(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-20
(45)【発行日】2023-07-28
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/174 20210101AFI20230721BHJP
A61M 60/221 20210101ALI20230721BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20230721BHJP
A61M 60/422 20210101ALI20230721BHJP
A61M 60/82 20210101ALI20230721BHJP
A61M 60/824 20210101ALI20230721BHJP
A61M 60/825 20210101ALI20230721BHJP
A61M 60/865 20210101ALI20230721BHJP
【FI】
A61M60/174
A61M60/221
A61M60/237
A61M60/422
A61M60/82
A61M60/824
A61M60/825
A61M60/865
(21)【出願番号】P 2020516571
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2018074929
(87)【国際公開番号】W WO2019057636
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-08
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホフス ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】スクロドスキー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジムポ
(72)【発明者】
【氏名】グラウヴィンケル マリウス
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0112312(US,A1)
【文献】特開2010-136862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0238172(US,A1)
【文献】特表2001-514532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0202707(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/174
A61M 60/221
A61M 60/237
A61M 60/422
A61M 60/82
A61M 60/824
A61M 60/825
A61M 60/865
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管に経皮的に挿入するための血管内血液ポンプ(1)であって、
- 血液流入口(21)と血液流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
- 前記ポンプケーシング(2)内に回転軸(10)周りに回転可能に配置されたインペラ(3)であって、前記インペラ(3)は、前記血液流入口(21)から前記血液流出口(22)へ血液を搬送するための大きさと形状を有するブレード(31)を有する、インペラ(3)と、
- 前記インペラ(3)を回転させるための駆動ユニット(104)とを備え、前記駆動ユニット(104)は、前記回転軸(10)周りに配置された複数のポスト(140)を含み、前記ポスト(140)のそれぞれは、
前記回転軸(10)に対して平行な長手方向軸を有し、前記長手方向軸に沿って延びるシャフト部分(141)と、
前記長手方向軸の方向において前記インペラ(3)に向けられたヘッド部分(142)とを含み、コイル巻線(47)が前記ポスト(140)のそれぞれの前記シャフト部分(141)の周りに配置され、前記コイル巻線(47)は、回転磁界を生成するように順次制御可能であり、前記インペラ(3)は、前記インペラ(3)の回転を引き起こすように前記回転磁界と相互作用するように配置された少なくとも1つの磁石(132)を含み、前記ポスト(140)のそれぞれの前記シャフト部分(141)は、前記それぞれのポスト(140)の前記長手方向軸を横切る断面において不連続である軟磁性材料を含む
ことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプであって、前記軟磁性材料は、軟磁性材料の複数のシート(171)の形態で提供される、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の血液ポンプであって、前記シート(171)は、互いに電気的に絶縁されている、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載の血液ポンプであって、
前記シート(171)は、絶縁層(172)によって互いに電気的に絶縁されており、各絶縁層(172)は、約1μmから約50μmの厚さを有する、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項5】
請求項2または4に記載の血液ポンプであって、前記シート(171)は、前記それぞれのポスト(40)の前記長手方向軸に平行に延びている、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記シート(171)は、約25μmから約350μmの厚さを有する、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記複数のシート(171)は、シートのスタックを形成し、前記シート(171)の厚さは、前記スタックの中心から前記スタックの最も外側のシートに向かって減少する、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、
各前記ポスト(140)の前記ヘッド部分(142)は、軟磁性材料を含む、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項9】
請求項2から8のうちいずれか1項に記載の血液ポンプであって、
前記ヘッド部分(142)におけるシート(173)が、前記シャフト部分(141)におけるシート(171)と同じ方向に延びている、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記ポスト(140)における前記ヘッド部分(142)の上面(143)は、前記回転軸(10)に対して垂直な平面内で延びている、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、
各前記ヘッド部分(142)の上面(143)は、軸方向の上面図で見た場合、当該軸方向の各前記シャフト部分(141)と整列されている、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1に記載の血液ポンプであって、前記軟磁性材料は、互いに電気的に絶縁された(182)複数の軟磁性材料のワイヤ(181)の形態で提供される、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記駆動ユニット(104)は、前記ヘッド部分(142)に対向する前記ポスト(140)の前記シャフト部分(141)の端部(144)と係合するバックプレート(150)をさらに含む、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項14】
請求項13に記載の血液ポンプであって、前記バックプレート(150)は、前記それぞれのポスト(140)の前記長手方向軸に平行な断面において不連続である軟磁性材料を含む、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記軟磁性材料は、軟磁性材料の複数のシート(173、175)の形態で提供されている、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項16】
請求項15に記載の血液ポンプであって、
前記シート(173、175)は、互いに電気的に絶縁されている(174、176)、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項17】
請求項16に記載の血液ポンプであって、
前記シート(173、175)は、前記回転軸に対して横方向に延びている、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記シート(173、175)は、約25μmから約350μmの厚さを有する、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記血液ポンプは、軸方向型血液ポンプである、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項20】
請求項2に記載の血液ポンプであって、
前記複数のシート(171)の前記軟磁性材料は、電気鋼である、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項21】
請求項6に記載の血液ポンプであって、
前記厚さは、約50μmから約200μmである、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項22】
請求項15に記載の血液ポンプであって、
前記複数のシート(173、175)の前記軟磁性材料は、電気鋼である、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項23】
請求項18に記載の血液ポンプであって、
前記厚さは、約50μmから約200μmである、ことを特徴とする血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液ポンプ、特に、患者の血管内の血流をサポートするために、患者の血管内に経皮的に挿入するための血管内血液ポンプに関する。血液ポンプは、血液ポンプの外径を小さくすることを可能にする改良された駆動ユニットを含む。
【背景技術】
【0002】
軸方向の血液ポンプ、遠心(すなわち放射状)血液ポンプ、または混合タイプの血液ポンプなどの異なるタイプの血液ポンプが知られており、血液の流れは軸方向の力と放射状の力の両方によって引き起こされる。血管内血液ポンプは、カテーテルを用いて大動脈などの患者の血管内に挿入される。血液ポンプは、典型的には、通路によって接続された血液流入口および血液流出口を有するポンプケーシングを含む。血液流入口から血液流出口までの通路に沿って血流を発生させるために、インペラまたはロータがポンプケーシング内に回転可能に支持されており、インペラには血液を搬送するためのブレードが設けられている。
【0003】
血液ポンプは、典型的には駆動ユニットによって駆動され、これは電気モータであり得る。例えば、米国特許出願公開第2011/0238172A1号は、電気モータに磁気的に結合されていてもよいインペラを有する体外血液ポンプを開示している。インペラは、電気モータ内の磁石に隣接して配置される磁石を含む。インペラ内の磁石と電気モータ内の磁石との間の吸引力により、モータの回転がインペラに伝達される。回転部品の数を減らすために、回転磁界を利用することも米国特許出願公開第2011/0238172A1号から知られており、駆動ユニットは、回転軸周りに配置された複数の静止ポストを有し、各ポストは、ワイヤコイル巻線を担持し、磁気コアとして機能する。制御ユニットは、コイル巻線に電圧を順次供給して回転磁界を発生させる。十分に強い磁気結合を提供するためには、磁力を十分に高くしなければならず、これは、駆動ユニットに供給される十分に高い電流によって、または大きな磁石を提供することによって達成することができるが、これは、血液ポンプの全体的な直径を大きくすることにつながる。しかし、このような駆動ユニットでは、高いエネルギー消費と発熱が生じる可能性がある。別の遠心型血液ポンプが、米国特許出願公開第2014/030122A1号から知られている。コイル巻線を担持する静止ポストが発生する回転磁界を、駆動ユニットが用いている。ポストはスロット付きの材料で形成されてよい。すなわち、ポストはシートのスタックを含んでよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、血液ポンプ、好ましくは、駆動ユニットとインペラとの間に磁気結合を有する、血管内血液ポンプまたは経弁血液ポンプを提供することであり、血液ポンプは、コンパクトな設計、特に、血液ポンプを経血管的、経静脈的、経動脈的または経弁的に挿入することを可能にするために十分に小さい外径を有している。本発明のさらなる目的は、血液ポンプの熱およびエネルギー消費を低減することであり、これは、血液ポンプが患者に移動性を提供するために電池駆動であり得る長期的な用途に特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項1の特徴を有する血液ポンプによって、本発明に従って達成される。本発明の好ましい実施形態およびさらなる発展は、それに従属する請求項に規定される。
【0006】
本発明によれば、血液ポンプは、好ましくは血管内血液ポンプであり、部分的に軸方向および部分的に放射状にポンプする軸方向血液ポンプまたは斜流血液ポンプであってもよく(純粋な遠心血液ポンプの直径は、通常、血管内用途には大きすぎる)、インペラを回転させるための駆動ユニットを含む。駆動ユニットは、回転軸の周りに配置された複数のポスト、例えば少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または好ましくは6個のポストを含む。ポストの数は、8個、10個、12個など、より多くてもよい。ポストの数は、インペラをバランスよく制御するためには、好ましくは偶数であるが、3個、5個などの奇数であってもよい。ポストの各々は、シャフト部分とヘッド部分とを含み、ヘッド部分はインペラに向けられている。回転磁界を生成するために、コイル巻線が各ポストのシャフト部分の周りに配置されており、コイル巻線は回転磁界を生成するように順次制御可能である。インペラは、インペラを駆動ユニットに磁気的に結合するように配置された、すなわち、インペラの回転を引き起こすように回転磁界と相互作用するように配置された、少なくとも1つの磁石を含む。
【0007】
回転電磁界を発生させる駆動ユニットは、一般的な電気モータと比較して可動部の数を減らすことにより、血液ポンプの機構を簡素化することを可能にする。また、電気モータの接触軸受が不要となるため、摩耗を低減することができる。駆動ユニットとインペラとの間の磁気結合により、インペラが回転するだけでなく、インペラを正しく位置合わせすることもできる。
【0008】
ポストのそれぞれは長手方向軸を有し、ポストのそれぞれのシャフト部分は、それぞれのポストの長手方向軸に沿って延びている。好ましくは、各ポストの長手方向軸は、回転軸と平行である。各ポストのシャフト部分は、それぞれのポストの長手方向軸を横切る、好ましくは垂直な断面において不連続な軟磁性材料を含む。言い換えれば、各ポストの軟磁性材料は、シャフト部分の各コイル巻線によって生じる磁束の方向を横切る、好ましくは垂直な断面において不連続である。軟磁性材料を断面で分割または中断することにより、ポストのシャフト部分における渦電流を低減または回避することができ、発熱およびエネルギー消費を低減することができる。エネルギー消費を低減することは、患者の移動性を提供するために血液ポンプが電池駆動であることが望ましい血液ポンプの長期的な用途において特に有用である。また、長期的な用途では、血液ポンプは、発熱が少ない場合にのみ可能であるパージなしで動作してもよい。
【0009】
本明細書の意味における「不連続」とは、長手方向軸を横切る任意の断面で見た軟磁性材料が、軟磁性材料の厳密に分離された領域を形成するために、絶縁材料または他の材料またはギャップによって中断、分離、区切りなどされているか、または中断されているが別の位置で接続されている領域を意味する。
【0010】
磁束の方向を横切る断面平面において不連続な軟磁性材料を提供することは、上で説明したように、渦電流を減少させ、その結果、発熱およびエネルギー消費を減少させる。連続的またはフルボディ(すなわち固体)の軟磁性材料と比較して磁界を実質的に弱めないようにするために、軟磁性材料の連続領域を最小化しつつ、軟磁性材料の総量を最大化する。これは、例えば、電気鋼などの軟磁性材料の複数のシートの形態で軟磁性材料を提供することによって達成され得る。特に、シートは、シートのスタックを形成してもよい。シートは、好ましくは、互いに電気的に絶縁されており、例えば、シートの隣接するものの間に接着剤、ラッカー、ベーキングエナメルなどを提供することによって、電気的に絶縁されている。そのような構成は、「スロット付き」と称することができる。フルボディの軟磁性材料の場合と比較して、軟磁性材料の量が少なく、絶縁材料の量も少なく抑えられているため、スロット付きポストによる磁界は、固体ポストによる磁界と実質的に同じである。言い換えれば、発熱およびエネルギー消費を大幅に低減することができるが、絶縁材料による磁界の損失は取るに足らないものである。
【0011】
シートは、好ましくは、それぞれのポストの長手方向軸に対して実質的に平行に延びている。言い換えれば、シートは、シャフト部分が磁束の方向に対して横切るまたは垂直な断面において不連続であるように、磁束の方向に対して実質的に平行に延びていてもよい。軟磁性材料が長手方向軸に対して横切る断面において不連続である限り、シートは、それぞれのポストの長手方向軸に対して斜めに延びていてもよいことが理解されるであろう。シートは、好ましくは約25μmから約350μm、より好ましくは約50μmから約200μmの範囲、例えば100μmの厚さを有する。
【0012】
渦電流を回避または低減するために、電気モータに電気鋼のようなスロット付き軟磁性材料を提供することは一般に知られている。しかし、この技術は、シートが通常約500μm以上の範囲の厚さを有する大型デバイスに適用されてきた。本発明の血液ポンプのように、ポストの1つ、より具体的にはそれぞれのシャフト部分が、通常、前述のオーダーの直径を有し、かつ、入力電力が比較的低い(例えば、最大20ワット(W))であるような小さな用途では、渦電流およびそれに関連する問題は予期されなかった。驚くべきことに、シャフト部分の直径が小さいにもかかわらず、スロット付きシャフト部分を設けることで、渦電流を低減し、発熱およびエネルギー消費を低減することができた。これは、最大50,000rpm(1分間の回転数)の高速で動作する可能性のある血液ポンプの動作に有利である。
【0013】
ポストのシャフト部分に不連続な軟磁性材料を提供するための前述のスロット付き構成以外の構成が可能であることが理解されるであろう。例えば、複数のシートの代わりに、複数のワイヤ、繊維、ポストまたは他の細長い要素を提供して、駆動ユニットの各ポストを形成することができる。ワイヤ等は、ワイヤが互いに電気的に絶縁された束の形態で提供されてもよく、例えば、各ワイヤを取り囲むコーティングまたはワイヤが埋め込まれた絶縁マトリックスによって、円形、球形、長方形、正方形、多角形等の様々な断面形状を有していてもよい。同様に、軟磁性材料の粒子、ワイヤーウール、または軟磁性材料の他のスポンジ状または多孔質構造を提供することができ、この場合、軟磁性材料の領域の間の空間は、接着剤、ラッカー、ポリマーマトリックスなどの電気的に絶縁性の材料を含む。軟磁性材料の多孔質、したがって不連続な構造は、焼結材料またはプレス材料によって形成されてもよい。このような構造の場合、空気に曝されることによる軟磁性材料の酸化により得られる酸化層によって、自動的に絶縁層が形成される場合があるため、追加の絶縁材料を省略してもよい。
【0014】
軟磁性材料のシートまたは他の構造体は、均一に形成されてもよく、すなわち、ポストの1つまたはすべてのポスト内のシートは、同じ厚さを有してもよく、またはワイヤは、同じ直径を有してもよいが、不均一な構成が提供されてもよい。例えば、シートは様々な厚さを有していてもよいし、またはワイヤは様々な直径を有していてもよい。より具体的には、特に、シートのスタックに関して、1つ以上の中央シートは、より大きな厚さを有してもよく、一方、スタックの端部に向かって隣接するシートは、より小さな厚さを有してもよく、すなわち、シートの厚さは、中央からスタックの端部に向かって、すなわち、スタックの最も外側のシートに向かって減少する。同様に、ワイヤの束の1つ以上の中央のワイヤは、より大きな直径を有してもよく、一方、ポストのシャフト部分の縁部のワイヤは、より小さな直径を有してもよく、すなわち、ワイヤの直径は、中央から束の縁部に向かって、すなわち、束の最も外側のワイヤに向かって減少してもよい。シャフト部分の長手方向軸を横切る断面に関して、シャフト部分の中心に軟磁性材料のより大きな連続領域を提供すること、すなわち中心に比較的厚いシートまたはワイヤを提供することは、これが各ポストの長手方向軸に沿って中心を通る磁束を強化する可能性があり、中心における渦電流は、ポストの側面における渦電流よりも関連性が低いので、有利であり得る。言い換えれば、そのような構成は、シャフト部分の側面領域における渦電流がより重要であり、側面領域における薄いシートまたはワイヤによって低減され得るので、有利であり得る。
【0015】
一実施形態では、ポストのそれぞれのヘッド部分は、各ポストの長手方向軸に垂直な断面において不連続である軟磁性材料を含み得る。シャフト部分の不連続材料に関して上述したような実質的にすべての特徴および説明は、ヘッド部分に関して有効である。例えば、シャフト部分と同様に、ヘッド部分は、スロット付きであってもよく、ヘッド部分のシートは、好ましくは、互いに電気的に絶縁されている。ヘッド部分の磁束は、それぞれのポストの回転軸または長手方向軸に実質的に平行であるので、特に、後述するようにヘッド部分が傾斜面を有していない場合には、ヘッド部分の軟磁性材料は、それぞれのポストの長手方向軸または回転軸に平行に延びる複数のシートの形態で提供されてもよい。すなわち、ヘッド部分のシートは、シャフト部分のシートと実質的に同じ方向に延びていてもよい。前記で説明したように、渦電流、ひいては発熱および消費電力を低減することができる。しかし、ヘッド部分の渦電流は通常低いため、固体材料に比べて不連続な材料の効果は、シャフト部分の場合ほど大きくない。したがって、ヘッド部分は、連続的な、すなわち固体の軟磁性材料で代替的に形成されてもよい。
【0016】
駆動ユニットは、さらに、ヘッド部分に対向する複数のポストのシャフト部分の端部と係合するバックプレートを含み得る。一実施形態では、バックプレートは、シャフト部分の上記端部を受けるために、回転軸の周りに配置された複数の開口を、好ましくは、規則的な角度距離で含み得る。しかしながら、ポストは、他の手段によって、永久的にまたは解放可能に、バックプレートに取り付けられ、接続され、または固定され得ることが理解されるであろう。バックプレートは、特に、磁束の発生を容易にして増加させ、結合能力を向上させるために、磁束回路を閉じるために機能する。バックプレートによって磁束が増加するので、血液ポンプの全体の直径を小さくすることができ、これは血管内血液ポンプにとって特に有利である。バックプレートを有するポストを含む構成は、血液ポンプの高周波数をさらに可能にする、すなわち、血液ポンプは、高速、例えば、最大約50,000rpmまでの速度で動作することができる。さらに、バックプレートがポストと係合することにより、バックプレートはポスト組立体の構造的安定性を提供する。
【0017】
ポストのシャフト部分および場合によってはヘッド部分と同様に、バックプレートは不連続な軟磁性材料を含み得る。バックプレート内の磁束は、回転軸に対して実質的に横方向または垂直であるので、バックプレートの軟磁性材料は、好ましくは、回転軸に平行な断面において不連続である。それとは別に、シャフト部分の不連続な材料に関して上述した実質的にすべての特徴および説明は、バックプレートに関しても有効である。例えば、シャフト部分と同様に、バックプレートは、スロット付きであってもよく、すなわち、複数の積層シートで形成されてもよく、バックプレートのシートは、好ましくは、互いに電気的に絶縁されている。バックプレートのシートは、シャフト部分のシートに対して実質的に垂直に延びていてもよく、ヘッド部分のシートに対して実質的に平行に延びていてもよい。前述で説明したように、渦電流、それによって発熱および消費電力を低減することができる。しかしながら、バックプレートは、連続した、すなわち固体の軟磁性材料で代替的に形成されてもよい。
【0018】
バックプレートは、ポストと同様に、好ましくは、軟磁性材料、例えば電気鋼(磁性鋼)または磁束回路を閉じるのに適した他の材料、好ましくはコバルト鋼で作られている。バックプレートの直径は、約3mmから9mm、例えば5mmまたは6mmから7mmであってもよい。バックプレートの厚さは、約0.5mmから約2.5mm、例えば1.5mmであってもよい。血液ポンプの外径は、約4mmから約10mm、好ましくは約6mmであってもよい。複数のポストの構成の外径、特にポストのヘッド部分で測定される複数のポストの構成の最大の外径は、約3mmから8mm、例えば4mmから6mm、好ましくは5mmであってもよい。
【0019】
上述したように、ポストは、電気鋼(磁性鋼)などの軟磁性材料で作られている。また、ポストとバックプレートとは、同じ材料で作られていてもよい。好ましくは、ポストとバックプレートを含む駆動ユニットは、コバルト鋼で作られている。コバルト鋼を使用することで、ポンプのサイズ、特に直径を小さくすることに貢献する。すべての磁性鋼の中で最も高い透磁率と最も高い飽和磁束密度をもつコバルト鋼は、同じ量の材料を使用した場合に最も多くの磁束を生成する。
【0020】
ポストの寸法、特に長さおよび断面積は、様々な要因によって変化し、依存し得る。血液ポンプの用途に依存する血液ポンプの寸法、例えば外径とは対照的に、ポストの寸法は、電磁特性によって決定され、駆動ユニットの所望の性能を達成するように調整される。要因の1つは、ポストの最小の断面積を介して達成される磁束密度である。断面積が小さいほど、所望の磁束を達成するために必要な電流は大きくなる。しかし、より大きい電流は、電気抵抗のためにコイルのワイヤ内により多くの熱を発生させる。すなわち、全体のサイズを小さくするために「薄い」ポストが好ましいが、これは大電流を必要とし、その結果、望ましくない熱をもたらすことになる。また、ワイヤで発生する熱は、コイル巻線に使用するワイヤの長さと直径にも依存する。巻線の損失(通常、銅線を使用する場合には「銅損」または「銅電力損失」と呼ばれる)を最小限に抑えるためには、ワイヤ長が短く、ワイヤ径が大きいことが好ましい。言い換えれば、ワイヤ径が小さいと、同じ電流で太いワイヤに比べてより多くの熱が発生し、好ましいワイヤ径は、例えば0.05mmから0.2mm、例えば0.1mmである。ポストの寸法および駆動ユニットの性能に影響を与えるさらなる要因は、コイルの巻線の数および巻線の外径、すなわち巻線を含むポストである。巻線の数が多いと、各ポストの周囲に2層以上の層が設けられていてもよく、例えば、2層または3層が設けられていてもよい。しかし、層数が多くなると、より大きな巻線径を有する外層のワイヤの長さが増加するため、より多くの熱が発生することになる。ワイヤの長さが長くなると、短いワイヤに比べて長いワイヤの抵抗値が高くなるため、より多くの熱が発生し得る。したがって、巻線径の小さい単層の巻線が好ましい。
【0021】
典型的な巻線の数は、同様にポストの長さに依存するが、約50から約150、例えば56または132であってもよい。巻線の数とは無関係に、コイル巻線は、電気的に導電性の材料、特に金属、例えば銅または銀で作られている。銀は銅の電気抵抗よりも約5%小さい電気抵抗を有するので、銅よりも銀が好ましい場合がある。
【0022】
一実施形態では、インペラはまた、インペラの少なくとも1つの磁石に取り付けられるヨークまたはバックプレートを含んでもよく、好ましくは、駆動ユニットから離れて向き合うインペラの側面、例えば磁石とインペラのブレードとの間に取り付けられたヨークまたはバックプレートを含んでもよい。ポストのシャフトの端部に取り付けられたバックプレートと同様に、インペラのヨークまたはバックプレートは、磁束の発生を増加させ、結合能力を高めるために磁束回路を閉じるように機能する。これは磁性鋼、好ましくはコバルト鋼で作られていてもよい。
【0023】
駆動ユニットとインペラの磁石との間の磁気結合の密度を高めるために、複数のポストを同時に活性化することが有利な場合があり、ここで、「活性化」とは、それぞれの極磁石を生成するために、それぞれのコイル巻線に電力を供給することを意味する。例えば、ポストの数およびインペラの磁石の数に応じて、ポストの半分以上、例えば、6つのポストのうち4つが同時に活性化されてもよい。好ましくは、活性化されたポストと不活性化されたポストの構成は、回転対称であり、ポストは、好ましくは、直径方向に対向する一対のポストにおいて制御される。
【0024】
ポストが互いに磁気的に絶縁されていると、駆動ユニットの効率および性能についてさらに有利である場合がある。したがって、磁気的絶縁材料は、ポストを互いに分離し、それぞれのポスト内にそれぞれの磁界を保持するように、隣接するポストのヘッド部分の間に配置されてもよい。磁気的絶縁材料は、磁性材料であってもよく、その磁界は、コイル巻線によって引き起こされる電磁界をそれぞれのポスト内に保持する。少なくとも、ポスト間の短絡を避けるために、エアギャップまたは他の絶縁性、すなわち電気的に非導電性の材料がポストのヘッド部分の間に提供されてもよい。
【0025】
一実施形態では、ポストの少なくとも1つの、好ましくは各ポストのヘッド部分は、回転軸に垂直な平面に対して角度をもって傾斜している上面を有する。回転軸と傾斜面の半径方向の中心との間の距離は、回転軸と各ポストのシャフト部分の断面領域の半径方向の中心との間の距離以下であってもよい。表面または領域の半径方向の中心とは、表面または領域の半径方向の最内方の点と半径方向の最外方の点との間の中心のことである。すなわち、インペラに対向する面であるヘッド部分の傾斜上面は、回転軸に対して斜めに延びていてもよいし、回転軸に対して斜めに傾斜していてもよく、傾斜面の半分以上は、シャフト部分の中心に対して半径方向の内側に位置していてもよい。これにより、駆動ユニットの外径、ひいては血液ポンプの外径を、駆動ユニットをインペラに磁気的に結合するために必要な最小値に抑えることができる。この縮小された直径の設計は、ポンプ動作中に患者の血管内に配置され、カテーテルによって展開可能な血管内血液ポンプにとって特に有利である。さらに、傾斜した結合面は、インペラの半径方向のセンタリングを提供する。上述の角度は、好ましくは45°であるが、回転軸に垂直な平面に対して、約0°から約90°の間、好ましくは約30°から約60°の間、より好ましくは約40°から約50°の間であってもよい。ポストの傾斜面は、好ましくは、半径方向外側に向いており、すなわち、凸状の形状を形成する。あるいは、傾斜面は、凹形状を形成するように半径方向内側に向いていてもよい。
【0026】
別の実施形態では、ポストのヘッド部分の上面は、回転軸に対して垂直であってもよい。言い換えれば、ヘッド部分の上面は、ヘッド部分が円錐形を形成するのではなく、平坦な平面を形成するように、上述の実施形態と比較して傾斜を有していなくてもよい。したがって、本実施形態の磁石は、傾斜していないが、ヘッド部分の上面によって形成される平面と平行な平坦な平面を形成する。
【0027】
好ましくは、ポストのすべては、駆動ユニットが回転軸に対して対称であるように同一である。しかしながら、ポストは、本発明に従った駆動ユニットを形成するために互換性がある限り、完全に同一である必要はないことが理解されるであろう。しかしながら、シャフト部分は同じ長さを有し、ヘッド部分の傾斜面は同じ傾斜角度を有することが好ましい。異なるポストは、駆動ユニットを形成するために、不規則に、または例えば交互に配置されるように規則的に配置されてもよい。
【0028】
ヘッド部分の上面は、好ましくは、それぞれのヘッド部分の上面は、上で説明したように傾斜していてもいなくても、それぞれのポストのコイル巻線の半径方向の最外面に対して半径方向に整列していてもよく、または半径方向内側または外側に配置されていてもよい。上面は、好ましくは、駆動ユニットの外径を最小化しつつ、磁気軸受の表面積を最大化するように、それぞれのシャフト部分を越えて回転軸に向かって半径方向内方に延びている。例えば、軸方向の投影、すなわち軸方向の上面図で見た場合、ヘッド部分の上面は、コイル巻線内に位置していてもよいし、軸方向のシャフトまたはコイル巻線と少なくとも整列していてもよい。別の実施形態では、ヘッド部分は、半径方向および/または円周方向にコイル巻線の外周を越えて延びていてもよい。ヘッド部分は、回転軸に垂直な平面において、それぞれのシャフト部分よりも大きな断面寸法を有してもよく、それぞれのコイル巻線は、好ましくは、少なくとも半径方向においてヘッド部分を越えては延びない。言い換えれば、ヘッド部分は肩部を形成してもよく、この肩部は、コイル巻線のための軸方向ストップと同様に、半径方向の制限として機能し得る。
【0029】
ヘッド部分の上面が斜めまたは傾斜している場合、ヘッド部分の少なくとも1つ、好ましくはすべてのヘッド部分は、回転軸を含む平面に沿った断面が実質的に三角形または台形であってもよい。組み立てられた状態では、ヘッド部分の斜めまたは傾斜した表面は、一緒になって、円錐形の表面または実質的に円錐形の表面、例えば、ファセットを有するがほぼ円錐形の表面を形成する表面を形成し得る。一般に、形成された表面の形状は、凸状であってもよい。例示的に言えば、ヘッド部分は、円錐状の上面を有する円形の配置を形成するために、パイのスライスのように一緒に配置されてもよい。インペラの少なくとも1つの磁石は、ポストのヘッド部分によって形成された円錐面に実質的に対応するサイズおよび形状の、円錐状または実質的に円錐状の凹部を有し、または形成してもよい。一般に、磁石は、磁気結合を改善するために、ポストによって形成された凸面に面する凹面を形成し得る。別の実施形態では、凹面および凸面の配置は、逆であってもよく、すなわち、磁石が凸状の円錐面を形成する一方、ポストのヘッド部分が円錐状の凹部を形成してもよい。
【0030】
駆動ユニットおよびインペラのそれぞれの凸面および凹面は、表面間の距離が一定となるようなギャップを形成し得る。しかし、好ましくは、ギャップの距離は一定ではなく、円周方向に見たギャップの断面積が半径方向において一定となるように選択される。後者の場合、表面間の距離は、回転軸に向かって増加する。また、組み合わせも想定される。インペラと駆動ユニットとの間のギャップの形状および寸法は、流体力学軸受能力に寄与し得る。同様に、ヘッド部分の上面が傾斜していない場合には、そのようなギャップが提供される。
【0031】
インペラの磁石は、上で説明したように、距離を変化させたギャップを含む、ポストのヘッド部分の形状に対応する円錐状または実質的に円錐状の凹部を有する一体物として形成されていてもよい。しかしながら、回転軸周りにインペラ内に配置されて円錐状凹部を形成する複数の磁石、例えば2個以上、例えば4個、好ましくは6個の磁石、またはさらに好ましくは8個、10個または12個の磁石が提供されてもよいことが理解されるであろう。複数、好ましくは偶数、より好ましくはポストの数に対応する数の磁石を提供することは、磁石をデッドゾーンなしで磁界の南北方向に交互に配置することができるので有利である。磁石が一体物として提供される場合、異なる配向の磁界の間の遷移部にデッドゾーンが生じ得る。1つまたは複数の磁石とヘッド部分の上面が傾斜しておらず、回転軸に垂直な平面内にある場合にも、前述の構造が適用されてもよいことが理解されるであろう。
【0032】
インペラが複数の磁石を含む場合、磁石は、磁性体の量を増やすために、個々の磁石の間に実質的にギャップがないように配置されていてもよい。しかしながら、磁石がギャップ、特に半径方向に延びるギャップによって分離されている場合には、磁気結合の効率が低下しないことが分かっている。これは、磁界の特性や、駆動ユニットとインペラとの間のギャップに起因するものである。インペラ内の磁石が互いに近接している場合、一方の磁石(北)から隣接する磁石(南)に向かってアーチ状に延びる最内側の磁力線は、駆動ユニットとインペラとの間のギャップを越えては延びず、したがって、駆動ユニットに到達しない、すなわち、インペラの駆動に寄与しない。したがって、インペラ内の磁石間にギャップを設けても効率が低下することはない。駆動効率を損なうことなく提供できるインペラの磁石間のギャップの大きさは、当業者が計算できるように、インペラと駆動ユニットとの間のギャップの大きさに依存する。インペラの磁石間のギャップは、例えば、洗い出しチャネルとして使用することができる。
【0033】
一般的に言えば、そしてヘッド部分が円錐面を形成するかどうかにかかわらず、インペラの磁石は、ポストのヘッド部分に面する表面を有してもよく、ヘッド部分の傾斜面の角度に実質的に対応する角度で傾斜している。例えば、この配置は、上記の配置の逆であってもよく、すなわち、ポストのヘッド部分が円錐状の凹部のような凹面を形成し、インペラの磁石が円錐面のような凸面を形成してもよい。これは、表面が傾斜していない場合、すなわち、上記の角度が回転軸に対して90度である場合にも適用される。
【0034】
それぞれの表面の傾斜にかかわらず、インペラの1つまたは複数の磁石は、ポストのヘッド部分と半径方向に整列していてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、磁石またはインペラの磁石は、半径方向内側または半径方向外側など、ポストのヘッド部分に対して半径方向にオフセットしていてもよい。この半径方向のオフセットは、磁石がポストのヘッド部分に対して半径方向に整列している場合には、磁力が単に実質的に軸方向に向けられるのに対し、インペラと駆動ユニットとの間の磁力は半径方向の成分を有するので、インペラの安定化および半径方向のセンタリングを向上させることができる。
【0035】
一実施形態では、インペラは、駆動ユニット、特にポストのヘッド部分の周囲に少なくとも部分的に延びていてもよい。言い換えれば、インペラは、周方向に駆動ユニットと重なる延長部を有してもよい。すなわち、磁気結合は、ポストのヘッド部分の傾斜面の領域だけでなく、ポストの半径方向外側の側面表面上でも行われる。インペラは、インペラがポストのヘッド部分の領域の周囲に延びることができるように、増加した直径、特に駆動ユニットよりも大きな直径を有していてもよい。したがって、インペラは、上述したような円錐部分と円筒部分とを有する凹部を有し得る。インペラと駆動ユニットは磁力線が半径方向に延びる半径方向にも結合されるため、このインペラの設計により、磁気結合を改善することができる。この領域では、最大径のため、インペラを駆動するために高いトルクを発生させることができる。
【0036】
一実施形態では、血管内血液ポンプは、さらに、駆動ユニットを取り囲むハウジングを含んでもよく、ハウジングは、好ましくは、複数のポストの外側輪郭に対応する大きさおよび形状を有する。特に、ハウジングは、ポストのヘッド部分の傾斜面によって形成される表面の形状に対応する円錐形の軸方向端面を有し得る。反対側の端部は、開いていてもよく、ハウジングを閉じるためにバックプレートと係合してもよい。ハウジングは、ポスト組立体の保護、特に、コイル巻線に特に役立つ血液接触に対する保護として機能する。好ましくは、ハウジングはポンプケーシング内に配置される。そのようなハウジングの存在にかかわらず、駆動ユニットは、好ましくはポンプケーシング内に配置される。ハウジングは、好ましくは、非磁性で非導電性(すなわち電気的に絶縁性)の材料で作られており、良好な熱伝達を提供する。ハウジングの材料は、例えばアルミニウムであってもよい。
【0037】
コイル巻線は、電気的に非導電性(すなわち電気的に絶縁性)である熱伝導性マトリックスに埋め込まれていてもよい。マトリックスは、コイル巻線を保護し、コイル巻線によって生成された熱を伝達する。熱伝導性マトリックスの材料は、熱伝導性特性を高めるために添加物を含むプラスチック材料であってもよい。例えば、マトリックスは、アルミニウムを添加したエポキシ樹脂を含み得る。マトリックスは、コイル巻線の周囲とコイル巻線の間に材料を成形し、その後、材料を硬化させることによって形成され得る。
【0038】
駆動ユニットは、回転軸に沿って延びる中央開口部を有し得る。中央開口部は、ポストのヘッド部分によって形成されてもよく、細長いピンまたはシャフトを受けるように構成されてもよく、ピンの軸方向端面は、インペラのための軸受面を形成するような大きさおよび寸法になっている。この構成は、ポスト間の空間がピンのために使用されるので、血液ポンプのコンパクトな設計を可能にする。ピンの他端は、ポンプケーシングによって支持されていてもよい。中央開口部はまた、ガイドワイヤなどの挿入のために提供されてもよいし、流体経路を形成してもよい。血液ポンプが駆動ユニットを介して全方向に延びるシャフトを有していない別の実施形態では、そのような中央開口部は省略することができる。
【0039】
インペラと駆動ユニットとの間のギャップを通る洗い流し流を強化するために、インペラに二次的なブレードのセットが提供されてもよい。特に、二次的なブレードは、駆動ユニットに面する1つまたは複数の磁石の側、すなわち、インペラと駆動ユニットとの間のギャップに設けられてもよい。洗い流し流は、駆動ユニットに面する磁石の表面に凹設されたチャネルによって、追加的にまたは代替的に増加し得る。チャネルは、例えば放射状または螺旋状に延びていてもよい。
【0040】
一実施形態では、インペラを支持するために、1つ以上の流体力学軸受が提供されてもよい。例えば、上述の二次的なブレードおよびチャネルは、インペラと駆動ユニットとの間のギャップの大きさおよび形状に関して上述したように、流体力学軸受を形成してもよいし、または少なくとも流体力学軸受の能力を支持してもよい。逆に、インペラに面する駆動ユニットの表面、すなわち、特に駆動ユニットを囲むハウジングの端面は、流体力学軸受を形成するように適合されていてもよい。流体力学軸受は、軸方向または半径方向であってもよいし、軸方向および半径方向の両方であってもよい。特に、インペラと駆動ユニットとの間の界面の円錐形状のために、半径方向および軸方向の両方の流体力学軸受を形成することができる。また、半径方向の流体力学軸受は、インペラの外表面とポンプケーシングの内表面との間に形成されてもよい。特に、インペラとポンプケーシングとの間にギャップが形成されてもよく、流体力学軸受に十分な量の血液がギャップを通って流れ、追加の血液流出口を通ってポンプケーシングを出る。主な血流は、血液流出口を通ってポンプケーシングを出て、ギャップを流れない。非接触軸受である流体力学軸受は、摩擦力を低減することにより、駆動ユニットの機能を支持し得る。
【0041】
前述の要約、および好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めば、よりよく理解されるであろう。本開示を例示する目的で、図面を参照する。しかしながら、本開示の範囲は、図面に開示された特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図2b】代替の実施形態に従った
図2aと同様の図である。
【
図6】バックプレートと共に
図5の構成を示す図である。
【
図7】コイル巻線と共に
図6の構成を示す図である。
【
図8】ハウジングと共に
図7の構成を示す図である。
【
図11】駆動ユニットの別の実施形態を示す図である。
【
図12】血液ポンプの別の実施形態を示す図である。
【
図13a】別の実施形態に従った駆動ユニットおよびインペラの磁石の異なる図である。
【
図13b】別の実施形態に従った駆動ユニットおよびインペラの磁石の異なる図である。
【
図14a】インペラの磁石間の磁力線を模式的に示す図である。
【
図14b】インペラの磁石間の磁力線を模式的に示す図である。
【
図15】別の実施形態に従った駆動ユニットおよびインペラ磁石の断面図である。
【
図16】駆動ユニットの動作モードを模式的に示す図である。
【
図17】駆動ユニットの別の実施形態を示す図である。
【
図18】
図17の駆動ユニットのバックプレートを示す図である。
【
図19c】ポストのさらに別の実施形態の斜視図である。
【
図19d】ポストのさらにもう別の実施形態の斜視図である。
【
図21a】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【
図21b】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【
図21c】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【
図21d】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【
図21e】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【
図21f】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【
図21g】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【
図21h】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【
図21i】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【
図21j】様々な実施形態に従ったポストのシャフト部分を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1を参照して、血液ポンプ1の断面図を示す。
図2は、血液ポンプ1の内部の拡大図である。血液ポンプ1は、血液流入口21と血液流出口22を有するポンプケーシング2を含む。血液ポンプ1は、カテーテルポンプとも呼ばれる血管内ポンプとして設計されており、カテーテル25によって患者の血管内に展開される。血液流入口21は、使用中に大動脈弁などの心臓弁を介して配置されてもよい可撓性カニューレ23の端部にある。血液流出口22は、ポンプケーシング2の側面に配置されており、大動脈などの心臓血管内に配置されていてもよい。血液ポンプ1は、以下に詳細に説明するように、駆動ユニット4によって血液ポンプ1を駆動するために、カテーテル25に接続されており、血液ポンプ1に電力を供給するためにカテーテル25を介して電線26が延びている。
【0044】
血液ポンプ1が長期的に使用されることを意図している場合、すなわち、血液ポンプ1が数週間または数ヶ月間患者に移植される状況においては、電力は、好ましくは電池によって供給される。これにより、患者はケーブルによって基地局に接続されていないので、患者を移動可能にすることができる。電池は、患者が持ち運び可能であり、血液ポンプ1に電気エネルギーを供給してもよく、例えば無線で供給してもよい。
【0045】
血液は、血液流入口21と血液流出口22とを結ぶ通路24に沿って搬送される(血液の流れは矢印で示される)。インペラ3は通路24に沿って血液を搬送するために設けられ、第1の軸受11および第2の軸受12によってポンプケーシング2内の回転軸10の周りに回転可能に取り付けられている。回転軸10は、好ましくはインペラ3の長手方向の軸である。本実施形態では、両軸受11、12は接触型軸受である。しかし、軸受11、12の少なくとも1つは、磁気軸受または流体力学軸受などの非接触型軸受であってもよい。第1の軸受11は、回転運動だけでなく、ある程度のピボット運動を可能にする球面軸受表面を有するピボット軸受である。ピン15が設けられており、軸受面の1つを形成している。第2の軸受12は、インペラ3の回転を安定させるために支持部材13内に配置され、支持部材13は、血流のための少なくとも1つの開口部14を有する。インペラ3の回転に従って血液を搬送するためのブレード31がインペラ3に設けられている。インペラ3の回転は、インペラ3の端部の磁石32に磁気的に結合された駆動ユニット4によって引き起こされる。図示された血液ポンプ1は、流れの主要な方向が軸方向である混合型の血液ポンプである。血液ポンプ1は、インペラ3の構成、特にブレード31の構成に応じて、純粋に軸方向の血液ポンプであってもよいことが理解されるであろう。
【0046】
図2aは、血液ポンプ1の内部、特にインペラ3および駆動ユニット4をより詳細に示している。駆動ユニット4は、複数のポスト40、例えば6つのポスト40を含み、そのうちの2つだけが
図2の断面図では見えている。ポスト40は、シャフト部分41とヘッド部分42とを有する。ヘッド部分42は、駆動ユニット4をインペラ3に磁気的に結合するために、インペラ3に隣接して配置されている。この目的のために、インペラ3は、
図10a-
図10cを参照してより詳細に説明するように、本実施形態では複数のピース磁石として形成された磁石32を有する。磁石32は、駆動ユニット4に対向するインペラ3の端部に配置されている。ポスト40は、血液ポンプ1を駆動するための回転磁界を形成するために、制御ユニット(図示せず)によって順次制御される。磁石32は、回転軸10の周りにインペラ3の回転を引き起こすように、回転磁界と相互作用するように配置されている。コイル巻線は、
図7を参照して以下にさらに詳細に説明するように、ポスト40のシャフト部分41の周りに配置されている。ポスト40は、回転軸10に対して平行に配置されており、より具体的には、ポスト40の各々の長手方向軸が回転軸10に対して平行になっている。
【0047】
磁束の経路を閉じるために、ヘッド部分42に対向するシャフト部分41の端部にバックプレート50が配置されている。ポスト40は、磁気コアとして作用し、好適な材料、特に鋼または好適な合金、特にコバルト鋼などの軟磁性材料で作られている。同様に、バックプレート50は、好適な軟磁性材料、例えばコバルト鋼などで作られている。バックプレート50は磁束を増強し、これにより、血管内血液ポンプにとって重要な血液ポンプ1の全体の直径を小さくすることができる。同じ目的のために、駆動ユニット4から離れて対向する磁石32の側に、ヨーク37、すなわち追加のバックプレートがインペラ3に設けられている。本実施形態におけるヨーク37は、インペラ3に沿って血流を案内するために円錐形の形状を有している。ヨーク37もまた、コバルト鋼で作られてもよい。ヨーク37または磁石32には、中央軸受に向かって延びる1つ以上の洗い出しチャネルが形成されていてもよい。
【0048】
図2bは、磁石32に対向するヘッド部分42の上面が傾斜していないが、回転軸に垂直な平面内に延びていることを除いて、
図1および
図2aの実施形態と実質的に類似している代替的な実施形態を示している。したがって、磁石32は、傾斜した表面を有さないが、実質的に円筒形の形状を形成する。
【0049】
駆動ユニット4の詳細は
図3から
図9に示されており、
図10はインペラ3の磁石32を示している。
図3を参照すると、ポスト40の1つが斜視図で示されている。この実施形態では、組立体内のポスト40のすべて(すなわち、6つのポスト40)が同一である。ポスト40は、シャフト部分41とヘッド部分42とを含む。ヘッド部分42は、本実施形態では長手方向軸に対して60°(すなわち、長手方向軸に垂直な平面に対して30°)の角度を有する傾斜面43を有する。シャフト部分41は、バックプレート50と係合するための縮小された直径を有する、ヘッド部分42に対向する端部部分44を含む。ヘッド部分42は、長手方向軸に垂直な平面において、シャフト部分41よりも大きな断面寸法を有する。ヘッド部分42は、駆動ユニット4を形成するために組み立てられたときに、隣接するポストの側面に隣接する側面47を有する。ポスト40間の磁束の短絡を回避するために、ヘッド部分42の間には、小さなエアギャップまたは他のタイプの絶縁体が設けられている。短絡を回避するために、さらに、ポスト40のヘッド部分42の間に、ポスト40の各々の内部に磁界を保持する絶縁材料を提供することが有利である場合がある。言い換えれば、ヘッド部分42は、磁気的に絶縁材料によって分離されていてもよい。例えば、磁石、例えば磁性材料のプレートをヘッド部分42の間に配置して、ヘッド部分42とそれぞれの磁界を互いに分離するようにしてもよい。ポストヘッド部分42の半径方向内側表面48は、中央開口部54を形成する。表面43と48との間の遷移面は、丸みを帯びている必要はないことが理解されるであろう。
【0050】
ポスト40の別の実施形態の異なるビューが
図4に示されており、これは、シャフト部分41およびヘッド部分42の形状がわずかに変更されていることを除いて、前の実施形態に対応している。
図4aは、
図4dに図示された線A-Aに沿った断面図であり、
図4dはポスト40の上面図(すなわち、ヘッド部分42に向かって見た図)を示している。
図4bは、ポスト40の斜視図を示し、
図4cは、ポスト40の底面図(すなわち、シャフト部分41の端部部分44に向かって見た図)を示す。ポスト40は、約9から10mmの全長を有してもよく、ヘッド部分42は、約2mmの長さを有してもよい。この実施形態では、ヘッド部分42は、回転軸または長手方向軸に対して45°の角度で傾斜している表面43を有する。したがって、表面43と
図4aに示された突出部49との間の角度45は、135°である。突出部49は、ポスト40をハウジング内に組み立てる際に、ストップとして機能してもよい。さらに、ヘッド部分42によって肩部46が形成されており、これは、コイルの巻き取りのためのストップとして機能してもよい。
図3に関連して説明したように、ヘッド部分42は、側面47と半径方向内側表面48とを含む。
【0051】
図5は、
図3に関連して説明した6つのポスト40を含む組立体を示す。すべてのポスト40は、各ヘッド部分42が、円の60°セグメント、すなわち60°の「パイスライス」を形成するように、同一に形成されている。組立体は、角度がポストの数に依存する、例えば、それぞれが90°のセグメントを形成する4つのポスト、またはそれぞれが45°のセグメントを形成する8つのポストのような、2個、3個、4個、または5個、または6個以上のポストのような、より少ないまたはより多くのポストを含んでもよいことが理解されるであろう。既に上述したように、ポスト40の数は、好ましくは偶数であり、直径方向に対向するポスト40は、例えば磁界の制御に関して対を形成してもよく、すなわち、各対のポストは、それぞれの対のポストを同時に活性化させるために、ユニットとして制御されてもよい。ヘッド部分42は、傾斜面43によって形成された円錐面を有する円錐を形成する。これは、
図6を参照すると、より明確に理解できる。
図6において、シャフト部分41の縮径端部部分44は、バックプレート50に取り付けられている。
【0052】
図7では、ポスト40の周囲のコイル巻線47を含む同じ構成が図示されている。コイル巻線47は、ヘッド部分42を超えて半径方向には延びず、それによってコンパクトな外形寸法を提供する。好ましくは、利用可能な空間の使用を最適化し、絶縁体として作用し磁束に影響を与えるエアギャップを最小化するために、ヘッド部分42によって定義される最大断面領域がコイル巻線47のために使用されることが理解されるであろう。コイル巻線のための適切な材料は、例えば、銅または銀である。さらに、ポスト40のシャフト部分41の直径は、コイル巻線47の巻数を最適化するように選択される。
図8は、ポスト構成の上に取り付けられるハウジング60を示す。ハウジング60は、ポスト構成の形状に適合し、実質的に円筒形の部分62と円錐形の端部部分61とを含む。円錐端部部分61は、ポストのヘッド部分42の傾斜面43によって形成される円錐面と同じ角度でテーパ状になっており、すなわち、その角度は、長手方向軸に垂直な平面に対して、好ましくは約30°から60°の間、より好ましくは30°から45°の間である。ハウジング60は、円錐端部部分61に対向する開放端部63でバックプレート50によって閉じられている。円錐端部部分61は、ポスト40によって形成された中央開口部54と、バックプレート50の中央開口部53とに整列する中央開口部64を有する。
【0053】
バックプレート50は、
図9の異なるビュー(
図9aの上面図、
図9bの線A-Aに沿った断面図、
図9cの線B-Bに沿った断面図)において、より詳細に図示されている。バックプレート50は、ポスト40のシャフト部分41の縮径端部部分44を受けるための開口51を有する。好ましくは、バックプレート50の開口51の数は、駆動ユニット4のポスト40の数に対応する。示された実施形態では、6つの開口51が、回転軸10の周囲に60°の規則的な距離に配置されており、各開口51は、回転軸10から同じ距離に配置されている。開口51は、
図9cの断面図では、バックプレート50を完全に貫通して延びているように示されている。しかしながら、開口51は、代替的に、バックプレート50を完全に貫通するのではなく、ある深さまでのみバックプレート50の中に延びていてもよい。中央開口部53は、上述したように、軸受ピン15を受けるために形成されている。バックプレート50は、磁束の経路を閉じるために、磁性材料、好ましくはコバルト鋼で作られている。バックプレート50の直径は、約5から7mmであってもよい。さらに、
図9bの破線で模式的に示すように、バックプレート50の外周部には、バックプレート50の背面にあるプリント基板(PCB)などの制御ユニット55にコイル巻線47を接続するためにワイヤ56を受けるための切欠き52が設けられている。
【0054】
図10を参照すると、インペラ3(
図2参照)の磁石32は、上面図(
図10a)、断面図(
図10b)および斜視図(
図10c)で示されている。この実施形態では、回転軸10の周りに一様に配置された6つの磁石32が、それぞれの磁界の向きが交互になるように設けられている。より少ないまたはより多い数の磁石、例えば4個、8個、10個、または12個の磁石が提供されてもよい。磁石32は、表面33を有する凹部35を形成する。凹部35は、駆動ユニット4を取り囲むハウジング60、特に円錐端部部分61(
図8)を考慮して、
図6に最もよく示されるように、ポスト40のヘッド部分42の表面43によって形成される円錐形の表面にサイズおよび形状が対応している。これは、インペラ3と駆動ユニット4との間の距離が一定ではなくてもよいが、上で説明したように回転軸10に向かって増加してもよいことを含むことが理解されるであろう。本実施形態における凹部35は、回転軸10または長手方向軸に対して45°の角度34を有する円錐形状を有する。駆動ユニット4の形状、特にポスト40のヘッド部分42によって形成される端面に応じて、60°などの他の角度が可能である。さらに、磁石32は、
図2に示すように、軸受ピン15を受けるための中央開口部36を形成する。中央開口部36は、駆動ユニット4の中央開口部54に整列している。
図10bに示すように、磁石32の磁束はヨーク37によって閉じられている。ヨーク37は、
図2に示すような円錐形や、
図10bに示すような円盤形など、インペラ3の形状に応じて任意の好適な形状を有していてもよい。任意選択により、磁石32と、該当する場合はヨーク37とを囲んで、磁石32およびヨーク37を腐食から保護する封入部38が提供される。
【0055】
図11は、前述の実施形態と実質的に類似した駆動ユニットの別の実施形態を図示している。この構成は、シャフト部分41’にそれぞれのコイル巻線47を有する6つのポスト40’を含む。前述の実施形態と同様に、ポスト40’はより少なくてもよく、またはより多くてもよい。ポスト40’は、前の実施形態と同様に、好ましくはバックプレート(図示せず)に取り付けられる。ポスト40’はそれぞれ、上述したヘッド部分42とは異なる形状を有するヘッド部分42’を含む。角度は上述したものと同じであってもよいが、傾斜面43’は、半径方向外方ではなく半径方向内方を向いている。すなわち、ヘッド部分42’は実質的に円錐状の凹部を形成する。インペラの磁石は、それに応じた形状になること、すなわち、磁石は、前の実施形態のように円錐形の凹部ではなく、対応する円錐形の形状を有することが理解されるであろう。先の実施形態と同様に、駆動ユニットは中央開口部54’を有する。
図11の実施形態におけるポスト40’は、ポスト40’間のバイパスまたは短絡を防止するギャップ57’によって分離されているが、前の実施形態におけるポスト40のヘッド部分42は、互いに直接隣接しているか、または小さなギャップによってのみ分離されているように示されている。しかしながら、ポスト間の短絡は、すべての実施形態において回避されることが理解されるであろう。
【0056】
図12を参照すると、
図1および
図2と同様の血液ポンプ1の別の実施形態が示されている。上記の実施形態とは対照的に、
図12の血液ポンプ1は、半径方向の流体力学軸受をさらに備える。ポンプケーシング2またはスリーブの周方向部分28は、インペラ3と周方向部分28との間にギャップ27を形成するために設けられている。血液流出口22に加えて、血液流出口29がさらに設けられており、血液がギャップ27を通ってポンプケーシング2から流出するようになっている。ギャップ27の大きさは、半径方向の流体力学軸受を形成するように選択される。
【0057】
図13aおよび
図13bは、インペラの磁石32および駆動ユニット4に関して配置された磁石32を模式的に示している。この実施形態では、4つの磁石32は、それぞれのギャップ66によって分離されているように提供されている。磁石32の表面33の間にチャネルとして形成されてもよいギャップ66は、中央開口部36から磁石32の外周に向かって半径方向に延びている。
図14aおよび
図14bを参照して以下にさらに詳細に説明するように、磁石32のサイズの縮小は、磁気結合の効率の損失をもたらさない。
図13bは、磁石32と駆動ユニット4との相対的な配置を示しており、駆動ユニット4(すなわちステータ)とインペラ(すなわちロータ)の磁石32との間にギャップ65が設けられている。チャネルまたはギャップ66は、血液に対する遠心ポンプ効果を引き起こすので、ギャップ65の洗浄を改善する。
【0058】
図14aおよび
図14bを参照して、ロータ、特に磁石32とステータ、すなわち駆動ユニット4との間の磁気結合の原理を模式的に図示する。
図14aでは、磁石32は、ギャップによって分離されていないか、または実質的に分離されていない。北Nから南Sへのいくつかの例示的な磁力線が図示されている。駆動ユニット4と磁石32との間のギャップ65のために、最も内側の磁力線は駆動ユニット4と相互作用しない。すなわち、磁界のこの部分は、インペラの駆動に寄与しない。したがって、磁石32間にギャップ66を設けても、磁気結合の効率が損なわれることはない。
図14bでは、
図14aと同じ量の磁力線が駆動ユニット4に到達する。磁力線の向きを知っている当業者は計算できるように、ギャップ66の大きさは、ギャップ65の大きさに直接依存する。
【0059】
図15を参照すると、血液ポンプのための駆動構成の別の実施形態が示されている。コイル巻線47を有するポスト40を含む駆動ユニット4は、上述したものと実質的に同じである。同様の参照符号は、同様の部品を指す。先の実施形態と同様に、駆動ユニット4はバックプレート50を含む。しかし、インペラの設計は異なる。
図15では、インペラの磁石32とヨーク37のみが示されている。インペラは、増加した直径、特に駆動ユニット4よりも大きな直径と軸方向の延長部39を有し、延長部39は駆動ユニット4の周囲に、特にポスト40のヘッド部分42の領域で周方向に延びる。この構成は、以下で説明するように、改善された磁気結合を可能にする。
【0060】
いくつかの例示的な模式的な磁力線によって示されるように、延長部39は、磁石32と駆動ユニット4との間の磁気結合を、傾斜面43の領域だけでなく、ポスト40のヘッド部分42の外側側面の領域でも発生させる。この領域では、血液ポンプのロータとステータとの間に実質的に半径方向に磁力線が延びており、インペラを駆動するための高いトルクを発生させることができる。
図15にも図示されているように、他のすべての実施形態と同様に、磁力線は、ヘッド部分42およびシャフト部分41を含むポスト40を通って、磁石32を通って、両エンドプレートまたはヨーク50、37を通って延びる閉ループを形成する。
【0061】
図16を参照すると、駆動ユニットの動作モードは、6つのポスト40a、40b、40c、40d、40e、および40fを有する例で模式的に図示されている。回転磁界を形成するために、ポストは順次制御される。ポストは、インペラのバランスのとれた回転を確立するために対になって制御され、直径方向に対向するポスト40aと40d、40bと40e、および40cと40fがそれぞれ対を形成する。6つのポストのうち4つを同時に活性化させることにより、磁気密度を高めることができる。
図16は、活性化されたポストがマークされた3つのステップを有するシーケンスを示す。最初のステップでは、ポスト40a、40c、40d、40fが活性化される、つまり、磁界を生成するために、それぞれのコイル巻線に電流が供給される。第2のステップでは、ポスト40a、40b、40d、40eが活性化され、第3のステップでは、ポスト40b、40c、40e、40fが活性化される。このシーケンスが繰り返され、回転磁界が形成される。
【0062】
図17から
図21は、駆動ユニットの部品が、固体として形成されるのではなく、以下でより詳細に説明されるように、不連続な材料によってスロット付きまたは他の方法で形成されているという主な相違点を伴って、前述の実施形態と実質的に類似している実施形態を示している。
図1から
図16に関して上述した特徴および機能は、以下の実施形態にも同様に適用可能であることが理解されるであろう。このように、100で強調された参照符号のようなものは、血液ポンプ、駆動ユニット、および血液ポンプの他の部分のような部分を指している。その逆もまた、以下に説明するように、前述の実施形態は、スロット付き部品または不連続な軟磁性材料を備えてもよいことが理解されるであろう。
【0063】
図17は、
図6に示された図と同様に、コイル巻線および磁石のない駆動ユニット104の斜視図である。駆動ユニット104は、前の実施形態に関して上で説明したように、それぞれがシャフト部分141およびヘッド部分142を有する6つのポスト140を含む。ポスト140は、先の実施形態と同様にバックプレート150に取り付けられている。ヘッド部分142は、回転軸、すなわち駆動ユニット104の長手方向軸に垂直な平面内に延びる平坦な上面を有する。
【0064】
上述した実施形態とは対照的に、駆動ユニット104の構成要素、より具体的にはポスト140のシャフト部分141およびバックプレート150は、磁束の方向を横切るそれぞれの断面が不連続である軟磁性材料を含む(磁束の概略図については
図15を参照のこと)。特に、シャフト部分141およびバックプレート150は、スロット付きで形成されている、すなわち、互いに電気的に絶縁された軟磁性材料のシートのスタックで形成されている。シートは、約50μmから約350μm、例えば100μmの厚さを有していてもよい。絶縁層は、約1μmから約50μmの厚さを有していてもよい。任意選択で、ヘッド部分142は、以下にさらに詳細に記載するように、スロット付きであってもよい。
【0065】
シャフト部分141は、絶縁層172によって互いに絶縁されたシート171で形成され、バックプレートは、絶縁層176によって互いに絶縁されたシート175で形成されている。シャフト部分のシート171は、
図19aから
図19dにも見られるように、回転軸に対して平行に延びており、回転軸を横切る不連続な断面を提供するようになっている。バックプレート150は、回転軸に平行な不連続な断面を提供するように、回転軸に垂直な平面内に延びるシート175で形成されている。バックプレート150は、固体材料で形成されてもよく、すなわち、スロット構造でなくてもよいことが理解されるであろう。スロット付き構造は、渦電流を減少させ、したがって、発熱およびエネルギー損失、すなわちエネルギー消費を減少させる。
【0066】
図18は、バックプレート150をより詳細に示す。
図9のバックプレートと同様に、バックプレート150は、中央開口部153および切欠き152を有する。上で説明したように、バックプレート150は、絶縁層176によって互いに絶縁された複数の積層シート175で形成されている。
図19aは、ポスト140の1つをより詳細に示しており、シャフト部分141と上面143を有するヘッド部分142とを有する。上面は傾斜していない。ポスト140の端部144は、バックプレート150の開口部151に嵌合する。上述した実施形態とは対照的に、端部144は肩部を有していない。ヘッド部分142は、上で説明したように、コイル巻線がヘッド部分142を越えて延びないように、シャフト部分141を越えて横方向に延びている。
図19bは、前の実施形態について詳細に説明したように、シャフト部分141’および上面143’が傾斜しているヘッド部分142’を有するポスト140’の一実施形態を示している。
【0067】
一実施形態では、
図19cに示すように、ポスト140のヘッド部分142も、不連続な軟磁性材料で形成されてもよい。より具体的には、各ポスト140のヘッド部分142は、ポスト140のシャフト部分141と同様に、各ポスト40の長手方向軸に垂直な断面において不連続である軟磁性材料を含んでもよい。ヘッド部分142は、絶縁層174によって互いに絶縁されたシート173で形成されていてもよい。平坦なヘッド部分142の高さが小さいため、シート173は「ロッド」と呼ばれてもよい。
図19dに示すように、傾斜ヘッド部分142’はまた、不連続軟磁性材料で形成されてもよく、特に、絶縁層174’によって互いに絶縁されたシート173’で形成されてもよい。シャフト部分141、141’について上述した不連続な軟磁性材料のすべての特性は、それぞれのヘッド部分142、142’について適用されてもよい。
【0068】
図20aでは、磁石132は、ヘッド部分142に隣接して図示されている。ヘッド部分142の上面は傾斜していないので、磁石132は実質的に円筒状の構成要素を形成する。
図20bは、磁石132’がギャップ133’によって分離されている代替的な実施形態を示している。上で説明したように、磁石132’がギャップ133’、特に半径方向に延びるギャップによって分離されている場合、磁界の特性および駆動ユニット104とインペラとの間のギャップのために、磁気結合の効率が低下しないことが分かっている。
【0069】
図21aから
図21jは、
図19aの線I-Iに沿った断面で見たポストの様々な実施形態を図示している。
図21aから21dは、ポストのシャフト部分141がスロット付きである、すなわち、絶縁層172によって互いに絶縁された複数のシート171で形成されている実施形態を示す。絶縁層172は、接着剤、ラッカー、ベーキングエナメルなどを含み得る。
図21aおよび
図21bは、シート171の厚さが均一である実施形態を示す。厚さは、約25μmから約250μmの範囲であってもよい。
図21aに示すシート171は、
図21bに示すシート171よりも大きな厚さを有する。
図21cのシートは、中央のシートが最も大きな厚さを有し、最も外側のシートが最も小さな厚さを有する、様々な厚さを有する。これは、シャフト部分の側面領域における渦電流がより重要であり、薄いシートによって減少させることができるので、有利であると考えられる。中央領域の渦電流は、より臨界性が低く、比較的厚い中央シートは、磁束の改善に役立つかもしれない。シート171の配向は、
図21dに例示的に示されているように、示された断面の軟磁性材料、すなわち磁束の方向を横切る断面の軟磁性材料が不連続であるか、または中断されている限り、異なっていてもよい。
【0070】
図21eおよび
図21fは、シャフト部分141が、絶縁材料182によって互いに絶縁されているワイヤ181の束によって形成されている実施形態を示している。絶縁材料182は、ワイヤ181の各々のコーティングとして存在してもよいし、ワイヤ181が埋め込まれたマトリックスであってもよい。
図21eの実施形態では、すべてのワイヤは同じ直径を有しているが、
図21fの実施形態では、中央のワイヤは最大の直径を有し、外側のワイヤはより小さい直径を有しており、これは、
図21cに示された実施形態が様々な厚さを有するシートを有するのと同様である。
図21gに示すように、異なる直径のワイヤ181が混合されてもよく、これは、すべてのワイヤが同じ直径を有する実施形態と比較して、軟磁性材料の総断面積を増加させ得る。さらに代替的に、ワイヤ183間の絶縁層184をさらに最小化するために、ワイヤ183は、長方形、正方形などの多角形の断面積を有し得る。
【0071】
代替的に、シャフト部分141の不連続な断面は、
図21iに示すように、ポリマーマトリックス186に埋め込まれた金属粒子185によって、または絶縁マトリックスに含浸されたスチールウールまたは他の多孔質構造によって作成されてもよい。軟磁性材料の多孔質、したがって不連続構造は、空気に曝されることによる軟磁性材料の酸化によって絶縁層が自動的に形成されるので、絶縁マトリックスが省略されてもよい焼結プロセスまたは高圧成形プロセスによっても作成されてもよい。さらに別の方法として、シャフト部分141は、
図21jに示すように、ロールアップシート187の層が絶縁層188によって分離されている軟磁性材料のロールアップシート187で形成されていてもよい。これはまた、ポスト140のシャフト部分141における渦電流を低減する本発明の意味での不連続な断面を提供する。