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特許7316946内分泌型FGF関連疾患を処置または防止するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】内分泌型FGF関連疾患を処置または防止するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230721BHJP
   C07K 14/50 20060101ALI20230721BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230721BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230721BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230721BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20230721BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K14/50
C07K19/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P1/16
A61P1/04
A61P3/04
A61P3/10
A61P1/18
A61P3/06
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K45/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C07K16/24
C12N15/13
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019572539
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018040932
(87)【国際公開番号】W WO2019010314
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】62/529,215
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503469393
【氏名又は名称】イエール ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シュレジンジャー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】リー サンウォン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0231277(US,A1)
【文献】特表2013-512689(JP,A)
【文献】特表2011-523561(JP,A)
【文献】特表2017-509628(JP,A)
【文献】特表2014-527402(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0331316(US,A1)
【文献】国際公開第2017/079768(WO,A1)
【文献】Zoller, M J, and M Smith,Nucleic Acids Research,Vol. 10, No. 20,1982年,p. 6487-6500
【文献】Regina Goetz et al.,Molecular and Cellular Biology,2012年05月,Vol. 32, No. 10,p. 1944-1954
【文献】Richard Smith et al.,PLOS ONE,2013年04月,Vol. 8, Issue 4, e61432,p. 1-11
【文献】Ganesh Kolumam et al.,EBioMedicine,2015年05月30日,Vol. 2,p. 730-743
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGF21とβクロトーとの結合を防止または最小化する、非天然可溶性構築物であって、
該非天然可溶性構築物が、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基169~209(FGF21CT)を含むFGF21ポリペプチドを含み、
該FGF21ポリペプチドが、SEQ ID NO:3のL194およびR203から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基の変異を含み、かつ
該FGF21ポリペプチドが、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基1~168を欠く、
非天然可溶性構築物。
【請求項2】
βクロトーが哺乳動物細胞の表面上にある、請求項1記載の非天然可溶性構築物。
【請求項3】
βクロトー(SEQ ID NO:1)のアミノ酸残基379~942の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する、請求項1記載の非天然可溶性構築物。
【請求項4】
FGF21ポリペプチドが、哺乳動物細胞の表面上のβクロトーに結合しそれを隔絶することができる、請求項1記載の非天然可溶性構築物。
【請求項5】
安定性増強ドメインと融合されている、請求項1記載の非天然可溶性構築物。
【請求項6】
安定性増強ドメインが抗体のFc領域を含む、請求項5記載の非天然可溶性構築物。
【請求項7】
ポリペプチドと安定性増強ドメインが、1~18個のアミノ酸を含むポリペプチドを介して連結されている、請求項5記載の非天然可溶性構築物。
【請求項8】
FGF21ポリペプチドが、野生型のFGF21よりも堅固にβクロトーに結合する、請求項1記載の非天然可溶性構築物。
【請求項9】
FGF21ポリペプチドが、SEQ ID NO:3のR203WおよびL194Fからなる群より選択される少なくとも1個の変異を有する、請求項1記載の非天然可溶性構築物。
【請求項10】
安定性増強ドメインと融合されている、請求項9記載の非天然可溶性構築物。
【請求項11】
安定性増強ドメインが、抗体のFc領域を含む、請求項10記載の非天然可溶性構築物。
【請求項12】
FGF21ポリペプチドと安定性増強ドメインが、1~18個のアミノ酸を含むポリペプチドを介して連結されている、請求項10記載の非天然可溶性構築物。
【請求項13】
SEQ ID NO:3のL194およびR203から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基の変異によって特徴付けられるSEQ ID NO:3のFGF21CTアミノ酸残基169~209を含む、可溶性FGF21ポリペプチドであって、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基1~168を含まない、ポリペプチド。
【請求項14】
少なくとも1個のアミノ酸残基の変異が、SEQ ID NO:3のL194FおよびR203Wの少なくとも1個である、請求項13記載の可溶性FGF21ポリペプチド。
【請求項15】
SEQ ID NO:3の変異L194F、および任意で変異R203Wを含む、請求項13記載の可溶性FGF21ポリペプチド。
【請求項16】
安定性増強ドメインをさらに含む、請求項13記載の可溶性FGF21ポリペプチド。
【請求項17】
安定性増強ドメインが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、および抗体のFc領域からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項16記載の可溶性FGF21ポリペプチド。
【請求項18】
安定性増強ドメインが抗体のFc領域である、請求項16記載の可溶性FGF21ポリペプチド。
【請求項19】
安定性増強ドメインが、1~18個のアミノ酸を含むポリペプチドを介して連結されているFc領域である、請求項17記載の可溶性FGF21ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によって事実上その全体が本明細書中に組み入れられる2017年7月6日に出願された米国仮出願第62/529,215号に基づく35U.S.C.§119(e)による優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
線維芽細胞増殖因子(FGF)によって開始される細胞シグナリングは、正常な胚発生および成体動物のホメオスタシスにおいて重要な生理学的過程を調節する。したがって、FGF依存性の細胞シグナリング経路の遺伝学的な破壊または異常な制御によって、多様な疾患が引き起こされる。FGFファミリーの22種のメンバーは、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)のファミリーである線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の4種のメンバーの細胞外ドメインに結合することによって、細胞応答を刺激する。
【0003】
古典的FGFは、FGFの重要な共受容体として機能するヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)と共にFGFリガンドが作用することを必要とする過程において、傍分泌または自己分泌の機序を介して、FGFRを活性化する。このHSPGの必要性は、典型的には、同族受容体の細胞外ドメインに結合する特異的な増殖因子によって直接活性化される大部分の他のRTKから、FGFRを区別する。FGFR活性化のためには、他のRTKと同様に、受容体二量体化が重要である。しかしながら、EGFおよびPDGFのような他の増殖因子とは対照的に、古典的FGFは、HSPGに結合している場合にのみ、FGFR二量体化を刺激することができる。FGFR二量体化は、キナーゼ活性化および受容体細胞質ドメインの特定のチロシン残基のトランスリン酸化をもたらす。これが、次に、シグナリング分子の活性化FGFRとの直接会合を介して、または独特の全シグナリングタンパク質の動員を専門に行うFRS2およびGab1のような密接に関連したドッキングタンパク質によって媒介される間接的な相互作用を介して、複数のシグナリング経路の刺激の引き金を引く。
【0004】
FGF19、FGF21、およびFGF23は、循環ホルモンの特徴を示す点で、古典的FGFより卓越しており、したがって、内分泌型FGFと名付けられている。FGF19およびFGF21は、いずれも、肝臓、脂肪組織、および視床下部に位置する受容体と特異的に結合し、胆汁酸合成および脂質生成のような代謝機能を制御し、インスリン感受性、エネルギー消費、および減量も刺激するホルモンとして機能する。FGF23の標的器官は、腎臓および副甲状腺であり、FGF23結合は、それぞれ、尿中リン酸分泌を刺激し、副甲状腺ホルモンレベルを減少させる。FGFRを活性化するためにHSPGを必要とする古典的FGFと異なり、内分泌型FGFは、この必要性を有しておらず、その代わりに、FGFR活性化のためにクロトー共受容体に特異的に依存している。
【0005】
異なる遺伝子によってコードされる2種のクロトーが存在する。αクロトーは、FGF23依存性シグナリングのために必要であり、βクロトーは、特定の組織および器官におけるFGF19依存性またはFGF21依存性のシグナリングのために必須である。種々のFGFRが全身において発現されるが、クロトータンパク質の発現は、特定の組織に限定されている。αクロトー発現は、腎臓および副甲状腺に制限されており、βクロトー発現は、脂肪組織、肝臓、膵臓、および視床下部に限定されている。いずれのクロトータンパク質も、N末端細胞外領域および1回膜貫通領域に後続する短い細胞質領域から構成された膜受容体である。各クロトーの細胞外領域は、グリコシドヒドロラーゼファミリーの酵素との配列類似性を共有するタンデムドメインを含有している。アミノ酸配列アライメントは、クロトーのグリコシドヒドロラーゼ様ドメイン(GHドメイン)の各々の2個の触媒アミノ酸残基のうちの1個が、その進化中のいずれかの点で置換されたことを示しており、このことは、クロトーのGHドメインには酵素活性が欠損しており、それが偽酵素(pseudo-enzymes)として定義され得ることを示している。しかしながら、いくつかの報告は、αクロトーが、いくらかの検出可能な酵素活性を有することを示唆した。
【0006】
内分泌型FGFによって活性化されるFGF受容体およびシグナリング経路の活性をモジュレートする(例えば、阻害または刺激する)ために使用され得る組成物および方法を同定することが、当技術分野において必要とされている。ある種の態様において、これらの組成物および方法は、内分泌型FGFに関連した(以下に限定されるわけではないが、代謝疾患および/または癌のような)疾患の処置、寛解、および/または防止において有用である。本発明は、これらの必要を満たす。
【発明の概要】
【0007】
発明の簡単な概要
本発明は、FGF受容体(FGFR)、FGF19、およびFGF21からなる群より選択される少なくとも1つとβクロトーとの結合を防止または最小化する、非天然可溶性構築物を提供する。
【0008】
ある種の態様において、βクロトーは、哺乳動物細胞の表面上にある。
【0009】
ある種の態様において、構築物は、抗体、ナノボディ、組換えタンパク質、および低分子からなる群より少なくとも選択される。他の態様において、構築物は、抗体および組換えペプチドからなる群より選択される少なくとも1つである。さらに他の態様において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、合成抗体、重鎖抗体、ヒト抗体、抗体の生物活性断片、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0010】
ある種の態様において、構築物は、βクロトーに結合するFGF19またはFGF21の少なくとも1個のアミノ酸残基を認識してそれに結合し、したがって、FGF19またはFGF21とβクロトーとの結合を防止する。
【0011】
ある種の態様において、構築物は、FGF21(SEQ ID NO:3)のアミノ酸残基169~209の中の少なくとも1個のアミノ酸を認識してそれに結合する。
【0012】
ある種の態様において、構築物は、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基186~209の中の少なくとも1個のアミノ酸を認識してそれに結合する。
【0013】
ある種の態様において、構築物は、FGF19CT(SEQ ID NO:2)のアミノ酸残基170~216の中の少なくとも1個のアミノ酸を認識してそれに結合する。
【0014】
ある種の態様において、構築物は、FGF19またはFGF21に結合するβクロトーの少なくとも1個のアミノ酸残基を認識しかつ/またはそれに結合し、したがって、βクロトーとFGF19またはFGF21との結合を防止する。
【0015】
ある種の態様において、構築物は、βクロトー(SEQ ID NO:1)のアミノ酸残基379~942の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する。
【0016】
ある種の態様において、構築物は、SEQ ID NO:1のアミノ酸379~380、392~394、419~422、431、434~435、438、532、643~647、692~694、696~697、743、745、764、768、824、826、829、832、845、847~851、853、862、889、931~932、939~940、および942の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する。
【0017】
ある種の態様において、構築物は、FGFRに結合するβクロトーの少なくとも1個のアミノ酸残基を認識してそれに結合し、したがって、βクロトーとFGFRとの結合を防止する。
【0018】
ある種の態様において、構築物は、ヒトβクロトーの細胞外領域(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983)またはその断片の中の、1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する。
【0019】
ある種の態様において、構築物は、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基533~575を含むヒトβクロトーの細胞外領域の断片の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する。
【0020】
ある種の態様において、構築物は、哺乳動物細胞の表面上のβクロトーに結合しそれを隔絶することができるFGF19ポリペプチドおよびFGF21ポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つを含む。他の態様において、構築物は、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基169~209(FGF21CT)を含む。さらに他の態様において、構築物は、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基170~216(FGF19CT)を含む。
【0021】
ある種の態様において、構築物は、FGF19およびFGF21からなる群より選択される少なくとも1つに結合しそれを隔絶することができるβクロトーポリペプチドを含む。他の態様において、βクロトーポリペプチドは、ヒトβクロトーの細胞外領域(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983)またはその断片を含む。さらに他の態様において、クロトーポリペプチドは、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基379~942を含むヒトβクロトーの細胞外領域の断片を含む。
【0022】
ある種の態様において、構築物は、FGFRに結合することができるβクロトーポリペプチドを含む。他の態様において、構築物は、ヒトβクロトーの細胞外領域(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983)またはその断片を含む。さらに他の態様において、構築物は、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基533~575を含む。
【0023】
本発明は、野生型FGF19および野生型FGF21からなる群より選択される少なくとも1つよりも堅固に、βクロトーに結合するFGF19ポリペプチドおよびFGF21ポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つを含む可溶性構築物をさらに提供する。
【0024】
ある種の態様において、FGF19ポリペプチドおよびFGF21ポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つは、C末端ドメインに少なくとも1個の変異を有する。他の態様において、FGF21ポリペプチドは、V188、R203、およびL194からなる群より選択される少なくとも1個の残基の変異を有する。さらに他の態様において、FGF21ポリペプチドは、R203WおよびL194Fからなる群より選択される少なくとも1個の変異を有する。さらに他の態様において。
【0025】
本発明は、FGF21CT-βクロトー複合体内のFGF21CT上の露出したエピトープおよびβクロトー上の露出したエピトープに同時に結合し、したがって、FGF21CT-βクロトー複合体を安定化する構築物をさらに提供する。
【0026】
ある種の態様において、構築物は、抗体、ナノボディ、組換えタンパク質、および低分子からなる群より選択される少なくとも1つである。他の態様において、構築物は、抗体および組換えペプチドからなる群より選択される少なくとも1つである。さらに他の態様において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、合成抗体、重鎖抗体、ヒト抗体、抗体の生物活性断片、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0027】
FGF19ポリペプチドおよびFGF21ポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つと融合されたβクロトー結合剤を含む構築物であって、FGF19刺激活性およびFGF21刺激活性からなる群より選択される少なくとも1つを有する構築物。
【0028】
ある種の態様において、本発明の構築物は、安定性増強ドメインと融合されている。他の態様において、安定性増強ドメインは、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、および抗体のFc領域からなる群より選択される少なくとも1つを含む。さらに他の態様において、ポリペプチドと安定性増強ドメインとは、約1~18個のアミノ酸を含むポリペプチドを介して連結されている。
【0029】
本発明は、それを必要とする哺乳動物において内分泌型FGF関連疾患または内分泌型FGF関連障害を処置および/または防止する方法をさらに提供する。
【0030】
ある種の態様において、本方法は、FGF19およびFGF21からなる群より選択される少なくとも1つと哺乳動物細胞の表面上のβクロトーとの相互作用をモジュレートする治療的有効量の構築物を、哺乳動物へ投与する工程を含む。他の態様において、構築物は、FGF19およびFGF21からなる群より選択される少なくとも1つと哺乳動物細胞の表面上のβクロトーとの結合を防止または最小化する。他の態様において、疾患または障害は、肝臓癌および結腸癌からなる群より選択される少なくとも1つを含む。さらに他の態様において、構築物は、野生型FGF19および野生型FGF21からなる群より選択される少なくとも1つよりも堅固に、哺乳動物細胞の表面上のβクロトーに結合する。さらに他の態様において、疾患または障害は、肥満、糖尿病、膵炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0031】
ある種の態様において、哺乳動物は、ヒトである。他の態様において、構築物は、吸入、経口、直腸、膣、非経口、頭蓋内、局所、経皮、肺、鼻腔内、頬、眼、くも膜下腔内、および静脈内からなる群より選択される少なくとも1つのルートによって投与される。さらに他の態様において、哺乳動物は、疾患および/または障害を処置または防止する少なくとも1種の付加的な薬物をさらに投与される。さらに他の態様において、構築物および少なくとも1種の付加的な薬物は、同時投与される。さらに他の態様において、構築物および少なくとも1種の付加的な薬物は、共製剤化される。
[本発明1001]
FGF受容体(FGFR)、FGF19、およびFGF21からなる群より選択される少なくとも1つとβクロトーとの結合を防止または最小化する、非天然可溶性構築物。
[本発明1002]
βクロトーが哺乳動物細胞の表面上にある、本発明1001の構築物。
[本発明1003]
抗体、ナノボディ、組換えタンパク質、および低分子からなる群より選択される少なくとも1つである、本発明1001の構築物。
[本発明1004]
抗体および組換えペプチドからなる群より選択される少なくとも1つである、本発明1001の構築物。
[本発明1005]
抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、合成抗体、重鎖抗体、ヒト抗体、抗体の生物活性断片、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つである、本発明1004の構築物。
[本発明1006]
βクロトーに結合するFGF19またはFGF21の少なくとも1個のアミノ酸残基を認識してそれに結合し、FGF19またはFGF21とβクロトーとの結合を防止する、本発明1001の構築物。
[本発明1007]
FGF21(SEQ ID NO:3)のアミノ酸残基169~209の中の少なくとも1個のアミノ酸を認識してそれに結合する、本発明1006の構築物。
[本発明1008]
SEQ ID NO:3のアミノ酸残基186~209の中の少なくとも1個のアミノ酸を認識してそれに結合する、本発明1007の構築物。
[本発明1009]
FGF19 CT (SEQ ID NO:2)のアミノ酸残基170~216の中の少なくとも1個のアミノ酸を認識してそれに結合する、本発明1006の構築物。
[本発明1010]
FGF19またはFGF21に結合するβクロトーの少なくとも1個のアミノ酸残基を認識しかつ/またはそれに結合し、βクロトーとFGF19またはFGF21との結合を防止する、本発明1001の構築物。
[本発明1011]
βクロトー(SEQ ID NO:1)のアミノ酸残基379~942の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する、本発明1010の構築物。
[本発明1012]
SEQ ID NO:1のアミノ酸379~380、392~394、419~422、431、434~435、438、532、643~647、692~694、696~697、743、745、764、768、824、826、829、832、845、847~851、853、862、889、931~932、939~940、および942の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する、本発明1011の構築物。
[本発明1013]
FGFRに結合するβクロトーの少なくとも1個のアミノ酸残基を認識してそれに結合し、βクロトーとFGFRとの結合を防止する、本発明1001の構築物。
[本発明1014]
ヒトβクロトーの細胞外領域(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983)またはその断片の中の、1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する、本発明1013の構築物。
[本発明1015]
SEQ ID NO:1のアミノ酸残基533~575を含むヒトβクロトーの細胞外領域の断片の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する、本発明1014の構築物。
[本発明1016]
哺乳動物細胞の表面上のβクロトーに結合しそれを隔絶することができるFGF19ポリペプチドおよび/またはFGF21ポリペプチドを含む、本発明1001の構築物。
[本発明1017]
SEQ ID NO:3のアミノ酸残基169~209(FGF21 CT )を含む、本発明1016の構築物。
[本発明1018]
SEQ ID NO:2のアミノ酸残基170~216(FGF19 CT )を含む、本発明1016の構築物。
[本発明1019]
FGF19および/またはFGF21に結合しそれを隔絶することができるβクロトーポリペプチドを含む、本発明1001の構築物。
[本発明1020]
βクロトーポリペプチドが、ヒトβクロトーの細胞外領域(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983)またはその断片を含む、本発明1019の構築物。
[本発明1021]
βクロトーポリペプチドが、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基379~942を含むヒトβクロトーの細胞外領域の断片を含む、本発明1020の構築物。
[本発明1022]
FGFRに結合することができるβクロトーポリペプチドを含む、本発明1001の構築物。
[本発明1023]
ヒトβクロトーの細胞外領域(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983)またはその断片を含む、本発明1022の構築物。
[本発明1024]
SEQ ID NO:1のアミノ酸残基533~575を含む、本発明1023の構築物。
[本発明1025]
安定性増強ドメインと融合されている、本発明1001~1024のいずれかの構築物。
[本発明1026]
安定性増強ドメインが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、および抗体のFc領域からなる群より選択される少なくとも1つを含む、本発明1025の構築物。
[本発明1027]
ポリペプチドと安定性増強ドメインが、約1~18個のアミノ酸を含むポリペプチドを介して連結されている、本発明1025の構築物。
[本発明1028]
野生型のFGF19および/またはFGF21よりも堅固にβクロトーに結合するFGF19ポリペプチドおよび/またはFGF21ポリペプチドを含む、可溶性構築物。
[本発明1029]
FGF19ポリペプチドおよび/またはFGF21ポリペプチドがC末端ドメインに少なくとも1個の変異を有する、本発明1028の構築物。
[本発明1030]
FGF21ポリペプチドが、V188、R203、およびL194からなる群より選択される少なくとも1個の残基の変異を有する、本発明1029の構築物。
[本発明1031]
FGF21ポリペプチドが、R203WおよびL194Fからなる群より選択される少なくとも1個の変異を有する、本発明1029の構築物。
[本発明1032]
安定性増強ドメインと融合されている、本発明1028~1031のいずれかの構築物。
[本発明1033]
安定性増強ドメインが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、および抗体のFc領域からなる群より選択される少なくとも1つを含む、本発明1032の構築物。
[本発明1034]
ポリペプチドと安定性増強ドメインが、約1~18個のアミノ酸を含むポリペプチドを介して連結されている、本発明1032の構築物。
[本発明1035]
FGF21 CT -βクロトー複合体内のFGF21 CT 上の露出したエピトープおよびβクロトー上の露出したエピトープに同時に結合し、FGF21 CT -βクロトー複合体を安定化する、構築物。
[本発明1036]
抗体、ナノボディ、組換えタンパク質、および低分子からなる群より選択される少なくとも1つである、本発明1035の構築物。
[本発明1037]
抗体および組換えペプチドからなる群より選択される少なくとも1つである、本発明1036の構築物。
[本発明1038]
抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、合成抗体、重鎖抗体、ヒト抗体、抗体の生物活性断片、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つである、本発明1037の構築物。
[本発明1039]
FGF19ポリペプチドおよびFGF21ポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1つと融合されたβクロトー結合剤を含む構築物であって、FGF19刺激活性およびFGF21刺激活性からなる群より選択される少なくとも1つを有する、前記構築物。
[本発明1040]
FGF19およびFGF21からなる群より選択される少なくとも1つと哺乳動物細胞の表面上のβクロトーとの相互作用をモジュレートする治療的有効量の構築物を、哺乳動物へ投与する工程
を含む、それを必要とする哺乳動物において内分泌型FGF関連疾患または内分泌型FGF関連障害を処置および/または防止する方法。
[本発明1041]
構築物が、FGF19およびFGF21からなる群より選択される少なくとも1つと哺乳動物細胞の表面上のβクロトーとの結合を防止または最小化する、本発明1040の方法。
[本発明1042]
疾患または障害が、肝臓癌および結腸癌からなる群より選択される少なくとも1つを含む、本発明1041の方法。
[本発明1043]
構築物が、野生型のFGF19および/またはFGF21よりも堅固に哺乳動物細胞の表面上のβクロトーに結合する、本発明1040の方法。
[本発明1044]
疾患または障害が、肥満、糖尿病、膵炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、本発明1043の方法。
[本発明1045]
哺乳動物がヒトである、本発明1040の方法。
[本発明1046]
構築物が、吸入、経口、直腸、膣、非経口、頭蓋内、局所、経皮、肺、鼻腔内、頬、眼、くも膜下腔内、および静脈内からなる群より選択される少なくとも1つのルートによって投与される、本発明1040の方法。
[本発明1047]
哺乳動物が、疾患および/または障害を処置または防止する少なくとも1種の付加的な薬物をさらに投与される、本発明1040の方法。
[本発明1048]
構築物および少なくとも1種の付加的な薬物が同時投与される、本発明1047の方法。
[本発明1049]
構築物および少なくとも1種の付加的な薬物が共製剤化(co-formulated)される、本発明1048の方法。
【0032】
本発明を例示するため、本発明のある種の態様が、図面に示される。しかしながら、本発明は、図面に示された態様の正確な配置および手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】リボン表示(図1A)および表面表示(図1B)として示されたβクロトーの細胞外ドメイン(sKLB)の例示的な結晶構造を示す図である。有意な電子密度を示さない領域は、灰色の破線によって描かれている。
図2】sKLBのヒトサイトゾルβグルコシダーゼとの例示的な構造比較を示す図である。ヒトサイトゾルβグルコシダーゼ(赤色、PDB:2ZOX)の構造に、それぞれ、1.08Åおよび1.39Åの全体α炭素平均二乗偏差(RMSD)で、sKLB(青色)のD1(図2A)およびD2(図2B)が重ね合わせられている。βグルコシダーゼと異なるsKLBの領域は、緑色であり、sKLBと異なるβグルコシダーゼの領域は、灰色である。βグルコシダーゼに結合したグルコース分子は、黄色のボールアンドスティック表示として示されている。「触媒性」グルタミン酸の位置を明らかにするためのD1(図2C)およびD2(図2D)の重ね合わせ。sKLBドメインの各々からの2個の触媒性グルタミン酸のうちの1個は、(D1については)アスパラギンまたは(D2については)アラニンに交換されている。図2E:sKLBのD1およびD2の触媒性グルタミン酸に相当する残基の位置を強調するKLBの図。
図3A】FGF21CTに結合したsKLBの例示的な結晶構造およびsKLBとFGF21CTとの間の相互作用を示す図である。FGF21CT(サーモンピンク色)と複合したsKLB(緑色)の構造が、リボン表示およびボールアンドスティック表示(図3A)ならびに表面表示(図3B)として示されている。有意な電子密度を示さない領域は、灰色の破線として示されている。
図3B図3Aの説明を参照のこと。
図3C】FGF21CTに結合したsKLBの例示的な結晶構造およびsKLBとFGF21CTとの間の相互作用を示す図である。図3C:部位1および部位2の区域においてsKLB(緑色)とFGF21CT(サーモンピンク色)との間で相互作用する残基が示される。
図3D】FGF21CTに結合したsKLBの例示的な結晶構造およびsKLBとFGF21CTとの間の相互作用を示す図である。図3D~3E:部位1(図3D)および部位2(図3E)におけるsKLBとFGF21CTとの間のアミノ酸特異的な相互作用の図である。
図3E図3Dの説明を参照のこと。
図4A】βクロトー上の2個の例示的な異なるFGF21結合部位を示す図である。図4A:FGF21CTの2個の結合部位、部位1および部位2(サーモンピンク色、ボールアンドスティック)を強調しているsKLB(緑色)の表面表示。
図4B】βクロトー上の2個の例示的な異なるFGF21結合部位を示す図である。図4B:部位1は、3個の連続するターン(オレンジ色、黄色、および水色)を通した一連の内部水素結合(黒破線)を形成し、sKLBのD1に結合する構造要素を作出している。
図4C】βクロトー上の2個の例示的な異なるFGF21結合部位を示す図である。図4C:部位2は、sKLBのD2の偽基質結合領域と相互作用する。
図5A】βグルコシダーゼのβクロトーへの例示的な進化を示す図である。(図5A)セロペンタオース(オレンジ色、スティック提示)と複合したイネβグルコシダーゼ(水色、表面提示)(PDB:3F5K)および(図5B)FGF21CT(赤色、スティック表示)と複合したsKLBの部位2(薄緑色、表面提示)の構造。セロペンタオースはβグルコシダーゼの活性部位に結合し、FGF21CTはβクロトーの対応する偽基質結合部位に結合する。
図5B図5Aの説明を参照のこと。
図5C】βグルコシダーゼのβクロトーへの例示的な進化を示す図である。図5C:セロペンタオースに結合したイネβグルコシダーゼおよびFGF21CTに結合したsKLBの構造の重ね合わせである。
図5D】βグルコシダーゼのβクロトーへの例示的な進化を示す図である。図5D:βクロトーのE693(単一の「触媒性」グルタミン酸)は、βグルコシダーゼの触媒部位においてグルタミン酸と相互作用している糖ヒドロキシルを模倣するセリンのヒドロキシル部分との相互作用を介して、FGF21のS-P-Sモチーフとの接触を作成する。
図5E】βグルコシダーゼのβクロトーへの例示的な進化を示す図である。図5E:グリコシドヒドロラーゼ活性のために必要とされる2個のグルタミン酸を含む基質結合ポケットと、E693とS-P-Sモチーフとの間の相互作用を示すβクロトーのリガンド結合ポケットとを比較した模式図である。
図6A】リガンド結合実験および細胞刺激実験によるFGF21とβクロトーとの結合界面の例示的なバリデーションを示す図である。それぞれ、KD=43.5±5.0nMおよびKD=940±176nMを与えた(図6A)FGF21とsKLB、および(図6B)FGFR1CD2D3とsKLBのMSTに基づく結合親和性測定。(図6C)部位1と相互作用する領域または(図6D)部位2と相互作用する領域のいずれかに変異を含有しているGST-FGF21CTによるMSTに基づく競合アッセイ。IC50値、WT、704±96nM;D192A、15900±6210nM;P193A、7160±2350nM;S204A、5990±1040nM;S206A、5560±1590.1nM;Y207A、6630±1570nM。各点のエラーバーは、ΔFnormの変動を表す(n=3)。
図6B図6Aの説明を参照のこと。
図6C図6Aの説明を参照のこと。
図6D図6Aの説明を参照のこと。
図6E】リガンド結合実験および細胞刺激実験によるFGF21とβクロトーとの結合界面の例示的なバリデーションを示す図である。図6E:パネルFおよびGにおいて分析されたFGF21(サーモンピンク色)によって占拠されたsKLB(緑色)の変異アミノ酸残基(黄色)の位置。
図6F】リガンド結合実験および細胞刺激実験によるFGF21とβクロトーとの結合界面の例示的なバリデーションを示す図である。図6F~6G:WTまたはβクロトー変異体とFGFR1cを共発現している安定的にトランスフェクトされたL6細胞を、FGF1またはFGF21のいずれかによって刺激し、FGFR1cのチロシンリン酸化をモニタリングすることによってFGFR1c活性化について分析した。リガンドによって刺激された細胞または刺激されていない細胞の溶解物を、抗FGFR1抗体による免疫沈降、その後の抗pTyr抗体または抗FGFR1抗体のいずれかによるイムノブロッティングに供した。
図6G図6Fの説明を参照のこと。
図7】FGF21の優れた類似体の、例示的な構造に基づくエンジニアリングを例示する。FGF21変異体の増強された結合親和性(図7A)および生物活性(図7B)。FGF21CTに二重L194F/R203W変異を保持するFGF21のMST結合測定は、3.4±1.3nMのKDを有するsKLBとの結合親和性の約10倍の増加、およびFGFR1cチロシンリン酸化の刺激のための約10倍増強された効力を明らかにする。
図8】βクロトーおよびFGF受容体を含む複雑な媒介を介した内分泌型FGFの活性化およびシグナリングの例示的な機序を例示する。刺激されていない細胞の細胞膜において、βクロトーモノマーおよびFGFR1cモノマーは、FGFR/βクロトーヘテロ二量体と平衡している。次元数の低下のため、FGF21のCテールを介したFGF21とβクロトーとの結合、およびFGF21のFGFコアと2個のFGFR1c分子との二価結合は、FGF21/FGFR1c/βクロトー三元複合体の形成へと平衡をシフトさせ、チロシンキナーゼ活性の刺激およびFGFR1cを介した細胞シグナリングをもたらすであろう。さらに、βクロトーは、FGF21の主要な高親和性受容体として機能し、FGFR1cは、受容体二量体化および細胞内シグナリングを媒介する触媒サブユニットとして機能する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、一つの局面において、βクロトーがFGF21の主要な細胞表面受容体であり、FGFR1cが細胞内シグナリングを最終的に媒介する触媒サブユニットとして機能することの発見に関する。一つの局面において、本発明は、内分泌型FGF関連疾患または内分泌型FGF関連障害の処置または防止において有用な組成物および方法を提供する。
【0035】
FGF19およびFGF21は、多様な組織における代謝過程を制御する循環ホルモンである。それらは、タンデムのグリコシドヒドロラーゼ(GH)ドメインを有する細胞表面タンパク質であるクロトーを必要とする様式で、FGFRを介してシグナル伝達する。本発明は、単独のβクロトーの細胞外ドメイン(sKLB)およびFGF21のクロトー結合領域と複合体化されたsKLBの両方の結晶構造を提供する。構造分析は、生化学的実験および細胞実験と共に、FGF21およびその他の内分泌型FGFのβクロトーに対する特異性を決定する分子相互作用の詳細を明らかにし、FGFRがクロトー依存的にどのように活性化されるのかも証明する。結晶構造内に見られるFGF結合モードは、クロトーグリコシドヒドロラーゼドメインの痕跡活性部位において結合する炭水化物を模倣するためのヒドロキシル基を、FGF21のセリンリッチC末端テールがどのように提示するのかを、さらに明らかにする。クロトーによるFGF21認識のこの予想外のモードは、クロトーがFGFR活性化をどのように促進するのかの機序的洞察と共に、内分泌型FGFおよびそのシグナリング経路に関連した代謝疾患およびその他の疾患のための新規の治療薬の開発のための合理的なロードマップを提供する。
【0036】
定義
本明細書中で使用されるように、以下の用語の各々は、このセクションにおいてそれに関連している意味を有する。
【0037】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語が、一般に、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。一般に、本明細書中で使用される命名法、ならびに細胞培養、分子遺伝学、結晶学、および化学における実験手法は、当技術分野において周知であって、一般的に利用されているものである。
【0038】
本明細書中で使用されるように、冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、その冠詞の1つまたは複数(即ち、少なくとも1つの)の文法的目的語をさす。例えば、「1つの要素(an element)」とは、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0039】
本明細書中で使用されるように、「約」という用語は、当業者によって理解され、それが使用される前後関係によって、ある程度、変動するであろう。本明細書中で使用されるように、量、時間の長さ等のような測定可能な値をさす場合、「約」という用語には、指定された値からの±20%または±10%、±5%、±1%または±0.1%の変動が包含されるものとするが、それは、そのような変動が、開示された方法を実施するために適切であるためである。
【0040】
本明細書中で使用されるように、「βクロトー」という用語は、SEQ ID NO:1:
のアミノ配列のタンパク質をさす。
【0041】
本明細書中で使用されるように、βクロトーの細胞外ドメイン(sKLB)は、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983に相当する。
【0042】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用されるように、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子をさす。抗体は、天然起源または組換え起源に由来する完全な免疫グロブリンであってもよいし、完全な免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は、典型的には、免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab、およびF(ab)2を含み、単鎖抗体およびヒト化抗体も含む、多様な型で存在し得る(Harlow et al.,1999,In:Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY;Harlow et al.,1989,In:Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;Bird et al.,1988,Science 242:423-426)。
【0043】
「抗体断片」という用語は、完全な抗体の一部分をさし、完全な抗体の抗原性決定可変領域をさす。抗体断片の例には、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、およびFv断片、直鎖抗体、scFv抗体、ラクダ科抗体(Riechmann,1999,J.Immunol.Meth.231:25-38)のようなsdAb(VLまたはVHのいずれか)のようなシングルドメイン抗体、標的に対する十分な親和性を示すVLドメインまたはVHドメインのいずれかから構成されたラクダ科VHHドメイン、ならびにヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2個のFab断片を含む二価断片のような抗体断片から形成された多重特異性抗体、ならびに抗体の単離されたCDRまたはその他のエピトープ結合断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。抗原結合断片を、シングルドメイン抗体、マキシボディ(maxibodies)、ミニボディ(minibodies)、ナノボディ(nanobodies)、イントラボディ(intrabodies)、ジアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)、v-NAR、およびビスscFvへ組み入れることもできる(例えば、Hollinger & Hudson,2005,Nature Biotech.23:1126-1136を参照すること)。抗原結合断片を、フィブロネクチンIII型(Fn3)のようなポリペプチドに基づく足場へ接ぎ木することもできる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディを記載している米国特許第6,703,199号)。抗体断片には、ヒト抗体もしくはヒト化抗体、またはヒト抗体もしくはヒト化抗体の一部分も含まれる。
【0044】
「抗原」または「Ag」という用語は、本明細書中で使用されるように、免疫応答を誘起する分子として定義される。この免疫応答には、抗体産生もしくは特異的な免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方が含まれ得る。当業者は、事実上全てのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として役立ち得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAに由来してもよい。したがって、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含むDNAは、その用語が本明細書中で使用されるように、「抗原」をコードすることを、当業者は理解するであろう。さらに、抗原は、ある遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことを、当業者は理解するであろう。本発明は、複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むが、これに限定されるわけではないこと、これらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配置されることは、容易に明白である。さらに、抗原は、全く「遺伝子」によってコードされなくてもよいことを、当業者は理解するであろう。抗原は、合成によって生成されてもよいし、または生物学的試料に由来してもよいことが、容易に明白である。そのような生物学的試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生物学的液体が含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。
【0045】
「アンチセンス」とは、具体的には、ポリペプチドをコードする二本鎖DNA分子の非コード鎖の核酸配列、または非コード鎖に実質的に相同の配列をさす。本明細書中で定義されるように、アンチセンス配列は、ポリペプチドをコードする二本鎖DNA分子の配列に相補的である。アンチセンス配列は、DNA分子のコード鎖のコード部分にのみ相補的である必要はない。アンチセンス配列は、ポリペプチドをコードするDNA分子のコード鎖上の、コード配列の発現を調節する指定された制御配列に相補的であってもよい。
【0046】
「アプリケーター」という用語は、その用語が本明細書中で使用されるように、本発明の化合物および組成物を投与するための、皮下注射器、ピペット等を含むが、これらに限定されるわけではない、任意のデバイスを意味する。
【0047】
本明細書中で使用されるように、「アプタマー」とは、別の分子と特異的に結合することができる低分子をさす。アプタマーは、典型的には、ポリヌクレオチドまたはペプチドのいずれかに基づく分子である。ポリヌクレオチドアプタマーは、多数の有機分子および無機分子の中でもとりわけ、ペプチド、タンパク質、薬物、ビタミンのような特異的な標的分子に対して適切な結合親和性および特異性を有するよう設計された、高度に特異的な三次元コンフォメーションをとる、一般的には、核酸のいくつかの鎖を含む、DNA分子またはRNA分子である。そのようなポリヌクレオチドアプタマーは、試験管内進化法の使用を介して、ランダム配列の巨大な集団から選択され得る。ペプチドアプタマーは、典型的には、特異的なリガンドに結合するタンパク質足場に付着した約10~約20アミノ酸のループである。ペプチドアプタマーは、酵母ツーハイブリッド系のような方法を使用して、コンビナトリアルライブラリーから同定され単離され得る。
【0048】
遺伝子の「コード領域」は、それぞれ、遺伝子の転写によって産生されるmRNA分子のコード領域と相同であるかまたは相補的である、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基、および遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドからなる。mRNA分子の「コード領域」も、mRNA分子の翻訳中にトランスファーRNA分子のアンチコドン領域とマッチするか、または終止コドンをコードするmRNA分子のヌクレオチド残基からなる。したがって、コード領域には、mRNA分子によってコードされた成熟タンパク質に存在しないアミノ酸残基(例えば、タンパク質エクスポートシグナル配列のアミノ酸残基)に対応するヌクレオチド残基が含まれ得る。
【0049】
「構成性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、細胞の大部分のまたは全ての生理学的条件の下で、細胞における遺伝子産物の産生を引き起こすヌクレオチド配列である。
【0050】
本明細書中で使用されるように、「疾患」とは、動物がホメオスタシスを維持することができず、疾患が寛解しない場合、動物の健康が悪化し続ける動物の健康状態である。
【0051】
本明細書中で使用されるように、動物における「障害」とは、動物がホメオスタシスを維持することができるが、動物の健康状態が、障害が存在しない場合より不利である健康状態である。未処置のままにされた場合、障害は、動物の健康状態のさらなる減少を必ずしも引き起こさない。
【0052】
本明細書中で使用されるように、化合物の「有効量」または「治療的有効量」または「薬学的有効量」という用語は、化合物が投与された対象に有益な効果を提供するために十分な化合物の量をさすため、交換可能に使用される。
【0053】
本明細書中で使用されるように、「コードする」とは、ヌクレオチド(即ち、rRNA、tRNA、およびmRNA)の定義された配列、またはアミノ酸の定義された配列のいずれか、ならびにそれらに由来する生物学的特性を有する、生物学的過程における他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として役立つ、遺伝子、cDNA、またはmRNAのようなポリヌクレオチドの特定のヌクレオチド配列の固有の特性をさす。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞またはその他の生物学的な系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、一般的に、配列表に提供されるコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質またはその他の産物をコードすると呼ばれ得る。
【0054】
本明細書中で使用されるように、「内在性」とは、生物、細胞、組織、もしくは系に由来するか、またはそれらの内部で産生された任意の材料をさす。本明細書中で使用されるように、「外来性」という用語は、生物、細胞、組織、もしくは系の外部から導入されたか、または外部で産生された任意の材料をさす。
【0055】
「エピトープ」という用語は、本明細書中で使用されるように、免疫応答を誘発して、B細胞および/またはT細胞の応答を誘導することができる抗原上の小さい化学的分子として定義される。抗原は、1個または複数のエピトープを有し得る。大部分の抗原は、多くのエピトープを有し;即ち、多価である。一般に、エピトープのサイズは、約5個のアミノ酸および/または糖である。一般に、分子の特定の直線的配列ではなく、三次元構造全体が、抗原特異性の主な基準であり、したがって、異なるエピトープを区別することを、当業者は理解する。
【0056】
「発現」という用語は、本明細書中で使用されるように、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0057】
「発現ベクター」とは、発現されるヌクレオチド配列に機能的に連結された発現調節配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターをさす。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用性要素を含み;発現のための他の要素は、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されてもよい。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドが組み入れられる、コスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソームに含有されているもの)、ならびにウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)のような当技術分野において公知の全てのものが含まれる。
【0058】
本明細書中で使用されるように、「FGF19」という用語は、SEQ ID NO:2:
のポリペプチドをさす。
【0059】
本明細書中で使用されるように、「FGF19CT」とは、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基170~216に相当するポリペプチドをさす。
【0060】
本明細書中で使用されるように、「FGF21」という用語は、SEQ ID NO:3:
のポリペプチドをさす。
【0061】
本明細書中で使用されるように、「FGF21CT」とは、ある種の態様において、2個の変異P199GおよびA208Eを含有している(参照によってその全体が本明細書中に組み入れられるUS 20120087920を参照すること)、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基169~209に相当するポリペプチドをさす。
【0062】
本明細書中で使用されるように、「重鎖抗体」という用語には、抗原による免疫およびその後の血清の単離による、またはそのような抗体をコードする核酸配列のクローニングおよび発現による、ラクダ科種に由来する免疫グロブリン分子が含まれる。「重鎖抗体」という用語には、重鎖病を有する動物から単離された免疫グロブリン分子、または動物由来のVH(可変重鎖免疫グロブリン)遺伝子のクローニングおよび発現によって調製された免疫グロブリン分子がさらに包含される。
【0063】
「相同」とは、本明細書中で使用されるように、2個のポリマー分子の間、例えば、2個のDNA分子もしくは2個のRNA分子のような2個の核酸分子の間、または2個のポリペプチド分子の間のサブユニット配列同一性をさす。2個の分子の両方において、あるサブユニット位置が、同一のモノマーサブユニットによって占拠されている場合;例えば、2個のDNA分子の各々において、ある位置がアデニンによって占拠されている場合、それらは、その位置において相同である。2個の配列の間の相同性は、一致するかまたは相同である位置の数の直接関数であり;例えば、2個の配列の位置の半分(例えば、10サブユニット長ポリマーにおいて5個の位置)が相同である場合、それらの2個の配列は50%相同であり;位置の90%(例えば、10個中9個)が一致するかまたは相同である場合、それらの2個の配列は90%相同である。例えば、DNA配列5'-ATTGCC-3'および5'-TATGGC-3'は、50%の相同性を共有する。
【0064】
本明細書中で使用されるように、「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、抗体として機能するタンパク質のクラスとして定義される。タンパク質のこのクラスに含まれる5種のメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD、およびIgEである。IgAは、唾液、涙、母乳、胃腸分泌液、ならびに気道および尿生殖器の分泌粘液のような身体の分泌液中に存在する主要な抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、大部分の哺乳動物において、一次免疫応答において産生される主な免疫グロブリンである。それは、凝集、補体結合、およびその他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであって、細菌およびウイルスに対する防御において重要である。IgDは、公知の抗体機能を有していないが、抗原受容体として役立つことができる免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲン曝露時に、マスト細胞および好塩基球からのメディエーターの放出を引き起こすことによって、即時型過敏を媒介する免疫グロブリンである。
【0065】
「誘導性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合、実質的に、プロモーターに対応する誘導剤が細胞に存在する場合にのみ、細胞における遺伝子産物の産生を引き起こすヌクレオチド配列である。
【0066】
「阻害する」および「拮抗する」という用語は、本明細書中で使用されるように、分子、反応、相互作用、遺伝子、mRNA、および/またはタンパク質の発現、安定性、機能、または活性を、測定可能な量だけ低下させるか、または完全に防止することを意味する。阻害剤は、例えば、部分的にまたは完全に、タンパク質、遺伝子、およびmRNAの安定性、発現、機能、および活性の刺激を阻止するか、減少させるか、防止するか、活性化を遅延させるか、不活化するか、脱感作するか、またはダウンレギュレートする化合物、例えば、アンタゴニストである。
【0067】
「説明材料」には、その用語が本明細書中で使用されるように、キット内の本発明の組成物および/または化合物の有用性を伝えるために使用され得る刊行物、記録、図、またはその他の表現媒体が含まれる。キットの説明材料は、例えば、本発明の化合物および/もしくは組成物を含有している容器に添付されてもよいし、または化合物および/もしくは組成物を含有している容器と共に出荷されてもよい。あるいは、説明材料は、受取人が説明材料および化合物を協力的に使用することを意図して、容器と別に出荷されてもよい。説明材料の送達は、例えば、キットの有用性を伝える刊行物またはその他の表現媒体の物理的送達によってもよいし、あるいは電子的伝達、例えば、電子メールまたはウェブサイトからのダウンロードのように、コンピューターによって達成されてもよい。
【0068】
「単離された」とは、天然の状態から変更されているかまたは除去されていることを意味する。例えば、生存している動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離されて」いないが、その天然の状態の共存する材料から部分的にまたは完全に分離された同一の核酸またはペプチドは、「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在してもよいし、または、例えば、宿主細胞のような非ネイティブの環境に存在してもよい。
【0069】
「単離された核酸」とは、天然に存在する状態において隣接している配列から分離された核酸のセグメントまたは断片、即ち、その断片に通常隣接している配列、即ち、天然に存在するゲノムにおいてその断片に隣接している配列から除去されたDNA断片をさす。その用語は、核酸に天然に付随する他の成分、即ち、細胞内で天然に付随するRNAまたはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸にも当てはまる。したがって、その用語には、例えば、ベクター、自律複製性のプラスミドもしくはウイルス、もしくは原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAへ組み入れられた組換えDNA、または他の配列と無関係の別の分子として(即ち、cDNAとして、もしくはPCRもしくは制限酵素消化によって作製されたゲノムもしくはcDNAの断片として)存在する組換えDNAが含まれる。それには、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。
【0070】
本明細書中で使用されるように、「モジュレートする」という用語は、生物学的状態の変化、即ち、増加、減少等をさすものである。例えば、「モジュレートする」という用語は、標的タンパク質mRNAの転写、標的タンパク質mRNAの安定性、標的タンパク質mRNAの翻訳、標的タンパク質の安定性、標的タンパク質の翻訳後修飾、標的タンパク質の活性、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるわけではない、標的タンパク質の発現、安定性、または活性を正にまたは負に制御する能力をさすものと解釈される。さらに、モジュレートする、という用語は、標的タンパク質の活性を含むが、これに限定されるわけではない活性の増加、減少、遮断、変更、無効化、または回復をさすために使用され得る。
【0071】
「天然に存在する」とは、物質に適用されるように、その物質が自然界に見出され得るという事実をさす。例えば、自然界の起源から単離され得、人間によって故意に修飾されていない、(ウイルスを含む)生物に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列は、天然に存在する配列である。
【0072】
他に特記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互の縮重バージョンであり、同一のアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句には、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、いくつかのバージョンにおいて、イントロンを含有していてもよいという程度に、イントロンも含まれ得る。
【0073】
「機能的に連結された」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす、制御配列と異種核酸配列との間の機能的連結をさす。例えば、第1の核酸配列が、第2の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、その第1の核酸配列は、その第2の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターが、コード配列の転写または発現に影響する場合、そのプロモーターは、そのコード配列と機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は、連続しており、2個のタンパク質コード領域を接合する必要がある場合には、同一のリーディングフレーム内にある。
【0074】
組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)注射、静脈内(i.v.)注射、筋肉内(i.m.)注射、もしくは胸骨内注射、または注入技術が含まれる。
【0075】
本明細書中で使用されるように、「薬学的組成物」という用語は、本発明において有用な少なくとも1種の化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、および/または賦形剤のような他の化学的成分との混合物をさす。薬学的組成物は、化合物の生物への投与を容易にする。静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺、頭蓋内、および局所投与を含むが、これらに限定されるわけではない、化合物を投与する複数の技術が、当技術分野において存在する。
【0076】
本明細書中で使用されるように、「薬学的に許容される」という用語は、組成物の生物学的活性または特性を抑止せず、比較的無毒である担体または希釈剤のような材料をさし、即ち、その材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、それが含有されている組成物の成分のいずれかと有害に相互作用することもなく、個体へ投与され得る。
【0077】
「薬学的に許容される担体」には、その意図された機能を実施することができるよう、対象においてまたは対象へ本発明の化合物を保持するかまたは輸送することに関与する、液体または固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル材料のような、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される材料、組成物、または担体が含まれる。典型的には、そのような化合物は、ある器官または身体の一部分から、別の器官または身体の一部分へ、保持されるかまたは輸送される。塩または担体は、各々、製剤の他の成分と適合性であって、対象に対して有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例には、乳糖、ブドウ糖、およびショ糖のような糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンのようなデンプン;セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースのようなその誘導体;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐薬ロウのような賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油のような油;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールのようなポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;発熱物質不含水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;希釈剤;造粒剤;滑沢剤;結合剤;崩壊剤;湿潤剤;乳化剤;着色剤;放出剤;コーティング剤;甘味剤;風味剤;芳香剤;保存剤;抗酸化剤;可塑剤;ゲル化剤;増粘剤;硬化剤;凝固剤;懸濁化剤;界面活性剤;湿潤剤;担体;安定剤;ならびに薬学的製剤において利用されるその他の無毒の適合性物質、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。本明細書中で使用されるように、「薬学的に許容される担体」には、化合物の活性と適合性であって、対象にとって生理学的に許容される、全ての任意のコーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、および吸収遅延剤等も含まれる。補足的な活性化合物が、組成物へ組み入れられてもよい。
【0078】
本明細書中で使用されるように、「薬学的に許容される塩」という言語は、無機酸、有機酸を含む、薬学的に許容される無毒の酸から調製された、投与される化合物の塩、それらの溶媒和化合物、水和物、または包接化合物をさす。
【0079】
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合を介して連結された、アミノ酸残基、その関連する天然に存在する構造的バリアント、および合成の天然に存在しない類似体から構成されたポリマーをさす。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成機を使用して合成され得る。「タンパク質」という用語は、典型的には、大きいポリペプチドをさす。「ペプチド」という用語は、典型的には、短いポリペプチドをさす。
【0080】
ポリペプチド配列を描写するための従来の記法が、本明細書中で使用され:ポリペプチド配列の左端がアミノ末端であり;ポリペプチド配列の右端がカルボキシル末端である。本明細書中で使用されるように、「ペプチド模倣体」とは、親ペプチドの生物学的作用を模倣することができる非ペプチドの構造要素を含有している化合物である。ペプチド模倣体は、ペプチド結合を含んでいてもよいし、または含んでいなくてもよい。
【0081】
本明細書中で使用されるように、「防止する」または「防止」という用語は、まだ起こっていない場合には、障害もしくは疾患の発症が起こらないこと、または障害もしくは疾患の発症が既に存在する場合には、さらなる障害もしくは疾患の発症が起こらないことを意味する。障害または疾患に関連した症状のいくつかまたは全てを防止する能力も、考慮される。疾患および障害は、本明細書中で交換可能に使用される。
【0082】
「プライマー」とは、指定されたポリヌクレオチド鋳型と特異的にハイブリダイズし、相補的なポリヌクレオチドの合成のための開始点を提供することができるポリヌクレオチドをさす。そのような合成は、合成が誘導される条件、即ち、ヌクレオチド、相補的なポリヌクレオチド鋳型、およびDNAポリメラーゼのような重合剤の存在下に、ポリヌクレオチドプライマーが置かれた場合に起こる。プライマーは、典型的には、一本鎖であるが、二本鎖であってもよい。プライマーは、典型的には、デオキシリボ核酸であるが、多様な合成のプライマーおよび天然に存在するプライマーが、多くの適用のために有用である。プライマーは、合成の開始の部位として役立つためにハイブリダイズするようそれが設計された鋳型に相補的であるが、鋳型の正確な配列を反映する必要はない。そのようなケースにおいて、プライマーの鋳型との特異的なハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依る。プライマーは、例えば、発色部分、放射部分、または蛍光部分によって標識され、検出可能部分として使用されてもよい。
【0083】
「プローブ」とは、別のポリヌクレオチドの指定された配列と特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをさす。プローブは、標的の相補的なポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするが、鋳型の正確な相補的配列を反映する必要はない。そのようなケースにおいて、プローブの標的との特異的なハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依る。プローブは、例えば、発色部分、放射部分、または蛍光部分によって標識され、検出可能部分として使用されてもよい。
【0084】
「プロモーター」という用語は、本明細書中で使用されるように、ポリヌクレオチド配列の特異的な転写を開始するために必要とされる、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列として定義される。
【0085】
本明細書中で使用されるように、「プロモーター/制御配列」という用語は、そのプロモーター/制御配列と機能的に連結された遺伝子産物の発現のために必要とされる核酸配列を意味する。いくつかの事例において、この配列は、コアプロモーター配列であってよく、他の事例において、この配列は、遺伝子産物の発現のために必要とされるエンハンサー配列およびその他の制御要素も含んでいてよい。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0086】
「組換えDNA」という用語は、本明細書中で使用されるように、異なる起源に由来するDNA片を接合することによって作製されたDNAとして定義される。「組換えポリペプチド」という用語は、本明細書中で使用されるように、組換えDNA法を使用することによって作製されたポリペプチドとして定義される。
【0087】
「RNA」という用語は、本明細書中で使用されるように、リボ核酸として定義される。
【0088】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書中で使用されるように、第1の分子(例えば、抗体)が、第2の分子(例えば、特定の抗原性エピトープ)と優先的に結合するが、必ずしもその第2の分子とのみ結合しなくてもよいことを意味する。
【0089】
本明細書中で使用されるように、「対象」とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物をさす。非ヒト哺乳動物には、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、およびマウス哺乳動物のような家畜およびペットが含まれる。ある種の態様において、対象はヒトである。
【0090】
「合成抗体」という用語は、本明細書中で使用されるように、例えば、本明細書中に記載されるバクテリオファージによって発現された抗体のような、組換えDNAテクノロジーを使用して生成された抗体を意味する。その用語は、抗体をコードし、抗体タンパク質を発現するDNA分子、または抗体を指定するアミノ酸配列の合成によって生成された抗体も意味すると解釈されるべきであり、ここで、DNAまたはアミノ酸配列は、当技術分野において利用可能であり周知であるDNAまたはアミノ酸配列の合成テクノロジーを使用して入手されたものである。
【0091】
「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子によってコードされたまたは指定されたポリヌクレオチドと機能的に連結された場合、実質的に、細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、細胞における遺伝子産物の産生を引き起こすヌクレオチド配列である。
【0092】
「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、本明細書中で使用されるように、外来性の核酸が宿主細胞へ移入されるかまたは導入される過程をさす。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞とは、外来性核酸によってトランスフェクトされたか、形質転換されたか、または形質導入されたものである。細胞には、最初の主細胞およびその子孫が含まれる。
【0093】
本明細書中で使用されるように、「処置」または「処置すること」という用語は、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状、または疾患もしくは障害を発症する可能性の治療、治癒、緩和、軽減、変更、矯正、寛解、改善、または影響を目的とした、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状、または疾患もしくは障害を発症する可能性を有する対象への、治療剤、即ち、本発明において有用な組成物(単独もしくは別の薬学的薬剤との組み合わせ)の適用もしくは投与、または(例えば、診断もしくはエクスビボ適用のための)対象から単離された組織もしくは細胞株への、治療剤の適用もしくは投与として定義される。そのような処置は、薬理ゲノミクスの領域から入手された知識に基づき、具体的に個別化または修飾され得る。個々の症例における適切な治療量は、ルーチンの実験を使用して当業者によって決定され得る。
【0094】
「転写調節下」または「機能的に連結された」という語句は、本明細書中で使用されるように、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を調節するため、ポリヌクレオチドに対して正確な位置および方向にあることを意味する。
【0095】
「バリアント」とは、その用語が本明細書中で使用されるように、それぞれ、参照の核酸配列またはペプチド配列と配列が異なるが、参照分子の必須の特性を保持している核酸配列またはペプチド配列である。核酸バリアントの配列の変化は、参照核酸によってコードされたペプチドのアミノ酸配列を変更しなくてもよいし、またはアミノ酸の置換、付加、欠失、融合、および短縮をもたらしてもよい。ペプチドバリアントの配列の変化は、典型的には、限定的または保存的であるため、参照ペプチドおよびバリアントの配列は、全体的に非常に類似しており、多くの領域において、同一である。バリアントおよび参照ペプチドは、1個または複数の置換、付加、または欠失の任意の組み合わせによってアミノ酸配列が異なっていてよい。核酸またはペプチドのバリアントは、対立遺伝子バリアントのような天然に存在するものであってもよいし、または天然に存在することが未知のバリアントであってもよい。核酸およびペプチドの天然に存在しないバリアントは、変異誘発技術によって、または直接合成によって作成され得る。
【0096】
「ベクター」とは、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部へ送達するために使用され得る構成物である。直鎖状のポリヌクレオチド、イオン性化合物または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含むが、これらに限定されるわけではない、多数のベクターが、当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語には、自律複製性のプラスミドまたはウイルスが含まれる。その用語には、例えば、ポリリシン化合物、リポソーム等のような、核酸の細胞への移入を容易にする非プラスミド非ウイルス化合物も含まれると解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0097】
本明細書中で使用される略語には、以下のものが含まれる:FGF、線維芽細胞増殖因子;FGFR、線維芽細胞増殖因子受容体;GDNF、グリア細胞由来神経栄養因子;GHドメイン、グリコシドヒドロラーゼ様ドメイン;HSPG、ヘパラン硫酸プロテオグリカン;MES、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸;RMSD、平均二乗偏差;RTK、受容体型チロシンキナーゼ;sKLB、βクロトーの細胞外ドメイン。
【0098】
本開示の全体にわたって、本発明の様々な局面が、範囲フォーマットで提示され得る。範囲フォーマットでの記載は、便宜および簡潔のためのものに過ぎず、本発明の範囲に関する柔軟性のない限定として解釈されるべきでないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、その範囲内の全ての可能な部分範囲および個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、その範囲内の1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等のような部分範囲、ならびに個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0099】
開示
一つの局面において、本発明は、内分泌型FGF関連疾患または内分泌型FGF関連障害の処置において有用な組成物および方法を提供する。ある種の態様において、本発明の組成物は、FGF21(および/またはFGF19および/またはFGFR)と哺乳動物細胞の表面上のβクロトーとの結合を防止または最小化する。他の態様において、本発明の組成物は、野生型のFGF19および/またはFGF21よりも堅固に、哺乳動物細胞の表面上のβクロトーに結合する。
【0100】
本明細書中に記述されるように、クロトーファミリーの2種のメンバーは、血糖の低下を含む多くの代謝過程を制御するために循環ホルモンとして機能する3種の内分泌型FGFによるシグナリングの媒介において重要な役割を果たす。内分泌型FGFは、αクロトーまたはβクロトーのいずれかも発現する細胞においてのみFGFRを活性化することができるため、古典的FGFによるFGFR活性化のための共受容体としてのHSPGが果たす役割に類似して、クロトータンパク質が、FGFR活性化のための共受容体として機能することが提唱された。古典的FGFについて、HSPGは、FGFR活性化において2種の主要な相互依存性の役割を果たす。第1に、安定的な三元HSPG/FGF/FGFR複合体を形成するためのHSPGとFGFおよびFGFRの両方との結合は、古典的FGFのFGFRに対する比較的低い(マイクロモル範囲の)親和性を補うと考えられる。古典的FGFと受容体との結合についてのKD値は、EGFまたはPDGFと同族RTKとの結合より約1000倍弱い。第2に、HSPGは、HSPG/FGF/FGFR三元複合体の形成を介して、2個のFGFR分子との二価FGF結合によって誘導される受容体二量体化を安定化する。FGF21はFGFRに対するさらに低い親和性(>10~100μM)を有するが、3種の内分泌型FGFが、全て、シグナリングを促進するためにFGFRに結合しなければならないことは明らかである。
【0101】
本明細書中に記載された試験は、βクロトーが、内分泌型FGFによるFGFR1c活性化のためのオルタナティブな共受容体として単に役立つのではなく、実際、FGF21の主要な高親和性受容体として機能することを明らかにする。図7Cに提示されたスキームは、チロシンキナーゼ活性化および細胞シグナリングを促進するためのβクロトー/FGFR複合体の活性化を、FGF21とβクロトーとの結合がどのように可能にするのかについての非限定的なモデルを示す。このモデルにおいて、FGFR1cおよびβクロトーのモノマーは、膜内にFGFR/βクロトーヘテロ二量体と平衡して存在する。FGFR1CD2D3細胞外領域とsKLBとの結合についてのKDは、約1μMであり(図6B)、FGFR1cおよびβクロトーの実質的な部分が、1細胞当たり約10,000コピーのレベルで相互に会合している。FGF21は、高い親和性(KD=43.5nM、図6A)で、βクロトーモノマーまたは既存のβクロトー/FGFR1cヘテロ二量体のいずれかと結合する。βクロトーモノマーおよび/またはβクロトー/FGFR1cヘテロ二量体とそのC末端テールを介してこのように繋留されたFGF21によって、3種の全ての成分が膜において2種類の次元に低下し、FGF21のFGFコアのFGFR1cに対する弱い(しかし証明可能な)親和性は、FGFと2個のFGFR分子との二価結合に対する低下した次元数の効果を介して活性化される三元FGF21/FGFR1c/βクロトー複合体の形成を駆動するために十分である。この非限定的なモデルにおいて、βクロトーは、FGF21の主要な高親和性受容体として機能し、FGFR1cは、受容体二量体化および細胞内シグナリングを媒介する触媒サブユニットとして機能する。この機序は、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)によって活性化されるRTKであるRETについて見られるものに類似している。GDNFおよびその類縁体は、最初に、表面タンパク質のGDNF受容体(GDNFR)ファミリーの特異的なメンバーと結合する。次いで、リガンドによって占拠されたGDNFRは、RETの細胞外ドメインとの三元複合体を形成する。この非限定的な情況において、βクロトーは、GDNFRと同様に機能し、FGFR1cはRETの役割をする。
【0102】
FGF21CTに結合したsKLBの結晶構造は、βクロトーの2個のグリコシドヒドロラーゼ(GH)ドメインが、FGF21を特異的に認識するよう進化中にどのように「再目的化(repurposed)」されたのかの明らかな概要も提供する。基質に結合したβグルコシダーゼの構造を、FGF21CTに結合したβクロトーの第2のGHドメインと比較することによって、糖の切断を専門に行う酵素の活性部位が、血糖の低下を含む重要な代謝過程を制御する循環ホルモンのための特異的な高親和性の細胞表面受容体になるために、どのように進化したのかが明らかとなる。FGF21のC末端は、FGF19においても保存されている、S-P-S配列を含有している、ヒドロキシル基リッチ領域の中央に置かれたオリゴ糖の構造的模倣体を提示するようである。FGF21とFGF19との間の類似性は、これらの2種のホルモンのβクロトーに対する特異性および作用モードが類似していることを示す。これらの2種の内分泌型FGFに対する細胞応答の違いは、異なるFGFRに対する2種のリガンド、即ち、それぞれ、FGFR1cまたはFGFR4に対するFGF21またはFGF19の変更された結合優先性によって決定される可能性が高い。
【0103】
化合物および/または組成物
(a)本発明は、哺乳動物細胞の表面上のβクロトーとFGF19および/またはFGF21および/またはFGFRとの結合を防止または最小化する構築物を提供する。
一つの局面において、本発明は、FGF19および/またはFGF21と哺乳動物細胞の表面上のβクロトーとの結合を防止または最小化する(以下に限定されるわけではないが、抗体および/または組換えペプチドのような)構築物を提供する。
【0104】
ある種の態様において、構築物は、βクロトーに結合するFGF19またはFGF21の少なくとも1個のアミノ酸残基を認識しかつ/またはそれに結合し、したがって、FGF19またはFGF21とβクロトーとの結合を防止する。他の態様において、構築物は、FGF21(SEQ ID NO:3)のアミノ酸残基169~209の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する。さらに他の態様において、構築物は、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基186~209の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する(表1を参照すること)。さらに他の態様において、構築物は、FGF19(SEQ ID NO:2)のアミノ酸残基170~216の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する。
【0105】
ある種の態様において、構築物は、FGF19またはFGF21に結合するβクロトーの少なくとも1個のアミノ酸残基を認識し、したがって、βクロトーとFGF19またはFGF21との結合を防止する。他の態様において、構築物は、βクロトー(SEQ ID NO:1)のアミノ酸残基379~942の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する。さらに他の態様において、構築物は、SEQ ID NO:1のアミノ酸379~380、392~394、419~422、431、434~435、438、532、643~647、692~694、696~697、743、745、764、768、824、826、829、832、845、847~851、853、862、889、931~932、939~940、および942からなる群より選択される1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する(表1および図3D~3Eを参照すること)。
【0106】
もう一つの局面において、本発明は、哺乳動物細胞の表面上のβクロトーとFGFRとの結合を防止または最小化する構築物を提供する。
【0107】
ある種の態様において、構築物は、FGFRに結合するβクロトーの少なくとも1個のアミノ酸残基を認識し、したがって、βクロトーとFGFRとの結合を防止する。他の態様において、構築物は、ヒトβクロトー(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983)の細胞外領域またはその断片の中の、1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する。さらに他の態様において、構築物は、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基533~575を含むヒトβクロトーの細胞外領域の断片の中の1個または複数のアミノ酸を認識しかつ/またはそれに結合する。
【0108】
(表1)結晶構造内に見出されたFGF21CTとsKLBとの間の接触。FGF21CT由来のアミノ酸残基の5Å以内に少なくとも1個の原子を含有しているsKLB由来のアミノ酸残基がリストされる。図3A~3Eを参照すること。
【0109】
非限定的な例として、βクロトーとFGF19、FGF21、および/またはFGFRとの結合の防止または最小化の例として、抗体が以下に記載される。当業者によって理解されるように、FGF19/FGF21/FGFR/βクロトーを認識してそれと特異的に結合することができる任意の抗体が、本発明において有用である。抗体がFGF19/FGF21/FGFR/βクロトーと特異的に結合することができ、βクロトーとFGF19、FGF21、および/またはFGFRとの結合を防止または最小化することができるのであれば、本発明は、公知または従来未知の何らかの型の抗体に限定されないと解釈されるべきである。そのような抗体を作成し使用する方法は、当技術分野において周知である。例えば、ポリクローナル抗体の生成は、所望の動物に抗原を接種し、抗原と特異的に結合する抗体をそれから単離することによって達成され得る。タンパク質またはペプチドの全長またはペプチド断片に対するモノクローナル抗体は、例えば、Harlowら(1989,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York)およびTuszynskiら(1988,Blood 72:109-115)に記載されたもののような周知のモノクローナル抗体調製法を使用して調製され得る。多量の所望のペプチドは、化学合成テクノロジーを使用して合成されてもよい。あるいは、大量のペプチドの生成のために適当な細胞に、所望のペプチドをコードするDNAをクローニングし、適切なプロモーター配列から発現させてもよい。ペプチドに対するモノクローナル抗体は、本明細書中に参照された標準的な手法を使用して、ペプチドによって免疫されたマウスから生成される。しかしながら、本発明は、これらの抗体を含む方法および組成物にのみ限定されると解釈されるべきでなく、その用語が本明細書中の他の場所で定義されるように、他の抗体も含むと解釈されるべきである。
【0110】
いくつかの事例において、齧歯類(例えば、マウス)、霊長類(例えば、ヒト)等のような様々な哺乳動物宿主からモノクローナル抗体を調製することが望ましい。例えば、そのようなモノクローナル抗体を調製するための技術の説明は、周知であり、Harlow et al.,ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,COLD SPRING HARBOR LABORATORY,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988);Harlow et al.,USING ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,(Cold Spring Harbor Press,New York,1998);Breitling et al.,RECOMBINANT ANTIBODIES(Wiley-Spektrum,1999);およびKohler et al.,1997 Nature 256: 495-497;米国特許第5,693,762号;第5,693,761号;第5,585,089号;および第6,180,370号に記載されている。
【0111】
本明細書中に記載された手法を使用して入手された抗体をコードする核酸は、当技術分野において利用可能であり、例えば、Wrightら(Critical Rev.Immunol.1992,12:125-168)およびその中に引用された参照に記載されているテクノロジーを使用して、クローニングされ、配列決定され得る。さらに、本発明の抗体は、Wrightら(前記)およびその中に引用された参照、およびGuら(Thrombosis and Hematocyst 1997,77:755-759)に記載されたテクノロジーを使用して「ヒト化」され得る。
【0112】
あるいは、抗体は、ファージディスプレイテクノロジーを使用して生成され得る。ファージ抗体ライブラリーを生成するため、最初に、ファージ表面上に発現される所望のタンパク質、例えば、所望の抗体を発現する細胞、例えば、ハイブリドーマから単離されたmRNAから、cDNAライブラリーが入手される。mRNAのcDNAコピーが、逆転写酵素を使用して作製される。免疫グロブリン遺伝子を指定するDNAを含むバクテリオファージDNAライブラリーを生成するため、免疫グロブリン断片を指定するcDNAが、PCRによって入手され、得られたDNAが、適当なバクテリオファージベクターへクローニングされる。異種DNAを含むバクテリオファージライブラリーを作成するための手法は、当技術分野において周知であり、例えば、Sambrookら(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York)に記載されている。
【0113】
所望の抗体をコードするバクテリオファージは、その抗体の対応する結合タンパク質、例えば、抗原との結合のために利用可能であるように、タンパク質が表面上にディスプレイされるように改変され得る。したがって、特異的な抗体を発現するバクテリオファージが、対応する抗原を発現する細胞の存在下でインキュベートされる場合、バクテリオファージは細胞に結合するであろう。抗体を発現しないバクテリオファージは、細胞に結合しないであろう。そのようなパニング技術は、当技術分野において周知であり、例えば、Wrightら(Critical Rev.Immunol.1992,12:125-168)に記載されている。
【0114】
本明細書中に記載されたもののような方法は、M13バクテリオファージディスプレイを使用したヒト抗体の作製のため、開発された(Burton et al.,1994,Adv.Immunol.57:191-280)。本質的に、cDNAライブラリーは、抗体産生細胞の集団から入手されたmRNAから生成される。mRNAは、再配置された免疫グロブリン遺伝子をコードし、したがって、cDNAはそれをコードする。増幅されたcDNAは、M13発現ベクターへクローニングされ、表面上にヒトFab断片を発現するファージのライブラリーが作出される。関心対象の抗体をディスプレイするファージが、抗原結合によって選択され、可溶性ヒトFab免疫グロブリンを産生するよう細菌内で繁殖させられる。したがって、従来のモノクローナル抗体合成とは対照的に、この手法は、ヒト免疫グロブリンを発現する細胞ではなく、ヒト免疫グロブリンをコードするDNAを不死化する。
【0115】
上記の手法は、抗体分子のFab部分をコードするファージの生成を説明している。しかしながら、本発明は、Fab抗体をコードするファージの生成のみに限定されると解釈されるべきでない。むしろ、単鎖抗体をコードするファージ(scFv/ファージ抗体ライブラリー)も、本発明に含まれる。Fab分子は、Ig軽鎖全体を含み、即ち、軽鎖の可変領域および定常領域の両方を含むが、重鎖の可変領域および第1の定常領域ドメイン(CH1)のみを含む。単鎖抗体分子は、Ig Fv断片を含むタンパク質の単鎖を含む。Ig Fv断片は、その中に定常領域が含有されていない、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域のみを含む。scFv DNAを含むファージライブラリーは、Marksら(1991,J Mol Biol 222:581-597)に記載された手法に従って生成され得る。所望の抗体の単離のためのそのように生成されたファージのパニングは、Fab DNAを含むファージライブラリーについて記載されたものに類似した様式で実施される。
【0116】
本発明は、重鎖および軽鎖の可変領域がほぼ全ての特異性を含むよう合成され得る合成ファージディスプレイライブラリーも含むと解釈されるべきである(Barbas,1995,Nature Medicine 1:837-839;de Kruif et al.,1995,J Mol Biol 248:97-105)。
【0117】
本発明は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体等を包含する。本発明の抗体の重大な特色は、抗体がFGF19/FGF21および/またはβクロトーと特異的に結合することであることを、当業者は、本明細書中に提供された開示に基づき理解するであろう。
【0118】
さらにもう一つの局面において、本発明は、βクロトー、FGF19、および/またはFGF21を哺乳動物細胞の表面上に隔絶することができる可溶性構築物を提供する。
【0119】
ある種の態様において、本発明は、哺乳動物細胞の表面上のβクロトーに結合しそれを隔絶することができるFGF19ポリペプチドおよび/またはFGF21ポリペプチドを含む可溶性構築物を提供する。ある種の態様において、FGF21ポリペプチドは、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基169~209(FGF21CT)を含む。他の態様において、FGF19ポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基170~216(FGF19CT)を含む。FGF21CTまたはFGF19CTは、限定されるわけではないが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、または抗体のFc領域のような、限定されるわけではないが、安定性増強ドメインのような、別のポリペプチドと融合されていてもよい。ある種の態様において、FGF21CTまたはFGF19CTおよび安定性増強ドメインは、約1~18アミノ酸、1~17アミノ酸、1~16アミノ酸、1~15アミノ酸、1~14アミノ酸、1~13アミノ酸、1~12アミノ酸、1~11アミノ酸、1~10アミノ酸、1~9アミノ酸、1~8アミノ酸、1~7アミノ酸、1~6アミノ酸、1~5アミノ酸、1~4アミノ酸、1~3アミノ酸、1~2アミノ酸を含むポリペプチド、または単一アミノ酸を介して連結される。
【0120】
他の態様において、本発明は、FGF19および/またはFGF21に結合しそれを隔絶することができるβクロトーポリペプチドを含む可溶性構築物を提供する。ある種の態様において、βクロトーポリペプチドは、ヒトβクロトーの細胞外領域(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983)またはその断片を含む。他の態様において、ヒトβクロトーの細胞外領域の断片は、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基379~942を含む。βクロトーポリペプチドは、限定されるわけではないが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、または抗体のFc領域のような、限定されるわけではないが、安定性増強ドメインのような、別のポリペプチドと融合されていてもよい。ある種の態様において、βクロトーポリペプチドと安定性増強ドメインとは、1~18アミノ酸、1~17アミノ酸、1~16アミノ酸、1~15アミノ酸、1~14アミノ酸、1~13アミノ酸、1~12アミノ酸、1~11アミノ酸、1~10アミノ酸、1~9アミノ酸、1~8アミノ酸、1~7アミノ酸、1~6アミノ酸、1~5アミノ酸、1~4アミノ酸、1~3アミノ酸、1~2アミノ酸を含むポリペプチド、または単一アミノ酸を介して連結される。
【0121】
さらに他の態様において、本発明は、FGFRに結合することができるβクロトーポリペプチドを含む可溶性構築物を提供する。ある種の態様において、βクロトーポリペプチドは、ヒトβクロトーの細胞外領域(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基53~983)またはその断片を含む。他の態様において、ヒトβクロトーの細胞外領域の断片は、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基533~575を含む。βクロトーポリペプチドは、限定されるわけではないが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、または抗体のFc領域のような、限定されるわけではないが、安定性増強ドメインのような、別のポリペプチドに融合されていてもよい。ある種の態様において、βクロトーポリペプチドと安定性増強ドメインとは、1~18アミノ酸、1~16アミノ酸、1~14アミノ酸、1~12アミノ酸、1~10アミノ酸、1~8アミノ酸、1~6アミノ酸、1~5アミノ酸、1~4アミノ酸、1~3アミノ酸、1~2アミノ酸を含むポリペプチド、または単一アミノ酸を介して連結される。
【0122】
(b)本発明は野生型のFGF19および/またはFGF21よりも堅固にβクロトーに結合する組成物を提供する。
一つの局面において、本発明は、野生型のFGF19および/またはFGF21よりも堅固に、βクロトーに結合するFGF19ポリペプチドおよび/またはFGF21ポリペプチドを含む可溶性構築物を提供する。ある種の態様において、FGF19ポリペプチドは、C末端ドメインに変異を有する。ある種の態様において、FGF21ポリペプチドは、限定されるわけではないが、残基V188、R203、および/またはL194のようなC末端ドメインに変異を有する。他の態様において、FGF21ポリペプチドの変異は、V188を含む。さらに他の態様において、FGF21ポリペプチドの変異は、R203Wを含む。さらに他の態様において、FGF21ポリペプチドの変異は、L194Fを含む。FGF19ポリペプチドおよび/またはFGF21ポリペプチドは、限定されるわけではないが、アルブミン、チオレドキシン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、または抗体のFc領域のような、限定されるわけではないが、安定性増強ドメインのような、別のポリペプチドに融合されていてもよい。ある種の態様において、FGF19ポリペプチドおよび/またはFGF21ポリペプチドと安定性増強ドメインとは、1~18アミノ酸、1~16アミノ酸、1~14アミノ酸、1~12アミノ酸、1~10アミノ酸、1~8アミノ酸、1~6アミノ酸、1~5アミノ酸、1~4アミノ酸、1~3アミノ酸、1~2アミノ酸を含むポリペプチド、または単一アミノ酸を介して連結される。
【0123】
本発明の組成物に含まれる化合物は、酸との塩を形成することができ、そのような塩は本発明に含まれる。ある種の態様において、塩は、薬学的に許容される塩である。「塩」という用語には、本発明の方法において有用な遊離酸の付加塩が包含される。「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的適用における有用性を与える範囲内の毒性プロファイルを保有する塩をさす。にも関わらず、薬学的に許容されない塩は、本発明の実施における有用性、例えば、本発明の方法において有用な化合物の合成、精製、または製剤化の過程における有用性を有する、高い結晶度のような特性を保有している場合がある。
【0124】
適当な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製され得る。無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、およびリン酸が含まれる。適切な有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、アラリファティック(araliphatic)、複素環式、カルボン酸、およびスルホン酸のクラスの有機酸より選択され得、その例には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン(embonic)(パモ(pamoic))酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、βヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸、およびガラクツロン酸が含まれる。
【0125】
方法
一つの局面において、本発明は、それを必要とする対象において疾患または障害を処置または防止する方法を含む。
【0126】
ある種の態様において、方法は、FGF19および/またはFGF21および/またはFGFRと哺乳動物細胞の表面上のβクロトーとの結合を防止または最小化する治療的有効量の構築物を、対象へ投与する工程を含む。方法によって処置されるかまたは防止される疾患または障害の非限定的な例には、肝臓癌および結腸癌が含まれる。
【0127】
ある種の態様において、方法は、野生型のFGF19および/またはFGF21よりも堅固に、哺乳動物細胞の表面上のβクロトーに結合する治療的有効量の構築物を、対象へ投与する工程を含む。方法によって処置されるかまたは防止される疾患または障害の非限定的な例には、肥満、糖尿病、膵炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が含まれる。
【0128】
ある種の態様において、構築物は、組換えペプチドおよび/または抗体ならびにそれらの組み合わせを含む。他の態様において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、合成抗体、重鎖抗体、ヒト抗体、抗体の生物活性断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の抗体が含まれる。さらに他の態様において、対象は、哺乳動物である。さらに他の態様において、哺乳動物は、ヒトである。さらに他の態様において、構築物は、吸入、経口、直腸、膣、非経口、頭蓋内、局所、経皮、肺、鼻腔内、頬側、眼、くも膜下腔内、および静脈内からなる群より選択される投与ルートによって投与される。
【0129】
ある種の態様において、対象は、疾患および/または障害を処置する少なくとも1種の付加的な薬物をさらに投与される。他の態様において、構築物および少なくとも1種の付加的な薬物は、同時投与される。さらに他の態様において、構築物および少なくとも1種の付加的な薬物は、共製剤化される。
【0130】
組み合わせ治療
本明細書中に記載された方法を使用して同定された化合物および組成物は、本明細書中で企図された疾患または障害を処置するために有用な1種または複数種の付加的な化合物と組み合わせられて、本発明の方法において有用である。これらの付加的な化合物には、本明細書中で同定された化合物、または本明細書中で企図された疾患または障害の症状を処置するか、防止するか、もしくは低下させることが公知の化合物、例えば、市販の化合物が含まれる。
【0131】
相乗効果は、例えば、S字形Emax方程式(Holford & Scheiner,19981,Clin.Pharmacokinet.6:429-453)、Loewe相加性の方程式(Loewe & Muischnek,1926,Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313-326)、およびメジアン効果方程式(Chou & Talalay,1984,Adv.Enzyme Regul.22:27-55)のような適当な方法を使用して、例えば、計算され得る。薬物の組み合わせの効果の査定を助ける対応するグラフを生成するため、上述の各方程式を、実験データに適用することができる。上述の方程式に関連した対応するグラフは、それぞれ、濃度効果曲線、アイソボログラム曲線、および組み合わせインデックス曲線である。
【0132】
薬学的組成物および製剤
本発明には、本発明の方法を実施するための本発明の薬学的組成物の使用も包含される。
【0133】
そのような薬学的組成物は、対象への投与のために適当な形態で提供され得、1種または複数種の薬学的に許容される担体、1種または複数種の付加的な成分、またはこれらの何らかの組み合わせを含んでいてよい。本発明の組成物は、当技術分野において周知であるように、生理学的に許容される陽イオンまたは陰イオンと組み合わせられた本発明において企図された化合物のような生理学的に許容される塩を含んでいてよい。
【0134】
ある種の態様において、本発明の方法の実施のために有用な薬学的組成物は、1ng/kg/日~100mg/kg/日の用量を送達するために投与され得る。他の態様において、本発明の実施のために有用な薬学的組成物は、1ng/kg/日~500mg/kg/日の用量を送達するために投与され得る。
【0135】
本発明の薬学的組成物の中の活性成分、薬学的に許容される担体、および付加的な成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズ、および状態に依り、さらに、組成物が投与されるルートに依って変動するであろう。例えば、組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0136】
本発明の方法において有用な薬学的組成物は、吸入、経口、直腸、膣、非経口、局所、頭蓋内、経皮、肺、鼻腔内、頬側、眼、くも膜下腔内、静脈内、または別の投与ルートのため、適当に開発され得る。他の企図される製剤には、射出ナノ粒子、リポソーム調製物、活性成分を含有している再封鎖赤血球、および免疫学に基づく製剤が含まれる。投与ルートは、当業者に容易に明白であり、処置される疾患の型および重症度、処置される動物またはヒト患者の型および年齢等を含む多数の因子に依るであろう。
【0137】
本明細書中に記載された薬学的組成物の製剤は、薬理学分野において公知であるかまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、そのような調製の方法は、活性成分を担体または1種もしくは複数種の他の補助成分と合わせる工程、次いで、必要であるかまたは望ましい場合、産物を所望の単一用量単位または多用量単位へ成形するかまたはパッケージングする工程を含む。
【0138】
本明細書中で使用されるように、「単位用量」とは、予め決定された量の活性成分を含む薬学的組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般に、対象へ投与される活性成分の投薬量、または、例えば、そのような投薬量の2分の1または3分の1のような、そのような投薬量の便利な画分と等しい。単位剤形は、1日1回の用量または1日複数回(例えば、1日約1~4回もしくはそれ以上)のうちの1回のためのものであり得る。1日複数回が使用される場合、単位剤形は、各回について同一であってもよいしまたは異なっていてもよい。
【0139】
本明細書中に提供される薬学的組成物の説明は、ヒトへの倫理的な投与のために適当な薬学的組成物に主に向けられているが、そのような組成物は、一般に、全ての種類の動物への投与のために適当であることが、当業者によって理解されるであろう。組成物を様々な動物への投与のために適当なものにするための、ヒトへの投与のために適当な薬学的組成物の修飾は、十分に理解されており、通常の技術を有する獣医薬理学者であれば、実験が必要であるとしても、通常の実験のみによって、そのような修飾を設計し、実施することができる。本発明の薬学的組成物の投与が企図される対象には、ヒトおよびその他の霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、およびイヌのような商業的に重要な哺乳動物を含む哺乳動物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0140】
ある種の態様において、本発明の組成物は、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または担体を使用して製剤化される。ある種の態様において、本発明の薬学的組成物は、治療的有効量の少なくとも1種の本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む。
【0141】
製剤は、当技術分野において公知の、経口、非経口、鼻、静脈内、皮下、経腸、またはその他の適当な投与モードのために適当な、従来の賦形剤、即ち、薬学的に許容される有機または無機の担体物質と混合されて利用され得る。薬学的調製物は、滅菌され、所望により、補助剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色剤、風味剤、および/または芳香剤等と混合され得る。それらは、所望により、他の活性薬剤、例えば、他の鎮痛剤と組み合わせられてもよい。
【0142】
本明細書中で使用されるように、「付加的な成分」には、以下のもののうちの1種または複数種が含まれるが、これらに限定されるわけではない:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;風味剤;着色剤;保存剤;ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物;水性の媒体および溶媒;油性の媒体および溶媒;懸濁化剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;増量剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;ならびに薬学的に許容されるポリマー性または疎水性の材料。本発明の薬学的組成物に含まれ得るその他の「付加的な成分」は、当技術分野において公知であり、例えば、参照によって本明細書中に組み入れられるGenaro,ed.(1985,Remington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA)に記載されている。
【0143】
液体懸濁物は、水性または油性の媒体への活性成分の懸濁を達成するための従来の方法を使用して調製され得る。水性媒体には、例えば、水および等張生理食塩水が含まれる。油性媒体には、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油のような植物油、分画された植物油、および流動パラフィンのような鉱油が含まれる。液体懸濁物は、懸濁化剤、分散剤または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存剤、緩衝剤、塩、風味剤、着色剤、および甘味剤を含むが、これらに限定されるわけではない、1種または複数種の付加的な成分をさらに含んでいてもよい。油性懸濁物は、さらに増粘剤を含んでいてもよい。公知の懸濁化剤には、ソルビトールシロップ、水素化食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガム、アラビアゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の分散剤または湿潤剤には、レシチンのような天然に存在するホスファチド、アルキレンオキシドの脂肪酸との縮合生成物、長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、または脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、それぞれ、ポリオキシエチレンステアレート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の乳化剤には、レシチンおよびアラビアゴムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の保存剤には、メチルパラヒドロキシ安息香酸、エチルパラヒドロキシ安息香酸、またはn-プロピルパラヒドロキシ安息香酸、アスコルビン酸、およびソルビン酸が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の甘味剤には、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、ショ糖、およびサッカリンが含まれる。油性懸濁物の公知の増粘剤には、例えば、ミツロウ、固形パラフィン、およびセチルアルコールが含まれる。
【0144】
本発明の薬学的調製物の粉末状および顆粒状の製剤は、公知の方法を使用して調製され得る。そのような製剤は、対象へ直接投与されてもよいし、例えば、錠剤を形成するため、カプセルに充填するため、または水性もしくは油性の媒体の添加によって水性もしくは油性の懸濁液もしくは溶液を調製するため、使用されてもよい。これらの製剤の各々は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および保存剤のうちの1種または複数種をさらに含んでいてもよい。増量剤および甘味剤、風味剤、または着色剤のような付加的な賦形剤も、これらの製剤に含まれていてよい。
【0145】
本発明の薬学的組成物は、水中油型乳濁液または油中水型乳濁液の形態で調製されるか、パッケージングされるか、または販売されてよい。油相は、オリーブ油もしくはラッカセイ油のような植物油、流動パラフィンのような鉱油、またはこれらの組み合わせであり得る。そのような組成物は、アラビアゴムまたはトラガントガムのような天然に存在するゴムのような1種または複数種の乳化剤、ダイズホスファチドまたはレシチンホスファチドのような天然に存在するホスファチド、脂肪酸およびソルビタンモノオレエートのようなヘキシトール無水物の組み合わせに由来するエステルまたは部分エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートのようなエチレンオキシドとのそのような部分エステルの縮合生成物をさらに含んでいてよい。これらの乳濁液は、例えば、甘味剤または風味剤を含む付加的な成分を含有していてもよい。
【0146】
化学的組成物によって材料を含浸させるかまたはコーティングする方法は、当技術分野において公知であり、化学的組成物を表面に沈着させるかまたは結合させる方法、(即ち、生理学的に分解可能な材料のような)材料の合成中に材料の構造へ化学的組成物を組み入れる方法、および水性または油性の溶液または懸濁物を吸収材料へ吸収させ、その後、乾燥させるかまたは乾燥させない方法を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0147】
投与/投薬
投与の計画は、有効量を構成するものに影響し得る。治療用製剤は、疾患または状態に関連した症状の顕在化の前または後のいずれかに、患者へ投与され得る。さらに、いくつかの分割された投薬量および時差的な投薬量が、毎日もしくは連続的に投与されてもよいし、または用量は、連続注入されてもよいし、もしくはボーラス注射であってもよい。さらに、治療用製剤の投薬量は、治療的または予防的な状況の緊急性によって示されるように、比例して増加させられるかまたは減少させられてもよい。
【0148】
患者、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトへの本発明の組成物の投与は、患者において疾患または状態を処置するために有効な投薬量および期間で、公知の手法を使用して実施され得る。治療効果を達成するために必要な治療用化合物の有効量は、利用される具体的な化合物の活性;投与の時間;化合物の排出の速度;処置の継続時間;化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、または材料;疾患または障害の状態、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康状態、および過去の病歴等の医学分野において周知の因子によって変動し得る。投薬計画は、最適の治療的応答を提供するために調整され得る。例えば、いくつかの分割された用量を毎日投与してもよいし、または治療状況の緊急性によって示されるように、比例して用量を低下させてもよい。本発明の治療用化合物の有効な用量範囲の非限定的な例は、約0.01~50mg/kg体重/日である。当業者は、過度の実験なしに、関連要因を研究し、治療用化合物の有効量に関する決定を行うことができるであろう。
【0149】
化合物は、1日に数回のような頻度で動物へ投与されてもよいし、または1日に1回、週に1回、2週間に1回、月に1回のようなより低い頻度で、または数ヶ月に1回、さらには、1年に1回もしくはそれ以下のようなさらに低い頻度で投与されてもよい。1日に投薬される化合物の量は、非限定的な例において、毎日、隔日、2日毎、3日毎、4日毎、または5日毎に投与されてもよいことが理解される。例えば、隔日投与の場合、1日当たり5mgの用量が月曜日に開始され、1日当たり5mgの1回目の後続用量が水曜日に投与され、1日当たり5mgの2回目の後続用量が金曜日に投与され、その後も同様であり得る。投薬の頻度は、当業者に容易に明白であり、以下に限定されるわけではないが、処置される疾患の型および重症度、動物の型および年齢等のような多数の因子に依るであろう。
【0150】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者にとって毒性であることなく、特定の患者、組成物、および投与のモードについて、所望の治療的応答を達成するために有効な活性成分の量を入手するため、変動し得る。
【0151】
当技術分野における通常の技術を有する医師、例えば、内科医または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、内科医または獣医は、薬学的組成物中に利用される本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるものより低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで、投薬量を徐々に増加させることができる。
【0152】
具体的な態様において、投与の容易さおよび投薬量の均一性のため、投薬単位形態で化合物を製剤化することは、特に有利である。投薬単位形態とは、本明細書中で使用されるように、処置される患者のための単位投薬量として適した物理的に不連続の単位をさし;各単位は、必要とされる薬学的媒体と共に、所望の治療効果を生じるよう計算された、予め決定された量の治療用化合物を含有している。本発明の投薬単位形態は、(a)治療用化合物の独特の特徴および達成される特定の治療効果、ならびに(b)患者における癌の処置のためのそのような治療用化合物の調合/製剤化の分野における固有の限界によって指示され、それらに直接依存する。
【0153】
ある種の態様において、本発明の組成物は、1日1~5回またはそれ以上の範囲の投薬量で患者へ投与される。他の態様において、本発明の組成物は、1日に1回、2日に1回、3日に1回~週に1回および2週間に1回を含むが、これらに限定されるわけではない範囲の投薬量で患者へ投与される。本発明の様々な組み合わせ組成物の投与の頻度は、年齢、処置される疾患または障害、性別、全体的な健康、およびその他の因子を含むが、これらに限定されるわけではない多くの因子に依って、対象によって変動することが、当業者には容易に明白であろう。したがって、本発明は、特定の投薬計画に限定されると解釈されるべきでなく、患者へ投与される正確な投薬量および組成物は、患者に関する他の全ての因子を考慮して、主治医によって決定されるであろう。
【0154】
投与のための本発明の化合物は、約1μg~約7,500mg、約20μg~約7,000mg、約40μg~約6,500mg、約80μg~約6,000mg、約100μg~約5,500mg、約200μg~約5,000mg、約400μg~約4,000mg、約800μg~約3,000mg、約1mg~約2,500mg、約2mg~約2,000mg、約5mg~約1,000mg、約10mg~約750mg、約20mg~約600mg、約30mg~約500mg、約40mg~約400mg、約50mg~約300mg、約60mg~約250mg、約70mg~約200mg、約80mg~約150mg、およびそれらの間の完全または部分的な任意の全ての増量であり得る。
【0155】
いくつかの態様において、本発明の化合物の用量は、約0.5μg~約5,000mgである。いくつかの態様において、本明細書中に記載された組成物において使用される本発明の化合物の用量は、約5,000mg未満または約4,000mg未満または約3,000mg未満または約2,000mg未満または約1,000mg未満または約800mg未満または約600mg未満約500mg未満または約200mg未満または約50mg未満である。同様に、いくつかの態様において、本明細書中に記載される第2の化合物の用量は、約1,000mg未満または約800mg未満または約600mg未満または約500mg未満または約400mg未満または約300mg未満または約200mg未満または約100mg未満または約50mg未満または約40mg未満または約30mg未満または約25mg未満または約20mg未満または約15mg未満または約10mg未満または約5mg未満または約2mg未満または約1mg未満または約0.5mg未満、およびそれらの間の完全または部分的な任意の全ての増量である。
【0156】
ある種の態様において、本発明は、単独でまたは第2の薬学的薬剤と組み合わせて治療的有効量の本発明の化合物を保持する容器;および患者における疾患または障害の1つまたは複数の症状を処置するか、防止するか、または低下させるために化合物を使用するための説明書を含むパッケージングされた薬学的組成物に関する。
【0157】
「容器」という用語には、薬学的組成物を保持するための任意の入れ物が含まれる。例えば、ある種の態様において、容器は、薬学的組成物を含有しているパッケージングである。他の態様において、容器は、薬学的組成物を含有しているパッケージングではなく、即ち、容器は、パッケージングされた薬学的組成物またはパッケージングされていない薬学的組成物と、薬学的組成物の使用説明書とを含有しているボックスまたはバイアルのような入れ物である。さらに、パッケージング技術は、当技術分野において周知である。薬学的組成物の使用説明書は、薬学的組成物を含有しているパッケージングに含有されていてもよく、したがって、説明書は、パッケージングされた生成物との増加した機能的関係を形成することが理解されるべきである。しかしながら、説明書は、その意図された機能、例えば、患者における疾患または障害の処置、防止、または低下を実施する化合物の能力に関係する情報を含有していてよいことが、理解されるべきである。
【0158】
投与ルート
本発明の組成物の投与ルートには、吸入、経口、鼻、直腸、非経口、舌下、経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)頬側、(経)尿道、膣(例えば、経膣および膣周囲)、鼻腔(内)、ならびに(経)直腸)、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、くも膜下腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入、頭蓋内、ならびに局所の投与が含まれる。
【0159】
適当な組成物および剤形には、例えば、経鼻投与または経口投与のための錠剤、カプセル、カプレット、丸薬、ゲルカプセル、トローチ、分散物、懸濁物、溶液、シロップ、顆粒、ビーズ、経皮パッチ、ゲル、粉末、ペレット、マグマ、ロゼンジ、クリーム、ペースト、膏薬、ローション、ディスク、坐薬、液体スプレー、吸入のための乾燥粉末またはエアロゾル製剤、膀胱内投与のための組成物および製剤等が含まれる。本発明において有用な製剤および組成物は、本明細書中に記載される具体的な製剤および組成物に限定されないことが理解されるべきである。
【0160】
経口投与
経口適用のために特に適当であるのは、錠剤、糖衣錠、液体、ドロップ、坐薬、またはカプセル、カプレット、およびゲルカプセルである。経口投与のために適当な他の製剤には、粉末状もしくは顆粒状の製剤、水性もしくは油性の懸濁物、水性もしくは油性の溶液、ペースト、ゲル、歯磨き剤、口内洗浄液、コーティング、含嗽剤、または乳濁液が含まれるが、これらに限定されるわけではない。経口使用のための組成物は、当技術分野において公知のいずれかの方法によって調製され得、そのような組成物は、錠剤の製造のために適当な不活性の無毒の薬学的賦形剤からなる群より選択される1種または複数種の薬剤を含有していてよい。そのような賦形剤には、例えば、乳糖のような不活性希釈剤;コーンスターチのような造粒剤および崩壊剤;デンプンのような結合剤;ならびにステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤が含まれる。
【0161】
錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、または対象の胃腸管における崩壊の遅延を達成し、それによって、活性成分の徐放および吸収を提供するため、公知の方法を使用してコーティングされていてもよい。例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートのような材料が、錠剤をコーティングするために使用され得る。さらに、例えば、錠剤は、浸透圧性放出制御錠剤を形成するため、米国特許第4,256,108号;第4,160,452号;および第4,265,874号に記載された方法を使用してコーティングされてもよい。錠剤は、薬学的に上質で快適な調製物を提供するため、甘味剤、風味剤、着色剤、保存剤、またはこれらの何らかの組み合わせをさらに含んでいてよい。
【0162】
活性成分を含む硬カプセルは、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作成され得る。そのような硬カプセルは、活性成分を含み、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンのような不活性の固体希釈剤を含む付加的な成分をさらに含んでいてもよい。
【0163】
活性成分を含む軟ゼラチンカプセルは、ゼラチンのような生理学的に分解可能な組成物を使用して作成され得る。そのような軟カプセルは、水、またはピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油のような油性媒体と混合されていてよい活性成分を含む。
【0164】
経口投与のための本発明の化合物は、結合剤;増量剤;滑沢剤;崩壊剤;または湿潤剤のような薬学的に許容される賦形剤と共に、従来の手段によって調製された錠剤またはカプセルの形態であり得る。所望により、錠剤は、適当な方法、ならびにColorcon(West Point,Pa.)から入手可能なOPADRY(商標)フィルムコーティング系(例えば、OPADRY(商標)OY型、OYC型、有機腸溶性OY-P型、水性腸溶性OY-A型、OY-PM型、およびOPADRY(商標)ホワイト、32K18400)のようなコーティング材料を使用してコーティングされていてよい。
【0165】
経口投与のための液体調製物は、溶液、シロップ、または懸濁液の形態であり得る。液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、またはエチルアルコール);および保存剤(例えば、パラヒドロキシ安息香酸メチルもしくはパラヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)のような薬学的に許容される添加剤を用いて、従来の手段によって調製され得る。経口投与のために適当な本発明の薬学的組成物の液体製剤は、液体の形態で、または使用前に水もしくは他の適当な媒体によって再生するための乾燥生成物の形態で、調製され、パッケージングされ、販売され得る。
【0166】
例えば、活性成分を含む錠剤は、任意で、1種または複数種の付加的な成分と共に、活性成分を圧縮するかまたは成型することによって作成され得る。圧縮錠は、任意で、結合剤、滑沢剤、賦形剤、界面活性剤、および分散剤のうちの1種または複数種と混合された、粉末状または顆粒状の調製物のような、流動性の形態の活性成分を、適当なデバイスにおいて圧縮することによって調製され得る。成型錠は、活性成分と、薬学的に許容される担体と、混合物を湿らせるために少なくとも十分な液体との混合物を、適当なデバイスにおいて成形することによって作成され得る。錠剤の製造において使用される薬学的に許容される賦形剤には、不活性の希釈剤、造粒剤および崩壊剤、結合剤、ならびに滑沢剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の分散剤には、ジャガイモデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、結晶セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の造粒剤および崩壊剤には、コーンスターチおよびアルギン酸が含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の結合剤には、ゼラチン、アラビアゴム、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれるが、これらに限定されるわけではない。公知の滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、およびタルクが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0167】
活性成分の出発粉末またはその他の微粒子材料を修飾するための造粒技術は、薬学分野において周知である。粉末は、典型的には、結合剤材料と混合され、より大きく永久に流動性の集塊物または顆粒にされ、それが「造粒」と呼ばれる。例えば、溶媒を使用した「湿式」造粒法は、一般に、粉末を結合剤材料と組み合わせ、湿った顆粒状の塊の形成をもたらす条件の下で、水または有機溶媒によって湿らせ、次いで、溶媒をそれから蒸発させなければならないことを特徴とする。
【0168】
一般に、溶融造粒は、本質的に、水またはその他の液体溶媒の添加の非存在下で、粉末またはその他の材料の造粒を促進するための、室温で固体または半固体である(即ち、比較的低い軟化または溶融の範囲を有する)材料の使用からなる。低融点固体は、融点範囲の温度に加熱された場合、液体化されて結合剤または造粒媒体として作用する。液体化された固体は、接触した粉末材料の表面上に広がり、冷却時に、最初の材料が共に結合した固体の顆粒状の塊を形成する。次いで、得られた溶融造粒物は、経口剤形を調製するため、錠剤プレスに供給されてもよいし、またはカプセル化されてもよい。溶融造粒は、固体分散物または固溶体を形成することによって、活性体(即ち、薬物)の溶解速度および生物学的利用能を改善する。
【0169】
米国特許第5,169,645号は、改善された流動特性を有する直接圧縮可能なロウ含有顆粒を開示している。ロウを、ある種の流動改善添加剤と溶融混合し、続いて、混合物を冷却し造粒した場合、顆粒が入手される。ある種の態様において、ロウおよび添加剤の溶融組み合わせの中のロウ自体のみが溶融し、他のケースにおいて、ロウおよび添加剤の両方が溶融する。
【0170】
本発明は、本発明の方法において有用な1種または複数種の化合物の遅延放出を提供する層と、本発明の方法において有用な1種または複数種の化合物の即時放出を提供するさらなる層とを含む多層錠剤も含む。活性成分が捕捉されており、その遅延放出を確実にする胃不溶性組成物を、ロウ/pH感受性ポリマーの混合物を使用して入手することができる。
【0171】
非経口投与
本明細書中で使用されるように、薬学的組成物の「非経口投与」には、対象の組織の物理的な突破および組織内の突破口を通した薬学的組成物の投与を特徴とする投与ルートが含まれる。したがって、非経口投与には、組成物の注射、外科的切開を通した組成物の適用、組織を穿通する非外科的な創傷を通した組成物の適用等による薬学的組成物の投与が含まれるが、これらに限定されるわけではない。具体的には、非経口投与には、皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、および腎臓透析注入技術が含まれるが、これらに限定されるわけではないことが企図される。
【0172】
非経口投与のために適当な薬学的組成物の製剤は、滅菌水または無菌の等張生理食塩水のような薬学的に許容される担体と組み合わせられた活性成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与または連続投与のために適当な形態で、調製され、パッケージングされ、または販売され得る。注射可能製剤は、アンプルまたは保存剤を含有している多用量容器のような単位剤形で、調製され、パッケージングされ、または販売され得る。非経口投与用の製剤には、懸濁物、溶液、油性または水性の媒体による乳濁液、ペースト、および植え付け可能な徐放性または生分解性の製剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。そのような製剤は、懸濁化剤、安定剤、または分散剤を含むが、これらに限定されるわけではない1種または複数種の付加的な成分をさらに含んでいてもよい。非経口投与用の製剤の一つの態様において、活性成分は、適当な媒体(例えば、無菌の発熱物質不含水)によって再生した後、再生された組成物を非経口投与するため、乾燥(即ち、粉末状または顆粒状の)形態で提供される。
【0173】
薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁物または溶液の形態で、調製され、パッケージングされ、または販売され得る。この懸濁物または溶液は、公知の技術によって製剤化され得、活性成分に加えて、本明細書中に記載された分散剤、湿潤剤、または懸濁化剤のような付加的な成分を含み得る。そのような無菌の注射可能製剤は、例えば、水または1,3-ブタンジオールのような無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を使用して調製され得る。その他の許容される希釈剤および溶媒には、リンゲル液、等張塩化ナトリウム水溶液、および合成のモノグリセリドまたはジグリセリドのような不揮発性油が含まれるが、これらに限定されるわけではない。有用であるその他の非経口投与可能製剤には、活性成分を、微晶質の形態で、リポソーム調製物で、または生分解性ポリマー系の成分として含むものが含まれる。徐放または植え込みのための組成物は、乳濁液、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩のような、薬学的に許容されるポリマー性または疎水性の材料を含んでいてよい。
【0174】
付加的な投与形態
本発明の付加的な剤形には、米国特許第6,340,475号、第6,488,962号、第6,451,808号、第5,972,389号、第5,582,837号、および第5,007,790号に記載されるような剤形が含まれる。本発明の付加的な剤形には、米国特許出願第20030147952号、第20030104062号、第20030104053号、第20030044466号、第20030039688号、および第20020051820号に記載される剤形も含まれる。本発明の付加的な剤形には、PCT出願WO 03/35041、WO 03/35040、WO 03/35029、WO 03/35177、WO 03/35039、WO 02/96404、WO 02/32416、WO 01/97783、WO 01/56544、WO 01/32217、WO 98/55107、WO 98/11879、WO 97/47285、WO 93/18755、およびWO 90/11757に記載される剤形も含まれる。
【0175】
放出制御製剤および薬物送達系
本発明の薬学的組成物の放出制御製剤または徐放性製剤は、従来のテクノロジーを使用して作成され得る。いくつかのケースにおいて、使用される剤形は、変動する割合の所望の放出プロファイルを提供するため、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、その他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、もしくはマイクロスフェア、またはそれらの組み合わせを使用して、その中の1種または複数種の活性成分の徐放または放出制御として提供され得る。本明細書中に記載されたものを含む、本発明の薬学的組成物と共に使用するために適当な、当業者に公知の放出制御製剤は、容易に選択され得る。したがって、放出制御に適応する錠剤、カプセル、ゲルカプセル、およびカプレットのような経口投与のために適当な単一単位剤形が、本発明に包含される。
【0176】
大部分の放出制御薬学的生成物は、非制御カウンターパートによって達成されるものより薬物治療を改善するという一般的な目標を有する。理想的には、医学的処置における最適に設計された放出制御調製物の使用は、最小の時間量で状態を治療するかまたは管理するため、最小の薬物物質が利用されることを特徴とする。放出制御製剤の利点には、薬物の活性の延長、投薬頻度の低下、および患者コンプライアンスの増加が含まれる。さらに、放出制御製剤は、作用の開始時間、または薬物の血中レベルのようなその他の特徴に影響を与えるために使用され得、したがって、副作用の発生率に影響を与えることができる。
【0177】
大部分の放出制御製剤は、所望の治療効果を迅速に生じる量の薬物を初期に放出し、治療効果のこのレベルを長期間にわたり維持するため、他の量の薬物を徐々に継続的に放出するよう設計される。この一定の体内薬物レベルを維持するため、薬物は、代謝され身体から排出される薬物の量を補充する速度で、剤形から放出されなければならない。
【0178】
活性成分の放出制御は、様々な誘導因子、例えば、pH、温度、酵素、水、もしくはその他の生理学的条件、または化合物によって刺激され得る。「放出制御成分」という用語は、本発明の情況において、活性成分の放出制御を容易にするポリマー、ポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、リポソーム、もしくはマイクロスフェア、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるわけではない化合物として、本明細書中で定義される。
【0179】
ある種の態様において、本発明の製剤は、短期製剤、ラピッドオフセット(rapid-offset)製剤、ならびに放出制御製剤、例えば、徐放性製剤、遅延放出製剤、およびパルス放出製剤であり得るが、これらに限定されるわけではない。
【0180】
徐放という用語は、長期間にわたり薬物の徐々の放出を提供し、必ずではないが、長期間にわたり実質的に一定の血中薬物レベルをもたらし得る薬物製剤をさすため、その従来の意味で使用される。期間は、1ヶ月またはそれ以上のような長さであってよく、ボーラスの形態で投与された同一の量の薬剤より長い放出であるべきである。
【0181】
徐放のための化合物は、徐放特性を化合物に提供する適当なポリマーまたは疎水性材料を用いて製剤化され得る。したがって、本発明の方法において使用するための化合物は、例えば、注射によって、微粒子の形態で投与されてもよいし、または植え込みによってウエハもしくはディスクの形態でされてもよい。
【0182】
本発明の好ましい態様において、本発明の化合物は、徐放性製剤を使用して、単独でまたは別の薬学的薬剤と組み合わせられて、患者へ投与される。
【0183】
遅延放出という用語は、薬物投与後にいくらかの遅延の後に薬物の初期放出を提供し、必ずではないが、約10分~約12時間の遅延を含む薬物製剤をさすため、その従来の意味で、本明細書中で使用される。
【0184】
パルス放出という用語は、薬物投与後に薬物のパルス状の血漿プロファイルを生じるような薬物の放出を提供する薬物製剤をさすため、その従来の意味で、本明細書中で使用される。
【0185】
即時放出という用語は、薬物投与の直後に薬物の放出を提供する薬物製剤をさすため、その従来の意味で使用される。
【0186】
本明細書中で使用されるように、短期とは、薬物投与後の約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分までの期間、およびそれらの全ての任意の完全または部分的な増量をさす。
【0187】
本明細書中で使用されるように、ラピッドオフセットとは、薬物投与後の約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分までの期間、およびそれらの全ての任意の完全または部分的な増量をさす。
【0188】
当業者は、ルーチンの実験のみを使用して、本明細書中に記載された具体的な手法、態様、請求項、および例の多数の等価物を認識するか、または確認することができる。そのような等価物は、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によってカバーされると見なされた。例えば、当技術分野において認識されている代替法による、ルーチンの実験のみを使用した、反応およびアッセイ条件の修飾は、本願の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0189】
本明細書中に値および範囲が提供される場合には常に、これらの値および範囲に包含される全ての値および範囲が、本発明の範囲内に包含されるものとすることが理解されるべきである。さらに、これらの範囲内にある全ての値、ならびに値の範囲の上限または下限も、本願によって企図される。
【0190】
以下の実施例は、本発明の局面をさらに例示する。しかしながら、それらは、本明細書中に示される本発明の教示または開示を限定するものでは決してない。
【実施例
【0191】
本発明を以下の実施例に関して記載する。これらの実施例は、例示目的で提供されるに過ぎず、本発明は、これらの実施例に限定されず、本明細書中に提供される教示の結果として明白である全ての変動を包含する。
【0192】
材料および方法:
他に注記されない限り、全ての出発材料を、商業的な供給元から入手し、精製なしに使用した。
【0193】
以下の資源を本明細書中で使用した。
【0194】
抗体:抗FGFR1抗体、ウサギポリクローナル(Bae et al.,2009,Cell 138:514-524);抗βクロトー抗体、R&D Systems(Ref.AF5889);抗ホスホチロシン4G10、Millipore、D5-1050。
【0195】
細菌株およびウイルス株:BL21-Gold(DE3)コンピテント細胞、Agilent Technologies(Ref.230132)。
【0196】
化学物質、ペプチド、および組換えタンパク質:DMEM、Thermo Fisher(Ref.11965092);ウシ胎仔血清、Thermo Fisher(Ref.10437-028);ペニシリン-ストレプトマイシン、Thermo Fisher(Ref.15140-122);ジェネテシン、G-418、AmericanBio(Ref.AB05058-00020);リポフェクタミン2000、Thermo Fisher(Ref.11668019);ハイグロマイシンB、Thermo Fisher(Ref.10687010);Completeプロテアーゼインヒビターカクテル、Roche(Ref.11836145001);スウェインソニン、Cayman Chemical(Ref.16860);硫酸カナマイシン、Americanbio(Ref.AB01100-00010);アンピシリンナトリウム塩、Americanbio(Ref.AB00115-00010);イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)、Americanbio(Ref.AB00841-00010);PEG 1,000、Hampton Research(Ref.HR2-523);PEG 4,000、Hampton Research(Ref.HR2-529)。
【0197】
細胞株:HEK293 EBNA、ATCC(Ref.CRL-10852);WT-FGFR1を発現するL6筋芽細胞(Bae et al.,2009,Cell 138:514-524);WT-FGFR1を発現するL6筋芽細胞(Bae et al.,2009,Cell 138:514-524)。
【0198】
組換えDNA:pCEP4ベクター、Thermo Fisher(Ref.V04450);pBabeベクター、AddGene;pET28bベクター、Novagen(Ref.69864-3);pGEX-4T-1ベクター、GE Healthcare(Ref.28-9545-49)。
【0199】
ソフトウェアおよびアルゴリズム:HKL2000;Otwinowski & Minor,1997,Methods Enzymol.276:307-326(www dot hklxray dot com);XDS、Kabsch,2010,Xds.Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.66:125-132(xds dot mpimfheidelberg dot mpg dot de);Phenix、Adams et al.,2010,Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.66:213-221(www dot phenixonline dot org);PHASER、McCoy et al.,2007,J.Appl.Crystallogr.40:658-674(www dot ccp4 dot ac dot uk);Coot、Emsley et al.,2010,Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.66:486-501(www2 dot mrclmb dot cam dot ac dot uk/personal/pemsley/coot);PyMol、Schrodinger LLC(www dot pymol dot org);MO.Affinity Analysis、NanoTemper(Ref.MO-S001A)。
【0200】
その他:Hyperflask M、Corning(Ref.10030);EmultiFlex-C3、Avestin(Ref.EmultiFlex-C3);Ni-NTAアガロース、Qiagen(Ref.30210);グルタチオンセファロース4B、GE Healthcare(Ref.17-0756-01);Rec-プロテインA-セファロース4B、Thermo Fisher(Ref.101142);Monolith NT.115Pico Instrument、NanoTemper(Ref.MO-G006);Mosquito Crystal、TTP Labtech(Ref.Mosquito Crystal);Rock Imager 1000、Formulatrix(Ref.Rock Imager 1000)。
【0201】
プラスミド構築:
タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位およびGly残基4個のリンカーと共にヒトβクロトー(KLB)のアミノ酸残基30~983(sKLB)をコードするcDNA領域を増幅した。得られた配列を、ヒトIgG1のFc領域の配列を含有している修飾型pCEP4ベクター(Thermo Fisher Scientific Inc.)へサブクローニングした。C末端HAタグ付きKLBの発現ベクターは、全長KLBの遺伝子をHAタグ配列と共にpBABEベクターへサブクローニングすることによって生成された。KLB変異体の全てのプラスミドが、WT C末端HAタグ付きKLBを含有しているプラスミドを使用して、標準的な部位特異的変異誘発プロトコルによって生成された。
【0202】
哺乳動物細胞発現系を使用したタンパク質発現:
HEK293-EBNA細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン、および250μg/mL G-418を含有しているDMEM(Thermo Fisher Scientific Inc.)において、37℃の5%CO2を含む加湿されたインキュベーターにおいて培養した。プラスミドを、リポフェクタミン2000(Thermo Fisher Scientific Inc.)によってHEK293-EBNA細胞へトランスフェクトし、2~3週間、200μg/mLのハイグロマイシンB(Thermo Fisher Scientific Inc.)による処理によって選択した。sKLB-Fcを安定的に発現する細胞を、Hyperflask(Corning Inc.)において増大させ、細胞コンフルエンシーが約70%に到達した場合、培地を、5%FBSを含むDMEMに交換した。7日後に、5,000×gでの遠心分離および0.2μm膜によるろ過の後に培地を収集した。さらに、結晶化のためのタンパク質を調製するために使用された培養細胞の培地に、15μMスウェインソニン(Cayman Chemical)を添加した。
【0203】
sKLBおよびKLBD1の精製:
sKLB-Fcを発現する細胞から採集された培地を、4℃で一晩、組換えプロテインAセファロース4B(Thermo Fisher Scientific Inc.)と共にインキュベートした。樹脂を50カラム体積のPBSで洗浄し、0.1MグリシンHCl、pH3.5を使用してタンパク質を樹脂から溶出させ、直ちに0.1Mトリス、pH7.4によって中和した。溶出したタンパク質を、C末端Fcタグを切断するため、室温で2時間、組換えTEVプロテアーゼと共にインキュベートし、その後、Fcタグおよび未消化のタンパク質を除去するため、4℃で30分間、組換えプロテインAセファロース4Bと共にインキュベートした。次いで、pH7.0(sKLBについて)またはpH6.5(KLBD1について)の20mMリン酸ナトリウム緩衝液を使用して、タンパク質を陽イオン交換クロマトグラフィ(Mono S 5/50 GL、GE Healthcare)に供し、直線的な塩勾配を使用して精製した。
【0204】
sKLBを含有している溶出画分を、プールし、濃縮し、20mM HEPES、150mM NaCl、pH7.0によって予め平衡化されたSuperdex 200 Increase 10/300 GL(GE Healthcare)サイズ排除クロマトグラフィカラムに供した。sKLBを含有している溶出した画分を、プールし、濃縮し、瞬間凍結させ、さらに使用するまで-80℃で保管した。sKLBの結晶化のため、2個の可能性のあるN-グリコシル化部位Asn308およびAsn611を、グルタミンに変異させた。変異は、標準的なQuikChange部位特異的変異誘発によって、sKLB-Fcプラスミドに導入された。変異体sKLBの発現および精製は、WT sKLBのために使用されたものと同一であった。
【0205】
組換えのFGF21、GST-FGF21CT、およびFGFR1C,D2D3の発現および精製:
3個の変異L126R、P199G、およびA208Eを保有するヒトFGF21アミノ酸29~209をコードするDNA配列を、大腸菌発現のためにコドン最適化し、合成した(Blue Heron Biotech,LLC.)。pET28aベクター(Novagen)へクローニングした後、プラスミドをBL21-Gold(DE3)コンピテント細胞へ形質転換した。形質転換体を、37℃で240rpmで振とうしながら50μg/mLカナマイシンを含有しているLB培地において増殖させた。試料のA600が0.6に到達した時、37℃で4時間、1mM IPTGによって細菌を誘導した。4℃での5,000×gでの遠心分離によって収集された細菌細胞ペレットを、EmulsiFlex-C3ホモジナイザー(Avestin Inc.)を使用して、20mMリン酸ナトリウム緩衝液、500mM NaCl、5%グリセロール、pH7.8において溶解し、その後、4℃で30分間、20,000×gで遠心分離した。N末端His6タグ付きFGF21を含有している上清に、10mMイミダゾールを補足し、4℃で1時間、Ni-NTAアガロース(Qiagen)と共にインキュベートした。樹脂を、20カラム体積の10mMイミダゾールを含有している溶解緩衝液によって洗浄し、タンパク質を300mMイミダゾールを含有している溶解緩衝液によって樹脂から溶出させた。タンパク質溶液を、20mM HEPES、900mM NaCl、pH7.5によって平衡化されたHiLoad 26/600 Superdex 200(GE Healthcare)サイズ排除クロマトグラフィカラムへインジェクトした。FGF21を含有している溶出した画分を、プールし、約1.5mg/mLに濃縮し、瞬間凍結させ、さらなる試験まで-80℃で保管した。
【0206】
GST-FGF21CTの生成のため、FGF21のアミノ酸残基169~209をコードするDNA配列を、pGEX-4T-1ベクター(GE Healthcare)へクローニングし、プラスミドをBL21-Gold(DE3)コンピテント細胞(Agilent Technologies)へ形質転換した。形質転換体を、A600が0.6に到達するまで、37℃で100μg/mLアンピシリンを含有しているLB培地において増殖させ、37℃で4時間、1mM IPTGによって誘導した。細菌細胞を収集し、EmulsiFlex-C3ホモジナイザー(Avestin,Inc.)を使用して、PBSで溶解し、4℃で30分間、20,000×gで遠心分離した。GST-FGF21CTを含有している上清を、4℃で1時間、PBSによって予め平衡化されたグルタチオンセファロース4B(GE Healthcare)と共にインキュベートした。ビーズを50カラム体積のPBSで洗浄し、タンパク質を、20mM HEPES、150mM NaCl、10mM還元型グルタチオン、pH7.3によって溶出させた。次いで、GST-FGF21CTを含有しているタンパク質溶液を、20mM HEPES、150mM NaClに対して透析した後、瞬間凍結させ、-80℃で保管した。2個の置換P199GおよびA208Eを含むアミノ酸残基174~209を含有しているFGF21のC末端領域(FGF21CT)に相当するペプチドが、Tufts University Core Facilityによって合成され、精製された。FGFR1cのリガンド結合領域を、不溶性画分として大腸菌(E.coli)において発現させた。以前に記載されたように(Plotnikov et al.,2000,Cell 101:413-424)、タンパク質を再び折り畳み、精製した。
【0207】
結晶化、X線回折データ収集、および構造決定:
sKLBは、等しい体積の14%PEG4000、0.1M MES、pH6.0を含有しているウェル溶液と混合され、ハンギングドロップ蒸気拡散法を使用して10~15日間平衡化された時、杆状結晶を与えた。30%グルコースが補足された母液に徐々に結晶を移した後、液体窒素中で瞬間凍結させることによって、結晶を凍結保存した。FGF21CTと複合したsKLBについては、FGF21CTを、14%PEG4000、0.1M MES、pH6.0に溶解させ、sKLB結晶を含有している液滴に添加した。FGF21CTの添加は、直ちに、結晶の大部分の変形を引き起こした。
【0208】
完全なままであった結晶を、30%グルコースおよび50μM FGF21CTが補足された人工母液へ徐々に移した後、液体窒素中で瞬間凍結させた。X線回折データを、(sKLBについては)Stanford Synchrotron Radiation Lightsource,SLAC National Accelerator Laboratory,CAのビームラインBL-14で、(FGF21CTと複合したsKLBについては)Advanced Photon Source,Argonne,ILの24-ID-Eで収集した。回析データセットを、HKL2000(Otwinowski & Minor,1997,Methods Enzymol.276:307-326)およびXDS(Kabsch,2010,Xds.Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.66:125-132)を使用して処理した。KLBについてのデータセットの初期位相は、PHASER(McCoy et al.,2007,J.Appl.Crystallogr.40:658-674)による分子置換によって計算した。
【0209】
PHENIX(Adams et al.,2010,Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.66:213-221)を使用して反復的に精密化を実施し、その後、COOT(Emsley et al.,2010,Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.66:486-501)を使用して手動でモデルを構築した。FGF21CTと複合したsKLBについてのデータセットに関しては、sKLBの最終座標を使用した分子置換によって初期位相情報を入手した。精密化の反復サイクルおよびsKLBモデルの再構築は位相を改善し、FGF21CTについての有意な電子密度をもたらした。その後、FGF21CTについてのモデルを|Fo|-|Fc|マップに基づき手動で構築した後、最終精密化サイクルを行った。構造を含有している図は、全て、PyMOL Molecular Graphics System,Version 1.8(Schrodinger,LLC.)を使用して生成された。
【0210】
マイクロスケール熱泳動(MST)測定:
全てのMST測定を、Monolith NT.115 MST Premium Coated Capillariesと共にMonolith NT.115Pico機(NanoTemper Technologies)を使用して実施した。精製されたFGF21を、製造業者によって提供された説明書に従って、Monolith Protein Labeling Kit RED-NHS(NanoTemper Technologies)を使用して、蛍光標識した。35nMの蛍光標識されたFGF21(fl-FGF21)を、20mM HEPES、150mM NaCl、pH7.0、0.05%トゥイーン20、1mg/mL BSA中の精製されたsKLBの0.03nM~1000nMの範囲の一連の濃度と混合することによって、FGF21とsKLBとの結合親和性の測定のための試料を調製した。各試料中のfl-FGF21の熱泳動をモニタリングし(LED 20%、IRレーザー20%)、各試料についてのFhot/Fcold(FcoldおよびFhotはそれぞれIRレーザーがオンになる前の1s、IRレーザーがオンになった後の29sの平均蛍光強度をさす)として定義されたノーマライズされた蛍光強度(FNorm)を、sKLBの濃度に対してプロットした。競合アッセイについては、fl-FGF21およびsKLBの混合物の濃度を一定にし、GST-FGF21CTの濃度を2.1nMから35000nMまで変動させた試料について、fl-FGF21の熱泳動を測定した。全てのデータを、製造業者によって提供されたMO.Affinity Analysisソフトウェア(NanoTemper Technologies)によって分析した。
【0211】
細胞に基づく活性アッセイ:
WTβクロトーまたは多様なβクロトー変異体のいずれかと共にWT FGFR1cを安定的に共発現するL6細胞を、10%FBS、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン、0.1mg/mlハイグロマイシン、および1μg/mlピューロマイシンが補足されたDMEMにおいて増殖させた。細胞を、0.5%FBSを含むDMEMにおいて一晩飢餓状態にし、それぞれ、5nMおよび25nMの濃度のFGF1またはFGF21のいずれかによって、37℃で10分間、刺激した。次いで、細胞を溶解し、抗FGFR1抗体による免疫沈降の後、SDS-PAGEに供した。次いで、試料を、抗ホスホチロシン(pTyr)抗体、抗βクロトー抗体、または抗FGFR1抗体のいずれかによるイムノブロッティングに供した。
【0212】
定量化および統計分析:
各結合親和性測定は、独立した試料を使用して3回実施された。
【0213】
実施例1:βクロトー細胞外領域の構造
sKLBの全体構造は、非構造的な可動性リンカーによって接続された2個のタンデムのGHドメイン;D1(アミノ酸残基53~507)およびD2(アミノ酸残基521~968)を特色とする(図1A)。可能性のあるN-グリコシル化部位を含有しているsKLBの構造内の4個のループ領域は、不十分な電子密度のため、モデル化され得なかった:H0とS1との間のループ(残基63~73)、H1bとH1cとの間のループ(残基119~125)、S9とH9aとの間のループ(残基538~574)、およびタンパク質のC末端(残基968~983)。C末端を除き、これらのループは、破線としてsKLB構造内に示される(図1A)。
【0214】
sKLBドメインの2個のGHドメインの各々の構造に、ヒトサイトゾルβグルコシダーゼ(PDB:2ZOX)の構造を重ね合わせることによって、D1については1.08Å、D2については1.39ÅのCαRMSDが得られ(Krissinel & Henrick,2004,Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.60:2256-2268)、D1およびD2の両方の、グリコシドヒドロラーゼファミリー1(GH1)の酵素との強力な類似性が証明された(図2A~2E)。GH1ファミリーのタンパク質は、典型的には、活性部位に位置する2個の保存されたグルタミン酸によって媒介される二重置換機序を介して、炭水化物部分の間のグリコシド結合を加水分解する酵素である。sKLBドメインの各々において、2個の触媒性グルタミン酸のうちの1個が、他のアミノ酸に交換されている(図2C~2E)。D1内の第1のグルタミン酸はN241に交換されており、D2内の第2のグルタミン酸はA889に交換されており、このことは、βクロトーのいずれのGHドメインも、活性グリコシドヒドロラーゼ酵素として機能し得ないことを示している。各GHドメインは、(D2内の)求核性残基または(D1内の)酸/塩基触媒のいずれかを失っており、D2は真の偽グリコシダーゼであるが、D1は、酸/塩基グルタミン酸がグルタミンに交換された時、PDB ID 2ZOXで見られるように、特異的な基質との共有結合性の中間体を形成する能力を保持している可能性がある。Daliサーバー(Holm & Rosenstrom,2010,Nucleic Acids Res.38:W545-549)を使用した構造アライメントは、GH1およびGH5のメンバーがsKLBのGHドメインの各々との高い構造的類似性を示すことを示しており、このことは、進化起源が共通であることを暗示している。
【0215】
sKLB内のGHドメインの全体構造は、GH1ファミリー酵素と極めて類似しているが、2個のsKLB GHドメインは、それをGH1ファミリーの酵素と区別する重要な構造的特色を示す。
【0216】
D1偽基質結合ポケット。本明細書中の他の場所に記載されるように、酵素活性のために必要とされる2個のグルタミン酸のうちの1個がアスパラギンに交換されていることに加えて、GH1ファミリー酵素の基質結合領域に相当するD1内のポケットは、短いヘリックスH6aによって概して閉塞している(図2Aおよび9B)。さらに、βクロトーD1(図2A中の緑色)に特異的なこの領域内のヘリックス-ターン-鎖要素(H6a-ターン-S6b)は、FGF21結合部位の一部を提供し、サイトゾルβグルコシダーゼの対応する領域の鎖-ヘリックス-鎖要素(図2A中の灰色)とは全く異なる。βクロトーに独特の他の特色には、sKLBシグナル配列の後の最初のアミノ酸(F53)から開始する短いヘリックスH0(図2A)が含まれる。このヘリックスは、主として疎水性相互作用を介して、H5a、H6b、およびS5bと相互作用し、(β/α)8折り畳みのコア構造要素が後続する無秩序なループに先行する。D1内の残りの「触媒性」残基E416は、基質結合ポケットの底部に位置し、E416の側鎖の方向は、ヒトサイトゾルβグルコシダーゼの対応する求核性E373残基の側鎖の方向と同一である。
【0217】
D2偽基質結合ポケット。GH1ファミリー酵素の基質結合ポケットに相当するD2内のポケットは、D2ドメイン内のαヘリックスによって閉塞しておらず、その代わりに、アクセス可能であり、結晶化緩衝液由来のMES分子によって占拠されている。MESのモルホリン環は、sKLBのリガンドとの相互作用においても役割を果たす3個のフェニルアラニンF931、F826、およびF942由来の芳香環と相互作用する。D2ポケットは、一部分、S9とH9aとの間の無秩序領域(アミノ酸残基538~574)の存在のためにアクセス可能であり、それによって、GH1ファミリーメンバーの活性部位における基質が適合するポケットではなく、より溝様の特色が、このドメインにおいて形成される。この領域のアミノ酸配列および長さは、GH1ファミリーメンバーの間で有意に変動する。さらに、sKLBの限定されたタンパク質分解は、試みられた精製法によって分離され得ない、約75kDaおよび約50kDaの2個の断片を与える。2種の分解生成物のN末端配列分析は、切断部位が、S9とH9aとの間の無秩序領域内に存在することを示した。
【0218】
実施例2:FGF21CTと複合したsKLBの構造
FGF19およびFGF21のC末端テール(CT)はβクロトーに結合し、FGF23のCTはαクロトーに結合する。様々な実験アプローチを使用して、FGF21CTがsKLBに結合することを確認し、定量的結合試験を利用して、この結合についての解離定数(KD)が43nMであることを確立した。FGF21CTのsKLBとのこの高親和性結合から、FGF21CTに結合したsKLBの結晶構造を決定することにした。FGF21のアミノ酸175~209に対応するFGF21CTペプチドを、分解を防止するためのP199GおよびA208Eの変異を含めて合成した。ペプチドをsKLB:Nb914複合体の結晶へ浸し、回析データを2.6Åの解像度で収集した。
【0219】
sKLBの構造をサーチモデルとして使用して、分子置換によって構造を解析したところ(図3A~3E)、FGF21CTペプチドに相当する明らかな電子密度が、sKLBの中央に存在することが示された。精密化の後、(0.19/0.23のRwork/Rfreeを有する)最終モデルは、sKLBに結合したFGF21CTからのアミノ酸P186~S209を含有している(図13C~3E)。FGF21CTは、リガンドが結合していないsKLB構造に重層された時の、それぞれ、D1およびD2についての0.33Åおよび0.49Åのα炭素RMSDによって判定されるように、いずれの個々のドメインの構造にも影響することなく、sKLBのD1およびD2にかかる細長い界面と結合する。FGF21CT:sKLB構造は、ペプチドの2個の異なる領域についての2個の異なる結合部位を示す。一方(部位1)はsKLB D1に位置し、他方(部位2)はD2に位置する。2個の部位の中心間の距離は、約30Åである。
【0220】
FGF21CTの部位1との結合。sKLB D1上の部位1は、主として、疎水性相互作用を介して、FGF21CTのアミノ酸P186~V197とエンゲージする(図3Dおよび4B)。部位1は、H6a、H7、S6bとH6bとの間のループ、およびS7とH7との間のループによってD1上に作出された表面を含む。最も際だったことに、結合したペプチドリガンドの部位1と会合する領域は、以下のようにいくつかの十分に定義されたターン(図4B)の形成を介して、著しくコンパクトで強固な構造をとる:
・D187-V188-G189-S190は、D187のカルボキシル酸素とG189の骨格窒素との水素結合およびD176の骨格カルボニルとS190の骨格アミドとの水素結合を介して、I型βターン(図4B中のオレンジ色)を形成する。
・S190-S191-D192は、S190ヒドロキシルとD192の骨格アミドとの水素結合を介して、STターン(図4B中の黄色)を形成する。
・D192-P193-L194-S195(図4B中の水色)は、D192の側鎖カルボキシルとM196およびV197の骨格アミドとの水素結合、ならびにD192骨格カルボニルとS195の骨格アミドとの水素結合を介して、I型βターン(またはSchellmanループに類似しているAsxターン)を形成する。
【0221】
これらの連続するターンは、D187骨格アミドとP193カルボニルとの間の長距離水素結合も支持する。これらの分子内相互作用は、606Å2という比較的大きい表面積を覆う、sKLBとの複数の特異的な接触を作成する、十分に定義された構造要素を形成するよう協力する。FGF21CT:sKLB相互作用のこの部分について、FGF21のアミノ酸配列は、D1およびD2が相互作用する場所に近いD1表面にドッキングする構造要素を定義するようである。
【0222】
FGF21CTの部位2との結合。部位2相互作用の性質は、部位1と全く対照的であり、タンパク質と短いペプチドとの間で典型的に観察される種類の分子間相互作用のネットワークを含む(図4C)。個々の相互作用は、図3D~3Eに示されるLigplot図に要約される。しかしながら、FGF21CTペプチドの残基200~209は、sKLBのD2が、活性GH1酵素であったなら、加水分解するであろうグリコシドによって占拠される基質結合部位であろうものへ突出している(図5A~5E)。FGF21CTのこの部分の配列(S-Q-G-R-S-P-S-Y-A-S)には、側鎖ヒドロキシル基を有する残基が豊富であり(50%)、このことは、FGF21のこの領域が、実際、グリコシド基質を模倣する可能性を示唆している。これらの特徴のため、部位2の特色は、sKLB内のE693の側鎖カルボキシル基と、FGF21CT内のS204およびS206の両方のヒドロキシル基との間の相互作用である(図5D)。E693は、2個の保存された「触媒性」グルタミン酸のうちの1個に相当し、グリコシドヒドロラーゼのKoshland二重置換反応において一般的な酸/塩基触媒として機能するであろう(一方、可能性のある求核性グルタミン酸は、D2においてアラニンに交換されている)。
【0223】
部位1および部位2のリガンド結合領域を接続するFGF21CTのアミノ酸198~200は、sKLBとの有意な接触を作成しない。FGF21のこの領域は、可動性であり、FGF21がsKLBに結合している場合ですら、タンパク質分解のためにアクセス可能である可能性があるため、非限定的な態様において、部位1および部位2の結合領域の間の切断は、標的タンパク質分解によるFGF21シグナリングの終結の機序を表し得る。
【0224】
実施例3:グリコシドヒドロラーゼ活性を有する酵素の内分泌型FGFの受容体への進化
FGF21CTに結合したsKLBの結晶構造は、グリコシドヒドロラーゼの基本フレームワークが内分泌型FGFの特異的な受容体へどのように進化したのかを明らかにする。グリコシドヒドロラーゼのβグルコシダーゼファミリーは、二糖およびより長いオリゴ糖の加水分解を触媒し、セロテトラオース(P.ポリミキサ(polymyxa)BglB、PDB:2Z1S)またはセロペンタオース(イネ(O.sativa)BGlu1、PDB:3F5K)のようなオリゴ糖基質と複合したβグルコシダーゼのいくつかの結晶構造が決定されている。基質に結合したβグルコシダーゼの結晶構造の、FGF21CTと複合したsKLBの構造との重ね合わせは、FGF21CT由来の残基200~209の骨格が、βグルコシダーゼの触媒ポケットを占拠するオリゴ糖の位置とよく整列することを示す(図5A~5C)。本明細書中の他の場所において言及されるように、FGF21CT由来のS204およびS206のヒドロキシルと、sKLBのD2内の触媒性グルタミン酸との間の相互作用のモードは、P205を含む疎水性相互作用と共に、グリコシドヒドロラーゼについて見られる基質相互作用と高度に類似しており、このことは、これが偽基質様相互作用であることを示唆する(図5D)。βグルコシダーゼの活性部位のこの触媒性グルタミン酸に結合したオリゴ糖基質は、sKLBの部位2に結合したFGF21のS204-P205-S206モチーフと正確に同一の位置にある。さらに、FGF21のP205との疎水性相互作用を形成するsKLB内の残基、即ち、F826、F931、およびF942は、βグルコシダーゼの対応する疎水性残基とよく整列する。これらの予想外の類似性は、グリコシドヒドロラーゼの基質結合領域が、FGF21内の糖を模倣するS-P-Sモチーフを認識するために進化したことを示す(図5E)。FGF19は、βクロトーと特異的に結合し、C末端にS211-P212-S213モチーフを含有しているが、(βクロトーに結合しない)FGF23は、そのような配列を有しない。
【0225】
実施例4:FGF21/sKLB複合体およびsKLB/FGFR1複合体の対形成は高親和性であるが、FGF21/FGFR1複合体はそうでない。
sKLB結合時の溶液中の蛍光標識FGF21(fl-FGF21)の熱泳動をモニタリングする、マイクロスケール熱泳動またはMST(Seidel et al.,2013,methods 59:301-315)を使用して、sKLBに対するFGF21の親和性を測定した。ノーマライズされた蛍光強度の適合は、FGF21とsKLBとの結合について、43.5nMという解離定数(KD)を与える(図6A)。
【0226】
FGF21のC末端断片(FGF21CT)とsKLBとの結合を測定するため、GSTと融合されたFGF21CT(GST-FGF21CT)を一定のsKLB/fl-FGF21混合物に対して滴定する、MSTに基づく競合アッセイを使用した(図6C)。GST-FGF21CTによる競合から発生する熱泳動変化のヒル方程式を使用した適合は、704nMというIC50値を与える。抗GSTを使用した、センサーチップに固定化されたGST-FGF21CTとのsKLBの結合のSPRに基づく測定も、253nMというKD値を与え、このことから、FGF21のC末端領域がリガンドのsKLBとの高親和性結合を主として担うことが確認された。
【0227】
次いで、FGF21によって誘導されるFGFR1cの刺激のために必須の他の相互作用の結合親和性を測定するため、MSTを使用した。蛍光標識FGFR1CD2D3を使用して入手されたMSTデータは、sKLBが約1μMのKD値でFGFR1CD2D3に結合することを明らかにした(図6B)。対照的に、古典的FGF1は、約1μMのKDで同一のFGFR1CD2D3タンパク質に結合するにも関わらず、FGF21とFGFR1CD2D3との結合は、MSTを使用した正確なKD決定のためには弱すぎる(KD>10~100μM)。
【0228】
実施例5:βクロトーの結合エネルギーはFGF21CTの至る所に分布する。
FGF21CTとsKLBとの結合が、部位1(D1)上にドッキングするマルチターン要素によって支配されるのか、部位2(D2)に結合する偽基質によって支配されるのかを決定するため、両方の領域において変異を生成し、GST-FGF21CTとsKLBとの結合に対する効果を、本明細書中の他の場所に記載されたMSTに基づく競合アッセイにおいて査定した。最初に、FGF21CT内のマルチターン要素の内部構造を不安定化すると予想される変異(図4B)、具体的には、D192-P193-L194-S195βターンを安定化する分子内水素結合を破壊するD192AおよびP193Aの変異を試験した。予期された通り、D192A変異またはP193A変異を有するGSTFGF21CTバリアントについて測定されたIC50値は、野生型より10~20倍高かった(図6C)。第2に、FGF21CTのS-P-S偽基質領域とβクロトーの部位2(D2)との間の中央分子間相互作用を破壊する変異(図5D)を試験した。図6Dに示されたように、GST-FGF21CT内のS204またはS206またはY207のアラニンへの交換は、IC50の8~10倍の増加を引き起こす。
【0229】
これらのデータは、FGF21CTとβクロトーとの結合が、FGF21CTの両方の要素を含んでおり、βクロトーの部位1および部位2の両方との協力的な結合によって媒介されることを示している。さらに、結果は、FGF21CTとβクロトーとの間の安定的な相互作用を維持するためには、部位1および部位2の両方が占拠されていなければならないことを示す。この結論は、結晶構造によっても示唆される。平行して、SPR試験および/またはMST試験は、FGF21からのC末端の10アミノ酸の喪失が、βクロトーとの結合を消失させること、βクロトーからのD2の喪失が、野生型FGF21との結合を消失させることを示した。したがって、FGF21と部位1または部位2との結合は、単独では、βクロトーとの安定的な結合のために十分でなく、このことは、FGF21/βクロトー複合体形成が、主として部位1および部位2との複数の弱い結合イベントの協力によって媒介されることを示している。
【0230】
実施例6:βクロトーのFGF21結合界面の変異は受容体活性化を損なうがクロトー/FGFR1相互作用は損なわない。
βクロトーの2個のFGF21CT結合部位の変異の、トランスフェクトされたL6筋芽細胞においてFGFR1活性化を刺激するFGF21の能力に対する効果を調査した(図6E~6G)。L6細胞は、内在性のFGFRおよびβクロトーを欠くが、ヒトFGFR1cもしくはβクロトーのいずれかを単独で異所的に発現するか、または(同レベルで)FGFR1cおよびβクロトーを共発現するよう改変された。予想通り、FGF21は、FGFR1cおよびβクロトーを共発現する細胞においてのみ、FGFR1cチロシンリン酸化を刺激し、FGF1は、βクロトーの存在に関わらず、類似したレベルへとFGFR1cを活性化する。V392、T431、およびM435を(FGF21に結合しない)αクロトーの対応する残基に個々に交換する、D1上の部位1における3個の独立した変異は、FGFR1c(図6F)チロシンリン酸化のFGF21による刺激の実質的な減少を引き起こした。同様に、D2または部位2の偽基質結合部位におけるキーアミノ酸(Y643、H646、E693、R696、R829、またはR845)の変異は、FGF21によって誘導されるFGFR1cの刺激をほぼ完全に消失させたが、同一の細胞におけるFGF1によって誘導される受容体の刺激は、影響を受けないままであった(図6G)。対照的に、FGF21CTリガンドの2つの部分の間のリンカーに接するF849(図6E)の変異は、FGF21によって誘導される受容体活性化に対して比較的わずかな効果を及ぼし(図6G)、このことは、本明細書中の他の場所に記述された界面の二部性と一致している。βクロトー変異は、抗FGFR1c免疫沈降物中のレベルによって査定されるように、FGFR1cとβクロトーとの間の相互作用に影響を与えず(図6F~6G)、このことは、FGF21が既存のFGFR1c/βクロトー複合体を活性化しなければならないことを示す。
【0231】
実施例7:改善された結合および活性を有するFGF21バリアントの構造情報に基づくエンジニアリング
内分泌型FGFが代謝過程の調節において重要な役割を果たすことから、FGF19およびまたはFGF21によって引き起こされる副作用を最小化しながら、これらの2種のホルモンの有益な刺激応答を保持している(より高い効力を有する)新規の治療薬を開発するため、多様なアプローチが利用された。sKLB/FGF21CT複合体構造の調査は、FGFR1c/βクロトー複合体のFGF21による活性化の分子機序の解明と共に、より優れたホルモン活性を有する新規の内分泌型FGF類似体の構造情報に基づくエンジニアリングの新しい機会を提示する。ある種の非限定的な態様において、FGF21の効力は、βクロトーとの相互作用を強化する変異をC末端テールへ導入することによって増強され得る。L194F変異を、βクロトーの部位1の近隣アミノ酸との疎水性相互作用を増加させるために導入した。R203とH646との間の陽イオン-π相互作用を、βクロトーの部位2におけるπ-π相互作用へ交換するため、FGF21内のR203もトリプトファンに変異させた。MST試験において、R203W/L194F変異型FGF21(FGF21WF)は、野生型FGF21よりも10倍堅固にsKLBに結合し、KDは3.4±1.2nMであった(図7A)。さらに、FGF21WFは、βクロトーおよびFGFR1cを共発現するL6細胞においてFGFR1c自己リン酸化を刺激する比較可能に増強された能力を示した(図7B)。
【0232】
本明細書中に引用された特許、特許出願、および公開の各々の全ての開示は、参照によってその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0233】
具体的な態様に関して本発明が開示されたが、本発明の本旨および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変動が他の当業者によって考案され得ることは明白である。添付の特許請求の範囲は、そのような態様および等価な変動を全て含むと解釈されるものとする。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
図8
【配列表】
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