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特許7316999試料分割方法、半導体素子の製造方法及び半導体素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】試料分割方法、半導体素子の製造方法及び半導体素子
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02 20060101AFI20230721BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20230721BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
H01S5/02
B23K26/364
H01L21/78 V
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020511635
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2019006876
(87)【国際公開番号】W WO2019193862
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018073502
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】池田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】北川 英夫
(72)【発明者】
【氏名】浅香 浩
(72)【発明者】
【氏名】小野 将之
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-050988(JP,A)
【文献】特表2014-501686(JP,A)
【文献】特開2011-249556(JP,A)
【文献】特開2012-164740(JP,A)
【文献】特開2012-243866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/02
B23K 26/364
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子基板を分割することにより半導体素子を製造する半導体素子の製造方法であって、
前記半導体素子基板の表面の第1の位置において光ビームの第1のパルスを照射することで第1の傷を形成する工程と、
前記第1の傷を形成する工程の後に、前記第1の位置から第1の方向に移動した前記半導体素子基板の表面の第2の位置において前記光ビームの第2のパルスを照射することで、少なくとも一部が前記第1の傷と重なる第2の傷を形成する工程と、
前記第2の傷を形成する工程の後に、前記第1の傷と前記第2の傷とで形成される凹部に沿って前記半導体素子基板を分割する工程とを含み、
前記半導体素子基板の内部の前記第2の傷の先端は、前記第1の方向とは反対方向に傾斜している、
半導体素子の製造方法。
【請求項2】
試料を分割する試料分割方法であって、
前記試料に凹部を形成する第1の工程と、
前記凹部に沿って前記試料を分割する第2の工程とを含み、
前記凹部は、前記試料の平面視では、第1の方向に沿って線状であり、かつ、前記試料の垂直断面視では、前記第1の方向と前記試料の深さ方向である第2の方向とで形成される面に広がる面状の第1の領域と、前記第1の領域から前記第1の方向とは反対側の方向に延びる線状の第2の領域とを有する、
試料分割方法。
【請求項3】
半導体素子基板を分割することにより半導体素子を製造する半導体素子の製造方法であって、
前記半導体素子基板に凹部を形成する第1の工程と、
前記凹部に沿って前記半導体素子基板を分割する第2の工程とを含み、
前記凹部は、前記半導体素子基板の平面視では、前記半導体素子の表面に沿った第1の方向に沿って線状であり、かつ、前記半導体素子基板の垂直断面視では、前記第1の方向と前記半導体素子基板の深さ方向である第2の方向とで形成される面に広がる面状の第1の領域と、前記第1の領域から前記第1の方向とは反対側の方向に延びる線状の第2の領域とを有する、
半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1の領域は、前記半導体素子基板を平面視したときに、前記凹部の開口部の下方に側部を有し、
前記第2の領域は、前記側部から延びている、
請求項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記半導体素子基板の垂直断面視において、前記第1の領域の断面形状は、略三角形状、または、前記表面側を上底とし、かつ、前記上底より下底が短い略台形状である、
請求項またはに記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記凹部は、前記第2の領域を複数有する、
請求項のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記半導体素子基板の垂直断面視において、前記半導体素子基板の内部側の前記第2の領域は、前記表面側の前記第2の領域よりも長い、
請求項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記半導体素子基板の垂直断面視において、前記第1の領域と、複数の前記第2の領域と、複数の前記第2の領域の先端を結ぶ線とで形成される形状は、略三角形状、または、前記表面側を上底とし、かつ、前記上底より下底が短い略台形状である、
請求項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記第2の領域の先端は、前記第1の領域とは反対側に曲がっている、
請求項のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2の工程では、前記第1の領域側から前記第2の領域側へ向かって亀裂が進むように、前記半導体素子基板を分割する、
請求項3~のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記第1の方向及び前記第2の方向の両方に垂直な方向を第3の方向とすると、
前記第2の領域の先端部は、前記第3の方向に折れ曲がっており、
前記第2の領域が前記第3の方向へ折れ曲がる長さは、前記第2の領域の前記第1の方向の長さより短い、
請求項10のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記第2の領域の前記第1の方向の長さは、前記第2の領域の前記第2の方向の長さより短い、
請求項11のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項13】
前記半導体素子基板の垂直断面視において、前記第1の領域は、前記半導体素子基板の表面から内部に向かって延びる複数の縞状部を有する、
請求項12に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項14】
前記第2の工程の後の前記半導体素子基板の側面視において、前記半導体素子基板の分割面には、前記第1の領域及び前記第2の領域から前記半導体素子基板の裏面に向かう方向に延びる段差が形成されている、
請求項13のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項15】
前記第2の領域から延びる前記段差の本数より、前記第2の領域を除く前記第1の領域から延びる前記段差の本数の方が多い、
請求項14に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項16】
前記第1の工程の前に、前記表面に平行な方向である第4の方向に延びる複数の導波路を形成する工程を含む、
請求項15のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項17】
前記第4の方向は、前記第1の方向に対して垂直な方向である、
請求項16に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項18】
前記第1の工程において、前記凹部は、隣り合う2つの前記導波路の間に形成される、
請求項17に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項19】
前記半導体素子基板は、半導体レーザ素子基板である、
請求項1、3~18のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項20】
少なくとも一つの側面に段差を有する半導体素子であって、
前記段差は、前記半導体素子の表面に沿った第1の方向と前記半導体素子の深さ方向である第2の方向とで形成される面に広がる面状の第1の領域と、前記第1の領域から前記第1の方向とは反対側の方向に延びる線状の第2の領域とを有し、
前記半導体素子は、半導体レーザ素子であり、
前記側面は、へき開面であって、共振器面であり、
前記側面における前記段差以外の部分は、平坦性を有する面であり、
面状の前記第1の領域の形状は、略三角形状、または、前記表面側を上底とし、前記上底より下底が短い略台形状であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域の一つの辺から複数本形成されており、
前記第2の領域の先端は、前記第1の領域とは反対側に曲がっている、
半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、傷形成方法、試料分割方法、半導体素子の製造方法、半導体レーザ素子の製造方法及び半導体レーザ素子に関し、特に、光ビームを用いて半導体レーザ素子基板又は半導体素子基板等の試料に傷(凹部)を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、プロジェクタの光源には、高輝度、高精彩、低消費電力及び長寿命等の特長を持つ半導体レーザ素子又はLED素子等の半導体発光素子が用いられ始めている。
【0003】
例えば、半導体レーザ素子は、半導体積層体が形成されたウエハ(半導体レーザ素子基板)を分割することによって作製することができる。具体的には、半導体レーザ素子基板をへき開することによって共振器面を有するバー状基板を形成し、その後、バー状基板を複数に分割して個片化することで半導体レーザ素子を作製することができる。
【0004】
従来、半導体レーザ素子基板を分割する場合、半導体レーザ素子基板にスクライブ溝と呼ばれる凹部を形成しておき、このスクライブ溝に沿って半導体レーザ素子基板を割断することで半導体レーザ素子基板を分割する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-249556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体レーザ素子基板を分割するための凹部は、例えば、レーザビーム等の光ビームによって形成される。具体的には、導波路を有する半導体レーザ素子を作製する場合、半導体レーザ素子基板の導波路間の各々にレーザビームによって凹部を形成しておき、半導体レーザ素子基板の裏面に刃状治具を押し当てて一つの凹部を起点にして半導体レーザ素子基板を分割する。
【0007】
しかしながら、従来の方法で形成した凹部では、半導体レーザ素子基板を分割したときの分割面の平坦性が悪い。この結果、半導体レーザ素子の品質も悪くなる。
【0008】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、半導体レーザ素子基板又は半導体素子基板等の試料を分割したときの分割面の平坦性を向上させることができる傷形成方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示に係る傷形成方法の一態様は、試料の表面に光ビームを照射することにより前記試料に傷を形成する方法であって、前記試料の表面の第1の位置において前記光ビームの第1のパルスを照射することで第1の傷を形成する工程と、前記第1の傷を形成する工程の後に、前記第1の位置から第1の方向に移動した前記試料の表面の第2の位置において前記光ビームの第2のパルスを照射することで、少なくとも一部が前記第1の傷と重なる第2の傷を形成する工程とを含み、前記試料の内部の前記第2の傷の先端は、前記第1の方向とは反対方向に傾斜している。
【0010】
また、本開示に係る半導体素子の製造方法の一態様は、半導体素子基板を分割することにより半導体素子を製造する半導体素子の製造方法であって、前記半導体素子基板の表面の第1の位置において光ビームの第1のパルスを照射することで第1の傷を形成する工程と、前記第1の傷を形成する工程の後に、前記第1の位置から第1の方向に移動した前記半導体素子基板の表面の第2の位置において前記光ビームの第2のパルスを照射することで、少なくとも一部が前記第1の傷と重なる第2の傷を形成する工程と、前記第2の傷を形成する工程の後に、前記第1の傷と前記第2の傷とで形成される凹部に沿って前記半導体素子基板を分割する工程とを含み、前記半導体素子基板の内部の前記第2の傷の先端は、前記第1の方向とは反対方向に傾斜している。
【0011】
また、本開示に係る試料分割方法の一態様は、試料を分割する試料分割方法であって、前記試料に凹部を形成する第1の工程と、前記凹部に沿って前記試料を分割する第2の工程とを含み、前記凹部は、前記試料の平面視では、第1の方向に沿って線状であり、かつ、前記試料の垂直断面視では、前記第1の方向と前記試料の深さ方向である第2の方向とで形成される面に広がる面状の第1の領域と、前記第1の領域から前記第1の方向とは反対側の方向に延びる線状の第2の領域とを有する。
【0012】
また、本開示に係る他の半導体素子の製造方法の一態様は、半導体素子基板を分割することにより半導体素子を製造する半導体素子の製造方法であって、前記半導体素子基板に凹部を形成する第1の工程と、前記凹部に沿って前記半導体素子基板を分割する第2の工程とを含み、前記凹部は、前記試料の平面視では、第1の方向に沿って線状であり、かつ、前記試料の垂直断面視では、前記第1の方向と前記試料の深さ方向である第2の方向とで形成される面に広がる面状の第1の領域と、前記第1の領域から前記第1の方向とは反対側の方向に延びる線状の第2の領域とを有する。
【0013】
また、本開示に係る半導体レーザ素子の製造方法の一態様は、半導体レーザ素子基板を分割することにより半導体レーザ素子を製造する半導体素子の製造方法であって、前記半導体レーザ素子基板に凹部を形成する第1の工程と、前記凹部に沿って前記半導体レーザ素子基板を分割する第2の工程とを含み、前記凹部は、前記試料の平面視では、第1の方向に沿って線状であり、かつ、前記試料の垂直断面視では、前記第1の方向と前記試料の深さ方向である第2の方向とで形成される面に広がる面状の第1の領域と、前記第1の領域から前記第1の方向とは反対側の方向に延びる線状の第2の領域とを有する。
【0014】
また、本開示に係る半導体素子の一態様は、少なくとも一つの側面に段差を有する半導体素子であって、前記段差は、前記半導体素子の表面に沿った第1の方向と前記半導体素子の深さ方向である第2の方向とで形成される面に広がる面状の第1の領域と、前記第1の領域から前記第1の方向とは反対側の方向に延びる線状の第2の領域とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、半導体レーザ素子基板又は半導体素子基板等の試料を分割したときの分割面の平坦性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施の形態に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る半導体レーザ素子の正面図である。
図3図3は、実施の形態に係る半導体レーザ素子の上面図である。
図4A図4Aは、図3のIVA-IVA線における実施の形態に係る半導体レーザ素子の断面図である。
図4B図4Bは、図3のIVB-IVB線における実施の形態に係る半導体レーザ素子の断面図である。
図5A図5Aは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法において、複数の導波路を有する半導体層積層体が形成された半導体レーザ素子基板を作製する工程を示す図である。
図5B図5Bは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法において、第1の凹部を形成する工程を示す図である。
図5C図5Cは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法において、半導体レーザ素子基板を分割する工程を示す図である。
図5D図5Dは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法において、バー状基板に端面コート膜を形成する工程を示す図である。
図5E図5Eは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法において、第2の凹部を形成する工程を示す図である。
図5F図5Fは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法において、バー状基板を分割する工程を示す図である。
図6図6は、図5Bの(b)において、破線で囲まれる領域VIの拡大図である。
図7図7は、図5Bの(b)の第2の横方向分割線における断面図である。
図8図8は、光ビームを用いて半導体レーザ素子基板に第1の凹部を形成する方法を説明するための図である。
図9図9の(a)は、実施の形態における第1の凹部を形成するときのレーザビームのレーザ平均パワーとレーザビーム位置との関係を示す図であり、図9の(b)は、実施の形態における第1の凹部の形状を示す図であり、図9の(c)は、図9の(a)において破線で囲まれる領域のパルス照射方法を示す図である。
図10図10は、レーザビームの移動方向とレーザビームの直線偏光の偏光方向との関係を示す図である。
図11図11は、試料に形成される傷の壁面におけるレーザビームの入射角に対する反射率を示す図である。
図12図12は、レーザビームの偏光角度と第1の凹部の折れ曲がり方向との関係を説明するための上面図である。
図13図13は、レーザビームの偏光角度と第1の凹部の折れ曲がりとの関係を説明するための図である。
図14図14は、実施の形態における半導体レーザ素子基板の分割面の形状を示す図である。
図15図15は、比較例の半導体レーザ素子基板の分割面の形状を示す図である。
図16図16は、実施例と比較例とにおける閾値電流(Ith)とスロープ効率(Se)との関係を示す図である。
図17図17は、実施例と比較例とにおける垂直光軸ずれを示す図である。
図18図18は、実施の形態に係る半導体レーザ素子の側面図である。
図19図19は、比較例の半導体レーザ素子の側面図である。
図20図20は、変形例に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図21図21は、変形例1の第1の凹部の形状を示す図である。
図22図22は、変形例2の第1の凹部の形状を示す図である。
図23図23は、変形例3の第1の凹部の形状を示す図である。
図24図24は、半導体レーザ素子基板の半導体素子領域外に形成される第1の凹部のバリエーションを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0018】
各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0019】
また、本明細書及び図面において、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元直交座標系の三軸を表している。本実施の形態では、Z軸方向を鉛直方向とし、Z軸に垂直な方向(XY平面に平行な方向)を水平方向としている。X軸及びY軸は、互いに直交し、かつ、いずれもZ軸に直交する軸である。X軸方向及びY軸方向は、基板100の基板面内の方向である。つまり、XY平面は、基板100の主面に平行な面である。また、半導体レーザ素子1のレーザ共振器長方向をY軸方向としている。なお、X軸、Y軸及びZ軸の各矢印が向いている方向をプラス方向としている。
【0020】
(実施の形態)
[半導体レーザ素子]
まず、本実施の形態に係る半導体レーザ素子1の製造方法によって製造される半導体レーザ素子1の構成について、図1図4Bを用いて説明する。図1図3は、それぞれ実施の形態に係る半導体レーザ素子1の斜視図、正面図及び上面図である。図4A及び図4Bは、それぞれ、図3のIVA-IVA線及びIVB-IVB線における同半導体レーザ素子1の断面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、半導体レーザ素子1は、第1の側面1aと、第2の側面1bと、(1-100)面の第3の側面1cと、(-1100)面の第4の側面1dとを有する。
【0022】
第1の側面1a及び第2の側面1bは、Y軸方向に略平行な面である。具体的には、第1の側面1a及び第2の側面1bは、YZ平面に略平行な面である。第2の側面1bは、第1の側面1aと対向している。
【0023】
なお、詳細は後述するが、第1の側面1a及び第2の側面1bは、半導体レーザ素子基板を分割して半導体レーザ素子1を作製する際に、Y軸方向に延在する縦方向分割線に沿った分割面である。
【0024】
第3の側面1c及び第4の側面1dは、X軸方向に略平行な面である。具体的には、第3の側面1c及び第4の側面1dは、XZ平面に略平行な面であって、第1の側面1a及び第2の側面1bに略垂直な面である。第4の側面1dは、第3の側面1cと対向している。第3の側面1c及び第4の側面1dは、半導体レーザ素子1の共振器面である。具体的には、第3の側面1cは、半導体レーザ素子1の前端面であり、第4の側面1dは、半導体レーザ素子1の後端面である。前端面である第3の側面1cは、半導体レーザ素子1から光が取り出される出射面であり、後端面である第4の側面1dは、出射面に対向する反射面である。
【0025】
なお、詳細は後述するが、第3の側面1c及び第4の側面1dは、半導体レーザ素子基板を分割して半導体レーザ素子1を作製する際に、X軸方向に延在する横方向分割線に沿った分割面である。具体的には、第3の側面1c及び第4の側面1dは、導波路201と接する面であり、へき開面である。また、図1図3には図示されていないが、第3の側面1c及び第4の側面1dには端面コート膜(反射膜)が被覆されている。
【0026】
図1図4Bに示すように、半導体レーザ素子1は、基板100と、基板100の一方の面の上に位置する半導体素子構造体200とを有する。本実施の形態における半導体レーザ素子1は、窒化物系半導体材料によって構成された窒化物半導体レーザである。したがって、基板100としては、窒化物半導体基板が用いられる。また、半導体素子構造体200は、複数の窒化物半導体層が積層された窒化物半導体層積層体である。
【0027】
基板100は、例えば、GaNからなるGaN基板である。本実施の形態では、基板100として、六方晶の(0001)Ga面を表面とするn型GaN基板を用いている。
【0028】
図4A及び図4Bに示すように、半導体素子構造体200は、基板100の上に、第1導電型の第1半導体層210と、活性層220と、第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層230とを順に有する。第1半導体層210、活性層220及び第2半導体層230の各々は、窒化物半導体層であり、一例として、以下のように構成される。
【0029】
第1半導体層210は、例えば、n型のAlGaNからなるn型クラッド層211と、n型クラッド層211の上に形成されたGaNからなるn側ガイド層212とを有する。
【0030】
活性層220は、アンドープの量子井戸活性層であり、例えば、InGaNからなる量子井戸層とInGaNからなる量子障壁層とが交互に積層された量子井戸構造の活性層である。
【0031】
第2半導体層230は、例えば、InGaNからなるp側ガイド層231と、p側ガイド層231の上に形成されたp型電子障壁層(オーバーフロー抑制層)232と、p型電子障壁層232の上に形成されたp型のAlGaNからなるp型クラッド層233と、p型クラッド層233の上に形成されたp型のGaNからなるp型コンタクト層234とを有する。
【0032】
図3に示すように、半導体レーザ素子1は、レーザ共振器長方向(Y軸方向)に延在する導波路201を有する。導波路201は、半導体レーザ素子1における電流注入領域及び光導波路としての機能を有する。図4A及び図4Bに示すように、導波路201は、第2半導体層230に形成されている。本実施の形態において、導波路201は、リッジ状に形成されたリッジストライプ構造である。
【0033】
具体的には、導波路201は、レーザ共振器長方向に延在する2本の開口部202を第2半導体層230に掘り込むことで形成されている。つまり、導波路201は、第2半導体層230に形成された2つの開口部202によって挟まれている。本実施の形態において、導波路201は、p型クラッド層233とp型コンタクト層234とを掘り込むことで形成されている。
【0034】
また、図4A及び図4Bに示すように、導波路201上の一部を除き、第2半導体層230の上(本実施の形態ではp型コンタクト層234の上)は、SiOからなる電流ブロック層240で覆われている。つまり、電流ブロック層240は、p型コンタクト層234の上に開口部を有するように形成されている。
【0035】
半導体素子構造体200の上には、第1電極として、p側オーミック電極250及びp側電極260が形成されている。p側オーミック電極250は、電流ブロック層240の開口部に形成されている。p側電極260は、p側オーミック電極250の上に形成される。p側オーミック電極250は、例えば、Pd及びPtによって構成され、p側電極260は、例えば、Ti、Pt及びAuによって構成される。
【0036】
また、基板100の一方の面(p側電極260側の面)とは反対側の面である他方の面には、第2電極として、n側電極270が形成されている。n側電極270は、例えば、Ti、Pt及びAuによって構成される。なお、図3に示す半導体レーザ素子1のIVB-IVB断面(図4B)における位置には、p側電極260及びn側電極270は形成されていない。p側電極260及びn側電極270ともに、第3の側面1c及び第4の側面1dから所定の距離だけ離れて形成されている。
【0037】
本実施の形態における半導体レーザ素子1では、図2に示すように、導波路201の位置が半導体レーザ素子1の素子幅方向にオフセットされている。つまり、導波路201は、X軸方向(第1方向)にオフセットされた位置に配置されており、導波路201の中心線は、半導体レーザ素子1の幅方向の中心からずれた位置に存在している。
【0038】
本実施の形態において、導波路201の位置は、半導体レーザ素子1を正面(前端面)から見たときに、X軸のプラス方向(右方向)にオフセットされている。このため、図3に示すように、p側電極260の第1の側面1aに最も近い第1端部261から導波路201までの第1の幅は、p側電極260の第2の側面1bに最も近い第2端部262から導波路201までの第2の幅よりも長くなっている。
【0039】
また、導波路201は、共振器長方向の一方の端部(半導体レーザ素子1の前端面側のリッジ端部)と他方の端部(半導体レーザ素子1の後端面側のリッジ端部)とで幅が異なっている。具体的には、第3の側面1c(前端面)における導波路201の幅は、第4の側面1d(後端面)における導波路201の幅よりも大きくなっている。つまり、半導体レーザ素子1では、導波路201の幅が広い方を前端面としてレーザ光が取り出される。
【0040】
また、半導体レーザ素子1には、複数の凹部や溝が形成されている。具体的には、図1図4Bに示すように、半導体レーザ素子1には、第1の凹部11及び第2の凹部12と、第1の溝21及び第2の溝22とが形成されている。
【0041】
後述するように、第1の凹部11は、へき開用の分割溝であり、第2の凹部12は、個片化する際の素子分離用の分割溝である。第1の凹部11及び第2の凹部12は、レーザビームによって形成される。
【0042】
また、第1の溝21及び第2の溝22は、第2の凹部12を形成するための分割溝形成領域12aを形成するためのガイド溝である。第1の溝21及び第2の溝22は、エッチングによって形成される。
【0043】
図1及び図3に示すように、第1の凹部11は、平面視における第1の側面1aと第3の側面1cとの交点近傍において、X軸方向(第1方向)に沿って線状に延在する。本実施の形態において、第1の凹部11は、第3の側面1cに形成されている。具体的には、個片化された半導体レーザ素子1の第1の凹部11は、段差であり、上面視において、第3の側面1c(前端面)から僅かに後退して窪むように形成されている。ここで、第1の凹部11は、導波路201からできるだけ離れた位置に形成することが好ましい。導波路201がオフセットされている場合は、導波路201がオフセットされた方向と反対側に形成されていることが好ましい。したがって、図1及び図3に示すように、X軸のマイナス方向に、第1の凹部11が形成されている。
【0044】
また、第1の凹部11は、第1の溝21の底面からZ軸方向に向かって掘り込むように形成されている。第1の凹部11は、半導体素子構造体200を貫通して基板100に達している。第1の凹部11の詳細な形状及び形成方法については後述する。なお、第1の凹部11は、第4の側面1dにも形成されている。
【0045】
第2の凹部12は、図1及び図3に示すように、第1の側面1a及び第2の側面1bの各々に形成されている。本実施の形態において、第2の凹部12は、段差であり、上面視において、第1の側面1a及び第2の側面1bから僅かに後退して窪むように形成されている。
【0046】
また、第2の凹部12は、図1及び図4Aに示すように、半導体素子構造体200の上面からZ軸方向に向かって掘り込むように形成されている。第2の凹部12は、半導体素子構造体200を貫通して基板100に達している。第2の凹部12は、第1の溝21及び第2の溝22よりも深い。つまり、第2の凹部12の底は、第1の溝21及び第2の溝22の底よりも深い位置に存在している。第2の凹部12は、側面視形状が略台形状となるように形成されているが、これに限らない。
【0047】
本実施の形態において、第2の凹部12は、分割溝形成領域12aに形成されている。分割溝形成領域12aは、第1の溝21及び第2の溝22を形成することにより得られる島状の領域であり、Y軸方向に延在している。第2の凹部12は、分割溝形成領域12aの上面からZ軸方向に向かって掘り込むように形成される。
【0048】
図1図3に示すように、第1の溝21及び第2の溝22は、Y軸方向と略平行に延在している。第1の溝21及び第2の溝22は、導波路201を挟んで一対で形成されている。つまり、導波路201は、隣り合う一対の第1の溝21及び第2の溝22の間に存在する。図4Aに示すように、第1の溝21及び第2の溝22の各々は、底面と、その底面に略垂直に形成された2つの対向する側面とからなる凹形状を有する。
【0049】
第1の溝21及び第2の溝22は、半導体素子構造体200を掘り込むことで形成されている。具体的には、第1の溝21及び第2の溝22は、第1半導体層210に達しており、底が第1半導体層210にまで到達するように掘り込まれている。すなわち、第1の溝21及び第2の溝22は、第2半導体層230、活性層220及び第1半導体層210の一部までを掘り込むことで形成されている。本実施の形態において、第1の溝21及び第2の溝22は、n型クラッド層211の途中までを掘り込むことで形成されている。つまり、第1の溝21及び第2の溝22の底は、n型クラッド層211にまで達している。なお、第1の溝21及び第2の溝22の深さは、同じであるが、これに限らない。
【0050】
[半導体レーザ素子の製造方法]
次に、実施の形態に係る半導体レーザ素子1の製造方法について、図5A図5Fを用いて説明する。図5A図5Fは、実施の形態に係る半導体レーザ素子1の製造方法を説明するための図である。図5Aにおいて、上図の(a)は、下図の(b)のA-A線における断面図であり、下図の(b)は部分平面図である。図5Bにおいて、上図の(a)は部分斜視図であり、下図の(b)は部分平面図である。図5C図5Fは部分斜視図である。
【0051】
本実施の形態に係る半導体レーザ素子1の製造方法では、まず、図5Aに示すようにして、複数の導波路201を有する半導体層積層体200Aが形成された半導体層積層基板として、半導体レーザ素子基板2を作製する。その後、図5B図5Fに示すようにして、横方向分割線XL及び縦方向分割線YLの略直交する2つの分割線に沿って半導体レーザ素子基板2を分割して複数に個片化することで、半導体レーザ素子1を得る。以下、具体的な各工程について、詳細に説明する。
【0052】
まず、図5Aの(a)に示すように、基板100の上に、複数の導波路201を有する半導体層積層体200Aを形成することで、半導体レーザ素子基板2を作製する。
【0053】
具体的には、まず、基板100としてn型六方晶GaN基板を用意し、この基板100の上に、Siがドープされたn型AlGaNからなるn型クラッド層211及びn型GaNからなるn側ガイド層212を順次成長させることで第1半導体層210を形成する。
【0054】
続いて、第1半導体層210の上(本実施の形態では、n側ガイド層212の上)に、例えば、活性層220として、アンドープのInGaNからなる井戸層とアンドープのInGaNからなる障壁層とが交互に1回又は複数回積層された量子井戸活性層を形成する。
【0055】
続いて、活性層220の上に、InGaNからなるp側ガイド層231と、p型電子障壁層232と、Mgがドープされたp型のAlGaNからなるp型クラッド層233と、p型GaNからなるp型コンタクト層234を順次形成することで第2半導体層230を形成する。これにより、半導体層積層体200Aを形成することができる。
【0056】
次に、半導体層積層体200Aが形成された半導体レーザ素子基板2において、縦方向分割線YLに沿って、ガイド溝として第1の溝21及び第2の溝22を形成する。第1の溝21及び第2の溝22は、島状の分割溝形成領域12aを形成するための溝である。したがって、第1の溝21と第2の溝22とは長手方向において繋がっている。つまり、第1の溝21及び第2の溝22を形成することで、島状の分割溝形成領域12aが形成される。なお、第1の溝21及び第2の溝22は、エッチングにより形成することができる。
【0057】
次に、半導体レーザ素子基板2の半導体層積層体200Aに、各々がY軸方向に延在するリッジストライプ状の複数の導波路201を形成する。複数の導波路201は、エッチングにより形成することができる。複数の導波路201は、X軸方向に一定の間隔をあけて等間隔に形成される。なお、複数の縦方向分割線YLは、各々の行毎にX軸方向にずれているが、導波路201は、複数の縦方向分割線YLの行毎にずれていない。
【0058】
次に、半導体層積層体200Aを覆うように電流ブロック層240を形成する。例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、基板100上の全面にわたって、約300nmの厚みを有するSiO膜からなる電流ブロック層240を半導体層積層体200Aの上に形成する。これにより、p型コンタクト層234の上面が電流ブロック層240によって被覆されるとともに、第1の溝21、第2の溝22及び開口部202の内面が電流ブロック層240によって被覆される。
【0059】
次に、半導体層積層体200Aの上に、複数の素子形成領域300の各々に対応するp側オーミック電極250及びp側電極260を形成する。具体的には、リッジストライプ状の導波路201の上の電流ブロック層240をエッチングして電流ブロック層240にストライプ状の開口を形成し、その後、リッジストライプ状の導波路201におけるp型コンタクト層234上にPt膜及びPd膜を順に積層することでp側オーミック電極250を形成する。続いて、電流ブロック層240の開口を覆うように、Ti膜及びAu膜を順に積層することで、p側電極260を形成する。
【0060】
p側オーミック電極250及びp側電極260を形成した後は、基板100のp側電極260側の面とは反対側の面(基板100の裏面)を研磨し、基板100の裏面にn側電極270を形成する。具体的には、基板100の裏面から順に、Ti膜、Pt膜及びAu膜を積層することにより、積層構造のn側電極270を形成する。
【0061】
以上にようにして、基板100の上にY軸方向に延在する複数の導波路201を有する半導体層積層体200Aが形成された半導体レーザ素子基板2を作製することができる。
【0062】
なお、図5Aの(b)に示すように、半導体レーザ素子基板2は、最終的に個片化された半導体レーザ素子1に対応する素子形成領域300を複数有する。複数の素子形成領域300は、複数の横方向分割線XLと複数の縦方向分割線YLとによって区画されている。具体的には、複数の素子形成領域300の各々は、Y軸方向に隣り合う2本の横方向分割線XLと、X軸方向に隣り合う2本の縦方向分割線YLとで囲まれる領域である。
【0063】
図5Aの(b)において、複数の横方向分割線XLの各々は、基板100の面内において、X軸方向に平行な第1方向分割線である。一方、複数の縦方向分割線YLの各々は、基板100の面内において、Y軸方向に平行な第2方向分割線である。複数の横方向分割線XL及び複数の縦方向分割線YLは、半導体レーザ素子基板2を分割するための分割線である。つまり、半導体レーザ素子基板2は、複数の横方向分割線XL及び複数の縦方向分割線YLに沿って切断されることで、素子形成領域300の各々が個片化されて半導体レーザ素子1となる。
【0064】
なお、本実施の形態では、複数の素子形成領域300が行毎にX軸方向にずれている。具体的には、複数の素子形成領域300が、偶数行と奇数行とで一行置きにX軸方向にずれている。つまり、複数の縦方向分割線YLが複数の素子形成領域300の行毎にX軸方向にずれている。
【0065】
次に、図5B図5Fを用いて、半導体レーザ素子基板2を分割して個片化することによって半導体レーザ素子1を得る方法を説明する。
【0066】
図5Aに示すように、複数の導波路201を有する半導体層積層体200Aが形成された半導体レーザ素子基板2を作製した後、図5Bの(a)及び(b)に示すように、複数の横方向分割線XLに沿って複数の第1の凹部11を形成する。第1の凹部11は、半導体レーザ素子基板2をへき開して分割する際にへき開の起点となるへき開用の分割溝である。本実施の形態において、第1の凹部11は、レーザスクライブ法によって形成されたレーザスクライブ溝である。第1の凹部11の形成方法の詳細については後述する。
【0067】
本実施の形態において、第1の凹部11は、基板100の面内において、横方向分割線XLと縦方向分割線YLとの交点近傍ごとに形成される。各第1の凹部11は、X軸方向に長尺状をなすように形成される。つまり、第1の凹部11は、複数の横方向分割線XLの各々に沿って複数形成される。複数の第1の凹部11は、例えば、X軸のプラス方向にレーザビームをスキャンすることで形成することができる。
【0068】
図6に示すように、第1の凹部11は、X軸方向に隣り合う2つの縦方向分割線YLと1つの横方向分割線XLとの2つの交点CP1及びCP2の間に形成される。図6は、図5Bの(b)において、破線で囲まれる領域VIの拡大図である。
【0069】
また、図7は、図6のVII-VII線における断面図である。図7に示すように、第1の凹部11は、第1の溝21と第2の溝22との合流部分に形成されている。つまり、第1の凹部11は、第1の溝21と第2の溝22との合流部分の底面から下方に掘り込まれている。したがって、第1の凹部11の底は、第1の溝21及び第2の溝22の底よりも深い位置に存在する。
【0070】
次に、図5Cに示すように、第1の凹部11に沿って半導体レーザ素子基板2を分割することで、複数の導波路201を切断して複数のバー状基板2Aを作製する。本実施の形態では、横方向分割線XLに沿って断続的に形成された複数の第1の凹部11に沿って半導体レーザ素子基板2をへき開することで、1つの半導体レーザ素子基板2を複数のバー状基板2Aに分割する。
【0071】
具体的には、第1の凹部11が形成された半導体レーザ素子基板2に対して、X軸方向に延びる刃状治具を第1の凹部11に沿って半導体レーザ素子基板2の裏面(n側電極270側の面)に押し当てて半導体レーザ素子基板2に荷重を印加する。これにより、一つの第1の凹部11を起点にして半導体レーザ素子基板2が第1の凹部11の並び方向(スクライブ方向)に沿って亀裂が進み、第1の凹部11の並び方向に沿って半導体レーザ素子基板2がへき開することで、半導体レーザ素子基板2が分割される。つまり、半導体レーザ素子基板2が横方向分割線XLに沿って分割される。
【0072】
このとき、半導体レーザ素子基板2の分割は、X軸方向に沿って断続的に形成された第1の凹部11の列ごとに行う。これにより、1つの半導体レーザ素子基板2から複数のバー状基板2Aが得られる。なお、本実施の形態において、半導体レーザ素子基板2の分割方向(亀裂の進む方向)は、レーザビームのスキャン方向とは逆方向としている。つまり、半導体レーザ素子基板2を分割する際は、X軸のマイナス方向に向かって亀裂が進むことになる。
【0073】
また、本実施の形態において、複数の縦方向分割線YLは、偶数行と奇数行とで一行置きにX軸方向にずれている。したがって、半導体レーザ素子基板2から分割された複数のバー状基板2AのうちY軸方向に隣り合う2つのバー状基板2Aの縦方向分割線YLの位置は、一方が他方に対してX軸方向にずれている。
【0074】
次に、図5Dに示すように、へき開により得られたバー状基板2Aのへき開面に、端面コート膜400を形成する。具体的には、バー状基板2Aの両方のへき開面の各々に、端面コート膜400を形成する。
【0075】
端面コート膜400は、例えば、へき開面と密着する密着層であるAlON膜、酸素拡散防止層であるAlN膜及び反射率調整層によって構成される。一例として、半導体レーザ素子1の前端面(第3の側面1c)となるへき開面には、反射率が2%の端面コート膜400が形成され、半導体レーザ素子1の後端面(第4の側面1d)となるへき開面には、反射率が95%の端面コート膜400が形成される。
【0076】
次に、図5Eに示すように、複数の縦方向分割線YLに沿ってバー状基板2Aに第2の凹部12を形成する。第2の凹部12は、バー状基板2Aを複数に分割して個片素子を作製する際に用いられる素子分離用の分割溝である。本実施の形態において、第2の凹部12は、レーザスクライブ法によって形成されたレーザスクライブ溝である。
【0077】
図5Eに示すように、第2の凹部12は、X軸方向に隣り合う2つの素子形成領域300の間において、Y軸方向に沿って形成される。本実施の形態では、X軸方向に隣り合う2つの素子形成領域300の間には、第1の溝21と第2の溝22とで挟まれる分割溝形成領域12aが形成されており、第2の凹部12は、その分割溝形成領域12aに形成される。つまり、第2の凹部12は、分割溝形成領域12aを挟むように形成された第1の溝21と第2の溝22との間に形成されることになる。
【0078】
次に、複数の縦方向分割線YLに沿って複数のバー状基板2Aの各々を順次分割することで、図5Fに示すように、半導体レーザ素子1に対応する個片素子2Bを作製する。本実施の形態では、第2の凹部12を利用してバー状基板2Aを分割することで、1つのバー状基板2Aを複数の個片素子2Bに分割する。
【0079】
具体的には、第2の凹部12が形成されたバー状基板2Aに対して、Y軸方向に延びる刃状治具を第2の凹部12に沿ってn側電極270側から接触させてバー状基板2Aに荷重を印加する。これにより、バー状基板2Aが第2の凹部12の長手方向に沿って分割される。つまり、バー状基板2Aが縦方向分割線YLに沿って分割される。
【0080】
このとき、バー状基板2Aの分割は、Y軸方向に沿って形成された複数の第2の凹部12ごとに行う。これにより、1つのバー状基板2Aから複数の個片素子2B(半導体レーザ素子1)が得られる。このようにして、図1に示される構造の半導体レーザ素子1を製造することができる。
【0081】
[第1の凹部(傷)の形成方法]
ここで、光ビームにより半導体レーザ素子基板2に第1の凹部11(傷)を形成する方法について、図8を用いて説明する。図8は、光ビームを用いて半導体レーザ素子基板2に第1の凹部11を形成する方法を説明するための図である。
【0082】
本実施の形態では、光ビームとしてレーザビームを用いている。より具体的には、光ビームとして、パルスレーザビームを用いている。一例として、パルスレーザビームの条件は、波長が355nmで、ビーム径が3μm以下で、パルス間隔が0.06μmで、周波数は50kHzで、パルス幅は約20nsで、最も高いレーザ平均パワーが100mWで、1パルスのエネルギーは、2μJで、最も高いパルスピークパワーは約100Wである。なお、半導体レーザ素子基板2へのレーザビームの照射は、レーザ発振器を備えるレーザビーム照射装置500を用いることができる。
【0083】
まず、図8の(a)に示すように、レーザビーム照射装置500により、半導体レーザ素子基板2の表面の第1の位置P1においてレーザビーム(レーザ光)の第1のパルスを照射することで第1の傷11aを形成する。
【0084】
次に、図8の(b)に示すように、第1の傷11aを形成する工程の後に、第1の位置P1からX軸のプラス方向(第1の方向)に移動した半導体レーザ素子基板2の表面の第2の位置P2においてレーザビームの第2のパルスを照射することで、少なくとも一部が第1の傷11aと重なる第2の傷11bを形成する。つまり、第1の傷11aの少なくとも一部に第2の傷11bが重なる位置までレーザビームをスキャンして、レーザビームの第2のパルスを照射して第2の傷11bを形成する。
【0085】
このとき、半導体レーザ素子基板2の内部の第2の傷11bの先端は、X軸のマイナス方向(第1の方向とは反対方向)に傾斜する。
【0086】
次に、図8の(c)に示すように、第2の傷11bを形成する工程の後に、第2の位置P2からX軸のプラス方向(第1の方向)に移動した半導体レーザ素子基板2の表面の第3の位置P3においてレーザビームの第3のパルスを照射することで、少なくとも一部が第2の傷11bと重なる第3の傷11cを形成する。つまり、第2の傷11bの少なくとも一部に第3の傷11cが重なる位置までレーザビームをスキャンして、レーザビームの第3のパルスを照射して第3の傷11cを形成する。
【0087】
このとき、半導体レーザ素子基板2の内部の第3の傷11cの先端は、X軸のマイナス方向(第1の方向とは反対方向)に傾斜する。
【0088】
本実施の形態において、半導体レーザ素子基板2に照射するレーザビームは、直線偏光でX軸方向(第1の方向)と垂直な方向に偏光している。つまり、第1の傷11a、第2の傷11b及び第3の傷11cを順に形成する場合、レーザビームは、第1の位置P1から第2の位置P2へとレーザビームを移動させる方向であるX軸方向と垂直な方向であるY軸方向に偏光している。具体的には、半導体レーザ素子基板2に照射するレーザビームは、波長板等を用いて偏光方向を制御している。
【0089】
このように、本実施の形態では、レーザビームの移動方向(第1の方向:X軸方向)と垂直な方向(Y軸方向)に偏光しているレーザビームを移動させながら、1回前の傷に重なるようにパルスによりレーザビームを照射して複数の傷を順次形成していくことで、先端がレーザビームの移動方向とは逆方向に傾斜した傷を連続的に順次形成することができる。
【0090】
例えば、1回目の第1の傷11aに重なるように2回目の第2の傷11bを形成することで、第2の傷11bの先端をレーザビームの移動方向とは逆方向(X軸のマイナス方向)に傾斜させることができる。また、2回目の第2の傷11bに重なるように3回目の第3の傷11cを形成することで、第3の傷11cの先端をレーザビームの移動方向とは逆方向に傾斜させることができる。なお、1回目の傷(第1の傷11a)は、前回の傷が無いので先端が傾斜せずに鉛直下方(Z軸のマイナス方向)に延びている。
【0091】
このように、偏光させたレーザビームをパルスで重なるように複数回(例えば20~30回程度)照射することで、偏光方向に対するレーザビームの反射と吸収とを利用して、先端が曲がった1つの傷を形成することができる。
【0092】
なお、レーザビームを移動させる場合、レーザビーム照射装置500を移動させてもよいし、半導体レーザ素子基板2(具体的には、半導体レーザ素子基板2を載置するステージ)を移動させてもよい。つまり、レーザビームは、半導体レーザ素子基板2に対して相対的に移動させればよい。
【0093】
ここで、本実施の形態における第1の凹部11を形成するための具体的な傷の形成方法について、図9を用いて説明する。図9において、(a)は、実施の形態における第1の凹部11を形成するときのレーザビームのレーザ平均パワーとレーザビーム位置との関係を示しており、(b)は、実施の形態における第1の凹部11の形状を示している。
【0094】
第1の凹部11を形成する際のレーザビームのパルス照射のシーケンスは、図9の(a)に示すように行われる。具体的には、X軸のプラス方向に沿ってレーザビームをスキャンしながら、レーザビームのレーザ平均パワーをゼロの状態から一定の値まで階段状に徐々に上げていき、レーザ平均パワーが一定の値に達した後、レーザ平均パワーを階段状に徐々に下げていく。
【0095】
このとき、レーザビームのパルスの照射は、上述の図8に示される方法で行う。すなわち、レーザビームのスキャン方向と垂直な方向に偏光しているレーザビームをスキャンさせながら、1回前の傷に重なるように順次レーザビームをパルスにより照射して傷を形成していく。これにより、各ステップにおいて、先端がレーザビームの移動方向とは逆方向に傾斜した傷を順次形成することができる。
【0096】
ここで、本実施の形態では、図9の(a)に示すように、レーザ平均パワーが13段の階段状になるようにレーザビームのパルス照射を行っている。図9の(c)は、図9の(a)の破線で示す1段目と2段目についてのパルス照射方法を説明する図である。1段目においてパルスピークパワーP1で、2段目においてパルスピークパワーP2で、レーザビームをパルス照射する。図9の(c)に示すように、図9の(a)におけるレーザ平均パワーの一段分のパルス照射回数は20~30回である。第7段までは、レーザビームのレーザ平均パワーを前段よりも大きくしていき、第8段以降は、レーザビームのレーザ平均パワーを前段よりも小さくしている。
【0097】
これにより、図9の(b)に示されるような形状の第1の凹部11を形成することができる。ここで、第2の領域112の内、第2の領域112aは、図9(c)の1段目のパルスピークパワーP1でパルス照射を20~30回行うことにより形成された部分である。第2の領域112aが形成された後、2段目のパルスピークパワーP2まで大きくすることで、傷の深さを深くすることができる。パルスピークパワーP2を2段目まで大きくした後の1回目のパルス照射時では、先端が傾斜せずに鉛直下方(Z軸のマイナス方向)に第2の領域112aより深く延びる傷が形成される。その後、より深く延びた傷に重なるように、X軸のプラス方向へ移動した位置で、同じパルスピークパワーP2でパルス照射することで、レーザビームの移動方向とは逆方向(X軸のマイナス方向)に傾斜した傷を形成することができ、このパルス照射を20~30回行うことにより第2の領域112bが形成される。図9の(a)におけるレーザ平均パワーを増加する場合(第1段~第7段)、レーザ平均パワーの一段分で1つの線状の第2の領域112が形成される。よって、線状の第2の領域112の数はレーザ平均パワーを前段よりも大きくする段数(第1段を含む)に相当し、線状の第2の領域112の数は7本である。また、レーザ平均パワーを前段よりも小さくする場合は線状の第2の領域は形成されない。
【0098】
このようにして形成された第1の凹部11は、半導体レーザ素子基板2の平面視では、X軸方向(第1の方向)に沿って線状である。つまり、第1の凹部11は、X軸方向に延在しており、線状の開口部を有する。
【0099】
第1の凹部11のX軸方向の長さLは、例えば30μm~45μmである。つまり、1つの第1の凹部11を形成するときのレーザビームの移動距離は、30μm~45μmである。本実施の形態では、40μmとしている。また、第1の凹部11の深さDは、例えば5μm~60μmである。
【0100】
第1の凹部11は、半導体レーザ素子基板2の垂直断面視(XZ断面視)では、X軸のプラス方向(第1の方向)と半導体レーザ素子基板2の深さ方向であるZ軸方向(第2の方向)とで形成される面に広がる面状の第1の領域111(図9(b)の薄いドット状のハッチングで示す領域)と、第1の領域111からX軸のプラス方向とは反対側の方向であるX軸のマイナス方向に延びる線状の第2の領域112(図9(b)の濃いドット状のハッチングで示す領域)とを有する。
【0101】
第1の領域111は、半導体レーザ素子基板2を平面視したときに、第1の凹部11の開口部の下方に側部111aを有する。第1の領域111の側部111aは、第2の領域112の谷同士(隣接する第2の領域の接合部と、第1の凹部11の第2の領域112側の開口部端部)を結んだ部分である。本実施の形態において、半導体レーザ素子基板2の垂直断面視において、第1の領域111の断面形状は、略三角形状であり、側部111aは、三角形の一つの辺を構成している。
【0102】
また、第1の領域111は、半導体レーザ素子基板2の垂直断面視において、半導体レーザ素子基板2の表面から内部に向かって延びる複数の縞状部を有する。縞状部の縞模様は、レーザビームのレーザ平均パワーの変化により形成される。つまり、レーザビームのレーザ平均パワーを階段状に変化させながらレーザビームをスキャンして第1の凹部11を形成することにより縞状部の縞模様の間隔(溝幅)が変化し、段差状に残された跡として縞模様が形成される。なお、縞状部の縞模様の間隔は、1~4μm程度である。なお、図9のXY平面図の傷の形状は滑らかな曲線で描いているが、実際の傷の幅は、レーザ平均パワーが弱いときは狭く、レーザ平均パワーが強いときは広くなるように、レーザ平均パワーの違いに応じて7段階で変わっている。
【0103】
第2の領域112は、2つ以上形成されている。第2の領域112は、第1の領域111の側部111aから延びている。第1の領域111の側部111aから第2の領域112に延びる長さ(第2の領域112の全長)は、2μm以上である。
【0104】
また、第2の領域112の先端は、第1の領域111とは反対側に曲がっている。具体的には、第2の領域112は、レーザビームのスキャン方向とは逆方向(X軸方向のマイナス方向)に延びている。つまり、第2の領域112が延びる方向は、半導体レーザ素子基板2を分割するときの分割方向(亀裂の進む方向)と一致している。また、図9の(b)のQ-Q断面図に示されるように、X軸方向のマイナス方向側は線状の第2の領域112のため、傷の先端は鋭角に形成される。このように、第2の領域112が延びる方向を半導体レーザ素子基板2の分割方向に合わせ、亀裂の進む方向側の傷の先端を鋭角にすることで、第2の領域112の先端に分割時の応力を集中させることができる。これにより、半導体レーザ素子基板2を分割(へき開)したときの分割面の平坦性を向上させることができる。
【0105】
本実施の形態において、第1の凹部11は、第2の領域112を複数有する。つまり、第1の領域111の側部111aからは複数の第2の領域112がひげ状に延びている。具体的には、7本の第2の領域112が形成されている。なお、7本全ての第2の領域112は、同じ方向に傾斜するようにして延びている。このように、複数の第2の領域112を形成することで、半導体レーザ素子基板2を分割(へき開)したときの分割面の平坦性を一層向上させることができる。
【0106】
この場合、半導体レーザ素子基板2の第1の領域111を含む断面において、半導体レーザ素子基板2の内部側の第2の領域112は、半導体レーザ素子基板2の表面側の第2の領域112よりも長くなっている。つまり、複数の第2の領域112は、下側の第2の領域112ほど長くなっている。このように、下側の複数の第2の領域112ほど長くすることで、半導体レーザ素子基板2を分割(へき開)したときの分割面の平坦性を一層向上させることができる。
【0107】
また、図9の(b)のX軸方向から見た図は、レーザ平均パワー最大時(7段目)で形成された傷を示しており、第2の領域112の先端部は、X軸方向(第1の方向)及びZ軸方向(第2の方向)の両方に垂直な方向であるY軸方向(第3の方向)に折れ曲がっている。この場合、第2の領域112がY軸方向へ折れ曲がる長さ(W1)は、第2の領域112のX軸方向の長さ(W2)よりも短い方がよい。第2の領域112がY軸方向に折れ曲がる長さW1(折れ曲がり幅)は、レーザビームのレーザ平均パワーが強いと大きくなり、レーザビームのレーザ平均パワーが弱いと小さくなる。なお、図9の(b)において、第2の領域112は、Y軸のプラス方向に折れ曲がっているが、レーザビームの偏光方向によっては、第2の領域112は、Y軸のマイナス向に折れ曲がる場合もある。
【0108】
このように形成される第2の領域112の折れ曲がりの長さは、短い方がよい(又は無い方がよい)が、上述のように、W1<W2にすることで、第1の凹部11の先端とへき開面とをより一致させることができるので、半導体レーザ素子基板2を分割したときの分割面の平坦性を向上させることができる。この場合、W1は、1μm以下であるとよく、より好ましくは、0.5μm以下である。
【0109】
また、第2の領域112のX軸方向(第1の方向)の長さ(W2)は、第2の領域112のZ軸方向(第2の方向)の長さよりも短くなっている。本実施の形態において、第2の領域112のZ軸方向(第2の方向)の長さは、第1の凹部11の深さDと同じである。つまり、第1の凹部11の底は、複数の第2の領域112のうち最も深い位置に存在する第2の領域112の先端となっている。したがって、第2の領域112のX軸方向の長さ(W2)は、第2の領域112のZ軸方向の長さ(D)よりも短くなっている。このように、W2<Dにすることで、第2の領域112の先端の角度が半導体レーザ素子基板2を分割する際の応力が加わる方向に近づくので、へき開面の段差領域が狭くなるとともに、段差の発生数も少なくなる。これにより、半導体レーザ素子基板2の分割面の平坦性を向上させることができる。
【0110】
また、本実施の形態において、半導体レーザ素子基板2の垂直断面視において、第1の領域111と、第2の領域112と、複数の第2の領域112の先端を結ぶ線とで形成される形状は、略三角形状である。つまり、半導体レーザ素子基板2の垂直断面視における第1の凹部11の形状は、略三角形状である。なお、略三角形をなす第1の凹部11の三辺のうちの一つは、第2の領域112の先端同士を結んだ辺である。
【0111】
このようにして形成される第1の凹部11については、偏光方向に対するレーザビームの反射と吸収とを利用することで、第1の凹部11を構成する複数の傷の各々の傾斜方向を調整することができる。
【0112】
ここで、偏光方向に対するレーザビームの反射と吸収とを利用して試料に傷を形成することについて、以下説明する。
【0113】
レーザビームの偏光方向は、波長板を用いることによって変えることができる。波長板は、直交する偏光成分の間に位相差を生じさせる複屈折素子の一例である。例えばλ/2波長板を用いることでレーザビームの偏光方向を制御することができる。
【0114】
図10は、レーザビームの移動方向(レーザスキャン方向)とレーザビームの直線偏光の偏光方向との関係を示す図である。図10に示すように、レーザビームの直線偏光の偏光方向(合成ベクトル)の角度は、0°又は180°でレーザスキャン方向(X軸方向)に対して垂直となり、90°又は270°でレーザスキャン方向と平行になるように定義している。
【0115】
このレーザビームの偏光方向は、半導体レーザ素子基板2等の試料に形成される傷の傾斜方向に影響を与える。この点について、図11及び図12を用いて説明する。図11は、試料に1回前に形成された傷の壁面におけるレーザビームの入射角に対する反射率の一例を示す図である。図12は、レーザビームの偏光方向と試料に形成される傷の傾斜方向との関係を説明した図である。
【0116】
図11に示すように、試料の傷の壁面に斜め入射するレーザビームの反射率について、レーザビームの入射面に対して垂直であるS偏光の反射率(Rs)は、レーザビームの入射面に対して水平であるP偏光の反射率(Rp)よりも高い。逆に、S偏光の吸収率は、P偏光の吸収率よりも低くなる。つまり、試料に対するレーザビームの吸収率は、P偏光の方がS偏光よりも大きい。
【0117】
この結果、P偏光がS偏光よりも試料への吸収によりレーザ強度が早く減衰することになるので、レーザビームの内、S偏光で壁面に斜め入射する成分が試料の奥深く入ることになる。図12に示すように、レーザビームにより試料に形成される傷の先端は、試料の奥深くで相対的にレーザ強度が強くなるS偏光のレーザビームの反射方向へと傾くことになる。つまり、レーザビームの偏光方向が0°以外であると、レーザビームにより試料に形成される傷の先端はレーザビームのスキャン方向(X軸方向)と傷の深さ方向(Z軸方向)とに直交する方向(Y軸方向)に傾くことになる。
【0118】
したがって、レーザビームの直線偏光の偏光方向を調整することによって、半導体レーザ素子基板2等の試料に形成される傷の先端の傾斜方向を制御することができる。
【0119】
また、レーザビームの直線偏光の偏光方向を調整することによって、第1の凹部11の先端部(第2の領域112の先端部)の折れ曲がり方向も制御することができる。
【0120】
図13の(a)は、図13の(b)の矢印Aの方向から見たときの第1の凹部11のレーザ平均パワー最大時(例えば、図9(a)のレーザ平均パワーの7段目)で形成された傷の形状を示している。例えば、レーザビームの直線偏光の偏光方向の角度(偏光角度)が0°又は180°の場合、図13の(a)に示すように、レーザビームにより形成される第1の凹部11は、先端がY軸方向に折れ曲がらずに形成される。一方、レーザビームの直線偏光の偏光方向の角度(偏光角度)が0°又は180°以外の場合(例えば偏光角度が45°、90°、135°の場合)、第1の凹部11の先端がY軸方向に折れ曲がって形成される。
【0121】
以上説明したように、レーザビームの移動方向(スキャン方向)と垂直な方向に偏光しているレーザビームを移動させながら、1回前の傷にほぼ重なるようにパルスによりレーザビームを照射して複数の傷を順次形成していくことで、レーザビームのスキャン方向(X軸方向)と傷の深さ方向(Z軸方向)とに直交する方向(Y軸方向)に傷の先端が折れ曲がらない第1の凹部11を形成することができる。
【0122】
なお、このレーザビームの照射により傷を形成する方法は、半導体レーザ素子基板2に傷を形成する場合に限らず、半導体レーザ素子基板2以外の試料にも適用することができる。例えば、LED又はトランジスタ等の半導体素子を形成するための半導体素子基板にも適用することができる。また、試料(基板)の材質としては、ダイヤモンド又はSiC等であってもよい。
【0123】
[半導体レーザ素子基板を分割するときの具体例]
次に、上記傷形成方法により図9の(b)に示される形状の第1の凹部11が形成された半導体レーザ素子基板2を分割するときの具体例について、上記の図5A図5Cを用いて説明する。
【0124】
まず、半導体レーザ素子基板2に第1の凹部11を形成する前に、図5Aに示すように、半導体レーザ素子基板2の表面に平行な方向である第4の方向に延びる複数の導波路201を形成する。本実施の形態において、導波路201が延在する第4の方向は、第1の凹部11を形成するときに用いられるレーザビームのスキャン方向(第1の方向:X軸方向)に対して垂直な方向(Y軸方向)である。
【0125】
次に、図5Bに示すように、半導体レーザ素子基板2に第1の凹部11を形成する。具体的には、複数の横方向分割線XLに沿って半導体レーザ素子基板2に複数の第1の凹部11を形成する。このとき、第1の凹部11は、隣り合う2つの導波路201の間に形成される。第1の凹部11は、上記の第1の凹部11の形成方法によって形成する。これにより、図9の(b)に示される形状の第1の凹部11を形成することができる。
【0126】
次に、図5Cに示すように、第1の凹部11に沿って半導体レーザ素子基板2を分割する。具体的には、第1の凹部11に沿って半導体レーザ素子基板2をへき開する。したがって、半導体レーザ素子基板2の分割面は、へき開面となる。このように、第1の凹部11に沿って半導体レーザ素子基板2を分割することで、複数の導波路201が切断されて複数のバー状基板2Aが作製される。
【0127】
また、本実施の形態では、第1の凹部11の第1の領域111側から第2の領域112側へ向かって亀裂が進むように、半導体レーザ素子基板2を分割している。つまり、半導体レーザ素子基板2の分割方向が、第1の凹部11を形成するときのレーザビームのスキャン方向と逆方向となるようにして、半導体レーザ素子基板2を分割している。これにより、半導体レーザ素子基板2の分割面の平坦性を向上させることができる。
【0128】
このようにして分割された半導体レーザ素子基板2の端面形状は、図14に示すような形状となる。図14は、実施の形態における半導体レーザ素子基板2の分割面(共振器面)の形状を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図を示している。
【0129】
図14の(a)及び(b)に示すように、分割工程後の半導体レーザ素子基板2の側面視において、半導体レーザ素子基板2の分割面(へき開面)には、第1の凹部11の周辺に段差30が形成されている。この段差30は、第1の凹部11の先端方向と半導体レーザ素子基板2の結晶面(へき開面)とがずれた状態でへき開を行った場合に発生する。つまり、半導体レーザ素子基板2の結晶面からへき開が逸れることで、半導体レーザ素子基板2のへき開面(端面)に段差30が発生する。このように形成される段差30は、第1の凹部11における第1の領域111及び第2の領域112から半導体レーザ素子基板2の裏面に向かう方向に延びている。具体的には、段差30は、第1の凹部11における第1の領域111及び第2の領域112の先端を起点として、半導体レーザ素子基板2の表面から裏面へ垂直もしくは分割時の亀裂の進む方向側に延びている。
【0130】
第2の領域112が形成されている領域では、複数の第2の領域112により凹凸が存在するため、分割時の応力が第2の領域112の先端に集中する。つまり、特定の箇所に分割時の応力を集中させることができる。このため、第2の領域112からはあまり段差30が発生しない。一方、第1の領域111が形成されている領域では、凹凸が存在しないので、分割時の応力が特定の箇所に集中しない。このため、第1の領域111からは段差30が多く発生することになる。したがって、第2の領域112から延びる段差30の本数より、第2の領域112を除く第1の領域111から延びる段差30の本数の方が多くなっている。具体的には、図14に示すように、第2の領域112から延びる段差の本数は、2本であり、第1の領域111から延びる段差の本数は4本である。
【0131】
このように、第1の凹部11に複数の第2の領域112を形成することで、複数の第2の領域112の凹凸により第2の領域112の先端に分割時の応力を集中させることができる。これにより、分割面での揺らぎ幅が小さく、段差30の発生数を少なくすることができる。したがって、半導体レーザ素子基板2を分割(へき開)したときの分割面の平坦性を向上させることができる。
【0132】
なお、複数の第2の領域112を形成することなく第1の凹部11Xを形成した場合、図15に示すように、比較例の半導体レーザ素子基板2Xの分割面には、多くの段差30が発生する。これは、図15に示される第1の凹部11Xには、図14に示される第1の凹部11において第1の領域111のみしか存在しないからである。つまり、第1の凹部11Xには複数の第2の領域112に対応する凹凸が存在しないため、分割時の応力が特定の箇所に集中せず、この結果、分割面での揺らぎ幅が大きく、第1の凹部11Xからは多くの段差30が発生する。この結果、比較例の半導体レーザ素子基板2Xの分割面の平坦性が劣化する。
【0133】
特に、比較例の半導体レーザ素子基板2Xでは、第1の凹部11X付近だけではなく、導波路201付近にまで段差30が発生している。この結果、半導体レーザ素子基板2Xを個片化して半導体レーザ素子を作製した場合、半導体レーザ素子の素子特性及び信頼性が低下する。
【0134】
ここで、図14に示される半導体レーザ素子基板2を個片化して得られた半導体レーザ素子(実施例)と、図15に示される半導体レーザ素子基板2を個片化して得られた半導体レーザ素子(比較例)とについて、素子特性及び分割面の垂直光軸ずれを測定したので、その結果を図16及び図17を用いて説明する。図16は、実施例と比較例とにおける閾値電流(Ith)とスロープ効率(Se)との関係を示す図である。図17は、実施例と比較例とにおける垂直光軸ずれを示す図である。
【0135】
図16に示すように、比較例の半導体レーザ素子は、閾値電流が増加するとともにスロープ効率が低下している。また、比較例の半導体レーザ素子は、素子の特性ばらつきが大きい。一方、実施例の半導体レーザ素子は、比較例の半導体レーザ素子と比べて、閾値電流を低くできるとともに、高いスロープ効率を維持することができる。しかも、実施例の半導体レーザ素子は、素子の特性ばらつきも小さい。
【0136】
また、図17に示すように、比較例の半導体レーザ素子は、分割面における垂直光軸のずれが大きくなっている。このため、比較例の半導体レーザ素子では、レーザ発振に対する垂直方向の角度が安定せず、発光特性だけではなく、電気特性及び信頼性も低下する。一方、実施例の半導体レーザ素子は、分割面における垂直光軸のずれが小さい。したがって、実施例の半導体レーザ素子では、レーザ発振に対する垂直方向の角度が安定するので、高い電気特性及び高い信頼性を得ることができる。
【0137】
以上、へき開用の第1の凹部11(一次スクライブ溝)を形成する際に、図8に示される傷形成方法を用いる場合について説明したが、これに限らない。例えば、バー状基板2Aを分割して個片化する際に用いられる第2の凹部12(二次スクライブ溝)を形成する際に、図8に示される傷形成方法を用いてもよい。
【0138】
この場合、第1の凹部11を形成する際は、直線偏光のレーザビームを用いたが、第2の凹部12を形成する際は、円偏光のレーザビームを用いるとよい。例えば、λ/4波長板を用いることでレーザビームを円偏光にすることができる。
【0139】
図18は、円偏光のレーザビームを用いて第2の凹部12を形成した時の半導体レーザ素子1の側面から見た形状を示している。一方、図19は、偏光の方向がレーザビームスキャン方向と垂直な直線偏光のレーザビームを用いて第2の凹部12Xを形成した時の半導体レーザ素子1の側面から見た形状を示している。これらの第2の凹部12と第2の凹部12Xを側面から見たときの形状は、半導体レーザ素子基板2の表面側を上底とし、かつ、この上底より下底が短い略台形状となっている。また、レーザビームスキャン方向はY軸のマイナスからプラス方向である。
【0140】
分割時、半導体レーザ素子基板の裏面に刃状治具を第2の凹部12または第2の凹部12Xに沿って押し当てて、第2の凹部12または第2の凹部12Xを起点として、半導体レーザ素子基板を分割する。このため、図18図19に示すように、亀裂の進む方向は斜面12bと斜面12dは第3の側面1c方向であり、斜面12cと斜面12eは第4の側面1d方向である。図19に示すように、直線偏光のレーザビームを用いた場合、第2の凹部12Xは、縞模様が一方向に曲がって形成される。このため、分割時にレーザビームスキャン方向の起点側(Y軸のマイナス方向)の斜面12dの形状は凹凸があり応力が集中しやすく、さらに亀裂の進む方向に傷の先端が傾いているため分割面の平坦性は高い。一方、レーザビームスキャン方向の終点側(Y軸のプラス方向)の斜面12eの形状は凹凸がなく応力が集中しないため、分割逸れが発生し、分割形状が悪化するおそれがある。
【0141】
一方、図18に示すように、円偏光のレーザビームを用いた場合、第2の凹部12は、縞模様の先端の曲がりが少なく縞模様の伸長方向がZ軸方向に揃って形成される。よって、第2の凹部12を側面から見たときの形状はZ軸方向に線対称であり、第2の凹部12の斜面12bと斜面12cの形状は同等である。このため、レーザビームスキャン方向の起点側および終点側への分割時の応力のかかり方が均一となり、分割逸れの発生を抑制することができ、両側とも良好な平坦性を有する分割面を得ることができる。ただし、斜面12b及び斜面12cに形成されている縞模様の先端は亀裂の進む方向(それぞれY軸のマイナスとプラス方向)に傾いておらず、図19の直線偏光を用いた場合のレーザビームスキャン方向の起点側の分割形状と比較して、分割面の平坦性は若干低下する。
【0142】
以上のようにして作製される半導体レーザ素子1は、少なくとも一つの側面に段差を有している。具体的には、図1に示すように、共振器面となる第3の側面1cと第4の側面1dとに段差が形成されている。この段差は、半導体レーザ素子基板2を第1の凹部11に沿って分割したときに残る第1の凹部11である。したがって、第1の凹部11は、図9の(b)に示すように、半導体レーザ素子1の側面視において、X軸のプラス方向(第1の方向)と半導体レーザ素子基板2の深さ方向であるZ軸方向(第2の方向)とで形成される面に広がる面状の第1の領域111と、第1の領域111からX軸のプラス方向とは反対方向であるX軸のマイナス方向に延びる線状の第2の領域112とを有する。
【0143】
(変形例)
以上、本開示に係る傷形成方法等について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0144】
例えば、上記実施の形態では、図1に示すように、第1の凹部11(第1の領域111)は、半導体レーザ素子1の1つの共振器面に1つのみ存在していたが、これに限らない。具体的には、図20に示すように、第1の凹部11(第1の領域111)は、半導体レーザ素子1Aの1つの共振器面に2つ存在していてもよい。この場合、第1の凹部11は、第2の領域112のない第1の領域111のみによって構成されていてもよい。
【0145】
また、上記実施の形態における第1の凹部11では、第1の領域111から延びる第2の領域112は、X軸のマイナス方向に延びていたが、これに限らない。例えば、レーザビームのスキャン方向を変えることで、図21に示される第1の凹部11Aのように、第2の領域112をX軸のプラス方向に延びるように形成してもよい。
【0146】
また、上記実施の形態では、第1の凹部11における第1の領域111と複数の第2の領域112と複数の第2の領域112の先端を結ぶ線とで形成される形状(つまり、第1の凹部11の断面視形状)は、略三角形状としたが、これに限らない。図22に示すように、第1の凹部11Bの断面形状は、半導体レーザ素子基板2の表面側を上底とし、かつ、この上底より下底が短い略台形状であってもよいし、図23に示すように、第1の凹部11Cの断面形状は、略五角形状であってもよい。なお、第1の凹部の断面形状は、その他の多角形であってもよい。
【0147】
また、上記実施の形態において、第1の凹部11の第1の領域111の断面形状は、略三角形状としたが、これに限らず、半導体レーザ素子基板2の表面側を上底とし、かつ、この上底より下底が短い略台形状であってもよい。
【0148】
また、上記実施の形態において、第1の凹部11は、素子形成領域300が形成された半導体素子領域内に形成されていたが、これに限らない。例えば、図24に示すように、分割方向(亀裂の進む方向)と反対側の半導体素子領域外に第1の凹部11Dを形成してもよい。第1の凹部11Dは、第1の凹部11と同様の方法で形成することができる。この場合、半導体素子領域外に形成する第1の凹部11Dは、半導体素子領域内に形成する第1の凹部11よりも長くするとよい。これにより、第1の凹部11Dを起点として半導体レーザ素子基板2を分割したときに、分割面に発生する段差数を少なくすることができる。一例として、第1の凹部11Dの長さは、200μm~1000μmである。なお、第1の凹部11Dの長さは、短くしすぎると分割性が悪化し、長くしすぎると半導体素子領域の面積が減って半導体レーザ素子の取れ数が減少する。また、半導体素子領域外に第1の凹部11Dを形成する場合、図24の横方向分割線XL1に示すように、第1の凹部11Dとともに半導体素子領域内に素子形成領域毎に第1の凹部11を形成してもよいし、図24の横方向分割線XL2に示すように、第1の凹部11Dとともに半導体素子領域内に間引きして第1の凹部11を形成してもよいし、図24の横方向分割線XL3に示すように、半導体素子領域内に第1の凹部11を形成せずに、半導体素子領域外に第1の凹部11Dのみを形成してもよい。
【0149】
また、上記実施の形態において、導波路201は、一対の第1の溝21と第2の溝22との間の中央ではなく、第1の溝21及び第2の溝22の一方側に片寄った位置に形成されているが、第1の溝21と第2の溝22との間の中央に形成されていてもよい。
【0150】
また、上記実施の形態において、導波路201は、テーパ部を有するリッジとしたが、これに限らず、同一幅のリッジであってもよい。
【0151】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本開示の技術は、半導体レーザ素子基板又は半導体素子基板等の試料に傷を形成する傷形成方法、その傷を形成した試料を分割する試料分割方法、又は、半導体レーザ素子の製造方法等において有用である。
【符号の説明】
【0153】
1、1A 半導体レーザ素子
1a 第1の側面
1b 第2の側面
1c 第3の側面
1d 第4の側面
2 半導体レーザ素子基板
2A バー状基板
2B 個片素子
11、11A、11B、11C、11D 第1の凹部
11a 第1の傷
11b 第2の傷
11c 第3の傷
12 第2の凹部
12a 分割溝形成領域
12b、12c、12d、12e 斜面
21 第1の溝
22 第2の溝
30 段差
100 基板
111 第1の領域
111a 側部
112、112a、112b 第2の領域
200 半導体素子構造体
200A 半導体層積層体
201 導波路
202 開口部
210 第1半導体層
211 n型クラッド層
212 n側ガイド層
220 活性層
230 第2半導体層
231 p側ガイド層
232 p型電子障壁層
233 p型クラッド層
234 p型コンタクト層
240 電流ブロック層
250 p側オーミック電極
260 p側電極
261 第1端部
262 第2端部
270 n側電極
300 素子形成領域
400 端面コート膜
500 レーザビーム照射装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
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図9
図10
図11
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図21
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図24