(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】膨化食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230721BHJP
A23L 7/191 20160101ALI20230721BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230721BHJP
A23G 3/54 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
A23L5/00 E
A23L5/00 F
A23L7/191
A23L19/00 A
A23G3/54
(21)【出願番号】P 2019175198
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001948
【氏名又は名称】日清シスコ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上脇 達也
(72)【発明者】
【氏名】野口 勇飛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 健矢
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-238626(JP,A)
【文献】特表平10-502242(JP,A)
【文献】特開平08-266238(JP,A)
【文献】特開平11-308967(JP,A)
【文献】特開2001-238627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 7/117-7/139
A23L 19/00
A23G 3/00-3/56
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉質原料と可食性濃色植物ペースト、可食性濃色植物搾汁液または可食性濃色植物粉末のいずれか少なくとも一つを含んでなる膨化食材
に対して、当該膨化食材の表面全体にある発泡痕を埋めるように糖衣層を設け、
さらに当該糖衣層の厚みが350~2000μmである膨化食品。
【請求項2】
糖衣掛け率が50~400%である、請求
項1に記載の膨化食品。
【請求項3】
澱粉質原料と可食性濃色植物ペースト、可食性濃色植物搾汁液または可食性濃色植物粉末のいずれか少なくとも一つを混合してドウを調製するドウ調
製工程と、
当該ドウを膨化処理して膨化食材を製造する膨化工程と、
膨化食材に対して厚み
が350~2000μmになるまで糖衣層を形成する糖衣形成工程と、
からなる、膨化食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨化食品及びその製造方法に関する。より詳しくは、膨化食材の表面を糖衣で被覆した膨化食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、朝食を食べない現代人が増加している。厚生労働省の「平成29年国民健康・栄養調査結果の概要」によれば、調査当日の特定の1日において、成人男性15.0%、成人女性10.2%もの人が朝食を食べていないとの報告がなされた。また、2018年度の農林水産省の調査によれば、20代、30代で週に4日以上朝食を抜く人の割合が26.9%にも達するという報告がなされている。さらに、文部科学省の調査によれば、成人だけでなく小学生の15%以上が朝食を毎日食べる習慣が身についていないことも明らかとなっている。朝食を食べない理由は人によって様々であるが、ストレス性疲労や多忙などが理由として挙げられることが多い。
【0003】
朝食を摂らないと、活動するためのエネルギーが不足して体調不良をおこしたり、集中力がなくなったりするなどの問題が指摘されている。また、基礎代謝の低下によって、食事からとったエネルギーをため込みやすい身体となり、過食や肥満になりやすいとの問題も指摘されている。そのため、できるだけ朝食を摂ることが望ましいと考えられている。
【0004】
そこで、手軽に食べられる食材として、シリアルの人気が高まっている。なかでも、様々な具材とともに栄養補強をされているシリアルは、忙しい現代人が手軽にバランスよく栄養摂取できるため、多種多様な製品が市場に流通している。
【0005】
シリアルに用いられる具材としては、ドライフルーツ、ナッツ類、乾燥野菜や豆類などが存在する。これらの具材は、シリアルに水分移行しないように、あらかじめ乾燥処理が施されている。
【0006】
しかしながら、水分含量の高い具材を乾燥させる場合、乾燥工程に時間と手間がかかる。特に果物などは水分含量が高いため、製造コストの上昇を招きやすい。また、具材によっては、品質にばらつきが出やすいため、品質を担保するのが難しいといった問題も生じる。
【0007】
そこで、本物の具材に代えて果汁などを練り込んだ擬似食品が提案されている(特許文献1)。特許文献1には、可食性濃色植物のペーストなどを練り込んだドウを膨化処理した膨化食品の製造方法が開示されている。当該膨化食品は、色調が鮮やかで色ムラがなく高い膨化度を備えていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【0009】
ところで、シリアル製品を喫食する場合、牛乳やヨーグルトなどをかけて食べることが多い。牛乳やヨーグルトをかけると、牛乳やヨーグルトの水分がシリアルや乾燥具材に移行し、シリアルや乾燥具材は柔らかくなっていく。シリアルや乾燥具材の中には、柔らかくなったほうが、メーカー側が意図した食感に近づく場合もある。しかし、吸水が早すぎると今度はすぐにふやけてしまい、食感がなくなってしまう。また、シリアルや乾燥具材の中には吸水せずに、喫食終了まで歯ごたえのある食感が求められるものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、膨化食材を用いた擬似食品において、牛乳やヨーグルトなどをかけても水分移行によってふやけず、喫食終了まで歯ごたえのある食感が維持できないか検討を行った。そして、膨化食材の表面に糖衣層を設けることで、上記課題を解決できることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題解決のため、本発明は、澱粉質原料と可食性濃色植物ペースト、可食性濃色植物搾汁液または可食性濃色植物粉末のいずれか少なくとも一つを含んでなる膨化食材を、糖衣層で被覆した膨化食品を提供する。また、糖衣層は、厚みが350~2000μm、糖衣掛け率が50~400%であることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、色調が鮮やかな膨化食材表面を糖衣で覆うことで、外観のみならず、内部の色彩についても本来の食品乾燥物に近づけることができる。また、膨化食材の表面を糖衣で被覆することで、食感についても本来の食品乾燥物に近づけることができる。さらに、シリアルなどの具材として用いる場合に、牛乳などの水分によってすぐにふやけてしまうことを防ぐことができる。
【0013】
上記課題解決のため、本発明は、澱粉質原料と可食性濃色植物ペースト、可食性濃色植物搾汁液または可食性濃色植物粉末のいずれか少なくとも一つを混合してドウを調製するドウ調整工程と、当該ドウを膨化処理して膨化食材を製造する膨化工程と、膨化食材に対して所定の厚みになるまで糖衣層を形成する糖衣形成工程と、からなる、膨化食品の製造方法を提供する。
【0014】
かかる構成によれば、外観のみならず内部の色彩についても本来の食品乾燥物の見た目や食感に近づけた擬似乾燥食品を生産することができる。
【0015】
なお、本発明でいう「膨化食材」とは、パフ、フレーク、ビスケット、おかき、あられなどの多孔質組織を有する食材を意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、糖衣層を所定の厚みで設けることで、喫食時に牛乳などを加えても膨化食材をふやけにくくすることができる。これにより、膨化食材のサクサクとした食感と糖衣層のカリッとした食感を兼ね備えることで、フリーズドライした食材に近い食感を喫食終了まで維持することができる。また、膨化食材の表面を所定の厚みの糖衣で被覆することにより、発泡痕をマスキングすることができ、外観を本来の食品乾燥物に近づけることができる。さらに、品質のバラつきや生産コストを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る膨化食品は、膨化食材に糖衣層を設けたことを特徴とする。さらに詳述するならば、膨化食材全体を糖衣で被覆していることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る膨化食材は、ドウを膨化処理することにより得られる。ドウは澱粉質原料に水を加えて混練することで得られる。ここで、澱粉質原料としては特に制限はなく、例えば、小麦澱粉、大麦澱粉、ライ麦澱粉、エンバク澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉、豆類澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ヒシ澱粉、クリ澱粉、サゴ澱粉、ナガイモ澱粉、レンコン澱粉、クワイ澱粉、ワラビ澱粉、ユリネ澱粉、及びアミロメイズ澱粉などが挙げられる。また、これらの澱粉質原料は化学修飾が施されていてもよい。さらに、澱粉質原料は1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明においては、澱粉質原料とともに可食性濃色植物を添加してドウを調整することができる。可食性濃色植物を添加することで、風味だけでなく、膨化食品の内部まで目的とする本来の食品の色彩に近づけることができる。本発明において、可食性濃色植物としては、濃い色素を有する喫食可能な植物であれ特に限定されない。例えば、ニンジン、トマト、かぼちゃ、ピーマン等の緑黄色野菜や、ラズベリー、ブルーベリー、いちご等のベリー類、ミカン、オレンジ、レモンなどの柑橘類などを含む果実類が該当する。さらに、紫蘇、抹茶などを用いてもよい。
【0020】
本発明における可食性濃色植物は、ペースト、搾汁液または粉末の形態で用いることができる。ペースト、搾汁液または粉末は、可食性濃色植物を摩砕処理したものを加工すればよい。磨砕手段としては、ミキサー、ミル又はおろし金等の常法を用いることができる。
【0021】
可食性濃色植物ペーストは、可食性濃色植物を磨砕処理したものを、加熱濃縮、減圧濃縮等の濃縮処理を施すことで得られる。このとき、ペーストの粘度、固形分含量及び水分含量は特に制限されない。
【0022】
可食性濃色植物の搾汁液は、可食性濃色植物を磨砕処理したものを濾すことで得られる。また、可食性濃色植物を直接圧搾してもよい。得られた搾汁液は、さらに加熱濃縮、減圧濃縮又は膜濃縮等の濃縮処理を施してもよい。
【0023】
可食性濃色植物の粉末は、可食性濃色植物を粉末化処理して得られる粉末である。可食性濃色植物の粉末化処理は常法を用いて行うことができる。例えば、凍結乾燥処理や真空凍結乾燥処理した後に粉砕すればよい。もしくは、上記可食性濃色植物のペーストや搾汁液をスプレードライしてもよい。スプレードライに用いられるバインダーとしては、デキストリン、デンプン、マルトース、ソルビトール等の既知の物質を用いることができる。粉末の粒径は特に制限されないが、10μm~1000μm程度が好ましい。
【0024】
可食性濃色植物ペースト、可食性濃色植物搾汁液または可食性濃色植物粉末のいずれか少なくとも一つを含んだドウは、澱粉質原料に、可食性濃色植物ペースト、可食性濃色植物搾汁液または可食性濃色植物粉末のいずれか少なくとも一つ、副原料、水をミキサーに加えて混練することで得ることができる。副原料としては、食塩、ショ糖、フレーバー、色素、ビタミン、ミネラルなど必要に応じて添加することができる。
【0025】
ここで、ドウに添加する可食性濃色植物ペースト、可食性濃色植物搾汁液または可食性濃色植物粉末量としては、ドウ全量に対して0.01~10重量%の範囲が好ましい。また、ドウの水分含量としては、10~40重量%であることが好ましい。
【0026】
ドウを膨化処理する方法としては特に制限されず、一軸エクストルーダー、二軸エクストルーダー、油ちょう処理、熱風膨化処理などの既知の方法を用いることができる。このうち、二軸エクストルーダーを用いることが好ましい。二軸エクストルーダーを用いることで、ドウの調製から膨化処理までの一連の作業を一台の機械で行うことができる。また、膨化食材の形状は特に限定されず、目的とする擬似果物の形状に近い形状を選択することができる。
【0027】
本発明の糖衣層は、既存の技術により設けることができる。例えば、糖蜜掛けと固化を繰り返し行うことで発泡食材表面にある発泡痕を埋めるとともに、糖衣層を厚くすることができる。また、糖蜜を複数回掛けることで、外観をよくすることができる。なお、糖蜜とは溶液状の糖質を意味する。
【0028】
また、糖衣層を設ける他の方法として、糖蜜と粉糖を混ぜ合わせたものを用いてもよい。このとき、粉糖が完全に溶解しないように留意する。糖蜜と粉糖を混ぜたものを用いることで、少ない回数で糖衣層の厚みを厚くすることができる。なお、粉糖とは粉末、造粒などの固体状の糖質を意味する。
【0029】
なお、本発明においては、膨化食材の表面全体を均一に被覆するために、レボリングを用いて膨化食材を回転させながら糖衣層を形成することが好ましい。糖衣層の厚さは、350~2000μm程度が好ましく、500~1800μmがより好ましく、600~1500μmがさらにより好ましい。糖衣の厚さを350μm以上にすることで、牛乳やヨーグルトからの水分移行を防ぎ、喫食終了まで歯ごたえを維持することができる。一方、糖衣層を2000μmより大きくすると、生産コストと時間がかかってしまう。
【0030】
本発明においては、膨化食材に対して糖衣掛け率が50~400%であることが好ましく、100~350%であることがより好ましく、150~320%であることがさらにより好ましい。糖衣掛け率をこの範囲にすることで、牛乳やヨーグルトからの水分移行に耐えうる糖衣層を形成することができる。また、喫食時に最適な歯ごたえを維持することができる。
【0031】
糖蜜及び糖質として用いることができる糖質としては、砂糖やぶどう糖、麦芽糖、トレハロース、イソマルツロースなどの糖類、およびソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、還元イソマルツロース、還元澱粉糖化物などの糖アルコール類が挙げられる。これらの糖質は1種類でもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、糖質にはフレーバー、色素、ビタミンなどを添加して用いてもよい。なお、糖蜜の粘度や粉糖の粒度については特に制限がなく、膨化食材表面の発泡痕の大きさなどを考慮して調製することができる。
【0032】
本発明においては、糖蜜に可食性濃色植物ペースト、可食性濃色植物搾汁液または可食性濃色植物粉末を加えて用いてもよい。また、粉糖に可食性濃色植物粉末を混ぜて用いてもよい。これらは組み合わせて用いてもよいし、どちらか一方のみを用いてもよい。なお、糖蜜および/または粉糖に添加する可食性濃色植物ペースト、可食性濃色植物搾汁液または可食性濃色植物粉末量としては、糖衣層全量に対して0.01~20重量%の範囲が好ましい。
【0033】
本発明の膨化食品を製造するのに好適な方法を説明する。ここでは、二軸エクストルーダーを用いて、ドウに可食性濃色植物粉末を添加した場合を例に説明する。まず、澱粉質原料、可食性濃色植物粉末、その他の副原料を混合し、必要により加水して二軸エクストルーダーでドウを調製する。ドウの水分含量は、10~40重量%であることが好ましい。また、二軸エクストルーダーでの混練により、ドウはα化処理される。続いて、調製されたドウが所望の形状となるように、ドウを二軸エクストルーダーの出口に設けられた口金から排出し、切断する。このとき、二軸エクストルーダーから排出されたドウは、高圧から解放されるため膨化する。これにより、所望形状の膨化食材が得られる。
【0034】
続いて、得られた膨化食材をレボリングに投入し、膨化食材を回転させながら糖蜜を添加する。このとき、糖蜜にはフレーバー、色素などを予め添加しておくことが好ましい。そして、添加した糖蜜は膨化食材の表面を被覆して固化する。固化した糖蜜によって膨化食材の表面に被膜ができたら、また糖蜜を添加する。この作業を所定の糖衣掛け率となるまで複数回行う。糖蜜を分割して投入することで、膨化食材全体にいきわたらせることができる。また、レボリングによって膨化食材を回転させているため、膨化食材の表面をある程度均一に被覆することができる。その後、乾燥工程によって、水分を蒸散させる。なお、糖蜜に含まれる水分の一部はいったん膨化食材に移行するが、その後の乾燥工程により蒸散する。
【0035】
最後に光沢剤を添加し、糖衣層の表面を光沢剤で被覆する。これにより、見た目をより本物に近づけ、最終産物である膨化食品を得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下、可食性濃色植物としてブルーベリーを、膨化食材としてパフを、膨化食品としてブルーベリー風食品を例に、本発明を更に詳細に説明する。また、本発明の各特性は、以下の方法により評価した。
【0037】
(官能評価)
ブルーベリー風食品は次の評価基準に基づきベテランパネラー5名で評価を行い、最も多かった結果を記載した。なお、喫食時の食感については、膨化食品20gに対して14℃の牛乳100mlを加え、室温(25℃)で5分間放置したものについて官能評価を行った。ただし、基準となる参考例については、牛乳には浸さないものとする。
【0038】
<見た目>
評価
A:参考例と外観がとてもよく似ている
B:参考例と外観が多少似ている
C:参考例とあまり似ておらず、膨化食材の発泡痕が視認できる
D:参考例と似ておらず、膨化食材の発泡痕が目立つ
【0039】
<喫食時の風味>
評価
A:参考例と同等である
B:参考例よりはわずかに劣るが、ブルーベリーの風味に近い
C:参考例よりも劣り、ブルーベリーの風味は僅かしかしない
D:ブルーベリーの風味を感じない
【0040】
<喫食時の食感>
評価
A:参考例と食感が似ており、カリッとした歯ごたえがある
B:パフの一部がふやけているが、歯ごたえがある
C:パフの大部分がふやけており、僅かに歯ごたえを感じる
D:ふやけており、歯ごたえがない
【0041】
<糖衣層の厚み>
下記実施例及び比較例の糖衣層の厚みは次のようにして測定した。各実施例・比較例を包丁の刃の根元で破砕する。破砕した各実施例・比較例のサンプルを顕微鏡にセットし、パフと糖衣層の境目から糖衣層表面までの距離を測定した。
【0042】
<実施例1>
コーングリッツ、小麦粉、可食性濃色植物粉末としてブルーベリーパウダーを混合し、混合粉を得た。得られた混合粉を二軸エクストルーダーに投入し、混合粉に水を添加しながら混練し、ドウを調製した。次に、口金からドウを押し出すことで、平均粒径が約8mmの球状の膨化食材を得た。次に、得られた膨化食材1kgをレボリングに投入し、着色剤、フレーバーなどを加えた糖蜜を複数回に分けて添加した。糖蜜が膨化食材全体にいきわたり、膨化食材の表面で固化したのを確認後、再び糖蜜を添加した。この作業を複数回繰り返し行った。最終的に、糖蜜を計2kg添加した。このとき、糖衣掛け率は180%であった。最後に光沢剤を加えて、最終製品である乾燥ブルーベリー風食品を得た。
【0043】
<実施例2>
糖蜜の添加量を変え、糖衣掛け率を60%にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0044】
<実施例3>
糖蜜の添加量を変え、糖衣掛け率を80%にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0045】
<実施例4>
糖蜜の添加量を変え、糖衣掛け率を100%にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0046】
<実施例5>
糖蜜の添加量を変え、糖衣掛け率を130%にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0047】
<実施例6>
糖蜜の添加量を変え、糖衣掛け率を150%にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0048】
<実施例7>
糖蜜の添加量を変え、糖衣掛け率を190%にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0049】
<実施例8>
糖蜜の添加量を変え、糖衣掛け率を310%にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0050】
<比較例1>
糖衣層を設けなかったこと以外は、実施例1と同じである。すなわち、実施例1に記載の膨化食材そのものである。
【0051】
<比較例2>
糖蜜の添加量を変え、糖衣掛け率を40%にしたこと以外は実施例1と同じである。
【0052】
<参考例>
市販のフリーズドライしたブルーベリーを参考例とした。
【0053】
結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1に示すように、各実施例において見た目、風味及び食感のいずれにおいても好ましい結果が得られた。特に、実施例1,6,7,8においては、すべの項目においてA評価となった。それ以外の実施例ではB評価の項目はあるものの、総じて良い評価が得られた。
【0056】
表1の結果から明らかなように、見た目に関しては、糖衣掛け率が80%を超えると参考例と同等の見た目になるとの結果が得られた。また、風味に関しては、糖衣掛け率150%を超えると参考例と同等の風味が感じられるとの結果が得られた。さらに、喫食時の食感については、牛乳をかけてから一般的に5分以内に喫食が完了するとのデータに基づき、5分経過後の食感を調べた。その結果、糖衣層の厚みが350μm以上であれば、喫食終了まで歯ごたえのある食感を得られるとの結果が得られた。これらの結果から、糖衣掛け率としては、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、150%以上がさらにより好ましいことがわかる。
【0057】
一方、比較例1は糖衣層がないため表面の発泡痕が目立ち、牛乳からの水分移行によりふやけて食感が感じられない結果となった。また、風味も全く感じられなかった。比較例2では糖衣層は存在するものの、発泡痕が視認でき、見た目が悪いものとなっていた。また、風味が悪く、参考例に及ばない結果となった。
【0058】
次に、製造方法を変えてブルーベリー風食品を製造した。また、製造したブルーベリー食品について、上述の官能評価試験を行った。
【0059】
<実施例9>
膨化食材に加えていたブルーベリーパウダーに代えて、糖蜜にブルーベリーペーストを加えて製造した以外は、実施例1と同じである。
【0060】
<実施例10>
膨化食材に加えていたブルーベリーパウダーに代えてブルーベリー搾汁液を用い、さらに糖蜜に対してブルーベリーパウダーを加えて製造した以外は、実施例1と同じである。
【0061】
実施例9,10の官能評価の結果を表2に示す。
【0062】
【0063】
表2に示すように、いずれの製法においても実施例1と同様、全ての項目においてA評価となった。今回得られた実施例9,10は、実施例1と比較しても、まったく遜色ないものであった。
【0064】
以上説明したように、本発明によれば、膨化食材の表面を糖衣で被覆することで、膨化食材の発泡痕をマスキングしつつ、乾燥状態を再現した擬似乾燥食品を作成することができる。また、本発明によれば、膨化食材の材質や可食性濃色植物の種類を組み合わせることで、様々な乾燥食品を再現することができる。