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  • 特許-複数主軸工作機械 図1
  • 特許-複数主軸工作機械 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】複数主軸工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20230721BHJP
   B23Q 3/157 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B23Q3/155 G
B23Q3/157 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019146210
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021024062
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】泉井 泰希
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01493531(EP,A1)
【文献】特開2014-133299(JP,A)
【文献】特開2013-248709(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027328(WO,A1)
【文献】実公平01-021716(JP,Y2)
【文献】特表平10-512815(JP,A)
【文献】中国実用新案第208304526(CN,U)
【文献】特開昭61-065743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155
B23Q 3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工室と工具収納室と複数の主軸とを備え、加工室と工具収納室とは前後に配置され、複数の主軸のそれぞれが前後移動可能となされたサドルに上下移動可能に設けられたラムに取り付けられている工作機械であって、
工具収納室に各主軸に対応して工具交換装置が設けられているとともに、加工室と工具収納室との間を出入りする際に開閉されるシャッターが各主軸ごとに設けられており、
加工に際し、各シャッターは、通常、閉位置とされ、各主軸が加工室と工具収納室との間を出入りする際にだけ対応するシャッターが開位置に移動させられ、それ以外は、各シャッターが閉位置に維持され、
工具を交換しながら、複数の主軸を交互に使用して連続して加工を行うことができるとともに、工具交換後の主軸は、加工室および工具収納室のいずれにおいても待機可能とされていることを特徴とする複数主軸工作機械。
【請求項2】
工具交換装置は、工具交換アームを使用しないアームレスATCであることを特徴とする請求項1の複数主軸工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械に関し、特に、複数の主軸を有する複数主軸工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
加工室と工具収納室とを備え、主軸によって加工を行う工作機械において、主軸の数は、通常1つとされているが、2以上の主軸を備えている複数主軸工作機械も知られている(特許文献1)。複数主軸工作機械では、常に特定の主軸で加工が行われることにより、生産性が高められる。
【0003】
特許文献1のものでは、2本の主軸に対して、2本の工具交換アームが使用され、加工室と工具収納室との間を出入りする際に開閉されるATCシャッターは1つとされ、また、交換用工具を保管するマガジンも1つとされている。
【0004】
なお、工作機械の工具交換装置(ATC)として、工具交換アームを使用するものと、工具交換アームを使用しないもの(アームレスATC)とが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-326171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数主軸工作機械において、工具交換アームを使用せずに、工具の自動交換を行う場合、常に特定の主軸で加工が行われていることから、加工が終了して、工具交換が必要な主軸の工具交換時に、その動作途中でATCシャッターを閉めることができない。そのため、加工中の主軸により発生する切粉等の異物が加工が終了して工具交換を行う必要のある主軸のテーパーや工具のテーパーに付着し、工具交換動作不良を引き起こすという問題があった。また、その切粉による問題を回避するためには、複数主軸の工具を同時にATC動作により工具交換を行う必要があり、機械運用上の制約となっているという問題もあった。
【0007】
この発明の目的は、切粉による工具交換動作不良を防止するとともに、機械運用上の自由度も向上させた複数主軸工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による複数主軸工作機械は、加工室と工具収納室とを備え、複数の主軸によって加工を行う工作機械であって、工具収納室に各主軸に対応して工具交換装置が設けられているとともに、加工室と工具収納室との間を出入りする際に開閉されるシャッターが各主軸ごとに設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
この発明の複数主軸工作機械によると、各シャッターは、通常、閉位置とされていて、いずれかの主軸による加工から他の主軸による加工に切り換わる場合、各主軸が加工室と工具収納室との間を出入りする際にだけ対応するシャッタを開位置に移動させ、それ以外は、各シャッターが閉位置に維持されるようにできる。したがって、加工中の切粉が工具収納室に入ることが防止され、切粉による工具交換動作不良が防止される。
【0010】
ここで、工具交換後の主軸は、加工室で待機してもよいし、工具収納室で待機してもよいので、工具収納室で待機させることで、加工室に待機する主軸と加工物とが干渉することを防止することができ、加工領域の拡大が可能となる。
【0011】
また、工具収納室に各主軸に対応して工具交換装置が設けられているので、複数主軸で、異なるタイミングでの工具交換が可能となるため、機械運用上の自由度が向上する。
【0012】
工具交換装置は、工具交換アームを使用しないアームレスATCであることが好ましい。
【0013】
アームレスATCは、工具交換アームを使用するATCと比べた場合、安価で設置スペースが少なくて済むというメリットを有し、工具交換時間が長いというデメリットを有している。上記の複数主軸工作機械によれば、加工を継続しながら、その間に工具交換ができるので、工具交換時間が長くなったとしても、トータルの加工時間に影響を及ぼさないものとなり、アームレスATCが持つデメリットを解消して、そのメリットを生かすことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の複数主軸工作機械によれば、加工室と工具収納室との間を出入りする際に開閉されるシャッターが各主軸ごとに設けられているので、切粉による工具交換動作不良を防止することができるとともに、機械運用上の自由度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、この発明による複数主軸工作機械で2つの主軸を備えた場合の1実施形態を示す斜視図である。
図2図2は、同実施形態において、一方の主軸が加工室に、他方の主軸が工具収納室にある場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1および図2を参照して、この発明の複数主軸工作機械の実施形態について説明する。以下の説明において、加工室側を前、工具収納室側を後といい、左右については、前から後を見た場合の左右をいうものとする。
【0017】
複数主軸工作機械(1)は、左右に並ぶ2つの主軸(9A)(9B)を有するもので、基台として機能するベッド(2)の後側に、左右コラム(3A)(3B)が固定されている。そして、ベッド(2)の前側が加工室(4)とされ、加工室(4)の後側に、仕切り壁(6)を介して工具収納室(5)が設けられている。
【0018】
加工室(4)には、加工物を支持して回転および左右移動可能なテーブル(図示略)が配置され、2つの主軸(9A)(9B)を交互に使用して加工を行うことにより、効率的な加工を行うことができる。
【0019】
左右コラム(3A)(3B)の上端部には、左右のサドル(7A)(7B)が前後移動可能に設けられている。左右のサドル(7A)(7B)には、左右のラム(8A)(8B)が上下移動可能に設けられている。左右の主軸(9A)(9B)は、左右のラム(8A)(8B)の下端部に取り付けられている。
【0020】
工具収納室(5)には、左右の主軸(9A)(9B)に対応して、交換用工具を保管する左右のマガジン(10A)(10B)が設けられている。各マガジン(10A)(10B)は、周囲に工具をぶら下げる形で保持する円盤(11)と、これを回転させるモータ(12)とを備えている。
【0021】
各マガジン(10A)(10B)は、アームレス工具交換装置(アームレスATC)を構成しており、各主軸(9A)(9B)と各マガジン(10A)(10B)との間では、円盤(11)の回転と主軸(9A)(9B)の相対移動(主軸(9A)(9B)を移動させるサドル(7A)(7B)およびラム(8A)(8B)の相対移動)を利用して、交換アームを用いずに直接的に工具の授受を行うことができる。
【0022】
図1は、2つの主軸(9A)(9B)が加工室(4)で待機している状態を示し、図2は、一方の主軸(9A)が加工室(4)にあり、他方の主軸(9B)が工具収納室(5)にある状態を示している。
【0023】
仕切り壁(6)には、各主軸(9A)(9B)が加工室(4)と工具収納室(5)との間を出入りするための上方に開口した主軸通過用開口およびこの開口を開閉する左右のシャッター(13A)(13B)が各主軸(9A)(9B)に対応して設けられている。各シャッター(13A)(13B)は、通常、図に二点鎖線で示す閉位置にあり、必要な時に一時的に開位置とされ(図の左側に移動し)、各主軸(9A)(9B)の出入りが終了後すぐに、閉位置に戻るようになされている。シャッター(13A)(13B)の上方は、開放されており、各シャッター(13A)(13B)が開位置にある場合、左右のラム(8A)(8B)が仕切り壁(6)に干渉することなく、各主軸(9A)(9B)が加工室(4)と工具収納室(5)との間を出入りすることができる。
【0024】
各マガジン(10A)(10B)は、左右のシャッター(13A)(13B)から臨むことができる位置に配されており、こうして、左右の主軸(9A)(9B)に対応して、左右のシャッター(13A)(13B)が設けられており、左右のシャッター(13A)(13B)を開位置にすることで、左右の主軸(9A)(9B)が左右のマガジン(10A)(10B)の配置位置まで移動することができる。
【0025】
上記複数主軸工作機械(1)の実施形態によると、加工・工具交換動作は、例えば、以下のようにして行われる。
【0026】
1.加工室(4)において、左の主軸(9A)による加工が行われて、それが終了する。このとき、左のシャッター(13A)は閉位置にあり、また、右の主軸(9B)は工具収納室(5)で待機中で、右のシャッター(13B)は閉位置にある。
【0027】
2.加工が終了すると、左のシャッター(13A)が開位置とされ、左の主軸(9A)が加工室(4)から工具収納室(5)へ移動する。この後、左のシャッター(13A)は閉位置とされる。同時に、右のシャッター(13B)が開位置とされ、右の主軸(9B)が工具収納室(5)から加工室(4)に移動する。この後、右のシャッター(13B)は閉位置とされる。
【0028】
3.加工室(4)において、右の主軸(9B)による加工が行われる。同時に、工具収納室(5)において、左のラム(8A)が上下して左のマガジン(10A)に保持された交換用工具に左の主軸(9A)の工具を交換する。左のシャッター(13A)および右のシャッター(13B)は閉位置のまま維持される。
【0029】
4.加工室(4)において、右の主軸(9B)による加工が継続され、工具収納室(5)において、左の主軸(9A)の工具交換が完了する。左のシャッター(13A)が開位置とされ、左の主軸(9A)が工具収納室(5)から加工室(4)に移動し、加工室(4)で待機する。この後、左のシャッター(13A)は閉位置とされる。ここで、左の主軸(9A)の工具収納室(5)から加工室(4)への移動は、右の主軸(9B)による加工が終了するまでに行えばよく、左の主軸(9A)は、工具収納室(5)で待機してもよい(右の主軸(9B)による加工が終了するときには、加工室(4)で待機している必要がある。)。
【0030】
5.右の主軸(9B)が加工を終了すると、右のシャッター(13B)が開位置とされ、右の主軸(9B)が加工室(4)から工具収納室(5)へ移動する。この後、右のシャッター(13B)は閉位置とされる。
【0031】
6.加工室(4)で待機していた左の主軸(9A)による加工が開始し、工具収納室(5)においては、右のラム(8B)が上下して右のマガジン(10B)に保持された交換用工具に右の主軸(9B)の工具を交換する。左のシャッター(13A)および右のシャッター(13B)は閉位置のまま維持される。
【0032】
7.同様の動作を繰り返すことで、工具を交換しながら、左右の主軸(9A)(9B)を交互に使用して連続して加工を行うことができる。
【0033】
上記の加工・工具交換動作において、各シャッター(13A)(13B)は、通常、閉位置に維持されていることから、加工中の切粉が工具収納室(5)に入ることが防止され、切粉による工具交換動作不良が防止される。また、工具交換後の主軸(9A)(9B)は、加工室(4)で待機してもよいし、工具収納室(5)で待機してもよいので、工具収納室(5)で待機させることで、加工室(4)に待機する主軸(9A)(9B)と加工物とが干渉することを防止することができ、加工領域の拡大が可能となる。
【0034】
また、工具収納室(5)に各主軸(9A)(9B)に対応してマガジン(工具交換装置)(10A)(10B)が設けられているので、各主軸(9A)(9B)で、異なるタイミングでの工具交換が可能となるため、機械運用上の自由度が向上する。
【0035】
なお、上記実施形態は、2つの主軸(9A)(9B)について説明したが、主軸は3つ以上とすることもできる。
【0036】
また、工具交換装置は、アームレスATCではなく、交換アームを使用するATCとすることもできる。アームレスATCとした場合、アームレスATCが持つ工具交換時間が長いというデメリットを解消して、安価で設置スペースが少なくて済むというメリットを生かすことができ、好ましい組み合わせとなる。
【符号の説明】
【0037】
(1):工作機械
(4):加工室
(5):工具収納室
(9A)(9B):左右の主軸
(10A)(10B):左右のマガジン(工具交換装置)
(13A)(13B):左右のシャッター
図1
図2