(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】皮膚洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20230721BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230721BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230721BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230721BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230721BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/73
A61K8/37
A61K8/86
A61Q19/10
A61Q1/14
(21)【出願番号】P 2019033834
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】高畑 佑志
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-015359(JP,A)
【文献】特開2002-187833(JP,A)
【文献】国際公開第2011/027721(WO,A1)
【文献】特開2016-094405(JP,A)
【文献】特表2013-544778(JP,A)
【文献】国際公開第2017/189493(WO,A1)
【文献】特開2017-075123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、
(B)
スルホベタイン型両性界面活性剤と、
(C)カチオン
化グァーガムと、
(D)
セスキエステルである脂肪酸ソルビタンエステルと、
(E)ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含有し、
前記(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が下記一般式(1)で表される化合物であり、
R
1
-O-(CH
2
-CH
2
O)
n
-SO
3
X ・・・ 一般式(1)
(前記一般式(1)中、R
1
は炭素数10~16の直鎖のアルキル基であり、nは1~3であり、Xはアルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。)
前記(D)
セスキエステルである脂肪酸ソルビタンエステルの脂肪酸のアルキル鎖が、炭素鎖長が6~12の飽
和直鎖
状であ
り、
前記(E)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが下記一般式(4)で表される化合物であり、
R
4
-O-(CH
2
-CH
2
O)
y
-H ・・・ 一般式(4)
(前記一般式(4)中、R
4
は炭素数17~20の直鎖のアルキル基であり、yは2~12である。)
前記(A)成分の含有量が、3質量%以上12質量%未満であり、
前記(B)成分の含有量が、0.1質量%~30質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、0.01質量%~5質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、0.1質量%~10質量%であり、
前記(E)成分の含有量が、0.1質量%~20質量%であることを特徴とする皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の含有量と、前記(D)成分及び前記(E)成分の合計含有量との質量比{(D)+(E)}/(A)が、0.03~7.0である請求項1に記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、アルキルヒドロキシスルタインである請求項1から2のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
25℃におけるpHが、3.0~6.5の範囲である請求項1から3のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の含有量が、6質量%~10質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、1質量%~5質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、0.1質量%~2質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、0.3質量%~2質量%であり、
前記(E)成分の含有量が、0.5質量%~5質量%である請求項1から4のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボディソープやハンドソープ等の皮膚洗浄剤組成物では、十分な泡質と洗浄後の保湿性とを両立したものが求められている。近年では、これらに加え、様々な機能や効果へのニーズが高まっている。
【0003】
例えば、塗布時の垂れ落ちがなく、使用性が良好であり、多量の固体脂を含む油汚れに対してもなじみが早く、優れた洗浄力を有し、すすぎ時に製剤の溶け崩れ性が良好で、すすぎ性に優れ、かつ洗浄後に肌の残留感のない汚れ落ち実感に優れた皮膚洗浄剤(例えば、特許文献1参照)、素早い殺活性を有し、安定で大量の泡を提供し、強化された組織(例えば皮膚)適合性を示す発泡抗菌性皮膚洗剤(例えば、特許文献2参照)、使用時の増泡性に優れ、すすぎ時のぬるつきが早く消え、ストップフィーリング性が強く、更に乾燥後の肌の感触にも優れる洗浄剤組成物(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0004】
一方、地域等によっても皮膚洗浄剤組成物に対する要望は様々であり、前記要望に対応し得る多様な皮膚洗浄剤組成物の開発も求められており、例えば、十分な泡質と洗浄後の保湿性とを両立するだけではなく、更に、タオルドライ後の滑らかですべすべした感触や肌のつや改善実感が良好な皮膚洗浄剤組成物が望まれている。しかしながら、未だ満足できるものは提供されておらず、その速やかな提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-145118号公報
【文献】特表2017-522356号公報
【文献】特開2012-232941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、起泡性、洗浄後の保湿性、タオルドライ後の肌のすべすべ感、及び肌のつや改善実感のいずれもが良好な皮膚洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を重ねた結果、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、(B)両性界面活性剤と、(C)カチオン性ポリマーと、(D)脂肪酸ソルビタンエステルと、(E)ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含有させることにより、洗浄時の泡立ち易さが良好であり、洗浄後の保湿性に優れ、使用後の肌のすべすべ感及び肌のつや改善実感が向上することを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、
(B)両性界面活性剤と、
(C)カチオン性ポリマーと、
(D)脂肪酸ソルビタンエステルと、
(E)ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含有することを特徴とする皮膚洗浄剤組成物である。
<2> 前記(A)成分の含有量と、前記(D)成分及び前記(E)成分の合計含有量との質量比{(D)+(E)}/(A)が、0.03~7.0である前記<1>に記載の皮膚洗浄剤組成物である。
<3> 前記(B)成分が、アルキルヒドロキシスルタインである前記<1>から<2>のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物である。
<4> 前記(C)成分が、カチオン化グァーガムである前記<1>から<3>のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物である。
<5> 25℃におけるpHが、3.0~6.5の範囲である前記<1>から<4>のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物である。
<6> 前記(A)成分の含有量が、6質量%~10質量%であり、
前記(B)成分の含有量が、1質量%~5質量%であり、
前記(C)成分の含有量が、0.1質量%~2質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、0.3質量%~2質量%であり、
前記(E)成分の含有量が、0.5質量%~5質量%である前記<1>から<5>のいずれかに記載の皮膚洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、起泡性、洗浄後の保湿性、タオルドライ後の肌のすべすべ感、及び肌のつや改善実感のいずれもが良好な皮膚洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(皮膚洗浄剤組成物)
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、(A)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、(B)成分の両性界面活性剤と、(C)成分のカチオン性ポリマーと、(D)成分の脂肪酸ソルビタンエステルと、(E)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルとを少なくとも含有し、必要に応じて更にその他の成分を含有する。
【0011】
<(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩>
前記(A)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、主に、起泡性を向上させるために含有される。
【0012】
前記(A)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(1)で表される化合物などが挙げられる。前記(A)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
R1-O-(CH2-CH2O)n-SO3X ・・・ 一般式(1)
【0013】
前記一般式(1)中、R1はアルキル基を示し、前記アルキル基は、起泡性の点から、炭素数6~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、炭素数10~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましい。
【0014】
前記一般式(1)中、nはポリオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、前記ポリオキシエチレン基の平均付加モル数としては、起泡性の点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
【0015】
前記一般式(1)中、Xは、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。
前記アルカリ金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
前記有機アンモニウムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の有機アンモニウムなどが挙げられる。
これらの中でも、前記Xは、起泡性の点から、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムがより好ましい。
【0016】
前記(A)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の具体例としては、ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(別名:POE(2)ラウレス硫酸ナトリウム)、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(別名:POE(3)ラウレス硫酸ナトリウム)、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)アルキル(C12,13)エーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
なお、前記( )内の数値は、ポリオキシエチレン基の平均付加モル数(n)を表す。
【0017】
前記(A)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、市販品を使用することもできる。
前記(A)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の市販品としては、例えば、テキサポンN28AS 270N(BASF社製)、エマール270J、エマール20C(以上、花王株式会社製)、ニッサントラックス、パーソフト(以上、日油株式会社製)などが挙げられる。
【0018】
前記(A)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、起泡性、及び洗浄後の角層水分量の点から、皮膚洗浄剤組成物全量に対して、3質量%以上12質量%未満が好ましく、6質量%~10質量%がより好ましい。前記含有量が、3質量%以上であると、起泡性が良好であり、12質量未満であると、洗浄後の角層水分量の保持、及び肌のつや改善実感が良好である。
【0019】
<(B)両性界面活性剤>
前記(B)成分の両性界面活性剤は、主に、起泡性を向上させるために含有される。
【0020】
前記(B)成分の両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、起泡性の点から、イミダゾリン型(アミドアミン型)、アミドアミノ酸塩、カルボベタイン型(アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン)、スルホベタイン型(アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン)、ホスホベタイン型、アミンオキシド、ホスフォンオキシドが好ましく、アルキルヒドロキシスルホベタイン(以下、「アルキルヒドロキシスルタイン」と称することがある。)がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記イミダゾリン型両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムなどが挙げられる。
【0022】
前記カルボベタイン型両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0023】
前記スルホベタイン型両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン、ヤシ油脂肪酸ジメチルアミノヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記ホスホベタイン型両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルヒドロキシホスホベタインなどが挙げられる。
【0025】
前記アミンオキシドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアシル第3級アミンオキシドなどが挙げられる。
【0026】
前記ホスフォンオキシドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルジメチルホスフォンオキシド等のアシル第3級ホスフォンオキシドなどが挙げられる。
【0027】
前記両性界面活性剤中でも、起泡性の点から、ラウリルヒドロキシスルホベタイン(「ラウリルヒドロキシスルタイン」と称することがある。)、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミノプロピルベタインが更に好ましい。
【0028】
前記(B)成分の両性界面活性剤は、市販品を使用することもできる。
前記(B)成分の両性界面活性剤の市販品としては、例えば、アルキルヒドロキシスルホベタインとしては、アンヒトール20HD(花王株式会社製)、ソフタゾリンLSB(川研ファインケミカル株式会社製)、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインとしては、アンヒトール24B(花王株式会社製)、ニッサンアノンBL(日油株式会社製)、NIKKOL AM-301(日光ケミカルズ株式会社製)、アモーゲンS(第一工業製薬株式会社製)、オバゾリンLB(東邦化学工業株式会社製)、リカビオンA-100(新日本理化株式会社製)、アミポールN(日華化学株式会社製)、ビスターML(松本油脂製薬株式会社製)、アンヒトール86B(花王株式会社製)、リカビオンA-700(新日本理化株式会社製)、ニッサンアノンBF(日油株式会社製)などが挙げられる。
【0029】
前記(B)成分の両性界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、起泡性の点から、皮膚洗浄剤組成物全量に対して、0.1質量%~30質量%が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましい。前記含有量が、前記好ましい範囲内であると、起泡性が良好である。
【0030】
<(C)カチオン性ポリマー>
前記(C)成分のカチオン性ポリマーは、主に、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触を付与するために含有される。
【0031】
前記(C)成分のカチオン性ポリマーは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーである。前記カチオン性ポリマーには、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。
【0032】
前記(C)成分のカチオン性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、及び肌のつや改善実感の点から、カチオン化グァーガム、カチオン化セルロース、カチオン化デンプン、塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、含窒素ポリメタクリレートが好ましく、カチオン化グァーガムがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記カチオン化グァーガムは、グァーガムにカチオン性官能基を付加したもので、例えば、下記一般式(2)で表されるヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドが挙げられる。
【化1】
前記一般式(2)中、R’は水素原子又は下記一般式(i)又は下記一般式(ii)で表される基を示し、分子中に少なくとも一般式(i)及び一般式(ii)で表される基を有する。mは8~10,000である。
【0034】
【化2】
前記一般式(i)中、Z
-は陰イオンであり、Cl
-が好ましい。
【化3】
【0035】
前記カチオン化グァーガムのカチオン度は、カチオン基の付加の程度によって異なる。前記カチオン化グァーガムのカチオン度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1meq/g~3.0meq/gの範囲が好ましく、0.1meq/g~0.5meq/gがより好ましい。
【0036】
前記カチオン化グァーガムの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10万~300万の範囲が好ましく、20万~250万の範囲がより好ましい。
【0037】
前記カチオン化セルロースは、セルロースにカチオン性官能基を付加したもので、例えば、下記一般式(3)で表される塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(表示名称:ポリクオタニウム-10)が挙げられる。
【化4】
前記一般式(3)中、R’’、R’’’、R’’’’は水素原子又は下記一般式(i)で表される基を示し、分子中に少なくとも一般式(i)で表される基を有する。p、q、rは0~5の数であり、sは500~20,000である。
【0038】
【化4】
前記一般式(i)中、Z
-は陰イオンであり、Cl
-が好ましい。
【0039】
前記カチオン化セルロースのカチオン度は、カチオン基の付加の程度によって異なる。前記カチオン化セルロースのカチオン度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1meq/g~3.0meq/gの範囲が好ましく、0.5meq/g~1.7meq/gがより好ましい。
【0040】
前記カチオン化セルロースの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10万~300万の範囲が好ましく、30万~200万の範囲がより好ましい。
【0041】
前記カチオン化デンプンは、デンプンにカチオン性官能基を付加したもので、例えば、デンプンと塩化グリシジルプロピルトリメチルアンモニウムからなる4級アンモニウム化合物である塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプンが挙げられる。
【0042】
前記カチオン化デンプンのカチオン度は、カチオン基の付加の程度によって異なる。前記カチオン化デンプンのカチオン度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1meq/g~3.0meq/gの範囲が好ましく、0.5meq/g~1.7meq/gがより好ましい。
【0043】
前記カチオン化デンプンの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10万~300万の範囲が好ましく、50万~250万の範囲がより好ましい。
【0044】
前記カチオン化グァーガム、カチオン化セルロース、及びカチオン化デンプンのカチオン度は、化学構造が明瞭であれば簡単に計算することができるが、モノマー比率等の構造が不明な場合であっても、ケルダール法等のN含量の測定値から計算することができる。なお上述したカチオン度は、ケルダール法である化粧品原料基準の一般試験法の窒素定量法第2法で測定した値を元に算出している。なお、カチオン度の単位であるmeq/gとは試料1g当たりのNカチオン基のミリ当量数を示す。
【0045】
前記カチオン化グァーガム、カチオン化セルロース、及びカチオン化デンプンの重量平均分子量は、一般的なGPCカラムを用いた液体クロマトグラフィーを用い、分子量既知のポリマーと比較する方法によって測定することができる。なお、上述した重量平均分子量は、GPC-MALLS(ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー光散乱検出器)を用いて測定した値であり、ポリマーの純分濃度が約1000ppmの移動相で希釈した試料溶液を、TSK-GELαカラム(東ソー株式会社製)を用い、0.5moL/Lの過塩素酸ナトリウム溶液を移動相として、約633nmの波長を多角度光散乱検出器により測定した。標準品としては分子量既知のポリエチレングリコールを用いた。
【0046】
前記(C)成分のカチオン性ポリマーは、市販品を使用することもできる。
前記(C)成分のカチオン性ポリマーの市販品としては、例えば、カチオン化グァーガムとしては、JAGUAR C-14S、JAGUAR C-17、JAGUAR-EXCEL、JAGUAR C-162、JAGUAR LS、JAGUAR C-500STD、JAGUAR-Optima(以上、ローヌプーラン社製)、ボールガムCG-M、ラボールガムCG-M6L、ラボールガムCG-M8M(以上、大日本製薬株式会社製)、カチオン化セルロースとしては、レオガードLP、レオガードGP、レオガードMGP、レオガードKGP、レオガードXE-511K(以上、ライオン株式会社製)、UCARE LR-30M、UCARE JR-400、UCARE JR-30M(以上、ダウケミカル日本株式会社製)、カチナールHC-100(東邦化学工業株式会社製)、カチオン化デンプンとしては、センサマーCI-50(ナルコカンパニー社製)、アミロマー25L、アミロマー50M(以上、Graefe Chemie社製)、ファーマルMS5940(Corn Products International社製)などが挙げられる。
【0047】
前記(C)成分のカチオン性ポリマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、肌のつや改善実感、及び起泡性の点から、皮膚洗浄剤組成物全量に対して、0.01質量%~5質量%が好ましく、0.1質量%~2質量%がより好ましい。前記含有量が、0.01質量%以上であると、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、及び肌のつや改善実感が良好であり、5質量%以下であると、起泡性が良好である。
【0048】
<(D)脂肪酸ソルビタンエステル>
前記(D)成分の脂肪酸ソルビタンエステルは、主に、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触を付与するために含有される。
【0049】
前記(D)成分の脂肪酸ソルビタンエステルの脂肪酸のアルキル鎖としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、及び肌のつや改善実感の点から、炭素鎖長6~22直鎖状(飽和又は不飽和)又は分岐鎖状が好ましく、炭素鎖長6~12直鎖状(飽和又は不飽和)又は分岐鎖状がより好ましい。
【0050】
前記(D)成分の脂肪酸ソルビタンエステルは、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、及び肌のつや改善実感の点から、モノエステル、ジエステル、トリエステル、及びセスキエステルのいずれかが好ましく、モノエステル、ジエステル、及びセスキエステルのいずれかがより好ましい。
【0051】
前記(D)成分の脂肪酸ソルビタンエステルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記脂肪酸ソルビタンエステルの具体例としては、カプリル酸ソルビタン、カプリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、ミリスチン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、ジイソステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ベヘン酸ソルビタン、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、ヤシ脂肪酸ソルビタン、セスキカプリル酸ソルビタン、セスキカプリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンなどが挙げられ、セスキカプリル酸ソルビタンが好ましい。
【0053】
前記(D)成分の脂肪酸ソルビタンエステルは、市販品を使用することもできる。
前記(D)成分の脂肪酸ソルビタンエステルの市販品としては、例えば、ANTIL Soft SC(Evonik社製)、ポエム C-250(理研ビタミン株式会社製)、ソルボン S-10E(東邦化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0054】
前記(D)成分の脂肪酸ソルビタンエステルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、肌のつや改善実感、及び起泡性の点から、皮膚洗浄剤組成物全量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.3質量%~2質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%以上であると、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、及び肌のつや改善実感が良好であり、10質量%以下であると、起泡性が良好である。
【0055】
<(E)ポリオキシエチレンアルキルエーテル>
前記(E)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、主に、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触を付与するために含有される。
【0056】
前記(E)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(4)で表される化合物などが挙げられる。前記(E)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
R4-O-(CH2-CH2O)y-H ・・・ 一般式(4)
【0057】
前記一般式(4)中、R4は炭素数8~22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、及び肌のつや改善実感の点から、炭素数13~21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、炭素数17~20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましい。
【0058】
前記一般式(4)中、yは1~80のポリオキシエチレン基の平均付加モル数を示し、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、及び肌のつや改善実感の点から、前記ポリオキシエチレン基の平均付加モル数は、1~40が好ましく、2~12がより好ましい。
【0059】
前記(E)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンヘプタデシルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノナデシルエーテル、ポリオキシエチレンアラキジルエーテル、ポリオキシエチレンヘンエイコシルエーテルなどが挙げられる。
【0060】
前記(E)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、市販品を使用することもできる。
前記(E)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、例えば、ブラウノンSR-711(青木油脂工業株式会社製)、エマレックス611(日本エマルジョン株式会社製)などが挙げられる。
【0061】
前記(E)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、肌のつや改善実感、及び起泡性の点から、皮膚洗浄剤組成物全量に対して、0.1質量%~20質量%が好ましく、0.5質量%~5質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%以上であると、タオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与、及び肌のつや改善実感が良好であり、20質量%以下であると、起泡性が良好である。
【0062】
<質量比{(D)+(E)}/(A)>
前記(A)成分の含有量と、前記(D)成分及び前記(E)成分の合計含有量との質量比{(D)+(E)}/(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.03~7.0が好ましく、0.08~0.4がより好ましい。前記質量比が、0.03以上であると、肌のつや改善実感、及びタオルドライ後の肌のすべすべとした感触の付与が良好であり、7.0以下であると、起泡性が良好である。
【0063】
<その他の成分>
本発明の皮膚洗浄剤組成物には、前記(A)~前記(E)の各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、その他の成分を配合することができる。
前記その他の成分としては、例えば、pH調整剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、防腐剤、殺菌剤、湿潤剤、粘度調整剤、感触付与剤、可溶化剤、分散剤、乳化剤、不透明化剤、色素、顔料、香料、油分、動植物抽出物又はその誘導体、紫外線吸収剤、無機粉体、ポリマー水不溶性粉体、薬効成分などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用することもできる。
前記その他の成分の前記皮膚洗浄剤組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0064】
-pH-
前記皮膚洗浄剤組成物の25℃におけるpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、洗浄後の角層水分量の点から、3.0~6.5の範囲が好ましい。前記pHが好ましい範囲内であると、洗浄後の角層水分量の保持が良好である。
前記pHは、化粧品原料基準(第2版)の一般試験法に定められた方法を用いて測定することができる。具体的には、前記一般試験法に基づき、組成物中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定することができる。
【0065】
-製造方法-
本発明の皮膚洗浄剤組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した各成分を所定量混合し、製造する方法などが挙げられる。
前記皮膚洗浄剤組成物は、装置を用いて調製してもよい。前記装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、剪断力があり、全体を混合することができる攪拌羽根を備えた攪拌装置などが挙げられる。
前記攪拌羽根としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロペラ、タービン、ディスパーなどが挙げられる。
【0066】
-用途-
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、起泡性、洗浄後の保湿性、及びタオルドライ後の肌のすべすべ感のいずれもが良好であり、更に、肌のつや改善実感が良好であることから、例えば、洗顔料、ハンドソープ、ボディソープ、クレンジングフォーム、メイク落としなどに用いることができ、特にボディソープに好適に用いることができる。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明を実施例、比較例、及び処方例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例、及び処方例に制限されるものではない。
【0068】
実施例、比較例、及び処方例に記載の各成分の含有量は質量%で示し、全て純分換算した値である。
また、(A)成分の含有量と、(D)成分及び(E)成分の合計含有量との質量比{(D)+(E)}/(A)は、小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位まで求め、記載した。
【0069】
(実施例1~25、及び比較例1~5)
下記表1~表6に示す組成となるように、各成分を所定量混合し、皮膚洗浄剤組成物を製造した。
なお、pHは、pHメーター(HM-30R、TOA DKK社製)を用いて、25℃で測定し、各組成物において、pH(25℃)が5.5となるようにクエン酸の添加量を調整した。
【0070】
<評価>
[起泡性、タオルドライ後の肌のすべすべ感、肌のつや改善実感]
作製した実施例1~25、及び比較例1~5の皮膚洗浄剤組成物について、専門評価者10名により、頭部を除く身体部を洗浄したときの「起泡性」、「タオルドライ後の肌のすべすべ感」、及び「肌のつや改善実感」の各項目について評価を行い、以下の評価基準により評価した。評価が「◎」又は「○」の場合に、性能が良好であるとした。結果を表1~表6に示した。
-評価基準-
◎ : 専門評価者の9名~10名が、良好と回答。
○ : 専門評価者の6名~8名が、良好と回答。
△ : 専門評価者の3名~5名が、良好と回答。
× : 専門評価者の0名~2名が、良好と回答。
【0071】
[角層水分量保持率]
まず、未処理の皮膚について、水分量と相関のある皮表コンダクタンスを市販の機器(Skicon-200)により測定した(肌処理前のコンダクタンス値)。
次に、40℃の水道水を使用し、作製した実施例1~25、及び比較例1~5の皮膚洗浄剤組成物を用いて前腕内側部を洗浄した後、水道水で十分すすぎ、タオルを用いて水分を除去した。前記処理を行った皮膚について、皮表コンダクタンスをSkicon-200により測定した(肌処理後のコンダクタンス値)。
なお、測定は22℃、相対湿度40%の恒温室で30分馴化した後に行った。
得られた皮表コンダクタンスの測定値より、下記式を用いて角層水分量保持率を算出し、以下の評価基準により評価した。評価が「◎」又は「○」の場合に、性能が良好であるとした。結果を表1~表6に示した。
角層水分量保持率(%)=(肌処理後のコンダクタンス値/肌処理前のコンダクタンス値)×100
-評価基準-
◎ : 角層水分量保持率が、100%より大きい。
○ : 角層水分量保持率が、90%以上100%以下。
× : 角層水分量保持率が、90%未満。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
(処方例1~3)
下記表7の組成に従って、上記実施例及び比較例と同様にして処方例1~3の皮膚洗浄剤組成物を調製し、各評価を行った。
【0079】
【0080】
前記実施例、比較例、及び処方例で使用した各成分の詳細について、下記表8~表9に示す。
【0081】
【0082】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、起泡性、洗浄後の保湿性、及びタオルドライ後の肌のすべすべ感のいずれもが良好であり、更に、肌のつや改善実感が良好であることから、例えば、洗顔料、ハンドソープ、ボディソープ、クレンジングフォーム、メイク落としなどに用いることができ、特にボディソープに好適に用いることができる。