(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】波長変換式半導体発光デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20230721BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
H01L33/50
G02B5/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020000327
(22)【出願日】2020-01-06
(62)【分割の表示】P 2016524924の分割
【原出願日】2014-07-03
【審査請求日】2020-01-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2013-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517152128
【氏名又は名称】ルミレッズ ホールディング ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シュリッカー,エイプリル ドーン
(72)【発明者】
【氏名】シュチェキン,オレグ ボリショヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ハン ホ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ペーター ヨゼフ
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】廣田 かおり
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/131402(WO,A1)
【文献】特表2011-515848(JP,A)
【文献】特開2012-36367(JP,A)
【文献】国際公開第2012/045772(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/042452(WO,A1)
【文献】特開2007-214579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
C09K 11/00-11/89
F21V 9/00-9/45
G02B 5/20-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の光を、より長い第2の波長の光へと変換するように構成された波長変換セラミック層と、
前記波長変換セラミック層上に配置された窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層と、
前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層上に
融着され、前記第1の波長の光を、より長い、前記第2の波長とは異なる、第3の波長の光へと変換するように構成された波長変換ガラス層と
を有する波長変換器。
【請求項2】
前記第2の波長は赤色であり、前記第3の波長は緑色である、請求項1に記載の波長変換器。
【請求項3】
前記波長変換セラミック層及び前記波長変換ガラス層は、傾斜した側壁を有する、請求項1に記載の波長変換器。
【請求項4】
前記波長変換セラミック層及び前記波長変換ガラス層は、波長変換部材を形成し、
前記波長変換部材の第1の部分は、実質的に垂直な側壁を有し、且つ
前記波長変換部材の第2の部分は、傾斜した側壁を有する、
請求項1に記載の波長変換器。
【請求項5】
n型領域とp型領域との間に配置され、第1の波長の光を発するように構成された発光層を有する半導体構造と、
前記発光層によって発せられる光の経路内に配置された、請求項1乃至4のいずれかに記載の波長変換器と、
を有する発光デバイス。
【請求項6】
前記波長変換セラミック層は、前記波長変換ガラス層と前記半導体構造との間に配置されている、請求項5に記載の発光デバイス。
【請求項7】
当該発光デバイスは更に反射材料を有し、
前記反射材料は、前記波長変換セラミック層の側壁、前記波長変換ガラス層の側壁、及び前記半導体構造の側壁の各々に隣接して配置されている、請求項6に記載の発光デバイス。
【請求項8】
波長変換素子を形成することを有し、
前記形成することは、
波長変換セラミック層を形成すること、
前記波長変換セラミック層の表面上に窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層を形成すること、及び
前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層の表面上に波長変換ガラス層を配置することであり、
波長変換材料をガラスと混合し、
混合物をローラでシートへと延ばし、
前記波長変換セラミック層に形状が合うように前記シートを切断し、且つ
前記切断されたシートを前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層の前記表面に
融着する
ことを有する、配置すること
を有する、
方法。
【請求項9】
前記波長変換セラミック層を形成することは、蛍光体をウェハへと焼結することを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記切断されたシートを前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層の前記表面に
融着することは、前記切断されたシート及び前記波長変換セラミック層を加熱することを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層の前記表面上に前記波長変換ガラス層を配置することに先立って、前記波長変換セラミック層を薄化すること、を更に有する請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層の前記表面上に前記波長変換ガラス層を配置することの後に、前記波長変換セラミック層を薄化すること、を更に有する請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記波長変換素子を複数のプレートレットへとダイシングすることと、
前記ダイシングの後に、プレートレットを半導体発光デバイスに取り付けることと、
を有する請求項8乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記波長変換素子を前記複数のプレートレットへとダイシングすることは、傾斜した側壁を各プレートレットに形成することを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記波長変換素子を前記複数のプレートレットへとダイシングすることは、
各プレートレットの第1の部分に、前記プレートレットの頂面に対して第1の角度を持つ側壁を形成し、且つ
各プレートレットの第2の部分に、前記プレートレットの頂面に対して第2の角度を持つ側壁を形成する
ことを有し、
前記第1の角度は前記第2の角度と異なる、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
波長変換素子を形成することを有し、
前記形成することは、
波長変換セラミック層を形成すること、
前記波長変換セラミック層の表面上に窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層を形成すること、及び
前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層の表面上に波長変換ガラス層を
融着することであり、
波長変換材料をガラスと混合し、
混合物を前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層上に置き、
実質的に均一な厚さの層を形成するように前記混合物を広げる
ことを有する、
融着すること
を有する、
方法。
【請求項17】
前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層の前記表面上に前記波長変換ガラス層を
融着することに先立って、前記波長変換セラミック層を薄化すること、を更に有する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層の前記表面上に前記波長変換ガラス層を
融着することの後に、前記波長変換セラミック層を薄化すること、を更に有する請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記波長変換素子を複数のプレートレットへとダイシングすることと、
複数の半導体発光デバイスをマウントに取り付けることと、
前記ダイシングの後に、前記複数のうちの各半導体発光デバイスにプレートレットを取り付けることと、
前記複数のうちの隣接する半導体発光デバイス間に反射材料を配設することと、
を有する請求項16乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記隣接する半導体発光デバイス間に前記反射材料を配設することの後に、前記反射材料を薄化すること、を更に有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記波長変換素子を前記複数のプレートレットへとダイシングすることは、傾斜した側壁を各プレートレットに形成することを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記波長変換素子を前記複数のプレートレットへとダイシングすることは、
各プレートレットの第1の部分に、前記プレートレットの頂面に対して第1の角度を持つ側壁を形成し、且つ
各プレートレットの第2の部分に、前記プレートレットの頂面に対して第2の角度を持つ側壁を形成する
ことを有し、
前記第1の角度は前記第2の角度と異なる、
請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換式半導体発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在利用可能な最も効率的な光源の中に、発光ダイオード(LED)、共振器型(resonant cavity)発光ダイオード(RCLED)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)及び端面発光レーザを含む半導体発光デバイスがある。可視スペクトルで動作可能な高輝度発光デバイスの製造において現在関心ある材料系は、III-V族半導体、特に、III族窒化物材料とも呼ばれる、ガリウム、アルミニウム、インジウム、及び窒素の二元、三元、及び四元合金を含む。典型的に、III族窒化物発光デバイスは、有機金属化学気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー(MBE)又はその他のエピタキシャル技術により、サファイア、炭化シリコン(シリコンカーバイド)、III族窒化物若しくは複合材の基板、又はその他の好適な基板の上に、異なる組成及びドーパント濃度の複数の半導体層のスタック(積層体)をエピタキシャル成長することによって製造される。スタックは、しばしば、基板上に形成された、例えばSiでドープされた1つ以上のn型層と、該1つ以上のn型層上に形成された活性領域内の1つ以上の発光層と、活性領域上に形成された、例えばMgでドープされた1つ以上のp型層とを含んでいる。これらn型領域及びp型領域の上に、電気コンタクトが形成される。
【0003】
図1は、特許文献1(米国特許出願公開第2011/0227477号)に更に詳細に記載されている発光装置を示している。
図1のデバイスは、光源(例えば、LED)が上にマウントされたサブマウント100を含んでいる。特許文献1の段落54は、「第1の発光層110は、第2の発光層115上に配置されており、光源105から放射された光の少なくとも一部を受ける。第2の発光層115は、従来のベースLED105と第1の発光層110との間に配置されている。第2の発光層115は、光源105から放射された光の少なくとも一部を受ける。任意のカプセル材料樹脂120は、光源105、第1の発光層110、および第2の発光層115を覆って設置されている。いくつかの実施形態では、第1の発光層110および第2の発光層115は、一緒に固定されて、複合材料を形成する。」と教示している。
【0004】
特許文献1の段落60は、「発光装置は、第1のガーネット蛍光体を有する第1の発光層、および第2のガーネット蛍光体を有する第2の発光層を含むことができる・・・。発光層は、いくつかの実施形態では、セラミックプレートであってもよい。・・・セラミックプレートは、一緒に固定されて、複合材料を形成してもよい。」と教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2011/0227477号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの目的は、高い駆動電流及び/又は高い動作温度を必要とし得る用途に適した波長変換式半導体発光デバイスを提供することである。
【0007】
本発明の実施形態において、発光デバイスは、n型領域とp型領域との間に配置された発光層を含んだ半導体構造を含む。発光層によって発せられる光の経路内に第1の波長変換層が配設される。第1の波長変換層は波長変換セラミックとし得る。第1の波長変換層に第2の波長変換層が融着される。第2の波長変換層は、ガラス内に置かれた波長変換材料とし得る。
【0008】
本発明の実施形態に従った方法は、波長変換素子を形成することを含む。波長変換素子を形成することは、波長変換セラミックとし得る第1の波長変換層を形成し、且つ第2の波長変換層を第1の波長変換層に融着することを含む。波長変換素子が複数のプレートレットへとダイシングされる。ダイシングの後に、1つ以上のプレートレットが単一の半導体発光デバイスに取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】LEDと2つのセラミック蛍光体プレートとを含んだ発光装置を示す図である。
【
図4】個々のプレートレットへとダイシングされた
図3の構造を例示する図である。
【
図5】整形された側面を有する個々のプレートレットへとダイシングされた
図3の構造を例示する図である。
【
図6】個々のLEDに取り付けられた
図4に示したプレートレットを例示する図である。
【
図7】反射材料層を形成した後の
図6の構造を例示する図である。
【
図8】反射材料層をエッチバックして波長変換プレートレットの頂面を露出させた後の
図7の構造を例示する図である。
【
図9】整形された側面を有する個々のプレートレットへとダイシングされた
図3の構造を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、2つ以上の波長変換材料を有する波長変換式半導体発光デバイスに向けられる。本発明の実施形態は、例えば自動車のヘッドランプなど、高い駆動電流及び/又は高い動作温度を必要とし得る用途で使用され得る。
【0011】
以下の例では、半導体発光デバイスは、青色光又はUV光を発するIII族窒化物LEDであるが、例えばレーザダイオードなどの、LED以外の半導体発光デバイスや、例えばその他のIII-V族材料、III族リン化物、III族ヒ化物、II-VI族材料、ZnO、又はSi系材料などの、その他の材料系からなる半導体発光デバイスが使用されてもよい。
【0012】
図2は、本発明の実施形態で使用され得るIII族窒化物LEDを例示している。如何なる好適な半導体発光デバイスが使用されてもよく、本発明の実施形態は、
図2に例示されるデバイスに限定されない。
【0013】
図2のデバイスは、技術的に知られているように、成長基板の上にIII族窒化物半導体構造を成長させることによって形成される。成長基板(
図2には示されず)は、例えばサファイア、SiC、Si、GaN又は複合基板など、如何なる好適基板であってもよい。半導体構造は、n型領域とp型領域との間に挟まれた発光領域又は活性領域を含む。先ずn型領域14が成長され得る。n型領域13は、異なる組成及びドーパント濃度の複数の層を含み得る。該複数の層は、例えば、n型あるいは意図的にはドープされないものとし得るバッファ層若しくは核生成層などのプリパレーション層及び/又は成長基板の除去を容易にするように設計される層と、発光領域が効率的に発光するのに望ましい特定の光学特性、材料特性若しくは電気特性に合わせて設計されるn型、若しくはp型であってもよい、デバイス層とを含み得る。n型領域上に、発光領域又は活性領域16が成長される。好適な発光領域の例は、単一の厚い若しくは薄い発光層、又はバリア層によって分離された複数の薄い若しくは厚い発光層を含んだマルチ量子井戸発光領域を含む。次いで、発光領域上に、p型領域18が成長され得る。n型領域と同様に、p型領域は、異なる組成、厚さ及びドーパント濃度の複数の層を含むことができ、該複数の層は、意図的にはドープされていない層又はn型層を含んでいてもよい。
【0014】
成長後、p型領域の表面上にpコンタクトが形成される。pコンタクト20は、しばしば、例えば反射メタル及びガードメタルなどの複数の導電層を含む。ガードメタルは、反射メタルのエレクトロマイグレーションを防止あるいは抑制し得る。反射メタルは銀であることが多いが、如何なる好適な材料が使用されてもよい。pコンタクト20を形成した後、nコンタクト22が上に形成されるn型領域14の部分を露出させるよう、pコンタクト20、p型領域18及び活性領域16の一部が除去される。nコンタクト22とpコンタクト20は、例えばシリコンの酸化物又はその他の好適材料などの誘電体で充填され得る間隙25によって、互いに電気的に分離(アイソレート)される。複数のnコンタクトビアが形成されてもよく、nコンタクト22及びpコンタクト20は、
図2に例示される構成に限定されない。n及びpコンタクトは、技術的に知られているように、誘電体/金属スタックを有するボンドパッドを形成するように再分配されてもよい。
【0015】
LEDをマウント12に取り付けるため、1つ以上のインターコネクト24が、nコンタクト22及びpコンタクト20の上に形成され、あるいはそれらに電気的に接続される。インターコネクト24は、電気的且つ物理的にLEDをマウント12に接続する。インターコネクト24は、例えば、金スタッドバンプ、金層、又はその他の好適構造とし得る。金スタッドバンプは、例えば、直径において60μmと100μmとの間とし得る。デバイスのウェハから、例えばインターコネクト24を形成した後に、個々のLEDがダイシングされる。
【0016】
マウント12上にインターコネクト26が形成され得る。マウント12は、例えばメタル、セラミック、又はシリコンを含め、如何なる好適材料ともし得る。マウント12上のインターコネクト26は、LED上のインターコネクト24と位置が揃っている。LED及びマウントの双方の上にではなく、LED及びマウントの一方のみの上にインターコネクトが形成されるように、インターコネクト24又は26の何れかが省かれてもよい。LEDが上に搭載されるマウントの頂面側を、別の構造に取り付けられ得るマウントの底面側に電気的に接続するため、マウントの中にビアが形成され、あるいはマウント12の表面に配線が形成され得る。
【0017】
個々のLEDは、半導体構造の成長方向に対して裏返されてマウント12に取り付けられる。LEDはマウントに、例えば、超音波ボンディング、サーモソニックボンディング、はんだ取付け、又はその他の好適な接合技術によって取り付けられ得る。
【0018】
マウント12への接合の前又は後に、LEDとマウント12との間にアンダーフィル材30が配設される。アンダーフィル30は、後の処理において半導体構造を支持する。アンダーフィル30は、隣接するインターコネクト24間の隙間28を充填し得る。アンダーフィル30は、例えば注入又はその他の好適手法によって、LEDとマウント12との間に導入され得る。アンダーフィル30は、例えば、シリコーン、エポキシ、又はその他の好適材料とし得る。アンダーフィル30は、液体の形態で注入された後に、固体を形成するように硬化され得る。余分なアンダーフィル材が、例えばマイクロビーズブラスティングなどの好適技術によって除去され得る。
【0019】
成長基板が、何らかの好適技術によって除去され得る。サファイア基板は、レーザ溶融によって除去されることが多く、その場合、レーザ光が基板を通して光らされて、基板と直に接触している半導体材料の層を溶融させることで、基板が半導体構造から解放される。その他の基板は、例えば、エッチング又は研削などの機械的技術によって除去され得る。基板を除去することは、n型領域14の表面32を露出させる。表面32は、例えば光電気化学エッチング又はその他の好適技術によって、パターン加工、テクスチャ加工、又は粗面加工されてもよく、それにより表面32からの光取り出しが高められ得る。
【0020】
図2は、アンダーフィルと厚い金属インターコネクトとによって支持され、そこから成長基板が除去されたLEDを例示している。他の好適LEDが使用されてもよい。一部の実施形態において、成長基板が半導体構造に取り付けられたままのLEDが使用される。例えば、LED半導体構造がサファイア基板上に成長され、該サファイア基板が半導体構造に取り付けられたままとなる。サファイアは、必ずしもそうである必要はないが、成長後に例えば100μm厚より小さい厚さまで薄化されてもよい。サファイアが半導体構造を機械的に支持するので、アンダーフィルが含められてもよいが、アンダーフィルは機械的支持のためには必要でない。厚い金属インターコネクトは必要とされないが、含められてもよい。LEDはマウントに、例えばはんだ付けなどの好適技術によって取り付けられ得る。
【0021】
LEDとは別個に、波長変換部材が、
図3、4及び5に例示するように形成される。波長変換部材は、LEDによって発せられた光を吸収して、1つ以上の異なる波長の光を発する。必ずしもそうである必要はないが、LEDによって発せられた未変換の光が、この構造から取り出される光の最終的なスペクトルの一部をなすことが多い。一般的な組み合わせの例は、黄色発光の波長変換材料と組み合わされた青色発光のLED、緑色発光及び赤色発光の波長変換材料と組み合わされた青色発光のLED、青色発光及び黄色発光の波長変換材料と組み合わされたUV発光のLED、並びに青色発光、緑色発光及び赤色発光の波長変換材料と組み合わされたUV発光のLEDを含む。構造から発せられる光のスペクトルを調整するために、他の色の光を発する波長変換材料が追加されてもよい。
【0022】
図3にて、2つの波長変換層40及び42を有する波長変換器38が形成される。波長変換層40及び42は、典型的に、異なる波長変換材料を含むが、必ずしもそうである必要はない。波長変換層40及び42は、異なる色の光を発することが多いが、必ずしもそうである必要はない。波長変換層40及び42は、高温及び高電流の動作条件に耐えることができる如何なる材料であってもよい。例えば、波長変換層40及び42は、2.5Aに至る電流と240℃に至る動作温度とを伴う動作条件に耐えるように設計され得る。
【0023】
一部の実施形態において、波長変換層40は、例えばセラミック層へと焼結された粉末蛍光体などのルミネセントセラミックである。一部の実施形態において、波長変換層42は、ガラス又はその他の好適透明材料に、例えば従来からの蛍光体、有機蛍光体、量子ドット、有機半導体、II-VI族若しくはIII-V族半導体、II-VI族若しくはIII-V族半導体量子ドット若しくはナノ結晶、染料、ポリマー、又は発光するその他の材料などの1つ以上の波長変換材料を詰められたものである。
【0024】
一例において、波長変換層40は、青色光を吸収して赤色光を放つセラミック蛍光体である。赤色光を放つ好適なセラミック蛍光体は、以下に限られないが、(Ba1-x-y-zSrxCayEuz)2Si5-a-bAlaN8-a-4bOa+4b、ただし、0.5≦x≦0.9、0≦y≦0.1、0.003≦z≦0.03、0≦a≦0.05、且つ0≦b≦0.2、(Ca1-x-y-zMII
xMIII
2y/3Euz)m/2Si12-m-n(Al1-kBk)m+nOnN16-n;MII=Mg,Sr,MIII=Y,La,Lu,Ce、ただし、0≦x≦1、0≦y≦0.5、0.005≦z≦0.2、0.5≦m≦3.5、0.05≦n≦2、0≦k≦0.15、Ca1-x-y-z-vMII
vSi1+x-zAl1-x+zN3-xOx:Euy,Cez;MII=Sr,Ba,Mg、ただし、0≦x≦0.05、0≦y≦0.01、0≦z≦0.04、0≦v≦0.85を含む。波長変換層40は、一部の実施形態において少なくとも5μm厚、一部の実施形態において400μm厚以下、一部の実施形態において少なくとも20μm厚、そして一部の実施形態において200μm厚以下とし得る。
【0025】
一例において、波長変換層42は、ガラス内に置かれた蛍光体である。波長変換層42内の蛍光体は、青色光を吸収して緑色光を放つ。緑色光を放つ好適なセラミック蛍光体は、以下に限られないが、(Lu1-x-yYxCey)3Al5O12、ただし、0≦x≦1、0.0015≦y≦0.04、又はSr1-x-yMII
xEuySi2O2N2;M=Ca,Ba、ただし、0≦x≦0.5、0.002≦y≦0.04を含む。波長変換層42は、一部の実施形態において少なくとも5μm厚、一部の実施形態において400μm厚以下、一部の実施形態において少なくとも20μm厚、そして一部の実施形態において200μm厚以下とし得る。所与の用途の色点(カラーポイント)要求を満たす如何なる組み合わせの波長変換層40及び42の厚さが使用されてもよい。
【0026】
図3に示した構造は、先ず、例えば、粉末蛍光体を加圧して焼結することによって、あるいはその他の好適プロセスによって、セラミック波長変換層40を形成することによって形成され得る。一部の実施形態において、波長変換層40は、焼結後に、例えば研削などの機械的プロセスによって、あるいはその他の好適技術によって薄化される。波長変換層40は、例えば800μm厚以上から300μm厚以下まで薄化され得る。薄化の後に、波長変換層40が波長変換層42と結合される。ここに記載されるように、波長変換層40及び波長変換層42の各々が、結合することの前又は後に薄化されてもよい。これらの薄化プロセスはオプションであり、図には示されていない。
【0027】
波長変換層42は、例えば、選択された緑色蛍光体を所定の蛍光体負荷(ローディング)まで溶融ガラスに混合することによって形成され得る。この混合物が、ローラでシートへと延ばされ、波長変換層40のディスクに形状が合うように切断され、そして、例えばガラスのリフロー温度よりも高い温度まで加熱することによって、波長変換層40に融着される。他の例では、ガラスと蛍光体のこの混合物が、熱い間(例えば、リフロー温度よりも高い間)に直接的に波長変換層40上に置かれ、そして、実質的に均一な厚さのガラス層を形成するように均等に広げられてもよい。一部の実施形態において、リフロー温度は、ガラス材料に応じて、320℃ほどの低さ又は1500℃ほどの高さであり得る。使用される蛍光体は、一部の実施形態において1700℃の温度に耐え、一部の実施形態において1800℃の温度に耐え得る。如何なる好適なガラス又はその他の透明材料が使用されてもよい。ガラスは、例えば、取出しを高めるために、一部の実施形態において1.7未満、一部の実施形態において1.6未満、そして一部の実施形態において1.52未満の屈折率を持つ低屈折率ガラスとし得る。波長変換層42に関する蛍光体材料、ローディング量、及び薄化(後述)後の最終厚さは、発光デバイスと波長変換器との結合構造を出て行く光が所与の用途の色点及び光束強度に関する目標仕様を満足するよう、発光デバイスから放たれる青色光に適合するように選択される。
【0028】
一部の実施形態において、波長変換層42と結合される波長変換層40の表面を、粗面加工、パターン加工、又はテクスチャ加工し、それにより、この層の表面積を増大させ、よって、波長変換層42と波長変換層40との間の接合の強度を高め得る。波長変換層42と波長変換層40との間の境界面を粗面加工、パターン加工、又はテクスチャ加工することはまた、波長変換層40から波長変換層42への光取り出しを向上させ得るとともに、波長変換層42から波長変換層40への光の反射を抑制あるいは防止し得る。
【0029】
一部の実施形態において、波長変換層40及び波長変換層42の一方又は双方に、これら2つの材料間の接合を向上させるために、融剤又は前処理が適用される。例えば、セラミック波長変換層40とガラス波長変換層42との間の境界面を改善するため、及び/又は加熱中のセラミック酸化を防止するため、窒化シリコンバリア層及び酸化シリコン層の一方又は双方がセラミック波長変換層40上に配設され得る。窒化シリコン層及び/又は酸化シリコン層は、例えば、メガトロンスパッタリング、化学気相成長、プラズマ化学気相成長、及び蒸着を含め、如何なる好適技術によって波長変換層40上に形成されてもよい。
【0030】
一部の実施形態において、波長変換層42をセラミック波長変換層40と完全に融着させるために、結合構造38は、不活性環境下で、波長変換層42内のガラスのリフロー温度よりも高い温度まで加熱されなければならない。一部の実施形態において、リフロー温度は、ガラス材料に応じて、320℃ほどの低さ又は1500℃ほどの高さであり得る。融着中にリフロー温度よりも高くまで加熱した後、ガラス波長変換層42は、平坦でなかったり、十分に均一な厚さのものでなかったりすることがある。一部の実施形態において、波長変換構造38の中心からエッジまでの厚さ均一性を改善するため、及び/又は所与の用途の色点を満足するため、波長変換層40に融着された後に、ガラス波長変換層42が、例えば、
図3に示すウェハの頂面41を研削することによって、あるいはその他の好適技術によって薄化され得る。
【0031】
一部の実施形態において、ガラス波長変換層42及びセラミック波長変換層40の双方が、融着後に、例えば研削又はその他の好適技術によって薄化され得る。一部の実施形態において、セラミック波長変換層40のみが融着後に薄化されてもよい。一部の実施形態において、セラミック波長変換層40は、融着後に、300μm以上から120μm以下まで薄化される。セラミック波長変換層40は、融着前に粗削り技術によって(例えば、上述のように800μmの厚さから300μmの厚さまで)薄化され、その後、融着後にもっと細かい研削/研磨技術を用いて(例えば、上述のように300μmの厚さから120μm以下まで)薄化され得る。薄化は概して、
図3の構造が後述のように個々のプレートレットへとダイシングされる前に、波長変換構造38がなおもウェハ形態にある間に行われる。
【0032】
セラミック波長変換層40は典型的に、ガラス波長変換層42よりも敏速に熱を伝える。従って、一部の実施形態において、構造38の向きは、波長変換層40が発光デバイスに隣接して配置され、光が取り出される頂部層が波長変換層42であるようにされる。一部の実施形態において、構造38からの光取り出しを高めるとともに後方反射を抑制あるいは防止するため、薄化中に波長変換層42の頂面が、粗面加工、パターン加工、又はテクスチャ加工される。
【0033】
波長変換器38は、単一の発光デバイス、又は複数の発光デバイスのタイル、に合った大きさにされたプレートレットへとダイシングされる。
図4、5及び9は、ダイシングされた波長変換プレートレットを例示している。
【0034】
図4において、プレートレット44は、ウェハ表面に対して垂直な向きのソーブレードでダイシングされている。
図4のプレートレット44は、実質的に垂直な側面を有している。プレートレットは、発光デバイスと同じ形状及びサイズであってもよいし、発光デバイスよりも僅かに大きくてもよいし(例えば、1.06×1.06mm
2のプレートレットが1×1mm
2のLEDダイ上に置かれ得る)、あるいは発光デバイスよりも僅かに小さくてもよい(例えば、0.965×0.965mm
2のプレートレットが1×1mm
2のLEDダイ上に置かれ得る)。
【0035】
図5において、プレートレット46は、斜めの側面48を有している。側壁の角度は、プレートレット46の厚さ全体にわたって一貫している。プレートレット46は、斜めにされたソーブレードを用いてウェハ38からプレートレットを切断することによって形成され得る。例えば、ソーブレードは、一部の実施形態においてウェハの頂面への法線に対して80°以下、一部の実施形態においてウェハの頂面への法線に対して30°以上、一部の実施形態においてウェハの頂面への法線に対して65°以下、そして、一部の実施形態においてウェハの頂面への法線に対して45°以上、の角度に傾斜され得る。
【0036】
図9において、プレートレット70は、2つ以上の表面を持つ側壁を有している。この側壁は、第1の向きを持つ第1の表面72と、第1の向きとは異なる第2の向きを持つ第2の表面74とを有している。
図9の構造において、第1の部分72は実質的に垂直であり、第2の部分74は傾斜している。他の例において、第1の部分は、ウェハの頂面への法線に対して傾斜され、第2の部分は、第1の部分とは異なる角度で傾斜され得る。第1の部分と第2の部分との間の境界は、波長変換層40内にあってもよいし、
図9に示すように波長変換層42内にあってもよいし、あるいは波長変換層40と42との間の境界にあってもよい。
図9に示す構造は、
図3に示した波長変換ウェハ38を2パスでソーイングすることによって形成される。一実施形態において、傾斜されたブレードが傾斜部分74をカットする。次に、垂直部分72を形成する真っ直ぐなブレードでウェハがカットされる。一実施形態において、2回目のカットがプレートレット70を互いから完全に分離する。何れの表面が最初に形成されてもよい。
【0037】
プレートレット46が、
図5及び9においてのように傾斜した側面を有するとき、傾斜された領域の厚さが、側壁の角度と組み合わさって、プレートレットの底面の面積、すなわち、LEDダイに隣り合わせて置かれる表面の面積を決定する。例えば、1×1mm
2であるLEDダイに対し、プレートレットの頂面が1.06×1.06mm
2である場合、プレートレットの可能な底面寸法は、0.98×0.98mm
2、0.965×0.965mm
2、0.94×0.94mm
2、及び、1×1mm
2LEDダイに等しいかそれよりも小さいかであるその他の寸法を含む。プレートレットの底面は、LEDダイと同じサイズであるか、それよりも小さいかであることが多いが、必ずしもそうである必要はない。
【0038】
図6-8は、波長変換式発光デバイスの組み立てを例示している。
図6にて、
図2に示したデバイス又はその他の好適デバイスとし得るものである個々のLED10が、マウント12に取り付けられる。例えば
図4、5又は9に示した構造のうちの1つなどの、個々の波長変換プレートレットが、各LED10にピックアンドプレースにより取り付けられる。一部の実施形態において、波長変換プレートレットをLEDに取り付けるのに先立って、LED10上に、接着剤50の層がキャストされ、ディスペンスされ、噴射され、あるいはその他の方法で配設される。例えばシリコーンなど、如何なる好適な接着剤が用いられてもよい。
図6-8において、波長変換プレートレットは、セラミック波長変換層40がLED10に付着されて、ガラス波長変換層42が構造体の頂部層であるようにマウントされている。これに代わる実施形態において、ガラス波長変換層42がLED10に付着されて、セラミック波長変換層40が構造体の頂部層であってもよい。一部の実施形態において、接着剤50を硬化させるために、この構造が加熱され得る。マウント12上のボンドパッド80が、複数のLED10のための電気接続を提供する。
【0039】
図7にて、隣接するデバイス間の空間56に、反射材料52が押し込められる。反射材料52は、これらの図において、その他の層から区別するためにハッチング付きで示されている。反射材料52は、例えば、シリコーンなどの透明材料内に置かれた酸化チタン粒子とし得る。個々のデバイス間の反射材料52は、例えば自動車ヘッドランプの明暗コントラスト仕様といった、所与の用途の仕様を満足するために必要とされ得る。反射材料は、隣接するデバイス間に加えて、反射材料54によって例示するように個々のLED10の上にも配設され得る。
【0040】
図8にて、各デバイスの波長変換層42の頂面55を通じて光が放出され得るよう、個々のデバイスの上の材料を除去するように反射材料52が薄化される。一部の実施形態において、複数のLED10のための電気接続を提供するものであるマウント12上の1つ以上のボンドパッド80が、
図7で反射材料52によって覆われ、それが
図8で除去される。余分な反射材料は、如何なる好適技術によって除去されてもよい。一部の実施形態において、余分な反射材料は、乾式ビーズブラスティング又は湿式ビーズブラスティングによって除去される。例えば、乾式ビーズブラスティングにおいて、空気と80μmの平均直径を持つ重曹粒子との流れが、反射材料の表面に向けられて、余分な反射材料が除去される。湿式ビーズブラスティングの一例においては、水スラリー内の180μmの平均直径を持つプラスチック粒子が、反射材料の表面に向けられて、余分な反射材料が除去される。一部の実施形態において、
図8における余分な反射材料の除去中に波長変換層42の頂面55が粗面化されて、光取り出しが向上される。
【0041】
本発明を詳細に説明したが、当業者が認識するように、本開示を所与として、ここに記載の発明概念の精神を逸脱することなく、本発明に変更が為され得る。故に、本発明の範囲は、図示して説明した特定の実施形態に限定されるものではない。