(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】フローヒータを有するホットドリンク調製装置
(51)【国際特許分類】
A47J 31/54 20060101AFI20230721BHJP
B67D 1/08 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A47J31/54 115
B67D1/08 A
A47J31/54 100
(21)【出願番号】P 2019112181
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】10 2018 114 576.4
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512218854
【氏名又は名称】フランケ・カフェーマシーネン・アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】FRANKE KAFFEEMASCHINEN AG
【住所又は居所原語表記】FRANKE‐STRASSE 9, 4663 AARBURG, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ジモン・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ゼルゲ・ヴェヒター
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/170205(WO,A1)
【文献】特表2013-530780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00~31/60
B67D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの熱湯発生器(10)と、前記熱湯発生器(10)から熱湯を供給し得る抽出装置(50)とを有し、前記熱湯発生器(10)はフローヒータであるように構成した、淹れたてのホットドリンクを調製するための装置であって、
前記フローヒータ(10)が所定量の熱湯を調製するためにスイッチオンされると共に、すでに、当該量の熱湯が完全に流出しきる直前にスイッチオフされ、こうして、前記フローヒータ(10)の出口における当該熱湯
の温度(122)が当該熱湯調製終了時に
向かって低下し始めるように前記フローヒータ(10)を制御するための制御装置(60)が設けられ、
貫流通過方向において前記フローヒータ(10)の後方に配置され、前記フローヒータ(10)を貫流通過する水が、前記抽出装置(50)の方向へ誘導される代わりに、直接に排水管又は排水収集タンクへ誘導され得る制御式方向制御弁として形成されたドレン弁(16)を有し、
前記制御装置は、
熱湯調製の終了後、フローヒータ(10)と抽出装置(50)との間の一つの方向制御弁(15b)を閉鎖し、前記ドレン弁(16)を開放し、フローヒータ(10)がスイッチオフされている際に、再度前記フローヒータ(10)を貫流する水の流れを活性化して、前記フローヒータ(10)を冷却するように形成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御装置(60)は、前記フローヒータ(10)の予熱相(126、126´)の間、前記ドレン弁(16)を開放して、前記フローヒータ(10)から到来する当該水を前記排水管又は前記排水収集タンクへ誘導するように形成されている構成の、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記予熱相は、その都度のホットドリンクの調製のたび毎に、実施されるように構成した、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記制御装置(60)は、所定の当該熱湯量の85%~95%が前記フローヒータ(10)を貫流通過した後に、当該
フローヒータ(10)のヒータ(114)のスイッチオフが行われるようにプログラミングされている構成の、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記フローヒータ(10)は円筒状の内部本体(102)及び該本体を包囲する外側ジャケット(108)を有し、前記内部本体(102)
の周面(104)と前記ジャケット(108)
の内側面との間に、加熱さるべき水のための、螺旋状に延びる流路(106)が形成されているように構成した、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記円筒状の内部本体(102)の内部にその中心軸を包囲して螺旋状に延びる発熱体として形成された電熱線(114)を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
供給管(30)から前記フローヒータ(10)へ水を送出する給水ポンプ(11)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
フローヒータ(10)によって熱湯が発生させられて、抽出装置(50)へ供給されるように構成した、淹れたてのホットドリンクを調製するための方法であって、
前記フローヒータ(10)は、所定量の熱湯を調製するためにスイッチオンされると共に、すでに、当該量の熱湯が完全に流出しきる直前にスイッチオフされ、こうして、前記フローヒータ(10)の出口における当該熱湯
の温度(122)が当該熱湯調製終了時に
向かって低下し始め、
熱湯調製の終了後、フローヒータ(10)がスイッチオフされている際に、再度前記フローヒータを貫流する水の流れが活性化されて、前記フローヒータが冷却され、かつ、その際、当該水はドレン弁(16)を介して、前記抽出装置(50)の方向へ誘導される代わりに、直接に排水管又は排水収集タンクへ誘導されるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記フローヒータ(10)の予熱相(126、126´)の間、前記フローヒータ(10)を貫流通過する水がドレン弁(16)を介して、前記抽出装置(50)の方向へ誘導される代わりに、直接に排水管又は排水収集タンクへ誘導されるように構成した、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの熱湯発生器と、前記熱湯発生器から熱湯を供給することのできる抽出装置とを有する、淹れたてのホットドリンクを調製するための装置であって、前記熱湯発生器はフローヒータであるように構成した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、ボタンプッシュに応じて一人分の淹れたてのコーヒー飲料を調製する全自動コーヒーメーカが知られている。そのために必要な熱湯は、通例、熱湯ボイラ内に用意されているために、長い加熱時間は不要である。時として、当該飲料注文の時点に水がフローヒータによって加熱されるように構成したコーヒーメーカも提案された。例えば、文献独国特許出願公開第102008028031号明細書は、水がフローヒータによって加熱されるタイプのコーヒーカプセル用コーヒーメーカを開示している。
【0003】
また、全自動コーヒーメーカの場合、当該熱湯発生器のデスケーリングを時折実施しなければならないということも知られている。そのため、国際公開第2013/023963号又は欧州特許出願公開第2705784号明細書に開示されているような解決方法が知られており、その場合、水溶性デスケーリング剤を満たしたカートリッジが挿設され若しくは、該カートリッジがデスケーリングプロセスを実施するために当該装置に接続される。スイス国特許第709738号明細書の場合には、体積可変式容器内に収容されたデスケーリング液を擁したデスケーリング剤適用装置が当該コーヒーメーカに接続される。
【0004】
熱湯を調製するためにフローヒータが使用される場合の短所は、通例長い加熱時間が要されると共に、とりわけ、急速な加熱のために高い熱出力による運転が行われる場合に、強度なスケーリング発生傾向が見られることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102008028031号明細書
【文献】国際公開第2013/023963号
【文献】欧州特許出願公開第2705784号明細書
【文献】スイス国特許第709738号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2561778号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、当該フローヒータが急速にスケーリング沈着を生ずることのないように構成した、フローヒータを有するホットドリンク調製装置を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、請求項1に記載の特徴によって達成される。好適な実施態様は従属項に記述したとおりである。淹れたてのホットドリンクを調製するための方法は請求項9に開示される。
【0008】
本発明は、とりわけ飲料調製終了後に当該フローヒータ内に残存している熱湯が当該フローヒータの当該石灰沈着に決定的な役割を果たすとの知見を基礎としている。したがって、本発明は、当該フローヒータを飲料調製後に可能な限り迅速に冷却して温度低下させるための対策を備えている。当該フローヒータの当該制御は、一つの制御装置を介して行われる。当該制御装置は、本発明により、次のように―つまり、所定量の熱湯を調製するために当該フローヒータをスイッチオンするが、ただし、すでに当該量の熱湯が完全に流出しきる直前に再びスイッチオフするように―形成されている。したがって、当該フローヒータ出口における当該熱湯の当該温度は、熱湯調製終了時にすでに低下し始める。熱湯調製終了後に当該水流が停止されると、当該フローヒータ内及びそれに続く導管内に残っている残留水はすでに、当該飲料調製中の温度よりも低温となっているために、当該水からの石灰沈着は低減する。
【0009】
好ましくは、貫流通過方向において当該フローヒータの後方に配置されて、制御式方向制御弁として形成されたドレン弁が設けられており、該ドレン弁を介して、当該フローヒータを貫流通過する水は、当該抽出装置の方向へ誘導される代わりに、直接に排水管又は排水収集タンクへと誘導されることができる。当該ドレン弁は、当該フローヒータの予熱相の間、開放されて、当該フローヒータから到来する水は当該排水管又は当該排水収集タンクへと誘導されることができる。この予熱相は、好ましくは、その都度のホットドリンクの調製のたび毎に実施され、つまり換言すれば、当該フローヒータは、一回の製品調製の間だけ運転され、その後スイッチオフされるということである。
【0010】
加えてさらに、フローヒータと抽出装置との間には、一つの方向制御弁が設けられている。当該フローヒータをさらに後冷却するために、当該制御装置は、熱湯調製の終了後、当該方向制御弁を閉鎖し、当該ドレン弁を開放し、かつ、フローヒータがスイッチオフされている際に、再度、当該フローヒータを貫流通過する水流を活性化するように形成されている。
【0011】
当該ヒータのスイッチオフは、好ましくは、当該飲料調製のためにプリセットされた当該水量の85%~95%が当該フローヒータを貫流通過した後に行われる。この場合、当該体積測定は、当該供給管に配された流量計によって行われる。当該水流の残りの5%~15%の軽度の冷えは、本願発明人の一連の検査結果によれば、当該飲料品質を損なうことはない。一方において、そのうちの少なくとも大半は、いずれにせよ、残留水として当該フローヒータと流出口との間に残存し、続いて、配水系へ排出ないし吐き出される。軽度に冷えた“熱湯”の残りの僅か数%は、消費者にとって、当該完成飲料の当該温度の点でもその風味の点でも感知不能である。当該抽出さるべき材料―例えば、コーヒー粉又は茶葉―の大半の透水性成分は、当該ヒータがスイッチオフされる前に貫流通過した当該熱湯によってすでに吸収されてしまっていることから、最後の5%~10%の当該水は、完成した飲料中に含まれている当該成分にもはやなんら影響することはない。
【0012】
本発明の範囲において、フローヒータとして、好ましくは、カートリッジヒータが使用され、該ヒータは、円筒状の内部本体及び該本体を包囲する外側ジャケットを有し、当該内部本体の当該周面と当該ジャケットの当該内側面との間に、加熱さるべき水のための、螺旋状に延びる流路が形成されている。この種のカートリッジヒータは特にコンパクトであり、僅かな熱量によって特に速やかな加熱を可能にする。
【0013】
こうした構造形態において、当該電気ヒータは、当該円筒状の内部本体の内部にその中心軸を包囲して螺旋状に延びる加熱コイルとして形成されている。とりわけ、当該加熱コイルは、軸方向に配置された耐熱コア例えばセラミックコアの周囲に巻き付けられていてよい。当該加熱コイルと当該内部本体の当該外皮との間の当該中間スペースには、一方で電気的絶縁を行い、他方で熱伝導を行う、例えば酸化マグネシウム又はその他の酸化物粉末等の粉末状材料が充填されていてよい。
【0014】
できるだけコンスタントな流量を保証すべく、さらに、上水供給管から当該フローヒータへ上水を送出する給水ポンプが設けられてよい。この場合、当該給水ポンプの当該ポンプ出力は制御可能ないし当該制御装置を介して制御可能であってよい。したがって、当該フローヒータを貫流通過する水流の活性化は当該ポンプのスイッチオンによって行われる(当該ポンプの下流に配された複数の方向制御弁のうちの一つは、通常、常に開放されている)。
【0015】
本発明のその他の利点及び特性は、図面を参照して行われる、以下に述べる実施例の説明から判明するとおりである。ここで、各図は以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】二つのフローヒータ及び当該フローヒータを自動デスケーリングするための一つの統合式デスケーリングシステムを有する全自動飲料調製装置における水のフローチャートを示す図である。
【
図2】本発明の範囲において使用されるフローヒータの断面図である。
【
図3】飲料調製中のフロー流量及び水温の時間経過の測定図である。
【
図4】温度推移を拡大して示したさらに別の測定図である。
【
図5】第二の実施例におけるフローヒータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、いわば水フローチャートの形で、例えば全自動コーヒーメーカに使用されるタイプのホットドリンク調製装置の構造が示されている。ホットドリンクを調製するための熱湯の発生にはフローヒータ10が使用される。水の流れ方向において、フローヒータ10の上流には、一本の導管13を介してフローヒータ10に接続されている給水ポンプ11並びに流量計12が位置している。フローヒータ10の熱湯出口には、一本の導管14を介して、複数の
方向制御弁15a、15b、15c及び16が接続されている。さらに、フローヒータ10の当該入り口及び出口には、それぞれ一つの温度センサ17、18が配置されている。
【0018】
当該装置は、熱湯発生のために設けられたフローヒータ10に加えてさらに、同じくホットドリンクの調製―例えば、ミルク又はその他の飲料の再加熱又は泡立て―に使用することのできる蒸気を発生させるために使用される―ただし、ここではこれ以上触れない―一つの第二のフローヒータ20を有している。ここで蒸気の発生に使用される第二のフローヒータ20も、本発明の趣旨において、同じく、広義の熱湯発生器として理解される。
【0019】
第二のフローヒータ20の上流には、同じく、一本の導管23を介してフローヒータ20の当該流入口に接続されている給水ポンプ21並びに流量計22が位置している。フローヒータ20の当該熱湯ないし蒸気出口には、一本の導管24を介して、異なった方向制御弁25a、25b、26が接続されている。フローヒータ10の場合と同様に、フローヒータ20の当該入り口及び出口にも、それぞれ一つの温度センサ27、28が配置されており、それらの機能については、同じく、以下において説明する。
【0020】
双方の流量計12、22は、本実施例において、それぞれ給水ポンプ11、21の前に配置されている。ただし、流量計12、22を、流れ方向において、給水ポンプ11、21の後に配置することも、同じく可能である。吸込み側において、双方の給水ポンプ11、21は、一本の上水供給管30及び一つのオプショナルな切替弁31を介して、当該公共供給網の上水接続32又は当該装置に設けられた給水タンク33に接続されている。公共供給網32に接続される場合には、当該導管に、遮断弁34、逆止め弁35並びに減圧弁36が設けられている。
【0021】
給水ポンプ11は、接続された上水供給管30から、導管13を介して、フローヒータ10へ上水を送出し、当該上水は、同所から、方向制御弁15bを介して、抽出ユニット50へ送出されることができる。抽出ユニット50は、それ自体として公知の方法で、供給された当該熱湯を沸騰させ又は当該抽出ユニットを予熱することのできるヒータ51と、小分けされた挽きたてのコーヒー粉末53が満たされる抽出チャンバ52とを含んでいる。本発明の範囲において使用することのできる抽出ユニットは、例えば、欧州特許出願公開第2561778号明細書に開示されており、不要な反復を避けるため、該文献の開示内容はすべて本引証によって本願明細書に引用されることとする。
【0022】
抽出ユニット50は、あらかじめ当該全自動コーヒーメーカのコーヒーミルで小分けされて挽かれたばかりの、小分けされた当該分量のコーヒー粉末を満たすために開放可能に設計されている。さらに、当該抽出プロセス完了後に抽出ユニットが開放されると、残っているコーヒー出し殻を出し殻容器に排出することができる。当該抽出ユニットは、さらに、満たされた当該コーヒー粉末を当該抽出チャンバ内に配された抽出ふるいに向かって圧縮する可動式ピストンを有している(不図示である)。当該ピストンが後退復帰した後、こうして圧縮された当該コーヒー粉末に、ポンプ11によって加圧されたフローヒータ10からの抽出水を貫流通過させることができる。抽出完了した当該コーヒーは、抽出ユニット50から、一本の送り導管を介して、コーヒー飲料用の注出口55へ誘導される。
方向制御弁15aを介して、熱湯を、例えば、洗浄目的のため又はインスタント飲料を調製するために、注出口55へ直接に誘導することも可能である。さらにまた、熱湯を、方向制御弁15cを介して、例えば、紅茶を調製するために使用される別の熱湯注出口56へ誘導することも可能である。
【0023】
ここに示した抽出ユニット50に代えて、いわゆるコーヒーカプセル又はコーヒーポッドを収容するために形成されている抽出装置も使用可能である。
【0024】
第二のフローヒータ20によって発生させられた蒸気は、方向制御弁25aを介して、例えば、ミルクを発泡させるために、いわゆる蒸気ランス57へ誘導可能であり、蒸気はさらにまた、方向制御弁25bを介して、例えば、別の導管(不図示である)を介してもたらされるミルクを温め又は発泡させるために、注出口55へ誘導されることも可能である。
【0025】
方向制御弁として形成されたドレン弁16及び26は、フローヒータ10ないしフローヒータ20の当該熱湯出口を、いわゆるドレン系、したがって、排水導管又は排水用の排水収集タンクに接続するために使用される。これは、とりわけ、当該付属のフローヒータ10、20のデスケーリングのために、フローヒータ10、20を貫流通過させられるデスケーリング液を排出するために不可欠である。
【0026】
ただし、双方のドレン弁16、26は、フローヒータ10、20の予熱相において同所を貫流する当該水を当該排水管又は当該排水収集タンクへ誘導するためにも使用される。
こうして、加熱された水ないし水蒸気は、所定の最低温度に達した後に初めて、当該出口の方向へ誘導されるようにすることが保証される。他方、当該予熱プロセスの間にまだ十分に温まっていない水は排水として排出され、したがって、注出口55、56、57のいずれにも達することはできない。
【0027】
本実施例において示した当該自動ホットドリンク調製装置は、さらに、オプショナルに一体組み込みされたデスケーリングシステム40を有する。デスケーリングシステム40は、一つの混合タンク41、一つのデスケーリング濃縮液貯蔵タンク42及び一つの配合ポンプ43を含んでいる。給水ポンプ11、21の吸込み側に位置する共通の上水供給管30は、デスケーリングのために混合タンク41からデスケーリング剤溶液を吸引して、フローヒータ10、20へ送出するために、切替弁44を介して、混合タンク41の底にまで達する一本の吸引管49と接続可能である。当該デスケーリング剤溶液は、あらかじめ配合ポンプ43を介して適量の当該デスケーリング濃縮液が供給管48を介して当該混合タンクへ送出されることにより、混合タンク41内でブレンドされて生成される。
【0028】
吐出し側でポンプ11に接続されている導管13と接続された方向制御弁45を介して、給水ポンプ11により、新鮮水が導管47を介して、当該混合タンクに供給されることができる。この場合、供給された当該新鮮水の当該量は、流量計12によって測定することができるため、所定量の水が混合タンク41に満たされた後、弁45は閉鎖可能である。
【0029】
当該デスケーリング剤溶液が混合タンク41内でブレンドされて生成された後、弁44を介して、導管30が吸引管49と接続可能である。続いて、ドレン弁16が開放され、給水ポンプ11を介して、当該デスケーリング剤溶液が混合タンク41からフローヒータ10を貫流して送出される。続いて、切替弁44が再び運転ポジションに復帰させられ、同所で、導管30は公共上水接続32又は給水タンク33と接続され、給水ポンプ11によって、フローヒータ10が再び、新鮮水で通過洗浄される。逆止め弁46により、場合によりなお導管30内に残存しているデスケーリング剤溶液が新鮮水タンク33内へ逆流することが防止される。同様にして、フローヒータ20も、給水ポンプ21を介してデスケーリング剤溶液が混合タンク41からフローヒータ20を貫流して、さらに、ドレン弁26を介して当該流出口へと送出されることにより、デスケーリングされて洗浄されることができる。
【0030】
たとえ、フローヒータ20が、本実施例において、蒸気の発生に使用されようとも、該ヒータは、本発明の趣旨において、同じく、広義の熱湯発生器として理解される。デスケーリングシステム40の方向制御弁45が、導管13を介して給水ポンプ11に接続される代わりに、導管23を介して給水ポンプ21と接続されていてもよいことは明白である。
【0031】
本実施例において使用されるフローヒータ10、20は、いわゆるカートリッジヒータの形のコンパクトなフローヒータである。この種のカートリッジヒータは
図2に詳細に示されている。これは、薄肉の円筒状内部本体102を有し、その周面104は、外側に、螺旋状に延びるひだ又は螺旋状の溝106を具え、該溝は、外側に向かって、外側円筒状ジャケット108によって限界され、こうして、加熱さるべき導管流水のための流路を形成する。外側ジャケット108と内部本体102との間にはさらに、オプショナルに、例えば、弾性シリコンシェル109の形のシール材が配されていてよく、該シール材は、螺旋状の流路106に対して横向きの漏れ流れを防止する。
【0032】
当該内部本体の内部にはヒータユニット110が配されており、該ユニットは、耐熱材料例えばセラミック製のコア112と、該コア112の周りに巻き付けられた電熱線114を含んでいる。当該内部本体の当該外皮とヒータユニット110との間の中間スペースは、電気絶縁材料105、特に、圧縮された粉末状材料105で満たされている。本実施例において、当該中間スペースには酸化マグネシウムが充填されている。
【0033】
フローヒータ10、20の一方の端面には、ヒータユニット110の電気接続端子113が配置されており、当該断面図にあってはそのうちの一つが看取されるだけである。端面側の保護キャップ115は電気接続端子113を被覆して、うっかりした接触を防止する。
【0034】
外側ジャケット108には、加熱さるべき水の流出入管と接続される接続口108a、108bが取り付けられている。
【0035】
円筒状内部本体102は食品適性を有する特殊鋼から製造されていてよい。外側ジャケット108は、好ましくは、耐熱プラスチック製又は同じく特殊鋼製である。当該螺旋状流路は、当該内部本体の周面104に代えて、外側ジャケット108の当該内側面に形成されていてもよい。この場合、内部本体102の周面104は平坦であり、したがって、ひだが形成されていなくてよい。
【0036】
本実施例によって説明した当該全自動コーヒーメーカは、さらに、プロセッサ62を有する一つのプログラマブル制御装置60及び制御装置60に接続された、例えば、タッチパネル式ディスプレイ又はその他の表示・入力ユニットの形の一つのユーザインタフェース61を有する。制御装置60を介して、給水ポンプ11、21及びいっさいの方向制御弁の当該機能、フローヒータ10、20のヒータ114a、114b並びに当該オプショナルなデスケーリングシステム40及びその配合ポンプ43の当該機能が制御される。当該制御装置は、流量計12、22及び温度センサ17、18、27、28から当該測定値も読み出す。したがって、制御装置60を介して、通常運転中に、コーヒー飲料又はその他のホットドリンクの当該調製が制御可能であると共に、デスケーリングシステム40によるフローヒータ10、20のデスケーリングも実施可能である。相応した制御回路60は、それ自体公知の方法で、プログラマブルプロセッサ62を使用して実現することが可能である。
【0037】
制御装置60によって、当該熱湯温度の二段階式制御を実現することができる。いわゆるフィードフォワード制御において、入口温度と当該流れ量が検知され、水の当該公知の熱容量を利用して当該加熱電力がプリセットされる。補助的な微制御において、当該出口温度が測定され、当該加熱電力が相応して再制御される(フィードバック制御)。当該フィードフォワード制御により、当該貫流通過時間は制御ラグとして回避され、当該目標温度はより速やかに達成される。当該実温度に基づく当該補助的な再制御により、さらに正確な当該出口温度制御が達成され、こうしてさらに、製造に起因する一つのシリーズの異なったフローヒータ間の温度差が回避される。当該フィードフォワード制御を介して大まかにプリセットされた当該温度は所望の当該目標温度を若干下回ることがあるために、かくて、当該第二の制御段階―測定された当該実温度に基づく当該フィードバック制御―を介して、所望の当該目標温度との当該差が克服される。
【0038】
フローヒータ10は、個々のそれぞれの飲料調製のために、予熱され、続いて、再び冷却される。当該運転において、まず最初に、フローヒータ10の予熱相126、126´が実現される。この時間中、ドレン弁16は開放されている。フローヒータ10のヒータ114の当該電源切断はすでに熱湯調製の終了前に行われるため、当該熱湯温度は当該終了に向かってすでにやや低下している。当該熱湯調製の終了後、ドレン弁16は再度開放され、当該フローヒータは、ヒータ114の電流遮断時にクールダウンされる。したがって、フローヒータ10内の当該温度の速やかな低下によってスケーリング沈着は低減される。
【0039】
図3には、当該流量の時間的推移、温度推移並びにドレン弁16の当該スイッチング状態が示されている。この場合、ドレン弁16は、非通電時開電磁弁として形成されている。符号120を付した当該測定カーブは、流量計12によって測定された当該流量の当該推移を示している。“振幅”は、ml/min単位で表されている。測定カーブ122は、フローヒータ10の出口で温度センサ18によって測定された当該温度カーブである。
信号カーブ124は、ドレン弁16の当該コイル電流を表している。
【0040】
製品調製の最初に、給水ポンプ11はスイッチオンされて、供給管30からフローヒータ10の方向へ水をポンピング送出する。ドレン弁16は非通電であり、したがって、開放されており、水はフローヒータ10から到来し、導管14を介して排水系に至る。その際、弁15a、15b及び15cは閉じている。約330ml/minの貫流通過が生ずる。同時に、時点t1に、フローヒータ10のヒータ114がスイッチオンされる。当該フローヒータの予熱相126が開始する。この相において、温度122は、当該第一の製品調製のために80℃に達する設定目標温度にまで上昇する。
【0041】
時点t2に、当該目標温度は到達されている。今や、ドレン弁16は閉じられて(コイル電流オン)、弁15bが開放され、こうして、今や十分に熱い熱湯は、もはや配水系ではなく、抽出ユニット50へ誘導される。注出口55で注出されるコーヒードリンクを調製するための相128が開始する。ドレン弁16の閉と弁15bの開により、加熱された当該水が今や、もはや直接に配水系に達するのではなく、抽出チャンバ50を通して誘導されるため、当該流れ抵抗が増加する。そのために、当該流量は略300ml/minに低下する。水温122は、フローヒータ10の当該加熱電力の制御によって、当該制御精度の範囲内でコンスタントに保たれる。
【0042】
当該製品調製の終了直前に、時点t3において、フローヒータ10のヒータ114がスイッチオフされる。この時点において、当該予定された水量のすでに約90%が当該フローヒータを貫流して流れ、注出口55に向かって送られている。例えば、一つのフィルタコーヒー用の所定の当該水量は125mlであってよい。当該体積測定は、制御装置60によって読み出される流量計12によって行われる。こうして、制御装置60は、約112.5mlの水が貫流通過した後に、ヒータ114をスイッチオフする。ただし、この値の正確な遵守は重要ではない。ヒータ114の当該スイッチオフは、例えば、125mlの製品調製に際し、おおよそ105ml~120mlの範囲内で行われてよい。
【0043】
フローヒータ10の出口における水温122は、ヒータ114がスイッチオフされた後、低下し始める。ただし、さらに水は当該フローヒータを通って送出される。その後、時点t4において―当該出口温度はこの時点においてすでに約15℃低下している―給水ポンプ11が停止される。当該流量は急速に、システム内の当該水圧が解消するまで減少する。フローヒータ10の貫流通過は終了するが、フローヒータ10はさらに、供給される当該新鮮水によって冷やされるわけではないので、当該温度はコンスタントのままである。次いで、ドレン弁16が開放される(コイル電流オフ)。フローヒータ10と抽出ユニット50との間の弁15bは閉じられる。製品調製128は終了する。
【0044】
またも若干遅い時点t5において、給水ポンプ11は再度短時間の間スイッチオンされて、さらなる新鮮水を、ヒータ114がスイッチオフされているか又はスイッチオフされたままのフローヒータ10を貫流して送出する。再び開始される当該冷水流れによって、フローヒータ10はさらに略45℃にまで、したがって、温度に起因する石灰沈着がもはや生じない温度にまで冷却される。給水ポンプ11はスイッチオンされ、ドレン弁16は開いたままであり、流量120は再び当該水流が停止するまで低下する。かくて、当該装置は、さらに別のホットドリンクの調製に向けて待機状態にある。
【0045】
図3には、続けて、例えば第二の製品調製が示されている。これは、時点t1´に、ヒータ114とポンプ11のスイッチオンによって、再度の予熱相126´を開始する。今回は、異なった種類のホットドリンクのために異なった目標温度がプリセット可能であるために、当該目標温度は92℃である。当該目標温度の達成によって予熱相126´は完了し、ドレン弁16の閉(コイル電流オン)及び弁15bの開によって、新たな製品調製相128´が開始する。該調製相の終了直前の時点t3´にヒータ114はスイッチオフされる。すなわち、水温122は再び低下し始める。時点t4´における当該ポンプの当該停止によって、製品調製相128´は終了する。ドレン弁16は再び開放され、弁15bは閉じられる。続いての後冷却相130´において、当該ポンプは時点t5´に再度活性化されて、フローヒータ10を再冷却する。
【0046】
図4には、さらに理解しやすくすべく、同一の当該温度推移が再度拡大して示されている。この場合、“振幅”として、当該フローヒータの出口における当該水温が℃で示されている。
【0047】
図5には、フローヒータ10、20の第二の実施例が示されている。この場合、同一及び同一機能を有する部品には、
図2に示した当該フローヒータの場合と同一の符号が付されている。
図5に示した当該フローヒータにおいて、内部本体102は、周面に溝の形成されていない、特殊鋼製の平坦な周面104を有する。外側ジャケット108は、同じく、特殊鋼からなり、内部本体102に対向する内側面に螺旋状ひだ106が形成されているために、第一の実施例と同様に、内部本体102と外側ジャケット108との間に螺旋状に延びる、加熱さるべき貫流水のための流路が生じている。内部本体102と外側ジャケット108との間にはシール材が必要である。
【0048】
螺旋状電熱線114a、114bがその周面を走るヒータユニット110のセラミック本体112は、当該第一の実施例におけるよりも大きな円周を有しているために、セラミック本体112と、内部本体102の薄肉特殊鋼周面104との間に残っている環状隙間105は大幅に狭小なものとなっている。環状隙間105は、螺旋状電熱線114a、114bの電気的絶縁のため、かつ、環状隙間105のサーマルブリッジを達成するために、第一の実施例と同様にまた、圧縮された酸化マグネシウム粉末でも満たされている。双方のヒータ領域110a、110bは、セラミック本体112の外周に環状溝115によって形成された一つのギャップによって補助的に熱的及び電気的に切り離されている。図中には、同じく、双方のヒータ領域110a、110bの螺旋状電熱線114a、114bは異なった断面積を有することが示唆されている。第一のヒータ領域110aの螺旋状電熱線114aは、より高い加熱電力用に設計されているために、第二のヒータ領域110bの螺旋状電熱線114bよりも大きな断面積を有している。第一と第二の螺旋状電熱線114a、114bのための電気接続端子113は、第一の実施例と同様に、また、当該ヒータカートリッジの当該左側端面に配されている。