(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】複数の宇宙船の分散型上昇システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B64G 1/64 20060101AFI20230721BHJP
B64G 3/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B64G1/64
B64G3/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017227829
(22)【出願日】2017-11-28
【審査請求日】2020-11-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-28
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シルバ, エルヴィス
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス-ラビン, マヌエル
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162370(WO,A1)
【文献】特開平5-102920(JP,A)
【文献】特開平10-147296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00 - 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙船のコンステレーションを展開する方法(200)であって、
打ち上げビークル(150)から宇宙船(104、106、108、110)のクラスター(102)を第1の軌道(140)に放出すること(202)と、
地上局(114)から視認される期間の重複が最小限に抑えられるように、前記宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させること(204)と、
各宇宙船が分離したときに、
該各宇宙船を同期上昇でそれぞれの最終軌道(142)に同時に上昇させること(206)と
を含
み、
各宇宙船が分離したときに、該各宇宙船を前記同期上昇で前記それぞれの最終軌道に同時に上昇させることが、
前記地上局に対して視認可能であるときに、前記それぞれの最終軌道に機動飛行するように指示する時限コマンドを前記各宇宙船に送信すること
を含み、
前記時限コマンドは、前記同期上昇を実現し且つ各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整を維持するために、前記機動飛行をいつ開始すべきかを指示する、方法。
【請求項2】
前記打ち上げビークルから前記宇宙船のクラスターを前記第1の軌道に放出した後の、各宇宙船の互いに対する
前記相対的な位相調整は約0度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させることが、
前記クラスター内の前記宇宙船に順次、高度を上げさせる又は下げさせること
を含み、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、前記それぞれの宇宙船は第2の軌道(156)を移動してドリフトを起こし、その結果、前記クラスター内の他の宇宙船に対する前記相対的な位相調整に至る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させることが、
前記クラスター内の第1の宇宙船に高度を上げさせて又は下げさせて、異なる軌道にあることに起因したドリフトを起こさせることと、
前記クラスター内の他の宇宙船に対する所望のドリフト率が得られたら、前記クラスター内の前記第1の宇宙船の前記高度の変更を停止させて、前記第1の軌道よりも大きい又は小さい第2の軌道を移動させることと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させることが、
宇宙船間に位相分離が発生するように、前記クラスター内の前記宇宙船を互いに分離させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記位相分離が約360/xであり、xは前記クラスター内の宇宙船の数である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
各宇宙船が分離したときに、
該各宇宙船を前記同期上昇で前記それぞれの最終軌道に同時に上昇させることが、
前記同期上昇の開始時間を各宇宙船に送信することと、
前記各宇宙船を、前記第1の軌道とは異なるおおよそ同じ開始軌道から同時に上昇させること
のうちの少なくとも1つを含み、
前記各宇宙船は前記相対的な位相調整により互いに分離し、その結果、前記各宇宙船が前記それぞれの最終軌道に到達したときに前記相対的な位相調整
が維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記地上局が地球の表面に位置づけされ、
見通し内通信を介して各宇宙船と通信することと、
各宇宙船と一度に1機ずつ通信することと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記宇宙船のクラスター内の前記宇宙船を分離させることと、前記各宇宙船が分離したときに、
該各宇宙船を前記同期上昇で同時に上昇させることが、
前記地上局が前記宇宙船に、分離し、その後上昇するように、個別にコマンドを送信すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
宇宙船のコンステレーションを展開するシステム(100)であって、
第1の軌道(140)を回っている宇宙船(104、106、108、及び110)のクラスター(102)と、
前記宇宙船のクラスター内の宇宙船が地上局に対して視認可能であるときに、前記クラスター内の前記宇宙船と通信する地上局(114)と
を備え、
前記地上局は、各宇宙船の互いに対す
る相対的な位相調整により、前記地上局から視認される期間の重複を最小限に抑えるために、互いから分離するように指示する第1のコマンドを前記宇宙船のクラスターの前記各宇宙船に送信し、分離したときに同期上昇でそれぞれの最終軌道(142)に同時に上昇するように指示する第2のコマンドを前記各宇宙船に送信
し、
前記第2コマンドにおいて、前記地上局は、各宇宙船が前記地上局に対して視認可能であるときに、前記それぞれの最終軌道に機動飛行すべきときを指示する時限コマンドを前記各宇宙船に送信し、
前記時限コマンドは、前記同期上昇を実現し且つ各宇宙船の互いに対する前記相対的な位相調整を維持するために、前記機動飛行をいつ開始すべきかを指示する、システム。
【請求項11】
前記地上局は、前記クラスターの前記宇宙船に順次、高度を変更するように命令する前記第1のコマンドを送信し、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、前記それぞれの宇宙船は第2の軌道を移動してドリフトを起こし、その結果、前記クラスター内の他の宇宙船に対する前記相対的な位相調整に至る、請求項
10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、宇宙船のコンステレーションを展開するシステムに関し、より具体的には、上昇操作の間に、各宇宙船が特定の地上局の視野内にある時間と、同じ打ち上げビークルから展開された他の宇宙船が同じ地上局の視野内にある時間との重複がおおよそ最小限に抑えられるように、単一の打ち上げビークルから展開される宇宙船を互いから分離させる手順に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途において、宇宙船のコンステレーションが必要とされる。従来、例えば衛星のグループ等の複数の宇宙船のコンステレーションを別々の軌道に展開するには、非常に多くの打ち上げが必要であり、費用が高くつく可能性がある。あるいは、一コンステレーションを含む多くの宇宙船が単一の打ち上げビークルから同時に打ち上げられた場合、そのコンステレーションにおける宇宙船の近接性により、一又は複数の地上局に対する需要が増しうる。しかしながら、システムの複雑性及び展開費用を削減するには、地上施設及び地上支援装置の数及び複雑さを最小限に抑えることが望ましい。
コンステレーションの初期設定の問題に対処しつつ、地上局支援の複雑性を最小限に抑える戦略が必要である。
【発明の概要】
【0003】
一例では、宇宙船のコンステレーションを展開する方法が記載されている。本方法は、第1の軌道において打ち上げビークルから宇宙船のクラスターを放出することと、地上局から視認される期間の重複を最小限に抑えるために、宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させることと、各宇宙船が分離したときに、同期上昇でそれぞれの最終軌道に同時に上昇させることとを含む。
【0004】
別の例では、一又は複数のプロセッサを有するシステムによって実行されたときに、システムに機能を実施させる命令が記憶された非一過性コンピュータ可読記憶媒体が記載されている。機能は、地上局から視認される期間の重複を最小限に抑えるために、第1の軌道に放出された宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させ、各宇宙船が分離したときに、同期上昇でそれぞれの最終軌道に同時に上昇させることを含む。
【0005】
更に別の例では、宇宙船のコンステレーションを展開するシステムが記載されている。本システムは、第1の軌道を回っている宇宙船のクラスターと、宇宙船のクラスターが地上局に対して視認可能であるときに、宇宙船のクラスター内の宇宙船と通信している地上局とを含む。地上局は、各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整により地上局から視認される期間の重複が最小限に抑えられるように、互いから分離するように指示する第1のコマンドを宇宙船のクラスターの各宇宙船に送信し、宇宙船が分離した後で、分離したときに同期上昇でそれぞれの最終軌道に同時に上昇するように指示する第2のコマンドを各宇宙船に送信する。
【0006】
上述の特徴、機能、及び利点は、様々な実施例において独立に実現することが可能であり、或いは、さらに別の実施例において組み合わせることも可能である。これらの実施例について、以下の説明及び図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0007】
示される実施例の特徴と考えられる新規の特性は、添付の特許請求の範囲に明記される。しかし、実施例並びに好ましい使用モード、更なる目的及びそれらの特徴は、添付図面を参照して、本開示の実施例についての以下の詳細な説明を読むことにより、最もよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一例による、宇宙船のクラスターを展開するシステムを示す図である。
【
図2】一例による、宇宙船の概念的軌道運動と、地上局の視認アーク(軌道の一部)を示す図である。
【
図3】赤道地上局に対する例示の視認アークの長さ対高度を示すグラフである。
【
図4】一例による、宇宙船のクラスターの概念的展開を示す図である。
【
図5】一例による、宇宙船のクラスターの概念的軌道運動を示す図である。
【
図6】一例による、宇宙船のクラスターの別の概念的軌道運動を示す図である。
【
図7】一例による、宇宙船のクラスターの別の概念的軌道運動を示す図である。
【
図8】一例による、宇宙船のクラスターの別の概念的軌道運動を示す図である。
【
図9】一例による、宇宙船のクラスターの別の概念的軌道運動を示す図である。
【
図10】一例による、高高度まで上昇した全ての宇宙船を示す表である。
【
図11】一例による、宇宙船の概念的軌道運動を示す図である。
【
図12】一例による、地上局からの宇宙船の概念的視認プロファイルを示す図である。
【
図13】一例による、180度離れている2つの地上局を使用した、ある事例における宇宙船の別の概念的視認プロファイルを示す図である。
【
図14】宇宙船のコンステレーションを展開する例示の方法を示すフロー図である。
【
図15】
図14の方法とともに使用されうる例示の方法を示すフロー図である。
【
図16】
図14の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図17】
図14の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図18】
図14の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図19】
図14の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図20】
図14の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図21】
図14の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図22】
図14の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図23】
図14の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図24】宇宙船のコンステレーションを展開する別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図25】
図24の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図26】
図24の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【
図27】
図24の方法とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本書ではこれより、添付図面を参照しつつ開示されている例についてより網羅的に説明するが、添付図面に示すのは開示されている例の一部であって、全てではない。実際には、いくつかの異なる例が記載されることがあり、これらの例は、本書に明記されている例に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの例は、この開示内容が包括的で完全であるように、且つ本開示の範囲が当業者に十分に伝わるように説明されている。
【0010】
本書の例において、適用される任務に関連する地上局の制約のほか、上昇するクラスターに関わる各宇宙船の相対的な位相調整と、コンステレーション内の各宇宙船の最終的な位相調整によって特徴づけられる複数の宇宙船の低推力分散型上昇戦略が記載されている。ある多段式軌道で宇宙船間の軌道相を作り出すために、打ち上げビークルから宇宙船のクラスターを展開した後に、宇宙船と宇宙船とを相対的に空間分離させる方法が記載されている。多段階軌道内で宇宙船が位相調整した後、そのコンステレーションは相対的な位相調整を維持しながら同時に上昇する。
【0011】
この戦略により、例えば地上資源支援の必要等の地上支援の複雑性及びコンステレーションの初期設定の複雑性が最小限に抑えられる。この戦略では、地上との連絡が同期した予測可能な形でスケジューリングされるように軌道の上昇を実施し、また最終軌道に上昇する前に宇宙船を位相調整させる。ある解決策では、地上局の影響に関係なく宇宙船の上昇を実施するが、本書に記載される例は、地上支援の必要を最小限に抑えるための宇宙船の分散型の及び位相が調整された上昇を含む。
【0012】
例において、宇宙船のクラスターを低い軌道に放出し、事前に分離させた後で、コンステレーション内の各衛星が他とは異なる最終軌道に乗る高い軌道に、クラスター内の全ての宇宙船に同時に移動するように命令することで、要求通りの最終的な位相調整が実現される。これにより、一コンステレーションを含む複数の宇宙船をともに打ち上げて、軌道上で効率的に操作することも可能になり、任務の総費用が削減される。
【0013】
ここで、一例による、宇宙船のコンステレーションを展開するシステム100を示す
図1を参照する。システム100は、第1の軌道の軌道上にある一クラスター102の宇宙船104、106、108、及び110を含む。システム100はまた、地上局114が宇宙船104、106、108、及び110を視認できるときに、そのクラスター102の宇宙船の宇宙船と通信する地上局114も含む。
【0014】
クラスター102の宇宙船は4機の宇宙船を含むように図示されている。しかしながら、他の例では、クラスター102は、更に多くの又は少ない宇宙船を含んでいてよい、あるいは例えば2~約12又は16機の宇宙船を含んでいてよい。宇宙船104、106、108、及び110は、衛星として図示されている。しかしながら、他の例では、宇宙船104、106、108、及び110は、特定の任務ごとの軌道に対して他のビークルを含んでいてよく、宇宙船104、106、108、及び110は、特定の任務によって、様々な組み合わせの宇宙船を含んでいてもよい。
【0015】
宇宙船104、106、108、及び110は、それぞれの軌道で地球(又は他の天体)の周りを周回するように構成されうる。いくつかの例では、宇宙船104、106、108、及び110の軌道は、目標軌道が存在する軌道面に対してある傾斜角度を有し得る。
【0016】
地上局114は、それぞれ通信バス128に接続された、一又は複数のプロセッサ116、通信インターフェース118、データ記憶装置120、出力インターフェース122、ディスプレイ124、及びユーザインターフェース126を含む。地上局のユーザインターフェース126はまた、地上局114内での、及び地上局114と他の装置(図示せず)との間の通信を可能にするハードウェアも含みうる。ハードウェアは、例えば送信器、受信器、及びアンテナを含みうる。
【0017】
通信インターフェース118は、一又は複数のネットワーク又は一または複数の遠隔装置に狭域通信及び広域通信の両方を可能にする無線インターフェース及び/又は一又は複数の有線インターフェースであってよい。上記無線インターフェースは、例えばブルートゥース、WiFi(例:米国電気電子学会(IEEE)802.11プロトコル)、ロングタームエボリューション(LTE)、移動体通信、衛星通信、及び/又は他の無線通信プロトコル等の一または複数の無線通信プロトコル下での通信を提供しうる。上記有線インターフェースは、イーサネットインターフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース、又は電線、ツイストペア線、同軸ケーブル、光リンク、光学繊維リンク、又は他の物理的接続を介して有線ネットワークと通信する同様のインターフェースを含みうる。したがって、通信インターフェース118は、一又は複数の装置から入力データを受信するように構成されてもよく、更に、他の装置に出力データを送信するように構成されてもよい。
【0018】
一例として、通信インターフェース118により、地上局114が、例えば無線通信リンク130、132、及び134等の無線通信リンクを通してクラスター102の宇宙船104、106、108、及び110と無線通信することが可能になる。
【0019】
データ記憶装置120は、一又は複数のプロセッサ116によって読み取り可能な又はアクセス可能な一又は複数のコンピュータ可読記憶媒体を含みうる、又はその形態を取りうる。コンピュータ可読記憶媒体は、全体的に又は部分的に一又は複数のプロセッサ116に組み込まれうる光学、磁気、有機又は他のメモリ又はディスク記憶装置等の揮発性及び/又は非揮発性の記憶構成要素を含みうる。データ記憶装置120は、非一過性のコンピュータ可読媒体と見なされる。幾つかの例では、データ記憶装置120は、単一の物理的装置(例:ある光学、磁気、有機又は他のメモリ又はディスク記憶ユニット)を使用して実行可能であるが、他の例では、データ記憶装置120は、2つ以上の物理的装置を使用して実行されうる。
【0020】
したがってデータ記憶装置120は、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体であり、実行可能な命令136がこれに記憶される。実行可能な命令136は、コンピュータによって実行可能なコードを含む。実行可能な命令136が一または複数のプロセッサ116によって実行されると、一又は複数のプロセッサ116に機能を実施させる。上記機能を以下に記載する。
【0021】
一又は複数のプロセッサ116は、汎用プロセッサ又は特殊用途プロセッサ(例:デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路等)であってよい。一又は複数のプロセッサ116は、通信インターフェース118から入力を受信し、入力を処理してデータ記憶装置120に記憶される出力を生成して、ディスプレイ124へ出力しうる。一又は複数のプロセッサ116は、データ記憶装置120に記憶された実行可能な命令136(例:コンピュータ可読プログラム命令)を実行するように構成され、本書に記載される地上局114の機能性を提供するように実行可能であってよい。
【0022】
出力インターフェース122は、ディスプレイ122又は他の構成要素にも情報を出力する。したがって、出力インターフェース122は、通信インターフェース118と同様であってよく、無線インターフェース(例:送信器)あるいは有線インターフェースであってもよい。
【0023】
地上局114は、様々な形態のコンピュータ装置であってよい、又はそれを含んでいてよく、例えば幾つかの異なるコンピュータ装置又はサーバ内に含まれうる。加えて、地上局114の構成要素は、幾つかの例では、例えばディスプレイ124が独立した構成要素である等、地上局114から隔離されていてよい。
【0024】
例では、地上局114の一又は複数のプロセッサ116は、地上局から視認される期間の重複を最小限に抑えるように(例えば、各宇宙船104、106、108、及び110の互いに対する相対的な位相調整が地上局114の視点からおおよそ同一でありうるように)互いから分離するよう指示する第1のコマンドをクラスター102の各宇宙船104、106、108、及び110へ送信する機能を実施するために、データ記憶装置120に記憶された実行可能な命令136を実行しうる。例では、地上局114は、クラスター102の宇宙船104、106、108、及び110が順次、高度を上げる又は下げるように命令する第1のコマンドを送信し、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、それぞれの宇宙船は第2の軌道を移動してドリフトを起こし、その結果、クラスター102内の他の宇宙船に対する相対的な位相調整に至る。
【0025】
その後、地上局114の一又は複数のプロセッサ116は、分離したときに同期上昇でそれぞれの最終軌道に同時に上昇するように指示する第2のコマンドを各宇宙船104、106、108、及び110に送信する機能を実施するために、データ記憶装置120に記憶された実行可能な命令136を実行しうる。例えば、地上局114は、それぞれの最終軌道に機動飛行するように各宇宙船104、106、108、及び110に命令し、同期上昇を達成して、各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整を維持するために機動飛行をいつ開始するかを指示する第2のコマンドを送信する。
【0026】
図2は、一例による、宇宙船104、106、108、及び110の概念的軌道運動と、地上局114の視認アーク144を示す図である。宇宙船104、106、108、及び110は地球の第1の軌道140において軌道に投入され、分離及び上昇した後に、地球の最終軌道142に到達する。
【0027】
地上局114は、地球の表面に位置し、宇宙船が視認アーク144内にあるときのみ、軌道にある宇宙船と通信することができる。視認アーク144は、地上局114の水平線よりも上の、地上局114から宇宙船までの見通し線に対応する。したがって、地上局114は、軌道の一部でのみ宇宙船と通信することができ、高い軌道により、地上局114が宇宙船と通信できる時間が長くなる。図示した視認アーク144は、それぞれが第1の軌道及び最終軌道の一部である、視認アーク146及び148の間にある。
【0028】
図3は、赤道地上局に対する例示の視認アークの長さ対高度を示すグラフである。図示したように、円形の赤道軌道の高度が上がると、視認アークの長さも増加する。従って、言及したように、高い軌道により、地上局114が宇宙船と通信できる時間が長くなる。
【0029】
地上局114は、1度に1機の宇宙船とのみ通信可能であってよい。地上局114と宇宙船との間の通信は、テレメトリ情報(例:宇宙船によって収集されたデータを示す情報)を受信して、測距(例:軌道を測定するための距離測定)を実施し、宇宙船にコマンドを送信する(例:ヒータを操作する、機能及びプロセスを作動させるように命令する、また機動飛行を実行するための命令を送信する)ために、アップリンク通信及びダウンリンク通信の両方を含む。地上局114は、直通の見通し線による無線通信リンクを介して宇宙船と通信するため、クラスター102の宇宙船が全て同時に視認アーク144内にある場合は地上局114は1度に1機の宇宙船とのみ通信するため、クラスター102が視認アーク144内にある軌道の期間にはそれぞれと通信することができない場合がある。
【0030】
図4は、一例による、クラスター102の宇宙船の概念的展開を示す図である。この例では、4機の宇宙船104、106、108、及び110を示す。クラスター102は、第1の軌道140において打ち上げビークル150から放出される。単一の打ち上げビークル150が使用されるが、打ち上げビークル150は、例えば宇宙船又はロケット船を含む多様の形態をとりうる。
【0031】
クラスター102は、第1の軌道(例:円形でありうる)で展開し、第1の軌道140に沿って地球の周りを一致して移動する。各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整又は間隔は、全ての宇宙船がおおむね同じ第1の軌道140(衝突を避けるように互いから許容誤差の距離内)にあるため、地上から見たときにはおおよそ0度である。宇宙船はまったく同じ軌道にない場合もあるが、同じ軌道内で密接していることにより、ほぼ同時に地上局114の視界から出入りしながら軌道運動で移動する。
【0032】
本明細書で使用する「実質的に」という語は、言及される特徴、パラメータ、又は値が正確に実現される必要はないが、例えば、許容範囲、測定誤差、測定精度限界、及び当業者にとって既知の他の要因などを含む偏差又は変動が、特徴によってもたらされる影響を排除できない大きさで起こりうることを意味する。
【0033】
図5は、一例による、クラスター102の宇宙船の概念的軌道運動を示す図である。全ての宇宙船が共にクラスター102内にあるため、全ての宇宙船が同時に視認アーク144内にあるときは、地上局114の視界内に同時に入っていることになる。例えば、全ての宇宙船はおおよそ同時に(矢印152で示す視認アーク144に入るクラスターのように)地上局114の視界内に入り、その後ある期間が過ぎた後で、(矢印154で示す視認アーク144を離れるクラスターのように)地上局114の視界から出ていく。この期間は、各宇宙船が地上局114と十分に通信する時間を持つことができるほど十分に長くない可能性がある。
【0034】
あるいは、クラスター102の宇宙船間に間隔があることにより、宇宙船が異なる時点で地上局114の視界に入ってきて地上局114が長期間にわたって各宇宙船と個別に通信することができるように構成された1つの地上局を使用することによって、効率性が達成されうる。したがって、例えば地上局114から視認される期間の重複を最小限に抑えるために、各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整が地上局114の視点からおおよそ同一であるように、宇宙船を互いから分離させうる。宇宙船の分離又は位相調整により、例えばいかなる時点においても視認アーク144内に入るのが最大約1機であるように間隔を置いてそれぞれが配置されうるため、地上局114がそれぞれと個別に通信することが可能になる。又は、それぞれの宇宙船が地上局114との通信を行うのに十分長く視認アーク144内にいるように、宇宙船を分離させることができる。以下に記載される例において、クラスター102の宇宙船は順次、高度を上げる又は下げることによって分離することにより、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、それぞれの宇宙船は第2の軌道を移動してドリフトを起こし、この結果、クラスター102内の他の宇宙船に対する相対的な位相調整に至る。
【0035】
図6は、一例による、クラスター102の宇宙船の別の概念的軌道運動を示す図である。
図6では、クラスター102の宇宙船は、軌道サイズ(高度)を広げる又は狭めることによりクラスター102の別の宇宙船に対するドリフト率を引き起こすように、機動飛行を始める。時間が経つと、ドリフトにより、クラスター102の別の宇宙船に対する位相調整又は分離が起こる。宇宙船104は、クラスター102から所望のドリフトが得られたら、燃焼機動飛行を停止する。この例では、所望のドリフト率により、約90度の位相分離角度が結果として得られる。結果的な宇宙船104のドリフト軌道156により、宇宙船104がクラスター102から分離する。
【0036】
図6に、クラスター102から約90度分離した宇宙船104を示す表も示す。図示したように、この位相分離は、例えば約1300kmのドリフト軌道156において達成されうる。高いドリフト高度へ上昇することによって、宇宙船104は地球の周りの大きな軌道に起因してドリフトする。
【0037】
図7は、一例による、クラスター102の宇宙船の別の概念的軌道運動を示す図である。
図7では、宇宙船104は、次の宇宙船106が軌道サイズ(高度)を広げる又は狭めるために機動飛行を始めると、惰力進行する。これによって、クラスター102に残っている別の宇宙船に対するドリフト率を引き起こす。時間が経つと、ドリフトにより、クラスター102の別の宇宙船に対する位相調整又は分離が起こる。宇宙船106は、クラスター102から所望のドリフトが得られたら、燃焼機動飛行を停止する。宇宙船106は、宇宙船104から分離したままである。分離の度合いは、宇宙船104の機動飛行の開始と、宇宙船106の機動飛行の開始との間で経過した時間によって制御される。
【0038】
図7に、宇宙船104から約90度分離している宇宙船106も示す表を示す。図示したように、この位相分離は、例えば約1300kmのドリフト高度において達成されうる。高いドリフト高度へ上昇することによって、宇宙船106は地球の周りの大きな軌道に起因してドリフトし、ここで宇宙船104と同じ軌道に乗りうる。
【0039】
図8は、一例による、クラスター102の宇宙船の別の概念的軌道運動を示す図である。
図8では、宇宙船104及び106は、次の宇宙船108が軌道サイズ(高度)を広げる又は狭めるために機動飛行を始めると、惰力進行する。これによって、クラスター102に残っている別の宇宙船に対するドリフト率を引き起こす。宇宙船108は、クラスター102から所望のドリフトが得られたら、燃焼機動飛行を停止する。宇宙船108は、宇宙船106及び宇宙船104から分離したままである。分離の度合いは、宇宙船108の機動飛行の開始と、宇宙船106の機動飛行の開始との間で経過した時間によって制御される。
【0040】
図8は、約90度で分離した宇宙船108も示す表である。図示したように、この位相分離は、例えば約1300kmのドリフト高度において達成されうる。高いドリフト高度へ上昇することによって、宇宙船108は地球の周りの大きな軌道に起因してドリフトし、ここで宇宙船104及び宇宙船106と同じ軌道に乗りうる。
【0041】
図9は、一例による、クラスター102の宇宙船の別の概念的軌道運動を示す図である。
図9では、宇宙船104、106、及び108は、次の宇宙船110が軌道サイズ(高度)を広げる又は狭めるために機動飛行を始めると、惰力進行する。これによって、宇宙船104、106、及び108に対するドリフト率差を縮める。宇宙船110は、宇宙船108、宇宙船106及び宇宙船104から分離したままである。分離の度合いは、宇宙船110の機動飛行の開始と、宇宙船108の機動飛行の開始との間で経過した時間によって制御される。
【0042】
図9に、約90度で分離した宇宙船104、106、108、及び110を全て示す表も示す。図示したように、この位相分離は、例えば約1300kmのドリフト高度において達成されうる。
【0043】
位相分離の特定量は、全ての宇宙船が分離した後にいかなる時点においても地上局114に対して視認可能な宇宙船が1機のみであるように、クラスター102に幾つの宇宙船が含まれているかに基づいていてよい。一例では、分離相は約360/xであり、ここでxはクラスター102の宇宙船の数である。したがって、負荷を地上局114に分配することにより、地上局114が各宇宙船に対して更に役立つことができる(そして例えば地上局114の遊休時間を最小限に抑えることができる)ように、間隔は多少の許容誤差内で地球の周りで同一であってよい。
【0044】
一例として、16機の宇宙船では、間隔は360/16であり、地上局114は、宇宙船が視認可能であるときに、各宇宙船と1/16軌道時間の間、個別に連動し、各宇宙船と個別に通信することが可能である(例えば、地上局114は必要に応じて、アンテナポインティング、構成、測距、通信及びデータ処理を行い、その後次の宇宙船等に同じことを行うのに十分な時間を得ることができる)。地上局114が実施する例示の通信には、宇宙船の動作状態を査定すること、及び宇宙船が実施する工程のコマンドを提供することが含まれる。
【0045】
分離した後で、各宇宙船104、106、108、及び110は、分離しながら、同期上昇でそれぞれの最終軌道に同時に上昇する。したがって、この分離は、全ての宇宙船を順次的にわずかの高さ(例:1000km~1400km)だけ上昇させて、低い軌道で位相調整(分離)させ、その後全ての宇宙船104、106、108、及び110を時限的に同時に上昇させることによって実現可能であり、この結果、宇宙船104、106、108、及び110が所望の分離を保ちながら最終軌道に到達する。この最終軌道は例えば更に高い約2400km~45000kmであってよい、あるいはそれを上回ってもよい。
【0046】
図10は、一例による、高高度まで上昇した全ての宇宙船104、106、108、及び110を示す表である。例えば、最後の宇宙船110がドリフト高度に近づくと、全ての宇宙船104、106、108、及び110は、最初から組み込まれている燃焼を開始して、おおよそ同じ開始ドリフト軌道156から同時に機動飛行し、互いから90度に位相分離する。地上局114は、地上局114に対して視認可能であるときに、それぞれの最終軌道にいつ機動飛行するかを各宇宙船104、106、108、及び110へ指示する時限コマンドを送信しうる。地上局114は、分離し、その後上昇するように、宇宙船104、106、108、及び110に個別にコマンドを送信する。時限コマンドは、同期上昇を達成し、各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整を維持するために、いつ機動飛行を開始すべきか(例:開始時間)を指示する。
【0047】
各宇宙船104、106、108、及び110の同時の上昇は、第1の軌道140よりも高い又は低い、おおよそ同じ開始高度(例:ドリフト軌道156)から開始され、各宇宙船は相対的な位相調整により互いに分離し、その結果、各宇宙船がそれぞれの最終軌道142に到達したときに相対的な位相調整により適所にとどまる。
【0048】
全ての宇宙船104、106、108、及び110の最終軌道142は同じであってよい、あるいは各宇宙船に適用可能な任務によって、別々の最終軌道を有していてもよい。
【0049】
図11は、一例による、宇宙船104、106、108、及び110の概念的軌道運動を示す図である。全ての宇宙船104、106、108、及び110が同時に燃焼することで、全ての宇宙船104、106、108、及び110が位相分離しながら(例:90度)、同期上昇する結果となる。この結果、最終軌道142において所望の位相調整又は分離が得られる。更に、これにより、宇宙船104、106、108、及び110と地上局114の視点との間に間隔が空き、宇宙船のコンステレーションが最終軌道142に上昇するときに、地上局114における視認時間フレームを管理可能、また予測可能なものにすることができる。
【0050】
図12は、一例による、地上局114からの宇宙船104、106、108、及び110の概念的視認プロファイルを示す図である。
図12に示すように、時間とともに、各宇宙船は、宇宙船104、106、108、及び110の間の軌道運動及び間隔に起因し、あるパターンで、地上局114の視界から出入りする。
【0051】
図13は、一例による、経度において180度離れている2つの地上局を使用した、ある事例における宇宙船104、106、108、及び110の別の概念的視認プロファイルを示す図である。
図13に示すように、実線の四角形は第1の地上局の視界内にある宇宙船を表し、点線の四角形は第2の地上局の視界内にある宇宙船を表す。ここでも、時間とともに、各宇宙船は、宇宙船104、106、108、及び110の間の軌道運動及び間隔に起因して、あるパターンで、地上局の視界から出入りする。
【0052】
図14は、宇宙船のコンステレーションを展開する例示の方法を示すフロー図である。
図14に示す方法200は、例えば
図1に示すシステム100、または地上局114で使用され得る例示の方法を提示している。更に、例示の装置またはシステムは、
図14に示す論理的機能を実行するように、使用または構成してよい。場合によっては、装置及び/またはシステムの構成要素が機能を実行するように構成されてよい。このような実行を可能にするため、構成要素は、(ハードウェア及び/またはソフトウェア付きで)実際に構成及び構築されてよい。他の実施例では、装置及び/またはシステムの構成要素は、特定の方法で作動するとき等に、この機能の実行に適合するように構成されてもよく、この機能の実行が可能であるように構成されてもよく、この機能の実行が適切であるように構成されてもよい。方法200は、ブロック202~206のうちの一又は複数で示すように、一又は複数の工程、機能、又は動作を含んでもよい。ブロックは順番に示されているが、これらのブロックはまた、並行して実行してもよく、及び/または、本書に記載の順序とは異なる順序で実行してもよい。更に、様々なブロックを、組み合わせてブロックの数を減らしたり、分割してブロックを追加したり、所望の実装態様に基づいて取り除いたりしてもよい。
【0053】
本書に開示されるこのプロセスと方法及び他のプロセスと方法について、フロー図は、本実施例の可能な一実装態様の機能性及び工程を示していることは理解されるべきである。これについては、それぞれのブロックが、モジュール、セグメント、またはプログラムコードの一部を表していてよい。プログラムコードは、プロセスの中で特定の論理的機能または手順を実行するプロセッサによって実行可能な、1つ以上の命令を含む。プログラムコードは、例えば、ディスクまたはハードドライブを含む記憶装置といった任意の種類のコンピュータ可読媒体またはデータ記憶装置に記憶されていてよい。更に、プログラムコードは、コンピュータ可読記憶媒体において機械可読形式で、又は他の非一過性媒体又は製造品において符号化されうる。このコンピュータ可読媒体は、例えば、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、及びランダムアクセスメモリ(RAM)のようなデータを短期間記憶するコンピュータ可読媒体などの非一過性コンピュータ可読媒体又はメモリを含んでもよい。コンピュータ可読媒体は、例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、光学又は磁気ディスク、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)のような二次的又は長期的な固定記憶装置などの非一過性媒体を更に含んでもよい。コンピュータ可読媒体は、更に、任意の他の揮発性又は非揮発性の記憶システムであってもよい。コンピュータ可読媒体は、例えば、有形のコンピュータ可読記憶媒体とみなされてよい。
【0054】
さらに、
図14の各ブロック、及び本書に記載される他のプロセス及び方法内では、プロセスの中で特定の論理的機能を実施するために配線されている回路が表されうる。代替的な実装態様は、本開示の実施例の範囲内に含まれる。本開示の実施例では、当業者によって理解されるように、関連する機能性に応じて、図示又は記載されている順序とは異なる順序(ほぼ並列順序又は逆順序を含む)で機能が実行されてもよい。
【0055】
ブロック202において、方法200は、打ち上げビークル150からクラスター102の宇宙船を第1の軌道140に放出することを含む。例において、打ち上げビークル150からクラスター102の宇宙船を第1の軌道140に放出した後の、各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整は約0度である。
【0056】
本方法200では、ブロック204において、地上局114から視認される期間の重複を最小限に抑えるために、クラスター102の宇宙船の宇宙船を互いから分離させることを含む。これには例えば、各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整が、地上局114の視点からおおよそ同一となるように、クラスター102の宇宙船を分離させることが含まれうる。分離は順次的に行われ、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、それぞれの宇宙船は第2の軌道を移動してドリフトを起こし、その結果、例えばクラスター102内の他の宇宙船に対する相対的な位相調整に至ることが含まれうる。加えて、幾つかの実施例では、分離は、いかなる時点においても地上局114に対して視認可能な宇宙船が1機のみであり、1度に1つの地上局のみを有し、また使用することによってコストが削減されるように行われる。
【0057】
ブロック206において、方法200は、各宇宙船が分離したときに、同期上昇でそれぞれの最終軌道142に同時に上昇させることを含む。地上局114は、地上局114に対して視認可能であるときに、各宇宙船に、それぞれの最終軌道142へ機動飛行するように指示する時限コマンドを送信しうる。時限コマンドは、同時上昇の開始時間を指示しうる。このため、各宇宙船104、106、108、及び110は、第1の軌道140よりも高い又は低いおおよそ同じ開始高度(例:ドリフト軌道156)から同時に上昇させることができ、各宇宙船は相対的な位相調整により互いに分離し、その結果、各宇宙船がそれぞれの最終軌道142に到達したときに相対的な位相調整のままとなる。
【0058】
地上局114は地球の表面に位置づけされ、見通し内通信を介して各宇宙船と通信し、各宇宙船と一度に1機ずつ通信する。したがって、地上局114は、分離し、その後上昇するように、宇宙船104、106、108、及び110に個別にコマンドを送信する。この方法は、多数の地上局の必要を回避し、システム100のコストを削減する。
【0059】
方法200では、第1の軌道140の高度、最終軌道142の高度、宇宙船の質量及び考えられる他の要因に応じて、宇宙船の完全な分離及び最終軌道142への上昇が完了するのに1か月、6か月、1年等かかりうる。
【0060】
図15は、
図14の方法200とともに使用されうる例示の方法を示すフロー図である。ブロック208において示すように、追加の機能には、クラスター102の宇宙船に順次、高度を上昇させ又は下降させることを含んでいてよく、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、それぞれの宇宙船は第2の軌道156を移動してドリフトを起こし、その結果、クラスター102内の他の宇宙船に対する相対的な位相調整に至る。
【0061】
図16は、
図14の方法200とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック210において示すように、追加の機能には、クラスター102の第1の宇宙船に高度を上げさせ又は下げさせて、異なる軌道にいることに起因したドリフトを起こさせることを含んでいてよく、ブロック212において示すように、別の追加の機能には、クラスター102の別の宇宙船に対して所望のドリフト率に達したら、クラスター102の第1の宇宙船の高度の変更を停止させることと、第1の軌道140よりも大きい又は小さい第2の軌道を移動させることとが含まれうる。
【0062】
図17は、
図14の方法200とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック214において示すように、追加の機能には、いかなる時点においても地上局に対して視認可能な宇宙船は1機のみであるように、宇宙船を分離させることが含まれうる。
【0063】
図18は、
図14の方法200とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック216において示すように、追加の機能には、クラスター102の宇宙船を互いに対して分離させて、宇宙船から宇宙船までの位相分離を発生させることが含まれうる。
【0064】
図19は、
図14の方法200とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック218において示すように、追加の機能には、各宇宙船に、地上局114に対して視認可能であるときに、それぞれの最終軌道142へ機動飛行するように指示する時限コマンドを送信することが含まれ得、時限コマンドは、同期上昇を実現し、各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整を維持するためにいつ機動飛行を開始するべきかを指示する。
【0065】
図20は、
図14の方法200とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック220において示すように、追加の機能には、各宇宙船に同期上昇の開始時間を送信することが含まれうる。
【0066】
図21は、
図14の方法200とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック222において示すように、追加の機能は、第1の軌道140とは異なるおおよそ同じ開始軌道から各宇宙船を同時に上昇させることを含むことができ、各宇宙船は相対的な位相調整により互いに分離し、その結果、各宇宙船がそれぞれの最終軌道142に到達したときに相対的な位相調整のままとなる。
【0067】
図22は、
図14の方法200とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック224において示すように、追加の機能には、見通し内通信を介して各宇宙船と通信することが含まれ得、ブロック226において示すように、別の追加の機能には、各宇宙船と一度に1機ずつ通信することが含まれうる。
【0068】
図23は、
図14の方法200とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック228において示すように、追加の機能には、地上局114が、分離し、その後上昇するように、宇宙船に個別にコマンドを送信することが含まれうる。
【0069】
図24は、宇宙船のコンステレーションを展開する別の例示の方法を示すフロー図である。
図24に示す方法229は、地上局114が宇宙船104、106、108、及び110の動作を制御するのに使用されうる例示の方法を提示する。
図1を再び参照する。データ記憶装置120(又は非一過性コンピュータ可読記憶媒体)には、一又は複数のプロセッサ116によって実行されたときに、地上局114に機能を実行させる実行可能な命令136が記憶されている。上記機能には、ブロック230に示すように、第1の軌道140に放出されたクラスター102の宇宙船に、地上局114から視認される期間の重複を最小限に抑えるために互いから分離させ、ブロック232に示すように、分離した各宇宙船に、同期上昇でそれぞれの最終軌道142に同時に上昇させることが挙げられる。
【0070】
図25は、
図24の方法229とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック234に示すように、追加の機能には、宇宙船のクラスターを放出するように打ち上げビークル150にコマンドを送信することによって、打ち上げビークルから宇宙船のクラスターを第1の軌道140に放出させることが含まれうる。
【0071】
図26は、
図24の方法229とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック236に示すように、追加の機能には、順次高度を変更するように、クラスター102内の各宇宙船にコマンドを送信することが含まれ得、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、それぞれの宇宙船は第2の軌道156を移動してドリフトを起こし、その結果、クラスター102内の他の宇宙船に対する相対的な位相調整に至る。
【0072】
図27は、
図24の方法229とともに使用されうる別の例示の方法を示すフロー図である。ブロック238に示すように、追加の機能には、各宇宙船に同期上昇の開始時間を指示するコマンドを送信することが含まれうる。
【0073】
したがって、地上局114は、例えば、順次高度を上げる又は下げるように、クラスター102の各宇宙船にコマンドを送信することによって、また各宇宙船に同期上昇の開始時間を指示するコマンドを送信することによって、これらの機能を実施しうる。コマンドは、例えば、衛星リンクを通して無線で、又は直接無線通信を通して送られうる。
【0074】
地上局114は、宇宙船が地上局114に対して視認可能であるときに、その宇宙船に適切な時点でコマンドを送信しうる。例えば、第1の宇宙船がクラスター102から所望の距離だけ分離すると、地上局114は間隔の分離を開始するように第2の宇宙船にコマンドを送信する。地上局114は更に、いつ同期上昇を開始すべきかを指示するコマンドを全ての宇宙船に供給する。全ての宇宙船にコマンドが送信されて所望の距離だけオフセットしたら上昇を開始するように、各宇宙船が地上局114の視界内にあるときに、同期上昇のコマンドがその後の上昇開始のためのタイマーを介して宇宙船に送信され、また供給されうる。全ての宇宙船が地上局114の視界内に入ってコマンドを受信するわけではないため、上昇コマンドは前もって供給される。
【0075】
更に、本開示は以下の条項による例を含む。
【0076】
条項1.宇宙船のコンステレーションを展開する方法(200)であって、
打ち上げビークル(150)から宇宙船(104、106、108、110)クラスター(102)を第1の軌道(140)に放出すること(202)と、
地上局(114)から視認される期間の重複が最小限に抑えられるように、宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させること(204)と、
各宇宙船が分離したときに、同期上昇でそれぞれの最終軌道(142)に同時に上昇させること(206)と
を含む方法(200)。
【0077】
条項2.打ち上げビークルから宇宙船のクラスターを第1の軌道に放出した後の、各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整は約0度である、条項1に記載の方法。
【0078】
条項3.宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させることが、
クラスター内の宇宙船に順次、高度を上げさせる又は下げさせること
を含み、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、それぞれの宇宙船は第2の軌道(156)を移動してドリフトを起こし、その結果、クラスター内の他の宇宙船に対する相対的な位相調整に至る、条項1に記載の方法。
【0079】
条項4.宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させることが、
クラスター内の第1の宇宙船に高度を上げさせて又は下げさせて、異なる軌道にあることに起因したドリフトを起こさせることと、
クラスター内の他の宇宙船に対する所望のドリフト率が得られたら、クラスター内の第1の宇宙船の高度の変更を停止させて、第1の軌道よりも大きい又は小さい第2の軌道を移動させることと
を含む、条項1に記載の方法。
【0080】
条項5.宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させることが、
いかなる時点においても、地上局に対して視認可能な宇宙船が1機のみとなるように、宇宙船を分離させること
を含む、条項1に記載の方法。
【0081】
条項6.宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させることが、
宇宙船間に位相分離が発生するように、クラスター内の宇宙船を互いから分離させること
を含む、条項1に記載の方法。
【0082】
条項7.位相分離が約360/xであり、xはクラスター内の宇宙船の数である、条項6に記載の方法。
【0083】
条項8.各宇宙船が分離したときに、同期上昇でそれぞれの最終軌道に同時に上昇させることが、
地上局に対して視認可能であるときに、それぞれの最終軌道に機動飛行するように指示する時限コマンドを各宇宙船に送信すること
を含み、
時限コマンドは、同期上昇を実現し且つ各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整を維持するために、機動飛行をいつ開始すべきかを指示する、条項1に記載の方法。
【0084】
条項9.各宇宙船が分離したときに、同期上昇でそれぞれの最終軌道に同時に上昇させることが、
同期上昇の開始時間を各宇宙船に送信すること
を含む、条項1に記載の方法。
【0085】
条項10.各宇宙船が分離したときに、同期上昇でそれぞれの最終軌道に同時に上昇させることが、
各宇宙船を、第1の軌道とは異なるおおよそ同じ開始軌道から同時に上昇させること
を含み、
各宇宙船は相対的な位相調整により互いに分離し、その結果、各宇宙船がそれぞれの最終軌道に到達したときに相対的な位相調整のままとなる、条項1に記載の方法。
【0086】
条項11.地上局が地球の表面に位置づけされ、
見通し内通信を介して各宇宙船と通信することと、
各宇宙船と一度に1機ずつ通信することと
を更に含む、条項1に記載の方法。
【0087】
条項12.宇宙船のクラスター内の宇宙船を分離させることと、各宇宙船が分離したときに、同期上昇で同時に上昇させることが、
地上局が宇宙船に、分離し、その後上昇するように、個別にコマンドを送信すること
を含む、条項1に記載の方法。
【0088】
条項13.宇宙船のクラスターが、2機~約12機の宇宙船を含む、条項1に記載の方法。
【0089】
条項14.非一過性コンピュータ可読記憶媒体(120)であって、
一又は複数のプロセッサ(116)を有するシステム(114)によって実行されたときに、システムに
地上局(114)から視認される期間の重複を最小限に抑えるために、第1の軌道(140)に放出された宇宙船(104、106、108、及び110)クラスター(102)内の宇宙船を互いから分離させ、各宇宙船が分離したときに、同期上昇でそれぞれの最終軌道(142)に同時に上昇させること
を含む機能を実行させる命令(136)が記憶された非一過性コンピュータ可読記憶媒体(120)。
【0090】
条項15.機能は更に、
宇宙船のクラスターを放出するように打ち上げビークルにコマンドを送信することによって、打ち上げビークル(150)から宇宙船のクラスターを第1の軌道(140)に放出させること
を含む、条項14に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【0091】
条項16.宇宙船のクラスター内の宇宙船を互いから分離させることが、
クラスター内の各宇宙船に順次、高度を変更するようにコマンドを送信すること
を含み、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、それぞれの宇宙船は第2の軌道を移動してドリフトを起こし、その結果、クラスター内の他の宇宙船に対する相対的な位相調整に至る、条項14に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【0092】
条項17.各宇宙船が分離したときに、同期上昇でそれぞれの最終軌道に同時に上昇させることが、
同期上昇の開始時間を指示するコマンドを各宇宙船に送信すること
を含む、条項14に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【0093】
条項18.宇宙船のコンステレーションを展開するシステム(100)であって、
第1の軌道(140)を回っている宇宙船(104、106、108、及び110)クラスター(102)と、
宇宙船のクラスターが地上局に対して視認可能であるときに、宇宙船のクラスター内の宇宙船と通信している地上局(114)と
を備え、
地上局は、各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整により地上局から視認される期間の重複を最小限に抑えるために、互いから分離するように指示する第1のコマンドを宇宙船のクラスターの各宇宙船に送信し、分離したときに同期上昇でそれぞれの最終軌道(142)に同時に上昇するように指示する第2のコマンドを各宇宙船に送信する、システム。
【0094】
条項19.地上局114は、クラスターの宇宙船に順次、高度を変更するように命令する第1のコマンドを送信し、それぞれの宇宙船が高度を変更したときに、それぞれの宇宙船は第2の軌道を移動してドリフトを起こし、その結果、クラスター内の他の宇宙船に対する相対的な位相調整に至る、条項18に記載のシステム。
【0095】
条項20.地上局は、それぞれの最終軌道に機動飛行するように各宇宙船に命令し、同期上昇を実現し且つ各宇宙船の互いに対する相対的な位相調整を維持するために機動飛行をいつ開始すべきかを指示する第2のコマンドを送信する、条項18に記載のシステム。
【0096】
種々の有利な構成の説明は、例示及び説明を目的として提示されており、完全であること、または開示された形態の実施例に限定されるべきものではない。当業者には、多くの修正例及び変形例が自明となろう。更に、種々の有利な実施例は、他の有利な実施例と比べて異なる利点を説明し得る。選択された実施例は、実施例の原理、実際の用途を最もよく説明するため、及び他の当業者に対し、様々な実施例の開示内容と、考慮される特定の用途に適した様々な修正例との理解を促すために選択及び記述されている。