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特許7316842サイジングローラーガイド装置及びサイジング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】サイジングローラーガイド装置及びサイジング方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 39/14 20060101AFI20230721BHJP
【FI】
B21B39/14 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019099875
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020192580
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000182476
【氏名又は名称】寿産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】大原 雅史
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝明
(72)【発明者】
【氏名】川上 和悟
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】池田 晴乙
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-049407(JP,U)
【文献】特開2009-172639(JP,A)
【文献】特開2005-059078(JP,A)
【文献】中国実用新案第203991689(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延ロールの出側から送り込まれる条鋼をサイジング処理するための一対の自由回転するサイジングローラーと、
前記一対のサイジングローラーの間に設けられた、ラックが形成されたピストンと、
前記サイジングローラーのそれぞれと同心で軸支され、前記ラックと噛み合うギア形状を介して、サイジングローラーのそれぞれを偏心回転させる機構を備える、
前記一対のサイジングローラーの面間を調整する面間調整機構と、
前記ピストンの位置を検知する検知部と、
前記面間調整機構に非圧縮性流体を供給して前記ピストンを駆動する圧力源と、
前記面間調整機構と離れた位置から、前記面間を制御する制御装置とを備え、
前記面間調整機構は、
前記検知部の検知に基づく前記制御装置からの指令によりピストンを前進又は後退させることで、ラックの前進又は後退と連動してサイジングローラーを偏心回転させて、
一対のサイジングローラーの面間を調整する機構であって、
前記制御装置は、条鋼が前記一対のサイジングローラー間に誘導される前の前記面間の寸法をサイジング処理のための処理寸法よりも広くし、
条鋼の先端部分が前記一対のサイジングローラー間に誘導された後の面間の寸法を前記処理寸法とすると共に、
条鋼が前記一対のサイジングローラー間を通過中は、前記検知部の検知に基づいて前記ピストンの位置を制御することで面間の寸法を前記処理寸法に維持する
ことを特徴とするサイジングローラーガイド装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記面間調整機構のピストンの駆動を制御して、鋼が前記一対のサイジングローラー間に誘導されてから予め設定された所定時間経過後に前記面間を前記処理寸法とする請求項1に記載のサイジングローラーガイド装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記一対のサイジングローラー間に誘導された条からの反力に伴う前記ピストンの前後移動に基づくピストンの位置を検知する請求項1または2に記載のサイジングローラーガイド装置。
【請求項4】
前記面間調整機構は、
記ピストンが摺動するシリンダスリーブ内に前記非圧縮性流体が流入して前記ピストンが前進及び後退する前進側加圧室及び後退側加圧室を有する駆動シリンダと、
前記駆動シリンダと前記圧力源との間に接続されて前記非圧縮性流体の管路を開閉するサーボ弁とを備える請求項1ないし3のいずれか一項に記載のサイジングローラー装置。
【請求項5】
前記圧力源は、非圧縮性流体が貯留された貯留タンクと、貯留タンクに貯留された非圧縮性流体を送り出すポンプと、
該ポンプから前記サーボ弁へ非圧縮流体を送り出す管路と、
前記サーボ弁から前記貯留タンクへ非圧縮流体を送り戻す他の管路と
を備えると共に、
前記非圧縮流体を送り出す管路の前記圧力源と前記サーボ弁の間に、非圧縮流体を供給するためのアキュームレータを有する請求項4に記載のサイジングローラーガイド装置。
【請求項6】
請求項1に記載のサイジングローラーガイド装置を用いて、
条鋼が一対のサイジングローラー間に誘導される前の前記一対のサイジングローラーの面間の寸法をサイジング処理のための処理寸法よりも広くし、
条鋼の先端部分が前記一対のサイジングローラー間に誘導された後の面間の寸法を前記処理寸法とすると共に、
条鋼が前記一対のサイジングローラー間を通過中は、前記検知部の検知に基づいて前記ピストンの位置を制御することで面間の寸法を前記処理寸法に維持することを特徴とするサイジング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイジングローラーガイド装置及びサイジング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧延ロールで圧延された条鋼をサイジング処理するためのサイジングローラーガイド装置(サイジング装置)として、例えば、特許文献1および特許文献2が知られている。
【0003】
特許文献1には、圧延ロールの出側に設けられ、この圧延ロールから送り込まれた条鋼をサイジング処理する一対の駆動サイジングローラーを有するサイジングローラーガイド装置が開示されている。一方、特許文献2には、圧延ロールの出側に設けられ、この圧延ロールから送り込まれた条鋼をサイジング処理する一対の無駆動サイジングローラーと、一対の無駆動サイジングローラーの出側に配置され、一対の無駆動サイジングローラーでサイジング処理された圧延材を引き出す一対のピンチローラーと、を有するサイジングローラーガイド装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-9516号公報
【文献】特開2001-9517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のサイジングローラーガイド装置では、一対の駆動サイジングローラーを駆動するための駆動機構が必要となるため、サイジングローラーガイド装置の大型化を招く。一方、特許文献2のサイジングローラーガイド装置では、特許文献1のような駆動機構を設ける必要がないが、その代わりに、圧延材を引き出すために一対のピンチローラーを設ける必要があるため、やはり、サイジングローラーガイド装置の大型化を招く。近年では、サイジングミル(精密圧延機)により高寸法精度を確保することが主流となっている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、小型化を図ることができ、かつ、優れた寸法精度でサイジング処理を行うことのできるサイジングローラーガイド装置および条鋼のサイジング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によるサイジングローラーガイド装置は、圧延ロールの出側に設けられ、前記圧延ロールから送り込まれた条鋼をサイジング処理する一対のサイジングローラーと、
前記一対のサイジングローラーの面間を調整する面間調整機構と、
前記面間調整機構に非圧縮性流体を供給して前記面間調整機構を駆動する圧力源と、
前記面間調整機構と離れた位置から、前記面間を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記面間調整機構の駆動を制御して、前記条鋼が前記一対のサイジングローラー間に誘導される前の前記面間の寸法を前記サイジング処理のための処理寸法よりも広くし、前記条鋼が前記一対のサイジングローラー間を通過中に前記面間の寸法を前記処理寸法とすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明によるサイジングローラーガイド装置では、前記制御装置は、前記面間調整機構の駆動を制御して、前記条鋼が前記一対のサイジングローラー間に誘導されてから所定時間経過後に前記面間を前記処理寸法とすることが望ましい。
【0009】
また、本発明によるサイジングローラーガイド装置では、前記一対のサイジングローラー間に誘導された前記条鋼の動作を検知する検知部を備えることが望ましい。
【0010】
また、本発明によるサイジングローラーガイド装置では、前記面間調整機構は、
前記制御装置からの指令に連動して前進及び後退するピストンと、
前記ピストンが摺動するシリンダスリーブ内に前記非圧縮性流体が流入して前記ピストンが前進及び後退する前進側加圧室及び後退側加圧室を有する駆動シリンダと、
前記駆動シリンダと前記圧力源との間に接続されて前記非圧縮性流体の管路を開閉するサーボ弁とを備えることが望ましい。
【0011】
また、本発明によるサイジングローラーガイド装置では、前記面間調整機構は、さらに、前記圧力源と前記サーボ弁との間に配置されたアキュームレータを備えることが望ましい。
【0012】
また、本発明によるサイジング方法は、条鋼が一対のサイジングローラー間に誘導される前の前記一対のサイジングローラーの面間の寸法をサイジング処理のための処理寸法よりも広くし、前記条鋼が前記一対のサイジングローラー間を通過中に前記面間を前記処理寸法とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるサイジングローラーガイド装置によれば、寸法不良不要部である条鋼の先端部をサイジング処理することなく一対のサイジングローラー間を通過させ、その後、一対のサイジングローラーの面間を閉じて条鋼のサイジング処理を開始することができる。そのため、一対のサイジングローラー間への条鋼の誘導が容易となり、それに伴って、一対のサイジングローラーの面間の寸法の制御も容易となる。そのため、無駆動のサイジングローラーによっても、高速な圧延材の寸法変化を拘束する高速フィードバック制御により、高寸法精度のサイジング処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態におけるサイジングローラーガイド装置の全体図である。
図2図1に示すサイジングローラーガイド装置の平面図である。
図3図1に示すサイジングローラーガイド装置の分解図である。
図4】従来設備及び上記サイジングローラーガイド装置での圧延材の試験データである。
図5】従来設備のみでの圧延材の試験データである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照しつつ、本発明によるサイジングローラーガイド装置およびサイジング方法を説明する。図1は、サイジングローラーガイド装置の全体図、図2は、サイジングローラーガイド装置の平面図、図3は、サイジングローラーガイド装置の分解図である。
【0016】
図1ないし図3に示すサイジングローラーガイド装置1は、圧延ロールの出側に設置されており、同図中左側が圧延ロールの出側に位置する上流側となっている。サイジングローラーガイド装置1は、圧延ロールから送り出された条鋼S0をサイジング処理する一対のサイジングローラー11,11を備えた第1ローラーガイド10と、一対のサイジングローラー11,11の面間を調整する面間調整機構2と、面間調整機構2に非圧縮性流体を供給する圧力源3と、面間調整機構2と離れた位置から一対のサイジングローラー11,11の面間を制御する制御装置4とを備えている。
【0017】
サイジングローラーガイド装置1は、さらに、第1ローラーガイド10の下流側に位置し、一対のサポートローラー71,71を備えた第2ローラーガイド70と、第1ローラーガイド10および第2ローラーガイド70の内側に設置された管状のガイドスリーブ8とを備えている。
【0018】
このようなサイジングローラーガイド装置1は、圧延ロールから送り出された条鋼S0を一対のサイジングローラー11,11でサイジング処理して圧延材S1を形成し、この圧延材S1をガイドスリーブ8内および一対のサポートローラー71,71間を通過させて装置の下流側に送り出す構成となっている。
【0019】
圧力源3は、非圧縮性流体が貯留された貯留タンク31と、貯留タンク31に貯留された非圧縮性流体を送り出すポンプ32と、を有する。また、貯留タンク31には管路L1が接続されており、ポンプ32には管路L2が接続されている。そして、管路L2を介してポンプ32から非圧縮性流体が送り出され、ポンプ32が送り出した非圧縮性流体が管路L1を介して貯留タンク31に送り戻される。ポンプ32の駆動は、制御装置4によって制御される。
【0020】
また、第1ローラーガイド10は、ガイドボックス12と、ガイドボックス12に設けられた一対のサイジングローラー11,11と、ガイドボックス12に設けられ、一対のサイジングローラー11,11の回転の中心軸となる一対のローラーピン13,13と、一対のローラーピン13,13の上部に設けられた一対のギアホイール14,14と、一対のサイジングローラー11,11の上流側に位置し、圧延ロールから送り出された条鋼S0を受けて一対のサイジングローラー11,11間に送り込むデリバリーガイド15と、一対のサイジングローラー11,11を冷却するための冷却水を供給する冷却水供給装置16と、を備えている。
【0021】
各サイジングローラー11,11は、自由回転する無駆動ローラーである。そのため、サイジングローラーガイド装置1は、各サイジングローラー11,11を駆動するための駆動機構を備えていない。駆動機構を備えていないため、サイジングローラーガイド装置1の小型化を図ることができる。また、各ローラーピン13,13は、所定の寸法分偏心しており、ガイドボックス12に設けられた上下端の図示しない軸受部に回転自在に軸支されている。各ギアホイール14,14の図示しない軸部は、各ローラーピン13,13の図示しない軸受部と一体的に形成され、この軸部と軸受部とは同心である。
【0022】
面間調整機構2は、一対のサイジングローラー11,11の面間のギャップを調整する駆動シリンダ21を有する。駆動シリンダ21としては、油圧シリンダが好ましく、この場合の非圧縮性流体は、作動油となる(以下、非圧縮性流体を「作動油」ともいう。)。
【0023】
駆動シリンダ21は、ガイドボックス12に設置されている。駆動シリンダ21は、一対のサイジングローラー11の面間の動きに連動して前後移動するピストン211と、ピストン211が摺動するシリンダスリーブ214とを備えている。また、シリンダスリーブ214の内部は、ピストン211が突出する前進側加圧室212と、ピストン211が引っ込む後退側加圧室213とに分けられている。そして、前進側加圧室212には管路Lhが接続されており、後退側加圧室213には管路Lrが接続されている。
【0024】
ピストン211の先端には、両側面にラックが形成されたラックギア211aが備えられている。ラックギア211aは、一対のギアホイール14,14の間に設けられており、これら一対のギアホイール14,14に対して、条鋼S0の進行方向と平行して前後移動可能にラックが噛み合っている。ラックギア211aが条鋼S0の進行方向と同方向に前進又は逆方向に後退すると、このラックギア211aの移動に伴ってギアホイール14,14も外向き又は内向きに回転する。そして、ギアホイール14,14の回転に伴ってローラーピン13,13が偏心回転し、このローラーピン13,13の移動に伴って一対のサイジングローラー11,11の面間が広がったり狭まったりする。
【0025】
面間調整機構2は、さらに、ピストン211の前後移動や、前後移動に基づくピストン211の位置を検知する変位センサー23と、後退側加圧室213の内圧を検知する圧力センサー24とを備えている。変位センサー23の構成は、特に限定されず、例えば、ピストン211の後端からこのピストン211の内側に設けられた筒状部に挿入されたプローブロッドと、ピストン211の後端付近かつプローブロッドの両脇に位置するマグネットと、プローブロッドとマグネットとの相対位置からピストンの移動による変化量を検知する変換部とを備えた構成とすることができる。
【0026】
例えば、一対のサイジングローラー11,11間に条鋼S0が誘導されると、条鋼S0からの反力によって一対のサイジングローラー11,11の面間が広がり、それに伴ってピストン211が後退する。ピストン211の後退は、変位センサー23によって直接検知することができ、また、ピストン211の後退により上昇する後退側加圧室213の内圧に基づいて圧力センサー24によって間接的に検知することもできる。つまり、変位センサー23および圧力センサー24は、それぞれ、一対のサイジングローラー11,11間に誘導された条鋼S0の動作を検知する検知部9としても機能する。
【0027】
ただし、検知部9の構成としては、特に限定されず、例えば、変位センサー23および圧力センサー24の一方を省略してもよいし、変位センサー23および圧力センサー24とは異なる方法で検知するものであってもよい。
検知部9とは別に、一対のサイジングローラー11,11間に誘導される前に条鋼S0の存在を検知する光電子センサーを有していてもよい。制御装置4は、光電子センサーから出力される条鋼S0の存在に関する検知信号(フィードバック信号)を受け、上記検知信号に基づいて変位センサー23や圧力センサー24による検知を制御してもよい。
【0028】
面間調整機構2は、さらに、駆動シリンダ21に接続された管路Lh、Lrと、圧力源3に接続された管路L1、L2との間に設置され、これらを接続すると共に、これらの接続状態を切り替えるサーボ弁22を備えている。サーボ弁22を用いることにより、高応答な動特性と、連続信号に対する優れた追従性を発揮でき、高い制御精度と分解能を得ることができる。
【0029】
サーボ弁22は、管路L2、Lrを接続すると共に管路L1、Lhを接続し、ポンプ32から退側加圧室213内に作動油を供給すると共に前進側加圧室212内の作動油を貯留タンク31に向けて排出してピストン211を前方に移動させるピストン前進状態と、管路L2、Lhを接続すると共に管路L1、Lrを接続し、ポンプ32から前進側加圧室212内に作動油を供給すると共に退側加圧室213内の作動油を貯留タンク31に向けて排出してピストン211を後方に移動させるピストン後退状態とに切り替え可能である。このようなサーボ弁22の駆動は、制御装置4によって制御される。なお、管路Lh、Lrを閉じて、前進側加圧室212および退側加圧室213を密閉することによりピストン211をその場で停止させるピストン停止状態に切り替えてもよい。
【0030】
面間調整機構2は、さらに、管路L2の途中に設置されたアキュームレータ25を備えている。アキュームレータ25によって、ポンプ32から供給しきれない作動油を供給することができ、シリンダスリーブ214内の作動油の流量を急上昇させることができる。そのため、アキュームレータ25を設置することで、ピストン211をさらに高速動作させることができる。このようなアキュームレータ25としては、特に限定されないが、例えば、プラダ形アキュームレータを用いることができる。つまり、アキュームレータ25は、図示しないが、本体と、本体の一端で管路L2に接続され、作動油が出入りする給排油弁と、アキュームレータ本体の内側に配置され所定の気体を封入するプラダと、本体の他端でプラダが封入する気体が供給される給気弁とで構成されている。
【0031】
ただし、ポンプ32によってピストン211を高速動作させるのに十分な流量の作動油をシリンダスリーブ214内に供給することができれば、アキュームレータ25は、省略してもよい。
【0032】
制御装置4は、検知部9すなわち変位センサー23または圧力センサー24を受け、指令信号との偏差に基づいてサーボ弁22の駆動を制御する。これにより、一対のサイジングローラー11,11の面間の実寸法が指令信号で指定された寸法に調整される。なお、高精度のサイジングの実現には、変位センサー23による位置制御が好ましい。
【0033】
また、制御装置4は、面間調整機構2の駆動、特にサーボ弁22の駆動を制御して、条鋼S0が一対のサイジングローラー11,11間に誘導される前の一対のサイジングローラー11,11の面間の寸法をサイジング処理のための処理寸法よりも広くし、条鋼S0が一対のサイジングローラー11,11間を通過中に一対のサイジングローラー11,11の面間を処理寸法とする。
【0034】
このような制御によれば、一対のサイジングローラー11,11の面間が処理寸法よりも広い状態で条鋼S0の先端部が一対のサイジングローラー11,11間に供給される。そのため、条鋼S0の先端部をサイジング処理することなく(サイジング処理時に加わる力よりも小さい力が加わり得る状態で)一対のサイジングローラー11,11間を通過させることができる。よって、条鋼S0を一対のサイジングローラー11,11間へスムーズに誘導することができる。
【0035】
ここで、条鋼S0の先端部は、寸法不良不要部として後に切断等によって除去されるためサイジング処理の必要がない部分である。そのため、上述のように条鋼S0の先端部を一対のサイジングローラー11,11によってサイジング処理しなくても特段の問題はない。そして、一対のサイジングローラー11,11間に条鋼S0が誘導された後、つまり、一対のサイジングローラー11,11間を条鋼S0が通過中に、サーボ弁22の駆動によって一対のサイジングローラー11,11の面間を処理寸法まで閉じることで、条鋼S0のサイジング処理が開始される。
【0036】
このように、条鋼S0の先端部をサイジング処理せずに、条鋼S0の途中からサイジング処理を開始することにより、一対のサイジングローラー11,11間への条鋼S0の誘導が容易となり、それに伴って、一対のサイジングローラー11,11の面間の寸法の制御も容易となる。そのため、無駆動のサイジングローラー11,11によっても高寸法精度サイジング圧延が可能となる。
【0037】
なお、条鋼S0が一対のサイジングローラー11,11間に誘導される前の一対のサイジングローラー11,11の面間の寸法としては、特に限定されず、処理寸法等によって異なるが、例えば、処理寸法よりも2mm~10mm程度広い寸法であることが好ましく、4mm~5mm程度広い寸法であることがより好ましい。このような寸法とすることにより、一対のサイジングローラー11,11の面間が条鋼S0に対して十分に広くなり、条鋼S0の先端部を一対のサイジングローラー11,11間へ誘導し易くなると共に、処理寸法との差を十分に小さくすることができ、一対のサイジングローラー11,11の面間を処理寸法とするのに必要な時間がより短くなる。そのため、条鋼S0の先端部が一対のサイジングローラー11,11間を通過した後、より迅速に条鋼S0のサイジング処理を開始することができる。
【0038】
このような制御方法に対して、例えば、一対のサイジングローラー11,11間に条鋼S0が誘導される前から一対のサイジングローラー11,11の面間を処理寸法としておくと、条鋼S0がサイジングローラー11,11に供給される際に、条鋼S0の先端が一対のサイジングローラー11,11の面間に過度な力で衝突し、当該力によって、サイジングローラー11,11の面間が処理寸法からずれてしまう。ずれた面間の寸法を再び処理寸法まで戻すのに時間がかかり、条鋼S0に寸法不良の部分が生じ易くなる。つまり、条鋼S0の長さ方向で寸法精度にムラが生じ易くなる。
【0039】
また、制御装置4は、一対のサイジングローラー11,11間に条鋼S0が誘導されてから所定時間経過後に一対のサイジングローラー11,11の面間が処理寸法に閉じるようにサーボ弁22の駆動を制御する。これにより、複数の条鋼S0に対して、サイジング処理を同条件で繰り返し行うことができる。そのため、定品質の圧延材S1を製造することができる。
【実施例
【0040】
ここで、従来設備(V-H方式タンデム圧延)及び本発明によるサイジングローラーガイド装置での圧延試験(実施例)、並びに従来設備(V-H方式タンデム圧延)のみでの圧延試験(比較例)について説明する。
【0041】
<試験条件(共通)>
圧延材種 :S45C
圧延サイズ:φ18
【0042】
<試験内容>
圧延材の最先端から所定距離かつ最後端までの所定距離における圧延材のオーバル(圧延により膨らみやすい部分)及び天地(圧延により膨らみにくい部分)の変化量を測定した。
【0043】
<実施例及び比較例の考察>
図4に示すとおり、サイジングローラーガイド装置1では、圧延材の最先端から2000mmの地点に至るまでに高速で圧下することで、その後圧延材の最後端に至るまで上記圧延サイズに対してオーバルの変化量を公差範囲に留めることができた。すなわち、圧延材S1の製造歩留り率向上に繋がることが検証できた。
一方、図5に示すとおり、従来設備のみでは、JIS許容差に収まるが、上記圧延サイズに対してオーバルが約+0.9~+0.5mmと公差範囲を外れ、製品全長550~620m中、先端約3m、後端約5mの計約1.3%は、公差外不良部として製品とすることができなかった。
【符号の説明】
【0044】
1 サイジングローラーガイド装置
10 第1ローラーガイド
11 サイジングローラー
12 ガイドボックス
13 ローラーピン
14 ギアホイール
15 デリバリーガイド
16 冷却水供給装置
2 面間調整機構
21 駆動シリンダ
211 ピストン
211a ラックギア
212 前進側加圧室
213 退側加圧室
214 シリンダスリーブ
22 サーボ弁
23 変位センサー
24 圧力センサー
25 アキュームレータ
3 圧力源
30 第2ローラーガイド
31 貯留タンク
32 ポンプ
4 制御装置
70 第2ローラーガイド
71 サポートローラー
8 ガイドスリーブ
9 検知部
L1 管路
L2 管路
Lh 管路
Lr 管路
S0 条鋼
S1 圧延材

図1
図2
図3
図4
図5