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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20230721BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230721BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230721BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230721BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230721BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20230721BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/0585
H01M4/62 Z
H01M10/052
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019131336
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021015779
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 真大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 圭太
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮平
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真祈
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-175287(JP,A)
【文献】国際公開第2008/059987(WO,A1)
【文献】特開2008-235076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0219251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0585
H01M 10/04
H01M 4/02-4/04
H01M 4/13-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極として構成された第1電極(205)と、
前記第1電極上に積層されたセパレータ(3)と、
前記セパレータ上に積層され、負極として構成された第2電極(402)と、を備えた単セル(11)を有し、
前記第1電極は、
キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり細孔を有する多孔質体(23)と、前記多孔質体の細孔(231)内に保持された活物質(211)と、を備えた反応部(21)と、
前記単セルの積層方向から視た平面視における前記反応部の周囲の少なくとも一部に配置され、前記多孔質体と、前記多孔質体の細孔に充填された封孔材(221)と、を備えた封孔部(22)と、を有しており、
前記第1電極の前記反応部は、前記多孔質体としての第1多孔質体(23)と、前記活物質としての第1活物質(211)と、を備えた第1反応部(21)であり、
前記第1電極の前記封孔部は、前記第1多孔質体と、前記封孔材としての第1封孔材(221)と、を備えた第1封孔部(22)であり、
前記第2電極(402)は、
キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり細孔(431)を有する第2多孔質体(43)と、前記第2多孔質体の細孔内に保持された第2活物質(411)と、を備えた第2反応部(41)と、
前記単セルの積層方向から視た平面視における前記第2反応部の周囲の少なくとも一部に配置され、前記第2多孔質体と、前記第2多孔質体の細孔に充填された第2封孔材(421)と、を備えた第2封孔部(42)と、を有しており、
前記第2電極の細孔容積は、前記第1電極の細孔容積よりも大きい、二次電池(106)。
【請求項2】
前記封孔材は電気絶縁性を有している、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1電極の細孔容積V1に対する前記第2電極の細孔容積V2の比V2/V1の値が1.7以上である、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法であって、
キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり細孔を有する多孔質体(23)と、前記多孔質体上に積層された前記セパレータと、を備えた積層体(10)を作製する積層工程と、
前記積層体の積層方向から視た平面視における前記多孔質体の周縁部に存在する前記細孔の少なくとも一部に封孔材(221)を充填して前記封孔部を形成する封孔工程と、
活物質(211)またはその前駆体を、前記多孔質体の外部から前記封孔部へ向かって移動するように前記細孔内に充填して前記反応部を形成する活物質充填工程と、を有する、二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や電子機器のバッテリーとしては、鉛蓄電池やニッケル水素蓄電池、リチウムイオン二次電池などの、正極と負極との間に電解液を介在させた二次電池が使用されている。近年、これらの二次電池よりもさらに安全性を向上させるため、正極と負極との間に固体電解質を介在させた、いわゆる全固体電池が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、固体電解質を含有するセラミックスからなる板状の緻密体と、前記緻密体の前記固体電解質と同一又は異なる固体電解質を含有するセラミックスからなり、前記緻密体の少なくとも一方の表面に焼成一体化して形成された多孔層と、を有する全固体電池用の固体電解質構造体が記載されている。この固体電解質構造体における多孔層の細孔内に活物質を充填することにより、多孔層を電極とした全固体電池を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/059987号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の固体電解質構造体において、多孔層の細孔内に活物質を充填する際には、溶融状態の活物質や、活物質のスラリー、活物質前駆体のゾル等の活物質又は活物質前駆体の液体が用いられる。しかし、細孔は多孔層の外表面に開口しているため、活物質又は活物質前駆体の液体を細孔内に充填しようとすると、液体が前述した開口から多孔層の外部に漏出するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、電極内部から外部への活物質の漏出を抑制することができる二次電池及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、正極として構成された第1電極(205)と、
前記第1電極上に積層されたセパレータ(3)と、
前記セパレータ上に積層され、負極として構成された第2電極(402)と、を備えた単セル(11)を有し、
前記第1電極は、
キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり細孔を有する多孔質体(23)と、前記多孔質体の細孔(231)内に保持された活物質(211)と、を備えた反応部(21)と、
前記単セルの積層方向から視た平面視における前記反応部の周囲の少なくとも一部に配置され、前記多孔質体と、前記多孔質体の細孔に充填された封孔材(221)と、を備えた封孔部(22)と、を有しており、
前記第1電極の前記反応部は、前記多孔質体としての第1多孔質体(23)と、前記活物質としての第1活物質(211)と、を備えた第1反応部(21)であり、
前記第1電極の前記封孔部は、前記第1多孔質体と、前記封孔材としての第1封孔材(221)と、を備えた第1封孔部(22)であり、
前記第2電極(402)は、
キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり細孔(431)を有する第2多孔質体(43)と、前記第2多孔質体の細孔内に保持された第2活物質(411)と、を備えた第2反応部(41)と、
前記単セルの積層方向から視た平面視における前記第2反応部の周囲の少なくとも一部に配置され、前記第2多孔質体と、前記第2多孔質体の細孔に充填された第2封孔材(421)と、を備えた第2封孔部(42)と、を有しており、
前記第2電極の細孔容積は、前記第1電極の細孔容積よりも大きい、二次電池(106)にある。
【0008】
本発明の他の態様は、前記の態様の二次電池の製造方法であって、
キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり細孔を有する多孔質体(23)と、前記多孔質体上に積層された前記セパレータと、を備えた積層体(10)を作製する積層工程と、
前記積層体の積層方向から視た平面視における前記多孔質体の周縁部に存在する前記細孔の少なくとも一部に封孔材(221)を充填して前記封孔部を形成する封孔工程と、
活物質(211)またはその前駆体を、前記多孔質体の外部から前記封孔部へ向かって移動するように前記細孔内に充填して前記反応部を形成する活物質充填工程と、を有する、二次電池の製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
前記二次電池における前記第1電極は、前記活物質を備えた前記反応部と、前記反応部の周囲の少なくとも一部に配置された前記封孔部と、を有している。また、封孔部は、前記多孔質体と、多孔質体の細孔に充填された封孔材と、を有している。このように、反応部の周囲に、封孔材によって細孔が閉鎖された封孔部を配置することにより、多孔質体の内部から外部へ移動しようとする活物質を、封孔部においてせき止めることができる。その結果、第1電極内部から外部への活物質の漏出を抑制することができる。
【0010】
また、前記の態様の製造方法においては、前記積層体を作製した後、多孔質体の周縁部に存在する細孔に封孔材を充填して封孔部を形成する。その後、活物質またはその前駆体を、封孔部へ向かって移動するように細孔内に充填する。封孔部の細孔は封孔材によって閉鎖されているため、封孔部は、封孔部内への活物質等の進入を抑制することができる。その結果、二次電池の作製過程における、第1電極内部から外部への活物質の漏出を抑制することができる。
【0011】
以上のごとく、上記態様によれば、電極内部から外部への活物質の漏出を抑制することができる二次電池及びその製造方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、参考形態1における二次電池の斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線一部矢視断面図である。
図3図3は、参考形態1の製造方法における活物質充填工程の模式図である。
図4図4は、参考形態2における、第1電極の隣り合う2辺に沿って封孔部が設けられた二次電池の斜視図である。
図5図5は、参考形態2における、第1電極の対向する2辺に沿って封孔部が設けられた二次電池の斜視図である。
図6図6は、参考形態2における、第1電極の3辺に沿って封孔部が設けられた二次電池の斜視図である。
図7図7は、参考形態2における、第1電極の外周全体に沿って封孔部が設けられた二次電池の斜視図である。
図8図8は、実施形態1における二次電池を第2電極側から視た平面図である。
図9図9は、図8のIX-IX線一部矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
参考形態1)
前記二次電池及びその製造方法に係る実施形態について、図1図3を参照して説明する。本形態に係る二次電池1は、図1に示すように、第1電極2と、キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり第1電極2上に積層されたセパレータ3と、セパレータ3上に積層された第2電極4と、を備えた単セル11を有している。第1電極2は、反応部21と、単セル11の積層方向から視た平面視における反応部21の周囲の少なくとも一部に配置された封孔部22と、を有している。図2に示すように、反応部21は、キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり細孔231を有する多孔質体23と、多孔質体23の細孔231内に保持された活物質211と、を有している。封孔部22は、多孔質体23と、多孔質体23の細孔231に充填された封孔材221と、を有している。
【0014】
二次電池1は、1個の単セル11を有していてもよいし、複数の単セル11を有していてもよい。例えば、本形態の二次電池1は、1個の単セル11を有している。図2に示すように、単セル11における第1電極2の表面及び第2電極4の表面には、それぞれ、集電体12が積層されている。これらの集電体12に付加や発電装置を接続することにより、二次電池1への充電や放電を行うことができる。集電体12としては、例えば、金属箔や金属板等の導電体、ガラス等の絶縁体中にカーボンや導電性酸化物等の導電性粉末を分散させた複合材料等を使用することができる。なお、図1においては、便宜上、集電体12の記載を省略した。
【0015】
図には示さないが、二次電池1が複数の単セル11を有している場合、集電体12と単セル11とを交互に重ね合わせることにより、集電体12を介して複数の単セル11を電気的に接続することができる。例えば、集電体12の一方の面と第1電極2とが当接し、他方の面と第2電極4とが当接するようにして集電体12と単セル11とを重ね合わせることにより、複数の単セル11を直列に接続することができる。また、同種の電極2、4同士の間に集電体12が介在するようにして集電体12と単セル11とを重ね合わせることにより、複数の単セル11を並列に接続することができる。
【0016】
第1電極2は、正極であってもよいし、負極であってもよい。本形態の第1電極2は、具体的には正極である。
【0017】
また、第1電極2の形状は種々の態様をとり得る。例えば、本形態の第1電極2は、図1に示すように、多孔質体23によって形作られた長方形の板状を呈している。
【0018】
図2に示すように、第1電極2の反応部21は、多孔質体23と、多孔質体23の細孔231内に保持された活物質211とを有している。反応部21の細孔231内には、活物質211の他に、導電助剤や多孔質体23を構成する固体電解質とは異なる他の固体電解質、液体電解質が保持されていてもよい。
【0019】
多孔質体23は、キャリアイオン伝導性を有し、かつ、電気絶縁性の固体電解質から構成されている。そのため、活物質211から脱離したキャリアイオンは、固体電解質を介して第2電極4へ移動することができる。また、第2電極4から供給されるキャリアイオンは、固体電解質を介して活物質211まで移動し、活物質211と反応することができる。このように、多孔質体23を構成する固体電解質がキャリアイオンの経路となることにより、二次電池1への充放電が可能となる。
【0020】
固体電解質としては、キャリアイオンが移動可能な物質を使用することができる。例えば、キャリアイオンがLi+の場合、ランタンジルコン酸リチウム等のガーネット型固体電解質、アルミニウム置換リン酸チタンリチウム(つまり、LATP)やアルミニウム置換リン酸ゲルマニウムリチウム(つまり、LAGP)等のNASICON型固体電解質、リチウムランタンチタン酸塩(つまり、LLTO)等のペロブスカイト型固体電解質等を使用することができる。また、ガーネット型固体電解質としては、ランタンジルコン酸リチウムの他に、ランタンジルコン酸リチウムにカルシウム、ニオブ、アルミニウム、タンタル、ストロンチウム、バリウム、イットリウム等から選択された1種または2種以上のドーパントがドープされた固体電解質を採用することもできる。本形態の多孔質体23は、具体的には、ガーネット型固体電解質から構成されている。
【0021】
多孔質体23は、活物質211や封孔材221を保持するための細孔231を有している。多孔質体23の細孔231は、例えば図2に示すように、連続気孔構造を有していてもよい。多孔質体23の気孔率は、例えば、20~80%とすることができる。なお、多孔質体23の気孔率は、FIB/SEM(つまり、収束イオンビーム/走査型電子顕微鏡)トモグラフィー法により得られる三次元再構成像に基づいて算出される値である。より具体的には、FIB装置による試料の加工とSEMによる加工面の観察とを繰り返し、複数のSEM像を取得する。これらのSEM像を画像解析ソフト上で再構成することにより、試料の三次元再構成像を得る。そして、得られた三次元再構成像に、多孔質体23の骨格をなす固体電解質部分とそれ以外との境界が損なわれないように二値化処理を施す。以上により得られた二値化像における、多孔質体23における固体電解質部分以外の部分の占有体積の比率を気孔率とする。
【0022】
活物質211は、キャリアイオン及び第1電極2の極性に応じて適宜選択することができる。例えば、キャリアイオンがリチウムイオン(Li+)であり、第1電極2が正極である場合、第1電極2の活物質211としては、硫黄原子を含有する硫黄系活物質や、酸化物からなる酸化物系活物質を使用することができる。硫黄系活物質としては、具体的には、硫黄の単体や硫化リチウム(Li2S)、リチウムがドープされた硫黄等を使用することができる。酸化物系活物質としては、具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNi1/3Mn1/3Co1/32、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)等を使用することができる。
【0023】
第1電極2が正極である場合、活物質211に硫黄原子が含まれていることが好ましい。この場合には、二次電池1の容量をより大きくすることができる。本形態の反応部21における活物質211は、具体的には、硫黄の単体である。
【0024】
なお、キャリアイオンがLi+であり、第1電極2が負極である場合、第1電極2の活物質211としては、金属リチウム、カーボン、Li4Ti512等を使用することができる。
【0025】
封孔部22は、単セル11の積層方向から視た平面視における反応部21の端縁に連なっている。封孔部22は、単セル11の積層方向から視た平面視において反応部21を取り囲むように配置されていてもよいし、反応部21の周囲の一部に配置されていてもよい。例えば、本形態の封孔部22は、図1に示すように、単セル11の積層方向から視た平面視における、多孔質体23の一方の長辺232に沿って配置されている。
【0026】
本形態における封孔部22の多孔質体23は、反応部21の多孔質体23と一体的に形成されている。即ち、第1電極2のうち、多孔質体23の細孔231内に活物質211が保持された部分が反応部21となり、細孔231内に封孔材221が充填された部分が封孔部22となる。
【0027】
封孔部22においては、多孔質体23の細孔231の全部に封孔材221が充填されていてもよいし、細孔231の一部に封孔材221が充填されていてもよい。封孔部22内への活物質211の進入をより効果的に抑制する観点からは、封孔部22の気孔率を10%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましい。
【0028】
なお、封孔部22の気孔率は、前述した多孔質体23の気孔率と同様に、FIB/SEM(つまり、収束イオンビーム/走査型電子顕微鏡)トモグラフィー法により得られる三次元再構成像に基づいて算出される値である。
【0029】
封孔材221は、細孔231内に充填可能であり、細孔231を閉鎖することができればどのような物質から構成されていてもよい。例えば、封孔材221は、金属などの導電体であってもよいし、ガラスやセラミックスなどの絶縁体であってもよい。また、封孔材221は、ゴムやプラスチックなどの有機材料であってもよい。更に、封孔材221として、キャリアイオン伝導性を有する物質を使用することもできる。例えば、本形態の封孔材221は、具体的にはシリカガラスである。
【0030】
封孔材221は、第1電極2の活物質211の融点まで加熱した場合に形状を維持できる物質から構成されていることが好ましい。つまり、例えば封孔材221が融点または軟化点を有する場合には、封孔材221の融点または軟化点が活物質211の融点よりも高いことが好ましい。また、封孔材221が熱分解する物質である場合には、封孔材221の熱分解温度が活物質211の融点よりも高いことが好ましい。この場合には、二次電池1の作製過程において、溶融状態の活物質211を多孔質体23の細孔231内に充填する際に、封孔材221によって活物質211を確実にせき止めることができる。その結果、活物質211の漏出をより確実に抑制することができる。
【0031】
また、封孔材221は、電気絶縁性を有していることが好ましい。第1電極2及び第2電極4は、製造時のバラつき等の種々の原因によって所望の位置からずれ、セパレータ3を介さずに直接接触することがある。電気絶縁性を有する封孔材221を使用することにより、このような位置ずれによって第1電極2と第2電極4とが直接接触した場合であっても第1電極2と第2電極4との短絡を抑制することができる。
【0032】
図1及び図2に示すように、セパレータ3は、第1電極2に積層されている。セパレータ3は、キャリアイオン伝導性を有し、かつ、電気絶縁性の固体電解質から構成されている。セパレータ3を構成する固体電解質は、第1電極2の多孔質体23と同種の固体電解質であってもよいし、異なる固体電解質であってもよい。本形態のセパレータ3は、具体的には、第1電極2と同じガーネット型固体電解質から構成されている。
【0033】
セパレータ3における第1電極2が設けられた面と反対側の面には、第2電極4が積層されている。第2電極4は、第1電極2とは異なる極性を有している。つまり、第1電極2が正極として構成されている場合、第2電極4は負極として構成される。また、第1電極2が負極として構成されている場合、第2電極4は正極として構成される。
【0034】
第2電極4の構成は特に限定されることはない。例えば、第2電極4は、第1電極2の活物質211とは異なる活物質のみから構成されていてもよいし、第1電極2と同様に、多孔質体の細孔内に活物質が保持された構成であってもよい。
【0035】
第2電極4の活物質は、第1電極2と同様に、キャリアイオン及び第2電極4の極性に応じて適宜選択することができる。例えば、本形態の第2電極4は、活物質としての金属リチウムからなるリチウム板である。
【0036】
次に、本形態の二次電池1の製造方法を説明する。本形態の二次電池1の製造方法は、キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり細孔231を有する多孔質体23と、多孔質体23上に積層されたセパレータ3と、を備えた積層体10を作製する積層工程と、積層体10の積層方向から視た平面視における多孔質体23の周縁部に存在する細孔231の少なくとも一部に封孔材221を充填して封孔部22を形成する封孔工程と、活物質211またはその前駆体を、多孔質体23の外部から封孔部22へ向かって移動するように細孔231内に充填して反応部21を形成する活物質充填工程と、を有している。
【0037】
積層工程において、積層体10を作製する具体的な方法は種々の態様をとり得る。積層工程の一態様においては、多孔質体23のグリーンシートとセパレータ3のグリーンシートとを重ね合わせた後、これらのグリーンシートを焼成することにより積層体10を形成することができる。多孔質体23のグリーンシートは、例えば、固体電解質の粉末、バインダ及び造孔材を含む混合物をシート状に成形することにより作製することができる。なお、造孔材としては、例えば、アクリル樹脂の粉末などを使用することができる。また、セパレータ3のグリーンシートは、固体電解質の粉末及びバインダを含む混合物をシート状に成形することにより作製することができる。
【0038】
また、積層工程の他の態様においては、多孔質体23となる圧粉体と、セパレータ3となる圧粉体とを重ね合わせた後、これらの圧粉体を焼成することにより積層体10を形成することができる。多孔質体23となる圧粉体は、例えば、固体電解質の粉末と造孔材とを含む混合粉末を圧粉成形することにより作製することができる。また、セパレータ3となる圧粉体は、固体電解質の粉末を圧粉成形することにより作製することができる。
【0039】
封孔工程において、細孔231内に封孔材221を充填する方法は特に限定されることはなく、封孔材221の種類に応じて適切な方法を採用することができる。例えば、封孔材221として、シリカガラス等の比較的融点の高い物質を使用する場合、シリカガラス粉末とバインダとを混合してなるペーストやシートを多孔質体23上における所望の位置に配置した後、積層体10を加熱して封孔材221を溶融させることにより、細孔231内に封孔材221を充填することができる。また、封孔材221として、熱可塑性プラスチックなどの比較的融点の低い物質を使用する場合、溶融状態の封孔材221を細孔231内に注入し、細孔231内で固化させることにより、細孔231を閉鎖することができる。
【0040】
活物質充填工程においては、活物質211またはその前駆体を、多孔質体23の外部から封孔部22へ向かって移動するように細孔231内に充填する。例えば、本形態のように、長方形状を呈する多孔質体23の長辺232に沿って封孔部22が設けられている場合には、図3に示すように、活物質211またはその前駆体を、多孔質体23の端縁における封孔部22を有しない3つの辺233、234、235から注入すればよい。この場合、多孔質体23の各辺233、234、235から注入された活物質211等は、まず、積層体10の積層方向から視た平面視における中央に向かって移動する(図3、矢印212)。そして、多孔質体23の中央部において合流した活物質211等は、最終的に封孔部22へ向かって移動する(図3、矢印213)。この時、封孔部22に存在する細孔231は、既に封孔材221によって閉鎖されている。それ故、封孔部22に到達した活物質211またはその前駆体は、封孔部22によってせき止められる。
【0041】
活物質充填工程において細孔231内に活物質211を充填する場合には、活物質211が封孔部22に到達するまで充填を行えばよい。これにより、反応部21を形成することができる。また、活物質充填工程において細孔231内に活物質211の前駆体を充填する場合には、前駆体が封孔部22に到達した後、加熱等の処理を行うことにより前駆体を反応させればよい。これにより、細孔231内の前駆体を活物質211とし、反応部21を形成することができる。
【0042】
本形態によれば、第1電極2内部から外部への活物質211の漏出を抑制することができる二次電池1及びその製造方法を提供することができる。
【0043】
参考形態2)
本形態においては、封孔部22の配置の別の態様を示す。なお、本形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0044】
封孔部22の配置は、参考形態1の態様に限定されるものではなく、種々の態様をとり得る。例えば、封孔部22は、図4に示す二次電池102の第1電極202のように、多孔質体23の端縁のうち隣り合う2つの辺232、233に沿って設けられていてもよいし、図5に示す二次電池103の第1電極203のように、多孔質体23の端縁のうちいずれか1つの辺232と、この辺に向かい合う辺234との2つの辺に沿って設けられていてもよい。また、封孔部22は、図6に示す二次電池104の第1電極204のように、多孔質体23の端縁のうち3つの辺232、233、234に沿って設けられていてもよい。これらの二次電池102、103、104を作製するに当たっては、活物質充填工程において、参考形態1と同様に、活物質211またはその前駆体を、多孔質体23の端縁における封孔部22を有しない辺から注入することにより、活物質211等の漏出を抑制することができる。
【0045】
また、封孔部22は、図7に示す二次電池105の第1電極205のように、反応部21の周囲の全体にわたって設けられていてもよい。この場合には、活物質充填工程において、積層体10の積層方向から視た平面視における中央部、つまり、反応部21よりも内側の部分から活物質211またはその前駆体を注入すればよい。
【0046】
図7に示す第1電極205のように反応部21が封孔部22によって囲まれている場合、電気絶縁性を有する封孔材221によって封孔部22の細孔231を閉鎖することが好ましい。この場合には、第1電極205や第2電極4がいずれの方向に位置ずれを起こしても、第1電極205と第2電極4との短絡を抑制することができる。
【0047】
また、第1電極が負極として構成されている場合、図7に示すように、反応部21の周囲の全体にわたって封孔部22を配置することが好ましい。負極として構成されている第1電極においては、充電時にキャリアイオンが還元することにより反応部の細孔内に金属が析出する。この場合、反応部21を取り囲むように封孔部22を配置することにより、封孔部22から第2電極へ向かうデンドライトの成長をより効果的に抑制することができる。その結果、例えば過充電時における第1電極と第2電極との短絡をより効果的に抑制することができる。
【0048】
なお、本形態の二次電池102~105は、封孔部22の配置以外は参考形態1と同様の構成を有している。本形態の二次電池102~105は、封孔部22の配置による効果の他は、参考形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
実施形態1
本形態においては、第2電極の他の態様を示す。本形態の二次電池106においては、第1電極205の反応部21を第1反応部21、活物質211を第1活物質211といい、封孔部22を第1封孔部22、封孔材221を第1封孔材221、多孔質体23を第1多孔質体23という。図には示さないが、本形態の第1電極205は、第1封孔部22が第1反応部21の周囲の全体にわたって配置されており、第1活物質211が、リチウムがドープされた硫黄である以外は、参考形態1と同様の構成を有している。また、本形態のセパレータ3は、参考形態1と同様の構成を有している。
【0050】
本形態の第2電極402は、図8に示すように、第2反応部41と、単セル11の積層方向から視た平面視における第2反応部41の周囲の少なくとも一部に配置された第2封孔部42と、を有している。図9に示すように、第2反応部41は、キャリアイオン伝導性を有する固体電解質からなり細孔431を有する第2多孔質体43と、第2多孔質体43の細孔431内に保持された第2活物質411と、を有している。第2封孔部42は、第2多孔質体43と、第2多孔質体43の細孔431に充填された第2封孔材421と、を有している。
【0051】
本形態の第2電極402は、具体的には負極である。また、図8に示すように、第2電極402は、第2多孔質体43によって形作られた長方形の板状を呈している。
【0052】
図9に示すように、第2電極402の第2反応部41は、第2多孔質体43と、第2多孔質体43の細孔431内に保持された第2活物質411とを有している。第2反応部41の細孔431内には、第2活物質411の他に、導電助剤や、第2多孔質体43を構成する固体電解質とは異なる他の固体電解質が保持されていてもよい。
【0053】
第2多孔質体43は、第1多孔質体23と同様に、キャリアイオン伝導性を有し、かつ、電気絶縁性の固体電解質から構成されている。第2多孔質体43を構成する固体電解質は、第1多孔質体23と同一であってもよいし、異なっていてもよい。本形態の第2多孔質体43は、具体的には、ガーネット型固体電解質から構成されている。
【0054】
第2多孔質体43は、第2活物質411や第2封孔材421を保持するための細孔431を有している。第2多孔質体43の細孔431は、連続気孔構造を有していてもよい。第2多孔質体43の気孔率は、例えば、20~80%とすることができる。なお、第2多孔質体43の気孔率は、第1多孔質体23の気孔率と同様に、FIB/SEM(つまり、収束イオンビーム/走査型電子顕微鏡)トモグラフィー法により得られる三次元再構成像に基づいて算出される値である。
【0055】
図には示さないが、本形態のように、負極として構成された第2電極402における第2活物質411が金属である場合、第2多孔質体43の内表面、つまり、第2活物質411と接する面に、金属または金属酸化物からなる被覆層が形成されていることが好ましい。この場合には、第2活物質411と多孔質体23との接触面積をより広くすることができる。その結果、第2活物質411と第2電極4との間のキャリアイオンの授受をより促進し、より高率での充放電を行うことが可能となる。
【0056】
被覆層に使用し得る金属としては、例えば、金やアルミニウムなどがある。また、被覆層に使用し得る金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al23)等がある。被覆層は、例えば、化学気相成長法や原子層堆積法、ゾル-ゲル法等の手法により形成することができる。
【0057】
第2活物質411は、第1活物質211と同様に、キャリアイオン及び第2電極402の極性に応じて適宜選択することができる。本形態の第2活物質411は、具体的には、金属リチウムである。
【0058】
図8に示すように、第2封孔部42は、単セル11の積層方向から視た平面視における第2反応部41の端縁に連なっている。第2封孔部42は、第1封孔部22と同様に、単セル11の積層方向から視た平面視において第2反応部41を取り囲むように配置されていてもよいし、第2反応部41の周囲の一部に配置されていてもよい。本形態の第2封孔部42は、具体的には、単セル11の積層方向から視た平面視において第2反応部41の周囲の全体にわたって設けられている。
【0059】
図8及び図9に示すように、第2封孔部42の第2多孔質体43は、第2反応部41の第2多孔質体43と一体的に形成されている。即ち、第2電極402のうち、第2多孔質体43の細孔431内に第2活物質411が保持された部分が第2反応部41となり、細孔431内に第2封孔材421が充填された部分が第2封孔部42となる。
【0060】
第2封孔部42においては、第2多孔質体43の細孔431の全部に第2封孔材421が充填されていてもよいし、細孔431の一部に第2封孔材421が充填されていてもよい。第2封孔部42内への第2活物質411の進入をより効果的に抑制する観点からは、第2封孔部42の気孔率を10%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましい。
【0061】
なお、第2封孔部42の気孔率は、第1封孔部22の気孔率と同様に、FIB/SEM(つまり、収束イオンビーム/走査型電子顕微鏡)トモグラフィー法により得られる三次元再構成像に基づいて算出される値である。
【0062】
第2封孔材421は、第1封孔材221と同様に、細孔431内に充填可能であり、細孔431を閉鎖することができればどのような物質から構成されていてもよい。また、第2封孔材421は、第1封孔材221と同一の物質から構成されていてもよいし、第1封孔材221とは異なる物質から構成されていてもよい。
【0063】
また、第2封孔材421は、第2活物質411の融点まで加熱した場合に形状を維持できる物質から構成されていることが好ましい。この場合には、二次電池106の作製過程において、溶融状態の第2活物質411を第2多孔質体43の細孔431内に充填する際に、第2封孔材421によって第2活物質411を確実にせき止めることができる。その結果、第2活物質411の漏出をより確実に抑制することができる。本形態の第2封孔材421は、具体的にはシリカガラスである。
【0064】
また、第2封孔材421は、電気絶縁性を有していることが好ましい。この場合には、第1封孔材221が電気絶縁性を有する場合と同様に、位置ずれによる第1電極205と第2電極402との短絡を抑制することができる。
【0065】
本形態の二次電池106における第1電極205は硫黄からなる第1活物質211を備えた正極として構成されており、第2電極402は金属リチウムからなる第2活物質411を備えた負極として構成されている。このように、第1電極205が正極として構成され、第2電極402が負極として構成されている場合、第2電極402に保持可能なキャリアの量は第1電極205に保持可能なキャリアの量よりも多いことが好ましい。
【0066】
前述した各電極205、402に保持可能なキャリアの量は、具体的には、細孔231、431のうち、キャリアイオン伝導性を有する物質に対面している部分の容積に各活物質211、411の理論容量を掛けることにより算出することができる。例えば、細孔231、431のうち多孔質体23、43に面する部分には、多孔質体23、43を介してキャリアが出入りすることができる。また、封孔材221、421がキャリアイオン伝導性を有する物質である場合には、細孔231、431のうち封孔材221、421に面する部分にもキャリアが出入りすることができる。
【0067】
一方、細孔231、431のうち、例えばキャリアイオン伝導性を有する物質からなる封孔材221、421によって囲まれた部分には、封孔材221、421によってキャリアイオンの移動がさえぎられるため、キャリアが出入りすることができない。
【0068】
従って、各電極205、402に完全にキャリアが充填された場合には、細孔231、431のうち、キャリアイオン伝導性を有する物質に対面している部分がキャリアで満たされることになる。それ故、細孔231、431のうち、キャリアイオン伝導性を有する物質に対面している部分の容積に各活物質211、411の理論容量を掛けた値を、各電極205、402に保持可能なキャリアの量とすることができる。
【0069】
キャリアイオン伝導性を有する物質に対面している部分の容積は、より具体的には、以下の方法により算出することができる。即ち、まず、活物質211、411等が細孔231、431内に存在しないと仮定した場合の反応部21、41の細孔容積、つまり、反応部21、41内に存在する空間の体積と、反応部21、41内に存在する活物質211、411の体積との合計を算出する。各反応部21、41の細孔容積は、具体的には、反応部21、41における多孔質体23、43の気孔率と、反応部21、41の見掛け体積とを掛け合わせることにより算出される。
【0070】
封孔材221、421がキャリアイオン伝導性を有する物質から構成されている場合には、更に、活物質211、411等が細孔231、431内に存在しないと仮定した場合の封孔部22、42の細孔容積、つまり、封孔部22、42内に存在する空間の体積と、封孔部22、42内に存在する活物質211、411の体積との合計を算出する。各封孔部22、42の細孔容積は、反応部21、41の細孔容積と同様に、封孔部22、42における多孔質体23、43の気孔率と、封孔部22、42の見掛け体積とを掛け合わせることにより算出される。以上により算出された、反応部21、41の細孔容積と、封孔部22、42の細孔容積とを合計することにより、キャリアイオン伝導性を有する物質に対面している部分の容積を得ることができる。
【0071】
前述したように、第2電極402に保持可能なキャリアの量を第1電極205に保持可能なキャリアの量よりも多くすることにより、全てのキャリアイオンが第1電極205から第2電極402へ移動した場合においても、第2電極402で析出した金属を細孔431内に保持することができる。これにより、第2電極402で析出した金属が第2電極402の外部へ漏出することをより確実に抑制することができる。その結果、例えば過充電時における第1電極205と第2電極402との短絡をより確実に抑制することができる。
【0072】
前述した作用効果をより確実に奏する観点からは、第1電極205の細孔容積V1に対する第2電極402の細孔容積V2の比V2/V1の値を、第2活物質411の理論容量に対する第1活物質の211の理論容量の比以上とすることが好ましい。例えば、本形態の第1活物質211はリチウムがドープされた硫黄であり、その理論容量は3344mAh/cm3である。また、本形態の第2活物質411は金属リチウムであり、その理論容量は2061mAh/cm3である。従って、本形態のように、第1活物質211がリチウムがドープされた硫黄であり、第2活物質411が金属リチウムである場合、第1電極205の細孔容積V1に対する第2電極402の細孔容積V2の比V2/V1の値は、3344/2061以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましい。
【0073】
なお、第1電極205の細孔容積V1は、前述した方法により算出した、第1反応部21の細孔容積と第1封孔部22の細孔容積とを合計することにより算出することができる。同様に、第2電極402の細孔容積V2は、前述した方法により算出した、第2反応部41の細孔容積と第2封孔部42の細孔容積とを合計することにより算出することができる。
【0074】
(実験例1)
本例では、種々の試験体を作製し、封孔部22、42による活物質211、411の漏出抑制効果の評価を行った。試験体の作製方法及び評価方法、評価結果を以下に説明する。
【0075】
・試験体T1
試験体T1は、第1電極205が正極、第2電極4を負極として構成された二次電池である。試験体T1の第1電極205は、第1反応部21と、第1反応部21の周囲の全体にわたって配置された第1封孔部22とを有している。第1反応部21は、固体電解質としてのLLZからなる第1多孔質体23と、第1活物質211としての硫黄(S)とを有している。第1封孔部22は、第1多孔質体23と、第1封孔材221としてのシリカガラスとを有している。また、試験体T1のセパレータ3はLLZから構成されており、第2電極4は金属リチウム(Li)板である。
【0076】
試験体T1を作製するに当たっては、まず、LLZの粉末とバインダとを含むセパレータ用混合物を準備した。このセパレータ用混合物を、アプリケータを用いてシート状に成形し、セパレータ3のグリーンシートを作製した。これとは別に、LLZの粉末、バインダ及び造孔材を含む電極用混合物を準備した。この電極用混合物を、アプリケータを用いてシート状に成形し、第1電極205のグリーンシートを作製した。セパレータ3のグリーンシート及び第1電極205のグリーンシートの厚みは、いずれも300μmとした。
【0077】
このようにして形成したセパレータ3のグリーンシートと第1電極205のグリーンシートとを所望の大きさに切断し、両者を重ね合わせた。次いで、セパレータ3のグリーンシートと第1電極205のグリーンシートと温間等方圧プレスによって密着させた後、大気雰囲気中で焼成し、セパレータ3と第1多孔質体23との積層体10を得た。なお、焼成後の第1多孔質体23の気孔率、つまり、第1活物質211や第1封孔材221が細孔231内に充填されていない状態の気孔率は50%であった。
【0078】
次に、ディスペンサーを用い、第1多孔質体23の外周全体にシリカガラス粉末を含むペーストを塗布した。その後、積層体10を加熱してシリカガラス粉末を溶融させることにより、第1多孔質体23の外周に存在する細孔231内に第1封孔材221としてのシリカガラスを充填した。以上により、第1多孔質体23の外周全体に第1封孔部22を形成した。
【0079】
第1封孔部22を形成した後、第1多孔質体23上に、硫黄を含むグリーンシートを重ね合わせた。このグリーンシートを150℃に加熱することにより硫黄を溶融させ、第1多孔質体23の細孔231内に第1活物質211としての硫黄を充填した。以上により、第1封孔部22に囲まれた部分に第1反応部21を形成した。
【0080】
次に、セパレータ3の表面に、スパッタによって金の薄膜を形成した。この薄膜上に金属リチウム板からなる第2電極4を配置し、試験体T1を得た。
【0081】
・試験体T2
試験体T2は、第1封孔部22を有しない以外は試験体T1と同様の構成を有している。試験体T2の作製方法は、第1封孔部22を形成する作業を行わない以外は、試験体T1と同様である。
【0082】
・試験体T3
試験体T3は、第1活物質211としてコバルト酸リチウム(LCO)を使用した以外は、試験体T1と同様の構成を有している。試験体T3の作製方法は、第1活物質211を充填する作業において、コバルト酸リチウムの前駆体溶液を細孔231内に注入した後、前駆体溶液を焼成して細孔内にコバルト酸リチウムを形成した以外は、試験体T1と同様である。
【0083】
・試験体T4
試験体T4は、第1封孔部22を有しない以外は試験体T3と同様の構成を有している。試験体T4の作製方法は、第1封孔部22を形成する作業を行わない以外は、試験体T3と同様である。
【0084】
・試験体T5
試験体T5においては、第1封孔材221として低密度ポリエチレンを使用しようとした。試験体T5の作製に当たっては、試験体T1と同様の方法によりセパレータ3と第1多孔質体23との積層体10を作製した後、第1多孔質体23の外周に存在する細孔231内に溶融した低密度ポリエチレンを充填した。その後、試験体T1と同様の方法により、第1活物質211としての硫黄を細孔231内に充填する作業を行った。
【0085】
しかし、試験体T5において使用した低密度ポリエチレンの融点は約90℃であり、硫黄の融点である約150℃よりも低い。そのため、硫黄を溶融させる過程で低密度ポリエチレンが溶融し、硫黄によって低密度ポリエチレンが第1多孔質体23の外部へ押し出された。更に、第1多孔質体23の外周に低密度ポリエチレンが存在しなくなった結果、第1活物質211としての硫黄が第1多孔質体23の外部へ漏出した。
【0086】
・試験体T6
試験体T6は、第1電極205が正極、第2電極402を負極として構成された単セル11である。試験体T6の第1電極205及びセパレータ3は、試験体T1と同様の構成を有している。試験体T6の第2電極402は、第2反応部41と、第2反応部41の周囲の全体にわたって配置された第2封孔部42とを有している。第2反応部41は、固体電解質としてのLLZからなる第2多孔質体43と、第2活物質411としての金属リチウムとを有している。第2封孔部42は、第2多孔質体43と、第2封孔材421としてのシリカガラスとを有している。
【0087】
試験体T6を作製するに当たっては、まず、LLZの粉末とバインダとを含むセパレータ用混合物を準備した。このセパレータ用混合物を、アプリケータを用いてシート状に成形し、セパレータ3のグリーンシートを作製した。これとは別に、LLZの粉末、バインダ及び造孔材を含む電極用混合物を準備した。この電極用混合物を、アプリケータを用いてシート状に成形し、第1電極205及び第2電極402のグリーンシートを作製した。第1電極205のグリーンシート、セパレータ3のグリーンシート及び第2電極402のグリーンシートの厚みは、いずれも300μmとした。
【0088】
これら3枚のグリーンシートを所望の大きさに切断した後、第1電極205のグリーンシート、セパレータ3のグリーンシート及び第2電極402のグリーンシートの順に重ね合わせた。次いで、3枚のグリーンシートを温間等方圧プレスによって密着させた後、大気雰囲気中で焼成し、第1多孔質体23、セパレータ3及び第2多孔質体43が順次積層された3層構造の積層体10を得た。なお、焼成後の第1多孔質体23の気孔率及び第2多孔質体43の気孔率は、いずれも50%であった。
【0089】
次に、ディスペンサーを用い、第1多孔質体23の外周全体及び第2多孔質体43の外周全体にシリカガラス粉末を含むペーストを塗布した。その後、積層体10を加熱してシリカガラス粉末を溶融させることにより、これらの多孔質体23、43の外周に存在する細孔231、431内にシリカガラスを充填した。以上により、第1多孔質体23の外周に第1封孔部22を形成すると共に、第2多孔質体43の外周に第2封孔部42を形成した。
【0090】
第1封孔部22及び第2封孔部42を形成した後、第2多孔質体43上に、金属リチウム箔を重ね合わせた。この金属リチウム箔を不活性ガス雰囲気中で200℃に加熱することにより金属リチウムを溶融させ、第2多孔質体43の細孔431内に第2活物質411としての金属リチウムを充填した。以上により、第2封孔部42に囲まれた部分に第2反応部41を形成した。
【0091】
その後、第1多孔質体23上に、硫黄を含むグリーンシートを重ね合わせた。このグリーンシートを不活性ガス雰囲気中150℃以上200℃未満の温度に加熱することにより、第2反応部41の金属リチウムを保持しつつ、第1多孔質体23の細孔231内に第1活物質211としての硫黄を充填した。以上により、第1封孔部22に囲まれた部分に第1反応部21を形成し、試験体T6を得た。
【0092】
・試験体T7
試験体T7は、第1封孔材221及び第2封孔材421としてポリフェニレンサルファイド(PPS)を使用した以外は、試験体T6と同様の構成を有している。試験体T7の作製方法は、第1封孔材221及び第2封孔材421を充填する作業において、溶融したPPSを細孔231、431内に充填した以外は、試験体T6と同様である。
【0093】
・試験体T8
試験体T8は、第1封孔材221及び第2封孔材421としてバナジウム(V)系低融点ガラスを使用した以外は、試験体T6と同様の構成を有している。試験体T8の作製方法は、第1封孔材221及び第2封孔材421を充填する作業において、溶融したバナジウム系低融点ガラスを細孔231、431内に充填した以外は、試験体T6と同様である。
【0094】
・試験体T9
試験体T9は、第1封孔材221及び第2封孔材421としてビスマス(Bi)系低融点ガラスを使用した以外は、試験体T6と同様の構成を有している。試験体T9の作製方法は、第1封孔材221及び第2封孔材421を充填する作業において、溶融したビスマス系低融点ガラスを細孔231、431内に充填した以外は、試験体T6と同様である。
【0095】
・試験体T10
試験体T10は、第1封孔材221及び第2封孔材421として鉛(Pb)系低融点ガラスを使用した以外は、試験体T6と同様の構成を有している。試験体T10の作製方法は、第1封孔材221及び第2封孔材421を充填する作業において、溶融した鉛系低融点ガラスを細孔231、431内に充填した以外は、試験体T6と同様である。
【0096】
・試験体T11
試験体T11においては、第1封孔材221及び第2封孔材421としてポリプロピレン(PP)を使用しようとした。試験体T11の作製に当たっては、試験体T6と同様の方法により第1多孔質体23、セパレータ3及び第2多孔質体43を備えた積層体10を作製した後、第1多孔質体23の外周及び第2多孔質体43の外周に存在する細孔231、431内に溶融したポリプロピレンを充填した。その後、試験体T1と同様の方法により、第2活物質411としての金属リチウムを細孔431内に充填する作業を行った。
【0097】
しかし、試験体T11において使用したポリプロピレンの融点は約150℃であり、金属リチウムの融点である約200℃よりも低い。そのため、金属リチウムを溶融させる過程でポリプロピレンが溶融し、金属リチウムによってポリプロピレンが第2多孔質体43の外部へ押し出された。更に、第2多孔質体43の外周にポリプロピレンが存在しなくなった結果、第2活物質411としての金属リチウムが第2多孔質体43の外部へ漏出した。
【0098】
本例において、封孔材221、421による活物質211、411の漏出抑制効果は充放電特性に基づいて評価した。具体的には、各試験体の第1電極205と第2電極4、402との間に電源装置を接続した。そして、充電レートを0.1Cとし、試験体の電圧が2.6Vに達するまで充電を行い、次いで、放電レートを0.1Cとし、試験体の電圧が1.0Vに達するまで放電を行った。表1及び表2の「充放電試験(0.1C)」欄には、充放電が可能であった場合には記号「A」、不可能であった場合には記号「B」を記載した。
【0099】
封孔材221、421の作用効果の評価においては、0.1Cの充放電レートにおいて充放電が可能であった記号「A」の場合を、短絡が生じていないため合格と判定し、充放電が不可能であった記号「B」の場合を、活物質211、411の漏出によって第1電極205と第2電極402とが短絡したため不合格と判定した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
試験体T1、試験体T3及び試験体T6~T10においては、多孔質体23、43の周囲に存在する細孔231、431が封孔材221、421によって閉鎖されていた。そのため、試験体の作製過程において、多孔質体23、43の内部から外部への活物質211、411の漏出が起こらなかった。表1及び表2に示すように、これらの試験体は、0.1Cの充放電レートで充放電を行うことができた。これらの結果から、試験体T1、試験体T3及び試験体T6~T10のように反応部21、41の周囲に封孔部22、42を配置することにより、活物質211、411の漏出による第1電極205と第2電極4、402との短絡を抑制可能であることが理解できる。
【0103】
一方、試験体T2及び試験体T4においては、第1多孔質体23の細孔231が、単セル11の積層方向から視た平面視における外周端縁に開口していた。そのため、試験体の作製過程において、第1多孔質体23の内部から外部への活物質211の漏出が起こった。表1及び表2に示すように、これらの試験体は、0.1Cの充放電レートで充放電を行うことができなかった。
【0104】
また、試験体T5及び試験体T10においては、前述したように、ポリエチレンやポリプロピレンが活物質211、411の充填作業中に溶融したため、多孔質体23、43の周囲に封孔部22、42を形成することができなかった。そのため、これらの試験体は、試験体の作製過程において多孔質体23、43の内部から外部への活物質211、411の漏出が起こり、0.1Cの充放電レートで充放電を行うことができなかった。
【0105】
(実験例2)
本例では、電気絶縁性の封孔材221、421または電気伝導性の封孔材221、421のいずれかを使用して試験体を作製し、作製過程における短絡抑制効果の評価を行った。本例では、実験例1における試験体T6を使用した他、新たに2種の試験体を作製した。試験体の作製方法及び評価方法、評価結果を以下に説明する。
・試験体T12
試験体T12は、第1封孔材221及び第2封孔材421としてLLZを使用した以外は、試験体T6と同様の構成を有している。試験体T12の作製方法は、以下の通りである。まず、LLZの粉末とバインダとを含むセパレータ用混合物と、LLZの粉末、バインダ及び造孔材を含む電極用混合物とを準備した。次に、アプリケータを用いて電極用混合物をシート状に成形し、第1反応部21のグリーンシートを作製した。次いで、第1反応部21のグリーンシートの周囲に、アプリケータを用いてセパレータ用混合物をシート状に成形し、第1封孔部22のグリーンシートを配置した。
【0106】
以上により得られた第1電極205のグリーンシート上に、アプリケータを用いてセパレータ用混合物をシート状に成形しつつ重ね合わせ、セパレータ3のグリーンシートを積層した。更に、セパレータ3のグリーンシート上に、第1電極205のグリーンシートと同様の手順により、第2反応部41のグリーンシートと、第2封孔部42のグリーンシートと備えた第2電極402のグリーンシートを積層した。第1電極205のグリーンシート、セパレータ3のグリーンシート及び第2電極402のグリーンシートの厚みは、いずれも300μmとした。
【0107】
次いで、これら3層のグリーンシートを温間等方圧プレスによって密着させた後、大気雰囲気中で焼成し、第1多孔質体23、セパレータ3及び第2多孔質体43が順次積層されるとともに、第1多孔質体23及び第2多孔質体43の周囲にそれぞれ第1封孔部22及び第2封孔部42が設けられた3層構造の積層体10を得た。
【0108】
その後、試験体T6と同様の方法により、第2多孔質体43の細孔431内に金属リチウムを充填し、次いで第1多孔質体23の細孔231内に硫黄を充填した。以上により、試験体T12を得た。
【0109】
・試験体T13
試験体T13は、第1封孔材221及び第2封孔材421として低融点銅合金を使用した以外は、試験体T6と同様の構成を有している。試験体T13を作製するに当たっては、第1封孔材221及び第2封孔材421を充填する作業において、低融点銅合金のペーストを細孔231、431内に充填した後、ペーストを焼成して低融点銅合金を溶融させた。以上により細孔231、431を低融点銅合金で閉鎖した以外は、試験体T6と同様の方法により試験体T13を作製した。
【0110】
本例において、作製過程における短絡抑制効果は、短絡の発生率に基づいて評価した。具体的には、各試験体を5個作製し、実験例1と同様の方法により充放電試験を行った。そして、短絡の発生率、つまり、作製した試験体の数に対する、0.1Cでの充放電が不可能であった試験体の数の比率を算出した。表3の「短絡の発生率」に、各試験体における短絡の発生率を示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表3に示したように、電気絶縁性の封孔材221、421を使用した試験体T6及び試験体T12においては、短絡の発生を防止することができた。一方、試験体T13は、導電性を有する封孔材221、421を使用したため、試験体T6及び試験体T12に比べて短絡の発生率が高くなった。
【0113】
(実験例3)
本例では、封孔部22、42の気孔率を種々の値に調整して試験体を作製し、活物質211、411の漏出抑制効果の評価を行った。
【0114】
・試験体T14、試験体T15
試験体T14及び試験体T15は、第1封孔部22の気孔率及び第2封孔部42の気孔率を表4に示す値にした以外は、試験体T12と同様の構成を有している。これらの試験体の作製方法は、第1封孔材221及び第2封孔材421のグリーンシートを形成する際に、LLZの粉末、バインダ及び造孔材を含む混合物を使用して気孔率を調節した以外は、試験体T12と同様である。
【0115】
本例における活物質211、411の漏出抑制効果は、実験例2と同様に、短絡の発生率に基づいて評価した。表4の「短絡の発生率」に、各試験体における短絡の発生率を示す。
【0116】
【表4】
【0117】
表4に示した結果によれば、封孔部22、42の気孔率を10%以下とすることにより、作製過程における活物質211、411の漏出をより効果的に抑制することが可能であることが理解できる。
【0118】
(実験例4)
本例では、封孔部22、42の気孔率及び第1電極205の細孔容積と第2電極402の細孔容積との比を、電極205、402の厚みや気孔率を変化させることにより種々の値に調整して試験体を作製し、過充電時の短絡抑制効果の評価を行った。本例では、実験例2における試験体T12を使用した他、新たに3種の試験体を作製した。試験体の作製方法及び評価方法、評価結果を以下に説明する。
【0119】
・試験体T16
試験体T16は、第1封孔部22の気孔率及び第2封孔部42の気孔率を5%にするとともに、第1電極205の細孔容積V1と第2電極402の細孔容積V2との比V2/V1の値を表5に示す値にした以外は、試験体T12と同様の構成を有している。試験体T16の作製方法は、第1封孔材221及び第2封孔材421のグリーンシートを形成する際に、LLZの粉末、バインダ及び造孔材を含む混合物を使用して気孔率を調節し、さらに第2電極402の厚みを第1電極205の厚みの1.7倍にすることによって細孔431の容積を1.7倍にした以外は、試験体T12と同様である。
【0120】
・試験体T17
試験体T17は、第1電極205の細孔容積V1と、第2電極402の細孔容積V2との比V2/V1の値を表5に示す値にした以外は、試験体T12と同様の構成を有している。試験体T17の作製方法は、第2電極402の厚みを第1電極205の厚みの1.7倍にすることによって細孔431の容積を1.7倍にした以外は、試験体T12と同様である。
【0121】
・試験体T18
試験体T18は、第1電極205の細孔容積V1と、第2電極402の細孔容積V2との比V2/V1の値を表5に示す値にした以外は、試験体T12と同様の構成を有している。試験体T18の作製方法は、第2多孔質体43の気孔率を第1多孔質体23の1.7倍にすることによって細孔431の容積を1.7倍にした以外は、試験体T12と同様である。
【0122】
本例において、過充電時の短絡抑制効果の評価は、以下の方法により行った。まず、各試験体の第1電極205と第2電極4、402との間に電源装置を接続した。そして、充電レートを0.1Cとし、試験体の電圧が3.2Vに達するまで充電を行い、短絡の有無を評価した。表1及び表2の「過充電試験」欄には、短絡が発生しなかった場合には記号「A」、発生した場合には記号「B」を記載した。
【0123】
【表5】
【0124】
表5に示した結果によれば、封孔部22、42の気孔率を5%以下とし、さらに第2電極402の細孔容積V2を第1電極205の細孔容積V1の1.7倍以上とすることにより、過充電時における第1電極205と第2電極402との短絡をより効果的に抑制することが可能であることが理解できる。
【0125】
(実験例5)
本例では、細孔231、431内に被覆層を形成した試験体を作製し、充放電特性の評価を行った。
【0126】
・試験体T19
試験体T19は、第2反応部41の内表面が金からなる被覆層によって被覆されている以外は、試験体T12と同様の構成を有している。試験体T19の作製方法は、積層体10を作製した後、ALD法によって第2反応部41の内表面に被覆層を形成した以外は、試験体T12と同様である。
【0127】
本例において、充放電レートの向上効果は充放電特性に基づいて評価した。具体的には、充放電レートを1Cに変更した以外は、実験例1と同様の方法により充放電試験を行った。表6の「充放電試験(1C)」欄には、充放電が可能であった場合には記号「A」、不可能であった場合には記号「B」を記載した。
【0128】
【表6】
【0129】
表6に示した結果によれば、反応部41の内表面に被覆層を設け、金属からなる活物質411を被覆層と接触させることにより、高率での充放電が可能であることが理解できる。
【0130】
本発明は上記各実施形態、参考形態及び実験例の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0131】
1、102、103、104、105、106 二次電池
11 単セル
2、202、203、204、205 第1電極
21 反応部
211 活物質
22 封孔部
221 封孔材
23 多孔質体
231 細孔
3 セパレータ
4、402 第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9