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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/90 20060101AFI20230721BHJP
   A01D 34/78 20060101ALI20230721BHJP
   A01D 34/68 20060101ALI20230721BHJP
   A01G 3/04 20060101ALI20230721BHJP
   A01G 3/053 20060101ALI20230721BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20230721BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20230721BHJP
   B23D 57/02 20060101ALN20230721BHJP
   B23D 49/16 20060101ALN20230721BHJP
【FI】
A01D34/90 B
A01D34/78 Z
A01D34/68 Z
A01D34/90 Z
A01D34/90 A
A01G3/04 501Z
A01G3/053
H02K9/06 C
H02K11/33
B23D57/02
B23D49/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020010307
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021114936
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】籾山 寛
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-200673(JP,A)
【文献】特開2017-155632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0265664(US,A1)
【文献】特開2007-136607(JP,A)
【文献】特開2011-097837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/90
A01D 34/78
A01D 34/68
A01G 3/04
A01G 3/053
H02K 9/06
H02K 11/33
B23D 57/02
B23D 49/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用動力源となるモータと、該モータが前後方向に向けた姿勢で内装される本体ケーシングと、作業部が設けられる操作棹と、該操作棹を前記本体ケーシングに取付固定するための棹固定具と、を備えた電動作業機であって、
前記モータと、該モータの制御を行うための制御基板と、前記モータの前面側に組み付け固定された前記棹固定具と、前記モータの後面側に組み付け固定された導風仕切部材とでモータ組立体が構成されており、
前記導風仕切部材は、前記本体ケーシングにおいて前後方向に所定間隔をあけて設けられた排気口と吸気口との間を気密的に仕切る仕切板部を有し、該仕切板部に前記吸気口から吸入された冷却空気を前記モータと前記本体ケーシングとの間の空間を通って前記モータの前面側の空気吸込用の開口に送るための導風窓が設けられており、
前記仕切板部の後面側に前記制御基板が配置されており、
前記モータの回転駆動軸の後部に、前記モータの後部で前記モータと前記仕切板部との間に設けられたファンケースにより覆われ、前記仕切板部の前側と後側との間に前記冷却空気の流路を形成する冷却ファンが設けられており、
前記冷却空気の流路に沿って、前記冷却空気は、前記仕切板部の後側に設けられた前記吸気口から前記本体ケーシングに流入し、前記導風窓を通り抜けて前記仕切板部の後側から前記仕切板部の前側に流入し、前記モータと前記本体ケーシングとの間の前記空間を通って前向きに流れ、前記モータの前面側の前記空気吸込用の開口から前記モータ内部に流入し、前記モータ内部で後向きに流れて前記モータを冷却し、前記モータを通って流れた後に前記仕切板部の前側に設けられた前記排気口から流出することを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
前記本体ケーシングにおける底部の前後方向に前記排気口と前記吸気口とが設けられるとともに、前記仕切板部の上部に前記導風窓が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記制御基板の下部に高温となる電子部品が実装されるとともに、前記吸気口からの冷却空気が前記高温となる電子部品をより多く通るように、前記制御基板に下部が拡開したガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記仕切板部に一体に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電動作業機。
【請求項5】
前記導風仕切部材は、前記モータの後部に設けられた前記ファンケースの少なくとも一部を覆う収容凹部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電動作業機。
【請求項6】
前記本体ケーシングは、前端及び後端が開口するとともに、当該本体ケーシング内を前後に仕切るように隔壁部が設けられた単一の筒状体とされ、
前記棹固定具は、前記隔壁部の後方に配置されて前記隔壁部に設けられた通し穴を介して前記隔壁部の前方側から後方側に向けてねじ込まれる少なくとも1本のボルトにより前記隔壁部に締付固定される取付台部と、該取付台部から前記隔壁部に設けられた挿通穴を介して前記隔壁部の前方に突出し、前記操作棹の基端部を固定するための管状固定部とを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを作業用動力源とする刈払機、ヘッジトリマー、チェンソー等の電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータ(以下、単にモータと称する)を作業用動力源とする携帯型の電動作業機は、通常、本体ケーシング内に、作業用動力源となるモータ、モータ等の制御を行う制御基板、バッテリ等が内装されるが、本体ケーシング内の温度(内装部品の発熱量)は、エンジンを動力源とするものに比して低いものの、高くなる場合がある。本体ケーシング内の温度が高温になると内装部品が劣化しやすくなるので、従来、特許文献1等にも見られるように、モータに冷却ファンを設け、外気を本体ケーシング内に吸い込んで、熱が籠もらないようにする、高温となる部品に冷却風を当てるなどの対策が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2010/0218385号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動作業機では、本体ケーシング内に吸入される低温の冷却空気に本体ケーシングから排出されるべき高温の空気が混じるなどして、冷却効率がよいとは言えなかった。
【0005】
また、モータ等の各部品の本体ケーシング内への組み付けは個別に行うようにされており、組立作業に手間と時間がかかる等の問題もあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、内装部品の冷却を効率良く行うことができるとともに、組立作業を簡単容易に行えて、工数の削減、製造コストの低減等を図ることのできる電動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電動作業機は、基本的には、作業用動力源となるモータと、該モータが前後方向に向けた姿勢で内装される本体ケーシングと、作業部が設けられる操作棹と、該操作棹を前記本体ケーシングに取付固定するための棹固定具と、を備える。
【0008】
そして、前記モータと、該モータの制御を行うための制御基板と、前記モータの前面側に組み付け固定された前記棹固定具と、前記モータの後面側に組み付け固定された導風仕切部材とでモータ組立体が構成されており、前記導風仕切部材は、前記本体ケーシングにおいて前後方向に所定間隔をあけて設けられた排気口と吸気口との間を気密的に仕切る仕切板部を有し、該仕切板部に前記吸気口から吸入された冷却空気を前記モータと前記本体ケーシングとの間の空間を通って前記モータの前面側の空気吸込用の開口に送るための導風窓が設けられており、前記仕切板部の後面側に前記制御基板が配置されていることを特徴としている。
【0009】
好ましい態様では、前記本体ケーシングにおける底部の前後方向に前記排気口と前記吸気口とが設けられるとともに、前記仕切板部の上部に前記導風窓が設けられる。
【0010】
他の好ましい態様では、前記制御基板の下部に高温となる電子部品が実装されるとともに、前記吸気口からの冷却空気が前記高温となる電子部品をより多く通るように、前記制御基板に下部が拡開したガイド部材が設けられる。
【0011】
他の好ましい態様では、前記ガイド部材は、前記仕切板部に一体に形成される。
【0012】
別の好ましい態様では、前記導風仕切部材は、前記モータの後部に設けられたファンケースの少なくとも一部を覆う収容凹部を有する。
【0013】
別の好ましい態様では、前記本体ケーシングは、前端及び後端が開口するとともに、当該本体ケーシング内を前後に仕切るように隔壁部が設けられた単一の筒状体とされ、前記棹固定具は、前記隔壁部の後方に配置されて前記隔壁部に設けられた通し穴を介して前記隔壁部の前方側から後方側に向けてねじ込まれる少なくとも1本のボルトにより前記隔壁部に締付固定される取付台部と、該取付台部から前記隔壁部に設けられた挿通穴を介して前記隔壁部の前方に突出し、前記操作棹の基端部を固定するための管状固定部とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電動作業機では、モータと制御基板と棹固定具と導風仕切部材が一体化されてモータ組立体として一つの物品として扱われるようにされるので、組立作業を簡易化、迅速化できる。
【0015】
また、導風仕切部材で排気口と吸気口との間が仕切られて、低温の吸気に高温の排気が混じりにくくされるとともに、仕切板部の後面側に制御基板が配置されて吸気口からの冷却風が高温となる電子部品に当たりやすくされているので、制御基板を効率的に冷却でき、制御基板に実装された電子部品(コンデンサ等)の熱による劣化を生じ難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る電動作業機の一実施形態の共通機体部と3種の交換用作業部を示す斜視図。
図2図1に示される電動作業機における本体ケーシングの前端からキャップを離してその内部を示す斜視図。
図3図1に示される電動作業機における操作棹の基端部付近と本体ケーシングの前部を切り欠いてその内部を示す斜視図。
図4図1に示される電動作業機における操作棹の基端部と本体部の前半分を示す縦断面図。
図5図4に示されるモータ組立体の斜め前方斜視図。
図6図4に示されるモータ組立体の斜め後方斜視図。
図7図4に示されるモータ組立体を構成する棹固定具、モータ、及び導風仕切部材の斜め前方から見た分解斜視図。
図8図4に示されるモータ組立体を構成する棹固定具、モータ、制御基板、及び導風仕切部材の斜め後方から見た分解斜視図。
図9図1に示される電動作業機における本体部の組立工程(その1)の説明に供される図。
図10図9に示される本体部の組立工程(その1)の完了後の状態を示す斜視図。
図11図1に示される電動作業機における本体部の組立工程(その2)の説明に供される図。
図12図1に示される電動作業機における本体部の組立工程(その3)の説明に供される図。
図13図9に示される仮止め機構部の構成説明に供される概略図。
図14図9に示される仮止め機構部の作用効果説明に供される斜視図。
図15図9に示される仮止め機構部の他例(その1)を示す概略側面図。
図16図9に示される仮止め機構部の他例(その2)を示す概略側面図。
図17図9に示される仮止め機構部の他例(その3)を示す概略側面図。
図18図9に示される仮止め機構部の他例(その4)を示す概略側面図。
図19図1に示される電動作業機における本体部の空気流れ説明に供される全体縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照しながら説明する。
【0018】
[電動作業機の構成]
図1は、本発明の一実施形態の電動作業機1の共通機体部10と3種の交換用作業部(アタッチメントとも呼ばれる)50(51、52、53)を示す斜視図、図2は、図1の電動作業機1における本体ケーシング23の前端からキャップ13を離してその内部を示す斜視図、図3は、図1の電動作業機1における操作棹11の基端部11a付近と本体ケーシング23の前部を切り欠いてその内部を示す斜視図、図4は、図1の電動作業機1における操作棹11の基端部11aと本体部20の前半分を示す縦断面図である。
【0019】
図示実施形態の電動作業機1は、作業用動力源となるモータ30を備える共通機体部10と該共通機体部10に着脱可能な作業部50(51、52、53)とから構成されている。共通機体部10は、前端及び後端が開口するとともに前端側から後端側(後方)に行くに従って幅広となる単一の筒状体とされて前記モータ30が前後方向に向けた姿勢で内装される合成樹脂製の本体ケーシング23を持つ本体部20と、該本体部20の前端部にその基端側が取付固定されるストレートパイプからなる操作棹11(詳しくは、操作棹11の根元部又は後半部を構成する主操作棹11A)とを備える。操作棹11の基端側には、本体ケーシング23の前端に被着されるキャップ13、グリップ14、ハンドレバー15等が一体化されて外装されるとともに、それらの前方側に扇形のループハンドル17が取り付けられている。
【0020】
また、操作棹11内には、その中心を通るように、モータ30の回転駆動力を当該操作棹11の先端側に設けられる作業部50に伝達するための伝動軸12がベアリング58(図4)に支持された状態で配在されている。
【0021】
一方、作業部50は、複数種(ここでは3種のみ示されている)の交換用作業部(アタッチメント)51、52、53で構成されている。図示例において、作業部51は刈払機、作業部52はヘッジトリマー、作業部53はチェンソーとして機能する。各作業部51、52、53は、いずれも操作棹11部分(詳しくは、操作棹11の先端部又は前半部を構成する着脱操作棹11B)と伝動軸12部分を有し、それらは主操作棹11Aの先端部に設けられた連結固定具18及び伝動接続具(図示せず)により任意に着脱可能とされている。
【0022】
筒状の本体ケーシング23内には、その前端近くに当該本体ケーシング23内を前後に仕切るように隔壁部24が設けられている。該隔壁部24には、図5から図8に示される如くの、モータ30、該モータ30等の制御を行うための制御基板80、操作棹11の基端部11aを本体ケーシング23に取付固定するための棹固定具(フィクスチャとも呼ばれる)40、及び導風仕切部材60の4部品が一体化されてなるモータ組立体25が取付固定されている。
【0023】
モータ30は、短円筒状本体部31の前面側にベアリング付きベース32が固定され、このベース32から前方に向けて回転駆動軸33が突出せしめられている。また、短円筒状本体部31の後部側には、回転駆動軸33の後部に設けられた冷却ファン(羽根)を覆うようにファンケース34が設けられている。ここでは、短円筒状本体部31とファンケース34との組み付けは、短円筒状本体部31の後端に(後向きに)4箇所設けられたフック38でファンケース34の前端に設けられた門状係合部37を係止することによりなされている。ファンケース34の下部は本体ケーシング23に設けられた排気口21に向けた吹き出し口34aとなっている。モータ30における短円筒状本体部31のベース32以外の前面側部分は冷却ファンによる空気吸込用の開口36となっている。
【0024】
このモータ30のベース32(つまり、モータ30の前面側)に棹固定具40(の取付台部42)が3本のボルト41で締付固定されている。この棹固定具40は、本体ケーシング23の隔壁部24の後方に配置されるとともに本体ケーシング23の隔壁部24にその後方側から押し当てられて、隔壁部24に4箇所設けられた通し穴27を介して隔壁部24の前方側から後方側に向けてねじ込まれる4本のボルト28により隔壁部24に締付固定される矩形厚板状の取付台部42と、該取付台部42の中央から突設されて隔壁部24に設けられた鍵形状の挿通穴26を介して隔壁部24の前方に突出し、操作棹11の基端部11aを締付固定するための管状固定部44とを有する。管状固定部44は、上部にスリット状の切欠部46aが形成された片ボルト式狭締具46の構成となっている。また、取付台部42の4隅には、前記4本のボルト28がねじ込まれるねじ穴45が設けられている。
【0025】
操作棹11に内装された伝動軸12は、その基端部12aがカップリング57を介して管状固定部44内に配在されたモータ30の回転駆動軸33に連結固定されている(図4参照)。
【0026】
ここで、本実施形態では、当該電動作業機1(の共通機体部10)の組立時において、管状固定部44と隔壁部24における挿通穴26(操作棹11)とが同軸となるとともに、隔壁部24における4本のボルト28の通し穴27とボルト28がねじ込まれる取付台部42のねじ穴45とが同軸となるように、次のような構成が付加されている。
【0027】
すなわち、モータ組立体25における棹固定具40の取付台部42を4本のボルト28により隔壁部24に本固定する前において、取付台部42を隔壁部24の後方に配置して、管状固定部44を隔壁部24の挿通穴26を介して隔壁部24の前方側に突出させると同時に、取付台部42を隔壁部24にその後方側から押し当てた際に、本体ケーシング23に対してモータ組立体25を隔壁部24に沿う面(平行面)内で直交する2方向及び回転方向に自動的に動かせてモータ組立体25の位置を保持させる仮止め機構部39が設けられている。
【0028】
この仮止め機構部39は、具体的には、管状固定部44の前端(つまり、管状固定部44における隔壁部24の前方に突出した部分)に形成された厚肉部(鍔状部)47(の後面)に所定角度間隔(ここでは180度)をあけて設けられた複数個(ここでは左右一対)の嵌合部49、49と、この左右一対の嵌合部49、49に対応して隔壁部24における挿通穴26の周縁部に設けられた左右一対の突っ張り片部29、29とで構成されている。
【0029】
左右一対の嵌合部49、49の後面は、前方に凹む側面視楕円弧ないし山形状の嵌合凹部49a、49aとなっている。
【0030】
左右一対の突っ張り片部29、29の先端(面)は、前記嵌合部49、49の嵌合凹部49a、49aに嵌合し得る側面視楕円弧ないし山形状の嵌合凸部29a、29aとなっている。ここで、左右一対の突っ張り片部29、29は、図13の左図に示される如くに、それらの先端が相互に近づくように隔壁部24における挿通穴26の周縁部から斜め前方(内側に傾く方向)に鏡面対称となるように突出している。自然状態(仮止め前の状態)では、この左右一対の突っ張り片部29、29の先端の離隔距離をLa、管状固定部44(の胴部)の直径をLb、厚肉部(鍔状部)47の直径をLcとすれば、La<Lb<Lc(図13)またはLb<La<Lcとされる。したがって、取付台部42を隔壁部24の後方に配置して、管状固定部44を隔壁部24の挿通穴26を介して隔壁部24の前方側に突出させると同時に、取付台部42を隔壁部24にその後方側から押し当てた際には、図13の右図に示される如くに、管状固定部44により突っ張り片部29、29が弾性的に押し広げられてその先端が管状固定部44の側面に弾発的に圧接するとともに、最終的に先端の嵌合凸部29a、29aが嵌合部49、49の嵌合凹部49a、49aに嵌り込む(詳細は後述)。
【0031】
なお、嵌合部49の後面と突っ張り片部29の先端面の形状は反対でもよい。すなわち、嵌合部49の後面は、側面視楕円弧の嵌合凸部49bとし、突っ張り片部29の先端面は、後方に凹む側面視楕円弧の嵌合凹部29bとしてもよい(図15)。あるいは、嵌合部49の後面は、側面視山形状の嵌合凸部49cとし、突っ張り片部29の先端面は、後方に凹む側面視山形状の嵌合凹部29cとしてもよい(図16)。
【0032】
また、本例では、管状固定部44の厚肉部(鍔状部)47(の後面)に嵌合部49、49が設けられているが、管状固定部44の厚肉部(鍔状部)47以外に嵌合部49、49を設けてもよい。例えば、管状固定部44の側面に、本例と同形状の前方に凹む側面視楕円弧ないし山形状の嵌合凹部49dを後面側に持つ嵌合部49を形成してもよい(図17)。あるいは、管状固定部44の側面に、側面視円形状の突起からなる嵌合部49を形成してもよい(図18)。図18に示す例の場合、嵌合部49の後面は、側面視楕円弧の嵌合凸部49eとされ、突っ張り片部29の先端面は、後方に凹む側面視楕円弧の嵌合凹部29eとされる。
【0033】
前記モータ組立体25の後部を構成する導風仕切部材60は、例えば合成樹脂製とされ、モータ30の後部に設けられたファンケース34の少なくとも上半部(後述する概略扇形の導風窓64の前側に位置する部分)を覆う収容凹部63と、本体ケーシング23の底部23b(の隔壁部24よりも後部)において前後方向に所定間隔をあけて設けられた排気口21と吸気口22との間を概略気密的に仕切る仕切板部62とを有する。この仕切板部62の上部(仕切板部62における収容凹部63の上側)には、吸気口22から吸入された冷却空気をモータ30と本体ケーシング23との間の空間66を通ってその前面側の空気吸込用の開口36に送るための導風窓64が設けられている(特に図4図19参照)。ここでは、導風仕切部材60のモータ30の後面側への組み付け固定は、仕切板部62の後面側からファンケース34に1本のボルト69をねじ込むことによりなされている。なお、ボルト69による組み付け固定に代えて、もしくは、ボルト69による組み付け固定とともに、スナップフィット等によって導風仕切部材60をモータ30の後面側へ組み付けてもよい。また、収容凹部63の前端外面には、前記短円筒状本体部31のフック38(ファンケース34の門状係合部37から後方に突出した部分)との干渉を避けるための凹部68が3箇所設けられている。
【0034】
また、仕切板部62は本体ケーシング23(の内周形状)と概略同形とされ、仕切板部62の外周面は本体ケーシング23の内周面に対接するようになっており、仕切板部62により本体ケーシング23が補強されて凹みにくくなっている。仕切板部62の後面側にはフェライト電磁波吸収体の収納部88が設けられている。
【0035】
また、排気口21と吸気口22との間に配在された前記仕切板部62における後面側には制御基板80が縦置きで配置されている。制御基板80は、FET、ROM、RAM、入出力回路等で構成されたマイクロコンピュータが搭載されるとともに、コンデンサ82、コネクタ84等の他の必要な電子部品が実装されている。この場合、制御基板80のうちの吸気口22に近い下部には高温となるFETやコンデンサ82等が配置され、FETには冷却フィン85が被着されている。
【0036】
また、導風仕切部材60の仕切板部62には、前記高温となるFET(冷却フィン85)やコンデンサ82等の周囲(側面及び後面)を覆うように上部及び下部が開放したガイド部材67が一体に形成されている。吸気口22からの冷却空気が前記高温となるFET(冷却フィン85)やコンデンサ82をより多く通るように、ガイド部材67の下部は(上部よりも)拡開した構成となっている。
【0037】
前記本体ケーシング23の後部(つまり、モータ組立体25の後側)には、バッテリ90を収納(スロット収納)するバッテリケース92が所要本のボルト93で取付固定されている(図1図11参照)。
【0038】
[電動作業機の組立方法]
次に、上記のような構成とされた電動作業機1(の本体部20)の組立方法、特に上述したモータ組立体25の本体ケーシング23への組付工程の一例を説明する。
【0039】
まず、図9に示される如くに、本体ケーシング23を、前部側を下にして立てた姿勢とするとともに、モータ組立体25を棹固定具40側を下にして、本体ケーシング23内の形状とモータ組立体25(の導風仕切部材60の仕切板部62)の形状を合わせてモータ組立体25を本体ケーシング23内に相対的に挿入して、取付台部42を隔壁部24に押し当てる。これにより、図13の右図に示される如くに、管状固定部44により突っ張り片部29、29が弾性的に押し広げられてその先端が管状固定部44の側面に弾発的に圧接するとともに、先端の嵌合凸部29a、29aが嵌合部49、49の嵌合凹部49a、49aに嵌り込み、これによって、本体ケーシング23にモータ組立体25が仮固定(仮止め)される(図10参照)。
【0040】
この場合、図14の左図に示される如くに、嵌合凹部49a、49aに嵌合凸部29a、29aがきっちり嵌合しなくても、その後、本体ケーシング23内にモータ組立体25を上記のように挿入した状態で制御基板80の結線や配線処理を行い、次いで図11に示される如くに、本体ケーシング23にバッテリケース92を所要本のボルト93で締付固定した後、図12に示される如くに、本体ケーシング23(本体部20)を反転させると、図14の右図に示される如くに、仮止め機構部39を構成する嵌合凹部49a、49aと嵌合凸部29a、29aとのすべり整合作用により、嵌合凹部49a、49aと嵌合凸部29a、29aとが確実にきっちり嵌合し、これに合わせてモータ組立体25が隔壁部24に沿う面(平行面)内で直交する2方向及び回転方向に自動的に動く。これによって、管状固定部44の軸Jbと挿通穴26(操作棹11)の軸Jaとが同軸となるとともに、隔壁部24における4本のボルト28の通し穴27の軸Kaとボルト28がねじ込まれる取付台部42のねじ穴45の軸Kbとが同軸となり(すなわち、位置合わせ(芯出し)が行われ)、本体ケーシング23とモータ組立体25との位置ずれが解消される。
【0041】
そのため、図12に示される如くに、モータ組立体25を隔壁部24に固定(本固定)すべく、4本のボルト28を通し穴27を介してねじ穴45にねじ込む際には、通し穴27とねじ穴45とが一直線上に位置するので、ねじ込み作業を容易に行える。
【0042】
同様に、管状固定部44(モータ30の回転駆動軸33)と挿通穴26(操作棹11及び伝動軸12)とが同心となるので、管状固定部44と操作棹11(本操作棹11A)との連結、及び回転駆動軸33と伝動軸12との連結を容易に行える。
【0043】
[作用効果]
以上の説明から明らかなように、本実施形態の電動作業機1では、モータ30、制御基板80、棹固定具40、及び導風仕切部材60の4部品が一体化されてモータ組立体25として一つの物品として扱われるようにされるので、組立作業を簡易化、迅速化できる。
【0044】
また、モータ組立体25を本体ケーシング23に仮固定可能とされ、しかも、仮固定時に本体ケーシング23とモータ組立体25との位置合わせ(芯出し)が自動的に行われるので、従来のように作業者がモータ組立体25を保持したり、各部を位置合わせする必要がなく、また、特別な治具も不要であるので、組立作業を簡単容易に行えて、工数の削減、製造コストの低減等を効果的に図ることができる。
【0045】
加えて、モータ組立体25の本体ケーシング23への組み付けは、本体ケーシング23の外側からボルト28をねじ込むだけでよいので、この点からも組立作業が楽になる。
【0046】
さらに、メンテナンスや部品交換のため、モータ組立体25を本体ケーシング23から取り出す必要があるときは、ボルト28を外した後に突っ張り片部29を指等で拡げるだけでよく、モータ組立体25を取り外した後に再び取付固定する際には突っ張り片部29を再利用することもできる。また、突っ張り片部29が不要になったときは、切り取ることもできる。
【0047】
また、上記のように、本体ケーシング23の後部に導風仕切部材60が設けられていることにより、図19に示される如くに、吸気口22から吸い込まれた冷却空気は、高温となる冷却フィン85やコンデンサ82を冷やしながら上昇し、仕切板部62の上部の導風窓64を通り抜けてモータ30と本体ケーシング23との間の空間66を通ってモータ30の前面側の空気吸込用の開口36(図7参照)からモータ30内部に吸い込まれ、冷却ファンによって排気用の吹き出し口34aから排気口21に向けて吹き出される。
【0048】
本実施形態では、導風仕切部材60で排気口21と吸気口22との間が仕切られて、低温の吸気に高温の排気が混じりにくくされるとともに、仕切板部62の後面側に制御基板80が配置されて吸気口22からの冷却風が高温となる電子部品に当たりやすくされているので、制御基板80を効率的に冷却でき、制御基板80に実装された電子部品(コンデンサ82等)の熱による劣化を生じ難くできる。
【0049】
また、排気口21、吸気口22が本体ケーシング23の底部23bに設けられていることにより、本体ケーシング23内に塵埃や雨水が入りにくくなるという効果も得られる。
【0050】
なお、上記実施形態においては、携帯型の電動作業機として、共通機体部と交換用作業部(アタッチメント)を備えているものを例示したが、電動作業機としては、それに限られることはなく、交換用作業部を持たない(言い換えれば、作業部が交換可能でない)、通常の刈払機、ヘッジトリマー、チェンソー等であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 電動作業機
10 共通機体部
11 操作棹
20 本体部
21 排気口
22 吸気口
23 本体ケーシング
24 隔壁部
25 モータ組立体
26 挿通穴
27 通し穴
28 ボルト
29 突っ張り片部
29a 嵌合凸部
30 モータ
33 回転駆動軸
34 ファンケース
36 空気吸込用の開口
39 仮止め機構部
40 棹固定具
42 取付台部
44 管状固定部
45 ねじ穴
47 厚肉部(鍔状部)
49 嵌合部
49a 嵌合凹部
50 交換用作業部
60 導風仕切部材
62 仕切板部
63 収容凹部
64 導風窓
66 空間
67 ガイド部材
80 制御基板
82 コンデンサ
84 コネクタ
85 冷却フィン
88 フェライト電磁波吸収体の収納部
90 バッテリ
92 バッテリケース
図1
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