(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】飲料充填装置及び飲料充填方法
(51)【国際特許分類】
B67C 3/08 20060101AFI20230721BHJP
B65B 3/04 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B67C3/08
B65B3/04
(21)【出願番号】P 2019082751
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】小林 宜弘
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達男
(72)【発明者】
【氏名】上田 敦士
(72)【発明者】
【氏名】安部 貞宏
(72)【発明者】
【氏名】林 柾行
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-278445(JP,A)
【文献】特開2015-199546(JP,A)
【文献】特表2001-510768(JP,A)
【文献】特開昭49-126483(JP,A)
【文献】特開2007-302325(JP,A)
【文献】特開2018-140798(JP,A)
【文献】米国特許第03486295(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/08
B65B 3/04
B67C 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある容器を密閉状態で収容
するチャンバと、
密封状態の前記チャンバ内、及び、該チャンバ内の前記容器内を同時に減圧
する真空排気部と、
前記チャンバ内の前記容器の口部に接触して該容器内に炭酸液を充填
する接触位置と、前記チャンバ内で前記口部から離間して該口部を開放する退避位置との間で移動
する充填ノズルと、
を備え
、
前記真空排気部は、前記充填ノズルが前記退避位置にある時に、前記チャンバ内を減圧することで該チャンバ内と連通した前記容器内も同時に減圧し、
前記充填ノズルは、前記真空排気部が前記チャンバ内を減圧した後に前記退避位置から前記接触位置に移動して前記炭酸液を充填し、
前記充填ノズルによって前記容器内に前記炭酸液が充填された後に、該充填ノズルを介して前記容器内を加圧する第一加圧部と、
該第一加圧部が加圧をしている時に前記チャンバ内の圧力を加圧する第二加圧部と、
をさらに備え、
前記充填ノズルは、炭酸液を前記容器に充填後であって前記第一加圧部及び前記第二加圧部による加圧がされた後に、前記接触位置から前記退避位置に移動する飲料充填装置。
【請求項2】
前記第一加圧部及び前記第二加圧部による加圧がされて前記充填ノズルが前記退避位置に移動した後に、前記容器の前記口部にキャップを取り付けるキャッピングヘッドをさらに備える請求項
1に記載の飲料充填装置。
【請求項3】
可撓性のある容器をチャンバ内に密封状態で収容するチャンバ密封工程と、
該チャンバ密封工程の後に、前記チャンバ内及び前記容器内を同時に減圧する真空排気工程と、
該真空排気工程の後に、充填ノズルを介して前記容器内に炭酸液を充填する充填工程と、
を含
み、
前記真空排気工程では、前記チャンバ内を減圧することで該チャンバ内と連通する前記容器内も同時に減圧し、
前記充填工程では、前記充填ノズルが前記容器の口部から離間して該口部が開放された退避位置から、前記充填ノズルが前記容器の口部に接触する接触位置に移動した後に、前記充填ノズルを介して前記容器内に炭酸液を充填し、
前記充填工程の後に、前記容器内及び前記チャンバ内を加圧する加圧工程と、
該加圧工程の後に、前記充填ノズルを前記接触位置から前記退避位置に移動させるノズル退避工程と、
をさらに含む飲料充填方法。
【請求項4】
前記ノズル退避工程の後に、前記容器の口部にキャップを取り付けるキャッピング工程をさらに含む請求項
3に記載の飲料充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料充填装置及び飲料充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸液を容器に充填する際には、充填時の発泡を抑制するために一旦容器内を加圧し不飽和状態で充填する。充填後に容器内の圧力を不用意に大気圧に戻してしまえば、充填された炭酸液が発泡する減圧発泡現象が起こる。この現象を抑えるためには、例えば充填流量を低く抑えたり、充填後から大気圧に戻す間の静置時間を長くする必要がある。そのため充填プロセス時間が長くなり、生産性が低下してしまう。特に、省エネのために炭酸液の液温が高い条件で充填をする場合には発泡量がより増加する。従って、充填流量をさらに下げたり静置時間をさらに延長しなければならない。
【0003】
これに対して例えば特許文献1には、容器内を真空引きにした状態で飽和圧に加圧された炭酸液を充填し、圧力を維持したままで打栓を行う充填方法が開示されている。この方法では、容器内とタンクとに大気圧以上の差圧が生じるため、充填速度を増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の方法ではガラス瓶等の真空耐圧性のある容器への充填のみに限定される。即ち、上記方法を用いて、例えばPETボトル等の可撓性のある柔らかい容器に充填しようとすれば、真空引時の容器内外の圧力差によって容器自体が変形してしまうという問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、炭酸液を容器に充填する際に該容器が変形してしまうことを抑制することができる飲料充填装置及び飲料充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用している。
即ち、本発明の一態様に係る飲料充填装置は、可撓性のある容器を密閉状態で収容するチャンバと、密封状態の前記チャンバ内、及び、該チャンバ内の前記容器内を同時に減圧する真空排気部と、前記チャンバ内の前記容器の口部に接触して該容器内に炭酸液を充填する接触位置と、前記チャンバ内で前記口部から離間して該口部を開放する退避位置との間で移動する充填ノズルと、を備え、前記真空排気部は、前記充填ノズルが前記退避位置にある時に、前記チャンバ内を減圧することで該チャンバ内と連通した前記容器内も同時に減圧し、前記充填ノズルは、前記真空排気部が前記チャンバ内を減圧した後に前記退避位置から前記接触位置に移動して前記炭酸液を充填し、前記充填ノズルによって前記容器内に前記炭酸液が充填された後に、該充填ノズルを介して前記容器内を加圧する第一加圧部と、該第一加圧部が加圧をしている時に前記チャンバ内の圧力を加圧する第二加圧部と、をさらに備え、前記充填ノズルは、炭酸液を前記容器に充填後であって前記第一加圧部及び前記第二加圧部による加圧がされた後に、前記接触位置から前記退避位置に移動する。
【0008】
本発明の一態様に係る飲料充填方法では、可撓性のある容器をチャンバ内に密封状態で収容するチャンバ密封工程と、該チャンバ密封工程の後に、前記チャンバ内及び前記容器内を同時に減圧する真空排気工程と、該真空排気工程の後に、前記充填ノズルが前記容器の口部から離間して該口部が開放された退避位置から、前記充填ノズルが前記容器の口部に接触する接触位置に移動した後に、前記充填ノズルを介して前記容器内に炭酸液を充填する充填工程と、を含み、前記真空排気工程では、前記チャンバ内を減圧することで該チャンバ内と連通する前記容器内も同時に減圧し、前記充填工程では、前記充填ノズルが前記容器の口部から離間して該口部が開放された退避位置から、前記充填ノズルが前記容器の口部に接触する接触位置に移動した後に、前記充填ノズルを介して前記容器内に炭酸液を充填し、前記充填工程の後に、前記容器内及び前記チャンバ内を加圧する加圧工程と、該加圧工程の後に、前記充填ノズルを前記接触位置から前記退避位置に移動させるノズル退避工程と、をさらに含む。
【0009】
これにより、容器内に炭酸液を充填する前に、容器内と該容器が配置されたチャンバ内の双方を減圧することができる。これによって、容器内外の圧力差を低減することができるため、容器に対して外圧が作用することを抑制できる。
【0012】
これにより、充填ノズルが退避位置にある際にチャンバ内を減圧することで、該チャンバ内に連通する容器内も同時に減圧することができる。
【0015】
第一加圧部によって炭酸液が充填された容器内が加圧され、第二加圧部によってチャンバ内が加圧されることで、これら容器内及びチャンバ内の圧力を例えば炭酸液の飽和圧力にすることができる。これにより、その後に充填ノズルを退避させても、炭酸液の減圧発泡による容器からの噴きこぼれを抑えることができる。
【0016】
上記飲料充填装置では、前記第一加圧部及び前記第二加圧部による加圧がされて前記充填ノズルが退避位置に移動した状態で、前記容器の口部にキャップを取り付けるキャッピングヘッドをさらに備えてもよい。
【0017】
上記飲料充填方法では、前記ノズル退避工程の後に、前記容器の口部にキャップを取り付けるキャッピング工程をさらに含んでいてもよい。
【0018】
チャンバ内及び容器内が加圧された状態で該容器にキャップを取り付けることで、上記同様、容器からの噴きこぼれを抑えながら適切な取り付けを行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の飲料充填装置及び飲料充填方法によれば、炭酸液を容器に充填する際に該容器が変形してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法の容器供給工程を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る飲料充填装置の制御装置のハードウェア構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る飲料充填装置の制御装置の機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る飲料充填方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法のチャンバ密封工程を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法の真空排気工程を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法の充填工程を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法の加圧工程を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法のノズル退避工程を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法のヘッド降下工程を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法のキャッピング工程を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法のチャンバ圧力開放工程を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法のヘッド上昇工程を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法のチャンバ密封解除工程を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る飲料充填装置を示す模式図であって、飲料充填方法の容器排出工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る飲料充填装置及び飲料充填方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示す本実施形態の飲料充填装置1は、例えばPETボトル等の可撓性を有する容器90に炭酸液を充填した後に該容器90に対してキャッピングを施す装置である。容器90には口部92を介して該容器90の胴部91内に炭酸液が充填される。そして、その後に容器90の口部92にキャップ93が取り付けられる。
【0022】
図1に示すように、飲料充填装置1は、液タンク10、液配管11、液弁12、第一加圧部20、第二加圧部30、充填ノズル40、チャンバ60、キャッピングヘッド50、真空排気部70、及び、圧力開放部80を備えている。
【0023】
液タンク10は、製品液である炭酸液を貯留するタンクである。液タンク10は耐圧性のある構造をなしている。液タンク10の内部では、下部に炭酸液の液相が貯留され、上部には炭酸液から蒸発した気相としての二酸化炭素が飽和圧力で存在している。
【0024】
液配管11は、液タンク10の炭酸液を外部に導くための配管である。液配管11の上端は液タンク10の下部に該液タンク10内と連通状態で接続されている。液配管11は液タンク10の下部から下方に向かって延びている。これにより、液配管11内には液タンク10の炭酸液が自重によって導入される。液配管11を介して容器90内に炭酸液が供給される。
【0025】
液弁12は、液配管11の中途に設けられた開閉弁である。液弁12が開状態とされることで、液配管11内の炭酸液がさらに下方に向かって流通する。液弁12が閉状態とされることで、液配管11は閉塞される。
【0026】
第一加圧部20は、炭酸液が充填された容器90内を加圧可能に構成されている。第一加圧部20は、第一ガス配管21及び第一加圧ガス弁22を有している。
第一ガス配管21は、上端が液タンク10の上部に連通状態で接続されている。これによって、第一ガス配管21内には、液タンク10内の気相分である飽和圧力の二酸化炭素が導入される。
第一加圧ガス弁22は、第一ガス配管21の中途に設けられた開閉弁である。第一加圧ガス弁22が開状態とされることで、第一ガス配管21内に二酸化炭素が流通する。第一加圧ガス弁22が閉状態とされることで、第一ガス配管21が閉塞される。
【0027】
第二加圧部30は、チャンバ60内を加圧可能に構成されている。第二加圧部30は、第二ガス配管31及び第二加圧ガス弁32を有している。
第二ガス配管31は、上端が液タンク10の上部に連通状態で接続されている。これによって、第二ガス配管31内に、第一ガス配管21同様、液タンク10内の気相分である飽和圧力の二酸化炭素が導入される。
第二加圧ガス弁32は、第二ガス配管31の中途に設けられた開閉弁である。第二加圧ガス弁32が開状態とされることで、第二ガス配管31内に二酸化炭素が流通する。第二加圧ガス弁32が閉状態とされることで、第二ガス配管31が閉塞される。
【0028】
充填ノズル40は、容器90の口部92を介して該容器90内に炭酸液を導入可能に構成されている。充填ノズル40の基端には、液配管11の下端、及び、第一ガス配管21の下端が連通状態で接続されている。これによって、充填ノズル40には、液タンク10からの炭酸液及び飽和状態の二酸化炭素がそれぞれ導入可能とされている。充填ノズル40の先端は、該充填ノズル40の内部と容器90内とが連通状態となるように容器90の口部92に対して気密・液密に接触する構成とされている。
【0029】
充填ノズル40が口部92に接触する接触位置に位置することで、該充填ノズル40を介して容器90内に炭酸液又は二酸化炭素が供給される。該充填ノズル40が、容器90の口部92から離間した退避位置に位置することで、口部92は開放状態とされる。即ち、充填ノズル40は、接触位置と退避位置との間で往復移動可能に構成されている。
【0030】
チャンバ60は、炭酸液の充填位置に移動してきた容器90を密閉状態で収容可能な構成とされている。本実施形態のチャンバ60は、上部チャンバ61及び下部チャンバ62を有している。
上部チャンバ61は、下端が開放されて上端が閉塞された有底筒状をなしている。上部チャンバ61は、充填位置の容器90を上方から覆う位置に固定されている。上部チャンバ61の上端には、第二ガス配管31の下端が連通状態で接続されている。
【0031】
下部チャンバ62は、上端が開放されて下端が閉塞された有底筒状をなしている。下部チャンバ62は上部チャンバ61の下方に位置しており、上下方向に移動可能に構成されている。即ち、下部チャンバ62は、上部チャンバ61から下方に離間してチャンバ60内を開放する下位置と、上部チャンバ61の下端に上端が接触してチャンバ60内に密閉空間を形成する下位置との間で往復移動可能とされている。
【0032】
キャッピングヘッド50は、容器90の口部92にキャップ93を取り付けるための機構である。キャッピングヘッド50は、下端に保持したキャップ93を、下方に対向する容器90の口部92に対して取り付け可能に構成されている。キャッピングヘッド50は、上部チャンバ61の上端を貫通するように配置されており、固定状態の上部チャンバ61に対して上下方向に相対移動可能に配置されている。即ち、キャッピングヘッド50は、上部チャンバ61に対して相対的に上方に位置する上位置と、上部チャンバ61に対して相対的に下方に位置してキャップ93を容器90の口部92に取り付け可能な下位置との間で往復移動可能とされている。
【0033】
真空排気部70は、密閉状態のチャンバ60内の空間である密閉空間を大気圧よりも低い圧力まで減圧可能に構成されている。チャンバ60内の気圧は、真空排気部70によって例えば5~50kPa(abs)程度の真空圧まで減圧される。
【0034】
真空排気部70は、減圧用配管71、真空ポンプ72及び真空排気弁73を有する。
減圧用配管71は、一端がチャンバ60内に連通状態で接続されている。本実施形態では、減圧用配管71の一端は、固定状態の上部チャンバ61に接続されている。
真空ポンプ72は、飲料充填装置1の稼働に伴って駆動されることで減圧用配管71の一端から他端に向かって気体を排出する。これにより、チャンバ60側に負圧を生成する。
【0035】
真空排気弁73は、減圧用配管71の中途であって真空ポンプ72よりもチャンバ60側の部分に設けられている。真空ポンプ72の駆動中において真空排気弁73を開状態とすることで、チャンバ60内の気圧が減圧される。真空排気弁73を閉状態とすることで減圧用配管71が閉塞され、チャンバ60内の圧力が維持される。
【0036】
圧力開放部80は、チャンバ60内の圧力を大気圧まで戻すことが可能なように構成されている。圧力開放部80は、開放用配管81及び開放弁82を有している。
開放用配管81の一端は、チャンバ60内に連通状態で接続されている。本実施形態では、開放用配管81の一端は、固定状態の上部チャンバ61に接続されている。
開放弁82は、開放用配管81の中途に設けられた開閉弁である。開放弁82が開状態とされることで、チャンバ60内の圧力が開放されて大気圧となる。開放弁82が閉状態とされることでチャンバ60内の圧力が維持される。
【0037】
ここで本実施形態の飲料充填装置1は、下部チャンバ62、充填ノズル40、キャッピングヘッド50、真空排気弁73、液弁12、第一加圧ガス弁22、第二加圧ガス弁32、及び、開放弁82を駆動制御するための制御装置100(
図2参照)をさらに備えている。
制御装置100は、CPU101、ROM102、RAM103、HDD104、信号受信モジュール105等を備えたコンピュータである。
【0038】
制御装置100のCPU101は作業者の操作に基づいて、HDD104等で記憶する解析プログラムを実行する。CPU101が解析プログラムを実行することにより、制御装置100には、
図3に示すように、下部チャンバ駆動部111、充填ノズル駆動部112、キャッピングヘッド駆動部113、真空排気弁駆動部114、液弁駆動部115、第一加圧ガス弁駆動部116、第二加圧ガス弁駆動部117、及び、開放弁駆動部118の各機能部が備わる。
【0039】
下部チャンバ駆動部111は、下部チャンバ62の駆動制御を行う。即ち、下部チャンバ駆動部111は、プログラムに従って下部チャンバ62のアクチュエータを制御することで、該下部チャンバ62を下位置と上位置との間で往復移動させる。
【0040】
充填ノズル駆動部112は、充填ノズル40の駆動制御を行う。即ち、充填ノズル駆動部112は、プログラムに従って充填ノズル40のアクチュエータを制御することで、該充填ノズル40を接触位置と退避位置との間で往復移動させる。
【0041】
キャッピングヘッド駆動部113は、キャッピングヘッド50の駆動制御を行う。即ち、キャッピングヘッド駆動部113は、プログラムに従ってキャッピングヘッド50のアクチュエータを制御することで、該キャッピングヘッド50を上位置と下位置との間で往復移動させる。さらにキャッピングヘッド駆動部113は、キャッピングヘッド50が下位置に位置する際に、キャッピングヘッド50のキャップ93取付用の駆動機構を制御することで、キャップ93を容器90の口部92に取り付ける動作を行わせる。
【0042】
真空排気弁駆動部114は、プログラムに応じて真空排気弁73の開閉動作を行う。
液弁駆動部115は、プログラムに応じて液弁12の開閉動作を行う。
第一加圧ガス弁駆動部116は、プログラムに応じて第一加圧ガス弁22の開閉動作を行う。
第二加圧ガス弁駆動部117は、プログラムに応じて第二加圧ガス弁32の開閉動作を行う。
開放弁駆動部118は、プログラムに応じて開放弁82の開閉動作を行う。
【0043】
次に
図4に示す本実施形態フローチャートを用いて、本実施形態の飲料充填装置1を用いた飲料充填方法について順を追って説明する。飲料充填方法は、容器供給工程S1、チャンバ密封工程S2、真空排気工程S3、充填工程S4、加圧工程S5、ノズル退避工程S6、ヘッド降下工程S7、キャッピング工程S8、チャンバ圧力開放工程S9、ヘッド上昇工程S10、チャンバ密封解除工程S11、容器排出工程S12を順に行うことで完了する。
【0044】
まず容器供給工程S1を実行する(ステップS1)。容器供給工程S1では、
図1に示すように飲料充填装置1内に容器90を供給する。ここで、飲料充填装置1は、容器90が導入される前の初期状態として各駆動機器は以下の状態にある。即ち、下部チャンバ62は下位置にあり、充填ノズル40は退避位置にあり、キャッピングヘッド50は上位置にある。そして、真空排気弁73は閉状態にあり、液弁12は閉状態にあり、第一加圧ガス弁22は閉状態にあり、第二加圧ガス弁32は閉状態にある。
【0045】
容器供給工程S1では、このような初期状態の下、互いに上下に離間した上部チャンバ61と下部チャンバ62との間に、容器移動装置(図示省略)によって容器90が口部92を上方に向けた状態で導入される。同時に、キャッピングヘッド50の下端には、容器90の口部92に後工程で取り付けられるキャップ93が導入される。
【0046】
容器供給工程S1の後にチャンバ密封工程S2を実行する(ステップS2)。チャンバ密封工程S2では、
図5に示すように、下部チャンバ駆動部111が下部チャンバ62を駆動させることで、該下部チャンバ62が下位置から上位置に変位する。これによって、上部チャンバ61の下端縁と下部チャンバ62の上端縁が密着することで、これら上部チャンバ61及び下部チャンバ62からなるチャンバ60内に密閉空間が形成される。当該密閉空間内に容器供給工程S1で供給された容器90が位置している。
【0047】
チャンバ密封工程S2の後に真空排気工程S3を実行する(ステップS3)。真空排気工程S3では、
図6に示すように真空排気弁駆動部114によって真空排気弁73が閉状態から開状態に遷移する。これにより、真空ポンプ72による負圧がチャンバ60内に及び、該チャンバ60内は大気よりも減圧された状態となる。また、本実施形態では、この際に充填ノズル40が退避位置にあるため、容器90は口部92を介してチャンバ60内と連通している。したがって、チャンバ60内が減圧されることで、同時に容器90内も減圧されていく。これによって、チャンバ60内及び容器90内は、真空ポンプ72の容量に応じた真空状態となる。
【0048】
真空排気工程S3の後に充填工程S4を実行する(ステップS4)。充填工程S4では、
図7に示すように、充填ノズル40が退避位置から接触位置に変位する。これにより、充填ノズル40の先端は容器90の口部92に接触して該容器90内と連通した状態となる。同時に充填工程S4では、液弁駆動部115によって液弁12が閉状態から開状態に遷移する。これによって、液タンク10内の炭酸液がその自重、及び、液タンク10と容器90内の圧力差によって容器90内に速やかに供給される。この際、炭酸液は容器90内の低圧により一旦ガス化するが、その後、液タンク10の自重による供給圧によって再び液化する。
【0049】
ここで本実施形態では、充填工程S4を行う際に容器90内及びチャンバ60内がともに真空圧に減圧されている。そのため、容器90の内外に圧力差が生じることはない。仮に、容器90内に炭酸液を導入すべく該容器90内のみを減圧して真空圧とした場合、容器90内の圧力に比べて容器90外の圧力が大きな状態となる。このように容器90の外圧が大きい場合には、該容器90が変形してしまう場合がある。
これに対して本実施形態では、炭酸液を容器90内に充填するに際して容器90内外の圧力差が低減されており、好ましくは該圧力差がないため、容器90に外圧が生じることはない。
【0050】
なお、充填工程S4では、上記ととともに、真空排気弁駆動部114によって真空排気弁73が開状態から閉状態に遷移し、さらに、開放弁駆動部118によって開放弁82が閉状態から開状態に遷移する。これにより、チャンバ60内の圧力は大気圧となる。このように、充填工程S4では、容器90内が真空圧から供給圧に遷移し、チャンバ60内が真空圧から大気圧に遷移する。この状態では容器90内の内圧が外圧よりも高い状態にある。
【0051】
充填工程S4の後に加圧工程S5を実行する(ステップS5)。加圧工程S5では、
図8に示すように、液弁駆動部115によって液弁12が開状態から閉状態に遷移し、開放弁駆動部118によって開放弁82が開状態から閉状態に遷移する。その上で、第一加圧ガス弁駆動部116によって第一加圧ガス弁22が閉状態から開状態に遷移し、第一加圧ガス管及び充填ノズル40を介して容器90内に飽和状態の二酸化炭素が導入される。これと同時に、第二加圧ガス弁駆動部117によって第二加圧ガス弁32が閉状態から開状態に遷移し、第二加圧ガス管を介してチャンバ60内に飽和状態の二酸化炭素が導入される。これによって、チャンバ60内及び容器90内は、いずれも二酸化炭素の飽和圧力まで加圧される。
【0052】
加圧工程S5の後に、ノズル退避工程S6を実行する(ステップS6)。ノズル退避工程S6では、
図9に示すように、第一加圧ガス弁駆動部116によって第一加圧ガス弁22が開状態から閉状態に遷移し、さらに、充填ノズル駆動部112によって充填ノズル40が接触位置から退避位置に変位する。これにより、容器90内は口部92を介してチャンバ60内に連通した状態となる。ここで、前述の加圧工程S5によってチャンバ60内及び容器90内の圧力はともに二酸化炭素の飽和圧力とされている。そのため、チャンバ60内と容器90内とで圧力差がないため、充填ノズル40を退避位置に移動させた際に容器90内に充填した炭酸液が減圧発泡してしまうことはない。
【0053】
ノズル退避工程S6の後にヘッド降下工程S7を実行する(ステップS7)。ヘッド降下工程S7では、
図10に示すように、キャッピングヘッド駆動部113によってキャッピングヘッド50が上位置から下位置に向かって移動する。同時に、第二加圧ガス弁駆動部117によって第二加圧ガス弁32が開状態から閉状態に遷移する。
【0054】
ヘッド降下工程S7の後にキャッピング工程S8を実行する(ステップS8)。キャッピング工程S8では、
図11に示すように、キャッピングヘッド駆動部113によってキャッピングヘッド50の下端に保持されたキャップ93が容器90の口部92に取り付けられる。これにより、容器90内は密閉された状態となる。
【0055】
キャッピング工程S8の後に、チャンバ圧力開放工程S9を実行する(ステップS9)。チャンバ圧力開放工程S9では、
図12に示すように、開放弁駆動部118によって開放弁82が閉状態から開状態に遷移する。これにより、チャンバ60内の圧力が大気圧に遷移する。
【0056】
チャンバ圧力開放工程S9の後に、ヘッド上昇工程S10を実行する(ステップS10)。ヘッド上昇工程S10では、
図13に示すように、キャッピングヘッド駆動部113によってキャッピングヘッド50が下位置から上位置に変位する。
【0057】
ヘッド上昇工程S10の後に、チャンバ密封解除工程S11を実行する(ステップS11)。チャンバ密封解除工程S11では、
図14に示すように、下部チャンバ駆動部111によって、下部チャンバ62が上位置から下位置に変位する。これにより、下部チャンバ62が上部チャンバ61から離間して、チャンバ60内が開放される。合わせてチャンバ60内部にあった容器90を取り出し可能な状態となる。
【0058】
チャンバ密封解除工程S11の後に容器排出工程S12を実行する(ステップS12)。容器排出工程S12では、
図15に示すように、容器90移動装置(図示省略)によって容器90がチャンバ60から排出される即ち、飲料充填装置1によって炭酸液が導入されてキャップ93が取り付けられた容器90は、飲料充填装置1から排出された後、次工程に移送される。
以上により、飲料充填方法が完了する。
【0059】
以上のように本実施形態の飲料充填装置1及び飲料充填方法によれば、容器90内に炭酸液を充填する前に、容器90内と該容器90が配置されたチャンバ60内の双方を減圧することができる。これによって、容器90内外の圧力差を低減することができるため、容器90に対して外圧が作用することを抑制できる。
【0060】
また、本実施形態では、充填ノズル40を退避位置に位置させて容器90のノズルをチャンバ60内に連通させた上でチャンバ60内を減圧する構成のため、チャンバ60内及び容器90内の双方を効率良くかつ均等に減圧することができる。また、チャンバ60内と容器90内とを別々の機構によって別途減圧する構成に比べて装置の簡易化を図ることができる。
【0061】
さらに、第一加圧部20によって炭酸液が充填された容器90内が加圧され、第二加圧部30によってチャンバ60内が加圧されることで、これら容器90内及びチャンバ60内の圧力を炭酸液の飽和圧力にすることができる。これにより、その後に充填ノズル40を退避させても、炭酸液の減圧発泡による容器90からの噴きこぼれを抑えることができる。
【0062】
そして、チャンバ60内及び容器90内が加圧された状態で該容器90の口部92にキャップ93を取り付けることで、容器90からの噴きこぼれを抑えながら適切なキャップ93取り付けを行うことができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0064】
例えば、実施形態では、第一加圧部20、第二加圧部30の圧力源を液タンク10の気相分である飽和状態の二酸化炭素とする例を説明した。これに代えて第一加圧部20、第二加圧部30の圧力源を液タンク10とは別途設置されたタンク内の圧力としてもよい。
【0065】
また、実施形態では、充填ノズル40を退避位置に位置させた状態でチャンバ60内を減圧して、該チャンバ60内及び容器90内の双方を同時に減圧する構成を説明した。これに代えて、例えば充填ノズル40を接触位置に位置させた上で充填ノズル40を介して容器90内を減圧する一方、チャンバ60内を別途減圧する構成であってもよい。これによっても、容器90への炭酸水の充填時における容器90の変形を抑制することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 飲料充填装置
10 液タンク
11 液配管
12 液弁
20 第一加圧部
21 第一ガス配管
22 第一加圧ガス弁
30 第二加圧部
31 第二ガス配管
32 第二加圧ガス弁
40 充填ノズル
60 チャンバ
61 上部チャンバ
62 下部チャンバ
50 キャッピングヘッド
70 真空排気部
71 減圧用配管
72 真空ポンプ
73 真空排気弁
80 圧力開放部
81 開放用配管
82 開放弁
90 容器
91 胴部
92 口部
93 キャップ
100 制御装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 HDD
105 信号受信モジュール
111 下部チャンバ駆動部
112 充填ノズル駆動部
113 キャッピングヘッド駆動部
114 真空排気弁駆動部
115 液弁駆動部
116 第一加圧ガス弁駆動部
117 第二加圧ガス弁駆動部
118 開放弁駆動部
S1 容器供給工程
S2 チャンバ密封工程
S3 真空排気工程
S4 充填工程
S5 加圧工程
S6 ノズル退避工程
S7 ヘッド降下工程
S8 キャッピング工程
S9 チャンバ圧力開放工程
S10 ヘッド上昇工程
S11 チャンバ密封解除工程
S12 容器排出工程