(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ヒートプレス機
(51)【国際特許分類】
B65C 9/24 20060101AFI20230721BHJP
D06C 7/00 20060101ALI20230721BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20230721BHJP
D06C 15/10 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B65C9/24
D06C7/00 Z
B44C1/17 F
D06C15/10
(21)【出願番号】P 2019148561
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000105062
【氏名又は名称】グラフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】荒川 康孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真弓
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-178897(JP,A)
【文献】特開平04-237560(JP,A)
【文献】特開2019-063866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65C 9/00
D06C 7/00
B44C 1/00
D06C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写物に対し熱転写シートを押圧するとともに加熱することで所望の熱転写を行うヒートプレス機であって、
該ヒートプレス機の本体となるヒートプレス本体と、
前記所望の熱転写を行うために前記ヒートプレス本体による熱転写処理後に用いられ、発熱することが可能な発熱部を有するコテ状の発熱コテと、を備え、
前記ヒートプレス本体の所定位置には、前記発熱コテを着脱可能に収納することが可能なコテ収納部が形成され、
該コテ収納部の内部において前記発熱コテが収納されたときに前記発熱部に対応する位置には、前記コテ収納部よりも高い断熱性を有する断熱部材が設けられ
、
前記ヒートプレス本体は、
前記被転写物及び前記熱転写シートを載置するための載置部と、
前記被転写物及び前記熱転写シートを前記載置部とで挟み込むように設けられ、前記被転写物に対し前記熱転写シートを加熱押圧することが可能な加熱押圧部と、
前記載置部に対して前記加熱押圧部を回転可能となるように連結する連結軸と、を備え、
該連結軸は、前記載置部に設けられた第1ヒンジブラケットと、前記加熱押圧部に設けられた第2ヒンジブラケットとに軸支されており、
前記発熱コテは、前記コテ収納部となる、前記第1ヒンジブラケット及び前記第2ヒンジブラケットの一方の内部に一体的に収納されていることを特徴とするヒートプレス機。
【請求項2】
前記発熱コテは、該発熱コテの先端部分に前記発熱部を有し、
前記断熱部材は、前記コテ収納部に前記発熱コテが収納されたときに前記発熱部の先端及び外周を覆う位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートプレス機。
【請求項3】
前記発熱コテは、
前記ヒートプレス本体とは別体で設けられ、
前記発熱部を発熱させるために、前記コテ収納部に収納されたときに前記ヒートプレス本体と電気的に接続されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートプレス機。
【請求項4】
前記発熱コテは、前記コテ収納部に収納されたときに前記ヒートプレス本体を通じて供給される電力を充電するとともに、前記発熱部を発熱させるために電力を供給するバッテリーを有していることを特徴とする請求項3に記載のヒートプレス機。
【請求項5】
前記発熱コテは、該発熱コテの本体部分となるコテ本体部と、該コテ本体部の長手方向の一端部から突出するように延びている前記発熱部と、を有し、
前記発熱コテを前記長手方向から見たときに、前記発熱部が前記コテ本体部の外周から外側に張り出さないように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒートプレス機。
【請求項6】
前記発熱コテは、前記コテ本体部のうち前記発熱部が設けられた一端側とは反対側の端部に設けられ、前記コテ収納部に収納されたときに該コテ収納部の開口部の外縁に当接する当接部を有し、
該当接部は、前記コテ収納部から外部に露出するように設けられ、前記ヒートプレス本体と一体的な形状を有していることを特徴とする請求項5に記載のヒートプレス機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートプレス機に係り、特に、ヒートプレス本体による熱転写処理後に用いられる発熱コテを備えたヒートプレス機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被転写物となる衣類等に対して熱転写シートを押圧するとともに加熱することで熱転写処理を行うことが可能なヒートプレス機が知られている。
熱転写シート(アイロンプリント)は、所定の模様や絵柄からなる印刷層の裏面に熱溶融性の接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)が塗布されており、所定の温度環境下で接着剤を溶融させて所定の圧力を加えることで接着剤が被転写物に浸透し、当該被転写物に対し熱転写シート(印刷層)を一体化させることができる。
上記ヒートプレス機の中には、比較的小型であって持ち運び可能なコンパクトタイプのヒートプレス機も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のヒートプレス機では、被転写物及び熱転写シートを載置するための載置プレートと、ユーザーが把持可能なハンドル部を有し、被転写物及び熱転写シートを載置プレートとで挟み込むことで押圧することが可能な押圧プレートと、から主に構成されており、押圧プレートの底面には、被転写物に対し熱転写シートを熱圧着することが可能なヒートプレートが取り付けられている。
また、押圧プレートの上面には、ヒートプレス機を動作させるための各種操作ボタンや、発熱温度及び発熱時間を表示するための表示ディスプレイが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/028135号明細書
【文献】特開2009-820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなヒートプレス機においては、被転写物に対し熱転写シートを加熱押圧することで所望の熱転写を行うところ、被転写物の種類や形状によっては、当該被転写物に熱転写シートを貼り付けたときに角部やエッジ部分に微小な凹凸(ツノ)が生じることがあって、貼り付けたシートの一部が剥がれ易くなってしまう虞があった。
特に、熱転写シートがカッティングプロッタによってカットされたカッティング用シートの場合には、比較的複雑な形状を有しているため、熱転写したときに微小な凹凸が生じてしまうことがあった。
上記場合に対処すべく、ヒートプレス本体による熱転写処理後に補助的に用いられる発熱治具が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2のような発熱治具は、発熱することが可能な発熱部と、発熱部の発熱温度を制御する温度コントローラと、を有しており、上記微小な凹凸(ツノ)が生じてしまった場合に当該凹凸部分に対し発熱部を押し当てることで凹凸(ツノ)をなくすことができる。
【0006】
しかしながら、ユーザーの利便性を向上させるべく、上記ヒートプレス本体に上記のような発熱治具を収納させたヒートプレス機は存在せず、また、そのために発熱治具をコンパクト化することや、ヒートプレス本体及び発熱治具の形状を工夫したものは存在しなかった。
また、ユーザーの利便性を一層向上させるべく、ヒートプレス本体に発熱治具を収納させたときに、例えば、ヒートプレス本体の機能を有効利用して発熱治具を発熱させるような工夫等が施されたものは存在しなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ユーザーの利便性を向上させたヒートプレス機を提供することにある。
特に、ヒートプレス本体による熱転写処理後に用いられる発熱治具(発熱コテ)を好適に収納させたヒートプレス機を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ヒートプレス本体に発熱治具を収納させたときに、ヒートプレス本体の機能を利用してユーザーが発熱治具を好適に使用することが可能なヒートプレス機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明のヒートプレス機によれば、被転写物に対し熱転写シートを押圧するとともに加熱することで所望の熱転写を行うヒートプレス機であって、該ヒートプレス機の本体となるヒートプレス本体と、前記所望の熱転写を行うために前記ヒートプレス本体による熱転写処理後に用いられ、発熱することが可能な発熱部を有するコテ状の発熱コテと、を備え、前記ヒートプレス本体の所定位置には、前記発熱コテを着脱可能に収納することが可能なコテ収納部が形成され、該コテ収納部の内部において前記発熱コテが収納されたときに前記発熱部に対応する位置には、前記コテ収納部よりも高い断熱性を有する断熱部材が設けられ、前記ヒートプレス本体は、前記被転写物及び前記熱転写シートを載置するための載置部と、前記被転写物及び前記熱転写シートを前記載置部とで挟み込むように設けられ、前記被転写物に対し前記熱転写シートを加熱押圧することが可能な加熱押圧部と、前記載置部に対して前記加熱押圧部を回転可能となるように連結する連結軸と、を備え、該連結軸は、前記載置部に設けられた第1ヒンジブラケットと、前記加熱押圧部に設けられた第2ヒンジブラケットとに軸支されており、前記発熱コテは、前記コテ収納部となる、前記第1ヒンジブラケット及び前記第2ヒンジブラケットの一方の内部に一体的に収納されていること、により解決される。
上記構成により、ユーザーの利便性を向上させるべく、ヒートプレス本体に発熱コテを好適に収納させたヒートプレス機を実現することができる。
また、コテ収納部のうち発熱コテが収納されたときに発熱部に対応する位置には、断熱性を有する断熱部材が設けられているため、発熱部が発熱した状態で発熱コテを収納させた場合であっても、ヒートプレス本体側に与える熱の影響を抑制できる。
上記構成により、ヒートプレス本体のうち、スペースを有効に活用し易い部位であって、かつ、ユーザーの手が届き易い部位にコテ収納部を形成し、発熱コテを一体的に収納させることができる。
また上記構成により、ヒートプレス本体のうち、スペースを有効に活用し易い部位であって、かつ、ユーザーの手が届き易い部位にコテ収納部を形成し、発熱コテを一体的に収納させることができる。
【0009】
このとき、前記発熱コテは、該発熱コテの先端部分に前記発熱部を有し、前記断熱部材は、前記コテ収納部に前記発熱コテが収納されたときに前記発熱部の先端及び外周を覆う位置に配置されていると良い。
上記構成により、コテ収納部に発熱コテが収納されたときに、発熱部を断熱部材によって好適に覆うことができ、ヒートプレス本体側に与える熱の影響を一層抑制できる。
【0010】
このとき、前記発熱コテは、前記ヒートプレス本体とは別体で設けられ、前記発熱部を発熱させるために、前記コテ収納部に収納されたときに前記ヒートプレス本体と電気的に接続されるように構成されていると良い。
上記構成により、ヒートプレス本体に発熱コテを収納させたときに、ヒートプレス本体の機能を利用して発熱コテを同時に発熱させるような工夫を施すことができる。
具体的には、ヒートプレス本体が外部電源から電力の供給を受けたときに、ヒートプレス本体が備えるヒータとともに発熱コテも発熱させるような工夫を施すことができる。
【0011】
このとき、前記発熱コテは、前記コテ収納部に収納されたときに前記ヒートプレス本体を通じて供給される電力を充電するとともに、前記発熱部を発熱させるために電力を供給するバッテリーを有していると良い。
上記のように、発熱コテがバッテリーを有しているため、例えば、バッテリーを予め充電させておけば、ユーザーが発熱コテを使用するタイミングに合わせて当該発熱コテを発熱させることが可能となる。
【0012】
このとき、前記発熱コテは、該発熱コテの本体部分となるコテ本体部と、該コテ本体部の長手方向の一端部から突出するように延びている前記発熱部と、を有し、前記発熱コテを前記長手方向から見たときに、前記発熱部が前記コテ本体部の外周から外側に張り出さないように形成されていると良い。
上記構成により、発熱コテの形状をコンパクト化することができ、ヒートプレス本体に発熱コテをコンパクトに収納することができる。
【0013】
このとき、前記発熱コテは、前記コテ本体部のうち前記発熱部が設けられた一端側とは反対側の端部に設けられ、前記コテ収納部に収納されたときに該コテ収納部の開口部の外縁に当接する当接部を有し、該当接部は、前記コテ収納部から外部に露出するように設けられ、前記ヒートプレス本体と一体的な形状を有していると良い。
上記構成により、コテ収納部に発熱コテが収納されたときに、当該発熱コテを位置決めすることができる。そのため、発熱コテの発熱部を断熱部材によって好適に覆い易くなり、またヒートプレス本体に対して発熱コテを好適に電気接続することができる。
また、ヒートプレス本体に対し発熱コテを一体的に収納させることができるため、ヒートプレス機の意匠性を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のヒートプレス機によれば、ユーザーの利便性を向上させることができる。特に、ヒートプレス本体による熱転写処理後に用いられる発熱治具(発熱コテ)を好適に収納させることができる。
また、ヒートプレス本体に発熱治具を収納させたときに、ヒートプレス本体の機能を利用してユーザーが発熱治具を好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態のヒートプレス機を示す外観斜視図である。
【
図2】ヒートプレス機の斜視図であって、加熱押圧部が開いた状態を示す図である。
【
図3】ヒートプレス機の載置部上に被転写物及び熱転写シートを載置した状態を示す図である。
【
図4】
図2の要部拡大図であって、ヒートプレス本体、発熱コテの分解斜視図である。
【
図5】ヒートプレス本体のユーザー操作部、ユーザー表示部を示す図である。
【
図6】ヒートプレス本体、発熱コテのハード構成、ソフト構成を示すブロック図である。
【
図7B】発熱コテの側面図であって、部分断面図である。
【
図8A】ヒートプレス本体のコテ収納部に発熱コテが収納された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について
図1-
図8A,Bを参照して説明する。
本実施形態は、被転写物に対し熱転写シートを押圧するとともに加熱することで所望の熱転写を行うヒートプレス機であって、ヒートプレス機の本体となるヒートプレス本体と、所望の熱転写を行うためにヒートプレス本体による熱転写処理後に用いられ、発熱することが可能な発熱部を先端部分に有するコテ状の発熱コテとを備えており、ヒートプレス本体の所定位置には、発熱コテを着脱可能に収納することが可能なコテ収納部が形成されており、当該コテ収納部の内部において発熱コテが収納されたときに発熱部に対応する位置には、コテ収納部よりも高い断熱性を有する断熱部材が設けられていることを特徴とする発明に関するものである。
【0018】
本実施形態のヒートプレス機Hは、
図1-
図6に示すように、持ち運び可能なコンパクトタイプのヒートプレス機であって、ユーザー操作の入力を受け付けて予め設定された温度環境下で、
図3に示す被転写物H1に対し熱転写シートH2を加熱押圧することで所望の熱転写を行うものである。
ヒートプレス機Hは、ヒートプレス機Hの本体となるヒートプレス本体1と、所望の熱転写を行うためにヒートプレス本体1による熱転写処理後に用いられるコテ状の発熱コテ100と、から主に構成されている。
被転写物H1は、
図3に示すように、熱転写シートH2が転写される基材となるものであって、具体的には、衣類等の繊維製品が挙げられる。なお、当該繊維製品に特に限定されるものではなく、熱転写可能な基材であれば広く適用可能である。
熱転写シートH2は、印刷層の裏面に熱溶融性の接着層が形成されたものであって、具体的には、熱転写処理前にカッティングプロッタ等によって予め所望の形状にカットされたシートが挙げられる。なお、熱転写可能なシートであれば特に限定されるものではない。
【0019】
ヒートプレス本体1は、
図1、
図2に示すように、被転写物H1及び熱転写シートH2を載置するための載置部10と、被転写物H1及び熱転写シートH2を載置部10とで挟み込むように設けられ、被転写物H1に対し熱転写シートH2を加熱押圧することが可能な加熱押圧部20と、載置部10に対して加熱押圧部20を回転可能となるように連結する連結軸30と、ユーザー操作の入力を受け付けるためのユーザー操作部40と、各種設定事項の内容やメッセージを表示するためのユーザー表示部50と、ヒートプレス本体1の内部に設けられ、各種演算・制御を実行するための制御コントローラ60と、から主に構成されている。
また、ヒートプレス本体1の所定位置には、
図4に示すように、発熱コテ100を着脱可能に収納することが可能なコテ収納部70が形成されている。
【0020】
載置部10は、
図2に示すように、ヒートプレス本体1の載置台となる部材であって、載置部10の上面には、耐熱性を有する矩形板状の載置マット11が取り付けられており、また、当該上面において載置マット11よりも連結軸30側に位置する部分には、ヒートプレス本体1の幅方向に沿って延びている矩形状の矩形溝12が形成されている。
載置マット11は、例えばフッ素樹脂製の樹脂マットであって、加熱押圧部20の底面に設けられたヒータ23と対向する位置に配置されている。
矩形溝12は、熱転写処理を行うにあたって、載置部10上に載置された被転写物H1のうち被転写領域とはならない部分が挟み込まれることで高さ位置にズレが生じないようにするための被転写物用の収納溝である。
【0021】
載置部10の長さ方向の一端部には、
図4に示すように、ヒートプレス本体1の幅方向に沿って延びる連結軸30を軸支するための左側ヒンジブラケット13と、発熱コテ100を内部に収納するための右側ヒンジブラケット14と、がそれぞれ間隔を空けて形成されている。
左側ヒンジブラケット13は、略円筒形状からなり、加熱押圧部20に設けられた円筒形状の中央ヒンジブラケット22とともに連結軸30を軸支する部材である。
右側ヒンジブラケット14のヒートプレス本体1の幅方向における外側面には、コテ収納部70となる収納溝が形成されている。
コテ収納部70について詳細は後述する。
【0022】
加熱押圧部20は、
図2-
図4に示すように、ヒートプレス本体1の加熱押圧板となる部材であって、ユーザーが把持することが可能な段差形状のハンドル21と、ハンドル21とは反対側の端部に設けられ、連結軸30を軸支するための中央ヒンジブラケット22と、を有している。
加熱押圧部20の底面には、発熱することが可能な矩形板状のヒータ23と、ヒータ23の発熱温度を測定する
図6に示す温度センサ24とが取り付けられている。
また、加熱押圧部20の上面には、
図1に示すように、ユーザー操作部40及びユーザー表示部50が取り付けられており、加熱押圧部20の内部には制御コントローラ60が内蔵されている。
なお、加熱押圧部20の長さ方向の一端部には、不図示の電源と接続するための電源コード25が取り付けられている。
【0023】
温度センサ24は、ヒータ23の発熱温度を測定するためのサーミスタであって、具体的には、ヒータ23の上面に取り付けられており、ヒータ23の表面温度を検出し、ヒータ23の表面温度によって変動する表面温度データを取得するものである。
【0024】
連結軸30は、
図4に示すように、左側ヒンジブラケット13及び中央ヒンジブラケット22によって軸支される軸部材であって、具体的には、これらヒンジブラケット内部に挿通される軸本体部31と、これらヒンジブラケットから外部に露出し、左側ヒンジブラケット13の開口部の外縁に当接する軸当接部32と、から主に構成されている。
なお、連結軸30の外周面には、載置部10に対して加熱押圧部20を開かせる方向(加熱押圧部20を遠ざける方向)に向かって付勢する不図示のコイルバネが取り付けられている。そのため、加熱押圧部20が自重によって載置部10側に勢いよく倒伏してしまうことを抑制することができる。
【0025】
ユーザー操作部40は、
図5に示すように、ユーザーが各種の設定を行い、熱転写処理のマニュアル操作を行うための操作入力を受け付けるものであって、具体的には、ヒートプレス本体1の電源をオンまたはオフするためのオン/オフスイッチ41と、ヒータ23の発熱温度及び発熱時間を設定するための設定スイッチ42と、熱転写処理を実行するための実行スイッチ43と、から主に構成されている。
【0026】
ユーザー表示部50は、
図5に示すように、ユーザーによる各種設定事項の内容や、異常発生時のエラーメッセージ等を表示する表示画面である。
具体的には、ユーザー操作部40によって入力された入力内容に基づいてヒータ23の発熱温度及び発熱時間をデジタル表示するものである。
本実施形態においては、ユーザー表示部50において発熱温度「170℃」、発熱時間「30S」が表示されている。
【0027】
制御コントローラ60は、
図6に示すように、データの演算・制御処理装置としてのCPUと、記憶装置としてのROM及びRAMと、情報データの送受信を行う通信用インタフェースとを備えたものである(RAMを搭載していなくても良い)。
これらROM及びRAMには、熱転写処理プログラムが記憶されており、当該プログラムがCPUによって実行されることにより、ヒートプレス本体1の機能が発揮されることになる。
具体的には、制御コントローラ60は、ユーザー操作部40及び温度センサ24から信号を受信して、ヒータ23に制御信号を送信することで、予め設定された発熱温度及び発熱時間の下で熱転写処理を行う構成となっている。また、ユーザー表示部50に制御信号を送信することで、表示画面上に各種設定事項の内容等を表示する構成となっている。
【0028】
上記構成において、ヒートプレス本体1は、外部の電源と接続されており、当該電源から供給される交流電力を整流回路で整流した上で、ヒータ23等の各構成部品に電力を供給している。また、発熱コテ100と接続端子75を介して接続されており、発熱コテ100のバッテリー114に対しても電力を供給することができる。
【0029】
発熱コテ100は、
図7A、Bに示すように、ヒートプレス本体1による熱転写処理後に熱転写シートH2の角部やエッジ部分に凹凸(ツノ)が生じたときに当該凹凸を地ならしするために用いられる治具である。
発熱コテ100は、発熱コテ100の本体部分となるコテ本体部110と、コテ本体部110の長手方向の一端部から突出している軸部120と、軸部120の先端部分に取り付けられ、発熱することが可能な発熱部130と、コテ本体部110の長手方向の他端部に設けられ、コテ収納部70に収納されたときにコテ収納部70の開口部71の外縁に当接する当接部140と、から主に構成されている。
【0030】
コテ本体部110は、略円筒形状からなり、具体的には、コテ本体部110の内部に設けられ、軸部120の末端部分を覆うように保持し、伝熱性を有する伝熱材111と、軸部120及び伝熱材111を挟み込むように設けられ、発熱可能な一対のヒータ112と、一対のヒータ112を覆うように取り付けられ、断熱性を有する筒状の断熱材113と、一対のヒータ112に接続され、ヒータ112を発熱させるために電力を供給するバッテリー114と、バッテリー114に接続され、各種演算・制御を実行するためのマイクロコントローラ115と、を有している。
また、コテ本体部110の長手方向の一端部の外周面には、一対の切り欠き溝110aが軸部120を挟むような位置に形成されている。そして、当該一対の切り欠き溝110aには、ヒートプレス本体1と接続するための一対の接続端子116が収まるように取り付けられている。
また、コテ本体部110の長手方向の中央部分の外周面には、当該外周面から外側に突出するように係合突起117が形成されている。当該係合突起117は、一対の接続端子116の間に配置されている。
【0031】
バッテリー114は、発熱コテ100がコテ収納部70に収納されたときにヒートプレス本体1を通じて供給される電力を充電するとともに、発熱部130を発熱させるためにヒータ112に電力を供給する板形状の充電池である。
詳しく述べると、ヒートプレス本体1のコテ収納部70に設けられた接続端子75と、発熱コテ100に設けられた接続端子116とが接触することで、バッテリー114が、外部の電源からヒートプレス本体1を通じて電力を受け取り、充電することができる。
また、バッテリー114は、マイクロコントローラ115から制御信号を受信して、ヒータ112に給電することができる。
【0032】
マイクロコントローラ115は、データの演算・制御処理装置としてのCPUと、記憶装置としてのROM及びRAMと、情報データの送受信を行う通信用インタフェースとを備えたものである。
具体的には、マイクロコントローラ115は、後述のユーザー操作部141から信号を受信して、バッテリー114に制御信号を送信することや、ユーザー表示部142に制御信号を送信することで、表示画面上に各種設定事項の内容を表示する構成となっている。
【0033】
軸部120及び発熱部130は、熱伝導率の高い金属から形成されており、軸部120は、発熱コテ100の長手方向に沿って延びる棒状の軸部材である。
発熱部130は、略ホームベース形状の板状部材であって、熱転写処理後に熱転写シートH2の角部やエッジ部分に凹凸(ツノ)が生じたときに、当該凹凸部分に押し当てることで当該凹凸を地ならしする部分である。
発熱部130(発熱部130の押し当て面)は、水平面に対して立ち上がるように傾斜して形成されている。そのため、発熱コテ100の形状をコンパクト化しながらも、ユーザーが使用し易い形状となっている。
また、発熱コテ100を長手方向から見たときに、発熱部130がコテ本体部110の外周から外側に張り出さないように形成されている。そのため、発熱コテ100の形状をコンパクト化することができ、ヒートプレス本体1に発熱コテ100をコンパクトに収納することができる。
【0034】
当接部140は、略円筒形状からなり、コテ本体部110よりも幅広に形成されている。
当接部140の内部には、ユーザー操作の入力を受け付けるためのユーザー操作部141と、各種設定事項の内容を表示するためのユーザー表示部142と、がそれぞれ取り付けられている。
ユーザー操作部141は、透明シール型の静電容量式タッチセンサであって、具体的には、当接部140の端面において発熱コテ100(ヒータ112)の電源をオンまたはオフするためのタッチスイッチが取り付けられ、表示されている。
ユーザー表示部142は、複数のチップLEDからなり、表示画面上に発熱コテ100のオン状態を表示することができ、またバッテリー114の充電オン状態を表示することができる。
【0035】
<コテ収納部について>
次に、ヒートプレス本体1のコテ収納部70について、
図8A,Bに基づいて説明する。
コテ収納部70は、ヒートプレス本体1のうち、右側ヒンジブラケット14の内部に形成された収納溝であって、右側ヒンジブラケット14の外側面に開口部71が形成されている。
コテ収納部70は、開口部71と、開口部71から連続して形成される第1側壁部72と、第1側壁部72から連続して形成され、第1側壁部72よりも幅広となっている第2側壁部73と、第2側壁部73から連続している底壁部74と、から構成されている。
第2側壁部73のうち開口部71側の端部の内側面には、一対の接続端子75が互いに対向するように取り付けられている。
また、第2側壁部73及び底壁部74の内側面には、ヒートプレス本体1(コテ収納部70)よりも高い断熱性を有する断熱部材76が取り付けられている。
【0036】
上記構成において、
図8Aに示すように、コテ収納部70に発熱コテ100が収納されたときに、コテ収納部70の開口部71の外縁と、発熱コテ100の当接部140とが当接する構成となっている。
そのため、コテ収納部70に対し発熱コテ100を位置決めして収納することができる。
なお、当接部140は、コテ収納部70から外部に露出したときに、ヒートプレス本体1と一体的な形状を有している。具体的には、
図4に示すように、当接部140と、連結軸30の外側端部とが略同一の形状を有し、かつ、略同一のカラーコードを有している。
【0037】
また上記構成において、
図8Aに示すように、第1側壁部72のうち、コテ収納部70に発熱コテ100が収納されるときの係合突起117に対応する内側面には、コテ収納部70の深さ方向に沿って係合突起117を摺動させるためのスリット状の摺動溝72aが形成されている。
また、第1側壁部72の内側面には、摺動溝72aの端部から連続してコテ収納部70の円周方向に沿って延びており、係合突起117を係合させるためのスリット状の係合溝72bが形成されている。
そのため、コテ収納部70の係合溝72bと、発熱コテ100の係合突起117とが係合することで、コテ収納部70に対し発熱コテ100を着脱可能に取り付けることができる。
【0038】
また上記構成において、
図8A,8Bに示すように、コテ収納部70に発熱コテ100が収納されて係合されたときに、コテ収納部70の接続端子75と、発熱コテ100の接続端子116とが電気的に接続する構成となっている。
このとき、接続端子75は、コテ収納部70の内側面に片持ち状に取り付けられているため、適宜弾性変形することができる。そのため、接続端子75と接続端子116とが接続されたときに、発熱コテ100を保持することができる。
【0039】
また上記構成において、
図8Aに示すように、コテ収納部70の内部において発熱コテ100が収納されたときに発熱部130に対応する位置には、略コップ形状の断熱部材76が取り付けられている。
断熱部材76は、例えばロックウール等の繊維系断熱材であって、第2側壁部73の内側面に保持されている筒状の第1断熱部76aと、第1断熱部76aから連続して設けられ、底壁部74の内側面に保持されている板状の第2断熱部76bと、を有している。
そして、断熱部材76が、発熱コテ100の発熱部130の先端及び外周を覆う位置に配置されている。
そのため、断熱部材76によって発熱部130を好適に覆うことができ、ヒートプレス本体1側に与える熱の影響を抑制することができる。
【0040】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図4に示すように、コテ収納部70が、ヒートプレス本体1のうち、右側ヒンジブラケット14の内部に形成されているが、特に限定されることなく変更可能であって、ヒートプレス本体1の任意の位置に形成されていれば良い。
望ましくは、コテ収納部70がユーザーの手が届き易い位置に配されていると良く、また、電源コード25に近接した位置に配置されていると良い。
【0041】
上記実施形態では、
図4に示すように、発熱コテ100が、ヒートプレス本体1とは別体で設けられているが、特に限定されることなく、ヒートプレス本体1と不図示の配線コードを介して一体に接続されていても良い。
その場合には、発熱コテ100のバッテリー114が、常時又は所定のタイミングにてヒートプレス本体1を通じて充電されると好ましい。
【0042】
上記実施形態では、
図8Aに示すように、コテ収納部70の断熱部材76が、発熱部130の外周及び先端を覆う位置に配置されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、コテ収納部70に対し発熱コテ100が位置決めされて収納されるならば、断熱部材76が発熱部130の外周のみを覆うように配置されていても良い。
また例えば、コテ収納部70の断熱性能をより高めるならば、コテ収納部70の内側面の略全体にわたって断熱部材76が取り付けられていても良い。
【0043】
本実施形態では、主として本発明に係るヒートプレス機に関して説明した。ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
H ヒートプレス機
H1 被転写物
H2 熱転写シート
1 ヒートプレス本体
10 載置部(載置台)
11 載置マット
12 矩形溝
13 左側ヒンジブラケット
14 右側ヒンジブラケット
20 加熱押圧部(加熱押圧板)
21 ハンドル
22 中央ヒンジブラケット
23 ヒータ
24 温度センサ
25 電源コード
30 連結軸
31 軸本体部
32 軸当接部
40 ユーザー操作部
41 オン/オフスイッチ
42 設定スイッチ
43 実行スイッチ
50 ユーザー表示部
60 制御コントローラ
70 コテ収納部
71 開口部
72 第1側壁部
72a 摺動溝
72b 係合溝
73 第2側壁部
74 底壁部
75 接続端子
76 断熱部材
76a 第1断熱部
76b 第2断熱部
100 発熱コテ
110 コテ本体部
110a 切り欠き溝
111 伝熱材
112 ヒータ
113 断熱材
114 バッテリー
115 マイクロコントローラ
116 接続端子
117 係合突起
120 軸部
130 発熱部
140 当接部
141 ユーザー操作部
142 ユーザー表示部