため、プロリンおよびリジン残基のプロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)依存性ヒドロキシル化が、Gly-X-Y繰り返し領域内で起こる。コラーゲンの最終的な三重らせん構造の安定性は、コラーゲン鎖のP4Hを介したヒドロキシル化に大きく依存する。リシルヒドロキシラーゼ(LH、EC 1.14.11.4)、ガラクトシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.50)、およびグルコシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.66)は、コラーゲンの翻訳後修飾に関与する酵素である。これらは、特定の位置のリシル残基を、ヒドロキシリシル、ガラクトシルヒドロキシリシル、およびグルコシルガラクトシルヒドロキシリシル残基に順次修飾する。これらの構造はコラーゲンに特有であり、それらの機能的活性に不可欠である(Wangら(2002)Matrix Biology、21(7):559-566)。単一のヒト酵素であるリシルヒドロキシラーゼ3(LH3)は、ヒドロキシリシン結合した炭水化物形成での3つの連続する工程全てに触媒作用を及ぼすことができる(Wangら(2002)Matrix Biology、21(7):559-566)。ポリペプチド鎖が小胞体の内腔に完全に移動すると、3つのプロα鎖がC-プロペプチドを介して結合してトリマー分子を形成し、Gly-X-Y繰り返し領域がそのC末端に核形成点を形成し、鎖の正しい整列を確実にする。次に、Gly-X-Y領域は、C方向からN方向に折り畳まれて、三重ヘリックスを形成する(Khoshnoodiら(2006)J.Biol.Chem.281:38117-38121)。
【0011】
体温での三重ヘリックスの安定性を確保するためにプロリン残基のヒドロキシル化が必要であるため、ポリペプチド鎖修飾と三重ヘリックス形成との間の時間的関係は重要である。一旦形成されると、三重ヘリックスは、もはやヒドロキシル化酵素の基質として機能しない。C-プロペプチド(およびより低い程度までN-プロペプチド)は、細胞を出る経路の間、プロコラーゲンを可溶性に維持する(Bulleidら(2000)Biochem.Socy.Transact.、28(4):350-353)。細胞外マトリックスへのプロコラーゲン分子の分泌後、または分泌中に、プロペプチドは、プロコラーゲンのN-プロテイナーゼおよびC-プロテイナーゼによって除去され、それによって、コラーゲン分子から原線維への自発的な自己組織化を引き起こす(Hulmes、2002、J.Struct.Biol.January-February;137(1-2):2-10)。プロコラーゲンのN-プロテイナーゼおよびC-プロテイナーゼによるプロペプチドの除去によって、プロコラーゲンの溶解度が10000分の1より大きく低下し、37℃でコラーゲンから原線維への自己組織化を開始するために必要である。この組織化プロセスにとって重要なのは、N/Cプロテイナーゼで消化した後に残っているN末端およびC末端プロペプチドの非三重らせんレムナントである短いテロペプチドである。これらのペプチドは、その架橋可能なアルデヒドによって、原線維構造内のコラーゲン分子の正しい共有結合位置決めを確実にし、自己組織化の臨界濃度を下げるように作用する(Bulleidら(2000)Biochem.Socy.Transact.、28(4):350-353)。
【0012】
天然コラーゲンは、一般に、原線維の形態で並んで詰め込まれたテロペプチドを含有するコラーゲン分子として結合組織に存在する。各長手方向の道筋は、次の連続する横方向に隣接する長手方向の道筋に対してわずかに長手方向に互い違いになった空間を有し、端から端までの配置で整列された分子で構成される。このようにして、所与の長手方向の道筋中の連続した分子の向かい合う末端領域の間にギャップが作られ、これに対して横方向に隣接する平行な長手方向の道筋中の分子の互い違いになった側によって結合する。
【0013】
天然動物コラーゲンの分散と可溶化は、コラーゲンの望ましい特性を与える基本的な堅い三重らせん構造に影響を与えることなく、分子間結合を破壊し、免疫原性の非らせんテロペプチドを除去する様々なタンパク質分解酵素を使用して達成することができる(例えば、精製された可溶性コラーゲンを調製するための一般的な方法について、米国特許第3,934,852号、同第3,121,049号、同第3,131,130号、同第3,314,861号、同第3,530,037号、同第3,949,073号、同第4,233,360号および同第4,488,911号を参照)。得られた可溶性アテロコラーゲンは、その後、低pHおよび高イオン強度で繰り返し沈殿させ、続いて低pHでの洗浄し、再可溶化することによって精製することができる。それにもかかわらず、可溶性調製物は、典型的には、タンパク質調製物の均一性を低下させる架橋コラーゲン鎖で汚染される。
【0014】
コラーゲンは、その独特の特徴と人体機能における多様なプロファイルにより、組織修復に使用するために様々な生体適合性材料から選択され、構造的完全性を補助し、細胞浸潤を誘導し、組織再生を促進する。5つの主要なコラーゲン型の中で、I型コラーゲンは、人体で最も豊富なコラーゲンの形態である。
【0015】
I型コラーゲンは、自己組織化して、生物活性接着部位を介して組織細胞を支えることが可能な線維状ヒドロゲルになることができる。コラーゲンにメタクリレート基を負荷すると、コラーゲンメタクリレート(CMA)が生成し、分解に対して、より耐性になる(Gaudetら、Biointerphases(2012)7:25-33)。コラーゲンのチオール化は、凝集と粘膜付着を改善し、膨潤能力に影響を与える可能性がある(Dugganら、Eur.J.Pharm.Biopharm.(2015年4月)91:75-81)。
【0016】
コラーゲンに固有の特性は、再生医療製品でのその使用に寄与する。コラーゲンは、薬剤(止血圧迫、スポンジ、治癒包帯)、医療(心臓弁、腱および靭帯、代用皮膚、充填剤などの補綴物)、歯科(歯肉移植/歯周病)、および美容(添加剤、しわ防止剤、香料物質用マイクロコンテナ)を含む、無数の用途に必要な特徴を有する生体材料を提供する。前述の市場の全てにおいて製造されたコラーゲンに基づく製品は、その製造のために大量のコラーゲン原料を必要とする。
【0017】
死体または動物由来(ウシ、ブタ、またはウマ)などのヒトおよび動物由来のコラーゲン、およびコラーゲンに基づく製品は、適用、注入、移植および経口摂取に使用されてきた。使用には、損傷した骨または軟骨構造の修復または部分的な交換のための所望の形状への事前成型、損傷した関節への注入、および皮膚充填剤としての注入が挙げられる。
【0018】
動物由来のコラーゲン(ヒト由来のコラーゲンを含む)の使用は、非従来型の感染性物質による汚染のリスクの可能性があるため、問題がある。細菌やウイルスの汚染によって引き起こされるリスクは完全に制御することができるが、プリオンは封じ込めが難しく、かなりの健康上のリスクがある。タンパク質のような性質を持っていると思われるこれらの感染性物質は、変性動物脳症(羊震え病、牛海綿状脳症)およびヒト脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロスラー症候群、およびクールー病)の発症に関与する。他の病気(例えば、後天性免疫不全症候群[AIDS]、肝炎、狂犬病、いくつかの癌)もレシピエントに感染する可能性がある。脳症や他の疾患のいくつかの発症までに長い時間がかかるため、正式な管理を行うことは困難である。(一般的に、Castrowら(1983)J.Am.Acad.Dermatol.9(6):889-93、Siegleら(1984)Arch.Dermatol.120(2):183-187を参照。)
【0019】
さらに、一部の患者では、ヒトまたは動物のコラーゲンによる治療が、アレルギーを含む細胞性または体液性の免疫反応を引き起こす。さらに、コラーゲンの質は、一般的に、供給源となる死体または生物の年齢と共に低下するか、または他の因子によって低下する可能性がある。これに加えて、抽出プロセスによって、その生物学的機能および機械的機能を損なう重大な構造的損傷が起こる(Steinら(2009)Biomacromolecules 10(9):2640-2645、Shiloら(2013)Tissue Eng.Part A 19(13-14):1519-1526、Shoseyovら(2013)Tiss.Eng.Part A 19(13-14):1527)。
【0020】
コラーゲン鎖を発現する植物は、当該技術分野で知られている(例えば、WO2005/035442、米国特許第6,617,431号、米国公開第2002/0098578号、米国公開第2002/0142391号、Merleら(2002)FEBS Letters 515:114-118、Ruggieroら(2000年3月3日)FEBS Lett.469(1):132-6を参照)。このような植物を使用して、コラーゲンだけではなくコラーゲン鎖を産生することができるが、このような鎖は正しくヒドロキシル化されておらず、そのため、その自己組織化は、植物内であろうとなかろうと、本質的に不安定なコラーゲンを生じる。例えば、植物は、ヒドロキシプロリンを含有するタンパク質を合成することができるが、植物細胞内のヒドロキシプロリンの合成に関与するプロリルヒドロキシラーゼは、哺乳動物P4Hと比較して、比較的緩い基質配列特異性を示し、したがって、Gly-X-YトリプレットのY位置にのみヒドロキシプロリンを含むコラーゲンを生成するには、コラーゲンとP4H遺伝子の植物共発現が必要である(Olsenら(2003)Adv.Drug Deliv.Rev.、55(12):1547-1567)。
【0021】
フィシンおよび/またはパパインなどの植物由来のプロテアーゼを用いる動物由来の「不溶性コラーゲン」のプロセシングも当該技術分野で知られている(米国特許第4,597,762号、同第5,670,369号、同第5,316,942号、同第5,997,895号および同第5,814,328号)。
【0022】
植物に自然に存在するヒドロキシル化機構に依存してヒトコラーゲンを生成する試みによって、プロリンヒドロキシル化に乏しいコラーゲンが得られた(Merleら(2002)FEBS Letters 515:114-118)。このようなコラーゲンは、30℃未満の温度で融解するか、その三重らせん構造を失う。コラーゲンとプロリルヒドロキシラーゼの共発現によって、体温での適用に生物学的に関連する安定したヒドロキシル化コラーゲンが得られる(Merleら(2002)FEBS Letters 515:114-118)。
【0023】
タバコで発現されたヒトコラーゲンのヒドロキシリシンは、ウシコラーゲンに見られるヒドロキシリシンの2%未満を形成する(残基の0.04%/残基の1.88%)。このことは、植物の内因性リシルヒドロキシラーゼが、コラーゲン中のリジンを十分にヒドロキシル化することができないことを示唆する。
【0024】
最近の技術開発により、タバコ植物にヘテロトリマーI型コラーゲンをコードする5つのヒト遺伝子を導入することにより、天然のヒトI型コラーゲン(rhコラーゲン)を精製するシステムが開発された(COLLPLANT(商標)、イスラエル、SIGMA-ALDRICH(登録商標)、セントルイス、ミズーリ州、米国でも入手可能)を精製するシステムが開発された[例えば、Stein H.(2009)Biomacromolecules 10:2640-5、Yaariら(2013)Tiss.Eng.Part A 19(13/14):1502-1506、Willardら(2013)Tiss.Eng.Part A 19(13/14):1507-1518、Shiloら(2013)Tiss.Eng.Part A 19(13/14):1519-1526、Shoseyovら(2013)Tissue Eng.Part A 19:1527-1533、およびShoseyovら(2014年1月/2月)Bioengineered 5:1、1-4を参照]。このタンパク質は、コラーゲンに固有の特性を利用する費用対効果の高い工業プロセスを通じて、均一になるまで精製される。それらは全てが、本明細書に完全に記載されているかのように参照により組み込まれる、WO2006/035442、WO2009/053985、ならびにそれらに由来する特許および特許出願も参照されたい。
【0025】
部分的に変性して細胞結合ドメインが剥がれる可能性のある、組織から抽出されたコラーゲンと比較して、植物由来のヒトコラーゲンI型は、より一貫した構造と、より多くの細胞結合ドメインを有する(Shoseyovら(2014年1月/2月)Bioengineered 5:1、1-4、Majumdarら(2015)J.Biomed.Mater.Res.Part B:Appl.Biomater.104B:300-307)。3D物体が、3Dバイオプリンティングによって、物体のコンピュータモデルを利用して層ごとの様式で製造されるプロセスである付加製造(AM)における用途では、rhコラーゲンは、機能的な三次元(3D)マトリックスと足場を形成することができる。さらに、rhコラーゲンは、一般的に、組織から抽出されたコラーゲンの免疫原性および疾患移動の問題がない。
【0026】
少なくとも1つの種類のコラーゲンα鎖を発現し、内因性P4H活性を欠く細胞内コンパートメント内でのその蓄積を可能にすることによってコラーゲンを生成する方法(米国特許第8,455,717号)が、プロテアーゼを用いる処理によって、非動物細胞由来のヒトテロペプチドを含むコラーゲンからアテロコラーゲンを生成する方法(米国特許第8,759,487号)と同様に利用可能である。
【0027】
I型コラーゲンとrhコラーゲンは、3Dバイオプリンティングの構築材料の主成分として使用するための候補物質であると考えられる。様々な種類の足場が、美容用途および他の再建用途に使用されてきた。
【0028】
これに加え、軟組織増強、例えば、しわの低減のための皮膚充填剤の使用が増加してきている。皮膚充填剤を使用するための1つの可能な方法は、所望な領域への重合性皮膚充填剤材料の注入、その後、充填剤を所望な形態に輪郭形成するか、または成型することを含む。様々な方法の1つによる材料の重合および架橋によって、注入された材料中のモノマーを変換して、ポリマーおよび鎖を形成することができ、これらは網目構造を形成し、所望な成型された形態を保持することができる。ポリマーを形成し、ポリマーを架橋するいくつかの方法が存在する。1つの方法は、モノマー溶液中で反応種を生成する光反応性試薬と光誘起反応を伴う。例えば、米国特許第9,795,711号、米国特許第8,945,624号、米国特許第6,352,710号および米国公開第2009/0324722号、およびElisseeffら(1999年3月)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:3104-3107を参照。
【0029】
しかしながら、これらのアプローチの少なくともいくつかは、組織由来のコラーゲンまたは非コラーゲンポリマー(例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ヒアルロン酸、またはポリエチレングリコール)に引き続き焦点を合わせている。さらに、組織から抽出されたコラーゲンの使用は、生理学的条件下で、20℃を超える温度で自然なゲル形成を促進する温度およびイオン強度に対する感受性に起因して、制限されている[例えば、PureCol、Advanced BioMatrix,Inc.を参照]。組織から抽出されたコラーゲンの典型的な温度依存性のゲル形成は、正確な流動性を著しく損なわせる。適用するまでコラーゲンを低温に保つことは、この現象の可能な解決策であるが、深刻な技術的制限を内包する。別の解決策は、これらの条件下でゲル状にならないコラーゲンの変性形態であるゼラチンの使用である。しかしながら、ゼラチンは、天然コラーゲンの真の組織と細胞の相互作用を欠いているため、重要な生物学的機能が失われる。さらに、その粘度により、細いゲージの針を使用して真皮の下に注入することがより困難になり、また、それを広げてより小さな空洞内で成型することがより困難になる。
【0030】
したがって、調整可能なレオロジー的および機械的特性を備える改善された注入可能な皮膚充填剤、ならびにその方法および使用が求められており、それを有することが非常に望ましく、有利であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
一態様では、二重架橋皮膚充填剤であって、
(a)植物由来のヒトコラーゲンと、
(b)架橋ヒアルロン酸と、を含み、
植物由来のヒトコラーゲンは、架橋ヒアルロン酸に架橋されている、二重架橋皮膚充填剤が本明細書で開示される。
【0032】
関連する態様では、植物由来のヒトコラーゲンは、
(a)1型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)、または
(b)架橋ヒアルロン酸は、架橋ヒアルロン酸および非架橋ヒアルロン酸を含むか、または
(c)それらの組み合わせを含む。
【0033】
関連する態様では、架橋ヒアルロン酸を連結する架橋剤は、植物由来のヒトコラーゲンと架橋ヒアルロン酸とを連結する架橋剤とは異なるか、または架橋ヒアルロン酸と植物由来のヒトコラーゲンとの比率は、4:1~1:2の比率を含むか、またはそれらの組み合わせである。さらに関連する態様では、ヒアルロン酸を架橋する架橋剤および植物由来のヒトコラーゲンを架橋する架橋剤は、独立して、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BBDE)、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドメチオダイド(EDC)、Ν,Ν'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、Ν,Ν'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)から選択される。
【0034】
一態様では、架橋ヒアルロン酸に架橋した植物由来のヒトコラーゲンを含む二重架橋皮膚充填剤を調製する方法であって、
(a)ヒアルロン酸を架橋する工程と、
(b)架橋ヒアルロン酸を中和する工程と、
(c)植物由来のヒトコラーゲンを中和する工程と、
(d)中和された架橋ヒアルロン酸と、中和された植物由来のヒトコラーゲンとを混合する工程と、
(e)低分子量ヒアルロン酸(MW HA)の添加の工程と、
(f)架橋ヒアルロン酸と植物由来のヒトコラーゲンの混合物を架橋する工程と、
(g)二重架橋した架橋ヒアルロン酸-植物由来のヒトコラーゲン皮膚充填剤を透析する工程と、を含む、方法が、本明細書で開示される。
【0035】
関連する態様では、植物由来のヒトコラーゲンは、1型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)を含むか、または工程(a)の架橋ヒアルロン酸を連結する架橋剤は、植物由来のヒトコラーゲンと工程(e)の架橋ヒアルロン酸とを連結する架橋剤とは異なるか、またはそれらの組み合わせである。関連する態様では、架橋ヒアルロン酸と植物由来のヒトコラーゲンとの比率は、4:1~1:2の比率を含むか、またはヒアルロン酸を架橋する架橋剤および植物由来のヒトコラーゲンを架橋する架橋剤は、独立して、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BBDE)、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドメチオダイド(EDC)、Ν,Ν'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、Ν,Ν'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)から選択されるか、またはそれらの組み合わせである。
【0036】
それに加えて、一態様では、表皮の下の組織空間を充填する方法であって、
(a)組織空間に重合性溶液を導入する工程であって、重合性溶液は、
(i)架橋可能な植物由来のヒトコラーゲン、
(ii)ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、酸化セルロース(OC)またはその修飾誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾誘導体、リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾誘導体、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその修飾誘導体、結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾誘導体、またはこれらの組み合わせ、および
(iii)光開始剤を含む、該導入する工程と、
(b)上述の空間の表面にある表皮の表面に光を当てて重合を誘導する工程と、を含む、方法が本明細書で開示される。
【0037】
関連する態様では、重合性溶液の成分は、独立して、ほぼ同じ位置で、ほぼ同時に、組織空間に導入され、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンおよび光開始剤は、一緒に、かつ上述のヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、上述のポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、上述のポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、酸化セルロース(OC)またはその上述の修飾誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその上述の修飾誘導体、リン酸三カルシウム(TCP)またはその上述の修飾誘導体、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその上述の修飾誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその上述の修飾誘導体、結晶性ナノセルロース(CNC)またはその上述の修飾誘導体、または上述のこれらの組み合わせから独立して導入され、独立してほぼ同時に、組織空間に導入される。別の関連する態様では、本方法は、重合性溶液または重合性溶液の成分を、組織空間内の所望の構成内で成型または形を整える工程をさらに含み、この工程は、光を当てる工程と同時に起こるか、または光を当てる工程に続く。
【0038】
別の関連する態様では、重合性溶液の成分は、混合物として一緒に組織空間に導入され、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンおよび光開始剤は、上述のヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、または上述のポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、または上述のポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、または上述の酸化セルロース(OC)またはその上述の修飾誘導体、または上述のポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその上述の修飾誘導体、または上述のリン酸三カルシウム(TCP)またはその上述の修飾誘導体、または上述のカルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその上述の修飾誘導体、または上述のカルボキシメチルセルロースまたはその上述の修飾誘導体、または上述の結晶性ナノセルロース(CNC)またはその上述の修飾誘導体、またはこれらの組み合わせと一緒に導入される。
【0039】
別の関連する態様では、重合性溶液の成分は、組織空間に互いに独立して導入され、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンおよび光開始剤は、一緒に、かつ上述のヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、または上述のポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、または上述のポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、または上述の酸化セルロース(OC)またはその上述の修飾誘導体、または上述のポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその上述の修飾誘導体、または上述のリン酸三カルシウム(TCP)またはその上述の修飾誘導体、または上述のカルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその上述の修飾誘導体、または上述のカルボキシメチルセルロースまたはその上述の修飾誘導体、または上述の結晶性ナノセルロース(CNC)またはその上述の修飾誘導体、または上述のこれらの組み合わせから独立して導入される。
【0040】
別の関連する態様では、組織空間に導入した後、本方法は、重合性溶液または重合性溶液の成分を、組織空間内の所望の構成内で成型または形を整える工程をさらに含み、この工程は、光を当てる工程と同時に起こるか、または光を当てる工程に続く。
【0041】
別の関連する態様では、本方法は、非治療的であり、成型または形を整える工程は、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの組み合わせを低減する。
【0042】
別の関連する態様では、
(a)架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンは、メタクリル化またはチオール化された1型ヒト組換えコラーゲン(rhコラーゲン)であるか、または
(b)ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロースまたは結晶性ナノセルロース(CNC)の修飾誘導体は、メタクリル化またはチオール化された誘導体を含むか、または
(c)ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロース、または結晶性ナノセルロース(CNC)が、架橋ヒアルロン酸(HA)、架橋ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、架橋ポリエチレングリコール(PEG)、架橋酸化セルロース(OC)、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、架橋リン酸三カルシウム(TCP)、架橋カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、架橋カルボキシメチルセルロース、または架橋結晶性ナノセルロース(CNC)を含むか、または
(d)(a)と(b)、または(a)と(c)の組み合わせである。
【0043】
さらに関連する態様では、MA-rhコラーゲンが選択される場合、また、ヒアルロン酸またはその誘導体、または架橋ヒアルロン酸が選択される場合、HAとMA-rhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。
【0044】
一態様では、表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間に二重架橋皮膚充填剤を導入する工程を含み、二重架橋皮膚充填剤が、
(a)植物由来のヒトコラーゲンと、
(b)架橋ヒアルロン酸(HA)またはその修飾架橋誘導体、架橋ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾架橋誘導体、架橋ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾架橋誘導体、架橋酸化セルロース(OC)またはその修飾架橋誘導体、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾架橋誘導体、架橋リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾架橋誘導体、架橋カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾架橋誘導体、架橋カルボキシメチルセルロースまたはその修飾架橋誘導体、架橋結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾架橋誘導体、またはこれらの組み合わせと、を含み、
植物由来のヒトコラーゲンは、架橋した架橋ヒアルロン酸(HA)またはその修飾架橋誘導体、架橋ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾架橋誘導体、架橋ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾架橋誘導体、架橋酸化セルロース(OC)またはその修飾架橋誘導体、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾架橋誘導体、架橋リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾架橋誘導体、架橋カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾架橋誘導体、架橋カルボキシメチルセルロースまたはその修飾架橋誘導体、架橋結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾架橋誘導体に架橋される、方法が本明細書で開示される。
【0045】
関連する態様では、植物由来のヒトコラーゲンは、1型ヒト組換えコラーゲン(rhコラーゲン)、またはMAまたはそのチオール化誘導体であるか、またはヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロースまたは結晶性ナノセルロース(CNC)の修飾誘導体が、メタクリル化またはチオール化された誘導体を含むか、またはそれらの組み合わせである。
【0046】
別の関連する態様では、架橋HAが選択される場合、架橋HAと植物由来のヒトコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。
【0047】
関連する態様では、本方法は、非治療的であり、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの組み合わせを低減する。
【0048】
一態様では、組織増強に使用するための重合性溶液または非重合性溶液であって、
(a)重合性溶液は、可視光の適用前に、可視光の適用と同時に、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンと、重合を誘導するための光開始剤とを含むか、または
(b)非重合性溶液は、植物由来のヒトコラーゲンと、架橋ヒアルロン酸または架橋PVA、または架橋PGE、または架橋OCを含む二重架橋皮膚充填剤を含み、植物由来のヒトコラーゲンが、架橋ヒアルロン酸または架橋PVA、または架橋PGE、または架橋OCに架橋され、
上述の使用は、表皮の下の組織空間に上述の重合性溶液または非重合性溶液を注入する工程と、その後に、重合性溶液または非重合性溶液を所望の構成内で成型または形を整え、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕を低減する工程と、を含む。
【0049】
関連する態様では、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンは、メタクリル化またはチオール化されているか、または重合性溶液は、さらに、ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体またはその光重合性修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体またはその光重合性修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体またはその光重合性修飾誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾誘導体またはその光重合性修飾誘導体、リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾誘導体またはその光重合性修飾誘導体、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾誘導体またはその光重合性修飾誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその修飾誘導体またはその光重合性修飾誘導体、結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾誘導体またはその光重合性修飾誘導体、またはこれらの組み合わせを含み、場合により、その誘導体は、メタクリル化またはチオール化された誘導体を含むか、またはそれらの組み合わせを含む。
【0050】
別の関連する態様では、組織増強は、任意の医学的または歯科的状態(歯肉移植/歯周病)の結果として必要とされる。さらに関連する態様では、組織増強は、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの組み合わせを低減する。
【0051】
一態様では、表皮の下の組織空間内に細胞増殖促進足場を誘導する方法であって、組織空間に溶液を導入する工程を含み、この溶液は、
(a)植物由来のヒトコラーゲンと、
(b)少なくとも1つの成長因子またはその供給源と、を含み、
この方法は、コラーゲンを含む組織の治癒または置換を促進する、方法が本明細書で開示される。
【0052】
関連する態様では、植物由来のコラーゲンは、1型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)を含むか、または少なくとも1つの成長因子の供給源は、血漿または多血小板血漿を含むか、またはコラーゲンを含む組織が、皮膚を含むか、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0053】
別の態様では、本方法は、非治療的であり、細胞増殖促進足場が、組織空間内を充填し、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの組み合わせを低減する。
【0054】
一態様では、細胞増殖促進足場を誘導する使用のための溶液であって、この溶液は、植物由来のヒトコラーゲンと、少なくとも1つの成長因子またはその供給源と、を含み、この使用は、表皮の下の組織空間にこの溶液を注入する工程を含み、この使用は、コラーゲンを含む皮膚組織の分解または損傷に起因する治癒または置換を促進するためのものである、使用のための溶液が本明細書で開示される。
【0055】
関連する態様では、植物由来のコラーゲンは、1型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)を含むか、または少なくとも1つの成長因子の供給源は、血漿または多血小板血漿を含むか、またはコラーゲンを含む組織が、皮膚を含むか、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0056】
別の関連する態様において、rhコラーゲンは、そのメタクリレートまたはチオール誘導体を含む。
【0057】
関連する態様では、この方法で使用される溶液は、さらに、ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、酸化セルロース(OC)またはその修飾誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾誘導体、リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾誘導体、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその修飾誘導体、結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾誘導体、またはこれらの組み合わせと、可視光の適用前に、可視光の適用と同時に、重合を誘導するための光開始剤、または架橋ヒアルロン酸または架橋PVA、または架橋PGE、または架橋OCを含み、植物由来のヒトコラーゲンが、架橋ヒアルロン酸または架橋PVA、または架橋PGE、または架橋OCに架橋される。
【0058】
関連する態様では、本方法は、非治療的であり、細胞増殖促進足場が、組織空間内を充填し、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの組み合わせを低減する。
【0059】
細胞増殖促進足場を誘導する使用のための溶液であって、この溶液は、植物由来のヒトコラーゲンと、少なくとも1つの成長因子またはその供給源と、を含み、この使用は、表皮の下の組織空間にこの溶液を注入する工程を含み、この使用は、コラーゲンを含む組織の分解または損傷に起因する治癒または置換を促進するためのものである、溶液が本明細書で開示される。
【0060】
関連する態様では、少なくとも1つの成長因子の供給源は、血漿または多血小板血漿を含むか、または植物由来のコラーゲンは、1型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)を含むか、またはコラーゲンを含む組織が、皮膚を含むか、またはそれらの組み合わせである。
【0061】
別の関連する態様では、使用のための溶液は、さらに、ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、酸化セルロース(OC)またはその修飾誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾誘導体、リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾誘導体、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその修飾誘導体、結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾誘導体、またはこれらの組み合わせと、可視光の適用前に、可視光の適用と同時に、重合を誘導するための光開始剤、または架橋ヒアルロン酸または架橋PVA、または架橋PGE、または架橋OCを含み、植物由来のヒトコラーゲンが、架橋ヒアルロン酸または架橋PVA、または架橋PGE、または架橋OCに架橋される。
【0062】
一態様では、表皮の下の組織空間を充填する方法であって、(a)組織空間に重合性溶液を導入する工程であって、重合性溶液は、(i)架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンおよび(ii)光開始剤を含む、該導入する工程と、上述の空間の表面にある表皮の表面に光を当てて重合を誘導する工程と、を含む、方法が本明細書で開示される。
【0063】
関連する態様では、重合性溶液は、重合性溶液を、組織空間内の所望の構成内で成型または形を整える工程をさらに含み、この工程が、光を当てる工程と同時に起こるか、または光を当てる工程に続く。
【0064】
別の関連する態様では、本方法は、非治療的であり、成型または形を整える工程が、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの組み合わせを低減する。
【0065】
別の関連する態様では、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンは、メタクリル化またはチオール化された1型ヒト組換えコラーゲン(rhコラーゲン)である。
【0066】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の説明および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1A】これまでに試験植物を形質転換するために使用されていた様々な発現カセットおよびベクターの構築を示す。研究の一部として合成された全てのコード配列は、タバコでの発現のために最適化された。本発明のいくつかの実施形態に係る植物発現ベクター内のI型コラーゲンαI鎖またはII型コラーゲンα2鎖のクローニングスキームを示す。
【
図1B】これまでに試験植物を形質転換するために使用されていた様々な発現カセットおよびベクターの構築を示す。研究の一部として合成された全てのコード配列は、タバコでの発現のために最適化された。本発明のいくつかの実施形態に係る植物発現ベクター内の酵素プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)のクローニングスキームを示す。
【
図1C】これまでに試験植物を形質転換するために使用されていた様々な発現カセットおよびベクターの構築を示す。研究の一部として合成された全てのコード配列は、タバコでの発現のために最適化された。本発明のいくつかの実施形態に係る植物発現ベクター内のプロテイナーゼCまたはプロテイナーゼNのクローニングスキームを示す。
【
図1D】これまでに試験植物を形質転換するために使用されていた様々な発現カセットおよびベクターの構築を示す。研究の一部として合成された全てのコード配列は、タバコでの発現のために最適化された。本発明のいくつかの実施形態に係る植物発現ベクター内のリシルヒドロキシラーゼ3(LH3)のクローニングスキームを示す。
【
図2】これまでに使用されていた様々な共形質転換アプローチを示す。各発現カセットは、コード配列の短い名称で表される。コード配列は、表1に明記される。それぞれの共形質転換は、2つのpBINPLUSバイナリベクターによって実行された。各長方形は、1つ、2つまたは3つの発現カセットを保有する単一のpBINPLUSベクターを表す。プロモーターとターミネーターは、実施例1に明記される。
【
図3】コラーゲンα1(324bpフラグメント)またはコラーゲンα2(537bpフラグメント)またはその両方について陽性であった植物を示す形質転換体の従来のマルチプレックスPCRスクリーニングである。
【
図4】同時形質転換2、3、4によって生成されたトランスジェニック植物の従来のウエスタンブロット分析である。全可溶性タンパク質を、タバコ共形質転換体2番、3番および4番から抽出し、抗コラーゲンI型抗体(Chemicon Inc.製の番号AB745)を用いて試験した。サイズマーカーは、Fermentas Inc.製の番号SM0671であった。W.T.は、野生型タバコである。コラーゲンI型α1またはα2、または両方についてPCR陽性である植物において、陽性コラーゲンバンドを見ることができる。ヒト胎盤由来の500ngのコラーゲンI型の陽性対照バンド(Chemicon Inc.製の番号CC050、ペプシン消化によってヒト胎盤から抽出された)は、トランスジェニック植物由来のサンプル中、全可溶性タンパク質の約0.3%(約150μg)に相当する。ヒトコラーゲンサンプルの約140kDaの大きい方のバンドは、コラーゲンI型抗体の抗カルボキシ末端プロペプチド(Chemicon Inc.製の番号MAB1913)によって検出されるような、そのC-プロペプチドを有するプロコラーゲンである。ヒトコラーゲンサンプルの約120kDaの小さい方のバンドは、プロペプチドを含まないコラーゲンである。それらの通常とは異なる組成に起因して、プロリンに富むタンパク質(コラーゲンを含む)は、ポリアクリルアミドゲル上を、予想より高い分子量を有するバンドとして一貫して移動する。したがって、分子量が約95kDaである、プロペプチドを含まないコラーゲン鎖は、約120kDaのバンドとして移動する。
【
図5】共形質転換8番(コラーゲン鎖に翻訳融合したアポプラストシグナルを保有する)によって生成するトランスジェニック植物の従来のウエスタンブロット分析である。トランスジェニックタバコの葉から全可溶性タンパク質を抽出し、抗コラーゲンI型抗体(Chemicon Inc.製の番号AB745)を用いて試験した。陽性コラーゲンα2バンドは、植物8~141で見られる。ヒト胎盤由来のI型コラーゲン(Chemicon Inc.製の番号CC050)を対照として使用した。
【
図6A】コラーゲン三重ヘリックス組織化と、熱処理およびトリプシンまたはペプシンの消化によって以前に認可を受けた熱安定性を示す。タバコ2-9(col α1のみを発現し、P4Hを発現しない)および3-5(col α1+2とヒトP4Hαおよびβサブユニットの両方を発現する)からの全可溶性タンパク質を熱処理し(38℃または43℃で15分間)、その後、トリプシン消化し(室温[RT]で20分間)、ウエスタンブロット手順において、抗コラーゲンI型抗体を用いて試験した。陽性対照は、500ngのヒトコラーゲンI型+w.t.タバコの全可溶性タンパク質のサンプルであった。
【
図6B】コラーゲン三重ヘリックス組織化と、熱処理およびトリプシンまたはペプシンの消化によって以前に認可を受けた熱安定性を示す。全可溶性タンパク質は、トランスジェニックタバコ13-6(コラーゲンI型α1およびα2鎖(矢印によって示される)、ヒトP4HαおよびβサブユニットならびにヒトLH3を発現する)から抽出され、熱処理し(33℃、38℃または42℃で20分間)、三重ヘリックスの再組織化を防ぐために氷上ですぐに冷却し、室温(約22℃)で30分間、ペプシンでインキュベートし、その後、標準的なウエスタンブロット手順において、抗コラーゲンI型抗体(Chemicon Inc.製の番号AB745)を用いて試験した。陽性対照は、50ngのヒトコラーゲンI型(Chemicon Inc.製の番号CC050、ペプシン消化によってヒト胎盤から抽出された)のサンプルを野生型(w.t.、wt)タバコから抽出された全可溶性タンパク質に添加したものであった。
【
図7】野生型タバコについて行われた従来のノーザンブロット分析を示す。ブロットは、タバコP4H cDNAでプローブされた。
【
図8】同時形質転換2、3、13によって生成されたトランスジェニック植物の従来のウエスタンブロット分析である。全可溶性タンパク質を、タバコ共形質転換体から抽出し、抗ヒトP4Hαおよびβおよび抗コラーゲンI型抗体を用いて試験した。
【
図9】通常の光レジメンで成長させた交雑液胞標的植物A(2-300+20-279)と、暗室で8日間成長させた13-652液胞標的植物の従来のウエスタンブロット分析(レーン1)である。全ての植物は、外因性のcol1、col2、P4H-αおよびP4H-β、ならびにLH3を発現する(PCR検証済み)。
【
図10】トリプシンで消化した後のタバコ葉由来の精製コラーゲンを示す。コラーゲンは、材料および方法の章で詳述されたように、100mMのTrisバッファ中で粉砕され、遠心分離され、タンパク質分解され、高塩濃度バッファ中で沈殿させた、タバコ植物トランスジェニック葉の系統番号13-6から精製された。再懸濁後、コラーゲンを含有するペレットを洗浄し、透析し、濃縮して最終生成物にした。このゲルは、集めたコラーゲンサンプルのクマシー染色分析を示し、レーン1および2は、300mg/Lのトリプシンを用いたプロコラーゲンの消化後に得られたコラーゲンである。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(0.5mg/ml)をロードし、コラーゲン1型α1およびα2鎖の陽性対照として実行した。
【
図11】様々な濃度のトリプシンで消化した後のタバコ葉由来の精製コラーゲンを示す。20mg/Lのトリプシン(レーン1~7)または30mg/Lのトリプシン(レーン8~10)で消化した後、
図10のようにコラーゲンを抽出し、精製した。生成物を10%SDS PAGE上で分離し、クマシー系の染色液で分析した。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(0.5mg/ml)をロードし、コラーゲン1型α1およびα2鎖の陽性対照として実行した。
【
図12】トリプシンおよびペプシンで消化した後のタバコ葉由来の精製コラーゲンを示す。30mg/Lのトリプシンおよび1μg/200mlのペプシンで消化した後、コラーゲンを
図10のように抽出し、精製した(レーン1~2)。生成物を10%SDS PAGE上で分離し、クマシー系の染色液で分析した。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(0.5mg/ml)をロードし、コラーゲン1型α1およびα2鎖の陽性対照として実行した。
【
図13】プロコラーゲンをスブチリシンまたはブロメラインで消化して得られたコラーゲン鎖を示す。コラーゲンは、100mMのTrisバッファ中で粉砕され、遠心分離され、スブチリシン(1~25mg/L)またはブロメライン(1~25mg/L)のいずれかで3時間または6時間インキュベートしてタンパク質分解された、タバコ植物トランスジェニック葉の系統番号13-361から精製された。サンプルを10%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。コラーゲン鎖は、抗コラーゲンI型を使用して免疫検出された。均質化し、遠心分離した後に集めた未処理の上澄み液を、コラーゲンを含まない陰性対照として使用した(レーン3~4sup)。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(2.5μg)を、α1およびα2鎖の陽性対照として使用した(レーン1)。
【
図14】プロコラーゲンをパパインで消化して得られたコラーゲン鎖を示す。コラーゲンは、100mMのTrisバッファ中で粉砕され、遠心分離され、パパイン(1~25mg/L)で、3時間または6時間のインキュベート時間でタンパク質分解された、タバコ植物トランスジェニック葉の系統番号13-361から精製された。サンプルを10%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。コラーゲン鎖は、抗コラーゲンI型を使用して免疫検出された。均質化し、遠心分離し、酵素を用いずに15℃で3時間(レーン3)または6時間(レーン2)でインキュベートした後に集めた未処理の上澄み液を、コラーゲンを含まない陰性対照として使用した。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(2.5μg)を、α1およびα2鎖の陽性対照として使用した(レーン1)。
【
図15】プロコラーゲンをフィシンまたはサビナーゼで消化して得られたコラーゲン鎖を示す。コラーゲンは、100mMのTrisバッファ中で粉砕され、遠心分離され、フィシン(1~25mg/L)またはサビナーゼ(1~25mg/L)で、3時間または6時間のインキュベート時間でタンパク質分解された、タバコ植物トランスジェニック葉の系統番号13-361から精製された。サンプルを10%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。コラーゲン鎖は、抗コラーゲンI型を使用して免疫検出された。タンパク質分解の前に集めた未処理の上澄み液を、コラーゲンを含まない対照サンプルとして使用した(レーン3)。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(2.5μg)を、α1およびα2鎖の陽性対照として使用した(レーン1)。
【
図16】プロコラーゲンをプロタメックスまたはアルカラーゼで消化して得られたコラーゲン鎖を示す。コラーゲンは、100mMのTrisバッファ中で粉砕され、遠心分離され、プロタメックス(1~25mg/L)またはアルカラーゼ(1~25mg/L)で、3時間または6時間のインキュベート時間でタンパク質分解された、タバコ植物トランスジェニック葉の系統番号13-361から精製された。サンプルを10%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。コラーゲン鎖は、抗コラーゲンI型を使用して免疫検出された。タンパク質分解の前に集めた未処理の上澄み液を、コラーゲンを含まない対照サンプルとして使用した(レーン14)。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(2.5μg)を、α1およびα2鎖の陽性対照として使用した(レーン1)。
【
図17】プロコラーゲンをエスペラーゼまたはニュートラーゼで消化して得られたコラーゲン鎖を示す。コラーゲンは、100mMのTrisバッファ中で粉砕され、遠心分離され、3時間または6時間のインキュベート時間の後にエスペラーゼ(1~25mg/L)またはニュートラーゼ(1~25mg/L)でタンパク質分解された、タバコ植物トランスジェニック葉の系統番号13-361から精製された。サンプルを10%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。コラーゲン鎖は、抗コラーゲンI型を使用して免疫検出された。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(2.5μg)を、α1およびα2鎖の陽性対照として使用した(レーン1)。
【
図18】プロコラーゲンをエスペラーゼ8.0Lまたはアルカラーゼで消化して得られたコラーゲン鎖を示す。コラーゲンは、100mMのTrisバッファ中で粉砕され、遠心分離され、3時間または6時間のインキュベート時間の後にエスペラーゼ(1~25mg/L)またはニュートラーゼ(1~25mg/L)でタンパク質分解された、タバコ植物トランスジェニック葉の系統番号13-361から精製された。サンプルを10%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。コラーゲン鎖は、抗コラーゲンI型を使用して免疫検出された。均質化し、遠心分離し、タンパク質酵素を用いずに15℃で3時間(レーン3)または6時間(レーン2)でインキュベートした後に集めた未処理の上澄み液を、コラーゲンを含まない陰性対照として使用した。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(2.5μg)を、α1およびα2鎖の陽性対照として使用した(レーン1)。
【
図19】プロコラーゲンをフィシンで消化した後、様々な精製段階で得られたコラーゲン鎖を示す。コラーゲンは、100mMのTrisバッファ中で粉砕され、遠心分離され、15℃での3時間のインキュベート時間の後にフィシン(5mg/L)でタンパク質分解された、タバコ植物トランスジェニック葉の系統番号13-361から精製された。サンプルを10%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。コラーゲン鎖は、抗コラーゲンI型を使用して免疫検出された。粉砕し、遠心分離し、上澄み液をフィシンでインキュベートした後に集めたサンプルを、レーン5にロードした。レーン6~14は、精製プロセスの様々な段階でのフィカイン処理されたコラーゲンのサンプルを示す。レーン6:フィシン後にインキュベートし、遠心分離したサンプル。レーン7:塩沈殿させ、0.5M酢酸に再懸濁した後。レーン8:遠心分離工程を追加した、レーン7と同じサンプル。レーン9:0.5M酢酸に再懸濁し、遠心分離した後のレーン8と同じサンプル。レーン10:10mMのHClに再懸濁し、透析した後の成熟コラーゲン。レーン11:濾過工程を追加した、レーン10と同じサンプル。レーン12:5倍濃縮工程を追加した、レーン11と同じサンプル。レーン13:20倍濃縮工程を追加した、レーン11と同じサンプル。レーン14:5倍濃縮工程を追加した、レーン13と同じサンプル。未処理のプロコラーゲンサンプル(レーン3~4)を、陰性対照として使用した。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(2.5μg)を、α1およびα2鎖の陽性対照として使用した(レーン1)。
【
図20】プロコラーゲンをフィシンで消化した後、様々な精製段階で得られたコラーゲン鎖を示す。コラーゲンは、100mMのTrisバッファ中で粉砕され、遠心分離され、15℃での3時間のインキュベート時間の後にフィシン(5mg/L)でタンパク質分解された、タバコ植物トランスジェニック葉の系統番号13-361から精製された。サンプルを10%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。コラーゲン鎖は、抗コラーゲンI型を使用して免疫検出された。粉砕し、遠心分離し、上澄み液をフィシンでインキュベートした後に集めたサンプルを、レーン5にロードした。レーン6~14は、精製プロセスの様々な段階でのフィカイン処理されたコラーゲンのサンプルを示す。レーン6:フィシン後にインキュベートし、遠心分離したサンプル。レーン7:塩沈殿させ、0.5M酢酸に再懸濁した後。レーン8:遠心分離工程を追加した、レーン7と同じサンプル。レーン9:0.5M酢酸に再懸濁し、遠心分離した後のレーン8と同じサンプル。レーン10:10mMのHClに再懸濁し、透析した後の成熟コラーゲン。レーン11:濾過工程を追加した、レーン10と同じサンプル。レーン12:5倍濃縮工程を追加した、レーン11と同じサンプル。レーン13:20倍濃縮工程を追加した、レーン11と同じサンプル。レーン14:5倍濃縮工程を追加した、レーン13と同じサンプル。未処理のプロコラーゲンサンプル(レーン3~4)を、陰性対照として使用した。プロペプチドを含まないブタ由来コラーゲン(2.5μg)を、α1およびα2鎖の陽性対照として使用した(レーン1)。
【
図21】精製の様々な段階でのフィシン処理後サンプルのコラーゲン含有量を示す。コラーゲンを含有するサンプルを、材料および方法の章に記載されるリアクターサイズのAMS系精製手順のそれぞれの抽出段階および精製段階で集めた。サンプルを、プロペプチド除去のためにフィシンで処理し(5mg/L、15℃、3時間)、10%SDS PAGE上で分離し、クマシー系の染色液で分析した。
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図22】食品グレードのフィシンによるプロコラーゲン開裂の最適化(フィシン濃度および反応時間の最適化)を示す。AMSペレット化された、プロコラーゲンを発現するタバコ葉抽出物を抽出バッファに再懸濁し、次いで、食品グレードのフィシンの濃度を上げながら(5~15mg/L)インキュベートした。次いで、反応混合物を15℃で1~3時間インキュベートした。遠心分離によって開裂を終了し、タンパク質サンプルを8%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗コラーゲンI型抗体を用い、α-1およびα-2コラーゲン鎖をイムノブロッティングした。プロコラーゲンバンドは、白色の矢印によって示され、一方、赤色の矢印は、開裂したコラーゲンのバンドを示す。
【
図23A】医薬品グレードのフィシンによるプロコラーゲン開裂の最適化(フィシン濃度および反応時間の最適化)を示す。AMSペレット化された、プロコラーゲンを発現するタバコ葉抽出物を抽出バッファに再懸濁し、次いで、医薬品グレードのフィシンの濃度を上げながら(2.5~10mg/L)インキュベートした。次いで、反応混合物を15℃で0.5~3時間インキュベートした。遠心分離によって開裂を終了し、タンパク質サンプルを8%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗コラーゲンI型抗体を用い、α-1およびα-2コラーゲン鎖をイムノブロッティングした。矢印は、プロコラーゲンバンドとコラーゲンバンドを示す。
【
図23B】医薬品グレードのフィシンによるプロコラーゲン開裂の最適化(フィシン濃度および反応時間の最適化)を示す。AMSペレット化された、プロコラーゲンを発現するタバコ葉抽出物を抽出バッファに再懸濁し、次いで、医薬品グレードのフィシンの濃度を上げながら(2.5~10mg/L)インキュベートした。次いで、反応混合物を15℃で0.5~3時間インキュベートした。遠心分離によって開裂を終了し、タンパク質サンプルを8%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗コラーゲンI型抗体を用い、α-1およびα-2コラーゲン鎖をイムノブロッティングした。矢印は、プロコラーゲンバンドとコラーゲンバンドを示す。
【
図23C】医薬品グレードのフィシンによるプロコラーゲン開裂の最適化(フィシン濃度および反応時間の最適化)を示す。AMSペレット化された、プロコラーゲンを発現するタバコ葉抽出物を抽出バッファに再懸濁し、次いで、医薬品グレードのフィシンの濃度を上げながら(2.5~10mg/L)インキュベートした。次いで、反応混合物を15℃で0.5~3時間インキュベートした。遠心分離によって開裂を終了し、タンパク質サンプルを8%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗コラーゲンI型抗体を用い、α-1およびα-2コラーゲン鎖をイムノブロッティングした。矢印は、プロコラーゲンバンドとコラーゲンバンドを示す。
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図24A】医薬品グレードのフィシンによるプロコラーゲン開裂の最適化(反応バッファのpHおよび塩濃度の最適化)を示す。AMSペレット化された、プロコラーゲンを発現するタバコ葉抽出物を、様々なpH値(5.5~9.5)で、NaCl濃度を上げながら(0.5~3M)、10mg/Lの医薬品グレードのフィシンを含有する抽出バッファに再懸濁させた。次いで、反応混合物を15℃で1時間インキュベートした。遠心分離によって開裂を終了し、得られたペレットおよび上澄み液の両方のタンパク質サンプルを8%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗コラーゲンI型抗体を用い、α-1およびα-2コラーゲン鎖をイムノブロッティングした。矢印は、コラーゲンバンドを示す。
【
図24B】医薬品グレードのフィシンによるプロコラーゲン開裂の最適化(反応バッファのpHおよび塩濃度の最適化)を示す。AMSペレット化された、プロコラーゲンを発現するタバコ葉抽出物を、様々なpH値(5.5~9.5)で、NaCl濃度を上げながら(0.5~3M)、10mg/Lの医薬品グレードのフィシンを含有する抽出バッファに再懸濁させた。次いで、反応混合物を15℃で1時間インキュベートした。遠心分離によって開裂を終了し、得られたペレットおよび上澄み液の両方のタンパク質サンプルを8%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗コラーゲンI型抗体を用い、α-1およびα-2コラーゲン鎖をイムノブロッティングした。矢印は、コラーゲンバンドを示す。
【
図25】医薬品グレードのフィシンによるプロコラーゲン開裂の最適化(反応バッファ中のEDTAおよびL-システインの濃度の最適化)を示す。AMSペレット化された、プロコラーゲンを発現するタバコ葉抽出物を、様々な濃度のL-システイン(10~100mM--濃度の上側パネル)およびEDTA(8~80mM--濃度の下側パネル)を含有する抽出バッファ(pH7.5)に再懸濁させた。次いで、サンプルを、1mg/Lの医薬品グレードのフィシンと共に15℃で1時間インキュベートした。遠心分離によって開裂を終了し、タンパク質サンプルを8%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗コラーゲンI型を用い、α-1およびα-2コラーゲン鎖をイムノブロッティングした。
【
図26】pH7.5での組換えトリプシンによる効果的なプロコラーゲン消化を示す。AMSペレット化された、プロコラーゲンを発現するタバコ葉抽出物を、L-システインおよびEDTAを含有する抽出バッファ(pH7.5)に再懸濁させた。次いで、サンプルを、30~100mg/Lの組換えトリプシンと共に15℃で1~3時間インキュベートした。遠心分離によって開裂を終了し、タンパク質サンプルを8%SDS PAGE上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗コラーゲンI型を用い、α-1およびα-2コラーゲン鎖をイムノブロッティングした。
【
図27】剪断速度の関数としての粘度(イータ[η]、cP)を示す。実線-リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2.7mg/mLのウシコラーゲン、破線は、PBS中の2.79mg/mLのrhコラーゲン。▼:4℃での測定、▲:37℃での測定。
【
図28】FB中の3.4mg/mLのウシコラーゲンの、剪断速度の関数としての粘度を示す。▼:4℃での測定、▲:37℃での測定。
【
図29】PBS中の10mg/mLのrhコラーゲン-MAの、剪断速度の関数としての粘度を示す。▲:4℃での測定、▼:37℃での測定。
【
図30】HA/HAMAを添加した場合と添加しない場合のDMEMにおけるrhコラーゲン-MAの粘度測定を示す。
【
図31】光架橋の前(上側のグラフ)および光架橋の後(下側のグラフ)の異なる濃度でのrhコラーゲン-MA製剤の貯蔵弾性率および損失弾性率、ならびにtan位相シフト角を示す。
【
図32】周波数スイープ試験で記録され、1Hzでプロットされた、37℃でのG'およびG"値を示す。
【
図33A】rhコラーゲンおよびrhコラーゲンメタクリレートのプロセシングについてのフローチャートを提供する。プロコラーゲンおよびコラーゲンの上流の単離およびプロセシングを示す(工程A~H)。
【
図33B】rhコラーゲンおよびrhコラーゲンメタクリレートのプロセシングについてのフローチャートを提供する。下流のプロセシングの2つの段階(それぞれ、工程I-Mおよび工程N~PおよびZ)を示す。
【
図33C】rhコラーゲンおよびrhコラーゲンメタクリレートのプロセシングについてのフローチャートを提供する。下流のプロセシングの2つの段階(それぞれ、工程I-Mおよび工程N~PおよびZ)を示す。
【
図34】5mg/mlのrhコラーゲンメタクリレート(CollMA)(実線の黒色曲線)および5mg/mlのコラーゲンMA+ポリビニルアルコールメタクリレート(PVMA)(淡灰色の曲線)の粘度(イータ[η]、cP)を、collMA:PVAMA比率が5:1(実線の曲線)、2:1(破線の曲線)、1:2(点線の曲線)で示す。比較のために、5mg/mlのrhコラーゲンメタクリレートの粘度を報告する(黒色の曲線)。
【
図35】5mg/mlのCollMA(実線の黒色曲線)および5mg/mlのコラーゲンMA+ヒアルロン酸メタクリレート(HAMA)(灰色の曲線)の粘度を、collMA:HAMA比率が5:1(実線の曲線)、2:1(破線の曲線)で示す。比較のために、5mg/mlのrhコラーゲンメタクリレートの粘度を報告する(実線の黒色の曲線)。これらの材料は、まだ架橋されていないが、注入後に架橋される。粘度は、材料の注入性を表す。(HAMA-HAメタクリレート;コラーゲンMA(ColMA)-rhコラーゲンメタクリレート。)
【
図36】5mg/mlのCollMA(実線の黒色曲線)および5mg/mlのコラーゲンMA+酸化セルロース(OC)(灰色の曲線)の粘度を、collMA:OC比率が5:1(実線の曲線)、2:1(破線の曲線)、1:2(点線の曲線)で示す。比較のために、5mg/mlのrhコラーゲンメタクリレートの粘度を報告する(実線の黒色の曲線)。
【
図37】
図33~35のデータの比較を提供する。5mg/mlのCollMA(実線の黒色曲線)および5mg/mlのコラーゲンMA+様々な添加剤(図に示されるような淡灰色から暗灰色の曲線)の粘度を、比率が5:1(実線の曲線)、2:1(破線の曲線)、1:2(点線の曲線)で示す。比較のために、5mg/mlのrhコラーゲンメタクリレートの粘度を報告する(実線の黒色の曲線)。
【
図38】collMA:添加剤比率2:1でのrhコラーゲンメタクリレート(ColMA)+添加剤の重合性足場を示す。ColMA単独を、ポリビニルアルコールメタクリレート(PVMA)、ヒアルロン酸メタクリレート(HAMA)、または酸化セルロース(OC)と組み合わせたColMAと比較した。溶液を光開始剤2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(0.1%)と混合し、紫外(uv)光(365nm)を20秒間照射した。
【
図39】生存率試験を示す。上側のグラフ:rhコラーゲン-PRPマトリックスから放出されたGF存在下で培養された場合(黒色)、活性化PRPから放出されたGF存在下で培養された場合(灰色)、および飢餓条件下で培養された場合(白色)に、正常なヒト線維芽細胞(nHDF)の生存率(および増殖)の比較。このデータは、2人の異なるドナーから抽出されたPRPで実行された2つの異なる線維芽細胞増殖アッセイの平均である。*有意差(p<0.0002)。下側の挿入図:PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスから放出されたGF存在下で増殖した(A)、活性化PRPから放出されたGF存在下で増殖した(B)、および飢餓条件下で培養された(C)、nHDF細胞の顕微鏡画像。細胞を播種してから7日後に画像を撮影した。
【
図40】時間の関数としての足場の重量を示す(各点は、1時点あたり2匹のラット、ラットあたり3回の注入の6個の足場の平均である)。
【
図41A】皮下ラットモデルを使用する研究(時間の関数としてのPDGF含有量)を示す。*PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスとPRP単独との間の有意差(p<0.038)、およびrhコラーゲンマトリックス単独とPRP単独との間の有意差(p<0.004)。**rhコラーゲンマトリックス単独とPRP単独との間、rhコラーゲンマトリックス単独とPRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスとの間の有意差(p<0.021)。
【
図41B】皮下ラットモデルを使用する研究(皮下ラットモデルにおける時間の関数としてのVEGF含有量)を示す。**PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスとPRP単独との間、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスとrhコラーゲンマトリックス単独との間の有意差(p<0.007)。
【
図42】ラットモデルにおいて45(または30)日間にわたる、注入されたマトリックス中の名目上のPDGFおよびVEGFの含有量の積分を示す。
【
図43A】PRPまたはrhコラーゲン/PRPマトリックスで治療された腱障害(成熟線維症)のラットモデルにおける、アキレス腱の組織病理学的スコアリングを示す。
【
図43B】PRPまたはrhコラーゲン/PRPマトリックスで治療された腱障害(単核炎症細胞の存在)のラットモデルにおける、アキレス腱の組織病理学的スコアリングを示す。
【
図43C】PRPまたはrhコラーゲン/PRPマトリックスで治療された腱障害(未成熟肉芽組織の存在)のラットモデルにおける、アキレス腱の組織病理学的スコアリングを示す。
【
図44】32ゲージ針および1mlのシリンジ(Becton Dickinson[BD]、参照番号309628)からの架橋ヒアルロン酸(HA)(黒色の曲線-□)、架橋ヒアルロン酸(HA)+モノマーコラーゲン(▽)、または架橋ヒアルロン酸(HA)+原線維化コラーゲン(△)の注入に必要な発現力(ニュートン、N)の比較を示す。架橋HA+モノマーコラーゲンおよび架橋HA+原線維化コラーゲンは、半相互貫入網目構造であり、コラーゲンはいずれにも架橋されていない。
【
図45】32ゲージ針および1mlのシリンジ(Becton Dickinson[BD]、参照番号309628)からの架橋ヒアルロン酸(HA)(黒色)、または架橋ヒアルロン酸(HA)とコラーゲンの二重架橋網目構造(灰色)の注入に必要な発現力(ニュートン、N)の比較を示す。
【
図46】架橋ヒアルロン酸(HA)(黒色)、架橋ヒアルロン酸(HA)+モノマーコラーゲン(▽)、または架橋ヒアルロン酸(HA)+原線維化コラーゲン(△)の粘度(イータ[η]、cP)の比較を示す。
【
図47】架橋ヒアルロン酸(HA)(黒色)、または架橋ヒアルロン酸(HA)とコラーゲンの二重架橋網目構造(灰色)の粘度(イータ[η]、cP)の比較を示す。
【
図48A】メタクリル化コラーゲン(collMA/rhコラーゲンMA)溶液の上部に置かれたマウスパッチの写真を示す。
【
図48B】皮膚を通して白色発光ダイオード(LED)トーチで照射した際の皮膚組織内で重合し、組み込まれたメタクリル化コラーゲン(collMA/rhコラーゲンMA)の写真を示す。
【
図49】皮膚充填剤の成分の2つの例を示す。左側は、架橋ヒアルロン酸(HA)とrhコラーゲンとを含む、半相互貫入皮膚充填剤の概略図である。右側は、架橋ヒアルロン酸とrhコラーゲンとを含む二重架橋皮膚充填剤の概略図であり、架橋HAはさらにrhコラーゲンに架橋されている。淡灰色の棒状物は、HA架橋剤を示し、黒色の紐状物はHAを表し、rhコラーゲンは、淡灰色の紐状物として表され、第2の架橋剤は、架橋HAとrhコラーゲンとを架橋し、黒色の円として表される。
【
図50】コーン(1°)対プレートの構成(C35/1)を使用するHAAKE-RHEO STRESS 600(商標)機器(THERMO SCIENTIFIC(商標))を使用して測定された、様々な二重架橋製剤についての貯蔵弾性率および損失弾性率のレオロジー測定値を示すグラフを示す。周波数スイープ測定は、0.8%の一定の変形、0.02~100Hzの範囲の周波数で実行された。市販の皮膚充填剤(実線および破線:実線の黒色-市販製品;実線の▽-製剤2;実線の□-製剤2A;実線の上向きの五角形-製剤3;実線の下向きの五角形-製剤1A;実線の○-製剤1;破線の△-市販製品G";破線の▽-製剤2G";破線の□-製剤2A-G";破線の○-製剤1G";破線の下向きの五角形-製剤1A G";破線の上向きの五角形-製剤3")と比較した、代表的な二重架橋製剤(表7を参照)の貯蔵弾性率(実線)および損失弾性率(破線)。
【
図51】
図50に報告された製剤の貯蔵弾性率および損失弾性率のf=1Hzでの比較を示すグラフを示す。(白色の棒グラフG'[Pa];灰色の棒グラフG"[Pa]。)
【
図52】製剤2、2Aおよび3(表8)について使用される1mlのLUER-LOK(商標)シリンジ(BECTON-DICKINSON(商標))と30Gの針を用いる、MULTITEST 1-i MECMESIN(商標)圧縮試験機を用いて測定された、選択された二重架橋製剤の注入性を示すグラフを示す。二重架橋製剤との比較のために、市販の皮膚充填剤が含まれる。代表的な二重架橋製剤のプランジャ変位(12mm/分)の関数としての発現力を、市販の皮膚充填剤と比較した。(黒色の△-市販の皮膚充填剤;灰色の□-製剤3;灰色の上向きの五角形-製剤2;灰色の▽-製剤2A。)
【
図53】高度に架橋したHA(黒色の断続的な線の横向きの三角形)と比較した場合の、可視光で光硬化する前(破線)および後(実線)の高度に架橋したヒアルロン酸(HA)、rhコラーゲンメタクリレート(MA)および/またはrhコラーゲンの様々な組み合わせ(表10を参照)についての貯蔵弾性率および損失弾性率のレオロジー測定を示すグラフを示す。光硬化の前に、貯蔵弾性率および損失弾性率は、コーン(1°)対プレートの構成(C35/1)を使用するHAAKE-RHEO STRESS 600(商標)機器(THERMO SCIENTIFIC(商標))を使用して測定された。周波数スイープ測定は、0.8%の一定の変形、0.02~100Hzの範囲の周波数で実行された。光硬化(白色LED懐中電灯を用い、可視光を6分間照射)の後、貯蔵弾性率および損失弾性率は、鋸歯状プレートとプレートの構成(PP20)を使用するHAAKE-RHEO STRESS 600(商標)機器(THERMO SCIENTIFIC(商標))を使用して測定された。周波数スイープ測定は、3Paの一定の剪断応力、0.02~100Hzの範囲の周波数、0.3Nの一定の垂直負荷で実行された。(実線の△-製剤4-後;実線の▽-製剤5-後;実線の□-製剤6-後;破線の上向きの五角形-製剤4-前;破線の下向きの五角形-製剤5-前;破線の○-製剤6-前;破線-黒色の点線の横向きの三角形-高度に架橋したHA。)
【
図54】F=1Hzの周波数で、表10の製剤4、5および6の光硬化の前後、および非硬化性の高度に架橋したHAの貯蔵弾性率と損失弾性率の比較を示すグラフを示す。(白色の棒グラフG'[Pa];灰色の棒グラフG"[Pa]。)
【
図55】全てのサンプルについて使用される1mlのLUER-LOK(商標)シリンジ(BECTON-DICKINSON(商標))と30Gの針を用いる、MULTITEST 1-i MECMESIN(商標)圧縮試験機を用いて測定された、選択された二重架橋製剤の注入性を示すグラフを示す。代表的な二重架橋製剤のプランジャ変位(12mm/分)の関数としての発現力を、高度に架橋したHAと比較した。(黒色の△-高度に架橋したHA;灰色の▽-製剤4;灰色の□-製剤5;灰色の○-製剤6。)
【
図56】Sprague dawleyラットの背中に製剤2、2Aおよび対照(市販の皮膚充填剤)を皮下注入してから7日後の代表的な組織学画像を示す。いずれの場合も、矢印は、組織再生の開始を示す、製剤2および2Aの炎症反応の上昇(重症ではない)を示している。
【
図57】
図56で分析された組織からの製剤2、2Aおよび対照の7日目の組織学的スコアを示す。(黒色-対照;淡灰色-製剤2;暗灰色-製剤2A。)
【
図58】7日目、14日目、20日目の光硬化性皮膚充填剤の光硬化性組織学的スコアリング結果を示す。(黒色-対照である高度に架橋したHA;灰色-製剤4 高度に架橋したHAとrhColMA。)
【
図59】製剤4(灰色-高度に架橋したHA+rhColMA)と対照(黒色-高度に架橋したHA)を注入して7日後および14日後の線維症スコアの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
光開始性の皮膚充填剤および二重架橋皮膚充填剤、および細胞増殖促進足場、ならびに例えば、軟組織増強のためのこれらを使用する方法が本明細書で開示される。
【0069】
コラーゲン産生植物を使用して、コラーゲンだけではなくコラーゲン鎖を産生することができるが、このような鎖は正しくヒドロキシル化されておらず、そのため、その自己組織化は、植物内であろうとなかろうと、本出願の植物由来のヒトコラーゲンとは対照的に、本質的に不安定なコラーゲンを生じる。
【0070】
本発明の重合性溶液および二重架橋溶液、および使用方法を低減しつつ、実施するために、実施者は、コラーゲンの正しいヒドロキシル化を確実にし、それにより、ヒトI型コラーゲンの特徴(例えば、分子構造、温度安定性、細胞相互作用)を厳密に模倣するコラーゲンの植物内での産生を可能にする、植物発現アプローチを考案した。
【0071】
一態様では、表皮の下の組織空間を充填する方法であって、
(a)組織空間に重合性溶液を導入する工程であって、重合性溶液は、
(i)架橋可能な植物由来のヒトコラーゲン、および
(ii)光開始剤を含む、該導入する工程と、
(b)上述の空間の表面にある表皮の表面に光を当てて重合を誘導する工程と、を含む、方法が本明細書で開示される。
【0072】
特定の実施形態では、本方法は、さらに、光を当てる工程の前に、または光を当てる工程と同時に、組織空間内の所望の構成内で重合性溶液を成型または形を整える工程を含む。別の特定の実施形態では、成型または形を整える工程は、筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減する。
【0073】
さらに別の特定の実施形態では、ポリマー溶液は、さらに、ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、酸化セルロース(OC)またはその修飾誘導体、またはこれらの組み合わせを含む充填剤を含む。1つの特定の実施形態では、単離された植物由来のヒトコラーゲンは、場合により、例えば、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロース、結晶性ナノセルロース(CNC)、またはそれらの組み合わせなどを用いて製剤化される。
【0074】
修飾誘導体としては、限定されないが、例えば、HA、PVA、PEGまたはOCの光重合性バージョンが挙げられる。修飾としては、限定されないが、メタクリル化またはチオール化が挙げられる。さらに別の特定の実施形態では、光源は、発光ダイオード(LED)、レーザ、キセノンランプなどから選択される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、それ自体にのみ架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、チオール化rhコラーゲンに架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、任意のMA/チオール化添加剤に架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、メタクリル化HAに架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、チオール化HAに架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、メタクリル化PVAに架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、チオール化PVAに架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、メタクリル化PEGに架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、チオール化PEGに架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、メタクリル化OCに架橋する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される製剤において、メタクリレートrhコラーゲンは、照射条件下で、チオール化OCに架橋する。
【0076】
当業者は、光硬化性製剤が、実際に硬化前には半IPNであり、硬化後にIPN(interpenetrated network:相互貫入網目構造)になることを理解するであろう。IPNは、2つの絡み合った網目構造を包含してもよく、各1つがそれ自体に架橋し、他のものには架橋しない。
【0077】
いくつかの実施形態では、架橋製剤は、非修飾rhコラーゲンが照射下で架橋することができず、したがって、最終的な剛性を高めないため、rhコラーゲンの最終的な合計量を減らすことなく、(光を用いる)架橋後の剛性を調整するように非修飾rhコラーゲンの比率を含む。メタクリル化HAも、この最終的な製剤に加えられてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、HAまたはMA-HAは、架橋剤、例えば、実施例23に記載されるように、例えば、限定されないがBDDEを用い、それ自体に架橋されてもよい。いくつかの実施形態では、HAまたはMA-HAを架橋する架橋剤は、ジビニルスルホン(DVS)またはグルタルアルデヒドを含む。特定の実施形態では、BDDEで架橋されたHAまたはMA-HAは、rhコラーゲンまたはMA-rhコラーゲンにさらに架橋せず、いわゆる相互貫入網目構造を生成する(
図49の左側)。
【0079】
さらに別の特定の実施形態では、植物由来のコラーゲンは、rhコラーゲンを含む。別の特定の実施形態では、植物由来のコラーゲンは、遺伝子組み換え植物から得られる。別の特定の実施形態では、遺伝子組換え植物は、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、米、ジャガイモ、大豆、トマト、小麦、大麦、キャノーラ、ニンジンおよび綿からなる群から選択される遺伝子組換え植物である。特に、遺伝子組み換え植物は、タバコ植物である。
【0080】
さらに別の特定の実施形態では、遺伝子組換え植物は、COL1、COL2、P4H-α、P4H-βおよびLH3からなる群から選択されるヒトデオキシリボ核酸(DNA)の少なくとも1つの遺伝子配列の発現可能な配列を含む。別の特定の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンは、配列番号3に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも修飾された1つのヒトコラーゲンα-1鎖と、配列番号6に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも1つの修飾ヒトコラーゲンα-2鎖と、を含み、遺伝子組換え植物は、さらに、外因性プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)を発現する。別の特定の実施形態では、本方法は、リシルヒドロキシラーゼ(LH)、プロテアーゼNおよびプロテアーゼCからなる群から選択される外因性ポリペプチドを発現する工程をさらに含む。さらに別の特定の実施形態では、ヒトコラーゲンα-1鎖は、配列番号1に記載される配列によってコードされる。別の特定の実施形態では、ヒトコラーゲンα-2鎖は、配列番号4に記載される配列によってコードされる。
【0081】
さらに別の実施形態では、外因性P4Hは、哺乳動物P4Hである。特に、外因性P4Hは、ヒトP4Hである。さらに別の実施形態では、本方法は、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-1を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む。さらに別の実施形態では、本方法は、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-2を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む。
【0082】
さらに別の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンは、アテロコラーゲンである。別の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンは、配列番号1および配列番号4に由来するアミノ酸(AA)配列を有するアテロコラーゲンである。アテロコラーゲンは、配列番号1および配列番号4の産物である、プロコラーゲンの酵素消化(例えば、フィシンによる)に由来する。
【0083】
さらに別の実施形態では、光開始剤は、可視光に応答して重合性溶液の重合を誘導する。特に、可視光は、390~800nmの波長を有する。特に、光開始剤は、エオシンY+トリエタノールアミン、リボフラビンなどからなる群から選択される。
【0084】
別の実施形態では、光開始剤は、紫外(UV)光に応答して重合性溶液の重合を誘導する。特に、光開始剤は、リチウム フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)または1-[4 2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959)からなる群から選択される。
【0085】
別の実施形態では、光開始剤は、赤外光に応答して重合性溶液の重合を誘導する。
【0086】
さらに別の実施形態では、重合性溶液は、27ゲージ~33ゲージの範囲の中空針またはカニューレを介して組織空間に導入される。
【0087】
さらに別の実施形態では、組織空間内の重合性溶液は、手動マッサージによって所望の構成内で成型または形を整えられる。別の実施形態では、組織空間内の重合性溶液は、成型または形を整える器具を使用して、所望の構成内で成型または形を整えられる。
【0088】
さらに別の実施形態では、組織空間内の重合性溶液は、室温で本質的にゲル化不能である。別の実施形態では、組織空間内の重合性溶液は、37℃で本質的にゲル化不能である。さらに別の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液は、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたは動物由来のコラーゲン、例えば、限定されないが、ウシまたはブタまたはウマのコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、室温での粘度が低い。別の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液は、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたは動物由来のコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、37℃での粘度が低い。
【0089】
全体を通して使用されるように、「動物由来のコラーゲン」という用語は、ウシまたはブタまたはウマのコラーゲンまたはラットテールコラーゲンを包含してもよく、これは、ヒト由来のコラーゲンとは対照的である。
【0090】
さらに別の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液は、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたは動物由来のコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、室温において低い力で組織空間に導入される。さらに別の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液は、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたは動物由来のコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、37℃において低い力で組織空間に導入される。
【0091】
別の態様では、筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減するために表皮の下の組織空間に注入される重合性溶液の使用であって、重合性溶液は、メタクリル化またはチオール化された架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンと、可視光の適用前に、可視光の適用と同時に、重合を誘導するための光開始剤と、を含み、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕を低減するための所望の構成内で重合性溶液を成型または形を整える工程を含む、使用が本明細書で開示される。特定の実施形態では、重合性溶液は、さらに、ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、酸化セルロース(OC)またはその修飾誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾誘導体、リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾誘導体、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその修飾誘導体、結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾誘導体、またはこれらの任意の組み合わせを含む充填剤を含む。
【0092】
修飾誘導体としては、限定されないが、例えば、HA、PVA、PEG、OC、PMMA、TCP、CaHA、カルボキシメチルセルロースまたはCNCの光重合性バージョンが挙げられる。修飾としては、限定されないが、メタクリル化またはチオール化が挙げられる。
【0093】
別の態様では、表皮の下の組織空間を充填する方法であって、
(a)組織空間に重合性溶液を導入する工程を含み、重合性溶液が、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンを含む、方法が本明細書で開示される。
【0094】
本技術は、部分的に、光源、例えば、可視光源を用いる光活性化で重合可能な、成形可能な組成物を形成する美容用および医療用のコラーゲン系重合性充填剤に関する。重合性充填剤は、光開始剤と共に、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンを含む。
【0095】
目的の本技術は、典型的には侵襲的な外科的介入または全身麻酔を行うことなく、特注の輪郭を有する皮膚充填剤またはインプラントのin situでの形成を可能にするという利点を有する。一般に、コラーゲン系重合性溶液は、表皮の下(すなわち、表皮の下)の組織空間内に導入され、重合は、皮膚表面に、すなわち、身体の外側または皮膚の外側から、または表皮に当てられる可視光に対する露光によって誘導される。
【0096】
in situでの重合方法は、可視光源を用いる光活性化時に水不溶性の架橋した架橋網目構造を形成することが可能なポリマー成分を含む重合性溶液を使用する、美容用および医療用の矯正および/または増強手順を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される皮膚充填剤または細胞増殖促進足場は、美容用途のためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される皮膚充填剤または細胞増殖促進足場は、医療用の矯正用途のためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される皮膚充填剤または細胞増殖促進足場は、増強手順、例えば、限定されないが、組織増強で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される二重架橋皮膚充填剤は、美容用途のためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される二重架橋皮膚充填剤は、医療用の矯正用途のためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される二重架橋皮膚充填剤は、医学的または歯科的状態(歯肉移植/歯周病)の結果として必要とされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される二重架橋皮膚充填剤は、皮膚増強を必要とする医学的状態の結果として必要とされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される二重架橋皮膚充填剤は、増強手順、例えば、限定されないが、組織増強で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される光硬化性皮膚充填剤は、美容用途のためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される光硬化性皮膚充填剤は、医療用の矯正用途のためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される光硬化性皮膚充填剤は、医学的または歯科的状態(歯肉移植/歯周病)の結果として必要とされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される光硬化性皮膚充填剤は、皮膚増強を必要とする医学的状態の結果として必要とされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される光硬化性皮膚充填剤は、増強手順、例えば、限定されないが、組織増強で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細胞増殖促進足場は、美容用途のためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細胞増殖促進足場は、医療用の矯正用途のためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細胞増殖促進足場皮膚充填剤は、医学的または歯科的状態(歯肉移植/歯周病)の結果として必要とされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細胞増殖促進足場皮膚充填剤は、皮膚増強を必要とする医学的状態の結果として必要とされる。いくつかの実施形態において、医療用の矯正用途は、腱炎を治療することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細胞増殖促進足場は、増強手順、例えば、限定されないが、組織増強で使用するためのものである。
【0098】
いくつかの実施形態では、組織増強は、皮膚組織の組織増強である。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細胞増殖促進足場を含む皮膚充填剤の使用は、ヒトにおけるものである。いくつかの実施形態では、ヒトにおいて本明細書に開示される細胞増殖促進足場を含む皮膚充填剤の使用は、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの任意の組み合わせを減少する。いくつかの実施形態では、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの任意の組み合わせの低減は、美容目的のためのものである。いくつかの実施形態では、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの任意の組み合わせの低減は、美容目的のためのものである。いくつかの実施形態では、ヒトにおける本明細書に開示される細胞増殖促進足場を含む皮膚充填剤の使用は、組織、例えば、限定されないが、表皮または皮膚組織を増強する。いくつかの実施形態では、組織増強は、美容目的のためのものである。いくつかの実施形態では、組織増強は、医学的治療のためのものである。いくつかの実施形態では、組織増強は、増強手順の一部である。いくつかの実施形態では、組織増強は、皮膚増強手順の一部である。
【0100】
いくつかの実施形態では、組織増強は、任意の医学的または歯科的状態(歯肉移植/歯周病)の結果として必要とされる。
【0101】
特定の実施形態では、本明細書に記載の使用のための皮膚充填剤は、相互貫入(IPN)網目構造または半相互貫入(半IPN)網目構造を含み、異なる構成成分は、それら自体に架橋され得るが、互いに対しては架橋されない。いくつかの実施形態では、IPNまたは半IPN皮膚充填剤は、rhコラーゲンと、充填剤、例えば、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、またはそれらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、IPNまたは半IPNは、rhコラーゲンと、架橋HAと、を含む。いくつかの実施形態では、IPNまたは半IPNは、rhコラーゲン誘導体、例えば、限定されないが、メタクリル化rhコラーゲンまたはチオールrhコラーゲンおよび/または充填剤の誘導体、例えば、限定されないが、メタクリル化HA、PVA、PEGまたはOC、またはチオール化HA、PVA、PEGまたはOC、またはそれらの組み合わせを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPN網目構造または二重架橋網目構造は、充填剤、例えば、限定されないが、HA、PVA、PEGまたはOCと、rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPN網目構造は、MA充填剤、例えば、限定されないが、HA、PVA、PEGまたはOCと、rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPN網目構造は、充填剤、例えば、限定されないが、HA、PVA、PEGまたはOCと、MA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPN網目構造は、MA-充填剤とMA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造は、HAとrhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造は、MA-HAとrhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPN網目構造は、HAとMA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPN網目構造は、MA-HAとMA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造は、充填剤とrhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造は、MA-HA、またはMA-PVA、またはMA-PEG、またはMA-OCと、rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPN網目構造は、MA-HA、またはMA-PVA、またはMA-PEG、またはMA-OCと、MA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPN網目構造は、MA-HA、またはMA-PVA、またはMA-PEG、またはMA-OCと、MA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、皮膚充填剤または二重架橋皮膚充填剤を含むIPNまたは半IPN網目構造は、細胞増殖促進足場を含む。
【0106】
特定の実施形態では、本明細書に記載の使用のための皮膚充填剤は、光硬化性皮膚充填剤を含み、成分の少なくとも1つ、例えば、限定されないが、rhコラーゲンは、メタクリレート-rhコラーゲン誘導体またはチオール-rhコラーゲン誘導体を含む。いくつかの実施形態では、硬化性皮膚充填剤は、rhコラーゲンと、充填剤、例えば、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、またはそれらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、MA-rhコラーゲンと、HAまたはその誘導体と、を含む。いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、rhコラーゲン誘導体、例えば、限定されないが、メタクリル化rhコラーゲンまたはチオールrhコラーゲンおよび/または充填剤の誘導体、例えば、限定されないが、メタクリル化HA、PVA、PEGまたはOC、またはチオール化HA、PVA、PEGまたはOC、またはそれらの組み合わせを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、充填剤、例えば、限定されないが、HA、PVA、PEGもしくはOC、またはそれらの誘導体と、rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、充填剤、例えば、限定されないが、HA、PVA、PEGもしくはOC、またはそれらの誘導体と、MA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、充填剤、例えば、限定されないが、HA、PVA、PEGもしくはOCと、チオール-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、MA-充填剤とMA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、HAとMA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1、1:3、1:4、1:5、または0:1を含む。いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、MA-HAとMA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、PVA、PEGまたはOCとMA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤は、MA-PVA、MA-HA-またはOCとMA-rhコラーゲンとの比率が、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1を含む。いくつかの実施形態では、光硬化性皮膚充填剤のHA成分は、架橋HAまたは架橋MA-HAを含む。
【0109】
本出願全体を通して、皮膚充填剤の様々な実施形態およびその使用は、範囲形式で示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことが理解される必要がある。したがって、範囲の記載は、可能性のある全ての部分範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1:1~6:1などの範囲の記述は、1.1:1、1.2:1、1.3:1から5.9:1、1:1.1~1:1.9などの部分範囲、およびその範囲およびその一部に含まれる個々の数字、例えば、1、2、3、4、5および6を具体的に開示していると考えるべきである。これは、範囲の広さにかかわりなく適用される。
【0110】
本明細書で数値範囲が示される際は常に、示された範囲内に任意の引用された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1に示された数字と第2に示された数字との「間の範囲」は、および第1に示された数字「から」第2に示された数字「までの範囲」の表現は、本明細書では互換的に使用され、第1の示された数字および第2に示された数字ならびにそれらの間の分数および整数の全てを含むことを意味する。
【0111】
例えば、本開示は、表皮の下の組織空間のために、単独で、または充填剤、例えば、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、またはそれらの組み合わせと一緒に、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンを含み、これらが架橋され、光開始剤存在下、可視光活性化時にin situで水不溶性の架橋ポリマー調製物を形成する皮膚充填剤を提供し得る、皮膚充填剤を提供する。いくつかの実施形態では、コラーゲンは、メタクリル化またはチオール化されている。
【0112】
いくつかの実施形態では、皮膚充填剤は、本明細書に記載される使用を提供し、IPNまたは半IPN網目構造を形成する。いくつかの実施形態では、皮膚充填剤は、本明細書に記載される使用を提供し、二重架橋網目構造を形成する。
【0113】
特定の実施形態では、本明細書に記載される使用のために提供される二重架橋皮膚充填剤は、架橋充填剤、例えば、架橋ヒアルロン酸(HA)、架橋ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、架橋ポリエチレングリコール(PEG)、架橋酸化セルロース(OC)、またはそれらの架橋誘導体、またはそれらの組み合わせに架橋されるrhコラーゲンを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される使用のために提供される二重架橋皮膚充填剤は、メタクリル化またはチオール化された架橋充填剤、例えば、HA、PVA、PEGまたはOCにさらに架橋されるrhコラーゲンを含む。
【0114】
特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋充填剤とrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、MA充填剤とrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋充填剤とMA-rhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、MA-充填剤とMA-rhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、チオール化充填剤とrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋充填剤とチオール化rhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、チオール化充填剤とチオール化rhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。
【0115】
特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋HAまたは架橋MA-HAは、rhコラーゲンまたはメタクリル化rhコラーゲンまたはチオールrhコラーゲンにさらに架橋され、二重架橋皮膚充填剤を生じる。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋HAとrhコラーゲンまたはメタクリル化rhコラーゲンまたはチオールrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋MA-HAとrhコラーゲンまたはメタクリル化rhコラーゲンまたはチオールrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋MA-HAとrhコラーゲンまたはメタクリル化rhコラーゲンまたはチオールrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。
【0116】
特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋PVA、PEGまたはOC、または架橋MA-PVA、MA-PEG、またはMA-OCは、rhコラーゲンまたはメタクリル化rhコラーゲンにさらに架橋され、二重架橋皮膚充填剤を生じる。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋PVA、PEGまたはOCとrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋MA-PVA、MA-PEG、またはMA-OCとrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋PVA、PEGまたはOCとMA-rhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋MA-PVA、MA-PEG、またはMA-OCとMArhコラーゲンまたはチオールrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。
【0117】
特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋チオール-PVA、チオール-PEGまたはチオール-OCは、rhコラーゲンまたはメタクリル化rhコラーゲンにさらに架橋され、二重架橋皮膚充填剤を生じる。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋チオール-PVA、チオール-PEGまたはチオール-OCとrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。特定の実施形態では、二重架橋皮膚充填剤において、架橋チオール-PVA、チオール-PEGまたはチオール-OCとMArhコラーゲンまたはチオールrhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。
【0118】
いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸をコラーゲンに架橋することができる任意の水溶性カップリング剤を使用することができる。カップリング剤のいくつかの非限定的な例としては、N、N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N、N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミドカップリング剤は、結合の一部になることなく、エステル結合またはアミド結合の形成を促進する可能性がある。言い換えると、エステル結合またはアミド結合は、ヒアルロン酸またはコラーゲンの片方からのカルボキシレート基と、他方からのヒドロキシル基またはアミン基とからの原子を含んでもよい。しかしながら、架橋基の一部となる他のカップリング剤を使用してもよい。カップリング剤の濃度は変動してもよい。いくつかの実施形態では、カップリング剤は、約2mM~約150mM、約2mM~約50mM、約20mM~約100mM、または約50mMで存在してもよい。いくつかの実施形態では、カップリング剤は、約20mM~約100mM、約2mM~約50mM、または約50mMの濃度で存在するEDCである。いくつかの実施形態では、カップリング剤は、rhコラーゲン中の遊離アミンの数の10倍から100倍に等しいEDCの量で存在するEDCである。いくつかの実施形態では、カップリング剤は、rhコラーゲン中の遊離アミンの数の50倍に等しいEDCの量で存在するEDCである。カルボジイミド濃度を約50mMまで増加させると、ヒドロゲルの剛性が高く、および/または膨潤が少ない架橋高分子マトリックスが得られる可能性がある。
【0119】
当業者は、二重架橋を含む皮膚充填剤であって、この充填剤が、それ自体に架橋され、次いで、rhコラーゲンにも架橋される皮膚充填剤が、単一の反応において、単一の種類の架橋剤を用いてコラーゲンとHAを直接架橋することを含む皮膚充填剤とは異なることを理解するであろう。そのような皮膚充填剤の特性は、異なる。
【0120】
例として、本重合性溶液を使用して、皮膚表面のすぐ下の様々な管腔および空隙を遮断または充填することができる。したがって、本技術は、ヒト患者などの宿主における組織増強の方法であって、上述の目的の重合性溶液は、当該技術分野で知られている方法を使用、例えば、増強を必要とする組織部位の中または組織部位で重合性溶液を注入し、適用されると、その上にある体表面に可視光を当て、堆積した重合性溶液を重合する方法を使用して、目的の部位に導入される、方法を提供する。
【0121】
「増強」とは、欠陥、特に、組織の損失または欠如に起因する欠陥を、そのような組織をポリマーまたはネットワークまたは目的物で提供すること、増強すること、または置き換えることによる修復、予防または軽減を意味する。増強は、天然の構造または特徴の補強、すなわち、例えばその大きさを増加させるために既存の身体部分(例えば、唇、鼻、乳房、耳、器官の部分、あご、頬など)に付加する構築物を含むことも意味する。したがって、組織の増強としては、例えば、顔、首、手、足、指およびつま先の中または表面の筋、ひだ、しわ、瘢痕、小さな顔面の凹み、ひび割れた唇、表皮のしわなどの充填または低減、手および足、指およびつま先におけるものを含む、老化または疾患に起因する経度な奇形の矯正、発話を回復するための声帯または声門の増強、睡眠による筋および表情線の皮膚充填、老化により失われた皮膚および皮下組織の置き換え、唇の増強、目の周囲のしわと眼窩溝の充填、乳房の増強、あごの増強、頬および/または鼻の増強、例えば過度な脂肪吸引または他の外相に起因する皮膚または皮下の軟組織中の凹みの充填、ニキビまたは外傷性の瘢痕およびしわの充填、ほうれい線、鼻眉間の筋および口腔下側の線筋の充填などを挙げることができる。
【0122】
目的の重合性溶液は、いくつかの実施形態では、使用温度で細い外科用針(例えば、少なくとも27ゲージ、少なくとも33ゲージのゲージを有する針、またはより細い針)などの送達手段によって容易に押し出すのに好適な粘度を有する重合性溶液を包含する。したがって、「注入可能」である溶液は、好適な送達デバイス、例えば、外科用針、他の外科用器具、または内視鏡もしくは経皮的椎間板切除術で使用される機器などの他の送達手段を通る流れを可能にする質感および粘度を有する溶液である。したがって、目的の重合性溶液は、当該技術分野で知られているように、好適なアプリケータ、例えば、カテーテル、カニューレ、針、シリンジ、管状装置などによって注入可能である。
【0123】
組織空間に注入されると、重合性溶液は、通常、重合の光開始が促進された後、組織空間内の所望の輪郭内で操作され、マッサージされ、成型され、または形を整えられてもよい。一実施形態では、操作、マッサージ、成型または形を整えることは、ゲル化プロセス中に行われる。重合性溶液、重合中の溶液、または部分的に重合された溶液は、例えば、外科用圧迫器などの成形手段、または平坦または曲がった表面、指、手のひら、ナックルなどを用いる他のツールまたは器具を用い、外部からの操作によって成形することができる。
【0124】
驚くべきことに、本方法の遺伝子組換えされた架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンは、より小さなゲージの針の使用および低減された注入力を可能にすることによって、また、より小さな組織空間を充填するその能力によって、改善されたコラーゲンを含有する皮膚充填剤および皮膚充填の改善された方法を提供する。
【0125】
注入の「発現力」(ニュートン、N)には、針またはカニューレからの注入に必要な力が含まれる。
【0126】
「絶対粘度」(「動的粘度」)は、力が加えられたときの流れに対する流体の抵抗である。絶対粘度は、力と速度の比率に比例する。ギリシャ文字のη(イータ)は、計算における絶対粘度を表す。多くの一般的な流体の粘度は0.5cP~1000cPであるため、通常はcPで測定される。
【0127】
「ゲル」は、高分子の分離のための媒体として使用される有機ポリマーの半硬質スラブまたは円柱形である。ゲルは、実質的に薄い架橋系であり、定常状態のときは流動性を示さない。ゲルは、主に、重量で液体であるが、液体のいくつかの特性、例えば、変形能を保持しつつ、液体内の三次元の架橋した網目構造に起因して部分的に固体として挙動する。ゲルにその構造(硬度)を与え、接着粘着(粘着性)に寄与するのは、流体内の架橋である。結果として、ゲルは、固体内の液体分子の分散、すなわち、固体媒体内に分散された液体粒子とみなすことができる。「ゲル化時間」は、重合性溶液がゲルを形成するのにかかる時間である。
【0128】
「ヒドロゲル」は、親水性であり、時に、水が分散媒体であるコロイドゲルとして見出されるポリマー鎖の網目構造である。ヒドロゲルは、吸収性が高く(例えば、90%を超える水を含むことができる)ポリマー網目構造であり、その顕著な含水量に起因して、天然組織と非常によく似た柔軟性を有する。
【0129】
「ポリマー」は、一連の繰り返しサブユニットで構成される高分子である。基本的な繰り返しサブユニットは「モノマー」として知られている。ひとまとめにして、ポリマーは、その引張強度と弾性について知られている。
【0130】
「光開始剤」は、放射線(UVまたは可視光)にさらされたときに反応種(フリーラジカル、陽イオン、または陰イオン)を生成する分子である。本発明の光開始剤は、重合性溶液の重合を誘導する。本方法で有用な光開始剤の例としては、限定されないが、リチウム フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)または1-[4 2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959)、エオシンY+トリエタノールアミンまたはリボフラビンが挙げられる。
【0131】
メタクリル酸は、メタクリル酸に由来するエステルまたは塩である。メタクリレートは、ポリマープラスチックの一般的なモノマーであり、アクリレートポリマーを形成する。コラーゲンへのメタクリレート基の付加によって、光硬化性のコラーゲンメタクリレート(rhコラーゲン-MAまたはMA-rhコラーゲン)が得られる。ヒアルロン酸(HA)へのメタクリレート基の付加によって、光硬化性のヒアルロン酸-メタクリレート(HAMAまたはMA-HA)が得られる。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の皮膚充填剤で使用されるrhコラーゲンは、非修飾rhコラーゲンとMA-rhコラーゲンの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、非修飾rhコラーゲンとMA-rhコラーゲンとの比率は、約1:0、1:1、1:2、1:3、1:4、0:1、2:1、3:1または4:1である。いくつかの実施形態では、MA-rhコラーゲンの最終濃度範囲は、約0~12mg/mlを含む。いくつかの実施形態では、非修飾rhコラーゲンの最終濃度範囲は、約0~12mg/mlを含む。いくつかの実施形態では、MA-rhコラーゲンの最終濃度範囲は、約0~12mg/mlを含み、非修飾rhコラーゲンの最終濃度範囲は、約0~12mg/mlを含む。いくつかの実施形態では、MA-rhコラーゲンの最終濃度範囲は、約0mg/ml~6mg/mlを含む。いくつかの実施形態では、非修飾rhコラーゲンの最終濃度範囲は、約0mg/ml~6mg/mlを含む。いくつかの実施形態では、MA-rhコラーゲンの最終濃度は、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12mg/mlを含む。いくつかの実施形態では、非修飾rhコラーゲンの最終濃度は、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12mg/mlを含む。
【0133】
チオールは、炭素結合したスルフヒドリル(R-SH)基(式中、Rはアルキルまたは他の有機置換基を表す)を含む有機硫黄化合物である。コラーゲンのチオール化は、凝集特性および粘膜付着特性を改善する可能性があり、膨潤能力に影響を与える。
【0134】
光は、電磁放射線の一形態である。「可視光」は、380~800nmまたは少なくとも390~700nmの範囲の波長を有する光である。「紫外線」は、より短い波長を有し、「赤外線」は、より長い波長を有する。
【0135】
照射手段は、使用される光開始剤を活性化するのに好適な光源であってもよく、体外から光開始剤を活性化することができる。熱開始剤を使用することができ、したがって赤外線源を使用することができ、また、紫外線活性化開始剤を使用することができ、したがって好適な紫外線源を使用することができ、好ましい光源は、白色光源である。したがって、好適な光開始剤が使用され、その結果、開始剤および光源の最大吸光度が調整される。本明細書で上述されたように、そのような可視光源の1つは、発光ダイオード(LED)である。例えば、身体に、必要に応じて部位に、または皮膚表面の上から電磁放射線を当てることによって、ゲル化が、体内で、上述の部位で、皮膚表面の下などで発生する限り、他の好適な光源を使用することができる。電磁放射線は、ゲル化を可能にする強度、時間および持続時間で当てられる。光源は、皮膚表面の上に、または皮膚表面に直接、典型的には成型または形を整えられる重合性溶液の位置の上に配置することができる。
【0136】
いくつかの実施形態のモノマー溶液は、製薬分野で知られているように、任意の様々な他の材料、例えば、不活性材料(例えば、防腐剤、充填剤、賦形剤または希釈剤)、薬理学的に活性な分子または薬剤(例えば、低分子または生物学的細胞など)を含んでもよい。したがって、好適な不活性な薬剤または生物学的に活性な薬剤をモノマー溶液に添加してもよい。後者の場合には、活性な薬剤は、目的の重合した構造または網目構造の部位またはその近傍で局所的に薬理作用を発揮し得るか、または形成された足場、マトリックスまたは網目構造から放出され、隣接する組織空間を通って移動してもよく、または局所的な効果を少なくするために循環系に入ってもよい。
【0137】
上で考察されたように、目的の重合性溶液の方法も、他の皮膚科、整形外科、美容および他の医学的治療と組み合わせて使用することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、重合性溶液を既知の充填剤と混合して、成形可能であり、輪郭を形成することが可能であり、滞留時間が長いなどの組成物を提供する。充填剤の例としては、限定されないが、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、またはそれらの修飾誘導体、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、半液体相の重合性溶液は、同じく半液体相の既知の充填剤と同様に真皮に独立して注入され、それが一緒になって、成形可能であり、輪郭を形成することが可能であり、滞留時間が長いなどの組成物を提供する。独立して注入可能な充填剤の例としては、限定されないが、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、またはそれらの修飾誘導体、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、半液体相の重合性溶液は、混合物として真皮に注入され、それが一緒になって、成形可能であり、輪郭を形成することが可能であり、滞留時間が長いなどの組成物を提供する。rhコラーゲンと混合して注入可能な充填剤の例としては、限定されないが、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、またはそれらの修飾誘導体、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0139】
さらに別の態様では、表皮の下の組織空間内に細胞増殖促進足場を誘導する方法であって、組織空間に溶液を導入する工程を含み、この溶液は、(a)植物由来のヒトコラーゲンと、(b)少なくとも1つの成長因子またはその供給源と、を含む、方法が本明細書で開示される。
【0140】
一実施形態では、少なくとも1つの成長因子の供給源は、血漿または多血小板血漿を含む。
【0141】
一実施形態では、細胞増殖促進足場は、コラーゲンを含む組織の分解または損傷に起因する治癒または置換を促進する。一実施形態では、コラーゲンを含む組織は、腱、靭帯、皮膚、角膜、軟骨、血管、腸、椎間板、筋肉、骨または歯からなる群から選択される。特定の実施形態では、細胞増殖促進足場は、腱炎の治癒を促進する。
【0142】
一実施形態では、植物由来のコラーゲンは、rhコラーゲンを含む。一実施形態では、植物由来のコラーゲンは、遺伝子組み換え植物から得られる。様々な実施形態では、遺伝子組換え植物は、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、米、ジャガイモ、大豆、トマト、小麦、大麦、キャノーラ、ニンジンおよび綿からなる群から選択される遺伝子組換え植物である。一実施形態では、遺伝子組み換え植物は、タバコ植物である。
【0143】
一実施形態では、遺伝子組換え植物は、COL1、COL2、P4H-α、P4H-βおよびLH3からなる群から選択されるヒトデオキシリボ核酸(DNA)の少なくとも1つの遺伝子配列の発現可能な配列を含む。
【0144】
特定の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンは、配列番号3に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも修飾された1つのヒトコラーゲンα-1鎖と、配列番号6に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも1つの修飾ヒトコラーゲンα-2鎖と、を含み、遺伝子組換え植物は、さらに、外因性プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)を発現する。
【0145】
別の特定の実施形態では、本方法は、リシルヒドロキシラーゼ(LH)、プロテアーゼNおよびプロテアーゼCからなる群から選択される外因性ポリペプチドを発現する工程をさらに含む。
【0146】
1つの特定の実施形態では、ヒトコラーゲンα-1鎖は、配列番号1に記載される配列によってコードされる。別の特定の実施形態では、ヒトコラーゲンα-2鎖は、配列番号2に記載される配列によってコードされる。
【0147】
一実施形態では、外因性P4Hは、哺乳動物P4Hである。1つの特定の実施形態では、外因性P4Hは、ヒトP4Hである。
【0148】
一実施形態では、本方法は、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-1を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む。一実施形態では、本方法は、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-2を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む。
【0149】
1つの特定の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンは、アテロコラーゲンである。
【0150】
当業者は、「皮膚充填剤」という用語が、いくつかの実施形態では、植物由来のヒトコラーゲン、例えば、1型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)またはその誘導体を含む溶液を包含することを理解するであろう。「皮膚充填剤」という用語はまた、いくつかの実施形態では、植物由来のヒトコラーゲン、例えば、1型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)またはその誘導体と、充填剤またはその誘導体、または架橋充填剤またはその誘導体と、を含み、全て同じ意味および品質を有し、皮膚充填剤が、組織構造を増強するために使用されてもよく、または筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕、またはそれらの組み合わせを低減するために使用されてもよい、溶液を包含する。
【0151】
当業者は、本明細書に記載の皮膚充填剤が、例えば、以下に限定されないが、異なる製剤を含むことを理解するであろう。
●rhコラーゲンまたはそのMAまたはチオール誘導体、
●rhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールと、充填剤またはその誘導体と、を含む、IPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造、
●rhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールと、HAまたはMA-HAまたはチオール-HAと、を含む、IPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造、
●rhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールと、PVAまたはMA-PVAまたはチオール-PVAと、を含む、IPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造、
●rhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールと、PEGまたはMA-PEGまたはチオール-PEGと、を含む、IPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造、
●rhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールと、OCまたはMA-OCまたはチオール-OCと、を含む、IPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造、
●rhコラーゲンと、高濃度の血小板を含有する血液の自己多血小板血漿(PRP)フラクションと、を含む、IPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造、または細胞増殖促進足場、
●IPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造、または細胞増殖促進足場であって、各々が、rhコラーゲンと、高濃度の血小板を含有する血液の自己多血小板血漿(PRP)フラクションと、を含み、血小板は、血管内皮増殖因子(VEGF)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来表皮増殖因子(PDEGF)、線維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮成長因子(EGF)または肝細胞増殖因子(HGF)、またはそれらの組み合わせを含む、様々な種類の成長因子(GF)を放出する、IPNまたは半IPNまたは二重架橋網目構造、または細胞増殖促進足場、
●架橋充填剤またはその誘導体に架橋されたrhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールを含む、二重架橋皮膚充填剤、
●架橋HAまたは架橋MA-HAまたは架橋チオール-HAに架橋されたrhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールを含む、二重架橋皮膚充填剤、
●架橋PVAまたは架橋MA-PVAまたは架橋チオール-PVAに架橋されたrhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールを含む、二重架橋皮膚充填剤、
●架橋PEGまたは架橋MA-PEGまたは架橋チオール-PEGに架橋されたrhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールを含む、二重架橋皮膚充填剤、または
●架橋OCまたは架橋MA-OCまたは架橋チオール-OCに架橋されたrhコラーゲンまたはrhコラーゲン-MAまたはrhコラーゲン-チオールを含む、二重架橋皮膚充填剤。
【0152】
当業者は、いくつかの実施形態では、「細胞増殖促進足場」という用語は、コラーゲンと、血液の自己多血小板血漿(PRP)フラクションまたはその成分と、を含む、皮膚充填剤を包含することを理解するであろう。いくつかの実施形態では、PRPは、「細胞」を含まないが、成長因子と、フィブリノーゲンおよびプロトロンビンなどの血漿成分とを含有する(細胞由来の)膜小胞を含む。いくつかの実施形態では、「細胞増殖促進足場」は、コラーゲンと、血液の自己多血小板血漿(PRP)フラクションまたはその成分と、少なくとも1つのさらなる充填剤成分と、を含む皮膚充填剤を包含する。
【0153】
いくつかの実施形態では、細胞増殖促進足場は、IPN網目構造、半IPN網目構造であってもよい皮膚充填剤、または高濃度の血小板を含有する血液の自己多血小板血漿(PRP)フラクションをさらに含む二重架橋皮膚充填剤を含み、血液の自己PRPフラクションは、高濃度の血小板を含有し、血小板は、血管内皮増殖因子(VEGF)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来表皮増殖因子(PDEGF)、線維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮成長因子(EGF)または肝細胞増殖因子(HGF)、またはそれらの組み合わせを含む、様々な種類の成長因子(GF)を放出する。いくつかの実施形態では、細胞増殖促進足場は、IPN網目構造、半IPN網目構造を含む皮膚充填剤、または血管内皮増殖因子(VEGF)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来表皮増殖因子(PDEGF)、線維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮成長因子(EGF)または肝細胞増殖因子(HGF)、またはそれらの組み合わせを含む少なくとも1つの成長因子をさらに含む二重架橋皮膚充填剤を含む。いくつかの実施形態では、細胞増殖促進足場は、IPN網目構造、半IPN網目構造を含む皮膚充填剤、またはPRP成分の一部またはフラクションをさらに含む二重架橋皮膚充填剤を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の皮膚充填剤は、重合性溶液を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の皮膚充填剤は、非重合性溶液を含む。いくつかの実施形態において、皮膚充填剤溶液の重合は、インビボで起こる。いくつかの実施形態では、重合可能な皮膚充填剤溶液の成分が一緒に注入され、次いで重合されて、硬化した皮膚充填剤を形成する。いくつかの実施形態では、重合可能な皮膚充填剤溶液の成分は、独立して注入され、次いで重合されて、硬化した皮膚充填剤を形成する。皮膚充填剤成分を独立して注射する独特のアプローチの一例は、いくつかの実施形態では、皮膚真皮に充填剤、例えば、限定されないが、HAまたはその誘導体を注入する工程と、この皮膚真皮に、第1の注入のすぐ近くに、メタクリル化またはチオール-rhコラーゲンを別個に注入する工程と、を含んでいてもよく、この成分は、半液体相であり、次いで、in situで架橋する工程を含んでもよい。このアプローチは、いくつかの実施形態では、光重合によって皮膚充填剤成分を一緒に硬化させる前に、より容易な注入およびin situで形を整えることを可能にする。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される皮膚充填剤は、軟組織増強の方法で使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される皮膚充填剤は、細胞増殖を向上させる。いくつかの実施形態では、軟組織増強の方法で提供および使用される皮膚充填剤は、時間経過と共に分解する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される皮膚充填剤は、皮膚充填剤が表皮の下の組織空間を充填する軟組織増強の方法で使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される皮膚充填剤は、軟組織増強の方法で使用され、その使用は、筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減する。
【0156】
一実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液は、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたは動物由来のコラーゲンを含む類似の溶液と比較して、室温での粘度が低い。別の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液は、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたは動物由来のコラーゲンを含む類似の溶液と比較して、37℃での粘度が低い。さらに別の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液は、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたは動物由来のコラーゲンを含む類似の溶液と比較して、室温で低い力で組織空間に導入される。さらに別の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液は、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたは動物由来のコラーゲンを含む類似の溶液と比較して、37℃で低い力で組織空間に導入される。1つの特定の実施形態では、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液は、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたは動物由来のコラーゲンを含む類似の溶液と比較して、足場形成を増加させるか、または細胞増殖における増加を促進する。
【0157】
さらに別の態様では、細胞増殖促進足場を誘導するための表皮の下の組織空間に注入される溶液の使用であって、この溶液は、植物由来のヒトコラーゲンと、少なくとも1つの成長因子またはその供給源とを含み、コラーゲンを含む組織の分解または損傷に起因する治癒または置換を促進する、使用が本明細書で開示される。特定の実施形態では、少なくとも1つの成長因子の供給源は、血漿または多血小板血漿を含む。
【0158】
実施形態では、コラーゲンを含む組織は、腱、靭帯、皮膚、角膜、軟骨、血管、腸、椎間板、筋肉、骨または歯からなる群から選択される。別の実施形態では、細胞増殖促進足場は、腱炎の治癒を促進する。実施形態では、コラーゲンを含む組織は、皮膚である。
【0159】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種類のコラーゲンα鎖を発現し、内因性P4H活性を欠く細胞内コンパートメント中でそれを蓄積することが可能な遺伝子組換え植物が提供される。
【0160】
本明細書で使用される場合、「遺伝子組換え植物」という句は、外因性ポリヌクレオチド配列で安定的または一時的に形質転換される、任意の下等(例えば、コケ)植物または高等(例えば、維管束)植物、またはその組織または単離された細胞(例えば、細胞懸濁物の)を指す。植物の例としては、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、米、ジャガイモ、大豆、トマト、小麦、大麦、キャノーラ、綿、ニンジン、およびコケなどの下等植物が挙げられる。
【0161】
本明細書で使用される場合、「コラーゲン鎖」という句は、コラーゲン線維、好ましくはI型線維のα1鎖またはα2鎖などのコラーゲンサブユニットを指す。本明細書で使用される場合、「コラーゲン」という句は、組み立てられたコラーゲントリマーを指し、I型コラーゲンの場合、2つのα1鎖と1つのα2鎖とを含む。コラーゲン線維は、末端のプロペプチドCおよびNを欠いたコラーゲンである。
【0162】
本明細書で使用される場合、「内因性P4H活性を欠く細胞内コンパートメント」という句は、植物P4Hまたは植物様P4H活性を有する酵素を含まない細胞の任意のコンパートメント化された領域を指す。このような細胞内コンパートメントの例としては、液胞、アポプラストおよび細胞質、ならびに葉緑体、ミトコンドリアなどの細胞小器官が挙げられる。
【0163】
任意の種類のコラーゲン鎖を、本発明の遺伝子組換え植物によって発現させることができる。例としては、原線維を形成するコラーゲン(I、II、III、VおよびXI型)、網目構造を形成するコラーゲン(IV、VIIIおよびX型)、原線維表面と会合するコラーゲン(IX、XIIおよびXIV型)、膜貫通タンパク質として発生するコラーゲン(XIIIおよびXVII型)、または11nmの周期的な球状フィラメントを形成するコラーゲン(VI型)が挙げられる。
【0164】
一実施形態では、発現されるコラーゲン鎖は、I型コラーゲンのα1および/または2鎖である。発現されるコラーゲンα鎖は、任意の哺乳動物に由来する任意のポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。特定の実施形態では、コラーゲンα鎖をコードする配列は、ヒトであり、配列番号1および4によって示される。
【0165】
典型的には、植物で発現されるαコラーゲン鎖は、それらの末端プロペプチド(すなわち、プロペプチドCおよびプロペプチドN)を含んでもよく、または含まなくてもよい。
【0166】
植物のタンパク質分解活性によるプロコラーゲンのプロセシングは、ヒトにおける通常のプロセシングとは異なり、開裂部位は不明であるが、そのプロペプチドCは、植物のタンパク質分解活性によって除去される。Cプロペプチドの開裂は、トリマーの組織化の前にプロコラーゲンペプチドで起こる可能性がある(トリマーの組織化を開始するには、3個のC-プロペプチドの会合が不可欠である)。
【0167】
植物のタンパク質分解活性によるN-プロペプチドの開裂は、成熟した植物では起こるが、未発育の植物では起こらない。このような開裂により、Nテロペプチドから2個のアミノ酸が除去される(17個のうち2個)。
【0168】
C-プロペプチド(およびこれより程度は低いがN-プロペプチド)は、動物細胞を通過する間、プロコラーゲンを可溶性に維持し(Bulleidら、2000)、植物細胞でも同様の効果があると予想される。細胞外マトリックスへのプロコラーゲン分子の分泌の後、または分泌中に、プロペプチドは、プロコラーゲンのN-プロテイナーゼおよびC-プロテイナーゼによって除去され、それによって、コラーゲン分子から原線維への自発的な自己組織化を引き起こす。プロコラーゲンのN-プロテイナーゼおよびC-プロテイナーゼによるプロペプチドの除去によって、プロコラーゲンの溶解度が10000分の1より大きく低下し、コラーゲンから原線維への自己組織化を開始するために必要かつ十分である。この組織化プロセスにとって重要なのは、三重らせんドメイン末端にある、テロペプチドと呼ばれる短い非三重らせんペプチドであり、原線維構造内のコラーゲン分子の正しい位置決めを確実にし、自己組織化の臨界濃度が低下する。ペプシンは、コラーゲンの生成中にプロペプチドを開裂させることができる。しかしながら、ペプシンは、テロペプチドに損傷を与え、その結果、ペプシンによって抽出されたコラーゲンは、規則的な線維構造を形成することができない。
【0169】
ヒトP4Hのβサブユニットを形成するタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は、トリマー組織化の前にC-プロペプチドに結合し、それによって鎖組織化中に分子シャペロンとしても機能することが示された。
【0170】
異なる植物で発現されるヒトプロコラーゲンI型のN-プロテイナーゼおよびプロコラーゲンC-プロテイナーゼを使用すると、天然のヒトコラーゲンにより類似したコラーゲンが生成する可能性があり、規則的な線維構造を形成し得る。
【0171】
NまたはCプロペプチドまたは両方が、発現したコラーゲン鎖に含まれる場合、本発明の遺伝子組換え植物も、それぞれのプロテアーゼ(すなわち、CまたはNまたは両方)を発現することができる。そのようなプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号18(プロテアーゼC)および20(プロテアーゼN)によって例示される。そのようなプロテアーゼは、それらがコラーゲン鎖と同じ細胞内コンパートメントに蓄積されるように発現され得る。
【0172】
内因性P4H活性を欠く細胞内コンパートメント内で発現したコラーゲン鎖の蓄積は、いくつかのアプローチのいずれか1つを介してもたらされ得る。
【0173】
例えば、発現されたコラーゲン鎖は、発現されたタンパク質をアポプラストまたはオルガネラ(例えば葉緑体)などの細胞内コンパートメント内に標的化するためのシグナル配列を含み得る。好適なシグナル配列の例としては、葉緑体トランジットペプチド(Swiss-ProtエントリーP07689、アミノ酸1~57に含まれる)およびミトコンドリアトランジットペプチド(Swiss-ProtエントリーP46643、アミノ酸1~28に含まれる)が挙げられる。以下の実施例の章は、好適なシグナル配列のさらなる例、ならびに植物細胞におけるコラーゲン鎖の発現においてそのようなシグナル配列を使用するためのガイドラインを提供する。
【0174】
あるいは、コラーゲン鎖の配列は、植物内で発現されたときにコラーゲンの細胞局在化を変化させる方法で修飾することができる。
【0175】
本明細書で上述されたように、植物のERには、コラーゲン鎖を正しくヒドロキシル化することができないP4Hが含まれる。コラーゲンα鎖には、発現したコラーゲンを翻訳後修飾される(正しくないヒドロキシル化を含む)ERに誘導するER標的配列が本来含まれる。したがって、ER標的配列の除去は、いかなるヒドロキシル化を含む翻訳後修飾を欠く、コラーゲン鎖の細胞質蓄積を引き起こすであろう。
【0176】
以下の実施例の章の実施例1は、ER配列を欠くコラーゲン配列の生成を記載する。
【0177】
さらにこれに代えて、コラーゲン鎖は、葉緑体またはミトコンドリアなどのオルガネラを含むDNA内で発現され、蓄積され得る。葉緑体発現のさらなる説明は、本明細書で以下に提供される。
【0178】
本明細書で上述されたように、α鎖のヒドロキシル化は、安定したI型コラーゲンの組織化に必要である。本発明の遺伝子組換え植物によって発現されるα鎖は、内因性P4H活性を欠くコンパートメント内に蓄積するため、このような鎖は、植物、植物組織または細胞から単離され、インビトロでヒドロキシル化されてもよい。このようなヒドロキシル化は、Turpeenniemi-HujanenおよびMyllyla(Concomitant hydroxylation of proline and lysine residues in collagen using purified enzymes in vitro.Biochim Biophys Acta.1984年7月16日;800(1):59-65)によって記載される方法によって達成することができる。
【0179】
このようなインビトロでのヒドロキシル化は、正しくヒドロキシル化されたコラーゲン鎖を生じることができるが、達成するのは困難であり、費用がかさむ可能性がある。
【0180】
インビトロでのヒドロキシル化の制限を克服するために、本発明の遺伝子組換え植物は、好ましくは、コラーゲンα鎖を正しくヒドロキシル化する[すなわち、Gly-X-Yトリプレットのプロリン(Y)位置でのみヒドロキシル化する]ことが可能なP4Hも共発現する。P4Hは、αとβの2つのサブユニットで構成される酵素である。βサブユニットもシャペロン機能を保有するが、活性な酵素を形成するためには、両者が必要である。
【0181】
本発明の遺伝子組換え植物によって発現されるP4Hは、好ましくは、例えば、配列番号12および14によってコードされるヒトP4Hである。さらに、向上した基質特異性を示すP4H変異体、またはP4Hホモログも使用することができる。
【0182】
好適なP4Hホモログは、NCBI寄託NP_179363によって特定されるArabidopsisオキシドレダクターゼによって例示される。本願発明者らによって実施された、このタンパク質配列とヒトP4Hαサブユニットとのペアワイズアラインメントは、植物の任意の既知のP4Hホモログの機能性ドメイン間の最大の相同性を明らかにした。
【0183】
P4Hは、発現されたコラーゲン鎖と共に蓄積する必要があるため、そのコード配列は、好ましくは、それに応じて修飾される(シグナル配列の付加、ER標的化を妨ぎ得る欠失など)。
【0184】
哺乳動物細胞では、コラーゲンは、リシルヒドロキシラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、およびグルコシルトランスフェラーゼによっても修飾される。これらの酵素は、特定の位置のリシル残基を、ヒドロキシリシル、ガラクトシルヒドロキシリシル、およびグルコシルガラクトシルヒドロキシリシル残基に順次修飾する。単一のヒト酵素であるリシルヒドロキシラーゼ3(LH3)は、ヒドロキシリシン結合した炭水化物形成の3つの連続する工程全てに触媒作用を及ぼすことができる。
【0185】
したがって、本発明の遺伝子組換え植物は、好ましくは、哺乳動物LH3も発現する。LH3コード化配列、例えば配列番号22によって示されるものは、そのような目的のために使用することができる。
【0186】
上述のコラーゲン鎖および修飾酵素は、植物機能性プロモーターの転写制御下で配置されたα鎖および/または修飾酵素(例えば、P4HおよびLH3)をコードするポリヌクレオチド配列を含む、安定に組み込まれたか、または一時的に発現された核酸構築物から発現されてもよい。そのような核酸構築物(本明細書では発現構築物とも呼ばれる)は、植物全体、定義された植物組織または定義された植物細胞、または植物の定義された発達段階での発現のために構成されてもよい。そのような構築物はまた、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性)と、エンハンサーエレメントと、細菌複製のための複製起点とを含んでもよい。
【0187】
2つの発現可能な挿入物(例えば、2種類のαプロコラーゲン鎖、またはα鎖およびP4H)を含む構築物は、好ましくは、各挿入物のための個々のプロモーターを含むか、あるいはそのような構築物は、単一のプロモーターからの両方の挿入配列を含む単一の転写キメラを発現してもよいことが理解されるであろう。そのような場合、キメラ転写物は、下流の挿入物がそこから翻訳され得るように、2つの挿入配列の間にIRES配列を含む。
【0188】
組織特異的、発生特異的、構成的または誘導性のいずれかであり得る多数の植物機能性発現プロモーターおよびエンハンサーを、本発明の構築物によって利用することができ、いくつかの例が本明細書で以下に提供される。
【0189】
「植物プロモーター」または「プロモーター」という句に続く本明細書および特許請求の範囲の章において、本明細書で使用される場合、植物細胞(DNAを含むオルガネラを含む)における遺伝子発現を指令することができるプロモーターを含む。このようなプロモーターは、植物、細菌、ウイルス、真菌または動物起源のものに由来してもよい。このようなプロモーターは、構成的(すなわち、複数の植物組織において高レベルの遺伝子発現を指令することができる)、組織特異的(すなわち、特定の植物組織または複数の組織において遺伝子発現を指令することができる)、誘導性(すなわち、刺激によって遺伝子発現を指令することができる)、またはキメラ(すなわち、少なくとも2つの異なるプロモーターの部分から形成された)であってもよい。
【0190】
したがって、使用される植物プロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーターまたはキメラプロモーターであってもよい。
【0191】
構成的植物プロモーターの例としては、限定されないが、CaMV35SおよびCaMV19Sプロモーター、FMV34Sプロモーター、サトウキビ桿状バドナウイルスプロモーター、CsVMVプロモーター、Arabidopsis ACT2/ACT8アクチンプロモーター、ArabidopsisユビキチンUBQIプロモーター、大麦葉チオニンBTH6プロモーターおよびイネアクチンプロモーターが挙げられる。
【0192】
組織特異的プロモーターの例としては、限定されないが、豆ファセオリン貯蔵タンパク質プロモーター、DLECプロモーター、PHSプロモーター、ゼイン貯蔵タンパク質プロモーター、大豆由来のコングルチンガンマプロモーター、AT2S1遺伝子プロモーター、Arabidopsis由来のACT11アクチンプロモーター、Brassica napus由来のnapAプロモーターおよびジャガイモパタチン遺伝子プロモーターが挙げられる。
【0193】
誘導性プロモーターは、例えば、光、温度、化学物質、渇水、高塩分、浸透圧ショック、酸化剤条件を含むストレス条件などの特定の刺激によって、または病原性の場合に誘導されるプロモーターであり、限定されないが、豆rbcS遺伝子に由来する光誘導性プロモーター、アルファルファrbcS遺伝子由来のプロモーター、渇水時に活性なプロモーターDRE、MYCおよびMYB、高塩分および浸透圧ショックのときに活性なプロモーターINT、INPS、prxEa、Ha hsp17.7G4およびRD21、ならびに病原性ストレスにおいて、プロモーターhsr203Jおよびstr246Cである。
【0194】
好ましくは、本発明によって利用されるプロモーターは、構築物の挿入物の過剰発現が植物形質転換の後に行われるような強力な構成的プロモーターである。
【0195】
本発明で使用されるいずれの種類の構築物も、各種類の構築物において、同じまたは異なる選択マーカーを使用して同じ植物内で共形質転換することができることが理解されるであろう。あるいは、第1の種類の構築物を第1の植物に導入することができ、一方、第2の種類の構築物を第2の同系植物に導入することができ、その後、これらから得られるトランスジェニック植物を交配し、子孫を二重形質転換体について選択することができる。そのような子孫のさらなる自己交雑を使用して、両方の構築物についてホモ接合性の系統を生成することができる。
【0196】
単子葉植物と二子葉植物の両方に核酸構築物を導入する様々な方法がある(Potrykus,I.、Annu.Rev.Plant.Physiol.、Plant.Mol.Biol.(1991)42:205-225、Shimamotoら、Nature(1989)338:274-276)。そのような方法は、核酸構築物またはその一部分の植物のゲノムへの安定した組み込み、または核酸構築物の一時的な発現のいずれかに依存し、この場合、これらの配列は植物の子孫に受け継がれない。
【0197】
これに加えて、核酸構築物が、葉緑体などのDNAを含むオルガネラのDNAに直接導入することができるいくつかの方法が存在する。
【0198】
植物ゲノム中の本発明の核酸構築物内に含まれるものなど、外因性配列の植物ゲノムへの安定したゲノム統合を達成するための2つの主要な方法が存在する。
(i)Agrobacteriumを介した遺伝子移入:Kleeら(1987)Annu.Rev.Plant Physiol.38:467-486、Klee and Rogers in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants、Vol.6、Molecular Biology of Plant Nuclear Genes編集、Schell,J.およびVasil,L.K.、Academic Publishers、San Diego、Calif.(1989)p.2-25、Gatenby、in Plant Biotechnology編集、Kung,S.およびArntzen,C.J.、Butterworth Publishers、Boston、Mass.(1989)p.93-112。
(ii)直接的なDNA取り込み:Paszkowskiら、in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants、Vol.6、Molecular Biology of Plant Nuclear Genes編集、Schell,J.およびVasil,L.K.、Academic Publishers、San Diego、Calif.(1989)p.52-68、プロトプラストへのDNAの直接的な取り込みの方法を含む、Toriyama,K.ら(1988)Bio/Technology 6:1072-1074。植物細胞の簡単な電気ショックによって誘導されるDNA取り込み、Zhangら、Plant Cell Rep.(1988)7:379-384。Frommら、Nature(1986)319:791-793。粒子衝突による植物細胞または組織へのDNAの注入、Kleinら、Bio/Technology(1988)6:559-563、McCabeら、Bio/Technology(1988)6:923-926、Sanford、Physiol.Plant.(1990)79:206-209。マイクロピペットシステムの使用によるもの、Neuhausら、Theor.Appl.Genet.(1987)75:30-36、Neuhaus and Spangenberg、Physiol.Plant.(1990)79:213-217、または発芽花粉を用いるDNAの直接的なインキュベーションによるもの、DeWetら、in Experimental Manipulation of Ovule Tissue編集、Chapman,G.P.およびMantell,S.H.およびDaniels,W.Longman、London、(1985)p.197-209、およびOhta、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:715-719。
【0199】
Agrobacterium系には、植物のゲノムDNAに組み込まれる定義済みのDNAセグメントを含むプラスミドベクターの使用が含まれる。植物組織への接種方法は、植物種およびAgrobacterium送達系に依存して異なる。広く使用されているアプローチは、植物全体の分化を開始するための優れた供給源を提供する任意の組織外植片で実行可能なリーフディスク手順である。Horschら、in Plant Molecular Biology Manual A5、Kluwer Academic Publishers、Dordrecht(1988)p.1-9。補足的なアプローチでは、真空浸潤と組み合わせてAgrobacterium送達系を採用する。Agrobacterium系は、トランスジェニック双子葉植物の作成において特に実行可能である。
【0200】
植物細胞に直接DNAを移行する様々な方法がある。エレクトロポレーションでは、プロトプラストは短時間、強い電界にさらされる。マイクロインジェクションでは、非常に小さなマイクロピペットを使用して、DNAを細胞に直接機械的に注入する。微粒子衝突では、DNAは、硫酸マグネシウム結晶、タングステン粒子または金粒子などの微小発射体に吸着され、微小発射体は、細胞または植物組織へと物理的に加速される。
【0201】
形質転換に続き、植物の繁殖が行われる。植物繁殖の最も一般的な方法は、種子によるものである。しかしながら、種子繁殖による再生には、メンデルの法則によって支配される遺伝的差異に従って種子が植物によって産生されるため、ヘテロ接合性のために作物の均一性が欠如するという欠点がある。基本的に、各種子は遺伝的に異なり、各々が独自の特定の形質をもって成長する。したがって、再生植物が親トランスジェニック植物と同一の形質および特徴を有するように、形質転換された植物を産生することが好ましい。したがって、形質転換された植物は、形質転換された植物の迅速で一貫した再生を提供するマイクロプロパゲーションによって再生されることが好ましい。
【0202】
本発明の核酸構築物に含まれる単離された核酸を一時的に発現するために利用可能な一時的な発現方法としては、限定されないが、上述のような、但し一時的な発現に望ましい条件下でのマイクロインジェクションおよび衝突、核酸構築物を含む封入されたか、または封入されていない組換えウイルスベクターを利用して、その中で確立された増殖組換えウイルスが非ウイルス核酸配列を発現するように植物組織または細胞を感染させる、ウイルスが介在する発現が挙げられる。
【0203】
植物宿主の形質転換に有用であることが示されているウイルスとしては、CaMV、TMVおよびBVが挙げられる。植物ウイルスを使用する植物の形質転換は、米国特許第4,855,237号(BGV)、EP-A67,553(TMV)、日本公開出願第63-14693号(TMV)、EPA 194,809(BV)、EPA 278,667(BV)、およびGluzman,Y.ら、Communications in Molecular Biology:Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、pp.172-189(1988)に記載される。植物を含め、多くの宿主において外来DNAを発現する際に使用するための偽ウイルス粒子は、WO87/06261に記載されている。
【0204】
植物における非ウイルス性外因性核酸配列の導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上述の参考文献、ならびにDawson,W.O.ら、Virology(1989)172:285-292、Takamatsuら、EMBO J.(1987)6:307-311、Frenchら、Science(1986)231:1294-1297、およびTakamatsuら、FEBS Letters(1990)269:73-76によって示される。
【0205】
ウイルスがDNAウイルスの場合、ウイルス自体に対して構築を行うことができる。あるいは、外来DNAを用いて所望のウイルスベクターを構築することを容易にするために、ウイルスを最初に細菌プラスミドにクローニングすることができる。その後、ウイルスをプラスミドから切除することができる。ウイルスがDNAウイルスである場合、細菌の複製起点がウイルスDNAに付着する場合があり、次いで、細菌によって複製される。このDNAの転写と翻訳により、ウイルスDNAをカプシドで包むコートタンパク質が生成される。ウイルスがRNAウイルスである場合、ウイルスは、一般的に、cDNAとしてクローニングされ、プラスミドに挿入される。次に、プラスミドを使用して全ての構築物を作成する。次に、プラスミドのウイルス配列を転写し、ウイルス遺伝子を翻訳して、ウイルスRNAをカプシドで包むコートタンパク質を生成することにより、RNAウイルスを生成する。
【0206】
本発明の構築物に含まれるものなど、非ウイルス性外因性核酸配列の植物への導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上述の参考文献および米国特許第5,316,931号に示されている。
【0207】
一実施形態では、天然コートタンパク質コード配列がウイルス核酸から削除され、植物宿主中での発現、組換え植物ウイルス核酸の封入を可能にし、組換え植物ウイルス核酸による宿主の全身感染を確実にする、非天然植物ウイルスコートタンパク質コード配列および非天然プロモーター、好ましくは、非天然コートタンパク質コード配列のサブゲノムプロモーターが挿入された、植物ウイルス核酸が提供される。あるいは、コートタンパク質遺伝子は、タンパク質が産生されるように、その中に非天然核酸配列を挿入することによって不活化され得る。組換え植物ウイルス核酸は、1つ以上のさらなる非天然サブゲノムプロモーターを含んでもよい。各非天然サブゲノムプロモーターは、植物宿主において隣接する遺伝子または核酸配列を転写または発現することができ、互いに、また、天然サブゲノムプロモーターと組換えることができない。非天然(外来)核酸配列は、天然植物ウイルスサブゲノムプロモーター、または複数の核酸配列が含まれる場合は天然および非天然の植物ウイルスサブゲノムプロモーターに隣接して挿入され得る。非天然核酸配列は、サブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または発現されて、所望の産物を産生する。
【0208】
第2の実施形態では、組換え植物ウイルス核酸は、天然コートタンパク質コード配列が、非天然コートタンパク質コード配列の代わりに、非天然コートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つに隣接して配置されることを除き、第1の実施形態と同様に提供される。
【0209】
第3の実施形態では、天然コートタンパク質遺伝子が、そのサブゲノムプロモーターに隣接しており、1つ以上の非天然サブゲノムプロモーターがウイルス核酸に挿入されている、組換え植物ウイルス核酸が提供される。挿入された非天然サブゲノムプロモーターは、植物宿主において隣接する遺伝子を転写または発現することができ、互いに、また、天然サブゲノムプロモーターと組換えることができない。非天然核酸配列は、非天然サブゲノム植物ウイルスプロモーターに隣接して挿入されてもよく、その結果、上述の配列は、サブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または発現され、所望の産物を産生する。
【0210】
第4の実施形態では、組換え植物ウイルス核酸は、天然コートタンパク質コード配列が、非天然コートタンパク質コード配列によって置き換えられていることを除き、第3の実施形態と同様に提供される。
【0211】
ウイルスベクターは、組換え植物ウイルス核酸によってコードされるコートタンパク質によってカプシドで包まれ、組換え植物ウイルスを産生する。組換え植物ウイルス核酸または組換え植物ウイルスは、適切な宿主植物に感染するために使用される。組換え植物ウイルス核酸は、宿主での複製、宿主での全身拡散、および宿主での外来遺伝子(単離された核酸)の転写または発現が可能であり、所望のタンパク質を産生する。
【0212】
葉緑体のゲノムに外因性核酸配列を導入するための技術が知られている。この技術には、次の手順が含まれる。まず、植物細胞を化学的に処理して、細胞あたりの葉緑体の数を約1つまで減らす。次に、外因性核酸は、少なくとも1つの外因性核酸分子を葉緑体に導入することを目的として、粒子衝突を介して細胞に導入される。外因性核酸は、葉緑体に固有の酵素によって容易に行われる相同組換えを介して葉緑体のゲノムに組み込むことができるように選択される。この目的のために、外因性核酸は、目的の遺伝子に加えて、葉緑体のゲノムに由来する少なくとも1つの核酸伸長部を含む。これに加えて、外因性核酸は、選択可能なマーカーを含み、これは、そのような選択に続く葉緑体ゲノムの全てまたは実質的に全ての複製物が外因性核酸を含むことを確認するための連続的な選択手順によって役立つ。この技術に関するさらなる詳細は、米国特許第4,945,050号および同第5,693,507号に見出され、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、ポリペプチドは、葉緑体のタンパク質発現系によって産生され、葉緑体の内膜に組み込まれるようにすることができる。
【0213】
上述の形質転換アプローチを使用して、任意の種の植物、またはこれらに由来する植物組織もしくは単離された植物細胞において、コラーゲン鎖および/または修飾酵素、ならびに組織化されたコラーゲン(プロペプチドを含むもの、または含まないもの)を産生することができる。
【0214】
好ましい植物は、本明細書に記載のコラーゲン鎖、コラーゲンおよび/またはプロセシング酵素を大量に蓄積することができる植物である。このような植物はまた、ストレス条件に対するそれらの耐性、および発現される成分または組織化されるコラーゲンを抽出することができる容易さに従って選択されてもよい。好ましい植物の例としては、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、米、ジャガイモ、大豆、トマト、小麦、大麦、キャノーラおよび綿が挙げられる。
【0215】
コラーゲン繊維は、食品および美容業界で広く使用されている。したがって、植物によって発現されるコラーゲン繊維成分(α鎖)および修飾酵素は、コラーゲンの工業的合成において有用性を見出すが、植物における完全なコラーゲン産生は、その単純さおよび費用対効果のために好ましい。
【0216】
植物内でI型コラーゲンを生成するためにいくつかのアプローチを使用することができる。例えば、コラーゲンα1鎖は、コラーゲンα1およびP4H(および任意選択でLH3)を発現する植物から単離され、コラーゲンα2およびP4H(および任意選択でLH3およびプロテアーゼCおよび/またはN)を発現する植物から単離されたコラーゲンα2鎖と混合されてもよい。コラーゲンα1鎖は、それ自体で自己組織化して三重ヘリックスになるため、コラーゲンα2鎖と混合し、再生する前に、このようなホモトリマーを変性させる必要がある場合がある。
【0217】
好ましくは、コラーゲンα1およびP4H(および任意選択でLH3およびプロテアーゼCおよび/またはN)を発現する第1の植物は、コラーゲンα2を発現する第2の(そして好ましくは同系の)植物と交配することができるか、または両方のα鎖を発現する第1の植物は、P4Hおよび任意選択でLH3およびプロテアーゼCおよび/またはNを発現する第2の植物と交配することができる。
【0218】
上述の植物育種アプローチは、2つの個別に形質転換された植物を利用するが、3つ以上の個別に形質転換された植物を利用し、各々が1つまたは2つの成分を発現するアプローチも利用可能であることに留意されたい。
【0219】
当業者は、様々な植物育種技術を十分に認識しているので、そのような技術のさらなる説明は本明細書では提供されない。
【0220】
植物育種アプローチが好ましいが、コラーゲンα1および2、P4HおよびLH3(および任意選択でプロテアーゼCおよび/またはN)を発現する単一の植物が、それぞれが1つ以上の発現可能な成分を細胞に導入するように設計されたいくつかの形質転換イベントを介して生成することができることに留意されたい。このような場合、各形質転換イベントの安定性は、特定の選択マーカーを使用して検証することができる。
【0221】
いずれにせよ、形質転換および植物育種のアプローチを使用して、任意の数の成分を発現する任意の植物を生成することができる。現在好ましいのは、コラーゲンα1および2鎖、P4H、LH3および少なくとも1つのプロテアーゼ(例えば、プロテアーゼCおよび/またはN)を発現する植物である。以下の実施例の章でさらに説明するように、そのような植物は、42℃までの温度で安定性を示すコラーゲンを蓄積する。
【0222】
育種または複数形質転換された植物から得られる子孫は、核酸またはタンパク質プローブ(例えば抗体)を使用することによって外因性mRNAおよび/またはポリペプチドの存在を確認することによって、選択することができる。後者のアプローチは、発現されたポリペプチド成分の局在化を可能にし(例えば、分画された植物抽出物を精査することにより)、したがって、正しいプロセシングおよび組織化に対する可能性も検証するため、好ましい。好適なプローブの例は、次の実施例の章に記載される。
【0223】
コラーゲンを発現する子孫が同定されると、そのような植物は、コラーゲン鎖および修飾酵素の発現を最大化する条件下でさらに培養される。
【0224】
遊離プロリン蓄積は、本発明の遺伝子組換え植物によって発現されるコラーゲン鎖を含む異なるプロリンに富むタンパク質の過剰生産を促進し得るので、好ましい栽培条件は、栽培植物において遊離プロリン蓄積を増加させる条件である。
【0225】
遊離プロリンは、水分欠乏、塩化、低温、高温、病原体感染、重金属毒性、嫌気性菌、栄養素欠乏、大気汚染およびUV照射などを含む、広範囲の環境ストレスに反応して、様々植物で蓄積する(HareおよびCress、1997)。
【0226】
遊離プロリンはまた、ABAなどの化合物、または銅塩、パラクアット、サリチル酸などのストレス誘導化合物による植物または土壌の処理に反応して、蓄積する可能性がある。
【0227】
したがって、コラーゲンを発現する子孫は、異なるストレス条件下で成長させることができる(例えば、50mM~250mMまでの範囲の異なる濃度のNaCl)。コラーゲン産生をさらに向上させるために、コラーゲン発現に対する様々なストレス条件の影響を調べ、植物の生存率、バイオマスおよびコラーゲンの蓄積に関して最適化される。
【0228】
植物組織/細胞は、好ましくは成熟時に収穫され、コラーゲン線維は、周知の先行技術の抽出アプローチを使用して単離され、そのようなアプローチの1つが以下に詳述される。
【0229】
トランスジェニック植物の葉を液体窒素下で粉末になるまで粉砕し、均質物を、0.2M NaClを含む0.5M酢酸中、4℃で60時間かけて抽出する。不溶性物質を、遠心分離によって除去する。組換えコラーゲンを含む上澄み液を、0.4Mおよび0.7MのNaClで塩分画する。組換えヘテロトリマーコラーゲンを含む0.7M NaCl沈殿を0.1M酢酸に溶解し、これに対して透析し、-20℃で保存する(Ruggieroら、2000に従う)。
【0230】
一実施形態では、均質で可溶性の原線維を形成するアテロコラーゲンを生成するためにプロコラーゲンをプロセシングする方法が本明細書で開示される。
【0231】
いくつかの実施形態では、SDS PAGEによるタンパク質分解結果の分析によって本明細書に示されるように、特定の植物由来のプロテアーゼ(例えば、パパイン)は、らせん領域内のタンパク質分解による開裂を行うことなく、可溶性プロコラーゲンからプロペプチド部分を開裂することができない(動物源に由来するテロコラーゲンからテロペプチドを除去することが可能であるとしても)が、一方、他のプロテアーゼ(例えば、エスペラーゼ、サビナーゼ)は、可溶性プロコラーゲンからプロペプチド領域を効果的に開裂せず、それによって、効果的な原線維形成を妨げる。綿密な実験を通じて、本願発明者らは、フィシンなどの特定の植物由来のプロテアーゼや、ニュートラーゼおよびスブチリシンなどの細菌由来のプロテアーゼのみを使用して、可溶性プロコラーゲンからプロペプチド部分(テロペプチドを含む)を正しく開裂して、非動物プロコラーゲンのらせん領域を消化することなく、可溶性アテロコラーゲンの均一な調製物を生成してもよいこと(
図13、15、17、19および20)を明らかにした。これに加えて、本願発明者らは、組換えトリプシンも正しい開裂が可能であることを示した(
図26)。本願発明者らはさらに、フィシンによる開裂により、得られたアテロコラーゲンがその原線維形成能を保持することを可能にすることを示した(以下の実施例の章の表5)。
【0232】
したがって、一態様によれば、アテロコラーゲンを生成する方法が提供される。この方法は、ヒト組換えテロペプチドを含むコラーゲンと、ニュートラーゼ、スブチリシン、組換えトリプシン、組換えペプシンおよびフィシンからなる群から選択されるプロテアーゼとを接触させる工程を含み、ヒト組換えテロペプチドを含むコラーゲンは、非動物細胞で発現し、それによってアテロコラーゲンを生成する。
【0233】
本明細書で使用される場合、「テロペプチドを含むコラーゲン」という句は、アテロコラーゲンに含まれるテロペプチドレムナントよりも長いテロペプチドを含む可溶性コラーゲン分子を指す。したがって、テロペプチドを含むコラーゲンは、全長プロペプチドを含むプロコラーゲンであってもよい。あるいは、テロペプチドを含むコラーゲンは、部分的に消化されたプロペプチドを含むプロコラーゲン分子であってもよい。さらにこれに代えて、テロペプチドを含むコラーゲンは、テロコラーゲンであってもよい。
【0234】
本明細書で使用される「プロコラーゲン」という用語は、N末端プロペプチド、C末端プロペプチドのいずれか、またはその両方を含むコラーゲン分子(例えば、ヒト)を指す。例示的なヒトプロコラーゲンアミノ酸配列は、配列番号30、31、36および37によって示される。
【0235】
本明細書で使用される「テロコラーゲン」という用語は、通常プロコラーゲンに含まれるN末端およびC末端プロペプチドの両方を欠いているが、依然としてテロペプチドを含むコラーゲン分子を指す。上の背景の章で述べたように、線維状コラーゲンのテロペプチドは、ネイティブN/Cプロテイナーゼで消化した後のN末端およびC末端プロペプチドのレムナントである。
【0236】
組換えヒトテロコラーゲンは、外因性ヒトプロコラーゲンとそれぞれのプロテアーゼ(すなわち、CまたはN、あるいはその両方)の両方を発現するように形質転換された細胞内で生成され得る。そのようなプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号39(プロテアーゼC)および40(プロテアーゼN)によって例示される。そのようなプロテアーゼは、本明細書で以下にさらに記載されるように、それらがコラーゲン鎖と同じ細胞内コンパートメントに蓄積されるように発現され得る。
【0237】
本明細書で使用される場合、「アテロコラーゲン」という用語は、典型的にはプロコラーゲンおよびそのテロペプチドの少なくとも一部に含まれるN末端およびC末端プロペプチドを両方とも欠いているが、可能な好適な条件下で原線維を形成することが可能であるような、そのテロペプチドの十分な部分を含む、コラーゲン分子を指す。
【0238】
本明細書に開示される方法に従って、任意の種類のアテロコラーゲンを生成することができる。例としては、原線維を形成するコラーゲン(I、II、III、VおよびXI型)、網目構造を形成するコラーゲン(IV、VIIIおよびX型)、原線維表面と会合するコラーゲン(IX、XIIおよびXIV型)、膜貫通タンパク質として発生するコラーゲン(XIIIおよびXVII型)、または11nmの周期的な球状フィラメントを形成するコラーゲン(VI型)が挙げられる。一実施形態によれば、アテロコラーゲンは、I型コラーゲンのα-1および/またはα-2鎖を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、コラーゲン/アテロコラーゲンの遺伝子組換え形態、例えば、コラゲナーゼ耐性コラーゲンなどが本明細書で開示されることが理解されるであろう。
【0240】
組換えヒトプロコラーゲンまたはテロコラーゲンは、限定されないが、植物細胞および酵母や真菌などの他の真核細胞を含む任意の非動物細胞中で発現され得る。
【0241】
ヒトプロコラーゲンまたはテロコラーゲンが産生(すなわち発現)され得る植物は、その組織または単離された細胞、およびその抽出物(例えば、細胞懸濁物)を含め、下等(例えば、コケおよび藻類)または高等(例えば、維管束)植物種の植物であってもよい。好ましい植物は、本明細書で以下に記載される大量のコラーゲン鎖、コラーゲンおよび/またはプロセシング酵素を蓄積することが可能な植物である。このような植物はまた、ストレス条件に対するそれらの耐性、および発現される成分または組織化されるコラーゲンを抽出することができる容易さに従って選択されてもよい。ヒトプロコラーゲンが発現され得る植物の例としては、限定されないが、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、米、ジャガイモ、大豆、トマト、小麦、大麦、キャノーラ、ニンジン、レタスおよび綿が挙げられる。
【0242】
組換えヒトプロコラーゲンの産生は、通常、ヒトプロコラーゲンをコードする外因性ポリヌクレオチド配列による安定的または一時的な形質転換によってもたらされる。
【0243】
ヒトプロコラーゲンをコードする例示的なポリヌクレオチド配列は、配列番号32、33、41および42によって示される。
【0244】
上述のように、ヒトテロコラーゲンの産生は、典型的には、ヒトプロコラーゲンをコードする外因性ポリヌクレオチド配列および関連するプロテアーゼをコードする少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチド配列による安定的または一時的な形質転換によってもたらされる。
【0245】
コラーゲンの三重らせん構造の安定性には、コラーゲン鎖内のヒドロキシプロリンの残基を形成するために、酵素プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)によるプロリンのヒドロキシル化が必要である。植物は、ヒドロキシプロリンを含有するタンパク質を合成することができるが、植物細胞内のヒドロキシプロリンの合成に関与するプロリルヒドロキシラーゼは、哺乳動物P4Hと比較して、比較的緩い基質配列特異性を示す。したがって、Gly-X-YトリプレットのY位置にのみヒドロキシプロリンを含むコラーゲンを生成するには、コラーゲンとヒトまたは哺乳動物のP4H遺伝子の共発現が必要である。
【0246】
したがって、一実施形態によれば、プロコラーゲンまたはテロコラーゲンは、その正しくないヒドロキシル化を回避するために内因性P4H活性を欠く植物の細胞内コンパートメント内で発現される。本明細書で使用される場合、「内因性P4H活性を欠く細胞内コンパートメント」という句は、植物P4Hまたは植物様P4H活性を有する酵素を含まない細胞の任意のコンパートメント化された領域を指す。一実施形態によれば、細胞内コンパートメントは、液胞である。
【0247】
内因性P4H活性を欠く細胞内コンパートメント内で発現したプロコラーゲンの蓄積は、いくつかのアプローチのいずれか1つを介してもたらされ得る。
【0248】
例えば、発現されたコラーゲン/テロコラーゲンは、発現されたタンパク質をアポプラストまたはオルガネラ(例えば葉緑体)などの細胞内コンパートメント内に標的化するためのシグナル配列を含み得る。好適なシグナル配列の例としては、葉緑体トランジットペプチド(Swiss-ProtエントリーP07689、アミノ酸1~57に含まれる)およびミトコンドリアトランジットペプチド(Swiss-ProtエントリーP46643、アミノ酸1~28に含まれる)が挙げられる。
【0249】
あるいは、プロコラーゲンの配列は、植物内で発現されたときにプロコラーゲンの細胞局在化を変化させる方法で修飾することができる。
【0250】
いくつかの実施形態では、ヒトプロコラーゲンおよびP4Hを両方とも共発現し、プロコラーゲンα鎖を正しくヒドロキシル化する[すなわち、Gly-X-Yトリプレットのプロリン(Y)位置でのみヒドロキシル化する]ことが可能な遺伝子組換え細胞が本明細書で開示される。P4Hは、Genbank番号P07237およびP13674に記載されているように、αとβの2つのサブユニットで構成される酵素である。両方のサブユニットが活性な酵素を形成するために必要であるが、βサブユニットはシャペロン機能も保有している。
【0251】
本発明の遺伝子組換え細胞によって発現されるP4Hは、好ましくは、例えば、配列番号34および35によってコードされるヒトP4Hである。さらに、向上した基質特異性を示すP4H変異体、またはP4Hホモログも使用することができる。好適なP4Hホモログは、NCBI寄託NP_179363によって特定されるArabidopsisオキシドレダクターゼによって例示される。
【0252】
P4Hが、発現されたプロコラーゲン鎖と共に蓄積することが不可欠であるため、そのコード配列は、好ましくは、それに応じて(例えば、シグナル配列の付加または欠失によって)修飾される。
【0253】
哺乳動物細胞では、コラーゲンは、リシルヒドロキシラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、およびグルコシルトランスフェラーゼによっても修飾される。これらの酵素は、特定の位置のリシル残基を、特定の位置でヒドロキシリシル、ガラクトシルヒドロキシリシル、およびグルコシルガラクトシルヒドロキシリシル残基に順次修飾する。Genbank番号O60568に記載されている単一のヒト酵素であるリシルヒドロキシラーゼ3(LH3)は、ヒドロキシリシン結合した炭水化物形成に見られるように、3つの連続する修飾工程全てに触媒作用を及ぼすことができる。
【0254】
したがって、本明細書に開示される遺伝子組換え細胞はまた、哺乳動物LH3を発現してもよい。LH3コード化配列、例えば配列番号38によって示されるものは、そのような目的のために使用することができる。
【0255】
上述のプロコラーゲンおよび修飾酵素は、機能性プロモーターの転写制御下で配置されたプロコラーゲンα鎖および/または修飾酵素(例えば、P4HおよびLH3)をコードするポリヌクレオチド配列を含む、安定に組み込まれたか、または一時的に発現された核酸構築物から発現されてもよい。そのような核酸構築物(本明細書では発現構築物とも呼ばれる)は、生物全体(例えば、植物、定義された組織または定義された細胞)全体、および/または生物の定義された発達段階での発現のために構成されてもよい。そのような構築物はまた、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性)と、エンハンサーエレメントと、細菌複製のための複製起点とを含んでもよい。
【0256】
2つの発現可能な挿入物(例えば、2種類のαプロコラーゲン鎖、またはプロコラーゲンα鎖およびP4H)を含む構築物は、好ましくは、各挿入物のための個々のプロモーターを含むか、あるいはそのような構築物は、単一のプロモーターを用いて両方の挿入配列を含む単一の転写キメラを発現してもよいことが理解されるであろう。そのような場合、キメラ転写物は、下流の挿入物がそこから翻訳され得るように、2つの挿入配列の間に配列内リボソーム進入領域(IRES)配列を含んでもよい。
【0257】
組織特異的、発生特異的、構成的または誘導性のいずれかであり得る多数の機能性発現プロモーターおよびエンハンサーを、本発明の構築物によって利用することができ、いくつかの例が本明細書で以下に提供される。
【0258】
採用された形質転換技術に関係なく、プロコラーゲンを発現する子孫が同定されると、そのような植物は、その発現を最大化する条件下でさらに培養される。形質転換された植物から得られる子孫は、核酸またはタンパク質プローブ(例えば抗体)を使用することによって外因性mRNAおよび/またはポリペプチドの存在を確認することによって、選択することができる。後者のアプローチは、発現されたポリペプチド成分の局在化を可能にし(例えば、分画された植物抽出物を精査することにより)、したがって、外来タンパク質の正しいプロセシングおよび組織化に対する植物の可能性も検証する。
【0259】
そのような植物の栽培に続き、テロペプチドを含むコラーゲンが、通常、収穫される。植物組織/細胞は、好ましくは成熟時に収穫され、プロコラーゲン分子は、抽出アプローチを使用して単離される。好ましくは、収穫は、プロコラーゲンがプロテアーゼ酵素によって開裂され得る状態のままであるように行われる。一実施形態によれば、粗抽出物は、本発明のトランスジェニック植物から生成され、その後、プロテアーゼ酵素と接触する。植物粗抽出物を生成するための例示的な方法は、本明細書の以下の実施例の章に記載される。
【0260】
プロペプチドまたはテロペプチドを含むコラーゲンは、プロテアーゼとのインキュベーションの前に本発明の遺伝子操作された細胞から精製されてもよく、あるいはプロテアーゼとのインキュベーションの後に精製されてもよいことが理解されるであろう。さらにこれに代えて、プロペプチドまたはテロペプチドを含むコラーゲンは、プロテアーゼ処理の前に部分的に精製され、次いで、プロテアーゼ処理の後に完全に精製されてもよい。さらにこれに代えて、プロペプチドまたはテロペプチドを含むコラーゲンは、他の抽出/精製手順と同時にプロテアーゼで処理されてもよい。
【0261】
本発明のテロペプチドを含むコラーゲンを精製または半精製する例示的な方法には、硫酸アンモニウムなどによる塩析および/または限外濾過による低分子の除去が含まれるが、これらに限定されない。
【0262】
本明細書で上の背景に記載されているように、医療目的で動物源の材料を使用することにはリスクが伴う。このリスクは、植物中で発現するプロコラーゲンをアテロコラーゲンへとプロセシングする際に使用されるタンパク質分解酵素を選択するときにも関連する。トリプシンまたはペプシンなどの動物由来の供給源の酵素の適用は、それ自体が、最終調製物を疾患担体で汚染する可能性がある。したがって、全ての成分が動物由来のものではない生産システムを考案することが望まれる。
【0263】
特定のプロテアーゼのみが、組換えプロペプチドまたはテロペプチドを含むコラーゲンを正しく開裂することが可能であることが本明細書に開示されている。特定のプロテアーゼとしては、特定の植物由来のプロテアーゼ、例えば、フィシン(EC 3.4.22.3)および特定の細菌由来のプロテアーゼ、例えば、スブチリシン(EC 3.4.21.62)、ニュートラーゼが挙げられる。いくつかの実施形態では、rhトリプシンおよびrhペプシンなどの組換え酵素の使用が本明細書に開示される。このような酵素は、市販されており、例えば、イチジクラテックス由来のフィシン(Sigma、カタログ番号F4125およびEurope Biochem)、Bacillus licheniformis由来のスブチリシン(Sigma、カタログ番号P5459)、bacterium Bacillus amyloliquefaciens由来のニュートラーゼ(Novozymes、カタログ番号PW201041)およびTrypZean.TM.、トウモロコシで発現する組換えヒトトリプシン(Sigmaカタログ番号T3449)である。
【0264】
プロコラーゲンまたはテロコラーゲンは、好ましくは、プロテアーゼがプロペプチドまたはテロペプチドを接触点から開裂することができるような条件下でプロテアーゼと接触する。通常、その条件は、選択した特定のプロテアーゼに従って決定される。したがって、例えば、プロコラーゲンは、プロテアーゼと共に、1~25mg/mlの濃度および約10~20℃の温度で最大15時間インキュベートされてもよい。
【0265】
プロテアーゼ消化後、最終生成物が、ニュートラーゼ、スブチリシン、フィシンおよび組換えヒトトリプシンからなる群から選択されるプロテアーゼによって植物または植物細胞から生成したプロコラーゲンからプロセシングされ、当該技術分野で既知の方法(例えば、クマシー染色によるサイズ分析、ウエスタン分析など)を用いて分析されるアテロコラーゲンの精製された組成物を含むように、生成されたアテロコラーゲンは、以下の実施例の章に記載されるように、例えば、塩沈殿によってさらに精製されてもよい。
【0266】
精製後、酸性溶液(例えば、10mM HCl)を添加することにより、アテロコラーゲンを再可溶化させてもよい。このような酸性溶液は、精製されたアテロコラーゲンの保存に有用である。
【0267】
本願発明者らは、フィシンによる消化後、アテロコラーゲンが、上述の酸性溶液の中和時に原線維を形成するその能力を維持していることを示した。一実施形態によれば、本発明の方法に従って生成され、精製および再可溶化されたアテロコラーゲンの少なくとも70%が、原線維を形成することが可能である。一実施形態によれば、本発明の方法に従って生成され、精製および再可溶化されたアテロコラーゲンの少なくとも88%が、原線維を形成することが可能である。
【0268】
原線維を形成する能力は、生成されたアテロコラーゲンが、美容整形、火傷患者の治癒補助、骨の再建、および多種多様な歯科、整形外科および外科的目的を含むがこれらに限定されない医療目的に有用であることを示す。
【0269】
背景の章で述べたように、I型コラーゲンは、3Dバイオプリンティングの構築材料の主成分として使用するための完璧な候補物質であると考えられる。この天然ポリマーによって提供される重要な利点にもかかわらず、いくつかの要因が、3Dバイオプリンティングへのその使用を妨げている。この目的のための組織から抽出されたコラーゲンの使用は、生理学的条件下で、20℃を超える温度で自然なゲル形成を促進する温度およびイオン強度に対する感受性に起因して、制限されている[例えば、PureCol、Advanced BioMatrix,Inc.を参照]。組織から抽出されたコラーゲンの典型的な温度依存性のゲル形成は、プリンティング中の正確な流動性を著しく損なわせる。適用するまで印刷媒体を低温に保つことは、この現象の可能な解決策であるが、深刻な技術的制限を内包する。別の解決策は、これらの条件下でゲル状にならないコラーゲンの変性形態であるゼラチンの使用である。しかしながら、ゼラチンは、天然コラーゲンの真の組織と細胞の相互作用を欠いているため、重要な生物学的機能が失われる。
【0270】
最近の技術開発により、タバコ植物にヘテロトリマーI型コラーゲンをコードする5つのヒト遺伝子(COLLPLANT(商標)、イスラエル、現在SIGMA-ALDRICH(登録商標)、セントルイス、ミズーリ州、米国でも入手可能)を導入することにより、天然のヒトI型コラーゲン(rhコラーゲン)を精製するシステムが開発された。このタンパク質は、コラーゲンに固有の特性を利用する費用対効果の高い工業プロセスを通じて、均一になるまで精製される。それらは全て、本明細書に完全に記載されているかのように参照により組み込まれる、WO2006/035442、WO2009/053985、ならびにそれらに由来する特許および特許出願も参照されたい。
【0271】
したがって、一態様によれば、少なくとも1種類のコラーゲンα鎖を発現し、内因性P4H活性を欠く細胞内コンパートメント中でそれを蓄積することが可能な遺伝子組換え植物が本明細書で開示される。
【0272】
I型コラーゲンとrhコラーゲンは、3Dバイオプリンティングの構築材料の主成分として使用するための候補物質であると考えられる。様々な種類の足場が、美容用途および他の再建用途に使用されてきた。
【0273】
これに加え、軟組織増強、例えば、しわの低減のための皮膚充填剤の使用が増加してきている。皮膚充填剤を使用するための1つの可能な方法は、所望な領域への重合性皮膚充填剤材料の注入、その後、充填剤を所望な形態に輪郭形成するか、または成型する工程を含む。様々な方法の1つによる材料の重合および架橋によって、注入された材料中のモノマーを変換して、ポリマーおよび鎖を形成することができ、これらは網目構造を形成し、所望な成型された形態を保持することができる。ポリマーを形成し、ポリマーを架橋するためのいくつかの方法が存在する。1つの方法は、モノマー溶液中で反応種を生成する光反応性試薬と光誘起反応を伴う。
【0274】
しかしながら、これらのアプローチの少なくともいくつかは、組織由来のコラーゲンまたは非コラーゲンポリマー(例えば、ポリ(ビニルアルコール)またはヒアルロン酸)に引き続き焦点を合わせている。さらに、組織から抽出されたコラーゲンの使用は、生理学的条件下で、20℃を超える温度で自然なゲル形成を促進する温度およびイオン強度に対する感受性に起因して、制限されている[例えば、PureCol、Advanced BioMatrix,Inc.を参照]。組織から抽出されたコラーゲンの典型的な温度依存性のゲル形成は、正確な流動性を著しく損なわせる。適用するまでコラーゲンを低温に保つことは、この現象の可能な解決策であるが、深刻な技術的制限を内包する。別の解決策は、これらの条件下でゲル状にならないコラーゲンの変性形態であるゼラチンの使用である。しかしながら、ゼラチンは、天然コラーゲンの真の組織と細胞の相互作用を欠いているため、重要な生物学的機能が失われる。さらに、その粘度により、細いゲージの針を使用して真皮の下に注入することがより困難になり、また、それを広げてより小さな空洞内で成型することがより困難になる。
【0275】
本明細書に開示される皮膚充填剤の実施形態およびその使用としては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
1.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、
a.組織空間に重合性溶液を導入する工程であって、重合性溶液は、
i.架橋可能な植物由来のヒトコラーゲン、および
ii.光開始剤を含む、該導入する工程と、
b.上述の空間の表面にある表皮の表面に光を当てて重合を誘導する工程と、を含む、方法。
2.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、
(a)重合性溶液を、組織空間内の所望の構成内で成型または形を整える工程をさらに含み、この工程が、光を当てる工程と同時に起こるか、または光を当てる工程に続く、方法。
3.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、成型または形を整える工程が、筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減する、方法。
4.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンが、メタクリル化またはチオール化される、方法。
5.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、ポリマー溶液が、さらに、ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、酸化セルロース(OC)またはその修飾誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾誘導体、リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾誘導体、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその修飾誘導体、結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾誘導体、またはこれらの組み合わせを含む、方法。
6.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロースまたは結晶性ナノセルロース(CNC)の修飾誘導体が、光重合性修飾誘導体を含む、方法。
7.ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロースまたは結晶性ナノセルロース(CNC)の修飾誘導体が、メタクリル化またはチオール化された誘導体を含む、請求項5に記載の方法。
8.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のコラーゲンは、rhコラーゲンを含む、方法。
9.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のコラーゲンは、遺伝子組換え植物から得られる、方法。
10.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、遺伝子組換え植物は、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、米、ジャガイモ、大豆、トマト、小麦、大麦、キャノーラ、ニンジンおよび綿からなる群から選択される遺伝子組換え植物である、方法。
11.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、遺伝子組換え植物は、タバコ植物である、方法。
12.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、遺伝子組換え植物は、COL1、COL2、P4H-α、P4H-βおよびLH3からなる群から選択されるヒトデオキシリボ核酸(DNA)の少なくとも1つの遺伝子配列の発現可能な配列を含む、方法。
13.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンは、配列番号3に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも修飾された1つのヒトコラーゲンα-1鎖と、配列番号6に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも1つの修飾ヒトコラーゲンα-2鎖と、を含み、遺伝子組換え植物は、さらに、外因性プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)を発現する、方法。
14.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、リシルヒドロキシラーゼ(LH)、プロテアーゼNおよびプロテアーゼCからなる群から選択される外因性ポリペプチドを発現する工程をさらに含む、方法。
15.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、ヒトコラーゲンα-1鎖が、配列番号1に記載される配列によってコードされる、方法。
16.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、ヒトコラーゲンα-2鎖が、配列番号2に記載される配列によってコードされる、方法。
17.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、外因性P4Hが、哺乳動物P4Hである、方法。
18.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、外因性P4Hが、ヒトP4Hである、方法。
19.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-1を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む、方法。
20.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-2を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む、方法。
21.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンは、アテロコラーゲンである、方法。
22.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、光源は、発光ダイオード(LED)、レーザまたはキセノンランプを含む、方法。
23.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、光開始剤が、可視光に応答して重合性溶液の重合を誘導する、方法。
24.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、可視光は、390~700nmの波長を有する、方法。
25.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、光開始剤が、エオシンY+トリエタノールアミンまたはリボフラビンからなる群から選択される、方法。
26.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、光開始剤が、紫外(UV)光に応答して重合性溶液の重合を誘導する、方法。
27.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、光開始剤が、リチウム フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)または1-[4 2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959)からなる群から選択される、方法。
28.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、光開始剤が、赤外光に応答して重合性溶液の重合を誘導する、方法。
29.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、重合性溶液が、27ゲージから33ゲージの範囲の中空針またはカニューレを介して組織空間に導入される、方法。
30.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間内の重合性溶液が、手動マッサージによって所望の構成内で成型または形を整えられる、方法。
31.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間内の重合性溶液が、成型または形を整える器具を用い、所望の構成内で成型または形を整えられる、方法。
32.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間内の重合性溶液が、室温で本質的にゲル化不能である、方法。
33.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間内の重合性溶液が、37℃で本質的にゲル化不能である、方法。
34.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、室温での粘度が低い、方法。
35.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、37℃での粘度が低い、方法。
36.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、室温で低い力で組織空間に導入される、方法。
37.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、37℃で低い力で組織空間に導入される、方法。
38.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、組織増強が増加する、方法。
39.筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減するために表皮の下の組織空間に注入される重合性溶液の使用であって、重合性溶液が、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンと、可視光の適用前に、可視光の適用と同時に、重合を誘導するための光開始剤と、を含み、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕を低減するための所望の構成内で重合性溶液を成型または形を整える工程を含む、使用。
40.筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減するために表皮の下の組織空間に注入される重合性溶液の使用であって、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンが、メタクリル化またはチオール化される、使用。
41.筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減するために表皮の下の組織空間に注入される重合性溶液の使用であって、ポリマー溶液が、さらに、ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾誘導体、リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾誘導体、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその修飾誘導体、結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾誘導体、またはこれらの組み合わせを含む、使用。
42.筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減するために表皮の下の組織空間に注入される重合性溶液の使用であって、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロースまたは結晶性ナノセルロース(CNC)の修飾誘導体が、光重合性修飾誘導体を含む、使用。
43.筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減するために表皮の下の組織空間に注入される重合性溶液の使用であって、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロースまたは結晶性ナノセルロース(CNC)の修飾誘導体が、メタクリル化またはチオール化された誘導体を含む、使用。
44.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間に重合性溶液を導入する工程を含み、重合性溶液が、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンを含む、方法。
45.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、
(a)重合性溶液を、組織空間内の所望の構成内で成型または形を整える工程をさらに含む、方法。
46.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、成型または形を整える工程が、筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減する、方法。
47.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、重合性溶液が、さらに、ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、酸化セルロース(OC)またはその修飾誘導体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェアまたはその修飾誘導体、リン酸三カルシウム(TCP)またはその修飾誘導体、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)またはその修飾誘導体、カルボキシメチルセルロースまたはその修飾誘導体、結晶性ナノセルロース(CNC)またはその修飾誘導体、またはこれらの組み合わせを含む、方法。
48.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のコラーゲンは、rhコラーゲンを含む、方法。
49.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のコラーゲンは、遺伝子組換え植物から得られる、方法。
50.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、遺伝子組換え植物は、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、米、ジャガイモ、大豆、トマト、小麦、大麦、キャノーラ、ニンジンおよび綿からなる群から選択される遺伝子組換え植物である、方法。
51.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、遺伝子組換え植物は、タバコ植物である、方法。
52.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、遺伝子組換え植物は、COL1、COL2、P4H-α、P4H-βおよびLH3からなる群から選択されるヒトデオキシリボ核酸(DNA)の少なくとも1つの遺伝子配列の発現可能な配列を含む、方法。
53.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンは、配列番号3に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも修飾された1つのヒトコラーゲンα-1鎖と、配列番号6に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも1つの修飾ヒトコラーゲンα-2鎖と、を含み、遺伝子組換え植物は、さらに、外因性プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)を発現する、方法。
54.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、リシルヒドロキシラーゼ(LH)、プロテアーゼNおよびプロテアーゼCからなる群から選択される外因性ポリペプチドを発現する工程をさらに含む、方法。
55.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、ヒトコラーゲンα-1鎖が、配列番号1に記載される配列によってコードされる、方法。
56.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、ヒトコラーゲンα-2鎖が、配列番号2に記載される配列によってコードされる、方法。
57.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、外因性P4Hが、哺乳動物P4Hである、方法。
58.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、外因性P4Hが、ヒトP4Hである、方法。
59.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-1を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む、方法。
60.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-2を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む、方法。
61.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンは、アテロコラーゲンである、方法。
62.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、重合性溶液が、27ゲージから33ゲージの範囲の中空針またはカニューレを介して組織空間に導入される、方法。
63.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間内の重合性溶液が、手動マッサージによって所望の構成内で成型または形を整えられる、方法。
64.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間内の重合性溶液が、成型または形を整える器具を用い、所望の構成内で成型または形を整えられる、方法。
65.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間内の重合性溶液が、室温で本質的にゲル化不能である、方法。
66.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、組織空間内の重合性溶液が、37℃で本質的にゲル化不能である、方法。
67.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、室温での粘度が低い、方法。
68.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、37℃での粘度が低い、方法。
69.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、室温で低い力で組織空間に導入される、方法。
70.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、37℃で低い力で組織空間に導入される、方法。
71.表皮の下の組織空間を充填する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む重合性溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、組織増強が増加する、方法。
72.筋、ひだ、小じわ、しわ、または瘢痕を低減するために表皮の下の組織空間に注入される重合性溶液の使用であって、重合性溶液が、架橋可能な植物由来のヒトコラーゲンを含み、筋、ひだ、小じわ、しわ、もしくは瘢痕を低減するための所望の構成内で重合性溶液を成型または形を整える工程を含む、使用。
73.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、組織空間に溶液を導入する工程を含み、この溶液は、
(a)植物由来のヒトコラーゲンと、
(b)少なくとも1つの成長因子またはその供給源と、を含む、方法。
74.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、少なくとも1つの成長因子の供給源は、血漿または多血小板血漿を含む、方法。
75.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、細胞増殖足場が、コラーゲンを含む組織の分解または損傷に起因する治癒または置換を促進する、方法。
76.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、コラーゲンを含む組織が、腱、靭帯、皮膚、角膜、軟骨、血管、腸、椎間板、筋肉、骨または歯からなる群から選択される、方法。
77.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、細胞増殖足場が、腱炎の治癒を促進する、方法。
78.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物由来のコラーゲンは、rhコラーゲンを含む、方法。
79.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物由来のコラーゲンは、遺伝子組換え植物から得られる、方法。
80.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、遺伝子組換え植物は、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、米、ジャガイモ、大豆、トマト、小麦、大麦、キャノーラ、ニンジンおよび綿からなる群から選択される遺伝子組換え植物である、方法。
81.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、遺伝子組換え植物は、タバコ植物である、方法。
82.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、遺伝子組換え植物は、COL1、COL2、P4H-α、P4H-βおよびLH3からなる群から選択されるヒトデオキシリボ核酸(DNA)の少なくとも1つの遺伝子配列の発現可能な配列を含む、方法。
83.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンは、配列番号3に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも修飾された1つのヒトコラーゲンα-1鎖と、配列番号6に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも1つの修飾ヒトコラーゲンα-2鎖と、を含み、遺伝子組換え植物は、さらに、外因性プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)を発現する、方法。
84.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、リシルヒドロキシラーゼ(LH)、プロテアーゼNおよびプロテアーゼCからなる群から選択される外因性ポリペプチドを発現する工程をさらに含む、方法。
85.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、ヒトコラーゲンα-1鎖が、配列番号1に記載される配列によってコードされる、方法。
86.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、ヒトコラーゲンα-2鎖が、配列番号2に記載される配列によってコードされる、方法。
87.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、外因性P4Hが、哺乳動物P4Hである、方法。
88.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、外因性P4Hが、ヒトP4Hである、方法。
89.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-1を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む、方法。
90.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対してヒトコラーゲンα-2を標的化する工程と、それをフィシンで消化する工程と、をさらに含む、方法。
91.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンは、アテロコラーゲンである、方法。
92.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の溶液と比較して、室温での粘度が低い、方法。
93.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の重合性溶液と比較して、37℃での粘度が低い、方法。
94.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の溶液と比較して、室温で低い力で組織空間に導入される、方法。
95.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の溶液と比較して、37℃で低い力で組織空間に導入される、方法。
96.表皮の下の組織空間内に細胞増殖足場を誘導する方法であって、植物由来のヒトコラーゲンを含む溶液が、同じ濃度および製剤において、組織から抽出されたヒトまたはウシコラーゲンを含む類似の溶液と比較して、足場形成を増加させるか、または細胞増殖における増加を促進する、方法。
97.細胞増殖足場を誘導するための表皮の下の組織空間に注入される溶液の使用であって、この溶液は、植物由来のヒトコラーゲンと、少なくとも1つの成長因子またはその供給源とを含み、コラーゲンを含む組織の分解または損傷に起因する治癒または置換を促進する、溶液の使用。
98.細胞増殖足場を誘導するための表皮の下の組織空間に注入される溶液の使用であって、少なくとも1つの成長因子の供給源は、血漿または多血小板血漿を含む、溶液の使用。
【0276】
定義
【0277】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「分子(a molecule)」という用語は、複数の分子も含む。
【0278】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%または±5%を指す。
【0279】
用語「comprises」、「comprising」、「includes」、「including」、「having」およびそれらの活用形は、「including(含む)が限定されない」ことを意味する。
【0280】
「からなる」という用語は、「含むおよび限定される」ことを意味する。
【0281】
「本質的にからなる」という用語は、追加の成分、工程および/または部品が特許請求された構成、方法、または構造の基本的なおよび新規の特性を実質的に変更しない場合のみ、構成、方法または構造が追加の成分、工程および/または部品を含んでもよいことを意味する。
【0282】
本明細書で使用する「方法」という用語は、化学、薬理学、生物学、生化学、医学の実務家により既知の、または、化学、薬理学、生物学、生化学、医学の実務家による既知の方法、手段、技術、および手順から容易に開発される方法、手段、技術、および手順を含むが、これらに限定されない、所定のタスクを達成するための方法、手段、技術、および手順を指す。
【0283】
本明細書で使用される場合、「遺伝子組換え植物」という句は、外因性ポリヌクレオチド配列で安定的または一時的に形質転換される、任意の下等(例えば、コケ)植物または高等(例えば、維管束)植物、またはその組織または単離された細胞(例えば、細胞懸濁物の)を包含する。植物の例としては、限定されないが、タバコ、トウモロコシ、アルファルファ、米、ジャガイモ、大豆、トマト、小麦、大麦、キャノーラ、綿、ニンジン、およびコケなどの下等植物が挙げられる。
【0284】
本明細書で使用される場合、「コラーゲン鎖」という句は、コラーゲン線維、好ましくはI型線維のα1鎖またはα2鎖などのコラーゲンサブユニットを包含する。本明細書で使用される場合、「コラーゲン」という句は、組み立てられたコラーゲントリマーを指し、I型コラーゲンの場合、2つのα1鎖と1つのα2鎖とを含む。コラーゲン線維は、末端のプロペプチドCおよびNを欠いたコラーゲンである。
【0285】
本明細書で使用される場合、「テロペプチドを含むコラーゲン」という句は、アテロコラーゲンに含まれるテロペプチドレムナントよりも長いテロペプチドを含む可溶性コラーゲン分子を包含する。したがって、テロペプチドを含むコラーゲンは、全長プロペプチドを含むプロコラーゲンであってもよい。あるいは、テロペプチドを含むコラーゲンは、部分的に消化されたプロペプチドを含むプロコラーゲン分子であってもよい。さらにこれに代えて、テロペプチドを含むコラーゲンは、テロコラーゲンであってもよい。
【0286】
本明細書で使用される「プロコラーゲン」という用語は、N末端プロペプチド、C末端プロペプチドのいずれか、またはその両方を含むコラーゲン分子(例えば、ヒト)を包含する。例示的なヒトプロコラーゲンアミノ酸配列は、配列番号1、2、7および8によって示される。
【0287】
本明細書で使用される「テロコラーゲン」という用語は、通常プロコラーゲンに含まれるN末端およびC末端プロペプチドの両方を欠いているが、依然としてテロペプチドを含むコラーゲン分子を包含する。線維状コラーゲンのテロペプチドは、ネイティブN/Cプロテイナーゼで消化した後のN末端およびC末端プロペプチドのレムナントである。組換えヒトテロコラーゲンは、外因性ヒトプロコラーゲンとそれぞれのプロテアーゼ(すなわち、CまたはN、あるいはその両方)の両方を発現するように形質転換された細胞内で生成され得る。そのようなプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号10(プロテアーゼC)および11(プロテアーゼN)によって例示される。そのようなプロテアーゼは、本明細書で以下にさらに記載されるように、それらがコラーゲン鎖と同じ細胞内コンパートメントに蓄積されるように発現され得る。
【0288】
本明細書で使用される場合、「アテロコラーゲン」という用語は、典型的にはプロコラーゲンおよびそのテロペプチドの少なくとも一部に含まれるN末端およびC末端プロペプチドを両方とも欠いているが、可能な好適な条件下で原線維を形成することが可能であるような、そのテロペプチドの十分な部分を含む、コラーゲン分子を包含する。本発明の方法によれば、任意の種類のアテロコラーゲンを生成することができる。例としては、原線維を形成するコラーゲン(I、II、III、VおよびXI型)、網目構造を形成するコラーゲン(IV、VIIIおよびX型)、原線維表面と会合するコラーゲン(IX、XIIおよびXIV型)、膜貫通タンパク質として発生するコラーゲン(XIIIおよびXVII型)、または11nmの周期的な球状フィラメントを形成するコラーゲン(VI型)が挙げられる。一実施形態によれば、アテロコラーゲンは、I型コラーゲンのα1および/またはα2鎖を含む。
【0289】
本明細書に開示される皮膚充填剤は、いくつかの実施形態では、コラーゲン/アテロコラーゲンの遺伝子組換え形態、例えば、コラゲナーゼ耐性コラーゲンなどを含んでもよいことが理解されるであろう。
【0290】
本明細書で使用される場合、「植物プロモーター」または「プロモーター」という句は、植物、真菌および酵母の細胞(DNAを含有するオルガネラを含む)における遺伝子発現を指令することができるプロモーターを含む。このようなプロモーターは、植物、細菌、ウイルス、真菌または動物起源のものに由来してもよい。このようなプロモーターは、構成的(すなわち、複数の組織において高レベルの遺伝子発現を指令することができる)、組織特異的(すなわち、特定の組織または複数の組織において遺伝子発現を指令することができる)、誘導性(すなわち、刺激によって遺伝子発現を指令することができる)、またはキメラ(すなわち、少なくとも2つの異なるプロモーターの部分から形成された)であってもよい。
【0291】
本明細書で使用される場合、「内因性P4H活性を欠く細胞内コンパートメント」という句は、植物P4Hまたは植物様P4H活性を有する酵素を含まない細胞の任意のコンパートメント化された領域を指す。このような細胞内コンパートメントの例としては、液胞、アポプラストおよび細胞質、ならびに葉緑体、ミトコンドリアなどの細胞小器官が挙げられる。
【0292】
本明細書全体を通して、「構築材料」という句は、「未硬化の構築材料」または「未硬化の構築材料製剤」という句を包含し、本明細書に記載されるように、層を順次形成するために使用される材料を包括的に説明するものである。この句は、最終物体を形成する未硬化材料、すなわち、1つ以上の未硬化モデリング材料製剤、および任意選択で、支持体を形成するために使用される未硬化材料、すなわち未硬化支持材料製剤を包含する。未硬化の構築材料は、1つ以上のモデリング製剤を含んでもよく、異なるモデリング製剤を硬化するときに物体の異なる部分が作られるように分配することができ、したがって、異なる硬化モデリング材料または硬化モデリング材料の異なる混合物で作られる。
【0293】
本明細書で使用される場合、「バイオプリンティング」は、本明細書に記載される自動または半自動のコンピュータ支援型の付加製造システム(例えば、バイオプリンタまたはバイオプリンティングシステム)と適合する方法論によって、生物学的成分を含む1つ以上のバイオインク製剤を利用しつつ、付加製造プロセスを実施することを意味する。
【0294】
本明細書全体を通して、バイオプリンティングの文脈において、「物体」という用語は、その少なくとも一部分に生物学的成分を含む付加製造の最終製品を説明する。この用語は、支持材料が未硬化の構築材料の一部として使用されている場合、支持材料を除去した後、本明細書に記載のバイオプリンティング法によって得られる製品を指す。いくつかの実施形態では、生物学的成分は、例えば、WO2006/035442、WO2009/053985、ならびにそれらに由来する特許および特許出願(これらは全て、本明細書に完全に記載されているかのように参照により組み込まれる)に記載されるような組換えヒトコラーゲンを含む。
【0295】
本明細書全体で使用される「物体」という用語は、物体全体またはその一部を指す。
【0296】
本明細書全体を通して、「硬化性材料」は、本明細書に記載の硬化条件にさらされると固化または硬化して、本明細書に定義される硬化モデリング材料を形成する化合物(モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー化合物)である。硬化性材料は、典型的には重合性材料であり、好適なエネルギー源にさらされると重合および/または架橋を受ける。あるいは、硬化性材料は熱応答性材料であり、温度変化(例えば、加熱または冷却)にさらされると固化または硬化する。場合により、硬化性材料は、生物学的反応(例えば、酵素触媒反応)の際に硬化または固体した材料を形成するための反応を受ける生物学的材料である。
【0297】
「硬化条件」は、硬化エネルギー(例えば、温度、放射線)および/または硬化を促進する材料または試薬を包含する。
【0298】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、本明細書に記載のように、放射線への曝露時に重合するか、または架橋を受ける光重合性材料であり、いくつかの実施形態では、硬化性材料は、本明細書に記載のように、UV-vis放射線への曝露時に重合するか、または架橋を受ける、UV硬化性または可視光硬化性の材料である。
【0299】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、モノマー、オリゴマーまたは短鎖ポリマーであってもよく、各々が本明細書に記載されるように重合性である。
【0300】
本明細書において、「硬化性」という用語は、「重合性」および「架橋性」という用語を包含する。
【0301】
本明細書で使用される場合、「エアロポニックス」は、土壌または凝集媒体を使用せずに、空気または霧環境で植物を成長させるプロセスである(「ジオポニックス」として知られている)。
【0302】
本明細書で使用される場合、「ハイドロポニックス」は、水溶媒中の無機栄養溶液を使用して、土壌なしで植物を成長させるプロセス(「ジオポニックス」)である。
【0303】
本明細書で使用される場合、「内生菌」は、植物のすべてのエンドファイトを含む。
【0304】
本明細書で使用される場合、「滲出液」は、細孔または創傷を通して生物によって放出される流体である。「滲出」は、「滲出液」を放出するプロセスである。
【0305】
本明細書で使用される場合、「ハイドロポニックス」は、水溶媒中の無機栄養溶液を使用して、土壌なしで植物を成長させるプロセス(「ジオポニックス」)である。
【0306】
本明細書で使用される場合、「統合」または「統合ハイブリダイゼーション」は、ある種の遺伝子プールから別の種の遺伝子プールへの、種間雑種の1つとの反復戻し交配を介した遺伝子の移動(すなわち、「遺伝子流動」)である。その親種は、単純な交配とは異なり、親遺伝子の複雑な混合をもたらす。
【0307】
本明細書で使用される場合、「メタボローム」は、「生物学的サンプル」(細胞、オルガネラ、器官、組織、組織抽出物、生体液、または生物を含むが、これらに限定されない)内に見られる低分子化学物質の完全なセットである。メタボロームの低分子化学物質は、「内因性代謝物」または「外因性化学物質」であってもよい。「内因性代謝物」は、生物によって自然に生成し、アミノ酸、有機酸、核酸、脂肪酸、アミン、糖、ビタミン、補因子、色素および抗生物質を含むが、これらに限定されない。「外因性化学物質」は、生物によって自然に生成されるものではなく、薬物、環境汚染物質、食品添加剤、毒素、および他の生体異物を含むが、これらに限定されない。「内因性メタボローム」は、内因性代謝物で構成され、「外因性メタボローム」は「外因性化学物質」で構成される。「内因性メタボローム」は、特に植物、真菌、および原核生物に関して、「一次メタボローム」と「二次メタボローム」で構成される。「一次メタボローム」は、「一次代謝物」(すなわち、生物の正常な成長、発達、および生殖に直接関与する代謝物)で構成され、「二次メタボローム」は、「二次代謝物(すなわち、生物の正常な成長、発達、および生殖に直接関与しない代謝産物)」で構成される。二次代謝物は、重要な生態学的機能を有することが多い。
【0308】
本明細書で使用される場合、「代謝物」は通常、1500Da未満の分子量を有する低分子である。「代謝物」としては、限定されないが、糖脂質、多糖類、短いペプチド、小さなオリゴヌクレオチド、有機酸、タキサン、アルカロイドおよびストリゴラクトンを挙げることができるが、非常に大きな高分子(例えば、タンパク質、mRNA、rRNA、およびDNA)は、一般に代謝物ではなく、メタボロームの一部でもない。
【0309】
本明細書で使用される場合、「SILVAデータベース」は、SILVAリボソームRNAデータベースである。
【0310】
あらゆる種類のさらなるプロセシングを受けたものを含む、生物から得られた全てのサンプルは、生物から得られたものとみなされる。
【0311】
DNAの単離、配列決定、増幅および/またはクローニングの方法は、当業者に知られている。DNA増幅に最も一般的に使用される方法は、PCRである(ポリメラーゼ連鎖反応、例えば、PCR Basics:from background to Bench、Springer Verlag、2000、Eckertら、1991.PCR Methods and Applications 1:17を参照)。さらなる好適な増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅および自立配列複製、および核酸に基づく配列増幅(NASBA)が挙げられる。同様に、RNAおよびタンパク質の単離、特性決定など、ならびにタンパク質発現のための方法は、当業者に知られている。
【0312】
以下の実施例は、本明細書に開示される、皮膚充填剤のいくつかの実施形態およびその使用をより完全に説明するために提示される。しかしながら、それらは、決して、本明細書に開示される皮膚充填剤、それらの使用の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される原理の多くの変形および改変を容易に考案することができる。
【実施例】
【0313】
実施例1.構築物および形質転換スキーム。
【0314】
この研究で使用される発現カセットおよびベクターの構築は、
図1A~1Dに示されている(米国特許第8,455,717号も参照のこと)。この研究におけるコード配列の全ては、タバコでの発現のために最適化され、所望のフランキング領域で化学的に合成された(配列番号1、4、7、12、14、16、18、20、22)。
図1A:液胞シグナルまたはアポプラストシグナル(配列番号7によってコードされる)のいずれかに融合しているか、またはシグナルが、Chrysanthemum rbcS1プロモーターおよび5'UTR(配列番号10)、Chrysanthemum rbcS1 3'UTRおよびターミネーター(配列番号11)で構成される発現カセット内でクローニングされていない、Col1およびCol2(配列番号1、4)をコードする合成遺伝子。完全な発現カセットは、pBINPLUS植物形質転換ベクターの複数のクローニング部位内でクローニングされた(van Engelenら、1995、Transgenic Res 4:288-290)。
図1B:液胞シグナルまたはアポプラストシグナル(配列番号7によってコードされる)のいずれかに融合しているか、またはシグナルが、ベクターpJD330によって保有されるCaMV 35SプロモーターおよびTMVオメガ配列およびAgrobacteriumノパリンシンテターゼ(NOS)ターミネーターで構成される発現カセット内でクローニングされていない、P4Hβ-ヒト、P4Hα-ヒトおよびP4H-植物(配列番号12、14および16)をコードする合成遺伝子(Galiliら、1987、Nucleic Acids Res 15:3257-3273)。完全な発現カセットは、Col1またはCol2の発現カセットを保有するpBINPLUSベクターの複数のクローニング部位内でクローニングされた。
図1C:液胞シグナルまたはアポプラストシグナル(配列番号7によってコードされる)のいずれかに融合したプロテイナーゼCおよびプロテイナーゼN(配列番号18、20)をコードする合成遺伝子が、Chrysanthemum rbcS1プロモーターおよび5'UTR(配列番号10)、Chrysanthemum rbcS1 3'UTRおよびターミネーター(配列番号11)で構成される発現カセット内でクローニングされた。完全な発現カセットは、pBINPLUS植物形質転換ベクターの複数のクローニング部位内でクローニングされた。
図1D:液胞シグナルまたはアポプラストシグナル(配列番号7によってコードされる)のいずれかに融合しているか、またはシグナルが、Col1およびP4Hβの発現カセットを保有するpBINPLUSベクターの複数のクローニング部位でクローニングされていない、隣接するイチゴベインバンディングウイルス(SVBV)プロモーター(NCBI寄託AF331666 REGION:623.950バージョンAF331666.1 GI:13345788)を有し、Agrobacteriumオクトピンシンターゼ(OCS)ターミネーター(NCBI寄託Z37515 REGION:1344.1538バージョンZ37515.1 GI:886843)によって停止する、LH3(配列番号22)をコードする合成遺伝子。
【0315】
図1A~1Dに記載の発現カセットを利用した宿主植物への共形質転換スキームを
図2に示す。各発現カセット挿入物は、コード配列の短い名称で表される。コード配列および関連する配列番号を表1に記載する。各共形質転換は、2つのpBINPLUSバイナリベクターによって実行される。各長方形は、1つ、2つまたは3つの発現カセットを保有する単一のpBINPLUSベクターを表す。プロモーターとターミネーターは、
図1A~1Dに明記される。
【0316】
実施例2.植物コラーゲン発現。
【0317】
以下の表1に列挙されるタンパク質をコードする合成ポリヌクレオチド配列は、タバコ植物での発現のために設計され、最適化された。
【0318】
【0319】
シグナルペプチド
【0320】
1.チオールプロテアーゼアリューレイン前駆体の大麦遺伝子の液胞シグナル配列(NCBI寄託P05167 GI:113603)MAHARVLLLALAVLATAAVAVASSSSFADSNPIRPVTDRAASTLA(配列番号24)。
2.Arabidopsis thalianaのエンド-1,4-β-グルカナーゼのアポプラストシグナル(Cell、NCBI寄託CAA67156.1 GI:2440033);配列番号9、配列番号7によってコードされる。
【0321】
プラスミドの構築
【0322】
植物発現ベクターは、実施例1で教示されるように構築され、構築された各発現ベクターの組成は、制限分析および配列決定によって確認された。
【0323】
以下の発現カセットを含む発現ベクターを構築した。
【0324】
1.コラーゲンα1
2.コラーゲンα1+ヒトP4Hβサブユニット
3.コラーゲンα1+ヒトP4Hβサブユニット+ヒトLH3
4.コラーゲンα2
5.コラーゲンα2+ヒトP4Hαサブユニットを有する
6.コラーゲンα2+Arabidopsis P4Hを有する
7.P4Hβサブユニット+ヒトLH3
8.ヒトP4Hαサブユニット
【0325】
上述のコード配列の各々は、液胞トランジットペプチドまたはアポプラストトランジットペプチドに翻訳融合されるか、または任意のトランジットペプチド配列を欠いており、その場合、細胞質蓄積が予想される。
【0326】
植物の形質転換とPCRスクリーニング
【0327】
タバコ植物(Nicotiana tabacum、Samsun NN)は、
図2に教示される形質転換スキームに従って、上述の発現ベクターを用いて形質転換された。
【0328】
得られたトランスジェニック植物は、コラーゲンα1の324bpフラグメントおよびコラーゲンα2の537bpフラグメントを増幅可能なように設計された4個のプライマーを使用したマルチプレックスPCRによってスクリーニングされた(表2)。
図3は、1つのマルチプレックスPCRスクリーンの結果を示す。
【0329】
【0330】
実施例3.トランスジェニックタバコ植物におけるヒトコラーゲンの検出。
【0331】
500mgの葉を、0.5mlの50mM Tris-HCl(pH=7.5)中、「完全な」プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics GmbH製の製品番号1836145、50mlバッファ中1個のタブレット)を用いて粉砕することによって、全可溶性タンパク質を、タバコ形質転換体2番、3番および4番から抽出した。粗抽出物を250μl 4Xと混合した。10%のβ-メルカプトエタノールと8%のSDSとを含むサンプル適用バッファ、サンプルを7分間煮沸し、13000rpmで8分間遠心分離した。20Μlの上澄み液を、10%ポリアクリルアミドゲルにロードし、標準的なウエスタンブロット手順において、抗コラーゲンI型(変性)抗体(Chemicon Inc.製の番号AB745)を用いて試験した(
図4)。W.T.は、野生型タバコである。コラーゲンI型α1またはα2、または両方についてPCR陽性である植物において、陽性コラーゲンバンドを見ることができる。ヒト胎盤由来の500ngのコラーゲンI型の陽性対照バンド(Chemicon Inc.製の番号CC050)は、トランスジェニック植物由来のサンプル中、全可溶性タンパク質の約0.3%(約150μg)に相当する。
【0332】
コラーゲンが液胞に標的化された場合、全可溶性タンパク質の約1%までの予想される分子量でコラーゲンを発現する植物が検出された(
図4)。アポプラストへの全長コラーゲンの細胞内標的化は首尾よく達成された(
図5)。細胞質(すなわち、標的ペプチドがない)でコラーゲンを発現する植物は、コラーゲンを検出可能なレベルまで蓄積せず、このことは、植物におけるコラーゲンの細胞内標的化が、この成功にとって重要であることを示している。
【0333】
これに加えて、N-プロペプチドを欠くコラーゲンが本アプローチを用いて顕著なタンパク質分解を受けたことを示したRuggieroら、2000およびMerleら、2002の研究とは対照的に、C-プロペプチドおよびN-プロペプチドを有する全長コラーゲンタンパク質は、細胞内コンパートメントに高レベルで蓄積した。
【0334】
このデータはまた、各々が異なる種類のコラーゲン鎖を発現する2つの植物を交配することが、最適なレベルの各種類の鎖を発現する植物の選択を可能にし、その後の植物交配が、所望なコラーゲン産生植物を達成することを可能にするという点で有利であることを明確に示す。
【0335】
本発明の植物によって産生されるコラーゲンは、天然のプロペプチドを含み、したがって、タンパク質分解によって精製されたヒト対照よりも大きなタンパク質を形成すると予想される。ヒドロキシル化またはグリコシル化を行わないコラーゲンα1およびα2鎖の計算された分子量は、以下の通りである。プロペプチドを有するCol1--136kDa、プロペプチドを有しないCol1--95kDa、プロペプチドを有するCol2--127kDa、プロペプチドを有しないol2--92kDa。
【0336】
図4で見ることができるように、形質転換体3-5および3-49のCol1バンドは、他の植物のCol1バンドよりも大きいように見える。このバンドは、これらの植物中で共発現し、ヒトコラーゲン鎖と同じ細胞内コンパートメント(例えば、液胞)に対して標的化されたαおよびβサブユニットで構成されるヒトプロリン-4-ヒドロキシラーゼホロ酵素による、コラーゲン鎖中のプロリンヒドロキシル化を示す。
【0337】
実施例4.トランスジェニック植物におけるコラーゲン三重ヘリックス組織化および熱安定性
【0338】
トランスジェニック植物におけるコラーゲン三重ヘリックス組織化およびヘリックスの熱安定性を、トランスジェニック植物の全粗タンパク質抽出物の熱変成、次いで、トリプシンまたはペプシンの消化によって試験した(
図6A~6B)。
【0339】
第1の実験では、タバコ2-9(col α1のみを発現し、P4Hを発現しない)および3-5(col α1+2およびヒトP4Hの両方を発現する)からの全可溶性タンパク質を、500mgの葉を、0.5mlの50mM Tris-HCl(pH=7.5)中で粉砕し、13000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を集めることによって抽出した。上澄み液0μlを熱処理(33℃または43℃で15分)した後、直ちに氷上に置いた。50mM Tris-HCl(pH=7.5)中の各サンプル6μlの1mg/mlのトリプシンに添加することによって、トリプシン消化を開始させた。サンプルを室温(約22℃)で20分間インキュベートした。10%のβメルカプトエタノールと8%のSDSとを含む20μl 4Xサンプル適用バッファを添加することによって消化を停止させ、サンプルを7分間煮沸し、13000rpmで7分間遠心分離した。50μlの上澄み液を、10%ポリアクリルアミドゲルにロードし、標準的なウエスタンブロット手順において、抗コラーゲンI型(変性)抗体(Chemicon Inc.製の番号AB745)を用いて試験した。陽性対照は、500ngのヒトコラーゲンI型(Chemicon Inc.製の番号CC050、ペプシン消化によってヒト胎盤から抽出された)のサンプルをw.t.タバコから抽出された50μlの全可溶性タンパク質に添加したものであった。
【0340】
図6Aに示されるように、植物3番~5番および対照ヒトコラーゲン中で形成されたコラーゲン三重ヘリックスは、33℃での変性に耐性があった。対照的に、2番~9番の植物によって形成されたコラーゲンは、33℃で変性した。この熱安定性の違いは、コラーゲンα1およびコラーゲンα2とP4Hのβおよびαサブユニットの両方を発現する形質転換体3番~5番における三重ヘリックス組織化および翻訳後プロリンヒドロキシル化の成功を示す。
【0341】
2番~9番の形質転換体における2つのバンドは、SDSおよびメルカプトエタノールで7分間煮沸した後に安定なダイマーまたはトリマーを表している可能性がある。ヒトコラーゲン(上側パネル)および形質転換体3番~5番において、同様のバンドが見られる。考えられる説明は、リジンオキシダーゼによる2つのリジンの酸化的脱アミノ化の後に形成された、異なる三重ヘリックス(クロスリンク)内の2つのペプチド間の共有結合である。
【0342】
第2の実験では、トランスジェニックタバコ13-6(コラーゲンI型α1およびα2鎖(矢印によって示される)、ヒトP4HαおよびβサブユニットならびにヒトLH3を発現する)からの全可溶性タンパク質を、500mgの葉を、0.5mlの100mM Tris-HCl(pH=7.5)および300mM NaCl中で粉砕し、10000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を集めることによって抽出した。上澄み液50μlを熱処理(33℃、38℃または42℃で20分)した後、直ちに氷上に置いた。各サンプルに、10mM酢酸中の4.5μlの0.1M HClと4μlの2.5mg/mlのペプシンを加えることによって、ペプシン消化を開始した。サンプルを室温(約22℃)で30分間インキュベートした。5μlの緩衝化されていない1M Trisを加えることにより消化を終了させた。各サンプルを、10%のβ-メルカプトエタノールと8%のSDSとを含む22μl 4Xサンプル適用バッファと混合し、7分間煮沸し、13000rpmで7分間遠心分離した。40μlの上澄み液を、10%ポリアクリルアミドゲルにロードし、標準的なウエスタンブロット手順において、抗コラーゲンI型抗体(Chemicon Inc.製の番号AB745)を用いて試験した。陽性対照は、約50ngのヒトコラーゲンI型(Chemicon Inc.製の番号CC050、ペプシン消化によってヒト胎盤から抽出された)のサンプルをw.t.タバコからの全可溶性タンパク質に添加したものであった。
【0343】
図6Bに示されているように、植物番号13-6で形成されたコラーゲン三重ヘリックスは、42℃での変性に耐性があった。プロペプチドの開裂は33℃で最初に見られ、温度が38℃までに上昇し、再び42℃まで上昇すると、効率が徐々に向上する。開裂されたコラーゲン三重ヘリックスドメインは、ペプシンで処理されたヒトコラーゲンの移動と同様のゲル上の移動を示す。この実験で使用されたヒトコラーゲンは、ペプシンタンパク質分解によってヒト胎盤から抽出されたため、プロペプチドと一部のテロペプチドを欠いている。
【0344】
実施例5.植物P4H発現。
【0345】
天然植物P4Hの誘導
【0346】
タバコP4H cDNAをクローニングし、内因性P4H発現を誘導する条件と処理を決定するためのプローブとして使用した。ノーザンブロット分析(
図7)は、P4Hが茎頂で比較的高レベルで発現され、葉で低レベルで発現されることを明確に示す。P4Hレベルは、摩耗処理の4時間後に葉で有意に誘導された(下側のパネルで「負傷したもの」)。他のストレス条件を使用しても同様の結果が得られた(図には示していない)。
【0347】
トランスジェニックタバコ植物におけるヒトP4Hαおよびβサブユニットとコラーゲンα1およびα2鎖の検出。
【0348】
トランスジェニックタバコ植物におけるヒトP4HαおよびβサブユニットとコラーゲンI型α1およびα2鎖の検出は、抗ヒトP4Hαサブユニット抗体(ICN Biomedicals Inc.製の番号63-163)、抗ヒトP4Hβサブユニット抗体(Chemicon Inc.製の番号NMAB2701)および抗コラーゲンI型抗体(Chemicon Inc.製の番号AB745)を使用して行った。これらの抗体でプローブされたウエスタンブロットの結果を
図8に示す。
【0349】
P4Hα、P4Hβ、コラーゲン1型α1およびα2のバンドの発現は、植物13-6で確認された(またヒトLH3で形質転換されている)。液胞シグナルペプチドを含むP4Hαおよびβの計算された分子量は、それぞれ65.5kDaおよび53.4kDaである。ヒドロキシル化またはグリコシル化されていない、プロペプチドを含むコラーゲンα1およびα2鎖の計算された分子量は、それぞれ136kDaおよび127kDaである。
【0350】
実施例6.液胞を標的とするコラーゲンは、暗所で成長した植物で安定して発現する。
【0351】
コラーゲンを発現する植物:
【0352】
20-279親タバコ植物系統は、P4Hβ+LH3を発現する発現ベクターおよびP4Hαを発現する別の発現ベクターを用いる共形質転換によって生成された。各遺伝子の前には、植物の液胞チオールプロテアーゼであるアリューレインの液胞標的決定因子がある。
【0353】
2-300親タバコ植物系統は、col1を発現する発現ベクターおよびcol2を発現する別の発現ベクターを用いる共形質転換によって生成された。各遺伝子の前には、植物の液胞チオールプロテアーゼであるアリューレインの液胞標的決定因子がある。
【0354】
13-652植物は、Col1、P4HβおよびLH3をコードする発現ベクターおよびCol2およびP4Hαをコードする第2の発現ベクターを用いるタバコ植物の共形質転換によって生成された。各遺伝子の前には、植物の液胞チオールプロテアーゼであるアリューレインの液胞標的決定因子があり、ベクターに含まれるカセット配列は、上の実施例1に記載される。
【0355】
明暗トライアル
【0356】
6個の13-6/52ホモ接合体植物の分析。葉番号4+5/6からのサンプル、通常の条件(明条件下で16時間、暗条件下で8時間)から3植物、暗状態でのみ成長させた3植物から、8日間にわたって同時に(12:30)毎日採取した。
【0357】
全タンパク質抽出およびウエスタンブロット分析。
【0358】
タバコの葉90mgを、ミキサーミルMM301型(Retsch)によって、抽出バッファ(100mM Tris HCl(pH=7.5)、Rocheカタログ番号04-693-116-001から入手可能なプロテアーゼ阻害剤カクテル)中、4℃で均質化した。30分間の遠心分離(4℃で20,000Xg)後、上澄み液を回収した。タンパク質サンプルを8%SDS-PAGE(Laemmli 1970)で分画し、BIO-RAD(商標)Protein TRANS-BLOT(商標)装置を使用してニトロセルロース膜に転写した。膜を3%(g/v)スキムミルク(Difco)中、室温で30分間ブロックし、次いで、いずれかの市販のウサギ抗ヒトコラーゲンI型ポリクローナル抗体(Chemicon)と室温で一晩反応させた。膜を水で3~5回すすぎ、次にTBSで30分間洗浄した。二次抗体[アルカリホスファターゼ(AP)(Chemicon)に結合したヤギ抗ウサギIgG抗体]と共に室温で2時間インキュベートした後、膜を水で3~5回すすぎ、次にTBSで30分間洗浄した。免疫検出は、ニトロテトラゾリウムブルークロリド(NBT、Sigma)および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート p-トルイジン塩(BCIP、Sigma)を用いて、室温で2時間~一晩行った。
【0359】
結果
【0360】
図9に示されるように、液胞標的コラーゲンについてトランスジェニックであるタバコ植物は、プロα-1およびプロα-2を発現する(レーン1)。暗条件で成長した液胞標的植物からのコラーゲンは、同様の安定性を示し(レーン2)、このことは、本発明の教示に従って生成されたコラーゲンの並外れた安定性を実証する。
【0361】
実施例7~13.一般的な材料および方法
【0362】
コラーゲン抽出および酵素反応:ブレンダー内で、300gのタバコ葉を、5gのPVPPおよび2gの活性炭を追加した冷却した抽出バッファ(360mgのメタ重亜硫酸カリウム、530mgのL-システインおよび1gのEDTAを含有する、600mlの100mMのTris-HCl、pH7.5)中で混合した(米国特許第8,759,487号を参照)。温度を15℃未満に保つように、1分間隔で5回、混合を行った。粗抽出物をガーゼパッドを通して濾過し、25000g、5℃で30分間、遠心分離した。上澄み液を集めた。CaCl2を、最終濃度10mMになるまで添加した。上澄み液を、10mlのサンプルに分けた。以下の表3に記載されている条件に従って、所望の酵素を各10mlのサンプルに加えた。
【0363】
【0364】
酵素の説明:イチジクラテックス由来のフィシン(Sigma、カタログ番号F4125)、Bacillus licheniformis由来のスブチリシン(Sigma、カタログ番号P5459-5gr)、パイナップルの茎由来のブロメライン(Sigma、カタログ番号B4882-10gr)、Carica papaya由来のパパイン(Fluka、カタログ番号76220-25gr)、好アルカリ性細菌Bacillus lentus由来のSavinase 6.0 t type W(Novozymes、カタログ番号PX92500501)、細菌Bacillus amyloliquefaciens由来のNeutrase 1.5 MG(Novozymes、カタログ番号PW201041)、プロタメックス、市販のBacillusプロテイナーゼ複合体(Novozymes、カタログ番号PW2A1021)、Alcalase 3.0 T、Bacillus subtilisアルカリプロテイナーゼ(Novozymes、カタログ番号PJ90000901)、Esperase 6.0 T、好アルカリ性細菌Bacillus lentus(Novozymes、カタログ番号PE90110401)、Alcalase 2.4 L FG、Bacillus subtilisアルカリプロテイナーゼ(Novozymes、カタログ番号PLN05330)、Esperase 8.0 L、好アルカリ性細菌Bacillus lentus(Novozymes、カタログ番号PE00077)は、全てNovozymesから寄贈された。動物の膵臓由来のトリプシンである膵臓トリプシン6.0 S無塩型(Novozymes、カタログ番号P245-D20)。トウモロコシで発現した組換えトリプシンであるTRYPZEAN(商標)は、Sigma Chemical Co.(カタログ番号:T3449)から購入した。
【0365】
アテロコラーゲン濃度の決定:実施例9~10に従って生成されたアテロコラーゲンの濃度を、以下の2つの方法によってアッセイした。
【0366】
SIRCOL(商標)アッセイ:SIRCOL(商標)コラーゲンアッセイキットは、Biocolor Ltd.(カタログ番号85000)から購入した。このアッセイは、シリウスレッド色素とコラーゲン三重ヘリックスとの相互作用に基づく。分析は、供給業者の取扱説明書(第4版、2002)年に従って行った。ウシコラーゲン標準を使用して、検量線を作成した(0~50μgコラーゲン)。10~50μlのコラーゲンの10mM HCl溶液の3つのサンプルを、1.5mlエッペンドルフチューブに入れ、その容積を0.5M酢酸で100μlにした。1mlのSIRCOL(商標)色素試薬を各チューブに加え、チューブを室温で30分間振とうした。チューブを12,000rpmで10分間、室温で遠心分離し、上澄み液を吸引し、チューブを吸収紙の上に逆さに置き、残りの上澄み液を除去した。綿棒を使用して、チューブの壁からアクセスドロップを除去した。1mlのアルカリ試薬を各チューブに加え、よく混合し、室温で10分間インキュベートした。分光光度計を使用して540nmでの吸光度を測定し、ブランクサンプルとして10mM HClを使用して、検量線に対してコラーゲンの濃度を計算した。
【0367】
SDS-PAGEインスタントブルーアッセイ:サンプルをSABバッファー(還元条件)で5分間煮沸し、12,000rpmで5分間遠心分離した後、SDS PAGE、8%アクリルアミドにロードした。ゲルは、Mini Protean 3ユニット(BioRad番号165-3301、165-3302)で実施した。インスタントブルー試薬(Novexin番号ISB01L)を、タンパク質がゲル上で青いバンドとして視覚化されるまで、ゲルに適用した。ゲルを水ですすぎ、乾燥させた。コラーゲンバンドの濃度は、同じゲルにロードされたヒト標準に対して、濃度測定によって計算した。
【0368】
クマシー分析:コラーゲンのサンプル(10mM HCl中)を、1M Trisを使用して、pH7.5になるまで滴定した。10%β-メルカプトエタノールと8%SDSを含むサンプル適用バッファを、30μlのpH滴定したサンプルで4倍に希釈して添加した。サンプルを7分間煮沸した。30μlの上澄み液を10%ポリアクリルアミドゲルにロードし、100ボルトで2時間かけて分離した。ゲルを、クマシー系溶液に振とうしながら1時間かけて転写した。クマシー染料は、標準的な脱色溶液を使用して除去した。
【0369】
α-1およびα-2コラーゲン鎖のSDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析:サンプルを還元サンプル適用バッファ(2.5%β-メルカプトエタノールおよび2%SDS)で7分間煮沸し、次いで、13,000rpmで15分間遠心分離した。30μlの上澄み液を、10%ポリアクリルアミドゲルで分離した。分離後、標準的なウエスタンブロットプロトコルを使用して、サンプルをニトロセルロース膜上にブロッティングした。転写後、α-1およびα-2コラーゲン鎖の免疫検出のために、膜を抗コラーゲンI型抗体(Chemicon Inc.カタログ#AB745)と共にインキュベートした。分子量マーカーはFermentas Inc.(カタログ番号SM0671)から購入した。
【0370】
対照:Calbiochem(番号234138)から購入したヒト皮膚コラーゲンI型の陽性対照を、ウエスタンブロット分析のマーカーとして使用した。粉砕した対照サンプルは、抽出バッファに再懸濁する直前のタバコの葉に由来するペレットを反映する。「D」対照サンプルは、抽出バッファに再懸濁した後の同じペレットを反映する。「K」対照サンプルには、10mM HCl中のフィシン消化されたプロコラーゲンが含まれる。バックグラウンドのフィシン非依存性プロテアーゼ活性を監視するために、フィシンを含まない開裂サンプルを、常に、全てのフィシン消化試験と並行して調製した。
【0371】
トランスジェニック植物からのコラーゲンの精製:コラーゲンを含有する抽出物中のプロペプチドの消化は、30mg/Lのトリプシンまたは5mg/L(50μl/L)のスブチリシン(Sigma、カタログ番号P5459)または5mg/Lのフィシン(Sigma、カタログ番号F4125)の添加によって開始された。タンパク質分解を15℃で4時間行った。不溶性汚染物質の除去は、30分間、22,000g、15℃で遠心分離することによって行われた。上澄み液を回収し、室温で20分間絶えず撹拌しながら、結晶性NaClを最終濃度3.13Mになるまでゆっくりと加えることによりコラーゲンを沈殿させた。この溶液を撹拌せずに冷蔵室で一晩インキュベートした。コラーゲンの収集は、5℃で2時間、25,000gでの遠心分離によって行われた。
【0372】
上澄み液を4層のガーゼパッドに注意深く注いだ。マグネチックスターラーを使用して、ペレットを200mlの250mM酢酸および2M NaClに5分間かけて再懸濁させた。懸濁物を、25,000g、5℃で40分間遠心分離した。微量の上澄み液をガラスバイアルから除去した。ペレットを200mlの0.5M酢酸に室温で1時間かけて再溶解させた。不溶性物質の除去は、16,000g、30分、15℃での遠心分離によって行われた。上澄み液を12層のガーゼパッドに注いだ。室温で20分間絶えず撹拌しながら、NaClを最終濃度3Mになるまでゆっくりと加えることによりコラーゲンを沈殿させた。この溶液を4℃で8時間から一晩インキュベートした。コラーゲンの収集は、5℃で2時間、25,000gでの遠心分離によって行われた。上澄み液を吸引した後、マグネチックスターラーを室温で1時間使用して、ペレットを200mlの0.5M酢酸に再溶解した。不溶性物質の除去は、16,000g、30分、15℃での遠心分離によって行われた。上澄み液を12層のガーゼパッドに注いだ。室温で20分間絶えず撹拌しながら、NaClを最終濃度3Mになるまでゆっくりと加えることによりコラーゲンを沈殿させた。この溶液を4℃で8時間インキュベートした。5℃で2時間、2,000gでの遠心分離によってコラーゲンを集めた。上澄み液を吸引した。ピペッティングおよび室温で5分間ボルテックスすることによって、ペレットを40mlの10mM HClに再溶解させた。この溶液を透析バッグ(MWCO 14,000Da)に移し、4Lの10mM HClに対し、4℃で4時間透析した。この透析を一晩繰り返した。
【0373】
コラーゲンの滅菌は、最初に0.45μmフィルターで溶液を濾過し、次に30mlシリンジを使用して0.2μMフィルターで濾過することによって行われた。コラーゲンは、Vivaspin PES 20ml濾過チューブ(Vivascience、番号VS2041、MWCO 100000)を使用した限外濾過によってさらに濃縮された。遠心分離は、容積が0.75mlに減少するまで、5000g、5℃で45分間行われた。
【0374】
食品グレードのフィシンによるプロコラーゲン開裂の消化動態および条件の最適化:ペレット(実施例10に記載したように集めた、25%硫酸アンモニウム(AMS)で飽和するまで)を、バッファ(バッファA:4.5mMのメタ重亜硫酸カリウム、12.5mMのL-システイン、7.5mMのEDTAを0.1Mのリン酸ナトリウムバッファに溶解し、10M NaOHまたは6N HClを用いてpH7.5になるまで滴定した)で、ペレット4.36g:氷冷却したバッファ200mLの比率で再懸濁させた。次に、サンプルを15℃で20分間撹拌した。次に、15mLの試験管あたり10mLのアリコートを調製し、続いてフィシンの濃度を上げながら(5~15mg/L)投与した(イチジクラテックス、Biochem Europeの食品グレードのフィシン)。サンプルを15℃で1~3時間インキュベートし、SDS-PAGEによって分離し、次いで、プロコラーゲンより低い分子量で移動するコラーゲンの存在について、ウエスタンブロットによって分析した。
【0375】
様々なpH値(5.5、7.5または8.5)のリン酸バッファA(27.2g:800mLバッファ)に再懸濁させたタバコの葉由来のペレットを、15℃で、0~3MのNaCl存在下、10mg/Lのフィシンで処理した。各反応混合物から1mLのサンプルを遠心分離することにより反応を停止させた(10分、15000g、4℃)。ペレットを1mLのバッファーA(pH7.5)に再懸濁し、SDS-PAGEによって分離し、ウエスタンブロットの手段によって分析した。
【0376】
医薬品グレードのフィシンによるプロコラーゲン開裂の消化動態および条件の最適化:タバコの葉のペレットを、NaCl濃度を挙げながら(0~3M)、これと共に様々なpH値(7.5、8.5、9.5)の医薬品グレード(Biochem-Europe Pharmグレード)のフィシンを含有する抽出バッファ(10mg/L)に5~45分間かけて再懸濁させた。さらなる実験では、抽出バッファに対する添加剤としてのEDTAとL-システインの必要性、最適条件および濃度を研究した。サンプルを、0~100mMのEDTAと0~80mMのL-システインの存在下、消化混合物中で、15℃、pH7.5、NaClを用いずに1~3時間インキュベートした。
【0377】
原線維形成:原線維形成は、コラーゲン機能検査とみなされる。したがって、フィシンによって消化された精製コラーゲンが原線維を形成する能力は、得られた生成物の本質的な特性である。試験方法:コラーゲンを含有する溶液(複数個ずつのサンプル)のpHを、リン酸ナトリウム(pH11.2)を用いてpH6.7まで中和し、次いで、27±2μCで6時間インキュベートした。サンプルを遠心分離して、形成されたヒドロゲルを沈降させた。中和前および中和後(上澄み液)サンプルの両方のタンパク質濃度は、ローリー法によって決定された。PURECOL(商標)(NUTACONから購入、カタログ番号5409)を陽性対照として使用し、ゼラチンを陰性対照として使用した。
【0378】
実施例7.トリプシンおよびペプシン存在下でのトランスジェニック植物からのコラーゲンの抽出および精製。
【0379】
ヒトの美容用途または医療用途での哺乳動物タンパク質の使用は、進化の近接性が相対性に近いため、ヒトの健康に危険を及ぼす可能性があるため、哺乳動物源からのコラーゲンの使用を避けるために、植物におけるヒトコラーゲンの生成が開始された。既知の疾患であるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は、感染した哺乳動物プロテインがヒトによって消費されることによって引き起こされる疾患の一例である。
【0380】
当初、トランスジェニック植物からのコラーゲンの精製は、ウシ膵臓トリプシンと消化プロテアーゼペプシンを使用して行われ、これらはどちらも動物の消化器系のタンパク質の加水分解に触媒作用を及ぼす。以下の実施例は、コラーゲン精製プロセスでの使用に好適な非動物源由来のプロテアーゼの同定を示す。
【0381】
結果
【0382】
コラーゲン精製中のプロペプチド消化は、最初に、膵臓酵素トリプシンによって行われた。トリプシンは、300mg/Lでコラーゲンプロペプチドを消化したが、コラーゲンの収量は、精製プロセス終了時に非常に低かった(
図10)。トリプシンの濃度を20mg/Lまたは30mg/Lまで下げると、収量は高くなったが、プロコラーゲン消化は部分的にしか起こらず、同一サンプル間で一貫性がなかった(
図11)。
【0383】
この問題を克服しようとする試みにおいて、様々なインキュベーション温度と時間を試した。しかしながら、その結果は、収量の変化にはつながらなかった(データは示していない)。精製プロセスの後でペプシン酵素を添加すると、部分的な消化の問題は解決し(
図12)、ブタ由来のコラーゲン対照サンプルと共に移動するα-1およびα-2コラーゲンが得られた。
【0384】
実施例8.コラーゲン抽出およびその酵素的に誘導された消化。
【0385】
しかしながら、トリプシン-ペプシン溶液は、2つの異なる酵素を必要とし、精製プロセスが長くなるため、最適なものではなかった。さらに、両方の酵素が、動物由来である。これらの課題を克服するために、非動物由来の異なるプロテアーゼ酵素のスクリーニングを行った。スクリーニングされた様々な酵素によって、様々な消化パターンが得られた。コラーゲンをサビナーゼ(
図15)およびエスペラーゼ(
図17)酵素と共にインキュベーションして得られたポリペプチドの消化は、ほとんど観察されないか、または全く観察されなかった。パパイン(
図14)、ブロメライン(
図13)、アルカラーゼ2.4Lおよびエスペラーゼ8.0L(
図18)を用いるインキュベーションによって、プロペプチドの過剰消化または過少消化が起こった。アルカラーゼおよびプロタメックス酵素(
図16)によって、所望な消化パターンおよびレベル(25mg/L、6時間)を生じ、α1およびα2鎖は、ブタ由来のコラーゲンサンプルと同様に移動する。しかしながら、全ての分子が完全に消化されたわけではなく、さらに長いインキュベーション時間が必要になる場合がある。最適な結果は、フィシン(5mg/Lおよび25mg/L)と共にプロコラーゲンをインキュベーションすると得られ(
図15)、ここで、α1およびα2鎖のバンドは、ブタ由来のコラーゲン対照サンプルと共に移動し、明らかな過剰消化はなかった。同様の結果が、スブチリシン5mg/Lで3時間(
図13)およびニュートラーゼ25mg/Lで6時間(
図17)で示された。
【0386】
実施例9.スブチリシンまたはフィシンを用いる消化後のトランスジェニック植物からのコラーゲンの抽出および精製。
【0387】
トランスジェニック植物(13-361または13-6-52)の葉450グラムからのコラーゲン精製を、フィシン(
図19)またはスブチリシン(
図20)を用いるプロコラーゲン消化後に行った。精製プロセスの様々な段階でのコラーゲンサンプルを、ウエスタン分析によって分析した。フィシンおよびスブチリシンによるプロペプチド消化によって、コラーゲン1およびコラーゲン2の望ましいプロセシング度が得られた。低分子量のバンドは、精製プロセス全体で、ウエスタンブロットで観察されたが、これらのバンドは、酵素を用いるインキュベーション前の植物抽出物(レーン3~4)と、さらにブタ由来のコラーゲン対照サンプル(陽性対照)(
図19)に現れた。
【0388】
実施例10.フィシンを用いる消化後のトランスジェニック植物からのスケールアップしたコラーゲンの抽出および精製。
【0389】
1kgのトランスジェニックタバコ葉を、4Lリアクター(ESCOモデルEL-3)中、あらかじめ冷却しておいた2Lの抽出バッファ(100mMのリン酸ナトリウムバッファpH7.5、4.5mMのメタ重亜硫酸カリウム、12.23mMのL-システインおよび7.5mMのEDTA)を用いて20分間粉砕した(5℃、50%スクレーパ速度および100%ホモジナイザーブレードrpm)。この抽出物に6.68gの木炭と16.67gのPVPPを添加し、20分間連続して撹拌した(5℃および50%スクレーパ速度)。抽出物を遠心分離し(11000rpm、5℃、0.5H)、上澄み液を15%硫酸アンモニウムで飽和させた(1時間撹拌、5℃)。6880rpm、5℃で30分後、上澄み液を25%硫酸アンモニウムになるように飽和させ、1時間撹拌した(5℃)。再遠心分離後、ペレット(6880rpm、5℃、30分)を、第1の遠心分離工程後に集めた体積の15%で再懸濁した(抽出バッファ中)。プロペプチドの除去は、15℃で5mg/Lのフィシン(Biochem Europe)を用いて3時間の消化によって実現された。サンプルを遠心分離し(11,000rpm、15℃、30分)、3M NaClを使用して成熟コラーゲンを沈殿させた(NaClを撹拌しながらゆっくりと添加し、4℃で一晩放置した)。沈殿(13,000rpm、5℃、2時間)の後、上澄み液を捨て、ペレットを0.5M酢酸に再懸濁した。さらなる回の3M塩析(一晩)と遠心分離の後、ペレットを40mlの10mM HClに再懸濁した。サンプルを透析バッグ(12~14kDa)に移し、4Lの10mM HClに対し、4℃で4時間透析した。透析を、新鮮な4Lの10mM HClを用いて一晩繰り返した。透析された溶液を、0.45ミクロのフィルター(前もって10mM HClで洗浄した)を通して濾過し、次いで、0.25ミクロンフィルターを通して濾過した。最後に、サンプルをVivaspin(Vivascience)濾過チューブ(100kDa)で濃縮した。
【0390】
実施例11.トランスジェニックタバコ植物において組換えヒトプロコラーゲンとして産生されたアテロコラーゲンの溶解度。
【0391】
実施例9~10に従って生成されたアテロコラーゲンの濃度を、方法の章に記載しているように、以下の2つの方法によってアッセイした。フィシンで消化されたいくつかの典型的な調製物について得られた濃度の結果は、以下の表4に列挙されている。
【0392】
【0393】
実施例12.タバコの葉由来のプロコラーゲンのフィシン依存性タンパク質分解。
【0394】
食品グレードのフィシンによるプロコラーゲンの消化動態:最高のコラーゲン収量を可能にする適切なフィシン濃度とインキュベーション時間を較正するために、プロコラーゲンを発現するタバコ葉のペレットを、食品グレードのフィシンの濃度を上げながら(5~15mg/L)、15℃で1~3時間インキュベートした。次に、サンプルを、ウエスタンブロットで、α-1およびα-2コラーゲン鎖の免疫検出によって分析した。フィシン濃度の増加は、1時間のインキュベート時間後のコラーゲン鎖収率を改善した(
図22、レーン5対6)。しかしながら、反応時間を延長すると、フィシン濃度の増加は、コラーゲンの過剰消化を引き起こした(
図22、レーン11対12~14およびレーン17対18~20)。したがって、プロコラーゲンからコラーゲンへの消化に最適な条件は、10mg/Lの食品グレードのフィシンを15℃で1時間添加することと設定された。
【0395】
医薬品グレードのフィシンによるプロコラーゲンの消化動態:プロコラーゲンを発現するタバコ葉のペレットに対して同様の実験を行い、医薬品グレードのフィシンによるプロコラーゲンの消化に適した条件を決定した。ペレットを再懸濁し、医薬品グレードのフィシンの濃度を上げながら(2.5~10mg/L)、15℃で0.5~3時間インキュベートした。消化効率を、ウエスタンブロットでのコラーゲン鎖の免疫検出によって決定した。
図23A~23Cに示されるように、フィシン濃度を増加させると、コラーゲン収量が増加し、プロコラーゲンレベルが減少した。製薬グレードのフィシンによるプロコラーゲンの最も効果的な消化は、10mg/Lで、1時間の反応時間後にみられた。
【0396】
フィシン依存性プロコラーゲン開裂のためのpH値と塩濃度の最適化:次に、消化バッファのpHと塩濃度の両方の寄与を評価した。同様のタバコの葉のAMS後のペレットを、0.5~3M NaClの範囲の塩含有量で、pH5.5、7.5、8.5または9.5になるように滴定した抽出バッファに再懸濁させた。次に、サンプルを10mg/Lの医薬品グレードのフィシンと共に15℃で1時間インキュベートした後、ウエスタンブロットで免疫分析を行った。酸性アッセイ条件(pH5.5)では不十分なコラーゲン収量を生じ(
図24A、レーン2~6)、pH値の増加は、フィシン依存性コラーゲン含有量の相関的な上昇を示し、2M NaCl存在下、ピーク値はpH8.5で観察された(
図24B、レーン10)。これらの結果は、フィシンによって誘導されるプロコラーゲン消化のためにプールされた2つの15kgペレットで行われたスケールアップした抽出精製実験でさらに裏付けられた。イムノブロッティングで見られたコラーゲン鎖収量の増加は別として、2M NaCl存在下、pH8.5のバッファ中で消化されたサンプルは、バッファA(pH7.5、0mM NaCl)中で消化されたものと同様に効率的に原線維化した(以下の表5を参照、バッチYC1およびYC2)。したがって、pHと塩濃度が両方とも高いと、フィシンによって誘導されるプロコラーゲン消化後のコラーゲン収量が改善された。
【0397】
消化反応混合物中のEDTAとL-システインの活力の測定:EDTAとL-システインは、両方とも、コラーゲン精製プロセスの初期段階で抽出バッファ中に存在する添加剤である。本明細書において、効果的なフィシン依存性コラーゲン開裂に対して、これら2成分が必須であることが決定された。プロコラーゲンのAMS後のペレットを、EDTA(8~80mM)およびL-システイン(10~100mM)の濃度を上げつつ含む抽出バッファに再懸濁させ、フィシン(10mg/L)と共に15℃で1時間、pH7.5でインキュベートした。10mMのL-システイン存在下、消化効率に顕著な向上効果が観察され(
図25、レーン7~10)、フィシン依存性コラーゲン出力に対するEDTAの明らかな寄与はなかった(
図25、レーン7対8~10)。
【0398】
フィシンによって誘導されるプロコラーゲン消化のための温度条件の最適化:プロコラーゲンを発現するタバコ葉のペレットを、フィシンと共に15℃で1.5時間インキュベートし、次いで、30℃浴にさらに1.5時間かけて移した。ウエスタンブロットおよび原線維形成アッセイでは、反応温度の上昇に関連するコラーゲン収量またはサンプル純度の改善は確認されなかった。
【0399】
フィシンによって誘導されるプロコラーゲンの開裂から抽出されたコラーゲンの原線維形成:フィシンによって誘導される消化後、原線維形成アッセイを行い、得られたコラーゲンが原線維を形成する能力、コラーゲンの機能を決定する究極の方法を決定した。以下の表5は、2つの変動プロトコルを用い、プロコラーゲンのフィシン開裂後に決定された原線維形成の結果をまとめている。両プロトコルAおよびBは、反応バッファpHおよび塩含有量が異なり、かなりの割合のコラーゲン原線維が得られた。したがって、本明細書で開発および最適化されたタンパク質分解反応パラメータは、高収率で機能性コラーゲンを生じる。
【0400】
【0401】
実施例13.プロコラーゲン開裂におけるTRYPZEAN(商標)プロテアーゼの有効性の決定。
【0402】
EDTA(7.5mM)およびL-システイン(12.5mM)が豊富な抽出バッファ(pH7.5)に再懸濁したプロコラーゲンを発現するタバコ葉のペレットを、TRYPZEAN(商標)(30~100mg/L)と共に15℃で1~3時間インキュベートした。1時間以内に、用量が60および100mg/LのTRYPZEAN(商標)は、プロコラーゲンを効率的に開裂させ、2つの別個のαコラーゲン鎖を生成し、検出可能な過剰消化はなかった(
図26)。したがって、pH7.5でのTRYPZEAN(商標)によるプロコラーゲン処理は、コラーゲン鎖α-1およびα-2への効果的な消化を引き起こす。
【0403】
考察
【0404】
上の実施例7~13は、植物由来のコラーゲンの精製プロセスでの使用に好適な非哺乳動物プロテアーゼの同定を記載する。細菌および植物源からのプロテアーゼを調べたところ、コラーゲンプロペプチドの消化に好適な3つの酵素、すなわちニュートラーゼ、スブチリシン、TRYPZEAN(商標)およびフィシンが見出された。
【0405】
ニュートラーゼとスブチリシンは、両方とも細菌Bacillus spによって分泌される。スブチリシンは、主に(90%より多くが)洗剤および家庭用洗浄製品に使用される。スブチリシンの使用の約10%は、タンパク質加水分解、皮革処理、繊維および美容業界などの工業用途向けである。高濃度でのコラーゲン精製プロセスにおけるスブチリシンの標準的な使用は、コラーゲンの過剰消化に起因した問題がある。ニュートラーゼは、主に飲料アルコール業界およびチーズの熟成に使用される。実施例7~13において、本明細書で上に記載されるように、ニュートラーゼは、高濃度でプロペプチドを消化する際にのみ有効であり、望ましい消化結果のために少なくとも6時間が必要であった。
【0406】
ここに記載されている実験条件下では、高酵素濃度または長時間のインキュベーション後にコラーゲンの過剰消化がなかったため、組換えトリプシンおよびフィシンが4つの中で最も好適であることがわかった。さらに、これらの酵素は、SDS PAGE分析によって決定されるように、明らかにコラーゲンのらせん領域を消化しなかった。イチジク植物(Ficus carica)について抽出された天然酵素であるフィシンは、いくつかの供給元からの医薬品グレードを含むいくつかのグレードで低コストで市販されている。アルコールおよびビール産業、タンパク質の加水分解、食肉加工、ベーキング産業、ペット食品および健康食品の調製などの食品産業で使用される。また、コンタクトレンズの洗浄剤、癌治療、抗関節炎治療、消化補助剤の製薬業界だけでなく、美容業界および繊維業界にも応用されている。
【0407】
実施例14.rhコラーゲンの特性のさらなる分析。
【0408】
材料および方法
【0409】
材料
【0410】
トランスジェニックタバコ植物から発現され、単離されたヒト組換えコラーゲン(rhコラーゲン)I型は、CollPlant Ltd(イスラエル)によって製造され、供給された。I型ウシコラーゲン(PureCol)は、米国のAdvanced Biomatrixから購入した。無水メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル、トリエチルアミン、臭化テトラブチルアンモニウム、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure 2959)、リン酸二水素ナトリウム無水物、HCl 1N、37%以上のHCl、重炭酸ナトリウムおよびNaOHは、Sigma Aldrich Ltd(イスラエル)から購入した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、x10 PBS、ウシ胎児血清(FBS)、DMEM高グルコースおよびペニシリン/ストレプトマイシンは、Biological Industries Ltd(イスラエル)から購入した。リン酸水素二ナトリウム無水物は、Canton(インド)から購入した。無水エタノールおよびアセトンは、Bio-Lab Ltd(イスラエル)から購入した。ヒアルロン酸は、Lifecore,USAによって購入された。
【0411】
バッファおよび光開始剤のストック溶液の調製
【0412】
原線維形成バッファ(FB):リン酸水素二ナトリウムを再蒸留水(DDW)に溶解し、最終濃度を162mMにした。溶液を、10N NaOHを用いて、pH11.2になるまで滴定した。
【0413】
培地調製:50mlのウシ胎児血清および5mlのペニシリン/ストレプトマイシン(それぞれ10,000単位/mLおよび10mg/mL)を無菌条件下で500mlのDMEM高グルコース培地に添加した。培地を穏やかに混合し、冷蔵庫に保管した。
【0414】
リン酸緩衝生理食塩水の調製:39mlの0.1Mリン酸二水素ナトリウム溶液を61mlの0.1Mリン酸水素二ナトリウム溶液と混合し、DDWで最終容積を200mlに調整した。必要に応じて、濃NaOHまたはHClを用いて、最終pHを7に調整した。最終濃度が150mMになるようにNaClを加えた。
【0415】
洗浄バッファ:HClを原線維形成バッファに加えて、16.2mMのリン酸水素二ナトリウムおよび10mM HClの最終濃度にした。10N NaOHを用いて、pHを7.2~7.4に調整した。
【0416】
光開始剤10%(v/v)ストック溶液:Irgacure 2959を無水エタノール/PBS 1:1溶液に溶解し、最終濃度を100mg/mLにした。
【0417】
rhコラーゲンのメタクリル化。
【0418】
線維状rhコラーゲン-メタクリルアミドおよびモノマーrhコラーゲン-メタクリルアミドは、以下に記載するような水性媒体中、リジンおよびヒドロキシリジンコラーゲン残基と無水メタクリル酸との反応によって調製され、さらに使用するまで4℃で遮光して保存された。
【0419】
線維状rhコラーゲン-メタクリルアミド
【0420】
3~10mg/mLの線維状rhコラーゲン-メタクリルアミドは、洗浄バッファ、原線維形成バッファまたはDDWのいずれかの中で、室温(RT)または12℃で合成された。例えば、簡単に言うと、線維状rhコラーゲン-MAは、DDW中、以下のように合成された。10MmのHCl中のモノマーrhコラーゲン3~4mg/mL溶液(COLLAGE(商標))を原線維形成バッファと9:1(v:v)比率で混合し、室温で1時間撹拌し、原線維を受け取る。溶液を7500rpm、4℃で30分間遠心分離し、上澄み液を捨てた。ペレットを等量の洗浄バッファに再懸濁し、同じ条件で遠心分離した。その後、堆積原線維をDDWに再懸濁して10mg/mLにした。濃度は、固形分の百分率測定によって確認された。無水メタクリル酸(MA)を、窒素流下、室温で、コラーゲンリジンに対して10~20モルの比率で滴下し、反応溶液のpHを経時的に監視し、10N NaOHを用いてpH7に調整した。24時間の反応後、混合物を10kDaカットオフ透析チューブ(Spectrum Laboratories Inc、CA、US)を使用し、洗浄バッファ(pH 7)に対して4℃で3日間透析し、透析液(この場合には洗浄バッファ)を少なくとも6回交換して反応副生成物を除去し、最終的に3~4日間凍結乾燥させた。
【0421】
モノマーrhコラーゲン-メタクリルアミド
【0422】
150mM NaClを添加した200mMのMOPS、リン酸またはTrisバッファを使用した。例えば、200mM MOPSおよび150mM NaClを、3~4mg/mLのCOLLAGE(商標)に加え、透明な溶液が得られるまで室温で撹拌した。その後、10~20倍過剰の無水メタクリル酸を、12℃で、窒素流下で滴下し、pHを10N NaOHを用いて経時的にpH7に調整した。24時間の反応後、混合物を10kDaカットオフ透析チューブを使用し、透析液を少なくとも6回交換しつつ、10mM HClおよび20mM NaCl(pH2)に対して4℃で3日間透析し、その後、3~4日間凍結乾燥させた。
【0423】
ヒアルロン酸(HA)のメタクリル化
【0424】
500mgのHAは、Leachら[Leachら、2002、Biotechnology and Bioengineering、vol.82、no.5]に記載されるように官能基化した。簡単に言うと、1.8mlのトリエチルアミン、1.8mlのメタクリル酸グリシジルおよび1.8gの臭化テトラブチルアンモニウムをDDW中の50mlの10mg/mLのHA溶液に別々に加え、完全に混合してから次の成分を加えた。反応物を室温で一晩混合し、HAMAを容積20倍のアセトン中で沈殿させ、DDWに再溶解した。この沈殿プロセスを2回繰り返して、全ての反応残渣を除去した。材料は、最終的に凍結乾燥された。
【0425】
粘度測定のための溶液の調製
【0426】
PBS中のPureColおよびCollage(商標):1mlのPBSX10を添加することにより、rhコラーゲン(COLLAGE(商標))またはウシコラーゲン(PureColl)のいずれかの8mlのモノマーコラーゲン溶液(10mM HCl中3mg/mL)を中和した。次に、0.1N NaOHで滴定することにより溶液をpH7~7.5にした。最終的に、二重蒸留水を加えて、最終容積を10mlにした。測定を行う(37℃または4℃のいずれか)前に、サンプルを37℃で少なくとも90分間インキュベートした。
【0427】
原線維形成バッファ中のCOLLAGE(商標):1mlの原線維形成バッファを添加することにより、9mlのモノマーrhコラーゲン(COLLAGE(商標))溶液(10mM HCl中3.79mg/mL)を中和した。測定を行う(37℃または4℃のいずれか)前に、サンプルを37℃で少なくとも90分間インキュベートした。
【0428】
PBS中の線維状rhコラーゲン-メタクリルアミド:DDW中で調製した凍結乾燥させた線維状rhコラーゲン-MAを透析したものと、洗浄バッファ(10倍過剰のMAを用いて上の記載に従い)をPBSに溶解して、10mg/mLの濃度にした。測定を行う(37℃または4℃のいずれか)前に、サンプルを37℃で少なくとも90分間インキュベートした。
【0429】
DMEM中のrhコラーゲン-メタクリルアミド:凍結乾燥させた線維状rhコラーゲン-メタクリルアミド(15倍過剰のMA、上の記載に従って洗浄バッファ中で調製され、透析された)をDMEM培地に溶解し、最終濃度を20および26mg/mLにした。
【0430】
DMEM中のrhコラーゲン-メタクリルアミド/ヒアルロン酸:ヒアルロン酸を、線維状rhコラーゲン-MAの溶液に添加して、DMEM培地中の10mg/mLのHAおよび20mg/mLのrhコラーゲン-MAの最終濃度を得た。
【0431】
DMEM中のrhコラーゲン-メタクリルアミド/ヒアルロン酸メタクリレート(HA-MA):ヒアルロン酸メタクリレート(上を参照)を、線維状rhコラーゲン-MAの溶液に添加して、DMEM培地中の10mg/mLのHA-MAおよび20mg/mLのrhコラーゲン-MAの最終濃度を得た。
【0432】
損失弾性率および貯蔵弾性率測定のためのrhコラーゲン-MAの光架橋
【0433】
rhコラーゲン-MA架橋足場は、2つの個別の実験で調べることを目的として、2つの異なる調製物で形成された。第1の調製において、10倍過剰のメタクリル酸試薬で合成された1~2重量%の線維状rhコラーゲン-MAを、室温でPBS 0.1Mに溶解し、次いで、Irgacure 2959 0.1%を添加し、最終容積1mLの溶液を円板状の型に注入した。その後、水銀光源を使用して、平均強度670mW/cm2で、7秒間および10秒間、1.5cmの距離から硬化プロセスを実行し、最終的に架橋足場を得た。第2の調製は、15倍および20倍過剰のメタクリル酸試薬を用いて合成された繊維状rhコラーゲン-MAの2つの異なるバッチを含んでいた。1~2重量%をPBS 0.1Mに溶解し、Irgacure 2959 0.1%を添加し、最終容積1.5mLを得た。高度に架橋された足場を得るために、硬化プロセスを2cmの距離から60秒間、平均強度420mW/cm2で実施した。
【0434】
TNBSアッセイ
【0435】
アッセイプロトコルは、Sashidharら[Sashidhar R.B.、Capoor,A.K.、Ramana,D、Journal of Immunological Methods.1994、167、121-127]によって報告されたプロトコルと同様であり、Habeeb[Habeeb A.F.S.A、Analytical Biochemistry.1966、14、328-336]に基づいていた。簡単に説明すると、新たに調製した0.4mLの0.01%(v/v)TNBSを、重炭酸ナトリウム4%中の0.1~2mg/mLの線維状rhコラーゲン-MA0.4mLに添加した。40℃で2時間反応させた後、0.2mLの1N HClおよび0.4mLの10%(v/v)SDSを添加した。吸光度を、1mLポリスチレンキュベット中、分光光度計で335nmで測定した。rhコラーゲン-MA溶液の代わりに重炭酸ナトリウムバッファを添加したことを除き、同じ手順で対照(ブランク)を調製した。同じ条件で調製した1~2mg/mLの線維状rhコラーゲンの吸光度を、較正用に記録した。
【0436】
レオロジー特性決定
【0437】
粘度:粘度測定は、温度制御されたセルチャンバを備えるHAAKE RHEOSTRESS600(商標)レオメータ(Thermo Electron Corporation)で、C60/1° Tiコーン-プレート設定を使用して行われた。粘度は、回転傾斜モードで、0.0001~1000sec-1の範囲の剪断速度、4℃、25℃および37℃で、1mLサンプルについて測定された。
【0438】
足場の貯蔵弾性率および損失弾性率:rhコラーゲンが架橋した円板のレオロジー挙動は、PP20鋸歯状スピンドルと20mm鋸歯状プレートの設定を使用した平行プレートシステムを用いて調べられた。架橋していないrhコラーゲン-MAを特性決定するために、C60/1° Tiコーン-プレート要素を使用した。rhコラーゲン-MAのレオロジー挙動を評価するために、2セットの実験を個別に実施した。第1の実験では、1mLのサンプルに、制御された応力モードで振動力を与え、周波数1Hz、37℃で300秒間、5Paの剪断応力を加えつつ、貯蔵弾性率G'および損失弾性率G"の値を記録した。ギャップは、元のサンプルの高さの90%に調整され、G'およびG"の値を、150~300秒の範囲で平均化した。第2の実験では、1.5mLの架橋した円板を、37℃での周波数スイープ振動状態で試験し、G'は、1Paの剪断応力、0.01~100Hzの周波数範囲で記録した。測定を開始するために、スピンドルを下げてヒドロゲル表面に接触させ、次に機器の軸力が0.4Nに等しくなるまでさらに下げた。全ての測定の前に、温度平衡に達するように、サンプルを湿度蓋で覆われたプレート上に1分間保持した。
【0439】
結果
【0440】
TNBSアッセイ
【0441】
rhコラーゲンの修飾の程度は、TNBS比色分析を使用して定量化された。このアッセイは、リジンおよびヒドロキシルリジンに由来する遊離の未反応のε-アミノ基のモル含有量、およびその後に官能基化の程度を定量化する。表6に示すように、線維状rhコラーゲンの10倍、15倍および20倍の異なるバッチの官能基化の程度を、TNBSアッセイによって決定した。
【0442】
【0443】
この結果は、線維状rhコラーゲンの高い修飾能を示しており、モル比10でメタクリル酸試薬を加えることが、線維状コラーゲンの最大官能基化を得るために好ましい可能性があることを示唆する。
【0444】
レオロジー
【0445】
1.粘度
【0446】
rhコラーゲン/ウシコラーゲンの粘度の温度依存性
【0447】
図27は、T=4℃(青色、それぞれ、破線および実線)およびT=37℃(赤色、それぞれ、破線および実線)で、剪断速度の関数として表された、PBS中のrhコラーゲン(COLLAGE(商標))およびウシコラーゲン(PureCol)の粘度を示す。ウシコラーゲン(実線)は、ゼロせん断速度粘度(η0)の明確な温度依存性を示す。すなわち、低い剪断速度値での粘度の平坦状態、37℃(赤色)では、4℃(青色)値より1桁以上高いη0値を有する。これとは対照的に、rhコラーゲン(破線)は、4℃および37℃でのη0値間に有意な差を示さない。FBで中和されたrhコラーゲン(方法を参照)は、非常に類似した挙動を示し(
図28)、すなわち、4℃および37℃での粘度は、ほぼ同一である。
図29は、4℃(青色の線)と37℃(赤色の線)での線維状rhコラーゲン-MAの粘度を示す。プロファイルは同一ではないが、ゼロ剪断速度の値は、両温度で約1000cPである。
【0448】
rhコラーゲン-メタクリルアミドの粘度
【0449】
図30は、25℃でDMEMに溶解したrhコラーゲン-MAの粘度を示す。
図27および28に見られるrhコラーゲンの典型的なずり減粘挙動は、HA/HA-MAの添加の有無にかかわらず、rhコラーゲン-MAでも維持される。rhコラーゲンの濃度を2026mg/mLから26mg/mLまで上げると(それぞれ緑色および赤色の線)、10mg/mLのHAまたはHAMAを後で添加して最終的なポリマー濃度を30mg/mLにすることによって、ゼロせん断粘度が増加する。
【0450】
当業者は、rhコラーゲン-MAが架橋されておらず、架橋を達成するために、光開始剤および光を加える必要があることを認識するであろう。
【0451】
2.足場の損失弾性率および貯蔵弾性率
【0452】
第1の実験で実施された37℃での経時的な1mL円板のレオロジー分析を
図31に示す。上側のグラフは、UV硬化前の損失弾性率と貯蔵弾性率およびtan(デルタ)を報告し、下側のグラフは、UV硬化後(光開始剤の添加時)の値を報告する。このデータは、rhコラーゲン-MAの貯蔵弾性率が、光開始剤の存在下で照射すると、2倍に増加することを示す。さらに、この結果は、rhコラーゲン-MA濃度を変更することによって足場の特性を制御する能力を示す。G'値とG"値の差が大きく、架橋円板のtan(デルタ)値がゼロに近いことは、それらの弾性様挙動を示す。(G'-貯蔵弾性率;G"-損失弾性率;G'、「貯蔵/弾性率」は、変形中にゲルによって蓄えられ、後で元の形状に戻るために使用されるG*のエネルギー分率を表す。G'は、ゲルの弾性挙動、または剪断変形後にゲルがどの程度その形状を回復することができるかを測定する。例えば、加硫ゴムは、応力がかかると瞬時に変形し、応力が取り除かれると完全に形状が回復するため、純粋な弾性材料である(すなわち、G*~G')(~は近似値を表す)。G''、「損失/粘性係数」は、内部摩擦による剪断変形で失われたG*のエネルギー分率を表す。HA充填剤は純粋に粘性ではないため、G"は、粘度に直接関係しない。その代わり、この用語は、剪断応力が除去された後、ゲルがその形状を完全に回復できないことを反映している。)
【0453】
第2の実験では、
図32に示すように、60秒間照射された1.5mL円板は、より高いG'値を示す。このデータは、G'が、rhコラーゲン-MA濃度およびメタクリル化の程度と共に増加することを示しており、足場の特性を制御する能力を示す。
【0454】
実施例15.タバコ植物からrhコラーゲンを得て、プロセシングするための手順。
【0455】
上述のように遺伝子組換えされたタバコ植物を成長させ、葉を収穫し、最初の上流の抽出および精製のために調製する(
図33A~33C)。
図33Aに示されるように、葉は、機械的細断にかけられ(工程A)、パルプがスラリーから除去され、一方、プロコラーゲンを含有する部分は保持され、酵素消化にかけられ、プロコラーゲンをコラーゲンに変換する(工程B~C)。パルプが再び廃棄され、コラーゲンを含有する部分は、スラリーから保持される(工程C)。酸性化工程の後、サンプルは、最初の洗浄工程のために最初の遠心分離を受け、その後ペレットが廃棄される(工程D~F)。AMS沈殿と2回目の遠心分離の後、タンパク質が沈殿し(Hペレット)、上澄み液が廃棄される(工程G~H)。Hペレットは、-20℃で冷凍保存が可能である。
【0456】
図33Bに示されるように、Hペレットは、再懸濁されてタンパク質懸濁物を生成し、続いて、3回目の遠心分離が行われ、その後ペレットは廃棄される(工程I~J)。デプスフィルターを使用して懸濁物を洗浄し、NaClで塩析してコラーゲンを沈殿させる(工程K~L)。4回目の遠心分離でコラーゲンペレットが得られ、上澄み液が廃棄される(工程M)。
【0457】
図33Cに示されるように、コラーゲンペレットは、HClに再懸濁されて、可溶化されたコラーゲンを生成する(工程N)。0.2~0.8ミクロンの濾過後、限外濾過(UF)(濃縮および透析濾過)により、バルク濃縮コラーゲンが生成される(工程O~P)。0.2ミクロンの濾過と充填の後、精製されたコラーゲンは最終容器に保存される(工程Z)。
【0458】
実施例16.添加剤を用いたrhコラーゲンメタクリレートの粘度と重合
【0459】
コラーゲンMA:添加剤の比率5:1、2:1および1:2で、異なる添加剤(ポリビニルアルコールメタクリレート(PVAMA)(
図34および37)、ヒアルロン酸メタクリレート(HAMA)(
図35および37)、および酸化セルロース(OC)(
図36および37))を豊富に含む5mg/mlのrhコラーゲンメタクリレートの粘度が、
図31~37に示される。比較のために、各図において、5mg/mlのrhコラーゲンメタクリレートの粘度を報告する(黒色の曲線)。全てのサンプルは、0.1Mリン酸バッファ(pH7.4)+11.3mM NaCl(生理学的浸透圧)で調製され、測定はT=22℃で行われた。データを比較し、これを
図37にまとめる。
【0460】
異なる添加剤を豊富に含むrhコラーゲンメタクリレートの重合は、collMA:添加剤2:1の比率で、5mg/mlのコラーゲンMA+異なる添加剤の典型的な足場に関しても示される(
図38)。ColMA単独を、ポリビニルアルコールメタクリレート(PVMA)、ヒアルロン酸メタクリレート(HAMA)、または酸化セルロース(OC)と組み合わせたColMAと比較した。溶液を光開始剤2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(0.1%)と混合し、紫外(uv)光(365nm)を20秒間照射した。
【0461】
実施例17.注入可能なrhコラーゲン/多血小板血漿足場。
【0462】
注入可能なrhコラーゲン/多血小板血漿(PRP)足場は、腱障害のための足場および治癒器具として調査された。成長因子(GF)の供給源、例えば、多血小板血漿(PRP)と組み合わせた、分解の遅いrhコラーゲンマトリックスを、損傷した腱の治癒を促進するために必要な補助を提供しようとするために、損傷した腱の近傍に注入した。この治療では、植物由来の組換えヒトI型コラーゲン(rhコラーゲン)とPRPを混合したマトリックスを使用した。これは、損傷部位での成長因子の持続的な放出を補助し、治癒を促進する。rhコラーゲン-PRPマトリックスの効果を、コラゲナーゼによって誘導されるアキレス腱の腱障害ラットモデルにおける線維芽細胞の増殖、血餅分解、GFの放出、および腱治癒を補助する際に、インビトロおよびインビボでPRPと比較した。rhコラーゲン-PRPは、インビトロおよびインビボで、PRP単独と比較して、優れた性能を示した。これらの結果は、腱障害の適応症の臨床試験において、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスの使用に関して有望なものである。
【0463】
材料および方法
【0464】
rhコラーゲンマトリックス
【0465】
10mM HCl中のrhコラーゲンのモノマー溶液(CollPlant、ネスジオナ、イスラエル)を、リン酸溶液中でのpH中和によって原線維化し、18mMの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(Sigma Aldrich、イスラエル)で架橋した。次に、架橋したコラーゲンを、再蒸留水中で繰り返し遠心分離することにより洗浄し、塩化カルシウム(CaCl2)(Merck、イスラエル)を添加して、最終濃度が20mMになるように計算した。rhコラーゲンスラリーを充填したシリンジを凍結乾燥し、最終的にエチレンオキシドで滅菌した。
【0466】
多血小板血漿(PRP)の調製
【0467】
顆粒球を含まないPRPは、Tropocell PRPキット(ESTAR、イスラエル)を用いて、製造元の指示に従って調製した。インビトロ細胞増殖アッセイのために、健康なヒト志願者からヒト血液を採取した(ヘルシンキ許可番号2012068)。インビボ動物実験のために、Hsd:Sprague DawleySDラット(Harlan)から血液を採取した。
【0468】
rhコラーゲンマトリックス/PRPおよび対照の調製
【0469】
rhコラーゲンマトリックス/PRP:凍結乾燥した架橋rhコラーゲンを含むシリンジを、PRPまたは生理食塩水で水和して、最終濃度20mg/mlのrhコラーゲンを得た。
【0470】
トロンビン活性化PRP(対照):ヒトPRPを精製トロンビン(Sigma Aldrich、イスラエル)と混合して、100IU/mlの最終濃度を得た。
【0471】
CaCl2活性化PRP(対照):ラットPRPをCaCl2(Merck、イスラエル)と混合して、最終濃度20Mmを得た。
【0472】
インビトロ細胞増殖アッセイ
【0473】
この試験では、正常なヒト皮膚線維芽細胞(nHDF)の生存率と増殖に対するGFの影響を評価した。細胞の生存率と増殖は、PRPと組み合わせた架橋rhコラーゲンマトリックスで構成されるマトリックスまたはトロンビン活性化PRPで構成される血餅のいずれかからのGFの拡散時に比較した。PRPまたはトロンビン活性化PRP(各200μl)と組み合わせたrhコラーゲンマトリックスを、24ウェルプレート(Thermo Scientific、イスラエル)の上に配置したトランスウェル(Thincerts(商標)24ウェル8.0μm、Greiner bio-one、イスラエル)に注入し、血餅形成を可能にするために37℃で20分間インキュベートした。正常なヒト皮膚線維芽細胞(nHDF)(0.5mlあたり5,000細胞)を、血清欠乏培地(ダルベッコ改変イーグル培地、DMEM、1%ウシ胎児血清、FBS、Biological Industries、イスラエルを含む)の各ウェルの底部に播種した。マトリックス(PRPまたはトロンビン活性化PRPのいずれかと組み合わせたrhコラーゲンマトリックス)を含むトランスウェルを、播種したウェルの上に置き、さらに0.2mlの培地をサンプルの上部に加えた。0.5mlのDMEM中のnHDF、1%FBSを対照として播種した。細胞増殖キットWST-1(Roche、イスラエル)を製造元の指示に従って使用して、播種から7日後および10日後にサンプルを3回試験した。
【0474】
インビボ試験
【0475】
動物
【0476】
230g±20%の体重のHsd:SpragueDawleySDラットを動物実験用に選択した。動物には固有の動物識別耳番号が与えられ、特定のグループに無作為に割り当てられた。動物は、専用の熱、換気、空調(HVAC)のある動物施設の個別換気(IVC)ケージに収容された。温度と湿度は、継続的に監視された。動物には、市販のげっ歯類用飼料(Harlan Teklad TRM Ra/Mouse Diet)を自由に与え、オートクレーブ処理した水を自由に摂取させた。施設は外光にさらされておらず、12時間の明状態と12時間の暗状態の自動交互サイクルで維持される。全ての動物は実験動物の治療とケアのガイドラインに従って治療され、全てのプロトコルは、地元のInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。研究期間全体を通して、いずれの動物にも異常は検出されなかった。グループの平均体重値と増加に、統計的に有意な差は見られなかった。全ての増加は、終了時に通常予想される値の範囲内であった。
【0477】
インビボでの血餅分解および成長因子放出
【0478】
皮下(SC)ラットモデル(Science in Action Ltd.、ネスジオナ、イスラエル)において、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックス、rhコラーゲンマトリックスのみ、またはCaCl2活性化PRPの分解時間と経時変化に伴うGF含有量を比較した。
【0479】
34匹の雌のSprague Dawleyラット(Harlan Laboratories、ネスジオナ、イスラエル)の背中の注射部位を剃り、印を付けた。各ラットは、背側平面上に、ラットの背中の前部に2つの部位および後部に2つの部位の4つの離れた場所に0.5mlの同じ製剤を注入された。動物は、治療から1、7、14、21、30、および45日後の時点で安楽死させた(グループあたり10匹または12匹、1時点あたり2匹)。各時点で、注入部位を露出させ、肉眼で評価した。注入部位の皮膚を、はさみを使用して筋肉から穏やかに分離し、その部位を0.25mlのDMEM、1%FBS(Biological Industries、イスラエル)で洗浄し、血餅を抽出して秤量した。抽出した血餅を6ウェルプレートまたは12ウェルプレートに移しながら、洗浄培地をエッペンドルフチューブ(1.5~2ml)に移した。秤量したら、血餅をそれぞれの洗浄培地と組み合わせ、はさみで切断し、乳棒で細かく刻み、血餅から周囲の培地へのGFの放出を促進した。次に、エッペンドルフチューブを少なくとも5分間遠心分離して、血餅のペレットと培地を分離した。上澄み液を集め、アッセイするまで-80℃で保存した。動物に注入することなく、上と同じ手順に従って、それぞれの製剤を約0.5ml含む対照(T0)をインビトロで形成した。研究終了時に、保存された上澄み液中のPDGFおよびVEGFの含有量をELISA(Quantikine ELISA Mouse/rat PDGF and Quantikine ELISA Rat VEGF、R&D Systems、イスラエル)によって評価した。
【0480】
ラットに誘導されたインビボでの腱障害。
【0481】
PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスおよびPRPのみの治癒特性を、36匹の雄のSprague Dawleyラット(グループあたり18匹のラット、時点あたり6匹の動物)のコラゲナーゼ誘導性腱障害モデルで比較した。実験は、Harlan Laboratories Israel Ltd.(ネスジオナ、イスラエル)で行われた。
【0482】
総踵骨腱上のラットの右後肢の近位部分に皮膚切開を行った。適切な倍率で、腱の中央枝を特定して分離し、0.5mlのインスリンシリンジを使用して、総踵骨腱嚢の下に0.3mgのコラゲナーゼ(10mg/ml、Sigma)を注入することにより、腱障害を誘導した。最終的に、4/0 Vicrylを使用して、皮下縫合を中断して皮膚を閉じた。腱障害誘導の1週間後、眼の角膜/強膜ナイフを使用して、腱嚢に刺し傷を作成した。次に、カニューレを使用して、腱嚢の下にトンネル部を作成し、50μlのPRPと組み合わせたrhコラーゲンまたはPRPのみを、事前に作成しておいた管に注入した。処置から3、7、および14日後に、動物を安楽死させた。処置された腱は、組織病理学的評価のために切除され、保存された。
【0483】
組織学
【0484】
組織をパラフィンに包埋し、4~5ミクロンの厚さのサンプルに連続的に切断した。スライドを、組織病理学的検査のためにヘマトキシリン&エオシン(H&E)で染色し、病理医によって盲検評価した。
【0485】
結果
【0486】
インビトロ細胞増殖アッセイ
【0487】
この研究では、PRPと組み合わせたrhコラーゲンで構成されるマトリックスとトロンビン活性化PRPで構成される血餅の近傍に播種された細胞の生存率と増殖を比較した。未処理のウェルに播種した細胞を対照として使用した。マトリックス(PRPと組み合わせたrhコラーゲンまたはトロンビン活性化PRPのいずれかで構成される)を、細胞層と直接接触することなくマトリックスからウェルへのGFの拡散を可能にするために、播種したウェルの上部のトランスウェルに配置した。7日目および10日目の生細胞の数は、2つの異なる献血者からPRPが抽出された2つの異なる実験(実験のための3回の繰り返し)の平均として報告される(
図39の上側)。
図39に示されるように、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスから放出されたGFの存在下での細胞生存率(7日目および10日目)は、トロンビン活性化PRPの血餅または対照よりも有意に高い。さらに、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスの存在下では、細胞数は、7日目~10日目まで増加したが、トロンビン活性化PRPの存在下および対照グループでは、細胞数は減少し、細胞の生存率と増殖が両方とも、rhコラーゲンマトリックスの存在下でかなり優れている。データは顕微鏡分析によって確認された(
図39の下側)。PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスの存在下で培養された細胞(
図39の下側、パネルA)は、細長い形状を示し、播種後7日ですでに完全なコンフルエンスに達した。一方、トロンビン活性化PRPの存在下で培養された細胞はほとんど生存しておらず、これは、この実験設定では、トロンビンの毒性効果を示している可能性がある。(
図39の下側、パネルB。)培地のみの存在下で培養された細胞は、非常に限られた生存率を示した(
図39の下側、パネルC)。
【0488】
インビボでのマトリックス分解プロファイルおよび成長因子放出。
【0489】
マトリックス分解プロファイル
【0490】
注入された製剤の分解プロファイルは、ラットへの皮下注入後の異なる時点でマトリックスを秤量することによって決定された。
【0491】
活性化PRPを注入すると、材料は1日目にすでに消失し(
図40)、このことは、最初の24時間の間のフィブリン血餅の完全な分解を示唆する。他方、rhコラーゲンマトリックス単独またはPRPと組み合わせたものは、初日の急激な重量減少から始まり、その後比較的遅い分解速度となり、30~45日後に完全に排除される(最終重量<初期重量の0.5%)2相分解プロファイル(
図40)を有していた。
【0492】
成長因子含有量
【0493】
時間の関数としての注入部位のGF含有量は、PDGFおよびVEGFについてのELISAによって評価された(
図41A~41B)。時間0でのPDGF含有量は、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスおよび活性化PRP処理において類似しており(
図41A)、このことは、0日目のPDGF含有量が、PRPによってもたらされたGFに富む血小板の唯一の寄与であることを示唆している。しかしながら、PRPのみを注入すると、注入部位でのPDGF含有量は、注射の1日後にすでに検出限界より低く、急速な血餅分解と一致して、研究全体を通して検出不可能のままであった(
図40)。PRPがrhコラーゲンマトリックスに組み込まれたときの異なる写真が示される(
図41A)。PDGF含有量は、足場の分解に伴い、1日目から14日目まで徐々に増加し、45日目に完全に消失するまで再び減少した(
図40)。興味深いことに、rhコラーゲンマトリックスのみのグループのPDGF含有量は、7日目から増加し、PRPと組み合わせたマトリックスのグループによって示されるパターンに従った。0日目のVEGF含有量は、全ての製剤について検出限界よりも低く、活性化PRPグループにおいて、ベースラインレベルに留まった(
図41A~41Bおよび42)。PRPと組み合わされたrhコラーゲンマトリックスのVEGFプロファイルは、7日目あたりのVEGF含有量の急激な増加、続いて14日目までの急激な減少、および30日目までの平坦状態を示し、VEGFは、足場分解を伴って45日目で最終的に減少する(
図41B)。
【0494】
PDGF分析では1日目~14日目まで、VEGF分析では0日目~7日目までに見られるGFの増加は、rhコラーゲン足場がGFの蓄積を可能にする能力を証明しており、おそらく足場内で移動し、増殖する細胞を反映している。各製剤の研究全体にわたるPDGFおよびVEGFの名目上の含有量の積分を
図42にまとめる。活性化PRP単独と比較して、rhコラーゲンマトリックスのみまたはPRPと組み合わせたものの注入の場合、注入部位でのGFの含有量がはるかに高いことは明らかである。
【0495】
ラットに誘導されたインビボでの腱障害
【0496】
PRP単独と比較したPRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスの治癒特性を、腱障害のラットモデルで評価し、異なる時点での組織病理学的分析によって評価した。腱の治癒および炎症は、成熟線維症のレベル、単核炎症細胞の存在、および未成熟肉芽組織の存在をスコアリングすることによって定量化された(表7に記載されているスコア0~5)。
【0497】
【0498】
各治療に関連する組織病理学的スコアの累積値は、
図43A~43Cに示される。PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスで治療されたグループは、特に3日目と14日目に、PRP治療グループと比較してわずかに成熟した線維症を示した。これは一貫しており、14日目にPRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスで治療したグループによって示される低レベルの未成熟肉芽と相関関係がある(
図43C)。さらに、
図43Bにおいて、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスで治療されたグループは、全ての時点で、特に3日目および14日目に単核炎症細胞の存在が少ないことによって示されるように、炎症の減少を示す。全体として、このデータは、損傷した腱を、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスで治療すると、標準的なPRP注入治療と比較した場合に、炎症性単核細胞の大幅な減少を伴う高レベルの成熟線維症および低レベルの未成熟肉芽組織によって示されるように、より速い治癒を促進することを示す。
【0499】
考察
【0500】
腱および靭帯の損傷を含む軟組織への損傷は、非常に一般的であり、重大な臨床的負担を引き起こす。いくつかの治療が利用可能であるが、それらの臨床的利益は、依然として限られている。このことは、治癒を改善し、回復時間を短縮することを目的とした新しい選択肢の探索を促すものであった。ヒト組換えI型コラーゲンで構成される注入可能なマトリックスが開発され、このマトリックスは、PRPと混合されると、コラーゲン-フィブリン-PRPコンポジットを形成し、このコンポジットは、ゆっくりと分解し、細胞の移動と増殖をコラーゲン足場に引き付け、損傷部位でのGFの持続的な放出を可能にし、そのため、治癒過程をよりよく補助する。インビトロ実験(
図39)は、トロンビン活性化PRPと比較して、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスの周囲において、かなり優れたnHDF生存率および増殖を示した。この結果は、コラーゲンマトリックスから放出された持続的な成長因子が細胞増殖を促進し、向上させることを示した。I型rhコラーゲンは、PRPと組み合わせると、細胞層と直接接触していない場合であっても、細胞増殖を促進し、向上させる補助環境を提供する。ラットへの皮下注入は、PRP注入時にin situで形成されたフィブリン血餅を含むGFが、すでに24時間以内に分解し、その結果、注入部位のGF含有量がELISA検出限界よりも低いことを初めて示した(
図41A~41B)。血小板がrhコラーゲンマトリックスと複合体を形成すると、GFは45日間にわたって放出され、これは、足場の分解と一致する時間である(
図40および41A~41B)。GF含有量のプロファイルは、標準的な放出プロファイルによって予想されるように、単調ではないことに注目するのは興味深い。PRP処理を行ったrhコラーゲンマトリックスのPDGFプロファイル(
図41A~41B)は、PRP単独の場合と非常によく似た、初日の最初の急激な減少を示したが、その後、21日目まで徐々に増加し、最後に足場の分解に伴い、減少して検出不可能なレベルに達する。興味深いことに、rhコラーゲンだけでも、最初の数週間でPDGF含有量が徐々に増加し、足場が完全に分解する方向に減少するという同様のパターンを示した。したがって、PRPを有するrhコラーゲンの足場は、捕捉されたPRPによって提供される利点(早期のGF放出)と、細胞の動員および増殖を高度に促進し、向上させるrhコラーゲン足場自体によって提供される利点を組み合わせたものである。VEGF含有量プロファイルに関しては、PRP注入時にVEGFレベルは研究全体を通して非常に低いままであったが、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスの注入は、最初の1週間以内にVEGFレベルの増加をもたらし、最終的に足場の分解に伴って減少した。興味深いことに、PDGFとは対照的に、rhコラーゲンマトリックスのみで治療したグループのVEGFレベルは、PRPのみのグループよりも依然として高かったが、特に7日目に、PRPを含むrhコラーゲンマトリックスとは異なるプロファイルを示した。この観察結果は、コラーゲン足場と組み合わされるときのGFレベルへのPRPの寄与を強調するものである。rhコラーゲンとPRPの治癒特性は、最終的に、総踵骨腱(アキレス腱)の腱障害のラットモデルで、PRPと比較された。組織学的評価により、以前の実験で予想されたように、細胞の動員および増殖を促進する足場の能力と一致する、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスの成熟線維性組織を構築するさらに速い能力が確認された。さらに、この組織学的分析はまた、損傷部位が、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスで治療されると、炎症は、PRP単独での標準的な治療と比較して実質的に減少することを示す。
【0501】
この研究は、架橋したヒト組換えI型コラーゲンから構成される注入可能な足場のインビトロおよびインビボでの生物学的効果を示す。PRPなどのGFの自家供給源と組み合わせると、形成された足場は、炎症反応を制御し、新しい健康な組織のより迅速な形成を促進することにより、軟組織損傷の治癒を加速する。この結果は、治癒特性の向上が、GFの放出を延長するrhコラーゲンと自家PRPの独自の組み合わせにあることを示唆する。このデータは、腱障害の臨床試験において、PRPと組み合わせたrhコラーゲンマトリックスの使用を裏付けるものである。
【0502】
実施例18.皮膚充填剤としての植物由来のヒト組換えコラーゲンの使用。
【0503】
組織由来のヒトおよびウシコラーゲンと比較して、免疫原性を低下させ、組織再生を促進し、レオロジー特性が改善された、より均一で潜在的に長持ちする皮膚充填剤を提供するために、ヒトトランスジェニックコラーゲン(rhコラーゲン)が、植物(例えば、遺伝子操作されたタバコ植物)から生成し、単離され、次いで、皮膚充填剤として使用される。典型的には、遺伝子組換え植物は、COL1、COL2、P4H-α、P4H-βおよびLH3からなる群から選択されるヒトデオキシリボ核酸(DNA)の少なくとも1つの遺伝子配列の発現可能な配列を含む。典型的には、植物由来のヒトコラーゲンは、配列番号3に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも修飾された1つのヒトコラーゲンα-1鎖と、配列番号6に示され、遺伝子組換え植物中で発現される少なくとも1つの修飾ヒトコラーゲンα-2鎖と、を含み、遺伝子組換え植物は、さらに、外因性プロリル-4-ヒドロキシラーゼ(P4H)(例えば、ヒトまたは他の哺乳動物のP4H)を発現する。場合により、遺伝子組換え植物は、さらに、リシルヒドロキシラーゼ(LH)、プロテアーゼNおよびプロテアーゼCからなる群から選択される外因性ポリペプチドを発現する。例えば、ヒトコラーゲンα-1鎖は、配列番号1に記載される配列によってコードされ、および/またはヒトコラーゲンα-2鎖は、配列番号2に記載される配列によってコードされる。場合により、ヒトコラーゲンα-1鎖および/またはα-2鎖は、植物または遺伝子組換え植物の液胞に対して標的化され、フィシンで消化され、ヒトアテロコラーゲンが得られる。
【0504】
場合により、rhコラーゲンは、皮膚充填剤について当該技術分野で知られているものを含む、他の物質で修飾されるか、または一緒に配合される。修飾の例としては、限定されないが、メタクリル化および/またはチオール化が挙げられる。他の物質の例としては、限定されないが、ヒアルロン酸(HA)またはその修飾誘導体、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)またはその修飾誘導体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその修飾誘導体、酸化セルロース(OC)またはその修飾誘導体、またはこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。他の物質の例としては、限定されないが、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロース、結晶性ナノセルロース(CNC)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。HA、PVA、PEG、またはOCの修飾誘導体には、限定されないが、光重合性誘導体が含まれる。HA、PVA、PEG、またはOCの修飾としては、限定されないが、メタクリル化および/またはチオール化が挙げられる。他の物質の例には、光開始剤(例えば、可視光線、紫外線(UV)、または赤外線に敏感)などの重合剤または開始剤が含まれるが、これらに限定されない。可視光光開始剤の例としては、限定されないが、エオシンY+トリエタノールアミンまたはリボフラビンが挙げられる。紫外線光開始剤の例としては、限定されないが、リチウム フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)または1-[4 2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959)が挙げられる。
【0505】
組織から抽出されたコラーゲンの固有の特性は、室温でのゲル化である。生理学的バッファ中の比較的低濃度(例えば、5~15mg/ml)では、組織から抽出されたコラーゲンは、低温(約4℃)から室温に変わるときに、ゲルを形成する。
【0506】
これとは対照的に、rhコラーゲンは、粘度が比較的低く(同じ濃度と配合で)、比較的小さな発現力を使用して狭いゲージの針またはカニューレ(27ゲージ~33ゲージ)からの注入が可能であり、より小さな空間への浸透が向上し、注入後の調整(形を整える)の際の柔軟性が向上する。
【0507】
rhコラーゲンを、細いゲージの針を有するシリンジまたはカニューレ(27ゲージ~33ゲージ)に入れ、真皮の下の空洞または空間に注入する。次に、注入されたrhコラーゲンを、所望な位置に成型するか、形を整えるか、または他の方法で操作する(例えば、手動マッサージによって、または成型または形を整える器具、例えば、外科用圧迫器を用いる)。重合は、このプロセス前、プロセス中、またはプロセス後に、注入された製剤の上にある真皮の表面または上に配置された光源(例えば、発光ダイオード(LED)、レーザ、またはキセノンランプ)への曝露によって開始されてもよい。
【0508】
実施例19.光開始剤および添加剤を配合した、修飾された植物由来のヒト組換えコラーゲンの使用
【0509】
rhコラーゲンは、実施例18に記載されるように、メタクリル化によって修飾される。修飾rhコラーゲンは、光開始剤(例えば、エオシンY+トリエタノールアミンまたはリボフラビン)を用いる重合性溶液製剤として調製される。ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)マイクロスフェア、リン酸三カルシウム(TCP)、カルシウムヒドロキシルアパタイト(CaHA)、カルボキシメチルセルロースまたは結晶性ナノセルロース(CNC)、またはそれらのいくつかの組み合わせが含まれる。
【0510】
製剤を、細いゲージの針を有するシリンジまたはカニューレ(27ゲージ~33ゲージ)に入れ、真皮の下の空洞または空間に注入する。次いで、実施例18に記載されるように、注入された製剤を、手動で、または適切な外科用器具を用いて、光源(例えば、可視光源)への曝露中または曝露後に、所望な位置に成型するか、形を整えるか、または他の方法で操作する。
【0511】
実施例20.光開始剤および修飾添加剤を配合した、修飾された植物由来のヒト組換えコラーゲンの使用。
【0512】
rhコラーゲンは、実施例19と同様に、メタクリル化またはチオール化によって修飾される。修飾rhコラーゲンは、実施例18に記載されるように、光開始剤(例えば、エオシンY+トリエタノールアミンまたはリボフラビン)を用いる重合性溶液製剤として調製される。ヒアルロン酸(HA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、酸化セルロース(OC)、またはそれらのいくつかの組み合わせの修飾誘導体が含まれ、メタクリル化またはチオール化によって修飾される。
【0513】
製剤を、細いゲージの針を有するシリンジまたはカニューレ(27ゲージ~33ゲージ)に入れ、真皮の下の空洞または空間に注入する。次いで、実施例18に記載されるように、注入された製剤を、手動で、または適切な外科用器具を用いて、光源(例えば、可視光源)への曝露中または曝露後に、所望な位置に成型するか、形を整えるか、または他の方法で操作する。
【0514】
実施例21.コラーゲンを用いた架橋ヒアルロン酸の注入性および粘度の比較。
【0515】
図44に示すように、架橋ヒアルロン酸(HA)の注入に必要な発現力(ニュートン、N)(黒色に□の曲線)を、モノマーコラーゲン(▽の曲線)または原線維化コラーゲン(△の曲線)と架橋したヒアルロン酸(HA)の注入に必要な発現力と比較した。(架橋HA 20ml/ml;架橋HA 20mg/ml、モノマーrhCol 7.5mg/ml;架橋HA 20mg/ml、原線維化コラーゲン10mg/ml)
【0516】
図45に示すように、架橋HAの注入に必要な発現力(ニュートン、N)を、二重架橋HA-コラーゲンの製剤の注入に必要な力(灰色の曲線)と比較した。2つの曲線は、大部分が類似していた。
【0517】
図46に示すように、架橋ヒアルロン酸(HA)の粘度(黒色に□の曲線)を、モノマーコラーゲン(▽の曲線)または原線維化コラーゲン(△の曲線)と架橋したヒアルロン酸(HA)の粘度と比較した。原線維化コラーゲンと架橋したHAの粘度は、モノマーコラーゲンと架橋したHAの粘度より低かったが、以前として架橋HA単独の粘度より高かった。濃度は、
図44と同じであった。
【0518】
図47に示すように、架橋ヒアルロン酸(HA)の粘度を、二重架橋ヒアルロン酸(HA)-コラーゲンの製剤の粘度(灰色の曲線)と比較した。二重架橋HAコラーゲンの粘度は、架橋HA単独の粘度よりも大きかった。
【0519】
架橋HA皮膚充填剤に対する、rhコラーゲンの付加は、モノマー性または原線維化したもの、架橋しているか架橋していないかによらず、発現力が顕著に増加せず、このことは、医師にとって同様の性能を可能としているが、一方で、材料の粘度は顕著に増加し、注入時に皮膚をより良く持ち上げることが可能となる。
【0520】
実施例22.組換えヒトコラーゲンメタクリレート(rhコラーゲンMA)の経皮重合。
【0521】
図48A~48Bに示されるように、マウス皮膚パッチの下に注入された、光開始剤としてエオシンY/TEAを含む組換えヒトコラーゲンメタクリレート(rhコラーゲンMA)の溶液(
図48A)を、白色LEDトーチからのLED白色光を皮膚に6分間照射することによって経皮重合させた。rhコラーゲンMAは重合し、皮膚組織に組み込まれた(
図48B)。
【0522】
rhコラーゲンMAは、光開始剤としてエオシンY/TEAの存在下で、小さなLEDトーチで6分間照射すると、皮膚の下で重合する。
【0523】
実施例23.二重架橋皮膚充填剤の製剤化:2工程合成
【0524】
目的:審美的目的または臨床的目的のいずれかで皮膚表面の外観を改善するために使用するための注入可能な皮膚充填剤を開発すること。皮膚充填剤は、I型組換えヒトコラーゲン(rhコラーゲン)またはその修飾形態、メタクリル化rhコラーゲン(MA-rhCol)、および架橋ヒアルロン酸(HA)で構成される。
【0525】
架橋HAがさらにrhコラーゲンに架橋される二重架橋製品(
図49)は、ヒアルロン酸が構造的支持と空隙充填を提供し、rhコラーゲンが細胞増殖を促進して組織再生を促進する足場となるように設計される。足場は最終的に分解し、新しく形成された組織が残る。別の目的は、I型rhコラーゲンによって促進される組織再生を伴う、架橋HAによって提供されるリフティング効果(組織増強)を調べ、二重架橋皮膚充填剤を分析することである。
【0526】
方法
【0527】
二重架橋
【0528】
-HA架橋-
【0529】
高分子量ヒアルロン酸(700KDa~3MDaの範囲、好ましくは1.5MDa)をアルカリ性条件下(pH12~13、例えば0.3N Na(OH))、50~200mg/ml(好ましくは100mg/ml)の濃度で溶解した。架橋剤1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)を、HAを溶解する前に、HA二糖の量の1~50%の範囲(好ましくは6、8、10%)の比率で、溶媒に添加した。この製剤のいくつかの実施形態では、HAは、メタクリル化HA(MA-HA)を含む。
【0530】
HA架橋を、室温で24時間行った。
【0531】
低MW HAの追加と中和
【0532】
総HA量の1~30%(好ましくは5~10%)の範囲の低分子量HA(50KDa~1000KDa、好ましくは300~700KDa)を、10~100mg/mlの範囲(好ましくは30mg/ml)の濃度で水に溶解した。この製剤のいくつかの実施形態では、HAは、メタクリル化HA(MA-HA)を含む。
【0533】
非架橋HAを架橋HAと混合する前に、HClを非架橋HAに、架橋HAのpHを中和するのに必要な量で添加する。リン酸緩衝液(PB)とNaClを、0.1M PBと0.2M NaClの最終濃度になるように添加する。
【0534】
rhコラーゲンの中和
【0535】
rhコラーゲンをHAと混合する前に、rhコラーゲンをPB+0.2MNaClで0.1Mにする。
【0536】
HA+rhコラーゲンの混合
【0537】
HA(架橋+非架橋HA)は、(6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6)の範囲のHA:rhコラーゲンの比率でrhコラーゲンと混合され、2~8℃に維持される。HAの最終濃度は、約5~50mg/mlである。rhコラーゲンまたはMA-rhコラーゲンの最終濃度は、約1~50mg/mlである。
【0538】
第2の架橋
【0539】
HAとrhコラーゲンを十分に混合したら、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドメチオダイド(EDC)を用いて、2回目の架橋を行った。rhコラーゲン中の遊離アミンの量の10~100倍(好ましくは50倍)に等しい量のEDCを溶解し(0.1M PB+0.2M NaClに)、架橋HA-rhコラーゲンに加え、混合した。第2の架橋は、暗状態で、2~8℃で2~3時間行う。
【0540】
透析
【0541】
次に、二重架橋材料を、PBSと1mM HCl、または低リン酸緩衝液のいずれかに対して透析した(低リン酸緩衝液の調製:(a)ストック溶液:10N Na(OH)でpH11.2にした162mMのリン酸水素二ナトリウム、(b)ストック溶液を0.1mM HCLで1:1000に希釈する)。
【0542】
レオロジーおよび機械的評価
【0543】
貯蔵弾性率および損失弾性率は、例えば、コーン(1°)対プレートの構成(C35/1)を使用するHAAKE-RHEO STRESS 600(商標)機器(THERMO SCIENTIFIC(商標))を使用して測定された。周波数スイープ測定は、一定範囲の周波数(例えば、0.02~100Hz)で一定の変形(例えば、0.8%)で実行された。場合により、一方または両方の成分の様々な比率または架橋比率を試験した。最終製品の貯蔵弾性率および損失弾性率を制御するために、第1および第2の架橋を調整することができる。
【0544】
注入性の測定は、例えば、発現力を観察するためにプランジャ変位(mm)の関数としてMULTITEST 1-/i MECMESIN(商標)機を使用して行われた。
【0545】
注入性
【0546】
注入性の測定は、上述のようにMULTITEST 1-/i MECMESIN(商標)機を使用して行われた。製剤2、2Aおよび3には、1mlのLUER-LOK(商標)シリンジ(BECTON-DICKINSON(商標))と30Gの針を使用した(表8)。代表的な二重架橋製剤2、2Aおよび3のプランジャ変位の関数としての発現力(表8)を、同じく30G針を使用して、市販の皮膚充填剤と比較した。
【0547】
動物実験
【0548】
200μlの製剤2または2A、または対照を、Sprague dawleyラットの背中に皮下注入した。組織学は、1週間後に行われた。
【0549】
結果
【0550】
当業者は、ここでの2工程の二重架橋が2種類の架橋剤を使用することを理解するであろう。第1の工程は、架橋剤としてHAおよびBDDEを含む。第2の工程では、コラーゲンと非架橋HAが追加され、EDCを使用して架橋が実現される。皮膚充填剤調製の他の全ての方法と比較して、架橋化学および作用の順序の違いは、機械的特性、組織相互作用および分解速度を含む異なる特性を有する皮膚充填剤組成物をもたらすはずであると予想される。
【0551】
HA:rhコラーゲンの製剤は、上の方法を使用して作成され、代表的な製剤は表8に示される。
【0552】
【0553】
レオロジーおよび機械的評価
【0554】
図50に示されるように、代表的な二重架橋製剤(表8)の貯蔵弾性率(実線)および損失弾性率(破線)は、市販の皮膚充填剤と同等であった。f=1Hzでのこれらの製剤とこの市販の充填剤の貯蔵弾性率および損失弾性率の比較を
図51に示す。
【0555】
最終製品の貯蔵弾性率および損失弾性率を制御するために、第1および第2の架橋を調整することができる。
図52に示されるように、30G針を通して二重架橋製剤を注入するのに必要な発現力は、市販の皮膚充填剤を注入するのに必要な発現力より有意に低かった。
【0556】
組織学および動物実験
【0557】
上述のように動物実験を行った。製剤2および2A(表8および9を参照)を、皮下注入後の市販の皮膚充填剤製品と比較した。炎症は、重症でない限り、再生プロセスの最初の工程である。
【0558】
皮下注入から7日後の平均組織学的スコアを、表9で市販の皮膚充填剤と比較する。
【0559】
【0560】
表9に示されるように、二重架橋製剤は、市販の皮膚充填剤よりも高い線維症スコアおよび高い炎症レベルを有し、このことは、組織再生のより高度なプロセスを示す。
【0561】
図56は、製剤2、2Aまたは対照の皮下注入から7日後の代表的な組織画像を示す。矢印は、組織再生の開始を示す、製剤2および2Aの炎症反応の上昇(ただし重症ではない)を示している。「ブレブ」は、注入された材料によって形成された水疱を示す。
【0562】
図56に示されるサンプルの組織学的スコアは、
図57に棒グラフとして示され、二重架橋製剤2および2Aについて、炎症スコアおよび線維症スコアが高いことは、対照と比較して改善された組織再生を示したことを示す。
【0563】
まとめ/結論
【0564】
27~32G針によって簡単に注入され、幅広い剛性G'-G"を有する二重架橋製剤が開発されてきた。注入から1週間後の組織学的結果は、組織再生プロセスの開始が強化されていることを示す。
【0565】
実施例24.光硬化性皮膚充填剤
【0566】
目的:光硬化性皮膚充填剤の特性を分析すること。光硬化性配合物は、硬化前は半IPNであり、硬化後はIPN(相互貫入網目構造)になる。2つの絡み合った網目構造を意味しており、各1つがそれ自体に架橋し、他のものには架橋しない。
【0567】
方法
【0568】
rhコラーゲンとメタクリル化rhコラーゲンの混合物を、実施例23のように架橋した、既に架橋されたHAに、最終濃度が1~10mg/mlになるように加え、メタクリル化rhコラーゲンと非メタクリル化rhコラーゲンとの比率は、1:0、1:1、1:2、1:3、1:4、0:1、2:1、3:1または4:1である。MA-rhコラーゲンの最終濃度範囲は、0~12mg/mlであり、非修飾rhコラーゲンの最終濃度範囲は、0~12mg/mlである。架橋HAとMA-rhコラーゲンとの比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6または0:1である。HAの最終濃度は、12~25mg/mlであり、rhコラーゲン(MA+非修飾)の最終濃度は、1~24mg/mlである。
【0569】
可視光光開始剤を混合物に加えた(例えば、エオシンY、トリエタノールアミンおよびN-ビニルピロリドンの組成物)。
【0570】
レオロジー試験
【0571】
代表的な製剤4、5、および6、および対照の1.6mlサンプル(以下の表10を参照)を、直径2cm、高さが0.5mmの円筒形の型および円筒に注ぎ、白色LED懐中電灯を用いて、一定量の可視光を6分間照射することによって、硬化させた。
【0572】
表10に示すように、上述の方法を使用して、高度に架橋されたヒアルロン酸(HA)の製剤を、rhコラーゲンおよび/またはrHコラーゲンメタクリレートの組み合わせと、3つの異なる代表的な比率で、一定量の可視光光開始剤と共に混合した。高度にBDDEで架橋されたHA(ただし、同様に任意の他の架橋剤であってもよく、または架橋HAのみから作られる標準的な市販の充填剤であってもよい)を、rhColおよびrhColMAと異なる比率で混合した。その結果、硬化後に、HAが架橋し、絡み合ったrhColMAが架橋する。これは、HAがそれ自体に架橋され、コラーゲンがHA網目構造内でそれ自体に架橋される相互貫入網目構造を形成する。
【0573】
【0574】
貯蔵弾性率および損失弾性率を、以下に説明するように、照射の前後に測定した。
【0575】
a.硬化前
【0576】
貯蔵弾性率および損失弾性率はコーン(1°)対プレートの構成(C35/1)を使用するHAAKE-RHEO STRESS 600(商標)機器(THERMO SCIENTIFIC(商標))を使用して測定された。周波数スイープ測定は、0.02~100Hzの範囲の周波数で、0.8%の一定の変形で実行された。
【0577】
b.硬化後
【0578】
光硬化した円筒形の貯蔵弾性率および損失弾性率は、鋸歯状プレートとプレートの構成(PP20)を使用するHAAKE-RHEO STRESS 600(商標)機器(THERMO SCIENTIFIC(商標))を使用して測定された。周波数スイープ測定は、0.02~100Hzの範囲の周波数、0.3Nの一定の通常の負荷で、3Paの一定の剪断応力で実行された。
【0579】
注入性
【0580】
注入性の測定は、製剤4、5および6について、また、対照としての高度に架橋したHAについて、上述のようにMULTITEST 1-/i MECMESIN(商標)機を使用して行われた。全てのサンプルについて、1mlのLUER-LOK(商標)シリンジ(BECTON-DICKINSON(商標))と30Gの針を使用した(表10)。代表的な製剤4、5および6(表10)のプランジャ変位(12mm/分)の関数としての発現力を、高度に架橋したHAと比較した。
【0581】
動物実験
【0582】
上述のように動物実験を行った。製剤4(表10および11を参照)を、ラットの背中に皮下注入した後の高度に架橋したHAと比較した。
【0583】
結果
【0584】
レオロジーおよび機械的評価
【0585】
図53は、製剤4、5および6の光硬化の前後の貯蔵弾性率と、高度に架橋したHAとの比較を示す(表10を参照)。f=1Hzの周波数で、光硬化の前後の両方でのこれらの製剤と、高度に架橋したHA(硬化性ではない)の貯蔵弾性率と損失弾性率の比較を
図54に示す。矢印は「傾向」を表す。rhColMAの量が増えると、剛性が増す。
【0586】
注入性
【0587】
図55に示すように、30G針を介した製剤4、5および6の注入に必要な発現力は、架橋HAのみの場合に必要な発現力よりも小さく、医師にとって使いやすく、患者の微細な線および繊細な領域への注射が容易になる。しかしながら、in situでの光硬化(注入後)の後、材料の剛性は、架橋HA単独よりも著しく高くなるように調整することができる(
図53および54を参照)。
【0588】
組織学および動物実験
【0589】
皮下注射から7日目の製剤4の平均組織学的スコアを、表11の高度に架橋されたHAと比較した。
【0590】
【0591】
表11に示されるように、製剤4は、高度に架橋したHAよりも高い線維症スコアおよび高い炎症レベルを有し、このことは、組織再生のより高度なプロセスを示している。
【0592】
図58および
図59は、式4が、対照の皮膚充填剤よりも高い炎症スコアおよび線維症スコアを有することを示し、このことは、式4の皮膚充填剤による組織再生プロセスの開始の改善を示している。
【0593】
結論/まとめ
【0594】
光硬化性充填剤は、注入前の剛性が比較的低く、27~32G針からの注入が容易であるが、光硬化後の剛性が大幅に向上(調整可能)するように開発された。rhColとrhColMAとの最終的な比率を制御することにより、剛性を調整することができる。この技術により、医師は、充填剤を光硬化照射で固定する前に、充填剤を希望の形状に形を整えることができる。注入された材料は、周囲の組織に強く付着する。予備的なインビボでの結果は、再生プロセスの開始を示す。
【0595】
実施例25.インビボ動物実験:皮膚充填剤成分の独立した注入
【0596】
目的:HAまたはそのメタクリル化誘導体、およびメタクリル化rhコラーゲンを半液相で皮下に別々に注入し、注射後、皮膚を通して白色光を照射することにより、それらをin situで架橋する(架橋は、rhColMAに対するrhColMAである)こと。このアプローチにより、光重合によって固定する直前に、注入を容易にし、材料の形状をin situで形を整えることが容易になる。皮下ラットモデルを使用して、細胞増殖、組織増強、および経時的なマトリックス分解の特徴を評価する。
【0597】
方法:このモデルでは、評価用のサンプル製剤成分(HAまたはそのメタクリル化誘導体、およびメタクリレート化rhコラーゲンと光開始剤)を、雄のSprague Dawleyラットの背中に皮下注入し、注入部位を最大20日間監視する。注射はほぼ同時に(直ちに次々に)、同じ位置で行われる。成分溶液は、架橋の前または同時または後に、in situでマッサージすることができる。皮下ラットモデルは、生体適合性、リフティング効果および持続性を推定するための最も単純なモデルであるため、選択される。さらに、Hillelらは、この特定のモデルの検証研究を公開した(Dermatol Surg 2012;38:471-478)。
【0598】
動物は、各治療の前にケタミン/キシラジンで鎮静化される。動物の背中を剃り、剃った皮膚に、注入部位の印を付ける。各ラットに、27.5~32G針を使用して、背側平面上の離れた位置に、0.2mlの製剤を、ラットあたり全部で6回注入する。
【0599】
製剤は、注入部位を白色光LEDトーチで2分間経皮照射することにより、注入後に架橋される。
【0600】
研究期間全体を通して、全ての動物の罹患率と死亡率を1日に2回観察する。3日ごと(注射から0、1、4、7、11、14、18、21日後の時点)に、各ブレブの高さ、幅、長さをノギスで測定し、各ブレブの楕円体の体積[(4/3)(π)(1/2高さ)(1/2長さ)(1/2幅)]を計算する。
【0601】
動物を、例えば、限定されないが、治療から7、14、21日後の時点で安楽死させる。
【0602】
各安楽死の時点で、注入部位を露出さえ、肉眼で評価し、組織学的評価のためにブレブを集める。注入部位(ブレブを含む)は、その上にある皮膚と共に切除され、4%ホルマリンで固定され、パラフィンに包埋される。
【0603】
組織学
【0604】
スライドの調製
【0605】
パラフィンブロックは、約3~5ミクロンの厚さに切断され、スライドガラス上に置かれ、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)およびマッソントリクロームで染色され、自動化された機械で覆われる。全てのスライドの組織学的評価は、光学顕微鏡(Olympus BX60、シリアル番号7D04032)を使用して実行される。
【0606】
画像は、倍率4倍で撮影される。画像の取得は、病理学的変化と代表的な動物に対してのみ行われる。
【0607】
結果
【0608】
実施例24で得られた結果と同様の結果が期待され、光硬化性皮膚充填剤の成分の別個の独立した注入は、例えば、製剤混合物と比較して成分の粘度が低下するため、注入の容易さを増加させ得る。
【0609】
細胞増殖促進足場を含む皮膚充填剤およびその使用を、その特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内にあるそのような代替、修正、および変形の全てを包含することが意図される。本明細書で言及される全ての出版物、特許、および特許出願、ならびにGenBank寄託番号は、各個々の出版物、特許、または特許出願、またはGenBank寄託番号が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されるのと同程度に、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願におけるいかなる参考文献の引用または識別も、そのような参考文献が先行技術として利用可能であるという承認として解釈されるべきではない。
【配列表】