(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20230721BHJP
B41F 33/16 20060101ALI20230721BHJP
B41F 7/02 20060101ALI20230721BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
B41F33/00 280
B41F33/00 234
B41F33/00 238
B41F33/16
B41F7/02 414
B41J29/393 107
(21)【出願番号】P 2019219434
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】六原 義昭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 聖子
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-075518(JP,A)
【文献】特開2019-116012(JP,A)
【文献】特開2006-297955(JP,A)
【文献】特開2003-001799(JP,A)
【文献】特開2006-123185(JP,A)
【文献】特開2003-118077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0144388(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008042147(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
B41F 33/16
B41F 7/02
B41J 29/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の試し刷り印刷物の濃度値を測定する濃度値測定手段と、該濃度値測定手段により測定された濃度値に基づいて試し刷り印刷物が合格か不合格かを判定する合否判定手段と、該合否判定手段による合否判定に基づいて試し刷りから本刷りへの移行の可否を判断する本刷り移行手段と、を備え、
該本刷り移行手段は、前記合否判定手段による合格判定の複数回連続を本刷りへの移行を可と判断するときの条件として構成されていることを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記濃度値測定手段は、試し刷り印刷物の各インキツボキーに対応する範囲に印刷された複数のベタパッチそれぞれの濃度値を測定するものであり、該複数のベタパッチのうち、測定した濃度値が目標の濃度値に入っているベタパッチの数を濃度関連指標として導出する濃度関連指標導出手段を備えており、
前記合否判定手段は、該濃度関連指標導出手段で導出した濃度関連指標が目標の指標である目標の数以上である場合に、試し刷り印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段で導出した濃度関連指標が前記目標の数未満である場合に、試し刷り印刷物が不合格であると判定する手段であることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記濃度値測定手段は、試し刷り印刷物の各インキツボキーに対応する範囲に印刷された複数のベタパッチそれぞれの濃度値を測定するものであり、
測定した該複数のベタパッチの濃度値を合計した合計濃度値をベタパッチの個数で割った平均濃度値を濃度関連指標として導出する濃度関連指標導出手段を備えており、
前記合否判定手段は、該濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と目標の指標である目標の濃度値との差が設定範囲内にある場合に、試し刷り印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と前記目標の濃度値との差が設定範囲外にある場合に、試し刷り印刷物が不合格であると判定する手段であることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本刷りを行う前に試し刷りを行う印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる印刷機では、本刷りを行う前に所定枚数の印刷を試し刷りとして行い濃度確認(濃度合わせ)をしている。具体的には、所定枚数の印刷を試し刷りとして行い、試し刷りした印刷物の濃度測定を行い、測定した濃度値が目標とする濃度値に対して許容範囲内にあるかどうかを判定する。許容範囲内にあると判定されると、印刷を停止することなく本刷りへ移行し、許容範囲外にあると判定されると、測定される濃度値が許容範囲内に入るようにインキ供給量の補正を行いつつ更に試し刷りを行って濃度確認(濃度合わせ)をすることになる(例えば、特許文献1)。試し刷りの印刷物は損紙となる。
【0003】
前記のように、測定された濃度値が許容範囲内にあると、直ちに本刷りへ移行する。その本刷りへ移行した後も印刷物の濃度状況を監視し、必要に応じてフィードバックを行っているものの、測定された濃度値が許容範囲外になることがある。濃度値が許容範囲外となった本刷り中の印刷物は、損紙となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記測定された濃度値が許容範囲外になる原因の一つは、濃度が収束(安定)する前の印刷物(濃度がハンチング(オーバーシュートやアンダーシュート)する過程にある印刷物を含む)を濃度測定した結果に基づいて、本刷り移行を判断しているためである。また、このことは、試し刷り枚数が比較的少ない場合に起こる可能性が高い。したがって、この問題は、濃度が収束(濃度が安定)した後の印刷物の濃度測定を行うことで解決できるものであるが、絵柄の面積率やインキの供給量によっては、濃度が収束(安定)するまでに、多くの試し刷り枚数を必要とし、試し刷りした印刷物の全てが損紙扱いになるため、損紙が大量に発生してしまうことになり、早期改善が要望されている。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、試し刷り時の損紙の増加を抑えつつ本刷り移行後に測定された濃度値が許容範囲外になることを防止する印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷機は、搬送中の試し刷り印刷物の濃度値を測定する濃度値測定手段と、該濃度値測定手段により測定された濃度値に基づいて試し刷り印刷物が合格か不合格かを判定する合否判定手段と、該合否判定手段による合否判定に基づいて試し刷りから本刷りへの移行の可否を判断する本刷り移行手段と、を備え、該本刷り移行手段は、前記合否判定手段による合格判定の複数回連続を本刷りへの移行を可と判断するときの条件として構成されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、合否判定手段による合格判定が複数回連続した場合には、濃度が問題ない程度に収束(安定)している可能性が高いと判断することができる。したがって、合格判定が複数回連続したことを条件として本刷りに移行すれば、必要となる最小限の試し刷り時の損紙で抑えつつ本刷り移行後に測定された濃度値が許容範囲外になることを防止することができる。
【0009】
また、本発明に係る印刷機は、前記濃度値測定手段が、試し刷り印刷物の各インキツボキーに対応する範囲に印刷された複数のベタパッチそれぞれの濃度値を測定するものであり、該複数のベタパッチのうち、測定した濃度値が目標の濃度値に入っているベタパッチの数を濃度関連指標として導出する濃度関連指標導出手段を備えており、前記合否判定手段は、該濃度関連指標導出手段で導出した濃度関連指標が目標の指標である目標の数以上である場合に、試し刷り印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段で導出した濃度関連指標が前記目標の数未満である場合に、試し刷り印刷物が不合格であると判定する手段であってもよい。
【0010】
上記のように、合否判定手段は、濃度関連指標導出手段で導出したベタパッチの数が目標の数以上である場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、濃度関連指標導出手段で導出したベタパッチの数が目標の数未満である場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する。
【0011】
また、本発明に係る印刷機は、前記濃度値測定手段が、試し刷り印刷物の各インキツボキーに対応する範囲に印刷された複数のベタパッチそれぞれの濃度値を測定するものであり、測定した該複数のベタパッチの濃度値を合計した合計濃度値をベタパッチの個数で割った平均濃度値を濃度関連指標として導出する濃度関連指標導出手段を備えており、前記合否判定手段は、該濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と目標の指標である目標の濃度値との差が設定範囲内にある場合に、試し刷り印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と前記目標の濃度値との差が設定範囲外にある場合に、試し刷り印刷物が不合格であると判定する手段であってもよい。なお、平均濃度値の導出においては、ベタパッチ以外の画像がないインキツボキーに対応する範囲がある場合は、その範囲にあるベタパッチを平均濃度値の導出対象から除外することもできる。
【0012】
上記のように、合否判定手段は、濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と目標の濃度値との差が設定範囲内にある場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と目標の濃度値との差が設定範囲外にある場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、合格判定が複数回連続した場合に、本刷りに移行する本刷り移行手段を備えることで、試し刷り時の損紙の増加を抑えつつ本刷り移行後に測定された濃度値が許容範囲外になることを防止する印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】印刷機の試し刷りOK判定処理を行うためのフローチャートであり、最初の処理を示している。
【
図4】印刷機の試し刷りOK判定処理を行うためのフローチャートであり、
図3から引き続きの処理を示している。
【
図5】印刷機の試し刷りOK判定処理を行うためのフローチャートであり、
図4から引き続きの処理を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態にかかる印刷機について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
印刷機1は、紙積み台2と、紙積み台2からフィーダ装置3により一枚ずつ印刷用紙を送り出すための給紙部4と、この給紙部4から送り出された印刷用紙に5色(少なくとも一つの特色を含む色)の印刷を行うための印刷部5と、該印刷部5で印刷された印刷用紙(印刷物)の各インキツボキー(単に、キーと呼ぶこともある。)に対応する範囲に印刷された複数のベタパッチ(図示せず)を撮像するRGB方式の撮像手段であるRGBカメラ6と、撮像後の印刷用紙を搬送して排紙するための排紙部7と、を備えている。
図1において、紙積み台2側を前側とし、排紙部7側を後側とし、紙面を貫通する方向を左右方向(又は幅方向)として、以下説明する。
【0017】
印刷部5は、プロセス4色であるC(シアン)、M(マゼンタ)Y(イエロー)、K(ブラック)を印刷する4台の印刷ユニット5A,5B,5C,5Dと、プロセス4色以外の色である特色を印刷する印刷ユニット5Eと、を備えている。この実施形態では、特色を印刷する印刷ユニット5Eを後端に配置しているが、どの位置に配置してもよい。なお、印刷ユニット5Aが、後述するフローチャートに登場するユニット1に相当し、印刷ユニット5Bが、後述するフローチャートに登場するユニット2に相当し、印刷ユニット5Cが、後述するフローチャートに登場するユニット3に相当し、印刷ユニット5Dが、後述するフローチャートに登場するユニット4に相当し、印刷ユニット5Eが、後述するフローチャートに登場するユニットnに相当する。
【0018】
RGBカメラ6は、排紙部7の前端側上部に配置されたボックス9内に収容されているとともに、最後部に位置する印刷ユニット5Eと排紙部7との間に配置されるステップ10に形成される開口(図示せず)を通して搬送される印刷用紙の複数のベタパッチを撮像する。尚、開口は、開閉自在な蓋体(図示せず)によって開口状態と閉塞状態とに切り換えられる。また、排紙部7の左右方向に設けられた一対の側壁部11,11(
図1では一方側のみ図示)のそれぞれに、点検やトラブル解消の目的でステップ10を横断したい場合に、RGBカメラ6による撮像を一時中断及び再開させるための押しボタン12を備えている。この押しボタン12を押すことによりRGBカメラ6による撮像を中断し、押しボタン12を再度押すことによりRGBカメラ6による撮像を再開する。なお、押しボタン12は、排紙部7の後壁部に備えることもできる。また、中断している時は、押しボタン12が点滅することで、中断していることを作業者へ報知する。なお、撮像手段であるRGBカメラ6としては、ラインセンサカメラ、CMOSカメラ、CCDカメラ等が挙げられる。RGBカメラ6で撮像した各ベタパッチの撮像データが
図2に示す制御部Sに備える濃度値算出手段13に入力され、濃度値算出手段13が各ベタパッチの濃度値を算出する。前記RGBカメラ6と濃度値算出手段13とから、複数のベタパッチの濃度値を測定する濃度値測定手段14(
図2参照)を構成している。なお、印刷機1が印刷ユニット間に反転装置を備える反転機として構成されている場合は、RGBカメラ6を反転装置の配置位置にも設けることで、先刷り面(反転前に印刷される面)の複数のベタパッチも撮像できるように構成することができる。
【0019】
図2に、本発明の印刷機の試し刷りOK判定処理を行うためのブロック図を示している。つまり、印刷機は、RGBカメラ6からの撮像データが入力される制御部Sを備え、制御部Sは、RGBカメラ6からの撮像データを濃度値に算出する濃度値算出手段13と、濃度関連指標導出手段15と、合否判定手段16と、本刷り移行手段17と、を備えている。
【0020】
濃度値算出手段13は、前述したように、RGBカメラ6で撮像した各ベタパッチの撮像データに基づいて各ベタパッチの濃度値を算出する手段である。なお、算出した3つのRGBのベタ濃度値をCMYKのベタ濃度値に変換した濃度値を利用してもよい。
【0021】
濃度関連指標導出手段15は、複数のベタパッチの濃度値のうち、目標の濃度値に入っているベタパッチの数を濃度関連指標として導出する手段である。例えば、目標の濃度値を、予め設定された所定範囲を有する濃度値とし、その濃度値を例えば、1.4~1.6に設定すると、測定した濃度値が目標の濃度値1.4~1.6に入っているベタパッチの数を導出することになる。目標の濃度値の設定は、自由に変更でき、例えば色毎や印刷する作業対象に応じて変更することができる。
【0022】
合否判定手段16は、濃度関連指標導出手段15により導出された濃度関連指標と目標の指標とに基づいて試し刷りされた印刷物が合格か不合格かの合否を判定する手段である。具体的には、前記濃度関連指標導出手段15で導出したベタパッチの数が目標の指標である目標の数以上である場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段15で導出したベタパッチの数が目標の数未満である場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する。例えば、ベタパッチの総数が21個の場合(インキツボキーが21個ある場合)は、総数の21個を目標の数にしてもよいし、20個以下の任意の数としてもよい。目標の数は、色毎や印刷する作業対象に応じて変更することができる。また、ベタパッチ以外の画像がないインキツボキーに対応する範囲がある場合は、その範囲にあるベタパッチの数をベタパッチの総数や目標の濃度値に入っているベタパッチの数に加算しないこともできる。このように加算しない場合は、合否判定手段16が合否判定する目標の指標である目標の数は、設定されている合格割合(後述の本刷り移行OK%に相当)から算出される数となる。
【0023】
本刷り移行手段17は、試し刷りから本刷りへ移行する条件として前記合否判定手段16による合格判定1回又は複数回連続を選択することができる。また、この複数回の回数については、2以上の任意の数に設定することができる。
【0024】
合否判定手段16による合格判定が複数回(2回以上)連続した場合には、濃度が問題ない程度に収束(安定)している可能性が高いと判断することができる。したがって、合格判定が複数回(2回以上)連続したことを条件として本刷りに移行すれば、必要となる最小限の試し刷り時の損紙で抑えつつ本刷り移行後に測定された濃度値が許容範囲外になることを防止することができる。
【0025】
また、前記本刷り移行手段17は、試し刷りから本刷りへ移行する条件として、合否判定手段による合格判定1回を選択することができる。
【0026】
このように、本刷り移行手段17が、種々の試し刷りから本刷りへ移行する条件を選択設定可能に構成されているので、印刷する印刷物の要求品質レベルに応じて好適な条件を的確に設定できる。つまり、濃度に関する要求品質レベルが高い印刷物の場合には、前記条件として合格判定の複数回(2回以上)連続を選択し、濃度に関する要求品質レベルが低い印刷物の場合には、前記条件として合格判定1回を選択することによって、損紙をより一層減らして、効率よく印刷を行うことができる。なお、前記条件は、オペレータが手動操作して任意の値に設定してもよいし、制御部Sがジョブ(JOB)情報から自動で選択して設定することもできる。
【0027】
次に、
図3~
図5に示すフローチャートに基づいて試し刷りから本刷りへ移行する処理である試し刷りOK判定処理を説明する。
図3~
図5は、試し刷りOK判定処理を行う一連のフローチャートであるが、一つの図の中に記載できないため、3枚に分けて記載している。
【0028】
まず、各種設定を行う。具体的には、目標濃度と本刷り移行OK%と本刷り移行判定回数の設定を行う(ステップS1)。目標濃度とは、目標とする各色のベタパッチの濃度値であって、許容範囲の上限値と下限値を設定する、あるいは目標値と目標値に対する許容ずれ量を設定する。本刷り移行OK%とは、本刷りに移行可能との判断になる目標濃度に入ったベタパッチの数の割合(%)であり、ユニット毎(色毎)に設定する。この本刷り移行OK%は、合否判定手段16が合否を判定するための条件である。本刷り移行判定回数とは、試し刷りから本刷りへ移行可能と判断するときの条件であり、本刷り移行OK%以上と判定した試し刷りの回数をユニット毎(色毎)に設定する。この回数は、1回、連続2回、連続3回のいずれかを選択するように構成されている。この本刷り移行判定回数は、本刷り移行手段17が試し刷りから本刷りへ移行可能と判断する条件である。
【0029】
次に、試し刷り濃度判定枚数の設定を行う(ステップS2)。試し刷り濃度判定枚数とは、試し刷り1回あたりの印刷枚数である。本実施形態においては、デフォルト値を30枚としている。なお、この試し刷り濃度判定枚数は、試し刷り回数毎に設定することができる。例えば、2回目の試し刷りの印刷枚数よりも3回目の試し刷りの印刷枚数を少なく設定することもできる。なお、試し刷り印刷物における各位置のベタパッチの濃度値は、試し刷り濃度判定枚数の試し刷り印刷物の中の最後の10枚の濃度値の中から最小値と最大値の2つを除いた残りの8つの濃度値の平均値としている。ただし、試し刷り印刷物における各位置のベタパッチの濃度値は、これに限定されない。例えば、最後の5枚の濃度値の中から最小値と最大値の2つを除いた残りの3つの濃度値の平均値とすることもできる。あるいは、試し刷り濃度判定枚数の試し刷り印刷物の中の最後の1枚の印刷物の濃度値とすることもできる。また、試し刷り濃度判定枚数の試し刷り印刷物の中の最後の3枚の印刷物の濃度値の平均値とすることもできる。以上の設定が終了すると、試し刷りm回目(例えば1回目)をスタートする(ステップS3)。
【0030】
試し刷りm回目(1回目)の印刷枚数が設定した試し刷りm回目の試し刷り濃度判定枚数(試し刷りm濃度判定枚数)に達したかどうかを判定する(ステップS4)。印刷枚数が設定した試し刷りm回目(1回目)の濃度判定枚数に達したと判定すると、ユニット1で印刷した色について測定した濃度値が目標濃度に入ったキーの数を算出する(ユニット1の試し刷りm回目(1回目)のOKのキーの数を算出する)(ステップS5)。なお、キーの数とは、ベタパッチの数と同義である。次に、(目標濃度に入ったユニット1のキーの数)÷(ユニット1の全キーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OK%の設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS6)。該計算値が本刷り移行OK%の設定値以上であると合格判定となる。合格判定回数が設定した本刷り移行判定回数(1回、連続2回、連続3回のいずれか)に達したかどうかを判定する(ステップS7)。達したと判定すれば、ユニット1の本刷り移行OKフラグをセットし(ステップS8)、ユニット2の判定に移行する(ステップS9)。達していないと判定すれば、ユニット2の判定に移行する(ステップS9)。また、前記ステップS6で本刷り移行OK%の設定値未満であると判定すると、ユニット2の判定に移行する(ステップS9)。
【0031】
ステップS9に移行すると、ユニット2で印刷した色について測定した濃度値が目標濃度に入ったキーの数を算出する(ユニット2の試し刷りm回目(1回目)のOKのキーの数を算出する)。次に、(目標濃度に入ったユニット2のキーの数)÷(ユニット2の全キーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OK%の設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS10)。該計算値が本刷り移行OK%の設定値以上であると合格判定となる。合格判定回数が設定した本刷り移行判定回数(1回、連続2回、連続3回のいずれか)に達したかどうかを判定する(ステップS11)。達したと判定すれば、ユニット2の本刷り移行OKフラグをセットし(ステップS12)、ユニット3の判定に移行する(ステップS13)。達していないと判定すれば、ユニット3の判定に移行する(ステップS13)。また、前記ステップS10で本刷り移行OK%の設定値未満であると判定すると、ユニット3の判定に移行する(ステップS13)。ステップS13では、ユニット3で印刷した色について測定した濃度値が目標濃度に入ったキーの数を算出する(ユニット3の試し刷りm回目(1回目)のOKのキーの数を算出する)。
【0032】
次に、(目標濃度に入ったユニット3のキーの数)÷(ユニット3の全キーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OK%の設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS14)。該計算値が本刷り移行OK%の設定値以上であると合格判定となる。合格判定回数が設定した本刷り移行判定回数(1回、連続2回、連続3回のいずれか)に達したかどうかを判定する(ステップS15)。達したと判定すれば、ユニット3の本刷り移行OKフラグをセットし(ステップS16)、ユニット4の判定に移行する(ステップS17)。達していないと判定すれば、ユニット4の判定に移行する(ステップS17)。また、前記ステップS14で本刷り移行OK%の設定値未満であると判定すると、ユニット4の判定に移行する(ステップS17)。ステップS17に移行すると、ユニット4で印刷した色について測定した濃度値が目標濃度に入ったキーの数を算出する(ユニット4の試し刷りm回目(1回目)のOKのキーの数を算出する)。
【0033】
次に、(目標濃度に入ったユニット4のキーの数)÷(ユニット4の全キーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OK%の設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS18)。該計算値が本刷り移行OK%の設定値以上であると合格判定となる。合格判定回数が設定した本刷り移行判定回数(1回、連続2回、連続3回のいずれか)に達したかどうかを判定する(ステップS19)。達したと判定すれば、ユニット4の本刷り移行OKフラグをセットし(ステップS20)、ユニットnの判定に移行する(ステップS21)。達していないと判定すれば、ユニットnの判定に移行する(ステップS21)。また、前記ステップS18で本刷り移行OK%の設定値未満であると判定すると、ユニットnの判定に移行する(ステップS21)。ステップS21に移行すると、ユニットnで印刷した色について測定した濃度値が目標濃度に入ったキーの数を算出する(ユニットnの試し刷りm回目(1回目)のOKのキーの数を算出する)。
【0034】
次に、(目標濃度に入ったユニットnのキーの数)÷(ユニットnの全キーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OK%の設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS22)。該計算値が本刷り移行OK%の設定値以上であると合格判定となる。合格判定回数が設定した本刷り移行判定回数(1回、連続2回、連続3回のいずれか)に達したかどうかを判定する(ステップS23)。達したと判定すれば、ユニットnの本刷り移行OKフラグをセットし(ステップS24)、ステップS25へ移行する。達していないと判定すれば、ステップS25へ移行する。前記ステップS22で本刷り移行OK%の設定値未満であると判定すると、ステップS25へ移行する。ステップS25では、全ユニットの本刷り移行OKフラグがセットされているかどうかを判定する。全ユニットの本刷り移行OKフラグがセットされていると判定されると、本刷りへ移行する(ステップS26)。全ユニットの本刷り移行OKフラグがセットされていないと判定されると、ステップS3に戻ってm回目(前回が1回目であれば、2回目)の試し刷りをスタートする。
【0035】
前記印刷機1を用いて印刷用紙の表面のみ(又は裏面のみ)印刷する場合は、表面(又は裏面)に印刷される全ての色の濃度の合格判定の回数が、設定された本刷り移行判定回数になると、試し刷りから本刷りに移行することになる。また、前記印刷機1を用いて印刷用紙の表面及び裏面の両面を印刷する場合は、表面及び裏面の両面に印刷される全ての色の濃度の合格判定の回数が、設定された本刷り移行判定回数になると、試し刷りから本刷りに移行することになる。なお、本実施形態では、試し刷りスタートから本刷りへの移行までは、給紙不良等の不具合が発生しない限り、印刷が継続した状態で実行される。
【0036】
なお、例えば本刷り移行判定回数を連続2回に設定し、ユニット1とユニット2のみで印刷を行う場合においては、ユニット1では、試し刷り1回目と2回目で連続して合格判定となった後の試し刷り3回目で不合格判定となり、ユニット2では、試し刷り1回目では不合格判定となった後の試し刷り2回目と3回目で連続して合格判定となった場合、ユニット1及びユニット2のいずれもがフラグがセットされているので、本刷りに移行することになる。要するに、全ユニット(全色)のフラグがセットされていれば、本刷りに移行する。なお、この実施形態では、試し刷り回数にかかわらず、設定した本刷り移行判定回数(1回、連続2回、連続3回のいずれか)に達するまで、試し刷りを行う構成であるが、試し刷りの回数が多くなれば、設定した本刷り移行判定回数を自動的に減らすような制御を行ってもよい。例えば、本刷り移行判定回数を連続3回に設定した場合に、試し刷りまでに全ユニット(全色)の本刷り移行OKフラグがセットされない場合(すなわち、本刷りへ移行しない場合)には、6回目の試し刷り以降は、本刷り移行判定回数を自動的に減らす(例えば連続2回に設定変更する)ようにしてもよい。
【0037】
前記実施形態で説明した濃度関連指標導出手段15及び本刷り移行手段17を、次のように構成することもできる。つまり、濃度関連指標導出手段15を、複数のベタパッチの濃度値を合計した合計濃度値をベタパッチの個数で割った平均濃度値を濃度関連指標として導出する手段から構成し、前記本刷り移行手段17が、前記濃度関連指標導出手段15で導出した平均濃度値と目標の指標である目標の濃度値との差が設定範囲内にある場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段15で導出した平均濃度値と目標の濃度値との差が設定範囲外にある場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する手段であってもよい。
【0038】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
前記実施形態では、5つのユニットを備える印刷機を示したが、1つのユニット又は2つ以上の任意の個数のユニットを備える印刷機であってもよい。また、複数のユニットを備える印刷機で全数のユニットよりも少ない数(最低1ユニット以上)のユニットにより印刷してもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、RGBカメラ6を用いたが、分光測色計を用いてもよい。この場合、分光測色計が複数のベタパッチの濃度値を測定する濃度値測定手段14を構成する。
【0041】
また、前記実施形態では、全ベタパッチの濃度を確認していたが、印刷品質上重要なエリアに対応するベタパッチの濃度だけを確認してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…印刷機、2…紙積み台、3…フィーダ装置、4…給紙部、5…印刷部、5A,5B,5C,5D,5E…印刷ユニット、6…RGBカメラ、7…排紙部、9…ボックス、10…ステップ、11…側壁部、12…ボタン、13…濃度値算出手段、14…濃度値測定手段、15…濃度関連指標算出手段、16…合否判定手段、17…本刷り移行手段、S…制御部