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特許7316933一体化される切断式のツインクラッチシステムおよびデュアルアクションピストン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】一体化される切断式のツインクラッチシステムおよびデュアルアクションピストン
(51)【国際特許分類】
   B60K 23/08 20060101AFI20230721BHJP
   B60K 17/346 20060101ALI20230721BHJP
   B60K 23/04 20060101ALI20230721BHJP
   F16D 25/10 20060101ALI20230721BHJP
   F16H 48/19 20120101ALI20230721BHJP
【FI】
B60K23/08 C
B60K17/346 B
B60K23/04 E
F16D25/10 C
F16H48/19
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019515829
(86)(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017052969
(87)【国際公開番号】W WO2018057899
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】62/398,164
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518392026
【氏名又は名称】リナマー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】コセバー,マイク
(72)【発明者】
【氏名】大野 峻
(72)【発明者】
【氏名】エコネン,トッド・アール
(72)【発明者】
【氏名】ホランド,ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】スウィンガー,エバン
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】尾崎 和寛
【審判官】久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-182242(JP,A)
【文献】特開2013-76460(JP,A)
【文献】実開昭58-74644(JP,U)
【文献】特開2005-265063(JP,A)
【文献】特開2009-204046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セカンダリ駆動ユニット(30)を介して駆動源(306,307)に選択的に接続される左側および右側セカンダリ駆動ホイール(12,14)を有する全輪駆動自動車のためのセカンダリ駆動ユニットであって、
前記セカンダリ駆動ユニットが、前記駆動源に動作可能に結合されるメインシャフト(309)を収容し、
前記セカンダリ駆動ユニットが、
セカンダリ駆動ユニット(SDU)ハウジング(302)であって、前記メインシャフトを受けるための第1のセクション(304)を画定し、ツインクラッチ組立体(301,401)を包囲するための第2のセクション(305)を画定する、セカンダリ駆動ユニット(SDU)ハウジングと、
前記メインシャフト(309)と同心である左側出力シャフト(318)であって、前記左側セカンダリ駆動ホイールにトルクを伝達するためのものである、左側出力シャフトと、
前記左側出力シャフトと同軸である右側出力シャフト(316)であって、前記右側セカンダリ駆動ホイールにトルクを伝達するためのものである、右側出力シャフトと
を備え、
前記ツインクラッチ組立体が、
前記メインシャフトに接続されたクラッチハウジング(310)と、
前記左側出力シャフト(318)および前記クラッチハウジング(310)を選択的に接続するための左側クラッチ(312,413)と、
前記右側出力シャフト(316)および前記クラッチハウジング(310)を選択的に接続するための、前記左側クラッチ(312,413)とは独立にトルクを制御できるように構成された右側クラッチ(314,415)と、
前記クラッチハウジング(310)の内壁から延在する剛体中央プレート(340)であって、前記左側クラッチ(312,413)および前記右側クラッチ(314,415)を分離する、剛体中央プレートと
を有し、
前記剛体中央プレート(340)は前記左側クラッチ(312,413)と右側クラッチ(314,415)との間で前記クラッチハウジング(310)に固定されており、前記剛体中央プレートは前記ツインクラッチ組立体(301,401)のいずれかの側からの作動力に逆らうように反応するのに十分なスティフネスを有し、それにより前記ツインクラッチ組立体(301,401)のもう一方側において前記剛体中央プレートが撓んでクラッチ(312,413,314,415)を圧縮することが回避され、
前記右側クラッチ(314,415)または前記左側クラッチ(312,413)の一方が、デュアルアクションピストン組立体(412)をさらに備え、
前記デュアルアクションピストン組立体(412)が、
デュアルアクションピストン(349,416)と、
前記セカンダリ駆動ユニット(SDU)ハウジング(302)の第1の内向きの壁(350)の中に画定された、前記デュアルアクションピストン(349,416)を受けるためのキャビティと、
前記セカンダリ駆動ユニット(SDU)ハウジング(302)の中に画定された、前記デュアルアクションピストン組立体(412)を始動させるために流体を通過させるための第1および第2のポート(P1,P2)と
を備え、
前記デュアルアクションピストン(349,416)および前記第1の内向きの壁の中の前記キャビティが、前記第1および第2のポートを通して流体を受け取るための第1および第2のチャンバ(CH1,CH2)を画定し、
前記第1のチャンバ(CH1)が前記第2のチャンバ(CH2)の容積より小さい容積を有する、
セカンダリ駆動ユニット。
【請求項2】
前記セカンダリ駆動ユニット(SDU)ハウジングの前記第2のセクションが前記セカンダリ駆動ユニット(SDU)ハウジングの前記第1のセクションの一方側に全体として位置する、請求項1に記載のセカンダリ駆動ユニット。
【請求項3】
前記右側クラッチが、前記クラッチハウジングに一体化され、前記右側出力シャフトによって担持される右側摩擦ディスクのセットと交互配置された右側分離プレートのセットを備え、前記左側クラッチが、前記クラッチハウジングに一体化され、前記左側出力シャフトによって担持される左側摩擦ディスクのセットと交互配置された左側分離プレートのセットを備え、前記左側分離プレートのセットおよび前記右側分離プレートのセットが前記剛体中央プレートによって分離され、前記左側摩擦ディスクのセットおよび前記右側摩擦ディスクのセットが前記剛体中央プレートによって分離される、
請求項1に記載のセカンダリ駆動ユニット。
【請求項4】
前記デュアルアクションピストン組立体を始動させるために流体が前記第1のポートを介して受け取られるとき、前記デュアルアクションピストン組立体により流体が前記第2のポートおよび前記第2のチャンバの中に引き入れられる、
請求項1に記載のセカンダリ駆動ユニット。
【請求項5】
前記デュアルアクションピストンが略H形状の断面を有する、
請求項1に記載のセカンダリ駆動ユニット。
【請求項6】
前記デュアルアクションピストンが略階段状の断面を有する、
請求項1に記載のセカンダリ駆動ユニット。
【請求項7】
前記右側クラッチまたは前記左側クラッチのもう一方が非デュアルアクションピストン組立体をさらに備え、前記非デュアルアクションピストン組立体が、
非デュアルアクションピストンと、
前記セカンダリ駆動ユニット(SDU)ハウジングの第2の内向きの壁の中に画定された、前記非デュアルアクションピストンを受けるためのキャビティと、
前記セカンダリ駆動ユニット(SDU)ハウジングの中に画定された、前記非デュアルアクションピストン組立体を始動させるために流体を通過させるための第3のポートと
を備え、
前記非デュアルアクションピストンおよび前記第2の内向きの壁の中の前記キャビティが、前記第3のポートを介して流体を受け取るための第3のチャンバを画定する、
請求項1に記載のセカンダリ駆動ユニット。
【請求項8】
前記デュアルアクションピストン組立体の前記第1のチャンバの容積が前記非デュアルアクションピストン組立体の前記第3のチャンバの容積より小さい、
請求項に記載のセカンダリ駆動ユニット。
【請求項9】
前記デュアルアクションピストン組立体の前記第1および前記第2のチャンバが、前記非デュアルアクションピストン組立体の前記第3のチャンバと実質的に等しい圧力印加面積を有する、
請求項に記載のセカンダリ駆動ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2016年9月22日に出願された米国仮特許出願第62/398,164号の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002]本開示は、全輪駆動自動車のセカンダリアクスルのためのツインクラッチシステム、およびデュアルアクションピストンを備える油圧トルクアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]油圧トルク作用は、一般に、全輪駆動が1つの選択肢である前輪駆動自動車または後輪駆動自動車のセカンダリアクスルにおいて利用される。これは、恒久的なアクティブオンデマンドシステム(AOD:active on demand)、さらには全輪駆動機能の不必要時にリングギヤおよびピニオンが停止されるような切断式のシステム、の両方のためのものとなり得る。左側ホイールおよび右側ホイールの独立したトルク制御が提供されるような側方設置型(side mounted)のツインクラッチアクスルでは、左側および右側に設置される各クラッチが通常は独立ピストンからなるアクチュエータを有し、ここでは圧力調整が推進力(thrust force)およびひいてはトルクの設定を決定する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本開示の一実施形態によると、セカンダリ駆動ユニットを介して駆動源に選択的に接続される左側および右側セカンダリ駆動ホイールを有する全輪駆動自動車のためのセカンダリ駆動ユニットが提供され、セカンダリ駆動ユニットが、駆動源に動作可能に結合されるメインシャフトを収容する。セカンダリ駆動ユニットが、セカンダリ駆動ユニット(SDU:secondary drive unit)ハウジングであって、メインシャフトを受けるための第1のセクションを画定し、ツインクラッチ組立体を包囲するための第2のセクションを画定する、セカンダリ駆動ユニットハウジングと、メインシャフトと同心である左側出力シャフトであって、左側セカンダリ駆動ホイールにトルクを伝達するためのものである、左側出力シャフトと、左側出力シャフトと同軸である右側出力シャフトであって、右側セカンダリ駆動ホイールにトルクを伝達するためのものである、右側出力シャフトと、を有する。ツインクラッチ組立体が、メインシャフトに接続されたクラッチハウジングと、左側出力シャフトおよびクラッチハウジングを選択的に接続するための左側クラッチと、右側出力シャフトおよびクラッチハウジングを選択的に接続するための右側クラッチと、クラッチハウジングの内壁から延在する剛体中央プレートであって、剛体中央プレートが左側クラッチおよび右側クラッチを分離する、剛体中央プレートとを有する。
【0005】
[0005]いくつかの実施形態では、SDUハウジングの第2のセクションがSDUハウジングの第1のセクションの一方側に全体として位置する。いくつかの実施形態では、右側出力シャフトが左側出力シャフトによって稼働(pilot)および支持される。
【0006】
[0006]いくつかの実施形態では、右側クラッチが、クラッチハウジングに一体化され、右側出力シャフトによって担持される右側摩擦ディスクのセットと交互配置された右側分離プレート(separator plate)のセットを有することができる。左側クラッチが、クラッチハウジングに一体化され、左側出力シャフトによって担持される左側摩擦ディスクのセットと交互配置された左側分離プレートのセットを有することができる。左側分離プレートのセットおよび右側分離プレートのセットが中央プレートによって分離され、左側摩擦ディスクのセットおよび右側摩擦ディスクのセットが中央プレートによって分離される。
【0007】
[0007]いくつかの実施形態では、右側クラッチまたは左側クラッチの一方がデュアルアクションピストン組立体をさらに有する。デュアルアクションピストン組立体が、デュアルアクションピストンと、SDUハウジングの第1の内向きの壁の中に画定された、デュアルアクションピストンを受けるためのキャビティと、SDUハウジングの中に画定された、デュアルアクションピストン組立体を始動させるために流体を通過させるための第1および第2のポートとを有する。デュアルアクションピストンおよび第1の内向きの壁の中のキャビティが、第1および第2のポートを通して流体を受け取るための第1および第2のチャンバを画定し、第1のチャンバが第2のチャンバの容積より小さい容積を有する。
【0008】
[0008]いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストン組立体を始動させるために流体が第1のポートを介して受け取られるとき、デュアルアクションピストン組立体により流体が第2のポートおよび第2のチャンバの中に引き入れられる。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストンが略H形状の断面を有する。いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストンが略階段状の断面を有する。
[0010]いくつかの実施形態では、右側クラッチまたは左側クラッチのもう一方が非デュアルアクション(non-dual action)ピストン組立体をさらに有し、非デュアルアクションピストン組立体が、非デュアルアクションピストンと、SDUハウジングの第2の内向きの壁の中に画定された、非デュアルアクションピストンを受けるためのキャビティと、SDUハウジングの中に画定された、非デュアルアクションピストン組立体を始動させるために流体を通過させるための第3のポートとを有し、非デュアルアクションピストンおよび第2の内向きの壁の中のキャビティが、第3のポートを介して流体を受け取るための第3のチャンバを画定する。
【0010】
[0011]いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストン組立体の第1のチャンバの容積が非デュアルアクションピストン組立体の第3のチャンバの容積より小さい。いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストン組立体の第1および第2のチャンバが、非デュアルアクションピストン組立体の第3のチャンバと実質的に等しい圧力印加面積(pressure apply area)を有する。
【0011】
[0012]本開示の一実施形態によると、自動車駆動ユニットのクラッチのためのピストン組立体が提供される。ピストン組立体がデュアルアクションピストン組立体を有し、デュアルアクションピストン組立体が、デュアルアクションピストンと、駆動ユニットのハウジングの第1の内向きの壁の中に画定された、デュアルアクションピストンを受けるためのキャビティと、駆動ユニットのハウジングの中に画定された、デュアルアクションピストン組立体を始動させるために流体を通過させるための第1および第2のポートとを有し、デュアルアクションピストンおよび第1の内向きの壁の中のキャビティが、第1および第2のポートを通して流体を受け取るための第1および第2のチャンバを画定し、第1のチャンバが第2のチャンバの容積より小さい容積を有する。
【0012】
[0013]いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストン組立体を始動させるために流体が第1のポートを介して受け取られるとき、デュアルアクションピストン組立体により流体が第2のポートおよび第2のチャンバの中に引き入れられる。
【0013】
[0014]いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストンが略H形状の断面を有する。いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストンが略階段状の断面を有する。
[0015]いくつかの実施形態では、ピストン組立体が非デュアルアクションピストン組立体をさらに有する。非デュアルアクションピストン組立体が、非デュアルアクションピストンと、駆動ユニットのハウジングの第2の内向きの壁の中に画定された、非デュアルアクションピストンを受けるためのキャビティと、駆動ユニットのハウジングの中に画定された、非デュアルアクションピストン組立体を始動させるために流体を通過させるための第3のポートとを有し、非デュアルアクションピストンおよび第2の内向きの壁の中のキャビティが、第3のポートを介して流体を受け取るための第3のチャンバを画定する。
【0014】
[0016]いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストン組立体の第1のチャンバの容積が非デュアルアクションピストン組立体の第3のチャンバの容積より小さい。
[0017]いくつかの実施形態では、デュアルアクションピストン組立体の第1および第2のチャンバが、非デュアルアクションピストン組立体の第3のチャンバと実質的に等しい圧力印加面積を有する。
【0015】
[0018]次に、本出願の例示の実施形態を示す添付図面を例として参照する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】[0019]本開示の実施形態による、後方アクスルツインクラッチシステム(rear axle twin clutch system)を有する自動車ドライブトレインを示す図である。
図2】[0020]従来技術で知られている後方駆動ユニットおよびツインクラッチシステムの一部分を示す断面図である。
図3】[0021]本開示の一実施形態による後方駆動ユニットおよびツインクラッチシステムの一部分を示す断面図である。
図4】[0022]本開示の別の実施形態による後方駆動ユニットおよびツインクラッチシステムの一部分を示す断面図である。
図5】[0023]図4に示される油圧制御システムおよびデュアルアクションピストンの動作を示す図である。
図6】[0024]油圧制御システムを示す概略図である。
図7】[0025]本開示の一実施形態によるデュアルアクションピストン内の圧力を示すグラフである。
図8】[0026]本開示の一実施形態による自動車ドライブライン構成要素の同期反応時間を示すグラフである。
図9】[0027]図3に示されるデュアルアクションピストン組立体のための油圧制御システムの動作のステージを示す図である。
図10図3に示されるデュアルアクションピストン組立体のための油圧制御システムの動作のステージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0028]同様の構成要素を示すために異なる図において同様の参照符号が使用され得る。
[0029]本開示は、全輪駆動もサポートする前輪または後輪駆動自動車のセカンダリアクスルのためのツインクラッチシステムを対象とする。また、デュアルアクションピストンと、ツインクラッチシステムを作動させるための方法とが提供される。前輪駆動自動車の後方アクスルを参照して説明されて示されるが、ツインクラッチシステムおよびデュアルアクションピストンは任意のセカンダリアクスルのために使用され得る。
【0018】
[0030]図1は、自動車の第1のセットのまたはメインセットのホイール12および自動車の第2のセットのまたはセカンダリセットのホイール14にトルクを伝達するための例示の自動車ドライブトレイン組立体10を示す。ドライブトレイン組立体10は、メインドライブラインまたは前方ドライブライン16およびセカンダリドライブラインまたは後方ドライブライン18を有する。前方ドライブライン16は、構成要素の中でもとりわけ、エンジン20、トランスミッション22、および動力取出装置ユニット24(PTU:power take off unit)を有する。PTU24は、プロペラシャフト28を通して、セカンダリ駆動ユニットまで、また具体的には後方ホイール14を駆動するための後方駆動ユニット30(RDU:rear drive unit)まで、トルクを伝達するための出力装置26を有する。RDU30は、本開示によるツインクラッチ組立体を有する。制御装置(図示せず)が前方ドライブライン16および後方ドライブライン18内の構成要素に繋がっており、さらには車両の全体に位置する1つまたは複数のセンサに繋がっている。制御装置はさらに、本明細書で説明されるピストンおよびツインクラッチ組立体を始動させるための油圧システムを制御するように構成される。
【0019】
[0031]図2は、後方駆動ユニット202のための従来技術で知られているツインクラッチ組立体200を示す。トルクがピニオンギヤ204からリングギヤ206まで伝えられ(flow)、さらに、左側クラッチハウジング208および右側クラッチハウジング210が直接接続されているため、それらへ直接伝えられる。左側ピストン212および右側ピストン214は、左側クラッチプレート216および右側クラッチプレート218に対しての印加圧力(apply pressure)を制御し、それにより左側および右側出力トルクを独立して制御する。左側ピストン212および右側ピストン214は、左側出力シャフト220および右側出力シャフト222とそれぞれのクラッチハウジング208、210とを切断することを目的としてクリアランスの大きさをクラッチプレート216、218を分離するのに十分なものとするように、作られ得る。この例では、PTU内などの、システムの前方側も切断される場合に、ピニオンギヤ204およびリングギヤ206、さらにはプロペラシャフト28が回転を停止することになる。ドライブラインを接続することが必要となる場合、ピストン212および/または214が、システムを円滑に接続するのに十分なトルクを、制御する形で、調整することになる。
【0020】
[0032]別個の左側クラッチおよび右側クラッチには、2つのクラッチハウジングを有するということ、別個の出力シャフトがそれぞれの軸受支持体を備えるということ、ならびに幅および可能性として重量が増大するということの観点から、いくつかの問題がある。加えて、切断状態中の寄生損失を低減するためにおよびシステムの切断状態中の抵抗力(drag)を低減するために、クラッチプレートの間に十分なクリアランスが必要となる。しかし、クラッチが完全に開けられてから、クリアランスが閉じられてトルク制御が開始されるまでの反応時間が、迅速に反応する動的なAWDシステムにおいて所望されるよりも長くなる可能性がある。
【0021】
[0033]本開示の一実施形態によるRDU30およびツインクラッチ組立体301が図3に示される。組立体301は、RDU30のハウジング302内に収容され、セカンダリアクスルのための駆動源の一方側に位置する。具体的には、RDUハウジング302は、駆動源を受ける第1のコンパートメントまたはセクション304を画定する。RDUハウジング302は、ツインクラッチ組立体301を収容する第2のコンパートメントまたはセクション305を画定する。一実施形態では、駆動源が、自動車のプロペラシャフト28およびPTU24に動作可能に結合されるピニオンギヤ306およびピニオンシャフト307である。ピニオンギヤ306は、セクション304内で受けられるメインシャフト309を有するリングギヤ308に結合される。図3に示される実施形態では、第2のセクション305および組立体301がRDUハウジング302の第1のセクション304の右側に位置する。他の実施形態(図示せず)では、対称バーションつまり鏡像バージョンの組立体301および第2のセクション305が、駆動源および第1のセクション304の左側に位置する。駆動源の各側に別個の右側および左側クラッチ組立体を有する図2のツインクラッチ組立体200とは対照的に、本開示によるツインクラッチ組立体301は駆動源の一方側に位置する。
【0022】
[0034]ツインクラッチ組立体301は、共通のクラッチハウジング310、左側クラッチ312、および右側クラッチ314を有する。クラッチハウジング310は、メインシャフト309に接続される。右側出力シャフト316は、左側出力シャフト318によって稼働および支持される。他の実施形態では、左側出力シャフト318が右側出力シャフト316によって稼働および支持される。左側出力シャフト318はメインシャフト310内で同心であり、その中で結合される。図3では延在していないが、左側出力シャフト318がツインクラッチ組立体301からメインシャフト309を通って左側後方ホイールまで延在する。クラッチ組立体301がAWDを実現するように接続される場合、右側出力シャフト316が右側後方ホイールにトルクを伝達し、左側出力シャフト318が左側後方ホイールにトルクを伝達する。左側クラッチプレートと右側クラッチプレートとの間で必要となるスリップ量に応じて、軸受またはブシュ320を用いて一緒に稼働される右側出力シャフト316および左側出力シャフト318によって差動が実行される。一実施形態では、右側出力シャフト316および左側出力シャフト318が「L」形焼結軸受を用いて一緒に稼働される。
【0023】
[0035]各クラッチ312、314は、それぞれのセットの左側および右側分離プレート、セットの左側および右側摩擦ディスク、およびクラッチを始動させるための少なくとも2つのピストン組立体を有する。具体的には、左側および右側クラッチ組立体の各々が、クラッチハウジング310に一体化されるそれぞれのセットの左側分離プレート324および右側分離プレート326を有する。一実施形態では、クラッチハウジング310が、左側分離プレート324のセットおよび右側分離プレート326のセットにスプライン結合される。左側出力シャフト318は左側クラッチ312のための摩擦ディスク328のセットを担持し、右側出力シャフト316は右側クラッチ314のための摩擦ディスク330のセットを担持する。左側クラッチ312および右側クラッチ314は、それぞれの対の左側油圧ピストン組立体334および右側油圧ピストン組立体336によって作動される。したがって、独立したトルク付勢が可能となる。
【0024】
[0036]ツインクラッチ組立体301は、左側分離プレート324のセットおよび右側分離プレート326のセットを分離する中央プレート340を有し、それにより独立する左側および右側のトルク制御をサポートする。中央プレート340は、ピストン334、336からのスラスト荷重を支持するのに十分なスティフネスを有する。具体的には、中央プレート340がクラッチ組立体310のいずれかの側からの作動力に逆らうように反応するのに十分なスティフネスを有し、それにより組立体301のもう一方側においてプレート340が撓んでクラッチプレートを圧縮することが回避される。一実施形態では、中央プレート340がクラッチハウジング310に堅固に固定される。一実施形態では、左側ピストン組立体334が外側の作動プレート(apply plate)342を介して左側クラッチ312を作動させる。外側の作動プレート342は、窓またはアパーチャ(図示せず)を通してクラッチハウジング310の側部に対合することができ、それにより内部のクラッチプレートに圧力を加えることができる。右側ピストン組立体336は、後で説明するようにクラッチプレートのうちの1つのクラッチプレートを通して右側クラッチ314を作動させる。
【0025】
[0037]二輪駆動(2WD)モードの場合、摩擦ディスク328、330および分離プレート324、326が離間され、それによりリングギヤ308と左側出力シャフト316および右側出力シャフト318との間を切断する。この状態を変更して接続されたAWD駆動モードに戻す場合、リングギヤ308が後方ホイール14とほぼ同じ相対速度に同期される。自動車の上記同じ相対速度に合わせて、リングギヤ308、ピニオンシャフト307、およびプロペラシャフト28をスピンさせるために、慣性トルクに打ち勝つためのトルクが発生される。これは、左側クラッチ312および右側クラッチ314のいずれか一方を同時にまたは連続する形で係合させることにより達成され得る。同期のスピードは、左側クラッチ312および右側クラッチ314の一方または両方によりクリアランスギャップが塞がれるときの速さと、クラッチ312、314内にトルクを発生させるアクチュエータのトルク反応(torque response)とによって決定される。ドライブライン構成要素が同期されてPTU24が接続されると、トルク調整が行われ得る。
【0026】
[0038]内蔵クラッチ組立体301はより小さい全体サイズを有し、アクチュエータシステムを組立体301の近くに配置するのを可能にし、それにより左側および右側油圧ピストン組立体の両方までの全体の流体ポーティングを短くする。したがって、より迅速に反応するAWDシステムが達成され得る。一実施形態では、両方のクラッチ312、314が必要なトルクに応じて同期プロセスを開始するのに利用され得る。一実施形態(図示せず)では、左側油圧ピストン組立体334および右側油圧ピストン組立体336は、対称な幾何形状およびキャビティサイズを有し、したがって各ピストンが同様の反応または性能を示すことになる。他の実施形態では、ドライブラインを同期させるためのトルクレベルが左側クラッチ312および右側クラッチ314のキャパシティと比較して相対的に小さいことから、クラッチのうちの1つクラッチのみがドライブラインを同期させるのに使用される。
【0027】
[0039]図3に示されるように、同期・AWD接続反応時間をさらに向上させるために、右側油圧ピストン組立体336が本開示の一実施形態によるデュアルアクションピストンとして構成される。ドライブラインを同期させるのに1つのクラッチのみが必要となり得ることから、デュアルアクションピストン組立体336が、「非同期側」の左側クラッチ312よりも先に右側クラッチ314すなわち「同期側クラッチ」に係合されるように構成される。デュアルアクションピストン組立体336は、RDUハウジング302の第1の内向きの壁350内に画定された第1のキャビティ内で受けられるかまたはその中に設置されるデュアルアクションピストン349を有する。デュアルアクションピストン349および第1のキャビティは、ピストン組立体336を作動させるために流体を受け取るための2つのチャンバCH1およびCH2を画定する。図3に示される実施形態では、2つのチャンバCH1およびCH2がデュアルアクションピストン組立体336のためのキャビティ内で線形的に離間され、略「H」形状の断面を有するピストン349によって画定される。非デュアルアクション左側ピストン組立体334は、RDUハウジング302の第2の内向きの壁352内に画定された第2のキャビティ内で受けられるかまたはその中に設置されるピストン351を有する。ピストン352および第2のキャビティは、ピストン組立体334を作動させるために流体を受け取るための第3のチャンバCH3を画定する。ピストン349、351をそれらの後退位置まで戻すための付勢手段(図3には図示せず)が提供される。また、軸受(図3には図示せず)がピストン組立体334、336と作動プレート342および右側分離プレート326との間に配置され得る。
【0028】
[0040]デュアルアクションピストン組立体336の一実施形態では、チャンバCH1の全体の容積がCH2の容積より小さく、また左側ピストン組立体334のためのチャンバCH3の容積より小さい。その結果、後で説明するように、両方のピストン組立体の充填速度が同じ場合、右側ピストン349がより速く動く。ドライブラインを同期させるための反応トルクが相対的に小さことから、結果として高速の反応時間では一方のクラッチのみおよびデュアルアクションピストン組立体336の部分的なピストンの表面積のみが使用され得る。ピストン組立体336が、チャンバCH2が充填されているときに同時に迅速にクリアランスに打ち勝って右側クラッチ314を同期させることにより、二重の機能を果たす。ピストン組立体336、334のためのチャンバCH2およびCH3は、主トルク制御中に左側ピストン351および右側ピストン349が等しい力で押すことになるように、等しくなるようにサイズ決定されてよい。
【0029】
[0041]本開示の別の実施形態によるRDU400およびツインクラッチ組立体401が図4に示される。組立体401は図3に示される組立体301に類似するが、異なる構成のRDUハウジング402、および右側クラッチ415のための異なる実施形態のデュアルアクションピストン組立体412を有する。左側クラッチ413のための異なる実施形態の非デュアルアクションピストン組立体414も提供される。
【0030】
[0042]デュアルアクションピストン組立体412は、RDUハウジング401の第1の内向きの壁350内に画定された第1のキャビティ内で受けられるかまたはその中に設置されるデュアルアクションピストン416を有する。デュアルアクションピストン416および第1のキャビティは、デュアルアクションピストン組立体412を作動させるために流体を受け取るための2つのチャンバC1およびC2を画定する。図4に示される実施形態では、2つのチャンバC1およびC2がキャビティ内で互い違いになっており、つまり軸方向および径方向において離間され、階段状の断面を有するピストン416によって画定される。非デュアルアクション左側ピストン組立体414は、RDUハウジング402の第2の内向きの壁352内に画定された第2のキャビティ内で受けられるかまたはその中に設置されるピストン418を有する。ピストン416および第2のキャビティは、ピストン組立体414を作動させるために流体を受けるためのチャンバC3を画定する。ツインクラッチ組立体401は、ピストン416、418をそれらの後退位置または切断位置まで戻すための付勢手段を有する。例示の付勢手段が図4に示され、ここでは、右側ばね422および左側ばね420がピストン416、418およびRDUハウジング402の一部分に係合される。また、軸受がピストン組立体412、412と作動プレート342および右側分離プレート326との間に配置され得る。
【0031】
[0043]この実施形態では、チャンバC1の容積がC2の容積より小さく、結果として高速の反応時間では同期のために一方のクラッチのみおよびデュアルアクションピストン組立体412の部分的なピストンの表面積のみが使用され得る。まとめると、チャンバC1およびC2がチャンバC3を備える非デュアルアクション左側ピストン組立体414と等しい圧力印加面積を有し、その結果、主トルク制御中に左側ピストン418および右側ピストン416が等しい力で押すようになる。
【0032】
[0044]各ピストン組立体334、336、412、414のためのチャンバのサイズおよび幾何形状は多様であってよく、チャンバサイズの比、オリフィスサイズ、ポーティングの直径、弁のクリアランス、およびポンプ流量が、ピストンストローク反応を最大にするように構成される。図3および図4では右側クラッチのためのデュアルアクションピストン組立体が示されているが、他の実施形態では、左側ピストン組立体が同期側のデュアルアクションピストンとして構成されてもよく、右側ピストン組立体が非同期側の非デュアルアクションピストンであってもよい。他の実施形態では、左側および右側ピストン組立体が同期側のデュアルアクションピストンとして構成されてもよい。また、本開示によるデュアルアクションピストン組立体が、図2に示される組立体などの、他の切断式のクラッチシステムでも使用されることが認識されよう。
【0033】
[0045]まず、ピストン組立体412、414、油圧制御システム510、ならびに図5および図6の油圧概略図(hydraulic schematic)の説明図を参照して、ツインクラッチ組立体401の動作を説明する。切断状態から始めると、制御装置(図示せず)が油圧制御システム510内の電気モータ512を始動させる。制御装置は自動車制御装置の一部であってよいかまたはスタンドアローンのシステムであってよい。モータ512は、電気ポンプ514をスピンさせて液圧を発生させる。一実施形態では、モータ512が一定の速度で動作し、それによりポンプ514が一定の流量を提供することになる。ポンプ514は、リザーバ516からの油圧油を一方向チェック弁CV1を通してリニアソレノイド弁LSV1の中まで押し込み、リニアソレノイド弁LSV1がさらに制御装置により電子的に制御される。油圧油は、弁LSV1から専用ポートP1を通って右側ピストン組立体412またはデュアルアクションピストン組立体412のチャンバC1の中まで流れる。チャンバC1が圧力下で流体で充填され、その結果、ピストン組立体414のためのチャンバC3と比較してより小さいキャビティが充填されることから、ピストン416がより迅速に移動するようになる。ピストン416により右側クラッチ415の外側分離プレートに対して加えられる力がドライブライン構成要素を同期させるのに十分な大きさとなる。言い換えると、ドライブラインを同期させるための反応トルクが相対的に小さいことから、このステージでは、右側クラッチ415のみおよびデュアルアクションピストン組立体412の部分的なピストンの表面積のみが使用される。これにより、AWD動作のためのドライブライン構成要素を同期させて最終的に連動させるための反応時間がより早くなる。
【0034】
[0046]デュアルアクションピストン416が右側分離プレート326の方に向かって移動し(図4の左側)、チャンバC2内に負圧または真空が発生し、それによりチャンバC2がリザーバ516から一方向チェック弁CV2および入口ポートP2を通して流体を引き入れるときに充填される。第2の入口ポートP3 INがチャンバC2に提供されるが、このポートはより小さいオリフィスを有するように構成される。したがって、チャンバC1が充填されると、限定される量の流体がポートP3 INを通ってチャンバC2の中まで流れる。ピストンキャビティ比C1対C2、オリフィスサイズ、ポーティングの直径、弁のクリアランス、およびポンプ流量が、ピストンストローク反応を確実に最大にするように構成される。チャンバC1およびC2ならびにピストン416は以下のように構成される:ピストン416がその全ストロークを移動して右側クラッチ415の接触点またはキスポイント(クラッチクリアランスが塞がれる)に到達するときにチャンバC1およびC2の両方が充填されて等しい圧力となる。キスポイントでは、等しい圧力がポートP1およびP3 INをそれぞれ通してチャンバC1、C2に供給される。P3 INのオリフィスは、制限されるが、トルク調整のためにチャンバC2内で圧力制御を可能にするのに十分となるようにサイズ決定される。一方向チェック弁CV3により、ポートP3 EXを通して、LSV1のドレンポートまで、チャンバC2からの圧力除去が実現される。LSV1のドレンポートを通して、チャンバC1からの圧力除去が実現される。
【0035】
[0047]図7は、このプロセス中のチャンバC1およびC2内の圧力を示すグラフである。グラフの上側の線710がチャンバC1の主ピストン圧力を示す。チャンバC2のためのセカンダリピストン圧力がグラフの破線の下側の線712によって示され、これが、初期状態においてチャンバC2内で発生する負圧を示す。時間tは、デュアルアクションピストン416が右側クラッチ415に係合されて摩擦ディスク330と分離プレート326との間のクリアランスを塞ぐつまりそのクリアランスに打つ勝つときの時間を示す。右側クラッチ415内のクラッチプレートの間のクリアランスに迅速に打ち勝つことつまりそのクリアランスを塞ぐことを目的として、チャンバC1内の圧力は初期状態でより大きい。右側クラッチ415がキスポイントの近くにあるときに圧力が低減される。このステージの後、ドライブライン構成要素が同期され、ポートP1およびP3 INを通してチャンバC1およびC2内の圧力を制御することによりトルク調整が達成される。
【0036】
[0048]一実施形態では、右側クラッチ415がドライブライン構成要素を同期させるのに十分なトルクを提供すると、制御装置がリニアソレノイド弁LSV2の制御を介して左側ピストン組立体414を始動させる。具体的には、ポンプ514は、リザーバ516からの油圧油を一方向チェック弁CV4を通してLSV2の中まで押し込む。油圧油は、弁LSV2から専用ポートP4を通って左側ピストン組立体または非デュアルアクションピストン組立体414のチャンバC3の中まで流れる。弁LSV1のドレンポートを通して、チャンバC3からの圧力除去が実現される。左側ピストン組立体414および右側ピストン組立体412の両方がそのスタンバイ状態にあるとき、つまりキスポイント位置にあるとき、かつドライブライン構成要素が同期されてPTUが接続されると、トルク調整が行われ得る。一実施形態では、塞がれている左側クラッチ413のクリアランスの間での連動がいくらか重複すること、プロペラシャフト28が同期されること、およびPTU24が接続されることが、システム全体の反応を向上させるために実現され得る。図8は、一実施形態における例示の時系列および上記のような重複を示す。示されるように、プロペラシャフト28の回転の同期時間は、右側クラッチ415がキスポイントに到達した後でスタートすることができ、これが左側クラッチ413の作動と重複してよい。PTUの連動も、そのクリアランスポイントまで、プロペラシャフト28の回転のための同期、および左側クラッチ413の作動と重複してよい。
【0037】
[0049]ツインクラッチ組立体401を切断状態に戻すために、制御装置がリニアソレノイド弁LSV1およびLSV2を動作させてポートP1、P3 EX、およびP4をそれぞれ通してチャンバC1、C2、およびC3から流体を排出させるかまたは抜き取る。左側ピストン418および右側ピストン416は、後退して開位置または切断位置に戻る。一実施形態では、図4に示されるように、左側ピストン418および右側ピストン416が、ばね420、422などの付勢手段により付勢されて開位置または切断位置に戻る。
【0038】
[0050]デュアルアクションピストン組立体の構成およびツインクラッチ組立体の所望される性能に応じて、代替の同期・連動シーケンスが実施され得る。図9および図10のピストン組立体334、336および油圧制御システム910の説明図を参照して、図3のクラッチ組立体301の実施形態の動作を説明する。やはり、適用原理(apply principle)が2つのステージで達成される。第1のステージはキスポイントまでの右側クラッチ314の移動および同期であり、第2のステージは充填されたそれぞれのチャンバを使用することによるトルク調整である。図9が切断状態からの開始ポイントを示し、図10がキスポイントにおけるピストン組立体334、336および油圧制御システム910の状態を示す。
【0039】
[0051]切断状態から始まる図9では具体的には、制御装置が電気モータ912を始動させ、油圧制御システム910内のリニアソレノイド弁LSV1、LSV2を制御する。モータ912は、電気ポンプ914をスピンさせて液圧を発生させる。ポンプ914は、リザーバ916からの油圧油を弁LSV1およびLSV2ならびにポートP1およびP3を通して押し込み、チャンバCH1およびCH3を充填する。このプロセス中、チャンバCH2のためのポートP2Aがピストン349によって閉塞される。デュアルアクションピストン349が右側分離プレート326の方に向かって移動すると(図9の左側)、チャンバCH2内に負圧または真空が発生し、それによりチャンバCH2がリザーバ916から一方向チェック弁CV1およびポートP2Bを通して流体を引き入れるときに充填される。この実施形態では3つのすべてのチャンバCH1、CH2、CH3が充填されるが、CH1のサイズがCH3のサイズより小さいことから、右側ピストン351が左側ピストン349より迅速に移動する。したがって、右側ピストン349が右側クラッチ314をキスポイントまで移動させて同期を開始する。
【0040】
[0052]図10に示されるように、右側ピストン349がそのストロークを完了すると、ポートP2Aが開けられ、チャンバCH2が完全に充填される。また、ポートP2Aが開くと、チャンバCH1内の軸方向弁920がポートP1を閉じ、ポートP4が開けられる。その結果、キスポイントにおいて、チャンバCH1からの流体が流れ出てリザーバ916の中に戻る。一方向チェック弁CV1は、ポートP5を通って流体がチャンバCH2の外へ戻るのを防止する。したがって、トルク調整中、チャンバCH1内の流体がP4を通してリザーバ916まで排出され、その結果、主トルク制御中に左側ピストン組立体334および右側ピストン組立体336により等しい力で押すことになる。
【0041】
[0053]左側または右側ピストン組立体のいずれかがデュアルアクションピストンであってよく、初期状態ではもう一方より迅速に移動させられ、ここでは右側および左側の両方に等しい供給圧力が与えられる。したがって、追加の可動部品を一切用いず、より迅速に同期(開位置からキスポイントまたはスタンバイモードまで)を引き起こすことができる。ピストンを制御するのに用いられる2つのキャビティを追加することにより、1つのピストン組立体が二重の役割を有するようになる。また、デュアルアクションピストン組立体336は、ピストンの移動により、圧力下でチャンバCH1を充填し、真空下でチャンバCH2を充填し、その結果、ピストン349が左方向に移動するときは両方のチャンバが充填される。チャンバCH2およびCH3はサイズが等しく、比較的同等の速度で充填されるように制御および構成されることから、それにより主トルク制御のための主ピストン圧力が同時に利用可能となる。
【0042】
[0054]ツインクラッチ組立体301を切断状態に戻すために、制御装置がリニアソレノイド弁LSV1およびLSV2を動作させてポートP2AおよびP3をそれぞれ通してチャンバCH2およびCH3から流体を排出させるかまたは抜き取る。左側ピストン351および右側ピストン349は、後退して開位置または切断位置に戻る。一実施形態では、左側ピストン351および右側ピストン349が、ばねなどの付勢手段により付勢されて開位置または切断位置に戻る。
【0043】
[0055]説明的な形で本発明を説明してきた。使用した用語が、限定的ではなく説明のための単語の性質を有することを意図されることを理解されたい。上記の教示に照らして、本発明の多くの修正形態および変形形態が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明が具体的に説明される形以外でも実施され得ることを理解されたい。本明細書および列挙される特許請求の範囲で説明される主題は、テクノロジのすべての適切な変更にまでその範囲が及んでそれらを包含することを意図される。
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