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特許7316877真空プロセス装置および真空プロセス装置におけるプロセス対象物の冷却方法
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  • 特許-真空プロセス装置および真空プロセス装置におけるプロセス対象物の冷却方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】真空プロセス装置および真空プロセス装置におけるプロセス対象物の冷却方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20230721BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20230721BHJP
   H01L 21/203 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C23C14/50 E
C23C14/24 K
H01L21/203 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019149770
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021031694
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】張 詠麟
(72)【発明者】
【氏名】範 賓
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 亨
(72)【発明者】
【氏名】鄭 国富
(72)【発明者】
【氏名】長家 武彦
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-098205(JP,A)
【文献】特開2009-238869(JP,A)
【文献】特開2005-101025(JP,A)
【文献】特開2004-231993(JP,A)
【文献】特開2012-119626(JP,A)
【文献】国際公開第2011/135667(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
H01L 21/203,21/3065,21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス対象面と、その反対側の非プロセス対象面と、をそれぞれ有する複数のプロセス対象物にプロセス材料を供給する真空プロセス装置であって、
前記複数のプロセス対象物を収容する真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に配置されたプロセス材料供給部の前記プロセス材料を加熱して供給する加熱源と、
前記プロセス対象面が前記プロセス材料供給部側に臨むように前記複数のプロセス対象物を保持する保持部と、前記複数のプロセス対象物の前記非プロセス対象面対向する第1面と、を有し、前記真空チャンバ内に位置している冷却プレートと
前記第1面に配置された、輻射率が0.5以上の熱放射シートと、
を有し、
前記冷却プレートは、前記第1面の平面視で当該冷却プレートの中央側の回転中心の回りに回転可能に、前記真空チャンバに軸シールされて設けられており、
前記保持部は、前記非プロセス対象面と前記熱放射シート面との間に間隙が形成されるように、前記複数のプロセス対象物の外縁部を保持する、
真空プロセス装置。
【請求項2】
前記熱放射シートは、粘着剤により前記第1面に貼り付けられている
請求項1記載の真空プロセス装置。
【請求項3】
前記冷却プレートには、冷媒が循環する冷媒循環路が形成されている
請求項1または2記載の真空プロセス装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の真空プロセス装置におけるプロセス対象物の冷却方法であって、
前記熱放射シートにより、前記複数のプロセス対象物の少なくとも輻射熱を吸収して前記冷却プレート側に熱放射して前記複数のプロセス対象物を冷却する
真空プロセス装置におけるプロセス対象物の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば半導体製造装置において、真空チャンバ内で、ガラス基板等のプロセス対象物に対して蒸着等により薄膜形成等の所定のプロセス処理を行う真空プロセス装置および真空プロセス装置におけるプロセス対象物の冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスには多くの微細加工、薄膜形成技術が適用されている。
それらの装置は、真空プロセス装置とも総称され、真空中での物理、化学的現象が利用されている。
【0003】
真空によって生み出される物理的、化学的加工原理としては、放電、イオン化、スパッタリング現象等を挙げることができる。
これらの現象は、プラズマエッチング(Plasma Etching)、プラズマCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)、イオン打ち込み(Ion Implantation)、スパッタリングデポジッション(Sputtering Deposition)などに適用されている。
【0004】
これらの現象が適用される真空プロセス装置においては、プロセスの途中、いわゆるプラズマ源、ヒータ源などの加熱源を用いることから、プロセス対象物に加熱による影響等により蓄積された反りや材料変質などの現象が発生してしまう。
【0005】
たとえば、真空蒸着では、蒸着材料を気化させるために、蒸着材料の温度および蒸着材料を収容するるつぼの温度が高温となる。
そして、蒸着材料をプロセス対象物である基板に蒸着させるため、高温のるつぼの上方に基板が配置される。
蒸着中は、主に、以下の理由により基板の温度が上昇する。
高温のるつぼおよび溶融した蒸着材料の表面からも輻射熱により基板の温度が上昇する。
【0006】
そこで、真空プロセス装置においては、温度上昇に伴うプロセス対象物(たとえば基板)における反りや材料変質を抑制するために、プロセス対象物の温度を制御する冷却装置(冷却システム)が採用されている(たとえば特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に開示された冷却装置は、真空チャンバ内に設けられ、プロセス対象物である基板の走行を案内する冷却されたロールと、ロール周辺の真空チャンバ内の空間を、蒸着を行う第1圧力室と、第1圧力室より高い所定圧力を有する第2圧力室とに分離する分離部を有し、ロールは、第2圧力室にて基板を巻き付け、基板とロールとの間にガス層を形成する。
この冷却装置は、所定圧力を有する第2圧力室にて基板をロールに巻き付けると、基板とロールとが接触し始める部分の周囲に所定圧力のガスが存在するので、基板とロールとの間の微小な間隙にガスが自然に巻き込まれてガス層が形成される。
そして、このガス層が熱伝達に寄与し、基板の冷却効果をもたらすことになる。
【0008】
つまり、この冷却装置は、冷たいロールが冷却プレートとして機能し、真空中において、この冷却プレートとプロセス対象物としての基板との間にガスが貯まり、たとえば100Pa以上のガスであると、真空中の冷媒として機能し、プロセス対象物としての基板の熱を冷却プレートとしてのローラに放熱する。
この冷却方法は、ガス冷媒冷却法、あるいは、接触冷却法ということができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-89782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したようないわゆるガス冷媒冷却法を採用することは、シールの維持やプロセス真空度の維持が困難である。
【0011】
また、量産用の真空プロセス装置においては、分布歩留まり向上や時間短縮効率化のため、プロセス中の対象物が真空チャンバ内で高速回転や高速移動することなどが必要になる。
しかしその際に、一般的に考えられる接触冷却法を適用することは効率が著しく低下する。
【0012】
本発明は、シールの維持やプロセス真空度の維持が容易で、プロセス対象物が真空チャンバ内で高速回転や高速移動をする場合にも効率よく適用でき、しかも効率の良い冷却を実現することが可能な真空プロセス装置および真空プロセス装置におけるプロセス対象物の冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点の真空プロセス装置は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に配置されたプロセス材料供給部のプロセス材料を加熱して供給する加熱源と、前記真空チャンバ内に、プロセス対象面が前記プロセス材料供給部側に臨むように配置され、前記プロセス材料が供給されて所定の対象物が形成されるプロセス対象物と、第1面と第2面とを有し、前記真空チャンバ内に、前記第1面が前記プロセス対象物のプロセス対象面と反対側の非プロセス対象面と対向するように配置された冷却プレートと、前記冷却プレートの第1面に配置された熱放射シートとを有する。
【0014】
好適には、前記熱放射シートは、粘着剤により前記冷却プレートの第1面に貼り付けられている。
【0015】
また、好適には、前記冷却プレートには、冷媒が循環する冷媒循環路が形成されている。
【0016】
また、好適には、前記冷却プレートは、複数枚のプロセス対象物を前記プロセス対象面が前記プロセス材料供給部側に臨むように保持し、円板形状を有して円板の中心を回転中心として回転可能に前記真空チャンバに軸シールされて設けられている。
【0017】
また、好適には、前記冷却プレートは、前記第1面に設けられ、前記プロセス対象物の非プロセス対象面と前記熱放射シート面との間に間隙が形成されるように、前記プロセス対象物の外縁部を保持する保持部を有する。
【0018】
本発明の第2の観点は、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に配置されたプロセス材料供給部のプロセス材料を加熱して供給する加熱源と、前記真空チャンバ内に、プロセス対象面が前記プロセス材料供給部側に臨むように配置され、前記プロセス材料が供給されて所定のプロセス対象物が形成されるプロセス対象物と、を有する真空プロセス装置におけるプロセス対象物の冷却方法であって、第1面と第2面とを有し、当該第1面に熱放射シートを貼り付けた冷却プレートを、前記真空チャンバ内に、前記第1面が前記プロセス対象物のプロセス対象面と反対側の非プロセス対象面と対向するように配置し、前記冷却プレートの第1面に貼り付けられた前記熱放射シートにより、前記プロセス対象物の少なくとも輻射熱を吸収して前記冷却プレート側に熱放射して前記プロセス対象物を冷却する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シールの維持やプロセス真空度の維持が容易で、プロセス対象物が真空チャンバ内で高速回転や高速移動をする場合にも効率よく適用でき、しかも効率の良い冷却を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る真空プロセス装置を採用した真空成膜装置であるイオンビームアシスト真空蒸着装置を模式的に示す構成図である。
図2図2は、本第1の実施形態に係る真空プロセス装置を採用した真空蒸着装置におけるプロセス対象物の冷却システムの一構成例を模式的に示す図である。
図3図3は、プロセス対象物の冷却システムにおいて、熱放射シートがある場合とない場合の冷却効果を理論的計算により導いた結果を示す図である。
図4図4は、本第2の実施形態に係る真空プロセス装置を採用した真空蒸着装置におけるプロセス対象物の冷却システムの構成例を模式的に示す図である。
図5図5は、図4の真空蒸着装置の回転される冷却プレートの外周部に円状に保持された複数枚のプロセス対象物および複数の加熱源の配置例の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の真空プロセス装置の一例としての真空成膜装置とそれを用いたプロセス対象物の冷却方法の実施の形態について、図面に関連付けて説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
[真空成膜装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る真空プロセス装置を採用した真空成膜装置であるイオンビームアシスト真空蒸着装置を模式的に示す構成図である。
【0023】
本第1の実施形態の真空蒸着装置1においては、たとえば、成膜チャンバである真空チャンバ10に、図示しない排気管および真空ポンプが接続されており、内部が所定の圧力に減圧可能となっている。真空蒸着による成膜時における真空チャンバ10内の背圧は、たとえば10-2~10-5Pa程度である。
【0024】
真空チャンバ10の内部には、下方から上方に向かって、プロセス材料供給部のプロセス材料を加熱して供給する加熱源20、光学ガラス基板等により形成される成膜対象基板としてのプロセス対象物30、およびプロセス対象物30を冷却するための冷却プレート40が、所定間隔をおいて配置されている。
冷却プレート40の第1面401には、プロセス対象物30の少なくとも輻射熱を吸収して冷却プレート40側に熱放射する熱放射シート50が配置されている。熱放射シート50は、たとえば冷却プレート40の第1面401に対して粘着剤60により貼り付けられている。
そして、真空チャンバ10の外部には、冷却プレート40内に形成される冷媒循環路と連結され、熱交換を行う熱交換器70が配置されている。
【0025】
加熱源20は、プロセス材料供給部200として、たとえば第1真空蒸発源210および第2真空蒸着源220が配置されている。第1真空蒸発源210の内部に第1蒸着材料211が収容されており、また、第2真空蒸発源220の内部に第2蒸着材料221が収容されている。
第1蒸着材料211はたとえばSiOであり、第2蒸着材料221はたとえばTiOあるいはTaである。
各真空蒸着源210,220には、たとえば不図示の抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザービーム加熱、電子銃などの加熱手段が設けられており、真空蒸発源において蒸着材料が加熱されて気化すると蒸着材料の蒸気が噴出する。
【0026】
たとえば、真空チャンバ10内には、第1真空蒸発源210および第2真空蒸着源220の蒸着材料の蒸気を噴出する方向に、石英ガラスなどの光学基板である成膜対象基板としてのプロセス対象物30を膜形成面としてのプロセス対象面301がプロセス材料供給部200側に臨むように保持する基板ホルダ31が設けられている。
基板ホルダ31は、たとえば冷却プレート40の第1面401側に形成され、真空チャンバ10の上方からプロセス対象物30の外縁部を保持しかつ支持するように構成されている。
【0027】
なお、図1では、真空蒸着源を2つ設けて2種類の薄膜の多層膜を形成する例を示しているが、真空蒸着源を3つ設けて3種類の薄膜の多層膜を形成する等、種々の態様が可能である。
3つの真空蒸着源を用いる場合、たとえば第1蒸着材料はSiOであり、第2蒸着材料はSiであり、第3蒸着材料はa-SiN:Hである。
【0028】
また、たとえば、真空チャンバ10内に酸素イオンなどのイオンをプロセス対象物30に照射するイオンソース230が設けられており、イオンビームアシスト真空蒸着を行うことができる。
イオンソース230からイオンを成膜対象基板としてのプロセス対象物30の膜形成面に照射することで、プロセス材料供給部200から供給される蒸着物質により成膜されて膜厚が厚くなるプロセスと、既に成膜された膜の表面近傍の一部領域が、イオンソース230から照射されるイオンによりスパッタされて膜厚が薄くなるプロセスとを同時に進行させながら成膜できる。
【0029】
[プロセス対象物30の冷却システム]
図2は、本第1の実施形態に係る真空蒸着装置1におけるプロセス対象物30の冷却システムの一構成例を模式的に示す図である。
【0030】
冷却プレート40は、第1面401と第2面402とを有し、真空チャンバ10内に、第1面401がプロセス対象物30のプロセス対象面301と反対側の非プロセス対象面302と対向するように配置されている。
【0031】
冷却プレート40には、冷媒が循環する冷媒循環路410が形成されている。
冷媒循環路410は、熱交換器70の冷たい冷媒の供給路710と第1側面(図2の例では右側面)403側で連結され、第1面401に沿うように配置された第1冷媒路411と、第2側面(図2の例では左側面)404側で折り返すための折り返し路412と、折り返し路412に連結され、暖められた熱い冷媒を熱交換器70側に送り返す、熱交換器70の熱い冷媒の排出路720と第1側面(図2の例では右側面)403側で連結された第2冷媒路413と、により形成されている。
【0032】
冷却プレート40は、この熱交換器70の熱交換作用により、たとえば0°C~60°C程度に保持される。
【0033】
熱放射シート50は、冷却プレート40の第1面401に粘着剤60により貼り付けられ、プロセス対象物30の少なくとも輻射熱を吸収して冷却シート40側、具体的には第1面401側に熱放射する。
【0034】
熱放射シート50は、たとえば加熱源20により所定の熱量の熱を受けて温度Tgが200°C程度に上昇したプロセス対象物30による輻射熱を吸収してその熱を電磁波(たとえば遠赤外線)に変換し、外部、すなわち、熱交換システムで冷却される冷却プレート40の第1面401側に熱放射する。
【0035】
ここで、冷却プレート40の温度をTc、熱放射シート50の温度をTs、熱放射シート50の輻射率をεs、プロセス対象物の温度をTg、プロセス対象物30の輻射率をεg、加熱源20からプロセス対処物30までの過熱量をQh、Stefan-Boltzmann定数をσとして表すと、プロセス対象物30の温度は次式で与えられる。
【0036】
【数1】
【0037】
図3は、プロセス対象物30の冷却システムにおいて、熱放射シートがある場合とない場合の冷却効果を理論的計算により導いた結果を示す図である。
図13において、横軸は冷却プレート40の温度Tcを、縦軸はプロセス対象物30の温度Tgを表している。
また、Aで示す曲線が熱放射シート50の輻射率εsが0.2のときのプロセス対象物30の温度Tgを、Bで示す曲線が熱放射シート50の輻射率εsが0.50のときのプロセス対象物30の温度Tgを、Cで示す曲線が熱放射シート50の輻射率εsが0.9のときのプロセス対象物30の温度Tgを示している。
なお、熱放射シート50の輻射率εsが0.2のときのとは、熱放射シートがない場合に相当する。
また、冷却プレート40の温度Tcは、熱交換器70の性能により異なる。
【0038】
計算条件は以下の通りである。
・Tc=Ts
・εs :0.2/ 0.5 / 0.9
・εg=0.9
・Qh=0.044W・cm-2
・σ=5.67×10-8W・m-2・K-4
【0039】
結果、図3に示すように、熱放射シート50が無く輻射率εsが0.2の場合、プロセス対象物30の温度Tcは193度である。
熱放射シート50の輻射率εsが0.5の場合、プロセス対象物30の温度Tcは119.8度に下がる。
熱放射シート50の輻射率εsが0.9の場合、プロセス対象物30の温度Tcは82.7度に下がる。
【0040】
このように、本第1の実施形態の真空プロセス装置において、冷却プレート40は、第1面401と第2面402とを有し、真空チャンバ10内に、第1面401がプロセス対象物30のプロセス対象面301と反対側の非プロセス対象面302と対向するように配置されており、熱放射シート50が、冷却プレート40の第1面401に粘着剤60により貼り付けられており、熱放射シート50がプロセス対象物30の少なくとも輻射熱を吸収して冷却シート40側に熱放射することから、熱放射シートがない場合に比べて、真空内のプロセス対象物30に対する冷却効果を向上させることができ、効率的な冷却システムを実現することが可能となる。
【0041】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、真空プロセス装置は、真空チャンバ10と、真空チャンバ10内に配置されたプロセス材料供給部200のプロセス材料を加熱して供給する加熱源20と、真空チャンバ10内に、プロセス対象面301がプロセス材料供給部200側に臨むように配置され、プロセス材料が供給されて所定の対象物が形成されるプロセス対象物30と、第1面401と第2面402とを有し、真空チャンバ10内に、第1面401がプロセス対象物30のプロセス対象面301と反対側の非プロセス対象面302と対向するように配置された冷却プレート40と、冷却プレート40の第1面401に配置された熱放射シート50と、を有する。
【0042】
したがって、本第1の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
シールの維持やプロセス真空度の維持が容易で、プロセス対象物が真空チャンバ内で高速回転や高速移動をする場合にも効率よく適用でき、しかも効率の良い冷却を実現することが可能となる。
より具体的には、熱放射シート50が、冷却プレート40の第1面401に粘着剤60により貼り付けられており、熱放射シート50がプロセス対象物30の少なくとも輻射熱を吸収して冷却シート40側に熱放射することから、熱放射シートがない場合に比べて、真空内のプロセス対象物30に対する冷却効果を向上させることができ、効率的な冷却システムを実現することが可能となる。
【0043】
(第2の実施形態)
図4は、本第2の実施形態に係る真空プロセス装置を採用した真空蒸着装置におけるプロセス対象物の冷却システムの構成例を模式的に示す図である。
図5(A)および(B)は、図4の真空蒸着装置の回転される冷却プレート40Aの外周部に円状に保持された複数枚のプロセス対象物および複数の加熱源20-1,20-2,20-3の配置例の様子を模式的に示す図である。
【0044】
本第2の実施形態に係る真空蒸着装置1Aが第1の実施形態に係る真空蒸着装置1と異なる点は以下の通りである。
本第2の実施形態に係る真空蒸着装置1Aにおいて、冷却プレート40Aは、真空チャンバ10A内に、プロセス材料供給部の蒸着源を含む真空蒸発源のプロセス材料の蒸気を噴出する方向に、複数枚のプロセス対象物30をプロセス対象面301が加熱源20のプロセス材料供給部側に臨むように保持し、平面円板形状(またはドーム状の形状)を有して平面円板の中心を回転中心として図示しないモータの駆動により回転可能に、真空チャンバ10Aに軸シールされて設けられている。
また、冷却プレート40Aにおける冷媒循環路710Aは、図2に示す2つの冷媒循環路710が連結された冷却プレート内で循環可能に構成されている。
【0045】
また、冷却プレート40Aは、第1面401に設けられ、プロセス対象物30の非プロセス対象面302と熱放射シート50Aの放射面501との間に間隙が形成されるように、プロセス対象物30の外縁部を保持する保持部420を有する。
【0046】
本第2の実施形態によれば、複数のプロセス対象物30は、それぞれ保持部420によって回転可能な冷却プレート40Aに固定され、固定された状態において、プロセス対象物30の非プロセス対象面302と熱放射シート50Aの放射面501との間に間隙が形成されることから、冷却プレート40Aに回転に伴い、図5(A)中、矢印Yで示すように、円環となる空冷路が形成され、ある領域に熱がこもってしまう等の不具合の発生が防止され、さらに効率の良い冷却システムを実現することが可能となる。
【0047】
さらに、本第2の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
すなわち、本第2の実施形態によれば、複数のプロセス対象物30は、それぞれ保持部420によって回転可能な冷却プレート40Aに固定されることから、真空プロセスにおいて、量産化に対応しながら歩留まりを向上させることができる。
【0048】
本発明は上記の説明に限定されない。
たとえば、イオンビームアシスト真空蒸着装置および方法に限らず、その他の真空成膜装置および方法に適用可能である。さらに、真空成膜以外にスパッタリングによる成膜あるいはCVD(化学気相成長)による成膜など、その他の薄膜形成装置および方法にも適用可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10,10A・・・真空チャンバ、20,20A,20-1,20-2,20-3・・・加熱源、200・・・プロセス材料供給部、210・・・第1真空蒸着源、211・・・第1蒸着材料、220・・・第2真空蒸着源、221・・・第2蒸着材料、230・・・イオンソース、30・・・プロセス対象物、301・・・プロセス対象面、302・・・非プロセス対象面、40,40A・・・冷却プレート、401・・・第1面、402・・・第2面、410・・・第1冷媒路、420・・・折り返し路、430・・・第2冷媒路、50,50A・・・熱放射シート、60・・・粘着剤、70・・・熱交換器、710,710A・・・冷媒循環路。
図1
図2
図3
図4
図5