(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/32 20060101AFI20230721BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
E06B1/32
E06B3/46
(21)【出願番号】P 2019156866
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓司
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172258(JP,A)
【文献】特開2015-194058(JP,A)
【文献】特開2011-202361(JP,A)
【文献】特開2009-299440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、框体を有する障子と、を備え、
前記枠体は、金属枠部と、前記金属枠部の内側に配置される樹脂カバー部と、を有し、
前記樹脂カバー部は、最も内側に配置されて室内外方向に延びる最内側見込み部と、前記最内側見込み部の室外端から外側に向けて延びる室外側板部と、を有し、前記框体の室内側見付け面を室内側から覆うように配置され、
前記最内側見込み部は、前記室外側板部との連結部位から室外側に延びる延長板部を有し、
前記最内側見込み部と、前記室外側板部と、前記延長板部と、前記框体の前記室内側見付け面とによって、前記枠体の前記樹脂カバー部と前記障子の前記框体との間に空間部が形成され
、
前記延長板部は、前記空間部内への手挿入用の開口部を有する、建具。
【請求項2】
前記開口部の周縁部に沿って、樹脂製の縁部材が設けられる、請求項
1に記載の建具。
【請求項3】
前記室外側板部は、前記最内側見込み部から外側且つ室外側に傾斜する傾斜面である、請求項
1又は
2に記載の建具。
【請求項4】
前記障子は、前記枠体に対して横方向に摺動移動可能に設けられる引き戸を構成し、
前記枠体は、前記障子の戸先側に配置される縦枠である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体及び框体を金属材と樹脂材とのハイブリッド構造とすることによって、断熱性及び防露性を向上させた建具が知られている。樹脂材に複数の中空部を設けることによって、断熱性及び防露性の更なる向上を図った建具も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引き戸の戸先側に配置される金属縦枠の内側に、複数の中空部を有する樹脂製カバー材を設ける場合、樹脂製カバー材と障子の戸先框の室内側見付け面との距離を近づける程、高い断熱性及び防露性が得られる。しかし、樹脂製カバー材と障子の戸先框の室内側見付け面との距離が近くなる程、障子を開ける際に戸先框にアクセスすることが困難になるため、樹脂製カバー材の一部に、戸先框にアクセスするための手挿入用の凹部を形成する必要が生じる。
【0005】
しかし、樹脂製カバー材に複数の中空部が設けられている場合、そのカバー材の一部に手挿入用の凹部を形成することは困難である。即ち、一般に、カバー材は、長さ方向に押し出し成形され、手挿入用の凹部は後加工によって形成される。このため、手挿入用の凹部の加工は、中空部を仕切る複数の仕切り壁を切り欠きながら行わなくてはならず、煩雑な加工作業が要求される。一方、カバー材の押し出し成形時に、予めカバー材の長さ方向に亘る凹部を形成する場合は、長さ方向に亘る長尺な凹部の部位において、カバー材と障子とが大きく離間してしまい、断熱性能及び防露性能を維持することができない。
【0006】
このため、本開示は、断熱性能及び防露性能を損なうことなく、障子へのアクセスも容易に行える建具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の建具は、枠体と、框体を有する障子と、を備え、前記枠体は、金属枠部と、前記金属枠部の内側に配置される樹脂カバー部と、を有し、前記樹脂カバー部は、最も内側に配置されて室内外方向に延びる最内側見込み部と、前記最内側見込み部の室外端から外側に向けて延びる室外側板部と、を有し、前記框体の室内側見付け面を室内側から覆うように配置され、前記最内側見込み部は、前記室外側板部との連結部位から室外側に延びる延長板部を有し、前記最内側見込み部と、前記室外側板部と、前記延長板部と、前記框体の前記室内側見付け面とによって、前記枠体の前記樹脂カバー部と前記障子の前記框体との間に空間部が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】建具の一方の縦枠の一部分を拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図5中のVII-VII線に沿う端面図である。
【
図8】他の実施形態に係る縦枠を
図5中のVI-VI線と同じ部位に沿って切断した端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
先ず、各図中において矢印で示す方向について定義する。Z1-Z2方向は、重力方向に沿う方向を示している。Z1方向は上方向であり、Z2方向は下方向である。X1-X2方向は、横方向を示している。X1方向は右方向であり、X2方向は左方向である。Y1-Y2方向は、建具1を境にした室外内方向を示している。Y1方向は室外方向であり、Y2方向は室内方向である。
【0011】
以下の明細書において、「見付け面」は、建具1における室外側及び室内側に面するそれぞれの面を指し、「見付け部」は、見付け面を構成する部位を指す。「見込み面」は、建具1において室内外方向に延びている面を指し、「見込み部」は、見込み面を構成する部位を指す。「内側」は、建具1の中心に向かう側を指し、「外側」は、建具1の中心から外に向かう側を指す。「内側」は、建具1の枠体2及び框体30の内周側でもあり、「外側」は、建具1の枠体2及び框体30の外周側でもある。
【0012】
本実施形態の建具1は、枠体2と、枠体2の内側に納められる室外側障子3A及び室内側障子3Bの2枚からなる障子3と、を備える。枠体2は、それぞれ押し出し成形される上枠21と、下枠22と、左右の縦枠23,24とで矩形に枠組みされ、図示しない建物躯体の開口部に取り付けられる。
【0013】
本実施形態の2枚の障子3は、枠体2の内側において、左右方向に摺動移動可能に納められることによって、引き戸を構成する。詳しくは、室外側障子3A及び室内側障子3Bは、それぞれ枠体2の内側開口の略半分の面積を有する。室外側障子3Aは、上枠21に設けられたレール210Aと、下枠22に設けられたレール220Aとに対してそれぞれ係合している。室内側障子3Bは、上枠21に設けられたレール210Bと、下枠22に設けられたレール220Bとに対してそれぞれ係合している。室外側障子3A及び室内側障子3Bは、下枠22のレール210B,220B上に沿って走行可能な戸車8,8をそれぞれ有する。これによって、室外側障子3A及び室内側障子3Bは、レール210A,220A、210B,220Bに沿って、左右方向にそれぞれ独立して摺動移動可能な引違い戸を構成する。
【0014】
室外側障子3Aは、それぞれ押し出し成形される上框4と、下框5と、戸先框6Aと、外召合框7Aとを矩形に框組みすることによって構成される框体30の内側に、面材であるガラスパネル31を嵌め込むことによって構成される。室内側障子3Bは、それぞれ押し出し成形される上框4と、下框5と、戸先框6Bと、内召合框7Bとを矩形に框組みすることによって構成される框体30の内側に、面材であるガラスパネル31を嵌め込むことによって構成される。
図1及び
図2に示すように、室外側障子3A及び室内側障子3Bが枠体2の内側開口を閉鎖した状態において、室外側障子3Aの戸先框6Aは、左側の縦枠24に近接して配置され、室内側障子3Bの戸先框6Bは、右側の縦枠23に近接して配置される。室外側障子3Aの外召合框7A及び室内側障子3Bの内召合框7Bは、それぞれ枠体2の内側開口の左右方向の中央において、室内外方向に重なり合うように配置される。戸先框6A,6B、外召合框7A、内召合框7Bは、室外側障子3A及び室内側障子3Bの左右の縦框にそれぞれ対応する。
【0015】
枠体2は、アルミニウム等の金属材と、塩化ビニル等の樹脂材とで構成されるハイブリッド構造を有する。このため、枠体2は、断熱性及び防露性に優れる。詳しくは、上枠21及び下枠22は、金属枠部211,221と樹脂カバー部212,222とでそれぞれ構成される。上枠21の樹脂カバー部212は、金属枠部211の内面において、上枠21の一対のレール210A,210Bの間に配置される。下枠22の樹脂カバー部222は、金属枠部221の内面において、下枠22の一対のレール220A,220Bの間に配置される。
【0016】
枠体2の室内側には樹脂製のアングル材25が取り付けられている。アングル材25の上部は、室外側に向けて延出された上部延出部251を有し、アングル材25の下部は、室外側に向けて延出された下部延出部252を有する。上枠21の金属枠部211における室内側のレール210Bよりも室内側の内面は、アングル材25の上部延出部251によって覆われている。下枠22の金属枠部221における室内側のレール220Bよりも室内側の内面は、アングル材25の下部延出部252によって覆われている。
【0017】
左側の縦枠24は、金属枠部241と樹脂カバー部242とで構成される。樹脂カバー部242は、金属枠部241の内側面から突出するように配置されている。樹脂カバー部242は、室外側障子3Aの戸先框6Aにおける室内側見付け面6aの全体を覆うことによって、室外側障子3Aの戸先框6Aを室内側から目視されないように隠している。
【0018】
障子3の上框4、下框5、戸先框6A,6B、外召合框7A、内召合框7Bは、アルミニウム等の金属材と、塩化ビニル等の樹脂材とで構成されるハイブリッド構造をそれぞれ有する。このため、障子3は、断熱性及び防露性に優れる。詳しくは、上框4、下框5、戸先框6A,6B、外召合框7A、内召合框7Bは、金属框部41,51,61,71と、樹脂框部42,52,62,72と、でそれぞれ構成される。樹脂框部42,52,62,72は、金属框部41,51,61,71の室内側にそれぞれ配置される。
図1及び
図2に示すように、室内側障子3Bの内召合框7Bの樹脂框部72には、クレセント錠73が取り付けられている。
図1、
図2及び
図3に示すように、室外側障子3Aの下框5には、サブロック9が取り付けられている。
【0019】
次に、枠体2のうち、室外側障子3Aの戸先框6Aが近接配置される本実施形態の左側の縦枠24について、
図4、
図5、
図6及び
図7を参照して更に説明する。
【0020】
図6に示すように、縦枠24は、金属枠部241と、金属枠部241の内側に配置される樹脂カバー部242と、を有する。金属枠部241は、室外側障子3Aと室内側障子3Bとに亘る室内外方向の見込み幅を有する。樹脂カバー部242は、金属枠部241の見込み幅のうちの室内側の略半分の幅に亘って、金属枠部241の内側を覆うように配置される。
【0021】
樹脂カバー部242は、室外側見付け部243と、第1内側見込み部244と、室外側板部245と、第2内側見込み部246と、室内側見付け面247と、を有する。これら室外側見付け部243、第1内側見込み部244、室外側板部245、第2内側見込み部246及び室内側見付け面247は、樹脂カバー部242の長さ方向の全長に亘って延びている。
【0022】
室外側見付け部243は、樹脂カバー部242において最も室外側に配置される見付け面を構成する。室外側見付け部243は、
図6及び
図7に示すように、室外側障子3Aが閉じられた状態において、室外側障子3Aの戸先框6Aの室内側見付け面6aに最も近接し、室内側見付け面6aに対向するように平行に配置される。室外側見付け部243のX1-X2方向に沿う見付け幅は、樹脂カバー部242のX1-X2方向に沿う見付け幅の略半分となるよう形成されている。
【0023】
第1内側見込み部244は、室外側見付け部243の内側端に連結され、室外側見付け部243に対して直交するように、室内側に向けて延びている。第1内側見込み部244の室内端の位置は、限定されない。本実施形態の第1内側見込み部244の室内端は、樹脂カバー部242のY1-Y2方向に沿う見込み幅において、室外側から1/3~1/2の位置に配置されている。
【0024】
室外側板部245は、第1内側見込み部244と第2内側見込み部246とを連結する部位であり、第1内側見込み部244の室内端に連結され、内側に向けて延びている。本実施形態の第2内側見込み部246は、第1内側見込み部244よりも内側且つ室外側に配置されている。室外側板部245は、第1内側見込み部244の室内端と第2内側見込み部246の室外端とを連結するため、第1内側見込み部244から内側に向かうに従って、次第に室外側に向けて傾斜するように設けられている。これにより、室外側板部245は傾斜面を構成している。この傾斜面は、
図6及び
図7に示す平坦面に限らず、図示しないが、室外側が凹となる曲面であってもよい。
【0025】
室外側板部245の室内端は、内側に向けて屈曲し、室外側見付け部243と平行に配置される第2の室外側見付け面245aを有する。このため、室外側見付け部243は、第1の室外側見付け部ということができる。室外側板部245は、第2の室外側見付け面245aの内側端において、第2内側見込み部246と連結している。第2の室外側見付け面245aは、内側に向けて極めて短い長さで延びている。しかし、室外側板部245は、第2の室外側見付け面245aを有していなくてもよく、傾斜面の内側端が第2内側見込み部246に対して直接連結されていてもよい。
【0026】
室外側見付け部243及び第1内側見込み部244は設けられていなくてもよい。この場合、図示しないが、室外側板部245の外側端が金属枠部241の内面に近接又は当接するように配置されてもよい。
【0027】
第2内側見込み部246は、樹脂カバー部242において最も内側に配置されて室内外方向に延びる見込み面を構成する最内側見込み部である。第2内側見込み部246は、室外側板部245の内側端、即ち、第2の室外側見付け面245aの内側端に連結され、室内側に向けて延びている。換言すれば、室外側板部245は、第2内側見込み部246の室外端から外側に向けて延びている。
【0028】
本実施形態の第2内側見込み部246のX1-X2方向に沿う位置は、室外側障子3Aの戸先框6Aの最も内側端の位置にほぼ一致する。詳しくは、室外側障子3Aの戸先框6Aの室内側見付け面6aの最内端部には、室内側に向けて突出する突出片621が、戸先框6Aの長さ方向の全長に亘って設けられている。第2内側見込み部246の位置は、
図6及び
図7に示すように、この突出片621の位置に一致するように配置される。このため、
図6及び
図7に示すように、室外側障子3Aが閉じられた状態において、樹脂カバー部242は、室外側障子3Aの戸先框6Aの室内側見付け面6aの全体を室内側から覆い隠すように配置される。
【0029】
室内側見付け面247は、第2内側見込み部246の室内端に連結され、第2内側見込み部246に対して直交するように、外側に向けて延びている。室内側見付け面247は、樹脂カバー部242において最も室内側に配置される見付け面を構成する。本実施形態の室内側見付け面247は、アングル材25によって室内側から覆われている。
【0030】
樹脂カバー部242は、室外側見付け部243、第1内側見込み部244、室外側板部245、第2内側見込み部246及び室内側見付け面247で囲まれる空間内に、複数の仕切り壁248a,248b,248c,248d,248eによって仕切られた複数の中空部S1,S2,S3を有する。本実施形態は3つの中空部S1,S2,S3を示すが、中空部の数は3つに限定されない。樹脂カバー部242は、樹脂製であることに加えて、これら複数の中空部S1,S2,S3を有することによって、優れた断熱性及び防露性を発揮する。
【0031】
第2内側見込み部246は、室外側板部245との連結部位246aから室外側に向けて延びる延長板部249を有する。延長板部249は、第1内側見込み部244及び第2内側見込み部246と平行に配置されている。これにより、樹脂カバー部242には、第2内側見込み部246と延長板部249とによって、室外側障子3Aに向けて大きく延びる内側見込み面が形成される。第1内側見込み部244、室外側板部245及び延長板部249の三面で囲まれる空間は、閉じられておらず、室外側に向けて開放されている。
【0032】
延長板部249の室外側端部249aは、
図6に示すように、室外側障子3Aの戸先框6Aに設けられた突出片621の室内側端部621aに対して、極めて近接するように配置される。このため、樹脂カバー部242と室外側障子3Aの戸先框6Aとの間には、
図6に示すように、第1内側見込み部244、室外側板部245、延長板部249、戸先框6Aの室内側見付け面6a及び突出片621で囲まれることによって、実質的に閉じられた空間部である仮想的な中空部Svが形成される。その結果、樹脂カバー部242は、室外側に向けて開放された凹部空間を有するにもかかわらず、その空間を利用して形成される仮想的な中空部Svが第4の中空部として機能し、優れた断熱性能及び防露性能が維持される。
【0033】
樹脂カバー部242の延長板部249は、樹脂カバー部242の長さ方向の全長に亘って延びている。しかし、
図4に示すように、樹脂カバー部242の長さ方向の中央部において、延長板部249の一部が切り欠かれている。詳しくは、延長板部249には、樹脂カバー部242の長さ方向の中央部において、室外側端部249aから室内側に向けて矩形状等に切り欠かれた開口部100が設けられている。この開口部100は、延長板部249に対して後加工によって形成される。しかし、開口部100は、延長板部249に対して、室外側端部249aから室内側に向けて切り欠くだけで形成可能であるため、複数の仕切り壁を切り欠くような煩雑な加工を行う必要はない。
【0034】
開口部100は、
図7に示すように、仮想的な中空部Svを、室外側に開放するのみならず、内側に向けても開放する。これにより、利用者が室外側障子3Aを開放操作する際に、開口部100から仮想的な中空部Sv内に手を挿入することが可能となる。即ち、この樹脂カバー部242によれば、開口部100から手を挿入して戸先框6Aの突出片621に手を掛けることができる。従って、室外側障子3Aの戸先框6Aへのアクセスが容易となり、室外側障子3Aを容易に開放操作することが可能である。
【0035】
本実施形態の樹脂カバー部242において、仮想的な中空部Svに面する室外側板部245は傾斜面を構成するため、開口部100から室外側障子3Aの戸先框6Aに向けた手の挿入を自然に案内することができる。このため、樹脂カバー部242は、室外側障子3Aを開放操作する際の操作性を更に向上させることができる。
【0036】
図4、
図5及び
図7に示すように、手挿入用の開口部100には、樹脂製の縁部材26が設けられる。縁部材26は、断面コ型に形成され、切り欠かれた開口部100の周縁部100a部を挟持することによって取り付けられている。縁部材26の表面は、滑らかに仕上げられているため、建具1及び開口部100の意匠性が向上する。開口部100の切断面である周縁部100aは、縁部材26によって覆われるため、開口部100への手の挿入時に利用者に与える不快感を低減することができる。
【0037】
図8に示すように、樹脂カバー部242の延長板部249には、室外側端部249aから外側に向けて延出されることにより、仮想的な中空部Svの室外側を実質的に遮蔽する遮蔽板部249bが設けられてもよい。遮蔽板部249bは、延長板部249の室外側端部249aから第1内側見込み部244に向けて屈曲し、第1内側見込み部244に近接するように延びている。これにより、仮想的な中空部Svは、開口部100以外の部位では、室外側にも実質的に閉じられた空間となるため、縦枠24の断熱性を更に向上させることができる。
【0038】
以上の実施形態では、
図6及び
図7に示すように、室外側障子3Aの戸先框6Aの室内側見付け面6aに設けられる突出片621の位置と、縦枠24の樹脂カバー部242の第2内側見込み部246の位置とが一致するように設けられている。即ち、戸先框6Aの室内側見付け面6aは、縦枠24によって完全に覆われている。しかし、図示しないが、戸先框6Aの室内側見付け面6aを縦枠24の見付け面よりも大きく形成することによって、突出片621が、樹脂カバー部242の第2内側見込み部246の位置よりも更に内側に配置されていてもよい。
【0039】
以上の実施形態では、障子3が、室外側障子3Aと室内側障子3Bとを有し、それぞれ枠体2内の左右方向に沿って摺動移動する引違い戸を構成する場合について例示した。しかし、障子は、1枚の障子のみが横方向に摺動移動する片引き戸であってもよいし、枠体に対して上下方向に摺動移動するように構成されてもよい。障子が上下方向に摺動移動する場合、以上説明した樹脂カバー部242の構成は、下枠に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 建具
2 枠体
24 縦枠
241 金属枠部
242 樹脂カバー部
243 室外側見付け部
244 第1内側見込み部
245 室外側板部
246 第2内側見込み部(最内側見込み部)
246a 連結部位
249 延長板部
26 縁部材
3 障子
30 框体
6a 室内側見付け面
100 開口部
100a 周縁部
Sv 仮想的な中空部