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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】バッテリ温度管理システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20230721BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20230721BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230721BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20230721BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20230721BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20230721BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6571
H01M10/651
H01M10/633
H02J7/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019172324
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021051836
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】町田 尊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正亮
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-133900(JP,A)
【文献】国際公開第2011/145250(WO,A1)
【文献】特開2017-85826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/6571
H01M 10/651
H01M 10/633
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから供給された電流により前記バッテリを加熱するヒータを備えたバッテリ温度管理システムにおいて、
バッテリ温度を検出するバッテリ温度検出部と、
バッテリ放電電流を検出するバッテリ放電電流検出部と、
前記バッテリから前記ヒータに通電しているヒータ電流を検出するヒータ電流検出部と、
前記ヒータ電流を前記バッテリ温度に基づいて制御するバッテリ温度調節部と、を備え、
前記バッテリ温度調節部は、
前記バッテリ温度と、前記バッテリ放電電流と、前記ヒータ電流と、前記バッテリ温度及びバッテリ使用容量またはバッテリ残容量毎のバッテリ内部抵抗と、を蓄積して構築されたデータベースと、
前記データベースに基づいて機械学習を行い、少なくとも直近の前記バッテリ温度、前記バッテリ放電電流及び前記ヒータ電流と、前記バッテリ温度及びバッテリ使用容量またはバッテリ残容量毎のバッテリ内部抵抗と、に応じて、所定時間後の前記バッテリの予測内部抵抗と、所定時間後の前記バッテリの予測放電電流と、所定時間後の予測ヒータ電流と、を算出する予測部と、
前記予測部による予測内部抵抗及び予測バッテリ放電電流に応じて、前記バッテリ残容量が最適となるバッテリ最適設定温度を決定する最適値決定部と、を備えるバッテリ温度管理システム。
【請求項2】
前記最適値決定部は、前記バッテリ残容量が最適となるバッテリ最適設定温度を、前記予測内部抵抗と前記バッテリの予測放電電流を乗じた値が最小となるバッテリ最適設定温度により決定する請求項1に記載したバッテリ温度管理システム。
【請求項3】
前記バッテリ温度調節部は、前記予測内部抵抗を前記バッテリ温度及びバッテリ使用容量またはバッテリ残容量毎に予測するための内部抵抗予測モデルと、前記バッテリの放電電流を前記バッテリ温度毎に予測するためのバッテリ放電電流予測モデルと、前記ヒータ電流を前記バッテリ温度毎に予測するためのヒータ電流予測モデルと、を作成する予測モデル作成部を備え、
前記最適値決定部は、前記内部抵抗予測モデルと、前記バッテリ放電電流予測モデルと、前記ヒータ電流予測モデルと、に応じて前記バッテリ最適設定温度を決定する請求項1から請求項2のうちいずれか1項に記載したバッテリ温度管理システム。
【請求項4】
バッテリから供給された電流により前記バッテリを加熱するヒータを備えたバッテリ温度管理システムにおいて、
バッテリ温度を検出するバッテリ温度検出部と、
バッテリ放電電流を検出するバッテリ放電電流検出部と、
前記バッテリから前記ヒータに通電しているヒータ電流を検出するヒータ電流検出部と、
前記ヒータ電流を前記バッテリ温度に基づいて制御するバッテリ温度調節部と、を備え、
前記バッテリ温度調節部は、
前記バッテリ温度と、前記バッテリ放電電流と、前記ヒータ電流と、前記バッテリ温度及びバッテリ使用容量またはバッテリ残容量毎のバッテリ内部抵抗と、を蓄積して構築されたデータベースと、
前記データベースに基づいて機械学習を行い、少なくとも直近の前記バッテリ温度、前記バッテリ放電電流及び前記ヒータ電流と、前記バッテリ温度及び前記バッテリ放電電流毎の前記バッテリの放電特性と、に応じて、所定時間後の前記バッテリの放電特性である予測放電特性と、所定時間後の予測ヒータ電流と、所定時間後の予測バッテリ放電電流を算出する予測部と、
前記予測部による予測放電特性及び予測バッテリ放電電流の予測結果に応じて、前記バッテリ残容量が最適となるバッテリ最適設定温度を決定する最適値決定部と、を備えるバッテリ温度管理システム。
【請求項5】
前記最適値決定部は、前記バッテリ残容量が最適となるバッテリ最適設定温度を、前記予測放電特性が最適となるバッテリ最適設定温度により決定する請求項4に記載したバッテリ温度管理システム。
【請求項6】
前記バッテリ温度調節部は、所定時間後の前記バッテリの放電特性である予測放電特性を前記バッテリ温度及びバッテリ放電電流毎に予測するための放電特性予測モデルと、前記バッテリの放電電流を前記バッテリ温度毎に予測するためのバッテリ放電電流予測モデルと、前記ヒータ電流を前記バッテリ温度毎に予測するためのヒータ電流予測モデルと、を作成する予測モデル作成部を備え、
前記最適値決定部は、前記放電特性予測モデルと、前記バッテリ放電電流予測モデルと、前記ヒータ電流予測モデルと、に応じて前記バッテリ最適設定温度を決定する請求項4から請求項5のうちいずれか1項に記載したバッテリ温度管理システム。
【請求項7】
前記予測モデル作成部は、前記バッテリから電流を供給する対象となる前記ヒータ以外の供給対象機器への供給対象電流を前記バッテリ温度毎に予測した複数のバッテリ放電電流予測モデルを作成し、
前記最適値決定部は、さらに、前記複数のバッテリ放電電流予測モデルのうち前記検出した現在のバッテリ温度に対応したバッテリ放電電流予測モデルに応じて前記バッテリ最適設定温度を決定する請求項3又は請求項6に記載したバッテリ温度管理システム。
【請求項8】
外気温度を検出する外気温検出部を備え、
前記最適値決定部は、さらに、前記外気温検出部が検出した前記外気温度に応じて前記バッテリ最適設定温度を決定する請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載したバッテリ温度管理システム。
【請求項9】
前記データベースは、さらに、前記最適値決定部が決定したバッテリ最適設定温度を蓄積して構築され、
前記最適値決定部は、さらに、外部環境の変動及び前記バッテリから電流を供給する対象となる前記ヒータ以外の供給対象機器の運転状態のうち少なくとも一方に応じて、前記データベースに蓄積しているバッテリ最適設定温度を更新する請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載したバッテリ温度管理システム。
【請求項10】
前記バッテリは、車両に搭載されている請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載したバッテリ温度管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示に係る技術(本発明)は、例えば、車両に搭載するバッテリの温度を管理するバッテリ温度管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド自動車や電気自動車は、搭載されたバッテリに急速充電器や家庭用商用電源等の外部電源から充電することができるように構成されている。これらに搭載されたバッテリは、極低温の状態(例えば、-10[℃]以下)では充電効率や容量が著しく低下し、効率的な充放電が困難となる。そのため、例えば、特許文献1等に示すようなバッテリの温度を規定温度範囲(使用温度範囲)に調整するバッテリ温度調整装置を備えたものも開発されている。例えば、特許文献1に開示されている技術では、バッテリの温度に応じて、ヒータによりバッテリを加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-196256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、バッテリからヒータへ電力を供給することで、ヒータを作動させるため、ヒータの消費電流が増加すると、温度上昇によって改善されたバッテリの容量よりもバッテリから放電する電流増加により、消費が早くなる場合がある。このため、バッテリの温度や残容量等の条件によっては、バッテリの使用効率が低下するという問題点がある。また、バッテリの経年変化や使われ方によっては、新品当時と比べてバッテリの特性が大きく変化しており、出荷時に設定したバッテリの最適温度では、適正な制御を行うことができなかった。バッテリの特性を仮に固定して考えたとしても、周辺機器の使用状況によって、バッテリの使用状況が多様に変化するため、バッテリの最適温度を所定の値に固定することは、事実上、困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題点を鑑み、バッテリの状態に応じて、バッテリの使用効率を向上させることが可能なバッテリ温度管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るバッテリ温度管理システムは、バッテリから供給された電流によりバッテリを加熱するヒータを備えたバッテリ温度管理システムである。本発明に係るバッテリ温度管理システムは、バッテリ温度検出部と、バッテリ放電電流検出部と、ヒータ電流検出部と、バッテリ温度調節部を備える。バッテリ温度調節部は、データベースと、予測部と、最適値決定部を備える。データベースは、バッテリ温度検出部が検出したバッテリ温度と、バッテリ放電電流検出部が検出したバッテリ放電電流と、ヒータ電流検出部が検出したヒータ電流と、バッテリ温度及びバッテリ使用容量またはバッテリ残容量毎のバッテリ内部抵抗とを蓄積して構築されている。予測部は、データベースに基づいて機械学習を行い、少なくとも直近のバッテリ温度、バッテリ放電電流及びヒータ電流と、バッテリ温度及び使用容量またはバッテリ残容量毎のバッテリ内部抵抗とに応じて、所定時間後のバッテリの予測内部抵抗と、所定時間後のバッテリの予測放電電流と、バッテリからヒータに供給する所定期間後の予測ヒータ電流と、を算出する。最適値決定部は、予測部による予測内部抵抗及び予測バッテリ放電電流に応じて、バッテリ残容量が最適となるバッテリ最適設定温度を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、予測内部抵抗と予測バッテリ放電電流から、バッテリ残容量が最適となるバッテリ最適設定温度を決定し、バッテリ温度がバッテリ最適設定温度となるようにヒータを制御する。
【0008】
これにより、外部環境や機器の稼働状況に応じてバッテリの使用効率を向上させることが可能なバッテリ温度管理システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るバッテリ温度管理システムの構成を示すブロック図である。
図2】バッテリの放電特性の一例を示す図である。
図3】バッテリ温度と、バッテリの使用容量と、バッテリの内部抵抗を対応させたテーブルである。
図4】異なるパターン間の放電特性の差分を示す図である。
図5】バッテリ最適設定温度を決定する処理を説明する図である。
図6】バッテリ温度管理システムが行う動作を説明する図である。
図7】バッテリ温度管理システムが行う動作を説明する図である。
図8】バッテリ温度管理システムが行う動作を説明する図である。
図9】時間経過に伴って設定温度が変化するイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するためのシステムを例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の実施形態に例示したシステムに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0011】
(第1実施形態)
<全体構成>
第1実施形態に係るバッテリ温度管理システムは、車両に搭載されたバッテリを直接又は間接的に加熱するヒータを備え、当該バッテリから当該ヒータへの通電を制御することにより、当該バッテリの温度を管理するシステムである。バッテリは、車両の駆動力発生源(例えば、電動モータ)や、車両に搭載されている電気機器(例えば、エアコン)等へ電力を供給可能である。ヒータは、給電によって加熱する加熱手段として用いることができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、給電によって加熱するジュール発熱を利用したシーズヒータや、フレキシブルヒータなどに代表される電気ヒータを用いることができる。
【0012】
第1実施形態にかかるバッテリ温度管理システム1について、図1を参照して説明する。バッテリ温度管理システム1は、外気温検出部2と、バッテリ温度検出部3と、バッテリ電圧検出部4と、バッテリ電流検出部5と、ヒータ電流検出部6を備える。これに加え、バッテリ温度管理システム1は、供給対象電流検出部7と、選択データ検出部8と、バッテリ温度調節部10と、ヒータ制御部20と、ヒータ30と、供給対象機器40を備える。
【0013】
外気温検出部2は、例えば、温度センサを用いて形成されており、外気の温度(外気温度)を検出する。また、外気温検出部2は、検出した外気温度を含む情報信号(外気温度信号)を、バッテリ温度調節部10へ送信する。
【0014】
バッテリ温度検出部3は、例えば、温度センサを用いて形成されており、車両に搭載されたバッテリ50の温度(バッテリ温度)を検出する。また、バッテリ温度検出部3は、検出したバッテリ温度を含む情報信号(バッテリ温度信号)を、バッテリ温度調節部10へ送信する。
【0015】
バッテリ電圧検出部4は、例えば、電圧センサを用いて形成されており、バッテリ50の電圧(バッテリ電圧)を検出する。また、バッテリ電圧検出部4は、検出したバッテリ電圧を含む情報信号(バッテリ電圧信号)を、バッテリ温度調節部10へ送信する。
【0016】
バッテリ電流検出部5は、例えば、電流センサを用いて形成されており、バッテリ50からヒータ30や供給対象機器40へ供給している電流(バッテリ電流)を検出する。また、バッテリ電流検出部5は、検出したバッテリ電流を含む情報信号(バッテリ電流信号)を、バッテリ温度調節部10へ送信する。
【0017】
ヒータ電流検出部6は、例えば、電流センサを用いて形成されており、バッテリ50からヒータ30に通電している電流(ヒータ電流)を検出する。また、ヒータ電流検出部6は、検出したヒータ電流を含む情報信号(ヒータ電流信号)を、バッテリ温度調節部10へ送信する。
【0018】
供給対象電流検出部7は、例えば、電流センサを用いて形成されており、バッテリ50から供給対象機器40に通電している電流(供給対象電流)を検出する。また、ヒータ電流検出部6は、検出した供給対象電流を含む情報信号(供給対象電流信号)を、バッテリ温度調節部10へ送信する。
【0019】
選択データ検出部8は、バッテリ温度管理システム1を適用した対象(車両等)に対して、予め選択したデータを検出する。また、選択データ検出部8は、検出したデータを含む情報信号(選択データ信号)を、バッテリ温度調節部10へ送信する。第1実施形態では、一例として、選択データ検出部8が検出するデータを、車室内の温度とした場合について説明する。
【0020】
バッテリ温度調節部10は、データ蓄積部11と、データベース12と、予測モデル作成部13と、最適値決定部14と、データ送信部15を備える。
【0021】
データ蓄積部11は、予め設定した間隔(例えば、10分)で、外気温度信号、バッテリ温度信号、バッテリ電圧信号、バッテリ電流信号、ヒータ電流信号、供給対象電流信号、選択データ信号が含む情報を取得する。そして、データ蓄積部11は、取得した各種の情報を、予め設定した期間(例えば、1年間)に亘り、データベース12へ蓄積する。したがって、データベース12は、バッテリ温度検出部3が検出したバッテリ温度と、ヒータ電流検出部6が検出したヒータ電流を蓄積して構築される。
【0022】
なお、このデータベース12は、バッテリ温度や、ヒータ電流に関する情報のみならず、後述するバッテリ温度及びバッテリ50が放電したバッテリ放電電流と、バッテリの使用容量またはバッテリの残容量毎の内部抵抗と、バッテリ温度と、バッテリの使用容量またはバッテリの残容量毎の内部抵抗により算出されたバッテリ50の放電特性に関する情報と、を蓄積して構築される。ここでは、後述するバッテリ最適設定温度の決定に際し、バッテリ50の放電特性を用いた場合について説明するが、本発明は、当該バッテリ50の放電特性の算出に用いる内部抵抗を用いてバッテリ最適設定温度を決定することができる。
【0023】
予測モデル作成部13は、データベース12に蓄積されている情報に応じて、予め設定した頻度(例えば、1日に1回)で、定期的に予測モデルを作成する。予測モデルには、内部抵抗予測モデルと、放電特性予測モデルと、ヒータ電流予測モデルと、バッテリ放電電流予測モデルを含む。
【0024】
内部抵抗予測モデルは、所定時間後のバッテリ50の予測内部抵抗をバッテリ温度と、バッテリの使用容量または残容量毎に予測するためのモデルである。放電特性予測モデルは、所定時間後のバッテリ50の放電特性である予測放電特性をバッテリ温度及びバッテリ放電電流毎に予測するためのモデルである。ヒータ電流予測モデルは、ヒータ電流をバッテリ温度毎に予測するためのモデルである。バッテリ放電電流予測モデルは、バッテリ50から電流を供給する対象となるヒータ30以外の供給対象機器への供給対象電流をバッテリ温度毎に予測するためのモデルである。
【0025】
バッテリ50の放電特性は、例えば、図2に示すように、バッテリ温度とバッテリ電流の組み合わせに対して、縦軸をバッテリ50の電圧(端子電圧(V))とし、横軸をバッテリ50の容量(mAh)とした特性図で表される。なお、図2には、一例として、バッテリ温度とバッテリ電流の組み合わせを3パターン(パターンPA、パターンPB、パターンPC)示す。
【0026】
パターンPAは、バッテリ温度が10[℃]でありバッテリ電流が6[A]である。パターンPBは、バッテリ温度が11[℃]でありバッテリ電流が7[A]である。パターンPCは、バッテリ温度が-5[℃]でありバッテリ電流が2[A]である。
【0027】
図2に示す例では、バッテリ温度とバッテリ電流を示す線が他の2パターンよりも上にある1つのパターン(パターンPA)は、バッテリ電圧が一定の電圧(図2において破線で示す電圧)に低下するまでに放電可能な容量が、他の2パターンよりも多い。すなわち、バッテリ50の放電特性は、バッテリ温度等の条件に応じて変化する。なお、図2では、バッテリ電圧が一定の電圧に低下するまでに放電可能な容量を、パターンPAに対しては符号「CA」、パターンPBに対しては符号「CB」、パターンPCに対しては符号「CC」で示す。
【0028】
予測モデル作成部13が予測モデルを作成する処理としては、以下の二種類がある。
処理A.データベース12に蓄積されている過去の情報を用いて(データベース12に基づいて)機械学習を行い、過去に作成した予測モデルを更新する処理。
処理B.データベース12に蓄積されている過去の情報から、新たに予測モデルを作成する処理。
【0029】
内部抵抗予測モデルを作成する際には、バッテリ50の内部抵抗を算出し、さらに、詳細なバッテリ温度及びバッテリ電流の条件毎に、所定時間後のバッテリ50の予測内部抵抗を算出する。なお、作成した内部抵抗予測モデルは、データベース12に蓄積する。
【0030】
バッテリ50の内部抵抗を算出する際には、予め測定した2パターンのバッテリ温度とバッテリ電流の組み合わせと、以下の計算式(1)を用いる。
R=|(V1-V2)/(I2-I1)| … (1)
【0031】
計算式(1)において、Rはバッテリ50の内部抵抗であり、V1とV2はバッテリ50の電圧であり、I1はバッテリ電圧V1の時のバッテリ電流であり、I2はバッテリ電圧V2の時のバッテリ電流である。
【0032】
なお、バッテリ50の内部抵抗Rは、以下に示す条件において算出する。
条件A.バッテリ温度及びバッテリ50の残容量が極力変動しない時間内に、バッテリ電圧V1、バッテリ電流I1、バッテリ電圧V2、バッテリ電流I2を測定し、内部抵抗Rを算出する。
条件B.バッテリ電流の変動が多い時に、バッテリ電圧V1、バッテリ電流I1、バッテリ電圧V2、バッテリ電流I2を測定し、内部抵抗Rを算出する。なお、バッテリ電流の変動が多い状態とは、例えば、車両の駆動力発生源を駆動させた直後や、バッテリ50の充電を開始した直後である。
【0033】
上述した方法により、例えば、図3に示すように、バッテリ温度と使用容量に対応させて、バッテリ50の内部抵抗を算出してテーブル化する。なお、バッテリ50の使用容量は残容量に置き換えてもよい。例えば、バッテリ50を満充電した後のバッテリ50の稼働時間[h]に対し、現在(内部抵抗の算出時)までの消費電流の平均値を乗算して使用容量を算出する。第1実施形態では、予測モデル作成部13において、バッテリ50を満充電した後のバッテリ50の稼働時間に対する現在までの消費電流の平均値を乗算して算出することで、バッテリ50の使用容量を検出するとともに、バッテリ50の放電状態を検出する。したがって、予測モデル作成部13は、バッテリ放電電流を検出するバッテリ放電電流検出部を形成する。
【0034】
また、予測モデル作成部13は、検出したバッテリ50の使用容量及びバッテリ50の放電特性を、データベース12に蓄積する。したがって、データベース12は、予測モデル作成部13が作成した放電特性を蓄積して構築される。
【0035】
放電特性予測モデルを作成する際には、データベース12に蓄積されているバッテリ温度と、バッテリ電圧と、バッテリ電流に応じて、複数設定したバッテリ50の温度に対するバッテリ50の抵抗値を計算する。さらに、計算したバッテリ50の抵抗値と、予め記憶している代表的な放電特性を用いて、複数設定したバッテリ温度及びバッテリ電流に対する放電特性を算出する。この得られた放電特性を用いて放電特性予測モデルを作成する。なお、作成した放電特性予測モデルは、データベース12に蓄積する。具体的には、バッテリ50の内部抵抗を算出し、さらに、既知の放電特性を用いて、詳細なバッテリ温度及びバッテリ電流の条件毎に、放電特性を算出する。
【0036】
既知の放電特性を用いて、詳細なバッテリ温度及びバッテリ電流の条件毎に、放電特性を算出する際には、図3に示すテーブルから、バッテリ50の内部抵抗とバッテリ電流の2パターンの組み合わせと、以下の計算式(2)を用いる。
D=(R1×BI1)-(R2×BI2) … (2)
【0037】
計算式(2)において、Dは異なるパターン間の放電特性の差分であり、R1とR2はバッテリ50の内部抵抗であり、BI1は内部抵抗R1の時のバッテリ電流であり、BI2は内部抵抗R2の時のバッテリ電流である。また、バッテリ50の内部抵抗は、バッテリ50の残容量(バッテリ50の使用容量)によって変化する。このため、差分Dは、図4に示すように、バッテリ50の残容量に応じた複数の値(C1の状態における差分、C2の状態における差分、C3の状態における差分)を算出する。
【0038】
ヒータ電流予測モデルを作成する際には、外気温度と、ヒータ電流と、バッテリ温度に応じて、バッテリ50の温度を目標の温度とするために必要な、ヒータ30の消費電流値を予測する。
【0039】
具体的には、過去に検出した外気温度、ヒータ電流及びバッテリ温度を用いて、ヒータ30の消費電流値を算出する。そして、過去に検出した外気温度、ヒータ電流及びバッテリ温度と、ヒータ30の消費電流値とを関連付けたデータを、予め設定した期間(例えば、1年間)蓄積し、ヒータ電流予測モデルを作成するためのデータを構築する。ヒータ電流予測モデルを作成するためのデータは、例えば、予め設定した間隔(例えば、30分)毎に、外気温度と、ヒータ電流と、バッテリ温度と、ヒータ30の消費電流値を互いに対応させたデータである。
【0040】
次に、ヒータ電流予測モデルを作成するためのデータから、直近(例えば、直近の過去1日分)の外気温度、ヒータ電流及びバッテリ温度と、ヒータ30の消費電流値のデータを取得する。さらに、取得したデータを用いて、機械学習により、予め設定した時間後(例えば、1時間後)における、ヒータ電流予測モデルを作成する。
【0041】
ヒータ電流予測モデルは、例えば、重回帰分析の算出式を用い、算出した1時間後の消費電流値と、実際の1時間後の消費電流値との差が最も小さくなるような共通の係数を決定して作成する。なお、作成したヒータ電流予測モデルは、定期的(例えば、1日に1回)に作成して、更新してもよい。
【0042】
バッテリ放電電流予測モデルを作成する際には、外気温度と、ヒータ電流と、供給対象電流と、選択データ検出部8が検出したデータに応じて、バッテリ放電電流値を予測する。
【0043】
具体的には、過去に検出した外気温度及び供給対象電流と、過去に選択データ検出部8が検出したデータ(車室内の温度)を用いて、供給対象機器40の消費電流値を算出する。そして、過去に検出した外気温度、供給対象電流及び車室内の温度と、供給対象機器40の消費電流値とを関連付けたデータを、予め設定した期間蓄積し、バッテリ放電電流予測モデルを作成するためのデータを構築する。バッテリ放電電流予測モデルを作成するためのデータは、例えば、予め設定した間隔毎に、外気温度と、供給対象電流と、車室内の温度と、供給対象機器40の消費電流値を互いに対応させたデータである。
【0044】
次に、バッテリ放電電流予測モデルを作成するためのデータから、直近の外気温度、供給対象電流及び車室内の温度と、供給対象機器40の消費電流値のデータを取得する。さらに、取得したデータを用いて、機械学習により、予め設定した時間後における、バッテリ放電電流予測モデルを作成する。
【0045】
バッテリ放電電流予測モデルは、例えば、ヒータ電流予測モデルと同様、重回帰分析の算出式を用い、算出した1時間後の消費電流値と、実際の1時間後の消費電流値との差が最も小さくなるような共通の係数を決定して作成する。なお、作成したバッテリ放電電流予測モデルは、ヒータ電流予測モデルと同様、定期的に作成して、更新してもよい。
【0046】
以上により、予測モデル作成部13は、データベース12に基づいて機械学習を行い、少なくとも直近のバッテリ温度、バッテリ放電電流及びヒータ電流と、バッテリ温度と、バッテリの使用容量または残容量毎のバッテリ内部抵抗と、バッテリ温度毎のヒータ電流に応じて、予測内部抵抗と、所定時間後の予測ヒータ電流を予測する予測部を形成する。さらに、予測モデル作成部13は、データベース12に蓄積している情報に応じて、所定時間後のバッテリ50の放電特性である予測放電特性と、所定時間後にバッテリ50からヒータ30と供給対象機器40への供給対象電流を予測する予測部を形成する。
【0047】
最適値決定部14は、予め設定した間隔(例えば、10分)で、バッテリ50の放電特性が最適となるようなバッテリ50の温度であるバッテリ最適設定温度を定期的に決定し、決定したバッテリ最適設定温度を、データベース12に蓄積する。したがって、データベースは、最適値決定部14が決定したバッテリ最適設定温度を蓄積して構築される。
【0048】
バッテリ最適設定温度を決定する処理は、例えば、以下の手順に沿って行う。
手順1.供給対象機器40の消費電流を予測する。
手順2.バッテリ50に対して目標とする設定温度を算出し、バッテリ50の温度を設定温度とするために必要なヒータ30に供給する電流値を予測する。
手順3.設定温度と予測電流値(ヒータ30と供給対象機器40の和)に対応した、バッテリ50の内部抵抗を選択する。
手順4.温調設定温度値を変化させて、手順2と手順3を繰り返し行い、現在のバッテリ電圧(バッテリの使用容量又は残容量でも可)において、内部抵抗と予測電流値の乗算結果が最小となるように設定温度を決定する。
手順5.バッテリ温度管理システム1の稼働中に手順1から手順4を定期的に実施することで、外部環境(外気温度)の変動や、ヒータ30や供給対象機器40の運転状態に対する最適な制御条件(バッテリ最適設定温度)を、常に更新する。したがって、最適値決定部14は、外部環境の変動及び供給対象機器40の運転状態のうち少なくとも一方に応じて、データベース12に蓄積しているバッテリ最適設定温度を更新する。
【0049】
バッテリ最適設定温度の決定処理は上述に限定されるものではなく、放電特性を用いてもよい。この場合、上述の手順4において、「内部抵抗と予測電流値の乗算結果が最小となるように設定する」のではなく、放電特性が最もよくなるように設定する。
【0050】
すなわち、バッテリ最適設定温度を決定する処理では、例えば、図5に示すように、現在のバッテリ電圧又は現在のバッテリ使用容量に応じて、現在の放電特性よりも良好な放電特性を予測する。そして、バッテリ50の温度が、良好な放電特性に応じた設定温度となるように、ヒータ30の作動状態を設定する。
【0051】
以上により、最適値決定部14は、予測モデル作成部13による予測放電特性及び予測バッテリ放電電流の予測結果に応じて、予測内部抵抗が最適となるバッテリ最適設定温度を決定する。したがって、最適値決定部14は、バッテリ内部抵抗を用いて算出したバッテリ50の放電特性に応じて、バッテリ最適設定温度を決定する。
【0052】
データ送信部15は、最適値決定部14が決定したバッテリ最適設定温度を含む指令信号を、ヒータ制御部20へ送信する。
【0053】
以上により、バッテリ温度調節部10は、受信した情報信号に応じ、バッテリ温度に基づいてヒータ電流を制御することで、バッテリ50がデータ送信部15から指令された温度となるように、バッテリ50の温度を調節する。
【0054】
また、上述したように、データベース12は、バッテリ50の放電特性をバッテリ50の温度及び放電電流毎に複数蓄積して構築される。さらに、データベース12は、バッテリ50からヒータ30に通電していた電流を、バッテリ50の温度毎に蓄積して構築される。
【0055】
ヒータ制御部20は、バッテリ温度調節部10から受信した指令信号に応じて、ヒータ30の温度を制御する。ヒータ30は、バッテリ50から供給された電流により、バッテリ50を加熱する。供給対象機器40は、ヒータ30以外に、バッテリ50から供給された電流により作動する構成である。なお、第1実施形態では、一例として、供給対象機器40を、エアコンとした場合について説明する。
【0056】
<動作>
図1から図5を参照しつつ、図6から図9を用いて、第1実施形態のバッテリ温度管理システム1が行う動作を説明する。
【0057】
以下、バッテリ温度管理システム1が行う動作として、ケース1の条件下で行う動作と、ケース2の条件下で行う動作と、ケース3の条件下で行う動作を説明する。
【0058】
(ケース1の条件下で行う動作)
ケース1の条件を、以下に示す。
外気温度:0[℃]
供給対象電流:20[A]
バッテリ温度を0[℃]から5[℃]まで上昇させるためのヒータ電流:2[A]
バッテリ温度を0[℃]から20[℃]まで上昇させるためのヒータ電流:10[A]
【0059】
ケース1の条件下で、バッテリ温度を5[℃]まで上昇させる場合と、バッテリ温度を20[℃]まで上昇させる場合における放電特性を比較した結果を、図6に示す。
【0060】
図6に示すように、放電特性は、バッテリ温度を20[℃]まで上昇させる場合の方が、バッテリ温度を5[℃]まで上昇させる場合よりも有利である。しかしながら、供給対象機器40の負荷が変動してバッテリ電流が変化し、放電特性が図6に矢印で示すように変化した場合には、バッテリ温度を5[℃]まで上昇させる場合の方が、バッテリ温度を20[℃]まで上昇させる場合よりも、放電特性が有利となる。第1実施形態の構成であれば、供給対象機器40の負荷の変動に応じて、最適な設定温度を決定することが可能であるため、従来と比較して、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能となる。
【0061】
(ケース2の条件下で行う動作)
ケース2の条件を、以下に示す。なお、ケース2の条件は、ケース1の条件から推移した条件である。
外気温度:0[℃]から-5[℃]に推移
供給対象電流:20[A]
バッテリ温度を-5[℃]から5[℃]まで上昇させるためのヒータ電流:5[A]
バッテリ温度を-5[℃]から20[℃]まで上昇させるためのヒータ電流:15[A]
【0062】
ケース2では、ケース1の条件から、外気温度が5[℃]低下しているため、ケース1と同様のバッテリ温度を保持するためには、ケース1の条件よりも、ヒータ電流が増加する。したがって、ケース2の条件下において、外気温度の低下によりヒータ30の消費電流が増加すると、放電特性が図7に矢印で示すように変化する。この場合においても、ケース1と同様、バッテリ温度を5[℃]に保持する場合の方が、バッテリ温度を20[℃]に保持する場合よりも、放電特性が有利となる。第1実施形態の構成であれば、外気温度(外部環境)の変動に応じて、最適な設定温度を決定することが可能であるため、従来と比較して、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能となる。
【0063】
(ケース3の条件下で行う動作)
バッテリ50の放電特性は、図8に示すように、バッテリ50の残容量によっても変化する。図8に示す例では、残容量が閾値DL未満の領域である領域E1では、二点鎖線で示した特性が有利となるが、残容量が閾値DL以上の領域である領域E2では、一点鎖線で示した特性が有利となる。第1実施形態の構成であれば、残容量に応じて、最適な設定温度を決定することが可能であるため、従来と比較して、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能となる。
【0064】
(動作のまとめ)
上述したように、第1実施形態の構成であれば、図9に示すように、時間の経過に伴って変化する外気温度やバッテリ電流に応じて、バッテリ50の放電特性が最適となるように、バッテリ50の温度を随時設定する。このため、従来と比較して、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能となる。
【0065】
<効果>
(1)予測モデル作成部13が、データベース12に基づいて機械学習を行い、少なくとも直近のバッテリ温度、バッテリ放電電流及びヒータ電流と、バッテリ温度及び使用容量またはバッテリ残容量毎のバッテリ内部抵抗と、に応じて、所定時間後のバッテリの予測内部抵抗と、所定時間後のバッテリの予測放電電流と、所定時間後の予測ヒータ電流と、を算出する。これに加え、最適値決定部14が、予測内部抵抗及び予測バッテリ放電電流に応じて、バッテリ残容量が最適となるバッテリ最適設定温度を決定する。これにより、バッテリ50からヒータ30に供給する電流を予測し、先回りしてバッテリ50の温度を制御することで、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能な、バッテリ温度管理システム1を提供することが可能となる。さらに、逐次、バッテリ50の内部抵抗を監視してデータベース12を構築しながら、最適なバッテリ50の温度を決定することが可能となり、バッテリ50の経年変化や、バッテリ50の使われ方(充電タイミング等)によって出荷当時とは変化する最適な温度で、バッテリ50を使用することが可能となる。これにより、バッテリ50の経年変化やバッテリ50の使われ方に応じて、最も効率的なバッテリ温度でバッテリ50を使用することが可能となる。このため、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能な、バッテリ温度管理システム1を提供することが可能となる。
【0066】
(2)最適値決定部14が、バッテリ50の残容量に応じてバッテリ最適設定温度を決定する。これにより、バッテリ50の状態に応じてバッテリ50の温度を制御することが可能となり、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能となる。
【0067】
(3)予測モデル作成部13が、内部抵抗予測モデルと、放電特性予測モデルと、ヒータ電流予測モデルと、バッテリ放電電流予測モデルを作成する。これに加え、最適値決定部14が、内部抵抗予測モデル、放電特性予測モデル及びヒータ電流予測モデルのうち、現在のバッテリの温度及びバッテリ使用容量またはバッテリ残容量毎に対応した内部抵抗予測モデル、放電特性予測モデル及びヒータ電流予測モデルと、バッテリ放電電流予測モデルに応じて、バッテリ最適設定温度を決定する。これにより、バッテリ50の内部抵抗及び放電特性やヒータ30に通電する電流の予測値を用いて、バッテリ50の温度を制御することが可能となり、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能となる。
【0068】
(4)予測モデル作成部13が、バッテリ放電電流予測モデルを作成する。これに加え、最適値決定部14が、バッテリ放電電流予測モデルのうち検出した現在のバッテリ50の温度に対応したバッテリ放電電流予測モデルに応じて、バッテリ最適設定温度を決定する。これにより、供給対象機器40の使用状態の変化に応じて、バッテリ50の温度を制御することが可能となり、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能となる。
【0069】
(5)最適値決定部14が、外気温検出部2が検出した外気温度に応じて、バッテリ最適設定温度を決定する。これにより、外気温度の変化(外部環境の変動)に応じて、バッテリ50の温度を制御することが可能となり、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能となる。
【0070】
(6)最適値決定部14が、外部環境の変動及び供給対象機器40の運転状態のうち少なくとも一方に応じて、データベース12に蓄積しているバッテリ最適設定温度を更新する。これにより、バッテリ50の放電特性を定期的に更新することで、バッテリ50の経時的な性質の変化(劣化等)に対応することが可能となる。
【0071】
(7)バッテリ50が、車両に搭載されている。これにより、車両が備える機器の動作を安定させることが可能となる。
【0072】
なお、本実施の形態では、放電特性を比較することで、バッテリ最適設定温度を決定しているが、本発明はこれに限定されるものではない。算出した内部抵抗を用いて、バッテリ最適設定温度を直接決定しても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。なぜならば、放電特性は、内部抵抗に放電電流を乗じて得た値が小さいほど、改善される。そのため、内部抵抗に放電電流を乗じて得た値が最も小さくなるようにバッテリ最適設定温度を決定することでも、同様の効果が得られる。したがって、最適値決定部14の構成を、予測モデル作成部13による予測内部抵抗及び予測ヒータ電流の予測結果に応じて、予測内部抵抗が最適となるバッテリ最適設定温度を決定する構成としてもよい。この構成であっても、予測内部抵抗と予測ヒータ電流から、予測内部抵抗が最適となるバッテリ最適設定温度を決定し、バッテリ温度がバッテリ最適設定温度となるようにヒータを制御することが可能となる。これにより、外部環境や機器の稼働状況に応じてバッテリ50の使用効率を向上させることが可能なバッテリ温度管理システム1を提供することが可能となる。さらに、逐次、バッテリ50の内部抵抗を監視してデータベース12を構築しながら、最適なバッテリ50の温度を決定することが可能となり、バッテリ50の経年変化や、バッテリ50の使われ方によって出荷当時とは変化する最適な温度で、バッテリ50を使用することが可能となる。これにより、バッテリ50の経年変化やバッテリ50の使われ方に応じて、最も効率的なバッテリ温度でバッテリ50を使用することが可能となる。このため、バッテリ50の使用効率を向上させることが可能な、バッテリ温度管理システム1を提供することが可能となる。
【0073】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、バッテリ温度管理システムを適用する対象を、車両に搭載したバッテリとしたが、これに限定するものではない。例えば、ドローン等、空中を移動する物体に搭載するバッテリやテント等、仮設の建築物に備え付けるバッテリ、携帯用機器に内蔵されたバッテリに対して、本発明のバッテリ温度管理システムを適用してもよい。
【0074】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。その他、上記の実施形態において説明される各構成を任意に応用した構成等、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…バッテリ温度管理システム、2…外気温検出部、3…バッテリ温度検出部、4…バッテリ電圧検出部、5…バッテリ電流検出部、6…ヒータ電流検出部、7…供給対象電流検出部、8…選択データ検出部、10…バッテリ温度調節部、11…データ蓄積部、12…データベース、13…予測モデル作成部、14…最適値決定部、15…データ送信部、20…ヒータ制御部、30…ヒータ、40…供給対象機器、50…バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9