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特許7316939流体漏れを音響的に検出するための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】流体漏れを音響的に検出するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/24 20060101AFI20230721BHJP
   G01N 29/036 20060101ALI20230721BHJP
   G01N 29/46 20060101ALI20230721BHJP
   G01N 29/50 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
G01M3/24 F
G01N29/036
G01N29/46
G01N29/50
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019553405
(86)(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 CA2018000033
(87)【国際公開番号】W WO2018184089
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】62/481,753
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515252101
【氏名又は名称】テノヴァ・グッドフェロー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ルッチーニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットリオ・シポロ
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-265701(JP,A)
【文献】国際公開第2014/013362(WO,A1)
【文献】特開平06-118194(JP,A)
【文献】特開平11-295179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/24
G01H 1/00-17/00
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業アセンブリにおける流体漏れを検出するための流体漏れ検出システムであって、
前記産業アセンブリは、それに沿う流体の流れを受けるための自由表面のないパイプまたは導管を含み、
音響発信器が前記導管の少なくとも一部に沿って出力音響信号を発信して伝播させるように動作可能であり、前記出力音響信号は、前記産業アセンブリのバックグラウンドノイズ周波数の上で選択される周波数範囲内の1つまたは複数の事前選択されたベースライン周波数成分を含み、
前記音響発信器から離間した前記導管に沿う位置で発信音響信号を受信および感知するための音響センサであって、前記音響センサは前記感知された発信音響信号を表すデータ信号を出力するように動作可能であり、
プロセッサが前記音響センサと電子的に通信し、前記プロセッサは、
前記感知された発信音響信号の1つまたは複数のベースライン周波数成分の出現を検出し、
前記感知された発信音響信号の1つまたは複数のベースライン周波数成分がそれぞれの事前選択されたターゲット周波数から閾値量だけ逸脱しているかどうかを比較し、
前記少なくとも1つの比較されたベースライン周波数成分が前記事前選択されたターゲット周波数から前記閾値量だけ逸脱していると特定すると、潜在的な流体漏れを示す信号、および事前選択された安全プロトコルを実行するための制御信号の少なくとも1つを出力する
ように動作可能なプログラム命令を含む、流体漏れ検出システム。
【請求項2】
産業アセンブリに含まれる産業炉の冷却アセンブリにおける冷媒流体漏れを検出するための冷媒漏れ検出システムであって、
前記冷却アセンブリは、それに沿う流体の流れを受けるための導管を含み、前記流体は冷却されるべき前記産業炉の一部と熱連通し、前記流体は冷媒流体であり、
音響発信器が前記導管の少なくとも一部に沿って出力音響信号を発信して伝播させるように動作可能であり、前記出力音響信号は、前記産業炉のバックグラウンドノイズ周波数の上で選択される周波数範囲内の1つまたは複数の事前選択されたベースライン周波数成分を含み、
前記音響発信器から離間した前記導管に沿う位置で発信音響信号を受信および感知するための音響センサであって、前記音響センサは前記感知された発信音響信号を表すデータ信号を出力するように動作可能であり、
プロセッサが前記音響センサと電子的に通信し、前記プロセッサは、
前記感知された発信音響信号の1つまたは複数のベースライン周波数成分の出現を検出し、
前記感知された発信音響信号の1つまたは複数のベースライン周波数成分がそれぞれの事前選択されたターゲット周波数から閾値量だけ逸脱しているかどうかを比較し、
前記少なくとも1つの比較されたベースライン周波数成分が前記事前選択されたターゲット周波数から前記閾値量だけ逸脱していると特定すると、潜在的な冷媒流体漏れを示す信号、および事前選択された炉の安全プロトコルを実行する炉の制御信号の少なくとも1つを出力する
ように動作可能なプログラム命令を含む、冷媒漏れ検出システム。
【請求項3】
前記出力音響信号は、0.25分と5分、好ましくは1分から3分の間で選択されるパルス周波数持続時間と、1分から5分の間のパルス繰り返し周期と、を有するパルス信号を含む、請求項1または2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記プロセッサはメモリを含み、
前記事前選択されたターゲット周波数はメモリに格納され、前記プログラム命令は、前記感知された発信音響信号に対して、信号増幅、時系列分析、フーリエ変換(ショートフーリエ変換を含む)、時間周波数解析、スペクトル分析、フィルタリング理論、信号自動および相互相関の少なくとも1つを実行するようにさらに動作する、請求項1から3のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項5】
前記産業アセンブリは、アーク炉(EAF)または塩基性酸素転炉(BOF)におけるパイプ、チャネル、または炉側壁パネル、ヒュームダクトパネルおよびランス、羽口または他の付随する冷却される機器における冷却に用いられる流体導管を含み、前記流体は水を含み、
前記アーク炉のバックグラウンドノイズ周波数は10kHz未満であり、前記事前選択されたベースライン周波数成分は、10kHzより大きい、好ましくは10kHzから100kHzの間、最も好ましくは40kHzから75kHzの間の周波数範囲内にあるターゲット周波数帯域を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項6】
前記導管に沿う冷媒流体の前記流れは実質的に自由表面のないパイプ流を含み、前記音響発信器は、冷媒流体の前記流れの中央部分内で前記出力音響信号を発信するように配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項7】
前記音響センサは、前記音響発信器から距離を置いた位置で冷媒流体の中央部分の流れ内の前記発信音響信号を受信および感知するように配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項8】
前記導管は、冷媒入口端部および冷媒出口端部を有する略蛇行した導管セグメントを含み、前記音響発信器は、冷媒流体入口部に近接する第1の上流位置で前記冷媒流体流内に配置され、前記音響センサは、前記第1の位置から冷媒出口端部に向かって下流に間隔が空いている第2の位置で前記冷媒流体流内に配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項9】
前記音響センサは、前記導管に沿って5メートルと50メートルとの間、好ましくは10メートルから30メートル、前記音響発信器から間隔が空いている、請求項1から8のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項10】
冷媒流体で冷却される産業設備の動作パラメータを監視するための監視および検出システムであって、前記産業設備は、それに沿う冷媒流体の流れを受ける冷媒流体導管を含み前記冷媒流体は冷却されるべき前記産業設備の一部と熱連通し、
音響センサアセンブリが前記冷媒流体流内の音響信号を受信および感知するように配置され、前記感知された音響信号は、前記産業設備に関連するバックグラウンドノイズ周波数範囲の上または下の周波数範囲内にあり、前記音響センサアセンブリは前記感知された音響信号を表すデータ信号を出力するように動作可能であり、
プロセッサが前記音響センサアセンブリと電子的に通信し、前記プロセッサは、メモリと、メモリに格納され、前記感知された音響信号の少なくとも1つの周波数成分を、設備動作パラメータに関連する少なくとも1つの所定のターゲット周波数と比較し、前記感知された音響信号の前記比較された周波数成分が前記ターゲット周波数から閾値量だけ逸脱している場合、関連する動作パラメータの動作状態を示す、および/または前記産業設備の動作を制御するための出力信号を生成するように動作可能なプログラム命令と、を含む、監視および検出システム。
【請求項11】
前記動作パラメータは、冷媒流体の流れにおける潜在的な中断および冷媒流体の潜在的な損失からなる群から選択され、前記システムは、前記音響信号を前記冷媒流体流内の発信出力音響信号として発信するように配置された音響発信器をさらに含み、前記発信出力音響信号は事前選択されたベースライン周波数成分を含み、前記事前選択されたベースライン周波数成分は前記バックグラウンドノイズ周波数範囲の上で選択され、
前記プログラム命令は、前記感知された発信音響信号の前記ベースライン周波数成分を少なくとも1つの所定のターゲット周波数と比較するように動作可能であり、
前記比較されたベースライン周波数成分が前記少なくとも1つの所定のターゲット周波数から前記閾値量だけ逸脱していると特定すると、前記プロセッサは、冷媒流体の前記潜在的な損失を示す信号を前記出力信号として生成する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記音響センサアセンブリは、前記音響発信器から距離を置いた位置で前記冷媒流体流内の前記音響信号を受信および感知するように配置された音響センサを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記産業設備はアーク炉であり、前記冷媒流体は水を含み、
前記アーク炉に関連する前記バックグラウンドノイズ周波数範囲は10kHz未満の周波数範囲であり、
前記ベースライン周波数成分は、10kHzから100kHzの間、より好ましくは40kHzから75kHzの間の周波数範囲内にある、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムは、前記音響信号を前記冷媒流体流内の発信出力音響信号として発信するように配置された音響発信器をさらに含み、前記冷媒流体導管は、冷媒流体入口端および冷媒流体出口端を有する略蛇行状に延びる導管を含み、前記音響発信器は前記冷媒流体入口端に近接して配置され、前記音響センサアセンブリは前記冷媒流体出口端に近接して配置され、水の流れは実質的に自由表面のないパイプ流を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記産業設備は製鋼炉を含み、前記冷媒流体は水を含み、前記所定のターゲット周波数に関連する前記動作パラメータは、炭素注入効果、ランス酸素注入流、炉燃焼ガス流、および冷却水漏れからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項10から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記動作パラメータは、アーク効果、炭素注入効果、酸素注入流、および炉燃焼ガス流からなる群から選択される鋼炉動作パラメータを含む、請求項10から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
アーク炉(EAF)の冷却パネルにおける水冷媒漏れを検出するための水漏れ検出システムであって、
前記冷却パネルは、冷却されるべき前記EAFの一部と熱連通する冷媒流体導管を含み、前記冷媒流体導管はその中の冷媒流として水の流れを受け、
音響発信器が前記導管に沿う第1の位置で前記冷媒流に出力音響信号を発信するように動作可能であり、前記出力音響信号は、10kHzより大きく100kHzまでの間、好ましくは40kHzから75kHzの間で選択される周波数範囲内で事前選択されたベースライン周波数成分を含み、
音響センサアセンブリが、前記第1の位置から離間して前記導管に沿う第2の位置に配置された少なくとも1つの音響センサを含み、前記音響センサは、前記冷媒流中の発信音響信号を感知し、感知された発信音響信号を表すデータ信号を前記第2の位置で出力するように動作可能であり、
プロセッサが前記音響センサアセンブリと電子的に通信し、前記プロセッサは、メモリと、前記メモリに格納され、
前記感知された発信音響信号の前記ベースライン周波数成分が、前記メモリに格納されている事前選択されたターゲット周波数および強度から閾値量だけ逸脱しているかどうかを比較し、
前記比較されたベースライン周波数成分が前記事前選択されたターゲット周波数から前記閾値量だけ逸脱していることを特定すると、前記冷却パネルにおける潜在的な水冷媒流体漏れを示す信号および前記EAF用の自動安全プロトコルを実行するように動作可能な1つまたは複数の制御信号の少なくとも1つを出力する
ように動作可能なプログラム命令と、を有する、水漏れ検出システム。
【請求項18】
前記出力音響信号は、0.25分と5分、好ましくは1分から3分の間で選択されるパルス周波数持続時間と、1分から5分の間のパルス繰り返し周期と、を有するパルス信号を含む、請求項17に記載の検出システム。
【請求項19】
前記プロセッサは、出力されたデータ信号に対して、信号増幅、時系列分析、フーリエ変換(ショートフーリエ変換を含む)、時間周波数解析、スペクトル分析、フィルタリング理論、信号自動および相互相関の少なくとも1つを実行するように動作可能である、請求項17または18に記載の検出システム。
【請求項20】
前記冷媒流体導管は、上流入口端部および下流出口端部を有する蛇行状に延びる導管部を含み、前記冷媒流は実質的に自由表面のない水流を含み、前記第1の位置は前記入口端部に向かって間隔が空き、前記第2の位置は前記出口端部に向かって間隔が空いている、請求項17から19のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項21】
前記音響発信器は、前記冷媒流の実質的に中央部分に配置するために設けられたトランスデューサを含み、前記少なくとも1つの音響センサは、前記冷媒流の前記中央部分に配置されたそれぞれの信号受信部分を含む、請求項17から20のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項22】
前記センサアセンブリは、前記導管に沿う異なる位置に間隔を空けて配置された複数の前記音響センサを含む、請求項17から21のいずれか一項に記載の検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2017年4月5日に出願された米国特許仮出願第62/481753号に対する米国特許法第119条(e)項の優先権および利益を主張するものであり、この特許出願を、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、パイプまたはチャネルに含まれ、そこを流れる流体の動作パラメータを監視するための監視および検出システムに関する。より好ましくは、本発明は、産業用途における流体分配システムのパイプライン内の漏れを検出するための方法および装置に関し、より好ましくは、アーク炉(EAF)などの製鋼炉内の冷却パネルの破損により発生する水漏れなど、導管またはパイプ内の流体漏れの音響検出を提供するように動作可能な装置に関する。
【背景技術】
【0003】
最も好ましいEAF製鋼用途において、溶鋼によって生成される極端な熱およびアークからの放射から炉の上部シェル、屋根および側壁を保護するために、流体または水冷パネルが導入されている。優れた結果が達成されたことにより、この解決策が広範囲に用いられるようになった。しかしながら、水冷パネルの導入により、破損したパネルから炉内に水が漏れる危険性が生じている。特に、冷媒パネル構造には、炉の側壁と熱接触して蛇行状に延びる1つまたは複数の冷却パイプまたは導管が設けられている。水が冷媒流体として冷却パイプを循環し、炉の冷却および熱の放散を行う。冷媒パネルは、炉内部の極端な熱変動およびEAFの装入段階中のスクラップの衝撃により、強い熱機械的ストレスを受ける。最終的に、膨張/収縮プロセス、熱応力およびスクラップ衝撃により、パネル構造が割れて炉内に直接水がこぼれるおそれがある。
【0004】
液体の水がEAFに入ると、すぐに沸騰し始めて水蒸気(HO蒸気)を生成することになる。発達するHO蒸気はその後、液体の水の周りにガスブランケットを形成し、これによって熱伝達が減り、長時間にわたって沸騰が長引くおそれがある。炉内に溶融スラグおよび金属があるときは常に爆発の危険性が存在するが、未溶融スクラップがプール内に落下したり、EAFが揺れたり傾いたりするなどの突然の障害があれば、これは特に深刻になるおそれがある。結果として生じる溶融「スロッシュ」は、溶融スラグおよび鋼の下に液体の水を容易に沈めるおそれがある。
【0005】
このようなスロッシュ状況において、2つの爆発がよく起こることがあり、第1の爆発は、溶融金属およびスラグを排出する水蒸気がトラップされた表面下の突然の発達に関連し、起こり得る第2の爆発は、EAF内部に存在する可燃性ガスCOおよびHの急速な点火による、はるかに深刻なものである。この点において、EAFフリーボード内の濃度Hは、水漏れに起因するHOの減少により上昇するおそれがある。
【0006】
効果的なリアルタイムのEAF水漏れ検出技術が商品化されれば、すべてのEAF工場にとって重要な安全ツールになるであろうと認識されている。信頼できるレベルでのこのような技術の開発は困難であることが証明されている。
【0007】
通常、EAF炉内の水漏れの検出は、炉の閉鎖中の炉の目視検査に基づいている。この習慣は、EAFオペレータの専門知識のみに依存しており、人為的エラーの影響を受けやすい。水冷システムの圧力/流量の監視、炉の排ガス中の湿度の分析、およびパネル構造の振動分析を含む、水冷パネルからの漏れを検出する自動システムが提案されている。
【0008】
水漏れを検出するために、入口/出口の水流の直接測定が提案されている。経験から、単純な大域的な入/出流量測定では、信号ノイズが大きくなり、応答時間が遅くなる傾向があることが示されている。水冷システムの圧力/流量監視に関して、通常、炉水パネルは、より複雑なプラント冷却スキームのサブシステムである。通常のプラント運転により、流量および圧力に大きな変動が生じ、水漏れの影響は通常の圧力/流量の挙動において隠れることがある。このような状況下では、水漏れ検出についての有効性を高めるには、シェル内に複数の冷却水回路が必要であり、回路内の各パネルには、流量、温度および圧力センサが装備されている。たとえば、L.S. ValentasおよびE.P. Tierney、米国特許第7832367号を参照されたい。その開示は、参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。結果として生じる大規模なセンサネットワークによりシステムの複雑さが増し、信頼性、メンテナンスおよび資本コストに影響を与えるおそれがある。
【0009】
炉の排気ガス中の湿度の分析も検出方法として提案されている。水漏れの副産物は気体(HおよびHO蒸気)であるため、オフガス分析はEAFの水検出のための効果的かつ迅速な応答方法となり得る。このようなオフガス分析システムは、オフガス中のHおよびHO蒸気の両方の信頼できる正確な分析を提供することができなければならない。燃料燃焼バーナに、およびそこから装入されるスクラップ材料上の残油残滓からの、ならびにスクラップおよび電極を冷却するために通常用いられる水噴霧の水分からの燃焼生成物を含め、オフガス中には多くの「正常」HO蒸気源が存在する。そのため、オフガス水漏れ検出システムには好ましくは、オフガス化学におけるこれらの「正常」レベルのHおよびHO蒸気と、水パネルの漏れに関連する「異常」レベルとを区別することができるソフトウェアが装備されていることが理解されている。これまで、水蒸気の検出に用いられる従来のオフガス分析技術の主な限定は、水漏れに対して許容可能な誤警報率を維持しながら、プロセスおよび通常の炉の運転によって生成されるそのような正常な湿度変動から実際の水漏れを確実に区別することができるソフトウェアを開発することである。
【0010】
パネル構造内を移動する流体によって提供される振動分析に基づく検出システムが最近Lumar Metalsによって提案され、これは国際特許出願公開第WO2014013362A1号に記載されており、その開示を参照によりその全体を本明細書に組み込む。この方法は、冷蔵パイプで前方の流体流の方向に設置された圧電センサの使用に依存している。このシステムは、冷蔵パイプを介して供給される水の乱流挙動を監視する。動作中、システムの起動前に、システムの振動の基準挙動の詳細な調査が決定される。圧電センサがそのような振動挙動における変化を検出すると、ソフトウェアは障害を分析して、それが水漏れからのものかどうかを判断する。漏れによって生じる振動ノイズは、「正常状態」で発生する流動ノイズと比較され、その結果、大きな差が検出されるとアラームが生成される。このアプローチの主な限定は、漏れの出現を隠すおそれがある、EAF環境の大きな振動ノイズにあることが理解されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第7832367号明細書
【文献】国際公開第2014/013362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明についてのすべての用途の共通の特徴は、パイプまたはチャネル内の流体漏れの検出を含む。本発明の1つの非限定的な目的はしたがって、パイプまたはチャネルに含まれる流体に関連する1つまたは複数の動作パラメータを可聴に監視するために用いられるべき改善された装置および方法を提供することである。より好ましくは、このシステムは、パイプ、チャネル、または炉側壁パネル、ヒュームダクトパネルおよびランス、羽口または他の付随する冷却される機器における冷却に用いられる流体導管における漏れ事象を可聴に検出するように動作可能な装置を提供し、これはたとえば製鉄および製鋼産業で用いられる炉などの産業炉で用いることができるが、これらに限定されない。
【0013】
他の非限定的な目的は、燃料または油のパイプライン、ダクトまたは他の流体導管用の漏れ検出装置であって、従来の漏れ検出装置/解決策の限定および欠点を低減し、好ましくはパネル、ダクト、ランス、羽口、金属鋳造金型などにおいてのような産業用途の冷却回路で用いられるもの、最も好ましくはEAFまたは液体の水が溶融金属に接触すれば深刻な爆発の脅威が存在する他の冶金炉における水漏れ検出の問題に対応するために用いられるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のさらなる非限定的な目的は、EAFまたは他の産業炉冷却パネル構造の機械的破損によるパネルの水漏れの迅速で信頼できる検出を得る必要性に対処する。従来技術のシステムに関連する少なくともいくつかの欠点を克服するため、本発明は、冷媒流体産業設備の1つまたは複数の動作パラメータを可聴に監視する際に用いることができる監視および/または検出システムを提供する。この監視および/または検出システムは、設備の冷媒流体流内の1つまたは複数の音響信号を送信、受信および感知するように配置および構成された音響センサアセンブリを含む。より好ましくは、音響センサアセンブリは、流体内に配置された1つまたは複数の音響センサを含み、最も好ましくは、これらは1つまたは複数のそれぞれの信号送信要素および1つまたは複数の信号受信要素を含み、その両方が冷媒流体流内に直接配置され、音響センサアセンブリは、設備の正常または通常の運転に関連するバックグラウンドノイズ周波数範囲の上および/または下の周波数範囲で音響信号を送信および感知するように選択される。
【0015】
より好ましくは、音響センサアセンブリは、流体が流れている回路内の伝播状態を表す音響信号の送信と受信との両方を行うように動作する。感知音響信号は、システムによってバックグラウンドノイズから離れて発せられたターゲット周波数と、流れの中のバックグラウンドノイズを含む。音響センサアセンブリから受信されたデータ信号を1つまたは複数のターゲット周波数プロファイルと比較するように動作するプロセッサにデータが送信される。ターゲット周波数プロファイルは好ましくは、送信された既知の信号に関連する音響周波数を表すものとして事前決定される。追加の音響周波数は、所定の設備の動作パラメータまたは事象に関連しており、正常な設備の起動および/または閉鎖手順に関連する周波数、正常または最適な設備の実行動作に関連する周波数、および管の破裂、水漏れなどの特定の設備の危険に関連する周波数を含むが、これらに限定されない。プロセッサは、音響センサアセンブリによって検出された感知音響信号の1つまたは複数の周波数成分を、送信信号および設備の動作パラメータに関連する所定のターゲット周波数の1つまたは複数と比較し、比較された周波数成分がそのターゲット周波数から所定の閾値量だけ逸脱している場合、警告および/または制御信号を出力するように動作可能である。
【0016】
より好ましくは、本発明は、導管およびパイプからの流体漏れ、より好ましくは、冷却パネルおよびダクト、ランス、羽口、鋳造金型などの、しかしこれらに限定されない他の補助的機器を用いる産業用途において、最も好ましくは製鋼用EAF炉およびBOF炉などの冶金炉において発生する冷媒流体漏れを検出するための方法および装置を提供する。
【0017】
出願人は、設備冷却流体導管の冷媒流体流中の送信された既知の音響信号を検出および/または感知するように動作する音響センサアセンブリを提供することにより、誤った読み取りにつながるおそれのある入射バックグラウンドノイズを有利に低減することができることを理解している。特に、出願人は、冷媒流体流、特に、製鋼用途で用いられるもののような冷却パネルまたはチャネルを通る冷媒流が、製鋼炉または付随機器へのより直接的な信号経路を有利に提供することができることを認識している。冷媒流体流を介して送信された既知の発信オーディオ信号を検出することによって、送信器と受信器との間の伝播経路および炉の進行中の動作を監視するだけでなく、周囲のノイズ信号からの干渉の低減を達成しながら炉の異常を可聴に検出することも可能である。一実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に以下の原理に基づいた漏れ検出の装置および方法を提供する。
・送信音波が、冷媒水または他の流体流の移動する流れの中におよび/またはそれに沿って移動する可能性。
・漏れなどの、冷却導管またはパイプインフラストラクチャにおいて、または搬送流体において発生するいかなる不連続性も、冷媒流体流内で波の異常または変動として伝播する送信音波における音響過渡現象を生成またはこれに影響するという事実。
【0018】
非限定的な一実施形態において、本発明は、産業炉などの冷媒流体冷却式産業設備の動作を監視するための、そして計画的および予想外の両方の設備動作パラメータを音響的に識別するように動作可能であるシステムを提供する。出願人は、検出された音響周波数における変化を監視することによって、炉の予想される進行中の動作パラメータを監視するとともに、発生する可能性のある保守または安全の問題を検出することが可能であることを理解している。簡略化された構造において、このシステムには、最も好ましい用途において冷却されるべき設備の炉部分と熱接触して提供される1つまたは複数の流体導管内におよび/またはそれに沿って配置された1つまたは複数の音響センサを有する音響センサアセンブリが設けられている。音響センサアセンブリは、処理用に流体を介して伝播する音響信号を表すデータを電子的に送信および受信するように適合されている。好ましくは、処理用に選択される音響信号は、設備の決定されたバックグラウンドノイズより下か、より好ましくは上の周波数で選択される。
【0019】
出願人は、ほとんどの設備が、それらの正常な動作サイクル中に、それらの動作によって、識別可能な範囲内でバックグラウンド動作ノイズを発することになることを理解している。例として、アーク炉(EAF炉)などの産業用鋼炉の場合、正常な条件下で動作するEAF炉は、0から10kHz未満の間の範囲の周波数の音響ノイズ信号を発信することになることが認識されている。同様に、他の個々の産業炉および/または付随機器および他の設備によってそれらの通常のまたは最適な日々の動作中に発せられるバックグラウンドノイズ周波数の決定は、基本的なオーディオ監視技術を通じて容易に特定することができる。
【0020】
出願人は、産業炉の、そしてEAF炉の場合であれば、たとえば溶融および装入動作を含むであろう、正常の動作パラメータを音響的に監視するだけでなく、音響センサを用いて、水漏れ、不完全または効果的でない酸素および/または炉燃料の注入または投入、および/または不完全な燃焼および/または反応などの異常または潜在的に危険な炉の動作パラメータを識別することも可能であることを認識している。好ましい態様において、異常な動作事象を検出すると、システムは適切な信号を出力してオペレータに通知するか、より好ましくは自動安全プロトコルを開始し、および/または炉の制御または入力を調整していかなる欠陥または危険も緩和または改善するであろうことが想定される。
【0021】
より好ましくは、本発明は、パネル内部を移動する流体流の音響応答および/または変動を監視することによって、流体導管および/またはパネル構造の完全性を評価するシステムおよび方法を提供する。最も好ましくは、本発明は、オーディオトランスデューサ/受信器として動作する少なくとも1つ、好ましくは2つ以上のハイドロフォンまたは振動音響センサを有するシステムを提供する。オーディオセンサは、監視されるべき導管またはパイプ構造上に、より好ましくはその中に、好ましくは移動する冷却流体と接触して配置される。流体が導管またはパイプを流れる際の流体の混濁に関連するバックグラウンドノイズを最小化するため、システムは最も好ましくは、パイプに沿った流体の流れが空域なしで提供され、これによって流体が自由表面または開水路の流れとして提供されないように動作する。出願人は、流体流を自由表面のないパイプ流として提供すると、望ましくない二次ノイズまたは音響信号の生成に不利にもつながるおそれのある空気混入およびパイプ内混濁を有利に最小化することができることを理解している。
【0022】
一実施形態において、システムは、流体流が沿って移動する案内導管または構造に生じるいかなる変形または欠陥も流れの伝播特性に、そしてその結果、流体自体内を移動する圧力波または音波に影響することになるように動作可能である。このように、事前選択された音響周波数で流体導管に沿って、そこを通り、および/またはそこにわたって送信される信号または波における変化または変動を監視および検出することによって、流体漏れおよび流れの不規則さを識別することができる。
【0023】
他の実施形態において、1つまたは複数の音響送信器または発信器が、産業炉冷却パネルの冷却流体導管などの、しかしこれに限定されない流体導管またはパイプに沿って、またはより好ましくは直接その中に配置される。音響発信器は、好ましくは無指向性送信器であるが、線形および/または指向性信号送信器も用いられ、出力音響信号を発信するように動作することができる。1つまたは複数の音響センサが、信号送信器から距離を置いて流体導管に沿って、好ましくはその中に配置されて、発信音響信号を検出および感知する。最も好ましくは、少なくとも音響センサは、流体流の流れの中間部分に向かって間隔を空けた下流位置に配置され、流体導管側壁から距離を隔てている。このような位置決めにより、パイプおよび/または炉冷却パネル振動に関連するバックグラウンドノイズ問題を有利に低減することができる。
【0024】
さらなる実施形態において、システムは、音響信号発信器または送信器アセンブリが1つまたは複数の選択された周波数または周波数帯域で既知の音響信号(波形)または音を発信することによって動作することができる。音響センサアセンブリは、発信信号に関する事前選択されたベースライン周波数を検出するように動作可能である。1つの可能な動作モードにおいて、音響センサは、発信オーディオ信号における1つまたは複数の周波数または周波数帯域における変化、または流体漏れの存在の指標としての二次音響周波数または信号の存在を検出するように動作可能である。
【0025】
非限定的な一実施形態において、音響送信器または発信器は、流体導管またはパイプの共振周波数に相関する周波数で1つまたは複数の出力音響信号を発信するように動作可能である。1つの可能なモードにおいて、音響信号は、システムオーディオトランスデューサ/受信器の1つまたは複数で比較的強い信号プロファイルを提供するように、流体導管またはパイプに沿って優先的に伝播するように選択された周波数で音響発信器によって出力される。出力信号の信号周波数は、1つの可能な簡略化された実施形態において、音響試験および/または実験モデリングによって事前選択され、選択された流体導管またはパイプの形状または構成に最適な伝播特性を示す周波数範囲を事前特定することができる。
【0026】
代替の可能な実施形態において、システムは、音響発信器およびオーディオトランスデューサ/受信器とともに動作して、出力および検出のための最適な周波数を自動的に初期化および/または再較正して選択することができる。1つの非限定的な動作モードにおいて、初期化時、および好ましくは再較正の事前設定期間でも、音響発信器は、周波数スペクトル範囲にわたって多くの異なる試験音響信号を出力するように動作する。1つのモードにおいて、個々の出力周波数は1から5kHzずつの増分で約10kHzから約75kHzまでの範囲とすることができる。パイプまたは導管に沿って伝播する個々の試験出力信号は、システムオーディオトランスデューサ/受信器によってそれぞれ感知される。それぞれの個々の試験信号プロファイルの信号強度は次いで、たとえばシステムプロセッサおよびメモリによって互いに比較される。1つまたは複数の事前選択されるベースライン周波数が、それらの伝播強度または他の特性に基づいて選択される。1つの可能なモードにおいて、出力用に選択されたベースライン周波数は好ましくは、信号発信器とオーディオトランスデューサ/受信器との間の流体導管またはパイプに沿う比較的強い、または最も強い信号伝播を示す信号周波数として選択される。代替の可能なモードにおいて、すべての試験音響信号の平均または中央の信号強度を最小閾値量だけ超える信号強度を提供する信号周波数として、ベースライン信号周波数を出力用に事前選択することができる。
【0027】
任意選択で、システムの初期化および/または再較正に続いて事前選択された最適なベースライン周波数を特定し、既知の音響信号として、ベースライン周波数に合わせた信号を発信するように音響信号発信器を作動させてもよい。1つのモードにおいて、音響センサは、直接出力される特定のベースライン周波数において検出するように動作可能であってもよい。代替の可能なモードにおいて、システムは音響センサと連動して動作し、出力メインベースライン周波数(f)および/またはその関連する高調波周波数(すなわちf=2f、f=3f、および複数の高次高調波)の1つまたは複数における変化を検出することができる。
【0028】
さらなる動作モードにおいて、システムは、第1の位置で事前選択されたベースライン周波数を有する音響信号を発信するように動作可能である。オーディオセンサアセンブリは、第2の位置で発信信号を検出し、ベースライン周波数の選択された成分が事前選択されたターゲットまたは通常の周波数から閾値量だけ逸脱したときを特定するために用いられるデータ信号を出力する。このような発生を特定すると、特定の設備動作パラメータを示す信号、最も好ましくは冷却パネルまたは導管の漏れの可能性の存在をユーザまたは制御システムへ出力する。好ましくは、システムは、発信ベースライン周波数を検出し、その1つまたは複数の事前選択された周波数ピークが、導管漏れの可能性を示す事前選択された閾値量だけ上下するかどうかを識別するように動作可能である。システムは、1つまたは複数の感知されたターゲット周波数ピークの識別が少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍増加および/または低下するように動作することができ、最も好ましくは少なくとも約10倍が潜在的な漏れを示すために用いられる。
【0029】
最も好ましくは、システムは、EAF冷却パネルなどの水漏れを検出するように動作可能である。好ましくは、システムには、EAF炉のバックグラウンドノイズ周波数より下、より好ましくは上で選択されるターゲット周波数範囲で発信オーディオ信号を送信するために用いられるオーディオ信号発信器が設けられている。最も好ましい構成において、オーディオ信号発信器は、オーディオシステムセンサから上流に間隔を空けた位置で冷却パネルの冷却パイプに沿って出力オーディオ信号を発信して伝播させるように構成されている。
【0030】
本システムの他の実施形態において、音響発信器送信器アセンブリおよび/または音響センサアセンブリはそれぞれ、複数の結合信号発信器または送信器および/または個々の音響センサまたはトランスデューサを含むように拡張することができることがさらに認識される。
【0031】
限定することなく、本発明はしたがって、以下を含む様々な態様を提供する。
【0032】
1.産業炉および/またはランス、羽口、鋳造金型などの付随機器の回路アセンブリにおける流体漏れ、好ましくは冷媒流体または水の漏れを検出するための流体漏れ検出システムであって、上記回路アセンブリは、それに沿う冷却流体の流れを受けるための導管を含み、上記冷却流体は冷却されるべき機器の一部と熱連通し、音響発信器が上記導管の少なくとも一部に沿って出力音響信号を発信して伝播させるように動作可能であり、上記出力音響信号は、産業設備のバックグラウンドノイズ周波数の上で選択される周波数範囲内の1つまたは複数の事前選択されたベースライン周波数成分を含み、上記音響発信器から離間した上記導管に沿う位置で発信音響信号を受信および感知するための音響センサであって、音響センサは感知された発信音響信号を表すデータ信号を出力するように動作可能であり、プロセッサが上記音響センサと電子的に通信し、プロセッサは、感知された発信音響信号の少なくとも1つのベースライン周波数成分の1つまたは複数がそれぞれの事前選択されたターゲット周波数から閾値量だけ逸脱しているかどうかを比較し、少なくとも1つの比較されたベースライン周波数成分が事前選択されたターゲット周波数から閾値量だけ逸脱していると特定すると、潜在的な冷媒流体漏れを示す信号、および事前選択された安全プロトコルを実行する制御信号の少なくとも1つを出力するように動作可能なプログラム命令を含む、流体漏れ検出システム。
【0033】
2.産業用途および/または設備における流体の動作パラメータを監視するための監視および検出システムであって、産業用途および/または設備は、それに沿う流体の流れを受ける流体導管を含み、音響発信器が上記導管の少なくとも一部に沿って出力音響信号を発信して伝播させるように動作可能であり、上記出力音響信号は、産業用途のバックグラウンドノイズ周波数の上で選択される周波数範囲内の1つまたは複数の事前選択されたベースライン周波数成分を含み、音響センサアセンブリが上記流体流内の発信音響信号を受信および感知するように配置され、感知された音響信号は、産業用途および/または設備に関連するバックグラウンドノイズ周波数範囲の上または下の周波数範囲内にあり、音響センサアセンブリは感知された音響信号を表すデータ信号を出力するように動作可能であり、プロセッサが上記音響センサアセンブリと電子的に通信し、プロセッサは、メモリと、メモリに格納され、感知された音響信号の少なくとも1つの周波数成分を、設備動作パラメータに関連する少なくとも1つの所定のターゲット周波数と比較し、感知された音響信号の比較された周波数成分がターゲット周波数から閾値量だけ逸脱している場合、関連する動作パラメータの動作状態を示す、および/または上記産業用途および/または設備の動作を制御するための出力信号を生成するように動作可能なプログラム命令と、を含む、監視および検出システム。
【0034】
3.アーク炉(EAF)の冷却パネルにおける水冷媒漏れを検出するための水漏れ検出システムであって、上記冷却パネルは、冷却されるべきEAFの一部と熱連通する冷却流体導管を含み、冷却流体導管はその中の冷媒流として水の流れを受け、音響発信器が上記導管に沿う第1の位置で上記冷却流に出力音響信号を発信するように動作可能であり、上記出力音響信号は、約10kHzより大きく約100kHzまでの間、好ましくは約40kHzから75kHzの間で選択される周波数範囲内で事前選択されたベースライン周波数成分を含み、音響センサアセンブリが、上記第1の位置から離間して上記導管に沿う第2の位置に配置された少なくとも1つの音響センサを含み、上記音響センサは、上記冷媒流内の発信音響信号を感知し、感知された発信音響信号を表すデータ信号を第2の位置で出力するように動作可能であり、プロセッサが上記音響センサアセンブリと電子的に通信し、プロセッサは、メモリと、このメモリに格納され、感知された発信音響信号のベースライン周波数成分が、上記メモリに格納されている事前選択されたターゲット周波数から閾値量だけ逸脱しているかどうかを比較し、比較されたベースライン周波数成分が事前選択されたターゲット周波数から閾値量だけ逸脱していることを特定すると、冷却パネルにおける潜在的な水冷媒漏れを示す信号およびEAF用の自動安全プロトコルを実行するように動作可能な1つまたは複数の制御信号の少なくとも1つを出力するように動作可能なプログラム命令と、を有する、水漏れ検出システム。
【0035】
出力音響信号の事前選択されるベースライン周波数成分は、導管の少なくとも一部の共振周波数に関して事前選択される、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0036】
事前選択されたベースライン周波数成分は、流体、好ましくは冷却流体の上記流れに沿って優先的に伝播するように選択される信号周波数を有する、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0037】
上記出力音響信号は、約0.25分と3分、好ましくは0.5分から1分の間で選択されるパルス持続時間と、約1分から5分の間のパルス繰り返し周期と、を有するパルス信号を含む、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0038】
上記プロセッサはメモリを含み、上記事前選択されたターゲット周波数はメモリに格納され、上記プログラム命令は、感知された発信音響信号に対して、信号増幅、時系列分析、フーリエ変換(ショートフーリエ変換を含む)、時間周波数解析、スペクトル分析、フィルタリング理論、信号自動および相互相関の少なくとも1つを実行するようにさらに動作する、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0039】
上記産業設備または炉はアーク炉(EAF)を含み、上記冷却アセンブリはEAF冷却パネルを含み、上記冷却流体は水を含み、アーク炉のバックグラウンドノイズ周波数は約10kHz未満であり、事前選択されたベースライン周波数成分は、約10kHzより大きい、好ましくは約10kHzから約100kHzの間、最も好ましくは約40kHzから約75kHzの間の周波数範囲内にあるターゲット周波数帯域を含む、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0040】
上記導管に沿う流体の上記流れは実質的に自由表面のないパイプ流を含み、上記音響発信器は、流体の上記流れの中央部分内で上記出力音響信号を発信するように配置される、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0041】
上記音響センサは、上記音響発信器から下流の位置で流体の上記中央部分の流れ内の上記発信音響信号を受信および感知するように配置される、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0042】
上記導管は、流体入口端部および流体出口端部を有する略蛇行した導管セグメントを含み、音響発信器は、流体入口部に近接する第1の上流位置で上記流体流内に配置され、音響センサは、出口端部に向かって間隔が空いている上記第1の位置から下流に間隔が空いている第2の位置で上記流体流内に配置される、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0043】
上記音響センサは、上記導管に沿って、用途に見合った距離だけ、最も好ましい用途においては約5メートルと50メートルとの間、好ましくは10メートルから30メートル、上記音響発信器から間隔が空いている、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0044】
動作パラメータは、流体の流れにおける潜在的な中断および流体の潜在的な損失からなる群から選択され、システムは、上記音響信号を上記流体流内の発信出力音響信号として発信するように配置された音響発信器をさらに含み、発信出力音響信号は事前選択されたベースライン周波数成分を含み、事前選択されたベースライン周波数成分はバックグラウンドノイズ周波数範囲の上で選択され、プログラム命令は、感知された発信音響信号の上記ベースライン周波数成分を少なくとも1つの所定のターゲット周波数と比較するように動作可能であり、比較されたベースライン周波数成分が少なくとも1つの所定のターゲット周波数から閾値量だけ逸脱していると特定すると、プロセッサは、流体の潜在的な損失を示す信号を出力信号として生成する、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0045】
上記音響センサアセンブリは、上記音響発信器から下流の位置で上記流体流内の上記音響信号を受信および感知するように配置された音響センサを含む、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0046】
上記流体導管は、流体入口端および流体出口端を有する略蛇行状に延びる導管を含み、音響発信器は上記流体入口端に向かって配置され、音響センサアセンブリは流体出口端に向かって配置され、流体の流れは実質的に自由表面のないパイプ流を含む、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0047】
産業設備は製鋼炉を含み、上記冷媒流体は水を含み、および/または所定のターゲット周波数に関連する動作パラメータは、炭素注入効果、ランス酸素注入流、炉燃焼ガス流、および冷却水漏れからなる群から選択される1つまたは複数である、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0048】
動作パラメータは、炭素注入効果、酸素注入流、および炉燃焼ガス流からなる群から選択される鋼炉動作パラメータを含む、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0049】
産業設備は、炉、ランス、インジェクタ、ヒュームダクト、羽口、パネル、鋳造金型、流体圧縮機などの産業上冷却される機器を含み、上記冷媒流体は水などを含み、所定のターゲット周波数に関連する動作パラメータは、冷媒流体漏れを判定するために選択される1つまたは複数である、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0050】
上記プロセッサは、出力データ信号に対して、信号増幅、時系列分析、フーリエ変換(ショートフーリエ変換を含む)、時間周波数解析、スペクトル分析、フィルタリング理論、信号自動および相互相関の少なくとも1つを実行するように動作可能である、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。上記流体導管は、上流入口端部および下流出口端部を有する蛇行状に延びる導管部を含み、上記流れは実質的に自由表面のない流れを含む、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0051】
上記音響発信器は、流れの実質的に中央部分に配置するために設けられたトランスデューサを含み、上記少なくとも1つの音響センサは、上記流れの上記中央部分に配置されたそれぞれの信号受信部分を含む、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0052】
上記センサアセンブリは、上記導管に沿った異なる位置に間隔を空けて配置された複数の上記音響センサを含む、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0053】
上記システムは、システム初期化および定期システム再較正の1つまたは複数の際に、
上記音響発信器を作動させて複数の試験音響信号を出力し、上記試験音響信号のそれぞれは関連する信号周波数を有する、作動させることと
音響センサの1つまたは複数で試験音響信号を検出することと、
検出された試験音響信号を比較して、導管の共振周波数に相関する関連音響信号周波数を特定することとを、
行うように動作可能である、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0054】
ターゲット周波数帯域および/またはベースライン周波数成分は、約48kHzと約70kHzの間で選択される周波数範囲内にある、前述または後述の態様のいずれかに従うシステム。
【0055】
共振周波数に相関する音響信号周波数を特定すると、システムは、特定された音響周波数で発信出力音響信号を出力する、前述の態様のいずれかに従うシステム。
【0056】
ここで、添付の図面とともに以下の詳細な説明を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の第1の実施形態に従って冷却流体の水漏れを検出する際のシステムの動作を概略的に示す。
図2】本発明の好ましい実施形態に従うEAF炉シェル監視および漏れ検出のためのシステムを概略的に示す。
図3図2のシステムにおいて炉側壁を冷却するために用いられる冷却パネルを概略的に示す。
図4図3に示すEAF炉冷却パネル用の水漏れ検知システムを概略的に示す。
図5】本発明の第2の実施形態に従って冷却流体および水漏れを検出する、図3に示すシステムの動作を概略的に示す。
図6】好ましい実施形態に従って、事前選択されたベースライン周波数信号の発信に用いられる例示的な音響信号発信器/トランスデューサを示す。
図7a図2に示す冷却パネルの冷却流体導管パイプの側壁における図6に示す信号発信器/トランスデューサの取り付けを示す部分断面図を概略的に示す。
図7b図2に示す冷却パネルの冷却流体導管パイプの側壁における図6に示す信号発信器/トランスデューサの取り付けを示す部分断面図を概略的に示す。
図8】冷却パネルの冷却流体導管パイプ内の音響信号を感知および検出するために、図3に示す漏れ検出システムで用いられる例示的な音響受信器/センサを示す。
図9a】冷却流体導管パイプの側壁における図8の音響受信器/センサの取り付けを示す部分断面図を概略的に示す。
図9b】冷却流体導管パイプの側壁における図8の音響受信器/センサの取り付けを示す部分断面図を概略的に示す。
図10a図3のシステムを用いる水漏れの検出における音響周波数信号の送信および受信を概略的に示す。
図10b図3のシステムを用いる水漏れの検出における音響周波数信号の送信および受信を概略的に示す。
図11】従来のEAF炉運転中に図1に示すEAF炉によって発信される監視バックグラウンド周波数音声パターンをグラフで示す。
図12】正常状態および漏れ/亀裂状態をシミュレートする実験条件における発信ベースライン周波数信号の検出された周波数成分における変化を示すスペクトル分析を示す。
図13】密閉された実験条件およびシミュレートされた漏れ/亀裂条件で感知されたベースライン周波数信号の一部を形成する複数の感知されたターゲット波長周波数における変化を示すスペクトル分析を示す。
図14】密閉された実験条件およびシミュレートされた漏れ/亀裂条件で感知されたベースライン周波数信号の一部を形成する複数の感知されたターゲット波長周波数における変化を示すスペクトル分析を示す。
図15】密閉された実験条件およびシミュレートされた漏れ/亀裂条件で感知されたベースライン周波数信号の一部を形成する複数の感知されたターゲット波長周波数における変化を示すスペクトル分析を示す。
図16a】燃焼ガス流によって生じる信号効果における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
図16b】燃焼ガス流によって生じる信号効果における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
図17a】Oランス流によって影響を受けた信号における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
図17b】Oランス流によって影響を受けた信号における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
図18a】炭素注入によって影響を受けた信号における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
図18b】炭素注入によって影響を受けた信号における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
図18c】炭素注入によって影響を受けた信号における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
図19a】アーク安定性のある信号における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
図19b】アーク安定性のある信号における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
図19c】アーク安定性のある信号における変化を示す、EAF炉によって発信された検出されたバックグラウンド音響信号のスペクトル分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下の説明は、好ましい実施形態における音響漏れ検出システム設計のための方法を説明するものである。同様の方法が、他の実施形態のための音響漏れ検出システムの設計に適用可能であることが理解される。
【0059】
図1を参照することができ、ここに漏れ検出システム26が示され、これは音響信号発信器38と、少なくとも1つの音響受信器または検出器42を含む音響信号受信器アセンブリ40と、をそれぞれ含む。音響検出器42および発信器38は好ましくは導管28に沿って間隔が空いている。必須ではないが、検出システム26は好ましくはセンサシステムプロセッサ44を含む。非限定的な態様において、センサプロセッサ44は、音響信号受信器アセンブリ40の一部として提供されてもよく、好ましくは音響信号発信器38と音響信号検出器42の両方と電子的に通信してこれらを制御する。より好ましくは、センサシステムプロセッサ44は、制御CPU20と電子通信してさらに提供され、感知されたオーディオ信号成分を表すデータ信号をそこへ出力するように動作する。信号発信器38は好ましくは、1つまたは複数の事前選択されたターゲット周波数でオーディオまたは音響信号を生成するように選択される。最も好ましくは、発信器38は、約0.25分と5分、好ましくは約1分から3分の間で選択されるパルス持続時間で周期を成すパルス信号として、約10kHzから100kHz、好ましくは約40kHzから75kHzの間のターゲット周波数範囲内で音響信号s(t)を発信するように動作する。
【0060】
ターゲット周波数(f)は最も好ましくは、パイプ30の共振周波数を考慮して冷却流体導管28に沿って優先的に伝播するように事前選択される。ターゲット周波数(f)は、様々な既知の周波数で一連の試験信号を個別に発信および感知し、発信器38と検出器42との間に明確で好ましい最強の信号伝播を提供する周波数を特定することによって事前選択することができる。代替実施形態において、初期起動時および/または時限または強制再較正時に、音響信号発信器38を作動させて、それぞれが関連する信号周波数を有する一連の試験信号を発信することができる。試験信号は、10kHzから100kHzまでの間の範囲の信号スペクトル範囲にわたって1kHzから5kHzずつの周波数増分で出力することができる。信号検出器42が各試験信号を表すデータ信号を感知してCPU20に出力すると、CPU20は作動して、使用に最適なターゲット周波数を有するとして特定の音響試験信号So(t)を自動的に選択する。1つのモードにおいて、選択された試験信号は、冷却流体導管28に沿って満足な伝播特性を示す信号周波数として選択される。このような特性はたとえば、試験された試験信号の残りと比較して、信号発信器と信号検出器との間で最も強い信号伝播を示す信号周波数、および/または検出された試験信号の中央または平均信号強度を閾値量だけ超える信号強度を検出した信号周波数での試験信号を含むことができるが、これらに限定されない。
【0061】
信号受信器42は、信号発信器38によって生成されたターゲット周波数範囲内の振動および音響信号を受信するように選択された振動音響センサとして提供され、既知のベースラインソース信号におけるすべての変化と検出された信号プロファイルとの間の比較を可能にする。信号発信器38は好ましくは、流体入口32に近接して取り付けられ、水流101の中間部分で出力音響信号を発信するように配置される。信号受信器42は好ましくは、流体出口34の上流に隣接して、そして水流101の中間部分で音響信号を検出および受信するように配置される。
【0062】
図1に示すように、流体循環システムは、流路100に沿って移動するように冷却水流101を、導管28を通じて循環させるように作動する。同時に、センサプロセッサ44を用いて信号発信器38を作動させ、0.25秒から1分の間のパルス持続時間および1分と5分との間のパルス周期の繰り返しで信号発信器38から事前選択された音響信号s(t)を発信する。信号受信器42は同時に作動し、水流101が導管28に沿って流れるとき水流を通って導管に沿って伝播する発信信号エネルギーを受信および検出する。
【0063】
信号受信器42は好ましくは、特定のターゲットベースライン周波数帯域(f)(受信器モード)および/または事前選択された発信ベースライン周波数に相関するその高調波周波数(f、f...)における振動音響信号を取得するように較正される。可能な1つの動作モードにおいて、各ベースライン出力信号についての高調波周波数がナイキストシャノンサンプリング定理によって特定される。
【0064】
を矩形パルスのメイン周波数、Fを受信デバイスのサンプリング周波数とすると、送信信号の高調波は
II-2*F
III-3*F
IV-4*F
V-5*F
である。
【0065】
受信されたターゲットベースライン信号のスペクトルは、周波数領域において0からFS/2になり(フーリエ変換によって)、信号高調波>FS/2は
/2<F<Fの場合 Falias=F/2-(F-F/2)=F-F
<F<3/2Fの場合 Falias=F-F
3/2F<F<2Fの場合 Falias=F/2-(F-3/2F)=2F-F
による間隔0-FS/2に配置されることになる。
【0066】
上の式に基づいて、F=150kHzの場合、出力ベースライン信号のそれぞれについての高調波周波数を計算することができる。
【0067】
データセット:W6TX4_20171023_142326
・F(メインキャリア)48.3kHz
・II:53.4kHz
・III:69.9kHz
・IV:43.2kHz
・V:58.5kHz
【0068】
水冷式EAF炉12(図2)の場合、発信ターゲット周波数帯域は通常、約40kHzから75kHzの間の範囲内にある。出願人は、個々の産業設備、または炉のタイプに応じて、産業設備によってその正常運転中に生成されるバックグラウンドノイズ信号に応じて、異なるターゲット周波数を選択することができることを理解している。より好ましくは、信号発信器38は、監視されている冷却条件の特定の伝播特性にプロセッサ44において調整される特定のターゲット音波(トランスデューサモード)を生成および発信するように動作可能である。
【0069】
図2を参照することができ、これはアーク炉(EAF)監視および冷媒漏れ検出のためのシステム10を示している。システム10は、冷却パネルアレイ16によって冷却される炉側壁14を有するEAF炉12と、中央処理装置(CPU)20と、を含む。説明するように、CPU20は、炉12およびその付随システムの動作を規制する制御信号を出力するとともに、進行中の炉の動作パラメータおよび状態を示す出力をユーザディスプレイ22に提供するために用いられる。
【0070】
図示した実施形態において、冷却パネルアレイ16は、個々の冷却パネル18a、18b、18c、18dで構成されている。図2に最もよく示されているように、各冷却パネル18には、CPU20と電子通信するように設けられた関連する水漏れ検出システム26がさらに設けられている。
【0071】
より詳細には、各冷却パネル18は、たとえば、EAF炉壁14の一部を形成するために用いられる水冷パネルとして提供される。図3に示すように、パネル18には、冷却されるべき炉12の一部と熱接触して配置するために設けられた蛇行状に延びる冷却流体導管28が設けられている。冷却流体導管28は、好ましくは実質的に並んで配置されて接合された一連の略整列した円筒形金属冷却パイプ30a、30b、30c...30nの溶接接続によって形成され、各パイプ30の下流端は、それに沿う曲がりくねった冷媒流体流路100を画定するように、エルボによって次の隣接するパイプ30の上流端と流体連通している。冷却導管28は、冷媒水の流れがパネル18に入る最上流の流体入口32から最下流の出口34まで延びている。入口32および出口34は、水冷循環システム(図示せず)と流体連通して設けられている。水冷循環システムは、CPU20によって制御され、冷却パネル18の導管28を通る冷媒流体の流れとして冷却水を圧送するように動作する。圧送された冷却水は、冷却流路100の金属パイプ30a、30b、30c...30nを通り、それに沿って出口34に流れる。好ましくは、水冷循環システムは、開水路としてではなく、流体の自由表面のない流れとして冷媒流体流路100に沿って冷却水流101(図4)を提供し、これにより冷却水が冷却パイプ容積の実質的に全体を占めるように動作する。出口34から移動すると、温められた水は、冷却およびその後の再循環のために水冷循環システムに戻される。
【0072】
図3および図4はそれぞれ、音響信号発信器38と、少なくとも1つの音響受信器または検出器42を含む音響信号受信器アセンブリ40と、をそれぞれ含む漏れ検出システム26を示している。音響検出器42および発信器38は好ましくは、導管28に沿って互いに約5メートルから50メートル離れた距離を空けている。必須ではないが、各検出システム26は好ましくはセンサシステムプロセッサ44を含む。非限定的な態様において、センサプロセッサ44は、音響信号受信器アセンブリ40の一部として提供されてもよく、好ましくは音響信号発信器38と音響信号検出器42の両方と電子的に通信してこれらを制御する。より好ましくは、センサシステムプロセッサ44は、EAF炉のCPU20と電子通信してさらに提供され、感知されたオーディオ信号成分を表すデータ信号をここへ出力するように動作する。パネル回路18から出力データ信号を受信すると、CPU20は、冷却パネル18内の水漏れが検出された場合、炉12に警告および/または停止または他の制御信号を提供するように動作する。あるいは、漏れ検出システム26によって出力されたデータ信号は、送信されてCPU20において直接処理され、警告および/または自動制御システムを提供して炉の動作を規制することができる。
【0073】
図1は、音響信号受信器アセンブリ40が単一の音響検出器42を含む本発明の実施形態を示しているが、本発明はそのように限定されない。図5を参照することができ、これは本発明の代替実施形態を示しており、同様の構成要素を識別するために同様の参照番号を用いることができる。図示した構造において、音響信号受信器アセンブリ40には、導管28に沿って間隔を空けた位置に配置された別個の音響検出器42a、42bが設けられている。
【0074】
代替構成において、システム26に、複数の発信器38および/または複数の信号受信器42、ならびに発信/受信能力を含む単一のセンサを設けることもできることが理解されるべきである。非限定的な例として、異なる流路セグメントに沿った音響信号伝播における変動を識別するために、冷媒流体流路100の各パイプ30a、30b、30c...30nに沿った互いに間隔を空けた位置に複数の受信器42を設けることもできる。代替の可能な構成において、複数の発信器38を設けて、異なる周波数の音響信号を同時にまたは連続的に、および/または1つまたは複数の受信器42による検出のために異なる持続時間で発信することができる。
【0075】
図6および図7aおよび図7bは、図3に示す水検出システム26で用いられる音響信号発信器38の好ましい構造、および導管パイプ30の側壁を介するその配置を示している。発信器38には、ねじ付き支持柱64の前端に取り付けられた電球形のトランスデューサヘッド62が設けられている。図7bを参照して最もよく示されているように、支持柱64には、発信器38が導管パイプ30の側壁を貫通する穴70に取り付けられたとき、トランスデューサヘッド62が水流101の中央部分に位置するように選択される長さが与えられる。トランスデューサヘッド62には、冷却水流101がそこを移動する際に導管28内に乱流渦が生じるのを最小限に抑えるように選択される円錐形または丸い全体形状が設けられている。ロックリング68およびねじ付きナット72からなるロックカラーアセンブリ66を用いて、冷却パイプ側壁に形成された穴70内にトランスデューサヘッド62を固定結合するので、トランスデューサの信号周波数発信先端部62は、冷却流体流101の流れの中心部分に略近接して、そしてパイプから距離を空けて配置される。
【0076】
図8図9aおよび図9bは、ねじ付き支持柱80に取り付けられた音響信号感知トランスデューサ78を含む音響検出器42を示している。感知トランスデューサ78には好ましくは、水流101内の乱流および渦電流の形成を最小限に抑えるように選択される円筒形の細長い楕円形の外形が与えられる。図9bは、音響検出器42を取り付けるために用いられるロックワッシャ84およびロックナット86を含むロックリングアセンブリ82を最もよく示している。ワッシャ84およびロックナット86は、パイプ30の側壁における下流側に形成された開口部74にトランスデューサ78を固定するために用いられ、トランスデューサ78はパイプ30の中央に向かって、そして冷媒水流101の中央部分に、パイプ側壁から間隔を空けて配置される。
【0077】
使用中、センサ/プロセッサ44は最初に作動して、正常の炉動作状態で各冷却パネル18について信号発信器38と受信器アセンブリ40との間のベースライン音響応答の特徴付けを行う。既知の信号ソースの音響測定値を処理することによって、センサプロセッサ44はしたがって、導管28の無傷の(変更されていない)案内構造の音響チャネル応答を処理し、特徴付けることができる。
【0078】
音響チャネル応答を決定することによって、音響検出器42による発信音声信号のその後の伝播および測定により、検出された音響信号および処理されるべき結果データを分析して、パイプの破裂または漏れを示すことができる破損を示すことがある、信号発信器38と音響検出器42との間に発生する冷却パネル構造における欠陥または異常を特定することが可能になる。
【0079】
好ましいモードにおいて、センサプロセッサ44および/またはCPU20による典型的な信号処理は、信号増幅、時系列分析、フーリエ変換(ショートフーリエ変換を含む)、時間周波数解析、スペクトル分析、フィルタリング理論、信号自動および相互相関を含むことができるが、これらに限定されない。漏れ検出システム26はしたがって、冷却導管28内部の水流101内を移動する事前選択されたターゲット周波数での振動音響信号または波エネルギーを検出および取得するように動作する音響信号受信器検出器42の使用を活用する。
【0080】
図10aおよび図10bに示すように、システム26は、既知の事前選択された周波数で、そして選択されたパルス時間間隔で音響信号を発信および送信し、案内導管28構造の音響チャネル応答を導き出すように動作する。図10aおよび図10bに概略的に示すように、信号発信器38は、10kHzから100kHzの周波数または周波数帯域で事前選択された波形を有する所定のベースライン音響信号を発信および送信するように動作可能である。最も好ましくは、ベースライン信号は、導管28内を流れる水流101内の一点から発信器38によって発信される。発信ベースライン周波数は、水流101を通り、導管28に沿って音響信号S(t)として伝播し、下流の位置で音響検出器42によって感知および検出される。システム26は、破裂または破壊に起因する検出された信号応答における変動をより正確に分離および識別することができる。特に、信号発信器38および信号検出器42は、それぞれ特定のターゲット周波数範囲内の音波を送信(トランスデューサモード)および受信(受信器モード)することができるアクティブセンサとしてそれぞれ動作する。センサプロセッサ44は、発信器38と音響検出器42との間の音響チャネル応答を推定する信号処理アルゴリズムを含む格納されたソフトウェアをさらに含み、逆もまた同様である。漏れ検出アルゴリズムは好ましくは、検出された音響信号および/または既知のベースラインまたはソース信号(試験波)からのその高調波周波数の変動に基づいており、そして最も好ましくは、正常の炉プロセスノイズの外側になるように選択または調整され、信号検出器42によって検出される他の周波数の検出強度と比較して、導管28に沿った優れた信号伝播を提供するとして、事前選択されている。
【0081】
図10aおよび図10bは、漏れがない場合および漏れがある場合のシステムを概略的に示している。
【0082】
動作中、音響ソース信号s(t)は、信号発信器38によって生成され、導管28内を移動する冷却水流101に直接入ってそしてこれに沿って伝播する。導管28の出口端34に向かって配置された信号検出器42は、伝播したソース信号および/またはその高調波信号を受信および測定する。受信された信号および/またはその高調波信号を発信ソース信号と比較することによって、冷却導管28の音響応答hAB(t)を推定することができる。チャネル応答を次いで用いて、正常な構造において流路100に沿って冷却水流が移動するとき、冷却水流101を通る信号の伝播特徴を相関させることができる。これにより、信号受信器によって取得された測定値から通常の音響ノイズを減じ、既知のソース信号s(t)から音響チャネル応答hAB(t)を推定することが可能になる。
【0083】
発信器38と信号検出器42との間の位置zで発生する水漏れ、破裂、または他のこのような異常は、信号検出器42で記録される検出音響応答hAB(t)の歪みをもたらすことになる。信号検出器42での測定信号間の比較により、パネル構造異常の検出、および検出された水漏れを示すおよび/またはそれに応答する、炉12への警告および/または制御信号のセンサプロセッサ44および/またはCPU20による出力が可能になる。
【0084】
図11から図15を参照することができ、これらはEAF冷却パネル内の水流体漏れをシミュレートする実験的試験信号における水漏れ検出システム26からのサンプル信号出力をグラフで示している。初期動作において、音響信号受信器アセンブリ40を用いてシステム26を動作させ、正常運転サイクル中にEAF炉12によって発信されたバックグラウンドノイズ信号パターンを特定した。図11にグラフで示すように、1回の全加熱プロセス中のEAF炉12の動作は、0kHzから約10kHzの周波数範囲内でバックグラウンドノイズ信号を生成することがわかった。さらに、バックグラウンドノイズ信号プロファイルは、特定の炉の運転段階またはパラメータに関連するパターン化された応答とともに変化し、バックグラウンドノイズ周波数信号は初期溶融および装入と二次溶融精製および処理との間で変化することが示された。
【0085】
図12を参照して最もよく示された実験的試験において、漏れ検出システム26を動作させ、約48.3、53.4、69.6kHzの範囲内で選択された、そしてEAF炉12の0kHzから10kHzのバックグラウンド周波数範囲の上で選択された所定のベースライン周波数の音響信号発信器38による出力を実行した。実験的試験において、信号発信器38を用いて、冷却水流101内に所定のベースライン周波数信号s(t)を出力し、音響検出器42によって検出された発信信号を次いでセンサプロセッサ44にデータとして送信した。
【0086】
図13から図15に最もよくグラフで示されているように、このシミュレーションは水漏れ検出システム26の運用性を確立して回路28内の潜在的な流体漏れを特定する。特に、流体漏れまたは亀裂が発生した場合、音響センサ42によって検出された感知発信周波数信号は、発信ベースライン周波数信号内に含まれる1つまたは複数の事前選択された感知ターゲット周波数ピークにおける顕著な変化(すなわち振幅の減少または変動)を示した。パイプ漏れをシミュレートする試験研究において、密閉された動作試験条件下で受信器が感知した検出周波数信号と比較して、40,000から50,000Hzの範囲内の選択されたターゲット周波数は、10倍以上の周波数変化を示し、50,000から70,000Hzのターゲット周波数では、2倍以上の感知された変化を示した。
【0087】
発信ベースライン信号内の感知されたターゲット周波数における変化を識別すると、システムは、流体漏れの可能性を示す信号をユーザまたは自動コントローラに提供するように動作することができることが認識されている。
【0088】
図2および図3は、略長方形のパネルとして炉冷却パネル18を示しているが、本発明の文脈において、パネル18は、たとえば、エンドツーエンドで、および/または蛇行した冷媒流体流路を画定するヘッダによって接続された平行なパイプを有して形成された、そしてたとえばEAF炉の側壁および/または屋根の一部を形成することができる管型EAF炉冷却ダクトとして代替的に形成することもできることが理解および認識される。
【0089】
図2および図3は、EAF炉冷却パネル18からの冷媒水漏れを検出する際に用いられるような漏れ検出システム26を示しているが、本発明は様々な異なる環境における流体漏れを検出するために等しく動作可能であることが理解されるべきである。非限定的な例として、漏れ検出システム26を用いれば、様々な産業および産業プロセスにわたって産業設備で用いられる液体導管またはパイプ内の液体流体漏れを検出することができる。そのような可能な用途には、他の水加熱および/または冷却パイプ、オイルパイプライン用途、および/またはガスまたは他の冷却液導管における漏れの検出が含まれるが、これらに制限されない。異なる産業設備で用いるために漏れ検出システム26を修正する際、たとえば従来の音響監視によって、設備のバックグラウンドノイズ周波数が最初に特定されることが理解されるべきである。その後、固有の特徴的なプロファイル帯域幅および/または持続時間を有し、そしてたとえば1つまたは複数の適切に配置された音響検出器42による発信信号周波数成分の検出、抽出および分析を可能にする、信号発信器38による発信および伝播のためのターゲット周波数が選択される。
【0090】
出願人は、他の動作モードにおいて、システム26を用いてEAF炉12の進行中の動作パラメータを監視することができることを理解している。特に、出願人は、音響信号受信器アセンブリ40を用いて、炉12によって発せられるバックグラウンドノイズを連続的に監視することができることを認識している。受信されたバックグラウンドノイズ信号は、最適および/または正常運転中に炉によって発せられるバックグラウンドノイズプロファイルを表す事前保存された信号プロファイルと比較することができる。検出されたバックグラウンドノイズ信号と格納されたバックグラウンドノイズ信号との間の偏差は、他の「故障」動作状態を識別するために有利に用いることができる。
【0091】
例として、図16aおよび図16bは、EAF炉12について検出されたバックグラウンドノイズ信号プロファイルをグラフで示し、これは検出された信号成分および初期装入サイクルの終了時の燃焼ガス入力によって表される変化を示している。
【0092】
図17aおよび図17bは、精製および終了動作中に炉の酸素ランスに酸素を導入することによって表される、検出されたノイズ信号周波数における変化をグラフで示している。図18aから図18cおよび図19aから図19cは、測定されたノイズスペクトル、および検出されたノイズ信号周波数および炉の運転中に炭素注入および炉アーク安定度とともに測定された音強度における変化をグラフで示している。出願人は、従来のまたはベースライン信号プロファイルと比較して、検出された信号における偏差を用いれば、ランス摩耗問題および/または不完全な酸素注入を特定することができることを理解している。
【0093】
詳細な説明では、各冷却パネル18が独自の信号発信器38およびプロセッサ44を有するものとして説明しているが、本発明はそのように限定されない。他の実施形態において、複数の冷却パネル18を監視するために単一の信号発信器38または音源および/または信号センサプロセッサ44を用いることが可能であり得る。信号処理により、発信器と音響検出器との間、および/または複数の検出器42の場合、任意の2つの信号検出器/受信器の間の水漏れの識別が可能になる。
【0094】
詳細な説明では、本発明の最良の形態に従う様々な好ましい実施形態を説明しているが、本発明は、説明されている明示的な構成に厳密に限定されるものではない。当業者には多くの変形および修正が可能であろう。
【符号の説明】
【0095】
10 システム
12 EAF炉
14 炉側壁
16 冷却パネルアレイ
18 冷却パネル
18a 冷却パネル
18b 冷却パネル
18c 冷却パネル
18d 冷却パネル
20 制御CPU
22 ユーザディスプレイ
26 漏れ検出システム
28 導管
30 パイプ
30a パイプ
30b パイプ
30c パイプ
32 流体入口
34 流体出口
38 音響信号発信器
40 音響信号受信器アセンブリ
42 音響受信器または検出器
44 センサシステムプロセッサ
62 トランスデューサヘッド
64 ねじ付き支持柱
66 ロックカラーアセンブリ
68 ロックリング
70 穴
72 ねじ付きナット
74 開口部
78 音響信号感知トランスデューサ
80 ねじ付き支持柱
82 ロックリングアセンブリ
84 ロックワッシャ
86 ロックナット
100 流路
101 水流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図15
図16a
図16b
図17a
図17b
図18a
図18b
図18c
図19a
図19b
図19c